JP3032861B2 - 消波カゴを用いた湛水法面の緑化方法 - Google Patents

消波カゴを用いた湛水法面の緑化方法

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JP3032861B2 JP9352403A JP35240397A JP3032861B2 JP 3032861 B2 JP3032861 B2 JP 3032861B2 JP 9352403 A JP9352403 A JP 9352403A JP 35240397 A JP35240397 A JP 35240397A JP 3032861 B2 JP3032861 B2 JP 3032861B2
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、ダム湖や河川の湛
水法面の植生を行う消波カゴを使用した緑化方法に関
し、特に、ダム湖や河川における波や渦による悪影響を
少なくすることができるようにした緑化方法に関するも
のである。
【0002】
【従来の技術】ダム湖を代表とする湖や池、あるいは河
川においては、その周囲に、所謂「湛水法面」(水面近
傍の法面)が必ず存在する。この「湛水法面」は、ダム
湖や河川の水面が季節変化や貯水量によって上下するこ
とにより、完全に乾燥状態となったり、水没してしまう
こともある。つまり、ダム湖等の周囲に存在する湛水法
面は、そのままでは植生植物の十分な生育が望めない環
境となっているのであって、図3に概略的に示すよう
に、裸地のまま非常に荒廃した状態となっている。
【0003】換言すれば、この湛水法面は、喫水面では
水流や波により、またこの湛水面の下側では渦による侵
食を受け易いものとなっており、その土砂がダム湖等に
流下し易くなっているのである。この侵食を早期に防止
するためにも、また近年観光地化してきているダム湖の
景観保護の観点からしても、ダム湖等の湛水法面は、そ
の環境状態に応じた植生を積極的に行わなければならな
いものである。
【0004】一方、例えばダム湖の水面は、四季や豊渇
水期、あるいはダムの放水等によって、メートル単位で
変化するものであり、その結果、「湛水法面」は広い面
積を有したものとなっているのである。つまり、ダム湖
の「湛水法面」は、湖水面が大きく変化することによっ
て、湖面から完全に露出して乾燥地となる場合があるだ
けでなく、完全に水没してしまう部分ともなるのであ
り、植物が生育する箇所としては、非常に過酷な条件の
ものとなっている。
【0005】このような過酷な条件下の湛水法面につい
ては、従来より、例えば「浮島」工法と呼ばれる植生工
法が採用されてきている。この浮島工法は、湖面の上下
に追随して移動する「浮島」に植生を行い、この浮島上
の植生によって景観の保護等を行うようにするものであ
るが、その施工費用が非常に高価となるだけでなく、植
生植物による湛水法面に対する直接的な保護を行うもの
ではないから、法面の十分な安定緑化が行えなかった事
情がある。
【0006】このため、例えば特開平6−322731
号公報により提案されているような緑化工法が開発され
た。この緑化工法は、上記公報の特許請求の範囲の記載
からすると、図6にも示すように、「プラスチックまた
は金属の網籠内に不織布の袋を収納し、その袋の内部に
植生基盤材を充填した緑化ボックスをダム湖、湖、池等
のかん水斜面裸地法面に連続的に設置し、緑化ボックス
内に水陸両用植物を植栽することを特徴とする、ダム
湖、湖、池等のかん水斜面裸地法面を安定・修景緑化工
法」である。
【0007】この特開平6−322731号公報にて提
案されている緑化工法は、 ・ダム湖、湖、池等のかん水面裸地法面という植物の生
活環境としては極めて過酷な条件を緑化ボックスにより
緩衝し、克服するようにすること。 ・ダム湖、湖、池等のかん水、裸出の繰り返しに耐える
植物を植栽し、その根は緑化ボックスより出て背後の法
