JP2023103841A - パルスレーザー照射装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】安全な作業環境と高効率および高品質な素地調整面を確保できる素地調整工法を提供する。【解決手段】構造物2に付着する除去対象物25にパルスレーザー11aを照射するパルスレーザー照射ユニット11と、パルスレーザー11aの照射により構造物2から剥離した除去対象物25と構造物2との間に挿入するスクレーパー13と、構造物2から除去された除去対象物25を回収する回収ユニット16と、を備える。【選択図】図3
Description
本発明は、パルスレーザー照射装置に関する。
近年、長期間供用された道路橋等の橋梁において鋼桁の上部に配置されるコンクリート製の床版の取替工事(特定更新工事)が実施されている。また、国内の橋梁は、供用開始から50年以上が経過している、または数年以内に経過するものが多いため、多くの橋梁で上記の様なコンクリート床版の取替工事の実施が求められている。
一般に、橋梁のコンクリート床版の取替工事において、既設床版の下部に配置される鋼製の橋桁は腐食等による強度や耐久性の問題がない場合、取り替えることなく転用される場合が多い。この際、既設床版を取り除いた後の既設床版が載置されていた橋桁の上フランジ面には、既設床版を取り除いた際に既設床版から欠損した残存コンクリート片等の付着物が残存している場合がある。また、上フランジ面には、既存塗膜が剥離し、橋桁表面が長期間露出することにより錆部が発生している場合がある。
そのため、コンクリート床版の取替工事は、既設床版を取り除いた後に上フランジ面の付着物や錆部、既存塗膜を除去し、上フランジ面を整地する素地調整を行い、素地調整を行った上フランジ面を新たに塗装した後に新しい床版を設置する工法が一般的である。上フランジ面の素地調整の工法および表面の仕上げ度合いを指定するケレンの種類は、新設床版と上フランジとの間に不純物を残存させず新設床版の定着性を確保した状態が求められることから、1種ケレンまたは2種ケレンが採用される。
従来、上フランジ面の素地調整工法は、ディスクサンダーやグラインダ等の電動工具や手工具を用いた手作業により上フランジ面の残存コンクリート片や錆部、既存塗膜を除去する2種ケレンによる工法が主に適用されている(例えば、特許文献1参照)。また、素地調整により上フランジ面から除去され、素地調整箇所の周囲に飛散した残存コンクリート片や錆部、既存塗膜は、上記の除去作業と同様に箒等を使用した手作業により回収される。
他の素地調整工法として、上フランジ面に砂等の細粒状の研掃材を噴射するブラスト作業により、上フランジ面の残存コンクリート片や錆部、既存塗膜を除去し、上フランジ面から除去されたものをバキューム装置で吸引、回収するバキュームブラスト装置を用いる方法がある。非特許文献1には、自動でスイングするブラスト噴射装置とブラスト噴射装置で噴射した研掃材や除去されたケレンくずを自動回収するバキューム装置を備え、橋桁上を人力により移動可能なバキュームブラスト装置が提案されている。上記のバキュームブラスト装置による素地調整工法は、1種ケレンに分類される。
株式会社大林組、フランジブラスターTM、2019年9月20日、[2021年9月3日検索]、インターネット<URL https://www.obayashi.co.jp/solution_technology/detail/tech_d222.html>
しかしながら、橋桁の既存塗膜には、鉛、クロム、PCB等の有害物質が含まれている場合がある。この場合、上記の素地調整作業において電動工具や手工具の使用等による既存塗膜の曝露とそれに伴う作業者の健康への影響が懸念される。また、上記の懸念点に関連して、労働安全衛生法においても塗装業務において作業者の安全、健康対策を実施する旨が規定されている。また、素地調整作業において電動工具や手工具の使用や研掃材の噴射により、粉塵が発生し、周囲に拡散する可能性もある点からも作業員の健康や作業環境の安全性への影響が懸念される。そのため、素地調整作業時においては上記の既存塗膜に含まれる有害物質に対する作業者の健康と作業現場に発生する可能性がある粉塵に対する作業員の健康や安全な作業環境を確保した素地調整工法とすることが求められるという課題がある。
従来の手作業による素地調整工法は、素地調整を完了した後に素地調整箇所の周囲に飛散した残存コンクリート片や錆部、既存塗膜等の除去対象物を手作業により回収する作業を要する。また、従来の手作業による素地調整工法は、電動工具により上フランジ面を削る際に大きな作業音が発生するため、近隣への騒音の観点から1日の作業時間が限られている。以上より、床版取替工事の工期が長くなるという課題がある。
