JP3687956B2 - 圧力油室を有するラチェット式テンショナ - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、車両用エンジンのタイミングチェーン、タイミングベルト、あるいは駆動装置の伝動用チェーン、ベルト等に、適正張力を付与するために用いられるラチェット式テンショナに関し、特に、油圧によるダンパー効果を得るために設けられた圧力油室から、エンジン停止中に油が漏出するのを抑制した圧力油室を有するラチェット式テンショナに関する。
【0002】
【従来の技術】
図5には、チェーンドライブシステム30が示され、このチェーンドライブシステム30は、クランクスプロケットS1とカムスプロケットS2との間で動力を伝達するタイミングチェーンCに、テンショナレバーTを押し付けて適正張力を付与するラチェット式テンショナ31を備えたものである。
【0003】
ラチェット式テンショナ31は、図6,図7に示すように、テンショナボディ32に形成されたシリンダ室33内に、圧縮ばね35によりばね付勢されてテンショナボディ32から先端部が突出するように摺動自在に嵌入されたプランジャ34と、プランジャ34の後退変位を阻止するラチェット機構36とで構成されている。
【0004】
プランジャ34の内部には、後端部が開口する中空部34Bが形成されており、この中空部34Bとシリンダ室33とで圧力油室37が形成され、シリンダ室33の底部にはテンショナボディ32に形成された油流入路32Aが開口している。圧力油室37には、エンジンの回転により伝達される動力で駆動されるオイルポンプ(図示略)により供給される油が油流入路32Aから導入される。また、この圧力油室37には、プランジャ34の先端部をテンショナボディ32外部に突出させる圧縮ばね35が収容されている。
【0005】
ラチェット機構36は、テンショナボディ32に揺動自在に軸38Aより軸支されると共にラチェット爪体用圧縮ばね38Bで付勢されたラチェット爪体38が、プランジャ34外周一側面に刻設されたラチェット歯34Aに係合するように形成されたもので、プランジャ34がバックラッシュの範囲を超えて必要以上に後退しないようにしたものである。
【0006】
上記のように構成されたラチェット式テンショナ31は、エンジンが回転してオイルポンプが駆動している間、圧力油室37に油が供給される。走行するチェーンCが緩むと圧縮ばね35によりプランジャ34が突出し、テンショナレバーTを押し付けて走行するチェーンCに張力を付与すると共に、チェーン走行時の振動を防止する。
【0007】
走行するチェーンが緩んだ後、緊張してテンショナレバーTが反力、衝撃を受けると、プランジャ34が圧縮ばね35の付勢力に抗してシリンダ室33内に押し込まれるが、圧力油室37内の油圧によるオイルダンパー効果により、衝撃は吸収され緩和される。この場合、バックラッシュの範囲内で、オイルダンパー効果が発揮されるが、プランジャ34がその範囲を超えて後退しようとすると、ラチェット歯34Aとラチェット爪体38の爪との係合により、プランジャ34の後退が阻止される。
【0008】
また、長期の運転使用によってチェーンの摩耗伸びが生じて、プランジャ34がバックラッシュの範囲を超えてテンショナボディ32から突出するようになると、プランジャ34のラチェット歯34Aとラチェット爪体38の爪との係合が1歯分ずれて、チェーンの伸びに追従してテンショナボディ32の外方に移動し、常にラチェット式テンショナ31はチェーンに対する適当な押し付け力を保持する。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
従来のラチェット式テンショナは、シリンダ室に摺動自在にプランジャが嵌入されているため、シリンダ室とプランジャとのクリアランス(僅かな隙間)から油が漏れるが、エンジンが回転し、オイルポンプから油が供給されている間は、圧力油室に油が満たされているので、油圧によるオイルダンパー効果が得られ、格別の問題は生じない。しかし、エンジンの停止時にオイルポンプから油が供給されなくなったとき、例えば、駐車(自動車の場合)によりある程度時間が経過すると、シリンダ室とプランジャとの僅かな隙間から油が漏れ出し、圧力油室内部が空になってしまい、次にエンジンを始動したときに、オイルポンプから供給される油が圧力油室に満たされるまでに時間がかかり、その間、油圧によるオイルダンパー効果が得られない。その結果、エンジン始動後、僅か数秒乃至10数秒ではあるが、プランジャの突出入に伴う打音が発生し、テンショナボディから異音が発生すると共に、チェーンの張りを保つことができないという問題がある。
