JP3631622B2 - 光導波路と光ファイバとの接続構造および接続方法 - Google Patents

光導波路と光ファイバとの接続構造および接続方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は光集積回路基板等の基板上において光導波路と光ファイバとを接着剤を用いて接続する光導波路と光ファイバとの接続構造および接続方法に関し、特に、光ファイバと光導波路との光軸調整の精度を改善し、かつ光ファイバの接続強度を高めた光導波路と光ファイバとの接続構造および接続方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
光集積回路基板や光電子混在基板等の光信号を扱う基板上においては、その基板上に形成された三次元導波路形状の光導波路と、外部との光信号の授受を行なうための光ファイバとを接続する光接続構造が必要である。
【0003】
そのような光導波路と光ファイバとの接続構造の従来の例を図3(a)および(b)にそれぞれ斜視図および断面図で示す。
【0004】
図3(a)において、1は基板、2および3は基板1上に形成された三次元導波路形状の光導波路のそれぞれコア部およびクラッド部、4は基板1上に形成された光ファイバ固定溝、5は光ファイバ固定溝4に光導波路のコア部2と光軸を揃えて固定された光ファイバである。
【0005】
このような光導波路と光ファイバとの接続構造においては、図3(b)に示すように、まず光ファイバ固定溝4にその光軸であるコア部6と光導波路の光軸であるコア部2とを揃えて挿入された光ファイバ5の端面と光導波路の端面との間に紫外線硬化性接着剤から成る端面接続用接着剤7を充填する。次に、光導波路のコア部2と光ファイバ5のコア部6とに紫外線Lを通して端面接続用接着剤7の一部、すなわち両コア部2・7の間とその近傍とを硬化させることによって、光導波路と光ファイバ5の端面同士の仮止めを行なう。その後、端面接続用接着剤7の未硬化部分を外部から紫外線を照射することによって硬化させて、光導波路と光ファイバの端面同士の確実な接着を行なっていた。
【0006】
さらに、基板1の光ファイバ固定溝4への光ファイバ5の確実な固定を行なうために、光ファイバ固定溝4に光ファイバ5の固定を行なうための固定用接着剤8を塗布して固定することも行なわれていた。
【0007】
この図3に示すような接続方法においては、端面接続用接着剤7は光導波路のコア部2および光ファイバ5のコア部6が対向する部分をまず硬化させ、次いでその周りを硬化させることから、あらかじめ光軸調整を行なった接続部分のアライメントが端面接続用接着剤7の硬化の際に生じる収縮等のひずみの影響を受けないため、光軸がずれることがなく、光導波路と光ファイバ5とを精度良く接続することができるというものである。
【0008】
また、従来の光導波路と光ファイバとの接続構造の他の例を図4(a)および(b)にそれぞれ斜視図および断面図で示す。なお、図4において図3と同様の箇所には同じ符号を付してある。
【0009】
図4に示した接続構造においては、まず基板1上に光導波路と対向して形成された光ファイバ固定用溝4に光導波路の端面と光ファイバ5の端面とを対向させて光ファイバ5を挿入する。そして、挿入後に両者の光軸調整を行なって光導波路のコア部2と光ファイバ5のコア部6とを揃える。その後、光導波路の端面から遠く離れた位置の光ファイバ5と光ファイバ固定溝4との間に固定用接着剤8を滴下して光ファイバ5を基板1に確実に固定する。
【0010】
この図4に示すような接続構造においては、固定用接着剤8は光ファイバ5と光ファイバ固定溝4との間を表面張力により流動して光ファイバ固定溝4の内側に行き渡る。この結果、光ファイバ固定溝4を用いることによって固定用接着剤8の量とその分布を容易に制御できるため、固定用接着剤8の塗布およびその硬化に伴う光ファイバ5の光軸ずれを防止することができるというものである。