面に侵入し、地山を長期にわたり安定させること。 ・植物を用い、ダム湖、湖、池等の景観が永久的に周囲
の環境になじむ修景緑化を図ること。 を目的としてなされたものであり、これらの目的を達成
できたものであると考えられるが、「緑化ボックス」を
採用しなければならない以上、次のような改善しなけれ
ばならない点を未だ多く含んでいるものである。
【0008】すなわち、 ダム湖、池、河川等における湛水法面は、波、水流あ
るいは渦によって洗われるものであり、この波等の力を
消すようにしないと、「緑化ボックス」内に入れた基盤
材料の流出を招くだけでなく、植生植物の根の生育を押
さえることにもなる。 勿論、この種の「緑化ボックス」は、施工が簡単なも
のとなっていなければならない。湛水法面は、資材の搬
入が困難な人里離れた山間地等にあることが多く、また
特にダム湖におけるように、岩盤の掘削によって形成し
た急峻な傾斜法面や、コンクリートで固めた法面もある
ことから、植生植物の生育が困難な場所になっているだ
けでなく、工法施工が困難な場所にもなているからであ
る。 特に、ダム湖においては、水が滞留することが多いた
め、水の富栄養化を極力防止しなければならない。水質
汚染によって、ダム湖の景観が損なわれることになるか
らである。
【0009】そこで、本発明者等は、ダム湖や河川にお
ける湛水法面の植生を行う場合に、上記の〜の改善
を行うにはどうしたらよいか、等について種々検討を重
ねてきた結果、本発明を完成したのである。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、以上のよう
な経緯に基づいてなされたもので、その解決しようとす
る課題は、ダム湖や河川の湛水法面の植生・緑化を、効
果的に行うことである。
【0011】すなわち、まず、請求項1に係る発明の目
的とするところは、施工が容易で、ダム湖や河川におい
て押し寄せてくる波、水流あるいは渦から植生基盤材や
植生植物を確実に保護することができて、ダム湖等の湛
水法面の植生を行うのに適した湛水法面の緑化方法を提
供することにある。
【0012】また、請求項2に係る発明の目的とすると
ころは、上記請求項1の目的を達成することができる
他、植生基盤材や植生植物の、消波カゴによる波等から
の保護をより確実に行うことができて、ダム湖等の湛水
法面の植生を行うのに適した湛水法面の緑化方法を提供
することにある。
【0013】さらに、請求項3に係る発明の目的とする
ところは、上記請求項1または請求項2の目的を達成す
ることができる他、発芽生命体(発芽し出芽することの
できる生命体)の植物を選択することにより、湛水法面
に対する植生をより効果的に行うことのできる湛水法面
の緑化方法を提供することにある。
【0014】そして、請求項4に係る発明の目的とする
ところは、上記請求項1〜請求項3の目的を達成するこ
とができる他、表層を構成するための吹付材を選択する
ことにより、湖や河川の富栄養化を防止しながら、湛水
法面に対する植生を効果的に行うことのできる湛水法面
の緑化方法を提供することにある。
【0015】
【課題を解決するための手段】以上の課題を解決するた
めに、まず請求項1に係る発明の採った手段は、後述の
実施形態の説明中で使用する符号を付して説明すると、
「渦や波が押し寄せてくる方向に対して少なくとも湾曲
面11を有しかつ編目状の上部開放型横細長状の籠状物
の消波カゴ10を、ダム湖や河川の湛水法面20に取り
付けた後、この消波カゴ10の中に、湛水法面20に自
生する植物、導入されるべき水生植物の種子、栄養繁殖
用の地上茎、細断した幹枝、挿穂、地下茎等のいずれか
1種以上の発芽生命体12と、客土、砂土の各種土壌、
僣在表土、現地の根系土壌等のいずれか1種以上の培養
土資材13とを投入し、この投入された培養土資材13
の表面に、厚層基材、客土資材等の各種吹付材14aを
吹付けて表層14を形成して消波カゴ10内の土壌が流
失しない状態として、前記ダム湖や河川の湛水法面20
