JP3565785B2 - 光源装置およびプロジェクタ - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、映像、文字等をスクリーンに投写するプロジェクタ用の光源装置およびこの光源装置を用いたプロジェクタに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
近年、液晶方式をはじめとするプロジェクタの技術の進歩は目覚ましく、高輝度化、小型軽量化等、多くの性能向上が図られている。
【0003】
従来よりデータプロジェクタやプロジェクションTV等の投射型映像機器の光源部であるランプに対する高輝度化への要望は強く、近年ではこれまで主流であった従来のメタルハライドランプに比べて、アーク領域が小さく点光源に近いことから、光の利用効率が高い超高圧水銀ランプが実用化され、各種プロジェクタに搭載され始めている。
【0004】
この超高圧水銀ランプは、アーク放電によって管球部(発光管ともいう)の内部に封入された水銀を発光させる際に、管球部の内部を高圧にすることによって、水銀特有の数本の輝線だけでなく、発光スペクトル分布全体の輝度レベルを上げ、可視領域の波長の光線を放出するようにしたものである。
【0005】
したがって、その圧力は点灯時には150〜200気圧程度に達するため、透明な石英ガラスで形成された管球部はその内圧に耐えるようメタルハライドランプより厚肉にされている。
【0006】
また、ランプの寿命末期において、管球部が黒化および失透により熱応力破壊する確率が非常に高く、管球部が破裂した場合に、そのガラス破片や封入されている水銀が、プロジェクタ内部に飛散しないよう反射鏡の前面開口部に防爆ガラスを設けた防爆構造にされている。
【0007】
さらに、管球部の破片が反射鏡に衝突した際の衝撃によって反射鏡自体が破壊して、管球部の破片および反射鏡の破片が外部に飛散しないように、反射鏡の母材であるガラスの板厚を厚くしたり、また反射鏡の母材として、比較的強度が高い結晶化ガラスを使用したりすることで、反射鏡を割れにくくしている。なお、反射鏡については、量産性が良く、反射膜をコーティングする内面の表面粗さ精度が優れ、またその使用状態から、数百度までの耐熱性、高温で変形し光学特性を損なわないための低熱膨張性などが要求されることから、一般に、母材としてガラスが用いられている。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、超高圧水銀ランプの管球部は厚肉に形成されており、元々内部の温度が高い上、防爆ガラスによる密閉構造のため、ランプ内部の温度が高くなる傾向にあるが、ランプが破裂した際に、その破片が外部へ飛散するのを防止するため、反射鏡の板厚を厚くしたり、また反射鏡の母材にランプの輻射光を吸収する割合の大きい結晶化ガラスを使用することにより、さらに管球部から放射される熱が内部にこもり、ランプ全体の温度が高くなってしまうという問題が生じる。なお、メタルハライドランプの場合では、管球部をファンで直接冷却することが可能であるが、超高圧水銀ランプの場合、ランプの防爆構造上、困難であるため、熱対策は極めて重要になっている。
【0009】
また、管球部の温度が高くなると、タングステンで形成した一対の電極の先端部が溶けて、電極の形状や間隔が変化するという電極の劣化や、溶けたタングステンが、透明石英ガラスで形成した管球部の内壁に付着し、その部分の温度が輻射熱により高くなることで熱応力破壊につながる管球部の黒化や、管球部自体の温度が高くなって石英ガラスの結晶化が進み管球部の一部が白化して、その部分の温度が輻射熱により高くなることで熱応力破壊につながるという管球部の失透や、管球部の側管端部のモリブデン箔と取出し線との溶接部が酸化により劣化するといった問題が生じる。特に、黒化や失透については、管球部の破壊が生じる確率を高くすることから、この点からも管球部の破壊を防ぐためにはランプ内部の温度を低くする必要がある。
【0010】