【0010】
かかる問題を解決するために、ラチェット機構を備えていない油圧式テンショナにおいては、圧力油室からの油漏出を防止するように、プランジャ外周にOリングを設けてシリンダ室とプランジャとの隙間から油が漏出するのを防止することも行われているが、ラチェット式テンショナにおいては、プランジャ外周にラチェット歯が刻設されているため、適切な位置にOリングを装着することが困難であり、また、ラチェット機構を備えたラチェット式テンショナにおいて、プランジャ外周にOリングを装着したとしても、ラチェット式テンショナの組み立て時に、シリンダ室にプランジャを嵌入する際、ラチェット爪体を配置するために設けられた凹溝のエッジ(図7のE参照。)にOリングが引っかかり、Oリングに傷が付くという問題がある。
【0011】
そこで、本発明は、前述したような従来技術の問題点を解消し、圧力油室を備えたラチェット式テンショナにおいて、エンジンの停止中に、主プランジャとインナープランジャとの間から油が漏出するのを抑制することにより、圧力油室からの油漏出を抑制し、常時圧力油室に油を満たしておくことができるようにすることを目的とする。
【0012】
【課題を解決するための手段】
前記目的を達成するために、請求項1に係る本発明は、テンショナボディに形成されたシリンダ室内に、ばね付勢されてテンショナボディから先端部が外部に突出するように摺動自在に嵌入された主プランジャと、主プランジャ内部に摺動自在に嵌入されたインナープランジャと、主プランジャ内部とインナープランジャ内部とで形成された圧力油室と、圧力油室内に主プランジャをばね付勢するために設けられた圧縮ばねと、主プランジャの後退変位を阻止するラチェット機構とを備えてなる圧力油室を有するラチェット式テンショナにおいて、インナープランジャには、テンショナボディに形成された油流入路から供給される油を圧力油室に導入するための油導入孔を有する底板が形成されていると共に、その外周に主プランジャの内壁に摺動接触するOリングが装着されている圧力油室を有するラチェット式テンショナ、という構成とする。請求項2に係る本発明は、請求項1記載の圧力油室を有するラチェット式テンショナにおいて、主プランジャの外周には、長手方向にスリットが形成されている、という構成とする。請求項3に係る本発明は、請求項1または2記載の圧力油室を有するラチェット式テンショナにおいて、インナープランジャ内部の油導入孔近傍には、前記圧力油室への油の流入を許容するが逆流を阻止するチェックバルブが設けられている、という構成とする。
【0013】
【作用】
本発明のラチェット式テンショナは、エンジンの停止に伴ってオイルポンプから油が供給されなくなったとき、インナープランジャにOリングが設けられていることにより、主プランジャとインナープランジャとの間からの油漏出が抑制され、ある程度時間が経過しても、圧力油室の油が漏出して空になることはない。その結果、圧力油室には、常時油が満たされていて、エンジン停止後の再始動時に、直ちに油圧によるオイルダンパー効果が得られると共に、テンショナボディから異音が発生することはなく、チェーンの張りが保たれ、チェーンドライブシステムは静粛に稼働される。
【0014】
【発明の実施の形態】
本発明の実施の形態を、実施例1に基づき図1、図2を参照して説明する。図1には、ラチェット式テンショナ1の断面が示され、このテンショナ1は、金属製のテンショナボディ2に形成されたシリンダ室3内に、後端部が開口する中空部を有する主プランジャ4が圧縮ばね7によりばね付勢されてテンショナボディ2から先端部が外部に突出するように摺動自在に嵌入される。また、主プランジャ4は、先端部が開口する中空部を有するインナープランジャ5の外側に摺動自在に嵌まっている。すなわち、この主プランジャ4内部には、インナープランジャ5が摺動自在に嵌入されている。
【0015】
インナープランジャ5の後端部には、テンショナボディ2に形成された油流入路2Aと対応する位置に油導入孔5Aを有する底板5Bが形成され、このインナープランジャ5は、シリンダ室3の底部に形成された円筒状の凹溝2Bに嵌入されることにより、油流入路2Aと油導入孔5Aと連通する。また、主プランジャ4とインナープランジャ5との間をシールするために、インナープランジャ5の先端部外周には、主プランジャ4の内壁に摺動接触するOリング8が装着される。
【0016】
前記のように、主プランジャ4内部にインナープランジャ5が嵌入されることにより、主プランジャ4内部とインナープランジャ5内部とでそれぞれの中空部により圧力油室6が形成される。また、前記のように、油流入路2Aと油導入孔5Aとが連通していることにより、この圧力油室6には、テンショナボディ2外部からオイルポンプ(図示略)により圧出される油が油流入路2A、油導入孔5Aから導入される。
