JP3633947B2 - 電子写真式平版印刷版 - Google Patents

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Description

【0001】
【産業上の利用分野】
本発明は、湿式平版印刷版に関するものであり、さらに詳しくは耐刷性、寸法安定性、取扱い性等に優れた、電子写真法によって製版する平版印刷版に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来より、平版印刷法として、印刷用原版の表面に電子写真法によりトナー画像を設け、定着後、非画像部をエッチング処理して印刷版とし、これを平版印刷機にかけて印刷する方法が広く行われている。一般にこの方法で用いられる支持体としては紙が用いられ、その片面に直接あるいは導電性プレコート層を設けた後に光導電層を設け、その反対面に導電性バックコート層を設けることにより製造されている。ここで導電性コート層としては、カチオン系、アニオン系の高分子導電剤、カーボン、金属、金属酸化物等の無機導電剤が知られている。
しかしながら、この場合、耐水性や寸法安定性に劣り、耐刷性に問題が生じてしまう。
一方、上記問題点を解決するために、支持体にポリエステル等のプラスチックフィルムも用いられているが、クッション性がなく、取扱い性に劣るという問題が生じている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記の問題点に着目してなされたものであり、その目的は、耐水性、寸法安定性を有し、かつ取扱いが容易で、さらにはカラー印刷にも適した電子写真式平版印刷版を提供することにある。
【0004】
【課題を解決するための手段】
本発明は、ポリエステル及び該ポリエステルに非相溶な熱可塑性樹脂を混合し、得られたシート状物を少なくとも一軸に延伸することにより得られる空洞含有ポリエステルフィルムを支持体とし、この支持体上に導電性中間層を設け、ついで光導電性物質粉末と増感剤、結着剤樹脂とからなる光導電層を形成し、さらに支持体の裏面に導電性バックコート層を設けたことを特徴とする電子写真式平版印刷版に関するものである。
【0005】
本発明におけるポリエステルとは、芳香族ジカルボン酸またはそのエステルとグリコールとを重縮合させて製造されるポリエステルであり、代表例としてはポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレン−2.6−ナフタレートなどが挙げられる。
本発明における該ポリエステルに非相溶な熱可塑性樹脂とは、ポリエチレン系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリアクリル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリスルホン系樹脂、セルロース系樹脂などが挙げられる。該熱可塑性樹脂は該ポリエステルとの重合体混合物にしたとき、該ポリエステル中に球状もしくは円滑球状に分散した形態をとっており、該重合体混合物を延伸する際に、該ポリエステルと該熱可塑性樹脂の粒子の界面で剥離が生じて空洞ができやすいものが好ましく、特にポリスチレン系樹脂、ポリプロピレンなどのポリオレフィン系樹脂が好ましい。
該熱可塑性樹脂の配合量は、目的とする空洞の量によって異なる。また、隠ぺい性を付与するために二酸化チタン等の無機粒子を配合してもよい。さらに必要に応じて共押し出し法等によって表層と中心層を積層した複合フィルムとしても構わない。
【0006】
該重合体混合物を配向処理する条件は、最も一般的に行われている逐次2軸延伸工程を例に挙げると、該重合体混合物のシートを50〜140℃の温度、2〜5の倍率でロール延伸(縦延伸)し、60〜150℃の温度、2〜5倍でテンター延伸(横延伸)する。さらに、延伸配向処理された空洞含有フィルムは200℃以上で熱固定処理する。
【0007】
かくして得られた空洞含有ポリエステル系フィルムは、フィルムの見かけ比重が1.05以上、1.3以下の範囲にあることが必要である。1.05以下では版胴との密着性は良いものの、外的応力に対し変形しやすく、版くわえ部にかかる引っ張り応力によって版のびが生じ、多色カラー印刷では色ズレが発生するという欠点を生じる。また、1.3以上ではクッション性、折り曲げ性が不足し、版くわえ部と版胴部間の密着性が悪くなり鮮明な画像が得られない。
