JP3759266B2 - Zinc-deposited film and metallized film capacitor - Google Patents
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Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、亜鉛蒸着フィルムおよび金属化フィルムコンデンサに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
金属化フィルムコンデンサは、例えば図6に示すように、帯状のプラスチックフィルム1の片面にアルミニウムまたは亜鉛の蒸着膜2を形成してなる金属蒸着フィルム3を2枚重ねて円柱状に巻き、この円柱体の両端に電極5を溶射した構造を有するものであり、金属蒸着層が非常に薄いため、フィルムの弱点部で電圧破壊が生じたとしても、短絡電流によって破壊部周辺の金属蒸着層がジュール熱で蒸発し絶縁が回復する、いわゆる自己回復性を有するという特徴がある。
【0003】
ところで、金属蒸着フィルムに形成される金属薄膜としては、一般に、アルミニウムまたは亜鉛が用いられるが、アルミニウム薄膜はコロナ放電によりコロージョンが発生しやすく、電極面積の消失によりコンデンサ容量が漸次減少する傾向がある。また、アルミニウム薄膜の場合、コンデンサ素子の両端に溶射する亜鉛電極との接合性が悪く、電気抵抗の増大によりジュール熱が発生するため耐電流性が低いという欠点を有していた。
【0004】
一方、亜鉛薄膜は、コロージョン発生の問題がなく、溶射電極との接合性も良好であるが、耐食性(耐湿性)に劣る欠点を有しており、保管中に水分と反応して多孔質のZn(OH)2 を生じて腐食が進み、コンデンサ特性が劣化する問題がある。そこで、亜鉛薄膜を使用する場合には、亜鉛蒸着フィルムにワックスや絶縁油を含浸させる等の手段が採られていたが、コスト増を招く上、ワックスや絶縁油の含浸には数十時間程度の長時間を要して生産性が悪い問題があった。
【0005】
これらを解決する手段として、特開昭62−277712号公報には、プラスチックフィルムの表面に亜鉛蒸着層を形成し、さらに50〜1000オングストロームのSiOまたはSiO2 蒸着層を形成する構成が記載されている。このようなSiOまたはSiO2 蒸着層を形成することにより、亜鉛蒸着層の表面を保護して亜鉛薄膜のZn(OH)2 化を防止する効果が得られる。また、酸化珪素層の形成は亜鉛蒸着と同一ラインで連続して行うことができるため、生産性も高められる。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、最近では、金属化フィルムコンデンサの耐電圧特性などの信頼性を高めるために、金属蒸着フィルムの金属蒸着層をより薄くすることが望まれている。金属蒸着層を薄くすれば、重ね合わされた2枚のフィルムの金属蒸着層間に短絡が生じた場合にも、その短絡箇所の金属蒸着層がより少ないジュール熱で局部的に蒸発するようになり、金属蒸着フィルムにダメージを与えずに短絡が解消され易く、いわゆる自己回復性が向上することによりコンデンサの耐電圧特性が向上するばかりか、蒸着すべき金属量が少なくて済むため、製造コストが削減でき、製造効率も高めることができるからである。
【0007】
しかし、亜鉛を薄く蒸着しようとすると、蒸着膜を均一に形成することが困難になって、プラスチックフィルムへの亜鉛蒸着層の密着性が悪くなり、僅かな摩擦で亜鉛蒸着層が剥離する。さらに、亜鉛蒸着層上に形成した酸化珪素蒸着層による保護効果が得られ難くなり、保管している間に部分的に亜鉛酸化物へ転換されてしまい、予定通りの静電容量が得られない等の様々な問題が生じる。このため、現実には、亜鉛層を薄膜化した金属化フィルムコンデンサを製造することは困難だった。
【0008】
本発明は上記事情に鑑みてなされたもので、亜鉛蒸着層の表面抵抗値が均一で高いにも拘わらず、耐食性に優れた亜鉛蒸着フィルムおよび金属化フィルムコンデンサを提供することを課題としている。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明に係る亜鉛蒸着フィルムは、プラスチックフィルムと、前記プラスチックフィルムの表面に蒸着されたアルミニウム核と、前記アルミニウム核を蒸着した前記プラスチックフィルムの表面に蒸着された亜鉛層と、前記亜鉛層上に蒸着された酸化珪素層とを具備しており、前記アルミニウム核の付着量は0.3〜4.0mg/m 2 であり、前記亜鉛層の付着量は40〜500mg/m 2 であり、前記酸化珪素層の珪素付着量は0.4〜3.0mg/m 2 であることを特徴とする。
【0010】
また、本発明に係る金属化フィルムコンデンサは、積層された2種の金属蒸着フィルムを有する金属化フィルムコンデンサであって、前記金属蒸着フィルムの少なくとも一方は、プラスチックフィルムと、前記プラスチックフィルムの表面に蒸着されたアルミニウム核と、前記アルミニウム核を蒸着した前記プラスチックフィルムの表面に蒸着された亜鉛層と、前記亜鉛層上に蒸着された酸化珪素層とを具備しており、前記アルミニウム核の付着量は0.3〜4.0mg/m 2 であり、前記亜鉛層の付着量は40〜500mg/m 2 であり、前記酸化珪素層の珪素付着量は0.4〜3.0mg/m 2 であることを特徴とする。