の岸辺を洗う波の力を消波カゴ10の湾曲面11によっ
て消し、当該消波カゴ10によって発芽生命体12と培
養土資材13との保護を行いながら、湛水法面20に対
する発芽生命体12による植生を行うようにしたことを
特徴とする消波カゴ10を用いた湛水法面20の緑化方
法」である。
【0016】すなわち、この緑化方法は、湾曲面11を
有する消波カゴ10を緑化が必要な湛水法面20の所定
箇所に設置し、この消波カゴ10内に植生植物30とな
るべき発芽生命体12と培養土資材13とを投入し、そ
の表面に吹付材14aを吹き付けて表層14を形成して
湛水法面20の植生・緑化を行うようにしたものであ
る。そして、この緑化方法では、発芽生命体12とし
て、湛水法面20に自生する植物、導入されるべき水生
植物の種子、栄養繁殖用の地上茎、細断した幹枝、挿
穂、地下茎等のいずれか1種以上を選択し、培養土資材
13として、客土、砂土の各種土壌、僣在表土、現地の
根系土壌等のいずれか1種以上を選択するようにしたも
のである。
【0017】以上の緑化方法が施工された湛水法面20
では、ダム湖や河川の湛水法面20の岸辺に対して押し
寄せてきてはこの岸辺を洗う波の力を消波カゴ10の湾
曲面11によって消し、当該消波カゴ10及び表面の表
層14によって発芽生命体12と培養土資材13との保
護を行いながら、湛水法面20に対する発芽生命体12
による植生が行われるのである。
【0018】換言すれば、この請求項1の緑化方法によ
れば、次のような作用・効果を発揮することになるもの
である。
【0019】1.消波カゴ10は、押し寄せてきた波や
水流、あるいはこれによって発生した渦が寄せてくる方
向に対して少なくとも湾曲面11を有しているため、図
2の(ロ)に示すように、この湾曲面11によって波等
の方向を積極的に変化させることになり、その結果、波
等が打ち消されてその衝撃が緩和されることになる。
【0020】そのため、この緑化方法によれば、湛水法
面20、及びその表面に設置した各消波カゴ10内が波
等により洗掘されることはなく、耐浸食性に優れた湛水
法面20とするだけでなく、消波カゴ10内の発芽生命
体12によって湛水植物群落を形成して緑化を達成し、
生物の有効生態空間(ビオトーブ)を形成することがで
きる。
【0021】2.湛水法面20に自生する植物や導入植
物の根元が消波カゴ10内に収まっており、図1にも示
すように、その表層14や側面等の表面から、発芽や発
根あるいは再生した植生植物30の葉枝が突出している
ため、消波カゴ10全体の水没あるいは乾燥等の被害が
あっても、植生植物30が死滅したり、波によって組織
が傷め付けられることがない。
【0022】3.消波カゴ10は、自生する植物や導入
されるべき水生植物を突出した状態で植生させることが
できるため、波が押し寄せて来ても衝撃に対してクッシ
ョン的な効果を発揮し、消波カゴ10及びその内部を保
護する役割を果たす。
【0023】4.そのため、消波カゴ10の耐久性が向
上し、耐食性に優れた湛水法面20及び湛水緑化植生群
を形成することができる。それ故、本工法は湛水法面2
0の景観の向上及びビオトーブの形成や回復に役立てる
ことができる。
【0024】5.従来の方法では、消波カゴ10に配置
(投入)した客土が流失するなどの問題を生じていた
が、本発明では、発芽生命体12及び培養土資材13を
投入した後の表面に厚層基材等の吹付材14aを吹付け
て表層14を形成したので、この表層14によって消波
カゴ10内の土壌等を流失しない状態としている。
【0025】従って、客土、砂土等の各種土壌、培養土
資材13等の現地の根系土壌の上は、この表層14によ
って保護され、消波カゴ10内の上面平坦部においても
植物配置と植物の群生(植生)が可能となるのである。
【0026】また、請求項2に係る緑化方法の採った手
段は、上記請求項1の緑化方法について、「消波カゴ1
0は、その湾曲面11を当該消波カゴ10の少なくとも
