JP3718149B2 - インクジェット記録紙用塗工剤およびそれを塗布したインクジェット記録紙 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明はインクジェット記録紙用塗工剤およびそれを塗布したインクジェット記録紙に関する。
【0002】
【従来の技術】
インクジェット記録は、記録装置が簡単で、普通紙や塗工紙が使用でき、しかもカラー化が容易で、美麗なフルカラーの画像や文字図形の記録が容易にできるという特徴を有しており、今日急激に広まりつつある。
【0003】
インクジェット記録では一般に染料を着色剤とする水性インクが使用されているが、この水性インクは媒体として水を使用するためインク定着性(インク乾燥性)が劣るという問題があり、また染料を使用するため記録した画像の耐水性が劣るなどの問題がある。これらの問題の解決のため、紙基材に各種薬剤を塗工することが行われており、たとえば、ジシアンジアミド縮合物、ポリアミン、ポリエチレンイミンなどのカチオン性樹脂を塗工すること提案されている。このようなカチオン性樹脂を塗工したインクジェット記録紙に水性インクで記録した場合、インク中の染料と塗工層のカチオン性樹脂が結合して耐水性が向上されることを期待したものであるが、インク定着性、耐水性とも充分とはいえない。
【0004】
また、特許第2845832号公報には、カチオン性ポリウレタン樹脂をインクジェット記録紙用塗工剤として用いることが提案されているが、具体的に開示されているカチオン性ポリウレタン樹脂は、重量平均分子量が300〜5000のジオールと、三級アミノ基を有するジオールと、脂肪族系ジイソシアネートとを反応させてウレタンプレポリマーを得、ついで該ウレタンプレポリマー中の三級アミノ基を酸で中和してカチオン性ウレタンプレポリマーとし、その後該カチオン性ウレタンプレポリマーを水で鎖伸長して、重量平均分子量2千〜5万のカチオン性ポリウレタン樹脂としたものである。
【0005】
このカチオン性ポリウレタン樹脂では、インク定着性、耐水性はかなり改善されているが、塗工面を擦ると傷がつきやすい(耐擦過性が劣る)、水性インクで印刷すると記録紙が延びる(印刷時の寸法安定性が劣る)、印刷物を高温で保存すると画像が変色する(耐熱性が劣る)、印刷面を有機溶剤で擦ると画像が脱落する(耐溶剤性が劣る)、無機充填剤に対するバインダー能力に劣るなどの問題があり、合成面でも、反応性の高い芳香族系イソシアネートを使用する場合や、三級アミノ基含有ジオールの使用量が多い場合などにおいて、ウレタン化反応における副反応を抑制できず、反応制御が困難になり、異常増粘による乳化不良やウレタン合成段階でゲル化を生じるなどの惧れがあり、これらの点の改善が望まれている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、前記従来技術の問題点に鑑み、インク定着性、耐水性はもとより、耐擦過性、印刷時の寸法安定性、耐熱性、耐溶剤性、無機充填剤に対するバインダー能力などがともに優れているカチオン性ポリウレタン樹脂からなるインクジェット記録紙用塗工剤を提供することを課題とする。
【0007】
さらに本発明は、反応性の高い芳香族系イソシアネートを使用する場合や、三級アミノ基含有ジオールの使用量が多い場合などにおいても、安定して製造ができるカチオン性ポリウレタン樹脂からなるインクジェット記録紙用塗工剤を提供することを課題とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明はつぎのインクジェット記録紙用塗工剤およびそれを塗布したインクジェット記録紙を提供する。
【0009】
(1)(A)有機ポリイソシアネートから誘導される構成単位と、(B)NCO基と反応性のある活性水素原子を少なくとも2個有するポリヒドロキシ化合物から誘導される構成単位と、(C)分子中に酸で中和するかまたは四級化剤で四級化した三級アミノ基を有し、かつ、NCO基と反応性のある活性水素原子を少なくとも2個有するポリヒドロキシ化合物から誘導される構成単位とからなり、分岐密度が1000原子量当たり0.08〜0.25であるカチオン性ウレタンプレポリマーを水により鎖伸長したカチオン性水系ポリウレタン樹脂のエマルジョンを含有することを特徴とするインクジェット記録紙用塗工剤。
【0010】
(2)ポリヒドロキシ化合物(B)とポリヒドロキシ化合物(C)の平均活性水素濃度が100〜800(mgKOH/g)である前記(1)記載のインクジェット記録紙用塗工剤。
【0011】
(3)ポリヒドロキシ化合物(B)の重量平均分子量が300未満である前記(1)または(2)記載のインクジェット記録紙用塗工剤。
【0012】
(4)前記カチオン性水系ポリウレタン樹脂のエマルジョンの平均粒子径が0.001〜0.1μmである前記(1)〜(3)のいずれかに記載のインクジェット記録紙用塗工剤。
【0013】
(5)前記カチオン性ウレタンプレポリマーが、有機ポリイソシアネート(A)、ポリヒドロキシ化合物(B)、分子中に三級アミノ基を有し、かつ、NCO基と反応性のある活性水素原子を少なくとも2個有するポリヒドロキシ化合物(Cp)とを反応させてウレタンプレポリマーを得、ついで該ウレタンプレポリマーの三級アミノ基を酸で中和するかまたは四級化剤で四級化して得られたものである前記(1)〜(4)のいずれかに記載のインクジェット記録紙用塗工剤。
【0014】
