JP3251607B2 - 耐衝撃性ポリプロピレン成形物 - Google Patents

耐衝撃性ポリプロピレン成形物

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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は耐衝撃性ポリプロピレン
樹脂成形物に関する。詳しくは実質的にシンジオタクチ
ック構造のポリプロピレンとエチレンとプロピレンの共
重合体からなり、しかも成形物としたものの表面にエチ
レンとプロピレンの共重合体の浮きだしなどの問題のな
い成形物に関する。
【0002】
【従来の技術】シンジオタクチックポリプロピレンにつ
いては古くよりその存在は知られていたが従来のバナジ
ウム化合物とエーテルおよび有機アルミニウムからなる
触媒で低温重合する方法はシンジオタクティシティーが
悪く、シンジオタクチックなポリプロピレンの特徴を表
しているとは言い難く、ましてやエチレンとプロピレン
の共重合体は結晶性のポリプロピレンとは言い難いもの
であった。これに対して、J.A.EWENらにより非対称な配
位子を有する遷移金属触媒成分とアルミノキサンからな
る触媒によってシンジオタクチックペンタッド分率が0.
7 を越えるようなタクティシティーの良好なポリプロピ
レンを得られることが初めて発見された(J.Am.Chem.So
c.,1988,110,6255-6256) 。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】上記J.A.EWENらによる
方法は遷移金属当たりの活性が良好であり、しかも得ら
れるポリマーのタクティシティーが高く、ポリマーの物
性は比較的バランスの良好なものであるが、低温の耐衝
撃性が不良であるという問題があった。これに対して
は、エチレンとプロピレンの共重合体を混合することが
考えられ、その様なものは物性の向上に効果があるが、
成形物とした時、アイソタクチックポリプロピレンをベ
ースとしたものと異なり表面にエチレンとプロピレンの
共重合体が浮きだすという問題があった。
【0004】
【課題を解決するための手段】本発明者らは上記問題を
解決して耐衝撃性に優れ、しかも成形物の表面に問題の
ない、物性バランスに優れたポリプロピレンの成形物に
ついて鋭意探索し本発明を完成した。
【0005】即ち本発明は、シンジオタクチックペンタ
ッド分率が0.6以上のプロピレン単独重合体か、プロ
ピレンと他のオレフィンの共重合体であって、1,2,
4−トリクロロベンゼン溶液で測定した 13 C−NMRで
20.2ppmに観測されるピーク強度がプロピレン単位の全
メチル基に帰属されるピーク強度の0.3以上であり1
35℃のテトラリン溶液で測定した極限粘度として0.
1〜20であるシンジオタクチックポリプロピレンを3
0〜98重量部エチレン(半量までを炭素数4以上の
α−オレフィンで代替してもよい)含量が10〜95w
t%のエチレンとプロピレンの共重合体2〜70重量部
からなる組成物を押出成形してなる耐衝撃性ポリプロピ
レン成形物である。
【0006】以下に本発明の成形物についてその製造方
法を説明することで詳細に示す。
【0007】本発明の組成物の一成分である実質的にシ
ンジオタクチック構造のポリプロピレンを合成するに好
適な触媒としては、上記文献に記載された化合物が例示
できるが、異なる構造であってもプロピレンの単独重合
体を製造した時、得られる重合体のシンジオタクチック
ペンタッド分率(A.Zambelliら Macromolecules vol6 6
87(1973),同 vol 8 925(1975)) 0.7 以上程度の比較的
タクティシティーが高い重合体を与える触媒系であれば
利用可能であり、例えば、非対称な配位子を有する遷移
金属化合物と有機アルミニウムからなる触媒系が有効で
ある。
【0008】好適な触媒系の例としては上記文献に記載
されたイソプロピル(シクロペンタジエニル-1- フルオ
レニル) ハフニウムジクロリド、あるいはイソプロピル
(シクロペンタジエニル-1- フルオレニル) ジルコニウ
ムジクロリドなどが例示され、また有機アルミニウムと
してはアルミノキサンあるいはアルキルアルミニウムが
例示でき、アルミノキサンとしては、アルキルアルミニ
ウムを水で縮合した形状のものが例示でき、特にメチル
アルミノキサンが有効であり、重合度として、5 以上好
ましくは10以上のものが利用される。
