JP2020068871A - クラウンコア一体型歯科用ミルブランク - Google Patents

クラウンコア一体型歯科用ミルブランク Download PDF

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Abstract

【課題】より天然歯象牙質と同等の曲げ弾性率を持つことにより、歯根破折のリスクを低減させ、クラウンと支台歯が一体化していることにより、咬合による応力緩和がスムーズに行われ、クラウンの脱離がなく、審美性に優れ、切削加工時にチッピング等の欠けを生じないクラウンコア一体型歯科用補綴物を得ることができるクラウンコア一体型歯科用ミルブランクを提供する。【解決手段】曲げ弾性率が15〜20GPaであり、ビッカース硬度が100〜170HVであり、かつ滑沢耐久性試験後の光沢度が60%以上である、クラウンコア一体型用歯科用ミルブランク。【選択図】なし

Description

本発明は、クラウンコア一体型歯科用ミルブランクに関する。さらに詳しくは、例えば、歯科用CAD/CAMシステムでの切削加工によりクラウンとコアが一体化した状態で得られ、クラウンとコアに接合面を持たないクラウンコア一体型歯科用ミルブランクに関する。
根管治療の支台歯として、金属製のメタルコアや金属製又はガラスファイバー製のポストを用い、光/化学重合タイプのレジンにより作製するレジンコアがある。金属製のメタルコアや金属製のポストを用いたレジンコアは、弾性率が人歯象牙質よりも高く、咬合の応力を分散させても内部応力をコントロールすることができず、応力集中による歯根破折が起こる可能性がある。また、ガラスファイバー製のポストを用いたレジンコアは、レジン材料との物性の違いから、材料間の剥離が生じ、それにより、コアの破損やそれに伴うクラウンの脱離が引き起こされる可能性がある。
また、コアの作製方法として、「間接法」と「直接法」が従来用いられている。金属製のメタルコアに関しては、間接法により作製し、口腔内で印象を採得し、その後石膏模型を起こし、ワックスアップ、金属の鋳造を経ることにより作製される。この方法は、各ステップにおいて、誤差が生じ、精度が悪くなることで、根管への適合性が悪くなる。一方で、直接法については、用いられる光/化学重合タイプのレジンは、歯質との接着が確実に行われない場合や、特に残存歯質が極端に少なく、ポスト部に維持を求める必要がある症例では、重合収縮により充填されたコンポジットレジンの辺縁の封鎖性に劣るためポストの脱落が生じやすい。また、歯根の開口部が狭くコンポジットレジンを根管の深部にまで填入する症例では根管の深部まで照射光が及ばないためコンポジットレジンの重合硬化が十分に行われず、コンポジットレジンと歯質との接着が不十分となる恐れがある。
また、支台歯と接合するクラウンは、歯科用セメント材料によって合着する。しかしながら、その接着方法が不適切な場合や、弾性率が大きく異なる材料の組み合わせを使用する場合において、咬合による応力が局所的にかかることで、クラウンの脱離や歯根破折を引き起こす。
近年、インレー、クラウン等の歯科用補綴物を、コンピューターによって設計し、ミリング装置により切削加工して作製するCAD/CAMシステムを適用させる例が増加している。このようなシステムでは、適当な大きさを有する直方体、円柱、ディスク等の形状のブロック体が供給され、これを切削加工機にセットして削り出すことで歯冠形状や歯列形状の修復物だけではなく、コアについても得ることができ、その精度についても高まっている。ブロックの素材としては、ガラスセラミックス、ジルコニア、チタン、アクリル樹脂、ポリマー樹脂と無機充填材を含む複合材料等、種々の材料が提案されている。
例えば、特許文献1には、使用用途の例示として、歯科用CAD/CAMシステムにおいて歯科用ミルブランクを切削加工することで支台歯を作製するとの記載がある。
特許第6170922号公報
しかしながら、特許文献1に記載されているコアは、根管治療後の歯牙に対し装着され、クラウンを合着した際、不適切な接着方法や弾性率が大きく異なる材料の組み合わせを使用した場合、クラウンの脱離、歯根破折のリスクがある。
本発明は、より天然の人歯象牙質と同等の曲げ弾性率を持つことにより、歯根破折のリスクを低減させることができ、クラウンの脱離がなく、審美性に優れ、切削加工時にチッピング等の欠けを生じないクラウンコア一体型歯科用補綴物を得ることができるクラウンコア一体型歯科用ミルブランク及びその製造方法を提供することを目的とする。
本発明は、以下の発明を提供する。
[1]曲げ弾性率が15〜20GPaであり、ビッカース硬度が100〜170HVであり、かつ滑沢耐久性試験後の光沢度が60%以上である、クラウンコア一体型歯科用ミルブランク;
[2]平均粒子径が0.3μm以上4μm以下である無機充填材(A)、平均粒子径が0.3μm未満である無機微粒子(B)、及び重合性単量体(C)に由来する構造を有する重合体を含む硬化物である、[1]に記載のクラウンコア一体型歯科用ミルブランク;
[3]無機充填材(A)、無機微粒子(B)、及び重合性単量体(C)に由来する構造を有する重合体の合計100質量部において、無機充填材(A)及び無機微粒子(B)の合計が70質量部以上である、[2]に記載のクラウンコア一体型歯科用ミルブランク;
[4]無機充填材(A)に対する無機微粒子(B)の質量比(B)/(A)が、0.14〜0.35である、[2]又は[3]に記載のクラウンコア一体型歯科用ミルブランク;
[5]無機充填材(A)の平均粒子径が、0.3μm以上0.8μm未満である、[1]〜[4]のいずれかに記載のクラウンコア一体型歯科用ミルブランク;
[6]無機微粒子(B)の平均粒子径が、0.1μm未満である、[1]〜[5]のいずれかに記載のクラウンコア一体型歯科用ミルブランク;
[7]平均粒子径が0.3μm以上4μm以下である無機充填材(A)及び平均粒子径が0.3μm未満である無機微粒子(B)の混合物をプレス成形してなる無機充填材成形体と重合性単量体(C)含有組成物を接触させて、重合性単量体(C)を重合硬化させる、[1]に記載のクラウンコア一体型歯科用ミルブランクの製造方法。
本発明のクラウンコア一体型歯科用ミルブランクによって得られるクラウンコア一体型歯科用補綴物では、クラウンとコアを一体化することにより咬合による応力緩和がスムーズに行われ、クラウンの脱離がなく、クラウンとコアが人歯象牙質に近い曲げ弾性率を有することにより咬合力による応力集中が減り、残存歯質との脱離が少なく、歯根破折を抑制することができる。また、本発明のクラウンコア一体型歯科用ミルブランクは、切削加工後の審美性に優れ、切削加工時にチッピング等の欠けの発生を抑制することができる。さらには、CAD/CAMで切削加工することができるため、複雑なステップを簡略化することができ、高い精度を実現することが可能である、クラウンコア一体型歯科用ミルブランク及びその製造方法を提供することができる。
以下、本発明について詳細に説明する。
本発明のクラウンコア一体型歯科用ミルブランクは、曲げ弾性率が15〜20GPaであり、ビッカース硬度が100〜170HVであり、かつ滑沢耐久性試験後の光沢度が60%以上であることを特徴とする。
本発明のクラウンコア一体型歯科用ミルブランクの曲げ弾性率は、15〜20GPaであり、16〜19GPaであることが好ましい。曲げ弾性率が15GPa未満となると、切削加工時(特にCAD/CAMシステムでの切削加工時)、CAD/CAM装置に装着する切削用のミリングバーが接触した際のブレが大きくなり、加工精度が低下する。曲げ弾性率が20GPaを超えると、人歯との曲げ弾性率と離れ、口腔内において応力集中が起こり、歯根破折の原因となる可能性が高まる。なお、人歯象牙質の曲げ弾性率は、約12〜19GPaの範囲である。
本発明のクラウンコア一体型歯科用ミルブランクのビッカース硬度は、100〜170HVであり、好ましくは120〜160HVである。ビッカース硬度が100HV未満の場合、切削加工した際にミルブランクが振動し、加工精度の低下及びチッピングの原因となる。一方、ビッカース硬度が170HVを超えると、ミルブランクが硬すぎることから、チッピングのリスクが高くなる。
本発明のクラウンコア一体型歯科用ミルブランクは滑沢耐久性に優れ、特定の滑沢耐久性試験後の光沢度が60%以上であり、好ましくは70%以上であり、より好ましくは75%以上である。該光沢度が60%未満の場合、口腔内に装着した補綴物表面が日常生活のブラッシング等における口腔内の摩耗により、光沢を消失し、審美的が低下する。なお、該滑沢耐久性試験は後述の実施例において詳細を説明する。
本発明のクラウンコア一体型歯科用ミルブランクは、平均粒子径が0.3〜4μmである無機充填材(A)、平均粒子径が0.3μm未満である無機微粒子(B)、及び重合性単量体(C)に由来する構造を有する重合体を含む硬化物であることが好ましい。以下、詳細を説明する。
本発明に用いる無機充填材(A)は、平均粒子径が0.3μm以上4μm以下であることが好ましく、0.4μm以上3μm以下であることがより好ましく、0.5μm以上2μm以下であることがさらに好ましい。無機充填材(A)の平均粒子径が0.3μm未満である場合、組成物中の無機充填量があがらず、曲げ弾性率を低下させるおそれがある。一方、平均粒子径が4μmを超える場合、滑沢耐久性を大きく低下させ、審美性が問題となる。ある好適な実施形態では、無機充填材(A)の平均粒子径は、0.3μm以上0.8μm未満であってもよく、0.4μm以上0.7μm以下であってもよい。他の好適な実施形態では、無機充填材(A)の平均粒子径は0.8μm以上3μm以下であってもよい。
さらに、本発明に用いる無機微粒子(B)は、平均粒子径が0.3μm未満であることが好ましく、0.2μm以下であることがより好ましく、0.1μm未満であってもよい。また、無機微粒子(B)の平均粒子径は0.001μm以上であってもよい。無機微粒子(B)の平均粒子径が0.3μm以上であると、無機充填材(A)との組み合わせにより無機充填量があがらず、曲げ弾性率が低下するおそれがある。ある好適な実施形態では、無機微粒子(B)の平均粒子径は、0.1μm未満であってもよく、0.001μm以上0.09μm以下であってもよい。
また、本発明で用いる無機充填材(A)に対する無機微粒子(B)の質量比(B)/(A)は、0.14〜0.35であることが好ましく、0.14〜0.34であることがより好ましい。該質量比が0.14未満であると無機充填材(A)が多くなり、無機充填量があがらず、曲げ弾性率が低下し、さらには滑沢耐久性が低下するおそれがある。該質量比が0.35を超えると、無機微粒子(B)の量が増加し、曲げ弾性率が低下し、ビッカース硬度も低下するおそれがある。
