JP3673909B2 - 内燃機関 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、車両に搭載される内燃機関(以下、エンジンという)に関するものである。
【0002】
【関連する背景技術】
従来から運転者の不用意なアクセル操作によって生じる加速ショック(車両前後Gの急変)を低減するために、加速時にエンジントルクの急増を抑制する制御が実施されている。例えば、図6では機関回転数やスロットル開度等から設定される目標平均有効圧Peに基づいて燃料噴射量を制御してエンジントルクを調整する場合を示しているが、この図に示すように、車両の減速中にアクセルが踏込まれて加速に移行した時点(アイドルスイッチがオフされた時点)で、通常であればアクセル操作量と共に破線のように急増する目標平均有効圧Peをテーリングにより実線のように緩やかに増加させ、もって、加速ショックの低減を図っている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記したテーリング処理の開始タイミングは車両の運転状況によっては適切でない場合があった。即ち、例えば車両の減速時には、エンジンブレーキ作用の確保やエンジン回転数を燃料カット回転域に留めることを目的として、自動変速機をダウンシフト側に変速制御しているが、図6に示すように、運転者のアクセル踏込みの直前にダウンシフトが開始された場合には、変速完了する(変速期間Tが経過する)以前にテーリング処理が開始されることになる。
【0004】
そして、周知のように変速中の自動変速機はトルク伝達作用を奏しないため、変速完了の時点で、既にテーリングによりある程度の値ΔPeまで増加した目標平均有効圧Peに基づいて急激にトルク伝達が行われて、逆に加速ショックを強めてしまう場合があった。又、このような不具合を回避するには、テーリングのゲインを縮小して目標平均有効圧Peの増加をより緩やかにすることが考えられるが、この場合には加速応答性が悪化するという別の問題が生じてしまう。
【0005】
本発明の目的は、加速応答性の悪化を回避した上で、自動変速機の変速中に加速が開始された場合の加速ショックを低減することができる内燃機関を提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するため、請求項1の発明では、加速時に内燃機関への燃料供給量を徐々に要求燃料量まで増大する燃料制御手段と、所定の運転状態が検出されたとき、自動変速機のシフト制御を実行する変速制御手段と、変速制御手段によるシフト制御中に加速要求があったとき、シフトが完了する所定期間前までは燃料制御手段の作動を停止する停止手段とを備えた。従って、例えば車両の減速に伴ってダウンシフト制御が開始され、そのダウンシフト完了以前に運転者にてアクセルが踏込まれたときには、ダウンシフトが完了するまで内燃機関への燃料供給量の増大が遅延されて、ダウンシフト中に中断されていたトルク伝達の再開と同期する適切なタイミングで燃料供給量の増大が開始される。又、このようにタイミングが適切であることから、燃料供給量の増大を必要以上に緩やかにする必要がなくなる。
【0007】
又、請求項2の発明では、加速時に内燃機関への燃料供給量を徐々に要求燃料量まで増大する燃料制御手段と、所定の運転状態が検出されたとき、自動変速機のシフト制御を実行する変速制御手段と、変速制御手段によるシフト制御中に加速要求があったとき、シフトが完了する所定期間前までは燃料制御手段の作動を停止する停止手段と、加速要求の時点からシフトが完了する所定期間までに、内燃機関の要求燃料量より少ない燃料を供給する燃料供給手段とを備えた。従って、シフトが完了する所定期間までに事前に燃料供給量が増大されているため、シフトが完了した時点で速やかに加速を開始可能となる。
【0008】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を筒内噴射型のガソリンエンジンに具体化した一実施例を説明する。
図1の全体構成図において、1はエンジンであり、燃焼室2や吸気系等が筒内噴射専用に設計されている。エンジン1のシリンダヘッド3には、各気筒毎に点火プラグ4と共に電磁式の燃料噴射弁5が取り付けられており、図示しない燃料ポンプから供給された高圧燃料が、燃料噴射弁5より燃焼室2内に直接噴射されるようになっている。