(6)有機ポリイソシアネート(A)が芳香族ポリイソシアネートである場合、前記カチオン性ウレタンプレポリマーが、有機ポリイソシアネート(A)、ポリヒドロキシ化合物(B)、分子中に酸で中和するかまたは四級化剤で四級化した三級アミノ基を有し、かつ、NCO基と反応性のある活性水素原子を少なくとも2個有するポリヒドロキシ化合物(C)とを反応させて得られたものである前記(1)〜(4)のいずれかに記載のインクジェット記録紙用塗工剤。
【0015】
(7)前記水系ポリウレタン樹脂の重量平均分子量が6万〜60万である前記(1)〜(6)のいずれかに記載のインクジェット記録紙用塗工剤。
【0016】
(8)前記(1)〜(7)のいずれかに記載の塗工剤を紙基材に塗工してなるインクジェット記録紙。
【0017】
【発明の実施の形態】
本発明のインクジェット記録紙用塗工剤は、(A)有機ポリイソシアネートから誘導される構成単位と、(B)NCO基と反応性のある活性水素原子を少なくとも2個有するポリヒドロキシ化合物から誘導される構成単位と、(C)分子中に酸で中和するかまたは四級化剤で四級化した三級アミノ基を有し、かつ、NCO基と反応性のある活性水素原子を少なくとも2個有するポリヒドロキシ化合物から誘導される構成単位とからなり、分岐密度が1000原子量当たり0.08〜0.25であるカチオン性ウレタンプレポリマーを水により鎖伸長したカチオン性水系ポリウレタン樹脂のエマルジョンを含有することを特徴とするものである。
【0018】
ここで、本発明にいうカチオン性ウレタンプレポリマーの1000原子量当たりの分岐密度は、つぎのようにして求められる値である。すなわち、有機ポリイソシアネート(A)が、A1、A2……Aj(ここで、jは1以上の整数)の成分からなり、成分A1、A2……Ajについて、分子量がそれぞれMWA1、MWA2……MWAjであり、官能基数がそれぞれFA1、FA2……FAjであり、使用量(g)がそれぞれWA1、WA2……WAjであるとする。また、NCO基と反応性のある活性水素原子を少なくとも2個有するポリヒドロキシ化合物(B)が、B1、B2……Bk(ここで、kは1以上の整数)の成分からなり、成分B1、B2……Bkについて、分子量がそれぞれMWB1、MWB2……MWBKであり、官能基数がそれぞれFB1、FB2……FBkであり、使用量(g)がそれぞれWB1、WB2……WBkであるとする。また、分子中に酸で中和するかまたは四級化剤で四級化した三級アミノ基を有し、かつ、NCO基と反応性のある活性水素原子を少なくとも2個有するポリヒドロキシ化合物(C)が、C1、C2……Cm(ここで、mは1以上の整数)の成分からなり、成分C1、C2……Cmついて、分子量がそれぞれMWC1、MWC2、MWCmであり、官能基数がそれぞれFC1、FC2……FCmであり、使用量(g)がそれぞれWC1、WC2……WCmであるとする。このような成分A1、A2……Ajと、成分B1、B2……Bkと、成分C1、C2……Cmとを反応させて得られるカチオン性ウレタンプレポリマーの1000原子量当たりの分岐密度は、次式:
【0019】
【数1】
【0020】
によって求められる。
【0021】
本発明においては、インクジェット記録紙用塗工剤として、分岐密度が1000原子量当たり0.08〜0.25であるカチオン性ウレタンプレポリマーを水で鎖伸長したカチオン性水系ポリウレタン樹脂を使用することにより、インク定着性(乾燥性)、耐水性が優れることはもとより、耐擦過性、印刷時の寸法安定性、耐熱性、耐溶剤性、無機充填剤に対するバインダー能力が優れることが見出された。すなわち、分岐密度が1000原子量当たり0.08〜0.25のカチオン性ウレタンプレポリマーを水で鎖伸長したカチオン性水系ポリウレタン樹脂を塗工したインクジェット記録紙は、塗工面を擦っても傷がつきにくい(耐擦過性がすぐれる)、水性インクで印刷した場合でも記録紙が延びることがない(印刷時の寸法安定性が優れる)、印刷物を高温で保存しても画像が変色することがない(耐熱性がすぐれる)、印刷面を有機溶剤で擦っても画像の脱落が生じない(耐溶剤性が優れる)、無機充填剤を併用する場合においても、塗工性よく均質な塗工層を形成できる(無機充填剤に対するバインダー能力が優れる)という優れた効果が発揮される。
【0022】
分岐密度が0.08未満では、耐擦過性、印刷時の寸法安定性、耐熱性が劣る。分岐密度が0.25を超えると、ポリウレタン樹脂の最低造膜温度が高くなりすぎ、加工上好ましくない。
【0023】
また、優れた耐擦過性、印刷時の安定性、耐熱性、耐溶剤性を得るためには、カチオン性水系ポリウレタン樹脂の重量平均分子量が6万〜60万であるのが好ましく、より好ましくは20万〜60万である。カチオン性水系ポリウレタン樹脂の重量平均分子量が前記範囲未満では、耐擦過性、印刷時の安定性、耐熱性、耐溶剤性が劣る傾向にある。一方、重量平均分子量が前記範囲をこえると、ポリウレタン樹脂の造膜温度が高くなり、加工性が劣るようになる傾向がある。
【0024】
