JP3628723B2 - 植物の形質転換に使用し得るキメラ遺伝子においてターミネーター領域として作用し得る単離dna配列 - Google Patents
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Description
【産業上の利用分野】
本発明は、植物の被転写遺伝子から単離されたターミネーター領域及びそれらを含む新規キメラ遺伝子の使用、並びに植物の形質転換における該キメラ遺伝子の使用に係わる。
【0002】
1つまたは幾つかの遺伝子エレメントの発現に関連する多数の表現型特性を植物ゲノムに組込み、かかるトランスジェニック植物に有利な農業特性を与えることができる。狭義には、作物の病原性物質に対する耐性、殺草性植物防疫生成物に対する耐性、食品または医薬的重要性を有する物質の生産が挙げられる。かかる種々の特性をコードする遺伝子エレメントの単離及び特性分析にほかに、適当な発現が保証される必要がある。この適当な発現は質的にも量的にも優れたレベルにある必要がある。質的レベルでは、例えば空間的には特定の組織における優先的発現、時間的には誘導性発現が考慮され、量的レベルでは、導入された遺伝子の発現産物の蓄積量が考慮される。この適当な発現は、特に量的及び質的要素に関しては、トランス遺伝子に関連する調節遺伝子エレメントの存在に多分に依存する。この適当な調節を与える始原エレメントのなかで、同種または異種の、単一または組合わせたプロモーター領域の使用が科学文献に広範に記載されている。トランス遺伝子の下流のターミネーター領域は、トランス遺伝子の発現の質または量におけるそれらの役割について前提要件なしに、トランス遺伝子転写プロセスを停止することができる境界を置くためのみに使用される。
【0003】
本発明は、植物の被転写遺伝子から単離されたターミネーター領域及びそれらを含む新規キメラ遺伝子の使用、並びに植物の形質転換における該キメラ遺伝子の使用に係わる。特に本発明は、同じ植物被転写遺伝子から単離されたターミネーター領域及びプロモーターの同時使用に係わる。かかる遺伝子調節エレメントの制御下で、量及び質が共に適当なトランス遺伝子の発現が可能になる。本発明の使用により得られるこの適当な発現は、作物の病原性物質に対する耐性、殺草性植物防疫生成物に対する耐性、及び食品及び医薬的に重要な物質の生産のごとき特性に係わり得る。特に、植物の急成長領域におけるキメラ遺伝子の発現産物の量的及び質的に優先的な発現によって、トランスジェニック植物に高い除草剤耐性を付与し得る。この除草剤耐性遺伝子の特異的且つ適当な発現は、Arabidopsis thaliana由来のH4A748ヒストン遺伝子のプロモーター及びターミネーター領域調節エレメントを同時使用することにより得られる。かかる発現パターンは、高い除草剤耐性を与えるために使用される調節エレメントを用い、上述のごとき問題の全ての特性に対して得ることができる。本発明は更に、かかる遺伝子によって形質転換された植物細胞、かかる細胞から再生された形質転換植物、及び、かかる形質転換植物を使用する交雑から誘導される植物にも係わる。
【0004】
作物保護に使用される植物防疫生成物のなかで浸透性(systemic)生成物は、施用後植物中に輸送され、一部は急成長部分、特に茎及び根端に蓄積し、除草剤の場合には、感受性植物を壊滅するほど劣化させる原因となり得ることを特徴とする。この種の挙動を示す幾つかの除草剤においては、主たる作用態様は公知であり、標的植物の適正な発育に必要な化合物の生合成経路に関与すると特性分析されている酵素の失活が原因となる。かかる生成物の標的酵素は種々の細胞内分画に存在し得るが、公知の生成物の作用の態様を観察すると、最も多くはプラスチド分画内に存在することが判る。
【0005】
上記種類の除草剤に属し、その主標的が既知である生成物に感受性の植物の耐性は、遺伝子の発現産物が除草剤によって阻害される特性に関して突然変異したまたはしていない任意系統起源の、標的酵素をコードする遺伝子をゲノム中に安定導入することにより得られる。別の方法は、除草剤を、植物発育に対して不活性及び無毒性の化合物に変換(metabolize)し得る酵素をコードする任意系統起源の遺伝子を、感受性植物のゲノム中に安定導入することからなる。後者の場合、除草剤の標的を特性分析することは不要である。
【0006】
