JP3654214B2 - 面実装アンテナの製造方法およびそのアンテナを備えた無線通信機 - Google Patents

面実装アンテナの製造方法およびそのアンテナを備えた無線通信機 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、無線通信機の回路基板に実装することが可能な面実装アンテナの製造方法およびそのアンテナを備えた無線通信機に関するものである。
【0002】
【背景技術】
無線通信機の回路基板に表面実装することが可能なアンテナ(面実装アンテナ)は、例えば、チップ状の基体(例えば誘電体の基体)と、この基体に形成されて信号(電波)の送信や受信を行うことができる放射電極とを有して構成されている。このような面実装アンテナは、例えば、チップ状の基体にメッキにより電極を形成し、その電極をエッチングして予め定められた形状に加工して放射電極を形成するという製造手法により作製される。あるいは、基体の表面に、厚膜電極ペーストを印刷により所定の放射電極の形状に形成し、そのペーストを乾燥し、焼成するという製造手法によって、面実装アンテナを作製することもある。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、面実装アンテナの基体は微小なものであり、従来では、そのように微小な基体の1つずつに個別に放射電極を形成するために、作業効率が悪く、面実装アンテナの製造コストが高くなるという問題があった。
【0004】
また、誘電体の基体の誘電率や大きさは微妙にばらつくことがあり、このことに起因して放射電極の共振周波数がばらついてしまうことがある。このような放射電極の共振周波数のばらつきを抑制するために、基体の誘電率や大きさを考慮して、高精度に放射電極の形状などを調節する必要があったが、放射電極は微小なものであるので、その放射電極の形状などを高精度に調整することは非常に困難であった。
【0005】
さらに、面実装アンテナの放射電極の共振周波数を変更する際には、放射電極の形状や大きさや、誘電体基体の大きさ等を新たに設計しなければならず、それには多くの時間と労力を要するという問題があった。
【0006】
本発明は上記課題を解決するために成されたものであり、その目的は、面実装アンテナの製造効率を向上させることができ、しかも、放射電極の共振周波数の調整や、設計変更が容易な面実装アンテナの製造方法およびそのアンテナを用いた無線通信機を提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、この発明は次に示す構成をもって前記課題を解決する手段としている。すなわち、の発明は、直方体状の基体に放射電極が形成されている面実装アンテナを製造する方法において、6面を有する誘電体基板の表裏両面と、互いに対向し合う平行な2端面との少なくとも4面全体に面実装アンテナの放射電極を形成するための電極を設け、その後、誘電体基板の表面の電極に、ダイサーによる切削により、前記2端面と平行に電極の全幅に亘って、かつ、面実装アンテナの放射電極の予め定められた共振周波数に応じた形成位置およびスリット幅でもってスリットを設け、然る後に、ダイサーによって、誘電体基板を、前記2端面を結ぶ方向に沿って複数の基体に切り分けて、基体に放射電極が略周回形成されている面実装アンテナを複数製造することを特徴としている。
【0009】
の発明は、直方体状の基体に放射電極が形成されている面実装アンテナを製造する方法において、6面を有する誘電体基板の裏面の全面と、少なくとも互いに対向し合う平行な2端面の全面とに電極を設け、また、誘電体基板の表面の全面には前記2端面と平行に誘電体基板の全幅に亘って、かつ、面実装アンテナの放射電極の予め定められた共振周波数となるための幅よりも狭い幅にスリットが形成されている電極を設け、この後、スリットを介して隣り合う電極端のうちの少なくとも一方側をダイサーにより切削して、面実装アンテナの放射電極の共振周波数を予め定められた共振周波数に調整し、然る後に、ダイサーによって、誘電体基板を、前記2端面を結ぶ方向に沿って複数の基体に切り分けて、基体に放射電極が略周回形成されている面実装アンテナを複数製造することを特徴としている。
【0010】
の発明は、第又は第の発明の構成を備え、メッキと、厚膜電極形成手法とのうちの一方を利用して誘電体基板に電極を形成することを特徴としている。
【0011】
の発明は、無線通信機に関し、第1又は第2又は第3の発明の面実装アンテナの製造方法により製造された面実装アンテナが設けられていることを特徴としている。
【0012】
