JP3703037B2 - 多気筒エンジンの空燃比制御方法 - Google Patents

多気筒エンジンの空燃比制御方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、多気筒エンジンにおける各気筒の空燃比の制御方法に関し、特に、排気ガスの空燃比を検出するセンサーの検出結果に基づくフィードバック制御により各気筒の空燃比を制御する多気筒エンジンの空燃比制御方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
複数の気筒を有する多気筒エンジンでは、排気ガス中の有害成分の規制上、加速時や減速時のような運転の過渡時においても各気筒における空燃比(A/F)を精度良くコントロールするために、エアフローメータによる吸入空気量や吸気温度の検出結果に応じて各気筒の空燃比を制御すると共に、更に、各気筒からの排気ガスの集合部にA/FセンサーやO2 センサーなどを設置して排気ガスの空燃比を検出し、その結果に基づくフィードバック制御を行うことによって、各気筒の空燃比を制御するということが従来から行われている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
ところが、上記のような従来の多気筒エンジンの空燃比制御方法では、各気筒に共通の一つのセンサーによる排気ガスの空燃比検出結果から、全気筒に対して一律に燃料噴射量をコントロールして空燃比を制御することとなるため、気筒毎の吸入空気量にバラツキがあると、各気筒間での空燃比にバラツキを生じることとなる。
【0004】
また、排気ガスの圧力波を利用してエンジンの運転性能をより向上させようとする場合、各気筒からの排気ガスの集合部がエンジン本体から離れてしまうため、空燃比を検出するためのセンサーを排気ガスの集合部に設置すると、該センサーによるフィードバック制御の応答性が悪くなってしまう。
【0005】
そこで、そのような問題に対処すべく、例えば、排気ガスの集合部よりも上流の各排気管にそれぞれセンサーを設置して、各センサーによるそれぞれの空燃比検出結果に応じて、各気筒に対する空燃比の制御を行うというようなことも考えられるが、その場合には、各気筒毎にそれぞれセンサーを設置することが必要となって、コスト上の問題も生じることとなる。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明は、上記の課題を解決するために、上記の請求項1に記載したように、排気ガスの空燃比を検出するセンサーの検出結果に基づくフィードバック制御により各気筒の空燃比を制御する多気筒エンジンの空燃比制御方法において、排気ガスの空燃比を検出するためのセンサーを、各気筒からの排気ガスの集合部よりも上流側で、何れかの気筒に対して設置することにより、該センサーによる検出結果と、各気筒における圧縮行程でのクランク回転速度の変動量とに基づいて、各気筒毎に空燃比をそれぞれ制御することを特徴とするものである。
【0007】
また、上記の請求項1に記載した多気筒エンジンの空燃比制御方法において、上記の請求項2に記載したように、排気ガスの集合部に排気制御バルブを設置することにより、排気ガスの流量を制御することを特徴とするものである。
【0008】
さらに、上記の請求項2に記載した多気筒エンジンの空燃比制御方法において、上記の請求項3に記載したように、エンジン本体に対してカム位相角度可変装置を設置することにより、吸・排気バルブの開閉タイミングを制御することを特徴とするものである。
【0009】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の多気筒エンジンの空燃比制御方法の実施形態について図面に基づいて説明する。
【0010】
図1は、本発明の空燃比制御方法が適用される多気筒エンジンの一例についての概略を示すもので、エンジン1は、車両に搭載される燃料噴射式で4サイクル4気筒のガソリンエンジンであって、エアクリーナー2とサージタンク5の間の吸気通路に、エアフローメーター3とスロットルバルブ4が設置されており、エアクリーナー2を通りスロットルバルブ4で制御されてサージタンク5に流入した燃焼用の空気は、サージタンク5から各吸気管6を通って、エンジン本体7の各気筒の燃焼室にそれぞれ導入される。
【0011】