また、従来の手作業による素地調整工法は、各作業員の手作業による工法であるため、各作業員の技術の差により素地調整面の品質のばらつきが生じる可能性もあるという課題がある。
バキュームブラスト装置による素地調整工法は、上フランジ面に噴射され跳ね返った研掃材や上フランジ面から除去されたものが周囲に飛散する場合があり、これらの飛散物を回収するために作業時間や労力がさらに必要となる場合があるという課題がある。
また、バキュームブラスト装置による素地調整工法において、上フランジの劣化状態によっては、上フランジ面の角部等に研掃材を噴射すると、噴射箇所が噴射の負荷により折損する虞があるため、噴射箇所によって噴射量を調整する等の作業負担が発生し、それにより作業時間も増加する可能性があるという課題もある。
上記の各課題から、床版取替工事における素地調整作業の作業員の健康、安全や素地調整作業の作業効率の低下および素地調整面の品質の低下が発生する可能性があるという課題がある。
そこで、本発明は、安全な作業環境と高効率および高品質な素地調整面を確保できる素地調整工法を提供することを目的とする。
上記目的を達成するため、本発明に係るパルスレーザー照射装置は、構造物に付着する除去対象物にパルスレーザーを照射するパルスレーザー照射ユニットと、前記パルスレーザーの照射により前記構造物から剥離した前記除去対象物と前記構造物との間に挿入するスクレーパーと、前記構造物から除去された前記除去対象物を回収する回収ユニットと、を備える。
上記の構成から、パルスレーザー照射ユニットによりパルスレーザーを照射し、レーザー光を吸収した除去対象物を微細なヒューム状に分解して構造物から除去できる。ヒューム状に分解されない構造物に付着する除去対象物に対してもパルスレーザーの照射により構造物から剥離させ、スクレーパーの振動で削ぎ落とすことで容易に構造物から除去できる。また、除去された除去対象物は、回収ユニットにより周囲に飛散させることなく回収でき、加えて、レーザーの照射により投射物等がない素地調整であることから、素地調整作業後の飛散物の清掃等を省略でき、素地調整作業を高効率化できる。また、除去対象物が周囲に飛散することなく回収されるため、除去対象物中に有害物質が含有する場合においても安全な作業環境を確保して所望の素地調整を実施できる。また、素地調整を除去対象物にパルスレーザーを照射し、剥離したものはスクレーパーの振動で削ぎ落とす簡易な作業により実施できるため、手作業による素地調整面の作業員間の品質差を解消でき均質かつ高品質な素地調整面とすることができる。
また、本発明に係るパルスレーザー照射装置において、前記パルスレーザー照射ユニットは、剥離した前記除去対象物の下部にエアーを噴射し、前記除去対象物の下部に前記スクレーパーを挿入する間隙を形成するエアー噴射ユニットを備えてもよい。
上記の構成により、スクレーパーを剥離した除去対象物の下部に容易に挿入できる。そのため、除去対象物がヒューム状に分解された除去対象物上にコンクリート片等のヒューム状に分解されていない除去対象物が付着している構成であっても容易に構造物から除去できる。また、除去対象物を直接削ぎ落とすことで除去対象物の除去、回収漏れを抑制し、仕上がり面の品質を向上できる。
また、本発明に係るパルスレーザー照射装置において、前記パルスレーザー照射ユニットは、前記スクレーパーを振動させる振動ユニットを備えてもよい。
上記の構成により、スクレーパーにより構造物に付着する除去対象物を除去する際に容易に下部に挿入でき除去を促進できる。また、素地調整の対象面が凹凸状等の粗い面であってもパルスレーザー照射装置が対象面に引っ掛かることなくスクレーパーを除去対象物の下部に挿入でき、所望の素地調整を実施できる。そのため、素地調整の対象面の形状に関わらず高品質な仕上がり面とすることができる。
また、本発明に係るパルスレーザー照射装置において、前記パルスレーザーの照射角度は、鉛直に対して5°以上15°以下であってもよい。
上記の構成により、レーザー光の反射率が高い素地面を有する構造物に対してパルスレーザーを照射した際に反射したパルスレーザーの照射によるパルスレーザー照射装置の各機器の故障等を抑制できる。また、除去対象物に対するレーザー光の照射角度が直角に近い角度でパルスレーザーを照射するため、レーザー光を照射された焦点(除去対象物)に作用する照射によるエネルギーを大きくすることができる。そのため、所望の剥離効果を有効的に得ることができる。また、除去対象物の下部にパルスレーザーを照射させやすく、剥離による隙間を発生させやすくなるため、除去対象物の下部へスクレーパーを容易に挿入できる。
また、本発明に係るパルスレーザー照射装置において、前記回収ユニットは、回収された前記除去対象物を粒径に応じて分級する分級機構を備えてもよい。