また、本発明で用いる無機充填材(A)及び無機微粒子(B)は、本発明の効果を奏する限り、歯科用ミルブランクの充填材として用いられている公知の無機充填材がなんら制限なく用いられる。具体的には、例えば、各種ガラス類(二酸化ケイ素(石英、石英ガラス、シリカゲル等)、ケイ素を主成分とし、各種重金属と共にホウ素及び/又はアルミニウムを含有するガラス)、アルミナ、各種セラミック類、珪藻土、カオリン、粘土鉱物(モンモリロナイト等)、活性白土、合成ゼオライト、マイカ、シリカ、フッ化カルシウム、フッ化イッテリビウム、リン酸カルシウム、硫酸バリウム、二酸化ジルコニウム(ジルコニア)、二酸化チタン(チタニア)、ヒドロキシアパタイト等の従来公知の物が使用できる。また、無機充填材(A)及び無機微粒子(B)として、これら公知の無機充填材に重合性単量体を予め添加してペースト状にした後、重合硬化させ、粉砕して得られる有機無機複合粒子(有機無機複合フィラー)を用いても差し支えない。無機充填材(A)及び無機微粒子(B)はそれぞれ1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
歯科用補綴物に望まれる重要な物性として、天然歯と同様の透明性とX線造影性とが挙げられる。このうち透明性は、無機充填材(A)及び無機微粒子(B)と、重合性単量体(C)に由来する構造を有する重合体の屈折率をできるだけ一致させることにより達成することができる。一方、X線造影性は、無機充填材(A)及び無機微粒子(B)として、ジルコニウム、バリウム、チタン、ランタン、ストロンチウム等の重金属元素を含む無機充填材(酸化物など)を用いることにより付与することができる。このような重金属元素を含む無機充填材(A)及び無機微粒子(B)の屈折率は通常高く、1.5〜1.6の範囲内にある。本発明において、例えば、重合性単量体(C)として(メタ)アクリル酸エステルを用いる場合、(メタ)アクリル酸エステルの屈折率は通常、1.5〜1.6の範囲内にあることから、このようなX線造影性を有する屈折率の高い無機充填材(A)及び無機微粒子(B)と組み合わせても屈折率差を小さく調節することができ、得られるクラウンコア一体型歯科用ミルブランクの透明性も向上させることができる。
上記したX線造影性を付与することのできる屈折率の高い無機充填材(A)及び無機微粒子(B)としては、例えば、バリウムボロシリケートガラス(例えば、Esstech社製の「E−3000」やショット社製の「8235」、「GM27884」、「GM39923」等)、ストロンチウムボロアルミノシリケートガラス(例えば、Esstech社製の「E−4000」やショット社製の「G018−093」、「GM32087」等)、ランタンガラス(例えば、ショット社製の「GM31684」等)、フルオロアルミノシリケートガラス(例えば、ショット社製の「G018−091」、「G018−117」等)、ジルコニアを含有するガラス(例えば、ショット社製の「G018−310」、「G018−159」等)、ストロンチウムを含有するガラス(例えば、ショット社製の「G018−163」、「G018−093」、「GM32087」等)、酸化亜鉛を含有するガラス(例えば、ショット社製の「G018−161」等)、カルシウムを含有するガラス(例えば、ショット社製の「G018−309」等)などが挙げられる。
無機充填材(A)及び無機微粒子(B)の形状に特に制限はなく、例えば、破砕状、板状、鱗片状、繊維状(短繊維、長繊維等)、針状、ウィスカー、球状など、各種形状のものを用いることができる。無機充填材は、本発明の要件を満たす限り上記の形状の一次粒子が凝集した形態のものであってもよく、異なる形状のものが組み合わさったものであってもよい。なお、無機充填材は、上記形状を有するように何らかの処理(例えば、粉砕処理など)を行ったものであってもよい。
なお、本明細書において、無機充填材(A)及び無機微粒子(B)の平均粒子径は平均1次粒子径を指し、レーザー回折散乱法又は粒子の電子顕微鏡観察により求めることができる。具体的には、0.10μm以上の粒子の粒子径測定にはレーザー回折散乱法が、0.10μm未満の超微粒子の粒子径測定には電子顕微鏡観察が簡便である。なお、前記0.10μmはレーザー回折散乱法によって測定した値である。
レーザー回折散乱法は、具体的に例えば、レーザー回折式粒度分布測定装置(SALD−2100:株式会社島津製作所製)により、0.2%ヘキサメタリン酸ナトリウム水溶液を分散媒に用いて測定することができる。
電子顕微鏡観察は、具体的に例えば、粒子の透過電子顕微鏡(株式会社日立製作所製、H−800NA型)写真を撮り、その写真の単位視野内に観察される粒子(200個以上)の粒子径を、画像解析式粒度分布測定ソフトウェア(Macview(株式会社マウンテック))を用いて測定することにより求めることができる。このとき、粒子の粒子径は、その粒子と同一の面積をもつ円の直径である円相当径として求められ、粒子の数とその粒子径より、平均1次粒子径が算出される。
本発明では、異なった材質、粒度分布、形態を持つ2種以上の無機充填材(A)及び無機微粒子(B)を、混合又は組み合わせて用いることもあり、また、本発明の効果を損なわない範囲内で、意図せずに、公知の無機充填材以外の粒子が不純物として含まれていてもよい。
無機充填材(A)及び無機微粒子(B)は、予め表面処理が施されたものであることが好ましい。表面処理が施された無機充填材(A)又は無機微粒子(B)を用いることで、得られる歯科用ミルブランクの機械的強度をより向上させることができる。また、後述する無機充填材(A)及び無機微粒子(B)の混合物をプレス成形してなる無機充填材成形体と、後述の重合性単量体(C)含有組成物とを接触させて、無機充填材(A)及び無機微粒子(B)の隙間に重合性単量体(C)含有組成物を浸入させる際などにおいて、無機充填材(A)及び無機微粒子(B)の各表面と重合性単量体(C)含有組成物とのなじみが良くなり、重合性単量体(C)含有組成物が浸入しやすくなるという利点もある。
なお、無機充填材(A)及び無機微粒子(B)のうちのいずれかのみが表面処理を施されたものであってもよく、無機充填材(A)及び無機微粒子(B)の両方が表面処理を施されたものであってもよい。後者の場合、表面処理された各無機充填材を別々に調製してもよいし、無機充填材(A)と無機微粒子(B)との混合物に表面処理を施すことにより調製してもよい。
表面処理に使用される表面処理剤としては、公知の表面処理剤を用いることができ、例えば、有機ケイ素化合物、有機チタン化合物、有機ジルコニウム化合物、有機アルミニウム化合物等の有機金属化合物や、リン酸基、ピロリン酸基、チオリン酸基、ホスホン酸基、スルホン酸基、カルボン酸基等の酸性基を少なくとも1個有する有機化合物(酸性基を有する有機化合物)などを用いることができる。表面処理剤は1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。表面処理剤を2種以上併用する場合は、それによる表面処理層は、2種以上の表面処理剤の混合物の表面処理層であってもよいし、表面処理層が複数積層した複層構造の表面処理層であってもよい。表面処理方法としては、特に制限なく公知の方法を用いることができる。
有機ケイ素化合物としては、例えば、R1 nSiX4-nで表される化合物などが挙げられる(式中、R1は炭素数1〜12の置換又は非置換の炭化水素基であり、Xは炭素数1〜4のアルコキシ基、アセトキシ基、ヒドロキシル基、ハロゲン原子又は水素原子を示し、nは0〜3の整数であり、但し、R1及びXが複数存在する場合は、それぞれ、同一であっても異なっていてもよい)。
有機ケイ素化合物の具体例としては、例えば、メチルトリメトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、ジフェニルジエトキシシラン、イソブチルトリメトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリス(β−メトキシエトキシ)シラン、3,3,3−トリフルオロプロピルトリメトキシシラン、メチル−3,3,3−トリフルオロプロピルジメトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、γ−メタクリロイルオキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ−メタクリロイルオキシプロピルメチルジエトキシシラン、N−(β−アミノエチル)γ−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−(β−アミノエチル)γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−(β−アミノエチル)γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−フェニル−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、トリメチルシラノール、メチルトリクロロシラン、メチルジクロロシラン、ジメチルジクロロシラン、トリメチルクロロシラン、フェニルトリクロロシラン、ジフェニルジクロロシラン、ビニルトリクロロシラン、トリメチルブロモシラン、ジエチルシラン、ビニルトリアセトキシシラン、ω−(メタ)アクリロイルオキシアルキルトリメトキシシラン〔(メタ)アクリロイルオキシ基とケイ素原子との間の炭素数:3〜12、例、3−メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン等〕、ω−(メタ)アクリロイルオキシアルキルトリエトキシシラン〔(メタ)アクリロイルオキシ基とケイ素原子との間の炭素数:3〜12、例、3−メタクリロイルオキシプロピルトリエトキシシラン等〕などが挙げられる。なお、本発明において「(メタ)アクリロイル」との表記は、メタクリロイルとアクリロイルの両者を包含する意味で用いられる。
これらの中でも、無機充填材(A)及び無機微粒子(B)と重合性単量体(C)との化学結合性を高めて得られる歯科用ミルブランクの機械的強度をより向上させることができることなどから、重合性単量体(C)と共重合し得る官能基を有する有機ケイ素化合物が好ましく、ω−(メタ)アクリロイルオキシアルキルトリメトキシシラン〔(メタ)アクリロイルオキシ基とケイ素原子との間の炭素数:3〜12〕、ω−(メタ)アクリロイルオキシアルキルトリエトキシシラン〔(メタ)アクリロイルオキシ基とケイ素原子との間の炭素数:3〜12〕、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシランがより好ましい。
