JP3567327B2 - 撮像レンズ - Google Patents
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Description
【０００１】
【発明の属する技術分野】
本発明は、３枚構成よりなる全長の短い撮像レンズに関し、特に、ＰＣや携帯端末などの画像取込用のレンズに好適な撮像レンズに関するものである。
【０００２】
【従来の技術】
従来より、撮像レンズの一技術分野として、簡易なデジタルカメラや、ＰＣ用Ｗｅｂカメラ、携帯端末などの比較的薄型の機器に搭載される画像取込用のレンズモジュールとして、全長が短く、安価であることが要求され、光学性能としては多少要求水準の緩いものがある。
【０００３】
このような要求を満足するため、従来は撮像レンズを１枚のレンズで構成することも行われていた。このような用途に用いられるレンズモジュールはＣＣＤ等の電気的撮像素子も小型で解像度の低いものであったため、撮像素子のイメージサイズが小さく、レンズ系自体も少ない枚数で小型化することが優先された。また、このような撮像素子に適用する撮像レンズとしては、１枚構成のレンズであっても収差の発生も少なく、また撮像素子に入射する角度も問題となるほど大きくはならなかった。
【０００４】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、近年では、撮像素子の高解像化および大型化が進んだため、レンズ１枚による構成では発生する収差が大きくなりすぎ、十分な光学性能が得られなくなっている。そこで、高解像化および拡大化が進んだ撮像素子に見合う全長の短いレンズ系を開発する必要が生じている。また、撮像素子を用いる場合、主光線を全画面に対して略垂直に入射させる必要があり、この点においても改善の余地がある。
【０００５】
本発明は上述した事情に鑑みなされたもので、少ないレンズ枚数で全長が短く、小型なレンズ系でありながら、近年の撮像素子に適用し得る良好な光学性能を備え、撮像素子への入射角を小さくし得る撮像レンズを提供することを目的とするものである。
【０００６】
【課題を解決するための手段】
本発明の撮像レンズは、
撮像素子を用いた画像取込用装置に搭載される撮像レンズであって、
物体側より順に、物体側に凸面を向けた正メニスカスレンズよりなる第１レンズと、像側に凸面を向けた正メニスカスレンズよりなる第２レンズと、物体側に凸面を向け、かつ像側に凹面を向けた負レンズよりなり、両面が非球面とされ、レンズ中心から周辺にいくに従い負のパワーが次第に弱まり周辺部で正のパワーを有するような形状の第３レンズとを、配列されてなることを特徴とするものである。
【０００７】
また、前記第３レンズの像側の面が下記条件式（１）を満足する非球面とされていることが好ましい。
０．７Ｈ＜ＤＺ｜＝０＜１．０Ｈ ……（１）
ただし、
Ｈ：第３レンズのレンズ有効半径
ＤＺ｜＝０：非球面頂点の接平面（光軸に垂直な平面）に対する接平面の傾き（ＤＺ）が０となる非球面上の点の、光軸からの高さ
なお、上記「レンズ有効半径」とは、レンズの有効口径の半径を表わすものである。
【０００８】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の具体的な実施形態について図面を参照しつつ説明する。図１に示す実施形態（実施例１のものを代表させて示している）の撮像レンズは、物体側より順に、物体側に凸面を向けた正メニスカスレンズよりなる第１レンズＬ１と、像側に凸面を向けた正メニスカスレンズよりなる第２レンズＬ２と、像側に凹面を向けた負レンズよりなり、両面が非球面とされ、レンズ中心から周辺にいくに従い負のパワーが次第に弱まり周辺部で正のパワーを有するような形状の第３レンズＬ３とを、配列されてなり、光軸Ｘに沿って入射する光束を撮像素子３の結像位置Ｐに効率良く集束させるようにした撮像レンズである。また、第１レンズＬ１と第２レンズＬ２との間には絞り２が配され、撮像レンズと撮像素子３との間にはカバーガラス１が配されている。
上記第３レンズＬ３の両面の非球面形状は、下記非球面式で表される。
【０００９】
