JP3570648B2 - 雪上車両 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
この発明は車体前部に操向スキーを支持し、車体後部に無限軌道装置を支持した雪上車両に関する。
【従来の技術】
【0002】
米国特許4093033号には、雪上車両の無限軌道装置が開示されており、この無限軌道装置はドライブホイールと、車体へ揺動自在に支持されたスイングアームと、その後端部に支持されて前後方向へ延びるサイドレールと、このサイドレールの前部及び後部に支持されたアイドラーと、これらアイドラーとドライブホイール間に巻きかけられたトラックベルトを備え、さらにサイドレールにはトラックベルトを摺動案内するためのスライダが前後方向へ長く形成され、その先端はドライブホイールの近傍まで延びている。
【0003】
また、スイングアームとサイドレールの間にダンパとクッションスプリングからなるリヤクッション装置が設けられている。
このリヤクッション装置は略水平に近く寝かされている。さらに、特開昭51−14628号には、クッションスプリングとしてトーションスプリングを用いたものも示されている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、走行中に地面から無限軌道装置のサイドレールへ衝撃荷重が加わると、スイングアームが上方へ揺動する。この荷重による揺動をクッションスプリングとダンパとで吸収する必要がある。
【0005】
このような無限軌道装置は上下間隔が狭いのでダンパを寝かせなければならない。しかし、このようにするとダンピングフォースが大きくかつストロークも短くなるので、高荷重のクッションスプリングとリンク機構が必要となり、重量が増加する。
【0006】
また、トーションスプリングを用いた場合には、一般的にコイルスプリングより重量が大きくなるので同様の問題があるとともに、スプリング素材相互の接触やコイル中心のずれにより荷重が安定しにくい。
【0007】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するため本願発明は、車体に支持されたドライブホイールと、車体側へ前端部を揺動自在に支持されたスイングアームと、このスイングアームの後端部へ軸着されて前後方向へ延びるサイドレールと、このサイドレールの少なくとも前部と後部に支持された第1及び第2のアイドラーと、これらアイドラー及びドライブホイールの間にトラックベルトを巻きかけた無限軌道装置と地面側からの衝撃を吸収するためのリヤクッション装置を備えた雪上車両において、リヤクッション装置のダンパとクッションスプリングを分離し、ダンパを前後方向へ傾けて配置するとともに、クッションスプリングをコイルスプリングで形成し、縮み時に略垂直になるよう配設したことを特徴とする。
【0008】
このとき、ダンパ及びクッションスプリングの下側の支持部を同一部材に設けることができる。また、クッションスプリングの縮み時に車体側へ当接するストッパーラバーをサイドレールへ設けることができる。
【0009】
また、両端を車体側に支持されてトラックベルトの上部内側に前後方向へ延びるアッパー部材を設け、この一端にダンパの上端を支持させ、端にクッションスプリングの上端部を支持するバネ受部を設けることもできる。
【0010】
さらにこのアッパー部材は上面を平坦とし、かつ上面にスライダを設けるとともに、トラックベルトの上部内側に沿わせることができ、また、トラックベルトを介してアッパー部材の上方に熱交換器が位置することもできる。
【0012】
【発明の実施の形態】
図1は雪上車両の面図、図2は面図、図3は車体カバーを除いた車体の側面図を示す。
まず、図1、2に明らかなように、車体の前部には、操向スキー1がフロントサスペンション2を介して支持され、車体後部には無限軌道装置3が設けられ、後述するエンジンにより動力駆動される。
【0013】
無限軌道装置3の上方にはフロア4が設けられ、乗員はこの上に立ってハンドル5を操作するようになっている。
【0014】
車体前部は車体カバー6により覆われ、この車体カバー6は、中央上部を前方から後方にかけて覆うフロントカバー7と、側部を覆うサイドカバー8からなる。
【0015】
2、3に明らかなように、サイドカバー8の後部9はフロア4の左右両側へ延びている。図中の符号10はリッド、11はハンドルカバーである。
【0016】