有機チタン化合物としては、例えば、テトラメチルチタネート、テトライソプロピルチタネート、テトラn−ブチルチタネート、ブチルチタネートダイマー、テトラ(2−エチルヘキシル)チタネートなどが挙げられる。
有機ジルコニウム化合物としては、例えば、ジルコニウムイソプロポキシド、ジルコニウムn−ブトキシド、ジルコニウムアセチルアセトネート、ジルコニウムアセテートなどが挙げられる。
有機アルミニウム化合物としては、例えば、アルミニウムアセチルアセトネート、アルミニウム有機酸塩キレート化合物などが挙げられる。
リン酸基を有する有機化合物としては、例えば、2−エチルヘキシルアシッドホスフェート、ステアリルアシッドホスフェート、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルジハイドロジェンホスフェート、3−(メタ)アクリロイルオキシプロピルジハイドロジェンホスフェート、4−(メタ)アクリロイルオキシブチルジハイドロジェンホスフェート、5−(メタ)アクリロイルオキシペンチルジハイドロジェンホスフェート、6−(メタ)アクリロイルオキシヘキシルジハイドロジェンホスフェート、7−(メタ)アクリロイルオキシヘプチルジハイドロジェンホスフェート、8−(メタ)アクリロイルオキシオクチルジハイドロジェンホスフェート、9−(メタ)アクリロイルオキシノニルジハイドロジェンホスフェート、10−(メタ)アクリロイルオキシデシルジハイドロジェンホスフェート、11−(メタ)アクリロイルオキシウンデシルジハイドロジェンホスフェート、12−(メタ)アクリロイルオキシドデシルジハイドロジェンホスフェート、16−(メタ)アクリロイルオキシヘキサデシルジハイドロジェンホスフェート、20−(メタ)アクリロイルオキシイコシルジハイドロジェンホスフェート、ビス〔2−(メタ)アクリロイルオキシエチル〕ハイドロジェンホスフェート、ビス〔4−(メタ)アクリロイルオキシブチル〕ハイドロジェンホスフェート、ビス〔6−(メタ)アクリロイルオキシヘキシル〕ハイドロジェンホスフェート、ビス〔8−(メタ)アクリロイルオキシオクチル〕ハイドロジェンホスフェート、ビス〔9−(メタ)アクリロイルオキシノニル〕ハイドロジェンホスフェート、ビス〔10−(メタ)アクリロイルオキシデシル〕ハイドロジェンホスフェート、1,3−ジ(メタ)アクリロイルオキシプロピルジハイドロジェンホスフェート、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルフェニルハイドロジェンホスフェート、2−(メタ)アクリロイルオキシエチル−2−ブロモエチルハイドロジェンホスフェート、ビス〔2−(メタ)アクリロイルオキシ−(1−ヒドロキシメチル)エチル〕ハイドロジェンホスフェート、及びこれらの酸塩化物、アルカリ金属塩、アンモニウム塩などが挙げられる。
また、ピロリン酸基、チオリン酸基、ホスホン酸基、スルホン酸基、カルボン酸基等の、上記以外の酸性基を有する有機化合物としては、例えば、国際公開第2012/042911号などに記載のものを用いることができる。
表面処理剤の使用量は特に限定されず、例えば、表面処理前の無機充填材(A)及び無機微粒子(B)の合計100質量部に対して、0.1〜50質量部であることが好ましい。
本発明のクラウンコア一体型歯科用ミルブランクにおける無機充填材(A)及び無機微粒子(B)の含有量の合計は、無機充填材(A)、無機微粒子(B)、及び重合性単量体(C)に由来する構造を有する重合体の合計100質量部において、70質量部以上であることが好ましく、75質量部以上であることがより好ましく、80質量部以上であることがさらに好ましく、また、95質量部以下であることが好ましく、93質量部以下であることがより好ましく、90質量部以下であることがさらに好ましい。これにより、機械的強度及び滑沢耐久性により優れた歯科用ミルブランクとなる。上記無機充填材(A)及び無機微粒子(B)の含有量の合計は、クラウンコア一体型歯科用ミルブランクを灰化することにより求めることができる。無機充填材(A)及び無機微粒子(B)及び重合性単量体(C)に由来する構造を有する重合体を含むクラウンコア一体型歯科用ミルブランクを灰化すると、通常は、重合体等の有機成分が焼却される。従って、灰化後の灰化物の質量を灰化前の質量で除すことによりクラウンコア一体型歯科用ミルブランクにおける無機充填材(A)及び無機微粒子(B)の含有量の合計を求めることができる。当該灰化は、例えば、クラウンコア一体型歯科用ミルブランクを坩堝に入れて電気炉等を用いて575℃で所定時間(例えば2時間)加熱することにより行うことができる。
本発明のクラウンコア一体型歯科用ミルブランクを構成する重合性単量体(C)に由来する構造を有する重合体に、本発明の効果を奏する限り特に制限はなく、重合性単量体(C)が重合してなるものを用いることができ、重合性単量体(C)を含む重合性単量体(C)含有組成物中の重合性単量体(C)が重合硬化したものであることが好ましい。
重合性単量体(C)としては、歯科用ミルブランク等に使用される公知の重合性単量体を用いることができ、一般には、ラジカル重合性単量体が好適に用いられる。ラジカル重合性単量体の具体例としては、例えば、α−シアノアクリル酸、(メタ)アクリル酸、α−ハロゲン化アクリル酸、クロトン酸、桂皮酸、ソルビン酸、マレイン酸、イタコン酸等のカルボン酸のエステル;(メタ)アクリルアミド;(メタ)アクリルアミド誘導体;ビニルエステル類;ビニルエーテル類;モノ−N−ビニル誘導体;スチレン誘導体などが挙げられる。これらの中でも、カルボン酸のエステル、(メタ)アクリルアミド誘導体が好ましく、(メタ)アクリル酸エステル、(メタ)アクリルアミド誘導体がより好ましく、(メタ)アクリル酸エステルがさらに好ましい。なお、本明細書において「(メタ)アクリル」との表記は、メタクリルとアクリルの両者を包含する意味で用いられる。(メタ)アクリル酸エステル及び(メタ)アクリルアミド誘導体の例を以下に示す。
(i)一官能性の(メタ)アクリル酸エステル及び(メタ)アクリルアミド誘導体
例えば、メチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、2−(N,N−ジメチルアミノ)エチル(メタ)アクリレート、2,3−ジブロモプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、6−ヒドロキシヘキシル(メタ)アクリレート、10−ヒドロキシデシル(メタ)アクリレート、プロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、グリセリンモノ(メタ)アクリレート、エリスリトールモノ(メタ)アクリレート、N−メチロール(メタ)アクリルアミド、N−ヒドロキシエチル(メタ)アクリルアミド、N−ジヒドロキシエチル(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリロイルオキシドデシルピリジニウムブロミド、(メタ)アクリロイルオキシドデシルピリジニウムクロリド、(メタ)アクリロイルオキシヘキサデシルピリジニウムクロリド、(メタ)アクリロイルオキシデシルアンモニウムクロリド、10−メルカプトデシル(メタ)アクリレートなどが挙げられる。
(ii)二官能性の(メタ)アクリル酸エステル
例えば、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,10−デカンジオールジ(メタ)アクリレート、2,2−ビス[4−〔3−アクリロイルオキシ−2−ヒドロキシプロポキシ〕フェニル]プロパン、2,2−ビス[4−〔3−メタクリロイルオキシ−2−ヒドロキシプロポキシ〕フェニル]プロパン(通称Bis−GMA)、2,2−ビス〔4−(メタ)アクリロイルオキシエトキシフェニル〕プロパン、2,2−ビス〔4−(メタ)アクリロイルオキシポリエトキシフェニル〕プロパン、1,2−ビス〔3−(メタ)アクリロイルオキシ−2−ヒドロキシプロポキシ〕エタン、ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、[2,2,4−トリメチルヘキサメチレンビス(2−カルバモイルオキシエチル)]ジメタクリレート(通称UDMA)、2,2,3,3,4,4−ヘキサフルオロ−1,5−ペンチルジ(メタ)アクリレートなどが挙げられる。
(iii)三官能性以上の(メタ)アクリル酸エステル
例えば、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールエタントリ(メタ)アクリレート、テトラメチロールメタントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、N,N’−(2,2,4−トリメチルヘキサメチレン)ビス〔2−(アミノカルボキシ)プロパン−1,3−ジオール〕テトラ(メタ)アクリレート、1,7−ジアクリロイルオキシ−2,2,6,6−テトラ(メタ)アクリロイルオキシメチル−4−オキシヘプタンなどが挙げられる。
なお、重合性単量体(C)としては、前記ラジカル重合性単量体の他に、オキシラン化合物、オキセタン化合物等のカチオン重合性単量体を使用することもできる。
重合性単量体(C)は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。また、重合性単量体(C)は液体状であることが好ましいが、常温で液体状である必要は必ずしもなく、さらに、固体状の重合性単量体(C)であっても、その他の液体状の重合性単量体(C)と混合溶解して使用することもできる。
重合性単量体(C)の粘度(25℃)は、10Pa・s以下であることが好ましく、5Pa・s以下であることがより好ましく、2Pa・s以下であることがさらに好ましい。一方、2種以上の重合性単量体(C)を混合して用いる場合、又は溶剤に希釈して用いる場合は、個々の重合性単量体(C)の粘度が上記範囲内にある必要はなく、使用される状態(混合・希釈された状態)において、その粘度が上記範囲内にあることが好ましい。
重合性単量体(C)を重合して重合体を得るにあたっては、重合を容易にするために重合開始剤を用いることができ、特に重合性単量体(C)含有組成物中の重合性単量体(C)を重合硬化させることにより重合体を得る場合には、当該重合性単量体(C)含有組成物がさらに重合開始剤を含むことが好ましい。重合開始剤としては、一般工業界で使用されている重合開始剤を用いることができ、特に歯科用途に用いられる重合開始剤を好ましく用いることができる。重合開始剤としては、例えば、加熱重合開始剤、光重合開始剤及び化学重合開始剤からなる群より選ばれる少なくとも1種を使用することができる。
(i)加熱重合開始剤