【0009】
シリンダヘッド3には吸気ポート6が略直立方向に形成され、この吸気ポート6には吸気通路7が接続されている。吸気通路7には吸入空気量を調整するためのスロットルバルブ8が設けられ、運転者のアクセル操作に応じて開閉されるようになっている。吸気通路7から取入れられた吸入空気は、スロットルバルブ8を経て吸気弁9の開弁に伴って吸気ポート6から燃焼室2内に導入され、その吸入空気中に燃料噴射弁5から燃料が噴射されて、点火プラグ4の点火により燃焼する。
【0010】
又、シリンダヘッド3には排気ポート10が略水平方向に形成され、この排気ポート10には排気通路11が接続されている。燃焼後の排ガスは、排気弁12の開弁に伴って燃焼室2から排気ポート10、排気通路11、及び図示しない触媒や消音器を経て大気中に排出される。
一方、エンジン1には5速式の自動変速機13が組み合わされている。この自動変速機13はトルクコンバータ14、トルクコンバータ14を直結するためのロックアップクラッチ15、及び遊星歯車機構16を備えた一般的な構成であり、周知のように遊星歯車機構16の作動状態を摩擦係合要素の係合に応じて切換えることで、エンジン1からの回転を変速して図示しない駆動輪側に伝達するようになっている。
【0011】
車室内には、図示しない入出力装置、制御プログラムや制御マップ等の記憶に供される記憶装置(ROM,RAM,BURAM等)、中央処理装置(CPU)、タイマカウンタ等を備えたECU(エンジン制御ユニット)21及びAT−CU(変速機制御ユニット)22が設置されており、ECU21はエンジン1の総合的な制御を行い、AT−CU22は自動変速機13の総合的な制御を行う。
【0012】
ECU21の入力側には、スロットルバルブ8の開度θTHを検出するスロットルセンサ23、スロットルバルブ8の全閉状態を検出するアイドルスイッチ24、エンジン1の回転数Neを検出するエンジン回転数センサ25、運転者によるアクセルペダルの操作量Accを検出するアクセルセンサ26、車速Vを検出する車速センサ27、運転者にて選択された自動変速機13のシフト位置を検出するシフト位置センサ28等の各種センサ類が接続されて、それらの検出情報が入力されるようになっている。ECU21の出力側には、前記した点火プラグ4がイグナイタ31及び点火コイル32を介して接続されると共に、燃料噴射弁5が接続されている。
【0013】
又、AT−CU22の入力側には、前記した車速センサ27やシフト位置センサ28等の各種センサ類が接続され、出力側には、自動変速機13の摩擦係合要素やロックアップクラッチ15を作動させるための油圧ソレノイド33が接続されている。
ECU21は、各センサからの検出情報に基づいてエンジン1の燃料噴射制御や点火時期制御を実行する。燃料噴射制御に関しては、目標空燃比や燃料噴射モード(燃料噴射を実行する行程を表す)に基づいて燃料噴射弁5を駆動制御する。本実施形態の筒内噴射型エンジン1では、燃料噴射制御を実行するためのパラメータとしてエンジン負荷を表す目標平均有効圧Peを利用しており、スロットル開度θTHとエンジン回転数Neとに基づいて図示しないマップから目標平均有効圧Peを算出し、更に、その目標平均有効圧Peとエンジン回転数Neとから別のマップに従って目標空燃比や燃料噴射モード等を設定している。燃料噴射モードは、吸気行程のみならず圧縮行程でも燃料噴射可能な筒内噴射型エンジン特有のモードであり、目標平均有効圧Peやエンジン回転数Neが比較的低い領域では、圧縮行程噴射により層状燃焼を実行して超リーン運転を実現し、又、それ以上の領域では、通常の吸気行程噴射を実行して均一燃焼によるトルク確保を図っている。
【0014】
又、点火時期制御に関しては、エンジン回転数Neと体積効率EVとから決定した基本点火時期に各種補正量を加算して点火時期を求め、イグナイタ31を駆動制御して実際の点火時期を制御する。尚、体積効率EVは、前記した目標平均有効圧Peとエンジン回転数Neから求める。
