JP3764403B2 - 端側吻合用フランジ付き移植片を製造するための装置 - Google Patents

端側吻合用フランジ付き移植片を製造するための装置 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
関連する出願との関係
この出願は、特許協力条約に基づく国際受理官庁として機能する米国特許商標庁に同時に出願した表題「端側吻合用フランジ付き移植片」(以下、「同時に出願したPCTインプラ(Impla)国際出願」という)に関連する。同時に出願したPCTインプラ国際出願は、共にインプラ(Impla)社に譲渡されていて、米国を除く全ての指定国のための出願人であり、ハンス・ショルツ、ウルフ・クルーガー、およびウッツ・セットマッチャーの名前は、米国のみの出願人としてである。出願人は、同時に出願したPCTインプラ国際出願をさらにここで示して、それらを参照することによりここに取り込む。
【0002】
発明の背景
本発明は、一般に血管移植片を製造するための装置に関し、特に、血管の閉塞または病気あるいは血液透析用アクセス(access)移植片としてのバイパスのために有用な、端側吻合用の管状のポリテトラフルオロエチレン(polytetrafluoroethylene)移植片から、フランジ付き血管移植片を形成するフランジ付きポリテトラフルオロエチレン部分を形成するための装置に関する。さらなる特徴として、ポリテトラフルオロエチレン移植片は、先端部のポリテトラフルオロエチレンフランジ付きカフ(cuff)部分が血管に縫合され、移植片と血管との間のポリテトラフルオロエチレン組織界面を有する一体的なポリテトラフルオロエチレンフランジ付きカフ部分を有している。フランジ付き移植片は、本発明装置に使用される基端部バイパスまたは血液透析アクセス移植片に有用なフランジ付き移植片のタイプを示すものとして、ここで引用して特に取り込む同時に出願したPCTインプラ国際出願の目的である。
【0003】
【従来の技術】
閉塞した状態の末梢血管のバイパスのためのカフ移植片の使用、特に大腿部パッチプロテーゼ(patch prosthese)または、血液透析アクセス移植片はこの分野でよく知られている。しかしながら、現在まで、吻合部分において静脈組織で形成された先端部カフを持った自家移植または合成移植片が使用されてきた。適切なカフ移植片の例は、ジェイ・エイチ・ミラーの「静脈カフとPTFEの使用」に記載されたミラーカラー(collar)、ダブリュ・ビー・サウンダース(1989)の「血管外科技術」第2版276〜286ページ、およびアール・エス・テーラー他によって記載された「ポリテトラフルオロエチレンバイパス移植片用改良された技術」のテーラーパッチ(patch):ブラザー・ジェイ・スルグの「血液透析静脈パッチの長期間使用結果」、79:348から354(1992)がある。ミラー移植片とテーラー移植片の両方がカフ移植片でいずれも吻合部分に自家静脈カフを持ったポリテトラフルオロエチレン移植片を用いている。ミラーカラーとテーラーパッチのそれぞれが、ポリテトラフルオロエチレン組織界面での従順な不整合を避けるために吻合部分に静脈組織を使用している。
【0004】
ここで参照して取り込んだ同時に出願したPCTインプラ国際出願のフランジ付きポリテトラフルオロエチレンは、大腿下腿部バイパスまたはアクセス移植片の新しいタイプを提供していて、移植片は、ひらひらした2重バルブ形状に組み込まれている。改良された移植片形状は、血液透析特性の関数として、吻合用の最適な幾何学を提供する。バイパスプロテーゼから動脈への血流を最適にすることによって、内膜の過剰な形成は、移植片の開通性の付随する増加と減少した罹患率と共に減少される。
【0005】
支流移植片を組み立てる種々の異なった試みがなされてきた。1938の早くから、ブラウンの米国特許第2、127、930号は、構造的形状の周りに処理された動物組織の細片を巻き付けて形成して、動物の組織とバインダで作られた、生命吸収可能で外科的に組織移植可能な移植片を開示している。1990年3月20日にポシスに許可された米国特許第4、909、979号は、血管移植片として使用される人のへその緒を整形する方法を開示している。この方法は、緒を形作り治療する間、へその緒を支持し整形するためにマンドレルを使用している。PTFEコーティングが、へその緒をマンドレルに設けるのを容易にするためにマンドレルに施されている。マンドレルの整形部には、マンドレルに複数の真空開口部が設けられている。へその緒は、エタノールで処理され、緒が乾燥するまで真空で処理される。緒は、ついで、治療的定着的解決のために膨張され、へその緒が実質的に気密に処置され、また、マンドレル形成部の周りに円周的に圧縮されコンパクト化されるまで真空が与えられる。
【0006】
1982年10月19日にボディッキィに許可された米国特許第4、354、495号は、PTFEチューブを、例えばポリウレタン、アクリル酸、ポリエチレン、ポリカーボネートなどのモールド可能なプラスチックで形成されたハブに接続する方法を開示している。この方法は、膨出部すなわち突出部を形成し、ついで膨出部をモールドに挿入し、そしてモールド内で膨出部の周りにモールド可能なプラスチックのハブをモールドするために、PTFEチューブの部分を選択的に加熱することを含んでいる。1990年9月18日にカネダ他に許可された米国特許第4、957、508号は、外方へひらひらした基端部と先端部とを有した弾性的な医療用チューブを開示している。これらの端部の外側への張り出し部は、反対の弾性的特性を示すために、チューブの内面と外面とを形成することによって設けられ、内面は拡張する力を示すのに対し、外面は収縮する力を示す。チューブは、高分子量のポリマー、好ましくは、ハロゲン化ポリビニル、ポリスチレン、ポリマーシリーズ、ポリマーシリーズの縮合物、セルロースシリーズの高ポリマー、ポリウレタンシリーズの高ポリマー、ポリスルホンシリーズの樹脂、ポリアミドなどで、これらのコポリマーまたは混合物とともに作られている。
【0007】
1995年2月7日にノシキ他に許可された米国特許第5、387、236号は、血管プロテーゼと、PTFEまたは他の微細孔材料で作られた血管プロテーゼ基質を用意し、生物学的組織のプロテーゼ基質断片の壁内に付着して捕捉することによって、血管プロテーゼを製造する方法とを開示している。生物学的組織の断片は、血管組織、結合組織、および筋肉組織ならびに/または血管内皮細胞、滑らかな筋肉細胞、および繊維母細胞である。植え付け工程は、細胞物質を移植片の内壁に付着し、血管プロテーゼの微細孔マトリクス内に組織の基質を入れ込むために管腔壁の表面と反管腔壁表面との間に圧力差を与えることによって導かれる。1989年11月28日にベリー他に許可された米国特許第4、883、453号は、冠状大動脈バイパス移植片とその移植片の製造方法を開示している。この移植片と、プレートとは、静電気的に紡いだ繊維構造に作られている。移植片は、移植片をマンドレルに設け、接着剤をプレートの開口を取り囲むプレートの表面に施し、移植片が接着剤に接触するまでマンドレルをプレートの開口を通過させることによってプレートに接着されている。接着剤は、プレートと移植片を形成する材料用に適切な接着剤であればよい。ここで参照して述べた好ましい実施例によれば、移植片は、好ましくは、プレートに隣接した移植片の壁厚がプレートとの距離よりも大きいテーパーを付けられた壁厚を有している。
