JP2861720B2 - 強度、靱性および耐食性に優れた2相ステンレス溶接鋼管の製造方法 - Google Patents

強度、靱性および耐食性に優れた2相ステンレス溶接鋼管の製造方法

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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】この発明は、塩化物を含む環境下
または C02腐食環境下において使用するに好適な、強
度、靭性および耐食性に優れたオーステナイト・フェラ
イト系2相ステンレス溶接鋼管を経済的に製造するため
の方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】近年、エネルギー資源の枯渇から、C02
または塩化物等の腐食性物質を含有する石油または天然
ガスの活用が行われており、このような石油または天然
ガスを高圧で輸送するための鋼管として、高耐食性鋼管
の使用が増加しつつある。高耐食性鋼管として、13Cr鋼
は、高強度で且つ安価であるという特性を有している
が、溶接性に劣るために、溶接鋼管としての使用実績は
少ない。
【0003】更に、13Cr鋼は、 100℃を超える高温環境
下における耐食性に劣るため、このような高温環境下に
おける使用は不適当であり、従来、高温環境下において
は、18Cr-8Ni系のSUS304、16Cr-11Ni-2Mo 系のSUS316等
のようなオーステナイト系ステンレス鋼、または、SUS3
29J3L およびSUS329J4L のようなオーステナイト・フェ
ライト系の2相ステンレス鋼が使用されている。
【0004】しかしながら、上記SUS304、SUS316等のよ
うなオーステナイト系ステンレス鋼からなる溶接鋼管に
は、13Cr鋼からなる溶接鋼管に比べて、その強度が低く
(0.2%耐力で約250MPa)、且つ、塩化物を多く含む環境
下での耐応力腐食割れ性に劣る問題がある。一方、2相
ステンレス鋼からなる溶接鋼管は、強度、靭性および耐
応力腐食割れ性の何れの特性にも優れている。しかしな
がら、従来のSUS329J3L 鋼およびSUS329J4L 鋼からなる
2相ステンレス溶接鋼管は、耐食性を高める観点から、
モリブデンおよびニッケルを多量に含有しているので、
製造コストが上昇し、硫化水素を殆ど含まない環境下に
おいて使用する材料として、高価である問題を有してい
る。
【0005】そこで、強度、靭性および耐応力腐食割れ
性が何れも優れ且つ安価な2相ステンレス鋼の開発が進
められており、例えば、特開平1-165750号公報、特開平
1-201446号公報および特公平4-42464 号公報等には、モ
リブデンおよびニッケルの含有量が少ない鋼(以下、先
行技術1という)が開示されている。
【0006】一方、塩化物を含む環境下における耐食性
として重要な耐孔食性の向上のためには、ステンレス鋼
中のクロム、モリブデンおよび窒素の含有量を増加させ
ることが有効であり、例えば、特開平1-165750号公報お
よび特開平3-82740 号公報には、2相ステンレス鋼の耐
孔食性の指標として、オーステナイト系ステンレス鋼で
の指標と同様の、PI=Cr(%) +3 ×Mo(%) +16×N(%)と
すること(以下、先行技術2という)が開示されてい
る。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】上述した先行技術1に
は、次のような問題がある。即ち、例えば特公昭57-962
3 号公報等に開示されているように、2相ステンレス鋼
の靭性は、フェライト相の体積率(αf )の増加と共に
劣化する。従って、フェライト相の体積率(αf) は、
通常約0.5 に設計されている。しかしながら、ニッケル
含有量が極端に少ない2相ステンレス鋼の場合には、フ
ェライト相の体積率(αf ) が0.5 程度であっても、そ
の靭性が劣化する。
【0008】先行技術2には、次のような問題がある。
即ち、2相ステンレス鋼においては、フェライト相およ
びオーステナイト相の各成分含有量が異なるために、先
行技術2のように耐孔食性の指標として平均組成を使用
したPIでは、耐孔食性を過大評価する場合が生ずる。ま
た、鋼中に相当量のクロム、モリブデンおよび窒素を含
有していても、ニッケル含有量が極端に少ない場合に
は、耐孔食性が劣化する。
【0009】従って、この発明の目的は、上述した問題
を解決し、13Cr鋼と同等の0.2%耐力(400MPa以上) を有
しそして靭性に優れ、且つ、塩化物またはC02 を含む環
境下においてSUS316鋼以上の耐全面耐食性、耐孔食性お
よび耐応力腐食割れ性を有する2相ステンレス鋼からな
る溶接鋼管を経済的に製造するための方法を提供するこ
とにある。
【0010】
【課題を解決するための手段】請求項1に記載の発明の
2相ステンレス溶接鋼管の製造方法は、下記を特徴とす
るものである。 炭素(C) : 0.05wt.% 以下、 シリコン(Si): 1.5 wt.% 以下、 マンガン(Mn): 2.0 wt.% 以下、 ニッケル(Ni): 3.0〜5.0 wt.%、 クロム(Cr) :21.0〜25.0wt.%、 窒素(N) : 0.25wt.% 以下、および、 残り:Feおよび不可避不純物、からなり、 下記(1) 式 σ0.2 =20×Cr(%) +11×Mn(%) − Ni(%)+ 133×N(%)−38 ─────(1) によって求められる0.2%耐力を示す指数 (σ0.2)が400
以上である化学成分組成を有する鋼塊または鋼片を調製
し、 前記鋼塊または鋼片を熱間圧延して鋼板を調製し、次い
で、前記鋼板に対し、900 ℃以上、下記(2) 式によって
求められるT(℃)以下の範囲内の温度により加熱し次
いで冷却することからなる焼鈍を施すことによって原板
を調製し、 T=71×Ni(%) +6×Mn(%) −36×Cr(%) −42×Si(%) +1037×C(%)+1113× N(%)+1608 ─────(2) 次いで、前記原板を成形して素管を調製しそして素管の
シーム部を溶接し、前記シーム部の溶接金属が、 炭素(C) : 0.05wt.% 以下、 シリコン(Si): 1.5 wt.% 以下、 マンガン(Mn): 2.0 wt.% 以下、 ニッケル(Ni): 3.0〜5.0 wt.%、 クロム(Cr) :21.0〜25.0wt.%、 窒素(N) : 0.25wt.% 以下、 酸素(O) : 0.035 wt.% 以下、および、 残り:Feおよび不可避不純物、からなり、且つ、前記0.
