本発明は、無線端末機器との間で無線通信可能な無線通信部を備えた作業車両に関する。
近年の作業車両は、無線通信ユニットを備え、無線通信ネットワークを介して外部の通信機器との間でデータ通信することができる。特に、自動走行する作業車両は、他の作業車両の無線通信ユニットや管理者が持参するリモコン装置などから、作業走行に関する種々の制御指令を受信し、受信した制御指令に基づいて作業走行動作を行う機能を有する。
特許文献1に開示された作業車両では、作業車両を作業走行させるために操作される手動走行操作ユニットとして、作業車両内部に装備されている内部操作デバイスと、作業車両外部からの操作に用いられるリモコンである遠隔操作デバイスとが備えられている。この作業車両はバイワイヤ方式を採用しており、手動走行操作ユニットに対する操作は、操作信号として電子制御ユニットに入力され、必要な演算処理や判定処理を経て、当該操作信号に基づく出力信号が出力される。さらに、自動走行を許可する自動走行許可信号は、この作業車両の外部から操作される遠隔操作デバイス(リモコン)によって生成され、電子制御ユニットに送られる。この作業車両の自動走行時には、作業者は車両から離れて、作業車両を監視しながら、必要に応じて緊急停止や走行再開をリモコン操作によって行うことができる。
リモコンなどの遠隔操作デバイスは、作業車両の外部から作業車両を制御することができるので便利である。しかしながら、遠隔操作デバイスは、携帯性を考慮して、コンパクトに構成されているので、ポケットからの抜け落ちや置き忘れなどによって紛失しまう可能性がある。作業車両が圃場や牧場などの作業地を作業するようなケースでは、広大な作業地や作業地周辺で遠隔操作デバイスを落としたり、置き忘れたりすると、それを見つけ出すことは困難である。このような実情から、作業車両と通信可能で、外部へ持ち出し可能な無線端末機器を誤って作業地または作業地周辺で紛失した場合にも、容易に見つけ出すことができる技術が要望されている。
作業地を作業走行する、本発明による作業車両は、作業走行制御部と、自車位置を算出する自車位置算出部と、外部へ持ち出し可能な無線端末機器との間で無線通信可能な無線通信部と、前記無線端末機器から受信する電波の電波強度を検出する電波強度検出部と、前記電波強度検出部によって検出された電波強度を前記自車位置と関係付けて電波強度データとして記録する電波強度記録部とを備えている。なお、本発明における作業車両は、広義に解釈されるべきであり、トラクタなどの農作業車両、バックホウなどの建機、トラック、道路以外の荒地や砂地を走行するオフロード車などが含まれる。つまり、ここでは、道路以外を走行することができる車両の総称として作業車両という用語を使っている。
この構成では、作業者が車外に持ち出した無線端末機器が紛失された場合には、当該無線端末機器から発信される電波強度と作業車両の自車位置とからなる一連の電波強度データをチェックすることで、最も大きな電波強度を受信した位置、つまり無線端末機器が電波を発信している位置を把握することができる。凸凹の土塊が散在していたり、あるいは草などが茂っていたりして、落し物が見つかりにくい広大な作業地であっても、電波強度データを手掛かりとして、無線端末機器が落ちている場所を非常に狭い領域に絞り込むことができる。これにより、外部へ持ち出し可能な無線端末機器を誤って作業地または作業地周辺で紛失した場合でも、容易に見つけ出すことができる。
電波強度記録部に記録されている電波強度データには、自車位置と電波強度とが含まれているので、電波強度データの一覧から無線端末機器を紛失した位置(今存在している位置)を探索することは可能である。しかしながら、電波強度の広がりは比較的緩やかであり、しかも電波強度データは、継時的かつ二次元的に展開している。このため、単純にリスト表示された電波強度データから、紛失した無線端末機器の位置を見つけ出すのは熟練が必要である。このため、レーダー分野などで良く知られたコンピュータを用いた探索アルゴリズムを用いて、継時的に得られた電波強度データを解析することで、無線端末機器存在可能性が最も高い領域を探索することが好ましい。これを実現するため、本発明の好適な実施形態の1つでは、前記電波強度データから前記無線端末機器の現在位置を算出する端末探索部が備えられている。
電波強度データの一覧から無線端末機器の落とした位置を読み取ることは、熟練を要する作業である。しかしながら、電波強度データを、良く知られたグラフ生成プログラムを利用し、二次元座標に展開することで、電波強度分布を示す電波強度マップを生成することができる。このような電波強度マップが表示されると、人の視覚的な判断から、電波強度の高い領域、つまり無線端末機器の存在確率の高い領域を、簡単に見つけ出すことができる。このことから、本発明の好適な実施形態では、前記電波強度データに基づいて、前記作業地における前記無線端末機器の電波強度の分布を示す電波強度分布マップを生成する電波強度分布マップ生成部と、前記電波強度分布マップを表示する表示デバイスが備えられている。さらに、その際、電波強度マップを地図上に重ね合わせて表示デバイスに表示すると、紛失した無線端末機器の地図上の位置が表示画面から容易に知ることができる。
液晶等のディスプレイが作業車両に搭載されている場合、このディスプレイが電波強度分布マップを表示する表示デバイスとして利用可能となる。また、好ましくは追加的に、作業車両を降りた作業者が持参するタブレットコンピュータやスマートフォンなどの無線端末機器のディスプレイも電波強度分布マップ表示用の表示デバイスとして利用可能である。これにより、作業者は手に持った無線端末機器のディスプレイに表示される電波強度分布マップを見ながら紛失した無線端末機器を探すことができる。特に、タブレットコンピュータなどのディスプレイは画面サイズが大きいので好都合である。このため、本発明の好適な実施形態では、前記表示デバイスの1つがタブレットコンピュータに備えられているディスプレイであり、このタブレットコンピュータは前記無線通信部を介して無線通信可能で、かつ外部へ持ち出し可能である。なお、紛失した無線端末機器を探す際に用いられる無線端末機器への電波強度分布マップのデータ伝送は、無線で行われる。