この発明では、面実装アンテナの放射電極は、基体の連続した4面である前端面と表面と後端面と裏面のほぼ全面に形成されて基体を略周回する形状と成し、この放射電極には基体の周回方向に交差する向きのスリットが放射電極の全幅に渡って設けられて開放端が形成されている。このような放射電極において、スリットの形成位置やスリット幅を可変することによって、放射電極の予め定められた給電部から上記開放端(つまり、スリットの端縁である電極端)に至るまでの長さが可変して当該放射電極の電気長が可変するので、放射電極の共振周波数を可変することができる。
【0013】
したがって、この発明では、ダイサーを利用してスリットの形成位置やスリット幅を調整することで、放射電極の共振周波数を容易に調整することができるし、また、設計変更も簡単、かつ、迅速に行うことができる。さらに、放射電極の形状は非常に単純であることから、その製造も容易である。例えば、この発明において特徴的な製造方法を利用して、上記面実装アンテナを製造することができる。この発明の製造方法を利用することにより、一度に複数の面実装アンテナを製造できるので、面実装アンテナの製造コストを大幅に削減することができる。また、ダイサーは高精度に電極を加工できるものであり、そのダイサーを利用して、スリットの形成や、スリット幅の調整などを行うことにより、放射電極に設定の共振周波数を持たせることが容易となる。
【0014】
【発明の実施の形態】
以下に、この発明に係る実施形態例を図面に基づいて説明する。
【0015】
図1(a)には第1実施形態例の無線通信機において特徴的な面実装アンテナが模式的な斜視図により示され、図1(b)には図1(a)に示す面実装アンテナの展開図が示されている。なお、無線通信機の構成には様々な構成があり、この第1実施形態例では、無線通信機の面実装アンテナ以外の構成は何れの構成をも採用してよく、ここでは、面実装アンテナ以外の無線通信機の構成の説明は省略する。
【0016】
この第1実施形態例において特徴的な面実装アンテナ1は、誘電体から成る直方体状(短冊状)の基体2を有し、この基体2の連続した4面である表面2aと前端面2bと裏面2cと後端面2dのほぼ全面には放射電極3が形成されている。つまり、放射電極3は基体2を略周回する形状と成している。なお、2e,2fは基体2の端面である。
【0017】
この放射電極3には、基体2の表面2a上の部位に、スリット4が設けられて開放端Kが形成されている。スリット4は、放射電極3の周回方向に交差する向き(図示の例では略直交する向き)に、放射電極3の全幅に渡って形成されており、そのスリット幅Hは全長に亙り等幅となっている。
【0018】
このような面実装アンテナ1は、例えば、無線通信機の回路基板に実装されて、基体2の前端面2b上に形成されている放射電極3の部分が無線通信機の信号供給源6に接続される。つまり、この第1実施形態例では、前端面2b上の放射電極3の部位が、信号供給源6からの信号を受ける給電部となっている。なお、放射電極3と信号供給源6との関係が図1(c)に模式的に示されている。
【0019】
面実装アンテナ1(放射電極3)に信号供給源6から信号が供給されると、例えば、その信号の殆どは、放射電極3を、給電部(基体2の前端面2b上の部分)から裏面2c上の部位と後端面2d上の部位を介し表面2a上の開放端Kに至るまでの領域を通電する。この信号供給により放射電極3が共振動作(アンテナ動作)を行うことによって、信号の送信や、受信が行われることとなる。
【0020】
ところで、放射電極3が予め定められた周波数帯でもって信号の送信や受信を行うためには、放射電極3が、その設定の周波数帯に対応する共振周波数を持つ必要がある。放射電極3の共振周波数は、当該放射電極3の給電部である前端面2b上の部位から裏面2c上の部位と後端面2d上の部位を介し表面2a上の開放端Kに至るまでの信号の通電経路の電気長を可変することにより、可変することができる。また、その放射電極3の電気長は、スリット4の形成位置や、スリット4の幅Hを可変して、前記給電部から開放端Kに至るまでの信号導通経路の長さを可変することにより、可変調整することができる。
【0021】
このことから、この第1実施形態例では、放射電極3が予め定められた設定の共振周波数となるための電気長を持つことができるように、スリット4の形成位置や、スリット幅Hが実験やシミュレーションなどにより求められ、その求めた形成位置やスリット幅Hでもって、スリット4が基体2の表面2a上の放射電極3に形成されている。
【0022】
