JP2024033732A - 電池 - Google Patents

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Hiroki Sakaemura
綾子 島津
Ayako Shimazu
啓 生駒
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Abstract

【課題】容量維持性と耐デンドライト性に優れ、良好な耐熱性を有する電池を提供すること。【解決手段】正極、負極、非水電解質およびイオン伝導ポリマー膜を含む電池であって、上記非水電解質がLUMOエネルギーが1.9eV以上の溶媒を含み、上記イオン伝導ポリマー膜の透気度が1000秒/100cc以上かつイオン伝導度が1.0×10-5S/cm以上である電池。【選択図】なし

Description

正極、負極、非水電解質およびイオン伝導ポリマー膜を含む電池に関するものである。
近年、電池の軽量化および高エネルギー化に向け、金属Li負極電池、電池、空気電池などが盛んに研究されており、実用化に向けて正極、負極、セパレータ、電解質等の設計が進められている。なかでも、リチウム金属は、金属の中でも理論容量が最も高く、電位も最も低いため、理想的なアノード材料である。しかしながら、リチウム金属は反応性が高いため、作製される電池の安定作動に課題がある。そのため、非水電解質として、エーテルや高塩濃度電解質を用いることが検討されてきている。(特許文献1~2)
特開2006-236809号公報 特表2018-505538号公報
しかし、特許文献1~2に記載の電池は、充放電過程でデンドライトと呼ばれる針状結晶が形成され、短絡が起こりやすい。電気自動車等に要求される高電流密度での作動においては、特にデンドライトは形成されやすい。また、エーテルを非水電解質に含む場合、正極で起こる非水電解質由来の副反応生成物が電池性能を低下させることが知られている。
上記課題を解決するため、本発明は以下の特徴を有するものである。
[I]正極、負極、非水電解質およびイオン伝導ポリマー膜を含む電池であって、上記非水電解質がLowest Unoccupied Molecular Orbital(LUMO)エネルギーが1.9eV以上の溶媒を含み、上記イオン伝導ポリマー膜の透気度が1000秒/100cc以上かつイオン伝導度が1.0×10-5S/cm以上である電池。
[II]上記正極が下記化学式(1)で表されるリチウム含有オリビン型リン酸塩を含む[I]に記載の電池。
LiMFe1-xPO (1)
式中で、MはMn、Cr、Co、Cu、Ni、V、Mo、Ti、Zn、Al、Ga、Mg、B、Nbの少なくとも1種以上を表し、0≦x≦1である。
[III]上記イオン伝導ポリマー膜の、下記の条件で測定される膜厚変化率(T0/T1)が0.3以上1.0未満である、[I]または[II]に記載の電池。
(膜厚変化率の測定条件)
ポリマー膜を非水電解質(1M LiTFSI EC/DEC=1/1、三井化学社製)に25℃の環境下で24時間浸漬し、浸漬前後のポリマー膜厚みを高精度デジタル測長器(ミツトヨ社製、型番:VL-50)にて測定し、(1)式に代入して計算した。
膜厚変化率=(T0/T1) (1)
T0:非水電解質浸漬前のポリマー膜の厚み(cm)
T1:非水電解質浸漬後のポリマー膜の厚み(cm)
[IV]上記負極が金属リチウムである、[I]または[II]に記載の電池。
[V]上記非水電解質がエーテル系溶媒を含む、[I]または[II]に記載の電池。
[VI]上記LUMOエネルギーが1.9eV以上の溶媒のHighest Occupied Molecular Orbital(HOMO)エネルギーが-11.5eV以下である、[I]または[II]に記載の電池。
[VII]上記イオン伝導ポリマー膜が無孔領域と微多孔膜を有する複合膜である[I]または[II]に記載の電池。
[VIII]上記無孔領域の厚みが0.1μm以上5μm以下である[VII]に記載の電池。
[IX]上記イオン伝導ポリマー膜の150℃熱収縮率が10%以下である、[I]または[II]に記載の電池。
[X]上記イオン伝導ポリマー膜を構成するポリマーが芳香族ポリアミドである[I]または[II]に記載の電池。
[XI]上記正極と上記負極の少なくとも一方とイオン伝導ポリマー膜が近接して有する[I]または[II]に記載の電池。
本発明によれば、容量維持性と耐デンドライト性に優れ、良好な耐熱性を有する電池を提供できる。
以下に本発明を詳細に説明する。
本発明は正極、負極、非水電解質およびイオン伝導ポリマー膜を含む電池であって、上記非水電解質がLUMOエネルギーが1.9eV以上の溶媒を含み、上記イオン伝導ポリマー膜の透気度が1000秒/100cc以上かつイオン伝導度が1.0×10-5S/cm以上である電池に関する。本発明の効果を実現するため、上記特性を同時に満たす必要がある。
本発明の実施形態において用いられる正極は、正極活物質としては例えばマンガン、コバルト、ニッケル、及びチタンから選ばれる少なくとも1種の遷移金属及びリチウムを含むリチウム金属酸化物(コバルト酸リチウムやマンガン酸リチウムなど)といった公知の正極活物質を含む。容量維持率の観点から上記正極が下記化学式(1)で表されるリチウム含有オリビン型リン酸塩であることが好ましく、リン酸鉄リチウムがより好ましい。
LiMFe1-xPO (1)
式中で、MはMn、Cr、Co、Cu、Ni、V、Mo、Ti、Zn、Al、Ga、Mg、B、Nbの少なくとも1種以上を表し、0≦x≦1である。