【0017】
また、この圧力油室6内には圧縮ばね7が設けられる。この圧縮ばね7は、主プランジャ4先端部がテンショナボディ2外部に突出するように付勢する一方、インナープランジャ5の底板5Bを下方に付勢する。この場合、ラチェット式テンショナ1がエンジン、駆動装置等に設置されたとき、主プランジャ4は、チェーンに当接するテンショナレバー(図5参照。)によりシリンダ室3内に押し込まれるため抜け外れが防止され、また、この押し込みにより圧縮ばね7がインナープランジャ5の底板5Bを付勢し、インナープランジャ5をシリンダ室3の底部に形成された凹溝2Bに嵌入固定する。このように、圧縮ばねを利用してインナープランジャ5を固定するので、インナープランジャ5を固定する別部材の必要がなく、ラチェット式テンショナの製造、組み立てが容易に行われる。
【0018】
さらに、テンショナボディ2には、主プランジャ4の後退変位を阻止するラチェット機構9が設けられ、このラチェット機構9は、主プランジャ4外周面に刻設されたラチェット歯4Aと、テンショナボディ2に軸支されたラチェット爪体10とで構成され、ラチェット爪体10はラチェット歯4Aに係合するようにばね付勢されている。この場合、ラチェット歯4Aとラチェット爪体10の爪との間にバックラッシュを持たせてあり、主プランジャ4は、バックラッシュの範囲を越える前進(突出)は可能であるが、バックラッシュの範囲を越える後退変位は、ラチェット歯4Aとラチェット爪体9の爪との係合により阻止され、プランジャ4は必要以上に後退しない。なお、図1,図2において、9Aは軸またはピン、9Bは圧縮ばねである。
【0019】
ラチェット式テンショナ1の作用は、次のとおりである。圧力油室6内は、常時テンショナボディ2の外部に設けられたオイルポンプで供給される油によって満たされている。走行するチェーンが緩むと圧縮ばね7により主プランジャ4が突出し、テンショナレバーをチェーンに押し付けて、走行するチェーンに張力を付与すると共に、チェーン走行時の振動を防止する。
【0020】
走行するチェーンが緩んだ後、緊張してテンショナレバーが反力、衝撃を受けると、プランジャ4が圧縮ばね7の付勢力に抗してシリンダ室3内に押し込まれ、それに伴って、圧力油室6内の油圧がさらに上昇する。このとき、Oリング8が装着されたインナープランジャ5と主プランジャ4との間の僅かな隙間から漏れ出る油の流動抵抗により、衝撃のエネルギーが吸収され、結局、ラチェット式テンショナは、圧力油室6内の油圧によるオイルダンパー効果により、衝撃を緩和する。
【0021】
また、長期の運転使用によってチェーンの摩耗伸びが生じて、主プランジャ4がバックラッシュの範囲を超えてテンショナボディ2から突出するようになると、主プランジャ4のラチェット歯4Aとラチェット爪体9の爪との係合が1歯分ずれて、チェーンの伸びに追従してテンショナボディ2の外方に移動し、常に主プランジャ4はチェーンに対する適当な押し付け力を保持する。
【0022】
なお、図2には、チェーンの伸びによって、主プランジャ4がテンショナボディ2の外方に最も移動したときの状態が示され、この図2から分かるように、ラチェット式テンショナ1のオイルダンパー効果を勘案して、主プランジャ4の長さ及びインナープランジャ5の長さは決められるが、この場合、少なくともOリング8の設置位置の距離長Lは、主プランジャ4の必要ストロークSTと同じ長さまたはそれより長くしなければならない。
【0023】
実施例2を図3(A)、(B)に基づいて説明する。この実施例2のラチェット式テンショナ11は、実施例1のラチェット式テンショナ1と主プランジャ4の外周にスリット4Bを形成した点が異なるので、この点を主に説明し、実施例1と同一態様部材には同一符号を付すのみで、詳細説明は省略する。
【0024】
図3(B)に示されるように、インナープランジャ5の外周にOリング8が設けられているため、主プランジャ4がシリンダ室3から突出するとき、シリンダ室3と主プランジャ4後端部との間の環状隙間Dが負圧になる。そのため、走行中のチェーンが緩るんだ場合、主プランジャ4が圧縮ばね7によりテンショナボディ2外部に突出するときの突出タイミングが遅れる。この解決手段として、主プランジャ4の外周に、ラチェット歯4Aに連続して長手方向に亘ってスリット4Bを形成し、環状隙間Dとテンショナボディ2外部とが通気可能になるようにしたものである。
【0025】