また、反射鏡および防爆ガラスについても、歪み点または転移点を越える許容温度以上になると、点灯や消灯時の温度変化の過程において歪みが発生し、熱応力破壊につながるという問題、および蒸着した反射膜と母材であるガラスとの熱膨張率の差から剥離が生じるといった問題も生じる。
【0011】
そこで、本発明は、上記問題に鑑みなされたもので、管球部が破損した場合に、そのガラス破片や封入されている水銀が外部に飛散するのを、簡素で且つ安価に防止し得る光源装置、および内部の温度が過度に高くなるのを防止し得るプロジェクタを提供することを目的とする。
【0012】
【課題を解決する手段】
上記課題を解決するため、請求項1に係る光源装置は、一端側が開口されるとともに内面が他端側に向って閉塞する湾曲状に形成され且つ内面に反射膜が形成された凹状空間部を有するガラス製の反射鏡と、上記凹状空間部内の中心である光軸上に配置されるとともに放電ガスが充填された管球部を有する放電ランプと、上記凹状空間部の開口部に配置されて当該凹状空間部内を密閉するとともに反射膜で反射した光を透過し得る透光板とを具備するとともに、
上記反射鏡の外表面に、上記反射鏡より大きい圧縮強度を有する膜状の飛散防止手段をコーティングにより形成し、
上記飛散防止手段の熱膨張係数をα1、そのヤング率をE、その圧縮強度をσおよび飛散防止手段における最高温度をT、並びに反射鏡の熱膨張係数をα2とした場合、
0<α1−α2<σ/(T×E)
の関係を満足する材料で飛散防止手段を形成したものである。
【0013】
上記光源装置の構成によると、反射鏡よりも圧縮強度が大きい飛散防止手段を反射鏡の外表面に形成したので、簡素な構成にて、放電ランプの管球部が破裂した際に、反射鏡が割れて管球部の破片が外部に飛散するのを防止することができる。
【0014】
また、飛散防止手段は、反射鏡にコーティングにより膜状に形成されているので、シート状またはテープ状のものを反射鏡の曲面状の外表面に設けた場合に生じる皺、不要な重なり、隙間などがなく、したがって例えばシート状の飛散防止手段を扇型に設けるような手間が不要となる。
【0015】
さらに、飛散防止手段の方が反射鏡よりも熱膨張係数が大きくされているので、放電ランプの点灯時に、反射鏡の温度の上昇により飛散防止手段に加わる初期応力が圧縮応力となり、したがってこの圧縮応力が、反射鏡が破損することにより飛散防止手段に加わる、より大きい引張応力に対して有効な方向に作用する。
【0016】
また、放電ランプの点灯時に、反射鏡と飛散防止手段との熱膨張係数の差、飛散防止手段の加わる最高温度、および飛散防止手段のヤング率とから計算される圧縮応力が、飛散防止手段自身の圧縮強度より小さくなるように設定されるので、点灯時の温度上昇によって飛散防止手段が破壊されることはない。
【0017】
請求項2に係る光源装置は、上記請求項1に記載の光源装置の飛散防止手段を、可視光または赤外光を透過させる透光性を有するコーティングとしたものである。
【0018】
上記構成によると、飛散防止手段は可視光または赤外光を透過し得る透光性を有しているので、放電ランプの輻射光を吸収して外部に放出することができ、したがって反射鏡内部の温度が過度に上昇するのを防止することができる。
【0019】
請求項に係る光源装置は、上記請求項1または2に記載の光源装置における飛散防止手段の材料として、反射鏡を構成するガラスよりも熱伝導性が優れたものを使用したものである。
【0020】
請求項に係る光源装置は、上記請求項1乃至のいずれかに記載の光源装置における飛散防止手段の形成範囲を、管球部に対応する位置から反射鏡の閉塞側である放電ランプ支持部に対応する位置までの範囲としたものである。
【0021】
請求項に係る光源装置は、上記請求項1乃至のいずれかに記載の光源装置における飛散防止手段の形成範囲を、一端側の開口部寄り位置から他端側の放電ランプ支持部に対応する位置までの範囲にするとともに、飛散防止手段の膜厚を、管球部から反射鏡までの距離が短い部分に対応する部分を厚くしたものである。
【0022】