に明らかなように、車体カバー6によって、車体はフロア4上の乗員スペース12と、その前方の動力室13とに区画されている。
【0017】
動力室13内には左右へ対をなして前後方向へ延びるメインフレーム14にエンジン15が支持され、その動力はクランク軸15aからベルト式無段変速機16を介して出力され、さらにギヤ列17、18、19を介して無限軌道装置3の動輪20へ伝達される。
【0018】
エンジン15には、オイルポンプ21、バランサ22、水ポンプ23が設けられ、排気管24は、エンジン15の前方の空間をチャンバ室24aとして利用して配設され、車体カバー6の下から排気している。
【0019】
左右のメインフレーム14の後端部はそれぞれ略逆U字状断面をなすフロア4の前端部左右側面へ溶接される。
【0020】
エンジン15の上方には燃料タンク25が支持され、そのキャップ26はサイドカバー8から露出している。
【0021】
サイドカバー8は車体前方から燃料タンク25の上方をその背面側まで延びているが、背面にはメンテナンス用開口部が設けられ、ここをリッド10で開閉するようになっている。
【0022】
リッド10の内側にバッテリー27及びオイルタンク28が配設される。符号29はオイルタンク28のキャップである。
【0023】
次に 無限軌道装置3の詳細を説明する。動輪20のドライブシャフト30と同軸でブレーキディスク31が支持されている。ブレーキディスク31をここへ設けることにより、マスの集中を計り、かつ、バンク角を少なくしないで済む。
【0024】
図4は無限軌道装置3の通常状態側面図、図5は同状態の大荷重時を示し、図6は図4の6−6線に沿う断面図、図7は図4の7−7線断面図、図8は図5の8−8線断面図である。
【0025】
これらの図において、フロア4は横断面が略逆U字状断面をなす部材であり、その左右側面パネル32の各前端部間にドライブシャフト30が支持されている。
【0026】
ドライブシャフト30の中間部周囲には左右平行する一対の第1リヤスイングアーム33の前端部が回動自在に連結されている。
【0027】
第1リヤスイングアーム33は後方へ斜め下がりに延び、その下端部はドライブシャフト30と平行の第1アイドル軸34の周囲へ回動自在に連結されている。
【0028】
第1アイドル軸34は左右平行に対をなして略水平に前後方向へ延びるサイドレール35の各前端部間に支持されており、中間部に一対の第1アイドラー36が軸受37を介して支持されている。
【0029】
左右のサイドレール35の各後端部に形成された長穴38内には第2アイドル軸39が支持され、調節部材40により前後位置が調節可能になっている。
【0030】
第2アイドル軸39の中間部周囲には軸受41を介して左右一対の第2アイドラー42が支持されている。
【0031】
また、左右のサイドレール35の各後端部内側で第2アイドル軸39の支持部近傍には、車幅方向内方へ突出するピボット軸43が取付けられ、この周囲に軸受44を介して第2リヤスイングアーム45の下端部が支持されている。
【0032】
第2リヤスイングアーム45は第1リヤスイングアーム33と平行に左右一対で設けられ、その上端部はドライブシャフト30と平行な第アイドル軸46の周囲へ軸受47(図8)を介して支持されている。
【0033】
アイドル軸46は左右の側面パネル32の前後方向略中間部下端から下方へ突出して設けられた左右一対のアイドルブラケット48に両端を支持され、その中間部周囲には軸受49を介して左右一対の第3アイドラー50が支持されている。
【0034】
フロア4の前端部には左右の側面パネル32の各内側に沿って後方へ突出するクッションブラケット51が設けられ、その後端間にクロスパイプ52が設けられている。
【0035】
クロスパイプ52の中央部からはさらに後方へ左右一対のステー53が突出し、この先端間にリヤダンパー54の上端部55が支持されている(図7)。
リヤダンパー54の下端部56は左右のサイドレール35の各中間部間へボルト57に止められて支持されるクロスメンバ60の中央部へ一体に設けられたステー61へ支持されている(図6)。
【0036】
クロスメンバ60の中間部には下側バネ受凹部62が形成され、ここにクッションスプリング63の下端部が収容されている。
【0037】
クッションスプリング63の上端部は第アイドル軸46の中央部周囲に装着された上側バネ受部材64に支持されている(図8)。
【0038】