本発明の負極は、活物質として金属イオン等を吸蔵・放出することができる材料であれば特に限られるものでは無く、例えば、Li、Sn、Si、In、リチウム合金粒子(リチウムと、チタン、マグネシウム、又はアルミニウム等とのリチウム合金粒子)、及び炭素系材料(カーボン、ハードカーボン、ソフトカーボン、及びグラファイト等)の公知の負極活物質を適宜用いることができる。なかでも、金属リチウムを用いることが、電池の高エネルギー化の観点で好ましい。さらに、負極のリチウム換算濃度は、負極全体の1.0mol/l以上が好ましい。リチウム換算濃度が1.0mol/l以上であれば、高容量化ができ、好ましい。上限値は特に限定されるものではないが、100mol/l以下である。
本発明の非水電解質とは、非水系溶媒と電解質の混合体である。非水電解質に用いられる溶媒は、特に限定されることなく、例えば従来のリチウムイオン電池に用いられている有機溶媒を使用することができる。
本発明の非水電解質は、LUMOエネルギーが1.9eV以上の溶媒を含んでいる。LUMOエネルギーは、材料が1つの電子を受け入れるのに必要なエネルギーを表しており、LUMOエネルギーが低いほど、その材料は還元されやすく、高いほど耐還元性に優れている。LUMOエネルギーが1.9eV以上の溶媒を含んでいることで、負極表面上の副反応を抑制し、電池性能や寿命を高めることができる。特に金属リチウムなど還元性が高い負極を用いた際に高い効果を発現する。そのため、LUMOエネルギーが2.2eV以上の溶媒を含むことがより好ましく、2.5eV以上がさらに好ましく、2.8eV以上が特に好ましい。溶媒のLUMOエネルギーは、量子力学計算により求めることができる。LUMOエネルギーが1.9eV以上の溶媒は、エーテル系溶媒、フッ素系溶媒が用いられ、具体的には、1,2-ジメトキシエタン(DME)、1,2-エトキシエタン、ジエチルエーテル、エチレングリコールジアルキルエーテル、ジエチレングリコールジアルキルエーテル、トリエチレングリコールジアルキルエーテル、テトラエチレングリコールジアルキルエーテル、テトラヒドロフラン(THF)、アルキルテトラヒドロフラン、ジアルキルアルキルテトラヒドロフラン、アルコキシテトラヒドロフラン、ジアルコキシテトラヒドロフラン、1,3-ジオキソラン、アルキル-1,3-ジオキソラン、1,4-ジオキソラン、2-メチルテトラヒドロフランなどの有機溶媒およびこれらの誘導体や混合物などが好ましく用いられる。また、前記記載のLUMOエネルギーが2eV以上の溶媒のHOMOエネルギーが-11.5eV以下であることが好ましい。HOMOエネルギーは、材料が1つの電子を放出するのに必要なエネルギーを表しており、HOMOエネルギーが高いほど、その材料は酸化されやすく、小さいほど耐酸化性に優れている。HOMOエネルギーが-11.5eV以下であることで正極表面上の副反応を抑制し、電池性能や寿命を高めることができる。
本発明の非水電解質は、LUMOエネルギーが1.9eV以上の溶媒を20wt%以上99%以下含むことが好ましく、40wt%以上95%以下がより好ましく、45wt%以上90wt%以下が特に好ましい。LUMOエネルギーが1.9eV以上の溶媒の含有量を上記範囲とすることで、負極表面上の副反応に由来する電池性能や寿命の低下を抑制できる。また、電解質の溶解量が不十分となることで、非水電解質のイオン伝導度および電池性能が低下することを抑制し、好適となる。
非水電解質に含まれる電解質としては、アルカリ金属、特にリチウムのハロゲン化物、過塩素酸塩、チオシアン塩、ホウフッ化塩、リンフッ化塩、砒素フッ化塩、アルミニウムフッ化塩、トリフルオロメチル硫酸塩などが好ましく用いられる。例えば、過塩素酸リチウム(LiClO)、六フッ化リン酸リチウム(LiPF)、4フッ化ホウ酸リチウム(LiBF)、六フッ化砒素リチウム(LiAsF)、トリフルオロメタスルホン酸リチウム(LiCFSO)、ビストリフルオロメチルスルホニルイミドリチウム[LiN(CFSO]、臭化リチウム(LiBr)、リチウムビス(オキサレート)ボラート、リチウムジフルオロ(オキサレート)ボラート、リチウムビス(フルオロスルホニル)イミド(LiFSI)、リチウムビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミド(LiTFSI)、リチウムビス(ペンタフルオロエタンスルホニル)イミドなどのリチウム塩(電解質)などの1種以上の塩を用いることができるが、六フッ化リン酸リチウム、リチウムビス(フルオロスルホニル)イミド(LiFSI)が好ましい。
電解質の溶媒に対する溶解量は、0.5~7.0mol/lとすることが好ましく、より好ましくは0.8~5.0mol/l、さらには1.0~1.5mol/lが好ましい。また非水電解質には必要に応じて添加剤を用いてもよい。添加剤としては、ビニレンカーボネート、フルオロエチレンカーボネート、エチレンサルファイト、1,4-ブタンスルトン、プロパンサルトン、2,4-ジフルオロアニソール、ビフェニル、シクロヘキシルベンゼン等が挙げられ、これらのうちの1種類以上を用いてもよい。
本発明の実施形態において用いられるイオン伝導ポリマー膜(以下、「ポリマー膜」と称する場合がある)とは、電池として使用したときに、正極と負極間でのイオン伝導を可能にするポリマーを用いてなる膜である。本発明の実施形態においては、このイオン伝導ポリマー膜を含むことで、正極側から負極側への分解溶出物の溶出を抑制し、電池の容量維持性が増す。さらに、ポリマー膜ならではの、電池使用時の衝撃による各層の割れ欠けを防ぐことが出来るため、デンドライト発生による短絡や発火を抑制できる。その上、電極合剤層と電解質層の界面が滑らかとなり密着性が良くなることで界面抵抗値が小さくなり、電池特性も向上する。
本発明の実施形態に係るイオン伝導ポリマー膜の透気度は1000秒/100cc以上である必要がある。好ましくは5000秒/100cc以上、さらに好ましくは10000秒/100cc以上である。透気度が1000秒/100ccより小さいと、物理的な貫通孔を有することが多く、デンドライトなどの貫入を遮断する効果が得られない。透気度をかかる範囲とするためには、後述する製造方法でポリマー膜を形成することが好ましい。
