JP2879618B2 - ハトムギ種実を使った醤油の醸造法 - Google Patents

ハトムギ種実を使った醤油の醸造法

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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、ハトムギを利用したハ
トムギ醤油の製造方法に関する。ハトムギは、水田で水
稲とほぼ同じ栽培体系で栽培できることから、転作作物
として有望な作物となっている。そこで、水田農業確立
の一環として、すでに転作作物として導入されている大
豆とハトムギとを原料として利用したハトムギ醤油の製
造法を確立し、これによって出来るハトムギ醤油を新し
い特産品として商品化することにより、地域の製造業者
と農業とを有機的に結び付け、地域の産業の振興と活性
化に役立つようにせんとするものである。
【0002】
【従来の技術】本醸造方式の醤油は、原則として大豆
(脂肪大豆)と小麦で麹をつくり、これを調整した塩水
に加えて発酵熟成させた後、搾汁・火入れ・おり引きを
行って製品としたものである。
【0003】 すなわち、従来の本醸造方式の醤油は大
豆(脂肪大豆を含む)と小麦とを容量比で1対1とし
(大豆と小麦の合容量を元石という)、大豆は蒸煮、小
麦は炒ごう割砕しあわせて製麹する。一方、仕込用の塩
水の調整は、前者の合容量の水に食塩をボーメ19.5
度まで加えたものに麹を加えて発酵熟成させる。この
間、発酵管理として「カイ」いれを行う。発酵熟成期間
は1〜1.5年を要する。
【0004】 また、醤油にはこのほかに、タンパク質
原料を塩酸で加水分解して得たアミノ酸液を化学的に調
整したアミノ酸醤油と、アミノ酸醤油の欠点を補うため
両者をあわせた普通醤油のごとく醸造する新式醸造方式
である。なお、前記従来技術では、ハトムギを醤油製造
にあたって小麦代替原料に用いるようなことはなかっ
た。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】ハトムギは、転作作物
としても有望な作物であり、転作による生産の推進を図
るためには、ハトムギの食品への活用が望まれている。
しかし、当該ハトムギは漢方薬として珍重されたり、最
近、健康を志向した食品に利用されている程度で、需要
量はそんなに多くはない。しかも、ハトムギ茶を除いて
はハトムギの子実(中心部)を利用したものばかりで、
種皮まで利用されることは殆ど無かった。
【0006】 そこで、発明者らは、ハトムギを種実の
まま利用し、しかも比較的多量に利用できる食品を開発
せんと鋭意研究した結果、ハトムギを原料とする醤油の
製造方法を完成した。つまり、当初の発想は、ハトムギ
子実の主要成分が蛋白質、脂肪、糖質などの含有量が小
麦に類似していることから、小麦の代替原料になると考
え、ハトムギ子実のみを用いた醤油の醸造法の開発に取
り組み、実用化技術を開発した。しかし、ハトムギ脱皮
のための機械装置が必要なことと、その脱皮作業の手間
が大変なこと、ハトムギの実の一部しか使用しないのは
無駄が多いこと、などの欠点がみいだされた。そこで、
ハトムギ脱皮の省力化、未利用資源の有効利用の点から
ハトムギ種実のまま利用する醸造法について更に検討を
重ねた結果、品質的に従来の本醸造方式の醤油に比べて
遜色の無い生揚醤油の開発に成功し、本発明を完成した
ものである。
【0007】
【課題を解決するための手段】特許を受けようとする第
1の発明は、丸大豆1(重量比)とハトムギ種実1.2
〜1.5(重量比)とを配合した原料を用いて麹をつく
り、これに調整した塩水を加えて仕込みを行い、これを
発酵熟成させて熟成諸味となし、その後搾汁、火入れ、
おり引きを行って醤油製品とするハトムギ種実を使った
醤油の醸造法である。
【0008】 本発明の特徴は、従来の大豆(脂肪大豆
を含む)と小麦を原料とする本醸造方式醤油にかわっ
て、ハトムギ種実を小麦代替原料とした本醸造方式醤油
である。その使用量は、従来の醤油の配合比率である大
豆1に対して小麦1を基準として、その小麦の総蛋白質
量に換算した量とするもので、具体的には、ハトムギ種
実の使用量は大豆1に対して1.2〜1.5(重量
比)、好ましくは1.2(重量比)とすれば良い。ハト
ムギ種実の使用量が、丸大豆1に対して1.0(重量
比)と少ない場合には、原料に含まれる窒素分などが少
なくなり、それが生揚げの成分に影響する。つまり、生
揚げの各成分組成が総じて、低い値となり、結果的に
は、香り・味などに影響をあたえ、対照区をはじめ1.