作業地で紛失した無線端末機器が何らかの原因で電波が発信されていなかった場合、電波強度データが記録されていないことになる。また、電波発信間隔が長すぎた場合、紛失した無線端末機器の探索に適さない電波強度データしか記録されないことになる。このような場合、電波強度データに基づく、無線端末機器の探し出しは困難となるので、作業車両が、紛失した無線端末機器の探索に適した電波強度データを取得するように、探索目的の走行を行う。その際、無線端末機器の探索に適した電波の発信を要求することができるとさらに好都合である。このことから、本発明の好適な実施形態では、紛失した前記無線端末機器を探索要求に応じて探索する探索制御部が備えられ、前記探索制御部は前記無線端末機器に被探索用信号の発信を要求するように構成されている。
無線端末機器の紛失に気付いてから、作業車両に対して、紛失した無線端末機器の探索のための電波強度データを記録すべく走行することを要求することも効果的である。このような探索要求により探索用走行を行う場合には、無線端末機器の探索のために効率的な走行経路を採用することが重要である。例えば、無線端末機器を落とした作業者が移動した軌跡に沿って走行するとともに、その走行中において電波が強くなる方向に向かって操舵すると効率的である。このため、本発明の好適な実施形態の1つでは、前記探索制御部からの要求に基づいて、探索用走行経路を生成する探索経路生成部が備えられている。その際、紛失した無線端末機器を持っていた作業者が移動した軌跡が、入力デバイスなどを通じて、探索経路生成部に与えられるような構成が好ましい。
本発明の、好適な実施形態の1つでは、前記作業走行制御部は前記自車位置と設定された走行経路とに基づいて自動走行を実行する自動走行制御機能を有し、かつ前記無線端末機器は、車両外に持ち出されるリモコン装置であり、前記リモコン装置は、前記自動走行の開始指令及び前記自動走行の停止指令を発信するように構成されている。自動走行する作業車両では、監視者や作業者が作業車両から離れて、作業車両の動きを監視しており、リモコン装置を用いて、走行開始や走行停止などを、作業車両の作業走行制御部に指令する。そのような場合、リモコン装置の使用頻度はそれほど高くないので、ポケット等に入れておいたリモコン装置を落としたり、どこかに置き忘れたりして、紛失してしまう可能性が少なくない。このことから、自動走行する作業車両とリモコン装置との組み合わせは、本発明の有効な適用例となる。
本発明の作業車両の一例である、自動走行可能なトラクタの側面図である。
作業地である圃場を自動走行しているトラクタと監視者が手持ちするリモコン装置とを示す模式図である。
リモコン装置の平面図である。
トラクタの制御系機能部を示す機能ブロック図である。
電波強度マップ作成におけるデータの流れを示すデータ流れ図である。
タブレットコンピュータのタッチパネルに表示された電波強度分布マップの一例を示す画面図である。
図1には、作業車両の一例としてのトラクタが示されている。このトラクタは、前輪11と後輪12とによって支持された車体1の中央部に操縦部20が設けられている。車体1の後部には油圧式の昇降機構31を介して作業装置としてのロータリ式の耕耘装置30が装備されている。前輪11は操向輪として機能し、操舵機構13によって操舵角が変更されることでトラクタの走行方向が変更される。操舵機構13には自動操舵のための操舵モータ14が含まれている。手動走行では、前輪11の操舵は操縦部20に配置されているステアリングホイール22を用いて行われる。操縦部20には、ディスプレイとしても機能するタッチパネル99を備えた汎用端末としてのタブレットコンピュータ9Bが操縦席に設置されたクレードルに装着されている。このタブレットコンピュータ9Bは、無線データ伝送機能を備えており、クレードルから取り外して、トラクタの外部に持ち出しても、トラクタの制御系との間でデータ通信可能である。タブレットコンピュータ9Bは、運転者に情報を提供する機能と、運転者からの情報を入力する機能とを有する。
トラクタのキャビン21には、GNSS(global navigation satellite system)モジュールとして構成されている衛星測位モジュール80が設けられている。GNSS信号(GPS信号も含む)を受信するための衛星用アンテナが、衛星測位モジュール80の構成要素として、キャビン21の天井領域に取り付けられている。なお、衛星航法を補完するために、衛星測位モジュール80に、ジャイロ加速度センサや磁気方位センサを組み込んだ慣性航法モジュールを組み合わせることも可能である。慣性航法モジュールは、衛星測位モジュール80とは別の場所に設けてもよい。
図2には、自動走行するトラクタによって、圃場が耕耘される様子が示されている。ここでは、トラクタは、畦に沿って規定される枕地とも呼ばれる周辺領域で行う旋回(Uターン)走行と、この周辺領域に囲まれた略四角形の中央領域で行う直進走行との繰り返しで、圃場を耕耘する。トラクタから離れた位置にリモコン装置9Aを持参した作業者が立っている。リモコン装置9Aはトラクタの通信ユニット4と無線通信可能であり、作業者はリモコン装置9Aを用いて、トラクタの制御系に対して、走行開始や走行停止などを指令することができる。
図3にリモコン装置9Aの平面図が示されている。このリモコン装置9Aは、片手操作可能なハンディタイプである。その表面には、電源ボタン90、非常停止ボタン91、自動走行開始ボタン92、一時停止ボタン93が備えられている。非常停止ボタン91を押せば、トラクタの制御系に非常停止指令が送信され、自動走行開始ボタン92を押せば自動走行開始指令が、一時停止ボタン93を押せば一時停止指令が送信される。