2%耐力 (σ0.2)を示す指数が 400以上である化学成分組
成を有する溶接鋼管を調製し、次いで、前記溶接鋼管に
対し、900 〜1150℃の範囲内の温度による加熱と、500
〜850 ℃の範囲内の温度域における1℃/sec以上の速度
による冷却とからなる固溶化熱処理を施し、かくして、
前記溶接鋼管の母材のフェライト相の体積率αf が0.40
〜0.60の範囲内であり、そして、前記母材の、下記(3)
式によって求められるフェライト相の耐孔食性指数(α
P1)および下記 (4)式によって求められるオーステナイ
ト相の耐孔食性指数(γP1)が何れも23.5以上であり、 αP1=23×Cr(%) /(3×αf + 20) ────────────────(3) γP1=20×Cr(%) /(3×αf + 20)− 16 ×N(%)/ (αf −1) ────(4) そして、前記溶接鋼管のシーム部溶接金属の、前記フェ
ライト相の体積率(αf )が0.30〜0.50の範囲内であ
り、そして、前記溶接金属のフェライト相の耐孔食性指
数(αP1)およびオーステナイト相の耐孔食性指数(γ
P1)が、前記母材の前記αP1および前記γP1のうちの何
れか低い値よりも大である2相ステンレス溶接鋼管を製
造する。
【0011】また、請求項2に記載の発明の2相ステン
レス溶接鋼管の製造方法は、下記を特徴とするものであ
る。 炭素(C) : 0.05wt.% 以下、 シリコン(Si): 1.5 wt.% 以下、 マンガン(Mn): 2.0 wt.% 以下、 ニッケル(Ni): 3.0〜5.0 wt.%、 クロム(Cr) :21.0〜25.0wt.%、 窒素(N) : 0.25wt.% 以下、および、 残り:Feおよび不可避不純物、からなり、下記(1) 式 σ0.2 =20×Cr(%) +11×Mn(%) − Ni(%)+ 133×N(%)−38──────(1) によって求められる0.2%耐力を示す指数 (σ0.2)が400
以上である化学成分組成を有する鋼塊または鋼片を調製
し、前記鋼塊または鋼片に対して、下記(2) 式で求めら
れるT(℃)以下の温度で加熱し、そして、900 ℃以上
の温度で仕上げることからなる熱間圧延を施すことによ
って、原板を調製し、 T=71×Ni(%) +6×Mn(%) −36×Cr(%) −42×Si(%) +1037×C(%)+1113× N(%)+1608 ─────(2) 次いで、前記原板を成形して素管を調製しそして素管の
シーム部を溶接し、前記シーム部の溶接金属が、 炭素(C) : 0.05wt.% 以下、 シリコン(Si): 1.5 wt.% 以下、 マンガン(Mn): 2.0 wt.% 以下、 ニッケル(Ni): 3.0〜5.0 wt.%、 クロム(Cr) :21.0〜25.0wt.%、 窒素(N) : 0.25wt.% 以下、 酸素(O) : 0.035 wt.% 以下、および、 残り:Feおよび不可避不純物、からなり、且つ、前記0.
2%耐力を示す指数 (σ0.2)が 400以上である化学成分組
成を有する溶接鋼管を調製し、次いで、前記溶接鋼管に
対し、900 〜1150℃の範囲内の温度による加熱と、500
〜850 ℃の範囲内の温度域における1℃/sec以上の速度
による冷却とからなる固溶化熱処理を施し、かくして、
前記溶接鋼管の母材のフェライト相の体積率αf が0.40
〜0.60の範囲内であり、そして、前記母材の、下記(3)
式によって求められるフェライト相の耐孔食性指数(α
P1)および下記 (4)式によって求められるオーステナイ
ト相の耐孔食性指数(γP1)が何れも23.5以上であり、 αP1=23×Cr(%) /(3×αf + 20) ────────────────(3) γP1=20×Cr(%) /(3×αf + 20)− 16 ×N(%)/ (αf −1) ────(4) そして、前記溶接鋼管のシーム部溶接金属の、前記フェ
ライト相の体積率(αf )が0.30〜0.50の範囲内であ
り、そして、前記溶接金属のフェライト相の耐孔食性指
数(αP1)およびオーステナイト相の耐孔食性指数(γ
P1)が、前記母材の前記αP1および前記γP1のうちの何
れか低い値よりも大である2相ステンレス溶接鋼管を製
造する。
【0012】
【作用】以下に、この発明の方法における、母材板およ
び溶接金属の化学成分組成およびフェライト相の体積率
( αf ) を上述した範囲内に限定した理由について述べ
る。 (1) 炭素(C) :炭素は、オーステナイト生成元素であ
る。しかしながら、炭素含有量が0.05wt.%を超えて多く
なると、鋼中に炭化物が生成して耐食性が劣化する。従
って、原板および溶接金属の炭素含有量は0.05wt.%以下
に限定すべきである。
【0013】(2) シリコン(Si):シリコンは、脱酸材と
して有用な元素である。しかしながら、シリコン含有量
が 1.5wt.%を超えて多くなると、溶接時の割れ感受性が
増加し、且つ、鋼中に金属間化合物が生成して熱間加工
性が劣化する。従って、原板および溶接金属のシリコン
含有量は1.5wt.% 以下に限定すべきである。
【0014】(3) マンガン(Mn):マンガンは、オーステ
ナイト生成元素であり且つ脱酸作用を有している。しか
しながら、マンガン含有量が2.0wt.%を超えて多くなる
と、塩化物を含有する環境下での耐孔食性が劣化する。
従って、原板および溶接金属のマンガン含有量は2.0w
t.%以下に限定すべきである。
【0015】(4) ニッケル(Ni):ニッケルは、強力なオ
ーステナイト生成元素であり、そして、後述するフェラ
イト相の体積率(αf )を得るための必須元素である。
しかしながら、ニッケル含有量が3.0wt.%未満では、フ
ェライト相の体積率(αf )を後述する適正値に調整し
ても、延性、靭性および耐孔食性が著しく劣化する。一
方、ニッケル含有量が5.0wt.%を超えると、コストが上
昇するばかりでなく、フェライト相の体積率(αf )を
適正値に調整するために、オーステナイト生成元素であ
る窒素の含有量を低減することが必要になる結果、耐孔
食性の観点から不利になる場合が生ずる。従って、原板
および溶接金属のニッケル含有量は3.0〜5.0wt.%の範
囲内に限定すべきである。
【0016】(5) クロム(Cr):クロムは、強力なフェラ
イト生成元素であり、そして、耐全面腐食性および耐孔
食性を高める作用を有している。しかしながら、クロム
含有量が21.0wt.%未満では、マルテンサイトを生成させ
ずにフェライト相の体積率(αf )を後述する適正値に
調整することがができない。一方、クロム含有量が25.0
wt.%を超えると、靭性が低下し、且つ、σ相が析出する
ために、耐食性および熱間加工性が劣化する。従って、
原板および溶接金属のクロム含有量は21.0〜25.0wt.%の
範囲内に限定すべきである。
【0017】(6) 窒素(N):窒素は、強力なオーステナイ
ト生成元素であり、そして、鋼に耐孔食性を付与する有
効な元素である。しかしながら、窒素含有量が0.25wt.%
を超えると、熱間圧延時における変形抵抗が増加するた
めに、原板に割れ等が発生し、また、溶接時にブローが
生ずる。従って、原板および溶接金属の窒素含有量は0.