【0011】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、図3に示すような従来の接続方法においては、光導波路と光ファイバ5との端面同士を接合する端面接続用接着剤7が光ファイバ5の端面および端面近傍の側面を伝って光ファイバ固定溝4に塗布した固定用接着剤8と混ざり合ってしまう、あるいは固定用接着剤8が光ファイバ5の側面を伝って端面接続用接着剤7と混ざり合ってしまうことがある。そのため、端面接続用接着剤7を硬化させた後に固定用接着剤8を硬化させる時に、端面接続用接着剤7が固定用接着剤8の硬化に伴う収縮に引っ張られて、その結果、光軸ずれが生じるという問題点があった。
【0012】
また、端面接続用接着剤7により光導波路の端面と光ファイバ5の端面とを光軸を揃えて接続した後、固定用接着剤8を付与して光ファイバ5を光ファイバ固定溝4に固定する際に、硬化した端面接続用接着剤7に硬化前の固定用接着剤8からその溶剤等が拡散・浸透して接着効果が緩んでしまうことから、光ファイバ5の光軸がずれ易いという問題点もあった。
【0013】
また、図4に示すような接続構造においては、光ファイバ5の端面は単に光導波路の端面に突き当てているだけなので、光接続における光軸の位置整合が不安定であるという問題点があった。
【0014】
本発明は上記従来技術における問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、光導波路が形成された基板上に光ファイバを接着剤で固定する際に、固定用接着剤の付与あるいはその硬化により生じる光軸ずれを改善して良好な位置精度で光軸を揃えて光接続できるとともに、光ファイバを固定用接着剤により確実に基板に固定してその強度を向上させることができる光導波路と光ファイバとの接続構造および接続方法を提供することにある。
【0015】
【課題を解決するための手段】
本発明の光導波路と光ファイバとの接続構造は、基板上に形成された光導波路の端面と、前記基板上に形成された光ファイバ固定溝に前記光導波路と光軸を揃えて固定用接着剤により固定された光ファイバの端面とを端面接続用接着剤により接合して成る光導波路と光ファイバとの接続構造であって、前記光ファイバ固定溝に対して、前記光導波路の端面の直下よりも光ファイバ側で、前記光ファイバの端面と前記固定用接着剤による固定位置との間に接着剤分離溝を設けたことを特徴とするものである。
【0016】
また、本発明の光導波路と光ファイバとの接続方法は、上面に光導波路と、この光導波路の端面の直下よりも光ファイバ側に位置する接着剤分離溝を有する光ファイバ固定溝とを形成した基板を準備し、次に、前記光ファイバ固定溝に前記光導波路と光軸を揃えて、端面を前記接着剤分離溝よりも前記光導波路側に位置させて光ファイバを載置するとともに光導波路と光ファイバの端面同士を端面接続用接着剤により接合し、しかる後、前記光ファイバの端面に対し間に前記接着剤分離溝を挟む領域の前記光ファイバ固定溝と前記光ファイバとを固定用接着剤で接合することを特徴とするものである。
【0017】
本発明の光導波路と光ファイバとの接続構造によれば、光ファイバ固定溝に対して、光導波路の端面の直下よりも光ファイバ側で、その光ファイバの端面と固定用接着剤による固定位置との間に端面接続用接着剤と固定用接着剤とを分離するための接着剤分離溝を形成したことから、光導波路と光ファイバの端面同士を端面接続用接着剤で接続した後に光ファイバ固定溝に固定用接着剤を付与しても、両接着剤の間に形成した接着剤分離溝により両者が接触し混ざり合うことがない。また、固定用接着剤と端面接続用接着剤との間に所望の距離を設けることが可能なため、固定用接着剤を付与する際の影響、あるいは固定用接着剤が硬化する際の収縮等の影響が光導波路および光ファイバの端面に及ぶことを有効に防止することができる。また、光導波路と光ファイバとの光軸調整において光ファイバの先端が不安定になるようなことはなく、光軸調整がしやすい。従って、光軸を揃えて端面接続用接着剤で接合した光導波路と光ファイバとの間の光軸ずれをなくすことができる。また、光ファイバを固定用接着剤によって光ファイバ固定溝に確実に固定することができ、光ファイバの接続強度を向上させることができる。