【数１】
【００１０】
次に本実施形態による作用効果を説明する。
３枚というレンズ枚数は、要望される程度の良好な光学性能を得るために必要な枚数であるが、第１レンズＬ１、第２レンズＬ２の２枚の正レンズのパワーを比較的強くすることで、レンズ全体の長さを小さくすることができる。
【００１１】
また、第３レンズＬ３を、像側に凹面を向けた負レンズよりなり、両面が非球面とされ、レンズ中心から周辺にいくに従い負のパワーが次第に弱まり周辺部で正のパワーを有するような形状の負レンズとすることで、像面をフラットにすることができ、撮像素子に結像させるレンズとして好適となる。すなわち、この第３レンズＬ３が正レンズであった場合には、中心の像面が物体側により相対的に像面が像側に倒れ、光学性能が劣化してしまう。また、レンズ中心から周辺にいくに従い負のパワーが次第に弱まり周辺部で正のパワーを有するような形状とすることは、周辺部での正のパワーを有効に活用して像面を揃える作用があり、像面をフラットにし、周辺の画質を向上させることができる。
【００１２】
また、撮像レンズから撮像素子３への主光線の入射角について考えると、第１レンズＬ１、第２レンズＬ２の２枚の正レンズからの光がそのまま撮像素子３に入射すると仮定した場合には、その入射角は大きくなってしまう。本実施形態では、第３レンズＬ３が、撮像レンズの最も像側に配されており、中心部は負のパワーで周辺に行くに従い、負のパワーが次第に弱まり周辺部で正のパワーを有するような形状の非球面レンズとされているので、撮像素子３への入射角を小さくする、すなわち射出瞳を遠くするという効果を得ることができる。
【００１３】
このような構成とすることにより本実施形態によれば、少ないレンズ枚数で全長が短く、小型なレンズ系でありながら、近年の撮像素子に適用し得る良好な光学性能を備え、撮像素子への入射角を小さくし得る撮像レンズを得ることができる。
【００１４】
なお、第３レンズＬ３のような中心部で負のパワーを有し、周辺部で正のパワーを有するレンズは、少なくとも一方の面が、レンズ断面形状において変曲点を有するような曲線となっている。このような面を有するレンズは、一般に製造誤差が生じやすいため、用途によっては使用が適さない場合もある。しかし、本実施形態のように、まず小型であることが要求され、光学性能としては多少要求水準の緩いレンズの場合には、このようなレンズを使用しても光学性能上支障のない範囲であり、むしろ使用することによる利点が優ると考えられる。
【００１５】
また、第３レンズＬ３の形状は、例えば図１に示されるように、物体側の面と像側の面とが大略同様の断面形状とされ、中心部から周辺部まで両面が大略沿うような形状とされていることが、より好ましい。このような形状とされている方が、像面湾曲の補正と射出瞳を遠くする効果がより高い。
【００１６】
また、第３レンズＬ３の像側の面は下記条件式（１）を満足する非球面とされていることが好ましい。
０．７Ｈ＜ＤＺ｜＝０＜１．０Ｈ ……（１）
ただし、
Ｈ：第３レンズＬ３のレンズ有効半径
ＤＺ｜＝０：非球面頂点の接平面（光軸に垂直な平面）に対する接平面の傾き（ＤＺ）が０となる非球面上の点の、光軸からの高さ
【００１７】
上述したとおり、第３レンズＬ３のような中心部で負のパワーを有し、周辺部で正のパワーを有するレンズは、少なくとも一方の面が、レンズ断面形状において変曲点を有するような曲線となっている。このような面は上述のように第３レンズＬ３の両面に形成されることが望ましいが、比較するならば少なくとも像側の面に形成される方がよい。条件式（１）の意味するところは、レンズ断面形状の曲線において変曲点となる位置、すなわち、非球面頂点の接平面（光軸に垂直な平面）に対する接平面の傾き（ＤＺ）が０となるような非球面上の点の、光軸Ｘからの高さは、レンズの有効口径内にあり、その有効半径の７割以上の高さとなるように設定するものである。
【００１８】
このように規定することにより、中心部は負のパワーで周辺に行くに従い負のパワーが次第に弱まり周辺部で正のパワーを有する第３レンズＬ３において、正のパワーを有する部分が比較的光軸Ｘから高い位置に設定される。これにより、周辺部の光も撮像素子への入射角が直角に近くなり射出瞳を遠くすることができるとともに、像面湾曲の補正が良好となる。
