JP3554879B2 - 透光性導電膜の製造方法 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、太陽電池,表示装置等に利用される透光性導電膜の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
液晶パネル,プラズマディスプレイ等の表示装置、または、太陽電池,光センサ等の光起電力装置における透光性導電膜の材料としては、錫ドープの酸化インジウム(ITO)が一般的に用いられている。また、低コスト化を図るという目的で、Al,BまたはGaをドープした酸化亜鉛(ZnO)の利用も進められている。
【0003】
このようなインジウム,亜鉛の酸化物からなる透光性導電膜を基板上に形成する場合には、その材料をターゲットとし、プラズマ発生用ガスとしてAr,Oを用いた公知のマグネトロンスパッタリング法,イオンプレーティング法等を主として利用する。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
ZnOはITOと比較して、安価ではあるが比抵抗は10倍程度高く、低抵抗の透光性導電膜の形成は困難であり、一方、ITOについては、生産性向上のために成膜速度を速くしていくにつれて除々に抵抗値が上がっていくという難点があり、表示装置,太陽電池等の性能向上を抑制する一因となっている。よって、安価に低抵抗化を実現できる透光性導電膜の開発が望まれている。
【0005】
本発明は斯かる事情に鑑みてなされたものであり、安価に低抵抗化を実現した透光性導電膜を製造できる透光性導電膜の製造方法を提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明の透光性導電膜の製造方法は、インジウムの酸化物を主成分とすると共に、膜中に重量濃度0.5〜3%のフッ素を含む透光性導電膜をスパッタリング法により製造する方法であって、ArガスとO 2 ガスとCF 3 CH 2 Fガスとを含むスパッタリングガスを使用することを特徴とする。
【0010】
本発明の透光性導電膜は、インジウムの酸化物に重量濃度0.5〜3%のフッ素を含んでいる。この透光性導電膜では、酸化物中の酸素が、取り込まれたフッ素に置換されて、キャリアであるドナーが増加すると同時に安定化し、その結果比抵抗が低下する。
【0011】
このようなフッ素を含む透光性導電膜を製造する場合、本発明では、透光性導電膜の主材料をターゲットとし、プラスマ発生用のスパッタリングガスとして、一般的なAr,Oガスと共に フッ素を含む化合物ガス(例えば、CFCHF,CFCHF,CHF,C,CHFCH,NHFのうちの少なくとも1種のガス)を使用する。このようにすることにより酸化物にフッ素を容易に混入させることができる。
【0012】
本発明の光起電力素子では、このようなフッ素を含む酸化物からなる透光性導電膜を透光性電極膜に使用するので、透光性電極膜の比抵抗が低下し、光電変換特性の向上を図れる。
【0013】
【発明の実施の形態】
以下、本発明をその実施の形態を示す図面を参照して具体的に説明する。
【0014】
図1は、本発明による透光性導電膜の基板上への形成工程の状態を示す模式図である。図1において、1は減圧状態を実現できる真空槽であり、真空槽1内には2枚の電極9,10が所定距離隔てて対向させて設けられている。一方の電極9は高周波電圧を印加する高周波電源4に接続され、その電極9にInからなるターゲット2が載置されている。他方の電極10は接地され、その電極10に透光性導電膜を形成する支持基板としてのガラス基板3が載置されている。また、その一方の電極9近傍には複数の永久磁石8が設けられており、電界と直交する方向に磁界を発生するようになっている。
【0015】
真空槽1には、3種のスパッタリングガスを供給するための3本のガス供給管5a,6a,7aが連通されている。ガス供給管5aは、Arガス供給源(図示せず)に接続されており、スパッタリングガスとしてArガスを真空槽1内に導入する。また、ガス供給管6aは、Oガス供給源(図示せず)に接続されており、スパッタリングガスとしてOガスを真空槽1内に導入する。更に、ガス供給管7aは、CFCHFガス供給源(図示せず)に接続されており、スパッタリングガスとしてCFCHFガスを真空槽1内に導入する。各ガス供給管5a,6a,7aの中途には、それぞれのガスの流量を制御する流量制御弁5b,6b,7bが設けられている。
【0016】