処理した植物における上記種類の生成物の分布及び蓄積の態様を鑑み、かかる生成物が蓄積する植物の急成長領域において優先的に発現及び蓄積するように、かかる遺伝子の翻訳産物を発現し得ることが有利である。更に、かかる生成物の標的が細胞質以外の細胞分画中に局在する場合には、耐性付与タンパク質を適当な分画、特にプラスチド分画に割り当て得るようなポリペプチド配列を含む前駆体の形態で、遺伝子の翻訳産物を発現し得ることが有利である。
【0007】
上記方法を示す例として、ホスホノメチルグリシン系の広域スペクトルの浸透性除草剤であるグリホセート(glyphosate)、スルホセート(sulphosate)またはホサメチン(fosametin)を挙げることができる。これらは実質的に、5−エノールピルビルシキメート−3−ホスフェートシンターゼ(EPSPS,EC2.5.1.19)のPEP(ホスホエノールピルベート)に対する競合阻害剤として作用する。植物に施用後、これらは植物中に輸送され、急成長部分、特に幹及び根端に蓄積し、感受性植物を壊滅するほど劣化させる原因となる。
【0008】
上記生成物の主標的であるEPSPSは、プラスチド分画中に局在する芳香族アミノ酸生合成経路の酵素である。この酵素は1つ以上の核遺伝子によってコードされ、細胞質前駆体の形態で合成され、次いでプラスチド中に輸送され、そこに成熟形態で蓄積される。
【0009】
グリホセート及び該系の生成物に対する植物の耐性は、遺伝子産物のグリホセート阻害特性に関して突然変異しているまたはしていない植物または細菌起源のEPSPS遺伝子をゲノム中に安定導入することにより得られる。グリホセートの作用態様を鑑み、プラスチド中、更に生成物が蓄積する植物の急成長領域中に高度に蓄積し得るようこの遺伝子の翻訳産物を発現し得ることが有利である。
【0010】
例えば米国特許第4,535,060号によれば、酵素をプラスチド分画中に局在した後、この酵素を競合阻害物質(グリホセート)に対してより耐性にする少なくとも1つの突然変異を有するEPSPSをコードする遺伝子を、植物のゲノム中に導入することにより、上記タイプの除草剤、特にN−ホスホノメチルグリシンまたはグリホセートに対する耐性を植物に与えられることが知られている。しかしながらかかる方法は、農業条件下でかかる生成物を用いて処理したとき、かかる植物を使用することにおいてより高い信頼性を与えるように改善される必要がある。
【0011】
本明細書において“植物”とは、光合成し得る任意の分化多細胞有機体を意味し、“植物細胞”とは、植物から誘導されるもので、カルスのごとき未分化組織、或いは胚もしくは植物部分、植物または種子のごとき分化組織を構成し得る任意の細胞を意味すると理解されたい。“ターミネーター領域”なる用語は、コーディング部分の下流に位置し、被転写遺伝子の構造部分に対応する可変長の単離DNA配列を意味すると理解されたい。除草剤耐性遺伝子とは、除草剤による阻害特性に関して1つ以上の突然変異を有するか又は有さない除草剤の標的酵素、または植物に対して不活性または無毒性の化合物に除草剤を変換し得る酵素をコードする任意系統起源の任意の遺伝子を意味すると理解されたい。植物の急成長領域とは、実質的な細胞複製部位である領域、特に頂端領域を意味すると理解されたい。
【0012】
本発明は、除草剤耐性遺伝子を含む新規キメラ遺伝子によって形質転換された細胞を再生することにより、処理された植物の急成長領域に蓄積する除草剤に対し特に高い耐性を有する形質転換植物を生産することに係わる。更に本発明は、ホスホノメチルグリシン系除草剤耐性遺伝子を含む新規キメラ遺伝子によって形質転換された細胞を再生することにより、前記除草剤に対して高い耐性を有する形質転換植物を生産することにも係わる。本発明は、上記新規のキメラ遺伝子、植物の急成長部分における優れた耐性の故により耐性のある形質転換植物、かかる形質転換植物を使用する交雑から誘導される植物にも係わる。本発明は更に、上記キメラ遺伝子を構築するための新規のターミネーター領域にも係わる。
【0013】
特に本発明は、EPSPSを標的とする除草剤に対する特に高い耐性を植物に与えるためのキメラ遺伝子であって、転写方向で、プロモーター領域、トランジットペプチド領域、ホスホノメチルグリシン系生成物に対する耐性のための酵素をコードする配列、及びターミネーター領域を含み、前記ターミネーター領域が、それが誘導された遺伝子の当初向きに対して任意の向きの、植物ヒストン遺伝子のターミネーター領域のフラグメントからなり、前記除草剤が蓄積する領域における除草剤耐性のためのタンパク質の優先的な発現及び蓄積を可能にすることを特徴とするキメラ遺伝子を提供する。
【0014】