上記の各構成によると、放電ランプの管球部に対応する部分に飛散防止手段を設けたので、または管球部と反射鏡との最も近接する部分、すなわち管球部の破片が当たることによって生じる衝撃エネルギーが最も大きく破壊され易い部分の膜厚を厚くしたので、飛散防止手段の材料使用量を最小限にすることができ、したがって経済的である。
【0023】
請求項に係る光源装置は、上記請求項1乃至のいずれかに記載の光源装置における飛散防止手段の表面に凹凸部を設けたものである。
請求項に係るプロジェクタは、請求項1乃至のいずれかに記載の光源装置を有するプロジェクタであって、反射鏡が配置されるケーシング内に、反射鏡の外表面に空気を吹き付けて冷却を行う冷却用ファン装置を具備したものである。
【0024】
上記プロジェクタの構成によると、ケーシング内に設けられた冷却用ファン装置により、反射鏡に冷却用空気を当てて光源装置を冷却することができるので、光源装置の寿命を延ばすことができる。
【0025】
また、このプロジェクタに配置される反射鏡の外表面に形成される飛散防止手段に凹凸部を形成した場合、反射鏡での放熱性能の向上を図ることができる他に、冷却用空気を乱流状態に移行させて反射鏡から冷却用空気への熱伝達を促進することができ、したがって反射鏡全体の温度を、効果的に低下させることができる。
【0026】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の第1の実施の形態に係る光源装置を、図1〜図4に基づき説明する。
【0027】
図1〜図3に示すように、この光源装置(ランプユニットともいう)1は、一端が開口されるとともに内面が他端側に向って閉塞する半楕円面、放物面などの湾曲面にされた凹状空間部2を有する反射鏡3と、この反射鏡3の凹状空間部2を密閉するためにその前面開口部3aに設けられた透明の防爆ガラス(透光板)4と、反射鏡3の凹状空間部2の中心である光軸上に配置されたAC型の放電ランプである超高圧水銀ランプ(以下、水銀ランプという)5とから構成されている。
【0028】
上記反射鏡2はガラス製であり、すなわちその母材には、硬質ガラスまたはパイレックスガラスが用いられており、また反射鏡3の凹状空間部2の内面には、水銀ランプ5からの光を前面開口部3aに反射するために、5酸化タンタル、2酸化珪素等からなる薄膜状の反射膜6が蒸着によりコーティングされている。
【0029】
また、上記水銀ランプ5は、透明石英ガラスで形成されるとともに内部に水銀、ハロゲンガス等が充填された楕円体状の管球部(発光管ともいう)11と、この管球部11内にて所定の距離を有して光軸方向に沿って互いに対向するように配置されるとともにタングステンより形成された一対の電極12(12A,12B)と、上記管球部11の両端(前後)から光軸方向に沿って延設されるとともに電極取出し線13(13A,13B)が挿通された側管部14(14A,14B)と、後側の側管部14Bに設けられて電極取出し線13と電源とを接続するための口金15とから構成されている。
【0030】
なお、上記水銀ランプ5の反射鏡3への取り付けは、反射鏡3の前面開口部3aとは反対の閉塞側に形成されたボス部(ネック部ともいう)3bに挿通されるとともに、セメント等の接着剤7により固定されることにより行われている。
【0031】
また、上記反射鏡3の凹状空間部2を形成している壁部の外表面3cには、管球部11の破裂により反射鏡3が破損して飛び散るのを防止するための飛散防止膜(飛散防止手段)16が管球部11に対応する位置からボス部3b寄り位置までの範囲に亘って薄膜状にコーティングにより形成されている。
【0032】
この飛散防止膜16の形成範囲を正確に説明すると、その前端縁は、管球部11の前端縁11aを通り且つ光軸に直交する垂直平面と壁部の外表面3cとの交差する位置(イ)にされるとともに、その後端縁はボス部3cの始端位置(ロ)にされている。
【0033】
また、この飛散防止膜16は、ポリイミドを主成分とした耐熱性を有するもので、具体的には、耐熱温度の上限が350(℃)程度であり、可視光および赤外光の大半を透過させ得る性質を有しており、またその引張強度は185(MPa)で反射鏡1を構成するガラスの、すなわち反射鏡1の母材の91(MPa)よりも大きく、また熱伝導率は5.5(W/mK)であり、反射鏡1の母材の1.1(W/mK)よりも大きい材質のものが使用されている。