本発明で使用する有機ポリイソシアネート(A)としては、たとえば、2,4−トリレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネート、m−フェニレンジイソシアネート、p−フェニレンジイソシアネート、4,4′−ジフェニルメタンジイソシアネート、2,4′−ジフェニルメタンジイソシアネート、2,2′−ジフェニルメタンジイソシアネート、3,3′−ジメチル−4,4′−ビフェニレンジイソシアネート、3,3′−ジクロロ−4,4′−ビフェニレンジイソシアネート、1,5−ナフタレンジイソシアネート、1,5−テトラヒドロナフタレンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート、ドデカメチレンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、1,3−シクロヘキシレンジイソシアネート、1,4−シクロヘキシレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、テトラメチルキシリレンジイソシアネート、水素添加キシリレンジイソシアネート、リジンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、4,4′−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネートなどがあげられる。これら有機ポリイソシアネートは単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0025】
本発明で用いるポリヒドロキシ化合物(B)としては、、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコールジオール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ポリエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、ビスヒドロキシエトキシベンゼン、1,4−シクロヘキサンジメタノール、ビスフェノールA、ビスフェノールS、水素添加ビスフェノールA、ハイドロキノン、これらジオールのアルキレンオキシド付加体などのジオール類;ソルビトール、1,2,3,6−ヘキサンテトラオール、1,4−ソルビタン、1,2,4−ブタントリオール、1,2,5−ペンタントリール、グリセリン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトールなどの3官能以上のポリオール類;ポリエステルジオールなどのポリエステルポリオール、ポリエーテルジオールなどのポリエーテルポリオール、ポリカーボネートジオールなどのポリカーボネートポリオールなどがあげられる。これらポリヒドロキシ化合物は単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0026】
前記ポリエステルポリオールとしては、たとえば、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコールジオール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ポリエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、ビスヒドロキシエトキシベンゼン、1,4−シクロヘキサンジメタノール、ビスフェノールA、ビスフェノールS、水素添加ビスフェノールA、ハイドロキノン、これらジオールのアルキレンオキシド付加体などのジオール成分の1種または2種以上と、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ヘンデカンジカルボン酸、デカンジカルボン酸、ドデカンジカルボン酸、無水マレイン酸、フマル酸、1,3−シクロペンタンジカルボン酸、テレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、1,4−ナフタレンジカルボン酸、2,5−ナフタレンジカルボン酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、ナフタル酸、ビフェニルジカルボン酸、1,2−ビスフェノキシエタン−p,p′−ジカルボン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、これらジカルボン酸の無水物ないしエステル形成性誘導体などの酸成分の1種または2種以上とから、脱水縮合反応によって得られるポリエステル類をはじめとして、さらにはε−カプロラクトンなどの環状エステル化合物の開環重合反応によって得られるポリエステル類、またはそれらの共重合ポリエステル類などがあげられる。
【0027】
前記ポリエーテルポリオールとしては、たとえば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、トリメチレングリコール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、グリセリン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ソルビトール、蔗糖、ビスフェノールA、ビスフェノールS、水素添加ビスフェノールA、アコニット酸、トリメリット酸、ヘミメリット酸、燐酸、エチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリイソプロパノールアミン、ピロガロール、ジヒドロキシ安息香酸、ヒドロキシフタール酸、1,2,3−プロパントリチオールなどの活性水素を少なくとも2個有する化合物またはエチレンジアミン、プロピレンジアミン等の1級アミノ基を少なくとも2個有する化合物を開始剤として、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、ブチレンオキサイド、スチレンオキサイド、エピクロロヒドリン、テトラヒドロフラン、シクロヘキシレンなどのモノマーの1種または2種以上を用いて、常法により付加重合したものなどがあげられる。