前面の垂直方向に形成したものであって、湾曲面11が
渦や波が押し寄せてくる方向に対して波形状の凹凸変形
部11aを有したものであり、かつ湛水法面20の渦や
波が押し寄せてくる方向に対して略直交する位置に配置
すること」である。
【0027】すなわち、この請求項2に係る緑化方法で
は、これに使用する消波カゴ10の少なくとも前面の垂
直方向に湾曲面11を形成し、この湾曲面11に、図3
に示すように、さらに凹凸変形部11aを形成して、こ
の凹凸変形部11aを有する湾曲面11を渦や波が押し
寄せてくる方向に向けるようにしたものである。
【0028】従って、この請求項2の緑化方法によれ
ば、次のような作用・効果を発揮するのである。
【0029】6.消波カゴ10は、渦や波が押し寄せて
くる方向に対して湾曲面11を向けるとともに、この湾
曲面11に波形(ウェーブ)状の凹凸部11aを形成し
たため、これらの湾曲面11及び凹凸変形部11aによ
って、当該消波カゴ10が河川の岸辺やダム湖の底流水
域等の様に流速が早く護岸施設を必要とする場所等にお
いて、押し寄せてくる渦や波や、これによって発生する
渦に対して十分に抵抗できかつその力を消すことができ
る。このため、この請求項2の緑化方法は、河川の岸辺
やダム湖の湛水法面20の緑化を行うとともに、河川や
ダム湖の岸辺において耐久性の優れた護岸を形成するこ
とができ、植生基盤材等の培養土資材13や植生植物3
0の、消波カゴ10による波等からの保護をより確実に
行うことができ、ダム湖等の湛水法面20の植生が、よ
り一層繁茂するようにしたものとすることができる。
【0030】7.この緑化方法においては、発芽生命体
12となる植物として、水中において自生する植物を積
極的に導入して耐冠水植物としたとから、これによって
植生された植生植物30を長期間生存させることがで
き、湛水法面20において湛水植物群落の植生を長期間
維持することができる。
【0031】さらに、請求項3に係る緑化方法の採った
手段は、上記請求項1または請求項2の緑化方法につい
て、「発芽生命体12植物が、湛水法面20に自生する
ヤナギ類、水アカネともいわれるメリケンムグラ、ある
いはこれらと共生できるウシノシッペイ、スギナ、セ
リ、ドクダミ、その他の耐冠水植物であること」とした
ことである。
【0032】すなわち、この請求項3の発明に係る緑化
方法では、その発芽生命体12植物として、湛水法面2
0に自生するヤナギ類、水アカネともいわれるメリケン
ムグラ、あるいはこれらと共生することができるウシノ
シッペイ、スギナ、セリ、ドクダミ、その他の耐冠水植
物を採用したものである。
【0033】従って、この請求項3の緑化方法は、上記
請求項1または請求項2の目的を達成することができる
ものとなっている他、発芽生命体12植物を選択したこ
とにより、湛水法面20に対する植生をより効果的に行
うことができるのであり、次のような優れた作用・効果
を発揮するのである。
【0034】8.河川の岸辺やダム湖の湛水法面20の
緑化を自然環境に合わせて行うことができるのであり、
しかも湛水の水質浄化を植生植物30の根茎等の働きに
よって行うことができるため、鳥や魚等の永続的な生息
地としてのビオトーブの形成や景観の向上に有利であ
る。
【0035】さらに、請求項4に係る緑化方法の採った
手段は、上記請求項1〜請求項3のいずれかの緑化方法
について、「厚層基材、客土資材等の各種吹付材14a
は、ロックウール、ピートモスを主材とする生育基盤材
と、ゼオライト、バーミキュライト、カーボン粒子、石
灰粒子、鹿沼土粒子を主材とする水質浄化補強材と、浸
食防止剤、緩効性肥料、湛水法面20等に自生する植物
の種子、栄養繁殖用の地上茎、地下茎等の植物細断片の
発芽生命体12を有すること」としたことである。
【0036】すなわち、この請求項4の緑化方法では、
消波カゴ10内の表層14を形成するための吹付材14
aを上記のようなものとしたものであり、これにより、