本発明のターミネーター領域が誘導されるヒストン遺伝子は、コムギ、トウモロコシまたはコメのごとき単子葉植物、好ましくは、アルファルファ、ヒマワリ、ダイズ、アブラナのごとき双子葉植物、より好ましくはArabidopsis thalianaから得られるものである。H3型または好ましくはH4型ヒストン遺伝子を使用するのが好ましい。
【0015】
トランジットペプチド領域は、転写方向で、プラスチド局在酵素をコードする植物遺伝子由来の少なくとも1つのトランジットペプチド、プラスチド局在酵素をコードする植物遺伝子のN末端成熟部分の配列の一部、更に、プラスチド局在酵素をコードする植物遺伝子由来の第2のトランジットペプチド、好ましくは欧州特許公開第508 909号に記載のリブロース−1,5−ビスホスフェートカルボキシラーゼ/オキシゲナーゼ(RuBisCo)小サブユニット遺伝子を含む。この特徴的な領域の役割は、成熟ポリペプチドをプラスチド分画中に最大効率で、好ましくは天然形態で放出することである。
【0016】
本発明のキメラ遺伝子に使用し得るコーディング配列は、任意系統起源の除草剤耐性遺伝子に由来する。この配列は特に、ある程度のグリホセート耐性を有する突然変異EPSPSのものとし得る。
【0017】
欧州特許公開第507 698号に記載のプロモーター領域は、単独もしくは重複形態の、または植物において天然に発現される遺伝子と組合わせた任意起源のものとし得る。植物において天然に発現される遺伝子としては、例えば細菌起源のもの(ノパリンシンターゼ遺伝子)、ウイルス起源のもの(例えばカリフラワーモザイクウイルスの35S転写物)、好ましくは植物起源のもの(例えばリブロース−1,5−ビスホスフェートカルボキシラーゼ/オキシゲナーゼ小サブユニット、好ましくは植物ヒストン遺伝子、好ましくはArabidopsis thaliana)が挙げられる。H3型または好ましくはH4型ヒストン遺伝子を使用するのが好ましい。
【0018】
本発明のキメラ遺伝子は、上述の必須部分に加え、プロモーター領域とコーディング領域の間、及びコーディング領域とターミネーター領域との間に非翻訳中間領域(リンカー)を含み得、この非翻訳領域は任意の系統起源のものとし得る。
【0019】
【実施例】
実施例1:キメラ遺伝子の構築
本発明のキメラ遺伝子を以下のエレメントから出発して構築した。
【0020】
1)ヒストン遺伝子プロモーター:該プロモーターを、Arabidopsis thaliana,Strasbourg種のH4A748ヒストンクローン(M.E.Chaboute,University of Strasbourg,thesis,1987 及び M.E.Chaboute ら,(1987) Plant Mol.Biol.8,179−191)から単離した。単離するために使用したAvaI部位間に約900bpを含むこのプロモーターを、クレノウポリメラーゼを使用してSalI及びAvaI突出末端を充填した後、カタログ(Pharmacia #27−4949−01)において入手可能なpUCI8のSalI部位中にサブクローニングした。pUCI8ポリリンカーのHindIII部位に近いほうにプロモーターの5’末端を有し、pUC I8ポリリンカーのXbaI部位に近いほうにプロモーターの3’末端を有する、得られたサブクローンの1つをあとで使用し、prom.H4A748/AvaI/SalI−pUCI8と命名した。
【0021】
2)トランジットペプチド領域:使用した2つのトランジットペプチド及び成熟タンパク質エレメントは、組立てと一緒に記載されている(M.Lebrunら,欧州特許公開第508 909号)。この領域は約350bpからなり、最適化トランジットペプチド(Optimized Transit Peptide,OTP)と命名した。
【0022】
3)除草剤耐性CT7遺伝子:これは、Stalkerら(1985) J.Biol.Chem.,260,4724−4728によって単離されたSalmonella thyphymurium由来のEPSPSの突然変異CT7遺伝子(Pro101からSerまで)から誘導した。Calgeneによって与えられるクローンpGM34−2をXbaIを用いて直線化し、Vigna radiataヌクレアーゼを用いて処理した。SamIで再度切断した後、2つのブラント末端を連結した。得られたクローンは翻訳イニシエーターATG上にNcoI部位を有すると共に、終結コドンの17bp下流にSalI部位を有した。このクローンをpRPA−BL−104と命名した。
【0023】