上記の構成により、回収ユニットで回収した除去対象物中にコンクリートがら等のヒューム状に分解されない粒径の大きな除去対象物が含まれる場合において、集塵するヒューム状の除去対象物とそれ以外の除去対象物を容易に分別することができる。そのため、除去対象物の廃棄作業が容易となり高効率化できる。
また、本発明に係るパルスレーザー照射装置において、前記構造物は、橋梁の床版を取り除くことにより露出する表面が既存塗膜で塗装された橋桁の上フランジであってもよい。
上記により、交通規制期間短縮に伴う工期の短縮が求められる橋梁の床版取替工事において素地調整作業を高効率化し工期を短縮できる。
また、本発明に係るパルスレーザー照射装置において、前記除去対象物は、前記床版を取り除いたときに付着するコンクリート片と、前記上フランジに発生する錆部と、前記既存塗膜と、を含んでもよい。
上記により、既存塗膜を挟んで上フランジに付着するコンクリート片について、既存塗膜にパルスレーザーを照射することでコンクリート片を上フランジから剥離させることができ、剥離したコンクリート片をスクレーパーの振動で削ぎ落とすことで容易に上フランジから除去し素地調整を完了できる。
本発明によれば、安全な作業環境と高効率および高品質な素地調整面を確保できる素地調整工法を提供することができる。
以下、本発明の実施形態によるパルスレーザー照射装置1について、図1から図3に基づいて説明する。
図1から図3に示すように、パルスレーザー照射装置1は、パルスレーザー照射ユニット11と、格納部12と、スクレーパー13と、エアー噴射ユニット14と、振動ユニット15と、回収ユニット16と、電源部17を有する。パルスレーザー照射装置1は、構造物2の表面21上の既存塗膜22や付着物23、錆部24等を含む除去対象物25を表面21から除去する。電源部17は、施工現場に設置可能な公知の発電機である。表面21はパルスレーザー11aの反射率が高く、除去対象物25は照射されたパルスレーザー11aを吸収するものを含む。
パルスレーザー照射ユニット11は、スキャナーヘッド111と、伝送管112と、レーザー発振ユニット113を有する。レーザー発振ユニット113は電源部17と電気的に接続されている。
スキャナーヘッド111は、上端が伝送管112の一端と接続され、下端が格納部12の上端に接続される。スキャナーヘッド111は、レンズ111aと防塵部111bを備える。レンズ111aはスキャナーヘッド111の下端に設けられ、防塵部111bはレンズ111aの上部に設けられる。レンズ111aは固有の焦点距離を有する。レンズ111aは、照射対象への距離や、照射対象の形状などに応じて選択される。レンズ111aの焦点距離とレンズ111aから照射対象への距離が一致する時に、レーザー光の照射による加熱の効果が最大となる。
伝送管112は、スキャナーヘッド111の上端とレーザー発振ユニット113に接続され、レーザー発振ユニット113から発信されたパルスレーザー11aを伝送する。伝送管112は、例えば公知のレーザー伝送用のファイバーケーブルである。
レーザー発振ユニット113は、パルス方式にレーザー光11aを発振する。以下、パルスレーザー照射ユニット11より発振されるレーザー光11aをパルスレーザー11aとする。レーザー発振ユニット113は、照射の開始・終了やパルスレーザー11aの照射強度を調整する制御部113aを備え、パルスレーザー11aの照射の調整が容易に実施可能となる。
格納部12は、円筒部121と、持手部122と、脚部123と、を備える。円筒部121は、上端でスキャナーヘッド111の下端と接続し、スキャナーヘッド111との接続箇所以外の上端部が閉止された平面視円形の筒状形状を有する。格納部12は、パルスレーザー11aの反射率が高く、レーザーの照射による温度の上昇に対する耐性が高い材質とする。例えば、公知のレーザー反射率が高い鋼材が挙げられる。
持手部122は、円筒部121の外周部124から外側に突出して設けられ、正面視略コの字形状を有する。脚部123は、外周部124の対向する位置に一対設けられている。それぞれの脚部123は、外周部124に接続され円筒部121の下端から下向きに数mmから数cm程度突出する第一接続部123aと、第一接続部123aの下端から円筒部121の外側に延設する接地部123bと、を備える。第一接続部123aと接地部123bは、一体として設けられる。接地部123bが表面21に接地され、格納部12が安定配置される。一対の脚部123、123は、外周部124の平面視で持手部122の設置位置から略90°の位置の2箇所に接続される。円筒部121は、第一接続部123aが円筒部121の下端から突出することで下部に狭小な開口部125が形成される。パルスレーザー照射装置1は、公知の鋼材を材質とする部位を含み、装置の重量が嵩むため、表面21に接地させ表面21に載置した状態で使用可能である。