【0018】
また、本発明の光導波路と光ファイバとの接続方法によれば、光ファイバを、光導波路の端面の直下よりも光ファイバ側に位置する接着剤分離溝を有する光ファイバ固定溝に光導波路と光軸を揃えて、端面を接着剤分離溝よりも光導波路側に位置させて載置して光導波路と光ファイバの端面同士を端面接続用接着剤で接合した後、光ファイバ固定溝のうち光ファイバの端面に対して間に接着剤分離溝を挟む領域と光ファイバとを固定用接着剤で接合することから、光導波路と光ファイバの端面同士を端面接続用接着剤で接続した後に固定用接着剤を付与しても、両接着剤の間に形成した接着剤分離溝により両者が接触し混ざり合うことがない。また、固定用接着剤と端面接続用接着剤との間に所望の距離を設けることが可能なため、固定用接着剤を付与する際の影響、あるいは固定用接着剤が硬化する際の収縮等の影響が光導波路の端面に及ぶことを有効に防止することができる。また、光導波路と光ファイバとの光軸調整において光ファイバの先端が不安定になるようなことはなく、光軸調整がしやすい。従って、光軸を揃えて端面接続用接着剤で接合した光導波路と光ファイバとの間の光軸ずれをなくすことができる。また、光ファイバを固定用接着剤によって光ファイバ固定溝に確実に固定することができ、光ファイバの接続強度を向上させることができる。
【0019】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を図面を参照しつつ説明する。
【0020】
図1(a)および(b)は、本発明の光導波路と光ファイバとの接続構造の実施の形態の一例を示すそれぞれ斜視図および断面図である。図1において、図3・図4と同様の箇所には同じ符号を付してある。
【0021】
本発明の光導波路と光ファイバとの接続構造は、基板1上に形成された光導波路の端面と基板1上に形成された光ファイバ固定溝4に固定用接着剤8により固定された光ファイバ5の端面とを、光軸を揃えて、すなわち光導波路のコア部2と光ファイバ5のコア部6とを揃えて端面接続用接着剤7により接合して成る接続構造であって、光ファイバ固定溝4に対して、この光ファイバ固定溝4に固定される光ファイバ5の端面とこの光ファイバ固定溝4に固定用接着剤8により光ファイバ5が固定される固定位置との間に、端面接続用接着剤7と固定用接着剤8とを分離するための接着剤分離溝9を設けたことが特徴である。
【0022】
このように接着剤分離溝9を設けたことから、光導波路と光ファイバ5との端面同士を接合する端面接続用接着剤7が光ファイバ5の端面および端面近傍の側面を伝って光ファイバ固定溝4に塗布した固定用接着剤8と混ざり合ってしまったり、あるいは固定用接着剤8が光ファイバ5の側面を伝って端面接続用接着剤7と混ざり合ってしまうことがなくなる。そのため、端面接続用接着剤7を硬化させた後に固定用接着剤8を硬化させる時に、端面接続用接着剤7が固定用接着剤8の硬化に伴う収縮に引っ張られて光軸ずれが生じるようなことがなくなる。
【0023】
また、端面接続用接着剤7により光導波路の端面と光ファイバ5の端面とを光軸を揃えて接続した後、固定用接着剤8を付与して光ファイバ5を光ファイバ固定溝4に固定する際に、端面接続用接着剤7と固定用接着剤8との間に所望の距離を容易に確保することができるため、硬化した端面接続用接着剤7に硬化前の固定用接着剤8からその溶剤等が拡散・浸透して接着効果が緩んでしまうこともなくなる。
【0024】
しかも、光ファイバ5の端面は光ファイバ固定溝4に支持された状態で光導波路の端面に突き当てられるので、光接続における光軸の位置整合を良好なものとすることができる。
【0025】