【0034】
なお、後述するように、飛散防止膜16および反射鏡1の強度を論じるに際しては、圧縮強度に基づき説明しているが、上述したように引張強度の値を示したのは、圧縮強度の方が引張強度よりも値が大きいため、引張強度の値で考察しておけば、より安全性が高くなるからである。
【0035】
さらに、上記飛散防止膜16の材質としては、その熱膨張係数をα1(1/℃)、そのヤング率をE(MPa)、その圧縮強さをσ(MPa)とし、且つ反射鏡3の母材の熱膨張係数をα2(1/℃)とするとともに飛散防止膜16に作用する温度(反射鏡の外面温度)をT(1/℃)とした場合に、下記(1)式を満足するものが使用される。
【0036】
0<α1−α2<σ/(T×E)・・・(1)
具体的に値を明示すれば、α1=1.5×10−5(1/℃)、α2=3.3×10−6(1/℃)、E=19600(MPa)およびσ=223(MPa)であり、また温度Tは300(℃)である。
【0037】
次に、上記光源装置についての作用および効果について説明する。
上記両電極12(12A、12B)間でアーク放電を起こして水銀ランプ5を発光させると、管球部11内の温度の上昇に伴い、水銀およびハロゲンガスの蒸気圧が上昇し、管球部11の内部圧力が高くなり、例えばこの内部圧力は点灯時の平衡状態では、150〜200気圧程度に達する。
【0038】
したがって、管球部11が黒化および失透するランプの寿命末期においては、この内部圧力により、管球部11が熱応力により破壊する確率が非常に高くなる。すなわち、管球部11が破裂してその破片が反射鏡3に衝突し、万一、反射鏡3にクラックが入った場合でも、反射鏡3の母材よりも剛性が高い飛散防止膜17が反射鏡3の外表面に形成されているので、反射鏡3が割れて管球部11のガラス破片が外部に飛散するのを防止することができる。すなわち、上述したような飛散防止膜16を設けることにより、簡素な構成でありながら、安全で優れた光源装置を提供することができる。
【0039】
また、飛散防止膜16は、薄膜状のものを、直接、反射鏡3の外表面にコーティングすることにより形成されているので、シート状またはテープ状のものを反射鏡3の曲面状壁部の外表面3cに配設する場合に生じる皺、不要な重なり、隙間等がなく、したがってシート等を扇型に形成する手間が不要になるとともに、美観の点でも優れている。
【0040】
また、飛散防止膜16は、充分な耐熱性を有しているので、長時間、水銀ランプ5を点灯させた場合でも劣化することはない。
また、飛散防止膜16は、可視光または赤外光を透過させる透光性を有しているので、水銀ランプ5の輻射光を吸収して、反射鏡3すなわち光源装置1内部の温度が上昇するのを防止することができる。
【0041】
さらに、飛散防止膜16の熱膨張係数の方が反射鏡3の母材のそれよりも大きいので、図4に示すように、水銀ランプ5の点灯時に、反射鏡3の温度の上昇により飛散防止膜16に加わる初期応力が圧縮応力aとなり、したがってこの圧縮応力aは、反射鏡3が破損することにより飛散防止膜16に加わる、より大きい引張応力bに対して有効な方向に作用する。
【0042】
具体的に説明すると、水銀ランプ5の点灯時に加わる圧縮応力aは、反射鏡3の母材と飛散防止膜16との熱膨張係数の差1.17×10−5(1/℃)と、飛散防止膜16に作用する最大温度300(℃)と、ヤング率19600(MPa)とのそれぞれの積で表され、68.8(MPa)となる。
【0043】
そして、この圧縮応力68.8(MPa)が飛散防止膜16の圧縮強度223(MPa)より小さいため、正確に言うと、小さくなるように設定されるので、水銀ランプ5の点灯時における温度上昇によって、飛散防止膜16が破壊されることはない。
【0044】
なお、一般的に、光源装置1が配置されたプロジェクタ(図示せず)においては、冷却ファンにより内部が冷却されており、飛散防止膜16に作用する最大温度は300(℃)以下にされている。
【0045】