一方、本実施形態ではAT−CU22は変速制御手段として機能し、各センサからの検出情報に基づいて自動変速機13の変速制御やロックアップクラッチ制御を実行する。例えばシフト位置センサ28にてD(ドライブ)等の走行レンジが検出されているときには、前記した目標平均有効圧Peや車速V等から図示しないマップに従って変速段を決定し、油圧ソレノイド33により摩擦係合要素を作動させてその変速段を達成する。又、主にトルクコンバータ14のカップリング領域において、定速走行時のようにトルク増大作用を必要としない走行状態のときには、油圧ソレノイド33によりロックアップクラッチ15を直結させて燃費向上を図る。そして、AT−CU22は、変速開始タイミングやロックアップクラッチ15の作動状態をECU21に出力し、後述するようにECU21側でこれらの情報がエンジン制御に利用される。
【0015】
次に、車両が減速から加速に移行したときにECU21によって実行される制御を説明する。
車両の減速中においてアクセルが踏込まれて加速に移行したとき、上記のようにマップから求められる目標平均有効圧Pe(以下、マップ値Pe mapという)は、図4に破線で示すように急激に増加する。ここで、本実施形態では所定の条件が成立したときに、加速ショックの低減や加速応答性の確保を目的として目標平均有効圧Peを2段階にテーリングしており、以下、その詳細を説明する。
【0016】
ECU21は図2に示す加速時テーリングルーチンを所定の制御インターバルで実行し、まず、ステップS2で予め設定されたテーリングの開始条件が成立したか否かを判定する。本実施形態では、開始条件として以下の2つの要件が定められており、これらの要件が共に満たされたときに開始条件が成立したと判定する。
【0017】
1)車速Vが所定値V01以上であること
2)アイドルスイッチがオンからオフに切り換わったこと
つまり、1)の車速に関する要件により発進時(車速V≒0)は除外されるため、車両の減速中において運転者にてアクセルが踏込まれたときに、開始条件が成立する。尚、このように発進時を除いたのは、減速から加速に移行したときのショックは、後述するように減速時に負の値であったトルクコンバータ14のスリップ量が正の値に転じて動力伝達が開始されるまでの遅れ、或いは加速開始時に自動変速機13がダウンシフト中のときには変速が完了して動力伝達が再開されるまでの遅れが原因であることから、発進時のように元々スリップ量が負の値とならず,且つダウンシフトも実行されない状況では、テーリング処理を必要としないとの知見からである。
【0018】
ステップS2の判定がNO(否定)のときにはルーチンを終了する。従って,この場合には別ルーチンで実行している燃料噴射制御において、通常どおり目標平均有効圧Peとしてマップ値Pe mapが適用されて、テーリングを実施することなくアクセル操作に応じてエンジントルクが制御される。
又、ステップS2の判定がYES(肯定)のときにはステップS4に移行して、テーリング処理に適用される各パラメータを設定する。この設定処理は、上記した開始条件が成立する直前の自動変速機13の変速段(1速〜5速)、ロックアップクラッチ15の作動状況(直結or非直結)、及び所定値Ne0を基準としたエンジン回転数Neの高低(Ne≧Ne0 or Ne<Ne0)に応じて行われ、図3の説明図に示すように、1次テーリングのゲインG1、2次テーリングのゲインG2、1次テーリングにおいて目標平均有効圧Peの上限を制限するためのホールド値Pe hold、及び2次テーリングの開始時間Tstart(開始条件の成立時を起点とする)がパラメータとして設定される。
【0019】
又、ステップS4では、2次テーリングの終了時間Tend(開始条件の成立時を起点とする)、及びダウンシフトの予測所要時間Tshift(ダウンシフト側への変速開始時を起点とする)を設定する。終了時間Tendは、後述のようにテーリングにより増加中の目標平均有効圧Peがマップ値Pe mapに達した時点で2次テーリングが終了するように、上記した開始条件が成立する直前の自動変速機13の変速段(1速〜5速)、及びその時点で減速に伴う燃料カットが復帰しているか否かに応じて設定される。又、ダウンシフト側への変速を開始してから完了するまでの予測所要時間Tshiftは変速段に応じて異なることから、例えば3速から1速、或いは2速から1速等の変速段毎に設定される。
【0020】
ステップS4の設定処理が完了すると、続くステップS6乃至ステップS10で目標平均有効圧Peの1次テーリングを実行する。まず、ステップS6で次式(1)に従って1次テーリングゲインG1に基づいてテーリング値Pe tail1を算出する。
Pe tail1=Pe(n-1)+G1 ………(1)