エンジン本体7の各気筒には、それぞれの燃焼室に導入される燃焼用の空気に対して燃料を噴射するために、ソレノイドによりその開閉が制御される電磁式の燃料噴射バルブ8がそれぞれ設置されていると共に、燃焼室内で混合気に着火するための点火プラグ9がそれぞれ設置されていて、エンジン本体7の各気筒の燃焼室では、導入された空気と燃料噴射バルブ8から噴射された燃料との混合気が、点火プラグ9で着火されて燃焼してから排気ガスとして排出される。
【0012】
エンジン本体7の各気筒の燃焼室には、それぞれに排気管10が接続されており、各排気管10はその下流の集合部11で集合されてから、触媒13とサイレンサー14をその途中に設けた一本の排気管12に接続されていて、エンジン本体7の各気筒の燃焼室からそれぞれ排出された排気ガスは、それぞれの排気管10を通って集合部11で集合され、排気管12により触媒13とサイレンサー14を通ってから大気中に放出される。
【0013】
エンジン本体7に接続される各排気管10の集合部11は、排気ガスの圧力波を利用してエンジンの運転性能をより向上させるために、エンジン本体7からある程度の長さだけ離されていて、該集合部11に、排気ガスの通過面積を制御するための排気制御バルブ15が設けられている。
【0014】
エンジン1における各排気管10の集合については、図1に示すように、全ての排気管10を一つの集合部11に集合させ、該集合部11に排気制御バルブ15を設けるという構造に限らず、図2に示すように、排気管10をまず2本ずつ集合させてから、集合させた排気管16同士を更に1本の排気管17に集合させ、2本ずつ集合させた各排気管16に渡って排気制御バルブ15を設けるような構造としてもよい。
【0015】
また、エンジン本体7に対して、エンジン1の運転状態に応じて各気筒の吸・排気バルブの開閉タイミングを制御するために、カム位相角度可変装置(VVT)18が設けられている。
【0016】
このカム位相角度可変装置18は、図示していないが、エンジン本体7の上方で、クランク軸の回転によりタイミングチェーンを介して駆動されるカム軸に対して配置され、エンジン1の運転状態に応じて、タイミングチェーンに噛合するカムスプロケットの位相とカム軸の位相を油圧等で変化させることにより、吸・排気バルブの開閉タイミングを変化させるものであって、それ自体は従来から公知のものである。
【0017】
なお、上記の排気制御バルブ15とカム位相角度可変装置18については、エンジン1の運転状態が低速で低負荷の時には、排気制御バルブ15は閉じるように制御されると共に、カム位相角度可変装置18は、吸・排気バルブのオーバーラップを小さくし、更に一部のバルブを休止させるように制御され、また、エンジン1の運転状態が中・低速で高負荷の時には、排気制御バルブ15は閉じるように制御されると共に、カム位相角度可変装置18は、吸・排気バルブのオーバーラップを大きくするように制御されるものである。
【0018】
ところで、エンジン1には、吸入空気流量と吸気温度を検出するためのエアフローメーター3の他に、エンジンの負荷を検出するためのスロットル開度センサー21, 吸入空気の圧力を検出するための吸気管圧力センサー22, クランク回転速度を検出するためのエンジン回転数センサー23,各気筒の燃焼順序に応じて燃料供給する気筒を特定するための気筒判別センサー24等の各センサーが設置されている。
【0019】
また、排気ガスの空燃比を検出するために、A/Fセンサー或いはO2 センサーのようなセンサー25が、排気ガスの集合部10よりも上流側で、エンジン本体7の各気筒のうちの何れかの気筒から延びる排気管10に対して設置されており、本実施形態では第1気筒(#1)から延びる排気管10にのみセンサー25が設置されている。
【0020】
なお、エンジン回転数センサー23は、クランク軸に連動して回転するリングギアの歯を検知して信号を出力するセンサーであり、気筒判別センサー24は、各気筒のカム軸におけるカムの回転に応じて信号を出力するセンサーであって、何れも、従来から一般的に知られたものである。
【0021】
上記のように各センサーが設置されたエンジン1に対し、各センサーの検出結果に応じてエンジン運転状態を制御するために、マイクロコンピューターを用いた電子制御装置(ECU)20が設置されていて、この制御装置20により、各センサーからの入力信号と、予め設定されたプログラムや各種の係数とに基づいて、エンジン1の各燃料噴射バルブ8や各点火プラグ9および排気制御バルブ15に対して制御信号が出力される。
【0022】
上記のようなマイクロコンピューターによる制御システムを備えた多気筒エンジン1において適用される本発明の空燃比制御方法の一実施形態について以下に説明する。
【0023】