【0028】
前記ポリカーボネートポリオールとしては、たとえば、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ジエチレングリコールなどのジオール類とジフェニルカーボネートおよびホスゲンとの反応によって得られる化合物などがあげられる。
【0029】
本発明におけるポリヒドロキシ化合物(B)としては、分子量(多分散化合物では重量平均分子量)が300未満であるのが好ましく、それにより、耐擦過性がより向上される。ポリヒドロキシ化合物(B)の分子量の下限値は50程度である。
【0030】
本発明に使用する化合物(C)の酸で中和または四級化剤で四級化する前の三級アミノ基を有する化合物(Cp)としては、たとえば、下記一般式(I):
【0031】
【化1】
【0032】
(式中、Rは炭素数1〜4のアルキル基またはヒドロキシアルキル基を表し、R1およびR2は同一であっても相異なっていてもよく、それぞれ炭素数1〜4のアルキレン基を表す)で示される化合物があげられる。一般式(I)で示される化合物には、三級アミノ基を有するジオール化合物、三級アミノ基を有するトリオール化合物が含まれる。このような化合物のうち、ジオール化合物(Rがアルキル基であるもの)としては、N−メチル−N,N−ジエタノールアミン、N−エチル−N,N−ジエタノールアミン、N−イソブチル−N,N−ジエタノールアミンなどがあげられ、トリオール化合物(Rがヒドロキシアルキル基であるもの)としてはトリエタノールアミンなどがあげられる。
【0033】
本発明においては、NCO基と反応性のある活性水素原子を少なくとも2個有するポリヒドロキシ化合物(B)および分子中に酸で中和するかまたは四級化剤で四級化した三級アミノ基を有し、かつ、NCO基と反応性のある活性水素原子を少なくとも2個有するポリヒドロキシ化合物(C)〔または分子中に三級アミノ基を有し、かつ、NCO基と反応性のある活性水素原子を少なくとも2個有するポリヒドロキシ化合物(Cp)〕の平均活性水素濃度が100〜800(mgKOH/g)であるのが好ましい。平均活性水素濃度が100未満の場合は、耐擦過性、耐熱性が劣る傾向にあり、一方800を超える場合は紙加工特性が低下する傾向にある。
【0034】
ここで、化合物(B)および化合物(C)の平均活性水素濃度は、つぎのようにして求められる値である。NCO基と反応性のある活性水素原子を少なくとも2個有するポリヒドロキシ化合物(B)が、B1、B2……Bk(ここで、kは1以上の整数)の成分からなり、成分B1、B2……Bkについて、活性水素濃度(mgKOH/g)がそれぞれHB1、HB2……HBKであり、使用量(g)がそれぞれWB1、WB2……WBkであるとする。また、分子中に酸で中和するかまたは四級化剤で四級化した三級アミノ基を有し、かつ、NCO基と反応性のある活性水素原子を少なくとも2個有するポリヒドロキシ化合物(C)が、C1、C2……Cm(ここで、mは1以上の整数)の成分からなり、成分C1、C2……Cmついて、活性水素濃度(mgKOH/g)がそれぞれHC1、HC2、HCmであり、使用量(g)がそれぞれWC1、WC2……WCmであるとする。このような成分B1、B2……Bk、成分C1、C2……Cmの混合物についての平均活性水素濃度は、次式:
【0035】
【数2】
【0036】
によって求められる。
【0037】
ポリヒドロキシ化合物(B)とポリヒドロキシ化合物(Cp)の平均活性水素濃度も、前記と同様にして求められる。
【0038】
本発明のカチオン性水性ポリウレタン樹脂は、
[I](1)有機ポリイソシアネート(A)、ポリヒドロキシ化合物(B)、分子中に三級アミノ基を有し、かつ、NCO基と反応性のある活性水素原子を少なくとも2個有するポリヒドロキシ化合物(Cp)とを反応させてウレタンプレポリマーを得、ついで該ウレタンプレポリマーの三級アミノ基を酸で中和するかまたは四級化剤で四級化してカチオン性ウレタンプレポリマーを得るか、あるいは
(2)有機ポリイソシアネート(A)、ポリヒドロキシ化合物(B)、分子中に酸で中和するかまたは四級化剤で四級化した三級アミノ基を有し、かつ、NCO基と反応性のある活性水素原子を少なくとも2個有するポリヒドロキシ化合物(C)とを反応させてカチオン性ウレタンプレポリマーを得るカチオン性ウレタンプレポリマーの製造工程と、
[II]該カチオン性プレポリマーを水で鎖伸長してカチオン性水系ポリウレタン樹脂を得る工程
からなる製造方法によって製造することができる。
【0039】
前記三級アミノ基を中和するために用いられる酸としては、蟻酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、乳酸、リンゴ酸、クエン酸などの有機酸および塩酸、リン酸、亜リン酸、硝酸などの無機酸があげられる。また、四級化剤としては、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、ブチレンオキサイド、スチレンオキサイド、エピクロロヒドリンなどのエポキシ化合物、ジメチル硫酸、ジエチル硫酸などのジアルキル硫酸類、パラトルエンスルホン酸メチルなどのスルホン酸アルキル類、メチルクロライド、エチルクロライド、ベンジルクロライド、メチルブロマイド、エチルブロマイドなどのハロゲン化アルキル類などがあげられる。
【0040】