次に、Inからなる透光性導電膜をガラス基板3上に形成する処理動作について説明する。高周波電源4により電極9に高周波電圧(通常13.56MHz)を印加すると、減圧状態の真空槽1内にプラズマが発生し、各ガス供給管5a,6a,7aを介して導入されるスパッタリングガスの高エネルギのイオンがターゲット2に入射される。このイオンがターゲット2の表面に入射されると、ターゲット2表面近傍の原子が入射イオンからエネルギを得て外に放出される。放出された原子は、ターゲット2に対向する位置に置かれたガラス基板3に付着し、膜形成が行われる。
【0017】
この際、永久磁石8により電界と直交する方向に磁界を発生させ、高密度のプラズマをターゲット2近傍に閉じ込め、高い膜形成速度が得られるようにする。また、本発明では、スパッタリングガスとして、Ar,Oに加えてCFCHFも使用するので、形成される透光性導電膜にフッ素が混入される。
【0018】
このようなマグネトロンスパッタリング時の条件の一例を下記表1に示す。
【0019】
【表1】
Figure 0003554879
【0020】
ここで、形成される透光性導電膜におけるフッ素濃度と比抵抗・光透過率との関係について説明する。
【0021】
表1においてCFCHFガスの流量を0〜8SCCMの間で7種の流量に設定し、それぞれの場合で形成される透光性導電膜(膜厚は1000Åと2000Åとの2種類)におけるフッ素濃度をSIMSで測定し、また、それらの透光性導電膜の比抵抗及び光透過率(波長550nm)を測定した。
【0022】
比抵抗の測定結果を、図2に示す。図2では、横軸に膜中のフッ素の重量濃度をとり、縦軸に比抵抗をとって、両者の関係をグラフ化している。なお、図2のグラフ中、●は膜厚が1000Åである透光性導電膜の場合、○は膜厚が2000Åである透光性導電膜の場合をそれぞれ示す。何れの膜厚の透光性導電膜においても、膜中のフッ素の重量濃度が0.5〜3%の範囲において、比抵抗が10−4Ω・cm台の低い値を示しており、この範囲内でフッ素を混入することにより、フッ素を混入しない場合に比べて10倍以上の低抵抗化を実現できていることが分かる。
【0023】
また、光透過率(波長550nm)の測定結果を、図3に示す。図3では、横軸に膜中のフッ素の重量濃度をとり、縦軸に光透過率をとって、両者の関係をグラフ化している。なお、図3のグラフ中、●は膜厚が1000Åである透光性導電膜の場合、○は膜厚が2000Åである透光性導電膜の場合をそれぞれ示す。何れの膜厚の透光性導電膜においても、膜中のフッ素の重量濃度が変化してもフッ素を混入させない従来のものに比べて、光透過率は殆ど変わらない。つまり、低抵抗化を図るためにめフッ素を透光性導電膜に混入させても光透過率は低下せず、本発明の透光性導電膜における透明性には全く問題がない。
【0024】
上述した例では、ノンドープのInからなる透光性導電膜を形成する場合について説明したが、錫ドープの酸化インジウム(ITO)からなる透光性導電膜を形成する場合にも本発明を適用できる。この場合、図1におけるターゲット2をInからITOに変えることにより、同様の工程でITOの透光性導電膜を形成できる。形成したITOの透光性導電膜について、その比抵抗を測定したところ、フッ素の重量濃度が0.5〜3%の範囲において、フッ素を全く含まないITOの透光性導電膜に比べて、比抵抗が20%程度低下したことを確認でき、ノンドープのInの透光性導電膜の場合と同様の効果を呈することが分かった。
【0025】
また、本発明により形成したフッ素ドープのITOの透光性導電膜と、従来法により形成したフッ素ノンドープのITOの透光性導電膜とについて、ターゲットを50時間使用した場合における比抵抗の推移を測定した。その測定結果(平均比抵抗,50時間における比抵抗のばらつき)の比較を下記表2に示す。
【0026】
【表2】
Figure 0003554879
【0027】
本発明のフッ素ドープのITOの透光性導電膜では、従来のフッ素ノンドープのITOの透光性導電膜に比べて、比抵抗が低下しているだけでなく、その比抵抗の再現性が大きく向上していることが分かる。
【0028】
次に、酸化亜鉛(ZnO)からなる透光性導電膜を基板上に形成する実施の形態について述べる。このような場合には、図1におけるターゲット2をInからZnOに変えることにより、同様の工程でZnOの透光性導電膜を形成できる。但し、この実施の形態では、スパッタリングガスとしてArとCFCHFとを使用する。この際のスパッタリングの条件の一例を下記表3に示す。
【0029】
【表3】
Figure 0003554879
【0030】
このZnOからなる透光性導電膜においても、フッ素の重量濃度が0.5〜3%の範囲において、従来のフッ素ノンドープのZnOの透光性導電膜と比べて、極めて低い比抵抗を実現できていることを確認できた。また、ターゲットを長期間使用する場合の比抵抗の推移を測定したところ、表2に示すITOからなる透光性導電膜の場合と同様の特性を呈することも確認できた。
