JP2508816B2 - 顔料の製造方法 - Google Patents

顔料の製造方法

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Description

【発明の詳細な説明】 [産業上の利用分野] 本発明は光干渉および光散乱により発色する新規な顔
料の製造方法に関する。本発明の製造方法によれば、こ
の新規顔料の耐候性を一層向上させることができる。
[従来の技術] 従来より、雲母表面に二酸化チタンが被覆されたパー
ルマイカ顔料が知られている。このパールマイカ顔料は
光干渉により真珠のような光沢を発色し、二酸化チタン
層の厚さを変化させることにより種々の干渉色を得るこ
とができる。また特開昭59−78265号、特公昭60−3345
号などの公報には、パールマイカ顔料の二酸化チタン層
の表面にさらにクロム化合物を析出させて耐候性を改良
した顔料も開示されている。
[発明が解決しようとする課題] しかしパールマイカ顔料を用いた塗料より形成された
塗膜では、金属の光輝感が得られずメタリック塗装とし
ては不十分である。またアルミニウム粉末を含有するメ
タリック塗膜に比べて、正面から見た時の明度と斜め方
向から見た時の明度との差が小さく、いわゆるフリップ
フロップ性に劣るとい不具合がある。そこで本発明者ら
は、パールマイカ顔料またはクロム化合物が析出された
パールマイカ顔料表面に、銀などの金属または合金より
なり全表面積の0.05〜95%の表面を占めるように島状に
点在する光輝部をもつ新規な顔料を出願している(特願
昭62−265795号、本発明の出願時未公開)。この顔料に
より形成されたメタリック塗膜は、金属による光輝感と
光干渉による干渉色および反射、散乱による散乱色を有
し、フリップフロップ性にも優れている。
本発明者らはこの新規顔料について検討を重ねるうち
に、製造される顔料の耐候性に不具合があることが判明
した。例えば、パールマイカ表面に無電解めっき法によ
り銀を島状に付着させた顔料では青味の発色を呈する
が、製造条件の変動などにより黄味の強い発色を呈する
ことがある。この顔料を塗料化して塗膜を形成し、QUV
装置で500時間の促進耐候性試験を行なったところ、試
験中に黄味が抜けることが明らかとなった。また、この
現象はハンターのLabにおけるb値で−2よりプラス側
の黄味の強い顔料で著しい(Δb値で1〜2)ことも明
らかとなった。
本発明は、変色の原因となる黄味を顔料の製造過程で
抜きとることを解決原理とする。
[課題を解決するための手段] 本発明の顔料の製造方法は、セラミック製鱗片状の基
材全表面に無機化合物被覆層を形成する第1工程と、無
電解めっき法により無機化合物被覆層表面に無機化合物
被覆層の全表面積に対して0.05〜95%となるように島状
に点在する金属質の光輝部を形成し黄味を有する粉体を
得る第2工程と、第2工程で形成された粉体に紫外線を
照射する第3工程と、を行うことを特徴とする。
セラミック性鱗片状の基材としては、雲母、二硫化モ
リブテンなどを用いることができる。コスト面などから
雲母が特に推奨され、白雲母、黒雲母または金雲母など
の天然雲母、あるいは合成雲母を用いることができる。
塗料用顔料とする場合は、厚さが500〜1000Å程度、長
さが3〜50μm程度の粒度のものを用いることが好まし
い。
第1工程は、上記基材表面に無機化合物被覆層を形成
する工程である。無機化合物被覆層を構成する無機化合
物としては、二酸化チタン、酸化鉄、水酸化アルミニウ
ム、水酸化クロム、リン酸クロムなどから一種または複
数種類選択して用いられる。
例えば二酸化チタンで被覆する場合には、米国特許第
4038099号公報に記載されているような硫酸チタニル法
で行なうことができる。この硫酸チタニル法では、予め
スズ化合物で処理された基材の水性スラリー中に酸性の
硫酸チタニル溶液を添加する。そして70〜110℃に加熱
すると、硫酸チタニルは加水分解して基材表面には含水
無定形水酸化チタンが被覆される。これをろ過し焼成す
ることにより、基材表面に二酸化チタン層が形成され
る。この二酸化チタン層は水和物であってもよい。また
基材に雲母を用いるのであれば、数多く市販されている
パールマイカを用いることにより第1工程を省略するこ
ともできる。
またクロム化合物で被覆する場合には、例えば特公昭
60−3345号公報に見られるように、塩化物または硫酸塩
などの可溶性クロム塩の溶液を加水分解することにより
水酸化クロムを析出させる方法、あるいは特開昭59−78