また、本発明の光導波路と光ファイバとの接続方法によれば、基板1上に形成された接着剤分離溝9を有する光ファイバ固定溝4に、まず、光ファイバ5を光ファイバ固定溝4に挿入・載置した後に、光ファイバ5と光導波路2の光軸調整を行なって両者の光軸を揃え、それとともに光導波路と光ファイバ5の端面の間に端面接続用接着剤7を少量滴下して端面接続用接着剤7を硬化させる。このとき、滴下する端面接続用接着剤7の量が少なくて済むため、その硬化の際に生じる収縮等の影響が小さく、光軸ずれが生じることはない。
【0026】
ここで、端面接続用接着剤7として紫外線硬化性接着剤等の光硬化性接着剤を用いれば、光導波路のコア部2または光ファイバのコア部6を通して紫外線等の光を照射することによって光軸部の端面接続用接着剤7を瞬時に硬化させることができるため、接着前に光軸調整した位置整合が保たれ、光軸ずれが生じない接続が可能となる点で好適なものとなる。
【0027】
このような端面接続用接着剤7としては、光導波路のコア部2および光ファイバ5のコア部6と屈折率が同程度のもの、すなわち、それらとの屈折率差が0.1 %以下の紫外線硬化性接着剤が望ましい。このような紫外線硬化性接着剤を使用することによって、光導波路の端面と光ファイバ5の端面との間で光を散乱することなく伝搬させて良好な光接続を得ることができる。また、紫外線硬化性接着剤を用いることによって、光軸調整を行なった光導波路と光ファイバ5との状態を瞬時に固定することができるため、アライメント特性が良いものとなる。
【0028】
具体的な紫外線硬化性接着剤としては、例えば紫外線硬化型エポキシ樹脂や紫外線硬化型アクリル樹脂等を用いることができる。中でも、紫外線硬化型エポキシ樹脂を用いると、硬化の際の収縮が小さいといった点で好適である。
【0029】
一方、熱硬化性接着剤を用いて加熱等の方法で端面接続用接着剤7を硬化させる場合においては、樹脂系接着剤は熱膨張率が一般的に大きく、光軸ずれが生じやすい傾向があるが、この場合であっても端面接続用接着剤7が少量で膨張の絶対量が小さくなるため、光軸ずれが生じる心配がない。端面接続用接着剤7として好適な熱硬化性接着剤としては、例えば熱硬化型エポキシ樹脂・アクリル樹脂・ポリイミド樹脂やシリコーン接着剤等がある。
【0030】
固定用接着剤8は、光ファイバ5を基板1に接着させる効果のあるものであればとりわけ限定されるものではない。しかしながら、光導波路と光ファイバ5との光軸ずれへの影響を小さくするためにはできるだけ熱膨張率および硬化時の収縮率が小さいものが望ましく、また、光ファイバ5の基板1への良好かつ確実な接着のためには接着面積等を考慮して1kg以上の接着強度が得られるものが望ましい。
【0031】
なお、端面接続用接着剤7として光硬化性接着剤を用いた場合に、固定用接着剤8として熱硬化性接着剤を用いると、光硬化性接着剤に比べて熱硬化性接着剤の接着強度が大きいため、より接着強度が大きくなるといった点で良好な光接続を行なうことができる。このような固定用接着剤8に用いる熱硬化性接着剤としては、例えば熱硬化型エポキシ樹脂・アクリル樹脂・ポリイミド樹脂やシリコーン接着剤等を用いることができる。中でも、シリコーン接着剤を用いると、接着強度が大きく、また吸水率が低いといった点で好適である。
【0032】
なお、端面接続用接着剤7と固定用接着剤8との両方に熱硬化性接着剤を用いても、端面接続用接着剤7に熱硬化性接着剤を用いて固定用接着剤8に光硬化性接着剤を用いてもよいことは言うまでもない。また、両方に熱硬化性接着剤または光硬化性接着剤を用いる場合にも、両者で硬化条件や硬化後の光透過度、吸水率、接着強度、Tg等を異ならせたものを組み合わせることにより、良好な特性で接続信頼性の高い接続構造とすることができる。その組合せは接続構造の仕様に応じて適宜選択すればよい。
【0033】
従って、本発明の接続方法によれば、光軸ずれの生じない接続信頼性の高い光導波路と光ファイバとの接続を得ることができる。
【0034】