図4は、エアフローメーター3による吸入空気量や吸気温度の測定結果に基づき、各気筒の燃料噴射量を一律に制御した場合の、エンジン1の各気筒毎のクランク回転速度の変動を示すもので、エンジン回転数センサー23により検出したクランク軸の回転速度の変動を示すグラフにおいて、該グラフのどの部分がどの気筒に対応するものであるかを気筒判別センサー24の検出結果から判別したものである。
【0024】
このようにエンジン回転数センサー23と気筒判別センサー24により各気筒毎のクランク回転速度の変動を検出し、それから更に、各気筒における点火前の圧縮行程でのクランク回転速度の変動量(すなわち、各気筒において、図3に示すような圧縮上死点前100度から圧縮上死点前10度までのクランク角90度の間について、各気筒毎にクランク回転速度がどれだけ変化しているか)を検出することにより、各気筒毎の吸入空気量を推定することができる。
【0025】
すなわち、各気筒への吸入空気量に違いがあると、各気筒での圧縮行程中の気筒内の圧力上昇の程度に違いが出て、各気筒の圧縮行程でのクランク回転速度の変動量がそれに応じて相違するため、各気筒における圧縮行程でのクランク回転速度変動量の相違の程度から、逆に各気筒におけるそれぞれの吸入空気量を推定することができるのである。
【0026】
その結果、各気筒における圧縮行程でのクランク回転速度の変動量により、各気筒でのそれぞれの吸入空気量を推定して、推定したそれぞれの気筒毎の吸入空気量の割合に応じて、各気筒毎の燃料噴射量を補正することによって、各気筒間での空燃比にバラツキが出ないように各気筒毎の空燃比をそれぞれ制御することができる。
【0027】
図5は、上記のような技術思想に基づく本実施形態の空燃比制御方法についての制御装置20のマイクロコンピューターによる具体的な処理の概略をフローチャートで示すもので、先ず、エアフローメーター3による吸入空気量や吸気温度の測定結果に基づき、各気筒の燃料噴射量を一律に制御してエンジン1を運転させた状態において、第1段階として、第1気筒(#1)の吸気管10に設置されたセンサー25により、第1気筒(#1)の排気ガスの空燃比(A/F=a)を測定する。
【0028】
次いで、第2段階で、エンジン回転数センサー23と気筒判別センサー24により、気筒毎のクランク回転速度の変動を測定して、その数サイクル分の平均化を行い、その結果から、第3段階で、各気筒毎の圧縮行程(圧縮上死点前100度から圧縮上死点前10度まで)でのクランク回転速度の変動量を計算する。
【0029】
そして、第4段階で、算出された各気筒毎の圧縮行程でのクランク回転速度変動量と、予め制御装置10のマイクロコンピューターのROMに入力されたマップとによって、各気筒毎の吸入空気量を算出する。
【0030】
図6(A)〜(D)は、吸入空気量を算出するためのマップの一例を示すもので、各気筒(#1,#2,#3,#4)のクランク回転(速度)変動量から各気筒の吸入空気量(A,B,C,D)をそれぞれ求める場合についての各マップである。
【0031】
図7は、吸入空気量を算出するためのマップの他の例を示すもので、第1気筒(#1)のクランク回転(速度)変動量を基準とし、これと他の気筒(#2,#3,#4)のクランク回転(速度)変動量の比から直接各気筒の吸入空気量の比(#1の空気量Aを1として、1:B:C:D)を求める場合についてのマップである。
【0032】
第4段階で各気筒毎の吸入空気量を算出してから、第5段階において、まず、第1気筒(#1)について、第1段階でセンサー25により測定した空燃比(A/F=a)と、目標とする空燃比(A/F=b)とから、第1気筒(#1)についての燃料噴射量の補正値(C1*a/b)(C1は係数)を算出する。
【0033】
次いで、第1気筒(#1)の燃料噴射量補正値と、第1気筒(#1)の吸入空気量(A)に対する他の気筒の吸入空気量の割合とに基づいて、順次、第6段階で、第2気筒(#2)についての燃料噴射量の補正値(C1*a/b*C2*B/A)(C1,C2 は係数)を算出し、第7段階で、第4気筒(#4)についての燃料噴射量の補正値(C1*a/b*C2*D/A)を算出し、第8段階で、第3気筒(#3)についての燃料噴射量の補正値(C1*a/b*C2*C/A)を算出する。
【0034】
そして、第9段階で、第5〜8段階で算出された気筒毎の燃料噴射量の補正値を各気筒に対してそれぞれ出力することにより、エアフローメーター3による吸入空気量とセンサー25による排気ガスの空燃比に応じて制御される各気筒の燃料噴射バルブ8からの燃料噴射量が、更に、各気筒毎の吸入空気量の違いに応じて補正されることとなる。