有機ポリイソシアネート(A)が芳香族イソシアネートなどの反応性の高いイソシアネートの場合は、工程[I]において、三級アミノ基を有する化号物(Cp)を用いてウレタンプレポリマーを製造したのち、三級アミノ基をカチオン化する方法(1)を採ると、ゲル化などの惧れがあるので、カチオン化した三級アミノ基を有する化合物(C)を用いてウレタンプレポリマーを製造する方法(2)が好ましい。
【0041】
工程[I]においては、有機ポリイソシアネート(A)と、ポリヒドロキシ化合物(B)および分子中に酸で中和するかまたは四級化剤で四級化した三級アミノ基を有し、かつ、NCO基と反応性のある活性水素原子を少なくとも2個有するポリヒドロキシ化合物(C)〔またはポリヒドロキシ化合物(B)および分子中に三級アミノ基を有し、かつ、NCO基と反応性のある活性水素原子を少なくとも2個有するポリヒドロキシ化合物(Cp)〕とを、好ましくは、(A)のイソシアネート基の当量と(B)および(C)〔または(Cp)〕の活性水素原子の当量の合計の比が1.0/1.0〜1.0/0.5となるように反応させて、末端イソシアネート基のウレタンプレポリマーを製造する。
【0042】
分岐密度が0.08〜0.25のカチオン性ウレタンプレポリマーを製造するには、ポリヒドロキシ化合物(B)として、ジオールと官能基数が3以上のポリオールの混合物を使用し、さらに、ポリヒドロキシ化合物(C)〔またはポリヒドロキシ化合物(Cp)〕として官能基数が2の化合物を使用し、有機ポリイソシアネートとして、ジイソシアネートを使用すると、分岐密度の調節が容易である。
【0043】
工程[I]におけるイソシアネート重付加反応は、組成によって無溶剤下に行うこともできるが、反応系の反応抑制やベース粘度コントロールなどの目的でイソシアネート重付加反応系に直接関与しない親水性有機溶剤を反応溶媒として用いて実施することが一般的である。かかる親水性有機溶剤としては、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、ジイソブチルケトンなどのケトン類、蟻酸メチル、蟻酸エチル、蟻酸プロピル、蟻酸ブチル、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル、プロピオン酸ブチルなどの有機酸エステル、N,N−ジメチルホルムアミド、N−メチルピロリドンのなどのアミン類などがあげられる。反応に使用した親水性有機溶剤は最終的には取り除かれるのが好ましい。
【0044】
工程[II]では、工程[I]で得られたカチオン性ウレタンプレポリマーを水で鎖伸長する。たとえば、工程[I]で得られたカチオン性ウレタンプレポリマーの溶液に過剰の水を加え、乳化し、ついで溶剤を除去すると、カチオン性水系ポリウレタン樹脂のエマルジョンが得られる。
【0045】
エマルジョンの平均粒子径は、紙に対する浸透性の関係から、0.001〜0.1μmの範囲が好ましい。
【0046】
本発明のインクジェット記録紙用塗工剤は前記カチオン性水系ポリウレタン樹脂のエマルジョンを含有するものであるが、インクジェット記録紙用塗工剤に一般に使用されている、たとえば水溶性高分子、無機充填剤などの各種添加剤を配合してもよい。水溶性高分子としては、たとえば、酸化デンプン、ポリビニルアルコール、ゼラチン、ポリビニルピロリドン、ポリアクリルアミド、ポリアクリル酸ソーダ、カゼイン、カルボキシメチルセルロースなどがあげられる。無機充填剤としては、たとえば、軽質炭酸カルシウム、重質炭酸カルシウム、カオリン、タルク、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、酸化チタン、酸化亜鉛、硫酸亜鉛、炭酸亜鉛、サチンホワイト、珪酸アルミニウム、ケイソウ土、珪酸カルシウム、無定形シリカ、水酸化アルミニウム、アルミナ、リトポンなどがあげられる。印字速度、発色性などの点からは、無定形シリカが好ましい。
【0047】
本発明のインクジェット記録紙用塗工剤における前記カチオン性水系ポリウレタン樹脂の含有量は、その優れた性能を充分に発揮させる点から、5重量%以上であるのが好ましい。
【0048】
本発明のインクジェット記録紙用塗工剤を紙基材に塗布することによって、インクジェット記録紙が得られる。紙基材としては、普通紙、塗工紙などが使用できる。塗工剤の乾燥後の塗布厚さは3〜30μm程度が適当である。
【0049】
【実施例】
つぎに本発明を実施例をあげて説明する。
【0050】
下記の実施例で得られたカチオン性ポリウレタン樹脂の重量平均分子量は、カチオン性ポリウレタン樹脂の相対分子量分布をGPC(ゲル浸透クロマトグラフィー)により求め、ポリエチレングリコール換算重量平均分子量として求めた。GPCの測定条件はつぎのとおりである。
【0051】
測定機種:東ソー(株)製SC−8010システム
カラム:Shodex Ohpak SB−G+Ohpak SB−806MHQ×2本
溶解液:DMF/0.06M LiBr/0.04M H3PO3
温度:カラム恒温槽40℃
流速:1.0ml/分
濃度:0.1wt/Vol%
注入量:100μl
溶解性:完全溶解
前処理:0.45μmフィルター
検出器:示差屈折計
【0052】
用いたポリヒドロキシ化合物の活性水素濃度は次のようにして求める。
【0053】
試料を推定活性水素濃度に応じてサンプリングし重量を測定した後、5mlのアセチル化試薬(使用直前に無水酢酸1容量部とピリジン2容量部を混合して調製する)を加え10〜15分間加熱してアセチル化を行う。その後水2mlを加え冷却し、約20分間放置して過剰の無水酢酸を加水分解する。これに中性エタノール60mlを加え、フエノールフタレイン指示薬0.2mlを加えて1mol/l水酸化カリウム標準液で滴定し、つぎの式により求める。