図4には、トラクタの制御系の機能ブロック図が示されている。この制御系の中核要素である制御ユニットCUは、入出力インタフェースとして、出力処理部7と入力処理部8とを備えている。異なるタイプの無線通信機器と無線通信を行うために、複数の通信方式で動作可能な通信ユニット4が制御ユニットCUと接続している。もちろん、通信ユニット4は、制御ユニットCU内に構築してもよい。図4では、通信ユニット4を介して、制御ユニットCUとの間で無線通信可能な無線端末機器として、リモコン装置9Aとタブレットコンピュータ9Bとが図示されている。なお、タブレットコンピュータ9Bは、直接車載LANと接続して、制御ユニットCUとの間でデータ交換することもできる。
通信ユニット4は、リモコン装置9Aやタブレットコンピュータ9Bなどの無線端末機器との間で無線通信可能な無線通信部40と、無線端末機器から受信する電波の電波強度を検出する電波強度検出部41とを備えている。
出力処理部7は、車両走行機器群71と作業装置機器群72とからなる作業走行機器群70、及び液晶ディスプレイなどの表示デバイス73と接続している。車両走行機器群71には、車両走行に関する制御機器、例えばエンジン制御機器、変速制御機器、制動制御機器、操舵制御機器などが含まれている。作業装置機器群72には、この実施形態では、耕耘装置30への動力伝達を入り切りするPTOクラッチなどの動力制御機器や、耕耘装置30を昇降させる昇降機構31の昇降シリンダ制御機器などが含まれている。
入力処理部8には、衛星測位モジュール80、自動/手動切替操作具81、走行系検出センサ群82、作業系検出センサ群83などが接続されている。自動/手動切替操作具81は、自動操舵で走行する自動走行モードと、手動操舵で走行する手動操舵モードとのいずれかを選択するスイッチである。例えば、自動操舵モードで走行中に自動/手動切替操作具81を操作することで、手動操舵での走行に切り替えられ、手動操舵での走行中に自動/手動切替操作具81を操作することで、自動操舵での走行に切り替えられる。走行系検出センサ群82には、エンジン回転数調整具、アクセルペダル、ブレーキペダル、ステアリングホイール22などの操作具の状態を検出するセンサが含まれている。作業系検出センサ群83には、耕耘装置30の駆動状態や姿勢を検出するセンサが含まれている。
制御ユニットCUには、本発明に特に関係する機能部として、作業走行制御部5、探索モジュール6、自車位置算出部50が構築されている。
自車位置算出部50は、衛星測位モジュール80から逐次送られてくる測位データに基づいて、車体1の座標位置(地図座標または圃場座標)である自車位置を算出する。
作業走行制御部5には、走行制御部51、作業制御部52、エンジン制御部53、自動作業走行指令部54、走行経路生成部55が含まれている。走行制御部51は、操舵モータ14などの車両走行機器群71を制御する。このトラクタは自動走行(自動操舵)と手動走行(手動操舵)の両方で走行可能に構成されている。このため、走行制御部51は、手動走行制御機能と自動走行制御機能とを有する。手動走行制御機能が実行されている場合、運転者による操作に基づいて車両走行機器群71が制御される。自動走行制御機能が実行されている場合、自動作業走行指令部54から与えられる自動操舵指令に基づいて車両走行機器群71が制御される。作業制御部52は、耕耘装置30の動きを制御するために、作業装置機器群72に作業制御信号を与える。エンジン制御部53は、エンジンの動作機器にエンジン制御信号を与える。
走行経路生成部55は、入力された圃場情報から、圃場の外形データを読み出し、この圃場における適正な走行経路を生成する。この走行経路は、運転者によって入力される基本的な初期パラメータに基づいて生成される。また、この走行経路生成部55は、別なコンピュータで生成された走行経路をダウンロードして、利用することも可能である。いずれにしても、走行経路生成部55が得た走行経路は、メモリに展開され、自動走行における目標走行経路に利用される。もちろん、この走行経路は、手動走行であっても、トラクタが当該走行経路に沿って走行するためのガイダンスのために利用できる。
自動作業走行指令部54は、走行経路生成部55によって目標走行経路として設定された走行経路と、自車位置との間の方位ずれ及び位置ずれを算出し、その方位ずれ及び位置ずれを解消する自動操舵指令を生成して、走行制御部51に与える。
作業中にトラクタの外部で使用されていたリモコン装置9Aなどの無線端末機器が落とされたり、置き忘れられたりして紛失した際に、探索モジュール6は、紛失した無線端末機器を探索する機能を有する。以下の説明では、紛失した無線端末機器はリモコン装置9Aであるとしておく。この実施形態では、探索モジュール6は、電波強度記録部61と、電波強度分布マップ生成部62とを備えている。さらに、探索モジュール6は、オプションとして、探索制御部63と、探索経路生成部64と、端末探索部65とを備えることができる。
図4及び図5を用いて、探索モジュール6の機能を説明する。電波強度記録部61は、所定のインターバルで、電波強度検出部41によって検出されたリモコン装置9Aの電波強度を自車位置算出部50から出力される自車位置と関係付けて、電波強度データとして、メモリに記録する。各電波強度データには、タイムスタンプも付与される。メモリに記録された一連の電波強度データを読み出して、継時的に並べられたリスト表示や、自車位置で並べられたリスト表示などで表示デバイス73に表示することも可能である。
電波強度分布マップ生成部62は、メモリから読み出された一連の電波強度データに基づいて、圃場(作業地)におけるリモコン装置9Aの電波強度の分布を示す電波強度分布マップを生成する。電波強度分布マップの一例が図6に示されている。この電波強度分布マップは、圃場の各座標位置における電波強度が累積演算され、その演算結果に基づいて、算出された圃場における電波強度の分布が等高線状に示されたものである。その際、電波強度が複数の段階に区分けされ、各段階の電波強度に応じて色分けされている。図6では、電波強度が強いほど、濃く塗り分けられているが、実際には色分け表示が効果的である。表示デバイス73に表示された電波強度分布マップを見ることで、リモコン装置9Aの現在位置(紛失位置)のおおよその見当が得られる。