【0011】
【発明の実施の形態】
図1は、本発明に係る亜鉛蒸着フィルムの一実施形態F1を示す断面拡大図である。この亜鉛蒸着フィルムF1は、プラスチックフィルム10と、このプラスチックフィルム10の表面に蒸着されたアルミニウム核12と、アルミニウム核12を蒸着したプラスチックフィルム10の表面に蒸着された亜鉛層14と、亜鉛層14上に蒸着された酸化珪素層16とを有している。
【0012】
プラスチックフィルム10の材質は限定されないが、一般的には、ポリエチレンテレフタレート,ポリプロピレン,ポリスチレン,ポリカーボネイト,ポリ4フッ化エチレン,ポリエチレン,ポリフェニレンサルファイド,ポリフッ化ビニリデンから選択される1種、または2種以上を積層して形成されたものなどが例示できる。プラスチックフィルム10の厚さは用途に応じて適宜設定されるべきであるが、一般的には0.5〜25μm、より好ましくは1.5〜16μmとされる。プラスチックフィルム10の平面形状は限定されない。
【0013】
アルミニウム核12は、プラスチックフィルム10の表面に、真空蒸着法、高周波マグネトロンスパッタ法等のスパッタ法により蒸着されたもので、その付着量は0.3〜4mg/m2 であることが望ましい。アルミニウム核12の付着量が0.3mg/m2 未満であると本発明の効果が得られ難い。また4mg/m2 より厚いと亜鉛層14の電気的特性に影響を与えるため好ましくない。一般的により好ましい範囲は0.6〜3.0mg/m2 であり、特に亜鉛層14を表面抵抗値15Ω/□以上にまで薄膜化するときには1.0〜3.0mg/m2 であることが望ましい。
【0014】
アルミニウムは活性が高いため、プラスチックフィルム10に対し上記のように微量だけ蒸着する場合であっても、プラスチックフィルム10の蒸着すべき面積の全面に亘って、ごく小さな粒子として均一に付着させることができる。このようにアルミニウム核12が均一分散されているプラスチックフィルム10上に亜鉛を蒸着すると、極薄く蒸着する場合にも均一な膜を形成しやすくなる。
【0015】
これに対し、アルミニウム核12を形成しないで亜鉛を蒸着した場合には、厚さが均一かつ薄い亜鉛層14を形成することが困難である。その理由は、亜鉛粒子はプラスチックフィルム10に対する馴染みが悪く、プラスチックフィルム10上に固着しにくいばかりか、プラスチックフィルム10上に着地した亜鉛粒子がフィルム表面を移動し、局部的に凝集が起こって膜が均一に成長しないためと考えられる。本発明者らは、アルミニウム以外の、例えば銅核を蒸着した後に金属蒸着層を形成することも従来から試みているが、銅核を使用した場合も、アルミニウム核12の場合のように均一かつ薄い亜鉛層14を形成することは困難で、亜鉛層14の耐食性も低下する。この原因は明らかではないが、アルミニウムの方が、プラスチックフィルム10上に付着する金属核の平均粒子径が小さく、核の発生個数が多く、さらに核の分散性もよいから、亜鉛層14の膜構造が整ってその活性点密度が減少するためではないかと推測している。また、アルミニウム核12の方が蒸着時の熱容量が小さいため、プラスチックフィルム10への熱ダメージも少ないため、この点も上述した効果の差となって現れている可能性がある。
【0016】
亜鉛層14の付着量は一般に40〜500mg/m2 であることが好ましく、より好ましくは70〜300mg/m2 とされる。特に、表面抵抗値15Ω/□以上を得る場合には、40〜90mg/m2 であることが望ましい。なお、実用可能な亜鉛層14の表面抵抗値の上限は40Ω/□程度と考えられる。亜鉛層14の蒸着方法は特に限定されず、真空蒸着法や高周波マグネトロンスパッタ法等のスパッタ法が用いられる。
【0017】
酸化珪素層16はSiOxで形成されたもので、xの値は0.5〜2.0であることが好ましい。xが前記範囲よりも小さくても逆に大きくても、バリア性が悪化する。より好ましくはx=1.0〜2.0、さらに好ましくは1.5〜1.8である。
【0018】
酸化珪素層16の付着量は珪素の付着量として、一般に0.4〜3.0mg/m2 であることが好ましく、より好ましくは0.8〜1.5mg/m2 とされる。特に、亜鉛層14の表面抵抗値を15Ω/□以上にする場合には1.0〜1.5mg/m2 であることが望ましい。酸化珪素層16の付着量が0.4mg/m2 未満であると、アルミニウム核12との相乗効果による酸化防止効果が得られ難くなり、亜鉛層14の耐食性が低下する。酸化珪素層16の厚さが珪素付着量で2.0mg/m2 (質量膜厚=9オングストローム程度)にまで薄いと、酸化珪素層16は緻密な膜ではなく多孔膜になると考えられる。このような多孔膜であっても耐蝕性向上効果が得られる理由は、亜鉛層14の表面の活性点(キンク,ステップ等)に酸化珪素が選択的に結合し、亜鉛酸化物、水酸化物の生成・成長を防止するためであると考えられる。本発明においては、アルミニウム核12の採用により亜鉛層14の膜構造が整うため、表面の活性点密度が減少し、酸化珪素層16によって効果的に活性点をマスクするためではないかと推測される。
【0019】
