JP2933826B2 - 深絞り成形性と耐二次加工脆性に優れるクロム鋼板およびその製造方法 - Google Patents
深絞り成形性と耐二次加工脆性に優れるクロム鋼板およびその製造方法Info
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Description
とともに耐二次加工脆性にも優れるクロム鋼板(以下、
鋼帯も含む)およびその製造方法に関するものである。
ライト系ステンレス鋼板は、通常、連続鋳造鋳片を加熱
した後、熱間圧延一熱延板焼鈍一冷間圧延一仕上げ焼鈍
の各工程を経て製造される。このようにして製造された
フェライト系ステンレス鋼は、一般に、耐応力腐食割れ
性に優れるとともに安価であることから各種厨房器具、
自動車部品などの分野で幅広く使用されている。しかし
ながら、特に、自動車燃料フィルターケースなどの用途
においては、過酷な深絞り加工を行うため、しばしば二
次加工脆性による割れが発生するという問題が生じてい
た。
深絞り成形性あるいは耐二次加工脆性を改善するため
に、これまでにも数多くの試みがされている。例えば、
特公昭54-11770号公報には、Ti添加により高い冷間加工
性を目指したフェライト系ステンレス鋼板の製造技術
が、また特公昭57-55787号公報には、B添加により高い
ランクフォード値(以下、単に「r値」と略記する)を
目指したフェライト系ステンレス鋼板の製造技術がそれ
ぞれ提案されている。さらに、特公平2-7391号公報に
は、TiとBの添加により深絞り後の張り出し成形時に脆
性割れを生じにくいフェライト系ステンレス鋼板の製造
技術が提案されている。
に述べるような問題点があった。すなわち、特公昭54-1
1770号公報に開示の技術では、過酷な深絞り加工後の二
次加工時に脆性割れが散見されることがあった。また、
特公昭57-55787号公報に開示の技術では、深絞り性が十
分でないために過酷な深絞り加工には適さなかった。さ
らに、特公平2-7391号公報に開示の技術では、TiとBを
添加しているものの、深絞り性か二次加工脆性のいずれ
かの特性が劣り、両特性を同時に満足するものではなか
った。その上、上記の各技術では、r値の面内異方性
(以下、単に「Δr」と略記する)が、十分には改善さ
れていないという問題があった。
技術はいずれも、深絞り成形性あるいは二次加工脆性の
いずれか一方の特性を向上させるが、これら両特性を同
時に満足させるものではないという共通した問題点を抱
えていた。このため、過酷な深絞り加工を行った場合、
その後の二次加工脆性割れが危惧されていた。
形性と耐二次加工脆性とが共に優れるクロム鋼板および
その製造技術を提供することにある。この発明の他の目
的は、r値が1.5 以上、Δrが0.3 以下で、しかも脆性
割れの発生温度が-50 ℃以下を満たすクロム鋼板および
その製造技術を提供することにある。
に向けて鋭意研究した結果、発明者らは、クロム鋼板の
化学組成を適切な範囲に制御すること、またさらに、熱
間圧延鋼板に冷間圧延を施す際の冷間圧延条件を適切に
制御すれば、深絞り成形性と二次加工脆性とを同時に改
善することが可能であることを見いだし、本発明を完成
するに至った。
の構成を要旨とするものである。 (1) C:0.03wt%以下、 Si:1.0 wt%以下、 Mn:1.0 wt%以下、 P:0.05wt%以下、 S:0.015 wt%以下、 Al:0.10wt%以下、 N:0.02wt%以下、 Cr:5〜60wt%、 Ti:4(C+N)〜0.5 wt%、 Nb:0.003 〜0.020 wt%、 B:0.0002〜0.005 wt%を含有し、残部がFeおよび不可
避的不純物からなり、Δrが0.3 以下であることを特徴
とする、深絞り成形性と耐二次加工脆性に優れるクロム
鋼板。
下であることを特徴とする、深絞り成形性と耐二次加工
脆性に優れるクロム鋼板。
下であることを特徴とする、深絞り成形性と耐二次加工
脆性に優れるクロム鋼板。