【0054】
活性水素濃度(mgKOH/g)
=[(B−S)×f×56.11]/試料の質量(g)+AV
B:空試験に要した1mol/l水酸化カリウム標準液のml
S:実試験に要した1mol/l水酸化カリウム標準液のml
f:1mol/l水酸化カリウム標準液の力価
AV:同一試料の酸価
【0055】
実施例1
ポリブチレンアジペートジオール(重量平均分子量2000、商品名ニッポラン4010、日本ポリウレタン工業(株)製)300重量部、トリメチロールプロパン(分子量134)9.0重量部、N−メチル−N,N−ジエタノールアミン49重量部、イソホロンジイソシアネート180重量部、メチルエチルケトン377重量部を反応容器にとり、70〜75℃に保ちながら90分間反応させ、ついでジメチル硫酸38.1重量部を添加し、50〜60℃で20分間反応させて、NCO含有率が2.2重量%であるカチオン性ウレタンポリマーの溶液を得た。この溶液に撹拌下に水1370重量部を徐々に添加して鎖伸長反応を行わせ、次いでメチルエチルケトンを留去させることにより、重量平均分子量35万のカチオン性ポリウレタン樹脂のエマルジョン(固形分濃度28重量%、エマルジョン平均粒子径0.01μm)を得た。なお、前記ポリブチレンアジペートジオールとトリメチロールプロパンとN−メチル−N,N−ジエタノールアミンの平均活性水素濃度は207(mgKOH/g)であった。また前記カチオン性ウレタンプレポリマーの分岐密度は0.12であった。
【0056】
実施例2
1,6−ヘキサンジオールおよびエチレングリコールとイソフタル酸およびアジピン酸から得られたポリエステルジオール(重量平均分子量1000、商品名TA−22−419A、日立化成ポリマー(株)製)240重量部、トリメチロールプロパン(分子量134)8.0重量部、N−メチル−N,N−ジエタノールアミン41重量部、イソホロンジイソシアネート180重量部、メチルエチルケトン310重量部を反応容器にとり、70〜75℃に保ちながら60分間反応させ、ついでジメチル硫酸32.5重量部を添加し、50〜60℃で20分間反応させて、NCO含有率が2.3重量%であるカチオン性ウレタンポリマーの溶液を得た。この溶液に撹拌下に水1290重量部を徐々に添加して鎖伸長反応を行わせ、次いでメチルエチルケトンを留去させることにより、重量平均分子量45万のカチオン性ポリウレタン樹脂のエマルジョン(固形分濃度30重量%、エマルジョン平均粒子径0.02μm)を得た。なお、前記ポリエステルジオールとトリメチロールプロパンとN−メチル−N,N−ジエタノールアミンの平均活性水素濃度は261(mgKOH/g)であった。また前記カチオン性ウレタンプレポリマーの分岐密度は0.13であった。
【0057】
実施例3
ビスフェノールAのエチレンオキサイド2モル付加物(重量平均分子量330、商品名ニューポールBPE−20NK、三洋化成工業(株)製)150重量部、トリメチロールプロパン(分子量134)11重量部、N−メチル−N,N−ジエタノールアミン44重量部、4,4’−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート300重量部、メチルエチルケトン450重量部を反応容器にとり、70〜75℃に保ちながら120分間反応させ、ついでジメチル硫酸32.7重量部を添加し、50〜60℃で20分間反応させて、NCO含有率が3.1重量%であるカチオン性ウレタンポリマーの溶液を得た。この溶液に撹拌下に水1577重量部を徐々に添加して鎖伸長反応を行わせ、次いでメチルエチルケトンを留去させることにより、重量平均分子量40万のカチオン性ポリウレタン樹脂のエマルジョン(固形分濃度25重量%、エマルジョン平均粒子径0.008μm)を得た。なお、前記ビスフェノールAのエチレンオキサイド2モル付加物とトリメチロールプロパンとN−メチル−N,N−ジエタノールアミンの平均活性水素濃度は520(mgKOH/g)であった。また前記カチオン性ウレタンプレポリマーの分岐密度は0.16であった。
【0058】
実施例4
N−メチル−N,N−ジエタノールアミン39.6重量部とメチルエチルケトン175重量部を反応容器にとり、これにジメチル硫酸41.9重量部をメチルエチルケトン70重量部に溶解した溶液を徐々に滴下し、40〜50℃で10分間四級化反応を行わせた。この反応容器に、ビスフェノールAのエチレンオキサイド2モル付加物(重量平均分子量330、商品名ニューポールBPE−20NK、三洋化成工業(株)製)123.8重量部、トリメチロールプロパン(分子量134)9.9重量部、トリレンジイソシアネート175.8重量部、メチルエチルケトン350重量部を加え、70〜75℃に保ちながら180分間反応させ、NCO含有率が4.4重量%であるカチオン性ウレタンポリマーの溶液を得た。この溶液に撹拌下に水1577重量部を徐々に添加して鎖伸長反応を行わせ、次いでメチルエチルケトンを留去させることにより、重量平均分子量55万のカチオン性ポリウレタン樹脂のエマルジョン(固形分濃度25重量%、エマルジョン平均粒子径0.009μm)を得た。なお、前記ビスフェノールAのエチレンオキサイド2モル付加物とトリメチロールプロパンと四級化N−メチル−N,N−ジエタノールアミンの平均活性水素濃度は531(mgKOH/g)であった。また前記カチオン性ウレタンプレポリマーの分岐密度は0.21であった。
【0059】
実施例5