一方、本発明に係る金属化フィルムコンデンサは、以上のような構造からなる亜鉛蒸着フィルムF1を使用したことを特徴とするものであり、その点を除いては従来と同様の構造であってよい。すなわち、巻回型コンデンサの場合には、図4に示すように、上記亜鉛蒸着フィルムF1を2枚重ねるか、もしくは上記亜鉛蒸着フィルムF1上に他種の金属蒸着フィルムF2を重ねて巻き、その巻回体の両端に電極54,56を溶射等により接合し、これら電極54,56からの端子を形成し、さらに全体を覆う外装を形成する。一方、積層型コンデンサの場合には、上記亜鉛蒸着フィルムF1を多数枚積層するか、あるいは他種の金属蒸着フィルムと交互に積層して、フィルム一枚毎に互い違いに2種の電極を接続し、外装を設ければよい。
【0020】
次に、上記構成からなる亜鉛蒸着フィルムの製造方法の一例を説明する。
図2は、この方法に使用できる製造装置の一例を示す。符号20は真空容器であり、その内部は図示しない真空ポンプによって減圧され、必要に応じて各種ガスを導入できる。真空容器20内には、プラスチックフィルム10を繰り出すアンコイラ22と、蒸着処理後の金属蒸着フィルムF1を巻き取るリコイラ44とが配置されている。アンコイラ22に巻かれているプラスチックフィルム10は実際にコンデンサを製造するときのフィルム幅の複数倍以上に設定され、蒸着工程が完了してから必要な幅に切断してコンデンサ製造に供される。本発明でいう亜鉛蒸着フィルムは、幅の広い状態および切断後の幅の狭い状態のいずれも含むものとする。
【0021】
アンコイラ22とリコイラ44との間には、フィルム10をそれぞれ案内するように、ロール24、第1冷却ロール26、ロール36、第2冷却ロール38およびロール42が順に配置され、いずれも図示しない駆動手段によりフィルム走行と同期して回転駆動される。
【0022】
ロール24と第1冷却ロール26の間には、フィルム10に対向してオイル付着装置28が配置されている。オイル付着装置28は、プラスチックフィルム10の表面にマージン形状をなすようにマスクオイルを付着させるものであり、この例の場合には、図3に示すように横マージン18および縦マージン19を形成すべき部分にマスクオイルを付着させる。オイル付着装置28は一種の印刷装置であるが、一般的な直接印刷装置ではなく、プラスチックフィルム10に傷を付けないように、プラスチックフィルム10との間に間隙を空けて非接触でマスクオイルまたはその蒸気を噴き付けて印刷する形式のものが好ましい。
【0023】
オイル付着装置28内には、パーフルオロアルキルポリエーテル等のフッ素系化合物のオイルが入れられており、このオイルを霧化または蒸気化して噴出し、プラスチックフィルム10の金属蒸着すべき面に付着させることにより、プラスチックフィルム10の表面に、図3に示すマージン18,19に対応する形状のオイル付着部を形成する。これにより、オイル付着部へのアルミニウム核12および亜鉛層14の蒸着が阻止されるため、金属等が蒸着されていないマージン18,19が形成される。ただし、マージン18,19の形状は所望の製品規格に応じて適宜変更してよいし、必要であればマージン部を有しない亜鉛蒸着フィルムとしてもよい。
【0024】
第1冷却ロール26および第2冷却ロール38は、いずれも内部に冷媒流体が循環される冷媒路を有し、図示しない冷媒供給手段からフレオン等の冷媒が連続供給されることにより、表面温度が常に、例えば−10〜−30℃となるように冷却されている。但し、この温度範囲に限定されることはない。
【0025】
真空容器20の下部は水平な隔壁30により仕切られている。この隔壁30には開口部30A,30Bが形成され、これら開口部30A,30Bを通じて、第1冷却ロール26および第2冷却ロール38の下端部が、隔壁30の下方へ突き出されている。これらの突き出された第1冷却ロール26および第2冷却ロール38の下端部にはプラスチックフィルム10が密着され、同期して搬送されるようになっている。
【0026】
第1冷却ロール26の下端部のフィルム走行方向上流側部分と対向する位置には、核付着装置32が第1冷却ロール26へ向けて配置されている。核付着装置32は、アルミニウムをプラスチックフィルム10に微量蒸着してアルミニウム核12を形成するためのものであり、真空蒸着法またはスパッタリング法等によりアルミニウム蒸気を発生させ、プラスチックフィルム10の全面に亙って均一に吹き付ける。これにより、オイル付着部を除いた部分の全面にアルミニウム核12が均一な密度で付着する。なお、核付着装置32による好適なアルミニウム蒸着量は前述したとおりである。
【0027】
第1冷却ロール26の下端部の下流側部分と対向する位置には、亜鉛蒸発源34が第1冷却ロール26へ向けて配置されている。亜鉛蒸発源34は、亜鉛をプラスチックフィルム10に一定の厚さに蒸着するためのものであり、真空蒸着法またはスパッタリング法により亜鉛蒸気を発生させ、プラスチックフィルム10の全幅に亙って均一に付着させる。亜鉛蒸発源34による好適な亜鉛蒸着量は前述したとおりである。
【0028】
第2冷却ロール38のフィルム巻回面と対向する位置には、酸化珪素蒸発源40がプラスチックフィルム10に向けて配置されている。酸化珪素蒸発源40はSiOxを蒸発させて亜鉛層14上に蒸着するためのもので、好適な蒸着量や好適なxの値は前述したとおりである。
【0029】
次に、上記装置を用いた金属蒸着フィルムおよび金属化フィルムコンデンサの製造方法を説明する。
