JP2023536158A - 抗インテグリンβ7抗体製剤及び装置 - Google Patents

抗インテグリンβ7抗体製剤及び装置 Download PDF

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Abstract

医薬製剤を含む、抗インテグリンβ7抗体又はその抗原結合フラグメントを含む製剤が提供される。そのような製剤を備える製造品、及びそのような製剤を使用する方法も提供される。【選択図】図4

Description

関連出願の相互参照
本出願は、2020年7月31日に出願された米国仮特許出願第63/059,427号の優先権を主張し、その内容は参照によりその全体が組み込まれ、優先権が主張される。
抗インテグリンβ7抗体又はその抗原結合フラグメントを含む製剤が提供され、それには、そのような製剤を含む医薬製剤及び装置、並びにそのような製剤及び装置を使用する方法が含まれる。
配列表
本出願には、EFS-Webを介してASCIIフォーマットにて提出された配列表が含まれ、その全体が参照により本明細書に援用される。2021年7月27日に作成された当該ASCIIコピーの名称は00B2061132SL.txtであり、サイズは13,697バイトである。
インテグリンは、細胞接着から遺伝子調節までの多数の細胞プロセスに関与するαβヘテロ二量体細胞表面受容体である(Hynes Cell(1992);69:11-25;and Hemler,Annu.Rev.Immunol.(1990),8:365-368)。いくつかのインテグリンが疾患過程に関与しており、創薬の潜在的な標的として広く関心を集めている(Sharar et al.,Springer Semin.Immunopathol.(1995);16:359-378).免疫系において、インテグリンは、炎症プロセス中の白血球の輸送、接着、及び浸潤に関与する(Nakajima et al.,J.Exp.Med.(1994);179:1145-1154)。インテグリンの差次的発現は細胞の接着特性を制御し、異なるインテグリンが異なる炎症応答に関与する(Butcher et al.,Science(1996);272:60-66.)。β7インテグリン(すなわち、α4β7及びαEβ7)は、主に単球、リンパ球、好酸球、好塩基球及びマクロファージ上に発現されるが、好中球上には発現されない(Elices et al.,Cell(1990);60:577-584)。α4β7インテグリンの一次リガンドは、細胞接着分子(MAdCAM)及び血管細胞接着分子(VCAM-1)における内皮表面タンパク質粘膜アドレスである(Makarem et al.,J.Biol.Chem.(1994);269:4005-4011)。炎症部位の高内皮細静脈(HEV)上に発現したMAdCAM及び/又はVCAMへのα4β7の結合は、白血球の内皮への堅固な接着、続いて炎症組織内への血管外遊出をもたらす(Chuluyan et al.,Springer Semin.Immunopathol.,1995,16:391404)。α4β7、MAdCAM又はVCAMに対するモノクローナル抗体は、喘息(Laberge et al.,Am.J.Respir.Crit.Care Med.(1995);151:822-829.)、関節リウマチ(Barbadillo et al.,Springer Semin.Immunopathol.(1995);16:375-379)、大腸炎(Viney,J.Immunol.(1996);157:2488-2497)及び炎症性腸疾患(Podalski,N.Eng.J.Med.(1991);325:928-937;Powrie et al.,Ther.Immunol.(1995);2:115-123)等の慢性炎症性疾患の動物モデルにおいて有効なモジュレーターであることが示されている。
ヒト化抗インテグリンβ7抗体及びその抗原結合フラグメントが記載されている。例えば、国際公開第2006/026759号を参照されたい。1つの特定の抗インテグリンβ7抗体であるエトロリズマブは、胃腸炎症性障害、例えば炎症性腸疾患、例えば潰瘍性大腸炎及びクローン病を治療するために臨床的に研究されている。中等度~重度の潰瘍性大腸炎におけるエトロリズマブの第1相研究の結果は、Rutgeerts PJ,et al.Gut 2013;62:1122-1130に記載され、臨床的に有意な安全性シグナルが観察されなかったことを報告している。中等度~重度の潰瘍性大腸炎におけるエトロリズマブのグローバル多施設第2相研究の結果は、臨床的寛解の誘導によって測定されるエトロリズマブ治療の臨床的有効性の証拠を示した(Vermeire,S.et al.,Lancet 2014;384:309-18)。さらに、中等度~重度のクローン病患者をエトロリズマブで治療した後、臨床的に意味のある寛解が観察された(Sandborn et al.,presentation entitled”Etrolizumab as Induction Therapy in Moderate to Severe Crohn’s Disease:Results from Bergamot Cohort 1,”presented at United European Gastroenterology Week Congress,Oct.28-Nov.2,2017)。したがって、エトロリズマブは、炎症性腸疾患における治療的処置選択肢としての有望性が実証されており、エトロリズマブの安全性及び有効性プロファイルを改良するための更なる研究が進行中である。
これまでに報告された研究のそれぞれにおいて、エトロリズマブは、臨床現場において医療提供者によって静脈内又は皮下のいずれかで投与された。皮下投与には、バイアル及びバイアル濃度150mg/mlのシリンジを用いた。潰瘍性大腸炎及びクローン病等の炎症性腸疾患は慢性疾患であるため、エトロリズマブによる長期治療処置が必要となり得る。他の利点の中でも最適な患者の利便性及びコンプライアンスのために、エトロリズマブの自己投与又は介護者若しくは医療専門家による家庭内での投与が望ましい。したがって、自己投与装置及びそのような装置に適合するエトロリズマブの製剤の開発が有利であろう。
エトロリズマブ等の抗体を含むタンパク質は、従来の有機及び無機薬物(例えば、複雑な三次元構造に加えて複数の官能基を有する)よりも大きく複雑であるため、そのようなタンパク質の製剤化は特別な問題を引き起こす。タンパク質が生物学的に活性なままであるためには、製剤は、タンパク質の複数の官能基を分解から保護しながら、タンパク質のアミノ酸の少なくともコア配列の立体構造の完全性を無傷で保存しなければならない。タンパク質の分解経路は、化学的不安定性(例えば、新たな化学的実体をもたらす結合形成又は切断によるタンパク質の修飾を含む任意のプロセス)又は物理的不安定性(例えば、タンパク質の高次構造の変化)を伴い得る。化学的不安定性は、脱アミド、ラセミ化、加水分解、酸化、β脱離又はジスルフィド交換に起因し得る。物理的不安定性は、例えば、変性、凝集、沈殿又は吸着から生じ得る。3つの最も一般的なタンパク質分解経路は、タンパク質凝集、脱アミド及び酸化である。Cleland et al Critical Reviews in Therapeutic Drug Carrier Systems 10(4):307-377(1993)。
高濃度(例えば、>100mg/mL)液体抗体製剤は、例えば、治療的投与の経路のために、又は少量の製剤が望ましい治療用途のために、例えば、充填済み又は自己投与装置を使用することを含む皮下注射のために望ましい。しかしながら、高濃度の抗体製剤は、充填済みシリンジ又は自己投与装置の使用に関連する課題及び問題を含む多くの課題及び問題を提起する。1つの問題は、微粒子の形成による不安定性である。再構成された液体製剤では、この問題は界面活性剤(例えば、ポリソルベート)の使用によって対処されてきたが、界面活性剤は、更なる処理を困難にするため、液体製剤には適さないと考えられることがある。さらに、界面活性剤は、抗体の高分子性からの多数の分子間相互作用の結果として引き起こされる粘度上昇を更に低下させない。
pH及び最適な賦形剤の選択は、ポリソルベート誘発分解に起因する粒子形成の防止、特定のアミノ酸の異性化及び不十分な中間体の形成の防止、並びに製造のための利点を提供することに加えて貯蔵寿命の延長のために重要である。pH及び最適な賦形剤の選択はまた、製剤の開発、例えば保存条件との適合性、針安全装置又は自動注入装置又は自己投与装置を備えた充填済みシリンジ等の充填済みシリンジ含有装置を含む充填済みシリンジによる投与のために、例えば装置構成要素との適合性を確保し、低い注入力を提供するために重要である。
高い抗体濃度で長期安定性及び低粘度を有する、エトロリズマブを含む抗β7抗体を含む製剤を有することが非常に有利であろう。そのような特性を有する高抗体濃度製剤は、充填済みシリンジ及び自己投与装置との使用を含む、特定の投与経路、例えば皮下投与に非常に有利であろう。本明細書で提供される製剤は、これらの必要性に対処し、他の有用な利点を提供する。
高い抗体濃度で長期間の安定性及び低い粘度を有する抗β7抗体を含む製剤を有することが非常に有利であろう。そのような特性を有する高抗体濃度製剤は、特定の投与経路、例えば皮下投与に非常に有利であろう。本明細書で提供される製剤は、これらの必要性に対処し、他の有用な利点を提供する。
特許出願及び刊行物を含め、本明細書に引用される参考文献は全て、あらゆる目的のために、参照によりそれらの全体が援用される。
本開示の製剤は、少なくとも部分的に、本明細書に記載の抗インテグリンβ7抗体であるエトロリズマブを、ヒスチジン緩衝液及びコハク酸アルギニン並びに界面活性剤中に高濃度(約>100mg/mL)で製剤化することができ、そのような高抗体濃度製剤が低粘度であり、物理的及び化学的安定性を拡大し、効力を維持するという発見に基づく。本開示の製剤は、針安全装置付き充填済みシリンジ(PFS-NSD)等の自己投与装置に最適に適合する。特定の実施形態では、充填済みシリンジは自動注入装置に組み立てられる。本開示の製剤は、例えば、製品の安定性及び他の望ましい属性を維持しながら、本明細書に記載の皮下投与装置に包装することができる。本開示の製剤は、例えば胃腸炎症性障害、例えば炎症性腸疾患、例えば潰瘍性大腸炎及びクローン病の治療に有用である。
したがって、一態様では、抗インテグリンβ7抗体又はその抗原結合フラグメントを含む製剤が提供される。特定の実施形態では、製剤中の抗体又はその抗原結合フラグメントの濃度は少なくとも約100mg/mLであり、製剤の粘度は25℃で約20センチポアズ(cP)未満である。特定の実施形態では、製剤の粘度は、25℃で約7cP未満である。
特定の実施形態では、抗インテグリンβ7抗体はモノクローナル抗体である。特定の実施形態では、抗インテグリンβ7抗体はヒト化抗体である。特定の実施形態では、抗インテグリンβ7抗体又はその抗原結合フラグメントは、3つの軽鎖超可変領域(HVR)、HVR-L1、HVR-L2及びHVR-L3と、3つの重鎖HVR、HVR-H1、HVR-H2及びHVR-H3とを含み、
(i)HVR-L1は、配列番号1で示されるアミノ酸配列を含み、
(ii)HVR-L2は、配列番号2で示されるアミノ酸配列を含み、
(iii)HVR-L3は、配列番号3で示されるアミノ酸配列を含み、
(iv)HVR-H1は、配列番号4に示されるアミノ酸配列を含み、
(v)HVR-H2は、配列番号5のアミノ酸配列を含み、
(vi)HVR-H3は、配列番号6又は配列番号7で示されるアミノ酸配列を含む。
特定の実施形態では、抗インテグリンβ7抗体又はその抗原結合フラグメントは、配列番号8に示されるアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域と、配列番号9に示されるアミノ酸配列を含む重鎖可変領域とを含む。特定の実施形態では、抗インテグリンβ7抗体又はその抗原結合フラグメントは、配列番号10に示されるアミノ酸配列を含む軽鎖と、配列番号11に示されるアミノ酸配列を含む重鎖とを含む。特定の実施形態では、抗インテグリンβ7抗体又はその抗原結合フラグメントは、配列番号10に示されるアミノ酸配列を含む軽鎖と、配列番号12に示されるアミノ酸配列を含む重鎖とを含む。特定の実施形態では、抗インテグリンβ7抗体は、エトロリズマブである。特定の実施形態では、製剤中の抗インテグリンβ7抗体又はその抗原結合フラグメントの濃度は、約100mg/ml~約220mg/mlである。特定の実施形態では、製剤中の抗インテグリンβ7抗体又はその抗原結合フラグメントの濃度は約150mg/mlである。
特定の実施形態では、製剤のpHは、5.0超から最大7.0である。特定の実施形態では、製剤のpHは5.5超である。特定の実施形態では、製剤のpHは5.6~6.1である。特定の実施形態では、製剤のpHは、5.8、5.7~5.9、又は5.75~5.85である。
特定の実施形態では、製剤はアルギニン-コハク酸塩を含む。特定の実施形態では、製剤中のコハク酸アルギニンの濃度は、約100mM~約300mMである。特定の実施形態では、製剤中のコハク酸アルギニンの濃度は、約150mM~約300mMである。特定の実施形態では、製剤中のコハク酸アルギニンの濃度は、約150mM~約250mMである。特定の実施形態では、製剤中のコハク酸アルギニンの濃度は約200mMである。
特定の実施形態では、製剤は界面活性剤を更に含み、製剤中の界面活性剤の濃度は、0.01%重量/体積(w/v)を超え、最大約1%w/vである。特定の実施形態では、製剤中の界面活性剤の濃度は、0.03% w/v~0.06% w/vである。特定の実施形態では、製剤中の界面活性剤の濃度は0.04% w/v又は約0.04% w/vである。特定の実施形態では、界面活性剤は、ポリソルベート20である。
特定の実施形態では、製剤はヒスチジンを更に含む。特定の実施形態では、製剤中のヒスチジンの濃度は、約5mM~約40mMである。特定の実施形態では、製剤中のヒスチジンの濃度は、20mM又は約20mMである。
特定の実施形態では、製剤は長期間の安定性を有する。特定の実施形態では、抗インテグリンβ7抗体は、-20℃で少なくとも約7年間安定である。特定の実施形態では、抗インテグリンβ7抗体又はその抗原結合フラグメントは、5℃で少なくとも約1年間安定である。特定の実施形態では、抗インテグリンβ7抗体又はその抗原結合フラグメントは、5℃で少なくとも約5年間安定である。特定の実施形態では、抗インテグリンβ7抗体又はその抗原結合フラグメントは、5℃で約6年間安定である。
特定の実施形態では、抗インテグリンβ7抗体又はその抗原結合フラグメントは、室温で少なくとも約1日間安定である。特定の実施形態では、抗インテグリンβ7抗体又はその抗原結合フラグメントは、室温で最大約1ヶ月間安定である。
別の態様では、本開示は、20mM又は約20mMヒスチジン緩衝液(pH5.8)、0.04%ポリソルベート20及び200mM又は約200mMコハク酸アルギニン中に抗インテグリンβ7抗体又はその抗原結合フラグメントを含む製剤を提供し、抗インテグリンβ7抗体の濃度は約150mg/mlであり、抗インテグリンβ7抗体は、3つの軽鎖超可変領域(HVR)、HVR-L1、HVR-L2及びHVR-L3と、3つの重鎖HVR、HVR-H1、HVR-H2及びHVR-H3とを含み、
(i)HVR-L1は、配列番号1で示されるアミノ酸配列を含み、
(ii)HVR-L2は、配列番号2で示されるアミノ酸配列を含み、
(iii)HVR-L3は、配列番号3で示されるアミノ酸配列を含み、
(iv)HVR-H1は、配列番号4に示されるアミノ酸配列を含み、
(v)HVR-H2は、配列番号5のアミノ酸配列を含み、
(vi)HVR-H3は、配列番号6又は配列番号7で示されるアミノ酸配列を含む。
特定の実施形態では、製剤は、5.7~5.9又は5.75~5.85のpHを有する。特定の実施形態では、製剤は、0.04%ポリソルベート20又は約0.04%ポリソルベート20を含む。
本開示の主題は、20mMヒスチジン緩衝液又は約20mMヒスチジン緩衝液(pH5.8、又は5.7~5.9、又は5.75~5.85)、0.04%ポリソルベート20又は約0.04%ポリソルベート20、及び200mMコハク酸アルギニン又は約200mMコハク酸アルギニン中に抗インテグリンβ7抗体を含む製剤を提供し、抗インテグリンβ7抗体は、3つの軽鎖超可変領域(HVR)、HVR-L1、HVR-L2及びHVR-L3と、3つの重鎖HVR、HVR-H1、HVR-H2及びHVR-H3とを含み、(i)HVR-L1は、配列番号1で示されるアミノ酸配列を含み、(ii)HVR-L2は、配列番号2で示されるアミノ酸配列を含み、(iii)HVR-L3は、配列番号3に示されるアミノ酸配列を含み、(iv)HVR-H1は、配列番号4に示されるアミノ酸配列を含み、(v)HVR-H2は、配列番号5に示されるアミノ酸配列を含み、(vi)前記HVR-H3は、配列番号6又は配列番号7に示されるアミノ酸配列を含む。特定の実施形態では、抗インテグリンβ7抗体は、配列番号10に示されるアミノ酸配列を含む軽鎖と、配列番号11に示されるアミノ酸配列を含む重鎖とを含む。特定の実施形態では、抗インテグリンβ7抗体は、配列番号10に示されるアミノ酸配列を含む軽鎖と、配列番号12に示されるアミノ酸配列を含む重鎖とを含む。特定の実施形態では、抗インテグリンβ7抗体は、エトロリズマブである。
特定の実施形態では、抗インテグリンβ7抗体又はその抗原結合フラグメントは、配列番号8に示されるアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域と、配列番号9に示されるアミノ酸配列を含む重鎖可変領域とを含む。特定の実施形態では、抗インテグリンβ7抗体又はその抗原結合フラグメントは、配列番号10に示されるアミノ酸配列を含む軽鎖と、配列番号11に示されるアミノ酸配列を含む重鎖とを含む。特定の実施形態では、抗インテグリンβ7抗体又はその抗原結合フラグメントは、配列番号10に示されるアミノ酸配列を含む軽鎖と、配列番号12に示されるアミノ酸配列を含む重鎖とを含む。
なお更なる態様では、皮下投与装置を備える製造品が提供される。特定の実施形態では、皮下投与装置は、の一定用量(flat dose)の抗インテグリンβ7抗体又はその抗原結合フラグメントを対象に送達する。特定の実施形態では、一定用量は約100mgである。特定の実施形態では、一定用量は105mgである。特定の実施形態では、一定用量が約200mgである。特定の実施形態では、一定用量は210mgである。特定の実施形態では、抗インテグリンβ7抗体は、エトロリズマブである。皮下投与装置における抗インテグリンβ7抗体又はその抗原結合フラグメントは、安定な医薬製剤で提供されるように上記のように製剤化される。
特定の実施形態では、皮下投与装置は針安全装置である。特定の実施形態では、針安全装置は充填済みシリンジを備える。特定の実施形態では、抗インテグリンβ7抗体は、皮下投与装置において、5℃で少なくとも約60ヶ月間、又は25℃で少なくとも約3ヶ月間安定である。特定の実施形態では、充填済みシリンジは、ガラスバレル、プランジャストッパ、針、及び針シールド又は先端キャップを備える。特定の実施形態では、針シールドは剛性針シールドである。特定の実施形態では、剛性針シールドは、亜鉛含有量が低いゴム配合物を含む。特定の実施形態では、剛性針シールドは、エラストマー構成要素と、剛性シールドとを含む。特定の実施形態では、充填済みシリンジは自動注入装置に組み立てられる。
特定の実施形態では、充填済みシリンジに含まれる製剤の体積は、約0.5mL~約2.0mLである。特定の実施形態では、充填済みシリンジに含まれる製剤の体積は、約0.5mL~約1.0mLである。特定の実施形態では、充填済みシリンジに含まれる製剤の体積は約0.7mLである。特定の実施形態では、充填済みシリンジに含まれる製剤の体積は約0.75mLである。特定の実施形態では、充填済みシリンジに含まれる製剤の体積は約1.0mLである。特定の実施形態では、充填済みシリンジに含まれる製剤の体積は、約1.0mL~約1.5mLである。特定の実施形態では、充填済みシリンジに含まれる製剤の体積は約1.4mLである。特定の実施形態では、充填済みシリンジに含まれる製剤の体積は約1.5mLである。特定の実施形態では、充填済みシリンジに含まれる製剤の体積は約1.45mLである。特定の実施形態では、充填済みシリンジは1mLのシリンジ容量を有する。特定の実施形態では、充填済みシリンジは2.25mLのシリンジ容量を有する。
特定の実施形態では、充填済みシリンジはシリコーン油を含む。特定の実施形態では、充填済みシリンジ中のシリコーン油の量は、約1mg以下である。特定の実施形態では、充填済みシリンジ中のシリコーン油の量は、約0.1mg~約1mgである。特定の実施形態では、充填済みシリンジ中のシリコーン油の量は、約0.2mg~約0.6mgである。特定の実施形態では、充填済みシリンジ中のシリコーン油の量は、約0.5mg~0.9mgである。
特定の実施形態では、針安全装置は、約50ニュートン(N)以下の注入力を有する。特定の実施形態では、針安全装置は、約35ニュートン(N)以下の注入力を有する。特定の実施形態では、針安全装置は、約33ニュートン(N)以下の注入力を有する。
本開示の主題は、約0.7mLの製剤及び皮下投与装置を備える製造品を提供し、
(a)製剤は、20mMヒスチジン緩衝液又は約20mMヒスチジン緩衝液(pH5.8、又は5.7~5.9、又は5.75~5.85)、0.04%ポリソルベート20又は約0.04%ポリソルベート20、及び200mMコハク酸アルギニン又は約200mMコハク酸アルギニン中に抗インテグリンβ7抗体を含み、抗インテグリンβ7抗体は、3つの軽鎖超可変領域(HVR)、HVR-L1、HVR-L2及びHVR-L3と、3つの重鎖HVR、HVR-H1、HVR-H2及びHVR-H3とを含み、