【0008】
1992年5月5日にハヤシ他に許可された米国特許第5、110、526号は、モールドされたPTFE物品を製造する工程を開示している。この工程によれば、非焼結PTFEの突出部が、焼結モールド内に挿入されている。焼結モールドは、非焼結PTFEの突出部の外径よりもわずかに大きい直径を有している。非焼結PTFEの突出部の外径と焼結モールドの内面との間隙は、焼結モールドの外径の2%のオーダーである。突出部は、突出部の端子管腔内に挿入されたプラグと、ワイヤおよび取り出しリールを介して焼結モールド内に引き込まれる。PTFEの突出部は、焼結モールドの長さに一致するように切断され、焼結モールドは、切断された突出部の端部に封止される。組立品は焼結炉に搬送されて焼結される。焼結中、突出部は、焼結モールドと接触するまで拡張し、焼結モールドの形状に一致する。冷却後、焼結突出部は、焼結モールドから離れて収縮し、焼結モールドと対応した同じ形状になる。1965年7月20にエリー・ジュニア他に許可された米国特許第3、196、194号は、FEP―フッ化炭素チューブ用突出工程を開示している。突出工程は、バレル突出装置を通って管状の突出部を形成する流体FEPコポリマーを突出し、管状の突出部をヒータ内に配置し、FEP突出部を径方向に拡張する管状の突出部を圧縮し、そして、記憶機能を持った熱収縮可能なチューブ直径が減少された突出部にするために拡張した突出部を冷却するネジから成る。
【0009】
1985年3月12にマドラスに許可された米国特許第4、503、568号は、端側吻合と吻合過形成の減少用動脈のバイパスのプロテーゼを開示している。動脈のバイパスのプロテーゼは、一般に、管状の入口部材と、管状の出口部材と、かかと部材とを有する接続要素から成る。管状の入口は、血流を受けその入口通路を提供する。管状の出口部材は、管状の入口と結合され角度を成して変位していて、入口部材からの血流の通路を提供する。かかと部材は、出口部材から実質的に同軸に延びている。かかと部材の先端部は、開口した動脈切開部を通って、動脈切開部の上流の容器の部分に挿入されている。かかとは、固いか、または入口と出口部材と連続した通路を有する。喉部は、管状の入口と出口部材との間に設けられていて、円周のスカートが喉部を取り巻いている。スカートは、血管の外膜組織に癒着される。
【0010】
PTFE材料を作るための公知の方法を特に参照すると、技術の状態と目的の例として次のものを引用する。1984年11月13日に発行された米国特許第4、482、516号は、粗い微細構造を有する高強度に拡張されたPTFE製品を製造する工程を開示している。結果的にはPTFEの微細構造は、ついで、節のサイズすなわち、高さと幅と小繊維の長さを考慮することを意味する「粗さ」指針によって規定される。1994年12月27日にツー他に許可された米国特許第5、376、110号は、移植片の壁部を横切った交互の圧力の影響下で行われたコラーゲン(collagen)交差結合によって血管移植片を製造する方法を開示している。交互の圧力は、コラーゲン繊維の交差結合を意図している。1988年5月10日にキャンベル他に許可された米国特許第4、743、480号は、螺旋状の溝が突出したバレルおよび/またはマンドレルに機械で加工された管状のPTFE製品を突出し拡張する方法を開示している。管状のPTFE製品の突出は、突出部の長手方向の軸線から85〜15度の間で角度をなして設けられた節を有する突出部に帰着する。
【0011】
最後に、1980年11月18日にオキタに許可された米国特許第4、234、535号は、チューブの内面における比較的小さな直径の繊維と、チューブの外径の少なくとも2倍の直径の繊維とを有する拡張されたPTFE血管移植片を形成する工程を開示している。移植片はPTFEの管状の突出部が形成され、ついで、駆動と取り上げキャプスタンに載せられる工程によって製造される。キャプスタンの駆動システムは、約327°Cの温度の加熱セットを通って、ついで、約327°Cの温度で突出部の径方向の拡張を引き起こす真空ケースの中へ突出部を搬送し、そして、径方向への拡張後、冷却空気の導入によって真空ケースは焼結温度よりも低い温度まで冷却され、それによって、駆動と取り上げキャプスタンからの張力によって、チューブを拡張された直径に長手方向に固定する。この特許は、また、径方向への拡張工程中のチューブ管腔を通って搬送される冷却空気の使用を開示し請求している。冷却空気をチューブ管腔を通って搬送することにより、管腔の表面の温度は、PTFEの焼結温度よりも低く維持される。このようにして、管腔と非管腔での異なった直径の小繊維(fibril)が形成される。
【0012】
現在の臨床実務において、バイパスまたはアクセスプロテーゼと先端部動脈との先端部吻合は、長い静脈パッチを持ったプロテーゼを動脈に吻合することによる吻合部位での静脈要素の介挿(リントン(Linton)パッチ)、静脈パッチを用いた吻合領域におけるプロテーゼの拡大(テーラー(Taylor)パッチ)のような直接吻合のみでなく、プロテーゼと動脈との間の静脈シリンダーの介挿(ミラー(Miller)カラー)もまた達成された。大腿先端部移植片において、移植片と感受性のある動脈との間の従順な不一致および血行要因が、血栓症と吻合部位の血管内膜過形成の発達の主な原因となっているという証拠が形成されてきている。
【0013】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の基本的な目的は、アクセス用の新しい移植片、すなわち、拡張された微細孔ポリテトラフルオロエチレン(ePTFE)で形成された大腿先端バイパス移植片を製造するための装置を提供することである。
本発明の他の目的は、アクセス、すなわち、大腿下腿部に適した先端部フランジを有するePTFEで形成された大腿先端部バイパス移植片を製造するための装置を提供することである。
本発明の他の目的は、アクセス、すなわち、動脈ー静脈パッチ(AVP)に適した先端部フランジを有するePTFEで形成された大腿先端部バイパス移植片を製造するための装置を提供することである。
本発明の他の目的は、アクセス、すなわち、大腿先端部バイパス移植片用の新しい移植片を製造するための装置を提供することである。
本発明のさらに他の目的は、管状のポリテトラフルオロエチレン移植片に先端部フランジを形成するために、管状のモールドの中心軸線から径方向に拡張された円周上に凹所を持った管状のモールドを利用して、アクセス、すなわち、大腿先端部バイパス移植片用の新しい移植片を製造するための装置を提供することである。
本発明のこれらの目的と他の目的、態様、および、利点は、添付した図面を参照して本発明の好ましい実施例をより詳細に説明した以下の記述によって、当業者にとってより明らかとなるであろう。
【0014】
【課題を解決するための手段】