この電波強度分布マップが、タブレットコンピュータ9Bのタッチパネル99にも表示されるように構成すると、作業者は、タブレットコンピュータ9Bをトラクタの外部に持ち出すことができる。持ち出したタブレットコンピュータ9Bのタッチパネル99に表示される電波強度分布マップを見ながら、電波強度分布マップが示す電波強度の強い場所に向かって歩いていくことができる。このため、探索モジュール6は、タブレットコンピュータ9Bに電波強度分布マップを転送する機能も有する。
しかしながら、単なる電波強度の累積演算結果だけで生成され、表示デバイス73に表示された電波強度分布マップを見ただけでは、紛失したリモコン装置9Aのおおまかな位置しかわからない。トラクタは、圃場の全体を隙間なくカバーするように往復作業走行しているので、紛失したリモコン装置9Aからの電波を種々の位置から検出しており、その結果としての大量の電波強度データがメモリに蓄積されている。したがって、レーダー探索等のアルゴリズムを用いると、そのような大量の電波強度データから、かなり正確なリモコン装置9Aの現在位置を算出することができる。端末探索部65はそのようなアルゴリムを有する機能部である。
リモコン装置9Aの紛失に気付いた時に、当該リモコン装置9Aの電波強度分布マップがまったく生成されていなかった場合、あるいは適切な電波強度分布マップが生成されていなかった場合には、新たに、トラクタを走行させながら、電波強度分布マップを生成することも可能である。この場合は、トラクタは、紛失の可能性ある場所、つまりリモコン装置9Aを操作していた作業者が移動していた場所、を重点的に走行することが重要である。また、電波強度の高い場所が見つかれば、その場所の周辺を集中的に走行することで、リモコン装置9Aの位置をより正確に示す電波強度データが得られ、精度の高い電波強度分布マップが生成可能となる。このような目的で、探索制御部63からの要求に基づいて、探索用走行経路を生成する探索経路生成部64が備えられている。
リモコン装置9Aの発信電波が弱い場合や、その発信インターバルが長すぎる場合には、リモコン装置9Aの電波強度データが全く生成されないか、あるいは、適正な電波強度データが生成されないということが生じる。このため、探索制御部63は、作業者によって与えられた探索要求に基づき、リモコン装置9Aに対して、ブロードキャスト信号などの被探索用信号の発信を要求する機能を有する。探索制御部63は、リモコン装置9Aの送信電波強度が外部から調整できる場合には、リモコン装置9Aに、より強い被探索用信号の発信を要求する。その後、トラクタを走行させることで、良好な電波強度データが記録され、結果的に正確な電波強度分布マップが生成される。
また、リモコン装置9Aのバッテリ容量が減少すると、当該リモコン装置9Aからの受信強度の低下や受信不能が生じる。このような受信強度の低下や受信不能は、受信強度の継時的な変化から判定することができる。そのような信強度の低下や受信不能が生じた際の受信強度データは、無効にされる。
上述した例では、紛失の可能性のある通信端末機器が、1台のリモコン装置9Aであると仮定しており、電波強度データも一種類だけ作成されている。しかしながら、紛失の可能性のある通信端末機器が、複数台あれば、通信端末機器毎に電波強度データが作成される。その際には、通信端末機器のIDコード、例えばMACアドレスが、自車位置及び電波強度とともに関係づけられた電波強度データが作成され、メモリに記録される。これにより、通信端末機器毎の電波強度分布マップが生成可能となる。
なお、上記実施形態(別実施形態を含む、以下同じ)で開示される構成は、矛盾が生じない限り、他の実施形態で開示される構成と組み合わせて適用することが可能であり、また、本明細書において開示された実施形態は例示であって、本発明の実施形態はこれに限定されず、本発明の目的を逸脱しない範囲内で適宜改変することが可能である。
〔別実施の形態〕
(1)上述した実施形態では、電波強度データを記録するモードが2つある。その1つは、トラクタの走行開始から、あるいはリモコン装置9Aの使用開始から、電波強度データが記録される第1記録モードである。他の1つは、リモコン装置9Aの紛失に気づいてから、トラクタを走行させることで、電波強度データが記録される第2記録モードである。別実施形態として、この第1記録モードだけ、あるいは第2記録モードだけを採用することも可能である。
(2)リモコン装置9Aの紛失後に、探索目的でのトラクタの走行において、トラクタが同じ位置を走行した場合、電波強度の強い方の電波強度データを、当該位置での電波強度データとして採用する。電波強度データの記録と同時に波強度分布マップを生成する場合には、電波強度データが書き換えられた段階で、電波強度分布マップの電波強度分布形態(色塗り)が更新される。
(3)上述した実施形態では、リモコン装置9Aは、単方向の無線通信を行う、単なる信号発信器として構成されていたが、双方向通信可能なリモコン装置9Aとして構成されてもよい。
(4)図4や図5で示された機能ブロック図における各機能部は、主に説明目的で区分けされている。実際には、各機能部は他の機能部と統合してもよいし、またはさらに複数の機能部に分けてもよい。
(5)上述した実施形態では、自動走行可能な作業車両に本願発明を適用していたが、自動走行が不可能な作業車両に本願発明を適用することも可能である。
(6)上述した実施形態では、作業車両として、耕耘装置30を作業装置として装備したトラクタを取り上げたが、そのようなトラクタ以外にも、例えば、田植機、施肥機、コンバインなどの農作業車、建設作業車両、などの種々の作業車両にも、本願発明を適用することができる。
本発明は、無線端末機器との間で無線通信可能な無線通信部を備えた作業車両に適用することができる。
4 :通信ユニット
40 :無線通信部
41 :電波強度検出部