また、光ファイバ5の基板1への接着強度、すなわち光ファイバ固定溝4への接着強度については、光導波路と光ファイバ5の端面同士を接合した後に、光ファイバ固定溝4のうち光ファイバ5の端面に対して間に接着剤分離溝9を挟む領域に設けた固定位置において光ファイバ固定溝4と光ファイバ5とを固定用接着剤8で接合することから、十分な量の固定用接着剤8を付与することができ、光ファイバ5の接着強度を向上することができる。このとき、固定用接着剤8を多量に塗布して、これが表面張力によって光ファイバ5の側面に沿って流動しても、光ファイバ5の端面側に流動した固定用接着剤8は光ファイバ固定溝4に設けた接着剤分離溝9のところで止まり、端面接続用接着剤7とは分離されるため、光ファイバ5の端面と光導波路の端面の接合部分には影響がない。従って、固定用接着剤8の硬化の際の収縮による光ファイバ5の光軸ずれも生じない。
【0035】
また、接着剤分離溝9は光導波路の端面よりも光ファイバ5側に形成されているため、端面接続用接着剤7を光導波路の端面全体に広がらせ、さらに、光ファイバ5に対してもその端面が光導波路の端面に突き当たる角まで広がらせることができる。従って、接着剤分離溝9を設けたことにより、光導波路と光ファイバ5の端面同士の接続部の接着強度も向上させることができる。
【0036】
さらに、接着剤分離溝9を光導波路の端面の直下よりも光ファイバ5側に形成しているため、光導波路と光ファイバ5との光軸調整において光ファイバ5の先端が不安定になるようなことがなく、光軸調整がしやすい。
【0037】
本発明の光導波路と光ファイバとの接続構造において、基板1には、光集積回路基板や光電子混在基板等の光信号を扱う基板として使用される種々の基板、例えばシリコン基板やアルミナ基板・ガラスセラミックス基板・多層セラミック基板等が使用できる。
【0038】
基板1上に形成される光導波路は、クラッド部3中にコア部2が形成された三次元導波路形状の光導波路であり、その形成材料としては、シリカ・ポリイミド・フッ素樹脂・フッ化ポリイミド・シロキサン系ポリマ等を用いることができる。中でも、シロキサン系ポリマから成る光導波路を用いれば、低温形成および高耐熱性・低損失といった点で好適なものとなる。
【0039】
光ファイバ固定溝4としては、基板1の材料や特性、あるいは光ファイバ5の形状・寸法等に応じて種々の形状・寸法・形成方法から適宜選択すればよい。図1に示した四角形状の溝の他にも、V字状の溝や半円形状の溝としてもよい。その形成には、ダイシングを用いた方法やマスクを用いて反応性ドライエッチングを行なう方法、その他の方法を用いればよい。
【0040】
光ファイバ5としては、シリカ系およびPMMA(ポリメチルメタアクリレート)・フッ素樹脂等で形成されるシングルモード光ファイバあるいはマルチモード光ファイバが接続できる。
【0041】
接着剤分離溝9の位置は、具体的には、光導波路の端面から20μm〜2cmで光ファイバ5の端面と固定位置との間の範囲に位置していると良い。中でも、光導波路の端面から20〜50μmの位置とすると、効果的に端面接続用接着剤7と固定用接着剤8とを分離することができることから好適なものとなる。
【0042】
また、接着剤分離溝9の幅や深さ・長さ等の寸法は、光導波路と光ファイバ5の端面に付与する端面接続用接着剤7の容積よりも大きい容積を占め、特に、幅については接着剤の分離効果が確実となる10μm以上の幅を持つことが望ましい。
【0043】
接着剤分離溝9の形状は、光導波路と光ファイバ5の端面の間に付与する端面接続用接着剤7と光ファイバ支持溝4に付与する固定用接着剤8とを分離することができればどのような形状でも良い。例えば、図1に示すような断面が直方形状の溝や、図2(a)に図1(b)と同様の断面図で示すようなV字状の溝、あるいは半円形状の溝等、種々の形状とすることができる。中でも、ダイシングにより作製が容易であること、同容積であれば溝を狭く、あるいは浅くすることができることから、断面が直方形状の溝とすると本発明の接続構造に好適なものとなる。
【0044】