湖や河川の富栄養化を防止しながら、湛水法面に対する
植生を効果的に行うことができるものとしたものであ
る。換言すれば、この緑化方法は、次のような作用・効
果を有したものである。
【0037】9.厚層基材、客土資材等の各種吹付材1
4aが、生育基材と水質浄化補強材と、浸食防止剤、緩
効性肥料、湛水法面20等に自生する植物の種子、栄養
繁殖用の地上茎、地下茎等の植物細断片の発芽生命体1
2を有するものであるから、河川の岸辺やダム湖の湛水
の水質浄化を、緑化に使用された植物の根茎等の働きに
よって行うことができる。そのため、水質浄化のための
化学装置等の人工的施設を必要とせず経済的に有利であ
る。
【0038】
【発明の実施の形態】次に、上記のように構成した各発
明を、図面に示した実施の形態に従って説明すると、以
下の通りである。
【0039】図1には、複数の消波カゴ10を湛水法面
20上に設置した状態が示してあるが、これらの消波カ
ゴ10は、網製材料によって上方を開放した略箱型籠状
に形成したものであり、その少なくとも前面を湾曲面1
1としたものである。これらの消波カゴ10は、アンカ
ーピン16によって湛水法面20に直接固定するか、あ
るいは湛水法面20上に展開される図3中に示した連結
ロープまたはラス網15によって支持することにより、
湛水法面20に対して設置されるものである。この図1
に示した施工例では、その各消波カゴ10内に表層14
を形成するに際して、その材料である吹付材14aを、
消波カゴ10を設置していない他の湛水法面20上にも
吹き付けて、各消波カゴ10内の表層14と連続する多
孔質緩衝層17を湛水法面20上に形成したものであ
る。
【0040】なお、以上の多孔質緩衝層17は、湛水法
面20上の消波カゴ10が設置されていない部分の、波
等に対する保護を行うもので、植物の茎や枝を細断して
形成した多孔性の植物細断物、生分解性のブラスチック
ス(例えばデンプン等の材料によりなる分解し易いプラ
スチック)製のストロー状中空状物等の分解性多孔質体
を、上記吹付材14a中に混在させて形成したものであ
り、この多孔質緩衝層17を多数の微細な孔や凹凸部分
を有したものである。これによって、当該多孔質緩衝層
17の湛水法面20に対する密着を良好にし、湛水法面
20に保護を確実にするとともに、多孔質緩衝層17内
の分解性多孔質体が腐食して分解されたとしても、自然
環境に悪影響を及ぼすことを少なくすることができるの
である。
【0041】図1中で使用されている各消波カゴ10
は、図2の(イ)に示したように、例えば金属網体によ
って形成されるもので、その少なくとも前面に湾曲面1
1を有した編目状の上部開放型横細長状の籠状物であ
る。この消波カゴ10は、その湾曲面11が、図2の
(ロ)に示したように、渦や波が押し寄せてくる方向に
対して向かうように設置されるものであるが、この消波
カゴ10の湾曲面11には、図3に示したように、さら
に凹凸変形部11aが形成されることもあるものであ
る。この湾曲面11に形成される凹凸変形部11aは、
渦や波が押し寄せてくる方向に向かう波形状のものであ
り、湛水法面20の渦や波が押し寄せてくる方向に対し
て略直交する位置に配置されるものである。
【0042】この消波カゴ10は、湛水法面20の表面
に水平方向に連続した列として配置されるとともに、こ
の列を、図1に示したように、上下に並べて配置するも
のであって、湛水法面20の表面に多数設置されること
になるものである。多数の消波カゴ10の列を上下にも
配置するのは、湖や河川の水面は季節変動等によって上
下するものであり、この水面の移動範囲に位置する斜面
が湛水法面20であって、この荒廃しがちな湛水法面2
0が上下にわたって広範囲になっているからである。従
って、各消波カゴ10は、この湛水法面20の全体をカ
バーするように設置されるものであり、また各消波カゴ
10の上下の間隔は植生植物の繁茂状態を考慮して設定
されるものである。