し、 残部がFeおよび不可避的不純物からなり、Δrが0.3 以
下であることを特徴とする、深絞り成形性と耐二次加工
脆性に優れるクロム鋼板。
クロム鋼板を製造するにあたり、それぞれに記載の化学
組成を有する熱間圧延鋼板に、ロール径150mm 以上のワ
ークロールによる圧下率が30%以上である冷間圧延を施
すことを特徴とするクロム鋼板の製造方法。
および製造条件を上記要旨構成のとおりに限定した理由
について説明する。
特性を低下させる元素である。とくに、0.03wt%を超え
るとその影響が顕著になるので0.03wt%以下とする必要
がある。好ましくは0.01wt%以下の範囲がよい。
効な元素であるが、過剰の添加は冷間加工性の低下を招
くので、その添加範囲は1.0 wt%以下、好ましくは0.5
wt%以下とする。
Sを析出固定し、熱間圧延性を保つために有効な元素で
あるが、過剰の添加は冷間加工性の低下を招くので、そ
の添加範囲は1.0 wt%以下、好ましくは0.5 wt%以下と
する。
害な元素である。とくに、0.05wt%を超えるとその影響
が顕著になるので0.05wt%以下、好ましくは0.04wt%以
下とする。
析し、粒界脆化を促進する有害な元素である。とくに、
0.015 wt%を超えるとその影響が顕著になるので0.015
wt%以下、好ましくは0.008 wt%以下とする。
効な元素であるが、過剰な添加はAl系介在物の増加によ
り、表面疵を招く原因となるので0.10wt%以下、好まし
くは0.07wt%以下の範囲で添加する。
絞り成形性に有害な元素である。とくに、0.02wt%を超
えるとその影響が顕著になるので0.02wt%以下とする必
要がある。好ましくは0.01wt%以下の範囲がよい。
ての耐食性を確保するためには不可欠な元素である。そ
の量が10wt%未満では耐食性が不足し、一方60wt%を超
えての添加は冷間加工性の低下を招くので、その添加範
囲は5〜60wt%、好ましくは10〜45wt%とする。
有害なC,Nを析出固定し、高い深絞り性を確保するた
めに有用な元素である。その効果は、4(C+N)wt%未満で
は得られず、一方0.5wt %を超えて添加してもこれらの
効果が飽和するのみでなく、製造性が低下する。したが
って、Tiの添加量は、4(C+N)〜0.5 wt%、好ましくは4
(C+N)〜0.3 wt%とする。
おいて、Ti, Bなどとの複合添加により深絞り成形性と
耐二次加工脆性とを同時に改善する特に重要な元素であ
る。その効果は、0.003 wt%未満では得られず、一方、
0.020 wt%を超えて添加しても効果が飽和し、却って製
造コストの上昇を招くことになるので、Nbの添加量は、
0.003 〜0.020 wt%、好ましくは0.004 〜0.018 wt%と
する。
に及ぼすNbの効果を、図により詳細に説明する。図1
は、(0.007〜0.009)wt%C−(0.3〜0.4)wt%Si−(0.3〜
0.4)wt%Mn−(0.02 〜0.03 )wt%P−(0.005〜0.007)wt
%S−(0.02 〜0.03 )wt%Al−(0.0070 〜0.0090 )wt%
N−( 16〜18) wt%Cr−(0.15 〜0.17) wt%Ti−(0.000
8 〜0.0010) wt%Bを含有する冷延鋼板(ロール径150m
m 以上のワークロールによる冷間圧下率が82.5%)のΔ
rに及ぼすNbの影響を示したものである。図1から、Δ
rは0.003 wt%以上のNb添加により著しく改善され、し
たがって、深絞り成形後の耳形状が大きく改善されるこ
とがわかる。
(0.3〜0.4)wt%Si−(0.3〜0.4)wt%Mn−(0.02 〜0.03 )
wt%P−(0.005〜0.007)wt%S−(0.02 〜0.03 )wt%Al
−(0.0070 〜0.0090 )wt%N−( 16〜18) wt%Cr−(0.1
5 〜0.17) wt%Ti−(0.001〜0.018)wt%Nb−(0.0008 〜
