JP2544745B2 - α−メチルスチレンの製造方法 - Google Patents

α−メチルスチレンの製造方法

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Description

【発明の詳細な説明】 〔産業上の利用分野〕 本発明は、ジメチルフエニルカルビノールからα−メ
チルスチレンを高選択率及び高収率で製造する方法に関
する。α−メチルスチレンは、ポリマー原料あるいは農
薬、界面活性剤等の化学原料として有用な化合物であ
る。
〔従来の技術〕
ジメチルフエニルカルビノールを脱水してα−メチル
スチレンを製造する方法としては、(1)硫酸、りん
酸、アルカリ金属の酸性硫酸塩、等の無機酸性触媒の存
在下に行なう方法、(2)有機スルホン酸、有機カルボ
ン酸等の有機酸性触媒の存在下に行なう方法、(3)強
酸性イオン交換樹脂、活性白土等の固定酸触媒の存在下
に行なう方法、などが知られている。
上記のうち、(1)の方法としては、例えば、特開昭
62−164637号公報には、カルビノール類100部に対し、
0.008〜0.15重量部の濃硫酸の存在下に脱水する方法が
開示されている。しかしながらこの方法は、α−メチル
スチレンのオリゴマーが若干生成する点、及び未反応の
ジメチルフエニルカルビノールが残存する点において工
業的な連続的製法としては、十分満足なものではなかつ
た。また、特公昭49−45853号公報には、NaHSO4を触媒
に用いる方法が開示されているが、この方法では、触媒
が反応中に析出し、ライン閉塞などの問題がある上、か
なりの段数を持つ蒸留塔やスラリーを循環する設備を要
する等の難点を有していた。
一方、有機酸性触媒を用いる(2)の方法として、特
公昭31−9875号公報では、有機カルボン酸を触媒として
用いているが、触媒の使用量が多く、かつ転化率が不十
分である等の難点がある。また、特開昭56−145226号公
報には、有機スルホン酸またはスルホン酸エステルを触
媒として用いる方法が開示されているが、高温を要する
こと、触媒が生成物とともに留出する為に触媒費用が割
高になる等の欠点があつた。
さらに(3)の方法として特開昭59−67231号公報に
開示される強酸型イオン交換樹脂を用いる方法では、触
媒の経時劣化が起こり長期の安定なα−メチルスチレン
の高収率な生成が困難であるという工業的方法としては
本質的な問題がある。
これらの方法の他、気相でアルミナ、チタニア等の金
属酸化物触媒と接触させる方法(特公昭52−39017号公
報等)も知られているが、この方法はジメチルフエニル
カルビノールを高温下気相で処理する為に高価な加熱シ
ステムを要し多大な設備費を要すること、さらに触媒の
経時劣化にも問題がある等の難点があつた。
〔発明が解決しようとする問題点〕
本発明は、上記のような従技術に伴う問題点を解決す
るもので、硫酸触媒を用いてジメチルフエニルカルビノ
ールからα−メチルスチレンを高転化率、高選択率でか
つ簡便な設備にて連続的に製造する工業的方法を提供し
ようとするものである。
〔問題点を解決するための手段〕
本発明によるα−メチルスチレンの製造方法は、ジメ
チルフエニルカルビノールを硫酸触媒を用いて、溶媒と
してα−メチルスチレンのオリゴマーを用い、反応液中
のα−メチルスチレン10wt%以下、硫酸濃度を0.1〜1wt
%に保ちながら連続的に脱水反応蒸留を行なわせるもの
である。
本発明の方法に原料として用いられるジメチルフエニ
ルカルビノールとしては、特に高純度である必要はな
く、一般に15〜85%のものが用いられる。例えば、クメ
ンの酸化によるフエノールとアセトンを製造する際に副
性するもの、あるいはクメンを酸化して得られるクメン
ハイドロパーオキサイドを水素化して得られるもの等を
用いることができる。
本発明で用いられる反応方法は、原料のジメチルフエ