本発明のイオン伝導ポリマー膜のイオン伝導度は、1.0×10-5S/cm以上である必要がある。ここでいうイオン伝導度とは、25℃環境下において後述する測定法で計測した値をさす。5.0×10-5S/cm以上であることが好ましく、1.0×10-4S/cm以上であることがより好ましく、5.0×10-4S/cm以上であることがさらに好ましい。イオン伝導度を上記範囲内とすることで、電池内部でのイオン透過性が高く、優れた出力特性やサイクル特性が得られる。イオン伝導度が1.0×10-5S/cm未満の場合、イオン透過性が低く、出力特性の低下が起き、繰り返し使用した際に容量劣化が大きくなる。イオン伝導度をかかる範囲とするためには、後述するポリマーを用いてポリマー膜を形成することが好ましい。
本発明のイオン伝導ポリマー膜は、無孔領域の厚さが20μm未満であることが好ましい。無孔領域とは、FE-SEMにて得られるポリマー膜の断面画像において、一方の界面からもう一方の界面に向かって界面と垂直な直線を引き、直線と交わる50nm以上の空隙の個数を求め、空隙が10個以下であれば無孔領域とみなす。イオン伝導ポリマー膜が無孔領域と微多孔膜からなる複合膜である場合、厚み方向の空隙の分布やサイズが変化しはじめる点を界面とみなす。無孔領域の厚さが20μm以上の場合、電池特性においてポリマー膜の抵抗が大きくなりすぎる上、軽量化が求められる飛翔体用電池として用いる場合、重量が重くなる。無孔領域の厚さは、好ましくは15μm以下、より好ましくは10μm以下、最も好ましくは5μm以下である。また、無孔領域の厚さが小さすぎると、電池のサイクル寿命が低下するため、好ましくは0.1μm以上、より好ましくは0.25μm以上、最も好ましくは0.4μm以上である。
本発明のイオン伝導ポリマー膜の実施形態において用いることができるポリマーは特に限定されないが、例えば、主鎖上に芳香族環を有するポリマーやポリフッ化ビニリデン等の含フッ素ポリマーが挙げられる。特に、主鎖上に芳香族環を有するポリマーが好適に使用でき、例えば芳香族ポリアミド(アラミド)、芳香族ポリイミド、芳香族ポリアミドイミド、芳香族ポリエーテルケトン、芳香族ポリエーテルエーテルケトン、芳香族ポリアリレート、芳香族ポリサルフォン、芳香族ポリエーテルサルフォン、芳香族ポリエーテルイミド、芳香族ポリカーボネートなどが挙げられる。また、複数のポリマーのブレンドとしてもよい。中でも薄膜化した際に高強度を維持しやすいことから、芳香族ポリアミド(芳香族ポリイミド前駆体である芳香族ポリアミド酸を含む)、芳香族ポリイミド、又は芳香族ポリアミドイミドがより好ましく、芳香族ポリアミドが特に好ましい。
本発明において好適に用いることができる芳香族ポリアミドとしては、下記化学式(1)および/または化学式(2)で表される繰り返し単位を有するものを挙げられる。
Figure 2024033732000001
Figure 2024033732000002
化学式(1)中のAr、Ar、及び化学式(2)中のArは芳香族基を含む基であり、それぞれ単一の基であってもよいし、複数の基で、多成分の共重合体であってもよい。また、芳香環上で主鎖を構成する結合手はメタ配向、パラ配向のいずれであってもよい。さらに、芳香環上の水素原子の一部が任意の基で置換されていてもよい。
芳香族ポリアミドは、化学式(1)のArおよびAr、あるいは化学式(2)のArの芳香族基の少なくとも一部が、電気吸引性基で置換されていることが好ましい。好ましくは、すべての芳香族基の合計の30~100mol%が、電子吸引性基で置換された芳香族基であり、より好ましくは、50~100mol%である。30mol%以上とすることで、有機溶媒への溶解性が良好となる。ここで、本発明における電子吸引性基とは、電気陰性度が2.5以上の基をいう。電子吸引性基として、例えば、フルオロ基、クロロ基、ブロモ基などのハロゲン基、トリフルオロメチル基などのハロゲン化アルキル基、ニトロ基、シアノ基、シアネート基、フェニル基などが挙げられる。
芳香族ポリアミドを構成する芳香族ジアミンの具体例としては、パラフェニレンジアミン、メタフェニレンジアミン、オルトフェニレンジアミン、4,4’-ジアミノジフェニルエーテル、3,4’-ジアミノジフェニルエーテル、2,2’-ジトリフルオロメチル-4,4’―ジアミノビフェニル、2,2’-ジトリクロロメチル-4,4’―ジアミノビフェニル、4,4’―ジアミノベンゾフェノン、3,3’―ジアミノベンゾフェノン、2―クロロ―1,4―フェニレンジアミン、2-トリフルオロメチル-1,4-フェニレンジアミン、5-トリフルオロメチル-1,3-フェニレンジアミン、4,’-オキシビス(3-トリフルオロメチル)アニリン、1,4-ビス(4-アミノ-2-トリフルオロメチルフェノキシ)ベンゼン、1,5’-ナフタレンジアミン、4,4’-ジアミノジフェニルスルホンなどが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
また、芳香族ジカルボン酸ハライドの具体例としては、テレフタル酸クロライド、2-クロロテレフタル酸クロライド、2-フルオロテレフタル酸クロライド、イソフタル酸クロライド、2-クロロイソフタル酸クロライド、2-フルオロイソフタル酸クロライド、2,3,5,6-テトラクロロイソフタル酸クロライド、2,3,5,6-テトラフルオロイソフタル酸クロライド、2,6’-ナフタレンジカルボン酸クロライド、トリメシン酸クロリド、などが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