本発明装置は、拡張部を形成する径方向に延びたスロットを有する管状のモールドを備えている。フランジ付きカフ移植片は、次のようにして製造される。第1に、管状の突出部形成するためにPTFEの潤滑剤混合物をビレット内に突出することによって焼結されていない管状のPTFE血管移植片を形成し、そして、管状のカフを、1)拡張部への負圧の適用、または2)高度に柔順な血管形成バルーンによって管状に突出した管腔を通って管状突出部の部分を径方向に離すような正圧の適用、によってカフ(cuff)された移植片を形成する。
【0015】
【発明の実施の形態】
図1は、PTFEを有する隔離ひかがみ要素と先端移植片への大腿部後続脛骨バイパスを示している。大腿部動脈の閉塞部3またはひかがみ動脈の閉塞部4を先端循環部にバイパスするのにPTFE移植片2を使用することはよく知られている。上述したように、種々のカフやパッチ技術が考案されてきた。図2は、代表的には3〜4cmの伏在静脈の静脈要素8が、動脈2から外方へ延びた円筒状のカフ8を形成するために、ひかがみ動脈または脛骨動脈の動脈切開開口部に施され、そして縫合されたミラーカフ5を示している。静脈要素8は、長手方向に開口し、6/0または7/0プロレーン縫合(prolene suture)を用いて動脈切開部に吻合することによってカラー状に形成されている。カラーは、ついで6/0プロレーン縫合で閉じられる。ePTFEの移植片10が、カラーの円周に合うように切断され、ついで連続した5/0プロレーン縫合を用いてカラーに吻合される。ミラーカフ5は、脛骨動脈、ひかがみ動脈、または、たとえば大腿部―ひかがみ部―脛部のような連続したバイパス処置において、PTFEが吻合されるような場合に示されている。
【0016】
図3は、テーラーパッチ7を示している。テーラーパッチ7処置において、5〜6cmの長さの静脈が、代表的には伏在静脈の利用可能な要素から取り入れられている。取り入れられた静脈は、長手方向に開口していて、ダイアモンド形状の静脈パッチ8を形成するために整形されている。ePTFEの移植片10の先端部は、ePTFEの移植片10の頂面に沿ってU字状とV字状のスロットに整形されている。ePTFEの移植片のU字状の開口端部は、ePTFEの動脈縫合ラインを形成しているのに対し、V字状のスロットは、静脈パッチ8に縫合される。静脈パッチ8は、ePTFEの移植片10のV字状のスロットに沿って、また、動脈切開開口部の正しい方向に設けられていて、ePTFEの移植片10と動脈切開部の両方に縫合されている。縫合ラインは、テーラーパッチバイパス移植片を完成するために、移植片のかかと部分から移植片のつま先部分へ延びている。
【0017】
標準的な端部と側部とのePTFE移植片/動脈吻合用移植片の開通性は、1年間で21〜60%の間の開通性と、および3年間で14〜38%の間の開通性とが報告されている。ミラーカラーを使用した1年間の開通性は、ePTFE下腿移植片用として47%報告されていて、3年間の開通性は52%である。テーラーパッチを使用した1年間の開通性は、86%報告されていて、3年間の開通性は52%報告されている。1993年2月3日の病院最新情報のジェイ・エフ・チェスター等の「血管再構築用中間配置静脈パッチ」による。動脈吻合への直接PTFEは、比較的固いPTFEと、PTFEと感受性の動脈間の最初の増殖の形成とにより、動脈の機械的ひずみによって批評されている。これらの2つのファクターは、直接PTFEの動脈吻合への高閉塞割合と、低移植片の開通性特性に関係されている。シー・ダブリュ・ジャミッソン他の「血管外科」第5版第330〜340ページ(1994)による。
【0018】
本発明装置によって製造されたフランジ付き移植片の好ましい実施例は、図4A〜6に示されている。図4Aに示されたように、フランジ付き移植片10の第1の実施例は、ePTFEの管状の移植片11が先端2分割形状のフランジ12と14を有する2つに分けられた2重バルブ形状である。端部と側部が接する端側吻合において、移植片11の先端部は、受け側の動脈2に形成された動脈切開部に吻合されている。吻合を容易にし、ePTFEの移植片11と受け側動脈2との間の従順な適合性を増加し、そして、移植片11から受け側動脈2への血行流を最適化するために、二またに分かれたフランジ12と14とは、移植片11の長手方向の軸線に実質的に垂直な反対方向に突出している。移植片11が、受け側動脈2と端側の関係に配置された場合、二またに分かれたフランジ12と14との端部は、受け側動脈2の長手方向の軸線と平行になり、受け側動脈2に関して基端と先端の方向に延びている。二またに分かれたフランジ12と14は、好ましくは、受け側動脈2の曲線と実質的に一致し、また開口した動脈切開部に対して二またに分かれたフランジ12と14とを取り囲むように位置して延びた球根状の形状を有している。二またに分かれたフランジ12と14とは、好ましくは、つま先部19、21で終息する円弧状の末梢端部18、20を持った、実質的に楕円形の形状を有するように各形成されている。かかと領域17は、直ちに管状の移植片とおよび二またに分かれたフランジ12、14の円弧状の各末梢端部18、20と接触する。フランジ12の末梢端部18とフランジ14の末梢端部20との間の接合部は、かかと領域17においてクロッチ(crotch)角度16を形成する。クロッチ角度16は、かかと領域17における移植片の強度を最大にするために、45°と180°との間が好ましい。
【0019】
二またに分かれたフランジ12と14は、互いに対称的であっても非対称的であっても良い。対称的かまたは非対称的かの二またに分かれたフランジ12、14を選択をすることは、好ましくは、受け側動脈2の特異性、受け側動脈2での動脈切開部の位置、および、移植片11の管腔直径に基づいて血管外科医によって決定される。移植片11は、好ましくは、動脈切開部を二またに分かれたフランジ12、14と、かかと領域17およびクロッチ角度16に、連続的な縫合部22を用いて受け側動脈2に吻合される。
【0020】
図4Bは、受け側動脈2に吻合された移植片10の第1の実施例の斜視図を現している。
図5は、受け側動脈2に吻合された管状のePTFEの移植片11の先端部における二またに分かれたフランジの種々のサイズと対称形を示している。
第1の移植片は、非対称の二またに分かれたフランジ30、40を有していて、フランジ30がフランジ40よりも大きい表面領域を持っていて、フランジ30が移植片11から横方向に、またフランジ付き移植片11を取り囲むように、フランジ40よりも大きな割合で延びている。第1の移植片のクロッチ角度41は、移植片11の中間線31に関して短い方のフランジ40の方へ向かって偏倚している。フランジ30、40を有する第1の移植片の形状は、端側吻合に十分に適合していて、移植片11と受け側動脈2との間のなす角度は、短い方のフランジ40の側に傾斜していて、また長い方のフランジ30の側に鈍角である。
【0021】
第2の移植片は、実質的に対称的な二またに分かれたフランジ34、36を有していて、クロッチ角度37は、移植片11の中間線31と実質的に一致する。両フランジ34と26とは、移植片11との関係において横方向に反対方向へ実質的に等しい長さ延びていて、フランジ34、36の円弧状の周りの末梢端部は、受け側動脈2の周りを取り巻くように実質的に等しい程度に延びている。対称的な二またに分かれたフランジ34、36を持った第2の移植片は、移植片11と受け側動脈2との間の端側吻合のなす角が実質的に垂直な箇所において特に便利である。