スクレーパー13は、外周部124に接続される第二接続部131と、第二接続部131の下端から格納部12の内部に向かって延設する削ぎ落とし部132と、を有する。第二接続部131と削ぎ落とし部132は一体として設けられる。削ぎ落とし部132の上面132aは、先端132bに向かって下向きに傾斜する。先端132bは削ぎ落とし部132の側面視三角形形状の先端となる。第二接続部131は、外周部124の平面視で持手部122に対向する位置に設けられる。第二接続部131は、外周部124の持手部122に対向する位置に接続され円筒部121の下端から多少突出する。削ぎ落とし部132は、開口部125を介して格納部12の内部に向かって延びる。
エアー噴射ユニット14は、一対の移動管141、141と、空気圧送部142と、を備える。移動管141は、外周部124と空気圧送部142に接続され、後述する回収ホース部161の吸引ヘッド165に係止されている。一対の移動管141、141は、第二接続部131の左右で円筒部121に接続され、先端が円筒部121の内部で削ぎ落とし部132に近接するように配置される。移動管141は、空気圧送部142から圧送された空気が移動する。空気圧送部142は、電源部114に接続され、移動管141に接続される。公知のエアーコンプレッサである。空気圧送部142は、例えば公知のエアーコンプレッサである。
振動ユニット15は、第二接続部131に接続されている。振動ユニット15は、動力源151を備え、スクレーパー13を振動させる。振動ユニット15は、例えば公知のバイブレータであり、動力源151は、例えば公知のコンプレッサおよびバッテリーで構成されている。
回収ユニット16は、回収ホース部161と、分級機構162と、集塵機163と、を備える。回収ホース部161は、一端が外周部124に、他端が集塵機163に接続される。回収ユニット16は、表面21から除去された除去対象物25を吸引し回収する。分級機構162は、回収された除去対象物25を粒径に応じて分級し回収する。分級機構162は、回収ホース部161の中間部に設けられる。分級機構162は、砂利取りユニット162aと、小片選別ユニット162bと、を備える。集塵機163は、分級機構162を通過した除去対象物25の微細な粉塵等を回収する。集塵機163は電源部17と電気的に接続されている。
回収ホース部161は、ホース164と、吸引ヘッド165と、を備える。ホース164は、一端が集塵機163に、他端が吸引ヘッド165に接続される。吸引ヘッド165は、一端が外周部124に、他端がホース164に接続される。
吸引ヘッド165は、第三接続部165aと、分岐部165bと、一対の集塵部165c、165cと、を備える。第三接続部165aは、一端がホース164に、他端が分岐部165bに接続される。分岐部165bは、一端が第三接続部165aに接続され、他端が一対の集塵部165c、165cとそれぞれ接続され回収ホース部161を分岐させる。一対の集塵部165c、165cは、それぞれ一端で分岐部165bに接続され、他端で外周部124に接続される。一対の集塵部165c、165cは、一対の脚部123、123と同様に外周部124の平面視で持手部122の設置位置から略90°の位置の2箇所に接続される。一対の集塵部165c、165cと外周部124との接続部は、平面視で削ぎ落とし部132の延設方向に直交する方向の両端に近接する。以上より、回収ユニット16は、一対の集塵部165c、165cにより、削ぎ落とし部132の一方向の両端から除去対象物25を吸引、回収できる。そのため、素地調整作業時の除去対象物25の回収漏れを防止できる。
集塵部165cは、上部に移動管141を係止するブラケット部165dを備える。一対のブラケット部165d、165dは、それぞれ平面視で円筒部121と分岐部165bと一対の集塵部165c、165cとで包囲された包囲部165eに向かって突出し、包囲部165e内で一対の移動管141、141を係止する。一対の移動管141、141は、包囲部165e内で外周部124に接続される。一対の移動管141、141は、それぞれブラケット部165d、165dに係止されることで円筒部121内での配置位置がずれないように配設される。
砂利取りユニット162aは、吸引ヘッド165と小片選別ユニット162bとの間に複数設けられる。複数の砂利取りユニット162aは、吸引ヘッド165から吸引、回収された除去対象物25のうち、粒径の大きいものを複数回分級し回収する。複数の砂利取りユニット162aを通過した除去対象物25は小片選別ユニット162bに送られる。砂利取りユニット162aは、例えば回収ホース部161を通過する物体の重量により分別、分級するトラップである。