加熱重合開始剤としては、例えば、有機過酸化物、アゾ化合物などが挙げられる。
前記有機過酸化物としては、例えば、ケトンペルオキシド、ヒドロペルオキシド、ジアシルペルオキシド、ジアルキルペルオキシド、ペルオキシケタール、ペルオキシエステル、ペルオキシジカーボネートなどが挙げられる。
前記ケトンペルオキシドとしては、例えば、メチルエチルケトンペルオキシド、メチルイソブチルケトンペルオキシド、メチルシクロヘキサノンペルオキシド、シクロヘキサノンペルオキシドなどが挙げられる。
前記ヒドロペルオキシドとしては、例えば、2,5−ジメチルヘキサン−2,5−ジヒドロペルオキシド、ジイソプロピルベンゼンヒドロペルオキシド、クメンヒドロペルオキシド、t−ブチルヒドロペルオキシド、1,1,3,3−テトラメチルブチルヒドロペルオキシドなどが挙げられる。
前記ジアシルペルオキシドとしては、例えば、アセチルペルオキシド、イソブチリルペルオキシド、ベンゾイルペルオキシド、デカノイルペルオキシド、3,5,5−トリメチルヘキサノイルペルオキシド、2,4−ジクロロベンゾイルペルオキシド、ラウロイルペルオキシドなどが挙げられる。
前記ジアルキルペルオキシドとしては、例えば、ジ−t−ブチルペルオキシド、ジクミルペルオキシド、t−ブチルクミルペルオキシド、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルペルオキシ)ヘキサン、1,3−ビス(t−ブチルペルオキシイソプロピル)ベンゼン、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルペルオキシ)−3−ヘキシンなどが挙げられる。
前記ペルオキシケタールとしては、例えば、1,1−ビス(t−ブチルペルオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、1,1−ビス(t−ブチルペルオキシ)シクロヘキサン、2,2−ビス(t−ブチルペルオキシ)ブタン、2,2−ビス(t−ブチルペルオキシ)オクタン、4,4−ビス(t−ブチルペルオキシ)バレリン酸n−ブチルエステルなどが挙げられる。
前記ペルオキシエステルとしては、例えば、α−クミルペルオキシネオデカノエート、t−ブチルペルオキシネオデカノエート、t−ブチルペルオキシピバレート、2,2,4−トリメチルペンチルペルオキシ−2−エチルヘキサノエート、t−アミルペルオキシ−2−エチルヘキサノエート、t−ブチルペルオキシ−2−エチルヘキサノエート、ジ−t−ブチルペルオキシイソフタレート、ジ−t−ブチルペルオキシヘキサヒドロテレフタレート、t−ブチルペルオキシ−3,3,5−トリメチルヘキサノエート、t−ブチルペルオキシアセテート、t−ブチルペルオキシベンゾエート、t−ブチルペルオキシマレエートなどが挙げられる。
前記ペルオキシジカーボネートとしては、例えば、ジ−3−メトキシペルオキシジカーボネート、ジ−2−エチルヘキシルペルオキシジカーボネート、ビス(4−t−ブチルシクロヘキシル)ペルオキシジカーボネート、ジイソプロピルペルオキシジカーボネート、ジ−n−プロピルペルオキシジカーボネート、ジ−2−エトキシエチルペルオキシジカーボネート、ジアリルペルオキシジカーボネートなどが挙げられる。
これらの有機過酸化物の中でも、安全性、保存安定性及びラジカル生成能力の総合的なバランスから、ジアシルペルオキシドが好ましく、その中でもベンゾイルペルオキシドがより好ましい。
前記アゾ化合物としては、例えば、2,2’−アゾビス(イソブチロニトリル)、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、4,4’−アゾビス(4−シアノバレリン酸)、1,1’−アゾビス(シクロヘキサン−1−カルボニトリル)、ジメチル−2,2’−アゾビス(イソブチラート)、2,2’−アゾビス(2−アミジノプロパン)ジヒドロクロリドなどが挙げられる。
(ii)光重合開始剤
光重合開始剤としては、歯科用コンポジットレジンに広く使用されているものを好ましく使用することができ、例えば、(ビス)アシルホスフィンオキシド類、α−ジケトン類、クマリン類などが挙げられる。
前記(ビス)アシルホスフィンオキシド類のうち、アシルホスフィンオキシド類としては、例えば、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシド、2,6−ジメトキシベンゾイルジフェニルホスフィンオキシド、2,6−ジクロロベンゾイルジフェニルホスフィンオキシド、2,4,6−トリメチルベンゾイルメトキシフェニルホスフィンオキシド、2,4,6−トリメチルベンゾイルエトキシフェニルホスフィンオキシド、2,3,5,6−テトラメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシド、ベンゾイルジ(2,6−ジメチルフェニル)ホスホネート、及びこれらの塩などが挙げられる。
前記(ビス)アシルホスフィンオキシド類のうち、ビスアシルホスフィンオキシド類としては、例えば、ビス(2,6−ジクロロベンゾイル)フェニルホスフィンオキシド、ビス(2,6−ジクロロベンゾイル)−2,5−ジメチルフェニルホスフィンオキシド、ビス(2,6−ジクロロベンゾイル)−4−プロピルフェニルホスフィンオキシド、ビス(2,6−ジクロロベンゾイル)−1−ナフチルホスフィンオキシド、ビス(2,6−ジメトキシベンゾイル)フェニルホスフィンオキシド、ビス(2,6−ジメトキシベンゾイル)−2,4,4−トリメチルペンチルホスフィンオキシド、ビス(2,6−ジメトキシベンゾイル)−2,5−ジメチルフェニルホスフィンオキシド、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィンオキシド、ビス(2,3,6−トリメチルベンゾイル)−2,4,4−トリメチルペンチルホスフィンオキシド、及びこれらの塩などが挙げられる。
これらの(ビス)アシルホスフィンオキシド類の中でも、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシド、2,4,6−トリメチルベンゾイルメトキシフェニルホスフィンオキシド、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィンオキシド、2,4,6−トリメチルベンゾイルフェニルホスフィンオキシドのナトリウム塩が好ましい。
前記α−ジケトン類としては、例えば、ジアセチル、ベンジル、カンファーキノン、2,3−ペンタジオン、2,3−オクタジオン、9,10−フェナントレンキノン、4,4’−オキシベンジル、アセナフテンキノンなどが挙げられる。これらの中でも、カンファーキノンが好ましい。
前記クマリン類としては、例えば、3,3’−カルボニルビス(7−ジエチルアミノクマリン)、3−(4−メトキシベンゾイル)クマリン、3−チエニルクマリン、3−ベンゾイル−5,7−ジメトキシクマリン、3−ベンゾイル−7−メトキシクマリン、3−ベンゾイル−6−メトキシクマリン、3−ベンゾイル−8−メトキシクマリン、3−ベンゾイルクマリン、7−メトキシ−3−(p−ニトロベンゾイル)クマリン、3−(p−ニトロベンゾイル)クマリン、3,5−カルボニルビス(7−メトキシクマリン)、3−ベンゾイル−6−ブロモクマリン、3,3’−カルボニルビスクマリン、3−ベンゾイル−7−ジメチルアミノクマリン、3−ベンゾイルベンゾ[f]クマリン、3−カルボキシクマリン、3−カルボキシ−7−メトキシクマリン、3−エトキシカルボニル−6−メトキシクマリン、3−エトキシカルボニル−8−メトキシクマリン、3−アセチルベンゾ[f]クマリン、3−ベンゾイル−6−ニトロクマリン、3−ベンゾイル−7−ジエチルアミノクマリン、7−ジメチルアミノ−3−(4−メトキシベンゾイル)クマリン、7−ジエチルアミノ−3−(4−メトキシベンゾイル)クマリン、7−ジエチルアミノ−3−(4−ジエチルアミノ)クマリン、7−メトキシ−3−(4−メトキシベンゾイル)クマリン、3−(4−ニトロベンゾイル)ベンゾ[f]クマリン、3−(4−エトキシシンナモイル)−7−メトキシクマリン、3−(4−ジメチルアミノシンナモイル)クマリン、3−(4−ジフェニルアミノシンナモイル)クマリン、3−[(3−ジメチルベンゾチアゾール−2−イリデン)アセチル]クマリン、3−[(1−メチルナフト[1,2−d]チアゾール−2−イリデン)アセチル]クマリン、3,3’−カルボニルビス(6−メトキシクマリン)、3,3’−カルボニルビス(7−アセトキシクマリン)、3,3’−カルボニルビス(7−ジメチルアミノクマリン)、3−(2−ベンゾチアゾイル)−7−(ジエチルアミノ)クマリン、3−(2−ベンゾチアゾイル)−7−(ジブチルアミノ)クマリン、3−(2−ベンゾイミダゾイル)−7−(ジエチルアミノ)クマリン、3−(2−ベンゾチアゾイル)−7−(ジオクチルアミノ)クマリン、3−アセチル−7−(ジメチルアミノ)クマリン、3,3’−カルボニルビス(7−ジブチルアミノクマリン)、3,3’−カルボニル−7−ジエチルアミノクマリン−7’−ビス(ブトキシエチル)アミノクマリン、10−[3−[4−(ジメチルアミノ)フェニル]−1−オキソ−2−プロペニル]−2,3,6,7−テトラヒドロ−1,1,7,7−テトラメチル−1H,5H,11H−[1]ベンゾピラノ[6,7,8−ij]キノリジン−11−オン、10−(2−ベンゾチアゾイル)−2,3,6,7−テトラヒドロ−1,1,7,7−テトラメチル−1H,5H,11H−[1]ベンゾピラノ[6,7,8−ij]キノリジン−11−オンなどが挙げられる。
これらのクマリン化合物の中でも、3,3’−カルボニルビス(7−ジエチルアミノクマリン)、3,3’−カルボニルビス(7−ジブチルアミノクマリン)が好ましい。
(iii)化学重合開始剤
化学重合開始剤としては、例えば、レドックス系重合開始剤などが挙げられる。当該レドックス系重合開始剤としては、有機過酸化物−アミン系;有機過酸化物−アミン−スルフィン酸(又はその塩)系などを好ましく用いることができる。レドックス系重合開始剤を使用する場合、酸化剤と還元剤とを別々に包装しておき、使用する直前に両者を混合するのが好ましい。
レドックス系重合開始剤の酸化剤としては、例えば、有機過酸化物などが挙げられる。当該有機過酸化物としては、公知のものを使用することができ、具体的には、加熱重合開始剤の説明において例示した有機過酸化物を使用することができる。当該有機過酸化物としては、安全性、保存安定性及びラジカル生成能力の総合的なバランスから、ジアシルペルオキシドが好ましく、その中でもベンゾイルペルオキシドがより好ましい。