なお、放射電極3の設定の共振周波数によっては、図2(a)に示されるように、基体2の表面2aにおいて、スリット4が後端面2dの近傍に形成されることがある。換言すれば、放射電極3の給電部と、スリット4の形成位置とが離れることがある。このような場合には、放射電極3は、信号の送信あるいは受信が可能な2つの放射電極3a,3b(つまり、給電部から裏面2c上の部位と後端面2d上の部位を介して表面2aの開放端Kに至るまでの領域の放射電極3aと、給電部から表面2aの開放端K’に至るまでの放射電極3b)の機能を備えた状態となる。それら放射電極3a,3bと、信号供給源6との関係が図2(b)に模式的に示されている。
【0023】
このように2つの放射電極3a,3bが形成されている場合には、信号通信用として、どちらか一方側を使用してもよいし、両方を使用してもよい。もちろん、それら放射電極3a,3bの各共振周波数はスリット4の形成位置やスリット幅Hによって設定の共振周波数に調整されることとなる。また、それら放射電極3aの共振周波数と、放射電極3bの共振周波数とは、相互干渉を防止できる程度に、離すことが望ましい。
【0024】
この第1実施形態例に示す面実装アンテナ1は上記のように構成されている。以下に、その面実装アンテナ1の製造工程の一例を図3に基づいて説明する。
【0025】
まず、図3(a)に示すような誘電体基板10を用意する。この誘電体基板10は、面実装アンテナ1の基体2を複数個切り出すことができる大きさを持つものである。このような誘電体基板10に、図3(b)に示すように、メッキにより、電極11を形成する。メッキを利用するので、誘電体基板10の全面、つまり、表裏両面10a,10cおよび端面10b,10d,10e,10fに電極11が形成されることとなる。
【0026】
然る後に、図3(c)に示すように、誘電体基板10の表面10a上の電極11に、ダイサーによる切削によって、スリット4を形成する。このスリット4は、誘電体基板10の端面10b,10dを結ぶ方向αに交差する向き(この例では、略直交する向き)に端面10e側から端面10f側に渡って、かつ、略等幅Hに形成される。
【0027】
このスリット4の形成位置およびスリット幅Hは、面実装アンテナ1の放射電極3の設定の共振周波数に応じて予め定められており、当該スリット4の形成位置やスリット幅Hの情報が予めダイサーの制御装置に与えられ、この情報を利用してダイサーの自動制御が成されてスリット4が設けられる。なお、上記のように、スリット4の形成位置およびスリット幅Hは、放射電極3の設定の共振周波数に応じたものであり、適宜設定されることから、図3(c)の図示のスリット4の形成位置やスリット幅Hに限定されるものではない。
【0028】
その後、図3(d)に示すように、ダイサーによって、誘電体基板10を前記α方向に沿う切断ラインLに従って複数に切り分けて、図1(a)や図2(a)に示すような面実装アンテナ1を複数個切り出す。なお、この誘電体基板10の切り分けの工程では、誘電体基板10の端面10e側の端部13aと、端面10f側の端部13bとが除去されて電極11(放射電極3)が形成されていない側面が作り出される。
【0029】
この第1実施形態例によれば、放射電極3は基体2の連続した4面に形成されて基体2を略周回する形状と成し、この放射電極3には基体2の周回方向に交差する向きのスリット4が設けられて開放端Kが形成されている構成としたので、放射電極3の形状が非常に単純である。また、その放射電極3は、スリット4の形成位置やスリット幅Hを可変することにより、給電部から開放端Kに至るまでの電気長が可変して共振周波数を容易に可変することができることとなる。これにより、放射電極3の共振周波数を設定の周波数に調整することが容易となるし、また、設計変更にも、簡単、かつ、迅速に対応することができる。
【0030】
さらに、仮に、放射電極3の形状が複雑であると、製造工程において、誘電体基板10に放射電極3を形成する際に、その放射電極3の形成の位置決めを行う必要が生じる。また、その位置決めが精度良く成されなかった場合には、誘電体基板10の切断工程において、例えば放射電極3が分断されてしまい、不良の面実装アンテナが製造されてしまうという問題が生じる。
【0031】
これに対して、この第1実施形態例では、放射電極3は上記のように非常に単純な形状であるので、製造工程において、放射電極3の形成の位置決めという面倒をかけることなく、誘電体基板10の表面10aと端面10bと裏面10cと端面10dの各全面に電極11(放射電極3)を形成し、その後に、ダイサーによりスリット4を形成し、然る後に、誘電体基板10を切り分けるだけで、面実装アンテナ1を簡単に製造することができることとなる。これにより、歩留まりを向上させることができる。
【0032】