(i)HVR-L1は、配列番号1で示されるアミノ酸配列を含み、
(ii)HVR-L2は、配列番号2で示されるアミノ酸配列を含み、
(iii)HVR-L3は、配列番号3で示されるアミノ酸配列を含み、
(iv)HVR-H1は、配列番号4に示されるアミノ酸配列を含み、
(v)HVR-H2は、配列番号5のアミノ酸配列を含み、
(vi)HVR-H3は、配列番号6又は配列番号7で示されるアミノ酸配列を含み、
(b)皮下投与装置は、1mLのシリンジ容量を有する1mLの充填済みシリンジを備える針安全装置である。
特定の実施形態では、抗インテグリンβ7抗体は、150mg/mL又は約150mg/mlの濃度で製剤中に存在する。
本開示の主題は、約1.4mLの製剤及び皮下投与装置を備える製造品を提供し、
(a)製剤は、20mMヒスチジン緩衝液又は約20mMヒスチジン緩衝液(pH5.8、又は5.7~5.9、又は5.75~5.85)、0.04%ポリソルベート20又は約0.04%ポリソルベート20、及び200mMコハク酸アルギニン又は約200mMコハク酸アルギニン中に抗インテグリンβ7抗体を含み、抗インテグリンβ7抗体は、3つの軽鎖超可変領域(HVR)、HVR-L1、HVR-L2及びHVR-L3と、3つの重鎖HVR、HVR-H1、HVR-H2及びHVR-H3とを含み、
(i)HVR-L1は、配列番号1で示されるアミノ酸配列を含み、
(ii)HVR-L2は、配列番号2で示されるアミノ酸配列を含み、
(iii)HVR-L3は、配列番号3で示されるアミノ酸配列を含み、
(iv)HVR-H1は、配列番号4に示されるアミノ酸配列を含み、
(v)HVR-H2は、配列番号5のアミノ酸配列を含み、
(vi)HVR-H3は、配列番号6又は配列番号7で示されるアミノ酸配列を含み、
(b)皮下投与装置は、2.25mLのシリンジ容量を有する1mLの充填済みシリンジを備える針安全装置である。
特定の実施形態では、抗インテグリンβ7抗体は、150mg/mL又は約150mg/mlの濃度で製剤中に存在する。
本開示の主題は、本明細書に開示の製造品を含む自動注入装置を更に提供する。
本開示の主題は、約0.7mLの製剤を備える製造品と皮下投与装置とを含む自動注入装置を提供し、
(a)製剤は、20mMヒスチジン緩衝液又は約20mMヒスチジン緩衝液(pH5.8、又は5.7~5.9、又は5.75~5.85)、0.04%ポリソルベート20又は約0.04%ポリソルベート20、及び200mMコハク酸アルギニン又は約200mMコハク酸アルギニン中に抗インテグリンβ7抗体を含み、抗インテグリンβ7抗体は、3つの軽鎖超可変領域(HVR)、HVR-L1、HVR-L2及びHVR-L3と、3つの重鎖HVR、HVR-H1、HVR-H2及びHVR-H3とを含み、
(i)HVR-L1は、配列番号1で示されるアミノ酸配列を含み、
(ii)HVR-L2は、配列番号2で示されるアミノ酸配列を含み、
(iii)HVR-L3は、配列番号3で示されるアミノ酸配列を含み、
(iv)HVR-H1は、配列番号4に示されるアミノ酸配列を含み、
(v)HVR-H2は、配列番号5のアミノ酸配列を含み、
(vi)HVR-H3は、配列番号6又は配列番号7で示されるアミノ酸配列を含み、
(b)皮下投与装置は、1mLのシリンジ容量を有する1mLの充填済みシリンジを備える針安全装置である。
特定の実施形態では、抗インテグリンβ7抗体は、150mg/mL又は約150mg/mlの濃度で製剤中に存在する。
本開示の主題は、約1.4mLの製剤を備える製造品と皮下投与装置とを含む自動注入装置を提供し、
(a)製剤は、20mMヒスチジン緩衝液又は約20mMヒスチジン緩衝液(pH5.8、又は5.7~5.9、又は5.75~5.85)、0.04%ポリソルベート20又は約0.04%ポリソルベート20、及び200mMコハク酸アルギニン又は約200mMコハク酸アルギニン中に抗インテグリンβ7抗体を含み、抗インテグリンβ7抗体は、3つの軽鎖超可変領域(HVR)、HVR-L1、HVR-L2及びHVR-L3と、3つの重鎖HVR、HVR-H1、HVR-H2及びHVR-H3とを含み、
(i)HVR-L1は、配列番号1で示されるアミノ酸配列を含み、
(ii)HVR-L2は、配列番号2で示されるアミノ酸配列を含み、
(iii)HVR-L3は、配列番号3で示されるアミノ酸配列を含み、
(iv)HVR-H1は、配列番号4に示されるアミノ酸配列を含み、
(v)HVR-H2は、配列番号5のアミノ酸配列を含み、
(vi)HVR-H3は、配列番号6又は配列番号7で示されるアミノ酸配列を含み、
(b)皮下投与装置は、2.25mLのシリンジ容量を有する1mLの充填済みシリンジを備える針安全装置である。
特定の実施形態では、抗インテグリンβ7抗体は、150mg/mL又は約150mg/mlの濃度で製剤中に存在する。
更に別の態様では、対象における胃腸炎症性障害を治療する方法が提供される。特定の実施形態では、本方法は、有効量の上記製剤のいずれかを対象に投与することを含む。
更にまた別の態様では、抗インテグリンβ7抗体又はその抗原結合フラグメントを含む製剤を皮下投与する方法が提供される。そのような方法は、上記の製剤のいずれかを皮下投与することを含む。特定の実施形態では、本方法は、上記の装置のいずれかによる皮下投与装置を含む。特定の実施形態では、本方法は、本明細書に開示の自動注入装置を含む。特定の実施形態では、投与は、軽度の疼痛をもたらすか、又は疼痛をもたらさない。特定の実施形態では、投与は、一過性かつ軽度の注射部位反応をもたらす。特定の実施形態では、全用量が投与されるか、又は全用量の少なくとも90%が投与される。特定の実施形態では、投与は、針安全装置を備えた充填済みシリンジと比較して、エトロリズマブへの同等の曝露を提供する。
本開示の主題はまた、療法における本明細書に開示される製剤、製造品、又は自動注入装置の使用を提供する。
さらに、本明細書に開示される主題は、対象において胃腸炎症性障害を治療する際の本明細書に開示される製剤、製造品、又は自動注入装置の使用を提供する。特定の実施形態では、胃腸炎症性障害は、炎症性腸疾患である。特定の実施形態では、炎症性腸疾患は、潰瘍性大腸炎又はクローン病である。
図1は、実施例1に記載のpH及びポリソルベート20(PS20)濃度の関数としてのラウリン酸、ミリスチン酸及びパルミチン酸の溶解度曲線を示す。 図2は、実施例1に記載されているように、溶液粘度に対するアルギニンの影響を示す。 図3は、実施例1に記載されているように、200mMコハク酸アルギニンを含む製剤の粘度に対するタンパク質濃度の影響を示す。 図4は、実施例1に記載されているように、様々な量のシリコーン油を含む充填済みシリンジ中のエトロリズマブの高分子量種(HMWS)のパーセンテージの変化を示す。「高分子量種(HMWS)」という用語及び 「高分子量形態(HMWF)」という用語は、本明細書では互換的に使用される。 図5は、実施例1に記載されているように、経時的な様々な濃度のタングステン中のエトロリズマブのHMWSのパーセンテージを示す。 図6は、実施例1に記載されているように、25℃で20mMヒスチジン、200mMコハク酸アルギニン、pH5.8を含む製剤中の様々なタンパク質濃度でのエトロリズマブの粘度に対する亜鉛の影響を示す。 図7は、実施例1に記載されているように、室温での50mM亜鉛及び150mg/mLエトロリズマブによるタンパク質凝集体形成を示す。 図8は、実施例1に記載されているように、40℃での10mMの亜鉛及び10mg/mL又は50mg/mLのエトロリズマブによるHMWS形成を示す。 図9は、実施例1に記載されているように、40℃で10mMの亜鉛及び10mg/mLのエトロリズマブを含む製剤におけるHMWS形成に対するヒスチジンの影響を示す。 図10は、実施例1に記載されているように、40℃で10mMの亜鉛及び10mg/mLのエトロリズマブを含む製剤におけるHMWS形成に対するコハク酸塩の影響を示す。 図11は、実施例1に記載されているように、40℃で10mMの亜鉛及び50mg/mLのエトロリズマブを含む製剤におけるHMWS形成に対する様々な濃度のヒスチジン及びコハク酸塩、並びに複合的な影響を示す。 図12は、実施例2に記載されているような例示的な充填済みシリンジ(上2)及び自動注入装置(下)を示す。 図13は、実施例2に記載のエトロリズマブの充填済み自動注入装置を示す。 図14は、実施例2に記載されているような自動注入装置(AI)の忍容性及びヒト因子研究計画を示す。 図15は、実施例2に記載されているように、強度による経時的な疼痛(7点視覚的記述尺度)を示すグラフを示す。 図16は、実施例2に記載されているように、注射部位による経時的な疼痛(7点視覚的記述尺度)を示すグラフを示す。 図17は、実施例2に記載されているような2パート薬物動態学的架橋研究計画を示す。*1.15の幾何平均比(GMR)を判定ポイントとして正当化することは、針安全装置付き充填済みシリンジ(PFS-NSD)間の15%の差が現実的である可能性が高く、したがって、この研究は生物学的同等性を実証することができないという仮定に基づいていた。パイロット研究からのGMRによって駆動されるNへの調整。AI 自動注入装置;AUC 曲線下面積;Cmaxエトロリズマブの最大血清濃度。 図18は、実施例3で説明した参加者の配置を示す。AI自動注入装置、AUC曲線下面積、PFS-NSD針安全装置付き充填済みシリンジ、PK薬物動態、SC皮下。適格基準(体重制限)のため除外。参加者は、計算のためのPKデータが不十分であるため、特定のPK分析から除外された。 実施例3に記載のエトロリズマブCmax(上)又はAUC0-inf(下)に対する体重の影響を示す。AI自動注入装置、AUC曲線下面積、AUC0-inf無限大に外挿したAUC、Cmax最大濃度、PFS-NSD針安全装置を備えた充填済みシリンジ、SC皮下。 図20は、実施例3に記載されているようなピボタル研究における線形目盛(A)及び片対数目盛(B)でのAI及びPFS-NSDを用いた経時的なエトロリズマブ血清濃度を示す。AI自動注入装置、PFS-NSD針安全装置を備えた充填済みシリンジ。 図21は、実施例3に記載されているように、AI(N=合計73、20名の対象がADA陽性、上)及びPFS-NSD(N=75、24名の対象がADA陽性、下)を用いたADAステータスによる経時的なエトロリズマブ血清濃度を示す。ADA抗薬物抗体、AI自動注入装置、PFS-NSD針安全装置付き充填済みシリンジ。 図22は、実施例4に記載されているような注入中の様々な力の定義を示す。
別段の定義がない限り、本明細書で使用される技術用語及び科学用語は、本発明が属する技術分野の当業者によって一般的に理解されている意味と同じ意味を有する。Singleton et al.,Dictionary of Microbiology and Molecular Biology 2nd ed.,J.Wiley&Sons(New York,N.Y.1994)、及びMarch,Advanced Organic Chemistry Reactions,Mechanisms and Structure 4th ed.,John Wiley&Sons(New York,N.Y.1992)は、本出願で使用される用語の多くに対する一般的なガイドを当業者に提供する。
所定の定義
本明細書を解釈する目的で、以下の定義が適用され、適切な場合にはいつでも、単数形で使用される用語は、複数形も含み、その逆に、複数形で使用される用語は、単数形も含む。以下に記載されるいずれかの定義が、参照により本明細書に援用されるいずれかの文献と矛盾する場合には、以下に記載される定義が優先するものとする。
本明細書及び添付の特許請求の範囲で使用される場合、単数形「1つの(a)」、「1つの(an)」、及び「その(the)」は、別途内容が明確に指示しない限り、複数の指示対象を含む。したがって、例えば「タンパク質」又は「抗体」への言及は、それぞれ複数のタンパク質又は抗体を含み、「細胞」への言及は、細胞の混合物等を含む。
本明細書で使用される場合、「約」又は「およそ」という用語は、当業者によって決定される特定の値の許容できる誤差範囲を意味し、これは、その値がどのように測定又は決定されるか、すなわち、測定システムの限界に部分的に依存する。例えば、「約」とは、当該技術分野での1実施当たり3つ又は3つよりも多くの標準偏差以内を意味し得る。あるいは、「約」は、所与の値の20%まで、好ましくは10%まで、より好ましくは5%まで、更により好ましくは1%までの範囲を意味し得る。代替的に、特に生物学的システム又はプロセスに関して、この用語は、値の1桁以内、好ましくは5倍以内、より好ましくは2倍以内を意味し得る。本明細書における「約」に続く値又はパラメータへの言及は、その値又はパラメータ自体を対象とする実施形態を含む(且つ説明する)。例えば、「約X」について言及する記述は、「X」の記述を含む。
「薬学的製剤」という用語は、活性成分の生物学的活性が有効になるような形態であり、かつ製剤が投与される対象に許容できないほどに有毒な更なる成分を含有しない調製物を指す。そのような製剤は無菌である。「薬学的に許容され得る」賦形剤(ビヒクル、添加物)は、対象哺乳動物に適度に投与されて、用いられる有効用量の活性成分を提供することができるものである。
「滅菌」製剤は、無菌であるか、又は全ての生存微生物及びそれらの胞子を含まないか、又はそれらを本質的に含まない。
「凍結」製剤は、0℃未満の製剤である。一般に、凍結製剤はフリーズドライされておらず、また、事前又は事後に凍結乾燥されない。一部の実施形態では、凍結製剤は、(ステンレス鋼タンク中での)保管のための凍結薬又は(最終的なバイアル構成における)凍結医療品を含む。
「安定した」製剤とは、内部のタンパク質が保管時にその物理的安定性及び/若しくは化学的安定性並びに/又は生物学的活性を本質的に保持する製剤である。特定の実施形態では、製剤は、貯蔵時にその物理的及び化学的安定性、並びにその生物学的活性を本質的に保持する。保管期間は、一般に、製剤の意図される貯蔵寿命に基づいて選択される。
本明細書で使用される場合、「長期安定性」を有する製剤は、その中のタンパク質が、5℃で1年間又はそれを超えて保存した際に、その物理的安定性、化学的安定性、及び生物学的活性を本質的に保持する製剤を意味する。特定の実施形態では、貯蔵は5℃で1年以上である。特定の実施形態では、貯蔵は、5℃で最大5年間又は6年間である。特定の実施形態では、抗インテグリンβ7抗体は、室温で少なくとも約1日間安定である。特定の実施形態では、抗インテグリンβ7抗体は、室温で最大約1ヶ月間安定である。本明細書で使用される場合、室温は約20~約22℃である。特定の実施形態では、室温は約20℃である。
タンパク質は、それが、色及び/若しくは透明度の目視検査時に、又はUV光散乱若しくはサイズ排除クロマトグラフィーによって測定されたときに、凝集、沈殿、及び/又は変性の兆候をほとんど又は全く示さない場合、薬学的製剤中で「その物理安定性を保持する」。
タンパク質は、所与の時点での化学的安定性が、タンパク質が以下に定義されるその生物学的活性を依然として保持しているとみなされるようなものである場合、薬学的製剤中で「その化学的安定性を保持する」。化学的安定性は、タンパク質の化学的に改変された形態を検出及び定量することによって評定され得る。化学変成は、サイズ変更(例えばクリッピング)を含んでもよく、例えばサイズ排除クロマトグラフィー、SDS-PAGE及び/又はマトリックス支援レーザー脱離イオン化/飛行時間型質量分析(MALDI/TOF MS)を使用して評価することができる。他の種類の化学的変化には、例えば、イオン交換クロマトグラフィー又は画像化キャピラリー等電点電気泳動(icIEF)によって評価することができる電荷変化(例えば、脱アミドの結果として生じる)が含まれる。
抗体は、所与の時点での抗体の生物学的活性が、例えば、抗原結合アッセイ又は効力アッセイで決定されたときに、薬学的製剤が調製された時点で呈される生物学的活性の約20%以内である場合(アッセイのエラー内)、薬学的製剤中で「その生物学的活性を保持する」。
本明細書において、モノクローナル抗体の「生物学的活性」とは、抗原に結合する抗体の能力を指す。これは、抗原に結合し、in vitro又はin vivoで測定され得る測定可能な生物学的応答をもたらす抗体を更に含み得る。そのような活性は、アンタゴニスト活性又はアゴニスト活性であり得る。
製剤化される抗体は、本質的に純粋であり、望ましくは本質的に均質である(例えば、夾雑タンパク質等を含まない)。「本質的に純粋な」抗体は、組成物の総重量に基づいて少なくとも約90重量%、又は少なくとも約95重量%の抗体を含む組成物を意味する。「本質的に均質な」抗体とは、組成物の総重量に基づいて少なくとも約99重量%の抗体を含む組成物を意味する。
「等張」とは、目的とする製剤がヒト血液と本質的に同じ浸透圧を有することを意味する。等張製剤は、一般的に、約250~350mOsmの浸透圧を有する。等張性は、例えば蒸気圧浸透圧計又は氷結型浸透圧計を用いて測定することができる。
本明細書で使用される場合、「緩衝液」とは、その酸-塩基コンジュゲート成分の作用によりpHの変化に抵抗する緩衝溶液を指す。
本明細書において、「界面活性剤」は、界面活性剤、典型的には非イオン性界面活性剤を指す。本明細書における界面活性剤の例としては、ポリソルベート(例えば、ポリソルベート20及びポリソルベート80);ポロキサマー(例えば、ポロキサマー188);トリトン;ドデシル硫酸ナトリウム(SDS);ラウリル硫酸ナトリウム;オクチルグルコシドナトリウム;ラウリルスルホベタイン、ミリスチルスルホベタイン、リノレイルスルホベタイン、又はステアリルスルホベタイン;ラウリルサルコシン、ミリスチルサルコシン、リノレイルサルコシン、又はステアリルサルコシン;リノレイルベタイン、ミリスチルベタイン、又はセチルベタイン;ラウロアミドプロピルベタイン、コカミドプロピルベタイン、リノールアミドプロピルベタイン、ミリスタミドプロピルベタイン、パルミドプロピルベタイン、又はイソステアラミドプロピルベタイン(例えば、ラウロアミドプロピル);ミリスタミドプロピルジメチルアミン、パルミドプロピルジメチルアミン、又はイソステアラミドプロピルジメチルアミン;メチルココイルタウリン酸ナトリウム又はメチルオレイルタウリン酸二ナトリウム;並びにMONAQUAT(商標)シリーズ(Mona Industries,Inc.,Paterson,N.J.);ポリエチルグリコール、ポリプロピルグリコール、及びエチレングリコール-プロピレングリコールコポリマー(例えば、Pluronics、PF68等)等が挙げられる。特定の実施形態では、界面活性剤は、ポリソルベート20である。
本明細書で使用される場合、「治療」は、治療されている個体又は細胞の自然経過を改変することを目的とした臨床介入を指し、臨床病理過程の前又は最中に行うことができる。治療の望ましい効果には、疾患又はその状態若しくは症状の発生又は再発の予防、疾患の状態又は症状の軽減、疾患の直接的又は間接的な病理学的結果の減少、疾患進行率の低下、疾患状態の改善又は緩和、及び寛解又は予後改善が含まれる。
「有効量」は、所望の治療結果又は予防結果を達成するために必要な投薬量及び期間で有効な量を指す。治療剤の「治療有効量」は、個体の病状、年齢、性別及び体重、並びに個体において所望の応答を誘発する抗体の能力等の因子によって異なり得る。治療有効量はまた、治療剤の任意の毒性又は有害効果が治療上有益な効果によって上回る量である。
「個体」、「対象」又は「患者」は脊椎動物である。特定の実施形態では、脊椎動物は哺乳類である。哺乳動物としては、限定されるものではないが、霊長類(ヒト及び非ヒト霊長類を含む)及びげっ歯類(例えば、マウス及びラット)が挙げられる。特定の実施形態では、哺乳動物はヒトである。
「医薬品」は、疾患、障害、及び/又は症状を治療するための活性薬物である。
「抗体」(Ab)及び「免疫グロブリン」(Ig)は、類似の構造的特徴を有する糖タンパク質を指す。抗体は特定の抗原に対する結合特異性を示すが、免疫グロブリンには、抗体と、一般に抗原特異性を欠く他の抗体様分子の両方が含まれる。後者の種類のポリペプチドは、例えば、リンパ系によって低レベルで産生され、骨髄腫によって高レベルで産生される。
「抗体」及び「免疫グロブリン」という用語は、最も広い意味で同義に使用され、モノクローナル抗体(例えば、全長又はインタクトなモノクローナル抗体)、ポリクローナル抗体、一価抗体、多価抗体、多特異性抗体(例えば、それらが所望の生物学的活性を呈する限り、二重特異性抗体)を含み、特定の抗体フラグメント(本明細書により詳細に記載されるもの)も含み得る。抗体は、キメラヒト抗体、ヒト化抗体、及び/又は親和性成熟抗体であり得る。
「全長抗体」、「インタクトな抗体」、及び「全抗体」という用語は、以下に記載の抗体フラグメントではない、その実質的にインタクトな形態の抗体を指すために本明細書で同義に使用される。これらの用語は、具体的には、Fc領域を含む重鎖を有する抗体を指す。
「抗体フラグメント」は、好ましくはその抗原結合領域を含む、インタクトな抗体の一部を含む。抗体フラグメントの例としては、Fab、Fab’、F(ab’)、及びFvフラグメント、ダイアボディ、直鎖状抗体、一本鎖抗体分子、並びに抗体フラグメントから形成される多重特異性抗体が挙げられる。
抗体のパパイン消化により、各々単一の抗原結合部位を有する「Fab」フラグメントと、容易に結晶化するその能力を反映して命名された残りの「Fc」フラグメントと呼ばれる2つの同一の抗原結合フラグメントが産生される。ペプシン治療は、F(ab’)フラグメントをもたらし、これは、2つの抗原結合部位を有し、依然として抗原を架橋し得る。