ここに、Pe(n-1)は燃料噴射制御に適用された1周期前の目標平均有効圧Peである。次いで、ステップS8で上記したホールド値Pe hold、テーリング値Pe tail1、及びマップ値Pe mapから最小値を選択して、その値を最終的な目標平均有効圧Peとして設定する。その後、ステップS10で2次テーリング開始時間Tstartが経過したか否かを判定し、未だ経過していないときにはステップS6に戻る。従って、2次テーリング開始時間Tstartが経過するまではステップS6及びステップS8の処理が繰り返され、最小値として選択された目標平均有効圧Peが燃料噴射制御に適用される。
【0021】
ここで、マップ値Pe map及びテーリング値Pe tail1は、アクセル踏込みに伴ってその直前の目標平均有効圧Pe(=マップ値Pe map)を起点として共に増加するが、マップ値Pe mapがアクセル操作に依存して増加するのに対し、テーリング値Pe tail1は1次テーリングゲインG1に従って増加する。そして、マップ値Pe mapとテーリング値Pe tail1の小さい側が目標平均有効圧Peとして選択されることから、目標平均有効圧Peは1次テーリングゲインG1を上限とした制限を受けながら増加し、その後、目標平均有効圧Peがホールド値Pe holdに達すると、その値に保持され続ける。1次テーリングゲインG1としては比較的大きな値が設定されていることから、その制限を受けた場合であっても目標平均有効圧Peはかなり急激に増加する。尚、このように1次テーリングゲインG1による制限を設けずに、目標平均有効圧Peをマップ値Pe mapに従ってホールド値Pe holdまで増加させてもよい。
【0022】
そして、2次テーリング開始時間Tstartが経過してステップS10の判定がYESになると、ステップS12でダウンシフトの開始から予測所要時間Tshiftが経過したか否かを判定する。この処理はAT−CU22から入力される変速開始タイミングに基づいて行われ、減速時のダウンシフトに伴って変速開始タイミングの情報が入力されると、ECU22はダウンシフトの変速段に対応する予測所要時間Tshiftを選択し、変速開始タイミングを起点として予測所要時間Tshiftを計時する。予測所要時間Tshiftが経過していないときにはステップS6に戻って、ステップS6乃至ステップS10の処理を繰り返す。
【0023】
又、予測所要時間Tshiftが経過したときにはステップS14に移行して、次式(2)に従って2次テーリングゲインG2に基づいてテーリング値Pe tail2を算出し、続くステップS16で、テーリング値Pe tail2とその時点の運転状態から求めたマップ値Pe mapとの小さい側を選択して、その値を最終的な目標平均有効圧Peとして設定する。
【0024】
Pe tail2=Pe(n-1)+G2 ………(2)
その後、ステップS18で予め設定されたテーリングの終了条件が成立したか否かを判定する。本実施形態では、終了条件として以下の5つ要件が定められており、何れかの要件が満たされたときに終了条件が成立したと判定する。
3)制御開始から終了時間Tendが経過したこと
4)アイドルスイッチが再びオンに切り換わったこと
5)車速Vが所定値V02(ヒステリシス設定)以下となったこと
6)シフト位置がNレンジに切換えられたこと
7)マップ値Pe mapが所定値Pe0以上の状態が所定時間T0継続したこと
3)の要件は、終了時間Tendの経過により2次テーリングが最後までの終了した(テーリング中の目標平均有効圧Peがマップ値Pe mapに達した)ことを意味している。又、4)以降の各要件は、運転状態の変化により2次テーリングを途中で継続する必要がなくなったことを意味し、例えば4)の要件ではアクセル操作の中止によってマップ値Pe mapが急減してテーリング中の目標平均有効圧Peを下回ることから、結果として2次テーリングを中断することになる。
【0025】
ステップS18でテーリングの終了条件が成立するまでは、ステップS14及びステップS16の処理を繰り返し、終了条件が成立するとルーチンを終了する。このように前記した1次テーリングの場合と同じく、マップ値Pe mapと目標テーリング値Pe tail2の小さい側が目標平均有効圧Peとして選択されることから、アクセル踏込み速度が急激な場合であっても、目標平均有効圧Peは2次テーリングゲインを上限として急激な増加が制限される。ここで、2次テーリングゲインは1次テーリングゲインに比較して小さな値に設定されていることから(G2<G1)、テーリング時における目標平均有効圧Peの増加は緩やかなものとなる。