上記のように、主プランジャ4の外周に、ラチェット歯4Aに連続してスリット4Bを形成したものであるから、走行中のチェーンが緩るみ、チェーンが走行ラインから外れて、主プランジャ4が圧縮ばね7によりテンショナボディ2外部に突出するとき、シリンダ室3と主プランジャ4後端部との間の環状隙間Dが負圧になることが防止される。その結果、チェーンの緩みに対するレスポンスが良好になり、主プランジャ4の突出作動を機敏に行うことができので、突出タイミングの遅れが防止され、常に走行するチェーンに適正張力を付与することができる。
【0026】
実施例3を図4に基づいて説明する。この実施例3のラチェット式テンショナ21は、実施例1のラチェット式テンショナ1、あるいは実施例2のラチェット式テンショナ11に、チェックバルブ22を設けたものである点が異なるので、この点を主に説明し、実施例1、2と同一態様部材には同一符号を付すのみで、詳細説明は省略する。
【0027】
ラチェット式テンショナ21は、実施例1、2と同様に、主プランジャ4内部とインナープランジャ5内部とで形成された圧力油室6を有し、この圧力油室6内にチェックバルブ22が設けられる。
【0028】
このチェックバルブ22は、インナープランジャ5の底板5Bの上方に形成されているもので、インナープランジャ5の底板5Bに形成された油導入孔5Aを上方から塞ぐように設けられたチェックボール22Aと、チェックボール22Aを付勢するスプリング22Bと、該スプリング22Bを支持するリテーナ22Cとで構成され、圧力油室6に油の流入を許容するが逆流を阻止するものである。
【0029】
圧力油室6内には、外部のオイルポンプで供給される油が、油流流入路2A,油導入孔5A、チェックバルブ22を通って供給され、圧力油室6内は油で満たされている。走行するチェーンが緩むと圧縮ばね7により主プランジャ4が突出し、テンショナレバーTをチェーンに押し付ける。この場合、オイルポンプからの油圧によりチェックバルブ22は開放されている。
【0030】
また、走行するチェーンが緩んだ後、緊張してテンショナレバーTが反力、衝撃を受けると、プランジャ4が圧縮ばね7の付勢力に抗してシリンダ室3内に押し込まれるが、チェックバルブ22を構成するチェックボール22Aが油導入孔5Aを塞ぐことにより、チェックバルブ22が閉じられ、それに伴って、圧力油室6内の油圧が上昇する。その結果、ラチェット式テンショナは、圧力油室6内の油圧によるオイルダンパー効果により、衝撃を緩和する。
【0031】
上記のように形成されたラチェット式テンショナ21は、エンジン、駆動装置等に取り付けられた場合、テンショナのテンショナボディ2から先端部が突出するように設けられた主プランジャ4が、チェーンに押圧されて、シリンダ室3内に押し込められているので、圧縮ばね7が、チェックバルブ22のリテーナ22Cを介在してインナープランジャ5の底板5Bを常時付勢することになり、インナープランジャ5がシリンダ室3の底部に形成された凹溝2Bに嵌入固定される。
【0032】
以上、実施例1乃至3としてラチェット式テンショナの構成、作用について説明したが、ラチェット式テンショナ1、11、21は、エンジンの停止に伴って、オイルポンプからの油供給が途絶えた場合、インナープランジャ5にOリング8が装着されていることにより、主プランジャ4とインナープランジャ5との間からの油漏出が抑制され、ある程度時間が経過しても、圧力油室6の油が漏出して空になることを防止することができる。その結果、ラチェット式テンショナ1、11、21は、圧力油室6には、常時油が満たされていて、エンジン停止後の再始動時に、直ちに油圧によるオイルダンパー効果を得ることができると共に、プランジャの突出入に伴う打音がなくなり、テンショナボディ2からの異音発生を防止することができる。また、エンジン停止後の再始動時においても、直ちにオイルダンパー効果を得ることができるので、常時チェーンの張りを保つことができ、チェーンドライブシステムを静粛に稼働することができる。また、実施例3のように、ラチェット式テンショナ21が、チェックバルブ22を備えている場合には、さらに効果的な油圧によるオイルダンパー効果を得ることができる。
【0033】
なお、本発明の実施例乃至3として、圧力油室を有するラチェット式テンショナがチェーンに張力を付与する場合のものについて説明したが、本発明の圧力油室を有するラチェット式テンショナは、走行するベルトに張力を付与する場合にも使用されるものである。