4)OTP/CT7融合:CT7遺伝子と読取り枠内で融合された最適化トランジットペプチド(OTP)を含む発現カセット(B.Lerouxら,欧州特許公開第507 698号)をベクターpBSII SK(−)(Stratageneカタログ#212206)中にクローニングした。この5’−OTP/CT7−3’カセットは5’末端にXbaI、3’末端にSstI部位を含んでいた。
【0024】
5)GUSレポーター遺伝子:これは、カタログ(Clontech#6017−1)において入手可能なプラスミドpBI101−I中に存在するβ−グルクロニダーゼ(GUS)をコードする遺伝子である。
【0025】
6)ヒストンターミネーター領域:これは、Arabidopsis thaliana由来のH4A748ヒストン遺伝子(M.E.Chaboute,University of Strasbourg,thesis,1987 及び M.E.Chaboute ら,(1987) Plant Mol.Biol.8,179−191)から単離した。661bpのSau3AIフラグメントを単離し、クレノウポリメラーゼで処理することによりブラント末端化し、カタログ(Stratagene#212207)において入手可能なファージミド(phagemide)pBluescript(登録商標)II KS(+)のSmaI部位中にサブクローニングした。このフラグメントの配列は後述の“配列表”に示す。S1マッピングによると、単離されたフラグメントは、200bpの5’末端領域内に元の転写方向で、該遺伝子の転写から誘導されるmRNAのポリアデニル化部位の前に存在するものに対応する配列を含むことが判った。661bpの配列の165位にあるヌクレオチドAが転写物中に存在するポリアデニル化末端の付加部位に対応する(Chaboute M.E.ら,(1988) Gene,71,217−223)。2つのサブクローンを保存し、このうちの一方は、SstI−EcoRIフラグメントの形態の挿入物をH4A748遺伝子の元の転写方向の向きで有しており、t−directH4A748/Sau3AI/SamI−pKSと命名し、他方は、SstI−EcoRIフラグメントの形態の挿入物を逆方向に有しており、t−inverseH4A748/Sau3AI/SmaI−pKSと命名した。
【0026】
遺伝子の元の転写方向におけるArabidopsis thaliana H4A748ヒストンの661bpターミネーター領域の配列:
【0027】
【表1】
【0028】
7)ターミネーター領域“nos”:これは、カタログ(Clontech#6017−I)において入手可能なプラスミドpBI101−1中に存在するpTi37のノパリンシンターゼ(nos)遺伝子(Bevan M.ら,(1983) Nucl.Acids.Res.,11,369−385)のターミネーター領域のシグナルを含むフラグメントである。
【0029】
上記全てのエレメントの組立ては、カタログ(Clontech#6017−1)において入手可能なAgrobacterium tumefaciens,pBI 101−1による植物の形質転換のための二成分ベクターの骨格構造に基づき、下記の方法において実施した。
【0030】
pRA−1の構築:
Arabidopsis thaliana由来のH4A748ヒストンプロモーターを、プラスミドprom.H4A748/AvaI/SalI−pUC18から約900bpのHindIII/XbaIフラグメントの形態で切り出し た。このフラグメントを、HindIII/XbaIで消化したプラスミドpBI 101−1中に連結することにより挿入した。得られた組換えプラスミドは、キメラ遺伝子の転写方向で、H4A748プロモーター/GUS/nosターミネーター領域を含み、pRA−1と命名した。
【0031】
pRA−2の構築:
Arabidopsis thaliana由来のH4A748ターミネーター領域をプラスミドt−directH4A748/Sau3AI/SmaI−pKSから約670bpのSstI/EcoRIフラグメントの形態で切り出した。このフラグメントを、プラスミドpRA−1をSstI/EcoRIで消化した後にnosターミネーター領域と置換すべく、連結することにより挿入した。得られた組換えプラスミドは、キメラ遺伝子の転写方向で、H4A748プロモーター/GUS/順方向のH4A748ターミネーター領域を含み、pRA−2と命名した。
【0032】
pRA−3の構築:
Arabidopsis thaliana由来のH4A748ターミネーター領域を、プラスミドt−inverseH4A748/Sau3AI/SmaI−pKSから約670bpのSstI/EcoRIフラグメントの形態で切り出した。このフラグメントを、プラスミドpRA−1をSstI/EcoRIで消化した後にnosターミネーター領域と置換すべく、連結することにより挿入した。得られた組換えプラスミドは、キメラ遺伝子の転写方向で、H4A748プロモーター/GUS/逆方向のH4A748ターミネーター領域を含み、pRA−3と命名した。
【0033】
pRPA−RD−146の構築:
OTP/CT7を含む約1.75kbpのXbaI/SstIフラグメントを、プラスミドpRA−1をXbaI/SstIで消化した後にGUS遺伝子と置換すべく、連結することにより挿入した。得られた組換えプラスミドは、キメラ遺伝子の転写方向で、H4A748プロモーター/OTP/CT7/nosターミネーター領域を含み、pRPA−RD−146と命名した。
【0034】
pRPA−RD−147の構築:
OTP/CT7を含む約1.75kbpのXbaI/SstIフラグメントを、プラスミドpRA−2をXbaI/SstIで消化した後にGUS遺伝子と置換すべく、連結することにより挿入した。得られた組換えプラスミドは、キメラ遺伝子の転写方向で、H4A748プロモーター/OTP/CT7/順方向のH4A748ターミネーター領域を含み、pRPA−RD−147と命名した。
【0035】
pRPA−RD−148の構築:
OTP/CT7を含む約1.75kbpのXbaI/SstIフラグメントを、プラスミドpRA−3をXbaI/SstIで消化した後にGUS遺伝子と置換すべく、連結することにより挿入した。得られた組換えプラスミドは、キメラ遺伝子の転写方向で、H4A748プロモーター/OTP/CT7/逆方向のH4A748ターミネーター領域を含み、pRPA−RD−148と命名した。
【0036】
実施例2:レポーター遺伝子の活性の発現
1)形質転換及び再生
Bevan M.(1984) Nucl.Acids Res.,12,8711−8721によって記載されている方法に従い、Escherichiacoli HB101において“ヘルパー”プラスミドpRK2013によって三系交雑(triparental crossing)することにより、カタログ(Clontech#6027−1)において入手可能なAgrobacterium tumefaciens LBA 4404の非腫瘍原性株中にベクターを導入した。
【0037】
Valvekens D.ら,(1988) Proc.Natl.Acad.Sci.USA,85,5536−5540に記載の方法に従い、Arabidopsis thaliana L.−生態型C24由来の外植根から出発する形質転換方法を実施した。簡単に述べると、2,4−D及びカイネチンを補充したGamborgB5培地においてカルスの形成を誘導するステップ;2iP及びIAAを補充したGamborgB5培地において芽を形成するステップ;及び、ホルモン非含有MSにおいて発根及び種子形成するステップの3つのステップが必要である。
【0038】
2)植物におけるGUS活性の測定
a−組織化学的観察
種々のトランスジェニック植物器官中でのGUS活性の解明(Jefferson R.A.ら,(1987) EMBO J.,6,3901−3907)から、構築物pRA−2及び3を用いた場合は分裂組織領域において優先的発現が保存されていることが判った。更に、構築物pRA−2によると、構築物pRA−1を用いては見られない活性が、成体組織(葉、根、穂)において認められ得る。
【0039】
b−蛍光測定
構築物pRA−1、2及び3の各々に対して個々の形質転換事象に対応する12植物由来のロゼット(Jefferson R.A.ら,(1987) EMBO J.,6,3901−3907)の花芽及び葉の抽出物において蛍光測定することにより、GUS活性を測定した。
【0040】
累積平均結果(pmol MU/分.mg prot.)を以下に示す。
【0041】
上記測定値から、順方向または逆方向のH4A748ターミネーター領域は、特に植物の急成長領域においてキメラ遺伝子の発現の活性の上昇を誘導することが明らかに判る。
【0042】
実施例3:除草剤に対するトランスジェニック植物の耐性
1)形質転換及び再生