本発明の実施形態に係るイオン伝導ポリマー膜の各構成成分およびその含有量の確認には、特定の手法に限定されないが、プロトン核磁気共鳴分光法(H-NMR)やフーリエ変換型赤外分光法(FT-IR)を用いることができる。また、必要に応じて複数の手法を合わせて確認することもできる。
本発明の実施形態に係る電池における電極は、イオン伝導ポリマー膜と同じポリマーを含んでも良い。電極が同じイオン伝導ポリマーを含むことで、層間の界面抵抗を小さくすることができる上、イオン伝導性やサイクル特性が飛躍的に向上し電池の特性を上あげることができる。
本発明のイオン伝導ポリマー膜は、本発明の効果を阻害しない範囲でイオン伝導助剤となる他の成分を含有しても良い。例えば、無機固体電解質、イオン液体、リチウム塩などが挙げられる。特に、リチウム塩の添加はイオン伝導度、各層の界面におけるイオンの移動速度、熱的及び電気化学的安定性、放電容量、サイクル特性等の観点から好ましい手法である。リチウム塩は特に規定はしないが、LiPF6、LiAsF6、LiClO4、LiBF4、LiBr、リチウムビス(オキサレート)ボラート、リチウムジフルオロ(オキサレート)ボラート、リチウムビス(フルオロスルホニル)イミド、リチウムビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミド、リチウムビス(ペンタフルオロエタンスルホニル)イミド等が好ましい。これらのリチウム塩は単独で用いてもよいし、2種以上を組合せて用いてもよい。リチウム塩を始めとする他の成分の含有量は特に規定しないが、イオン伝導ポリマー膜全体の50質量%以下であることが好ましい。
本発明のイオン伝導ポリマー膜は、後述する条件で測定される膜厚変化率(T0/T1)が0.3以上1.0未満であることが好ましい。
(膜厚変化率の測定条件)
ポリマー膜を非水電解質(1M LiTFSI EC/DEC=1/1、三井化学社製)に25℃の環境下で24時間浸漬し、浸漬前後のポリマー膜の厚みを高精度デジタル測長器(ミツトヨ社製、型番:VL-50)にて測定し、(1)式に代入して計算した。
膜厚変化率=(T0/T1) (1)
T0:非水電解質浸漬前のポリマー膜の厚み(cm)
T1:非水電解質浸漬後のポリマー膜の厚み(cm)。
膜厚変化率が0.3以上の場合、電池内部でのポリマー膜の強度が下がることを抑制でき、耐デンドライト性に優れる。また、1.0未満の場合、電池内部でのポリマー膜のイオン伝導性に優れる。より好ましくは0.3以上0.9以下である。膜厚変化率をかかる範囲とするためには、イオン伝導ポリマー膜を構成するポリマーとして後述のポリマーを用いることが挙げられる。
本発明のイオン伝導ポリマー膜は、無孔領域と多孔領域を有することが好ましく、特に無孔領域と微多孔膜を有する複合膜であることが好ましい。複合膜とする方法については特に限られるものではないが、後述の手法でイオン伝導ポリマーを微多孔膜の少なくとも片面に塗布する方法が例示出来る。
また、微多孔膜としては、内部に空孔を有する多孔膜、不織布、または繊維状物からなる多孔膜シートなどが挙げられる。微多孔膜を構成する材料としては、電気絶縁性であり、電気的に安定で、非水電解質にも安定である樹脂から構成されていることが好ましい。また、シャットダウン機能を付与する観点から、用いる樹脂は融点が200℃以下の熱可塑性樹脂が好ましい。ここでのシャットダウン機能とは、リチウムイオン電池が異常発熱した場合に、熱で溶融することで多孔構造を閉鎖し、イオン移動を停止させて、発電を停止させる機能のことである。
熱可塑性樹脂としては、例えばポリオレフィン系樹脂が挙げられ、前記微多孔膜はポリオレフィン系微多孔膜であることが好ましく、融点が200℃以下であることがより好ましい。微多孔膜に用いられるポリオレフィン系樹脂としては、具体的にはポリエチレン、ポリプロピレン、その共重合体、およびこれらを組み合わせた混合物などが挙げられ、例えばポリエチレンを90質量%以上含有する単層の微多孔膜、ポリエチレンとポリプロピレンからなる多層の微多孔膜などが挙げられる。
本発明のイオン伝導ポリマー膜は、後述する方法により求められる150℃熱収縮率が10%以下であることが好ましい。また、ポリマー膜の長手方向(MD)と幅方向(TD)いずれもが10%以下であることが好ましく、さらに好ましくは8%以下、最も好ましくは5%以下である。下限値は特に制限されないが、-1%以上である。MD、TDのいずれかの熱収縮率が上記範囲内であることで、電池の発熱時にポリマー膜の寸法変化により電池端部において短絡が起こることを抑制でき、耐熱性に優れた電池とすることができる。熱収縮率を上記範囲内とするため、前述の分子構造を有するポリマーを用い、ポリマー膜の製造条件を後述の範囲内とすることが好ましい。
本発明の正極と負極の少なくとも一方とイオン伝導ポリマー膜とが近接して有することが好ましい。本発明のイオン伝導ポリマーは、正極と負極間でのイオン伝導を可能にするポリマーであり、正極と負極の少なくとも一方とポリマー層とが近接することで各層間でのイオン伝導性が向上する上、各電極の少なくとも一方に近接することで、電池使用時のデンドライト発生による短絡や発火を抑制できる。ここで、近接して有するとは1μm以内に有することを表し、直接に接しても良く、その他の層を介して有していてもよい。
次に、本発明の実施形態に係る電池の製造方法について、以下に説明する。
本発明の実施形態に係る電池の一態様としては、正極側の集電体層、正極活物質を含む電極合剤層(正極層と称する場合がある)、電解質層、負極活物質を含む電極合剤層(負極層と称する場合がある)、及び負極側の集電体層が、この順又はこの逆の順序で積層されているものを挙げることができる。また、公知の電池構成要素を使用して、電池を組み立てることができる。