「Fv」とは、完全な抗原結合部位を含有する最小の抗体フラグメントである。一実施形態では、二本鎖Fv種は、密接に非共有会合した1つの重鎖可変ドメイン及び1つの軽鎖可変ドメインの二量体からなる。集合的に、Fvの6つのCDRは、抗体に抗原結合特異性を与える。しかしながら、単一の可変ドメイン(又は抗原に特異的なCDRを3つのみ含むFvの半分)でさえも、全結合部位よりも低い親和性ではあるが、抗原を認識してそれに結合する能力を有する。
Fabフラグメントは、重鎖可変ドメイン及び軽鎖可変ドメインを含有し、軽鎖定常ドメイン及び第1の重鎖定常ドメイン(CH1)も含有する。Fab’フラグメントは、抗体ヒンジ領域由来の1つ以上のシステインを含む、重鎖CH1ドメインのカルボキシ末端における少数の残基の付加によって、Fabフラグメントとは異なる。Fab’-SHは、定常ドメインのシステイン残基(複数可)が、遊離チオール基を持つFab’の本明細書での呼称である。F(ab’)抗体フラグメントは、元来、間にヒンジシステインを有するFab’フラグメントの対として産生されたものであった。抗体フラグメントの他の化学的カップリングも既知である。
本明細書で使用される場合、「モノクローナル抗体」という用語は、実質的に同種の抗体の集団から得られる抗体を指し、例えば、その集団を構成する個々の抗体は、少量で存在し得る可能な変異、例えば、天然に存在する変異を除いて同一である。したがって、「モノクローナル」という修飾語は、別個の抗体の混合物ではないという抗体の特徴を示す。特定の実施形態では、このようなモノクローナル抗体は、典型的には、標的に結合するポリペプチド配列を含む抗体を含み、該標的結合ポリペプチド配列は、複数のポリペプチド配列から単一の標的結合ポリペプチド配列の選択を含むプロセスによって得られたものである。例えば、この選択プロセスは、ハイブリドーマクローン、ファージクローン、又は組換えDNAクローンのプール等の複数のクローンからの特有のクローンの選択であり得る。選択された標的結合配列が、例えば、標的への親和性を改善し、標的結合配列をヒト化し、細胞培養におけるその産生を改善し、in vivoでのその免疫原性を低減し、多重特異性抗体を作製するように更に改変されてもよく、かつ改変された標的結合配列を含む抗体が本発明のモノクローナル抗体でもあることを理解されたい。様々な決定基(エピトープ)に対する様々な抗体を通常含むポリクローナル抗体調製物とは対照的に、モノクローナル抗体調製物の各モノクローナル抗体は、抗原上の単一の決定基に対するものである。それらの特異性に加えて、モノクローナル抗体調製物は、典型的には他の免疫グロブリンによる混入がないという点で有利である。
「モノクローナル」という修飾語は、実質的に同種の抗体集団から得られるという抗体の特徴を示し、任意の特定の方法による抗体の産生を必要とするものと解釈されるべきではない。例えば、本発明に従って使用されるモノクローナル抗体は、例えば、ハイブリドーマ法(例えば、Kohler et al.,Nature,256:495(1975);Harlow et al.,Antibodies:A Laboratory Manual,(Cold Spring Harbor Laboratory Press,2nd ed.1988);Hammerling et al.,in:Monoclonal Antibodies and T-Cell Hybridomas 563-681(Elsevier,N.Y.,1981)),recombinant DNA methods(see,e.g.,U.S.Patent No.4,816,567),phage display technologies(see,e.g.,Clackson et al.,Nature,352:624-628(1991);Marks et al.,J.Mol.Biol.222:581-597(1992);Sidhu et al.,J.Mol.Biol.338(2):299-310(2004);Lee et al.,J.Mol.Biol.340(5):1073-1093(2004);Fellouse,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 101(34):12467-12472(2004);及びLee et al.,J.Immunol.Methods 284(1-2):119-132(2004)を参照)、及びヒト免疫グロブリン遺伝子座又はヒト免疫グロブリン配列をコードする遺伝子の一部又は全てを有する動物において、ヒト又はヒト様抗体を産生するための技術(例えば、国際公開第98/24893号;国際公開第96/34096号;国際公開第96/33735号;国際公開第91/10741号;Jakobovits et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 90:2551(1993);Jakobovits et al.,Nature 362:255-258(1993);Bruggemann et al.,Year in Immunol.7:33(1993);米国特許第5,545,807号;同第5,545,806号;同第5,569,825号;同第5,625,126号;同第5,633,425号;同第5,661,016号;Marks et al.,Bio.Technology 10:779-783(1992);Lonberg et al.,Nature 368:856-859(1994);Morrison,Nature 368:812-813(1994);Fishwild et al.,Nature Biotechnol.14:845-851(1996);Neuberger,Nature Biotechnol.14:826(1996)and Lonberg and Huszar,Intern.Rev.Immunol.13:65-93(1995)を参照)を含む様々な技術により作製され得る。
本明細書におけるモノクローナル抗体には、具体的には、重鎖及び/又は軽鎖の一部が、特定の種に由来するか、又は特定の抗体クラス若しくはサブクラスに属する抗体内の対応する配列と同一又は相同である一方で、鎖(複数可)の残りが、別の種に由来するか、又は別の抗体クラス若しくはサブクラスに属する抗体内の対応する配列と同一又は相同である「キメラ」抗体、並びにそれらが所望の生物学的活性を呈する限り、そのような抗体のフラグメントを含む(米国特許第4,816,567号及び Morrison et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 81:6855-9855(1984))。
「天然抗体」は、様々な構造を有する天然に存在する免疫グロブリン分子を指す。例えば、天然IgG抗体は、ジスルフィド結合されている2つの同一の軽鎖及び2つの同一の重鎖で構成される約150,000ダルトンのヘテロ四量体糖タンパク質である。N末端からC末端まで、各重鎖は、可変重ドメイン又は重鎖可変ドメインとも呼ばれる可変領域(VH)を有し、続いて3つの定常ドメイン(CH1、CH2、及びCH3)を有する。同様に、N末端からC末端まで、各軽鎖は、可変軽ドメイン又は軽鎖可変ドメインとも呼ばれる可変領域(VL)と、それに続く1つの定常軽(CL)ドメインとを有する。抗体の軽鎖は、その定常ドメインのアミノ酸配列に基づき、カッパ及びラムダと呼ばれる2種類の1つに割り当てられてもよい。
「可変領域」又は「可変ドメイン」という用語は、抗体と抗原との結合に関与する、抗体の重鎖又は軽鎖のドメインを指す。天然の抗体の重鎖及び軽鎖の可変ドメイン(それぞれV及びV)は、概して、類似の構造を有しており、各ドメインは、4つの保存されたフレームワーク領域(FR)と、3つの超可変領域(HVR)とを含む。(例えば、Kindt et al.Kuby Immunology,6th ed.,W.H.Freeman and Co.,page 91(2007)を参照)。単一のV又はVドメインは、抗原結合特異性を付与するために十分であり得る。さらに、特定の抗原に結合する抗体は、抗原に結合する抗体のVドメイン又はVドメインを使用し、それぞれ、相補的なVドメイン又はVドメインのライブラリをスクリーニングして、単離してもよい。例えば、Portolano et al.,J.Immunol.150:880-887(1993);Clarkson et al.,Nature 352:624-628(1991)を参照されたい。
「ヒト化」抗体は、非ヒトHVR由来のアミノ酸残基、及びヒトFR由来のアミノ酸残基を含むキメラ抗体を指す。特定の実施形態では、ヒト化抗体は、少なくとも1つ、典型的には2つの可変ドメインの実質的に全てを含み、HVR(例えばCDR)の全て又は実質的に全てが、非ヒト抗体に対応し、FRの全て又は実質的に全てが、ヒト抗体に対応する。ヒト化抗体は、任意に、ヒト抗体に由来する抗体定常領域の少なくとも一部を含んでいてもよい。抗体、例えば、非ヒト抗体の「ヒト化形態」は、ヒト化を受けた抗体を指す。
本明細書で使用されるとき、「超可変領域」、「HVR」、又は「HV」という用語は、配列が超可変性であり、かつ/又は構造的に定義されたループを形成する抗体可変ドメインの領域を指す。概して、抗体は、VH中に3つ(H1、H2、H3)及びVL中に3つ(L1、L2、L3)の6つの超可変領域を含む。いくつかの超可変領域記述法が使用されており、本明細書に包含される。Kabat相補性決定領域(Complementarity Determining Region:CDR)は、配列の可変性に基づいており、最も一般的に使用されている(Kabat et al.,Sequences of Proteins of Immunological Interest,5th Ed.Public Health Service,National Institutes of Health,Bethesda,Md.(1991))。Chothiaは、そうではなく、構造的ループの位置を指す(Chothia及びLesk J.Mol.Biol.196:901-917(1987))。AbM超可変領域は、KabatのCDRとChothiaの構造的ループとの折衷物であり、Oxford MolecularのAbM抗体モデリングソフトウェアによって使用されている。「接触」超可変領域は、利用可能な複合体結晶構造の分析に基づく。これらHVRの各々に由来する残基が、以下に示される。
ループKabat AbM Chothia 接触
L1 L24-L34 L24-L34 L26-L32 L30-L36
L2 L50-L56 L50-L56 L50-L52 L46-L55
L3 L89-L97 L89-L97 L91-L96 L89-L96
H1 H31-H35B H26-H35B H26-H32 H30-H35B(Kabatナンバリング)
H1 H31-H35 H26-H35 H26-H32 H30-H35(Chothiaナンバリング)
H2 H50-H65 H50-H58 H53-H55 H47-H58
H3 H95-H102 H95-H102 H96-H101 H93-H101
超可変領域は、以下の「伸長超可変領域」:VL内の24~36又は24~34(L1)、46~56又は49~56又は50~56又は52~56(L2)、及び89~97(L3)、並びにVH内の26~35(H1)、50~65又は49~65(H2)、及び93~102、94~102、又は95~102(H3)。可変ドメイン残基は、これらの定義の各々について、Kabatら(上記参照)に従って番号付けされる。
それらの重鎖の定常ドメインのアミノ酸配列に応じて、抗体(免疫グロブリン)は、異なるクラスに割り当てられ得る。免疫グロブリンには5つの主なクラス:IgA、IgD、IgE、IgG、及びIgMがあり、これらのうちのいくつかは、下位クラス(アイソタイプ)、例えば、IgG、IgG、IgG、IgG、IgA、及びIgAに更に分けることができる。免疫グロブリンの異なるクラスに対応する重鎖定常ドメインは、それぞれ、α、δ、ε、γ、及びμと呼ばれる。様々なクラスの免疫グロブリンのサブユニット構造及び三次元構成が周知であり、例えば、Abbas et al.Cellular and Mol.Immunology,4th ed.(W.B.Saunders,Co.,2000)に一般的に記載されている。抗体は、抗体と1つ以上の他のタンパク質又はペプチドとの共有又は非共有会合によって形成されるより大きい融合分子の一部であり得る。
抗体の「クラス」は、その重鎖によって保有される定常ドメイン又は定常領域の種類を指す。抗体には、5種類の主要なクラス:IgA、IgD、IgE、IgG及びIgM、これらのうちのいくつかは、更にサブクラス(アイソタイプ)、例えばIgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgAl及びIgA2に分けることができる。免疫グロブリンの異なるクラスに対応する重鎖定常ドメインは、それぞれ、a、6、8、y、及びμと呼ばれる。
「単離された」生物学的分子、例えば核酸、ポリペプチド又は抗体は、その天然環境の少なくとも1つの成分から同定及び分離及び/又は回収されたものである。
「皮下投与装置」は、薬物、例えば治療用抗体、又は医薬製剤を皮下経路によって投与するように適合又は設計された装置を指す。例示的な皮下投与装置には、針安全装置(例えば、充填済みシリンジを備えるもの)、自動注入装置(例えば、充填済みシリンジを備えるもの)を含む注射装置、注入ポンプ、ペン型注射器、無針装置、及びパッチ送達システムが含まれるが、これらに限定されない。皮下投与装置は、一定量の医薬製剤、例えば約0.5mL、約0.7mL、約1.0mL、約1.25mL、約1.4mL、約1.5mL、約1.75mL、約2.0mL又は約5.0mLを投与する。
「添付文書」又は「ラベル」は、そのような治療薬若しくは医薬品の適応症、使用法、投薬量、投与、禁忌症についての情報、パッケージ製品と組み合わされる他の治療薬、及び/又はその使用に関する警告を含有する、治療薬又は医薬品の商用のパッケージに通例含まれる指示書を指すように使用される。
本明細書で使用される場合、「胃腸炎症障害」という用語は、粘膜における炎症及び/又は潰瘍形成を引き起こす慢性障害のグループを指す。これらの障害には、例えば、炎症性腸疾患(例えば、クローン病、潰瘍性大腸炎、不確定大腸炎、及び感染性大腸炎)、粘膜炎(例えば、口腔粘膜炎、胃腸粘膜炎、鼻粘膜炎、及び直腸炎)、壊死性腸炎、及び食道炎が含まれる。
「炎症性腸疾患」又は「IBD」は、炎症及び/又は潰瘍形成を引き起こす腸疾患を指すために本明細書において互換的に使用され、限定されないが、クローン病及び潰瘍性大腸炎を含む。
「クローン病(CD)」又は「潰瘍性大腸炎(UC)」は、病因不明の慢性炎症性腸疾患である。クローン病は、潰瘍性大腸炎とは異なり、腸のあらゆる部分に影響を及ぼし得る。最も顕著な特徴クローン病は、腸壁の粒状かつ赤みがかった紫色の浮腫状肥厚である。炎症の発達と共に、これらの肉芽腫は多くの場合その外接境界を失い、周囲の組織と統合される。下痢及び腸の閉塞が、顕著な臨床特徴である。潰瘍性大腸炎と同様に、クローン病の経過は連続的な場合も再発性の場合もあり、軽度の場合も重度の場合もあるが、潰瘍性大腸炎とは異なり、クローン病は、腸の関与する区域の切除によって治癒可能ではない。ほとんどのクローン病患者は、ある時点での手術を必要とするが、後の再発は一般的であり、継続的な医療治療が通常である。
クローン病は、口から肛門までの消化管のあらゆる部分に影響を与え得るが、典型的には、回結腸、小腸、又は結腸-肛門直腸の領域に現れる。病理組織学的に、この疾患は、不連続肉芽腫(granulomatomas)、陰窩膿瘍、裂傷、及びアフタ性潰瘍によって顕在化する。リンパ球(T細胞とB細胞との両方)、形質細胞、マクロファージ、及び好中球から成る炎症性浸潤物が混合される。IgM分泌形質細胞及びIgG分泌形質細胞、マクロファージ、並びに好中球が、不釣合に増加する。抗炎症薬スルファサラジン及び5-アミノサリチル酸(5-ASA)は、軽度に活動性の結腸クローン病の治療に有用であり、疾患の寛解を維持するために一般的に処方される。メトロイダゾール及びシプロフロキサシンは、スルファサラジンと有効性が類似しており、肛門周囲疾患の治療に特に有用であると思われる。より重篤な場合、コルチコステロイドは、活動性増悪の治療に有効であり、寛解を維持することさえできる。アザチオプリン及び6-メルカプトプリンはまた、コルチコステロイドの長期投与を必要とする患者において成功を示している。これらの薬物が長期予防において役割を果たすことも可能である。残念ながら、一部の患者では、作用発現前に非常に長い遅延(最長6か月)があり得る。
下痢止め薬もまた、一部の患者において症状緩和をもたらすことができる。栄養療法又は成分栄養剤は、患者の栄養状態を改善し、急性疾患の症状の改善を誘導し得るが、持続した臨床的寛解は誘導しない。抗生物質は、二次的な小腸細菌の異常増殖の治療、及び化膿性合併症の治療に使用される。
「潰瘍性大腸炎(UC)」は大腸を侵す。疾患の経過は、連続的又は再発性、軽度又は重度であり得る。最も初期の病変は、リーベルキューン陰窩の基部に膿瘍形成を伴う炎症性浸潤である。これらの膨張し破裂した陰窩の合体は、その上にある粘膜をその血液供給から分離し、潰瘍化をもたらす傾向がある。この疾患の症状には、痙攣、下腹部痛、直腸出血、及び主に血液、膿及び粘液からなり、わずかな糞便粒子を伴う頻繁な軟便が含まれる。急性、重度又は慢性の寛解しない潰瘍性大腸炎には、全結腸切除術が必要な場合がある。UCの臨床的特徴は非常に多様であり、発症は潜行性又は急激であり得、下痢、テネスムス(tenesmus)及び再発性直腸出血を含み得る。結腸全体の致死的な関与により、生命を脅かす緊急事態である中毒性大結腸症が起こり得る。腸外症状としては、関節炎、壊疽性膿皮症、ブドウ膜炎及び結節性紅斑が挙げられる。
「血清試料」という用語は、個体から得られた任意の血清試料を指す。哺乳動物から血清を得るための方法は、当技術分野で周知である。
「全血」という用語は、個体から得られた任意の全血試料を指す。典型的には、全血は、全ての血液成分、例えば細胞成分及び血漿を含む。哺乳動物から全血を得るための方法は、当技術分野で周知である。
治療剤
胃腸炎症性障害(例えば、炎症性腸疾患)を治療するための治療剤が、本明細書中に提供される。炎症性腸疾患(IBD)は、患者の生活の質に深刻な影響を及ぼし、しばしば外科的介入(Casellas et al.,Dig Dis.1999;17(4):208-18;Carter et al.,Gut.2004;53(Suppl 5):V1-16;Borren et al.,Nat Rev Gastroenterol Hepatol.2019;16(4):247-59)の必要性をもたらす慢性胃腸疾患である。IBDの主な形態は、潰瘍性大腸炎(UC)及びクローン病、いくつかの共通の症状を共有し、部分的に重複する病因を示す2つの異なる症状である(Zhang and Li,World J Gastroenterol.2014;20(1):91-9;Abraham and Cho,N Engl J Med.2009;361(21):2066-78。IBDに対する現在の薬理学的療法は治癒的ではない。さらに、IBDのための多くの薬理学的療法は、疾患の持続期間にわたって効力を失い、全身性副作用をもたらし得る(Abraham and Cho,N Engl J Med.2009;361(21):2066-78;Rogler,Best Pract Res Clin Gastroenterol.2010;24(2):157-65)。エトロリズマブは、UC及びクローン病の患者のために開発中の抗β7インテグリンモノクローナル抗体である。エトロリズマブは、α4β7及びαEβ7を選択的に阻害して、免疫細胞の腸内への輸送及びその後の腸内層に対する炎症作用を減少させる(Zundler et al.,Gut.2019;68(9):1688-700)。UC患者におけるエトロリズマブの有効性及び安全性は、第2相EUCALYPTUS研究で実証された(Vermeire et al.,Lancet.2014;384(9940):309-18)。
特定の実施形態では、治療剤は、抗インテグリンβ7抗体又はその抗原結合フラグメントである。特定の実施形態では、抗インテグリンβ7抗体は、ヒト化モノクローナル抗インテグリンβ7抗体である。特定のそのような実施形態では、抗インテグリンβ7抗体又はその抗原結合フラグメントは、3つの軽鎖超可変領域(HVR)、HVR-L1、HVR-L2及びHVR-L3と、3つの重鎖HVR、HVR-H1、HVR-H2及びHVR-H3とを含み、(i)HVR-L1は、配列番号1で示されるアミノ酸配列を含み、(ii)HVR-L2は、配列番号2で示されるアミノ酸配列を含み、(iii)HVR-L3は、配列番号3に示されるアミノ酸配列を含み、(iv)HVR-H1は、配列番号4に示されるアミノ酸配列を含み、(v)HVR-H2は、配列番号5に示されるアミノ酸配列に示されるを含み、(vi)前記HVR-H3は、配列番号6又は配列番号7に示されるアミノ酸配列を含む。
特定のそのような実施形態では、抗インテグリンβ7抗体又はその抗原結合フラグメントは、配列番号8に示されるアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域ドメインと、配列番号9に示されるアミノ酸配列を含む重鎖可変領域ドメインとを更に含む。特定の実施形態では、抗インテグリンβ7抗体又はその抗原結合フラグメントは、配列番号8に示されるアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域ドメインと、配列番号11に示されるアミノ酸配列を含む重鎖又は配列番号12に示されるアミノ酸配列を含む重鎖とを含む。特定の実施形態では、抗インテグリンβ7抗体又はその抗原結合フラグメントは、配列番号10に示されるアミノ酸配列を含む軽鎖と、配列番号9に示されるアミノ酸配列を含む重鎖可変領域ドメインとを含む。