アンコイラ22、ロール24,36,42、第1冷却ロール26、第2冷却ロール38、およびリコイラ44を全て同期させて回転駆動する。アンコイラ22から繰り出されたプラスチックフィルム10には、まずオイル付着装置28から噴出するオイルまたはその蒸気が吹き付けられ、マージン形状をなすオイル付着部が形成される。
【0030】
オイルが付着したプラスチックフィルム10は、第1冷却ロール26に巻回され、この巻回部分の上流位置において、核付着装置32により微量のアルミニウム核12が均一な密度で蒸着され、続いて、亜鉛蒸発源34により一定厚さの亜鉛層14が形成される。このとき、オイル付着部にはアルミニウム核12および亜鉛層14は蒸着されない。
【0031】
亜鉛層14が形成されたプラスチックフィルム10は、強制冷却されている第2冷却ロール38に巻かれ、これに密着した状態で酸化珪素蒸発源40から蒸気を吹き付けられ、亜鉛層14上に酸化珪素層16が形成される。酸化珪素層16が形成され完成した亜鉛蒸着フィルムF1はリコイラ44に順次巻き取られていく。
【0032】
リコイラ44に巻き取られた亜鉛蒸着フィルムF1の一例を図3に示す。この例では、プラスチックフィルム10の長手方向に延びる縦マージン19、および幅方向へ延びる横マージン18を形成しているが、本発明ではこのマージン形状に限定される必要はない。必要に応じては、マージンを形成しないことも可能である。
【0033】
図3の亜鉛蒸着フィルムF1はスリッタ装置にかけられ、製造すべきコンデンサの寸法に合うように、図3中の一点鎖線に沿って裁断される。裁断された細幅の亜鉛蒸着フィルムF1はそれぞれボビンに巻回されたうえ、コンデンサ製造工程に移される。
【0034】
コンデンサ製造工程では、図4に示すように、亜鉛蒸着フィルムF1と、第2の金属蒸着フィルムF2とを金属蒸着面を同じ側へ向けて重ねる。金属蒸着フィルムF2は亜鉛蒸着フィルムF1と全く同じものであってもよいし、亜鉛蒸着フィルムF1から横マージン18を省いたものであってもよいし、他種の金属を蒸着したものであってもよいが、幅は互いにほぼ同じであることが好ましい。重ねた状態において、各フィルムF1,F2に形成されている縦マージン19,52は互いに反対側に配置し、かつ、相手のフィルムの金属蒸着面の内側にずれて位置するようにする。これは、溶射等により電極54,56を各蒸着層14,50にそれぞれ接合する便宜のためである。
【0035】
なお、亜鉛蒸着フィルムF1に図4に示す形状のマージン18,19を形成した場合には、本発明との組み合わせにより以下のような利点が得られる。すなわち、このようなマージン形状を採用した場合、金属蒸着層が多数の矩形状に分割されるため、いずれかの矩形領域において、自己回復性では回復しきれない短絡が生じた場合には、金属蒸着層の矩形領域と電極54との境界部分Hがジュール熱で蒸発し、いわばヒューズが切れた状態となって短絡箇所への電流供給が停止される。ところが実際には、このマージン形状は専らアルミニウム蒸着層を使用する場合に限られていた。というのも、このマージン形状では、図5のようなヒューズ部60に比して、ヒューズ部Hの幅が大きいため、薄膜化しにくい亜鉛層では十分なヒューズ効果が得られなかったからである。ところが、本発明を採用すると、亜鉛層14を薄膜化することが容易になるため、このようなマージン形状を採用しても、信頼に足るヒューズ効果を得ることができる。そして、このマージン形状は、ヒューズ効果を奏する他のマージン形状よりも製造コストが安いという利点を有している。
【0036】
一方、図5は、図4で用いた亜鉛蒸着フィルムF1にさらに縦マージン58を追加形成し、これによりヒューズ部60を形成したものである。このようなマージン形状ももちろん採用可能である。
【0037】
図4または図5のように重ねられたフィルムF1,F2は、例えば円柱状に巻かれ、その両端に電極54,56が形成され、それらにリード等の端子が接続され、さらに絶縁体からなる外装が形成されて金属化フィルムコンデンサが完成する。電極54,56の形成は、一般に金属、特に亜鉛を溶射して行われる。本発明の亜鉛蒸着フィルムは亜鉛層14を有するものであるから、溶射された亜鉛電極との接合性が良好で、接合不良による電気抵抗が生じにくい利点も有する。
【0038】
上記構成からなる亜鉛蒸着フィルムによれば、アルミニウム核12の作用により、亜鉛層14を薄くかつ均一な厚さに蒸着することができるから、亜鉛層14の表面抵抗値を高めることが可能で、コンデンサの自己回復性を従来品よりも高めることが容易となる。また、アルミニウム核12を形成したことにより、亜鉛層14が薄い場合にも亜鉛層14の構造が比較的整ったものとなるので、亜鉛層14の表面に存在する結晶構造の乱れた活性点(キンクやステップなど)の分布密度を低下することができると考えられる。これにより、酸化珪素層16によって亜鉛層14の表面活性点を効果的にマスクすることができるから、亜鉛層14が薄いにもかかわらず亜鉛層14の耐食性を十分に高めることが可能である。したがって、亜鉛層14を薄くした場合に問題だったZn(OH)2 化による亜鉛層14の面積減少を防ぐことができ、保管中の容量変化が防止できる。
【0039】
