JP3325324B2 - 粗セルロースの脱リグニン化方法 - Google Patents

粗セルロースの脱リグニン化方法

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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】この発明は、粗セルロースの脱リ
グニン化方法に関する。ここで、粗セルロースとは、破
砕木材を、高温(160〜170℃)のオートクレーブ中、各
種の化学剤、例えば硫酸ナトリウム(クラフト方法)、
亜硫酸ナトリウム、水酸化ナトリウムなどの存在下、水
溶液中で所謂“クッキング(蒸解)”することによって
得られる製品を意味する。
【0002】
【従来の技術】破砕木材の化学処理中に、リグニンは木
材繊維から部分的に除去されるが(減少は普通80〜90
%)、粗セルロースは、原料の木材のタイプや蒸解法の
違いによって2〜10重量%のリグニンを含んでいる。そ
のため、脱リグニンや漂白などの化学的処理をさらに行
うことが、粗セルロースから残留リグニンを除去しかつ
白色度を改善するのに必要とされる。
【0003】通常の脱リグニン及び漂白処理は、塩素ガ
スの使用、次いでカセイソーダでの中和/抽出、過酸化
水素、カセイソーダ及びシリケートでの漂白処理及び次
亜塩素酸塩溶液での最終漂白処理からなる。現在では公
害の問題から、塩素の代りに他の酸化剤を用いる傾向が
ある。この発明は、特に粗セルロースの脱リグニン化に
ペルオキソ一硫酸(以下AMPと称す)又はその塩を使
用するものである。
【0004】リグニン−セルロース性材料にAMP又は
その誘導体を利用する方法は、米国特許第4,404,061
号、同第5,004,523号、ヨーロッパ特許出願A-415,149号
で知られている。米国特許第4,404,061号には、木材パ
ルプをpH2〜12で、40℃以上の温度でKHSO5(乾
燥セルロースに対し0.5〜5%)と接触させて木材パル
プを漂白する方法が記載されている。この方法では、白
色度の点で良好な結果を与えるが、望まれないセルロー
スの分解をきたし、その機械特性に逆効果となる。
【0005】米国特許第5,004,523号は、破砕木材又は
高いリグニン含量の同様のセルロース材を、酸性領域
(pH=0〜1.8)で約50℃でAMPと処理して脱リグ
ニン化する方法に関する。この方法は、古典的な方法に
代る実質的な“クッキング”法であり、低リグニン含量
の粗セルロースを与える。AMP消費は高く、原AMP
量の33〜71%である。このように高いAMP消費は原料
木材中にAMP分解“触媒”が存在することによると思
われる。
【0006】ヨーロッパ特許出願A-415,149号には、2
つの連続工程、すなわち第1工程がセルロース材をpH
1.9〜9.3でAMPで処理し、第2工程が100℃で酸素ガ
ス及び/又は過酸化物での処理からなる洗浄を含むこと
が記載されている。AMP又はその塩での前処理によ
り、酸化工程での酸素選択性がかなり増大する。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】この発明の目的は、ペ
ルオキソ一硫酸〔peroxomonosulfuric acid (H2
5 )〕処理に基づくリグニン−セルロース材の脱リグ
ニン化法を提供することで、公知の方法と比較して反応