25wt.%以下に限定すべきである。
【0018】(7) 酸素(O):酸素含有量が多くなると、靭
性および耐孔食性が劣化する。従って、原板であるステ
ンレス鋼の酸素含有量は、通常の製鋼技術によって0.01
wt.%以下に低減されている。しかしながら、ステンレス
溶接鋼管のシーム部は、能率向上の観点から、塩基度の
低いフラックスを使用しサブマージアークにより溶接さ
れる場合が多い。従って、溶接金属の酸素含有量の増加
は避けられないが、溶接金属の靭性および耐孔食性の劣
化を防止する観点から、溶接金属の酸素含有量は、0.03
5 wt.%以下に限定すべきである。
【0019】(8) フェライト相の体積率(αf ):2相
ステンレス鋼において、フェライト相の体積率(αf
は、鋼の諸特性に対し大きな影響を及ぼす。即ち、フェ
ライト相の体積率(αf )が0.40未満では、熱間圧延性
が著しく劣化し、そして、αf が0.60を超えると、鋼の
延性および靭性が低下する。従って、原板のフェライト
相の体積率(αf )は、0.40〜0.60の範囲内に限定すべ
きである。一方、溶接金属の結晶粒は、原板に比べて著
しく粗大化するために、フェライト相の体積率(αf
が0.50を超えると、溶接金属の延性および靭性が劣化す
る。そして、フェライト相の体積率(αf )が0.30未満
では、耐応力腐食割れ性が低下する。従って、溶接金属
のフェライト相の体積率(αf )は、0.30〜0.50の範囲
内に限定すべきである。
【0020】本発明者等は、モリブデンを含有しない2
相ステンレス鋼において、その強度に対する成分の影響
について詳細に検討した。その結果、モリブデンを含有
しない2相ステンレス鋼の0.2%耐力を示す指数
(σ0.2 )は、下記(1) 式によって表されることがわか
った。従って、この発明においては、13Cr鋼と同程度の
0.2%耐力をを付与するために、原板および溶接金属のク
ロム、マンガン、ニッケルおよび窒素の各含有量を、下
記(1) 式によって求められる値が400 以上となるように
限定すべきである。 σ0.2 = 20 ×Cr(%) +11×Mn(%) − Ni(%)+ 133×N(%)−38 ────(1)
【0021】一方、塩化物を含む環境下での耐孔食性に
ついて検討を重ねた結果、2相ステンレス鋼において
は、フェライト相およびオーステナイト相の各成分含有
量が相違するために、耐孔食性もフェライト相とオース
テナイト相とでは異なり、孔食は、耐孔食性が劣ってい
る相において初期に発生することがわかった。
【0022】モリブデンを含有しない2相ステンレス鋼
において、そのフェライト相における耐孔食性の指数
(αP1)およびオーステナイト相における耐孔食性の指
数(γP1)は、クロムおよび窒素の各含有量およびフェ
ライト相の体積率(αf )によって変化する。従って、
2相ステンレス鋼に、SUS316鋼と同等の耐孔食性を付与
するためには、下記(3) 式によって求められるフェライ
ト相における耐孔食性の指数(αP1)、および、下記
(4) 式によって求められるオーステナイト相における耐
孔食性の指数(γP1)が何れも23.5以上であることを必
要とする。 αP1=23×Cr(%) /(3×αf + 20) ────────────────(3) γP1=20×Cr(%) /(3×αf + 20)− 16 ×N(%)/ (αf −1) ────(4)
【0023】上記から、原板のフェライト相における耐
孔食性の指数(αP1)およびオーステナイト相における
耐孔食性の指数(γP1)が何れも23.5以上となるよう
に、原板のクロムおよび窒素の含有量およびフェライト
相の体積率(αf )を限定すべきである。そして、溶接
金属の耐孔食性が原板の耐孔食性よりも低い場合には、
溶接金属に優先的に孔食が発生することから、溶接金属
のフェライト相における耐孔食性の指数(αP1)および
オーステナイト相における耐孔食性の指数(γP1)が、
原板の前記αP1および前記γP1のうちの何れか低い値よ
りも大となるように、溶接金属のクロムおよび窒素の含
有量およびフェライト相の体積率(αf )を限定すべき
である。
【0024】この発明の第1実施態様の方法において
は、前述した化学成分組成の鋼塊または鋼片を熱間圧延
して鋼板を調製し、次いで、前記鋼板に対し、900 ℃以
上、下記(2) 式によって求められるT(℃)以下の範囲
内の温度により加熱し次いで冷却することからなる焼鈍
を施して原板を調製し、 T=71×Ni(%) +6×Mn(%) −36×Cr(%) −42×Si(%) +1037×C(%)+1113× N(%)+1608 ─────(2) 次いで、原板を成形して素管を調製し、素管のシーム部
を溶接して溶接鋼管を調製する。次いで、このようにし
て調製された溶接鋼管に対し、所定条件で固溶化熱処理
を施すことを特徴としている。
【0025】上述した工程において、焼鈍時における、
鋼板に対する加熱温度が 900℃未満では、原板が十分に
軟化せず、その後に行われる管体成形が困難になる。一
方、焼鈍時における加熱温度が高いと、フェライト相の
体積率(αf )が増加し、前記αf が0.60を超えると、
延性が低下するばかりでなく、管体成形時に原板に著し
い皺が発生する場合がある。そこで、本発明者等は、フ
ェライト相の体積率(αf )と加熱温度と化学成分組成
との関係について詳細に検討した結果、フェライト相の
体積率(αf )が0.60以下になる最高加熱温度T(℃)
は、上記(2) 式によって表し得ることがわかった。従っ
て、焼鈍時における鋼板に対する加熱温度は、900 ℃以
上、上記(2) 式によって求められるT(℃)以下の範囲
内に限定すべきである。
【0026】この発明の第2実施態様の方法において
は、前述した化学成分組成の鋼塊または鋼片に対し、上
記(2) 式で求められるT(℃)以下の温度によって加熱
し、そして900 ℃以上の温度で仕上げることからなる熱
間圧延を施して原板を調製し、次いで、第1実施態様の
方法と同様に、原板を成形して素管を調製し、素管のシ
ーム部を溶接してUOE鋼管のような溶接鋼管を調製