特定のそのような実施形態では、抗インテグリンβ7抗体又はその抗原結合フラグメントは、配列番号10に示されるアミノ酸配列を含む軽鎖と、配列番号11に示されるアミノ酸配列を含む重鎖又は配列番号12に示されるアミノ酸配列を含む重鎖とを更に含む。特定のそのような実施形態では、抗インテグリンβ7抗体は、エトロリズマブである。配列番号1~12を以下に提供する。抗インテグリンβ7抗体又はその抗原結合フラグメントは、参照により本明細書に組み込まれる国際公開第2006/026759号に更に記載される。
特定の分子バイオマーカー
特定の例では、バイオマーカーは、所与の治療剤による治療のための対象を選択する手段として、対象から得られた生物学的試料において定量される。国際特許国際公開第2014160753号、国際公開第2015148809号及び国際公開第2009140684号は、本明細書に記載の抗インテグリンβ7抗体製剤に対する胃腸炎症性障害を有する対衣装の応答性を予測する方法、及び本明細書に記載の抗インテグリンβ7抗体製剤による治療のために胃腸炎症性障害を有する対象を選択する方法を記載している。
製剤のための一般的な技術
抗インテグリンβ7抗体又はその抗原結合フラグメントを含む製剤は、当技術分野で公知の特定の賦形剤及び技術を使用して、本明細書に更に記載されるように調製及び分析することができる。特定の実施形態では、製剤化される抗体は、事前凍結乾燥に供されておらず、本明細書における目的とする製剤は、水性製剤である。特定の実施形態では、抗体は、完全長抗体である。特定の実施形態では、製剤中の抗体はF(ab’)等の抗体フラグメントであり、この場合、完全長抗体には起こりえない問題(例えば、抗体のFabへのクリッピング)に対応する必要が生じ得る。製剤中に存在する抗体の治療有効量は、所望の用量体積及び投与様式(複数可)を考慮に入れることによって決定される。特定の実施形態では、約0.1mg/mL~約250mg/mL、又は約10mg/mL~約220mg/mL、又は約50mg/mL~約220mg/mL、又は約100mg/mL~約220mg/mL、又は約100mg/mL~約150mg/mL、又は約150mg/mL~約200mg/mLは製剤中の例示的抗体濃度である。特定の実施形態では、抗インテグリンβ7抗体を150mg/mLの濃度で製剤化する。
pH緩衝溶液中に抗インテグリンβ7抗体又はその抗原結合フラグメントを含む水性製剤を調製する。緩衝液は、約4.5~約6.5の範囲のpHを有することができる。特定の実施形態では、pHは、5.0超で最大7.0である。特定の実施形態では、pHは5.5超である。特定の実施形態では、pHは5.5~6.1である。特定の実施形態では、pHは5.6~6.1である。特定の実施形態では、pHは5.8又は約5.8である。特定の実施形態では、pHは5.8である。特定の実施形態では、pHは5.7~5.9である。特定の実施形態では、pHは5.75~5.85である。本開示の製剤のpHは、同様の賦形剤組成を有する抗体製剤の標準よりも高い。典型的な抗体製剤は5.5のpHを有するが、提示された開示される製剤は5.5を超えるpH、例えば5.8、5.7~5.9又は5.75~5.85のpHを有する。より高い製剤pHは、高タンパク質濃度の充填済みシリンジ中での長期保存中のポリソルベート分解の結果としての粒子形成のリスクを低下させる。ポリソルベート分解に起因し得るより高いpHでの遊離脂肪酸の溶解度の増加により、粒子形成のリスクが低下する。5.5を超えるpH、例えば5.8のpHは、粒子形成のリスクと抗体の化学的及び物理的安定性とのバランスをとる。5.5を超えるpH、例えば5.8のpHは、Asp異性化及びスクシンイミド中間体形成の速度を最小化し、これは、抗体の化学的安定性、及びそれによって製品品質に実質的に影響を与えることなく周囲温度での貯蔵を可能にすることによって、装置と組み合わせた患者の利便性を可能にする。
pHをこの範囲内に制御する緩衝液の例としては、酢酸塩(例えば、酢酸ヒスチジン、酢酸アルギニン、酢酸ナトリウム)、コハク酸塩(例えば、コハク酸ヒスチジン、コハク酸アルギニン、コハク酸ナトリウム)、グルコン酸塩、クエン酸塩及び他の有機酸緩衝液並びにそれらの組み合わせが挙げられる。緩衝液濃度は、例えば、緩衝液及び製剤の所望の等張性に応じて、約1mM~約600mMであり得る。特定の実施形態では、緩衝液はヒスチジンを含む。製剤中のヒスチジンの存在は、亜鉛の存在下での高分子量種(HMWS)形成速度を大幅に低下させる可能性がある。製剤中のヒスチジンの濃度は、約5mM~約40mM、約5mM~約30mM、約10mM~約40mM、約10mM~約30mM、約15mM~約25mM、約10mM~約20mM、又は約15mM~約20mMであり得る。特定の実施形態では、製剤中のヒスチジンの濃度は、約20mMである。
特定の実施形態では、緩衝液は、20mMヒスチジン、pH5.8である。
特定の実施形態では、製剤はコハク酸アルギニンを含む。特定の実施形態では、製剤中のコハク酸アルギニンの濃度は、約20mM~300mMである。特定の実施形態では、製剤中のコハク酸アルギニンの濃度は、約100mM~300mM、約100mM~約200mM、約150mM~約300mM、約200mM~約300mM、約100mM~約250mM、約150mM~約250mM、又は約150mM~約200mMである。特定の実施形態では、製剤中のコハク酸アルギニンの濃度は約200mMである。高アルギニン濃度及び高導電率製剤は、抗体上の電荷を遮蔽し、pHのシフトを防止する。さらに、アルギニンは、製剤の粘度に影響を与える可能性があり、例えば、製剤の粘度は、製剤へのアルギニンの添加によって低下する。
製剤は、25℃で約20センチポアズ(cP)未満の粘度を有する。特定の実施形態では、製剤の粘度は、25℃で約1cP~約20cP、25℃で約5cP~約20cP、25℃で約5cP~約15cP、25℃で約1cP~約10cP、又は25℃で約5cP~約10cPである。特定の実施形態では、製剤の粘度は、25℃約7cPである。
特定の実施形態では、抗体製剤は界面活性剤を含む。例示的な界面活性剤は、非イオン性界面活性剤を含む。適切な非イオン性界面活性剤としては、ポリソルベート(20、40、60、65、80等)、ポロキサマー(184、188等)、プルロニックポリオール、トリトン(登録商標)、ポリオキシエチレンソルビタンモノエーテル(Tween(登録商標)-20、Tween(登録商標)-80等)、ラウロマクロゴール400、ステアリン酸ポリオキシル40、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油10、50及び60、モノステアリン酸グリセロール、ショ糖脂肪酸エステル、メチルセルロース並びにカルボキシメチルセルロースが挙げられる。使用され得るアニオン性界面活性剤としては、ラウリル硫酸ナトリウム、ジオクチルスルホコハク酸ナトリウム及びジオクチルスルホン酸ナトリウムが挙げられる。カチオン性界面活性剤としては、塩化ベンザルコニウム又は塩化ベンゼトニウムが挙げられる。特定の実施形態では、界面活性剤は、ポリソルベート20である。
非イオン性界面活性剤は、治療剤を可溶化するのに役立つだけでなく、撹拌誘発凝集から治療用タンパク質を保護するのに役立つことができ、これはまた、活性な治療用タンパク質又は抗体の変性を引き起こすことなく製剤を剪断表面応力に曝露することを可能にする。
添加される界面活性剤の量は、それが製剤化抗体の凝集を低減させ、及び/又は製剤中の微粒子の形成を最小限に抑え、及び/又は吸着を低減させるような量である。例えば、界面活性剤は、製剤中に0.005%重量/体積(w/v)を超える量で存在し得る。特定の実施形態では、製剤中の界面活性剤の濃度は、0.005%w/v超で最大約1%w/vである。製剤中の界面活性剤の濃度は、約0.005%w/v~約0.5%w/v、約0.02%w/v~約0.5%w/v、約0.03%w/v~約0.5%w/v、0.03%w/v~0.1%w/vであり得る。特定の実施形態では、製剤中の界面活性剤の濃度は0.04%w/vである。特定の実施形態では、界面活性剤は、0.04%w/vの量で製剤中に存在するポリソルベート20である。抗体製剤に対するポリソルベート20の典型的な濃度は0.02%(w/v)である。本開示の製剤は、0.04%w/vのポリソルベート20を含む。より高い濃度のポリソルベート20は、ポリソルベート分解の結果として生成され得る遊離脂肪酸を可溶化するのに役立ち、それによって粒子を形成するリスクを低下させる。
特定の実施形態では、製剤は、上記で定義された薬剤(例えば、抗体、緩衝液、及び界面活性剤)を含み、ベンジルアルコール、フェノール、m-クレゾール、クロロブタノール、及びベンゼトニウムCl等の1つ以上の防腐剤を本質的に含まない。特定の実施形態では、製剤は保存剤を含まない。特定の実施形態では、防腐剤が製剤中に含まれてもよく、具体的には、製剤は、複数回投薬製剤である。防腐剤の濃度は、約0.1%~約2%の範囲、例えば約0.5%~約1%の範囲とすることができる。1つ以上の他の薬学的に許容され得る担体、賦形剤、又は安定剤、例えば、Remington’s Pharmaceutical Sciences 16th edition,Osol,A.Ed.(1980)に記載されるものが製剤中に含まれていてよいが、但し、それらは製剤の所望の特性に悪影響を及ぼさないことを条件とする。許容される担体、賦形剤又は安定剤は、使用される投与量及び濃度でレシピエントに対して無毒であり、以下を含む:追加の緩衝剤;共溶媒;アスコルビン酸とメチオニンを含む抗酸化剤;EDTA等のキレート剤;金属錯体(例えば、Zn-タンパク質複合体);ポリエステル等の生分解性ポリマー、及び/又は塩形成対イオン。
本明細書におけるキレート剤の様々な説明はしばしばEDTAに焦点を当てているが、他の金属イオンキレート剤も本発明に包含されることが理解されよう。金属イオンキレート剤は、当業者に周知であり、これらとしては、アミノポリカルボキシレート、EDTA(エチレンジアミン四酢酸)、EGTA(エチレングリコール-ビス(β-アミノエチルエーテル)-N,N,N’,N’-四酢酸)、NTA(ニトリロ三酢酸)、EDDS(ジコハク酸エチレンジアミン)、PDTA(1,3-プロピレンジアミン四酢酸)、DTPA(ジエチレントリアミン五酢酸)、ADA(β-アラニン二酢酸)、MGCA(メチルグリシン二酢酸)等が挙げられるが、必ずしもこれらに限定されない。さらに、本明細書のいくつかの実施形態は、ホスホネート/ホスホン酸キレート剤を含む。
液体組成物の等張性を調整又は維持するために、「安定剤」として知られることもある等張剤が存在する。タンパク質及び抗体等の大きい荷電生体分子とともに使用される場合、張性剤は、それらがアミノ酸側鎖の荷電基と相互作用し、それにより、分子間及び分子内相互作用の可能性を低減させ得るため、「安定剤」と呼ばれることが多い。等張化剤は、他の成分の相対量を考慮して、0.1重量%~25重量%、又は1%~5%の量で存在し得る。等張化剤としては、多価糖アルコール、三価以上の糖アルコール、例えばグリセリン、エリトリトール、アラビトール、キシリトール、ソルビトール及びマンニトールが挙げられる。
追加の安定剤としては、増量剤から溶解性増強剤、変性又は容器壁への付着を防止する薬剤までの機能範囲の広範囲の賦形剤が含まれる。安定剤は、0.1~10,000重量部の活性タンパク質又は抗体の範囲で存在することができる。典型的な安定剤としては、以下が含まれる:多価糖アルコール(上に列挙);アミノ酸、例えばアラニン、グリシン、グルタミン、アスパラギン、ヒスチジン、アルギニン、リジン、メチオニン、オルニチン、ロイシン、2-フェニルアラニン、グルタミン酸、トレオニン等;有機糖又は糖アルコール、例えばスクロース、ラクトース、ラクチトール、トレハロース、スタキオース、マンノース、ソルボース、キシロース、リボース、リビトール、ミオイニシトース、ミオイニシトール、ガラクトース、ガラクチトール、グリセロール、シクリトール(例えば、イノシトール)、ポリエチレングリコール;硫黄含有還元剤、例えば尿素、グルタチオン、チオクト酸、チオグリコール酸ナトリウム、チオグリセロール、a-モノチオグリセロール及びチオ硫酸ナトリウム;低分子量タンパク質、例えばヒト血清アルブミン、ウシ血清アルブミン、ゼラチン又は他の免疫グロブリン;親水性ポリマー、例えばポリビニルピロリドン;単糖類(例えば、キシロース、マンノース、フルクトース、グルコース);二糖類(例えば、ラクトース、マルトース、スクロース);三糖類、例えばラフィノース;並びに多糖類、例えばデキストリン又はデキストラン。
タンパク質安定性を測定するための種々の分析技法が当該技術分野で利用可能であり、例えば、Peptide and Protein Drug Delivery,247-301,Vincent Lee Ed.,Marcel Dekker,Inc.,New York,N.Y.,Pubs.(1991)and Jones,A.Adv.Drug Delivery Rev.10:2990(1993)に概説されている。安定性は、選択された温度にて選択された期間測定することができる。特定の実施形態では、製剤は、約40℃で少なくとも約1週間安定である。特定の実施形態では、製剤は、約5℃で少なくとも約12ヶ月間安定であり、及び/又は約5℃で少なくとも約18ヶ月間安定であり、及び/又は約5℃で少なくとも約2年間安定であり、及び/又は約5℃で少なくとも約3年間安定であり、及び/又は約5℃で少なくとも約4年間安定であり、及び/又は約5℃で少なくとも約5年間安定である。特定の実施形態では、製剤は、約-20℃で少なくとも2年間安定であり、及び/又は約-20℃で少なくとも4年間安定であり、及び/又は約-20℃で少なくとも約5年間安定であり、及び/又は約-20℃で少なくとも約6年間安定であり、及び/又は約-20℃で少なくとも約7年間安定である。特定の実施形態では、製剤は、約25℃で少なくとも約1週間安定であり、及び/又は約25℃で少なくとも約2週間安定であり、又は約25℃で少なくとも約4週間安定である。特定の実施形態では、製剤は、製剤の凍結(例えば-70℃まで)及び解凍後、例えば1、2、3、4又は5サイクルの凍結及び解凍後に安定である。安定性は、凝集体形成の評価(例えば、サイズ排除クロマトグラフィーを使用した評価、濁度の測定による評価及び/又は目視検査による評価);陽イオン交換クロマトグラフィー、イメージキャピラリー等電点電気泳動(icIEF)又はキャピラリーゾーン電気泳動を使用して電荷不均一性を評定することによる;アミノ末端又はカルボキシ末端配列分析;質量分析;還元抗体とインタクトな抗体とを比較するSDS-PAGE分析;ペプチドマップ(例えばトリプシン又はLYS-C)分析;抗体の生物活性又は抗原結合機能を評価すること等を含む、多種多様な方法において定性的及び/又は定量的に評価することができる。不安定性は、凝集、脱アミド化(例えばAsn脱アミド化)、酸化(例えばMet酸化)、異性化(例えばAsp異性化)、クリッピング/加水分解/フラグメント化(例えばヒンジ領域フラグメント化)、スクシンイミド形成、不対システイン、N-末端伸長、C-末端プロセシング、グリコシル化変化等のうちの1つ以上を含み得る。
in vivo投与に使用される製剤は、無菌であるべきである。これは、製剤の調製前又は調製後の滅菌濾過膜を通す濾過によって容易に達成される。
特定の実施形態では、抗インテグリンβ7抗体又はその抗原結合フラグメントは、例えば、自己注射装置、自動注入装置、又は自己投与用に設計された他の装置を使用して投与される。特定の実施形態では、抗インテグリンβ7抗体又はその抗原結合フラグメントは、皮下投与装置を使用して投与される。自動注入装置を含む様々な自己注射装置及び皮下投与装置が当技術分野で公知であり、市販されている。例示的な装置としては、充填済みシリンジ(Becton Dickinson製のBD HYPAK SCF(登録商標)、BD NEOPAK(商標)、READYFILL(商標)及びSTERIFILL SCF(商標);Baxter製のCLEARSHOT(商標)コポリマー充填済みシリンジ;並びにWest Pharmaceutical Servicesから入手可能なDaikyo Seiko CRYSTAL ZENITH(登録商標)充填済みシリンジ等);Becton Dickinson製のBD Pen等の使い捨てペン型注射装置;超鋭利装置及びマイクロニードル装置(Becton Dickinson製のINJECT-EASE(商標)及びマイクロインフューザー装置;並びにValeritas製のH-PATCH(商標)等)、並びに無針注射装置(Bioject製から入手可能なBIOJECTOR(登録商標)及びIJECT(登録商標);並びにMedtronic製から入手可能なSOF-SERTER(登録商標)及びパッチ装置)が挙げられるが、これらに限定されない。皮下投与装置の特定の実施形態を本明細書で更に説明する。抗インテグリンβ7抗体又はその抗原結合フラグメントと少なくとも第2の治療用化合物とのそのような自己注射装置又は皮下投与装置との同時製剤又は同時投与が想定される。
組換え方法
抗体は、例えば、米国特許第4,816,567号に記載される組換え法及び組成物を使用して生成されてもよい。特定の実施形態では、本明細書中に記載される抗インテグリンβ7抗体又はその抗原結合フラグメントをコードする核酸分子が提供される。そのような核酸分子は、抗体のVを含むアミノ酸配列及び/又は抗体のVを構成するアミノ酸配列(例えば、抗体の軽鎖及び/又は重鎖)をコードしていてもよい。特定の実施形態では、そのような核酸分子を含む1つ以上のベクター(例えば、発現ベクター)が提供される。特定の実施形態では、そのような核酸分子を含む宿主細胞が提供される。特定の実施形態では、宿主細胞は、(例えば、形質転換された)以下を含む:(1)抗体のVを含むアミノ酸配列をコードする核酸分子と、抗体のVを含むアミノ酸配列をコードする核酸を含むベクター、又は(2)抗体のVを含むアミノ酸配列をコードする核酸分子を含む第1のベクターと、抗体のVを含むアミノ酸配列をコードする核酸分子を含む第2のベクターとを含むベクター。特定の実施形態では、宿主細胞は、真核生物細胞、例えば、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞又はリンパ球系細胞(例えば、YO、NSO、Sp20細胞)である。特定の実施形態では、抗インテグリンβ7抗体を作製する方法であって、上記に提供される抗体をコードする核酸分子を含む宿主細胞を、その抗体の発現に好適な条件下で培養することと、任意に、抗体を宿主細胞(又は宿主細胞培養培地)から回収することとを含む、方法が提供される。
抗インテグリンβ7抗体の組換え産生のために、例えば上記のような抗体をコードする核酸分子を単離し、宿主細胞における更なるクローニング及び/又は発現のために1つ以上のベクターに挿入する。そのような核酸分子は、従来の手順を使用して(例えば、抗体の重鎖及び軽鎖をコードする遺伝子に特異的に結合することができるオリゴヌクレオチドプローブを使用することによって)容易に単離され、配列決定され得る。
抗体コード化ベクターのクローニング又は発現のための適切な宿主細胞には、本明細書に記載される原核細胞又は真核細胞が含まれる。例えば、抗体は、特に糖鎖修飾やFcエフェクター機能を必要としない場合には、細菌中で産生されてもよい。細菌における抗体フラグメント及びポリペプチドの発現については、例えば、米国特許第5,648,237号、同第5,789,199号、及び同第5,840,523号を参照されたい。(大腸菌(E.coli)における抗体フラグメントの発現について記載したCharlton,Methods in Molecular Biology,Vol.248(B.K.C.Lo,ed.,Humana Press,Totowa,NJ,2003),pp.245-254も参照)。発現の後、抗体を、可溶性画分において細菌細胞のペーストから単離して、更に精製することができる。
原核生物に加えて、糸状菌や酵母等の真核生物は、抗体をコードするベクターのクローニング又は発現宿主として適しており、その中には、グリコシル化経路が「ヒト化」された菌株や酵母株が含まれ、その結果、部分的又は完全にヒトのグリコシル化パターンを有する抗体が産生される。Gerngross,Nat.Biotech.22:1409-1414(2004)、及びLi et al.,Nat.Biotech.24:210-215(2006)を参照されたい。
また、グリコシル化抗体を発現させるのに適した宿主細胞は、多細胞生物(無脊椎動物及び脊椎動物)に由来する。無脊椎動物細胞の例としては、植物細胞及び昆虫細胞が挙げられる。多くのバキュロウイルス株が同定されており、特に、Spodoptera frugiperda細胞のトランスフェクションのために、これを昆虫細胞と組み合わせて使用してもよい。
植物細胞培養物も、宿主として利用することができる。例えば、米国特許第5,959,177号、第6,040,498号、第6,420,548号、第7,125,978号及び第6,417,429号(トランスジェニック植物において抗体を産生するためのPLANTIBODIES(商標)技術)を参照。