さらに、反射鏡3の母材よりも熱伝導性が優れた材料で飛散防止膜16を形成しているので、水平姿勢で点灯する光源装置においては、温度が高い反射鏡3の上部から温度が低い反射鏡3の下部への伝熱作用と、温度が高い反射鏡3の光軸後方部から温度が低い反射鏡3の光軸前方部への伝熱作用が向上し、したがって反射鏡3における温度の均一化が図られるので、反射鏡3すなわち光源装置1内での最高温度の低下を図ることができる。
【0046】
なお、反射鏡3の曲面状の壁部に対して、管球部11のガラス破片が衝突する角度が垂直に近いほど、すなわち管球部11により近い部分では、ガラス破片が反射鏡3に対して与える衝撃エネルギーが大きくなるが、この管球部11に近い部分に飛散防止膜16が設けられていため、すなわちガラス破片が反射鏡3に対して与える衝撃エネルギーが大きく破断を生じる可能性が最も高い箇所に飛散防止膜16が設けられているため、反射鏡3の破断防止に際して、コスト面で有利な構成にされている。
【0047】
次に、本発明の第2の実施の形態に係る光源装置を、図5に基づき説明する。
上記第1の実施の形態に係る光源装置と本第2の実施の形態に係る光源装置との異なる箇所は、飛散防止手段にあるため、本第2の実施の形態においては、この部分に着目して説明するとともに、第1の実施の形態と同一の部品には、同一番号を付してその説明を省略する。
【0048】
すなわち、図5に示すように、この光源装置21における反射鏡3の曲面状の壁部の外表面3cの全面およびボス部3bの表面に亘って、飛散防止膜(飛散防止手段)22がコーティングにより形成されている。
【0049】
そして、さらにこの飛散防止膜22においては、管球部11から反射鏡3までの距離が近い部分(短い部分)に対応する部分、すなわち管球部11の膨出部に対応する位置からボス部3bまでの範囲に亘る閉塞側部分22a部分が開口部分22b側よりも、膜厚が厚くされている。
【0050】
より詳しく説明すると、飛散防止膜22の厚くされた閉塞側部分22aの前端縁は、管球部11の中心を通り且つ光軸に直交する垂直平面と壁部の外表面3cとの交差する位置(ハ)にされるとともに、その後端縁はボス部3bの始端位置(ニ)にされている。
【0051】
したがって、管球部11から反射鏡3までの距離が最も近い部分が、管球部11のガラス破片が当たることによって生じる衝撃エネルギーが最も大きいことから、この部分の飛散防止膜22aの膜厚を厚くすることにより、飛散防止膜の材料の使用量を最小限にすることができるので、経済的である。
【0052】
また、上記各実施の形態において、飛散防止膜16,22が可視光や赤外光を全て透過せず、その数パーセントを吸収する特性を有している場合においても、飛散防止膜16,22が水銀ランプ5から放射される可視光や赤外光を吸収することにより、反射鏡3すなわち光源装置1,21内の温度上昇を抑制することができる。
【0053】
次に、本発明の第3の実施の形態に係る光源装置を、図6および図7に基づき説明する。
上記第1の実施の形態に係る光源装置と本第3の実施の形態に係る光源装置との異なる箇所は、飛散防止手段にあるため、本第3の実施の形態においても、この部分に着目して説明するとともに、第1の実施の形態と同一の部品には、同一番号を付してその説明を省略する。
【0054】
すなわち、図6および図7に示すように、本第3の実施の形態に係る光源装置31における反射鏡3の壁部の外表面3cに形成される飛散防止膜32の表面に、複数の溝部33が同心円状且つ放射線状にそれぞれ等間隔で形成されたもので、すなわち反射鏡3の外表面に凹凸部を形成したものである。
【0055】
このように、飛散防止膜32の表面に多数の溝部33を形成したので、その表面積が増加し、したがって放熱性能が向上する。
勿論、この溝部を、第2の実施の形態における飛散防止膜の表面に形成してもよい。
【0056】
次に、本発明の実施の形態に係るプロジェクタを図8に基づき説明する。
本実施の形態に係るプロジェクタは、上記第3の実施の形態にて説明した光源装置を用いたものである。
【0057】