し、次いで、このようにして調製された溶接鋼管に対
し、所定条件で固溶化熱処理を施すことを特徴としてい
る。第2実施態様の方法によれば、熱間圧延された鋼板
に対し、軟化焼鈍を施さなくても管体成形が可能であ
り、従って、その製造コストを一段と低減することがで
きる。
【0027】本発明者等は、熱間圧延された鋼板に対
し、軟化焼鈍を施さなくても、管体成形が可能な条件に
関して検討を重ねた。その結果、次のことがわかった。
即ち、本発明鋼においては、熱間圧延された鋼板のフェ
ライト相の体積率(αf )は、鋼塊または鋼片の加熱時
のフェライト相の体積率(αf )とほぼ同じである。
【0028】従って、管体成形時における皺の発生を防
止するために、熱間圧延時における鋼塊または鋼片に対
する加熱温度を、フェライト相の体積率(αf )が0.60
以下になる、前記(2) 式によって求められるT℃以下に
限定すべきである。また、軟化焼鈍を省略するために
は、圧延中に十分な動的再結晶または回復が生じなけれ
ばならない。従って、熱間圧延の仕上げ温度は 900℃以
上に限定すべきである。
【0029】原板を管体に成形して調製された素管のシ
ーム部を溶接することにより、2相ステンレス鋼の溶接
金属および母材の熱影響部は、炭窒化物が析出し且つフ
ェライト相の体積率(αf )は、著しく上昇する。従っ
て、析出した炭窒化物を消失させ、フェライト相の体積
率(αf )を適正化するために、シーム部が溶接された
溶接鋼管に対し、固溶化熱処理を施す必要がある。
【0030】上述した固溶化熱処理は、 900〜1150℃の
範囲内の温度による加熱と、500 〜850 ℃の範囲内の温
度域における1℃/sec以上の速度による冷却とからなる
条件によって行う必要がある。即ち、加熱温度が 900℃
未満では、炭窒化物が固溶しないため、耐食性が劣化す
る。一方、加熱温度が1150℃を超えると、フェライト相
の体積率(αf )が増加し且つ結晶粒が粗大化するため
に、延性および靭性が劣化する。
【0031】クロムの炭窒化物は、一般に 500〜850 ℃
の範囲内の温度域において析出する。しかるに、固溶化
熱処理において、上述した条件で加熱された溶接鋼管に
対する、500 〜850 ℃の範囲内の温度域での冷却速度が
1℃/sec未満では、クロムの炭窒化物の析出に伴う粒界
腐食が著しくなる。従って、固溶化熱処理における、50
0 〜850 ℃の範囲内の温度域での冷却速度は1℃/sec以
上に限定すべきである。
【0032】
【実施例】次に、この発明を、実施例により比較例と対
比しながら説明する。 実施例1 表1に示した、この発明の範囲内の化学成分組成を有す
る供試鋼a〜iの重量50Kgの鋼塊、少なくとも1つが本
発明の範囲外の化学成分組成を有する比較用供試鋼a’
〜l’の重量50Kgの鋼塊を調製し、そして、従来鋼とし
て市販のSUS316鋼板および市販の13Cr鋼板を準備した。
【0033】次いで、供試鋼a〜iおよび比較用供試鋼
a’〜l’の鋼塊を、1150℃の温度で加熱した後、900
℃の仕上げ温度で熱間圧延し、次いで、500 〜850 ℃の
温度域における冷却速度が 0.7℃/ sec の条件で空冷
し、15mmの厚さの鋼板を調製した。このようにして調製
された鋼板に対し、1050℃の温度による加熱と、500 〜
850 ℃の温度域における30℃/ sec の速度による冷却と
からなる固溶化熱処理を施した。かくして、表1に示し
た、この発明の範囲内の、フェライト相の体積率
(αf )、(1) 式によって求められる0.2%耐力を示す指
数 (σ0.2)、(3) 式によって求められるフェライト相の
耐孔食性指数(αP1)および (4)式によって求められる
オーステナイト相の耐孔食性指数(γP1)を有する、原
板としての本発明供試体No.1〜9 および比較用供試体N
o.1〜12を調製した。
【0034】
【表1】
【0035】上述した、原板としての本発明供試体No.1
〜9 、比較用供試体No.1' 〜12' および従来鋼の供試体
の各々から、ミクロ組織観察用試験片、引張り試験片、
2mmVノッチ付きシャルピー衝撃試験片、全面腐食試験
片、応力腐食割れ試験片および孔食電位測定用試験片を
採取し、0.2%耐力、引張り強さ、伸び、 0℃および−50
℃の吸収エネルギー、耐全面腐食性、孔食電位、耐応力
腐食割れ性(σth) および鋼板の端面割れの状態を調
べ、その結果を、表2に示した。
【0036】
【表2】
【0037】なお、フェライト相の体積率(αf )は、
ミクロサンプルに対し20%NaOH 電解エッチングを施して
測定した。耐全面腐食性は、200 ℃の温度の3%NaCl−10
atmC02の条件下で、厚さ3mm ×幅20mm×長さ30mmの短冊
状の試験片を720 時間浸漬したときの腐食速度を測定す
ることによって評価した。耐応力腐食割れ性は、45%MgC
l2沸騰溶液中で定荷重引張り試験を最長500 時間施し、
500 時間経過後も破断しなかった最高応力を許容応力
th) として評価した。孔食電位は、JIS GO577 によ
り、電流密度が 100μA/cm2 になる電位とした。そし
て、鋼板の端面割れは目視によってその程度を判定し
た。
【0038】表1および表2から明らかなように、0.2%
耐力を示す指数 (σ0.2)、フェライト相の耐孔食性指数
(αP1)およびオーステナイト相の耐孔食性指数
(γP1)が何れも本発明の範囲を外れて低い比較用供試
体No.1およびNo.2は、0.2%耐力および孔食電位に劣って
いた。フェライト相の耐孔食性指数(αP1)が本発明の
範囲を外れて少ない比較用供試体No.3およびNo.5は、孔
食電位が劣っていた。フェライト相の体積率(αf )が
本発明の範囲を外れて少ない比較用供試体No.4およびN
o.6は、鋼板の端面割れが大であり、特に、フェライト
相の体積率(αf )が0.30未満の比較用供試体No.4は、
耐応力腐食割れ性( σth) も劣っていた。
【0039】ニッケル含有量が本発明の範囲を外れて少
ない比較用供試体No.7およびNo.8は、吸収エネルギーお
よび孔食電位が劣っていた。オーステナイト相の耐孔食