5 :作業走行制御部
50 :自車位置算出部
51 :走行制御部
52 :作業制御部
6 :探索モジュール
61 :電波強度記録部
62 :電波強度分布マップ生成部
63 :探索制御部
64 :探索経路生成部
65 :端末探索部
73 :表示デバイス
80 :衛星測位モジュール
9A :リモコン装置(無線端末機器)
9B :タブレットコンピュータ(無線端末機器)
99 :タッチパネル(ディスプレイ)
CU :制御ユニット
本発明は、無線端末機器との間で無線通信可能な無線通信部を備えた作業車両に関する。
近年の作業車両は、無線通信ユニットを備え、無線通信ネットワークを介して外部の通信機器との間でデータ通信することができる。特に、自動走行する作業車両は、他の作業車両の無線通信ユニットや管理者が持参するリモコン装置などから、作業走行に関する種々の制御指令を受信し、受信した制御指令に基づいて作業走行動作を行う機能を有する。
特許文献1に開示された作業車両では、作業車両を作業走行させるために操作される手動走行操作ユニットとして、作業車両内部に装備されている内部操作デバイスと、作業車両外部からの操作に用いられるリモコンである遠隔操作デバイスとが備えられている。この作業車両はバイワイヤ方式を採用しており、手動走行操作ユニットに対する操作は、操作信号として電子制御ユニットに入力され、必要な演算処理や判定処理を経て、当該操作信号に基づく出力信号が出力される。さらに、自動走行を許可する自動走行許可信号は、この作業車両の外部から操作される遠隔操作デバイス(リモコン)によって生成され、電子制御ユニットに送られる。この作業車両の自動走行時には、作業者は車両から離れて、作業車両を監視しながら、必要に応じて緊急停止や走行再開をリモコン操作によって行うことができる。
リモコンなどの遠隔操作デバイスは、作業車両の外部から作業車両を制御することができるので便利である。しかしながら、遠隔操作デバイスは、携帯性を考慮して、コンパクトに構成されているので、ポケットからの抜け落ちや置き忘れなどによって紛失しまう可能性がある。作業車両が圃場や牧場などの作業地を作業するようなケースでは、広大な作業地や作業地周辺で遠隔操作デバイスを落としたり、置き忘れたりすると、それを見つけ出すことは困難である。このような実情から、作業車両と通信可能で、外部へ持ち出し可能な無線端末機器を誤って作業地または作業地周辺で紛失した場合にも、容易に見つけ出すことができる技術が要望されている。
作業地を作業走行する、本発明による作業車両は、作業走行制御部と、自車位置を算出する自車位置算出部と、無線端末機器との間で無線通信可能な無線通信部と、前記無線端末機器から受信する電波の電波強度を検出する電波強度検出部と、前記電波強度と前記自車位置とを用いて前記無線端末機器を探索する端末探索部とを備えている。なお、本発明における作業車両は、広義に解釈されるべきであり、トラクタなどの農作業車両、バックホウなどの建機、トラック、道路以外の荒地や砂地を走行するオフロード車などが含まれる。つまり、ここでは、道路以外を走行することができる車両の総称として作業車両という用語を使っている。
この構成では、作業者が車外に持ち出した無線端末機器が紛失された場合には、当該無線端末機器から発信される電波強度と作業車両の自車位置とをチェックすることで、最も大きな電波強度を受信した位置、つまり無線端末機器が電波を発信している位置を把握することができる。凸凹の土塊が散在していたり、あるいは草などが茂っていたりして、落し物が見つかりにくい広大な作業地であっても、電波強度と自車位置とを手掛かりとして、無線端末機器が落ちている場所を非常に狭い領域に絞り込むことができる。これにより、外部へ持ち出し可能な無線端末機器を誤って作業地または作業地周辺で紛失した場合でも、容易に見つけ出すことができる。
電波強度と自車位置とから無線端末機器の落とした位置を読み取ることは、熟練を要する作業である。しかしながら、電波強度と自車位置とを、良く知られたグラフ生成プログラムを利用し、二次元座標に展開することで、電波強度分布を示す電波強度マップを生成することができる。このような電波強度マップが表示されると、人の視覚的な判断から、電波強度の高い領域、つまり無線端末機器の存在確率の高い領域を、簡単に見つけ出すことができる。このことから、本発明の好適な実施形態では、前記電波強度と自車位置とに基づいて、前記作業地における前記無線端末機器の前記電波強度の分布を示す電波強度分布マップを生成する電波強度分布マップ生成部と、前記電波強度分布マップを表示する表示デバイスが備えられている。さらに、その際、電波強度マップを地図上に重ね合わせて表示デバイスに表示すると、紛失した無線端末機器の地図上の位置が表示画面から容易に知ることができる。
液晶等のディスプレイが作業車両に搭載されている場合、このディスプレイが電波強度分布マップを表示する表示デバイスとして利用可能となる。また、好ましくは追加的に、作業車両を降りた作業者が持参するタブレットコンピュータやスマートフォンなどの無線端末機器のディスプレイも電波強度分布マップ表示用の表示デバイスとして利用可能である。これにより、作業者は手に持った無線端末機器のディスプレイに表示される電波強度分布マップを見ながら紛失した無線端末機器を探すことができる。特に、タブレットコンピュータなどのディスプレイは画面サイズが大きいので好都合である。このため、本発明の好適な実施形態では、前記表示デバイスの1つがタブレットコンピュータに備えられているディスプレイであり、このタブレットコンピュータは前記無線通信部を介して無線通信可能で、かつ外部へ持ち出し可能である。なお、紛失した無線端末機器を探す際に用いられる無線端末機器への電波強度分布マップのデータ伝送は、無線で行われる。