3使用区、1.4使用区に比べて官能的に劣る結果とな
る。また、ハトムギ種実の使用量が、丸大豆1に対して
1.6(重量比)と多くなると、塩水に対する固形分
(溶質)が極端に多くなり、塩水と固形分のバランスが
くずれ、しれらが微生物の増殖関係に影響を及ぼす結果
となり、順調な発酵・分解がおこなわれにくくなる。
【0009】 従って、生揚げのエキス分は高まるもの
の、全窒素、アルコール、ホルモール窒素はその割合に
は高まらず、生揚げの香り、味などがよくならないこと
になる。よって、これらのことから、総合的に判断し
て、ハトムギ種実の使用量は、丸大豆1に対して1.2
〜1.5(重量比)の範囲が良質の生揚げを製造するた
めの良い条件となる。
【0010】
【表1】
【0011】 また、ハトムギ種実は、子実が60%で
果皮が40%の割合になっており、その主要成分は表
1.に表した通りである。また、ハトムギ種実の薬効は
次のとおりである。まず、ハトムギ子実(果皮を除いた
もの)は、ヨクイニンという名前でおもに漢方薬として
利用され、その薬効的有効成分はコクセノライド(C3
8H70O4 )である。その効用は、イボ取りを始
め、滋養強壮、神経痛、リューマチ、健胃、整腸、利
尿、糖尿病、肥満、シミ、ソバカス、さめ肌、荒れ性肌
等に効果があるとされている。次にハトムギ外皮(果
皮)の薬効については、東京女子医大の平野教授等のグ
ループが研究をおこなっているが、その研究によるとリ
ンパ球の働きを高める程度は、果皮(一番外側にある
皮)が77%で、子実(ヨクイニン)が20%、種皮
(子実を含む皮)が14%であるという。
【0012】 原料である大豆(脂肪大豆を含む)は、
精選し、洗浄し、浸漬した後、蒸煮しておく。他方原料
であるハトムギ種実は、精選し、炒り、割砕しておく。
この両者を合わせて混合し、製麹する。次に、これに調
整した塩水を加えて仕込みを行い、諸実を作り、約1年
間発酵させて醸成諸味をつくる。これを圧搾して生揚げ
醤油となし、これを火入れ、おり引きなど既存の本醸造
方式と同様の工程を経て醤油製品となす。
【0013】
【実施例】実施例1.丸大豆100kg(重量比1)と
ハトムギ種実130kg(重量比1.3)とを用意し、
原料である丸大豆は、精選し、洗浄し、浸漬し、蒸煮し
ておき、他方原料ハトムギ種実は、精選し、炒り、割砕
したうえ、両者を合わせて混合し、麹をつくり、これに
塩水濃度をボーメ約18度とした塩水を310リットル
加えて仕込みを行い、12月間、天然発酵熟成させて熟
成諸味と成し、これを圧搾してハトムギ生揚げ醤油とな
し、火入れ温度は80℃達温とし、おり引きを行って、
ハトムギ醤油を製成する。
【0014】 これに対し、対照区の醤油は、丸大豆5
0kg(重量比1)と小麦50kg(重量比1)とを用
意し、原料である丸大豆は、精選し、洗浄し、浸漬し、
蒸煮しておき、他方原料小麦は、精選し、炒り、割砕し
たうえ、両者を合わせて混合し、麹をつくり、これに塩
水濃度をボーメ約19.5度とした塩水を150リット
ル加えて仕込みを行い、12月間、天然発酵熟成させて
熟成諸味と成し、これを圧搾して生揚げ醤油となし、火
入れ温度は80℃達温とし、おり引き、ハトムギ醤油を
製成する。このとき、供試原料の主要成分(表2)、仕
込み170日後における主要成分(表3)、生揚げの主
要成分を調べ(表4)、官能検査結果(表5)を確認し
た。
【0015】
【表2】
【0016】
【表3】
【0017】
【表4】
【0018】
【表5】
【0019】 この手法で醤油を醸造したところ、香
り、カラミ、成分組成等では本醸造方式の普通醤油に比
較して幾分劣るものの、味においてはうまみが感じら
れ、総じて普通醤油に劣らない生揚げが醸造できた。ま
た、この手法で醸造したハトムギ醤油は、日本農林規格
に規定された醤油の等級と品質基準(全窒素、純エキ
ス、色度アルコール)にも合致し、淡口濃口醤油の製品
が調製できる生揚げが得られた。従って、ハトムギを種
実のまま使用した醤油は、従来の本醸造方式に準じて、
原料配合において重量比で丸大豆1対小麦1を基準とし
て、その小麦の総窒素量を乾物換算した量(重量比で丸
大豆1対ハトムギ種実1.3)を使用することにより醸
造することができる。