【0009】上記遷移金属触媒成分に対するアルミノキ
サンの使用割合としては10〜1000000 モル倍、通常50〜
5000モル倍である。またアルキルアルミニウムと安定ア
ニオン、あるいはそれを発生する化合物を組み合わせた
ものも利用できる。
【0010】また重合条件については特に制限はなく不
活性媒体を用いる溶媒重合法、或いは実質的に不活性媒
体の存在しない塊状重合法、気相重合法も利用できる。
重合温度としては−100 〜200 ℃、重合圧力としては常
圧〜100 kg/cm2 で行うのが一般的である。好ましくは
−100 〜100 ℃、常圧〜50kg/cm2 である。
【0011】また重合に際し10重量%以下の量でエチレ
ン、あるいは炭素数4以上のα−オレフィン、例えばブ
テン-1、ペンテン-1、ヘキセン-1、ヘプテン-1、4-メチ
ルペンテン-1、を共重合することは可能であり、10重量
%より多いと組成物の物性が不良となり好ましくない。
【0012】本発明において用いられるシンジオタクチ
ックポリプロピレンは、プロピレンの単独重合体にあっ
てはシンジオタクチックペンタッド分率として0.6以
上好ましくは0.7以上であるものであり、0.6より
小さいものでは、結晶性のポリプロピレンとしての特性
が充分でなく物性が不良であり好ましくない。
【0013】また他のα−オレフィンとの共重合体にあ
っては1,2,4−トリクロロベンゼン溶液で測定した
13C-NMR で約20.2ppm に観測されるピーク強度がプロピ
レン単位の全メチル基に帰属されるピーク強度の0.3 以
上、好ましくは0.5 以上であるものであり、0.3 より小
さいと物性が不良であり好ましくない。また分子量とし
ては135 ℃のテトラリン溶液で測定した極限粘度として
0.1 〜20、好ましくは0.5 〜10程度である。
【0014】本発明に用いるエチレンとプロピレンの共
重合体はエチレン含量として10〜95wt%、特に15〜90wt
%であるのが好ましく、この範囲を外れると耐衝撃性の
改良に効果がない。ここでエチレンの一部を炭素数4以
上のα−オレフィンで代替することも可能であるがその
量は多くともエチレンの半量である。また共重合体の分
子量としては135 ℃のテトラリン溶液で測定した極限粘
度として0.1 〜20dl/g、好ましくは0.5 〜15dl/g程度で
ある。0.1 未満では耐衝撃性の改良効果がなく、20より
大きい場合はシンジオタクティックポリプロピレンへの
分散が悪く耐衝撃性が不良となる。
【0015】該共重合体を製造するに好適な触媒として
は、上記触媒の他にアイソタクティックポリプロピレ
ン、アタクティックポリプロピレンを与える触媒等が挙
げられる。これらを用いてエチレンとプロピレンを重合
することで得られる共重合体が利用でき共重合体の構造
は特定されず、触媒系、重合条件については特定されな
い。
【0016】本発明において上記シンジオタクチックポ
リプロピレンとエチレンとプロピレンの共重合体の量比
(重量比)としては30/70〜98/2、より好まし
くは45/55〜95/5程度である。30/70より
小さいと剛性が不良であり、98/2を超えると耐衝撃
性が不良である。
【0017】本発明の成形物を製造するに用いる組成物
は上記2成分を良好な混合が可能な混練機を用いて混合
することで得ることができる。また、はじめにプロピレ
ンを重合しついでエチレンとプロピレンを共重合する、
いわゆるブロック共重合法によって製造することができ
る。
【0018】本発明の組成物を製造するに利用する混練
機としては、押出機、2軸のスクリューを設けた押出
機、バンバリー式混練機などが利用できる。混練の温度
としては150 〜350 ℃、好ましくは180 〜300 ℃であ
る。
【0019】本発明においては上記組成物はついで押出
成形によってシート状あるいは筒状、棒状に成形され
る。成形条件としては、50cm/min〜300cm/min の比較的
遅い押出条件である必要がある。
【0020】本発明において重要なのは押出成形するこ
とであり、理由は不明であるが射出成形、プレス成形な
どの条件で成形すると成形物の表面に共重合体がでてく
るという問題がある。
【0021】
【実施例】以下に実施例を示しさらに本発明を説明す
る。
【0022】実施例1 常法にしたがって合成したイソプロピルシクロペンタジ
エニル-1- フルオレンをリチウム化し、四塩化ジルコニ
ウムと反応し再結晶することで得たイソプロピル(シク