【0022】
非対称的に二またに分かれたフランジ38、32によって表される第3の移植片は、非対称的に二またに分かれたフランジ30、40で示された第1の移植片と実質的に鏡面対称である。この第3の移植片において、フランジ32は、移植片11からフランジ38よりも大きく横方向に突出し、また移植片11の周りを取り巻くように延びている。第3の移植片のクロッチ角度33は、移植片11の中間線31に関し短い方のフランジ38に向かって偏倚している。フランジ38、32を有する第3の移植片の形状は、端側吻合に十分に適合していて、移植片11と受け側動脈2との間のなす角度は、短い方のフランジ38の側に鋭角で、また長い方のフランジ32の側に鈍角である。
【0023】
二またに分かれたフランジ移植片10の3つの好ましい実施例のそれぞれにおいて、二またに分かれたフランジは、好ましくは、ePTFEで形成されていて、ePTFEの管状の移植片11の、不連続な縫い目や重ね合わされた領域のない、連続的に、一体に、乱れのない断面を形成している。
上述のように、当業者にとって、流入側移植片の長手方向の軸線が受け側動脈2との関係で鋭角をなすように配置されていて、血液流の方向との関係で、長い方のフランジが先端方向へ向けられ、短い方のフランジが近接する方へ向けられるようなフランジを持った移植片10に非対称的なフランジを使用することが、端側吻合にとって特に良く適合していることが理解できる。
【0024】
寸法的には、各二またに分かれたフランジの長さを移植片の管腔の直径の1から5倍の間に組み立てるのが好ましい。従って、5mmの移植片用の短い方のフランジは、移植片の外表面からフランジのつま先領域の一番遠い点まで測定した長さが5mmよりも短くなく、長い方のフランジは、移植片の外表面からフランジのつま先の一番遠い点まで測定した長さが25mmよりも長くない長さでなければならない。周辺的には、各二またに分かれたフランジは、受け側動脈の周りに移植片の管腔の直径の1倍よりも大きくてはならない。このように、移植片が5mmの管腔直径を有している場合、移植片の中間線から円周的に最も遠いフランジの円弧状の終端まで測定して、二またに分かれたフランジは5mmよりも大きくてはならない。このような寸法構造は、ePTFEの動脈接合に静脈パッチまたはカラーを使用できないePTFEの大腿膝下(femoro−infragenicular)バイパス移植片のための最適パラメータを呈するために見つけだされた。二またに分かれたフランジ移植片10の構造は、最適な幾何学と、移植片がないことによる内膜的過形成開発の減少可能性を有するために見つけだされた。本発明装置によって製造された二またに分かれたフランジ移植片10は、低流速度の領域に最小の存在または吻合部分での渦巻き形成が示されていて、端側吻合用に最適な血行流パターンを呈する。
【0025】
普通の端側吻合は、吻合接合部において複雑な血行流パターンを呈する。流速と渦巻き形成を保留する低流速度の領域は、公知の端側吻合の実質的に全てのタイプにみられる。明らかに、詳細な血行の測定は生体内で得るのは困難である。脈流モデルは、本発明装置によって製造された大腿膝下バイパス移植片10の先端端側吻合における血行条件の模擬実験をして開発された。流れの閉鎖ループは、収縮血圧と弛緩血圧とに維持された2つのリザーバに接続して形成された。磁気バルブが、大腿動脈におけるのと同様の脈流を生ずるために使用された。血液アナログ流(蒸留水に重量で7.5%のデキストラン(Dextran))が使用された。ソノグラフの視覚化を強調するために、血液アナログ流は、40から120μのセファデックス(SEPHADEX)顆粒(スウェーデンのウプサラ市のファーマシア)、とともに接種された(1g/L)。流れの視覚化と速度領域の測定は、直接染色注入と、ドップラー周波数が3.5MHZで開口寸法が3.8cmを有する5MHZのリニヤー配置トランスデューサを持ったリアルタイム超音波診断装置(アキューゾンの128XP/10)を使用してドップラーカラー流量測定によって達成された。ドップラーカラー流量測定画像は、S―VHSビデオカメラと、S―VHS高解像度ビデオカセットレコーダを使用して連続的に記録された。画像は、連続した1秒間隔内のフレームの各画素のピーク速度を描くピーク捕捉技術を用いて、脈動サイクルにおいて特定の間隔で得られた。流量速度測定は、上流または下流において、70°の角度でトランスデューサの面に搬送された超音波ビームを使用して検知された。
【0026】
二またに分かれたフランジ移植片10は、脈動流量率が低い場合と高い場合の両方において、染色注入とドップラーカラー流量測定流可視化技術を使用して、リントンパッチとテーラーパッチに対する試験がなされた。リントンパッチとテーラーパッチの両方において、速度の輪郭は、流量率と独立して、各移植片の外壁に向かって曲げられている。流れの外壁に対する衝突は、高い流量状態における環状の流動動作を生ずるのに対し、低い流量条件において流れが停滞している領域は主容器の外壁と一致され、移植片の内壁と整列される。この点は、ある流れの傾向が支流の先端に移動し、ある流れの傾向が受け側動脈の支流の基端に移動し、流れの離れた領域をマークした。流れの渦は、リントンパッチとテーラーパッチが観測されたつま先の領域とかかとの領域において観測され、最小限の渦の形成が、本発明装置によって製造された移植片10の吻合部分で観測された。この二またに分かれたフランジ移植片10を通った流れの輪郭は、図7に示されている。
【0027】
ドップラーカラー流量測定において、リントンパッチとテーラーパッチの両方は、次の血行輪郭を生成した:1)上流での反渦巻き流と下流での前方への流れとへの分流:2)ジェット流と吻合部分の下流の不均質流のパターン;および、3)流れが零または反対流の低流領域。これらの各血行現象の最初の位置は、移植片インレットとは反対であり、吻合部のつま先から下流へ動脈の内壁に沿っている。収縮から弛緩への流れの波形の減速を持った流れのパターンの変化は、リントンパッチとテーラーパッチの両方の低流領域を増加する。これらの血行現象は、実質的に図7に示された層流パターンを呈する本発明装置によって製造された二またに分かれたフランジ移植片10を持った統計学上重大などのような程度においても観測されなかった。
【0028】
臨床学において、本発明装置によって製造された二またに分かれたフランジ移植片10を用いた65の膝下バイパス移植片が、62人の患者になされた。18人の患者において、上流と下流の各方向の円周の動脈の抵抗を計算するために血流と血圧の測定用として、一時的な体外バイパスが、吻合部部分の基端部と先端部との間に挿入され、開通性が追跡された。バイパス操作に先立って、全ての患者は、ドップラー超音波診断装置によるくるぶし動脈圧力測定と動脈造影法を受けた。移植片の開通性は、外科的試験によって追跡され、ドップラー超音波診断動脈圧力は、全ての患者に3ヶ月間隔で調査された。吻合部の形態と構造は、術後血管造影によって、そして3ヶ月間隔でドップラーカラー流量測定で試験された。1年の最初の開通性の率は、60%で、2年目にわたる追跡においても一定に保たれた。1年の第2の開通性の率は、68%であるのに対し2年目の開通性の率は60%にしか落ちなかった。