さらに、この第1実施形態例に示した製造手法では、1度に複数の面実装アンテナ1を作り出すことができるので、基体2の1個ずつに個別に放射電極3を形成して面実装アンテナ1を製造する場合に比べて、面実装アンテナ1の製造効率を飛躍的に高めることができて、面実装アンテナ1の製造コストを大幅に低減することができる。
【0033】
さらに、この第1実施形態例では、スリット4はダイサーを利用して形成し、そのダイサーによる加工精度は非常に高精度であるので、スリット4を設計通りに精度良く形成することができる。これにより、面実装アンテナ1を製造した後に、放射電極3の共振周波数を設定の共振周波数に合わせるための周波数調整を行わなくとも済むこととなる。
【0034】
また、スリット4を形成する工程と、誘電体基板10を切断する工程とにおいて、同一のダイサーを用いることにより、スリット4の形成から誘電体基板10の切断までの一連の作業を連続して行うことができるので、面実装アンテナ1の製造時間の短縮を図ることができて、製造コストを低下させることができることとなる。
【0035】
さらに、この第1実施形態例に示した製造工程でもって面実装アンテナ1を製造することにより、ダイサーの設定を変更するだけで、スリット4の形成位置やスリット幅Hを可変することができるし、また、基体2の幅を可変することも容易にできることとなる。これにより、面実装アンテナ1の設計変更に、簡単、かつ、迅速に対応することができることとなる。
【0036】
以下に、第2実施形態例を説明する。この第2実施形態例では、面実装アンテナの製造手法以外は、第1実施形態例とほぼ同様である。なお、この第2実施形態例の説明において、第1実施形態例と同一構成部分には同一符号を付し、その共通部分の重複説明は省略する。
【0037】
この第2実施形態例では、図1(a)や図2(a)に示すような面実装アンテナ1を製造する工程において、まず、図4(a)に示すように、第1実施形態例と同様に、複数の基体2を切り出すことができる誘電体基板10を用意する。
【0038】
そして、この誘電体基板10に、図4(b)に示すように、厚膜電極形成手法を利用して、電極11を形成する。具体的には、例えば、誘電体基板10にペースト状の電極形成材料を印刷により形成し、それを乾燥、焼成して電極11を形成する。このような厚膜電極形成手法を利用することから、この第2実施形態例では、誘電体基板10の6面のうち、表面10aと端面10bと裏面10cと端面10dの連続した4面に、選択的に、電極11を形成する。
【0039】
その後、図4(c)に示すように、第1実施形態例と同様に、誘電体基板10の表面10a上の電極11にスリット4を形成する。そして、然る後に、図4(d)に示すように、誘電体基板10をα方向(つまり、端面10b,10dを結ぶ方向)に沿って複数に切り分けて、複数の面実装アンテナ1を切り出す。このようにして、面実装アンテナ1を製造する。
【0040】
この第2実施形態例によれば、第1実施形態例と同様の優れた効果を奏することができる。その上、この第2実施形態例では、誘電体基板10に電極11を形成する際に、厚膜電極形成手法を利用するので、誘電体基板10の6面の中から選択された4面10a,10b,10c,10dに電極11を形成することができることとなる。
【0041】
つまり、誘電体基板10の端面10e,10fに電極が形成されないので、電極が形成されていない側面を作り出すために誘電体基板10の端面10e側の端部13a、および、端面10f側の端部13bを除去しなくとも済むこととなる。これにより、この第2実施形態例では、図4(d)に示すように、誘電体基板10の端も、面実装アンテナ1を形成するための領域として用いることができ、無駄を無くすことができる。なお、図4(d)に示す符号13は、誘電体基板10から設定の数量の面実装アンテナ1を作製する際に生じた余剰部分を示している。
【0042】
また、上記の如く、誘電体基板10を切り分ける際に、端面10e側の端部13a、および、端面10f側の端部13bを除去するという作業が必須ではないので、第1実施形態例に示した製造手法に比べて、ダイサーによる誘電体基板10の切断回数を削減することができることとなり、誘電体基板10の切断の作業時間の短縮を図ることができる。
【0043】
以下に、第3実施形態例を説明する。この第3実施形態例では、面実装アンテナの製造手法に特徴があり、それ以外は前記各実施形態例と同様である。なお、この第3実施形態例の説明において、前記各実施形態例と同一構成部分には同一符号を付し、その共通部分の重複説明は省略する。また、この第3実施形態例では、図5と図6を利用して、面実装アンテナ1の製造工程を説明するが、図5はメッキを利用して誘電体基板10に電極11を形成する場合の製造工程例を説明するための図であり、図6は、厚膜電極形成手法を利用して誘電体基板10に電極11を形成する場合の製造工程例を説明するための図である。