【0008】
本発明の導電性中間層とは、金属、金属酸化物、特に亜鉛、マグネシウム、錫、カリウム、バリウム、インジウム、モリブデン、アルミニウム、チタン、珪素等から選ばれた金属の酸化物、好ましくは結晶性酸化物またはその複合酸化物の微粒子、またはカーボンブラックを高分子バインダー、例えばセルロース系樹脂、アセタール系樹脂、ウレタン系樹脂、アクリル系樹脂等に混合し、有機溶剤、水系溶媒に分散、溶解したものを該支持体に塗布または他の方法で積層したものである。
また、カチオン系、アニオン系等の導電性樹脂を積層してもよく、カチオン系は特に4級窒素を持つものが好ましい。
本発明の導電性中間層は、表面抵抗値が10Ω/□以上、10Ω/□以下である必要があり、さらには、10Ω/□以上、10Ω/□以下であることが好ましい。表面抵抗値が10Ω/□以上であると電荷の流れを阻害し、かぶりが発生してしまう。逆に10Ω/□以下であるとピンホールが発生してしまう。
【0009】
本発明の導電性バックコート層とは、導電性中間層と同様な材料を用いて、表面抵抗値が、10Ω/□以上、1012Ω/□以下である必要があり、さらには、10Ω/□以上、10Ω/□以下であることが好ましい。表面抵抗値が、1012Ω/□以上であると、電荷の流れを阻害し、ピンホールが発生してしまう。逆に10Ω/□以下であると、鮮明な画像が得られない。
【0010】
本発明の光導電層とは、酸化亜鉛、酸化チタン等の光導電性粉末と絶縁性合成樹脂結着剤とを有機溶剤中に分散し、さらに増感剤などを添加した混合液を導電性中間層上に塗布、乾燥することによって形成させることができる。
【0011】
該化合物または化合物を含む組成物を支持体表面に積層する方法としては、特に限定はないが、溶液あるいは分散液を支持体表面に塗布するコーティング法が特に好適である。すなわち支持体に塗布した後、乾燥熱処理をする方法が好ましい。コーティング法としては、グラビアやリバースなどのロールコーティング法、ドクターナイフ法やエアーナイフ、ノズルコーティング法などの通常の方法を用いることができる。またスプレー法で塗布する方法を用いてもよい。
【0012】
該塗布は、製造終了後のフィルムの表面に行ってもよいし、あるいは、フィルム製造過程すなわちキャスト原反あるいは一軸延伸後に塗布し、その後延伸処理を行うほうが好ましい。
このような方法で積層される各層の厚みは、特に限定されるものではないが、支持体としては、75〜200μm、導電性中間層としては、0.1〜5μm、導電性バックコート層としては、0.1〜5μm、光導電層としては、5〜20μmが好ましい。
【0013】
【実施例】
次に本発明の実施例及び比較例を示す。本発明に用いる評価法を以下に示す。1)フィルムの見かけ比重
フィルムを5cm×5cmの正方形に正確に切り出し、その厚みを50点測定し平均厚みをtμmとし、その重さを0.1mgまで測定しLwgとし、下式によって計算した。
フィルムの見かけ比重=w/(5×5×t×10000)
【0014】
2)表面抵抗値
25℃、50%RHの条件下で測定をおこなった。
【0015】
3)折り曲げ性
シナノ精機(株)TEXEL AR010型オフセット印刷機の版胴へ版を装着した時の版胴への密着性を以下の様に判定した。
○:くわえ部から版胴にかけて版が完全に密着している。
△:くわえ部から版胴にかけて版と版胴部間にわずかな隙間が認められる。
×:くわえ部から版胴にかけて版と版胴部間に隙間が認められる。
【0016】
4)クッション率(%)
三豊製作所(株)製ダイヤルゲージNo. 2109−10に標準測定子900030を用い、さらにダイヤルゲージスタンドNo. 7001DGS−Mを用いてダイヤルゲージ押え部分に荷重50gと500gをかけた時の各々のフィルムの厚さd50、d500 から次式により求める。
クッション率=(d50−d500 )/d50×100
【0017】
5)印刷物の鮮明性と耐刷性
シナノ精機(株)TEXEL AR010型オフセット印刷機を用いて1万枚印刷し以下の様に判定した。
(白黒印刷の場合)
○:150線10%の網点が版、印刷物とも完全に再現している。
△:上記網点が一部欠落している。
×:上記網点が多数欠落している。
(4色カラー印刷の場合)
○:色ずれがない。
△:やや色ずれが認められるが実用上特に問題なし。
×:かなり色ずれが認められ実用上問題あり。
【0018】
(実施例1)