【0035】
上記のような本実施形態の多気筒エンジンの空燃比制御方法によれば、エアフローメーター3による吸入空気流量や吸気温度だけでなく、センサー25による排気ガスの空燃比も測定した上で、各気筒の燃料噴射量を制御しているため、加速時や減速時のような過渡時においても、運転状態の変化に合わせて各気筒の空燃比を制御することができる。
【0036】
また、従来から設置されているエンジン回転数センサー23と気筒判別センサー24により、各気筒毎の吸入空気量を推定することによって、各気筒の燃料噴射量を、それぞれの気筒毎の吸入空気量に応じたものとなるように補正しているため、各気筒間での空燃比のバラツキをなくして、各気筒毎の空燃比を精度良く制御することができる。
【0037】
そして、エンジン回転数センサー23と気筒判別センサー24から推定した各気筒毎の吸入空気量に応じて、各気筒毎の燃料噴射量を制御しているため、排気ガスの空燃比を測定するためのセンサー25を、少なくとも基準とする一つの気筒に対して設置するだけでよく、各気筒毎にそれぞれセンサー25を設置したり、あるいは、各気筒からの排気ガスの集合部にセンサー25を設置したりする必要がない。
【0038】
そのため、新たにセンサーを増設するような必要もなく、しかも、各気筒からの排気ガスの集合部よりも上流側で、できるだけエンジン本体7に近づけてセンサー25を設置することができるため、排気ガスの圧力波を利用するために排気ガスの集合部11をエンジン本体7から離したようなエンジン1においても、センサー25からのフィードバック制御による空燃比制御の応答性を良くすることができる。
【0039】
【発明の効果】
以上説明したような本発明の多気筒エンジンの空燃比制御方法によれば、過渡時においても、運転状態の変化に合わせて各気筒の空燃比を制御することができ、その上、各気筒の空燃比の制御を、新たにセンサーを増設することなく、気筒毎の吸入空気量に合わせて、各気筒毎に精度良く行うことができると共に、排気ガスの圧力波を利用するために排気集合部をエンジン本体から離したようなエンジンにおいても、空燃比の制御を応答性良く行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の空燃比制御方法が適用される多気筒エンジンの一例について、その概略を示す説明図。
【図2】図1に示した多気筒エンジンにおける排気管の集合構造についての他の例を示す説明図。
【図3】本発明の空燃比制御方法において、各気筒のクランク回転変動を求めるための圧縮行程におけるクランク回転角度を示す説明図。
【図4】図1に示した多気筒エンジンにおける各気筒毎のクランク回転速度の変動を示すグラフ。
【図5】本発明の空燃比制御方法について、その一実施形態におけるマイクロコンピューターによる処理の概略を示すフローチャート。
【図6】各気筒のクランク回転(速度)変動量から各気筒の吸入空気量をそれぞれ求める場合の(A)第1気筒,(B)第2気筒,(C)第3気筒,(D)第4気筒についての各マップ。
【図7】第1気筒のクランク回転(速度)変動量を基準とし、これと他の気筒のクランク回転(速度)変動量の比から直接各気筒の吸入空気量の比を求める場合についてのマップ。
【符号の説明】
1 多気筒エンジン
7 エンジン本体(各気筒)
11 (排気ガスの)集合部
15 排気制御バルブ
18 カム位相角度可変装置
25 (排気ガスの空燃比を検出する)センサー

Claims (3)

  1. 排気ガスの空燃比を検出するセンサーの検出結果に基づくフィードバック制御により各気筒の空燃比を制御する多気筒エンジンの空燃比制御方法において、排気ガスの空燃比を検出するためのセンサーを、各気筒からの排気ガスの集合部よりも上流側で、何れかの気筒に対して設置することにより、該センサーによる検出結果と、各気筒における圧縮行程でのクランク回転速度の変動量とに基づいて、各気筒毎に空燃比をそれぞれ制御することを特徴とする多気筒エンジンの空燃比制御方法。
  2. 排気ガスの集合部に排気制御バルブを設置することにより、排気ガスの流量を制御することを特徴とする請求項1に記載の多気筒エンジンの空燃比制御方法。
  3. エンジン本体に対してカム位相角度可変装置を設置することにより、吸・排気バルブの開閉タイミングを制御することを特徴とする請求項2に記載の多気筒エンジンの空燃比制御方法。
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