レドックス系重合開始剤の還元剤としては、通常、芳香環に電子吸引性基を有しない第3級芳香族アミンが用いられる。芳香環に電子吸引性基を有しない第3級芳香族アミンとしては、例えば、N,N−ジメチルアニリン、N,N−ジメチル−p−トルイジン、N,N−ジメチル−m−トルイジン、N,N−ジエチル−p−トルイジン、N,N−ジメチル−3,5−ジメチルアニリン、N,N−ジメチル−3,4−ジメチルアニリン、N,N−ジメチル−4−エチルアニリン、N,N−ジメチル−4−イソプロピルアニリン、N,N−ジメチル−4−t−ブチルアニリン、N,N−ジメチル−3,5−ジ−t−ブチルアニリン、N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)−3,5−ジメチルアニリン、N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)−p−トルイジン、N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)−3,4−ジメチルアニリン、N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)−4−エチルアニリン、N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)−4−イソプロピルアニリン、N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)−4−t−ブチルアニリン、N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)−3,5−ジイソプロピルアニリン、N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)−3,5−ジ−t−ブチルアニリンなどが挙げられる。
重合開始剤は1種を単独で使用しても2種以上を併用してもよい。例えば、重合開始剤として、加熱重合開始剤と光重合開始剤とを併用してもよい。この場合、ジアシルペルオキシドと(ビス)アシルホスフィンオキシド類とを併用することが好ましい。
重合開始剤の使用量は特に限定されないが、重合性などの観点から、重合性単量体(C)100質量部に対して、0.001質量部以上であることが好ましく、0.05質量部以上であることがより好ましく、0.1質量部以上であることがさらに好ましい。重合開始剤の使用量が上記下限以上であることにより、重合開始剤自体の重合性能が低い場合であっても、重合が十分に進行して得られる歯科用ミルブランクひいてはそれから得られる歯科用補綴物の強度が向上する。一方、重合開始剤の使用量は、重合性単量体(C)100質量部に対して、30質量部以下であることが好ましく、20質量部以下であることがより好ましい。重合開始剤の使用量が上記上限以下であることにより、重合開始剤の析出を抑制することができる。
重合開始剤を使用するにあたっては、重合促進剤を併用してもよく、特に重合性単量体(C)含有組成物中の重合性単量体(C)を重合硬化させることにより重合体を得る場合には、当該重合性単量体(C)含有組成物が重合開始剤と共にさらに重合促進剤を含んでもよい。重合促進剤を併用することで、重合をより短時間で効率的に行うことができる場合がある。当該重合促進剤としては、一般工業界で使用されている重合促進剤を用いることができ、特に歯科用途に用いられる重合促進剤を好ましく用いることができる。重合促進剤は、1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
光重合開始剤に好適な重合促進剤としては、例えば、第3級アミン類、アルデヒド類、チオール類、スルフィン酸及びその塩などが挙げられる。
第3級アミン類としては、例えば、N,N−ジメチルアニリン、N,N−ジメチル−p−トルイジン、N,N−ジメチル−m−トルイジン、N,N−ジエチル−p−トルイジン、N,N−ジメチル−3,5−ジメチルアニリン、N,N−ジメチル−3,4−ジメチルアニリン、N,N−ジメチル−4−エチルアニリン、N,N−ジメチル−4−イソプロピルアニリン、N,N−ジメチル−4−t−ブチルアニリン、N,N−ジメチル−3,5−ジ−t−ブチルアニリン、N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)−3,5−ジメチルアニリン、N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)−p−トルイジン、N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)−3,4−ジメチルアニリン、N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)−4−エチルアニリン、N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)−4−イソプロピルアニリン、N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)−4−t−ブチルアニリン、N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)−3,5−ジイソプロピルアニリン、N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)−3,5−ジ−t−ブチルアニリン、4−(N,N−ジメチルアミノ)安息香酸n−ブトキシエチル、4−(N,N−ジメチルアミノ)安息香酸(2−メタクリロイルオキシ)エチル、4−(N,N−ジメチルアミノ)安息香酸エチル、4−(N,N−ジメチルアミノ)安息香酸ブチル、N−メチルジエタノールアミン、4−(N,N−ジメチルアミノ)ベンゾフェノン、トリメチルアミン、トリエチルアミン、N−メチルジエタノールアミン、N−エチルジエタノールアミン、N−n−ブチルジエタノールアミン、N−ラウリルジエタノールアミン、トリエタノールアミン、2−(ジメチルアミノ)エチルメタクリレート、N−メチルジエタノールアミンジメタクリレート、N−エチルジエタノールアミンジメタクリレート、トリエタノールアミンモノメタクリレート、トリエタノールアミンジメタクリレート、トリエタノールアミントリメタクリレートなどが挙げられる。
アルデヒド類としては、例えば、ジメチルアミノベンズアルデヒド、テレフタルアルデヒドなどが挙げられる。
チオール類としては、例えば、2−メルカプトベンゾオキサゾール、デカンチオール、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、チオ安息香酸などが挙げられる。
スルフィン酸及びその塩としては、例えば、ベンゼンスルフィン酸、ベンゼンスルフィン酸ナトリウム、ベンゼンスルフィン酸カリウム、ベンゼンスルフィン酸カルシウム、ベンゼンスルフィン酸リチウム、p−トルエンスルフィン酸、p−トルエンスルフィン酸ナトリウム、p−トルエンスルフィン酸カリウム、p−トルエンスルフィン酸カルシウム、p−トルエンスルフィン酸リチウム、2,4,6−トリメチルベンゼンスルフィン酸、2,4,6−トリメチルベンゼンスルフィン酸ナトリウム、2,4,6−トリメチルベンゼンスルフィン酸カリウム、2,4,6−トリメチルベンゼンスルフィン酸カルシウム、2,4,6−トリメチルベンゼンスルフィン酸リチウム、2,4,6−トリエチルベンゼンスルフィン酸、2,4,6−トリエチルベンゼンスルフィン酸ナトリウム、2,4,6−トリエチルベンゼンスルフィン酸カリウム、2,4,6−トリエチルベンゼンスルフィン酸カルシウム、2,4,6−トリエチルベンゼンスルフィン酸リチウム、2,4,6−トリイソプロピルベンゼンスルフィン酸、2,4,6−トリイソプロピルベンゼンスルフィン酸ナトリウム、2,4,6−トリイソプロピルベンゼンスルフィン酸カリウム、2,4,6−トリイソプロピルベンゼンスルフィン酸カルシウム、2,4,6−トリイソプロピルベンゼンスルフィン酸リチウムなどが挙げられる。
また化学重合開始剤に好適な重合促進剤としては、例えば、アミン類、スルフィン酸及びその塩、銅化合物、スズ化合物などが挙げられる。
化学重合開始剤の重合促進剤として用いられるアミン類は、脂肪族アミン及び芳香環に電子吸引性基を有する芳香族アミンに分けられる。
前記脂肪族アミンとしては、例えば、n−ブチルアミン、n−ヘキシルアミン、n−オクチルアミン等の第1級脂肪族アミン;ジイソプロピルアミン、ジブチルアミン、N−メチルエタノールアミン等の第2級脂肪族アミン;N−メチルジエタノールアミン、N−エチルジエタノールアミン、N−n−ブチルジエタノールアミン、N−ラウリルジエタノールアミン、2−(ジメチルアミノ)エチルメタクリレート、N−メチルジエタノールアミンジメタクリレート、N−エチルジエタノールアミンジメタクリレート、トリエタノールアミンモノメタクリレート、トリエタノールアミンジメタクリレート、トリエタノールアミントリメタクリレート、トリエタノールアミン、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリブチルアミン等の第3級脂肪族アミンなどが挙げられる。これらの中でも、重合性及び保存安定性の観点から、第3級脂肪族アミンが好ましく、N−メチルジエタノールアミン、トリエタノールアミンがより好ましい。
前記芳香環に電子吸引性基を有する芳香族アミンとしては、例えば、N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)−p−トルイジン、4−(N,N−ジメチルアミノ)安息香酸エチル、4−(N,N−ジメチルアミノ)安息香酸メチル、4−(N,N−ジメチルアミノ)安息香酸n−ブトキシエチル、4−(N,N−ジメチルアミノ)安息香酸2−(メタクリロイルオキシ)エチル、4−(N,N−ジメチルアミノ)ベンゾフェノン、4−(N,N−ジメチルアミノ)安息香酸ブチル等の第3級芳香族アミンなどが挙げられる。これらの中でも、優れた硬化性を付与できる観点から、N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)−p−トルイジン、4−(N,N−ジメチルアミノ)安息香酸エチル、4−(N,N−ジメチルアミノ安息香酸)n−ブトキシエチル及び4−(N,N−ジメチルアミノ)ベンゾフェノンからなる群より選ばれる少なくとも1種が好ましい。
化学重合開始剤の重合促進剤として用いられるスルフィン酸及びその塩としては、例えば、上記した光重合開始剤の重合促進剤として例示したものなどが挙げられ、ベンゼンスルフィン酸ナトリウム、p−トルエンスルフィン酸ナトリウム、2,4,6−トリイソプロピルベンゼンスルフィン酸ナトリウムが好ましい。
化学重合開始剤の重合促進剤として用いられる銅化合物としては、例えば、アセチルアセトン銅、酢酸第2銅、オレイン酸銅、塩化第2銅、臭化第2銅などが挙げられる。