剤が低消費(特にAMP低消費)の他に、脱リグニン化
セルロースの優れた機械特性、特に引裂き特性のものを
得ることである。
【0008】この発明によれば、粗セルロースをペルオ
キソ一硫酸又はその塩の酸溶液に浸漬する予備工程と、
浸漬したセルロースを、9より高いpHのアルカリ媒体
で40℃より低い温度で、セルロース中に含有したリグニ
ン量を実質的に減少さすのに十分な時間処理する工程と
からなることを特徴とする粗セルロースの脱リグニン方
法が提供される。
【0009】粗パルプの脱リグニン化をさせるペルオキ
ソ一硫酸とリグニンとの反応はアルカリ処理工程で起
り、一方酸浸漬工程ではペルオキソ一硫酸は安定な状態
で残存し、粗パルプ中のリグニンと反応しない。この特
徴のため、任意に叩解した後に、優れた機械特性特に、
非叩解パルプより110以上高く、叩解パルプより65以上
高い引裂値(UNI/ISO スタンダードにより測
定)を示す製品が得られる。このような優れた結果は、
酸処理とアルカリ処理(後者はNaOHで行うのが好ま
しい)の2つの連続工程を共に特定のpH値と、2つの
工程を低温に保持することによる。事実、従来技術特に
米国特許第5,004,523号で示唆されているのと反対に、
リグニンのペルオキソ一硫酸による化学的消化の最良の
条件は9以上のpH、好ましくは9.5〜12.5のpHであ
る。かくして、最初の酸処理工程では、例えばペルオキ
ソ一硫酸(好ましくは終濃度約34重量%)の硫酸(好ま
しくは終濃度約43重量%)と過酸化水素(好ましくは終
濃度約4.5重量%)との溶液をセルロース懸濁液に加え
て行うことからなり、ペルオキソ一硫酸を、繊維を正確
に浸漬さすよう加え、次いでセルロースをペルオキソ一
硫酸で消化させてリグニンを作るよう機能する。ここで
は、パルプ中のセルロースとヘミセルロースの分解がな
く、ペルオキソ一硫酸の高い消費を必要としない。
【0010】この発明の方法は、2つのセルロース処理
工程、すなわち酸処理工程とアルカリ処理工程の間に、
中間の洗浄を行わず、セルロースを酸溶液から分離し
て、乾燥物の5〜30%を含有する浸漬セルロースの濃縮
パルプを得、その分離で得た溶液を最初の酸処理工程に
再循還することが好ましい。再循還は、AMPが酸処理
工程で安定で、混合物の成分と反応しないために可能で
ある。このようにすると、ペルオキソ一硫酸の消費はさ
らに減少し、濃厚化したセルロースパルプに含浸される
ペルオキソ一硫酸溶液の量に限定される。
【0011】アルカリ(例えばNaOH)処理前の濾過
とAMP溶液の再循還(セルロースに保持されたペルオ
キソ一硫酸量を補充後)により、試剤消費の経済化なら
びに処理セルロースの良好な機械特性を得ることができ
る。粗セルロースの酸処理に用いられる溶液は、ペルオ
キソ一硫酸の0.3〜14重量%(乾燥セルロースに基づき
計算)、好ましくは1.3〜4重量%と硫酸の0.4〜18重量
%、好ましくは1.7〜5重量%を含む。この溶液での処
理は20℃以下の温度で5〜90分間行うのが好ましい。
【0012】ペルオキソ一硫酸は、96%H2SO4と60%
22を2:1〜1:1の間のモル比で、20℃以下の温
度で反応させて作ることが好ましい。ペルオキソ一硫酸
の代わりに等モル濃度のその塩を使用することが可能で
ある。アルカリ処理に用いられるアルカリ(例えばNa
OH)濃度は、乾燥セルロースをベースに計算して、1.