性指数(γP1)が本発明の範囲を外れて低い比較用供試
体No.9およびNo.12 は、孔食電位が劣っていた。フェラ
イト相の体積率(αf )が本発明の範囲を外れて多い比
較用供試体No.10 およびNo.11 は、伸びおよび吸収エネ
ルギーが劣っていた。
【0040】従来のSUS316鋼板は、0.2%耐力および耐応
力腐食割れ性( σth) が劣っていた。そして、13Cr鋼板
は、伸び、吸収エネルギー、耐全面腐食性および耐孔食
性が劣っていた。
【0041】これに対し、本発明供試体No.1〜9 におい
ては、0.2%耐力が(1) 式によって求められたσ0.2 とよ
く対応して何れも400MPa以上であり、延性および靭性に
優れていた。また、CO2 腐食環境下における耐全面腐食
性および塩化物を含む環境下における耐孔食性ともSUS3
16鋼以上であり、耐応力腐食割れ性はSUS316鋼に比べて
著しく優れていた。
【0042】図1は、ニッケル含有量と、孔食電位およ
び 0℃,-50 ℃の吸収エネルギーとの関係を示すグラフ
であって、本発明供試体No.2,3,4およびニッケル含有量
が本発明の範囲を外れて少ない比較用供試体No.7および
8 の孔食電位および 0℃,-50 ℃の吸収エネルギーを示
している。図1から明らかなように、ニッケル含有量が
3wt.%未満の比較用供試体No.7および8 の孔食電位は、
そのフェライト相の耐孔食性指数(αP1)およびオース
テナイト相の耐孔食性指数(γP1)が本発明の範囲内で
あっても低く、耐孔食性が劣っていた。そして、比較用
供試体No.7および8 の、 0℃,-50 ℃の吸収エネルギー
は、そのフェライト相体積率が本発明の範囲内であるに
もかかわらず低く、靭性が劣っていた。
【0043】図2は、フェライト相の体積率(αf
と、 0℃,-50 ℃の吸収エネルギー、伸び、および、鋼
板の端面割れとの関係を示すグラフであって、本発明供
試体No.1〜9 および比較用供試体No.4,6およびNo.10,11
の、 0℃,-50 ℃の吸収エネルギー、伸び、および、鋼
板の端面割れを示している。図2から明らかなように、
フェライト相の体積率(αf )が0.40未満の比較用供試
体No.4,6の圧延時における鋼板端面の割れは大であり、
そして、フェライト相の体積率(αf )が0.60を超えた
比較用供試体No.10,11の、 0℃,-50 ℃の吸収エネルギ
ーおよび伸びは低く、靭性および延性が劣っていた。
【0044】実施例2 表1に示した、本発明の範囲内の化学成分組成を有する
供試鋼e,f,gの重量50Kgの鋼塊を、表3に示した本
発明の範囲内の加熱温度および仕上げ温度で熱間圧延
し、または、上記鋼塊を熱間圧延後、本発明の範囲内の
温度で焼鈍し、表3に示した厚さ15mmの本発明供試体N
o.10 〜15を調製した。一方、供試鋼e,f,gの重量5
0Kgの鋼塊を、表3に併せて示した本発明の範囲外の加
熱温度または仕上げ温度で熱間圧延し、または、上記鋼
塊を熱間圧延後、本発明の範囲外の温度で焼鈍し、表3
に示した厚さ15mmの比較用供試体No.13 〜18を調製し
た。なお、熱間圧延後または焼鈍後の冷却は、何れも空
冷とした。
【0045】
【表3】
【0046】上述のようにして調製した本発明供試体N
o.10 〜15および比較用供試体No.13〜18から、ミクロ観
察用サンプルを採取し、そのフェライト相の体積率(α
f )および硬さ(HV:10Kgf) を測定し、その測定結果を
表3に併せて示した。
【0047】表3から明らかなように、熱間圧延した
後、焼鈍処理を施した場合であって、その焼鈍温度が本
発明の範囲を外れて高い比較用供試体No.13 およびNo.1
6 は、フェライト相の体積率(αf )が本発明の範囲を
外れて多く、管体形成時に皺が発生する可能性が高かっ
た。そして、上記焼鈍温度が本発明の範囲を外れて低い
比較用供試体No.18 は、硬さ(HV:10Kgf) が高く従って
UOEによる管体形成が困難と思われた。
【0048】熱間圧延後の焼鈍処理を施さない場合であ
って、熱間圧延時の仕上げ温度が本発明の範囲を外れて
低い比較用供試体No.14 は、硬さ(HV:10Kgf) が高く従
ってUOEによる管体形成が困難と思われた。そして、
熱間圧延時の加熱温度が本発明の範囲を外れて高い比較
用供試体No.15 およびNo.17 は、フェライト相の体積率
(αf )が本発明の範囲を外れて多く、管体形成時に皺
が発生する可能性が高かった。
【0049】これに対して、熱間圧延した後、焼鈍処理
を施した場合の焼鈍温度、および、熱間圧延後の焼鈍処
理を施さない場合の熱間圧延時の加熱温度および仕上げ
温度が、何れも本発明の範囲内である本発明供試体No.1
0 〜15は、フェライト相の体積率(αf )が本発明の範
囲内であって、適切な硬さ(HV:10Kgf) を有しており、
従って、UOEによる管体形成を良好に行うことができ
ると思われる。
【0050】実施例3 表4に示した、本発明の範囲内の化学成分組成を有する
供試鋼jの鋼塊を、熱間圧延工場において厚さ20mmの鋼
板に熱間圧延した。得られた2枚の原板を突き合わせ、
そのシーム部を、表4に示す化学成分組成のワイヤおよ
び表6に示す化学成分組成のフラックスを使用し、2電
極サブマージアーク溶接により、表5に示した条件で溶
接した。かくして、原板およびシーム部の溶接金属の化
学成分組成が本発明の範囲内である2種類の溶接鋼板、
および、溶接金属の酸素含有量が本発明の範囲を外れて
多い2種類の溶接鋼板を製造した。なお、開先形状は、
内面側の深さが5.5mm で外面側の深さが7mmでありそし
て45°のベベル角度とした。
【0051】上述した、原板および溶接金属の化学成分
組成が本発明の範囲内である2種類の溶接鋼板、およ
び、溶接金属の酸素含有量が本発明の範囲を外れて多い
2種類の溶接鋼板に対し、1050℃の温度による加熱と、
500 〜850 ℃の範囲内の温度域における20℃/secの速度
による冷却とからなる固溶化熱処理を施し、かくして、
原板および溶接金属が、本発明の範囲内の化学成分組