【0044】
この第3実施形態例では、前記各実施形態例と同様に、図5(a)に示すような誘電体基板10に、図5(b)に示すように、メッキによって6面全面に電極11を形成する。あるいは、厚膜電極形成手法により、誘電体基板10の6面の中から選択された4面10a,10b,10c,10dの全面に電極11を形成する。
【0045】
そして、図5(c)あるいは図6(b)に示すように、エッチングを利用して、誘電体基板10の表面10a上の電極11にスリット4を形成する。この際、そのスリット4の幅hは、面実装アンテナ1の放射電極3が設定の共振周波数となるためのスリット幅Hよりも僅かに狭い幅となっている。
【0046】
然る後に、図5(d)あるいは図6(c)に示すように、スリット4を介して隣り合っている電極端K,K’の少なくとも一方側を、ダイサーを利用して切削して、面実装アンテナ1の放射電極3が設定の共振周波数となるようにスリット4の幅を設定の幅Hに広げる。換言すれば、面実装アンテナ1の放射電極3が共振周波数を持つための電気長を有するように放射電極3の電極端(開放端)K(あるいはK’)をダイサーにより切削する。
【0047】
その後、図5(e)あるいは図6(d)に示すように、前記各実施形態例と同様に、ダイサーによって、誘電体基板10を複数に切り分けて、複数の面実装アンテナ1を切り出す。このようにして、図1(a)や図2(a)に示すような面実装アンテナ1を製造することができる。
【0048】
この第3実施形態例によれば、前記各実施形態例と同様の効果を奏することができる。その上、誘電体基板10の表面10a上の電極11にエッチングによりスリット4を形成した後に、ダイサーを利用して、スリット4の幅を放射電極3の設定の共振周波数に対応する幅Hに広げて、面実装アンテナ1の放射電極3の共振周波数を設定の共振周波数に調整するので、次に示すような効果を得ることができる。
【0049】
例えば、誘電体基板10に対してダイサーを端面10e側から端面10fにかけて相対的に移動させてスリット4を形成する際に、1回の移動でダイサーによって形成されるスリットの幅は非常に狭い。このために、スリット4の設定の幅Hが広く、かつ、そのスリット4の全幅をダイサーにより形成しようとすると、ダイサーを多数回も往復移動させる必要があり、スリット4の形成に要する作業時間が長くなってしまう。
【0050】
これに対して、この第3実施形態例では、ダイサーはスリット4の幅の微調整に用いるだけなので、上記したようなダイサーの往復移動の回数を減少させることができて、ダイサーによる電極切削の作業に要する時間を短縮させることができる。この第3実施形態例に示した製造手法はスリット4の幅が広い場合に非常に有効である。
【0051】
また、誘電体基板10を切断する前に、上記のように、スリット4の幅を調整して、放射電極3の共振周波数の調整を行うので、各面実装アンテナ1毎に分離した後にそのような放射電極3の周波数調整を行う場合に比べて、格段に、面実装アンテナ1の製造効率を高めることができる。
【0052】
なお、この発明は上記各実施形態例に限定されるものではなく、様々な実施の形態を採り得る。例えば、図3〜図6では、誘電体基板10から7個の面実装アンテナ1が作り出される例が示されているが、1枚の誘電体基板10から作り出される面実装アンテナ1の数は特に限定されるものではなく、適宜設定されるものである。
【0053】
また、上記各実施形態例では、誘電体基板10に電極11を形成する手法として、メッキあるいは厚膜電極形成手法を用いる例を示したが、もちろん、他の電極形成手法を利用して誘電体基板10に電極11を形成してもよい。
【0054】
【発明の効果】
この発明によれば、面実装アンテナの放射電極は、基体の連続した4面である前端面と表面と後端面と裏面のほぼ全面に形成されて基体を略周回する形状と成しており、この放射電極の形状は非常に単純である。また、この放射電極には、基体の周回方向に交差する向きのスリットが放射電極の全幅に渡って形成されており、このスリットの形成位置やスリット幅を可変することによって、放射電極の予め定められた給電部から、スリットの端縁である電極端(開放端)までの電気長を可変することができて、放射電極の共振周波数を可変調整することが可能である。
【0055】