すなわち、本発明では、アルミニウム核12および酸化珪素層16の相乗効果により、製品として要求される亜鉛層14の耐食性を満たしつつ、亜鉛層14を薄肉化してその表面抵抗を高めることが可能となるので、耐食性および自己回復性の両立が図れる。また、亜鉛層14および酸化珪素層16の蒸着量が少なくて済むので、蒸着に要するコストを低減できるばかりか、蒸着工程におけるラインスピードを増して生産性を高めることも可能である。
【0040】
【実施例】
[実験1]
プラスチックフィルム上にアルミニウム核を付着させたのちに亜鉛層を蒸着形成し、さらに酸化珪素層を形成した本発明の実施例1〜6および比較例1,2と、アルミニウム核の代わりに銅核を付着させたのちに亜鉛層を蒸着形成し、さらに酸化珪素層を形成した比較例3〜8とをそれぞれ作成し、亜鉛層の密着性および高湿度高温環境下での亜鉛層の表面抵抗の変化率を計測した。なお、蒸着核をまったく付着させずに亜鉛層を蒸着形成することは困難である。
【0041】
実験に使用したプラスチックフィルムは、幅30mm×厚さ5μmのポリプロピレンフィルムである。核の付着方法、亜鉛層および酸化珪素層の形成方法は真空蒸着法を用いた。
【0042】
亜鉛層の密着性は、作成した亜鉛蒸着フィルムを室温の大気中に24時間放置した後、酸化珪素層上からセロテープを貼り、それを直後に引き剥がすことにより評価した。評価基準は、「4」では剥がれた部分の面積が貼付面積の20%未満、「3」では剥がれた部分の面積が貼付面積の20%以上50%未満、「2」では剥がれた部分の面積が貼付面積の50%以上80%未満、「1」では剥がれた部分の面積が80%以上であることを意味する。
【0043】
亜鉛層の表面抵抗の変化率は、以下のようにして求めた。まず、作成した亜鉛蒸着フィルムから長さ10mの試験品を複数切り、同種のフィルム同士をそれぞれ2枚重ねたうえ、巻き取り装置を用いて円柱状に巻き、サンプルとした。次いで、これらサンプルを70℃×80%RH×12時間の条件で高温多湿環境に置き、この劣化試験前後の亜鉛層の表面抵抗を、横河電機株式会社製「組試験器L−3型」を用いてJIS C−2316の8(7)に基づいて計測した。測定した表面抵抗値から、以下の式に基づいて表面抵抗の変化率を計算した。
表面抵抗の変化率(%)=
([試験後の抵抗値]/[試験前の抵抗値]−1)×100
実験1の結果を表1に示す。
【0044】
【表1】
【0045】
[実験2]
プラスチックフィルム上にアルミニウム核を付着させたのちに亜鉛層を蒸着形成し、さらに酸化珪素層を形成した本発明の構成において、アルミニウム核の付着量と亜鉛層の付着量とを一定にしたまま、酸化珪素層の厚さを変化させて、亜鉛層の表面抵抗の変化率を実験1と同様に測定した。結果を表2に示す。
【0046】
【表2】
【0047】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明に係る亜鉛蒸着フィルムおよび金属化フィルムコンデンサによれば、アルミニウム核および酸化珪素層の相乗効果により、製品として要求される亜鉛層の耐食性を満たしつつ、亜鉛層を薄肉化することが可能となるので、良好な自己回復性が得られるという優れた効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明に係る亜鉛蒸着フィルムの一実施形態を示す断面拡大図である。
【図2】 同亜鉛蒸着フィルムの製造に使用される装置の一例を示す側面図である。
【図3】 本発明に係る亜鉛蒸着フィルムの一実施形態の平面図である。
【図4】 本発明に係る金属化フィルムコンデンサの一実施形態の展開図である。
【図5】 本発明に係る金属化フィルムコンデンサの他の実施形態の展開図である。
【図6】 従来の金属化フィルムコンデンサを一部分解した斜視図である。
【符号の説明】
F1 亜鉛蒸着フィルム
10 プラスチックフィルム
12 アルミニウム核
14 亜鉛層
16 酸化珪素層
18,19 マージン[0001]
BACKGROUND OF THE INVENTION
The present invention relates to a zinc vapor deposited film and a metallized film capacitor.
[0002]
[Prior art]
For example, as shown in FIG. 6, the metallized film capacitor has two metal vapor-deposited
[0003]
By the way, as the metal thin film formed on the metal vapor-deposited film, aluminum or zinc is generally used, but the aluminum thin film is likely to be corroded by corona discharge, and the capacitor capacity tends to gradually decrease due to the disappearance of the electrode area. . In addition, the aluminum thin film has the disadvantage that the bonding property with the zinc electrode sprayed on both ends of the capacitor element is poor, and the current resistance is low because Joule heat is generated due to an increase in electric resistance.