化学重合開始剤の重合促進剤として用いられるスズ化合物としては、例えば、ジ−n−ブチル錫ジマレエート、ジ−n−オクチル錫ジマレエート、ジ−n−オクチル錫ジラウレート、ジ−n−ブチル錫ジラウレートなどが挙げられる。これらの中でも、ジ−n−オクチル錫ジラウレート、ジ−n−ブチル錫ジラウレートが好ましい。
重合促進剤の使用量は特に限定されないが、重合性などの観点から、重合性単量体(C)100質量部に対して、0.01質量部以上であることが好ましく、0.1質量部以上であることがより好ましく、1質量部以上であることがさらに好ましく、また、10質量部以下であることが好ましく、3質量部以下であることがより好ましい。
本発明のクラウンコア一体型歯科用ミルブランク全体100質量部における、重合性単量体(C)に由来する構造を有する重合体の含有量は、5質量部以上であることが好ましく、7質量部以上であることがより好ましく、10質量部以上であることがさらに好ましく、また、30質量部以下であることが好ましく、25質量部以下であることがより好ましく、20質量部以下であることがさらに好ましい。これにより、目的とする曲げ弾性率が得られ、機械的強度及び審美性により優れたクラウンコア一体型歯科用ミルブランクとなる。なお、クラウンコア一体型歯科用ミルブランクにおける重合性単量体(C)に由来する構造を有する重合体の含有量は、全体量(100質量部)から上記した無機充填材(A)及び無機微粒子(B)の含有量(質量部)を差し引き、クラウンコア一体型歯科用ミルブランクが後述の他の成分を含む場合にはこれらの含有量(質量部)をさらに差し引くことにより求めることができる。
本発明のクラウンコア一体型歯科用ミルブランクは、無機充填材(A)及び無機微粒子(B)及び重合性単量体(C)に由来する構造を有する重合体以外に、目的に応じて、pH調整剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、着色剤、顔料、抗菌剤、X線造影剤、増粘剤、蛍光剤などの他の成分をさらに含んでいてもよい。
本発明のクラウンコア一体型歯科用ミルブランクの製造方法は、例えば、(1)無機充填材(A)及び無機微粒子(B)、さらに重合性単量体(C)を含有する、ペースト状硬化性組成物を重合硬化する工程を有する方法;(2)無機充填材(A)及び無機微粒子(B)の混合物をプレス成型してなる無機充填材成形体と重合性単量体(C)含有組成物を接触させて、重合性単量体(C)を重合硬化させる方法等が挙げられる。
また、前記(1)のクラウンコア一体型歯科用ミルブランクの製造方法の他の実施形態としては、例えば、ペーストを金型に充填しプレスし、加熱重合硬化させる方法が挙げられる。
前記(1)の製造方法により得られたクラウンコア一体型歯科用ミルブランクにおける無機充填材(A)及び無機微粒子(B)の含有量の合計は、使用する無機充填材(A)及び無機微粒子(B)の粒子径あるいは形状により変動するが、通常は、クラウンコア一体型歯科用ミルブランク全体100質量部において70〜90質量部であり、好ましくは70〜85質量部である。無機充填材(A)及び無機微粒子(B)の含有量の合計が85質量部を超えると、ペーストの粘度が急激に上がり、重合性単量体(C)に由来する構造を有する重合体に気泡が混入しやすくなり適当ではない。
前記(2)のクラウンコア一体型歯科用ミルブランクの製造方法として、より具体的には、必要に応じて表面処理された無機充填材(A)及び無機微粒子(B)の混合物を所望の金型に充填しプレス成形し、無機充填材成形体(以下、「プレス成形体」と称することがある)を得る工程(以下、「プレス成形工程」と称することがある)、前記工程で得られたプレス成形体に対し、重合性単量体(C)及び重合開始剤を含有する重合性単量体(C)含有組成物を浸透させ、重合硬化させる工程を含む方法が挙げられる。プレス成形工程としては、無機充填材(A)及び無機微粒子(B)を所望の大きさのプレス用金型(ダイ)に充填し、上パンチと下パンチを用いて一軸プレスにより加圧する方法が簡便である。このときのプレス圧は、目的とする成形体のサイズ、無機充填材(A)及び無機微粒子(B)の種類あるいは粒子径により適宜最適な値を設定できるが、通常は、10MPa以上である。プレス圧が低いと、無機充填材(A)及び無機微粒子(B)が緻密に充填されず、無機充填材(A)及び無機微粒子(B)間の隙間が十分に狭くならないため、得られたプレス成形体において、単位体積あたりの無機充填材(A)及び無機微粒子(B)の含有量を上げることができない。その結果、該プレス成形体から得られた歯科用補綴物の機械的強度、表面滑沢性が不十分となることがある。この観点からはプレス圧は高いほど好ましいが、プレス成形体のサイズあるいは設備的要因等の生産性の面を考慮すると、一軸プレスでのプレス圧は、通常は200MPa以下であり、好ましくは20〜100MPaの範囲であり、より好ましくは25〜80MPaの範囲である。プレス時間は、プレス圧に応じて適宜設定できるが、通常、1〜120分間である。
また、前記(2)の製造方法におけるプレス成形工程としては、冷間等方圧加圧(CIP)工程;又はCIP工程を含むことが好ましい。具体的には、上記の一軸プレスを行うことなく、CIP工程によりプレス成形を行う方法;又は、上記の一軸プレスでのプレス成形で成形体を得た後、該成形体に対してさらに、CIP工程による成形(以下、単に「プレス成形」と称することがある)を施すことが好適である。CIP成形は、通常、一軸プレスよりも高いプレス圧をかけることができ、また、成形体に対して3次元方向から均等に圧力をかけられるため、CIP成形を行うことで、プレス成形体内部の好ましくない微小な空隙や、無機充填材(A)及び無機微粒子(B)の凝集状態のむらが解消されたり、また無機充填材(A)及び無機微粒子(B)の圧縮密度がさらに上がって、無機充填材(A)及び無機微粒子(B)の含有量が極めて高いクラウンコア一体型歯科用ミルブランクが得られる。金型で一軸プレスする工程を経ずに、無機充填材(A)及び無機微粒子(B)を弾性に富む容器(例えばシリコンゴム製容器、ポリイソプレンゴム製容器等)に充填して、これをそのままCIP処理することにより、プレス成形体を得ることもできる。CIP成形の際の加圧力も高い方が好ましい。CIP装置としては、1000MPa程度に加圧可能なCIP装置を用いることができる。例えば、WET CIP装置(株式会社神戸製鋼所製)、DRY CIP装置(株式会社神戸製鋼所製)、ピストン式CIP装置(株式会社神戸製鋼所製)等が挙げられる。生産性及び製造コストも考慮すると、例えば、30〜500MPaの範囲であり、CIP成形の際の加圧力も高い方が好ましい。生産性を重視すると、例えば、50〜500MPaの範囲であり、好ましくは100〜300MPaの範囲である。CIP成形時間は、プレス圧に応じて適宜設定できるが、通常、1〜60分間である。
このようにして得られた、無機充填材(A)及び無機微粒子(B)のプレス成形体は、重合性単量体(C)含有組成物と接触させることで、粉末一次粒子の隙間に重合性単量体(C)が侵入し、その結果、重合性単量体(C)に無機充填材(A)及び無機微粒子(B)が極めて密に分散した構造の成形体が得られることになる。
次いで、このようにして得られた無機充填材(A)及び無機微粒子(B)の混合物からなるプレス成形体に、重合性単量体(C)含有組成物を接触させる。
重合性単量体(C)含有組成物とプレス成形体の接触方法は、重合性単量体(C)含有組成物がプレス成形体中の無機充填材(A)及び無機微粒子(B)の間隙に侵入できるのであれば、特に限定はない。もっとも簡便で好ましい方法は、重合性単量体(C)含有組成物の中に、プレス成形体を浸漬する方法である。浸漬することによって、毛細管現象により、重合性単量体(C)が徐々にプレス成形体の内部に浸透することができる。前記浸漬を減圧雰囲気下に行うことは、液体状の重合性単量体(C)の浸透を促すことになるため、好ましい。また、減圧操作及び減圧後に常圧に戻す操作を複数回繰り返すことは、重合性単量体(C)をプレス成形体内部に完全に浸透させる工程の時間短縮のためには有効である。このときの減圧度としては、重合性単量体(C)の粘度あるいは無機充填材(A)及び無機微粒子(B)の粒子径により適宜選択されるが、通常は100hPa以下に減圧し、好ましくは50〜0.001hPaまで減圧し、より好ましくは20〜0.1hPaまで減圧する。
さらに、浸漬の方法としては、例えば、プレス成形体を重合性単量体(C)含有組成物の入った真空パック用の袋に入れ、真空パック装置にて所定圧力及び所定時間にて処理を行い、該袋を減圧環境下にて密封する方法が挙げられる。この方法により、等方的に重合性単量体(C)含有組成物がプレス成形体に接触し、浸透速度を上げることができ、工程に要する時間を短縮することができる。前記減圧環境の減圧度としては、通常は100hPa以下に減圧し、好ましくは50〜0.001hPaまで減圧し、より好ましくは20〜0.1hPaまで減圧する。また、真空パック時間は、30秒以上〜20分以下が好ましく、1分以上10分以下がより好ましい。
また、浸漬以外の方法としては、金型でプレス成形した状態で、そのまま、圧力をかけて重合性単量体(C)含有組成物を金型中のプレス成形体に送り込む方法も考えられる。この方法をとると、重合硬化の工程も該金型中でそのまま引き続いて行うことが可能である。
また、重合性単量体(C)含有組成物の粘性は浸透速度に影響を与え、通常は粘度が低いほど浸透が早い。好ましい粘度範囲(25℃)は10Pa・s以下であり、より好ましくは5Pa・s以下であり、さらに好ましくは2Pa・s以下であるが、重合性単量体(C)の選択は粘度以外にも、重合硬化後の硬化物の機械的強度又は屈折率も加味して行うことが好ましい。また、重合性単量体(C)含有組成物を溶剤で希釈して用いて、後の減圧操作で溶剤を留去する方法をとることもある。また、温度を上げることで重合性単量体(C)含有組成物の粘度を下げて、浸透を早めることもできる。
重合性単量体(C)含有組成物をプレス成形体に接触させる時間は、無機充填材(A)及び無機微粒子(B)の種類、プレス成形体のサイズ、単量体の浸透程度等によって適宜、調整することができる。例えば、浸漬によって接触させる場合は、通常1〜120時間である。減圧下での浸漬の場合、接触させる時間は、通常0.5〜12時間である。重合性単量体(C)をプレス成形体内部に隙間なく浸透させる、さらに好ましい方法として、見かけ上、重合性単量体(C)が含浸したプレス成形体を、一定時間加圧条件に置く方法がある。即ち、重合性単量体(C)が含浸したプレス成形体を、重合性単量体(C)と共に、CIP装置等を用いて加圧条件下に置くことが好ましい。かかる加圧条件としては、20MPa以上が好ましく、50MPa以上がより好ましく、100MPa以上がさらに好ましい。また、加圧を解除して常圧に戻し、再び加圧するという、加圧と常圧を繰り返して行うとさらに好ましい。