ニルカルビノールを連続的に供給し、特定の条件下に脱
水反応させ、生成するα−メチルスチレンと水を連続的
に留出させる反応蒸留方式で行なう。本発明の反応蒸留
方式に従う実施方法に用いられる装置の一例を第1図に
示した。ここで1は反応器、2は擬縮器、3は生成物受
槽、4はスチーム等の加熱媒体、5は原料ジメチルフエ
ニルカルビノールフイード口、6は触媒硫酸の投入口、
7は冷却媒体、8、9は生成分取り出し口を示す。反応
蒸留を行なう際、特に還流をかけたり、段数を設置して
精留効果を持たせる必要はなく、単蒸留形式で十分であ
る。
反応蒸留は、反応液中のα−メチルスチレンの濃度が
10wt%を超えないように、原料ジメチルフエニルカルビ
ノールを連続的にフイードするとともに、生成物である
α−メチルスチレン及び水を留出除去する。反応液中の
α−メチルスチレンの濃度が10wt%を超えると、α−メ
チルスチレンオリゴマーの生成が増大し収率の低下を招
く。α−メチルスチレンの濃度を10wt%以下に保つ方法
としては、反応温度、反応圧力、原料のフイード速度等
を調節して行なう。
反応溶媒としては、α−メチルステレンのオリゴマー
が用いられる。α−メチルスチレンのオリゴマーを用い
ると、反応時α−メチルスチレンのオリゴメリゼーシヨ
ンと、α−メチルスチレンオリゴマーの分解によるα−
メチルスチレンの生成速度とを平衡状態に達することが
でき、結果的に100%近い選択率が達成されるので特に
好ましい。
触媒として反応器に供給する硫酸の濃度としては、反
応液中の硫酸濃度として、特に0.1〜1tw%の範囲が好ま
しい。硫酸濃度が低すぎると反応転化率が低下したり、
また高すぎると重質物が生成したりして好ましからざる
結果を生じる。反応蒸留による硫酸の留出ロスは極く微
量であり、硫酸触媒の供給は、定常的である必要はな
く、間欠的に供給することも可能である。
反応温度は、反応器内のα−メチルスチレンの濃度を
10wt%以下に保つ範囲であれば特に制限はないが、一般
に60〜180℃、好ましくは80〜150℃程度が適当である。
反応温度が低ずきると、転化率が低下したり、原料中に
不純物としてフエノールを含む場合にはp−クミルフエ
ノールを生成するなど選択率が低下する。また、反応温
度が高すぎると、原稿のジメチルフエニルカルビノール
が留出してしまい転化率が低下する等の問題点を生じ
る。
反応圧力についても、α−メチルスチレン濃度が10%
以下に保たれる範囲であれば特に制限はないが、生成す
る水及びα−メチルスチレンの留出が容易にする為に一
般に減圧下で行なうのが好ましい。特に好適な範囲とし
ては20〜300mmHg程度である。
〔発明の効果〕
本発明によれば、ジメチルフエニルカルビノールを脱
水してα−メチルスチレンを製造するにあたり、従来知
られた方法に比し、簡便な設備を用い、非常に少ない触
媒の使用量にてきわめて高い収率を長期にわたり安定的
に得ることができる。
本発明の副次効果として、原料として用いるジメチル
フエニルカルビノール溶液中に若干のα−メチルスチレ
ンのオリゴマーを含むもの、例えば、クメンの酸化によ
りフエノールとアセトンを製造する際に副生するもの、
あるいは、クメンを酸化して得られるクメンハイドロパ
ーオキサイドを水素化して得られるもの等のジメチルフ
エニルカルビノールの脱水を行なう際に、それらのオリ
ゴマーも分解されてα−メチルスチレンを生成すること
により収率が向上するという効果がある。
〔実 施 例〕
以下本発明を実施例により説明するが、本発明はこれ
ら実施例に限定されるものではない。
実施例−1 温度計、撹拌機、及び蒸発ガス及び反応液の抜き出し
ノズルを設置した200mlのガラス製フラスコに、ジメチ
ルフエルカルビノールの78%キユメン溶液を120g/hrの
速度で連結的にフイードした。硫酸のフイードは、反応
器内の硫酸濃度が0.2%を保つように水とともに留出ロ