本発明のイオン伝導ポリマーは、ポリマー膜として上述の電池における電解質層として用いられるだけでなく、正極層または負極層の電極合剤層のいずれかに含まれていてもよく、あるいは両方の層に含まれていても良い。さらに、正極層または負極層の表面にイオン伝導ポリマーを塗布して、電極表面の保護膜と電解質層の機能を兼ねてもよい。
本発明の実施形態に係る電池における集電体層として用いられる物質は特に限られるものではないが、例えば、金、銀、アルミニウム、銅、ステンレス鋼、ニッケル、チタン、これらの合金、炭素系材料等からなる金属箔を用いることができる。
本発明の実施形態に係る正極の電極合剤層には、単体であってもよいし、他の成分を含んでもよい。他の成分としては、マンガン、コバルト、ニッケル、及びチタンから選ばれる少なくとも1種の遷移金属及びリチウムを含むリチウム金属酸化物(コバルト酸リチウムやマンガン酸リチウムなど)といった公知の正極活物質を適宜用いることができる。また、負極の電極合剤層には、活物質は特に限定されないが、金属イオン等を吸蔵・放出することができる材料であればよく、例えば、Li、Sn、Si、In、リチウム合金粒子(リチウムと、チタン、マグネシウム、又はアルミニウム等とのリチウム合金粒子)、及び炭素系材料(カーボン、ハードカーボン、ソフトカーボン、及びグラファイト等)の公知の負極活物質を適宜用いることができる。
本発明の実施形態に係るイオン伝導ポリマーとして用いることができるポリマーを得る方法を芳香族ポリアミド、芳香族ポリイミドあるいはその前駆体であるポリアミド酸を例に説明するが、用いることができるポリマーおよびその重合方法はこれに限定されるものではない。
芳香族ポリアミドを得る方法は種々の方法が利用可能であるが、例えば、酸ジクロライドとジアミンを原料として低温溶液重合法を用いる場合には、N-メチル-2-ピロリドン、N,N-ジメチルアセトアミド、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシドなどの非プロトン性有機極性溶媒中で合成される。溶液重合の場合、分子量の高いポリマーを得るために、重合に使用する溶媒の水分率を500ppm以下(質量基準、以下同様)とすることが好ましく、200ppm以下とすることがより好ましい。さらに、ポリマーの溶解を促進する目的で金属塩を添加してもよい。この金属塩としては、非プロトン性有機極性溶媒に溶解するアルカリ金属またはアルカリ土類金属のハロゲン化物が好ましく、例えば、塩化リチウム、臭化リチウム、塩化ナトリウム、臭化ナトリウム、塩化カリウム、臭化カリウムなどが挙げられる。使用する酸ジクロライドおよびジアミンの両者を等量用いると超高分子量のポリマーが生成することがあるため、モル比を、一方が他方の95.0~99.95モル%になるように調整することが好ましい。また、芳香族ポリアミドの重合反応は発熱を伴うが、重合系の温度が上がると、副反応が起きて重合度が十分に上がらないことがあるため、重合中の溶液の温度を40℃以下に冷却することが好ましい。さらに、酸ジクロライドとジアミンを原料とする場合、重合反応に伴って塩化水素が副生するが、これを中和する場合には炭酸リチウム、炭酸カルシウム、水酸化カルシウムなどの無機の中和剤、あるいは、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、アンモニア、トリエチルアミン、トリエタノールアミン、ジエタノールアミン等の有機の中和剤を使用するとよい。
一方、本発明において用いることができる芳香族ポリイミドあるいはその前駆体であるポリアミド酸を、例えば、テトラカルボン酸無水物と芳香族ジアミンを原料として重合する場合には、N-メチル-2-ピロリドン、N,N-ジメチルアセトアミド、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシドなどの非プロトン性有機極性溶媒中で溶液重合により合成する方法などをとることができる。原料のテトラカルボン酸無水物および芳香族ジアミンの両者を等量用いると超高分子量のポリマーが生成することがあるため、モル比を、一方が他方の90.0~99.5モル%になるように調整することが好ましい。また、重合反応は発熱を伴うが、重合系の温度が上がると、イミド化反応により析出が起こることがあるため、重合中の溶液の温度は70℃以下とすることが好ましい。このようにして合成した芳香族ポリアミド酸をイミド化して芳香族ポリイミドを得る方法としては、熱処理や化学処理、およびその併用などが用いられる。熱処理法は、一般的にポリアミド酸を100~500℃程度で加熱処理することでイミド化する方法である。一方、化学処理は、トリエチルアミンなどの第三級アミンを触媒として、脂肪族酸無水物、芳香族酸無水物などの脱水剤を用いる方法や、ピリジンなどのイミド化剤を用いる方法がある。
芳香族ポリアミドおよび芳香族ポリイミドあるいはその前駆体であるポリアミド酸の粘度ηinhは0.5~7.0dl/gであることが好ましい。粘度を上記範囲とすることで、靭性や強度に優れ、イオン伝導性の良いポリマーを得られる。粘度ηは、例えば後述の手法により測定することができる。
次に、本発明の実施形態に係る電極合剤層および電解質層を製造する際に用いる製膜原液(以下、製膜原液と記す)について、説明する。
製膜原液には重合後のポリマー溶液をそのまま使用してもよいが、溶液中に中和塩などの不要な物質を多く含む場合、ポリマーを一度単離してから上述の非プロトン性有機極性溶媒や硫酸などの有機溶剤に再溶解して使用するのが好ましい。ポリマーを単離する方法は特に限定しないが、重合後のポリマー溶液を多量の水中に投入することで溶媒および中和塩を水中に抽出し、析出したポリマーのみを分離した後、乾燥させる方法などが挙げられる。