265号公報に見られるように、鉄またはマンガンのイオ
ンおよびクロムイオンを含む溶液から、クロムを水酸化
物、炭酸塩、リン酸塩あるいはメタアクリレート錯体と
して沈澱させる方法などを利用できる。
第2工程は、無機化合物被覆層表面に、金属質の光輝
部を島状に点在させて形成する工程である。この光輝部
を構成する金属としては、金、銀、銅、パラジウム、コ
バルトなどの金属、あるいはニッケル−リン、ニックル
−ホウ素、ニッケル−コバルト−リン、ニッケル−タン
グステン−リン、銀−金、コバルト−銀などの合金を用
いることができる。そしてこれらの金属のイオンを含有
する溶液から無電解めっき法を利用して光輝部が形成さ
れる。
この光輝部は、その占有面積の合計が無機化合物被覆
層の面積に対して0.05〜95%となるように形成される。
合計面積が0.05%より少ないと光輝部を形成した効果が
認められず、パールマイカなどと差異がなくなる。また
95%を超えると、金属をほとんど全面に被覆したのと同
様となり、透明感が乏しく真珠光沢が消失して平凡な色
調となる。
本発明の特色をなす第3工程は、第2工程で得られた
粉末に紫外線を照射する工程である。本発明者らはパー
ルマイカに銀を島状にめっきした新規顔料を塗料化し、
塗膜を形成してその塗膜に分光照射装置により各種波長
の紫外線を照射した。その結果、第2図に示すように20
0〜410nmの短波長の紫外線で黄味が抜けることが確認さ
れた。そして黄味が抜けた後の塗膜はもはや変退色しな
いことも明らかとなった。そこで本発明者らは、塗料化
する前の段階で顔料に紫外線を照射することを想起し、
鋭意研究の結果、紫外線照射された顔料は色調が安定し
た変退色が防止されることを見出して本発明を完成した
ものである。
照射される紫外線の波長および照射条件は、顔料を形
成する条件や、各工程で用いる材料の材質などにより異
なるので、実験によって最適な条件を決定することが必
要である。例えばパールマイカ表面に島状に銀めっきさ
れた顔料では、上記したように200〜400nmの波長の光が
最適であり、後述の実施例で詳述するように約400Joul/
cm2以上の照射量が必要である。
顔料に紫外線を照射するには、乾式で直接照射しても
よい。しかしこの顔料は粉末状であるので、そのまま撹
拌したり流動床として照射しても全面に均一に照射する
ことは困難である。また粉末の取扱上の不便さも伴うの
で、好ましい方法とはいえない。そこで水などの液体中
で懸濁状態とし、撹拌しながら照射することが望まし
い。例えばビーカなどの容器中で水と顔料を撹拌しなが
ら、上方より紫外線を照射する。紫外線は水を透過して
顔料に効率良く照射される。この場合、石英ガラス製の
ビーカを用いれば、容器の横方向から壁面を介して紫外
線を照射することも可能である。
さらに、光輝部は無電解めっき法で形成されるので、
光輝部形成後ろ過前にめっき浴または洗浄水中で紫外線
を照射することが好ましい。このようにすれば工数の増
大を抑制でき、工程上極めて有利である。この場合バッ
チ式に照射してもよいし、紫外線ランプの形状、配置方
法を検討して移動中のスラリーに連続的に照射すること
もできる。連続的に照射するように構成すれば、生産性
が一段と向上する。
[発明の作用および効果] 本発明の顔料の製造方法では、島状の光輝部が形成さ
れた顔料に紫外線が照射される。これにより製造中に付
着した不純物などの変退色しやすい成分は変退色し、変
退色しにくい安定した顔料となる。また顔料の色調も安
定し、ロットによる色調のばらつきも防止できる。
従って本発明によれば、耐候性に優れた新規顔料を容
易に、かつ安定して製造することができる。また光輝部
の形成に連続して無電解めっき浴中などで紫外線を照射
すれば、工数の増大を回避でき工程上極めて有利であ
る。
[実施例] 以下、実施例により本発明を具体的に説明する。
(実施例1) (第1工程) 雲母表面にルチル型二酸化チタンが被覆されたパール
マイカ(「イリオジン9103」メルク社製)を用意した。
従って第1工程は省略された。なお、このパールマイカ
では、西独国公開特許第2522527号公報の例2の製造方
法に従って雲母に二酸化チタンが被覆されている。
(第2工程) 上記パールマイカ15gを蒸溜水450mlに懸濁させてビー
カ中で撹拌する。そして硝酸銀50g/および28%アンモ
ニア水50ml/を含有する銀液30mlを上記懸濁液に常温
で一気に添加し、その後5分間撹拌する。さらに還元剤
としてホルマリン溶液(35%ホルムアルデヒド水溶液9m