【0043】ところで、湛水法面20の傾斜状況は、様
々であるから、当該消波カゴ10の湾曲面11を、次の
ようにするとよい。つまり、前面となる湾曲面11の側
端縁を各側面から切り離し、その下端部を中心にした側
面に対する折曲を自由に行えるようにしておいて、施工
時において、湛水法面20との傾斜角度に応じた角度に
設定した後、当該湾曲面11の側端縁に各側面を連結・
固定するようにしておくのである。これにより、一つの
消波カゴ10を、色々な傾斜を有する湛水法面20の全
てに適用できるのである。
【0044】以上のような各消波カゴ10内に対して
は、これを湛水法面20上に設置する前に、前述した発
芽生命体12及び培養土資材13を投入しておき、その
上面に吹き付けによって吹付材14aによって表層14
を予め形成しておくとよいのであるが、この表層14の
形成は、各消波カゴ10の湛水法面20に対する設置後
であってもよいことは、前述した通りである。
【0045】消波カゴ10内に投入されるべき発芽生命
体12の母種となる植物としては、湛水法面20に自生
するヤナギ類、水アカネともいわれるメリケンムグラ、
あるいはこれらと共生することができるウシノシッペ
イ、スギナ、セリ、ドクダミ、その他の耐冠水植物であ
る。そして、発芽生命体12の形態としては、湛水法面
20に自生する植物、導入されるべき水生植物等上記母
種植物の種子、栄養繁殖用の地上茎、細断した幹枝、挿
穂、地下茎等のいずれか1種以上が採用される。この発
芽生命体12の形態は、母種植物の種類や湛水法面20
の状況に応じて選択されるものであり、例えば水アカネ
ともいわれるメリケンムグラを例に採ってみると、その
種子及び地上茎が採用されることになる。
【0046】また、消波カゴ10内に投入されるべき発
芽生命体12としては、客土、砂土の各種土壌、僣在表
土、現地の根系土壌等のいずれか1種以上が採用される
が、現地の根系土壌が現地の生態系を阻害しないこと、
現地調達ができること、栄養分が流されてしまっていて
富栄養化の原因になりにくいこと等の点から、非常に有
利である。
【0047】そして、表層14を形成するための厚層基
材、客土資材等の各種吹付材14aは、ロックウール、
ピートモスを主材とする生育基盤材と、ゼオライト、バ
ーミキュライト、カーボン粒子、石灰粒子、鹿沼土粒子
を主材とする水質浄化補強材と、浸食防止剤、緩効性肥
料が採用されるのであり、これらの中に、湛水法面20
等に自生する植物の種子、栄養繁殖用の地上茎、地下茎
等の植物細断片の発芽生命体12を混入したものが採用
される。これらの材料は、表層14を渦や波に洗堀され
にくい強いものとするものであり、かつ湖や河川の富栄
養化を防止するものでもある。
【0048】図4には、本発明に係る他の緑化方法を施
工した湛水法面20の断面が示してあるが、この施工例
では、湛水法面20の表面にラス網15を敷設しておい
てこれをアンカーピン16で固定し、その上に消波カゴ
10を配置したものである。
【0049】そして、発芽生命体12や培養土資材13
を投入した各消波カゴ10の表面、及び消波カゴ10が
設置されていないラス網15の表面に、上記図1の施工
例における材料を使用した多孔質緩衝層17を形成した
ものである。
【0050】また、図5には、本発明に係る更に他の緑
化方法を施工した湛水法面20の断面が示してあるが、
この施工例では、湛水法面20の表面にラス網15を敷
設しておいてこれをアンカーピン16で固定し、その上
に消波カゴ10を配置したものである。
【0051】そして、発芽生命体12や培養土資材13
を投入した各消波カゴ10の表面、及び消波カゴ10が
設置されていないラス網15の表面に、各消波カゴ10
内の表層14を形成するための吹付材14aを吹き付け
て、ラス網15の消波カゴ10が設置されていない表面
にも、消波カゴ10内と同じ表層14を形成したもので
ある。
【0052】
【発明の効果】以上詳述した通り、請求項1の発明にお