脊椎動物細胞も、宿主として使用され得る。例えば、懸濁液中で増殖するように適合されている哺乳動物細胞株は有用であり得る。有用な哺乳動物宿主細胞株の他の例は、SV40(COS-7)により形質転換されたサル腎臓CV1株;ヒト胚性腎臓株(例えば、Graham et al.,J.Gen Virol.36:59(1977))に記載される293又は293細胞);ベビーハムスター腎細胞(BHK);マウスセルトリ細胞(例えば、Mather,Biol.Reprod.23:243-251(1980)に記載されるTM4細胞);サル腎臓細胞(CV1);アフリカ緑猿腎臓細胞(VERO-76);ヒト子宮頸がん細胞(HELA);イヌ腎臓細胞(MDCK);水牛ラット肝臓細胞(BRL 3A);ヒト肺細胞(W138);ヒト肝細胞(Hep G2);マウス乳腺腫瘍(MMT060562);例えば、Mather et al.,Annals N.Y.Acad.Sci.383:44-68(1982)に記載されるTRI細胞;MRC5細胞;及びFS4細胞である。他の有用な哺乳動物宿主細胞株には、DHFR-CHO細胞(Urlaub et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 77:4216(1980))を含むチャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞、並びにYO、NSO、及びSp2/0等の骨髄腫細胞株が含まれる。抗体産生に好適な特定の哺乳類宿主細胞株の概説については、例えば、Yazaki and Wu,Methods in Molecular Biology,Vol.248(B.K.C.Lo,ed.,Humana Press,Totowa,NJ),pp.255-268(2003)を参照されたい。
アッセイ
本明細書に提供される抗インテグリンβ7抗体は、それらの物理的/化学的特性及び/又は生物活性について、当技術分野で既知の様々なアッセイによって、同定され得るか、スクリーニングされ得るか、又は特徴付けられ得る。
エトロリズマブ効力アッセイは、エトロリズマブがMAdCAMへのRPMI8866 B細胞結合を阻害する能力を測定する。このアッセイでは、MAdCAMを96-ウェルマイクロタイタープレート上にコーティングした。一晩のインキュベーションの後、エトロリズマブ標準、対照及び試料を、一定量の細胞と共にプレートに添加した。プレートを加湿インキュベーター中37℃でインキュベートして、細胞をMAdCAMに結合させた。洗浄工程を実施して非-接着性細胞を除去し、残りの生細胞を、酸化状態では青色かつ非-蛍光性であるが、細胞内環境によって還元されて高度に蛍光性のピンク色になる酸化還元色素アラマーブルーを添加することによって定量した。したがって、色及び蛍光の変化は、結合した生細胞の数に比例した。結果をRFUで表し、エトロリズマブ濃度に対してプロットした。並行曲線分析を使用して、基準物質に対するエトロリズマブ試料(複数可)の活性を推定した。
効力アッセイ
製造品及びキット
製剤を含み、その使用説明書を提供する製造品が提供される。製造品は容器を含む。
特定の実施形態では、一定用量の抗インテグリンβ7抗体又はその抗原結合フラグメントを対象に送達する皮下投与装置を含む製造品が提供され、一定用量は、例えば、105mg又は210mgであるが、これらに限定されない。特定の実施形態では、抗インテグリンβ7抗体は、エトロリズマブである。皮下投与装置における抗インテグリンβ7抗体又はその抗原結合フラグメントは、安定な医薬製剤で提供されるように、緩衝液、例えばヒスチジンpH5.8、及び他の賦形剤、例えばポリソルベート及びコハク酸アルギニンに製剤化される。
特定の実施形態では、皮下投与装置は、針及び任意に針シールドを備えたガラスバレルと、任意に針シールド装置とを備える充填済みシリンジである。特定の実施形態では、シリンジに含まれる製剤の体積は、約0.1mL~約2mL、約0.1mL~約2mL、約0.5mL~約2mL、又は約1mL~約2mLである。特定の実施形態では、シリンジに含まれる製剤の体積は約0.5mL~約2mLである。特定の実施形態では、シリンジに含まれる製剤の体積は、約0.5mL、約0.7mL、約1mL、約1.4mL、約1.5mL又は約2.0mLである。特定の実施形態では、シリンジに含まれる製剤の体積は約0.7mLである。特定の実施形態では、シリンジに含まれる製剤の体積は約0.75mLである。特定の実施形態では、シリンジに含まれる製剤の体積は約1mLである。特定の実施形態では、充填済みシリンジに含まれる製剤の体積は、約0.5mL~約1.0mLである。特定の実施形態では、充填済みシリンジに含まれる製剤の体積は、約1.0mL~約1.5mLである。特定の実施形態では、充填済みシリンジに含まれる製剤の体積は約1.4mLである。特定の実施形態では、充填済みシリンジに含まれる製剤の体積は約1.5mLである。特定の実施形態では、充填済みシリンジに含まれる製剤の体積は約1.45mLである。
特定の実施形態では、針は、3ベベル先端又は5ベベル先端を含むステークイン針(staked-in needle)である。特定の実施形態では、針は25ゲージ(G)~30Gである。特定の実施形態では、針は、長さ1/2インチ~長さ5/8インチである。特定の実施形態では、皮下投与装置は、充填済みの1.0mLの低タングステンボロシリケートガラス(タイプI)シリンジ及びステンレス鋼5ベベル27G 1/2インチ長のシンウォール(thin-wall)ステークインニードルを含む。特定の実施形態では、皮下投与装置は剛性針シールドを含む。特定の実施形態では、剛性針シールドは、亜鉛含有量が低いゴム配合物を含み、剛性ポリプロピレンシールドを含む。特定の実施形態では、ゴムプランジャストッパは、Daikyo777-7ゴム及びFluroTec(登録商標)エチレン-テトラフルオロエチレン(ETFE)コーティング(West Pharmaceutical Services,Inc.)を含む。特定の実施形態では、皮下投与装置は針安全装置を含む。例示的な針安全装置としては、Ultrasafe Passive(登録商標)Needle Guard X100L(Becton Dickinson and Company)及びRexam Safe n Sound(商標)(Rexam)が挙げられるが、これらに限定されない。
特定の実施形態では、注射装置は充填済みシリンジである。充填済みシリンジの非限定的な例としては、Becton Dickinson製のBDHYPAK SCF(登録商標)、READYFILL(商標)、及びSTERIFILL SCF(商標);Baxter製のCLEARSHOT(商標)コポリマー充填済みシリンジ;並びにWest Pharmaceutical Servicesから入手可能なDaikyo Seiko CRYSTAL ZENITH(登録商標)充填済みシリンジが挙げられる。特定の実施形態では、充填済みシリンジはシリコーン油を含む。粒子形成のリスクを低く維持しながら低い注入力を確保するために、エトロリズマブ充填済みシリンジを最適レベルのシリコーンオイルを用いて開発した。分解されたポリソルベートからの遊離脂肪酸は、pH及びポリソルベート濃度に応じて、多かれ少なかれシリコーン油に分割される。したがって、組み合わせた目標pH及び目標レベルのシリコーン油での製剤賦形剤の特定の組み合わせは、充填済みシリンジに保存された高濃度抗体製剤の長期保存に独特によく適している。特定の実施形態では、充填済みシリンジ中のシリコーン油の量は、約1mg以下である。特定の実施形態では、充填済みシリンジ中のシリコーン油の量は、約0.1mg~約1mgである。特定の実施形態では、充填済みシリンジ中のシリコーン油の量は、約0.2mg~約0.6mgである。特定の実施形態では、充填済みシリンジ中のシリコーン油の量は、約0.5mg~0.9mgである。
充填済みシリンジは、任意の適切なシリンジ容量を有してもよい。特定の実施形態では、充填済みシリンジは、約0.5mL~約10mL、約0.5mL~約5mL、約0.5mL~約2.5mL、約1mL~約5mL、又は約1mL~約2.5mLのシリンジ容量を有する。特定の実施形態では、充填済みシリンジは1mLのシリンジ容量を有する。特定の実施形態では、充填済みシリンジは2.25mLのシリンジ容量を有する。
特定の実施形態では、注射装置は、自動注入装置、例えば、本明細書で参照により組み込まれる、米国特許第2014/0148763号及び同第2014/0114247号に開示されている自動注入装置である。特定の実施形態では、自動注入装置は使い捨て自動注入装置である。特定の実施形態では、自動注入装置は、Rotaject(登録商標)技術(例えば、https://www.shl.group/products-and-services/rotaject-technology-auto-injector/でアクセス可能)に基づいている。
皮下送達に適した追加の装置としては、例えば、注射装置、例えば、INJECT-EASE(商標)及びGENJECT(商標)装置;ACCU-CHECK(商標)等の輸液ポンプ;Becton Dickinson製のBD Vystra(商標)等のペン型注射器、MEDDCTOR(商標)及びBIOJECTOR(商標)及びIJECTTM等の無針装置、並びにBD Libertas(商標)、Valeritasから入手可能なH-PATCH(商標)、及びSOF-SERTER(商標)等の皮下パッチ送達システムが挙げられるが、これらに限定されない。
キットは、典型的に、上記の容器と、緩衝液、希釈剤、フィルタ、針、シリンジ、及び使用上の指示を伴う添付文書を含む、商業的及びユーザの視点から望ましい材料を含む1つ以上の他の容器と、を備える。組成物が特定の療法に使用されることを示すために、容器にラベルが存在してもよい。
以下は、本発明の製剤及び方法の実施例である。上記の一般的な説明を前提として、他の様々な実施形態を実施できることが理解される。
実施例1
エトロリズマブ薬物製品製剤及び構成の最適化の重要な側面は、注入力を最小化するための粘度の最小化、注入量の精度の最大化、及び装置構成要素との適合性の最適化である。生物学的活性(効力)を維持しながら、抗体を物理的及び化学的分解から十分に保護するための最適な製剤賦形剤のバランスをとり、低粘度を維持しながら高濃度の抗体を達成することが重要である。製剤のこれらの態様は、充填済みシリンジの構成及び仕様(シリコーン油濃度、構造のシリンジ材料、バレル幅、及び針壁厚等)と協調してバランスを取らなければならず、これにより、より低い注入力、より短い注入時間、及び注入の結果としてのより少ない疼痛が可能になる。
本実施例では、pH5.8の150mg/mlエトロリズマブ、20mMヒスチジン、200mMコハク酸アルギニン、及び0.04%w/vのポリソルベート20(PS20)を含むエトロリズマブ製剤を調製した。このエトロリズマブ製剤は、充填済みシリンジにおける高濃度での長期保存に予想外によく適していることが示された。さらに、充填済みシリンジと対にした場合、この製剤は、長期保存時のサブビジブル及び可視粒子形成のリスクを最小限に抑え、これにより、貯蔵寿命の延長及び患者の利便性が可能になる。エトロリズマブ製剤の粘度及び安定性(例えば、凝集製剤、荷電変異体等)に対する製剤pH、アルギニン、コハク酸塩、ポリソルベート20、抗体濃度及びヒスチジンの影響を調べた。
pH及びポリソルベート20
ラウリン酸、ミリスチン酸及びパルミチン酸の溶解度に対するポリソルベート20及び溶液(製剤緩衝液)のpHの影響を調べた。図1に示すように、ポリソルベート20のレベルを増加させると、ラウリン酸、ミリスチン酸及びパルミチン酸(ポリソルベート分解の結果として生成され得る)の溶解度が増加し、それによって粒子を形成するリスクが低下する。図1に示される結果はまた、pHの増加が遊離脂肪酸の溶解度を増加させることを示唆している。pH5.8は、粒子形成のリスクと抗体の化学的及び物理的安定性とのバランスをとる最適な製剤pHである。このpHの製剤は、アスパラギン酸(Asp)異性化及びスクシンイミド中間体形成の速度を最小化し、これは、抗体の化学的安定性、及びそれによって製品品質に実質的に影響を与えることなく周囲温度での貯蔵を可能にすることによって、装置と組み合わせた患者の利便性を可能にする。さらに、ポリソルベート分解に起因し得るより高いpHでの遊離脂肪酸の溶解度の増加により、粒子形成のリスクが低下する。
アルギニン
低粘度は、注入力を低減し、注入量の正確さを保証することができることから、低粘度が望ましい。抗体製剤における塩酸アルギニン又はコハク酸アルギニンの使用は以前に記載されている。例えば、米国特許第8,142,776号、並びに国際特許出願公開第2006065746号及び同第2010102241号を参照されたい。製剤の粘度に対するコハク酸アルギニンの影響を調べた。まず、コハク酸アルギニンを含むエトロリズマブ製剤の粘度を、コハク酸アルギニンを含まないエトロリズマブ製剤の粘度と比較し、結果を図2に示す。図2に示すように、溶液粘度は、製剤へのコハク酸アルギニンの添加によって有意に低下した。次に、本発明者らは、アルギニン、この場合は200mMコハク酸アルギニンが、異なる抗体濃度のエトロリズマブ製剤の粘度に影響を及ぼし得るかどうかを調査した。100mg/mL、150mg/mL、180mg/mL、200mg/mL及び220mg/mLを含むエトロリズマブ製剤の粘度を測定し、結果を図3に示す。図3に示すように、コハク酸アルギニン(例えば、200mMコハク酸アルギニン)を用いた場合、200mg/mLもの高い抗体濃度を有する製剤は、充填済みシリンジ(PFS)投与に適した粘度を有する。
シリコーン油
充填済みシリンジ製剤は典型的にはシリコーン油を含有し、シリコーン油が経時的にタンパク質凝集及び/又は粒子形成を引き起こし得ることが知られているため、本発明者らは、エトロリズマブ製剤に対するシリコーン油の効果を調査した。
シリコーン油の効果を試験するために、充填済みシリンジガラスバレルの内部にシリコーン油を噴霧した後、エトロリズマブ製剤を充填した。タンパク質凝集を評価するために、エトロリズマブ製剤中のHMWSを含む抗体の凝集及びオリゴマー状態を決定するためにサイズ排除クロマトグラフィー(SEC)を使用して、エトロリズマブの高分子量種(HMWS)を決定した。SECは、Tosoh TSKgelカラム、並びにリン酸カリウム及び塩化カリウムからなる移動相を用いて0.5mL/分の流量でAgilent高速液体クロマトグラフィー(HPLC)システムで行い、UV吸光度及びピーク面積積分によって定量した。簡潔には、HMWSの形成に対する異なる量のシリコーン油の効果を、150mg/mLエトロリズマブ又は180mg/mLエトロリズマブを含むエトロリズマブ製剤で決定した。図4に示すように、シリコーン油のレベルの上昇は、様々な条件下で試験した全てのエトロリズマブ製剤の物理的安定性に影響を及ぼさなかった。
したがって、目標pH及びシリコーン油の存在下での製剤賦形剤の特定の組み合わせは、充填済みシリンジに保存された高濃度抗体製剤の長期保存に独特によく適している。この知見は、目に見える粒子が観察されない充填済みシリンジ中のエトロリズマブの約6年間(例えば、74ヶ月)の長期安定性によって裏付けられる。
コハク酸及びヒスチジン
本開示の製剤は、充填済みシリンジへの貯蔵から生じ得る更なるストレスから抗体を保護するという利点を有する。充填済みシリンジからの漏出物は、抗体の化学的及び物理的分解をもたらし得る。例えば、亜鉛及びタングステンは、金属触媒分解に寄与し得る。シリンジ製造プロセス中に、高温タングステンピンをガラスバレルに挿入して針挿入用の穴を作る。このプロセスは、シリンジバレル内に残留タングステン粒子を残す可能性があり、これは薬物溶液と相互作用して凝集体の形成を引き起こす可能性がある。タングステンは、タンパク質凝集及びタンパク質性粒子の形成を誘導することができる。タンパク質酸化は、タングステンによっても誘導され、タンパク質凝集をもたらすことができる。コハク酸は、亜鉛ベースの金属触媒分解から保護された。さらに、本開示の製剤は、タングステン-スパイク媒介凝集に対して感受性ではなかった。
エトロリズマブ製剤の物理的安定性に対するタングステン曝露の影響を決定するために、経時的に異なる量のタングステンに曝露した後にHMWSのパーセンテージを決定した。図5に示すように、タングステンはエトロリズマブの製品品質に影響を及ぼさなかった。
プランジャストッパ及び針シールドの両方は、製剤中に亜鉛を浸出させることができるゴム材料から構成されてもよい。亜鉛がタンパク質と複合体化し、タンパク質凝集体(例えば、HMWS)及び抗体製剤の粘度の増加をもたらし得ることが知られている。様々なタンパク質濃度でのエトロリズマブ製剤の粘度に対する亜鉛の効果を調査した。図6に示すように、pH5.8において、20mMヒスチジン、200mMコハク酸アルギニンを含む製剤において、エトロリズマブの濃度が150mg/mL以下である場合、亜鉛を含まない製剤と10mM亜鉛を含む製剤との間で粘度に差はなかった。亜鉛は、150mg/mLを超えるエトロリズマブ濃度で粘度を増加させた。さらに、図7は、150mg/mLのエトロリズマブ及び50mMの亜鉛を含む製剤におけるタンパク質凝集体の形成を示す。図8は、亜鉛の添加がHMWSのパーセンテージを増加させること、及びHMWSのパーセンテージの増加が10mg/mLのエトロリズマブと比較して50mg/mLのエトロリズマブでより高いことを示す。
次いで、本発明者らは、ヒスチジンがHMWSの形成を減少させることができるかどうかを試験した。図9に示すように、製剤中のヒスチジンの存在は、亜鉛の存在下でのHMWS形成速度を大幅に低下させた。さらに、図10に示すように、コハク酸塩はまた、エトロリズマブと亜鉛との間の相互作用を抑制してHMWSを形成した。次に、HMWS形成に対する様々な濃度のヒスチジン及びコハク酸塩の影響を研究した。図11に示すように、ヒスチジンとコハク酸塩の組み合わせは、亜鉛の存在下でHMWS形成を最小限に抑えた。
原薬及び原薬の安定性
20mMヒスチジン、pH5.8、200mMコハク酸アルギニン、0.04%ポリソルベート20中150mg/mLで製剤化したエトロリズマブ原薬(DS)の安定性を、30℃、5℃及び-20℃で評価した。安定性はまた、大規模な貯蔵及び取り扱いをサポートするために最大5回の凍結/解凍サイクルまで評価した。5回の凍結/解凍サイクル後、又はDSを-20℃で7年間(84ヶ月)貯蔵した後、化学的、物理的、又は生物活性特性の変化は観察されなかった。5℃で6ヶ月間貯蔵した後、イオン交換クロマトグラフィーを除く全てのアッセイで変化は観察されなかった。30℃で14日間貯蔵した後、分解を非還元キャピラリー電気泳動、イオン交換及びサイズ排除クロマトグラフィーによって測定した。
脱アミド化及び異性化は、安定性に起こり得る分解経路である。イオン交換クロマトグラフィー(IEC)を使用して化学分解を監視し、酸性変異体、塩基性変異体、及び主ピークを定量した。5回の凍結/解凍サイクル後又は-20℃で84ヶ月間の貯蔵後に、主ピーク、酸性変異体又は塩基性変異体に変化は観察されなかった。5℃で6ヶ月間貯蔵した後、酸性変異体及び塩基性変異体においてそれぞれ1.0%及び0.8%の付随する主ピークの1.7%の喪失が観察された。30℃で14日間貯蔵した後、主ピークの4.5%の損失があり、付随して酸性変異体及び塩基性変異体がそれぞれ2.1%及び2.4%増加した。定性的には、イオン交換プロファイルの変化又は新たなピークは観察されなかった。
30℃で14日間貯蔵した後、以下の変化が観察された:非還元キャピラリー電気泳動-SDSによって、主ピークの1.0%の損失が観察され、付随してプレピーク及びポストピークがそれぞれ0.82%及び0.14%増加した;IECによって、主ピークの4.5%の損失があり、付随して酸性変異体及び塩基性変異体がそれぞれ2.1%及び2.4%増加した;サイズ排除クロマトグラフィー(SEC)によって、それぞれHMWS及びLMWSで28%及び.09%の増加が観察される。
105mg(0.7ml)充填済みシリンジ構成内の20mMヒスチジン、pH5.8、200mMコハク酸アルギニン、0.04%ポリソルベート20中150mg/mLで製剤化されたエトロリズマブ薬物製品の安定性を調査した。エトロリズマブは、清澄性、乳白濁及び着色(COC)、pH、タンパク質濃度、サイズ排除クロマトグラフィー(SEC)及び効力によって評価して、5℃で60ヶ月後に製品品質の変化を示さなかった。それぞれ4.2%及び3.4%の酸性及び塩基性変異体の付随する増加を伴うイオン交換クロマトグラフィー(IEC)による主ピークの7.7%の損失、及び非還元のCE-SDSによる主ピークの1.0%の損失があった。25℃で3ヶ月間貯蔵した後、清澄性、乳白濁及び着色(COC)、pH、タンパク質濃度又は効力に変化はなく、高分子量種と低分子量種の両方で0.2%増加するサイズ排除クロマトグラフィーによる0.4%の主ピークの損失があり、CE-SDSによる主ピークの1.3%の損失があり、酸性変異体の5.1%の増加及び塩基性変異体の4.6%の増加を伴うイオン交換クロマトグラフィーによる主ピークの9.8%の損失があった。5℃で60ヶ月間保存したエトロリズマブ薬物製品は、目に見える粒子を実質的に含まなかった。
結論
エトロリズマブ製剤の特定の賦形剤の組み合わせの固有の態様は、充填済みシリンジ内の抗体の貯蔵から生じ得る追加のストレスから抗体を保護することができ、例えばヒスチジン及びコハク酸塩は、亜鉛及び抗体によるHMWS形成を減少させることができる。典型的な抗体製剤は0.02%w/vのポリソルベート20を含み、典型的な抗体製剤はpH5.5である。典型的なポリソルベート20濃度(例えば、0.04%w/v)よりも高く、典型的なpH(例えば、pH 5.8)よりも高いと、遊離脂肪酸を可溶化することができ、それにより、例えば充填済みシリンジ中での長期保存中のポリソルベート分解の結果としての粒子形成のリスクを低下させる。エトロリズマブ製剤の賦形剤の組み合わせは、大規模製造におけるタンジェンシャルフロー濾過(TFF)中のpHの制御において特に効果的である。高アルギニン濃度及び高導電率製剤は、抗体上の電荷を遮蔽し、pHのシフトを防止する。ヒスチジン濃度は、標的pHで製剤を効果的に緩衝する。これは、製造中のpHの堅牢な制御を確実にし、この最適な構成を可能にするために製剤の狭いpH範囲を可能にするために重要である。製剤はまた、上記のように、様々な期間にわたって様々な温度で、化学的及び物理的安定性を維持し、効力を維持した。