5〜26重量%、好ましくは3〜8重量%で、処理時間は
5〜180分が好ましい。
【0013】
【実施例】次にこの発明を実施例によって説明する。実施例1 乾燥物の2%で乾燥セルロースの100gを含有する化学
セルロースパルプ〔とうひ木材(spruce wood) を酸性亜
硫酸カルシウム処理して得たもの〕に、96%硫酸と60%
過酸化水素(1.75:1のモル比)を混合して得られる溶
液65.32gを加えた。懸濁物を45分間均質化し、そのp
H値は1.2であった。
【0014】セルロースパルプを濾過し、10%乾燥物に
し、濃厚化セルロースパルプ中のAMP含量は乾燥セル
ロースに対し4.08重量%に等しいものであった。濾過で
得られる溶液を最初の混合工程に再循還した。AMPを
加えてAMP量を補正した。濃縮セルロースパルプを、
約pH10.5〜11.5で、乾燥セルロースに対し8.3重量%
に等しいNaOH量で処理した。
【0015】反応は発熱反応で、16℃から23°に上昇し
た。NaOH処理は約90分で終了し、その際のpHは約
9.5〜10であった。得られたセルロースパルプの特性を
測定し、その結果を表1に示す。比較のため、粗セルロ
ース(脱リグニン化/漂白処理を行わず)と通常の脱リ
グニン化処理(3%塩素ガスでの処理と1%NaOHで
の中和)によるセルロースの特性を評価した。各種の叩
解しないセルロースの比較値を表1に示す。
【0016】
【表1】 上記の表から、この発明の処理(AMP+NaOH)で
は、通常処理(Cl2+NaOH)により得られるもの
と等しい脱リグニン化度が得られる。
【0017】その上、次の様式によりH22で脱リグニ
ン化と漂白したセルロースでの評価をした。AMP+N
aOHの処理後に、セルロースを水洗し、約11%の乾燥
物まで濃縮し、次いで1.5 %H22(+1.6%NaOH
と0.6%珪酸ナトリウム−乾燥セルロースに対する%)
での漂白に付した。その際の温度は約70〜75℃で、反応
時間は75分であった。得られるセルロースを叩解処理に
付した。叩解度はS.R.法により測定した。その結果
を表2に示す。
【0018】
【表2】 この表から、不透明度ならびに引裂値が増加(50%)し
ていることが明らかである。表1及び表2ならびに次に
挙げる表中での各値は、次の評論法に基づく。 裂断長(mで表示):UNI 6438スタンダードに
よる 引裂度(〔MN/m2〕/gで表示):UNI 644
4スタンダードによる ミューレン(又は破裂)指数:UNI 6443スタン
ダードによる 重量当りの破裂強度〔Kg/cm2〕/〔g/m2〕 不透明度(%):UNI 7624スタンダードによる 白色度又は白さ(%):UNI 7623スタンダード
による K:T236m/60スタンダードによる過マンガン酸
数(セルロース中のリグニン量を示す)。
【0019】実施例2〜6 実施例1の方法に従って、同じタイプの化学セルロース
パルプを、濃縮化セルロースパルプ(乾燥セルロースに
基づく)中、異なるAMP濃度及び異なるNaOH量
(乾燥セルロースに基づく)で処理した。この発明によ
る実施例2〜5と比較例6(セルロースをAMPで初期
処理、洗浄と続いてNaOHでの処理による)とのセル
ロース特性を表3に示す。
【0020】
【表3】 表3から、少ないAMP濃度で十分な脱リグニン化が得
られることが明らかである。
【0021】実施例7〜10 この発明による脱リグニン化法の各種の操作パラメータ
ーの臨界度をみるため、実施例1に用いた粗セルロース
を原料としていくつかのテストを行った。セルロースの
最終特性の変動を調べるため、1回に1つのパラメータ
ーのみが変化された。H22での漂白を行わずかつ酸溶
液の再循還を行わず(従って酸処理とアルカリ処理の間
のセルロースパルプの濾過/濃縮を行わず)、での脱リ
グニン化処理での結果を表4に示す。
【0022】
【表4】 表4中の略法の意味は、次の通りである。 A: 懸濁液中のセルロースの%(濃度) AMP: ペルオキソ一硫酸の%(乾燥セルロースに基
づく) T: 処理時間(分)O b: 白色度 Op.: 不透明度 LR: 裂断長(m) LZ: 引裂き M: ミューレン指数 アルカリ処理工程でのpHを変化させて行った実施例7
と8とを比較すると、pH10〜11の範囲で、高いpHで
の処理で得たセルロースでの値に対し、セルロースの引