作業地で紛失した無線端末機器が何らかの原因で電波が発信されていなかった場合、電波強度が記録されていないことになる。また、電波発信間隔が長すぎた場合、紛失した無線端末機器の探索に適さない電波強度しか記録されないことになる。このような場合、電波強度と自車位置とに基づく、無線端末機器の探し出しは困難となるので、作業車両が、紛失した無線端末機器の探索に適した電波強度を取得するように、探索目的の走行を行う。その際、無線端末機器の探索に適した電波の発信を要求することができるとさらに好都合である。このことから、本発明の好適な実施形態では、紛失した前記無線端末機器を探索要求に応じて探索する探索制御部が備えられ、前記探索制御部は前記無線端末機器に被探索用信号の発信を要求するように構成されている。
無線端末機器の紛失に気付いてから、作業車両に対して、紛失した無線端末機器の探索のための電波強度を検出すべく走行することを要求することも効果的である。このような探索要求により探索用走行を行う場合には、無線端末機器の探索のために効率的な走行経路を採用することが重要である。例えば、無線端末機器を落とした作業者が移動した軌跡に沿って走行するとともに、その走行中において電波が強くなる方向に向かって操舵すると効率的である。このため、本発明の好適な実施形態の1つでは、前記探索制御部からの要求に基づいて、探索用走行経路を生成する探索経路生成部が備えられている。その際、紛失した無線端末機器を持っていた作業者が移動した軌跡が、入力デバイスなどを通じて、探索経路生成部に与えられるような構成が好ましい。
本発明の、好適な実施形態の1つでは、前記作業走行制御部は前記自車位置と設定された走行経路とに基づいて自動走行を実行する自動走行制御機能を有し、かつ前記無線端末機器は、車両外に持ち出されるリモコン装置であり、前記リモコン装置は、前記自動走行の開始指令及び前記自動走行の停止指令を発信するように構成されている。自動走行する作業車両では、監視者や作業者が作業車両から離れて、作業車両の動きを監視しており、リモコン装置を用いて、走行開始や走行停止などを、作業車両の作業走行制御部に指令する。そのような場合、リモコン装置の使用頻度はそれほど高くないので、ポケット等に入れておいたリモコン装置を落としたり、どこかに置き忘れたりして、紛失してしまう可能性が少なくない。このことから、自動走行する作業車両とリモコン装置との組み合わせは、本発明の有効な適用例となる。
本発明の作業車両の一例である、自動走行可能なトラクタの側面図である。
作業地である圃場を自動走行しているトラクタと監視者が手持ちするリモコン装置とを示す模式図である。
リモコン装置の平面図である。
トラクタの制御系機能部を示す機能ブロック図である。
電波強度マップ作成におけるデータの流れを示すデータ流れ図である。
タブレットコンピュータのタッチパネルに表示された電波強度分布マップの一例を示す画面図である。
図1には、作業車両の一例としてのトラクタが示されている。このトラクタは、前輪11と後輪12とによって支持された車体1の中央部に操縦部20が設けられている。車体1の後部には油圧式の昇降機構31を介して作業装置としてのロータリ式の耕耘装置30が装備されている。前輪11は操向輪として機能し、操舵機構13によって操舵角が変更されることでトラクタの走行方向が変更される。操舵機構13には自動操舵のための操舵モータ14が含まれている。手動走行では、前輪11の操舵は操縦部20に配置されているステアリングホイール22を用いて行われる。操縦部20には、ディスプレイとしても機能するタッチパネル99を備えた汎用端末としてのタブレットコンピュータ9Bが操縦席に設置されたクレードルに装着されている。このタブレットコンピュータ9Bは、無線データ伝送機能を備えており、クレードルから取り外して、トラクタの外部に持ち出しても、トラクタの制御系との間でデータ通信可能である。タブレットコンピュータ9Bは、運転者に情報を提供する機能と、運転者からの情報を入力する機能とを有する。
トラクタのキャビン21には、GNSS(global navigation satellite system)モジュールとして構成されている衛星測位モジュール80が設けられている。GNSS信号(GPS信号も含む)を受信するための衛星用アンテナが、衛星測位モジュール80の構成要素として、キャビン21の天井領域に取り付けられている。なお、衛星航法を補完するために、衛星測位モジュール80に、ジャイロ加速度センサや磁気方位センサを組み込んだ慣性航法モジュールを組み合わせることも可能である。慣性航法モジュールは、衛星測位モジュール80とは別の場所に設けてもよい。
図2には、自動走行するトラクタによって、圃場が耕耘される様子が示されている。ここでは、トラクタは、畦に沿って規定される枕地とも呼ばれる周辺領域で行う旋回(Uターン)走行と、この周辺領域に囲まれた略四角形の中央領域で行う直進走行との繰り返しで、圃場を耕耘する。トラクタから離れた位置にリモコン装置9Aを持参した作業者が立っている。リモコン装置9Aはトラクタの通信ユニット4と無線通信可能であり、作業者はリモコン装置9Aを用いて、トラクタの制御系に対して、走行開始や走行停止などを指令することができる。
図3にリモコン装置9Aの平面図が示されている。このリモコン装置9Aは、片手操作可能なハンディタイプである。その表面には、電源ボタン90、非常停止ボタン91、自動走行開始ボタン92、一時停止ボタン93が備えられている。非常停止ボタン91を押せば、トラクタの制御系に非常停止指令が送信され、自動走行開始ボタン92を押せば自動走行開始指令が、一時停止ボタン93を押せば一時停止指令が送信される。
図4には、トラクタの制御系の機能ブロック図が示されている。この制御系の中核要素である制御ユニットCUは、入出力インタフェースとして、出力処理部7と入力処理部8とを備えている。異なるタイプの無線通信機器と無線通信を行うために、複数の通信方式で動作可能な通信ユニット4が制御ユニットCUと接続している。もちろん、通信ユニット4は、制御ユニットCU内に構築してもよい。図4では、通信ユニット4を介して、制御ユニットCUとの間で無線通信可能な無線端末機器として、リモコン装置9Aとタブレットコンピュータ9Bとが図示されている。なお、タブレットコンピュータ9Bは、直接車載LANと接続して、制御ユニットCUとの間でデータ交換することもできる。