スする分を補給した。反応温度130℃、反応圧力を70mmH
gにて反応を行ない、生成したα−メチルスチレンと水
は連続的に留出しこれを水冷コンデンサーにて凝縮して
補集し留出速度を測定した。又、留出液組成は液−液分
離後、ガスクロにて内部標準法により組成を分析した。
反応は100時間連続的に行なつた。反応時間約50時間目
には反応器内の液量及び反応液、生成液組成は、ほぼ一
定値に安定し重質物の生成による液量の増加は認められ
ず反応器内液を抜き出す必要はなかつた。反応時間100
時間目の転化率は99.5%、収率は99.2%であつた。ま
た、この時の反応器内液の組成はα−メチルスチレンが
3.5wt%、ジメチルフエニルカルビノールが0.3wt%、残
りは大部分がα−メチルスチレンのオリゴマーであつ
た。なお、転化率及び収率は次式により計算した。
転化率(%)={単位時間に反応器に供給されるジメチ
ルフエニルカルビノール量(モル)−単位時間に反応器
から抜き出されるジメチルフエニルカルビノール量(モ
ル)}×100÷{単位時間に反応器に供給されるジメチ
ルフエニルカルビノール量(モル)} 収率(%)={単位時間に反応器から抜き出されるα−
メチルスチレン量(モル)}×100÷{単位時間に反応
器に供給されるジメチルフエニルカルビノール量(モ
ル)}実施例−2 反応温度を100℃、反応圧力を50mmHgとした他の実施
例−1と同様にして反応を行なつた。このときも反応器
内の液量等は、ほぼ一定値に安定しており反応時間100
時間目の転化率は、99.0%、収率は98.8%であつた。こ
の時の反応器内液の組成は、α−メチルスチレンが7.5w
t%、ジメチルフエニルカルビノールが0.9wt%、残りは
大部分がα−メチルスチレンのオリゴマーであつた。
比較例−1 反応温度を130℃、反応圧力200mmHgとした他は、実施
例−1と同様にして反応を行なつた。この時は、反応器
内の液量は一定せず遂次的に増加した為に、一定値を保
つように連続的に抜き出した。反応時間100時間目には
系はほぼ定常状態に達し、この時の転化率は、98%、収
率は88.3%であつた。反応器内液の組成を分析したとこ
ろ、α−メチルスチレンが13wt%、ジメチルフエニルカ
ルビノールが0.2wt%、残りは大部分がα−メチルスチ
レンのオリゴマーであつた。
比較例−2 反応温度70℃、反応圧力50mmHg、反応器内の硫酸濃度
0.5%とした他は実施例−1と同様にして反応を行なつ
た。反応器内の液量は遂次的に増加した為に、一定値を
保つように連続的に抜き出した。反応時間100時間目に
は系はほぼ定常状態に達し、この時の転化率は90%、収
率は85%であつた。反応器内液の組成を分析したとこ
ろ、α−メチルスチレンが18%、ジメチルフエニルカル
ビノールが45%、残りは大部分がα−メチルスチレのオ
リゴマーであつた。
【図面の簡単な説明】
第1図は本発明の反応蒸留に用いられる装置の一例を示
す模式図である。 1……反応器、2……凝縮器、3……受器、 4……加熱源、5……原料供給ライン、 6……触媒供給ライン、7……冷却媒体供給ライン、 8……内液抜出しライン、9……留出液抜出しライン

Claims (1)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】ジメチルフェニルカルビノールから硫酸触
    媒を用いて、脱水反応によりα−メチルスチレンを製造
    する方法において、溶媒としてα−メチルスチレンのオ
    リゴマーを用い、反応液中のα−メチルスチレン濃度を
    10wt%以下、硫酸濃度を0.1〜1wt%に保ちながら連続的
    に反応蒸留を行なうことを特徴とするα−メチルスチレ
    ンの製造方法。
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