成、フェライト相の体積率(αf )、0.2%耐力を示す指
標 (σ0.2)、フェライト相の耐孔食性指数(αP1)およ
びオーステナイト相の耐孔食性指数(γP1)を有する、
表7に示す本発明供試体No.16 、No.17 、および、溶接
金属の酸素含有量が本発明の範囲を外れて多い比較用供
試体No.19 およびNo.20 を製造した。
【0052】
【表4】
【0053】
【表5】
【0054】
【表6】
【0055】
【表7】
【0056】
【表7】
【0057】上述した本発明供試体No.16 、No.17 およ
び比較用供試体No.19 、No.20 から、ミクロ観察用サン
プル、シャルピー衝撃試験片、粒界腐食試験片(厚さ3
mm×幅20mm×長さ30mm) および孔食試験片(厚さ3mm×
幅40mm×長さ40mm) を採取した。
【0058】溶接された鋼板に対する固溶化熱処理条件
の影響を検討するために、本発明供試体No.16 に対して
は、850 〜1200℃の範囲内の各温度に加熱後、500 〜85
0 ℃の範囲内の温度域において0.3 〜30℃/secの速度に
より冷却することからなる固溶化熱処理を施し、上述し
た各試験片を採取した。
【0059】なお、シャルピー衝撃試験片は、そのノッ
チ部の中心が溶接金属の中心になるように採取し、粒界
腐食試験片および孔食試験片は、その中心が溶接金属の
中心になるように採取した。また、耐粒界腐食性は、JI
S G0573 による65% 硝酸腐食試験(以下、「ヒューイ試
験」という)によって行い、耐孔食性は、JIS G0578に
よる20℃の温度における塩化第二鉄試験(以下、「孔食
試験」という)により行った。
【0060】図3に、溶接金属の酸素含有量と、溶接金
属の−20℃における吸収エネルギーおよび孔食試験によ
る溶接部の腐食速度との関係を示す。図3から明らかな
ように、溶接金属の酸素含有量がこの発明の範囲を超え
て多い比較用供試体No.19 およびNo.20 は、溶接金属の
靭性および耐孔食性が劣化した。
【0061】図4に、固溶化熱処理時の加熱温度と、溶
接部のヒューイ試験での腐食速度、溶接金属の−20℃に
おける吸収エネルギーおよびフェライト相の体積率(α
f )との関係を示す。図4から明らかなように、固溶化
熱処理時の加熱温度が本発明の範囲を外れて低い場合に
は、溶接金属の耐粒界腐食性および靭性が劣化した。ま
た、固溶化熱処理時の加熱温度が本発明の範囲を超えて
高い場合には、溶接金属のフェライト相の体積率
(αf )が本発明の範囲を外れて増加し、靭性が著しく
劣化した。
【0062】図5に、500 〜850 ℃の温度域での冷却速
度と、溶接部のヒューイ試験における腐食速度即ち耐粒
界腐食性との関係を示す。図5から明らかなように、固
溶化熱処理時における、500 〜850 ℃の温度域での冷却
速度が1℃/sec未満では、その加熱温度が1050℃の場合
でも、溶接金属の耐粒界腐食性が著しく低下した。
【0063】実施例4 表8に示した、本発明の範囲内の化学成分組成を有する
供試鋼jおよびkの鋼塊を、熱間圧延工場において、表
9に符号〜で示す、本発明の範囲内の加熱温度およ
び仕上げ温度で熱間圧延し、または、上記鋼塊を熱間圧
延後、本発明の範囲内の温度で焼鈍し、20mmの厚さの鋼
板からなる本発明供試体No.18 〜20を製造した。比較の
ために、熱間圧延時の加熱温度または仕上げ温度が、表
9の符号〜で示す本発明の範囲外である、20mmの厚
さの鋼板からなる比較用供試体No.21 〜24を製造した。
【0064】
【表8】
【0065】
【表9】
【0066】上述した本発明供試体No.18 〜20および比
較用供試体No.21 〜24を、UOE加工により、外径20イ
ンチの溶接鋼管を製造する場合と同様の管体を成形し
た。そのときの管体成形性を表9に併せて示す。表9か
ら明らかなように、熱間圧延した後、焼鈍処理を施した
場合であって、焼鈍温度が本発明の範囲を外れて高い比
較用供試体No.21 は、管体成形時に皺が発生した。そし
て、焼鈍温度が本発明の範囲を外れて低い比較用供試体
No.24 は、管体成形が不能であった。
【0067】熱間圧延後の焼鈍処理を施さない場合であ
って、熱間圧延時の加熱温度が本発明の範囲を外れて高
い比較用供試体No.23 は、管体成形時に皺が発生した。
そして、仕上げ温度が本発明の範囲を外れて低い比較用
供試体No. 22は、管体成形が不能であった。これに対し
て、熱間圧延した後、焼鈍処理を施した場合の焼鈍温
度、および、熱間圧延後の焼鈍処理を施さない場合の熱
間圧延時の加熱温度および仕上げ温度が、何れも本発明
の範囲内である本発明供試体No.18 〜20の管体成形性は
極めて良好であった。
【0068】実施例5 表8に示した、本発明の範囲内の化学成分組成を有する
供試鋼jおよびkの鋼塊を、本発明の範囲内の条件で、
熱間圧延または熱間圧延後焼鈍し、得られた20mmの厚さ
の原板およびを、UOE加工により管体に成形して
素管を調製した。この素管のシーム部を、表8に示した
ワイヤCまたはEおよび表6に示したフラックスaを使
用し、2電極サブマージアーク溶接により溶接した。か
くして、溶接金属の化学成分組成、フェライト相の体積
率(αf )、0.2%耐力を示す指標(σ0.2)、フェライト
相の耐孔食性指数(αP1)およびオーステナイト相の耐
孔食性指数(γP1)が何れも本発明の範囲内である、20
インチの外径の溶接鋼管からなる、表10に示す本発明供
試体No.21 〜23を調製した。
【0069】比較のために、本発明の範囲内の化学成分
組成および製造条件の原板およびに対し、表6に示
したフラックスaと表8に示したワイヤA〜Dを使用し
て溶接し、溶接金属のフェライト相の体積率(αf )、
0.2%耐力を示す指標 (σ0.2)、フェライト相の耐孔食性
指数(αP1)およびオーステナイト相の耐孔食性指数
(γP1)の何れか1つが本発明の範囲外である、20イン
チの外径の溶接鋼管からなる、表10に併せて示す比較用
供試体No.25 〜28を調製した。
【0070】
【表10】
【0071】本発明供試体No.21 〜23および比較用供試