【0034】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明は、ラチェット式テンショナが、テンショナボディに形成されたシリンダ室内に、ばね付勢されてテンショナボディから先端部が外部に突出するように摺動自在に嵌入された主プランジャと、主プランジャ内部に摺動自在に嵌入されたインナープランジャとを備え、インナープランジャには、テンショナボディに形成された油流入路から供給される油を圧力油室に導入するための油導入孔を有する底板が形成されていると共に、その外周に主プランジャの内壁に摺動接触するOリングが装着されているので、エンジンを停止して、オイルポンプからの油供給が途絶えた場合、インナープランジャ5にOリング8が装着されていることにより、圧力油室からの油漏出が抑制され、ある程度時間が経過しても、圧力油室6の油が漏出して空になるのを防止することができる。
【0035】
その結果、ラチェット式テンショナは、圧力油室には、常時油が満たされていて、エンジン停止後の再始動時に、直ちに油圧によるオイルダンパー効果を得ることができると共に、プランジャの突出入に伴う打音がなくなり、テンショナボディからの異音発生を防止することができる。また、エンジン停止後の再始動時に、直ちに油圧によるオイルダンパー効果を得ることができるので、常時チェーンの張りを保つことができ、チェーンドライブシステムを静粛に稼働することができる。
【0036】
主プランジャの外周に、長手方向にスリットが形成されている場合には、主プランジャが圧縮ばねによりテンショナボディ外部に突出するとき、シリンダ室と主プランジャ4後端部との間の環状隙間Dが負圧になるのを防止することができる。その結果、主プランジャの突出作動を機敏に行うことができので、突出タイミングの遅れが防止され、常に走行するチェーンに適正張力を付与することができる。
【0037】
インナープランジャ内部の油導入孔近傍に、前記圧力油室への油の流入を許容するが逆流を阻止するチェックバルブが設けられている場合には、さらに効果的な油圧によるオイルダンパー効果を得ることができる。
【0038】
また、ボディをプラスチック製等寸法精度が大きかったり、温度に対して寸法変化が大きいものにしたときでもインナープランジャと主プラッジャとでオイルダンパー効果を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明実施例1のラチェット式テンショナの断面図である。
【図2】 同上ラチェット式テンショナのOリング配置位置の説明図である。
【図3】 本発明実施例2のラチェット式テンショナを示し、(A)は、主プランジャの突出前の断面図であり、(B)は、主プランジャの突出後の断面図である。
【図4】 本発明実施例3のラチェット式テンショナの断面図である。
【図5】 チェーンドライブシステムの説明図である。
【図6】 従来のラチェット式テンショナの斜視図である。
【図7】 従来のラチェット式テンショナの断面図である。
【符号の説明】
1、11、21 ラチェット式テンショナ
2 テンショナボディ
2A 油流入路
2B 凹溝
3 シリンダ室
4 主プランジャ
4A ラチェット歯
4B スリット
5 インナープランジャ
5A 油導入孔
5B 底板
6 圧力油室
7 圧縮ばね
8 Oリング
9 ラチェット機構
10 ラチェット爪体
22 チェックバルブ
22A チェックボール
22B スプリング
22C リテーナ
D 環状隙間
Claims (3)
- テンショナボディに形成されたシリンダ室内に、ばね付勢されてテンショナボディから先端部が外部に突出するように摺動自在に嵌入された主プランジャと、主プランジャ内部に摺動自在に嵌入されたインナープランジャと、主プランジャ内部とインナープランジャ内部とで形成された圧力油室と、圧力油室内に主プランジャをばね付勢するために設けられた圧縮ばねと、主プランジャの後退変位を阻止するラチェット機構とを備えてなる圧力油室を有するラチェット式テンショナにおいて、
インナープランジャには、テンショナボディに形成された油流入路から供給される油を圧力油室に導入するための油導入孔を有する底板が形成されていると共に、その外周に主プランジャの内壁に摺動接触するOリングが装着されていることを特徴とする圧力油室を有するラチェット式テンショナ。 - 前記主プランジャの外周には、長手方向にスリットが形成されていることを特徴とする請求項1に記載の圧力油室を有するラチェット式テンショナ。
- 前記インナープランジャ内部の油導入孔近傍には、前記圧力油室への油の流入を許容するが逆流を阻止するチェックバルブが設けられていることを特徴とする請求項1または2に記載の圧力油室を有するラチェット式テンショナ。
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