【0029】
図6Aと6Bとを見ると、本発明装置によって製造された識別のために動脈―静脈パッチ(AVP)プロテーゼ50として参照するバイパス移植片の第2の好ましい実施例が示されている。動脈―静脈パッチプロテーゼ50は、一般に、管状のePTFEの移植片部材52の外周の周りに延びた外方のひらひらしたスカート部56を有した管状のePTFEの移植片部材52を備えている。ひらひらしたスカート部56は好ましくは、一般に楕円形の形状を有していて、管状のePTFEの移植片部材52の中心の長手方向の軸線53から偏倚している。その偏倚は、楕円形状のひらひらしたスカート部56の第1の焦点が、管状のePTFEの移植片部材52の中心の長手方向の軸線53から、楕円形状のひらひらしたスカート部56の第2の焦点よりも離れて設けられている。さらに、ひらひらしたスカート部56は、管状のePTFE移植片部材52の中心の長手方向の軸線53に関して、先端部へ角度をなして偏倚している面55に存在する。管状のePTFE移植片部材52の中心の長手方向の軸線53に関して、先端部へ角度をなして偏倚することにより、ひらひらしたスカート部56は、管状のePTFE移植片部材52と、つま先角度62およびかかと角度60を成すように形成される。動脈―静脈パッチプロテーゼ50の好ましい実施例によれば、つま先角度62は管状の移植片部材52の中心の長手方向の軸線53に関して90°より大きく、それに対し、かかと角度60は管状の移植片部材52の中心の長手方向の軸線53に関して90°より小さい。好ましい実施例によれば、つま先角度62は、管状のePTFEの移植片部材52の中心の長手方向の軸線53に関して、95°から160°の範囲であり、それに対し、かかと角度60は、管状のePTFE移植片部材52の中心の長手方向の軸線53に関して、20°から85°の範囲である。
【0030】
ひらひらしたスカート部56は、つま先角度62においてePTFE管状部材52から外方へ突出したつま先部分67を有している。つま先部分67の長さは、製造中に予め定めても良く、または、吻合部分で開口動脈切開部に調節するために移植処置中に血管外科によって整頓しても良い。かかと部分69が、かかと角度60においてePTFE管状部材52から外方へ、また、つま先部分67と反対の方向へ突出している。ひらひらしたスカート部56の湾曲した外周端部58は、180°の円弧に対していて、つま先部分67とかかと部分69とを連結する連続した表面を形成している。つま先部分67の所望の長さによって、湾曲した外周の末梢端部58と、ひらひらしたスカート部56がePTFE管状部材52に関して先端方向へ突出している延在距離71とは変えられる。仮想線64、66は、ひらひらしたスカート部56の他の湾曲した外周の末梢端部64、66を表している。
ひらひらしたスカート部56は、好ましくは、ePTFEで形成されていて、ePTFE管状移植片部材52の連続した、一体的な、単体的部品として、中間的な縫い目や重なりがなく形成されている。
【0031】
図6Bに示したように、ひらひらしたスカート部56は、末梢端部58と動脈の外側の形状の周りとの間の縫合吻合部を可能にするために、そのz軸に湾曲形状を成す。ひらひらしたスカート部56は、好ましくは、つま先領域67の頂面から、ひらひらしたスカート部56のつま先領域67の頂面から最も遠い末梢端部58に沿った点まで測定して、ePTFEの管状移植片部材52の管腔の直径よりも大きくない距離延びてなければならない。
【0032】
AVPプロテーゼ50の好ましい実施例によると、つま先領域67は、かかと領域69よりも大きい長さを有していて、つま先領域67は、ePTFEの管状移植片部材52の中心の長手方向の軸線53から外方へ血流の方向へ突出している。上述したように、好ましくは、つま先領域67の長さは、つま先領域67に隣接したePTFEの管状移植片部材52の外壁表面からつま先領域67の外周端部58の最も遠い点まで測定して、5から25mmの範囲で可変である。しかしながら、大腿端部バイパス吻合部用として、かかと領域69に隣接したePTFEの管状移植片部材52の外壁表面から測定して、かかと領域69の長さを3mmの固定された長さに維持することが好ましいということがわかった。
【0033】
フランジ付きバイパス移植片10、50の上述の好ましい実施例は、フランジ付きバイパス移植片10、50を作成するための、以下に述べる本発明装置を使用し、以下に述べる方法によって製造される。図8〜13は、好ましくは、図15のフロー図に示された方法によって使用されるモールド装置100、130の他の実施例を示している。
【0034】
特に図8〜12を参照すると、フランジ付きバイパス移植片10、50を製造する本発明のモールド装置100が示されている。モールド装置100は、一般に、モールドチューブ102の長手方向の長さ全体を通って延び、モールドチューブ102の2つの向き合った端部のそれぞれに開口した管腔空所部101を有するモールドチューブ102から成る。モールドチューブ102は、さらに、モールドチューブ102の半球状の断面の部分を通った複数の開口部112を有する。複数の開口部112は、モールドチューブ102の長手方向の軸線に沿って延びた直線に整列して位置し、モールドチューブ102の各向き合った端部に位置している。
【0035】
第1のブロック部材104と第2のブロック部材106が設けられていて、それぞれが、管状の形状を有していて、外径はモールドチューブ102の管腔空所部101と相互に係合可能なように形成されている。第1のブロック部材104は、第1のブロック部材104の長手方向全長に亘って延びていて、第1のブロック部材104の2つの各端部で開口した、細長く設けられた管腔105を有している。第1のブロック部材104は、第1のブロック部材104長手方向の軸線と垂直の関係にない平らな面108を有している。複数の開口部112は、第1のブロック部材104を通って延びていて、各開口部112がモールドチューブ102の開口部112に位置的に対応して設けられた長手方向の列として位置されている。第1のブロック部材の複数の開口部112は、長手方向に向けられた管腔105と第1のブロック部材104の外径との間の中間において、第1のブロック部材104を通って横方向に通過している。
【0036】
第1のブロック部材104と同様、第2のブロック部材106は、第2のブロック部材106の長手方向全長に亘って延び、第2のブロック部材106の2つの各端部で開口する細長く設けられた管腔107を有していて、第1のブロック部材104の管腔105と同軸である。第2のブロック部材106は、第2のブロック部材106長手方向の軸線と垂直の関係にない平らな面110を有していて、第1のブロック部材104の平らな面108と実質的に平行である。複数の開口部112は、第1のブロック部材104を通って延びていて、各開口部112がモールドチューブ102の開口部112に位置的に対応して設けられた長手方向の列として位置されている。第1のブロック部材の複数の開口部112は、長手方向に向けられた管腔107と第2のブロック部材106の外径との間の中間において、第2のブロック部材106を通って横方向に通過している。