実施例2-健康ボランティアにおけるエトロリズマブ自動注入装置の支持における臨床戦略及び初期アウトカム
概要
エトロリズマブは、中等度~重度の潰瘍性大腸炎又はクローン病を有する患者のために開発中の新規な二重作用の抗β7インテグリン抗体である。第3相試験は、エトロリズマブ投与のための充填済みシリンジ(PFS)を利用する。並行して、患者の送達選択肢を増やすために自動注入装置(AI)が開発されている。この実施例は、全体的な開発戦略を説明し、この開発AIのファーストインヒューマン研究を詳述する。
健康ボランティア(HV)のこの非盲検研究では、開発中のエトロリズマブAIの忍容性及び有用性を評価した。主要評価項目は、注射後に軽度を超える疼痛を有する参加者の割合であった。有害事象(AE)及び使用誤差も評価した。結果は、注射部位(大腿部対腹部)及び針訓練(経験あり対未経験)によって報告した。参加者間の薬物動態(PK)変動を探索のエンドポイントとして含めた。
30名の参加者が研究を完了した。参加者の合計97%は、研究中に軽度を超える疼痛を経験したことがなく、50%が疼痛を経験しなかった。3つの使用エラーが観察され、そのうちの1つはエトロリズマブの部分用量送達をもたらした。使用エラーのパターンは観察されなかった。軽度の注射部位反応(ISR)が報告され、全てが研究の終了までに消散した。腹部に注射した参加者は、大腿部に注射した参加者よりも多くのISRを報告し、針訓練は、AEの発生率又は重症度に影響を及ぼさないようであった。
このファーストインヒューマン研究からの結果は、AIを使用したエトロリズマブ105mgの単回注射がHVで良好に忍容され、一過性の軽度の疼痛及び最小限の使用誤差を伴うことを実証している。この研究の結果はまた、PFSとAIとを比較する後続のPK同等性研究の設計を知らせた。全体として、AIの利用可能性は、エトロリズマブのための便利で使いやすい送達機構を望む患者にとって魅力的な選択肢を提供し得る。
序論
エトロリズマブは、中等度~重度のUC及びクローン病の患者における第3相試験の広範な臨床プログラムで評価されており(Etro Studies.The Etro Studies:Explore Innovation:Contribute to Science.Genentech;2019.2019年7月26日にアクセス)、エトロリズマブは、針安全装置(NSD)を備えた充填済みシリンジ(PFS)を使用した皮下(SC)注射によって1ヶ月に1回投与される。
単回使用の充填済み自動注入装置(AI)は、PFS-NSDよりも多くの潜在的な利点を有し、最も注目すべきは、注射中に常に針をユーザの視界から離しておく能力である。例示的なPFS及びAIを図12に示す。AIはまた、利便性の向上、使いやすさ、投与量誤りのリスクの低減、及び患者の快適性の向上を提供する。研究は、自己投与する多くの患者がシリンジベースの装置よりもAIを好むことを一貫して示している(Kivitz et al.,Clin Ther.2006;28(10):1619-29;Kivitz and Segurado,Expert Rev Med Devices.2007;4(2):109-16;Borras-Blasco et al.,Expert Opin Biol Ther.2010;10(3):301-7;Vermeire et al.,Patient Prefer Adherence.2018;12:1193-202).。例えば、UC患者におけるゴリムマブの最近の研究は、患者の大部分がPFSと比較してAIとの投与を好むことを実証し、使用の容易さの増加及び注射による不快感の減少を挙げた(Vermeire et al.,Patient Prefer Adherence.2018;12:1193-202)。
現在開発中のAIは、第3相試験で使用された同じPFSを収容する自動送達システムからなる(図13を参照)。AI及びPFS-NSDの両方に含まれる製剤は、単回用量投与用のエトロリズマブ溶液(0.7mL、公称容量150mg/mL)105mgの液体製剤からなる。全用量は、典型的には約2秒で投薬される。
AIは、患者の経験を改善し、自己投与による患者の快適性を高めることを目的とした多くの特徴を含む。自動薬物送達システムは、装置を皮膚上に垂直に軽く押すことによって作動される。起動されると、AIは自動的に針を挿入し、起動時にシリンジ内容物を分配する。注射が完了すると、針カバーが針上に延在してロックし、注射中は常に針を視界外に保ち、使用者及び他人を使用済み針との偶発的な接触から保護する。AIはまた、自己注射でユーザを支援するように設計された視覚的及び聴覚的機構の両方を組み込んでおり、目に見えるスピントップと可聴クリック音の両方が、薬物投与が進行中であるか完了しているかを示す。さらに、目に見えるプランジャロッドは、注入の進行中に観察窓を横切って移動する。
ここでは、エトロリズマブのための新規AIの全体的な開発戦略、及びこの装置のファーストインヒューマン研究からの知見を示す。この研究(NCT02629744)の主な目的は、AIによって投与されたエトロリズマブの安全性及び忍容性、並びにAIによる自己注射後の主に注射部位の疼痛を評価し、重大な使用誤差を記録することであった。さらに、本発明者らは、この比較的独特の研究計画を評価し、これは、使用誤差評価(従来は模擬研究として行われていた)を忍容性、安全性及び探索的PK研究と組み合わせたものであった。
方法
研究計画及び手順。このファーストインヒトAI忍容性研究は、皮下に自己投与した場合のAIの疼痛、安全性、及び有用性を評価する健康ボランティアにおける非盲検、単一アーム研究であった。参加者を2つの群に割り当てた(1:1)。自己注射の以前の経験をシミュレートするために、1つの群(「針経験あり」)は、AIによる自己注射の前に訓練を受け、他の群(「針未経験」)は訓練を受けなかった。訓練には、プラセボを用いた自己注射による模擬針経験が含まれた。エトロリズマブ投与前に、全ての参加者(針経験群に関係なく)は、自己注射前のレビューのためのAIに関する使用説明書(IFU)リーフレットを受けた。研究薬を腹部又は大腿前部に投与するために対象を無作為に割り当てた。全ての参加者は、模擬在宅設定で研究の1日目に単一SC用量のエトロリズマブを自己投与した(図14を参照)。参加者は自己注射中に監視され、研究3日目に退院し、研究8、29、43、57、及び85日目にフォローアップ訪問のために通院した(研究完了)。
参加者。適格参加者は、18歳~65歳であり、肥満度指数指数(BMI)が18.0~32.0kg/m以下であり、有意な病歴又は臨床検査異常がなく健康であった。IBDを有する患者の性別分布を模倣するために55%~60%の男性参加者を目標として、男性及び女性の両方を登録した。抗インテグリン療法(エトロリズマブを含む)又は免疫抑制薬の任意の以前の使用を有する参加者は、最近のコルチコステロイド使用歴を有する参加者と同様に除外された。結核の病歴を有する参加者も除外した。
手順。針経験ありの群に割り当てられた参加者は、エトロリズマブ注射の5日前及び7日前に訓練(模擬自己注射経験)を受けた。訓練中、参加者は、針及び注射器の使用について医療専門家によって指示された。この指示に従って、参加者は、注射針及び注射器を用いてプラセボ溶液による自己注射を3回行った。(シリンジとの相互作用に基づいて)医療専門家によって適切であると考えられた針経験のある参加者は、研究を通して進行した。針経験ありの参加者と針未経験の参加者の両方を無作為化し、性別及び針経験によって層別化して、腹部又は前大腿のいずれかに注射した。研究1日目に、参加者は、AIを使用してエトロリズマブ105mgの単回SC用量を彼らの腹部又は前大腿に自己投与した。参加者を、操作上の困難及び使用上の誤りについて評価し、注射中及び注射直後の疼痛を報告した。1つの血清試料を、SC注射の7日後(研究8日目)の探索的薬物動態評価のために採取した。
疼痛を評価するためのアプローチ。2つの独立した方法によって疼痛を評価し、その両方を研究施設の職員が投与した。7点カテゴリー言語記述尺度(VDS-7)は、この研究の疼痛の主要な尺度であった。VDS-7投与中、患者は、注射に関連する疼痛を最もよく表す1~7の数を選択するように求められた(以下のような尺度:1=疼痛なし、2=非常に軽度の疼痛、3=軽度の疼痛、4=あまり重度ではない疼痛、5=非常に重度の疼痛、6=非常に重度の疼痛、7=ほとんど耐えられない疼痛)。確認評価として、疼痛を100点連続視覚的アナログ尺度(VAS)によっても評価した。VASについて、患者は、自分の疼痛を最もよく表す水平100mmスケールの線を描くように求められた(以下のようなスケール:0mm=痛みなし、100mm=起こり得る最悪の痛み)。次いで、研究員は、0mm点と患者のマークとの間の距離を測定して、患者のVASスコアを決定した。
アウトカム。主要評価項目は、注射直後に軽度を超える疼痛(VDS-7>3)を有する参加者の割合であった。主要評価項目を満たすため、注射直後に軽度を超える疼痛を経験している参加者の割合を中心とした両側95%信頼区間(CI)の上限は、30%を超えてはならない。副次的評価項目は、注射後5、10、20、60、及び240分(4時間)で軽度を超える疼痛を経験している参加者の割合、並びに経時的な各VDS-7カテゴリーの参加者の割合を含んだ。忍容性は、この研究では、研究1日目の注射後5、60、及び240分、並びに研究2、8、43、及び85日目に、注射部位反応(ISR)についての能動的モニタリングによって集中的に評価した。ISRを同定するために、局所注射部位症状評価(LISSA)を実施して、火傷、かゆみ、あざ、発赤、及び/又は蕁麻疹の形成、並びに存在する場合は反応の大きさを評価した。全てのISRを、必要に応じて有害事象(AE)又は重篤なAEとして分類し、報告した。AIの使用中の使用エラー及び動作上の困難を文書化した。さらに、参加者のIFUの知識及びAI経験についての全体的な意見を収集した。安全性を、AEモニタリング、検査室評価、バイタルサイン、身体検査、心電図(ECG)、及び免疫原性によって評価した。この研究では、正式な統計研究は計画されなかった。自己注射後8日目の研究の単一の時点でのPK変動の決定を探索の終点として評価した。
結果
30名の健常参加者を登録し、エトロリズマブを腹部又は大腿前部に注射するために無作為化した(性別及び針経験によって層別化した)。全ての参加者が研究を完了したが、1名のボランティア(針経験のある大腿注射)は、使用誤差のためにエトロリズマブの全用量を受けなかった(更に考察する)。登録された集団は、IBD集団を広く代表していた。登録した参加者の年齢の中央値は36歳であり、平均BMIは26.1kg/mであり、参加者の大部分は白人(60%)であり、櫃パニック系又はラテン系(83%)ではなかった。参加者の約半分(47%)が男性であった。
疼痛及び忍容性。参加者の半数は、注射後のいずれの時点においても疼痛を報告しなかった(図15を参照)。疼痛を報告した参加者については、1名を除く全てが「非常に軽度」又は「軽度」の疼痛を報告し、その大部分は薬物投与後60分以内に鎮静した。1名のボランティアが注射直後に軽度を超える疼痛(VDS-7=5)を報告したが、これは注射後5分で軽度の疼痛に収まった。同様のデータが、VASを使用したときに報告された(データは示さず)。報告された疼痛は注射部位間で異なっていた。大腿部への注射は、腹部に注射する参加者(それぞれ60%対40%)と比較して、疼痛を報告する参加者の割合を増加させた(図16を参照)。軽度を超える疼痛を報告した1名のボランティアを大腿投与群に割り当てた。大腿部に注射する参加者はまた、腹部に注射する参加者よりも長い持続時間の疼痛を報告し、腹部注射後に経験した全ての疼痛は5分以内に鎮静し、大腿部注射後の疼痛の大部分は60分以内に鎮静した。針経験訓練は、エトロリズマブ注射後に報告された疼痛に影響を与えないようであった。上記の集中的なLISSAベースのモニタリングスキームを使用すると、参加者の40%(12/30)が研究中にISRを経験し、これらは全てエトロリズマブ注射後1時間以内に起こった(表1)。
報告された全てのISRは軽度(グレード1)及び一過性であり、全て研究完了までに消散した。最も頻度の高いISRは発赤であり、直径が18mm未満~31mmの範囲であった。ほとんどのISRは、注射後60分以内に消散した。1名のボランティアは、投与60分後の腹部注射部位での蕁麻疹(直径18mm)の形成を報告し、治療なしで3時間以内に蕁麻疹は消散した。注射部位は、ISRの頻度又は重症度のいずれにも影響を及ぼさないようであった。
使用エラー。30名の参加者のうち27名(90%)は、針経験訓練に関係なく、有意な使用誤差なしにAIを使用してエトロリズマブを首尾よく自己投与することができた。AIに関する苦情は記録されず、使用エラーのパターンは観察されなかった。研究中に合計3つの使用エラーが観察され、そのうちの1つのみが注入中に発生した。1名のボランティアが注射中に時期尚早にAIを除去し始め、その結果、ボランティアの皮膚上に液滴が残った。注射中に発生しなかった2つの使用エラーのうち、1名のボランティアは、いつキャップをAIから取り外すべきか確信がなく、別の1名は、シミュレートされた有効期限を誤って報告した。これら2つの使用エラーは、AIのラベリング及びIFUの誤解に関連しており、これらのエラーのいずれも投与されるエトロリズマブの用量に影響を与えなかった。ほとんどの参加者は、AIが使いやすいことに気付いたと述べた。参加者は、可聴及び視覚フィードバック機構が、注射がいつ開始及び停止したかを決定し、完全な用量が投与されたことを検証するのに有用であると報告した。しかしながら、一部の参加者は、腹部に注射している間に視覚的なスピントップを見ることは困難であると述べた。IFU理解プローブの間、許容可能な注射部位、薬剤のウォームアップ時間、及び製品の保存に関連して、いくらかの混乱が認められた。
薬物動態(探索的)。研究8日目(注射後7日)に、全参加者にわたるエトロリズマブの平均(±SD)血清濃度は13.6(±3.66)μg/mL(中央値13.8)であった。血清濃度は5.8μg/mL~20.0μg/mLの範囲であり、参加者間の変動はおよそ31%であった。限られたデータセットに基づいて、注入部位も針訓練も8日目の血清エトロリズマブ濃度に影響を及ぼさないようであった。
安全性。29名の参加者(97%)が、全105mg用量のエトロリズマブを受けた。1名のボランティアが105mg用量の約90%を受けた。全体として、エトロリズマブの単一105mg SC用量は、AIを使用して自己投与した場合、安全で忍容性が高かった。参加者の約半数が治療下で発現した有害事象(TEAE)を経験し、そのほとんどは注射部位に関連していた。全てのTEAEは重症度が軽度(グレード1)であり、研究完了までに消散した。この研究中、臨床検査評価、バイタルサイン測定、体重測定、又は12誘導ECGに有意な変化は認められなかった。興味深いことに、大腿部と比較して、より多くのTEAEが腹部に注射した参加者によって報告された(それぞれ19対9のTEAE)。針未経験の参加者よりも少ないTEAEが、針経験のある参加者によって報告された。全ての結果の概要を表2に見出すことができる。
考察
健康な参加者では、AIを使用したエトロリズマブの単回自己投与SC用量は忍容性が高く、参加者の大部分に軽度の疼痛をもたらした。この研究は、1名のボランティアのみが注射後に軽度を超える疼痛を経験するというその主要評価項目を満たした。全体として、ここに提示されるデータは、関節リウマチ(RA)及び慢性腎臓疾患を含む他の慢性疾患の治療に使用されるAIのデータと一致する。これらの研究は、多くの患者がPFSと比較してAIの利便性を好むことを示唆している。患者は、一般に、AIがPFS装置よりも疼痛が少ないことに関連し、AIをより携帯的で使いやすいものとして認識すると報告する(Kivitz et al.,Clin Ther.2006;28(10):1619-29;Kivitz and Segurado,Expert Rev Med Devices.2007;4(2):109-16;Borras-Blasco et al.,Expert Opin Biol Ther.2010;10(3):301-7;Lim et al.,Clin Ther.2012;34(9):1948-53)。UCの患者における最近の研究は同様の所見を報告し、この研究における患者の約4分の3がPFSと比較してAIの注射を好むことに注目した(Vermeire et al.,Patient Prefer Adherence.2018;12:1193-202)。最近の多国籍調査では、RAを有する患者200名及び看護師100名がAIの様々な構成要素の相対的重要性を評価するように求められた(Tischer and Mehl,Patient Prefer Adherence.2018;12:1413-24)。患者と看護師の両方が、「ペンによる自己注射の実行が容易である(すなわち、自動注入装置)」を最も重要な属性として評価した。患者と看護師の両方によって報告された他の重要な属性には、「注射針が注射器本体内に安全に隠されている」、「注射完了後の可聴フィードバック」、及び「注射完了後の視覚フィードバック」が含まれ、これらの特徴の全てがエトロリズマブAIに組み込まれている。同様の結果が、RAを有する220名の患者の欧州研究において報告された(Thakur et al.,Rheumatol Ther.2016;3(2):245-56)。この研究で軽度のISRを経験している患者の割合が、エトロリズマブがバイアル及びシリンジによって投与された第2相EUCALYPTUS研究で観察されたものよりも高いことは注目に値する(Vermeire et al.,Lancet.2014;384(9940):309-18)。この研究は、スケジュールされた間隔でISRを能動的に監視するためにLISSAを使用して忍容性を集中的に評価し、場合によってはISRの過剰報告をもたらしたことから、これは研究計画の違いを反映している可能性が高いと考えられた。このファーストインヒューマン研究は、忍容性評価、実際の使用のヒト因子評価(使用誤差等)、及び初期PK評価を単一の試験に組み合わせたという点で比較的独特である。この新規な手法は、部分的には、必要な臨床研究の数を最小限に抑え、したがってAI開発の全体的な時間及びコストを削減する方法でAIに関連する全体的なリスクを評価することを目的としている。PK評価は、研究8日目、単一SC用量後の最大血清濃度の時間付近に採取した単一血液試料を用いて研究プロトコルに組み込まれた。この探索的PK評価の意図は、AIによるエトロリズマブSC送達後の対象間曝露変動を理解することであった。さらに、これらの予備PKデータは、UC患者におけるバイアル及びシリンジでの投与からのPKデータに基づいて生成されたモデルを使用して、AI注射後の曝露の潜在的差異を予測曝露と比較して評価するのに役立った。注目すべきことに、この分析で観察された8日目のエトロリズマブ曝露は、予測値よりも約75%高かった(予測された8日目の中央値エトロリズマブ血清濃度≒7.9μg/mL[90%CI 4.15~16.3]、データは示さず)。この分析からのPK変動及び予想外のより高い8日目の曝露は、健康ボランティアにおいてAI及びPFS-NSDによって送達されたエトロリズマブの薬物動態を比較する2部研究を実施するという決定を与えた(図17及び実施例3を参照)。この研究からの結果は、更なるAIの使いやすさ及び/又は臨床研究の必要性を効果的に排除した。さらに、これらの結果は、PFS-NSD及びAIによる投与間のPK特性を比較するための後続の研究の設計に影響を及ぼし、同等性研究に失敗するリスクを軽減し、生物学的治療への健康ボランティアの不必要な曝露を最小限に抑えた。ここで報告されたPK所見の結果として、最初に提案された単一部装置PK同等性研究計画にパイロットコホートを追加した。このパイロットコホートからの結果は、適切な試料サイズ、試料採取期間、及び体重範囲を知らせることによって、ピボタルコホートの設計を最適化するのに役立った。この研究のヒト因子成分から得られた情報は、PK同等性研究の前に実施されたIFUのわずかな修正をもたらした。装置PK同等性の結果を実施例3に報告する。
結論
この研究の結果は、AIを伴うエトロリズマブの単回SC注射が健康ボランティアにおいて十分に忍容され、注射後に許容レベルの疼痛を伴うことを実証している。ほとんどの参加者は、AIが使いやすいことを見出し、最小限の使用エラーしか経験しなかった。AIは、目に見えない針による自己注射の安全性及び利便性を望むIBDを有する特定の患者にとって適切な送達機構であり得る。このファーストインヒューマン忍容性研究からの肯定的な結果は、後続の2パートPK同等性研究中に収集されたデータと組み合わせて、エトロリズマブで治療された患者におけるAIの使用を支援する完全な開発計画を含む。
実施例3-健康ボランティアにおける無作為化試験において充填済みシリンジ又は自動注入装置を介して投与されたエトロリズマブの比較可能な薬物動態、安全性及び忍容性
概要