いては、上記の実施形態にても例示した如く、「渦や波
が押し寄せてくる方向に対して少なくとも湾曲面11を
有しかつ編目状の上部開放型横細長状の籠状物の消波カ
ゴ10を、ダム湖や河川の湛水法面20に取り付けた
後、この消波カゴ10の中に、湛水法面20に自生する
植物、導入されるべき水生植物の種子、栄養繁殖用の地
上茎、細断した幹枝、挿穂、地下茎等のいずれか1種以
上の発芽生命体12と、客土、砂土の各種土壌、僣在表
土現地の根系土壌等のいずれか1種以上の培養土資材1
3とを投入し、この投入された培養土資材13の表面
に、厚層基材、客土資材等の各種吹付材14aを吹付け
て表層14を形成して消波カゴ10内の土壌が流失しな
い状態として、前記ダム湖や河川の湛水法面20の岸辺
を洗う波の力を消波カゴ10の湾曲面11によって消
し、当該消波カゴ10によって発芽生命体12と培養土
資材13との保護を行いながら、湛水法面20に対する
発芽生命体12による植生を行うようにしたこと」にそ
の構成上の特徴があり、これにより、施工が容易で、ダ
ム湖や河川において押し寄せてくる波、水流あるいは渦
から植生基盤材や植生植物を確実に保護することができ
て、ダム湖等の湛水法面の植生を行うのに適した湛水法
面の緑化方法を提供することができる。
【0053】また、請求項2に係る発明の緑化方法によ
れば、上記請求項1の緑化方法について、「消波カゴ1
0は、その湾曲面11を当該消波カゴ10の少なくとも
前面の垂直方向に形成したものであって、湾曲面11が
渦や波が押し寄せてくる方向に対して波形状の凹凸変形
部11aを有したものであり、かつ湛水法面20の渦や
波が押し寄せてくる方向に対して略直交する位置に配
置」としたことにその特徴があり、これにより、上記請
求項1の発明と同様な効果を発揮することができる他、
植生基盤材や植生植物の、消波カゴによる波等からの保
護をより確実に行うことができて、ダム湖等の湛水法面
の植生を行うのに適した湛水法面の緑化方法を提供する
ことができるのである。
【0054】さらに、請求項3に係る発明によれば、上
記請求項1または請求項2の緑化方法について、「発芽
生命体12植物が、湛水法面20に自生するヤナギ類、
水アカネともいわれるメリケンムグラ、あるいはこれら
と共生することができるウシノシッペイスギナ、セリ、
ドクダミ、その他の耐冠水植物であること」としたこと
にその特徴があり、これにより、上記請求項1または請
求項2の発明と同様な効果を発揮することができる他、
発芽生命体の植物を選択することにより、湛水法面に対
する植生をより効果的に行うことのできる湛水法面の緑
化方法を提供することができる。
【0055】そして、請求項4に係る発明のによれば、
上記請求項1〜請求項3の緑化方法について、「厚層基
材、客土資材等の各種吹付材14aは、ロックウール、
ピートモスを主材とする生育基盤材と、ゼオライト、バ
ーミキュライト、カーボン粒子、石灰粒子、鹿沼土粒子
を主材とする水質浄化補強材と、浸食防止剤、緩効性肥
料、湛水法面20等に自生する植物の種子、栄養繁殖用
の地上茎、地下茎等の植物細断片の発芽生命体12を有
すること」としたことにその特徴があり、これにより、
上記請求項1〜請求項3の発明と同様な効果を発揮する
ことができる他、表層を構成するための吹付材を選択す
ることにより、湖や河川の富栄養化を防止しながら、湛
水法面に対する植生を効果的に行うことのできる湛水法
面の緑化方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る湛水法面の緑化工法を実施した湛
水法面を示す部分断面図である。
【図2】本発明に係る緑化方法を実施するにあたって使
用される消波カゴを示すもので、(イ)はその斜視図、
(ロ)はその湾曲面による消波状況を模式的に示した断
面図である。
【図3】本発明に係る湛水法面の緑化工法を実施してい
る状態を示す湛水法面の部分拡大断面図である。
【図4】本発明に係る湛水法面の他の緑化工法を実施し