クッションスプリング63は図4の通常状態では前傾したリヤダンパー54とで略V字状をなすように後傾しているが、図5の縮み状態では、略垂直状態をなすように設定されている。
【0039】
なお、この縮み状態で第アイドル軸46側へ当接し、サイドレール35を介して地面側の反力を直接フロア4側へ伝達するストッパーラバー65が各サイドレール35のクロスメンバ60取付部近傍上面に取付けられている(図8)
【0040】
この無限軌道装置3は、ドライブシャフト30、第1アイドル軸34、ピボット軸43及び第アイドル軸46を結節点とする平行四点リンクを構成し、動輪20、第1のアイドラー36、第2アイドラー42及び第3アイドラー50の周囲に無端帯状のトラックベルト70が巻きかけられている。
【0041】
トラックベルト70はゴム製であって、内周面には各動輪20、第1のアイドラー36、第2アイドラー42及び第3アイドラー50の左右両側を挟むように間隔を有する歯71が突出形成されている。
【0042】
この歯71は動輪20の側面に側方へ突出して周方向へ等間隔に設けられている歯部72と噛み合い、動輪20の動力をトラックベルト70へ伝達するようになっている(図5)
【0043】
なお、図7、8に明らかなように、トラックベルト70の歯71が設けられている部分は平坦であるが、その左右両端は先端側がしだいに接地面から離れるように内側へ向かう傾斜部73になっている。
【0044】
この傾斜部73には、前後のサイドスライダー74、75が接触するようになっている。
【0045】
前側サイドスライダー74は第1リヤスイングアーム33と一体にトラックベルト70側へ突出するように形成されるとともに後側サイドスライダー75はサイドレール35と一体に形成され、下方に突出している(図8)
【0046】
いずれのサイドスライダーもアルミ押し出しによる同一断面形状をなし、図7、8に示すように、先端が二又に分離し、各先端部76と77は突起状をなして、ここに樹脂レール78がボルト79で取付けられている。また、各先端部76と77は連結部75aで連結されている。
【0047】
先端部76と先端部77を結んだ連結部75aが傾斜部73と略平行になるよう高低差をつけられている。
【0048】
図9乃至図13は別形態を示す図であるが、共通部分に共通符号を用いて相違点のみ説明する。
【0049】
図9は図4、図10は図6、図11は図7、図12は図8とそれぞれ対応する図である。
【0050】
これらの図において、リヤダンパー54の上端部55は、アッパースプリングホルダーロッド80の前端部81とステー53へ共締めされている。
【0051】
この部分の平面形状を示す図13にも明らかなように、アッパースプリングホルダーロッド80は車体中心に沿って後方へ延び、その後端部83はアッパースプリングホルダ82の上面から上方へ突出するステー84へボルト85及びナット86で取付けられている。
【0052】
アッパースプリングホルダ82はクッションスプリング63の上端部を支持するとともに、後方延出部87において第アイドル軸46の周囲へ支持されている。
【0053】
アッパースプリングホルダーロッド80は後方側がトラックベルト70から、より大きく離れるように傾斜し、前端側に上面にスライダ90が取付けられトラックベルト70を案内するようになっている。
【0054】
なお、アッパースプリングホルダーロッド80上方のフロア4内には熱交換器91が設けられ、エンジンからの熱水を循環させながら冷却して戻すようになっている。
【0055】
フロア4の上面はこの交換時の熱により温められ着氷を防止するようになっている。
【0056】
次に、本実施形態の作用を説明する。リヤクッションとして、リヤダンパー54とクッションスプリング63を分離し、かつ車体中心に沿って前後方向へ直線状に配置したので縮み時にクッションスプリング63を上下方向へ垂直状にすることができる。
【0057】
このため、最大荷重を最も効率よく受けることができ、その結果、クッションスプリング63を軽量にできる。
【0058】
また、リヤダンパー54をクッションスプリング63と分離して前傾させることにより、無限軌道装置3の高さをあまり高くしないで済ませることができる。
【0059】
リヤダンパー54寝かせる角度は、余り寝かせるとダンパー効率が低下し、その結果、重量を増加させることになるので、重量高さの兼ね合いで決定する。
【0060】
また、図9乃至図13の例のようにアッパー部材80を設けると、トラックベルト70が振動しても、これをアッパー部材80で受け止めることができる。特にこの部分は振幅が大きくなるのでその抑制に有効である。