ポリテトラメチレングリコール(重量平均分子量250、商品名TERATHANE250、デュポン社製)34重量部、1,4−シクロヘキサンジメタノール(分子量144.2)45.8重量部、トリメチロールプロパン(分子量134)8.9重量部、N−メチル−N,N−ジエタノールアミン36重量部、4,4’−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート268重量部、メチルエチルケトン300重量部を反応容器にとり、70〜75℃に保ちながら120分間反応させ、ついでジメチル硫酸29.7重量部を添加し、50〜60℃で20分間反応させて、NCO含有率が3.6重量%であるカチオン性ウレタンポリマーの溶液を得た。この溶液に撹拌下に水1420重量部を徐々に添加して鎖伸長反応を行わせ、次いでメチルエチルケトンを留去させることにより、重量平均分子量50万のカチオン性ポリウレタン樹脂のエマルジョン(固形分濃度27重量%、エマルジョン平均粒子径0.007μm)を得た。なお、前記ポリテトラメチレングリコールと1,4−シクロヘキサンジメタノールとトリメチロールプロパンとN−メチル−N,N−ジエタノールアミンの平均活性水素濃度は770(KOHmg/g)であった。また前記カチオン性ウレタンプレポリマーの分岐密度は0.17であった。
【0060】
実施例6
ポリカーボネートジオール(重量平均分子量1000、商品名ニッポラン981、日本ポリウレタン工業(株)製)250重量部、ポリエチレングリコール(重量平均分子量600、商品名PEG600S、第一工業製薬(株)製)10重量部、トリメチロールプロパン(分子量134)7.0重量部、N−メチル−N,N−ジエタノールアミン31重量部、4,4’−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート200重量部、メチルエチルケトン400重量部を反応容器にとり、70〜75℃に保ちながら120分間反応させ、ついでジメチル硫酸32重量部を添加し、50〜60℃で20分間反応させて、NCO含有率が2.5重量%であるカチオン性ウレタンポリマーの溶液を得た。この溶液に撹拌下に水1320重量部を徐々に添加して鎖伸長反応を行わせ、次いでメチルエチルケトンを留去させることにより、重量平均分子量40万のカチオン性ポリウレタン樹脂のエマルジョン(固形分濃度28重量%、エマルジョン平均粒子径0.02μm)を得た。なお、前記ポリカーボネートジオールとポリエチレングリコールとトリメチロールプロパンとN−メチル−N,N−ジエタノールアミンの平均活性水素濃度は228(mgKOH/g)であった。また前記カチオン性ウレタンプレポリマーの分岐密度は0.10であった。
【0061】
比較例1
ポリテトラメチレングリコール(重量平均分子量2000、商品名PTMG1000、三菱化学(株)製)238重量部、N−メチル−N,N−ジエタノールアミン38.1重量部、イソホロンジイソシアネート137重量部、メチルエチルケトン210重量部を反応容器にとり、70〜75℃に保ちながら150分間反応させ、ついでジメチル硫酸32.3重量部を添加し、50〜60℃で20分間反応させて、NCO含有率が2.0重量%であるカチオン性ウレタンポリマーの溶液を得た。この溶液に撹拌下に水1370重量部を徐々に添加して鎖伸長反応を行わせ、次いでメチルエチルケトンを留去させることにより、重量平均分子量30万のカチオン性ポリウレタン樹脂のエマルジョン(固形分濃度30重量%、エマルジョン平均粒子径0.02μm)を得た。なお、前記ポリテトラメチレングリコールとN−メチル−N,N−ジエタノールアミンの平均活性水素濃度は227(mgKOH/g)であった。また前記カチオン性ウレタンプレポリマーの分岐密度はゼロであった。
【0062】
比較例2
ポリエステルジオール(重量平均分子量4000、商品名HOKOKUOL HT−400、豊国製油(株)製)400重量部、トリメチロールプロパン(分子量134)24重量部、N−メチル−N,N−ジエタノールアミン18重量部、イソホロンジイソシアネート150重量部、メチルエチルケトン592重量部を反応容器にとり、70〜75℃に保ちながら150分間反応させ、ついでジメチル硫酸18.0重量部を添加し、50〜60℃で20分間反応させて、NCO含有率が3.2重量%であるカチオン性ウレタンポリマーの溶液を得た。この溶液に撹拌下に水1520重量部を徐々に添加して鎖伸長反応を行わせ、次いでメチルエチルケトンを留去させることにより、重量平均分子量28万のカチオン性ポリウレタン樹脂のエマルジョン(固形分濃度30重量%、エマルジョン平均粒子径0.15μm)を得た。なお、前記ポリエステルジオールとトリメチロールプロパンとN−メチル−N,N−ジエタノールアミンの平均活性水素濃度は132(mgKOH/g)であった。また前記カチオン性ウレタンプレポリマーの分岐密度は0.29であった。
【0063】
実施例7〜12および比較例3、4
実施例1〜6および比較例1、2で得られた各カチオン性ポリウレタン樹脂エマルジョン50重量部に無定形シリカ50重量部、20重量%ポリビニルアルコール水溶液200重量部を配合してインクジェット記録紙用塗工液を調製し、これを上質紙にバーコーターにより乾燥後厚さが25μmになるように塗布し、100℃で3分間乾燥して、インクジェット記録紙を得た。
【0064】
得られたインクジェット記録紙について、下記の項目について評価した。結果を表1に示す。
【0065】
(1)インク定着性