[0004]
On the other hand, the zinc thin film has no problem of corrosion occurrence and has good bondability with the thermal spray electrode, but has a defect that it is inferior in corrosion resistance (moisture resistance). It reacts with moisture during storage and is porous. There is a problem that corrosion of the Zn (OH) 2 occurs and the capacitor characteristics deteriorate. Therefore, when using a zinc thin film, measures such as impregnating a zinc vapor-deposited film with wax or insulating oil have been taken, but this increases the cost and impregnation with wax or insulating oil takes several tens of hours. It took a long time and there was a problem of poor productivity.
[0005]
As means for solving these problems, Japanese Patent Laid-Open No. 62-277712 describes a structure in which a zinc vapor deposition layer is formed on the surface of a plastic film, and further a 50 to 1000 angstrom SiO or SiO 2 vapor deposition layer is formed. Yes. By forming such a SiO or SiO 2 vapor deposition layer, the effect of protecting the surface of the zinc vapor deposition layer and preventing the zinc thin film from becoming Zn (OH) 2 can be obtained. Further, since the silicon oxide layer can be continuously formed on the same line as the zinc vapor deposition, the productivity can be improved.
[0006]
[Problems to be solved by the invention]
By the way, recently, in order to improve reliability such as withstand voltage characteristics of the metallized film capacitor, it is desired to make the metal vapor deposition layer of the metal vapor deposition film thinner. If the metal vapor deposition layer is made thin, even if a short circuit occurs between the metal vapor deposition layers of the two superimposed films, the metal vapor deposition layer at the short circuit point will locally evaporate with less Joule heat, Short circuit is easily eliminated without damaging the metal vapor deposition film, so that the so-called self-recovery improves not only the withstand voltage characteristics of the capacitor, but also reduces the amount of metal to be deposited, thus reducing the manufacturing cost. This is because the manufacturing efficiency can be increased.