本発明の実施形態に係る電極合剤層および電解質層の製造工程において、イオン伝導ポリマーに活物質、無機固体電解質、導電助剤、リチウム塩などを添加することが好ましい。これらの材料を添加するタイミングに限定はなく、ポリマー重合工程、製膜原液作成工程および製膜工程のいずれであってもよいが、ポリマーと均一に分散できるため製膜原液作成工程で添加することが好ましい。また、複数の工程で添加すること、または同工程で複数回に分けて添加することもできる。
製膜原液中のイオン伝導ポリマーの濃度は、3~30質量%が好ましく、より好ましくは4~20質量%である。製膜原液には、得られるポリマー膜の強度、耐熱性、イオン透過性の向上、静摩擦係数の低減などを目的に、本発明の効果を阻害しない範囲で無機粒子または有機粒子を添加してもよい。無機粒子としては、例えば、湿式および乾式シリカ、コロイダルシリカ、珪酸アルミ、酸化チタン、炭酸カルシウム、リン酸カルシウム、硫酸バリウム、アルミナ、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、炭酸マグネシウム、炭酸亜鉛、酸化チタン、酸化亜鉛(亜鉛華)、酸化アンチモン、酸化セリウム、酸化ジルコニウム、酸化錫、酸化ランタン、酸化マグネシウム、炭酸バリウム、炭酸亜鉛、塩基性炭酸鉛(鉛白)、硫酸バリウム、硫酸カルシウム、硫酸鉛、硫化亜鉛、マイカ、雲母チタン、タルク、クレー、カオリン、フッ化リチウム及びフッ化カルシウム等が挙げられる。有機粒子としては、例えば、高分子化合物を架橋剤に用いて架橋した粒子が挙げられる。このような架橋粒子として、ポリメトキシシラン系化合物の架橋粒子、ポリスチレン系化合物の架橋粒子、アクリル系化合物の架橋粒子、ポリウレタン系化合物の架橋粒子、ポリエステル系化合物の架橋粒子、フッ素系化合物の架橋粒子、もしくはこれらの混合物が挙げられる。
次に本発明のイオン伝導ポリマー膜を製膜する方法について説明する。上記のように調製された製膜原液は、いわゆる溶液製膜法により製膜を行うことができる。溶液製膜法には乾湿式法、乾式法、湿式法などがあり、いずれの方法で製膜しても差し支えないが、ここでは乾湿式法を例にとって説明する。
乾湿式法で製膜する場合は製膜原液を口金からドラム、エンドレスベルト、フィルム等の支持体上に押し出して膜状物とし、次いでかかる膜状物が自己保持性を持つまで乾燥する。乾燥条件は例えば、60~220℃、60分以内の範囲で行うことができる。ただし、ポリアミド酸ポリマーを使用し、イミド化させずにポリアミド酸からなる膜を得たい場合、乾燥温度は60~150℃とすることが好ましい。より好ましくは60~130℃である。乾式工程を終えたフィルムは支持体から剥離されて湿式工程に導入され、脱塩、脱溶媒などが行なわれ、必要に応じて延伸、乾燥、熱処理が行なわれる。
延伸する場合、延伸倍率として面倍率で0.8~8.0倍(面倍率とは延伸後のフィルム面積を延伸前のフィルムの面積で除した値で定義する。1以下はリラックスを意味する。)の範囲内にあることが好ましく、より好ましくは1.0~5.0倍である。また、熱処理する場合、80℃~500℃、好ましくは130℃~400℃の温度で数秒から数10分間熱処理が実施される。以上の製造方法により得られた本発明のイオン伝導ポリマー膜は、そのまま正負極間に挿入することで電解質膜として用いることができる。
本発明のイオン伝導ポリマー膜を無孔領域と微多孔膜を有する複合膜とする場合、上述の製膜方法で得たポリマー膜と微多孔膜をそれぞれ重ねて用いてもよいし、貼り合わせてもよい。また、上述で重合した製膜原液を微多孔膜上に塗布して積層する方法も好ましく、微多孔膜上に原液を塗布する形式としては、ロールコーターやスリットコーター、ディップコーターなどの任意の塗布形式を用いることが出来る。
本発明の実施形態に係るイオン伝導ポリマー膜の厚みは、特に限定されないが、0.03~30μmであることが好ましく、0.10~20μmであることがより好ましく、0.20~15μmであることがさらに好ましい。また、本発明のイオン伝導ポリマー膜が複合膜である場合、ポリマー膜と微多孔膜の厚み比率は、0.001以上5以下であることが好ましく、さらに好ましくは0.01以上1以下である。厚みを上記範囲内とすることで、ポリマー膜の強度が十分であり、膜厚による抵抗上昇がなく、好適に使用できる。イオン伝導ポリマー膜の厚みは、製膜原液濃度、製膜原液粘度、製膜原液中の添加物の種類や濃度、ポリマー膜の流延厚み、熱処理温度および延伸条件など種々の条件により制御することができる。
本発明の電池は、上述の製膜方法で得られたイオン伝導ポリマー膜を正極と負極の間に配置し電池としたものである。また、電池の製造方法は任意の方法を用いることができる。
本発明の実施形態に係る電池は、小型の電子機器を始め、電気自動車(EV)やハイブリッド車(HEV)、プラグインハイブリッド車(PHEV)などの交通機関、産業用クレーンなどの大型の産業機器の動力源などとして好適に用いることができる。また、太陽電池、風力発電装置などにおける電力の平準化やスマートグリッドのための蓄電装置としても好適に用いることができる。さらには、宇宙用などの特殊環境下で使用する電池にも好適に用いることができる。
以下実施例を挙げて、本発明をさらに詳細に説明する。なお、実施例の物性は以下の方法で測定した。
(1)対数粘度 ηinh
臭化リチウム(LiBr)を2.5質量%添加したN-メチルピロリドン(NMP)に、ポリマーを0.5g/dlの濃度で溶解させ、ウベローデ粘度計を使用して、30℃にて流下時間を測定する。ポリマーを溶解させないブランクのLiBr2.5質量%/NMPの流下時間も同様に測定し、下式を用いて対数粘度ηinh(dl/g)を算出することで求めることが出来る。
対数粘度ηinh(dl/g)=〔ln(t/t0)〕/0.5
t0:ブランクの流下時間(秒)
t:サンプルの流下時間(秒)。
(2)透気度