裂き耐性に関して良好な結果と白色度と裂断長での僅か
な増加が見られる。
【0023】実施例9と10との比較実験からは、酸及
びアルカリ処理工程でのペルオキソ一硫酸の濃度の変動
(5.6%〜9.4%)は、本質的にセルロース特性を換えな
いことが分かる。アルカリ処理工程での処理時間を増加
さす(実施例9と8との比較)と、白色度ならびにセル
ロースの機械特性を改良する。これはAMPとリグニン
との間の完全な反応によるものである。実施例11〜14 酸処理工程とアルカリ処理工程の間にセルロース濾過を
行い分離した酸溶液を再循還するテストを行った。結果
は表5に示す。
【0024】
【表5】 Aは酸処理工程中の懸濁液の濃度を示し(乾燥ベースの
%)、Bは濃厚化(濾過)後の濃度を示す。他の記号は
表4に示したと同一意味である。実施例11と12の結
果をみると、アルカリ処理工程での温度上昇で、白色度
の僅かな改良を伴いセルロースの機械特性の低下となる
ことが分かる。実際にこの発明の方法の新規な特徴の1
つは、前もってAMPで浸漬したセルロースを低い温度
でアルカリ媒体中で処理することである。
【0025】実施例13と14を比較すると、酸処理工
程でのAMP濃度増加の効果がみられ、この増加(低温
度)で良好な引裂特性と高い白色度を与える。表4の実
施例8と表5の実施例13を比較するとアルカリ処理工
程で他の条件を同じにし、セルロースが濃縮されたパル
プ(濾過後)では、セルロースの白色度と引裂特性の両
方が改良される利点が分かる。
【0026】紙120トン/日の生産能を有する工業用プ
ラントで脱リグニン化を行ったが、その結果は実験室で
得た値と一致した。
【0027】
【発明の効果】この発明によれば、脱リグニン化に使用
する反応剤、特にペルオキソ一硫酸の消費量を低消費に
することができ、優れた機械特性、特に引裂き特性を有
し、白色度が改良された脱リグニン化セルロースを得る
ことができる。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 ジャンピエロ サッキ イタリア国、トリヴォルツィオ 27020、 ヴィア アンジェロ モッキ 19 (56)参考文献 特開 昭62−191589(JP,A) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) D21C 1/00 - 11/14

Claims (6)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 (1)(a)20℃以下の温度で、乾燥
    セルロースに対し0.4〜18重量%の硫酸と、乾燥セ
    ルロースに対し0.3〜14重量%のペルオキソ一硫酸
    又はその塩を含む酸溶液にセルロースパルプを浸漬し、 (b)工程(1)(a)の浸漬したセルロースを、乾燥
    物で5〜30%含む濃縮浸漬セルロースパルプが得られ
    るまで濃厚化し、 (c)工程(1)(b)の濃厚化で得られた溶液を再循
    環させることからなる第1工程 (2)第1工程で得られた 浸漬したセルロースを、9よ
    り高いpHのアルカリ媒体で、40℃より低い温度で、
    セルロース中に含有したリグニン量を実質的に減少さす
    のに十分な時間処理する第2工程からなることを特徴と
    する粗セルロースをペルオキソ一硫酸又はその塩及び硫
    酸を含む酸性溶液で処理することによる粗セルロースの
    脱リグニン方法。
  2. 【請求項2】 アルカリ媒体中での処理工程のpHが9
    〜12.5である請求項による方法。
  3. 【請求項3】 ルカリ媒体が乾燥セルロースに対し
    1.5〜26重量%の濃度の水酸化ナトリウム溶液であ
    る請求項1又は2による方法。
  4. 【請求項4】 水酸化ナトリウム溶液の濃度が乾燥セル
    ロースに対し3〜8重量%である請求項による方法。
  5. 【請求項5】 酸処理工程が5〜90分間行なわれる請
    求項1〜4の何れか1つによる方法。
  6. 【請求項6】 水酸化ナトリウムが乾燥セルロースに対
    し、3〜8重量%の濃度で利用され、第2工程が5〜1
    80分間行われる請求項による方法。
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