前記(2)の製造方法により得られた本発明のクラウンコア一体型歯科用ミルブランクにおける無機充填材(A)及び無機微粒子(B)の含有量の合計は、使用する無機充填材(A)及び無機微粒子(B)の粒子径や形状により変動するが、通常は、クラウンコア一体型歯科用ミルブランク全体100質量部において70質量部以上で配合され、好ましくは70〜90質量部であり、より好ましくは70〜85質量部である。なお、ここでいう無機充填材(A)及び無機微粒子(B)の含有量の合計は、重合性単量体(C)含有組成物の硬化物の強熱残分により測定された値である。
前記した本発明のクラウンコア一体型歯科用ミルブランクの製造方法のすべてにおいて、重合硬化は、加熱重合及び/又は光重合及び/又は化学重合によって行うことができ、その条件は公知の方法に従って行うことができる。なかでも、本発明では重合性単量体(C)の重合率を高めて、より機械的強度の高いクラウンコア一体型歯科用ミルブランクを得る観点から、加熱重合を行うことが好ましい。
また、重合硬化の際、窒素ガス等の不活性雰囲気下或いは減圧環境下で重合させることで、重合率を高め、機械的強度をより高めることができる。また、重合性単量体(C)を含むペーストからなる成形体、あるいは重合性単量体(C)が含浸されたプレス成形体を真空パック等に詰めて真空状態にして重合操作を行うことは、生産性の面から好ましい。この場合、オートクレーブ等を用いて、加圧加熱重合することもできる。さらには、加圧した状態のまま、重合硬化を行うこともできる。このような加圧加熱重合は、本発明においてより好ましい重合硬化方法の一つである。即ち、重合性単量体(C)を含むペーストからなるプレス成形体、あるいは重合性単量体(C)が含浸されたプレス成形体を、重合性単量体(C)と共に加圧条件下に置くことで、成形体が有する微小な隙間まで重合性単量体(C)が入り込むことができたり、微小な気泡の残存を解消することができる。加圧条件下で重合させることで、機械的強度をさらに高めることができる。かかる条件としては、20MPa以上が好ましく、50MPa以上がより好ましく、100MPa以上がさらに好ましい。基本的には圧力は高いほど好ましいが、実際には用いる加圧装置の能力に依存する。このような加圧装置としては、オートクレーブ、CIP装置、HIP(熱間等方圧加圧)装置が用いられる。CIP装置は、上述のものを使用できる。加圧条件下で、温度を上げることで重合させる加熱重合の他、光重合或いは化学重合で重合させることも可能である。より好ましい加圧重合方法として、重合性単量体(C)を含むペーストからなる成形体、あるいは重合性単量体(C)を含浸したプレス成形体を、ビニール袋、ゴムチューブ等に真空パックで密封し、CIPを用いて加圧しながら重合する方法がある。この時の圧力は高いほど好ましく、50MPa以上が好ましく、200MPa以上がより好ましい。密封した成形体をCIP処理室に入れ、所定の圧力をかけた後に、処理室を加温して、高圧下で重合を開始させる方法は、機械的強度を高める上で、特に好ましい重合方法である。例えば、室温でCIPで圧力をかけた後、30分から24時間程度の時間をかけて、室温から温度を上げて、到達温度は80℃〜180℃が好ましい。重合時間と到達温度は、重合性単量体(C)に配合される重合開始剤の分解温度を考慮して設定される。
さらに、重合硬化後に好ましくは80〜150℃で10〜120分間加熱処理することによって、硬化物内部に生じた応力歪を緩和し、歯科用補綴物切削加工中又は臨床使用中に生じる歯科用補綴物の破損を抑制することができる。
これらの製造方法により、クラウンコア一体型歯科用ミルブランクが得られる。得られたクラウンコア一体型歯科用ミルブランクは、必要に応じて所望の大きさに切断、切削、表面研磨を施してもよい。また、本発明の他の実施形態は、クラウンと支台歯(好適には、コア)が一体化した歯科用補綴物が挙げられる。前記歯科用補綴物は、本発明のクラウンコア一体型歯科用ミルブランクを公知の方法(例えば、歯科用CAD/CAMシステム)により、クラウンと支台歯とが一体化するように切削加工して得られる。前記歯科用補綴物は、クラウンと支台歯(好適には、コアが一体化しているため、クラウンと支台歯(好適には、コアの弾性率が異なることがなく、咬合による応力が局所的にかかった場合にも、クラウンの脱離あるいは歯根破折を抑制することができる。
本発明のクラウンコア一体型歯科用ミルブランクのサイズは、市販の歯科用CAD/CAMシステムにセットできるように、適当な大きさに加工されることが好ましい。好ましいサイズとしては、例えば、一歯欠損ブリッジの作製に適当な40mm×20mm×15mmの角柱状;インレー又はオンレーの作製に適当な17mm×10×10mmの角柱状;フルクラウンの作製に適当な14mm×18mm×20mmの角柱状;ロングスパンブリッジ又は義歯床の作製に適当な、直径100mm、厚さが10〜28mmの円盤状等が挙げられるが、これらのサイズに限定されるものではない。
本発明は、本発明の効果を奏する限り、本発明の技術的思想の範囲内において、上記の構成を種々組み合わせた実施形態を含む。
次に、実施例を挙げて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例により何ら限定されるものではなく、多くの変形が本発明の技術的思想の範囲内で当分野において通常の知識を有する者により可能である。
〔無機充填材(A−1)〕
市販のバリウムボロシリケートガラスGM27884 UF2.0グレード(ショット社製、平均1次粒子径:2.0μm、屈折率1.53)100gに対し、エタノール300gを加え、超音波洗浄機にて1時間分散を行った。3−メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン2gと水5g及び酢酸0.1gを撹拌させた加水分解溶液を加え、1時間室温で撹拌した。溶媒を減圧留去し、さらに90℃で3時間乾燥することによって、表面処理剤で処理された無機充填材(A−1)を得た。
〔無機充填材(A−2)〕
市販のバリウムボロシリケートガラスGM27884 UF1.0グレード(ショット社製、平均1次粒子径:1.0μm、屈折率1.53)100gに対し、エタノール300gを加え、超音波洗浄機にて1時間分散を行った。3−メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン3gと水5g及び酢酸0.1gを撹拌させた加水分解溶液を加え、1時間室温で撹拌した。溶媒を減圧留去し、さらに90℃で3時間乾燥することによって、表面処理剤で処理された無機充填材(A−2)を得た。
〔無機充填材(A−3)〕
市販のバリウムボロシリケートガラスGM27884 UF0.7グレード(ショット社製、平均1次粒子径:0.7μm、屈折率1.53)100gに対し、エタノール300gを加え、超音波洗浄機にて1時間分散を行った。11−メタクリロイルオキシウンデシルトリメトキシシラン5gと水5g及び酢酸0.1gを撹拌させた加水分解溶液を加え、1時間室温で撹拌した。溶媒を減圧留去し、さらに90℃で3時間乾燥することによって、表面処理剤で処理された無機充填材(A−3)を得た。
〔無機充填材(A−4)〕
市販のバリウムボロシリケートガラスGM27884 UF0.4グレード(ショット社製、平均1次粒子径:0.4μm、屈折率1.53)100gに対し、エタノール300gを加え、超音波洗浄機にて1時間分散を行った。11−メタクリロイルオキシウンデシルトリメトキシシラン7gと水5g及び酢酸0.1gを撹拌させた加水分解溶液を加え、1時間室温で撹拌した。溶媒を減圧留去し、さらに90℃で3時間乾燥することによって、表面処理剤で処理された無機充填材(A−4)を得た。
〔無機充填材(A−5)〕
市販のランタンガラスGM31684SM3.5グレード(ショット社製、平均1次粒子径:3.4〜4.7μm、屈折率1.58)を振動ボールミルにて20時間粉砕し、平均1次粒子径:2.0μm(D99:12μm)の粉砕品を得た。その粉砕品100gに対し、エタノール300gを加え、超音波洗浄機にて1時間分散を行った。3−メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン2.5gと水5g及び酢酸0.1gを撹拌させた加水分解溶液を加え、1時間室温で撹拌した。溶媒を減圧留去し、さらに90℃で3時間乾燥することによって、表面処理剤で処理された無機充填材(A−5)を得た。
〔無機充填材(A−6)〕
市販のランタンガラスGM31684K1グレード(ショット社製)を振動ボールにて10時間粉砕し、平均1次粒子径:5.4μmの粉砕品を得た。その粉砕品100gに対し、エタノール300gを加え、超音波洗浄機にて1時間分散を行った。3−メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン1.4gと水5g及び酢酸0.1gを撹拌させた加水分解溶液を加え、1時間室温で撹拌した。溶媒を減圧留去し、さらに90℃で3時間乾燥することによって、表面処理剤で処理された無機充填材(A−6)を得た。
〔無機微粒子(B−1)〕
市販のバリウムボロシリケートガラスGM27884 NF180グレード(ショット社製、平均1次粒子径:0.2μm、屈折率1.53)100gに対し、エタノール300gを加え、超音波洗浄機にて1時間分散を行った。3−メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン9gと水5g及び酢酸0.1gを撹拌させた加水分解溶液を加え、1時間室温で撹拌した。溶媒を減圧留去し、さらに90℃で3時間乾燥することによって、表面処理剤で処理された無機微粒子(B−1)を得た。
〔無機微粒子(B−2)〕
市販のバリウムボロシリケートガラスGM27884 NF180グレード(ショット社製、平均1次粒子径:0.2μm、屈折率1.53)100gに対し、エタノール300gを加え、超音波洗浄機にて1時間分散を行った。11−メタクリロイルオキシウンデシルトリメトキシシラン9gと水5g及び酢酸0.1gを撹拌させた加水分解溶液を加え、1時間室温で撹拌した。溶媒を減圧留去し、さらに90℃で3時間乾燥することによって、表面処理剤で処理された無機微粒子(B−2)を得た。
〔無機微粒子(B−3)〕