エトロリズマブは、炎症性腸疾患を有する患者におけるいくつかの第3相試験で研究されている新規な二重作用抗β7インテグリン抗体である。これらの試験で皮下投与に使用される針安全装置(NSD)で充填済みシリンジ(PFS)を補完するために、自動注入装置(AI)装置が並行して開発されている。この実施例は、両方の装置の薬物動態(PK)、忍容性及び安全性の同等性を実証する。
健康な参加者におけるこの無作為化非盲検2部研究は、AIとPFS-NSDとの間のエトロリズマブ曝露の同等性を評価した。パート1(パイロット)には少数の参加者が関与し、初期結果を使用して、より大きなパート2(ピボタル)の研究計画を完成させた。両方のパートにおいて、参加者は、AI又はPFS-NSDを介して皮下(SC)エトロリズマブ105 mgの単回用量を受けるように無作為に割り当てられた。無作為化を体重で層別化した。主要PKアウトカムは、Cmax、AUClast、及びAUC0-infであった。
180名の健常参加者(第1部:n=30、第2部:n=150)は、AI又はPFS-NSDを介してエトロリズマブの単回SC用量を受けた。パート1からの一次PK結果は、パート2研究計画の修正を支持した。パート2からの結果は、エトロリズマブ曝露が装置間で同等であり、AIとPFS-NSDとの間の幾何平均比(GMR)がCmaxについては102%、AUClastについては98.0%、及びAUC0-infについては97.6%であることを実証した。Tmaxの中央値及びt1/2の平均末端も装置間で同様であった。全ての一次PKパラメータのGMR及び90%信頼区間は、所定の当量限界(80%~125%)内に完全に含まれていた。
このPK研究は、AI又はPFS-NSDを使用したエトロリズマブ105mgの単回SC注射が、健康な参加者において同等のエトロリズマブ曝露並びに同様の安全性及び忍容性をもたらすことを実証した。まとめると、これらの結果は、エトロリズマブ投与のためのAIの使用を支持する。
序論
本実施例で提示したPK同等性研究(NCT02996019)は、AI及びPFS-NSDを使用したSC投与後のエトロリズマブ曝露の同等性を実証すること、並びに2つの装置を使用したSC注射後のエトロリズマブの安全性及び忍容性を評価することを目的とした。研究のパート1は、AI対PFS-NSDを用いたエトロリズマブ投与の幾何平均比(GMR)及びPKパラメータの変動性を評価するために使用された探索パイロットコホートであった。これらの結果は、パート2(ピボタルコホート)の試料サイズ及び研究期間を含む研究計画を知らせた。パート2では、研究は、AI又はPFS-NSDを介して投与された単回用量のエトロリズマブ間の曝露同等性を実証することを目的とした。この実施例で提示されたPK同等性研究は、実施例2で提示された忍容性研究からの探索的PK結果を活用して、研究計画及び最終プロトコルを改良した。
方法
研究計画及び手順。この研究は、米国内の3つの臨床施設で健康な参加者に実施された無作為化多施設非盲検並行群研究であった(図18を参照)。この2パート研究は、2つの装置群間の曝露差(もしあれば)を検出するための80%出力に十分な試料サイズを有するパイロットコホート(パート1)及びピボタルコホート(パート2)からなった。両方のパートにおいて、健康な参加者は1:1に無作為に割り当てられ、AI(試験装置)又はPFS-NSD(参照装置)のいずれかを介してエトロリズマブ105mg SCの単回用量を受けた。エトロリズマブは、医療専門家(HCP)によって参加者の腹部に投与された。両方のコホートにおける無作為化を体重(≦79.9kg対≧80kg)によって層別化した。
参加者。適格健常参加者には、18.0~30.0kg/mの肥満度指数(BMI)を有する18~55歳の男性及び女性が含まれた。パイロットコホートからの結果に基づいて、ピボタルコホートの参加者は、研究登録時に60~100kg(両端を含む)の範囲内の体重を有することも必要とされた。参加者は、健康状態が良好でなければならない(病歴、身体検査、12誘導心電図又はバイタルサインから臨床的に有意な所見なし)。免疫抑制剤又は抗インテグリン療法(エトロリズマブを含む)に以前に曝露された参加者は除外した。
評価及び結果の測定 パート1及びパート2の両方のエトロリズマブ血清濃度を決定するための血液試料を、1日目に投薬前及び投薬後6時間、次いで2、4、6、8、11、15、29、43、57、及び71日目(研究完了)に収集した。最大エトロリズマブ濃度(Cmax)の幾何平均比(GMR)及び変動性、薬物投与時から最後の測定可能な濃度までの濃度-時間曲線下面積(AUClast)、無限大に外挿したAUC(AUC0-inf)、並びにエトロリズマブのAUC0-infに対するAUClastの比(AUCR)をパート1で測定した。パート2については、Cmax、AUClast、及びAUC0-infを主要エンドポイントとして測定した。二次PKパラメータには、エトロリズマブの最大濃度までの時間(tmax)、最終排出半減期(t1/2)及びAUCRが含まれた。パート1及び2の抗薬物抗体(ADA)を決定するための血液試料を、1日目、並びに29、57、及び71日目の投与前に収集した。参加者がPK分析の所定の除外基準を満たさない限り、全てのADA陽性参加者からのデータを最終PK統計分析に含めた。安全性及び忍容性の評価には、米国国立癌研究所有害事象共通用語規準(National Cancer Institute Common Terminology Criteria for Adverse Events)、バージョン4.03に従って等級付けされた有害事象の発生率、性質及び重症度が含まれた。注射部位反応の発生率、バイタルサインの変化、身体検査所見、臨床検査結果、及びADAの発生率も評価した。
生物分析法。エトロリズマブ濃度は、検証されたイムノアッセイ(ICON)を用いて測定した。このGyrolab蛍光イムノアッセイでは、UC、CD及び健康ボランティア血清中に80ng/mLの最小定量可能濃度で、1/100の最小必要希釈(MRD)を利用した。血清中の抗エトロリズマブ抗体を、検証されたアッセイを使用して検出した。この比色ELISAは、1/20 MRD及びモノクローナル抗エトロリズマブ対照抗体を使用した。この方法の相対感度は、健康ボランティア血清で12.0ng/mLであると決定された。アッセイの薬物耐性を確立した:28ng/mLの陽性対照ADAを、50μg/mLのエトロリズマブの存在下で検出することができた。
試料サイズの決定。パート1に最大30名の健康な参加者を登録することを計画して、各アームの少なくとも12名の参加者(合計24名)が評価可能なPKプロフィールを有し、PKパラメータ(Cmax、AUClast、及びAUC0-inf)に対するGMR及び変動係数(CV%)の推定を可能にしたことを確認した。パート2は、146名の参加者の登録を計画した。参加者の約10%から71日目までの脱落率又は評価不能なPKプロファイルを仮定すると、評価可能な完全PKプロファイルを有する合計約131名の健康な参加者は、パート1パイロットコホートからのGMR及びPK変動アウトカムに基づいて、Cmax、AUClast、及びAUC0-infについての曝露同等性を実証するための少なくとも80%の検出力を提供すると予想された。
薬物動態学的分析。PKパラメータを、ノンコンパートメント法(NCA)を使用して血清エトロリズマブ濃度から決定し、Phoenix WinNolin(Centara USA,Inc.、バージョン6.4)を使用して実施した。
統計学的分析。分析集団は、エトロリズマブのSC注射を受け、重要なPKパラメータを正確に決定するために利用可能な十分な試料を有すると定義された評価可能なPKプロファイルを有する全ての参加者からなった。特に、15日目以前に早期終了した参加者は、評価可能なPKプロフィールを有していないとみなされた。71日目の濃度を決定するために利用可能な試料がない参加者をAUClastの統計分析から除外し、28、43、51、及び71日目のうち利用可能な試料が3個未満の参加者をAUC0-infの統計解析から除外した。プレ用量濃度がCmaxの5%を超える参加者は、研究及び治験依頼者の臨床薬物動態学専門家/生物統計学専門家の裁量により、全PKパラメータの統計解析から除外することができる。パート1(パイロット)からのデータを用いて、PKパラメータの記述的、探索的分析を実施し、GMR、CV%及びAUCRの分布を評価に注目して、パート2(ピボタル)の試料サイズ及び最終研究計画を知らせた。ピボタルコホート(パート2)からのデータのみを同等性統計分析に含めた。パート2では、固定効果としての治療を含む分散分析を実施して、AI群とPFS-NSD群との間のCmax、AUClast、及びAUC0-infの同等性を評価した。Cmax、AUClast、及びAUC0-infのデータを分析前に自然対数(ln)変換し、平均(対数尺度)間の差について対応する90%信頼区間(CI)の真数をとることによって、PF-NSD群からのものに対するAI群のGMRの90%CIを計算した。Cmax、AUClast、及びAUC0-infについてのGMRの90%CIが全て80%~125%以内である場合、AI群とPFS-NSD群との間の曝露はPK同等性基準を満たした。
結果
薬物動態-パイロット研究(パート1)。参加者30名全員が登録し、パート1で無作為化し、AI(n=15)又はPFS-NSD(n=15)を介してエトロリズマブの単回105mgのSC用量を受けた。27名の参加者が研究を完了し、2名の参加者(各群1名)が経過観察の喪失のために早期に中止し、1名がエトロリズマブの投与の32日後に重篤なAE(発作)のために中止し(PFS-NSD群)、このAEはエトロリズマブ治療に関連するとは考えられなかった。参加者の特徴を表3に示す。
コホート全体では、ほとんどの参加者が男性(63.3%)及び白人(70.0%)であった。参加者の体重及び年齢は治療群間でバランスがとれておらず、平均体重はAIアームで79.7kg及びPFS-NSDアームで74.3kgであり、平均年齢はAIアームで42歳及びPFS-NSDアームで34歳であった。体重は、エトロリズマブ曝露、特にAUC0-infに影響を及ぼすと思われるため(図19を参照)、治療アーム間の体重の不均衡は、主要PKパラメータのGMR値及びPK変動性の評価を偏らせる可能性がある。したがって、60kg未満(n=4)又は100kg超(n=1)の体重を有するパイロットコホートの参加者は、ピボタル研究(パート2)の最終試料サイズの決定を導くために使用されたPKパラメータのGMR及びCV%を評価することを目的とした探索的分析から除外した。パート1の60~100kgの体重制限を満たすPK評価可能集団には、AIアームの14名の参加者及びPFS-NSDアームの11名の参加者が含まれた。予想通り、体重を60~100kgの範囲に制限することによって2つのアーム間の体重範囲が均衡した場合、AI対PFS-NSD群の主要PKパラメータGMR値は、Cmax、AUClast、及びAUC0-infについてそれぞれ0.95、1.02及び1.02であった(表4)。
したがって、これらのGMR及びCV%値に基づいてピボタルコホートの試料サイズを計算し、パート2研究のために体重制限を組み入れ基準として追加した。さらに、全ての参加者は、80%を超えるAUCR値を有し(データは示さず)、これは、米国食品医薬品局(FDA)ガイドライン(米国保健福祉省。業界のガイダンス:生物学的同等性を確立するための統計的アプローチ。2020年3月4日にアクセス)に記載されている生物学的同等性研究の要件を満たし、したがって、最初に計画された85日目から71日目へのピボタル研究の最終日の変更をもたらした。
薬物動態-ピボタル研究(パート2)。ピボタルコホートでは、登録され無作為化された参加者のうち150名(100%)が、AI(n=74)又はPFS-NSD(n=76)を介して105mgの単回SC用量のエトロリズマブを受けた。8名の参加者が研究を中止し、5名が追跡不能(AIアームで3名、PFS-NSDアームで2名)、1名が体重基準(PFS-NSD)を満たさないプロトコル違反、2名が参加者離脱(各アームで1名)であった。全体パート2(両アームを含む)では、参加者の53.5%が男性であり、60.7%が白人であり、36.0%がアフリカ系アメリカ人であった。治療群は体重及び年齢に関してバランスがとれており、平均体重はAIアームで76.2kg及びPFS-NSDアームで76.3kgであり、平均年齢はAIアームで35歳及びPFS-NSDアームで37歳であった(表3)。
AI及びPFS-NSD群の経時的なエトロリズマブ血清濃度を図20に示し、PKパラメータを表5に要約する。AI群とPFS-NSD群との間のGMR(90%CI)は、Cmaxについては102%(94.2~111%)、AUClastについては98.0%(89.3~107%)、AUC0-infについては97.6%(88.6~107%)であった(表6)。
これらの主要PKパラメータのそれぞれに対するGMRの90% CIは、80%~125%の所定の当量限界内であり、これは所定の同等性基準を満たし、2つの装置群間のエトロリズマブの同等の曝露を支持する。結果はまた、AI群とPFS-NSD群との間で、最大観察濃度までの同様の中央値時間(tmax、5.04対6.97日間)及び平均最終排出半減期(t1/2、11.8対12.2日間)を示した。
安全性。ベースライン後の評価可能な参加者間の治療下で発現したADAの全発生率は、パイロットコホートでは20.7%(6/29)及びピボタルコホートでは29.7%(44/148)であり、パイロットコホート(3/15[20%]対3/14[21.4%])及びピボタルコホート(20/73[27.4%]対24/75[32.0%])の両方でAI群及びPFS-NSD群を比較した場合に類似していた。ADA+対象のPKプロフィールは、ADA陰性対象と類似しているようである(図21を参照)。治療下で発現した有害事象(TEAE)は、パイロットコホートの参加者の53%及びピボタルコホートの35%で経験され、ほとんどが重症度は軽度であった(表7)。
パイロットコホートのPFS-NSD群の1名の参加者は、注射の約32日後に重篤なAE(グレード3の発作)を有し、研究の中止をもたらし、エトロリズマブによる治療に関連するとは考えられなかった。パイロットコホートの9名の参加者(AIを有する5名及びPFS-NSDを有する4名)及びピボタルコホートの1名の参加者(AIアーム)は、TEAEとして報告された注射部位反応を有していた。パイロットコホートにおける治療関連TEAEは、AIアームでは6名(40.0%)の参加者及びPFS-NSDアームでは3名(20.0%)が経験し、ピボタルコホートではAIアームでは7名(9.5%)及びPFS-NSDアームでは10名(13.2%)が経験した。
考察
この研究のピボタルコホートは、健常参加者におけるSCエトロリズマブの単回用量後のAI群とPFS-NSD群との間の同等のエトロリズマブ曝露を確認した。各主要PKパラメータで観察されたGMRは98%~102%であり、90%CIは所定の当量限界内であった。健康な参加者における他のAI及びPFS-NSDを比較したときに得られたGMRを考えると、全ての一次曝露パラメータに対するこれらのGMRは印象的である。例えば、アダリムマブバイオシミラー(SB5)のSC投与のためのAI及びPFS装置を比較する最近の研究は、Cmax、AUClast及びAUCinfについてそれぞれ102%、107%及び110%のGMRを示し、90% CIは80%~125%の当量限界内であった。アダリムマブバイオシミラーBI695501の同様の研究では、それらはAUC0-infについて100%(90%CI 82.1~122.3%)及びCmaxについて110%(90%CI 96.8~125.4%)であり、後者は125%の当量上限90%CI当量限界(Voltaire(登録商標)-AI研究)を上回った(Ramael et al.,Rheumatol Ther.2018;5(2):403-21;Shin et al.,Drug Des Devel Ther.2018;12:3799-805)。パイロットコホートは、ピボタルコホートの最終設計を知らせるために有益であった。パイロットコホートは、主にGMR及びPKパラメータの変動性を評価し、これらは試料サイズ推定で使用される重要な仮定である。ピボタルPK同等性研究の力不足のリスクを最小限に抑えるために、AI又はPFS-NSDによるエトロリズマブの投与後の主要PKパラメータのGMR値及びPK変動性付近の確実性を得ることを意図して、元の研究プロトコルに小規模なパイロットコホートを追加した。パイロットコホートから得られたGMR及びPK変動値(表4を参照)は、ピボタルコホートについての試料サイズを推定する際の信頼性を高めた。体重は無作為化で層別化されたが、最終的な体重分布範囲は依然としてパイロットコホートで不均衡であり、これは最終的なGMR結果にバイアスをかけている可能性がある。このようなバイアスを最小限に抑えるために、体重が60~100kgの範囲内(パイロットコホート内の両群で共通の体重範囲)である参加者からのデータのみをGMR及びPK変動の推定に使用した。60~100kgのこの体重制限も、組み入れ基準としてピボタルコホートで実施された。パイロットコホートはまた、10週間(70日間)の研究期間を評価し、FDAによって示唆された元の研究の計画された研究期間より2週間短い。予想通り、パイロットコホートの全ての評価可能な参加者は、PK同等性試験のためにFDAによって要求される値である80%を超えるAUCR値を有していた。この結果は、10週間の研究期間が、AUCinfの80%超を捕捉するのに十分な長さであり、したがって、ピボタル研究の期間を、計算されたAUCinfについて20%未満の外挿されたAUCの要件を欠くリスクなしに、12週間から10週間に短縮することができることを示唆した。この研究では、エトロリズマブを使用した他の研究と比較して免疫原性が比較的高かった。ADAの割合は、パイロットコホート及びピボタルコホートの両方で>20%であったが、第1相試験(Rutgeerts et al.,Gut.2013;62(8):1122-30)で単回又は複数回エトロリズマブ投薬を受けたUCを有する患者の5%(2/38)及び無作為化第2相試験(Vermeire et al.,Lancet.2014;384(9940):309-18)で複数回エトロリズマブ投薬を受けたUCを有する患者の5%(4/81)は、エトロリズマブ治療後に検出可能なADAを有していた。パイロットコホート及びピボタルコホートにおける免疫原性発生率は、PFS-NSD群及びAI群の両方において同等であった。本研究におけるより高いADA率は、研究計画の違いの結果であった可能性があり、本研究は、単回SC用量レジメン及び免疫抑制薬を服用していない健康な参加者の研究集団を有していた。対照的に、エトロリズマブの以前の試験の患者は、制御が不十分であり、中程度から重度のUCを有し、一般に免疫抑制剤で治療されていた。この研究では、エトロリズマブの単回SC注射後のADAの発生率は比較的高かった(>20%)が、ADA陽性参加者のPKプロフィールがADA陰性参加者で観察されたものと大部分重複したことを考えると、PKに対するADA陽性の影響は最小限であるようである(図21)。さらに、AUC0-inf又はAUClast値の変動性(CV%)は、ピボタル2研究において33%~36%の範囲であり、他のモノクローナル抗体について観察されたものと一致していた(Ramael et al.,Rheumatol Ther.2018;5(2):403-21;Anumolu et al.,Clin Pharmacol Drug Dev.2018;7(8):829-36)。このような小さな曝露変動により、ADA陽性参加者とADA陰性参加者との間の総曝露(AUC0-inf)が非常に類似していたことが更に確認される。ADA状態にかかわらず、全ての評価可能な参加者からのデータを同等性統計評価に含め、最終結果は、群間の高度の曝露類似性を示した。エトロリズマブの単回SC用量後のピボタル研究計画におけるAI及びPFS-NSD群の生物学的同等性試験及び試料サイズ決定は、60~100kgの体重範囲内の参加者のサブセットからのデータに基づいた。AIとPFS-NSDとの間の同等のエトロリズマブ曝露の本発明者らの知見は、定義された体重範囲内の参加者からのデータに基づいていたが、本研究が薬物送達装置のみによる曝露差を特定しなかったことを考慮すると、この体重範囲外の個体に適用することができる。さらに、別の治療用抗体(体重によって制限されなかった)についての同様の研究は、これが正当な仮定であり得ることを示唆している(Ramael et al.,Rheumatol Ther.2018;5(2):403-21)。その研究では、薬物曝露と体重との間に同様の関係が観察されたが、アダリムマブSC投与のためのAI及びPFS-NSD装置を比較した場合、体重にかかわらず生物学的同等性が依然として達成された。エトロリズマブのクリアランスは体重によって有意に影響を受けることが知られており((Tang et al.,Aliment Pharmacol Ther.2018;47(11):1440-52)、この研究のパイロットコホートで確認された知見である。これらの健康な参加者では、エトロリズマブの単一SC用量は、AI又はPFS-NSDのいずれかを使用して投与した場合、一般に安全で忍容性が高かった。治療関連TEAEは、ピボタルコホートにおけるAI対PFS-NSDと同等であった(9.5%対13.2%)。TEAEの大部分は、重症度が軽度又は中程度であり、研究終了までにほとんどが消散した。1回の重篤なAE(発作)により、研究コホートのPFS-NSD群で研究が中止されたが、これはエトロリズマブによる治療に関連するとは考えられなかった。
結論