通信ユニット4は、リモコン装置9Aやタブレットコンピュータ9Bなどの無線端末機器との間で無線通信可能な無線通信部40と、無線端末機器から受信する電波の電波強度を検出する電波強度検出部41とを備えている。
出力処理部7は、車両走行機器群71と作業装置機器群72とからなる作業走行機器群70、及び液晶ディスプレイなどの表示デバイス73と接続している。車両走行機器群71には、車両走行に関する制御機器、例えばエンジン制御機器、変速制御機器、制動制御機器、操舵制御機器などが含まれている。作業装置機器群72には、この実施形態では、耕耘装置30への動力伝達を入り切りするPTOクラッチなどの動力制御機器や、耕耘装置30を昇降させる昇降機構31の昇降シリンダ制御機器などが含まれている。
入力処理部8には、衛星測位モジュール80、自動/手動切替操作具81、走行系検出センサ群82、作業系検出センサ群83などが接続されている。自動/手動切替操作具81は、自動操舵で走行する自動走行モードと、手動操舵で走行する手動操舵モードとのいずれかを選択するスイッチである。例えば、自動操舵モードで走行中に自動/手動切替操作具81を操作することで、手動操舵での走行に切り替えられ、手動操舵での走行中に自動/手動切替操作具81を操作することで、自動操舵での走行に切り替えられる。走行系検出センサ群82には、エンジン回転数調整具、アクセルペダル、ブレーキペダル、ステアリングホイール22などの操作具の状態を検出するセンサが含まれている。作業系検出センサ群83には、耕耘装置30の駆動状態や姿勢を検出するセンサが含まれている。
制御ユニットCUには、本発明に特に関係する機能部として、作業走行制御部5、探索モジュール6、自車位置算出部50が構築されている。
自車位置算出部50は、衛星測位モジュール80から逐次送られてくる測位データに基づいて、車体1の座標位置(地図座標または圃場座標)である自車位置を算出する。
作業走行制御部5には、走行制御部51、作業制御部52、エンジン制御部53、自動作業走行指令部54、走行経路生成部55が含まれている。走行制御部51は、操舵モータ14などの車両走行機器群71を制御する。このトラクタは自動走行(自動操舵)と手動走行(手動操舵)の両方で走行可能に構成されている。このため、走行制御部51は、手動走行制御機能と自動走行制御機能とを有する。手動走行制御機能が実行されている場合、運転者による操作に基づいて車両走行機器群71が制御される。自動走行制御機能が実行されている場合、自動作業走行指令部54から与えられる自動操舵指令に基づいて車両走行機器群71が制御される。作業制御部52は、耕耘装置30の動きを制御するために、作業装置機器群72に作業制御信号を与える。エンジン制御部53は、エンジンの動作機器にエンジン制御信号を与える。
走行経路生成部55は、入力された圃場情報から、圃場の外形データを読み出し、この圃場における適正な走行経路を生成する。この走行経路は、運転者によって入力される基本的な初期パラメータに基づいて生成される。また、この走行経路生成部55は、別なコンピュータで生成された走行経路をダウンロードして、利用することも可能である。いずれにしても、走行経路生成部55が得た走行経路は、メモリに展開され、自動走行における目標走行経路に利用される。もちろん、この走行経路は、手動走行であっても、トラクタが当該走行経路に沿って走行するためのガイダンスのために利用できる。
自動作業走行指令部54は、走行経路生成部55によって目標走行経路として設定された走行経路と、自車位置との間の方位ずれ及び位置ずれを算出し、その方位ずれ及び位置ずれを解消する自動操舵指令を生成して、走行制御部51に与える。
作業中にトラクタの外部で使用されていたリモコン装置9Aなどの無線端末機器が落とされたり、置き忘れられたりして紛失した際に、探索モジュール6は、紛失した無線端末機器を探索する機能を有する。以下の説明では、紛失した無線端末機器はリモコン装置9Aであるとしておく。この実施形態では、探索モジュール6は、電波強度記録部61と、電波強度分布マップ生成部62とを備えている。さらに、探索モジュール6は、オプションとして、探索制御部63と、探索経路生成部64と、端末探索部65とを備えることができる。
図4及び図5を用いて、探索モジュール6の機能を説明する。電波強度記録部61は、所定のインターバルで、電波強度検出部41によって検出されたリモコン装置9Aの電波強度を自車位置算出部50から出力される自車位置と関係付けて、電波強度データとして、メモリに記録する。各電波強度データには、タイムスタンプも付与される。メモリに記録された一連の電波強度データを読み出して、継時的に並べられたリスト表示や、自車位置で並べられたリスト表示などで表示デバイス73に表示することも可能である。
電波強度分布マップ生成部62は、メモリから読み出された一連の電波強度データに基づいて、圃場(作業地)におけるリモコン装置9Aの電波強度の分布を示す電波強度分布マップを生成する。電波強度分布マップの一例が図6に示されている。この電波強度分布マップは、圃場の各座標位置における電波強度が累積演算され、その演算結果に基づいて、算出された圃場における電波強度の分布が等高線状に示されたものである。その際、電波強度が複数の段階に区分けされ、各段階の電波強度に応じて色分けされている。図6では、電波強度が強いほど、濃く塗り分けられているが、実際には色分け表示が効果的である。表示デバイス73に表示された電波強度分布マップを見ることで、リモコン装置9Aの現在位置(紛失位置)のおおよその見当が得られる。
この電波強度分布マップが、タブレットコンピュータ9Bのタッチパネル99にも表示されるように構成すると、作業者は、タブレットコンピュータ9Bをトラクタの外部に持ち出すことができる。持ち出したタブレットコンピュータ9Bのタッチパネル99に表示される電波強度分布マップを見ながら、電波強度分布マップが示す電波強度の強い場所に向かって歩いていくことができる。このため、探索モジュール6は、タブレットコンピュータ9Bに電波強度分布マップを転送する機能も有する。