すなわち、図8に示すように、このプロジェクタ41は、ケーシング42の内部の下部に配置された第3の実施の形態に係る光源装置31からの光線を、照明光学系ユニット43を介して液晶パネルやDMD素子等を有するライトバルブユニット44に導き集光・照射することにより、ライトバルブ(図示せず)にあらかじめ形成した画像データを、投射光学系ユニット45を通してスクリーンに拡大投影するように構成されたものである。なお、ケーシング42内の上記光源装置31などの各機器の上方には、電源ユニット46が配置されている。
【0058】
そして、上記ケーシング42における電源ユニット46に対応する一端側上部および光源装置31に対応する他端側下部には、第1および第2通風口42a,42bが形成され、また第1通風口42a側には外の空気を吸い込む第1冷却用ファン装置47が配置されるとともに第2通風口42b側にはケーシング42内の空気を外部に排出する第2冷却用ファン装置48が配置されている。
【0059】
したがって、上記第1冷却用ファン装置47により、第1通風口42aから吸い込まれた冷却用空気は、ケーシング42内の上部に配置された電源ユニット46を通過し冷却した後、光源装置31を通過して、第2冷却用ファン装置48により、第2通風口42bから排出される。
【0060】
すなわち、電源ユニット46および光源装置31が、両冷却用ファン装置47,48により冷却されると同時に、光源装置31の反射鏡3の外表面3cに形成された飛散防止膜32からも多くの熱が奪われる。この時、飛散防止膜32の表面には、円周に且つ放射状に多数の溝部33が形成されているため、すなわち表面に多数の凹凸部が形成されているため、その表面積が増加し、したがって放熱性能の向上を図り得ると同時に、光源装置31近傍における冷却用空気の流れが乱流状態に移行して、光源装置31から冷却用空気への熱伝達が促進されることで、光源装置31内部の温度を、より低下させるという優れた効果が得られる。
【0061】
勿論、このプロジェクタの光源装置として、上記第1または第2の実施の形態にて説明した光源装置を用いることもできる。
【0062】
【発明の効果】
以上のように本発明の光源装置の構成によると、反射鏡よりも圧縮強度が大きい飛散防止手段を反射鏡の外表面に形成したので、簡素な構成にて、放電ランプの管球部が破裂した際に、反射鏡が割れて管球部の破片が外部に飛散するのを防止することができる。
【0063】
また、飛散防止手段は可視光または赤外光を透過し得る透光性を有しているので、放電ランプの輻射光を吸収して外部に放出することができ、したがって反射鏡内部の温度が過度に上昇するのを防止することができる。
【0064】
また、飛散防止手段は、反射鏡にコーティングにより膜状に形成したので、シート状またはテープ状のものを反射鏡の曲面状の外表面に設けた場合に生じる皺、不要な重なり、隙間などがなく、したがって例えばシート状の飛散防止手段を扇型に設けるような手間が不要となる。
【0065】
また、飛散防止手段の熱膨張係数をα1、そのヤング率をE、その圧縮強度をσおよび飛散防止手段における最高温度をT、並びに反射鏡の熱膨張係数をα2とした場合、0<α1−α2<σ/(T×E)の関係を満足する材料を、飛散防止手段の材料として用いることにより、下記の2つの効果が得られる。
【0066】
すなわち、飛散防止手段の方が反射鏡よりも熱膨張係数が大きくされているので、放電ランプの点灯時に、反射鏡の温度の上昇により飛散防止手段に加わる初期応力が圧縮応力となり、したがってこの圧縮応力が、反射鏡が破損することにより飛散防止手段に加わる、より大きい引張応力に対して有効な方向に作用する。
【0067】
また、放電ランプの点灯時に、反射鏡と飛散防止手段との熱膨張係数の差、飛散防止手段の加わる最高温度、および飛散防止手段のヤング率とから計算される圧縮応力が、飛散防止手段自身の圧縮強度より小さくなるように設定されるので、点灯時の温度上昇によって飛散防止手段が破壊されることはない。
【0068】
さらに、放電ランプの管球部に対応する部分に飛散防止手段を設けたので、または管球部と反射鏡との最も近接する部分、すなわち管球部の破片が当たることによって生じる衝撃エネルギーが最も大きく破壊され易い部分の膜厚を厚くしたので、飛散防止手段の材料使用量を最小限にすることができ、したがって経済的である。