体No.25 〜28に対して、1050℃の温度による加熱と、50
0 〜850 ℃の範囲内の温度域における20℃/secの速度に
よる冷却とからなる固溶化熱処理を施した。このような
固溶化熱処理が施された各供試体から、引張り試験片、
シャルピー衝撃試験片、全面腐食試験片(厚さ3mm×幅
20mm×長さ30mm) 、孔食試験片(厚さ3mm×幅40mm×長
さ40mm) および応力腐食割れ試験片(厚さ2mm×幅10mm
×長さ115mm)を、各試験片の中心が溶接金属の中心とな
るように採取した。また、各供試体の母材からも上記と
同様の試験片を採取した。
【0072】上述した各試験片により、引張り強度、−
20℃の吸収エネルギー、耐全面腐食性、耐孔食性および
耐応力腐食割れ性を測定し、その測定結果を表11に示
した。なお、耐応力腐食割れ性は、次のようにして測定
した。即ち、図6に概略正面図で示す、試験片Aの長さ
方向両端部を、その上面から抑える2つのガラス製抑え
具2,2と、試験片Aの長さ方向中間部を、その下面か
ら押し上げる所定間隔をあけた2つのガラス製押し上げ
具3,3とからなる4点曲げ治具1を使用した。上記4
点曲げ治具1により試験片Aを4点曲げして、試験片A
の表面に0.5%の歪みを付加し、その状態で、試験片A
を、20%NaCl −10atmCO2の150 ℃の条件下に720 時間浸
漬したときの、試験片Aに生じた応力腐食割れの有無
(以下、4点曲げ試験という)によって評価した。
【0073】
【表11】
【0074】表10および表11から明らかなように、
溶接金属のフェライト相の耐孔食性指数(αP1)または
オーステナイト相の耐孔食性指数(γP1)が母材のαP1
およびγP1の低い方の値よりも小である比較用供試体N
o.25 およびNo.28 は、溶接金属に孔食が発生し、耐孔
食性が悪かった。溶接金属のフェライト相の体積率(α
f )が本発明の範囲を外れて少ない比較用供試体No.26
は、4点曲げ試験で溶接金属に割れが発生し、耐応力腐
食割れ性が悪かった。そして、溶接金属のフェライト相
の体積率(αf )が本発明の範囲を外れて多い比較用供
試体No.27 は、−20℃の吸収エネルギーが劣っていた。
【0075】これに対し、本発明供試体No.21 〜23は、
引張り強度、−20℃の吸収エネルギー、耐全面腐食性、
耐孔食性および耐応力腐食割れ性のすべてにおいて優れ
ていた。
【0076】以上述べたように、この発明の方法によれ
ば、13Cr鋼と同等の0.2%耐力(400MPa以上) を有しそし
て靭性に優れ、且つ、塩化物またはC02 を含む環境下に
おいてSUS316鋼以上の耐全面耐食性、耐孔食性および耐
応力腐食割れ性を有する2相ステンレス溶接鋼管を経済
的に製造することができる、工業上有用な効果がもたら
される。
【図面の簡単な説明】
【図1】ニッケル含有量と、孔食電位および 0℃,-50
℃の吸収エネルギーとの関係を示すグラフである。
【図2】フェライト相の体積率(αf )と、 0℃,-50
℃の吸収エネルギー、伸び、および、鋼板の端面割れと
の関係を示すグラフである。
【図3】溶接金属の酸素含有量と、溶接金属の−20℃に
おける吸収エネルギーおよび孔食試験による溶接部の腐
食速度との関係を示すグラフである。
【図4】固溶化熱処理時の加熱温度と、溶接部のヒュー
イ試験における腐食速度、溶接金属の−20℃における吸
収エネルギーおよびフェライト相の体積率(αf )との
関係を示すグラフである。
【図5】500 〜850 ℃の温度域での冷却速度と、ヒュー
イ試験における溶接金属の腐食速度即ち耐粒界腐食性と
の関係を示すグラフである。
【図6】耐応力腐食割れ性の測定に使用する4点曲げ治
具の概略正面図である。
【符号の説明】
1 4点曲げ治具、 2 抑え具、 3 押し上げ具、 A 試験片。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.6 識別記号 FI C22C 38/58 C22C 38/58 (56)参考文献 特開 平6−240411(JP,A) 特開 平2−298235(JP,A) (58)調査した分野(Int.Cl.6,DB名) C21D 8/10 C21D 9/08 C22C 38/00 302

Claims (2)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 炭素(C) : 0.05wt.% 以下、 シリコン(Si): 1.5 wt.% 以下、 マンガン(Mn): 2.0 wt.% 以下、 ニッケル(Ni): 3.0〜5.0 wt.%、 クロム(Cr) :21.0〜25.0wt.%、 窒素(N) : 0.25wt.% 以下、および、 残り:Feおよび不可避不純物、からなり、 下記(1) 式 σ0.2 =20×Cr(%) +11×Mn(%) − Ni(%)+ 133×N(%)−38 ─────(1) によって求められる0.2%耐力を示す指数 (σ0.2)が400
    以上である化学成分組成を有する鋼塊または鋼片を調製
    し、 前記鋼塊または鋼片を熱間圧延して鋼板を調製し、次い
    で、前記鋼板に対し、900 ℃以上、下記(2) 式によって
    求められるT(℃)以下の範囲内の温度により加熱し次
    いで冷却することからなる焼鈍を施すことによって原板
    を調製し、 T=71×Ni(%) +6×Mn(%) −36×Cr(%) −42×Si(%) +1037×C(%)+1113× N(%)+1608 ─────(2) 次いで、前記原板を管体に成形して素管を調製しそして
    素管のシーム部を溶接し、前記シーム部の溶接金属が、 炭素(C) : 0.05wt.% 以下、 シリコン(Si): 1.5 wt.% 以下、 マンガン(Mn): 2.0 wt.% 以下、 ニッケル(Ni): 3.0〜5.0 wt.%、 クロム(Cr) :21.0〜25.0wt.%、 窒素(N) : 0.25wt.% 以下、 酸素(O) : 0.035 wt.% 以下、および、 残り:Feおよび不可避不純物、からなり、且つ、前記0.