さらに、接着剤分離溝9は1個だけでなく、図2(b)に図1(b)と同様の断面図で示すように複数個設けても良い。接着剤分離溝9を複数個設けた場合には、接着剤の分離をより確実に行なうことができるものとして機能させるのみならず、光ファイバ5の端面に一番近い溝は端面接続用接着剤7と固定用接着剤8との分離のための溝として使用し、その他の溝には固定用接着剤8を侵入させて、その表面張力の効果を利用して光ファイバ5の光ファイバ固定溝4への接着強度をさらに増加させることもできる。
【0045】
なお、接着剤分離溝9を形成する方法としては、光ファイバ固定溝4と同様に、ダイシングを用いた方法やマスクを用いて反応性ドライエッチングを行なう方法、その他の方法によればよい。
【0046】
【実施例】
次に、本発明の光導波路と光ファイバとの接続構造および接続方法について具体例を説明する。
【0047】
〔例1〕
アルミナセラミックスから成る基板上に、クラッド部がシロキサンポリマ、コア部がチタン含有シロキサンポリマから成るステップインデックス型光導波路を形成した。次いで、この光導波路に対して光ファイバと接続する部分を決定し、ダイシングブレードを用いて光導波路の端面を形成した。さらに、この端面に対向する位置に光ファイバ固定溝をダイシングにより形成した。このときの光導波路の上面から光ファイバ固定溝の底面までの深さは90μmとした。
【0048】
さらに、光ファイバ固定溝の底面の光導波路端面から20μm離れた位置にダイシングにより接着剤分離溝を形成した。ここで、接着剤分離溝は深さ30μm・光ファイバの光軸方向の幅20μmの直方形状の断面形状で、光軸方向に対して垂直方向の幅は、光ファイバ固定溝をテラス状に形成したため、基板の端部までの幅と同じとした。
【0049】
次に、光ファイバ固定溝に直径125 μmのシリカ系の光ファイバを挿入し、光導波路のコア部を通して光ファイバの端面から入射させた光を光ファイバの他方の端面である出力端からモニタリングしながら、光導波路と光ファイバとの光軸調整を行なった。
【0050】
次に、光導波路および光ファイバのコア部と屈折率が同程度の端面接続用接着剤としてスルフォニウム塩系光重合開始剤とエポキシ系樹脂とから成る紫外線硬化型エポキシ樹脂の紫外線硬化性接着剤を光導波路と光ファイバの端面の間に0.245 μl滴下し、さらに、外部から紫外線を照射して硬化させた。
【0051】
その後、光ファイバの端面に対して間に接着剤分離溝を挟む領域の光ファイバ固定溝と光ファイバとに固定用接着剤として端面接続用接着剤と同じ紫外線硬化性接着剤を塗布し、紫外線を照射して硬化させて、光ファイバを基板上に固定した。
【0052】
このようにして作製した本発明の光導波路と光ファイバとの接続構造について光導波路と光ファイバとの接続損失をカットバック法により測定したところ、波長1.3 μmのLD(レーザダイオード)光に対する接続損失は0.5 dB以下に抑えられていることが確認できた。
【0053】
また、あらかじめ測定した位置ずれと損失の関係を表わしたデータから、損失の極小値すなわち位置ずれ=0に対する損失の増加分を位置ずれの大きさに対応させて光軸ずれの評価を行なったところ、0.2 μm以内のずれであることが分かった。
【0054】
また、この接続構造について光ファイバの基板への接着強度を荷重引っ張り試験機により測定したところ、光ファイバの接着強度は1kg以上あり、光ファイバ接着後の基板の取り回しやハンドリングに充分耐えることができる良好な接続強度を有していることが確認できた。
【0055】
〔例2〕
アルミナセラミックスから成る基板上に、クラッド部がシロキサンポリマ、コア部がチタン含有シロキサンポリマから成るステップインデックス型光導波路を形成した。次いで、この光導波路に対して光ファイバと接続する部分を決定し、反応性イオンエッチング装置(RIE装置)を用いて光導波路の端面を形成した。さらに、この端面に対向する位置に光ファイバ固定溝を反応性イオンエッチングにより形成した。このときの光導波路の上面から光ファイバ固定溝の底面までの深さは90μmとした。