【0037】
モールド装置100は、第1のブロック部材をモールドチューブ102の第1の開口端部に挿入することによって第1のブロック部材104をモールドチューブ102の管腔105内に係合し、第1のブロック部材104の少なくとも1つの開口部112をモールドチューブ102の複数の開口部112の少なくとも1つと整列し、モールドチューブ102と第1のブロック部材104とが互いに固定位置に係合するようにロックピン113が整列された複数の開口部112の少なくとも1つ内に挿入することによって組み立てられる。ついで、第2のブロック部材106は、第2のブロック部材をモールドチューブ102の第2の開口端部に挿入し、第2のブロック部材106の少なくとも1つの開口部112をモールドチューブ102の複数の開口部112の少なくとも1つと整列し、モールドチューブ102と第2のブロック部材106とが互いに固定位置に係合するようにロックピン113を整列された複数の開口部112の少なくとも1つ内に挿入することによって、モールドチューブ102の管腔101内に係合され、第1のブロック部材104と第2のブロック部材106との平らな面108と110とは、互いに実質的に平行で、その間にモールド空間120を規定するように互いに離間した関係にある。第1のブロック部材104と第2のブロック部材106の長手方向の軸線と所望の角度をなし、互いに平行に向けられた平らな面108、110を設けることによって、それらの間に規定されたモールド空間120は、平行で角度をなして設けられた面108、110とモールド空所部101の管腔壁の部分によって境界を定められていて、通常平行四辺形の断面形状を有している。図8のモールドチューブ102の描写は、組み立てられた状態を仮想線で示したモールド装置100の1つの実施例を示している。
【0038】
図8にはまた、第1のブロック部材104と第2のブロック部材106に各対応する他の実施例104’と106’が示されている。第2のブロック部材106’の第1の他の実施例は、長手方向に向けられた管腔が、管腔の沿った異なった位置で第1の直径116と第2の直径117とを有する段状の直径の第1のブロック部材114である。段状の直径の管腔115を設けることによって、モールド空間120内に形成されたフランジまたはスカートの基部に最終的な移植片にテーパーを作り出すことがことができるが、より詳細は後述する。第1のブロック部材104’と第2のブロック部材106’の第2の他の実施例は、平らな面124と128が第1のブロック部材104’と第2のブロック部材106’の長手方向の軸線に実質的に垂直に向けられていることを除いて実質上第1のブロック部材104と第2のブロック部材106と等しい。第1のブロック部材104’と第2のブロック部材106’の長手方向の軸線に実質的に垂直に向けられた平らな面124と128を設けることによって、それらの間に形成されたモールド空間120は、垂直な平らな面124、128とモールド空所部101の管腔直径とによって境界を定められていて、一般に矩形または四辺形状の断面形状を有している。第1のブロック部材104または第2のブロック部材106あるいはそれらの他の実施例104’、106’の何れにおいても、第2のブロック部材の第1の他の実施例114の上述の説明に関して述べたように、段状の管腔105、107を各有している。さらに、面110または124の角度の向きは、本発明によって製造されたフランジ付き移植片のフランジまたはカフ用に望ましい結果としての角度位置によって望まれるように選択される。
【0039】
図9〜12は、フランジを持ったバイパス移植片を作るための本発明装置を切断した断面図を示す。図9は、第2のブロック部材106を通って取った断面図で、第2のブロック部材106の本体部と、長手方向に向けられた管腔107と、第2のブロック部材106を横方向に通った複数の開口部112の1つとを示している。図10は、図8の10―10線に沿った、段状の直径の管腔の第2のブロック部材114の断面図である。第1のブロック部材114の本体部がそれを通った中央の細長い管腔115と共に示されていて、第1の管腔直径116と第2の管腔直径117および段状の直径の管腔の第2のブロック部材114を横方向に横切った複数の開口部112の1つとを示している。図11は、図8の11―11線に沿ったモールドチューブ102の断面図である。図11において、開口部112は、モールドチューブ102を横方向に通っていて、モールドチューブ102との係合の際そこを通ってロックピン113を受容するために、第1のブロック部材104、第2のブロック部材106または段状の直径の管腔の第2のブロック部材114の開口部112との整列を容易にするモールドチューブ102の管腔101に開口していることがわかる。最後に、図12は、図8の12―12線に沿った断面図であり、第1のブロック部材104の本体部と、中央の細長い管腔105と、管腔105に侵入することなく第1のブロック部材104の本体部を横方向に通った開口部112の1つとを示している。
【0040】
モールドチューブ102と第1のブロック部材104と第2のブロック部材106とが、開口部112に挿入されたロックピン113によって組み立てられ取着された場合、第1のブロック部材104の管腔105と、ブロック部材106の同軸的管腔107とは、モールド装置100の長手方向軸線の全体を通っていて、モールドチューブ102の2つの向き合った端部とモールド空所部120とに開口した共通の細長い管腔122を形成することが当業者にとって理解できるであろう。共通の細長い管腔122は、それ故、モールド空所部120への両側からのアクセスをする。以下に、より詳細に述べるように、拡張されたポリテトラフルオロエチレンの管状の移植片は、モールド空所部120を通過して共通の長手方向の管腔122に通っているので、ePTFEの管状の移植片の長手方向の部分は、モールド空所部120内にある。径方向に拡張する力は、ついで、モールド空所部120内に存在するePTFEの管状の移植片の長手方向の部分を径方向に拡張するモールド空所部120内に存在するePTFEの管状の移植片の長手方向の部分に適用される。径方向に拡張する力は、移植片管腔または、ePTFEの管状の移植片の長手方向の部分の外部から外方の壁部表面部分を通して適用されるか、あるいは、モールド空所部120内で、ePTFEの管状の移植片の長手方向の部分を横切って適用される力の差によって生成される。
【0041】