    2%耐力 (σ0.2)を示す指数が 400以上である化学成分組
    成を有する溶接鋼管を調製し、 次いで、前記溶接鋼管に対し、900 〜1150℃の範囲内の
    温度による加熱と、500 〜850 ℃の範囲内の温度域にお
    ける1℃/sec以上の速度による冷却とからなる固溶化熱
    処理を施し、 かくして、前記溶接鋼管の母材のフェライト相の体積率
    αf が0.40〜0.60の範囲内であり、そして、前記母材
    の、下記(3) 式によって求められるフェライト相の耐孔
    食性指数(αP1)および下記 (4)式によって求められる
    オーステナイト相の耐孔食性指数(γP1)が何れも23.5
    以上であり、 αP1=23×Cr(%) /(3×αf + 20) ────────────────(3) γP1=20×Cr(%) /(3×αf + 20)− 16 ×N(%)/ (αf −1) ────(4) そして、前記溶接鋼管のシーム部溶接金属の、前記フェ
    ライト相の体積率(αf )が0.30〜0.50の範囲内であ
    り、そして、前記溶接金属のフェライト相の耐孔食性指
    数(αP1)およびオーステナイト相の耐孔食性指数(γ
    P1)が、前記母材の前記αP1および前記γP1のうちの何
    れか低い値よりも大である2相ステンレス溶接鋼管を製
    造することを特徴とする、強度、靭性および耐食性に優
    れた2相ステンレス溶接鋼管の製造方法。
  2. 【請求項2】 炭素(C) : 0.05wt.% 以下、 シリコン(Si): 1.5 wt.% 以下、 マンガン(Mn): 2.0 wt.% 以下、 ニッケル(Ni): 3.0〜5.0 wt.%、 クロム(Cr) :21.0〜25.0wt.%、 窒素(N) : 0.25wt.% 以下、および、 残り:Feおよび不可避不純物、からなり、 下記(1) 式 σ0.2 =20×Cr(%) +11×Mn(%) − Ni(%)+ 133×N(%)−38──────(1) によって求められる0.2%耐力を示す指数 (σ0.2)が400
    以上である化学成分組成を有する鋼塊または鋼片を調製
    し、 前記鋼塊または鋼片に対して、下記(2) 式で求められる
    T(℃)以下の温度で加熱し、そして、900 ℃以上の温
    度で仕上げることからなる熱間圧延を施すことによっ
    て、原板を調製し、 T=71×Ni(%) +6×Mn(%) −36×Cr(%) −42×Si(%) +1037×C(%)+1113× N(%)+1608 ─────(2) 次いで、前記原板を成形して素管を調製しそして素管の
    シーム部を溶接し、前記シーム部の溶接金属が、 炭素(C) : 0.05wt.% 以下、 シリコン(Si): 1.5 wt.% 以下、 マンガン(Mn): 2.0 wt.% 以下、 ニッケル(Ni): 3.0〜5.0 wt.%、 クロム(Cr) :21.0〜25.0wt.%、 窒素(N) : 0.25wt.% 以下、 酸素(O) : 0.035 wt.% 以下、および、 残り:Feおよび不可避不純物、からなり、且つ、前記0.
    2%耐力を示す指数 (σ0.2)が 400以上である化学成分組
    成を有する溶接鋼管を調製し、 次いで、前記溶接鋼管に対し、900 〜1150℃の範囲内の
    温度による加熱と、500 〜850 ℃の範囲内の温度域にお
    ける1℃/sec以上の速度による冷却とからなる固溶化熱
    処理を施し、 かくして、前記溶接鋼管の母材のフェライト相の体積率
    αf が0.40〜0.60の範囲内であり、そして、前記母材
    の、下記(3) 式によって求められるフェライト相の耐孔
    食性指数(αP1)および下記 (4)式によって求められる
    オーステナイト相の耐孔食性指数(γP1)が何れも23.5
    以上であり、 αP1=23×Cr(%) /(3×αf + 20) ────────────────(3) γP1=20×Cr(%) /(3×αf + 20)− 16 ×N(%)/ (αf −1) ────(4) そして、前記溶接鋼管のシーム部溶接金属の、前記フェ
    ライト相の体積率(αf )が0.30〜0.50の範囲内であ
    り、そして、前記溶接金属のフェライト相の耐孔食性指
    数(αP1)およびオーステナイト相の耐孔食性指数(γ
    P1)が、前記母材の前記αP1および前記γP1のうちの何
    れか低い値よりも大である2相ステンレス溶接鋼管を製
    造することを特徴とする、強度、靭性および耐食性に優
    れた2相ステンレス溶接鋼管の製造方法。
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