本発明記載の支持体である空洞含有ポリエステルを以下の方法で作成した。原料として固有粘度0.62のポリエチレンテレフタレート樹脂80部、アナターゼ型二酸化チタン5部とメルトフローインデックス3.0g/10分の一般用ポリスチレン15部を、2軸スクリュー押し出し機でT−ダイスより285℃で溶融押し出しし、静電気的に冷却回転ロールに密着固化し、ひき続きロール延伸機で80℃で3.0倍縦延伸を行い、更にひき続きテンターで130℃で3.2倍横延伸し、220℃で熱固定し125μm厚の白色ポリエステルフィルムを得た。このフィルムの見かけ比重は1.13であった。
【0019】
この空洞を含有した白色ポリエステルフィルム上にカーボンブラック含有アクリル樹脂を塗布し、導電性中間層を形成した。さらにこの上に、光導電性酸化亜鉛(堺化学(株)製、#4000)とアクリル樹脂LR333(三菱レーヨン(株))及びアクリリック44−179(大日本インキ(株))を63/7/3の割合で混合し、さらにローズベンガル(増感剤)を0.1部、トルエンを90部加え、ボールミルで約一時間半分散したものをワイヤーバー(#20)で塗布し、160℃で1分乾燥し、固形分厚み13μmの光導電層を形成した。
さらに支持体の反対面に、チタン酸カリウムのウィスカー(大塚化学(株)、TISTAT−PHS)、共重合ポリエステル樹脂(東洋紡績(株)製:MD16)、水、イソプロピルアルコールを30/30/33/8の割合で混合したものをワイヤーバー(#10)で塗布し、160℃で1分乾燥し、固形分厚み3μmのバックコート層を形成した。この様にして電子写真式平版印刷版を作成した。
【0020】
(実施例2〜3及び比較例1〜3)
実施例1において、該空洞含有ポリエステルフィルムを作る際、アナターゼ型二酸化チタン5部は一定にし、固有粘度0.62のポリエチレンテレフタレート樹脂とメルトフローインデックス3.0g/10分の一般用ポリスチレンの混合比を変えることによってフィルム密度を以下の様に変えた以外は実施例1と同様にして電子写真式平版印刷版を作成しコート紙1万枚を実印刷した。
フィルムの見かけ比重
実施例2 1.07
実施例3 1.28
比較例1 0.73
比較例2 1.01
比較例3 1.37
【0021】
(実施例4)
実施例1においてバックコート層として、カチオン系導電性樹脂を塗布して 電子写真式平版印刷版を作成した以外は同様にして行った。
【0022】
(実施例5)
実施例1において導電性中間層にバックコート層と同じウィスカーの層を形 成して電子写真式平版印刷版を作成した以外は同様にして行った。
【0023】
(比較例4)
実施例1においてバックコート層を形成せずに電子写真式平版印刷版を作成 した以外は同様にして行った。
以上の結果を表1に示した。表1に示す様に、実施例の電子写真式平版印刷版は何れもフィルムの見かけ比重が1.05〜1.3であり、良好な折り曲げ性、耐刷性を示している。一方、比較例1、2はカラーの耐刷性が劣り、比較例3は、折り曲げ性が劣っている。また比較例4は、印刷性が全く劣り評価に値しなかった。
【0024】
【発明の効果】
以上の説明から明かな様に本発明による電子写真式平版印刷版は、紙に比べて耐水性、寸法安定性に優れているため、耐刷性がある。反対にプラスチックフィルムに比べて、適度な空洞を含有しているため、適度な柔軟性、クッション性、折り曲げ性があり、取扱い性に優れている。この様にバランス性に優れているため、電子写真式平版印刷版として極めて有用である。
【0025】
【表1】
Figure 0003633947

Claims (3)

  1. ポリエステル及び該ポリエステルに非相溶な熱可塑性樹脂を混合し、得られたシート状物を少なくとも一軸に延伸することにより得られる、見かけ比重が、1.05以上、1.3以下である空洞含有ポリエステルフィルムを支持体とする電子写真式平版印刷版であって前記電子写真式平版印刷版は前記支持体上に導電性中間層を設け、ついで光導電性物質粉末と増感剤、結着剤樹脂とからなる光導電層を形成し、さらに支持体の裏面に導電性バックコート層を設けてなることを特徴とする電子写真式平版印刷版。
  2. 該導電性中間層の表面抵抗値が102Ω/□以上、108Ω/□以下である請求項記載の電子写真式平版印刷版。
  3. 該導電性バックコート層の表面抵抗値が、102Ω/□以上、1012Ω/□以下である請求項1または2記載の電子写真式平版印刷版。
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