市販の超微粒子シリカ(日本アエロジル株式会社製、アエロジル(登録商標)OX 50、平均1次粒子径:0.04μm、屈折率:1.46、BET比表面積:50m2/g)100gに対し、エタノール300gを加え、超音波洗浄機にて1時間分散を行った。3−メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン7gと水5g及び酢酸0.1gを撹拌させた加水分解溶液を加え、1時間室温で撹拌した。溶媒を減圧留去し、さらに90℃で3時間乾燥することによって、表面処理剤で処理された無機微粒子(B−3)を得た。
〔重合性単量体(C)含有組成物(C−1)〕
[2,2,4−トリメチルヘキサメチレンビス(2−カルバモイルオキシエチル)]ジメタクリレート(UDMA)90質量部及びトリエチレングリコールジメタクリレート(TEGDMA)10質量部に、加熱重合開始剤として1,1,3,3−テトラメチルブチルヒドロペルオキシド(THP)0.5質量部を溶解させて、重合性単量体(C)含有組成物(C−1)を調製した(重合性単量体(C)含有組成物の硬化物の屈折率:1.51)。
〔重合性単量体(C)含有組成物(C−2)〕
[2,2,4−トリメチルヘキサメチレンビス(2−カルバモイルオキシエチル)]ジメタクリレート(UDMA)100質量部に、加熱重合開始剤として1,1,3,3−テトラメチルブチルヒドロペルオキシド(THP)0.5質量部を溶解させて、重合性単量体(C)含有組成物(C−2)を調製した(重合性単量体(C)含有組成物の硬化物の屈折率:1.51)。
〔実施例1〕
無機充填材(A−1)と無機微粒子(B−1)を質量比(B)/(A)=0.33になるよう測量し、#255のナイロンメッシュにて篩掛けを行い、篩下の混合粉末8.0g、14.5mm×18.0mmの長方形の穴を持つプレス用金型の下パンチ棒の上に敷いた。タッピングにより粉末をならし、上パンチをその上に載せ、テーブルプレス機を用い、面圧38.3MPaにてプレス成形を行って成形体を取り出した。さらに、当該成形体についてCIP工程によりプレス成形(圧力:170MPa、加圧時間:5分間)を行い、プレス成形体を得た。
得られたプレス成形体を重合性単量体(C)含有組成物(C−1)に浸漬し、減圧(100hPa)して脱気し、70℃48時間静置して、重合性単量体(C)含有組成物を含浸し、重合性単量体(C)含浸されたプレス成形体を得た。この重合性単量体(C)が含浸されたプレス成形体を熱風乾燥器を用い、110℃7時間加熱した後、150℃で7時間加熱して、目的とする直方体状の硬化物であるクラウンコア一体型歯科用ミルブランクを得た。
〔実施例2〜7〕
無機充填材(A)、無機微粒子(B)、重合性単量体(C)の種類と使用量をそれぞれ表1に記載されるように変更したこと以外は、実施例1と同様にして直方体状の硬化物であるクラウンコア一体型歯科用ミルブランクを得た。
〔比較例1〕
無機微粒子(B−1)と無機微粒子(B−3)を表2の記載になるよう測量し、#255のナイロンメッシュにて篩掛けを行い、篩下の混合粉末8.0g、14.5mm×18.0mmの長方形の穴を持つプレス用金型の下パンチ棒の上に敷いた。タッピングにより粉末をならし、上パンチをその上に載せ、テーブルプレス機を用い、面圧38.3MPaにてプレス成形を行って成形体を取り出した。さらに、当該成形体についてCIP工程によりプレス成形(圧力:170MPa、加圧時間:5分間)を行い、プレス成形体を得た。
得られたプレス成形体を重合性単量体(C)含有組成物(C−2)に浸漬し、減圧(100hPa)して脱気し、70℃48時間静置して、重合性単量体(C)含有組成物が含浸されたプレス成形体を得た。この重合性単量体(C)が含浸されたプレス成形体を熱風乾燥器を用い、110℃7時間加熱した後、150℃で7時間加熱して、目的とする直方体状の硬化物である歯科用ミルブランクを得た。
〔比較例2〜7〕
無機充填材(A)、無機微粒子(B)、重合性単量体(C)の種類と使用量をそれぞれ表2に記載されるように変更したこと以外は、比較例1と同様にして直方体状の硬化物である歯科用ミルブランクを得た。
(曲げ弾性率評価)
実施例及び比較例の硬化物の曲げ弾性率は、以下のように測定した。硬化物より試験片(寸法4mm×1.2mm×14mm)をダイヤモンドカッターにて切り出し、該試験片を10本作製し、37℃の蒸留水中に1週間保管した。万能試験機(株式会社島津製作所製、商品コード「AG−I 100kN」)を用いて、支点間距離10mm、クロスヘッドスピード1mm/分の条件下で曲げ弾性率を測定し、その平均値を算出し、曲げ弾性率とした。結果を表1、2に示す。曲げ弾性率は、15〜20GPaであれば好ましく、16〜19GPaであればより好ましい。
(ビッカース硬度評価)
実施例及び比較例の硬化物のビッカース硬度は、JIS Z 2244:2009に準じて以下のようにして測定した。各硬化物から、ダイヤモンドカッターにて板状試験片(10mm×10mm×1.3mm)を切り出し、平滑面を#1500研磨紙、#2000研磨紙、#3000研磨紙の順に乾燥条件下で研磨し、1.2mm厚みになった硬化物を37℃水中に1日浸漬した。浸漬した試験片を、微小硬さ試験機(HM−221 株式会社ミツトヨ製)を用いて、200gで10秒間荷重をかけて、ビッカース硬度を測定した。ビッカース硬度は、100〜170HVであれば好ましく、120〜160HVであればより好ましい。なお、本明細書において、ビッカース硬度の数値表記では、計測荷重の記載を省略する。
(滑沢耐久性評価)
実施例及び比較例の硬化物の滑沢耐久性は、以下のように測定した。各硬化物から、ダイヤモンドカッターにて板状試験片(10mm×10mm×1.3mm)を切り出し、平滑面を#1500研磨紙、#2000研磨紙、#3000研磨紙の順に乾燥条件下で研磨し、1.2mm厚みになった硬化物の研磨面をさらに、その表面を技工用ポリシングボックス(KaVoデンタル システムズ ジャパン株式会社製、VG−107)を用いて、この研磨面の光沢を、光沢度計(日本電色工業株式会社製、VG2000)にて測定し鏡を100%とした時、光沢度の初期値が90%以上になるように鏡面研磨した。作製した試験片を、滑沢耐久性試験として歯ブラシ磨耗試験{歯ブラシ:ビットウィーンライオン(硬さふつう)、歯磨き粉:デンタークリアーMAX(ライオン株式会社製)、荷重250g、試験溶液:蒸留水/歯磨き粉=90/10wt%(50mL)、磨耗回数4万回}に供した。歯ブラシ摩耗試験後の試験片の光沢度(残存光沢度)を測定した。滑沢耐久性は、残存光沢度が60%以上であれば好ましく、70%以上であればより好ましい。
(耐チッピング性評価)
実施例及び比較例の硬化物の耐チッピング性は、以下のように測定した。すなわち、各硬化物から、底辺の直径が10mm、高さ12mmの円錐状のサンプルを歯科用ミリング装置「DWX−50」(ローランド ディージー株式会社製)を用いたミリングによって削り出した。加工したサンプルを、3Dレーザー顕微鏡(株式会社キーエンス製、VK−9710)にて観察し、円錐状の先端部位にチッピングの有無を観察した。先端部にチッピングがある場合を「×」と判定し、無い場合を「○」と判定した。
(加工精度評価)
耐チッピング性評価にて作製した円錐状のサンプルの底辺をマイクロスコープ(株式会社キーエンス製、VHX−100)にて、その直径を測定した。基準直径10.00mmとし、それに対する誤差を加工精度の指標とした。測定値は、3回の平均とした。直径に対する誤差が、30μm未満が好ましく、さらに20μm未満であればより好ましい。
Figure 2020068871
Figure 2020068871
実施例1〜7において得られたクラウンコア一体型歯科用ミルブランクは、いずれも曲げ弾性率、ビッカース硬度、滑沢耐久性、耐チッピング性のすべてが良好であった。
比較例1、2、5において、無機充填材(A)がなく無機微粒子(B)のみの配合となっていることから、曲げ弾性率及びビッカース硬度が低く、さらに耐チッピング性についても不合格の判定であった。
比較例3においては、無機微粒子(B)がなく無機充填材(A)のみの配合となっていることから、無機充填材の間に隙間がある構造となり、滑沢耐久性が低い結果であった。
比較例4においては、無機微粒子(B)がなく無機充填材(A)のみの配合となっていることから、無機充填材の間に隙間がある構造となり、滑沢耐久性が低い結果であった。また、フィラーの種類に起因してビッカース硬度が高すぎ、かつ曲げ弾性率が高すぎることから、耐チッピング性についても不合格の判定であった。
比較例6は、無機充填材(A)の平均1次粒子径が大きく、かつ無機微粒子(B)との質量比が0.39と高く、無機充填材の間が柔らかく、ビッカース硬度が低く、かつ無機微粒子が摩耗することにより、滑沢耐久性が低い結果であった。また、ビッカース硬度が低いことから、耐チッピング性についても、不合格の判定であった。
比較例7は、2種類の無機微粒子(B)のみ含有されており、かつ含有量も多く、良好な曲げ弾性率を示し、粒子径が小さいことから、滑沢耐久性が良好である。一方で、粒子径が小さいことから、ビッカース硬度は低く、耐チッピング性について、不合格の判定であった。

Claims (7)

  1. 曲げ弾性率が15〜20GPaであり、ビッカース硬度が100〜170HVであり、かつ滑沢耐久性試験後の光沢度が60%以上である、クラウンコア一体型歯科用ミルブランク。
  2. 平均粒子径が0.3μm以上4μm以下である無機充填材(A)、平均粒子径が0.3μm未満である無機微粒子(B)、及び重合性単量体(C)に由来する構造を有する重合体を含む硬化物である、請求項1に記載のクラウンコア一体型歯科用ミルブランク。
  3. 無機充填材(A)、無機微粒子(B)、及び重合性単量体(C)に由来する構造を有する重合体の合計100質量部において、無機充填材(A)及び無機微粒子(B)の合計が70質量部以上である、請求項2に記載のクラウンコア一体型歯科用ミルブランク。
  4. 無機充填材(A)に対する無機微粒子(B)の質量比(B)/(A)が0.14〜0.35である、請求項2又は3に記載のクラウンコア一体型歯科用ミルブランク。
  5. 無機充填材(A)の平均粒子径が、0.3μm以上0.8μm未満である、請求項1〜4のいずれか1項に記載のクラウンコア一体型歯科用ミルブランク。
  6. 無機微粒子(B)の平均粒子径が、0.1μm未満である、請求項1〜5のいずれか1項に記載のクラウンコア一体型歯科用ミルブランク。
  7. 平均粒子径が0.3μm以上4μm以下である無機充填材(A)及び平均粒子径が0.3μm未満である無機微粒子(B)の混合物をプレス成型してなる無機充填材成形体と重合性単量体(C)含有組成物を接触させて、重合性単量体(C)を重合硬化させる、請求項1に記載のクラウンコア一体型歯科用ミルブランクの製造方法。
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