図13は、本発明によるモールド装置130の第2の好ましい実施例を表している。図8〜12に示されたモールド装置100と区別されるように、モールド装置130は、単一の調整不可能な装置として組み立てられている。モールド装置130は、フランジのスカート部を作り出すための必要なある方法で形成されたモールド空所部134を有するモールドチューブ132から成る。モールド空所部134は、モールド装置130の長手方向の軸線に関し、図13に示したように、平行四辺形のような細長い部分形状を成すように垂直でない角度に向けられているか、または、モールド装置130の長手方向の軸線に関し、一般に矩形の細長い部分形状(図示せず)を成すように垂直に向けられているかである。モールド空所部134はさらに、モールド空所部134の容量が、モールド装置130に生成されるフランジを持った結果としての先端部のバイパス移植片に望まれたスカート部かフランジの大きさと形状に基づいて選択されるように寸法が定められている。モールドチューブ132は、さらに、互いに同軸の関係であって各管腔138、137を持ったポート部材133、135を有している。付加的に、ポート部材133の管腔138は、直径的に比較的大きいかまたは比較的小さい管腔138の間で移行するテーパーを付けられた部分140を有していても良い。管腔138のテーパーを付けられた部分140は、対応するテーパーを付けられた領域が、本発明装置によって製造されたフランジを持った先端部バイパス移植片のフランジまたはスカートの基端部または先端部のいずれかに形成されることを可能にする。
【0042】
モールド装置100またはモールド装置130は、好ましくは、実質的な寸法の変化なしで1平方インチ当たり100ポンド以上の圧力に耐えることが可能なプラスチックポリマーか金属で形成されている。本発明にとって必要ではないが、モールド装置100およびモールド装置130は、また、少なくともポリテトラフルオロエチレンの結晶溶融点の温度すなわち327°Cを越える温度、および好ましくは、実質的な寸法の変化なしで450°C以上を含む温度にされることが可能なような高温材料で形成されていることがさらに好ましい。
【0043】
径方向へ拡張する力を、モールド装置100、130に存在するPTFEの長手方向の部分特にモールド空所部120、134に存在するPTFEの長手方向の部分に適用するいろいろな方法が使用し得る。本発明のために熟考された最良の態様によれば、モールド装置100、130内で、ePTFEの管状移植片に径方向の拡張力を適用するために、柔順な血管形成バルーンカテーテルが使用されてきた。焼結されたePTFEの管状移植片が、完全に組み立てられたモールド装置100の共通の細長い管腔122内にまたそれを通って係合されていた。血管形成バルーンカテーテルは、バルーンが、モールド空所部120に存在するePTFEの管状移植片の長手方向の部分内に位置されるまで、焼結されたePTFEの管状移植片の管腔を通過されていた。血管形成バルーンは、圧力注射器から血管形成バルーンにカテーテル管腔を通って動圧を水の本体部に適用することによって膨張された。血管形成バルーンの径方向への拡張は、バルーンがePTFEの管状移植片の管腔の壁部を衝撃する原因となり、ついで、モールド空所部120の適用された径方向の圧力の影響下のポリテトラフルオロエチレン材料マトリクスの変形によって径方向に拡張される。ePTFEの管状移植片の径方向への拡張が完了した後、径方向に拡張された流体圧力は、取り除かれ、バルーンはつぶれ、血管形成バルーンカテーテルはePTFEの管状移植片の管腔から取り除かれる。ePTFEの管状移植片がついで取り除かれ、フランジ付き先端バイパス移植片10の好ましい実施例に関して上述したように、両方のフランジを形成するために整形される。ePTFEの管状移植片をモールド装置100または130内で径方向に拡張する他の方法もまた、本発明において熟考されている。
【0044】
そのような他の方法は、限定することなしに次のものを含む:
a)非柔順なバルーンの形状がモールド空所部120、134に対応するような所に使用し得る非柔順な形状のバルーンの使用;
b)拡張マンドレルに結合される径方向に拡張する部材を有する拡張マンドレルの使用;
c)スパイダー部材の部分が適用された確実な圧力の影響下で中央のロッド部材から円周的に拡張し、ePTFEの移植片をモールド空所部120、124内に径方向に拡張するためにePTFEの移植片の管腔な表面を打つスパイダー部材の使用;
d)細長いロッド部材のコイルスプリングの部分が、細長いロッド部材のねじれ回転下でコイルが解かれ、ePTFEの移植片をモールド空所部120、124内に径方向に拡張するためにePTFEの移植片の管腔な表面を打つコイルスプリング部材の使用;または
e)先端部が第1のロッド部材に固定され、基端部が第1のロッドと集約的に同軸的に第2のロッド部材に固定され、第1のロッドと第2のロッド部材の軸方向への互いに関する運動が、網状のスプリング部材を長手方向に圧縮しまたは長手方向に拡張し、網状のスプリング部材を圧縮ストロークにおいて第1と第2のロッド部材から径方向に拡張し、軸的な拡張ストロークにおいて同心の径方向でない戻りで拡張位置になる網状のスプリング部材の使用。
【0045】
図14Aと14Bとは、本発明のモールド装置100を示していて、これは、モールド空所部120内での径方向の拡張前(図14A)と拡張後(図14B)における軸線的にモールド装置100内に位置したePTFEの管状移植片を持った内部モールド空所部120を有している。径方向へ拡大可能なバルーン146を有し、拡張に際しモールド空所部120の外径寸法を実質的にとる柔順なバルーンと、モールド空所部120の外径寸法に対応して形成された非柔順なバルーンとの何れでもあるバルーンカテーテル144は、バルーン146がモールド空所部120に存在するePTFEの管状移植片142の長手方向の領域に隣接しているように、ePTFEの管状移植片142の管腔と共に軸線的に位置している。バルーンカテーテル144の膨張は、典型的には、洗浄ポンプと水または食塩剤によってなされ、ePTFEの管状移植片の管腔表面と接触するようにバルーン146を径方向に拡張し、そして、十分な圧力が適用されるとモールド空所部120内のePTFE管状の移植片142の存在する細長い部分は径方向に拡張され、図14Bに示したように、モールド空所部120の外径寸法に一致するようになる。モールド空所部120内でePTFEの管状の移植片142の細長い部分を径方向に拡張するために必要な圧力は、選択されたePTFEの管状移植片の材料の性質に依ることがわかった。径方向の拡大圧力を支配するePTFEの管状移植片の材料の特性は、限定されないが、壁厚、多孔度、節間距離、破裂強度、径方向の引張り強度、および環帯(hoop)圧力を含む。モールド装置100と塞栓除去バルーンカテーテルを使用して導かれた実験は、モールド空所部120内へePTFEの管状移植片の細長い部分を径方向に拡大するために適用される圧力が、0.3から0.6mmの壁厚を有するePTFEのチューブの最初の直径のほぼ25%から約500%の間で径方向に拡張するePTFEの管状移植片に対し、ほぼ37°Cにおいて1平方インチ当たりほぼ26ポンドから約100ポンドであることがわかった。
【0046】
本発明のモールド装置100、130を使用してフランジ付き先端部バイパス移植片を製造するための方法150が、図15に依るフローチャートに示されている。所望のテーパー、フランジまたはスカートに対応する予め定めたモールド空所部形状を持ったモールドが、工程152で準備される。モールドは、予備組立されるかまたは上述したモールドチューブとモールドブロックから作られ工程154で組みたたられたモールドである。ついで、工程156において、ePTFEの管状移植片は、装着マンドレルに装着されるが、装着マンドレルは、選択されたePTFEの管状移植片が、装着マンドレルとePTFEの移植片との間の厳しい許容誤差をもって、移植片を装着マンドレルで実質的に径方向に拡張しないで、それに同心的に装着されることを許容する外径を有している。または、装着マンドレルは、ePTFEの管状移植片を予備拡張するために30%までePTFEの管状移植片の内径よりも大きい外径を有し、ePTFEの管状移植片をモールド空所部内に径方向に拡張するのに必要な圧力を比較的低く適用しても良い。さらに、装着マンドレルは、モールド装置内でのePTFEの管状移植片の径方向の更なる拡張を促進するために、モールド装置のテーパーをつけられた管腔に位置的に対応するテーパー部を有していても良い。