【0069】
本発明のプロジェクタの構成によると、ケーシング内に設けられた冷却用ファン装置により、反射鏡に冷却用空気を当てて光源装置を冷却することができるので、光源装置の寿命を延ばすことができる。
【0070】
また、このプロジェクタに配置される反射鏡の外表面に形成される飛散防止手段に凹凸部を形成した場合、反射鏡での放熱性能の向上を図ることができる他に、冷却用空気を乱流状態に移行させて反射鏡から冷却用空気への熱伝達を促進することができ、したがって反射鏡全体の温度を、効果的に低下させることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1の実施の形態における光源装置の内部を示す縦断面斜視図である。
【図2】同光源装置の背面斜視図である。
【図3】同光源装置の縦断面図である。
【図4】同光源装置の反射鏡および飛散防止膜に作用する応力を説明する図である。
【図5】本発明の第2の実施の形態における光源装置の縦断面図である。
【図6】本発明の第3の実施の形態における光源装置における反射鏡の要部断面図である。
【図7】同光源装置の背面斜視図である。
【図8】本発明の実施の形態に係るプロジェクタの概略構成を示す断面図である。
【符号の説明】
1 光源装置
2 凹状空間部
3 反射鏡
3a 前面開口部
3c 外表面
5 超高圧水銀ランプ
6 反射膜
11 管球部
16 飛散防止膜
21 光源装置
22 飛散防止膜
31 光源装置
32 飛散防止膜
33 溝部
41 プロジェクタ
42 ケーシング
42a 第1通風口
42b 第2通風口
47 第1冷却用ファン装置
48 第2冷却用ファン装置

Claims (7)

  1. 一端側が開口されるとともに内面が他端側に向って閉塞する湾曲状に形成され且つ内面に反射膜が形成された凹状空間部を有するガラス製の反射鏡と、
    上記凹状空間部内の中心である光軸上に配置されるとともに放電ガスが充填された管球部を有する放電ランプと、
    上記凹状空間部の開口部に配置されて当該凹状空間部内を密閉するとともに反射膜で反射した光を透過し得る透光板とを具備するとともに、
    上記反射鏡の外表面に、上記反射鏡より大きい圧縮強度を有する膜状の飛散防止手段をコーティングにより形成し、
    上記飛散防止手段の熱膨張係数をα1、そのヤング率をE、その圧縮強度をσおよび飛散防止手段における最高温度をT、並びに反射鏡の熱膨張係数をα2とした場合、
    0<α1−α2<σ/(T×E)
    の関係を満足する材料で飛散防止手段を形成したことを特徴とする光源装置。
  2. 飛散防止手段は、可視光または赤外光を透過させる透光性を有するコーティングであることを特徴とする請求項1に記載の光源装置。
  3. 飛散防止手段の材料として、反射鏡を構成するガラスよりも熱伝導性が優れたものを使用したことを特徴とする請求項1または2に記載の光源装置。
  4. 飛散防止手段の形成範囲を、管球部に対応する位置から反射鏡の閉塞側である放電ランプ支持部に対応する位置までの範囲としたことを特徴とする請求項1乃至のいずれかに記載の光源装置。
  5. 飛散防止手段の形成範囲を、一端側の開口部寄り位置から他端側の放電ランプ支持部に対応する位置までの範囲にするとともに、
    飛散防止手段の膜厚を、管球部から反射鏡までの距離が短い部分に対応する部分を厚くしたことを特徴とする請求項1乃至のいずれかに記載の光源装置。
  6. 飛散防止手段の表面に凹凸部を設けたことを特徴とする請求項1乃至のいずれかに記載の光源装置。
  7. 請求項1乃至のいずれかに記載の光源装置を有するプロジェクタであって、
    反射鏡が配置されるケーシング内に、反射鏡の外表面に空気を吹き付けて冷却を行う冷却用ファン装置を具備したことを特徴とするプロジェクタ。
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