【００１９】
なお、本発明の撮像レンズとしては種々の態様の変更が可能である。例えば各レンズの曲率半径、レンズ間隔（もしくはレンズ厚）および非球面の形状を適宜変更することが可能である。また、レンズ材料としてはガラス材に限られるものではなく、プラスチック材を用いて構成することによりコスト低減を図ることができる。また、非球面は少なくとも第３レンズＬ３の両面に形成され、望ましくは第１レンズＬ１、および第２レンズＬ２にも形成されていることが好ましい。このように非球面を各レンズ面に分散することにより、多数の面で収差補正を行い、光学性能の向上を図ることが可能となる。
【００２０】
【実施例】
＜実施例１＞
実施例１に係る撮像レンズの概略構成を図１に示す。この撮像レンズの構成は、実施形態において説明した通りである。この撮像レンズにおいては、第１レンズＬ１〜第３レンズＬ３のいずれのレンズ面にも非球面が形成されている。この撮像レンズの各レンズ面の曲率半径Ｒ（ｍｍ）、各レンズの中心厚および各レンズ間の空気間隔（以下、これらを総称して軸上面間隔という）Ｄ（ｍｍ）、各レンズのｄ線における、屈折率Ｎおよびアッベ数νの値を表１に示す。なお表中の数字は、物体側からの順番を表すものである。また、表２には、各非球面について、上記非球面式に示される非球面の各定数Ｋ、Ａ４、Ａ６、Ａ８、Ａ１０の値を示す。また、実施例１における、レンズ全系の焦点距離ｆは、１．０ｍｍに設定されている。
【００２１】
【表１】
【００２２】
【表２】
【００２３】
図２は、実施例１の第３レンズＬ３の像側の面の非球面形状を示すグラフである。実線ＤＺは、非球面頂点の接平面（光軸に垂直な平面）に対する接平面の傾きを示す曲線であり、横軸は第３レンズＬ３の有効半径Ｈに対する高さを有効半径の最大値を１．００として割合により示し、縦軸はこの傾きの値を示す。また、点線Ｚは非球面の深さを表す曲線であり、横軸は第３レンズＬ３の有効半径Ｈに対する高さを有効半径の最大値を１．００として割合により示し、縦軸は非球面上の点より非球面頂点の接平面（光軸に垂直な平面）に下ろした垂線の長さ、すなわち非球面の深さを、この非球面の深さの最大値を１．００として割合により示している。図示されるように、曲線ＤＸは約０．９６で横軸と交わっており、ＤＺ｜＝０の値は条件式（１）を満足している。
【００２４】
図３は実施例１の撮像レンズの諸収差（球面収差、非点収差、およびディストーション）を示す収差図である。なお、非点収差図には、サジタル像面およびタンジェンシャル像面に対する収差が示されている。この収差図においてωは半画角を示す。これらの収差図から明らかなように、実施例１の撮像レンズによれば、各収差を良好に補正することができる。
【００２５】
＜実施例２＞
実施例２に係る撮像レンズの概略構成を図４に示す。この撮像レンズの構成も実施例１のものと略同様であり、対応する図面の説明において同一の要素については同一の符号を付し、重複する説明については省略する。この撮像レンズにおいても、第１レンズＬ１〜第３レンズＬ３のいずれのレンズ面にも非球面が形成されている。この撮像レンズの各レンズ面の曲率半径Ｒ（ｍｍ）、各レンズの軸上面間隔Ｄ（ｍｍ）、各レンズのｄ線における、屈折率Ｎおよびアッベ数νの値を表３に示す。なお表中の数字は、物体側からの順番を表すものである。また、表４には、各非球面について、上記非球面式に示される非球面の各定数Ｋ、Ａ４、Ａ６、Ａ８、Ａ１０の値を示す。また、実施例２における、レンズ全系の焦点距離ｆは、１．０ｍｍに設定されている。
【００２６】
【表３】
【００２７】
【表４】
【００２８】
図５は、実施例２の第３レンズＬ３の像側の面の非球面形状を示すグラフである。実線ＤＺは、非球面頂点の接平面（光軸に垂直な平面）に対する接平面の傾きを示す曲線であり、横軸および縦軸は実施例１の図２と同様である。また、点線Ｚは非球面の深さを表す曲線であり、横軸および縦軸は実施例１の図２と同様である。図示されるように、曲線ＤＸは約０．９７で横軸と交わっており、ＤＺ｜＝０の値は条件式（１）を満足している。