前記インクジェット記録紙の塗工面にインクジェットプリンター(セイコーエプソン(株)製MACHJET MJ−830C)で印刷し、記録画像に指触したときにインクが付着しなくなるまでの時間により評価した。
評価基準
◎:20秒未満
○:20〜60秒
×:60秒を超える
【0066】
(2)耐水性
前記(1)と同様に印刷し、印字部と非印字部の境界にスポイトで水を1滴滴下して印字の滲みを目視で観察して評価した。
評価基準
◎:まったく滲まない
○:僅かに滲む(印字の識別可能)
×:滲む(印字の識別不可能)
【0067】
(3)紙加工性
インクジェット記録紙用塗工液を塗布し乾燥した後の塗工面のひび割れを目視で観察して評価した。
評価基準
◎:ひび割れなし
○:2mm以内のひび割れあり
×:2mmを超えるひび割れあり
【0068】
(4)耐擦過性
印字していないA4サイズのインクジェット記録紙について、インクジェットプリンター(セイコーエプソン(株)製MACHJET MJ−830C)を用いて紙送りを繰り返すことにより評価した。
評価基準
◎:非常に良好(50回紙送りしても塗工面に傷つきなし)
○:良好(30回紙送りしても塗工面に傷つきなし)
△:やや良好(10〜30回の紙送りで塗工面に傷発生)
×:不良(10回未満の紙送りで塗工面に傷発生)
【0069】
(5)寸法安定性
前記インクジェット記録紙の塗工面にインクジェットプリンター(セイコーエプソン(株)製MACHJET MJ−830C)でベタ印刷し、印刷前の用紙寸法と印刷後の用紙寸法を比較することにより評価した(印刷前の用紙面積に対する印刷後の用紙面積の増加率で比較した)。
評価基準
◎:非常に優れる(寸法変化なし)
○:良好(寸法変化1%以内)
×:不良(寸法変化が1%を超える)
【0070】
(6)耐熱性
前記インクジェット記録紙の塗工面にインクジェットプリンター(セイコーエプソン(株)製MACHJET MJ−830C)でカラー印刷した後、60℃で3日間保存して各色の変化を目視観察して判定した。このテストは、高温で保存した場合にインクジェット記録紙用塗工剤がインクの色目に影響する度合いを調べるものである。
評価基準
◎:非常に優れる(まったく変化なし)
○:良好(僅かに変化が認められる)
×:不良(変化あり、画像としての価値がないレベル)
【0071】
(7)耐溶剤性
前記インクジェット記録紙の塗工面にインクジェットプリンター(セイコーエプソン(株)製MACHJET MJ−830C)で印刷した後、メタノールをつけた綿棒で印字面を軽く擦ることにより評価した。
評価基準
◎:非常に優れる(50回擦っても、くもり、脱落なし)
○:良好(30回擦っても、くもり、脱落なし)
△:やや劣る(10〜30回の擦りで、くもり、脱落発生)
×:不良(10回未満の擦りで、くもり、脱落発生)
【0072】
【表1】
【0073】
【発明の効果】
本発明の特定のカチオン性水系ポリウレタン樹脂からなるインクジェット記録紙用塗工剤は、インク定着性、耐水性はもとより、耐擦過性、印刷時の寸法安定性、耐熱性、耐溶剤性、無機充填剤に対するバインダー能力などがともに優れている。
Claims (8)
- (A)有機ポリイソシアネートから誘導される構成単位と、(B)NCO基と反応性のある活性水素原子を少なくとも2個有するポリヒドロキシ化合物から誘導される構成単位と、(C)分子中に酸で中和するかまたは四級化剤で四級化した三級アミノ基を有し、かつ、NCO基と反応性のある活性水素原子を少なくとも2個有するポリヒドロキシ化合物から誘導される構成単位とからなり、分岐密度が1000原子量当たり0.08〜0.25であるカチオン性ウレタンプレポリマーを水により鎖伸長したカチオン性水系ポリウレタン樹脂のエマルジョンを含有することを特徴とするインクジェット記録紙用塗工剤。
- ポリヒドロキシ化合物(B)とポリヒドロキシ化合物(C)の平均活性水素濃度が100〜800(mgKOH/g)である請求項1記載のインクジェット記録紙用塗工剤。
- ポリヒドロキシ化合物(B)の重量平均分子量が300未満である請求項1または2記載のインクジェット記録紙用塗工剤。
- 前記カチオン性水系ポリウレタン樹脂のエマルジョンの平均粒子径が0.001〜0.1μmである請求項1〜3のいずれかに記載のインクジェット記録紙用塗工剤。
- 前記カチオン性ウレタンプレポリマーが、有機ポリイソシアネート(A)、ポリヒドロキシ化合物(B)、分子中に三級アミノ基を有し、かつ、NCO基と反応性のある活性水素原子を少なくとも2個有するポリヒドロキシ化合物(Cp)とを反応させてウレタンプレポリマーを得、ついで該ウレタンプレポリマーの三級アミノ基を酸で中和するかまたは四級化剤で四級化して得られたものである請求項1〜4のいずれかに記載のインクジェット記録紙用塗工剤。
- 有機ポリイソシアネート(A)が芳香族ポリイソシアネートである場合、前記カチオン性ウレタンプレポリマーが、有機ポリイソシアネート(A)、ポリヒドロキシ化合物(B)、分子中に酸で中和するかまたは四級化剤で四級化した三級アミノ基を有し、かつ、NCO基と反応性のある活性水素原子を少なくとも2個有するポリヒドロキシ化合物(C)とを反応させて得られたものである請求項1〜4のいずれかに記載のインクジェット記録紙用塗工剤。
- 前記カチオン性水系ポリウレタン樹脂の重量平均分子量が6万〜60万である請求項1〜6のいずれかに記載のインクジェット記録紙用塗工剤。
- 請求項1〜7のいずれかに記載の塗工剤を紙基材に塗工してなるインクジェット記録紙。
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