【0031】
上述した例では、ノンドープのZnOからなる透光性導電膜を形成する場合について説明したが、Al,Ga等をドープさせたZnOの透光性導電膜を形成する場合にも本発明を適用できる。この場合、図1におけるターゲット2として、Al,Ga等をドープさせたZnOを使用すれば良い。このような不純物ドープのZnOの透光性導電膜についても、フッ素の重量濃度が0.5〜3%の範囲において、フッ素を全く含まない場合の透光性導電膜に比べて、比抵抗を25%程度低下させることができた。
【0032】
なお、上述した例では、スパッタリングを行う際に高周波放電を用いたが、直流放電を用いても、本発明のフッ素を含む透光性導電膜を同様に形成できる。
【0033】
また、マグネトロンスパッタリング法にて透光性導電膜を形成する例について説明したが、減圧下でのイオンプレーティング法によっても、本発明のフッ素を含む透光性導電膜を同様に形成することができる。
【0034】
更に、上述した例では、金属酸化物にフッ素を含ませるためのスパッタリングガスとしてCFCHFを使用したが、フッ素を含有する他の化合物ガス、例えば、CFCHF,CHF,C,CHFCH,NHF等のうちの少なくとも1種のガスをスパッタリングガスとして使用することも可能である。
【0035】
次に、本発明の光起電力素子について説明する。図4は、本発明の光起電力素子の構成図である。図2において、11はガラス基板であり、ガラス基板11上には、光入射側の透光性電極膜12、光電変換層を構成するp型非晶質シリコン層13,i型非晶質シリコン層14及びn型非晶質シリコン層15、例えば銀(Ag)からなる光透過側の反射用電極膜16がこの順に積層形成されている。
【0036】
以上のような構成の光起電力素子において、透光性電極膜12に、重量濃度0.5〜3%のフッ素を含むInもしくはZnOまたはこれらの酸化物に他の元素をドープした酸化物からなる透光性導電膜を使用している。光起電力素子の製造工程にあって、この透光性電極膜は、上述したようなマグネトロンスパッタリング法またはイオンプレーティング法により形成できる。
【0037】
比抵抗が低いフッ素を含む金属酸化物膜を透光性電極膜12に使用するので、透光性電極膜12の抵抗値を低減でき、光電変換特性の向上を図ることができる。
【0038】
尚、本発明の光起電力素子は図4の構造のものに限らず、例えばプラスチック,SUS等の金属板の表面をSiO,SiN等の絶縁膜でコートした基板上に、Ag,Al等からなる反射用電極膜、n型非晶質シリコン層とi型非晶質シリコン層とp型非晶質シリコン層とを積層してなる光電変換層、及び光入射側の透光性電極膜からなる光起電力素子においても、前記透光性電極膜にインジウムまたは亜鉛の酸化物を主成分とすると共に、膜中に重量濃度0.5〜3%のフッ素を含む金属酸化物を用いることで、透光性電極膜の抵抗値を低減でき、光電変換特性の向上を図ることができる。
【0039】
【発明の効果】
以上のように、本発明の透光性導電膜では、インジウムの酸化物を主成分とし、重量濃度0.5〜3%のフッ素を含ませているので、フッ素を含まない透光性導電膜に比べて、大幅に比抵抗を低減させることができる。
【0040】
また、本発明の光起電力素子では、以上のような低比抵抗の透光性導電膜を透光性電極膜に使用しているので、透光性電極膜の光透過特性を劣化させることなく、その抵抗を小さくでき、光電変換特性の向上をもたらすことができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】基板上への透光性導電膜の形成工程の状態を示す模式図である。
【図2】透光性導電膜におけるフッ素重量濃度と比抵抗との関係を示すグラフである。
【図3】透光性導電膜におけるフッ素重量濃度と光透過率との関係を示すグラフである。
【図4】光起電力素子の構成図である。
【符号の説明】
1 真空槽
2 ターゲット
3 ガラス基板
4 高周波電源
5a,6a,7a ガス供給管
8 永久磁石
9,10 電極
11 ガラス基板
12 透光性電極膜

Claims (1)

  1. インジウムの酸化物を主成分とすると共に、膜中に重量濃度0.5〜3%のフッ素を含む透光性導電膜をスパッタリング法により製造する方法であって、ArガスとO 2 ガスとCF 3 CH 2 Fガスとを含むスパッタリングガスを使用することを特徴とする透光性導電膜の製造方法。
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