【００２９】
図６は実施例２の撮像レンズの諸収差（球面収差、非点収差、およびディストーション）を示す収差図である。なお、非点収差図には、サジタル像面およびタンジェンシャル像面に対する収差が示されている。この収差図においてωは半画角を示す。これらの収差図から明らかなように、実施例２の撮像レンズによれば、各収差を良好に補正することができる。
【００３０】
【発明の効果】
以上詳細に説明したように、本発明の撮像レンズによれば、３枚という少ないレンズ枚数で全長が短く、小型なレンズ系でありながら、物体側より順に、所定形状の２枚の正レンズ、および像側に凹面を向けた負レンズよりなり、両面が非球面とされ、レンズ中心から周辺にいくに従い負のパワーが次第に弱まり周辺部で正のパワーを有するような形状のレンズを、配列して構成することにより、近年の撮像素子に適用し得る良好な光学性能を備え、撮像素子への入射角を小さくし得る撮像レンズとすることができる。
【図面の簡単な説明】
【図１】本発明の実施例１に係る撮像レンズの構成を示す概略図
【図２】実施例１の第３レンズの像側の面の非球面形状を示す図
【図３】実施例１の撮像レンズの諸収差（球面収差、非点収差、およびディストーション）を示す収差図
【図４】本発明の実施例２に係る撮像レンズの構成を示す概略図
【図５】実施例２の第３レンズの像側の面の非球面形状を示す図
【図６】実施例２の撮像レンズの諸収差（球面収差、非点収差、およびディストーション）を示す収差図
【符号の説明】
Ｌ１〜Ｌ３ レンズ
Ｒ１〜Ｒ９ レンズ面（光学部材面）の曲率半径
Ｄ１〜Ｄ９ 軸上面間隔
Ｘ 光軸
Ｐ 結像位置
１ カバーガラス
２ 絞り
３ 撮像素子
【発明の属する技術分野】
本発明は、３枚構成よりなる全長の短い撮像レンズに関し、特に、ＰＣや携帯端末などの画像取込用のレンズに好適な撮像レンズに関するものである。
【０００２】
【従来の技術】
従来より、撮像レンズの一技術分野として、簡易なデジタルカメラや、ＰＣ用Ｗｅｂカメラ、携帯端末などの比較的薄型の機器に搭載される画像取込用のレンズモジュールとして、全長が短く、安価であることが要求され、光学性能としては多少要求水準の緩いものがある。
【０００３】
このような要求を満足するため、従来は撮像レンズを１枚のレンズで構成することも行われていた。このような用途に用いられるレンズモジュールはＣＣＤ等の電気的撮像素子も小型で解像度の低いものであったため、撮像素子のイメージサイズが小さく、レンズ系自体も少ない枚数で小型化することが優先された。また、このような撮像素子に適用する撮像レンズとしては、１枚構成のレンズであっても収差の発生も少なく、また撮像素子に入射する角度も問題となるほど大きくはならなかった。
【０００４】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、近年では、撮像素子の高解像化および大型化が進んだため、レンズ１枚による構成では発生する収差が大きくなりすぎ、十分な光学性能が得られなくなっている。そこで、高解像化および拡大化が進んだ撮像素子に見合う全長の短いレンズ系を開発する必要が生じている。また、撮像素子を用いる場合、主光線を全画面に対して略垂直に入射させる必要があり、この点においても改善の余地がある。
【０００５】
本発明は上述した事情に鑑みなされたもので、少ないレンズ枚数で全長が短く、小型なレンズ系でありながら、近年の撮像素子に適用し得る良好な光学性能を備え、撮像素子への入射角を小さくし得る撮像レンズを提供することを目的とするものである。
【０００６】
【課題を解決するための手段】
本発明の撮像レンズは、
撮像素子を用いた画像取込用装置に搭載される撮像レンズであって、
物体側より順に、物体側に凸面を向けた正メニスカスレンズよりなる第１レンズと、像側に凸面を向けた正メニスカスレンズよりなる第２レンズと、物体側に凸面を向け、かつ像側に凹面を向けた負レンズよりなり、両面が非球面とされ、レンズ中心から周辺にいくに従い負のパワーが次第に弱まり周辺部で正のパワーを有するような形状の第３レンズとを、配列されてなることを特徴とするものである。