lを蒸溜水で全量40mlとしたもの)20mlを一気に添加
し、その後55分間撹拌を続けた。得られた顔料は少し黄
味を帯びた青銀色を呈し、それぞれ銀からなる島状の光
輝部が合計重量で6.4重量%、占有面積の合計が72%の
割合で形成されている。
またこの顔料3.2gをろ過、水洗、乾燥後、アクリル−
メラミン系樹脂(固形分45%)86.4gに分散して塗料を
調製し、試験板に乾燥膜厚500μmとなるように塗装
後、130℃で20分間加熱して焼付け乾燥した。そして形
成された塗膜の色調を色差計(スガ試験機(株)製)に
て測色しハンターのLabで第1表に示す。またこの塗膜
をQUV装置を用いて500時間の促進耐候性試験を行い、試
験後の塗膜の色調を同様に測色して、促進前後の測色値
の差を第1表に示す。(第3工程) 第2工程直度で顔料がめっき浴中に懸濁している状態
で、第1図に示すように撹拌を続けなから、ビーカ1上
方10cmの距離から紫外線ランプ2(出力400W、フナコシ
(株)製)を用いて紫外線を照射した。そして照射量が
50、90、150、230、310および400Joul/cm2の時にそれぞ
れ顔料を採取し、前記と同様に塗料化、塗装、促進耐候
性試験を行ない、試験前後の色調を測色して、試験前の
測色値と前後の測色値の差とを第1表に示す。また照射
量と促進耐候性試験前のb値との関係を第3図に示す。
ちなみに、この実験条件の場合には、400Joul/cm2照射
するのに約48時間要した。
(評価) 第1表および第3図より、紫外線照射量が多くなるに
つれて顔料の黄味が小さくなり、促進耐候性試験後の変
退色も小さくなっていることがわかる。そして400Joul/
cm2照射すれば、顔料は黄味が抜けた青銀色を呈し、促
進耐候性試験後のb値の変化も−0.09と極めて小さく、
ほとんど変退色しないことがわかる。
(実施例2) 実施例1と同様の製造方法を再度行なって実施例2と
し、同様に測色した結果を第1表および第3図に示す。
第2工程で得られた紫外線照射前の顔料は、実施例1の
場合に比べて一層黄味を強く呈していたが、紫外線の照
射により実施例1とほぼ同等の色調となった。また実施
例1と同様に、紫外線の照射量が多くなるにつれて促進
耐候性試験前後の黄味抜けの程度が小さくなり、約400J
oul/cm2照射したものは青銀色を呈し耐候性にも優れて
いる。
(実施例3) 本実施例では、第2工程で用いるホルマリン溶液20ml
を一気に添加せず、0.5ml/分の速度で添加したこと以外
は実施例1と同様である。そして実施例1と同様に塗料
化、塗装、測色した結果を第1表および第3図に示す。
第2工程で得られた紫外線照射前の顔料は、実施例1お
よび実施例2に比べてさらに黄味を強く呈していたが、
紫外線の照射により実施例1および実施例2とほぼ同等
の色調となった。また実施例1および実施例2と同様
に、紫外線の照射量が多くなるにつれて促進耐候性試験
前後の黄味抜け程度が小さくなり、約400Joul/cm2照射
したものは青銀色を呈し耐候性にも優れている。
上記した各実施例の結果より、本発明の製造方法によ
れば色調のばらつきが抑制され、耐候性に優れた顔料が
得られることが明らかである。そし てこれらの効果は紫外線を照射する第3工程を行なった
ことに基因することも明らかである。
【図面の簡単な説明】
第1図は第3工程を行なっている状態を示す説明図、第
2図は紫外線の波長と照射後の顔料のb値との関係を示
すグラフ、第3図は紫外線照射量と照射後の顔料のb値
の変化の関係を示すグラフである。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 高木 芳雄 愛知県豊田市トヨタ町1番地 トヨタ自 動車株式会社内 (56)参考文献 特開 昭55−160061(JP,A)

Claims (1)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】セラミック製鱗片状の基材全表面に無機化
    合物被覆層を形成する第1工程と、 無電解めっき法により該無機化合物被覆層表面に該無機
    化合物被覆層の全表面積に対して0.05〜95%となるよう
    に島状に点在する金属質の光輝部を形成し黄味を有する
    粉体を得る第2工程と、 該第2工程で形成された粉体に紫外線を照射する第3工
    程と、を行うことを特徴とする顔料の製造方法。
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