【0061】
その上、トラックベルト70の振幅を抑えることにより熱交換器91とのクリアランスを小さくして車高を低くすることができる。
【0062】
さらに、アッパースプリングホルダ82は左右のアイドルブラケット48間に位置するので、ピボット位置に近く、クッションスプリング63の荷重を効率よく受け止めるので、軽量にできる。
【0063】
【発明の効果】
本願発明は、リヤクッション装置のダンパとクッションスプリングを分離させ、クッションスプリングを縮み時に略垂直になるように配置したので、ダンパを余り寝かせることなくそれほど大きなダンピングフォースを必要とせず、コンパクト形状になる。
【0064】
また、クッションスプリングは可能な限り垂直にした配置が可能になるので、高荷重を要求されず、同様にコンパクト軽量になる。
【0065】
したがって、バネ下荷重を大幅に軽減でき、走破性向上する。
このとき、ダンパとクッションスプリングの下側支持部材を共通化すれば、より軽量化を実現できる。
【0066】
サイドレールにストッパラバーを設ければ、クッションスプリングの縮み時に地面からの荷重をストッパラバーから車体側へ伝達するため、クッションスプリングの荷重を軽減でき、これによってもクッションスプリングのコンパクト軽量化を促進できる。
【0067】
アッパー部材の両端にダンパとクッションスプリングの各上端を別々に支持すれば、クッションスプリングからの荷重をアッパー部材で分散して車体側へ伝達できるので、車体側への荷重集中を防ぎ、車体側の軽量化に役立つ。
【0068】
アッパー部材の上面を平坦にしてスライダを取付け、かつトラックベルトの上部内側に沿わせれば、トラックベルトの最も振れ幅の大きい部分をアッパー部材にて支持できる。
【0069】
そのうえ、アッパー部材の上方に熱交換器が位置しても、トラックベルトの振れを少なくできるので、トラックベルトを熱交換器へより近接させることができ、車高を低くできる。
【図面の簡単な説明】
【図1】雪上車両の側面図
【図2】雪上車両の平面図
【図3】雪上車両車体カバーを除いた側面図
【図4】無限軌道装置の要部側面図(通常時)
【図5】同上(大荷重時)
【図6】図4の6−6線断面図
【図7】図4の7−7線断面図
【図8】図5の8−8線断面図
【図9】別形態に係る図4同様図
【図10】別形態に係る図6同様図
【図11】別形態に係る図7同様図
【図12】別形態に係る図8同様図
【図13】別形態に係るアッパー部材の平面図
【符号の説明】
1:操向スキー、2:フロントサスペンション、3:無限軌道装置、4:フロア、54:ダンパ、63:クッションスプリング、70:トラックベルト、80:アッパー部材、91:熱交換器

Claims (6)

  1. 車体に支持されたドライブホイールと、車体側へ前端部を揺動自在に支持されたスイングアームと、このスイングアームの後端部へ軸着されて前後方向へ延びるサイドレールと、このサイドレールの少なくとも前部と後部に支持された第1及び第2のアイドラーと、これらアイドラー及びドライブホイールの間にトラックベルトを巻きかけた無限軌道装置と地面側からの衝撃を吸収するためのリヤクッション装置を備えた雪上車両において、リヤクッション装置のダンパとクッションスプリングを分離し、ダンパを前後方向へ傾けて配置するとともに、クッションスプリングをコイルスプリングで形成し、縮み時に略垂直になるよう配設したことを特徴とする雪上車両。
  2. ダンパ及びクッションスプリングの下側の支持部を同一部材に設けたことを特徴とする請求項1の記載の雪上車両。
  3. クッションスプリングの縮み時に車体側へ当接するストッパーラバーをサイドレールへ設けたことを特徴とする請求項1記載の雪上車両。
  4. 両端を車体側に支持されてトラックベルトの上部内側に前後方向へ延びるアッパー部材を設け、この一端にダンパの上端を支持させ、端にクッションスプリングの上端部を支持するバネ受部を設けたことを特徴とする請求項1記載の雪上車両。
  5. アッパー部材は上面を平坦とし、かつ上面にスライダを設けるとともに、トラックベルトの上部内側に沿わせたことを特徴とする請求項4記載の雪上車両。
  6. トラックベルトを介してアッパー部材の上方に熱交換器が位置することを特徴とする請求項5記載の雪上車両。
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