小片選別ユニット162bは、砂利取りユニット162aを通過した除去対象物25を、除去対象物25中の粉塵と除去対象物25中の砂利取りユニット162aを通過した小片に分級し、小片を回収する。小片選別ユニット162bを通過した除去対象物25は、集塵機163に送られ回収される。
本実施形態におけるパルスレーザー照射装置1による除去対象物25の除去方法について説明する。以降では、パルスレーザー照射装置1が適用される構造物2が、床版取替工事を実施する道路橋における橋桁(H型鋼材)の上フランジの場合で説明する。橋桁は道路橋の進行方向に沿って延びる。この際、表面21は上フランジの上面に相当し、付着物23は既設床版を取り除いた後に残存する残存コンクリート片に相当する(以下、「表面21」を「上面21」、「付着物23」を「残存コンクリート片23)とする)。
上面21の端部に残存する除去対象物25をパルスレーザー照射装置1による除去対象とする。上面21の端部は、例えばブラスト装置による方法等の従来の素地調整方法を適用すると除去した除去対象物25が周囲に飛散する虞がある箇所である。除去対象物25は、既存塗膜22と錆部24の上部に残存コンクリート片23が位置している。本実施形態のパルスレーザー照射装置1による素地調整は、1種ケレンとなる。
スクレーパー13、エアー噴射ユニット14、振動ユニット15、回収ユニット16は、格納部12の外周部124にそれぞれ接続され、スキャナーヘッド111が格納部12の上端に接続されることでパルスレーザー照射装置1は一体化された装置として設けられる。
素地調整作業を行う際、格納部12は上面21に対して照射角度α傾斜させる。照射角度αは5°以上15°以下の範囲である。本実施形態において、照射角度αは格納部12を鉛直に対して5°傾斜させることによりα=5°とする。パルスレーザー照射装置1は、レーザー発振ユニット113で生成し、伝送管112を通過してスキャナーヘッド111から照射されたパルスレーザー11aを照射角度α傾斜させて上面21の除去対象物25に直接照射する。さらに、上面21は、素材面が鉄鋼面であることからレーザー光の反射率が高い。そのため、反射されたパルスレーザー11aの一部は加熱された除去対象物25をさらに照射し、除去対象物25が容易に加熱される。上記の機構により、除去対象物25のうちレーザー光を吸収する箇所に対するパルスレーザー11aの吸収が促進される。パルスレーザー11aの照射位置は、上部に格納部12が位置しているため、照射または反射されるパルスレーザー11aが外部に漏れることなく安全に作業を実施できる。除去対象物25へのパルスレーザー11aの照射を連続することにより、照射対象の除去対象物25は上面21から剥離し始める。
以下、除去対象物25のうち、残存コンクリート片23が付着していない箇所の既存塗膜22や錆部24の上面21からの除去機構について説明する。
上記のパルスレーザー11aの連続照射により剥離し始めた除去対象物25が、さらにパルスレーザー11aの照射を連続することによって加熱され続ける。その後、除去対象物25と上面21との熱拡張の違いにより、両者の接着面が皺を形成して、除去対象物25が上面21から剥離する。さらに、上記で剥離された除去対象物25は、上面21からの反射光をさらに吸収する。これにより、レーザー光を吸収した除去対象物25に熱エネルギーが連続的に加えられ、昇華するレーザーアブレーションにより、瞬時に蒸発するプラズマと粉塵よりも微細な単位の粒子(以下、「ヒューム26」とする)が発生し、除去対象物25が上面21から剥離、除去される。
上記のパルスレーザー11aの連続照射により剥離し始めた除去対象物25が、さらにパルスレーザー11aの照射を連続することによって加熱され続ける。その後、除去対象物25と上面21との熱拡張の違いにより、両者の接着面が皺を形成して、除去対象物25が上面21から剥離する。さらに、上記で剥離された除去対象物25は、上面21からの反射光をさらに吸収する。これにより、レーザー光を吸収した除去対象物25に熱エネルギーが連続的に加えられ、昇華するレーザーアブレーションにより、瞬時に蒸発するプラズマと粉塵よりも微細な単位の粒子(以下、「ヒューム26」とする)が発生し、除去対象物25が上面21から剥離、除去される。
以下、除去対象物25のうち、残存コンクリート片23が付着する箇所の既存塗膜22や錆部24による除去対象物25の上面21からの除去機構について説明する。