[0007]
However, when zinc is thinly deposited, it becomes difficult to form a vapor deposition film uniformly, the adhesion of the zinc vapor deposition layer to the plastic film is deteriorated, and the zinc vapor deposition layer is peeled off by slight friction. Furthermore, it becomes difficult to obtain a protective effect by the silicon oxide vapor deposition layer formed on the zinc vapor deposition layer, and it is partially converted to zinc oxide during storage, and the planned capacitance cannot be obtained. Various problems occur. For this reason, in reality, it has been difficult to manufacture a metallized film capacitor having a thin zinc layer.
[0008]
The present invention has been made in view of the above circumstances, and an object thereof is to provide a zinc-deposited film and a metallized film capacitor excellent in corrosion resistance despite the fact that the surface resistance value of the zinc-deposited layer is uniform and high.
[0009]
[Means for Solving the Problems]
A zinc-deposited film according to the present invention includes a plastic film, an aluminum nucleus deposited on the surface of the plastic film, a zinc layer deposited on the surface of the plastic film on which the aluminum nucleus is deposited, and the zinc layer. A deposited silicon oxide layer , the aluminum core adhesion amount is 0.3-4.0 mg / m 2 , the zinc layer adhesion amount is 40-500 mg / m 2 , silicon deposition amount of the silicon oxide layer is characterized by a 0.4~3.0mg / m 2.
[0010]
Further, the metallized film capacitor according to the present invention is a metallized film capacitor having two kinds of laminated metal vapor deposited films, and at least one of the metal vapor deposited films is formed on a plastic film and the surface of the plastic film. and aluminum nuclei deposited, the zinc layer deposited on the surface of the plastic film on which aluminum nuclei was deposited, which comprises a vapor-deposited silicon oxide layer on said zinc layer, deposition amount of the aluminum core Is 0.3 to 4.0 mg / m 2 , the adhesion amount of the zinc layer is 40 to 500 mg / m 2 , and the silicon adhesion amount of the silicon oxide layer is 0.4 to 3.0 mg / m 2 . It characterized in that there.
[0011]
DETAILED DESCRIPTION OF THE INVENTION
FIG. 1 is an enlarged cross-sectional view showing an embodiment F1 of the zinc vapor-deposited film according to the present invention. The zinc vapor-deposited film F1 includes a plastic film 10, an
[0012]
The material of the plastic film 10 is not limited, but generally, one or two or more selected from polyethylene terephthalate, polypropylene, polystyrene, polycarbonate, polytetrafluoroethylene, polyethylene, polyphenylene sulfide, and polyvinylidene fluoride are used. The thing formed by laminating | stacking etc. can be illustrated. The thickness of the plastic film 10 should be appropriately set according to the use, but is generally 0.5 to 25 μm, more preferably 1.5 to 16 μm. The planar shape of the plastic film 10 is not limited.
[0013]
The
[0014]
Since aluminum is highly active, even if only a small amount is deposited on the plastic film 10 as described above, it can be uniformly deposited as very small particles over the entire area of the plastic film 10 to be deposited. it can. Thus, when zinc is vapor-deposited on the plastic film 10 in which the
[0015]
On the other hand, when zinc is deposited without forming the
[0016]
In general, the adhesion amount of the
[0017]
The
[0018]
The adhesion amount of the
[0019]
On the other hand, the metallized film capacitor according to the present invention is characterized by using the zinc vapor-deposited film F1 having the structure as described above, and may have the same structure as that of the prior art except for this point. . That is, in the case of a wound type capacitor, as shown in FIG. 4, two zinc vapor deposition films F1 are stacked or another metal vapor deposition film F2 is wound on the zinc vapor deposition film F1,
[0020]
Next, an example of the manufacturing method of the zinc vapor deposition film which consists of the said structure is demonstrated.
FIG. 2 shows an example of a manufacturing apparatus that can be used in this method.
[0021]
Between the
[0022]
An
[0023]
In the
[0024]
Each of the
[0025]
The lower part of the
[0026]
At a position facing the upstream side portion in the film running direction of the lower end portion of the
[0027]
A
[0028]
A silicon
[0029]
Next, the manufacturing method of the metal vapor deposition film and metallized film capacitor | condenser using the said apparatus is demonstrated.