【0056】
さらに、光ファイバ固定溝の底面の光導波路端面から20μm離れた位置に反応性イオンエッチングにより接着剤分離溝を形成した。ここで、接着剤分離溝は、深さ30μm・光ファイバの光軸方向の幅20μmの直方形状の断面を有しており、光軸方向に対して垂直方向は光ファイバ固定溝と同じ幅の溝とした。
【0057】
次に、光ファイバ固定溝に直径125 μmのシリカ系光ファイバを挿入し、LDの発光面と接続した光導波路のコア部を通して、光導波路に接続した光ファイバの出力端からLDから発光された光をモニタリングしながら、光導波路と光ファイバとの光軸調整を行なった。
【0058】
次に、光導波路および光ファイバのコア部と屈折率が同程度の端面接続用接着剤として〔例1〕と同じ紫外線硬化性接着剤を光導波路と光ファイバの端面に0.245 μl滴下し、さらに外部から紫外線を照射して硬化させた。
【0059】
その後、光ファイバの端面に対して、間に接着剤分離溝を挟む領域の光ファイバ固定溝と光ファイバとに固定用接着剤として熱硬化型シリコーン樹脂の熱硬化性接着剤を塗布し、ハロゲンランプ光によって150 ℃で30秒間局所的に加熱することによって固定用接着剤を硬化させて、光ファイバを基板上に固定した。
【0060】
このようにして作製した本発明の光導波路と光ファイバとの接続構造について、光導波路と光ファイバとの接続損失および光軸ずれの評価を〔例1〕と同様の方法で行なったところ、光導波路と光ファイバとの接続損失は0.5 dB以下であった。また、光ファイバの接続における光軸ずれは0.2 μm以下であることが確認できた。
【0061】
また、この接続構造において光ファイバの基板への接着強度は荷重引っ張り試験機を用いて測定した結果、接着強度は5kg以上あり、良好な接着強度を有していることが確認できた。
【0062】
なお、以上はあくまで本発明の実施の形態の例示であって、本発明はこれらに限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更や改良を加えることは何ら差し支えない。
【0063】
【発明の効果】
以上のように、本発明の光導波路と光ファイバとの接続構造によれば、光ファイバ固定溝に対して、光導波路の端面の直下よりも光ファイバ側で、その光ファイバの端面と固定用接着剤による固定位置との間に接着剤分離溝を形成したことから、光導波路と光ファイバの端面同士を接合する端面接続用接着剤と光ファイバと光ファイバ固定溝とを接合する固定用接着剤とが接触し混ざり合うことがなく、また、固定用接着剤と端面接続用接着剤との間に所望の距離を設けることが可能なため、固定用接着剤を付与する際の影響、あるいは固定用接着剤が硬化する際の収縮等の影響が光導波路および光ファイバの端面に及ぶことを有効に防止することができる。また、光導波路と光ファイバとの光軸調整において光ファイバの先端が不安定になるようなことはなく、光軸調整がしやすい。従って、光導波路と光ファイバとの間の光軸ずれの発生をなくすことができるとともに、光ファイバを固定用接着剤によって光ファイバ固定溝に確実に固定して光ファイバの接続強度を向上させることができる。
【0064】
また、本発明の光導波路と光ファイバとの接続方法によれば、光導波路の端面の直下よりも光ファイバ側に位置する接着剤分離溝を有する光ファイバ固定溝に光導波路と光軸を揃えて、端面を接着剤分離溝よりも光導波路側に位置させて光ファイバを載置して光導波路と光ファイバの端面同士を端面接続用接着剤で接合した後、光ファイバ固定溝のうち光ファイバの端面に対して間に接着剤分離溝を挟む領域と光ファイバとを固定用接着剤で接合することから、接着剤分離溝により端面接続用接着剤と固定用接着剤とが接触し混ざり合うことがなく、また、固定用接着剤と端面接続用接着剤との間に所望の距離を設けることが可能なため、固定用接着剤を付与する際の影響、あるいは固定用接着剤が硬化する際の収縮等の影響が光導波路の端面に及ぶことを有効に防止することができる。また、光導波路と光ファイバとの光軸調整において光ファイバの先端が不安定になるようなことはなく、光軸調整がしやすい。従って、光導波路と光ファイバとの間の光軸ずれの発生をなくすことができるとともに、光ファイバを固定用接着剤によって光ファイバ固定溝に確実に固定して光ファイバの接続強度を向上させることができる。