このPK同等性研究の結果は、エトロリズマブ曝露が、AI又はPFS-NSDのいずれかを介してSCを投与した場合に類似することを実証しており、曝露パラメータ(AUClast、Cmax、AUCinf)の90%CIは、装置間の生物学的同等性限界(80~125%)内に含まれていた。さらに、AIを介して投与されたエトロリズマブの単回SC用量は、健康な参加者において一般に忍容性が良好であり、PFS-NSD注射と比較して有害事象の増加を伴わなかった。この研究はまた、パイロットコホートからのデータが研究計画における信頼性を高め、仮定バイアスを最小化したため、ピボタルPK同等性研究の計画を促進する際のパイロットコホートの価値を強調している。
実施例4
この実施例は、PFS-NSD注入力に関する詳細を提供する。
ユーザの注入経験中に複数の力の定義がある。ユーザ動作は以下の通りである:1)針カバーを取り外し、2)針安全性が作動するまでプランジャを押す。図22は、異なる力の定義を示す。表8は、力及びその限界を示す。表9は、注入力が1mL及び2.25mLの両方の構成の限界内にあることを示している。
自動注入装置のために液体を押し出すばね機構がある。したがって、注入時間は関連する属性である。特定の実施形態では、注入時間は約0.4秒~約9秒である。特定の実施形態では、注入時間は約5秒である。
本開示の製剤に使用される自動注入装置は、有利な注射時間及び長期安定性を提供する。
本開示の主題の実施形態
上記の説明から、現在開示されている主題を様々な用途及び条件に採用するために変形及び修正を行うことができることは明らかであろう。そのような実施形態も、以下の特許請求の範囲の範囲内である。
本明細書における変数の任意の定義における要素のリストの列挙は、列挙された要素の任意の単一の要素又は組み合わせ(又はサブコンビネーション)としてのその変数の定義を含む。本明細書における実施形態の列挙は、その実施形態を任意の単一の実施形態として、又は任意の他の実施形態若しくはその一部と組み合わせて含む。
本明細書で言及される全ての特許及び刊行物は、あたかも各独立した特許及び刊行物が参照により組み込まれることが具体的かつ個別に示されているのと同程度に、参照により本明細書に組み込まれる。

Claims (86)

  1. モノクローナル抗インテグリンβ7抗体を含む製剤であって、前記抗インテグリンβ7抗体の濃度が少なくとも約100mg/mlであり、前記製剤の粘度が25℃で約20センチポアズ(cP)未満であり、前記製剤が長期安定性を有する、製剤。
  2. 前記抗インテグリンβ7抗体がヒト化抗体である、請求項1に記載の製剤。
  3. 前記製剤の粘度が25℃で約7cPである、請求項1に記載の製剤。
  4. 前記抗インテグリンβ7抗体が、3つの軽鎖超可変領域(HVR)、HVR-L1、HVR-L2及びHVR-L3と、3つの重鎖HVR、HVR-H1、HVR-H2及びHVR-H3とを含み、
    (i)前記HVR-L1が、配列番号1で示されるアミノ酸配列を含み、
    (ii)前記HVR-L2が、配列番号2で示されるアミノ酸配列を含み、
    (iii)前記HVR-L3が、配列番号3で示されるアミノ酸配列を含み、
    (iv)前記HVR-H1が、配列番号4に示されるアミノ酸配列を含み、
    (v)前記HVR-H2が、配列番号5のアミノ酸配列を含み、
    (vi)前記HVR-H3が、配列番号6又は配列番号7で示されるアミノ酸配列を含む、請求項1~3のいずれか一項に記載の製剤。
  5. 前記抗インテグリンβ7抗体が、配列番号8に示されるアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域と、配列番号9に示されるアミノ酸配列を含む重鎖可変領域とを含む、請求項1~4のいずれか一項に記載の製剤。
  6. 前記抗インテグリンβ7抗体が、配列番号10に示されるアミノ酸配列を含む軽鎖と、配列番号11に示されるアミノ酸配列を含む重鎖とを含む、請求項1~5のいずれか一項に記載の製剤。
  7. 前記抗インテグリンβ7抗体が、配列番号10に示されるアミノ酸配列を含む軽鎖と、配列番号12に示されるアミノ酸配列を含む重鎖とを含む、請求項1~5のいずれか一項に記載の製剤。
  8. 前記抗インテグリンβ7抗体がエトロリズマブである、請求項1~7のいずれか一項に記載の製剤。
  9. 前記製剤中の抗インテグリンβ7抗体の濃度が約100mg/ml~約220mg/mlである、請求項1~8のいずれか一項に記載の製剤。
  10. 前記製剤中の抗インテグリンβ7抗体の濃度が150mg/mL又は約150mg/mlである、請求項1~9のいずれか一項に記載の製剤。
  11. 前記製剤のpHが5.5超である、請求項1~10のいずれか一項に記載の製剤。
  12. 前記製剤のpHが5.65~6.1である、請求項12に記載の製剤。
  13. 前記製剤のpHが、5.8、5.7~5.9又は5.75~5.85である、請求項1~12のいずれか一項に記載の製剤。
  14. 界面活性剤を更に含み、前記製剤中の前記界面活性剤の濃度が0.03%w/v~0.06%w/vである、請求項1~13のいずれか一項に記載の製剤。
  15. 前記製剤中の前記界面活性剤の濃度が0.04%w/v又は約0.04%w/vである、請求項14に記載の製剤。
  16. 前記界面活性剤がポリソルベート20である、請求項14又は15に記載の製剤。
  17. コハク酸アルギニンを更に含む、請求項1~16のいずれか一項に記載の製剤。
  18. 前記製剤中のコハク酸アルギニンの濃度が約100mM~約300mMである、請求項17に記載の製剤。
  19. 前記製剤中のコハク酸アルギニンの濃度が約150mM~約300mMである、請求項17又は18に記載の製剤。
  20. 前記製剤中のコハク酸アルギニンの濃度が約150mM~約250mMである、請求項17~19のいずれか一項に記載の製剤。
  21. 前記製剤中のコハク酸アルギニンの濃度が200mM又は約200mMである、請求項17~20のいずれか一項に記載の製剤。
  22. ヒスチジンを更に含む、請求項1~21のいずれか一項に記載の製剤。
  23. 前記製剤中のヒスチジンの濃度が約5mM~約40mMである、請求項22に記載の製剤。
  24. 前記製剤中のヒスチジンの濃度が20mM又は約20mMである、請求項22又は23に記載の製剤。
  25. 前記抗インテグリンβ7抗体が-20℃で少なくとも約7年間安定である、請求項1~24のいずれか一項に記載の製剤。
  26. 前記抗インテグリンβ7抗体が5℃で少なくとも約18ヶ月間安定である、請求項1~25のいずれか一項に記載の製剤。
  27. 前記抗インテグリンβ7抗体が5℃で少なくとも約2年間安定である、請求項1~26のいずれか一項に記載の製剤。
  28. 前記抗インテグリンβ7抗体が室温で少なくとも約1日間安定である、請求項1~27のいずれか一項に記載の製剤。
  29. 前記抗インテグリンβ7抗体が室温で最大約1ヶ月間安定である、請求項1~28のいずれか一項に記載の製剤。
  30. 抗インテグリンβ7抗体を含む製剤であって、20mMヒスチジン緩衝液又は約20mMヒスチジン緩衝液(pH5.8、又は5.7~5.9、又は5.75~5.85)、0.04%ポリソルベート20又は約0.04%ポリソルベート20、及び200mMコハク酸アルギニン又は約200mMコハク酸アルギニン中に抗インテグリンβ7抗体を含み、前記抗インテグリンβ7抗体の濃度が150mg/mL又は約150mg/mlであり、前記抗インテグリンβ7抗体が、3つの軽鎖超可変領域(HVR)、HVR-L1、HVR-L2及びHVR-L3と、3つの重鎖HVR、HVR-H1、HVR-H2及びHVR-H3とを含み、
    (i)前記HVR-L1が、配列番号1で示されるアミノ酸配列を含み、
    (ii)前記HVR-L2が、配列番号2で示されるアミノ酸配列を含み、
    (iii)前記HVR-L3が、配列番号3で示されるアミノ酸配列を含み、
    (iv)前記HVR-H1が、配列番号4に示されるアミノ酸配列を含み、
    (v)前記HVR-H2が、配列番号5のアミノ酸配列を含み、
    (vi)前記HVR-H3が、配列番号6又は配列番号7で示されるアミノ酸配列を含む、製剤。
  31. 前記抗インテグリンβ7抗体が、配列番号8に示されるアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域と、配列番号9に示されるアミノ酸配列を含む重鎖可変領域とを含む、請求項30に記載の製剤。
  32. 前記抗インテグリンβ7抗体が、配列番号10に示されるアミノ酸配列を含む軽鎖と、配列番号11に示されるアミノ酸配列を含む重鎖とを含む、請求項30又は31に記載の製剤。
  33. 前記抗インテグリンβ7抗体が、配列番号10に示されるアミノ酸配列を含む軽鎖と、配列番号12に示されるアミノ酸配列を含む重鎖とを含む、請求項30又は32に記載の製剤。
  34. 前記抗インテグリンβ7抗体がエトロリズマブである、請求項30、32及び33のいずれか一項に記載の製剤。
  35. 抗インテグリンβ7抗体を含む製剤であって、20mMヒスチジン緩衝液又は約20mMヒスチジン緩衝液(pH5.8、又は5.7~5.9、又は5.75~5.85)、0.04%ポリソルベート20又は約0.04%ポリソルベート20、及び200mMコハク酸アルギニン又は約200mMコハク酸アルギニン中に抗インテグリンβ7抗体を含み、前記抗インテグリンβ7抗体が、3つの軽鎖超可変領域(HVR)、HVR-L1、HVR-L2及びHVR-L3と、3つの重鎖HVR、HVR-H1、HVR-H2及びHVR-H3とを含み、
    (i)前記HVR-L1が、配列番号1で示されるアミノ酸配列を含み、
    (ii)前記HVR-L2が、配列番号2で示されるアミノ酸配列を含み、
    (iii)前記HVR-L3が、配列番号3で示されるアミノ酸配列を含み、
    (iv)前記HVR-H1が、配列番号4に示されるアミノ酸配列を含み、
    (v)前記HVR-H2が、配列番号5のアミノ酸配列を含み、
    (vi)前記HVR-H3が、配列番号6又は配列番号7で示されるアミノ酸配列を含む、製剤。
  36. 前記抗インテグリンβ7抗体が、配列番号10に示されるアミノ酸配列を含む軽鎖と、配列番号11に示されるアミノ酸配列を含む重鎖とを含む、請求項35に記載の製剤。
  37. 前記抗インテグリンβ7抗体が、配列番号10に示されるアミノ酸配列を含む軽鎖と、配列番号12に示されるアミノ酸配列を含む重鎖とを含む、請求項35に記載の製剤。
  38. 前記抗インテグリンβ7抗体がエトロリズマブである、請求項35~37のいずれか一項に記載の製剤。
  39. 請求項1~38のいずれか一項に記載の製剤及び皮下投与装置を含む製造品。
  40. 前記皮下投与装置が針安全装置である、請求項39に記載の製造品。
  41. 前記針安全装置が充填済みシリンジを備える、請求項39に記載の製造品。
  42. 前記抗インテグリンβ7抗体が、前記皮下投与装置において、5℃で少なくとも約60ヶ月間、又は25℃で少なくとも約3ヶ月間安定である、請求項39~41のいずれか一項に記載の製造品。
  43. 前記充填済みシリンジが、ガラスバレル、プランジャストッパ、針、及び針シールド又は先端キャップを備える、請求項41又は42に記載の製造品。
  44. 前記針シールドが剛性針シールドである、請求項43に記載の製造品。
  45. 前記剛性針シールドが、亜鉛含有量が低いゴム配合物を含む、請求項44に記載の製造品。
  46. 前記剛性針シールドが、エラストマー構成要素と、剛性シールドとを備える、請求項44又は45に記載の製造品。
  47. 前記充填済みシリンジが自動注入装置に組み立てられる、請求項41~46のいずれか一項に記載の製造品。
  48. 前記充填済みシリンジがシリコーン油を含む、請求項40~46のいずれか一項に記載の製造品。
  49. 前記充填済みシリンジ中のシリコーン油の量が約1mg以下である、請求項48に記載の製造品。
  50. 前記充填済みシリンジ中のシリコーン油の量が、約0.1mg~約1mgである、請求項48又は49に記載の製造品。
  51. 前記充填済みシリンジ中のシリコーン油の量が、約0.2mg~約0.6mgである、請求項48~50のいずれか一項に記載の製造品。
  52. 前記充填済みシリンジ中のシリコーン油の量が、約0.5mg~0.9mgである、請求項48~50のいずれか一項に記載の製造品。
  53. 前記針安全装置が、約50ニュートン(N)以下の注入力を有する、請求項40~52のいずれか一項に記載の製造品。
  54. 前記針安全装置が、約35ニュートン(N)以下の注入力を有する、請求項40~53のいずれか一項に記載の製造品。
  55. 約0.5mL~約2.0mLの前記製剤を含む、請求項39~54のいずれか一項に記載の製造品。
  56. 約0.5mL~約1.0mLの前記製剤を含む、請求項39~55のいずれか一項に記載の製造品。
  57. 約1.0mLの前記製剤を含む、請求項39~56のいずれか一項に記載の製造品。
  58. 約0.7mLの前記製剤を含む、請求項39~56のいずれか一項に記載の製造品。
  59. 約1.0mL~約1.5mLの前記製剤を含む、請求項39~55のいずれか一項に記載の製造品。
  60. 約1.4mLの前記製剤を含む、請求項39~55及び59のいずれか一項に記載の製造品。
  61. 前記充填済みシリンジが1mLのシリンジ容量を有する、請求項41~60のいずれか一項に記載の製造品。
  62. 前記充填済みシリンジが2.25mLのシリンジ容量を有する、請求項41~60のいずれか一項に記載の製造品。
  63. 約0.7mLの製剤及び皮下投与装置を備える製造品であって、
    (a)前記製剤が、20mMヒスチジン緩衝液又は約20mMヒスチジン緩衝液(pH5.8、又は5.7~5.9、又は5.75~5.85)、0.04%ポリソルベート20又は約0.04%ポリソルベート20、及び200mMコハク酸アルギニン又は約200mMコハク酸アルギニン中に抗インテグリンβ7抗体を含み、前記抗インテグリンβ7抗体が、3つの軽鎖超可変領域(HVR)、HVR-L1、HVR-L2及びHVR-L3と、3つの重鎖HVR、HVR-H1、HVR-H2及びHVR-H3とを含み、
    (i)前記HVR-L1が、配列番号1で示されるアミノ酸配列を含み、
    (ii)前記HVR-L2が、配列番号2で示されるアミノ酸配列を含み、
    (iii)前記HVR-L3が、配列番号3で示されるアミノ酸配列を含み、
    (iv)前記HVR-H1が、配列番号4に示されるアミノ酸配列を含み、
    (v)前記HVR-H2が、配列番号5のアミノ酸配列を含み、
    (vi)前記HVR-H3が、配列番号6又は配列番号7で示されるアミノ酸配列を含み、
    (b)前記皮下投与装置が、1mLのシリンジ容量を有する1mLの充填済みシリンジを備える針安全装置である、製造品。
  64. 前記抗インテグリンβ7抗体が、150mg/mL又は約150mg/mlの濃度で前記製剤中に存在する、請求項63に記載の製造品。
  65. 約1.4mLの製剤及び皮下投与装置を備える製造品であって、
    (a)前記製剤が、20mMヒスチジン緩衝液又は約20mMヒスチジン緩衝液(pH5.8、又は5.7~5.9、又は5.75~5.85)、0.04%ポリソルベート20又は約0.04%ポリソルベート20、及び200mMコハク酸アルギニン又は約200mMコハク酸アルギニン中に抗インテグリンβ7抗体を含み、前記抗インテグリンβ7抗体が、3つの軽鎖超可変領域(HVR)、HVR-L1、HVR-L2及びHVR-L3と、3つの重鎖HVR、HVR-H1、HVR-H2及びHVR-H3とを含み、
    (i)前記HVR-L1が、配列番号1で示されるアミノ酸配列を含み、
    (ii)前記HVR-L2が、配列番号2で示されるアミノ酸配列を含み、
    (iii)前記HVR-L3が、配列番号3で示されるアミノ酸配列を含み、
    (iv)前記HVR-H1が、配列番号4に示されるアミノ酸配列を含み、
    (v)前記HVR-H2が、配列番号5のアミノ酸配列を含み、
    (vi)前記HVR-H3が、配列番号6又は配列番号7で示されるアミノ酸配列を含み、
    (b)前記皮下投与装置が、2.25mLのシリンジ容量を有する1mLの充填済みシリンジを備える針安全装置である、製造品。
  66. 前記抗インテグリンβ7抗体が、150mg/mL又は約150mg/mlの濃度で前記製剤中に存在する、請求項65に記載の製造品。
  67. 請求項39~66のいずれか一項に記載の製造品を含む自動注入装置。
  68. 約0.7mLの製剤及び皮下投与装置を備える製造品を含む自動注入装置であって、
    (a)前記製剤が、20mMヒスチジン緩衝液又は約20mMヒスチジン緩衝液(pH5.8、又は5.7~5.9、又は5.75~5.85)、0.04%ポリソルベート20又は約0.04%ポリソルベート20、及び200mMコハク酸アルギニン又は約200mMコハク酸アルギニン中に抗インテグリンβ7抗体を含み、前記抗インテグリンβ7抗体が、3つの軽鎖超可変領域(HVR)、HVR-L1、HVR-L2及びHVR-L3と、3つの重鎖HVR、HVR-H1、HVR-H2及びHVR-H3とを含み、
    (i)前記HVR-L1が、配列番号1で示されるアミノ酸配列を含み、
    (ii)前記HVR-L2が、配列番号2で示されるアミノ酸配列を含み、
    (iii)前記HVR-L3が、配列番号3で示されるアミノ酸配列を含み、
    (iv)前記HVR-H1が、配列番号4に示されるアミノ酸配列を含み、
    (v)前記HVR-H2が、配列番号5のアミノ酸配列を含み、
    (vi)前記HVR-H3が、配列番号6又は配列番号7で示されるアミノ酸配列を含み、
    (b)前記皮下投与装置が、1mLのシリンジ容量を有する1mLの充填済みシリンジを備える針安全装置である、自動注入装置。
  69. 前記抗インテグリンβ7抗体が、150mg/mL又は約150mg/mlの濃度で前記製剤に存在する、請求項68に記載の自動注入装置。
  70. 約1.4mLの製剤及び皮下投与装置を備える製造品を含む自動注入装置であって、
    (a)前記製剤が、20mMヒスチジン緩衝液又は約20mMヒスチジン緩衝液(pH5.8、又は5.7~5.9、又は5.75~5.85)、0.04%ポリソルベート20又は約0.04%ポリソルベート20、及び200mMコハク酸アルギニン又は約200mMコハク酸アルギニン中に抗インテグリンβ7抗体を含み、前記抗インテグリンβ7抗体が、3つの軽鎖超可変領域(HVR)、HVR-L1、HVR-L2及びHVR-L3と、3つの重鎖HVR、HVR-H1、HVR-H2及びHVR-H3とを含み、
    (i)前記HVR-L1が、配列番号1で示されるアミノ酸配列を含み、
    (ii)前記HVR-L2が、配列番号2で示されるアミノ酸配列を含み、
    (iii)前記HVR-L3が、配列番号3で示されるアミノ酸配列を含み、
    (iv)前記HVR-H1が、配列番号4に示されるアミノ酸配列を含み、
    (v)前記HVR-H2が、配列番号5のアミノ酸配列を含み、
    (vi)前記HVR-H3が、配列番号6又は配列番号7で示されるアミノ酸配列を含み、
    (b)前記皮下投与装置が、2.25mLのシリンジ容量を有する1mLの充填済みシリンジを備える針安全装置である、自動注入装置。
  71. 前記抗インテグリンβ7抗体が、150mg/mL又は約150mg/mlの濃度で前記製剤中に存在する、請求項70に記載の自動注入装置。
  72. 対象において胃腸炎症性障害を治療する方法であって、有効量の請求項1~38のいずれか一項に記載の製剤を前記対象に投与する工程を含む方法。
  73. 前記胃腸炎症性障害が炎症性腸疾患である、請求項72に記載の方法。
  74. 前記炎症性腸疾患が潰瘍性大腸炎又はクローン病である、請求項73に記載の方法。
  75. 請求項39~66のいずれか一項に記載の製造品又は請求項67~71のいずれか一項に記載の自動注入装置を皮下投与することを含む、抗インテグリンβ7抗体を含む製剤を皮下投与する方法。
  76. 前記投与が軽度の疼痛をもたらすか又は疼痛をもたらさない、請求項75に記載の方法。
  77. 前記投与が、一過性かつ軽度の注射部位反応をもたらす、請求項75又は76に記載の方法。
  78. 前記全用量が投与されるか、又は前記全用量の少なくとも90%が投与される、請求項75~77のいずれか一項に記載の方法。
  79. 前記投与が、針安全装置を備えた充填済みシリンジと比較して、エトロリズマブへの同等の曝露を提供する、請求項75~78のいずれか一項に記載の方法。
  80. 請求項1~37のいずれか一項に記載の製剤を含む、請求項75~79のいずれか一項に記載の方法。
  81. 療法に使用するための、請求項1~38のいずれか一項に記載の製剤。
  82. 療法に使用するための、請求項39~66のいずれか一項に記載の製造品。
  83. 療法に使用するための、請求項67~71のいずれか一項に記載の自動注入装置。
  84. 対象における胃腸炎症性障害の治療における使用のための、請求項1~38のいずれか一項に記載の製剤、請求項39~66のいずれか一項に記載の製造品、又は請求項67~71のいずれか一項に記載の自動注入装置。
  85. 前記胃腸炎症性障害が炎症性腸疾患である、請求項84に記載の製剤、製造品又は自動注入装置。
  86. 前記炎症性腸疾患が潰瘍性大腸炎又はクローン病である、請求項85に記載の使用のための製剤、製造品又は自動注入装置。
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