しかしながら、単なる電波強度の累積演算結果だけで生成され、表示デバイス73に表示された電波強度分布マップを見ただけでは、紛失したリモコン装置9Aのおおまかな位置しかわからない。トラクタは、圃場の全体を隙間なくカバーするように往復作業走行しているので、紛失したリモコン装置9Aからの電波を種々の位置から検出しており、その結果としての大量の電波強度データがメモリに蓄積されている。したがって、レーダー探索等のアルゴリズムを用いると、そのような大量の電波強度データから、かなり正確なリモコン装置9Aの現在位置を算出することができる。端末探索部65はそのようなアルゴリズムを有する機能部である。
リモコン装置9Aの紛失に気付いた時に、当該リモコン装置9Aの電波強度分布マップがまったく生成されていなかった場合、あるいは適切な電波強度分布マップが生成されていなかった場合には、新たに、トラクタを走行させながら、電波強度分布マップを生成することも可能である。この場合は、トラクタは、紛失の可能性ある場所、つまりリモコン装置9Aを操作していた作業者が移動していた場所、を重点的に走行することが重要である。また、電波強度の高い場所が見つかれば、その場所の周辺を集中的に走行することで、リモコン装置9Aの位置をより正確に示す電波強度データが得られ、精度の高い電波強度分布マップが生成可能となる。このような目的で、探索制御部63からの要求に基づいて、探索用走行経路を生成する探索経路生成部64が備えられている。
リモコン装置9Aの発信電波が弱い場合や、その発信インターバルが長すぎる場合には、リモコン装置9Aの電波強度データが全く生成されないか、あるいは、適正な電波強度データが生成されないということが生じる。このため、探索制御部63は、作業者によって与えられた探索要求に基づき、リモコン装置9Aに対して、ブロードキャスト信号などの被探索用信号の発信を要求する機能を有する。探索制御部63は、リモコン装置9Aの送信電波強度が外部から調整できる場合には、リモコン装置9Aに、より強い被探索用信号の発信を要求する。その後、トラクタを走行させることで、良好な電波強度データが記録され、結果的に正確な電波強度分布マップが生成される。
また、リモコン装置9Aのバッテリ容量が減少すると、当該リモコン装置9Aからの受信強度の低下や受信不能が生じる。このような受信強度の低下や受信不能は、受信強度の継時的な変化から判定することができる。そのような信強度の低下や受信不能が生じた際の受信強度データは、無効にされる。
上述した例では、紛失の可能性のある通信端末機器が、1台のリモコン装置9Aであると仮定しており、電波強度データも一種類だけ作成されている。しかしながら、紛失の可能性のある通信端末機器が、複数台あれば、通信端末機器毎に電波強度データが作成される。その際には、通信端末機器のIDコード、例えばMACアドレスが、自車位置及び電波強度とともに関係づけられた電波強度データが作成され、メモリに記録される。これにより、通信端末機器毎の電波強度分布マップが生成可能となる。
なお、上記実施形態(別実施形態を含む、以下同じ)で開示される構成は、矛盾が生じない限り、他の実施形態で開示される構成と組み合わせて適用することが可能であり、また、本明細書において開示された実施形態は例示であって、本発明の実施形態はこれに限定されず、本発明の目的を逸脱しない範囲内で適宜改変することが可能である。
〔別実施の形態〕
(1)上述した実施形態では、電波強度データを記録するモードが2つある。その1つは、トラクタの走行開始から、あるいはリモコン装置9Aの使用開始から、電波強度データが記録される第1記録モードである。他の1つは、リモコン装置9Aの紛失に気づいてから、トラクタを走行させることで、電波強度データが記録される第2記録モードである。別実施形態として、この第1記録モードだけ、あるいは第2記録モードだけを採用することも可能である。
(2)リモコン装置9Aの紛失後に、探索目的でのトラクタの走行において、トラクタが同じ位置を走行した場合、電波強度の強い方の電波強度データを、当該位置での電波強度データとして採用する。電波強度データの記録と同時に波強度分布マップを生成する場合には、電波強度データが書き換えられた段階で、電波強度分布マップの電波強度分布形態(色塗り)が更新される。
(3)上述した実施形態では、リモコン装置9Aは、単方向の無線通信を行う、単なる信号発信器として構成されていたが、双方向通信可能なリモコン装置9Aとして構成されてもよい。
(4)図4や図5で示された機能ブロック図における各機能部は、主に説明目的で区分けされている。実際には、各機能部は他の機能部と統合してもよいし、またはさらに複数の機能部に分けてもよい。
(5)上述した実施形態では、自動走行可能な作業車両に本願発明を適用していたが、自動走行が不可能な作業車両に本願発明を適用することも可能である。
(6)上述した実施形態では、作業車両として、耕耘装置30を作業装置として装備したトラクタを取り上げたが、そのようなトラクタ以外にも、例えば、田植機、施肥機、コンバインなどの農作業車、建設作業車両、などの種々の作業車両にも、本願発明を適用することができる。
本発明は、無線端末機器との間で無線通信可能な無線通信部を備えた作業車両に適用することができる。
4 :通信ユニット
40 :無線通信部
41 :電波強度検出部
5 :作業走行制御部
50 :自車位置算出部
51 :走行制御部
52 :作業制御部
6 :探索モジュール
61 :電波強度記録部
62 :電波強度分布マップ生成部
63 :探索制御部
64 :探索経路生成部
65 :端末探索部
73 :表示デバイス
80 :衛星測位モジュール
9A :リモコン装置(無線端末機器)
9B :タブレットコンピュータ(無線端末機器)
99 :タッチパネル(ディスプレイ)
CU :制御ユニット