【0026】
そして、本実施形態では、以上のステップS14及びステップS16の処理を実行するときのECU21が燃料制御手段として機能し、ステップS12の処理を実行するときのECU21が停止手段として機能する。又、ステップS6及びステップS8の処理を実行するときのECU21が燃料供給手段として機能する。
【0027】
次に、以上のECU21の処理による目標平均有効圧Peの制御状況を図4及び図5のタイムチャートに従って説明する。ここで、図4のタイムチャートは、2次テーリング開始時間Tstartが経過した後に直ちに2次テーリングを開始した場合を示しており、図5のタイムチャートは、2次テーリング開始時間Tstartが経過し、更に予測所要時間Tshiftが経過するまで2次テーリングの開始を遅延させた場合を示している。
【0028】
まず、図4の場合を説明すると、車両の減速中に運転者にてアクセルが踏込まれると、アイドルスイッチ24がオフされて開始条件が成立し(ステップS2)、テーリング処理が開始される。この例では、開始条件の成立直前においてロックアップクラッチ15が非直結であり、エンジン回転数Neが所定値Ne0を下回り、変速段が2速であることから、これらの条件に対応した各パラメータが設定される(ステップS4)。
【0029】
又、この例では、1次テーリングゲインG1に相当する速度よりも急激にアクセルが踏込まれた場合を表しているため、目標平均有効圧Peは破線で示すマップ値Pe mapよりは若干緩やかに1次テーリングゲインG1に従って増加した後、ホールド値Pe holdに保持される。上記のように1次テーリングゲインG1は比較的大きな値として設定されているため、その制限を受けた場合であっても目標平均有効圧Peはかなり急激に増加し、それに伴ってエンジン回転数Neが速やかに上昇する。その結果、減速時に負の値(非駆動状態)であったトルクコンバータ14のスリップ量は早期に正の値(駆動状態)に転じる。
【0030】
前記した2次テーリング開始時間Tstartは、スリップ量が正の値に転じるタイミングと一致するように前記ステップS4の処理で設定されている。従って、スリップ量が正の値に転じるとほぼ同時に2次テーリング開始時間Tstartが経過し(ステップS10)、目標平均有効圧Peは2次テーリングゲインG2に従って増加する。2次テーリングゲインG2は1次テーリングゲインG1に比較して小さな値に設定されていることから、目標平均有効圧Peの増加は緩やかなものとなる。その後、この例では終了時間Tendが経過したとして上記3)の要件に基づいて終了条件が成立し(ステップS18)、2次テーリングが終了されて通常のマップ値Pe mapに基づく制御に移行する。上記のように終了時間Tendは、テーリング中の目標平均有効圧Peがマップ値Pe mapに達した時点で終了するように設定されていることから、2次テーリングからマップ値Pe mapに基づく制御に移行するときの目標平均有効圧Peの段差(つまり、エンジントルクの段差)は極めて小さく、加速ショックの原因となることはない。
【0031】
一方、図5の場合を説明すると、この例では、開始条件が成立する直前に3速から1速へのダウンシフトが開始されて、2次テーリング開始時間Tstartが経過した時点でも、未だ予測所要時間Tshiftが経過していない場合を示している。上記のように予測所要時間Tshiftは変速開始から完了までの所要時間であることから、この予測所要時間Tshiftが経過するまでは遊星歯車機構16は変速中であることを意味している。このとき、2次テーリング開始時間Tstartの経過後(ステップS10)も目標平均有効圧Peがホールド値Pe holdに保持され続け、予測所要時間Tshiftが経過した時点、即ち、変速が完了して駆動側へのトルク伝達が再開された時点で2次テーリングが開始され(ステップS12)、目標平均有効圧Peが2次テーリングゲインG2に従って増加される。
【0032】