【０００７】
また、前記第３レンズの像側の面が下記条件式（１）を満足する非球面とされていることが好ましい。
０．７Ｈ＜ＤＺ｜＝０＜１．０Ｈ ……（１）
ただし、
Ｈ：第３レンズのレンズ有効半径
ＤＺ｜＝０：非球面頂点の接平面（光軸に垂直な平面）に対する接平面の傾き（ＤＺ）が０となる非球面上の点の、光軸からの高さ
なお、上記「レンズ有効半径」とは、レンズの有効口径の半径を表わすものである。
【０００８】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の具体的な実施形態について図面を参照しつつ説明する。図１に示す実施形態（実施例１のものを代表させて示している）の撮像レンズは、物体側より順に、物体側に凸面を向けた正メニスカスレンズよりなる第１レンズＬ１と、像側に凸面を向けた正メニスカスレンズよりなる第２レンズＬ２と、像側に凹面を向けた負レンズよりなり、両面が非球面とされ、レンズ中心から周辺にいくに従い負のパワーが次第に弱まり周辺部で正のパワーを有するような形状の第３レンズＬ３とを、配列されてなり、光軸Ｘに沿って入射する光束を撮像素子３の結像位置Ｐに効率良く集束させるようにした撮像レンズである。また、第１レンズＬ１と第２レンズＬ２との間には絞り２が配され、撮像レンズと撮像素子３との間にはカバーガラス１が配されている。
上記第３レンズＬ３の両面の非球面形状は、下記非球面式で表される。
【０００９】
【数１】
次に本実施形態による作用効果を説明する。
３枚というレンズ枚数は、要望される程度の良好な光学性能を得るために必要な枚数であるが、第１レンズＬ１、第２レンズＬ２の２枚の正レンズのパワーを比較的強くすることで、レンズ全体の長さを小さくすることができる。
【００１１】
また、第３レンズＬ３を、像側に凹面を向けた負レンズよりなり、両面が非球面とされ、レンズ中心から周辺にいくに従い負のパワーが次第に弱まり周辺部で正のパワーを有するような形状の負レンズとすることで、像面をフラットにすることができ、撮像素子に結像させるレンズとして好適となる。すなわち、この第３レンズＬ３が正レンズであった場合には、中心の像面が物体側により相対的に像面が像側に倒れ、光学性能が劣化してしまう。また、レンズ中心から周辺にいくに従い負のパワーが次第に弱まり周辺部で正のパワーを有するような形状とすることは、周辺部での正のパワーを有効に活用して像面を揃える作用があり、像面をフラットにし、周辺の画質を向上させることができる。
【００１２】
また、撮像レンズから撮像素子３への主光線の入射角について考えると、第１レンズＬ１、第２レンズＬ２の２枚の正レンズからの光がそのまま撮像素子３に入射すると仮定した場合には、その入射角は大きくなってしまう。本実施形態では、第３レンズＬ３が、撮像レンズの最も像側に配されており、中心部は負のパワーで周辺に行くに従い、負のパワーが次第に弱まり周辺部で正のパワーを有するような形状の非球面レンズとされているので、撮像素子３への入射角を小さくする、すなわち射出瞳を遠くするという効果を得ることができる。
【００１３】
このような構成とすることにより本実施形態によれば、少ないレンズ枚数で全長が短く、小型なレンズ系でありながら、近年の撮像素子に適用し得る良好な光学性能を備え、撮像素子への入射角を小さくし得る撮像レンズを得ることができる。
【００１４】
なお、第３レンズＬ３のような中心部で負のパワーを有し、周辺部で正のパワーを有するレンズは、少なくとも一方の面が、レンズ断面形状において変曲点を有するような曲線となっている。このような面を有するレンズは、一般に製造誤差が生じやすいため、用途によっては使用が適さない場合もある。しかし、本実施形態のように、まず小型であることが要求され、光学性能としては多少要求水準の緩いレンズの場合には、このようなレンズを使用しても光学性能上支障のない範囲であり、むしろ使用することによる利点が優ると考えられる。
【００１５】
また、第３レンズＬ３の形状は、例えば図１に示されるように、物体側の面と像側の面とが大略同様の断面形状とされ、中心部から周辺部まで両面が大略沿うような形状とされていることが、より好ましい。このような形状とされている方が、像面湾曲の補正と射出瞳を遠くする効果がより高い。