ロペンタジエニル-1- フルオレニル) ジルコニウムジク
ロリド0.2gと東ソー・アクゾ(株)製メチルアルミノキ
サン(重合度16.1)30g を用い、内容積200 リットルの
オートクレーブで、プロピレンを挿入することで重合圧
力3kg/cm2-G に保って20℃で2時間重合し、ついでメ
タノールとアセト酢酸メチルで脱灰処理し塩酸水溶液で
洗浄し、ついで濾過して5.6 kgのシンジオタクチックポ
リプロピレンを得た。
【0023】このポリプロピレンは13C-NMR によればシ
ンジオタクチックペンタッド分率は0.935 であり、135
℃テトラリン溶液で測定した極限粘度(以下ηと略記)
は1.45dl/g、1,2,4−トリクロロベンゼンで測定し
た重量平均分子量と数平均分子量との比(以下、MW/MN
と略記)は2.2 であった。
【0024】このシンジオタクティックポリプロピレン
70重量部に三井石油化学(株)製のエチレン−プロピレ
ン共重合体(エチレン含量73%、タフマ−P0280 )30重
量部を加え、池貝鉄工(株)製の30mmφの押出機(池貝
PCM30)を用い210 ℃(100rpm)で混練してペレットと
した。このペレットを用いて、大阪精機工作(株)製の
40mm押出機に幅200mm のダイを取りつけ、厚さ2 mmのシ
ートを成形した。
【0025】このシートについて以下の物性を測定し
た。 ・曲げ剛性度:kg/cm2 ASTM D747 (23℃) ・引張降伏強さ:kg/cm2 ASTM D638 (23℃) ・伸び:% ASTM D638 (23℃) ・アイゾット(ノッチ付)衝撃強度:kg・cm/cm ASTM D
256 (23℃、−10℃) ・ヘイズ:% ASTM D1003に準拠した。 曲げ剛性度は3000kg/cm2 、引張降伏強さは 165kg/cm
2 、伸びは323 %、アイゾット衝撃強度は61、64(それ
ぞれ23℃、−10℃) kg・cm/cmであり、ヘイズは23%で
あった。また25℃で30日保存後に表面を観測したところ
浮きだしは観測されなかった。
【0026】比較例1 実施例1 のペレットを用い小松製作所(株)製の射出成
形機を用い厚さ2mm の成形物を得、同様に物性を測定し
たところ、曲げ剛性度は2600kg/cm2 、引張降伏強さは
157kg/cm2 、伸びは420 %、アイゾット衝撃強度は6
1、64(それぞれ23℃、−10℃) kg・cm/cmであり、ヘ
イズは25%であった。また25℃で30日保存後に表面を観
測したところ浮きだしが観測され、ヘイズも72%に低下
していた。
【0027】
【発明の効果】本発明の成形物は物性バランスに優れて
おり、しかも表面に浮きだすなどの問題がなく、工業的
に極めて価値がある。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.7 識別記号 FI C08L 23:12 C08L 23:12 23:16 23:16 (56)参考文献 特開 平4−226552(JP,A) 特開 平3−81355(JP,A) 特開 平3−81356(JP,A) 特開 平3−81128(JP,A) 特開 平3−82814(JP,A) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) C08J 5/00 C08L 23/12 C08L 23/16

Claims (1)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 シンジオタクチックペンタッド分率が
    0.6以上のプロピレン単独重合体か、プロピレンと他
    のオレフィンの共重合体であって、1,2,4−トリク
    ロロベンゼン溶液で測定した 13 C−NMRで20.2ppmに
    観測されるピーク強度がプロピレン単位の全メチル基に
    帰属されるピーク強度の0.3以上であり135℃のテ
    トラリン溶液で測定した極限粘度として0.1〜20で
    あるシンジオタクチックポリプロピレンを30〜98重
    量部エチレン(半量までを炭素数4以上のα−オレフ
    ィンで代替してもよい)含量が10〜95wt%のエチ
    レンとプロピレンの共重合体2〜70重量部からなる組
    成物を押出成形してなる耐衝撃性ポリプロピレン成形
    物。
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