このように本実施形態の内燃機関では、予測所要時間Tshiftの経過によりダウンシフトの変速が完了したと推定されるまで、2次テーリングの開始を遅延している。従って、変速中に中断されていたトルク伝達の再開と同期する適切なタイミングで2次テーリングを開始することから、ショックを発生することなく加速を開始することができる。
【0033】
しかも、このように2次テーリングの開始タイミングが適切であるため、2次テーリングゲインG2が多少大きくても加速ショックが抑制され、従来例のようにテーリングゲインを必要以上に縮小したときの加速応答性の悪化を未然に回避することができる。加えて、アクセルが踏込まれてから予測所要時間Tshiftが経過するまでに、目標平均有効圧Peと共に燃料噴射量が1次テーリングによって事前に増加側に制御されているため、2次テーリングが開始された時点で速やかに加速を開始でき、上記した加速応答性の悪化をより確実に回避することができる。以上により、加速ショックの低減と加速応答性の確保とを極めて高い次元で両立して、ひいては車両の商品価値を向上させることができる。
【0034】
以上で実施形態の説明を終えるが、本発明の態様はこの実施形態に限定されるものではない。例えば、上記実施形態では筒内噴射型のガソリンエンジン1として具体化したが、通常の吸気管噴射型のガソリンエンジン、或いはディーゼルエンジンに具体化してもよい。
又、上記実施形態では、予測所要時間Tshiftの経過以前において目標平均有効圧Peを1次テーリングしたが、この1次テーリングは必ずしも行う必要はない。この場合であっても、上記のように2次テーリングの開始タイミングが適切であることからゲインG2を必要以上に縮小する必要がなく、加速応答性の悪化を回避することが可能である。
【0035】
更に、上記実施形態では、予め設定した予測所要時間Tshiftに基づいてダウンシフトの変速完了を推定した。これは、AT−CU22からECU21側に変速開始タイミングの情報しか入力されないためであるが、変速完了タイミングの情報も入力される場合には、そのタイミングに同期して2次テーリングを開始するようにしてもよい。
【0036】
一方、上記実施形態では、ダウンシフトへの変速中に加速が開始された場合を想定し、変速完了まで2次テーリングの開始を遅延させたが、変速方向はこれに限定されず、アップシフトへの変速中に加速が開始された場合を想定して、変速完了まで2次テーリングの開始を遅延させる処理を行うようにしてもよい。
【0037】
【発明の効果】
以上説明したように本発明の内燃機関によれば、加速応答性の悪化を回避した上で、自動変速機の変速中に加速が開始された場合の加速ショックを低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施形態の筒内噴射型ガソリンエンジンを示す全体構成図である。
【図2】ECUが実行する加速時テーリングルーチンを示すフローチャートである。
【図3】テーリング処理に適用される各パラメータの設定状況を示す説明図である。
【図4】スリップ量が正に転じたタイミングで2次テーリングを開始したときのタイムチャートである。
【図5】ダウンシフトが完了したタイミングで2次テーリングを開始したときのタイムチャートである。
【図6】従来例のテーリング処理を示すタイムチャートである。
【符号の説明】
1 エンジン(内燃機関)
21 ECU(燃料制御手段、停止手段、燃料供給手段)
22 AT−CU(変速制御手段)
Claims (2)
- 加速時に内燃機関への燃料供給量を徐々に要求燃料量まで増大する燃料制御手段と、
所定の運転状態が検出されたとき、自動変速機のシフト制御を実行する変速制御手段と、
上記変速制御手段によるダウンシフト制御中に加速要求があったとき、ダウンシフトが完了する所定期間前までは上記燃料制御手段の作動を停止する停止手段と
を備えたことを特徴とする内燃機関。 - 加速時に内燃機関への燃料供給量を徐々に要求燃料量まで増大する燃料制御手段と、
所定の運転状態が検出されたとき、自動変速機のシフト制御を実行する変速制御手段と、
上記変速制御手段によるシフト制御中に加速要求があったとき、シフトが完了する所定期間前までは燃料制御手段の作動を停止する停止手段と、
上記加速要求の時点からシフトが完了する所定期間までに、上記内燃機関の要求燃料量より少ない燃料を供給する燃料供給手段と
を備えたことを特徴とする内燃機関。
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