【００１６】
また、第３レンズＬ３の像側の面は下記条件式（１）を満足する非球面とされていることが好ましい。
０．７Ｈ＜ＤＺ｜＝０＜１．０Ｈ ……（１）
ただし、
Ｈ：第３レンズＬ３のレンズ有効半径
ＤＺ｜＝０：非球面頂点の接平面（光軸に垂直な平面）に対する接平面の傾き（ＤＺ）が０となる非球面上の点の、光軸からの高さ
【００１７】
上述したとおり、第３レンズＬ３のような中心部で負のパワーを有し、周辺部で正のパワーを有するレンズは、少なくとも一方の面が、レンズ断面形状において変曲点を有するような曲線となっている。このような面は上述のように第３レンズＬ３の両面に形成されることが望ましいが、比較するならば少なくとも像側の面に形成される方がよい。条件式（１）の意味するところは、レンズ断面形状の曲線において変曲点となる位置、すなわち、非球面頂点の接平面（光軸に垂直な平面）に対する接平面の傾き（ＤＺ）が０となるような非球面上の点の、光軸Ｘからの高さは、レンズの有効口径内にあり、その有効半径の７割以上の高さとなるように設定するものである。
【００１８】
このように規定することにより、中心部は負のパワーで周辺に行くに従い負のパワーが次第に弱まり周辺部で正のパワーを有する第３レンズＬ３において、正のパワーを有する部分が比較的光軸Ｘから高い位置に設定される。これにより、周辺部の光も撮像素子への入射角が直角に近くなり射出瞳を遠くすることができるとともに、像面湾曲の補正が良好となる。
【００１９】
なお、本発明の撮像レンズとしては種々の態様の変更が可能である。例えば各レンズの曲率半径、レンズ間隔（もしくはレンズ厚）および非球面の形状を適宜変更することが可能である。また、レンズ材料としてはガラス材に限られるものではなく、プラスチック材を用いて構成することによりコスト低減を図ることができる。また、非球面は少なくとも第３レンズＬ３の両面に形成され、望ましくは第１レンズＬ１、および第２レンズＬ２にも形成されていることが好ましい。このように非球面を各レンズ面に分散することにより、多数の面で収差補正を行い、光学性能の向上を図ることが可能となる。
【００２０】
【実施例】
＜実施例１＞
実施例１に係る撮像レンズの概略構成を図１に示す。この撮像レンズの構成は、実施形態において説明した通りである。この撮像レンズにおいては、第１レンズＬ１〜第３レンズＬ３のいずれのレンズ面にも非球面が形成されている。この撮像レンズの各レンズ面の曲率半径Ｒ（ｍｍ）、各レンズの中心厚および各レンズ間の空気間隔（以下、これらを総称して軸上面間隔という）Ｄ（ｍｍ）、各レンズのｄ線における、屈折率Ｎおよびアッベ数νの値を表１に示す。なお表中の数字は、物体側からの順番を表すものである。また、表２には、各非球面について、上記非球面式に示される非球面の各定数Ｋ、Ａ４、Ａ６、Ａ８、Ａ１０の値を示す。また、実施例１における、レンズ全系の焦点距離ｆは、１．０ｍｍに設定されている。
【００２１】
【表１】
【表２】
図２は、実施例１の第３レンズＬ３の像側の面の非球面形状を示すグラフである。実線ＤＺは、非球面頂点の接平面（光軸に垂直な平面）に対する接平面の傾きを示す曲線であり、横軸は第３レンズＬ３の有効半径Ｈに対する高さを有効半径の最大値を１．００として割合により示し、縦軸はこの傾きの値を示す。また、点線Ｚは非球面の深さを表す曲線であり、横軸は第３レンズＬ３の有効半径Ｈに対する高さを有効半径の最大値を１．００として割合により示し、縦軸は非球面上の点より非球面頂点の接平面（光軸に垂直な平面）に下ろした垂線の長さ、すなわち非球面の深さを、この非球面の深さの最大値を１．００として割合により示している。図示されるように、曲線ＤＸは約０．９６で横軸と交わっており、ＤＺ｜＝０の値は条件式（１）を満足している。
【００２４】
図３は実施例１の撮像レンズの諸収差（球面収差、非点収差、およびディストーション）を示す収差図である。なお、非点収差図には、サジタル像面およびタンジェンシャル像面に対する収差が示されている。この収差図においてωは半画角を示す。これらの収差図から明らかなように、実施例１の撮像レンズによれば、各収差を良好に補正することができる。