王研式透気度計(旭精工株式会社製、EGO-1T)を用いて空気量100ccの設定にて測定を行った。装置の測定上限は10000秒/100ccである。ポリマー膜をシワが入らないように固定し、JIS P8117に従って測定した。測定点はTDへ等間隔に3点として、その平均値を透気度(秒/100cc)として用いた。
(3)断面構造(ポリマー膜の厚み、無孔領域の厚み)
実施例で得られたポリマー膜をクロスセクションポリッシャ(日本電子社製SM-9010)を用いて断面切削を行い、幅方向における厚み方向の断面に白金コートをして観察試料とした。次に、電界放射走査電子顕微鏡(日本電子社製JSM 6701F)を用いて、試料の断面を任意の倍率で撮影し、ポリマー膜の厚みを求めた。観察時の加速電圧は2.0kVとした。ポリマー膜が複合膜である場合は、無孔層と微多孔層の界面を、断面構造の違いもしくは画像コントラストから判定し、それぞれの厚みを求めた。
次に、10,000倍で撮影した画像から、以下の方法で無孔領域の厚みを求めた。ポリマー膜の一方の界面からもう一方の界面に向かって界面と垂直な直線を引き、直線と交わる50nm以上の空隙の個数を求め、空隙が10個以下であれば無孔領域と判定し、厚みを求めた。ポリマー膜が、無孔領域と微多孔膜からなる複合膜である場合、厚み方向の空隙の分布やサイズが変化しはじめる点を界面とみなした。
(4)膜厚変化率(T0/T1)
ポリマー膜を非水電解質(1M LiTFSI EC/DEC=1/1、三井化学社製)に25℃の環境下で24時間浸漬し、浸漬前後のポリマー膜厚みを高精度デジタル測長器(ミツトヨ社製、型番:VL-50)にて測定し、(1)式に代入して計算した。
膜厚変化率=(T0/T1) (1)
T0:非水電解質浸漬前のポリマー膜の厚み(cm)
T1:非水電解質浸漬後のポリマー膜の厚み(cm)。
ポリマー膜を電池内部から取り出す場合、すでに非水電解質に浸漬された状態であればその状態をT1とし、その後、ポリマー膜を炭酸ジメチルで洗浄して60℃で24時間乾燥させた状態をT0とした。
(5)イオン伝導度
ポリマー膜を非水電解質(1M LiTFSI エチレンカーボネート(EC)/ジエチルカーボネート(DEC)=1/1)に24時間浸漬した後、電極部分をカバーするようにSUS304電極上に置き、非水電解質を滴下してからもう1枚のSUS電極ではさみ、電極/ポリマー膜/電極の積層体を作製した。積層体がずれないようにシリコン板で固定して評価セルを作製した。
作製したセルについて、25℃で電気化学試験装置(Biologic社製、型番:SP-150)にて振幅10mV、周波数1MHz-10mHzの条件で交流インピーダンスを測定し、複素平面上にプロットしたグラフから抵抗値を読み取り、(2)式に代入し、イオン伝導度を計算した。5回測定し、計算した平均値をイオン伝導度とした。
σ=T0/AR (2)
σ:イオン伝導度(S/cm)
T0:ポリマー膜の厚み(cm)
A:電極の面積(cm
R:抵抗値(Ω)。
(6)150℃熱収縮率(耐熱性)
ポリマー膜を長手方向(MD)50mm×幅方向(TD)50mmサイズに切り出し、長手方向の長さをLMD1(50mm)、幅方向の長さをLTD1(50mm)と表した。次に、サンプルを150℃の熱風オーブン内で30分間静置して加熱処理を行い、オーブンから取り出して放冷した。オーブンから取り出したサンプルの長手方向および幅方向についてそれぞれ最も長さが短くなっている箇所の寸法を測定し、長手方向の長さをLMD2(mm)、幅方向の長さをLTD2(mm)と表した。それぞれの方向の熱収縮率を(3)式、(4)式に基づいて算出し、MDまたはTDで収縮率が大きい方向の値を熱収縮率値とした。なお、測定は各サンプルにつき5回実施して平均した。
MD熱収縮率(%)=〔(LMD1-LMD2)/LMD1〕×100 (3)
TD熱収縮率(%)=〔(LTD1-LTD2)/LTD1〕×100 (4)
なお、上記の評価において、MD方向およびTD方向が不明な場合は、すべての方向について150℃における熱収縮率を測定し、熱収縮率が最も大きい方向の値を150℃熱収縮率とした。
(7)電池特性
作製した電池は、充放電装置(北斗電工社製)にセットし、正極がNCMの場合、充電条件がレート0.1C、カットオフ電圧4.1Vの定電流充電、放電条件がレート0.3C、カットオフ電圧2.7Vの定電流放電を50回行った。正極がLFPの場合、充電条件がレート0.1C、カットオフ電圧3.8Vの定電流充電、放電条件がレート0.3C、カットオフ電圧2.7Vの定電流放電を50回行った。1回目のサイクル終了時の放電容量をE1(mAh)とし、50回目のサイクル終了時の放電容量をE50(mAh)として、(5)式に基づいて放電容量維持率を算出した。算出した値を以下の基準で判定した。
放電容量維持率(%)=〔E50(mAh)/E1(mAh)〕×100 (5)
放電容量維持率80%以上:◎
放電容量維持率50%以上80%未満:〇
放電容量維持率40%以上50%未満:△
放電容量維持率40%未満:×。
(8)LUMOエネルギー,HOMOエネルギー
非水電解質に含まれる有機溶媒のLUMOエネルギー、HOMOエネルギーは、量子化学計算プログラムGaussian16(Gaussian社製)を用いて、半経験的分子軌道法PM3法、基底関数STO-3Gで計算した。
(参考例1)イオン伝導ポリマー膜F1
脱水したN-メチル-2-ピロリドンに、2,2’-ジトリフルオロメチル-4,4’-ジアミノビフェニルを溶解させた。そこへ酸ジクロライドとして、ジアミン全量に対して98.5モル%に相当する2-フルオロテレフタル酸クロライドを添加し撹拌を行うことで、芳香族ポリアミドを重合した。得られた重合溶液を、酸ジクロライド全量に対して96.5モル%の炭酸リチウムで中和し、さらに11モル%のジエタノールアミンにて中和し、芳香族ポリアミド濃度が9.5質量%である芳香族ポリアミド溶液を得た。芳香族ポリアミド樹脂の固有粘度(η)は4dl/gであった。得られた芳香族ポリアミド溶液をN-メチル-2-ピロリドンで希釈し、芳香族ポリアミド濃度が6質量%の溶液を得た。