The
[0030]
The plastic film 10 to which oil is adhered is wound around the
[0031]
The plastic film 10 on which the
[0032]
An example of the zinc vapor deposition film F1 wound around the
[0033]
The zinc vapor-deposited film F1 in FIG. 3 is applied to a slitter device, and is cut along a one-dot chain line in FIG. 3 so as to match the size of the capacitor to be manufactured. The narrow zinc vapor-deposited film F1 thus cut is wound around a bobbin and then transferred to a capacitor manufacturing process.
[0034]
In the capacitor manufacturing process, as shown in FIG. 4, the zinc vapor deposition film F1 and the second metal vapor deposition film F2 are overlapped with the metal vapor deposition surface facing the same side. The metal vapor-deposited film F2 may be the same as the zinc vapor-deposited film F1, may be a film obtained by omitting the
[0035]
In addition, when the
[0036]
On the other hand, FIG. 5 shows a case in which a
[0037]
The films F1 and F2 stacked as shown in FIG. 4 or 5 are wound, for example, in a columnar shape,
[0038]
According to the zinc vapor deposition film having the above-described configuration, the
[0039]
That is, in the present invention, the synergistic effect of the
[0040]
【Example】
[Experiment 1]
Examples 1 to 6 and Comparative Examples 1 and 2 of the present invention, in which a zinc layer was deposited by depositing an aluminum nucleus on a plastic film and a silicon oxide layer was further formed, and a copper nucleus was used instead of the aluminum nucleus After the deposition, a zinc layer was formed by vapor deposition, and further, Comparative Examples 3 to 8 each having a silicon oxide layer were formed, and the adhesion of the zinc layer and the change in the surface resistance of the zinc layer under a high humidity and high temperature environment The rate was measured. It is difficult to form a zinc layer without vapor deposition nuclei.
[0041]
The plastic film used in the experiment is a polypropylene film having a width of 30 mm and a thickness of 5 μm. Vacuum deposition was used as the method for depositing the nuclei and forming the zinc layer and the silicon oxide layer.
[0042]
The adhesion of the zinc layer was evaluated by leaving the prepared zinc vapor-deposited film in the air at room temperature for 24 hours, applying a cellophane tape on the silicon oxide layer, and peeling it off immediately. Evaluation criteria are “4” where the peeled area is less than 20% of the applied area, “3” is the peeled area of 20% to less than 50% of the applied area, and “2” is the peeled area. Means 50% or more and less than 80% of the sticking area, and “1” means that the area of the peeled portion is 80% or more.
[0043]
The rate of change in the surface resistance of the zinc layer was determined as follows. First, a plurality of test pieces having a length of 10 m were cut from the prepared zinc vapor-deposited film, two films of the same kind were stacked on each other, and the sample was wound into a column using a winding device. Next, these samples were placed in a high-temperature and high-humidity environment under the conditions of 70 ° C. × 80% RH × 12 hours, and the surface resistance of the zinc layer before and after this deterioration test was determined as “Kumi Tester L-3” manufactured by Yokogawa Electric Corporation. Was measured based on 8 (7) of JIS C-2316. From the measured surface resistance value, the change rate of the surface resistance was calculated based on the following formula.
Change rate of surface resistance (%) =
([Resistance value after test] / [Resistance value before test] -1) × 100
The results of Experiment 1 are shown in Table 1.
[0044]
[Table 1]
[0045]
[Experiment 2]
In the configuration of the present invention in which a zinc layer is deposited after forming an aluminum nucleus on a plastic film and a silicon oxide layer is further formed, the amount of aluminum nucleus and the amount of zinc layer are kept constant, The change rate of the surface resistance of the zinc layer was measured in the same manner as in Experiment 1 by changing the thickness of the silicon oxide layer. The results are shown in Table 2.
[0046]
[Table 2]
[0047]
【The invention's effect】
As described above, according to the zinc vapor deposition film and the metallized film capacitor according to the present invention, the zinc layer is thinned while satisfying the corrosion resistance of the zinc layer required as a product by the synergistic effect of the aluminum core and the silicon oxide layer. Therefore, there is an excellent effect that a good self-recovering property can be obtained.
[Brief description of the drawings]
FIG. 1 is an enlarged cross-sectional view showing an embodiment of a zinc vapor deposition film according to the present invention.
FIG. 2 is a side view showing an example of an apparatus used for producing the zinc vapor-deposited film.
FIG. 3 is a plan view of an embodiment of the zinc vapor deposition film according to the present invention.
FIG. 4 is a development view of one embodiment of a metalized film capacitor according to the present invention.
FIG. 5 is a development view of another embodiment of the metallized film capacitor according to the present invention.
FIG. 6 is a partially exploded perspective view of a conventional metallized film capacitor.
[Explanation of symbols]
F1 Zinc vapor deposition film 10
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