【００２５】
＜実施例２＞
実施例２に係る撮像レンズの概略構成を図４に示す。この撮像レンズの構成も実施例１のものと略同様であり、対応する図面の説明において同一の要素については同一の符号を付し、重複する説明については省略する。この撮像レンズにおいても、第１レンズＬ１〜第３レンズＬ３のいずれのレンズ面にも非球面が形成されている。この撮像レンズの各レンズ面の曲率半径Ｒ（ｍｍ）、各レンズの軸上面間隔Ｄ（ｍｍ）、各レンズのｄ線における、屈折率Ｎおよびアッベ数νの値を表３に示す。なお表中の数字は、物体側からの順番を表すものである。また、表４には、各非球面について、上記非球面式に示される非球面の各定数Ｋ、Ａ４、Ａ６、Ａ８、Ａ１０の値を示す。また、実施例２における、レンズ全系の焦点距離ｆは、１．０ｍｍに設定されている。
【００２６】
【表３】
【表４】
図５は、実施例２の第３レンズＬ３の像側の面の非球面形状を示すグラフである。実線ＤＺは、非球面頂点の接平面（光軸に垂直な平面）に対する接平面の傾きを示す曲線であり、横軸および縦軸は実施例１の図２と同様である。また、点線Ｚは非球面の深さを表す曲線であり、横軸および縦軸は実施例１の図２と同様である。図示されるように、曲線ＤＸは約０．９７で横軸と交わっており、ＤＺ｜＝０の値は条件式（１）を満足している。
【００２９】
図６は実施例２の撮像レンズの諸収差（球面収差、非点収差、およびディストーション）を示す収差図である。なお、非点収差図には、サジタル像面およびタンジェンシャル像面に対する収差が示されている。この収差図においてωは半画角を示す。これらの収差図から明らかなように、実施例２の撮像レンズによれば、各収差を良好に補正することができる。
【００３０】
【発明の効果】
以上詳細に説明したように、本発明の撮像レンズによれば、３枚という少ないレンズ枚数で全長が短く、小型なレンズ系でありながら、物体側より順に、所定形状の２枚の正レンズ、および像側に凹面を向けた負レンズよりなり、両面が非球面とされ、レンズ中心から周辺にいくに従い負のパワーが次第に弱まり周辺部で正のパワーを有するような形状のレンズを、配列して構成することにより、近年の撮像素子に適用し得る良好な光学性能を備え、撮像素子への入射角を小さくし得る撮像レンズとすることができる。
【図面の簡単な説明】
【図１】本発明の実施例１に係る撮像レンズの構成を示す概略図
【図２】実施例１の第３レンズの像側の面の非球面形状を示す図
【図３】実施例１の撮像レンズの諸収差（球面収差、非点収差、およびディストーション）を示す収差図
【図４】本発明の実施例２に係る撮像レンズの構成を示す概略図
【図５】実施例２の第３レンズの像側の面の非球面形状を示す図
【図６】実施例２の撮像レンズの諸収差（球面収差、非点収差、およびディストーション）を示す収差図
【符号の説明】
Ｌ１〜Ｌ３ レンズ
Ｒ１〜Ｒ９ レンズ面（光学部材面）の曲率半径
Ｄ１〜Ｄ９ 軸上面間隔
Ｘ 光軸
Ｐ 結像位置
１ カバーガラス
２ 絞り
３ 撮像素子
Claims (2)
- 撮像素子を用いた画像取込用装置に搭載される撮像レンズであって、
物体側より順に、物体側に凸面を向けた正メニスカスレンズよりなる第１レンズと、像側に凸面を向けた正メニスカスレンズよりなる第２レンズと、物体側に凸面を向け、かつ像側に凹面を向けた負レンズよりなり、両面が非球面とされ、レンズ中心から周辺にいくに従い負のパワーが次第に弱まり周辺部で正のパワーを有するような形状の第３レンズとを、配列されてなることを特徴とする撮像レンズ。 - 前記第３レンズの像側の面が下記条件式（１）を満足する非球面とされていることを特徴とする請求項１記載の撮像レンズ。
0.7Ｈ＜ＤＺ｜＝０＜1.0Ｈ ……（１）
ただし、
Ｈ：第３レンズのレンズ有効半径
ＤＺ｜＝０：非球面頂点の接平面（光軸に垂直な平面）に対する接平面の傾き（ＤＺ）が０となる非球面上の点の、光軸からの高さ
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