6質量%の芳香族ポリアミド溶液を支持体であるPETフィルム上にキャストし、熱風温度130℃でポリマー膜が自己支持性を持つまで乾燥させた。次に、10分間、25℃の水浴に浸漬し、水中で支持体を剥離した。続いて、得られた含水状態のポリマー膜の表面の水を拭き取った後、温度280℃の熱風オーブンにて、1分の熱処理を施し、ポリマー膜を得た。
(参考例2)イオン伝導ポリマー膜F2
参考例1と同様に芳香族ポリアミド樹脂を重合し、得られた芳香族ポリアミド溶液をN-メチル-2-ピロリドンで希釈し、芳香族ポリアミド濃度が4質量%の塗剤を得た。
ポリエチレン多孔質膜基材(厚み12μm、透気度160秒/100cc)の片面に塗剤をグラビアコートにて塗工し、多孔質膜基材上にポリマー膜を形成し、フィルムを得た。塗工条件は、表2に示す。
(参考例3)イオン伝導ポリマー膜F3
参考例1と同様に芳香族ポリアミド樹脂を重合し、得られた芳香族ポリアミド溶液をN-メチル-2-ピロリドンで希釈し、芳香族ポリアミド濃度が3質量%の塗剤を得た。
ポリエチレン多孔質膜基材(厚み12μm、透気度160秒/100cc)の片面に塗剤をグラビアコートにて塗工し、多孔質膜基材上にポリマー膜を形成し、フィルムを得た。塗工条件は、表2に示す。
(実施例1)
HSセル(宝泉社製)を用いて、15mmΦの金属リチウム(本城金属社製、厚み:0.2mm)、1M LiFSI DME(三井化学社製)200μL、参考例1で得られたイオン伝導ポリマー膜F1、1M LiFSI DME(三井化学社製)200μL、15mmΦに切り出したLFP正極シート(宝泉社製 HS-LIB-P-LFP-001、正極活物質:LiFePO、)の順にセル内に入れて、電池を作製した。電池の作製は、アルゴン雰囲気のグローブボックス内で行った。
(実施例2)
イオン伝導ポリマー膜としてイオン伝導ポリマー膜F2を用いた以外は、実施例1と同様に電池を作製した。
(実施例3)
正極としてNCM正極シート(八山社製、正極活物質:Li(Ni5/10Mn2/10Co3/10)O、塗布目付:9.5mg/cm)を用いた以外は、実施例1と同様に電池を作製した。
(比較例1)
イオン伝導ポリマー膜として、ポリエチレン多孔質膜基材(厚み12μm、透気度160秒/100cc)を用いた以外は、実施例1と同様に電池を作製した。
(比較例2)
イオン伝導ポリマー膜として、イオン伝導ポリマー膜F3を用いた以外は、実施例2と同様に電池を作製した。
透気度が1000秒/100cc以上である実施例1~3は、比較例1および2よりも良好な放電容量維持率を示した。実施例1~3が無孔構造を有することでデンドライトによる短絡を抑制したためと考えられる。また、無孔領域の厚みが小さい実施例2及び3は、実施例1よりも放電容量維持率が高い。無孔領域の厚みが小さいことで、耐デンドライト性を有しながら、電池特性が良好になることが示唆されている。特に、正極にLFPを用いた実施例2が最も放電容量維持率が高い。
Figure 2024033732000003
Figure 2024033732000004

Claims (11)

  1. 正極、負極、非水電解質およびイオン伝導ポリマー膜を含む電池であって、
    上記非水電解質がLowest Unoccupied Molecular Orbital(LUMO)エネルギーが1.9eV以上の溶媒を含み、上記イオン伝導ポリマー膜の透気度が1000秒/100cc以上かつイオン伝導度が1.0×10-5S/cm以上である電池。
  2. 上記正極が下記化学式(1)で表されるリチウム含有オリビン型リン酸塩を含む請求項1に記載の電池。
    LiMFe1-xPO (1)
    式中で、MはMn、Cr、Co、Cu、Ni、V、Mo、Ti、Zn、Al、Ga、Mg、B、Nbの少なくとも1種以上を表し、0≦x≦1である。
  3. 上記イオン伝導ポリマー膜の、下記の条件で測定される膜厚変化率(T0/T1)が0.3以上1.0未満である、請求項1または2に記載の電池。
    (膜厚変化率の測定条件)
    ポリマー膜を非水電解質(1M LiTFSI EC/DEC=1/1、三井化学社製)に25℃の環境下で24時間浸漬し、浸漬前後のポリマー膜厚みを高精度デジタル測長器(ミツトヨ社製、型番:VL-50)にて測定し、(1)式に代入して計算した。
    膜厚変化率=(T0/T1) (1)
    T0:非水電解質浸漬前のポリマー膜の厚み(cm)
    T1:非水電解質浸漬後のポリマー膜の厚み(cm)
  4. 上記負極が金属リチウムである、請求項1または2に記載の電池。
  5. 上記非水電解質がエーテル系溶媒を含む、請求項1または2に記載の電池。
  6. 上記LUMOエネルギーが1.9eV以上の溶媒のHighest Occupied Molecular Orbital(HOMO)エネルギーが-11.5eV以下である、請求項1または2に記載の電池。
  7. 上記イオン伝導ポリマー膜が無孔領域と微多孔膜を有する複合膜である請求項1または2に記載の電池。
  8. 上記無孔領域の厚みが0.1μm以上5μm以下である請求項7に記載の電池。
  9. 上記イオン伝導ポリマー膜の150℃熱収縮率が10%以下である、請求項1または2に記載の電池。
  10. 上記イオン伝導ポリマー膜を構成するポリマーが芳香族ポリアミドである請求項1または2に記載の電池。
  11. 上記正極と上記負極の少なくとも一方とイオン伝導ポリマー膜が近接して有する請求項1または2に記載の電池。
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