パルスレーザー照射装置1は、照射角度αにより除去対象物25の残存コンクリート片23の下部にパルスレーザー11aを照射して残存コンクリート片23下の既存塗膜22を除去して残存コンクリート片23を一部剥離させる。一部剥離した状態の残存コンクリート片23に対して、エアー噴射ユニット14により残存コンクリート片23の下部(上面21と残存コンクリート片23との間)に削ぎ落とし部132が挿入可能な隙間を形成する。その後、振動ユニット15により削ぎ落とし部132を振動させながら格納部12を水平移動させて削ぎ落とし部132を残存コンクリート片23の下部に挿入する。挿入した削ぎ落とし部132を振動ユニット15により振動させながらさらに水平移動させることで残存コンクリート片23を破砕しつつ剥離させ上面21から除去する。以上の機構より、パルスレーザー11aの照射に加え追加で加力することにより残存コンクリート片23を上面21から剥離させる。残存コンクリート片23は、下部の既存塗膜242や錆部244がパルスレーザー11aの照射により除去された場合に、ヒューム状まで分解されずコンクリート殻の状態で除去、回収される。
パルスレーザー照射装置1は、照射角度αにより除去対象物25の残存コンクリート片23の下部にパルスレーザー11aを照射して残存コンクリート片23下の既存塗膜22を除去して残存コンクリート片23を一部剥離させる。一部剥離した状態の残存コンクリート片23に対して、エアー噴射ユニット14により残存コンクリート片23の下部(上面21と残存コンクリート片23との間)に削ぎ落とし部132が挿入可能な隙間を形成する。その後、振動ユニット15により削ぎ落とし部132を振動させながら格納部12を水平移動させて削ぎ落とし部132を残存コンクリート片23の下部に挿入する。挿入した削ぎ落とし部132を振動ユニット15により振動させながらさらに水平移動させることで残存コンクリート片23を破砕しつつ剥離させ上面21から除去する。以上の機構より、パルスレーザー11aの照射に加え追加で加力することにより残存コンクリート片23を上面21から剥離させる。残存コンクリート片23は、下部の既存塗膜242や錆部244がパルスレーザー11aの照射により除去された場合に、ヒューム状まで分解されずコンクリート殻の状態で除去、回収される。
上面132aの面積は、円筒部121の平面視面積より小さく、残存コンクリート片23の残存範囲等を考慮して形成される。先端132bは、格納部12の水平移動により上面21に傷損が生じない程度の形状で形成される。
パルスレーザー11aの照射による加熱の効果は、レンズ111aの焦点距離とレンズ111aからレーザー光が照射される除去対象物25までの距離が一致するときに最大となり、一致しないときは小さくなる。そのため、レーザー光の焦点が合わない距離では、例えば作業員の手などが照射された場合でも、安全に施工することができる。
防塵部111bは、スキャナーヘッド111を格納部12に対して閉止し、除去された除去対象物25が伝送管112内に進入することを防止する。
ヒューム26と剥離された残存コンクリート片23は、吸引ヘッド165から吸引され、回収ユニット16に回収される。回収されたヒューム26と残存コンクリート片23は、回収ホース部161を通って分級機構162に到達する。砂利取りユニット162aにおいて残存コンクリート片23を粒径毎に捕捉し回収する。分級機構162を通過したヒューム26は、集塵機163に到達し回収される。回収ユニット16は、除去対象物25の除去作業時は常に稼働し、除去対象物25の上面21からの除去と回収ユニット16による吸引、回収は連続して行われる。
吸引ヘッド165によるヒューム26と剥離された残存コンクリート片23の回収は、プル型による回収であり、除去対象物25の除去時において格納部12内は常に負圧状態に保持されている。このため、上面21から除去されたヒューム26と剥離された残存コンクリート片23は、格納部12外に放出されることなく回収される。
パルスレーザー11aの照射により発生したヒューム26は金属系やケミカル系等の種類によらず環境下に曝露させない必要がある。そのため、パルスレーザー照射装置1は、格納部12によりパルスレーザー11aの照射箇所を包囲しレーザー光の拡散の抑制と同時に上記のヒューム26の曝露を防止し、ヒューム26を周囲に飛散させることなく吸引、回収することができる。
パルスレーザー照射装置1による素地調整は、パルスレーザー11aを除去対象物25に直接照射することで除去対象物25を除去し、ヒューム26と剥離した残存コンクリート片23を吸引、回収する。そのため、ブラスト機構を用いる等の他の素地調整工法と比較して素地調整作業に伴い飛散する物体が少ない工法となる。
パルスレーザー照射装置1は、持手部122が素地調整の進行方向に向く方向に配置され、道路橋の進行方向(上フランジが延びる方向)に沿って素地調整を実施する。また、素地調整作業を実施している際は、作業者3が円筒部121および持手部122を押さえながら格納部12を道路橋の進行方向に水平移動させる。