Bevan M.(1984) Nucl.Acids Res.,12,8711−8721に記載されている方法に従い、Escherichia coli HB101において“ヘルパー”プラスミドpRK2013によって三系交雑することにより、カタログ(Clontech#6027−1)において入手可能なAgrobacterium tumefaciens LBA 4404の非腫瘍原性株中にベクターを導入した。
【0043】
外植タバコ葉から出発する形質転換方法は、Horsh R.ら,(1985) Science,227,1229−1231に記載の方法に基づいていた。外植葉からのPBD6タバコ(供給源SEITA−フランス)の再生は、30g/lのサッカロースと200μg/mlのカナマイシンを含むMurashige及びSkoog(MS)基礎培地において次の3つの連続ステップにおいて実施した。第1に、0.05mgのナフチル酢酸(NAA)及び2mg/lのベンジルアミノプリン(BAP)を含む30gのサッカロースを補充したMS培地において苗条を15日間誘導した。この間に形成された苗条を、次に、30g/lのサッカロースは補充したがホルモンは含まないMS培地において10日間培養することにより発育させた。発育した苗条を採集し、塩、ビタミン及び糖の含有量が半分でありホルモンは含まない、半分に希釈したMS発根培地において培養した。約15日後、発根した苗条を土壌に植付けた。
【0044】
2)グリホセートに対する耐性の測定
構築物pRPA−RD−A、B及びCの各々に対して20の形質転換植物を再生し、温室内に移した。温室内でこれらの植物を、5葉期に、1ヘクタール当たり0.8kgのグリホセート活性物質に対応するRoundUpの水性懸濁液を用いて処理した。処理の3週間後に認められる植物毒性値を実測し、これを結果とした。かかる条件下で、上記構築物によって形質転換された植物は平均して容認可能な耐性(pRPA−RD−146)または場合によっては優れた耐性(pRPA−RD−147及び148)を示すが、非形質転換対照植物は完全に壊滅することが判った。これらの結果から、本発明のキメラ遺伝子を使用することにより、グリホセートに対する耐性をコードする同じ遺伝子において改善があったことは明らかである。
【0045】
本発明の形質転換植物は、導入されたキメラ遺伝子の発現に対応する表現型を有する系統及びハイブリッドを生産するための親として使用し得る。
Claims (13)
- 転写方向に、プロモーター、蛋白質をコードする構造遺伝子及びターミネーターを含み、該プロモータならびに該ターミネーターがシロイヌナズナ(Arabidopsis thaliana)のH4A748ヒストン遺伝子由来のプロモーターならびにターミネーターであることを特徴とするキメラ遺伝子。
- 該ターミネーターの上流あるいは下流において植物内で発現する構造遺伝子のターミネーターをさらに含むことを特徴とする、請求項1に記載のキメラ遺伝子。
- 該プロモーターの二以上を直列に反復して有することを特徴とする、請求項1または2に記載のキメラ遺伝子。
- 該プロモーターの上流あるいは下流に植物内で発現する構造遺伝子に由来するプロモーターをさらに含む、請求項1〜3の何れかに一項に記載のキメラ遺伝子。
- 構造遺伝子が除草剤耐性遺伝子である請求項1〜4のいずれか一項に記載のキメラ遺伝子。
- 構造遺伝子が、除草剤耐性遺伝子の翻訳産物の細胞分画内蓄積を可能にするトランジットペプチドをコードするDNAに融合されていることを特徴とする、請求項5に記載のキメラ遺伝子。
- 構造遺伝子が、除草剤耐性遺伝子の翻訳産物のプラスチド分画内蓄積を可能とするトランジットペプチドをコードするDNAに融合されていることを特徴とする、請求項6記載のキメラ遺伝子。
- トランジットペプチドが、転写方向に、少なくとも一つの植物のプラスチド局在性酵素に由来するトランジットペプチド、植物のプラスチド局在性酵素の成熟N末端の一部、および植物のプラスチド局在性酵素の第二のトランジットペプチドを含むことを特徴とする、請求項7に記載のキメラ遺伝子。
- 除草剤耐性遺伝子が、EPSPSを標的とする除草剤に対して耐性を付与する酵素をコードすることを特徴とする、請求項5に記載のキメラ遺伝子。
- 除草剤がグリホセートである請求項9に記載のキメラ遺伝子。
- 請求項1〜10のいずれか一項に記載のキメラ遺伝子を含むことを特徴とする、植物の形質転換用ベクター。
- 請求項11に記載のベクターを含むことを特徴とするアグロバクテリウム種の株。
- 請求項1から10のいずれか一項に記載のキメラ遺伝子を含むことを特徴とする形質転換植物細胞。
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