0.0010) wt%Bを含有する冷延鋼板(ロール径150mm 以
上のワークロールによる冷間圧下率が82.5%)の加工後
の二次加工脆化割れとr値との関係に及ぼすNb量の影響
を示す。図2から、Nbを0.003 wt%以上含有する鋼板
は、深絞り成形時の成形限界指標となるr値が高く、脆
化割れ発生温度が低いことがわかる。以上説明したよう
に、0.003 wt%以上のNbを含有させることにより、深絞
り成形性と耐二次加工脆性の両者が高い水準でバランス
しうることが示される。なお、上記実験におけるr値の
算出方法、脆化割れ試験方法は、後述する方法と同じと
した。
形後の耐二次加工脆性を改善するために有効な元素であ
る。その効果は、0.0002wt%未満では得られないが、過
剰の添加は深絞り成形性を劣化させるので、その添加量
は0.0002〜0.005 wt%、好ましくは0.0003〜0.003 wt%
とする。
りを抑制する効果を有するげんそであり、Tiに応じて選
択的に添加される。しかしながら、過剰に添加するとCa
系介在物が脆性破壊の起点なりうるので、Caの添加範囲
は0.0005〜0.01wt%、好ましくは0.0005〜0.006 wt%と
する。
向上させる元素であり、選択的に添加される。その効果
は0.1 wt%以上の添加で得られるが、5.0wt %を超えて
の添加は深絞り成形性の低下を招くので、Moの添加量は
0.1〜5.0wt %、好ましくは 0.3〜3.0wt %とする。
からなる鋼を転炉、電気炉等の通常の製鋼炉で溶製し、
連続鋳造法または造塊法で鋼片とした後、熱間圧延−
(熱延板焼鈍)−酸洗−冷間圧延−冷延板焼鈍−酸洗、
必要に応じて、さらに冷間圧延−焼鈍−酸洗を繰り返し
行う方法によればよい。しかし、上記冷間圧延工程にお
いて、冷間圧延条件を下記に述べる範囲に制御すれば、
より一層有利に目標を達成することができる。
m 以上、冷間圧延の圧下率:30%以上;ステンレス冷延
鋼板は、一般に、ロール径100mm 以下のワークロールに
て圧延されるが、本発明では、ロール径を150mm 以上と
する。ロール径を大径化することによって、ロールと鋼
板表面との摩擦による圧延方向の剪断応力が軽減される
とともに、板面内における応力の差が小さくなる。その
結果、耐二次加工脆性を劣化させることなく、r値およ
びΔrを一層改善できる。ロール径が150mm 未満の場
合、あるいはロール径が150mm 以上であってもこのロー
ルによる圧下率が30%未満の場合には、その効果が不十
分である。ただし、ロール径が1000mmを超えるとロール
を駆動するに必要な動力が過大となるので経済的に不利
となり、また、このロールによる圧下率が95%を超える
とロールと鋼板との固着により、鋼板の表面性状が劣化
する傾向になる。したがって、冷間圧延ワークロールの
ロール径は150mm 以上、好ましくは250〜1000mm、冷間
圧延の圧下率は30%以上、好ましくは40〜95%とする。
し、鋼片とした後、1250℃に加熱後、熱間圧延により板
厚4.0mm の熱延板とした。この熱延板を、熱延板焼鈍
(800 〜950 ℃)一酸洗一冷延一冷延板焼鈍(800 〜95
0 ℃)一酸洗により板厚0.7 mmの冷延鋼板とした。
て、深絞り成形性(r値、Δr)および耐二次加工脆性
を下記の方法により測定した。 ・r値、Δr 鋼板の圧延方向、圧延方向に対して45°の方向、圧延方
向に対して90°の各方向からJIS5号試験片を採取
し、この試験片に5〜15%の単軸引張予歪を与えた時の
横ひずみおよび板厚ひずみの比から各方向のランクフォ
ード値を測定し、次式によって求めた。 r=(rL +2rD +rT )/4 Δr=(rL −2rD + rT )/2 ただし、rL 、rD およびrT は、それぞれ圧延方向、
圧延方向に対して45°の方向、圧延方向に対して90°の
方向のランクフォード値を表す。 ・耐二次加工脆性 絞り比2で深絞り加工したカップ状試験片を-100〜20℃
の特定温度に保持した後、落重試験( 重錘5kg、落差0.