この発明では、ダイサーによって、スリットを介して隣り合う電極端のうちの少なくとも一方側が切削されて放射電極の電気長が調整されて、放射電極の共振周波数が調整されている。ダイサーは高精度に電極を加工できることから、放射電極の共振周波数を精度良く調整することができて、面実装アンテナや、当該面実装アンテナを備えた無線通信機の信頼性を向上させることができる。
【0056】
また、スリットの形成位置やスリット幅を可変するだけで、放射電極の共振周波数を調整することができるので、設計変更を簡単、かつ、迅速に行うことができることとなる。
【0057】
また、この発明では、放射電極は、基体の前端面と表面と後端面と裏面のほぼ全面に形成されて基体を略周回する形状と成し、この放射電極にはスリットが形成されているだけという非常に単純な形状と成しているので、製造工程において、誘電体基板の表裏両面と、互いに対向し合う2端面とのほぼ全面に電極を設け、その後に、ダイサーを利用して誘電体基板の表面の電極にスリットを形成し(あるいは表面の電極に形成されたスリットの幅を広げて)、然る後に、誘電体基板を複数に切り分けて、複数の面実装アンテナを製造するという本発明の製造方法でもって、面実装アンテナを簡単に製造することができる。また、1度に複数の面実装アンテナを製造することができるので、面実装アンテナの製造効率を飛躍的に向上させることができて、面実装アンテナの製造コストを低下させることができる。
【0058】
また、誘電体基板の表面上の電極にスリットが形成されている状態で、ダイサーによる電極端の切削によって放射電極の共振周波数を調整するものにあっては、ダイサーはスリットの幅を微調整するのに用いるだけであるので、ダイサーによる電極切削に要する時間の短縮を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】第1実施形態例において特徴的な面実装アンテナの一例を模式的に示した説明図である。
【図2】図1に示す面実装アンテナとはスリットの形成位置を異にした面実装アンテナの一例を模式的に示した説明図である。
【図3】第1実施形態例の面実装アンテナの製造手法を説明するための製造工程フロー図である。
【図4】第2実施形態例において特徴的な面実装アンテナの製造手法を説明するための製造工程フロー図である。
【図5】第3実施形態例における面実装アンテナの製造手法をメッキを利用する場合について説明するための製造工程フロー図である。
【図6】第3実施形態例における面実装アンテナの製造手法を厚膜電極形成手法を利用する場合について説明するための製造工程フロー図である。
【符号の説明】
1 面実装アンテナ
2 基体
3 放射電極
4 スリット
10 誘電体基板
11 電極

Claims (4)

  1. 直方体状の基体に放射電極が形成されている面実装アンテナを製造する方法において、6面を有する誘電体基板の表裏両面と、互いに対向し合う平行な2端面との少なくとも4面全体に面実装アンテナの放射電極を形成するための電極を設け、その後、誘電体基板の表面の電極に、ダイサーによる切削により、前記2端面と平行に電極の全幅に亘って、かつ、面実装アンテナの放射電極の予め定められた共振周波数に応じた形成位置およびスリット幅でもってスリットを設け、然る後に、ダイサーによって、誘電体基板を、前記2端面を結ぶ方向に沿って複数の基体に切り分けて、基体に放射電極が略周回形成されている面実装アンテナを複数製造することを特徴とした面実装アンテナの製造方法。
  2. 直方体状の基体に放射電極が形成されている面実装アンテナを製造する方法において、6面を有する誘電体基板の裏面の全面と、少なくとも互いに対向し合う平行な2端面の全面とに電極を設け、また、誘電体基板の表面の全面には前記2端面と平行に誘電体基板の全幅に亘って、かつ、面実装アンテナの放射電極の予め定められた共振周波数となるための幅よりも狭い幅にスリットが形成されている電極を設け、この後、スリットを介して隣り合う電極端のうちの少なくとも一方側をダイサーにより切削して、面実装アンテナの放射電極の共振周波数を予め定められた共振周波数に調整し、然る後に、ダイサーによって、誘電体基板を、前記2端面を結ぶ方向に沿って複数の基体に切り分けて、基体に放射電極が略周回形成されている面実装アンテナを複数製造することを特徴とした面実装アンテナの製造方法。
  3. メッキと、厚膜電極形成手法とのうちの一方を利用して誘電体基板に電極を形成することを特徴とした請求項又は請求項記載の面実装アンテナの製造方法。
  4. 請求項1又は請求項2又は請求項3記載の面実装アンテナの製造方法により製造された面実装アンテナが設けられていることを特徴とした無線通信機。
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