次に、上述した本発明の実施形態によるパルスレーザー照射装置1の作用・効果について図面を用いて説明する。
本実施形態によるパルスレーザー照射装置1により、レーザー光を吸収する除去対象物25をヒューム26に分解し、レーザー光の反射率が高い残存コンクリート片23を上面21から一部剥離させて下部にスクレーパー13を挿入する隙間を形成し、スクレーパー13の振動で削ぎ落として除去した後に回収ユニット16で除去と略同時に回収する。上記により、除去対象物25や素地調整作業に伴う粉塵等の作業環境に影響する物質を飛散または発生させることなく所望の上面21の表面処理とクリーニング処理を含む素地調整作業を実施できる。加えて、ブラスト材等の上面21に投射する実体の物質を要しないため、素地調整作業後の飛散物の清掃等を省略でき、素地調整作業を高効率化できる。
パルスレーザー照射装置1による素地調整作業は飛散物が抑制できるため、既存塗膜22に有害物質が含有する場合においても作業者3の安全を確保した作業環境を確保できる。
パルスレーザー照射装置1により、除去対象物25にパルスレーザー11aを照射し、剥離したものについては格納部12を水平移動してスクレーパー13の振動で削ぎ落とすという簡易な作業により素地調整を実施できる。そのため、素地調整面の作業員間の品質差を解消でき、均質かつ高品質な素地調整面とすることができる。
また、エアー噴射ユニット14から上面21と残存コンクリート片23との間にエアーを噴射することにより、残存コンクリート片23の下部に削ぎ落とし部132が挿入可能な隙間を形成する。上記により、残存コンクリート片23の下部にスクレーパー13を容易に挿入できる。パルスレーザーの照射によりヒューム状に分解されない付着物である残存コンクリート片23についても容易に構造物から除去できる。また、除去対象物を直接削ぎ落とすことで除去対象物の除去、回収漏れを抑制し、仕上がり面の品質を向上できる。
また、素地調整作業時にスクレーパー13を振動ユニット15により振動させながら水平移動させる。上記により、スクレーパー13を残存コンクリート片23の下部に容易に挿入でき、残存コンクリート片23の剥離がより促進される。また、上面21が凹凸状の粗い面であってもパルスレーザー照射装置1を水平移動させた際に上面21にパルスレーザー照射装置1が上面21に引っ掛かることなく円滑に素地調整作業を実施できる。そのため、上面21の形状に関わらず仕上がり面の品質を向上させることができる。
また、パルスレーザー照射装置1は上面21から照射角度α傾斜させてパルスレーザー11aを照射する。上記により、レーザー反射率が高い鉄鋼面である上面21からパルスレーザー11aが反射するしてスキャナーヘッド111等の機器が照射されることによる機器の故障等を抑制する。また、照射角度α傾斜した位置からパルスレーザー11aを照射する構成により、パルスレーザー11aが照射された除去対象物25に作用する照射によるエネルギーを大きくすることができる。そのため、パルスレーザー照射装置1の各機器の故障等を抑制しつつ所望の剥離効果を有効的に得ることができる。また、照射角度αを有してパルスレーザー11aを照射する構成により、残存コンクリート片23の下部の付着箇所に照射させやすくなり、レーザー光の反射率が高く、レーザー光を吸収しにくい残存コンクリート片23を剥離させ下部に隙間を発生させやすくなる。そのため、スクレーパー13を残存コンクリート片23の下部に容易に挿入することができる。
また、回収ユニット16に回収された残存コンクリート片23は、分級機構162の砂利取りユニット162aにおいて粒径の大きいものが複数回分級、回収される。砂利取りユニット162aを通過した粒径の小さなものは小片選別ユニット162bにより回収される。小片選別ユニット162bに回収されない粉塵等の微細なものがヒューム26とともに集塵機163に回収される。上記により、残存コンクリート片23とヒューム26の分別と処理が容易となる。また、既存塗膜に有害物質が含まれる場合等においても廃棄作業を高効率化できる。
以上、本発明によるパルスレーザー照射装置の実施形態について説明したが、本発明は上記の実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
例えば、上記の実施形態では、パルスレーザー照射装置1はエアー噴射ユニット14を備えるが、スクレーパー13を残存コンクリート片23の下部に容易に挿入可能であればエアー噴射ユニット14を備えない構成としてもよい。
例えば、上記の実施形態では、パルスレーザー照射装置1はエアー噴射ユニット14を備えるが、スクレーパー13を残存コンクリート片23の下部に容易に挿入可能であればエアー噴射ユニット14を備えない構成としてもよい。