【0065】
また、本発明の光導波路と光ファイバとの接続構造および接続方法によれば、光導波路の端面と光ファイバの端面とを接合する端面接続用接着剤の量が少なくて済むため、端面同士を確実に接合しつつ接着剤の硬化の際に生じる収縮や膨脹等の影響を小さく抑えることができるので、光軸ずれが生じない信頼性の高い光ファイバと光導波路の光接続を得ることができる。
【0066】
また、光ファイバの基板への接着強度については、端面接続用接着剤と分離させつつ光ファイバ固定溝に十分な量の固定用接着剤を付与して接着強度を向上させることができるので、接続強度の高い光接続を得ることができる。従って、光接続の精度を高めることができるとともに、多少の温度変化があるような状況下での使用に際しても接着強度の追加の補強等を行なう必要がなく、信頼性の高い光接続を得ることができる。
【0067】
さらに、接着剤分離溝は光導波路と光ファイバの端面の接続位置の直下にはなく、光ファイバの端面を光ファイバ固定溝によって支持することができるため、光ファイバの端面の位置を安定させて良好な光接続を得ることができる。
【0068】
以上のように、本発明によれば、光導波路が形成された基板上に光ファイバを接着剤で固定する際に、固定用接着剤の付与あるいはその硬化により生じる光軸ずれを改善して良好な位置精度で光軸を揃えて光接続できるとともに、光ファイバを固定用接着剤により確実に基板に固定してその強度を向上させることができる光導波路と光ファイバとの接続構造および接続方法を提供することができた。
【図面の簡単な説明】
【図1】(a)および(b)は、それぞれ本発明の光導波路と光ファイバとの接続構造の実施の形態の一例を示す斜視図および断面図である。
【図2】(a)および(b)は、それぞれ本発明の光導波路と光ファイバとの接続構造の実施の形態の他の例を示す断面図である。
【図3】(a)および(b)は、それぞれ従来の光導波路と光ファイバとの接続構造の例を示す斜視図および断面図である。
【図4】(a)および(b)は、それぞれ従来の光導波路と光ファイバとの接続構造の他の例を示す斜視図および断面図である。
【符号の説明】
1・・・基板
2・・・光導波路のコア部
3・・・光導波路のクラッド部
4・・・光ファイバ固定溝
5・・・光ファイバ
6・・・光ファイバのコア部
7・・・端面接続用接着剤
8・・・固定用接着剤
9・・・接着剤分離溝

Claims (2)

  1. 基板上に形成された光導波路の端面と、前記基板上に形成された光ファイバ固定溝に前記光導波路と光軸を揃えて固定用接着剤により固定された光ファイバの端面とを端面接続用接着剤により接合して成る光導波路と光ファイバとの接続構造であって、前記光ファイバ固定溝に対して、前記光導波路の端面の直下よりも光ファイバ側で、前記光ファイバの端面と前記固定用接着剤による固定位置との間に接着剤分離溝を設けたことを特徴とする光導波路と光ファイバとの接続構造。
  2. 上面に光導波路と、該光導波路の端面の直下よりも光ファイバ側に位置する接着剤分離溝を有する光ファイバ固定溝とを形成した基板を準備し、次に、前記光ファイバ固定溝に前記光導波路と光軸を揃えて、端面を前記接着剤分離溝よりも前記光導波路側に位置させて光ファイバを載置するとともに光導波路と光ファイバの端面同士を端面接続用接着剤により接合し、しかる後、前記光ファイバの端面に対し間に前記接着剤分離溝を挟む領域の前記光ファイバ固定溝と前記光ファイバとを固定用接着剤で接合することを特徴とする光導波路と光ファイバとの接続方法。
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