【0020】 実施例2. 丸大豆100kg(重量比1)に対し、ハトムギ種実1
00kg、130kg、140kg、160kg(重量
比1.0,1.3,1.4,1.6)とを用意し、原料
である丸大豆は、精選し、洗浄し、浸漬し、蒸煮してお
き、他方原料ハトムギ種実は、精選し、炒り、割砕した
うえ、両者を合わせて混合して試験区(1)(2)
(3)(4)麹をつくり、これに塩水濃度をボーメ約1
8度とした塩水を310リットル加えて仕込みを行い、
12月間、天然発酵熟成させて熟成諸味と成し、これを
圧搾してハトムギ生揚げ醤油となし、火入れ温度は80
℃達温とし、おり引き、ハトムギ醤油を製成する。
【0021】 これに対し、対照区の醤油は、丸大豆5
0kg(重量比1)と小麦50kg(重量比1)とを用
意し、原料である丸大豆は、精選し、洗浄し、浸漬し、
蒸煮しておき、他方原料小麦は、精選し、炒り、割砕し
たうえ、両者を合わせて混合し、麹をつくり、これに塩
水濃度をボーメ約19度とした塩水を150リットル加
えて仕込みを行い、12月間、天然発酵熟成させて熟成
諸味と成し、これを圧搾して生揚げ醤油となし、火入れ
温度は80℃達温とし、おり引き、ハトムギ醤油を製成
する。このとき、ハトムギ種実の使用量と生揚げの主要
成分(表6.)と、生揚げの官能評価結果(表7.)を
確認した。
【0022】
【表6】
【0023】
【表7】
【0024】 その結果、すべてに処理区において、日
本農林規格に規定された醤油の等級と品質基準(全窒
素、純エキス、色度アルコール)にも合致し、淡口、濃
口醤油の製品が調製できる生揚げが得られた。特に、生
揚げの成分組成、官能検査から丸大豆1に対してハトム
ギ種実1.3から1.4を使用したものが、品質的には
従来の本醸造方式の生揚げに比べて、遜色の無い製品が
えられた。
【0025】 また、丸大豆1に対してハトムギ種実
1.2及び1.5(重量比)を使用したものは、品質的
に本醸造方式の生揚げ醤油に比較して幾分劣るものの、
火入れ前の調整操作によって、味、香り、色調、組成を
調整することが可能であり、淡口、濃口醤油の製品づく
りに充分調製できる生揚げであった。このように、ハト
ムギ種実の使用量や塩水濃度や使用量を調整することを
特徴とする製造法で醤油を醸造した場合、香り、カラ
ミ、成分組成等では本醸造方式の普通醤油に比較して劣
らないハトムギ醤油ができた。
【0026】
【効果】叙上のように、本願発明は、ハトムギを種実の
まま代替え原料として使い、そのハトムギその使用量と
塩水濃度及び使用量をポイントとしてハトムギ醤油を醸
造する方法である。従来の醤油とほぼ同様の醤油を醸造
することができた。この発明は、ハトムギを種実のまま
利用することにより、脱皮するための機械装置が不要で
あり、脱皮のための手数が省けるとともに、未利用部分
の(皮)の有効利用ができる。また、使用量は、大豆の
1.2〜1.5倍と比較的多量のハトムギが必要なこと
から、ハトムギの需要の増大と転作面積の拡大につなが
る。更にまた、醤油諸味に皮も混入していることによ
り、発酵熟成後の諸味を搾るのが比較的容易であり、性
能の高い大型搾汁機も必要なく、設備投資の軽減にもな
る。醤油の品質面では、全窒素量は小麦を利用したもの
と同程度含まれており(重量比で丸大豆1対ハトムギ種
実1.3)、色調がやや淡いものの味、香り等では本醸
造方式の普通醤油に遜色のない生揚げ(生醤油)が醸造
される。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本願発明の製造工程を示す作業説明図であ
る。

Claims (1)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 丸大豆1(重量比)とハトムギ種実1.
    2〜1.5(重量比)とを配合した原料を用いて麹をつ
    くり、これに調整した塩水を加えて仕込みを行い、これ
    を発酵熟成させて熟成諸味となし、その後搾汁、火入
    れ、おり引きを行って醤油製品とするハトムギ種実を使
    った醤油の醸造法。
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