上記の実施形態では、パルスレーザー照射装置1は振動ユニット15を備えるが、スクレーパー13を残存コンクリート片23の下部に容易に挿入可能であり、残存コンクリート片23が容易に除去可能であれば振動ユニット15を備えない構成としてもよい。
上記の実施形態では、パルスレーザー照射装置1は、照射角度αに傾斜させパルスレーザー11aを照射するとしているが、反射したパルスレーザー11aがスキャナーヘッド111等の機器に照射されなければ照射角度に傾斜させない構成としてもよい。
上記の実施形態では、パルスレーザー照射装置1は分級機構162を備えるが、分級の必要がない場合は分級機構162を備えない構成としてもよい。
例えば、上記の実施形態では、パルスレーザー照射装置1は、素地調整作業時に格納部12を水平移動させて作業を実施するが、円筒部121の下端部に照射箇所を包囲した状態で格納部12を移動自在とする移動機構を備えてもよい。移動機構は例えば公知の移動用キャスターが挙げられる。
上記の実施形態では、床版取替工事における橋桁の上フランジの上面をパルスレーザーの照射対象としているが、その他の工事における素地調整作業にパルスレーザー照射装置1を適用してもよい。例えば、塗装面を有する木造構造物の既存塗膜を剥離する等のレーザー光を吸収する母材に対する素地調整が挙げられる。
1 パルスレーザー照射装置
2 構造物(橋桁の上フランジ)
11 パルスレーザー照射ユニット
11a パルスレーザー(レーザー光)
13 スクレーパー
14 エアー噴射ユニット
15 振動ユニット
16 回収ユニット
22 既存塗膜
23 残存コンクリート片(コンクリート片)
24 錆部
25 除去対象物
162 分級機構
α 照射角度
2 構造物(橋桁の上フランジ)
11 パルスレーザー照射ユニット
11a パルスレーザー(レーザー光)
13 スクレーパー
14 エアー噴射ユニット
15 振動ユニット
16 回収ユニット
22 既存塗膜
23 残存コンクリート片(コンクリート片)
24 錆部
25 除去対象物
162 分級機構
α 照射角度
Claims (7)
- 構造物に付着する除去対象物にパルスレーザーを照射するパルスレーザー照射ユニットと、
前記パルスレーザーの照射により前記構造物から剥離した前記除去対象物と前記構造物との間に挿入するスクレーパーと、
前記構造物から除去された前記除去対象物を回収する回収ユニットと、
を備える、パルスレーザー照射装置。 - 前記パルスレーザー照射ユニットは、剥離した前記除去対象物の下部にエアーを噴射し、前記除去対象物の下部に前記スクレーパーを挿入する間隙を形成するエアー噴射ユニットを備える、
請求項1に記載のパルスレーザー照射装置。 - 前記パルスレーザー照射ユニットは、前記スクレーパーを振動させる振動ユニットを備える、
請求項1または2に記載のパルスレーザー照射装置。 - 前記パルスレーザーの照射角度は、鉛直に対して5°以上15°以下である、
請求項1から3のいずれか一項に記載のパルスレーザー照射装置。 - 前記回収ユニットは、回収された前記除去対象物を粒径に応じて分級する分級機構を備える、
請求項1から4のいずれか一項に記載のパルスレーザー照射装置。 - 前記構造物は、橋梁の床版を取り除くことにより露出する表面が既存塗膜で塗装された橋桁の上フランジである、
請求項1から5のいずれか一項に記載のパルスレーザー照射装置。 - 前記除去対象物は、前記床版を取り除いたときに付着するコンクリート片と、前記上フランジに発生する錆部と、前記既存塗膜と、を含む、
請求項6に記載のパルスレーザー照射装置。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
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JP2022004603A JP2023103841A (ja) | 2022-01-14 | 2022-01-14 | パルスレーザー照射装置 |
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Cited By (1)
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JP7570157B1 (ja) | 2024-04-16 | 2024-10-21 | クリーンレーザージャパン株式会社 | レーザー照射装置 |
-
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- 2022-01-14 JP JP2022004603A patent/JP2023103841A/ja active Pending
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