【0047】
ePTFEの管状移植片をその上に設けた装着マンドレルは、ついで、工程158においてモールド装置の軸の方向におかれ、そして、装着マンドレルは工程160において引き抜かれる。径方向に拡張する圧力は、工程170においてePTFEの管状移植片の少なくとも長手方向の部分をモールド装置のモールド空所部内に径方向に拡張するために、工程162においてePTFEの管状移植片に及ぼされる。上述したように、径方向に拡張する圧力は、工程164において適用された流体圧力、スパイダーのような機械的に変形させるマンドレル、工程166における径方向に拡張可能な網目、または、工程168における血管造影あるいは塞栓バルーンカテーテルのような柔順なあるいは形成された非柔順なバルーンでも良い。
【0048】
径方向に拡張する力は、ついで、工程172において除去され、モールドされた移植片は、モールドから引き抜かれ、工程174においてフランジまたはスカートの所望の形状を得るために、切除または他の手段で整形される。
【0049】
上述したものは本発明装置用の方法150の広い工程方法を記載したが、当業者の通常の技術の範囲内で、特定のモールド形状、径方向に拡張する圧力をePTFEの管状移植片に及ぼすための手段、ePTFEの管状移植片の所望の材料特性、および、その条件で方法が実行される温度と圧力を規定できることがわかる。このように、本発明は、その好ましい実施例に基づいて開示され、説明されてきたが、当業者は、添付した請求の範囲によってのみ限定される本発明の目的から逸脱することなく、材料選択、寸法の変更、および構造を理解し判断するであろう。
【図面の簡単な説明】
【図1】移植された大腿下腿部バイパス移植片を示す人の脚の末梢血管構造を表す線図。
【図2】従来のミラーカフを表す線図。
【図3】従来のテーラーパッチを表す線図。
【図4A】本発明によって製造され、血液透析アクセスすなわち大腿下腿部バイパス移植片を末梢動脈に吻合するための移植片を表す線図。
【図4B】本発明によって製造され、血液透析アクセスすなわち大腿下腿部バイパス移植片を末梢血管構造の断面に吻合するための移植片を表す斜視図。
【図5】本発明によって製造され、血液透析アクセスすなわち大腿下腿部バイパス移植片を末梢動脈に吻合するための移植片の他の構造を表す線図。
【図6A】本発明によって製造された血液透析アクセスすなわちAVPバイパスのための移植片を表す概略図。
【図6B】本発明によって製造された末梢血管構造の断面に吻合されたAVPバイパス用バイパス移植片を示す斜視図。
【図7】本発明によって製造された移植片を通る血流形状を表す線図。
【図8】移植片を製造する本発明装置の分解立面図。
【図9】移植片を形成するための本発明装置の第1のモールドブロックの第1の実施例を示す図8の9―9線に沿った断面図。
【図10】移植片を形成するための本発明装置の第1のモールドブロックの第2の実施例を示す図8の10―10線に沿った断面図。
【図11】移植片を形成するための本発明装置のモールドチューブを示す図8の11―11線に沿った断面図。
【図12】移植片を形成するための本発明装置の第2のモールドチューブを示す図8の12―12線に沿った断面図。
【図13】移植片を形成するための本発明装置のモールドの第2の実施例を示す立面図。
【図14A】本発明のモールド装置、モールド装置内の管状の移植片、およびモールド装置内の管状の移植片の径方向の拡張に先立つ管状の移植片内のバルーンカテーテルを表す長手方向の断面図。
【図14B】モールド装置内の管状の移植片の径方向の拡張後の管状の移植片を表す図14Aの本発明のモールド装置の長手方向の断面図。
【図15】本発明の好ましい実施例によって大腿先端部バイパス移植片を形成するための方法を表すフロー図。
【符号の説明】
10……(フランジ付き)移植片
11……移植片
12、14、28、30、32、34、36、40……フランジ
16、33、41……クロッチ角度
17……末梢端部(かかと領域)
18……末梢端部
19、21……つま先部
20……末梢端部
50……動脈―静脈パッチプロテーゼ(移植片)
52……移植片部材
53……軸線
56……スカート部
60……かかと角度
62……つま先角度
67……つま先部分(つま先領域)
69……かかと部分(かかと領域)
100、130……モールド装置
102……モールドチューブ
112……開口部
104……第1のブロック部材
105、107……管腔
106……第2のブロック部材

Claims (4)

  1. 第1と第2の開口端部を有するモールドチューブ部材と;
    モールドチューブ部材とその第1の開口端部で係合可能な中央の長手方向に向けられた管腔とモールド面を有する第1の管状のモールドブロック部材と;
    モールドチューブ部材とその第2の開口端部で係合可能な中央の長手方向に向けられた管腔とモールド面を有する第2の管状のモールドブロック部材と;
    互いに同軸的に整列された第1と第2の管状のモールドブロック部材の各中央の長手方向に向けられた管腔によって規定され、モールドチューブ部材の第1と第2の開口端部の間を伝達するための共通の管腔と;
    第1と第2の管状のモールドブロック部材の各モールド面と、モールドチューブ部材の円周部分によって規定されたモールド空所部と;および
    第1と第2のモールドブロック部材をモールドチューブ部材内の固定された位置に維持するための手段であって、各モールドチューブ部材を通った複数の開口部と、前記複数の開口部が互いに可変の整列が可能な第1のモールドブロック部材および第2のモールドブロック部材と、複数の開口部を通って係合可能なロックピン部材とをさらに備えた手段と;
    を備えたフランジを付けられた血管移植片を製造するための装置。
  2. 第1と第2のモールドブロック部材を維持するための手段は、さらに接着剤による接着である請求項1記載のフランジを付けられた血管移植片を製造するための装置。
  3. 第1のモールドブロック部材と第2のモールドブロック部材の少なくとも1つが、管腔の比較的大きな管腔の直径と比較的小さな管腔の直径との間で変位するテーパー部をさらに備えた請求項1記載のフランジを付けられた血管移植片を製造するための装置。
  4. 第1のモールドブロック部材と第2のモールドブロック部材の少なくとも1つが、管腔の比較的大きな管腔の直径と比較的小さな管腔の直径との間で変位するテーパー部をさらに備えた請求項2記載のフランジを付けられた血管移植片を製造するための装置。
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