た湛水法面を示す部分断面図である。
【図5】本発明に係る湛水法面の、更に他の緑化工法を
実施した湛水法面を示す部分断面図である。
【図6】従来の緑化ボックスを示す断面図である。
【符号の説明】
10 消波カゴ 11 湾曲面 11a 凹凸変形部 12 発芽生命体 13 培養土資材 14 表層 14a 吹付材 15 ラス網 16 アンカーピン 17 多孔質緩衝層 20 湛水法面 30 植生植物
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 牧野 暖 福岡県北九州市八幡西区浅川台2丁目17 −14 (72)発明者 山本 富晴 茨城県つくば市妻木1232−3 (72)発明者 山本 慶市 岐阜県大垣市宿地町1045番地の6 (56)参考文献 特開 平8−333735(JP,A) 特開 平6−53406(JP,A) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) E02B 3/08 301 A01G 1/00 301 E02B 3/12

Claims (4)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 渦や波が押し寄せてくる方向に対して少
    なくとも湾曲面を有しかつ編目状の上部開放型横細長状
    の籠状物の消波カゴを、ダム湖や河川の湛水法面に取り
    付けた後、 この消波カゴの中に、湛水法面に自生する植物、導入さ
    れるべき水生植物の種子、栄養繁殖用の地上茎、細断し
    た幹枝、挿穂、地下茎等のいずれか1種以上の発芽生命
    体と、客土、砂土の各種土壌、僣在表土、現地の根系土
    壌等のいずれか1種以上の培養土資材とを投入し、 この投入された培養土資材の表面に、厚層基材、客土資
    材等の各種吹付材を吹付けて表層を形成して前記消波カ
    ゴ内の土壌が流失しない状態として、 前記ダム湖や河川の湛水法面の岸辺を洗う波の力を前記
    消波カゴの湾曲面によって消し、当該消波カゴによって
    前記発芽生命体と培養土資材との保護を行いながら、前
    記湛水法面に対する前記発芽生命体による植生を行うよ
    うにしたことを特徴とする消波カゴを用いた湛水法面の
    緑化方法。
  2. 【請求項2】 前記消波カゴは、その前記湾曲面を当該
    消波カゴの少なくとも前面の垂直方向に形成したもので
    あって、前記湾曲面が渦や波が押し寄せてくる方向に対
    して波形状の凹凸変形部を有したものであり、かつ前記
    湛水法面の渦や波が押し寄せてくる方向に対して略直交
    する位置に配置することを特徴とする請求項1に記載の
    消波カゴを用いた湛水法面の緑化方法。
  3. 【請求項3】 前記発芽生命体の植物が、前記湛水法面
    に自生するヤナギ類、水アカネともいわれるメリケンム
    グラ、あるいはこれらと共生することができるウシノシ
    ッペイ、スギナ、セリ、ドクダミ、その他の耐冠水植物
    であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載
    の消波カゴを用いた湛水法面の緑化方法。
  4. 【請求項4】 前記厚層基材、客土資材等の各種吹付材
    は、ロックウール、ピートモスを主材とする生育基盤材
    と、ゼオライト、バーミキュライト、カーボン粒子、石
    灰粒子、鹿沼土粒子を主材とする水質浄化補強材と、浸
    食防止剤、緩効性肥料、前記湛水法面等に自生する植物
    の種子、栄養繁殖用の地上茎、地下茎等の植物細断片の
    発芽生命体を有することを特徴とする請求項1〜請求項
    3のいずれかに記載の消波カゴを用いた湛水法面の緑化
    方法。
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