8 m) によりカップ頭部に衝撃荷重を負荷し、カップ側
壁部における脆性割れの有無から、割れ発生温度を求め
た。いずれの鋼についても、温度は5℃間隔で2個づつ
行い、その内1個でも脆性割れが発生すれば、その時の
最も高い温度を割れ発生温度とした。これらの試験結果
を、表3に示す。
上、Δrが0.3 以下、また耐二次加工脆性を示す割れ発
生温度が-50 ℃以下の特性を示し、いずれも比較例に比
べて優れた深絞り成形性および耐二次加工脆性を有して
いることがわかる。
にて溶製し、鋼片とした後、1250℃に加熱後、熱間圧延
により板厚4.0mm の熱延板とした。この熱延板を、熱延
板焼鈍(800 〜950 ℃)一酸洗一冷延一冷延板焼鈍(80
0 〜950 ℃)一酸洗により板厚0.7 mmの冷延鋼板とし
た。ここで、板厚4.0mm →0.7 mm(総圧下率82.5%)の
冷延工程を冷延工程I(板厚4.0mm →X mm) 及び冷延工
程II(板厚X mm →0.7 mm) に分け、この工程を種々の
ロール径、圧下率条件で圧延を行った。得られた鋼板か
ら試験片を採取し、実施例1と同様な試験を行い、特性
を評価した。その結果を、圧延条件とともに表4に示
す。
ずれも、一層優れた深絞り成形性および耐二次加工脆性
を有することがわかる。
絞り成形性と耐二次加工脆性とが共に優れるクロム鋼板
の製造が可能となる。また、本発明法によれば、r値が
1.5以上、Δrが 0.3以下で、しかも脆性割れの発生温
度が−50℃以下を満たすクロム鋼板の製造が可能とな
る。
る。
る。
Claims (4)
- 【請求項1】 C:0.03wt%以下、 Si:1.0 wt%以下、 Mn:1.0 wt%以下、 P:0.05wt%以下、 S:0.015 wt%以下、 Al:0.10wt%以下、 N:0.02wt%以下、 Cr:5〜60wt%、 Ti:4(C+N)〜0.5 wt%、 Nb:0.003 〜0.020 wt%、 B:0.0002〜0.005 wt%を含有し、残部がFeおよび不可
避的不純物からなり、Δrが0.3 以下であることを特徴
とする、深絞り成形性と耐二次加工脆性に優れるクロム
鋼板。 - 【請求項2】 C:0.03wt%以下、 Si:1.0 wt%以下、 Mn:1.0 wt%以下、 P:0.05wt%以下、 S:0.015 wt%以下、 Al:0.10wt%以下、 N:0.02wt%以下、 Cr:5〜60wt%、 Ti:4(C+N)〜0.5 wt%、 Nb:0.003 〜0.020 wt%、 B:0.0002〜0.005 wt%を含み、かつ Ca:0.0005〜0.01wt%を含有し、 残部がFeおよび不可避的不純物からなり、Δrが0.3 以
下であることを特徴とする、深絞り成形性と耐二次加工
脆性に優れるクロム鋼板。 - 【請求項3】 C:0.03wt%以下、 Si:1.0 wt%以下、 Mn:1.0 wt%以下、 P:0.05wt%以下、 S:0.015 wt%以下、 Al:0.10wt%以下、 N:0.02wt%以下、 Cr:5〜60wt%、 Ti:4(C+N)〜0.5 wt%、 Nb:0.003 〜0.020 wt%、 B:0.0002〜0.005 wt%を含み、かつ Mo:0.1 〜5.0 wt%を含有し、 残部がFeおよび不可避的不純物からなり、Δrが0.3 以
下であることを特徴とする、深絞り成形性と耐二次加工
脆性に優れるクロム鋼板。 - 【請求項4】 C:0.03wt%以下、 Si:1.0 wt%以下、 Mn:1.0 wt%以下、 P:0.05wt%以下、 S:0.015 wt%以下、 Al:0.10wt%以下、 N:0.02wt%以下、 Cr:5〜60wt%、 Ti:4(C+N)〜0.5 wt%、 Nb:0.003 〜0.020 wt%、 B:0.0002〜0.005 wt%を含み、かつ Ca:0.0005〜0.01wt%、 Mo:0.1 〜5.0 wt%を含有
し、 残部がFeおよび不可避的不純物からなり、Δrが0.3 以
下であることを特徴とする、深絞り成形性と耐二次加工
脆性に優れるクロム鋼板。
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