JP2020050784A - 複合樹脂粒子、発泡性粒子、発泡粒子及び発泡成形体 - Google Patents

複合樹脂粒子、発泡性粒子、発泡粒子及び発泡成形体 Download PDF

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Abstract

【課題】機械強度及び耐熱性が改善された発泡成形体を成形加工性よく製造可能な複合樹脂粒子を提供することを課題とする。【解決手段】高密度ポリエチレン系樹脂とカルボニル基を有するエチレン系共重合体とポリスチレン系樹脂とを含む発泡用の複合樹脂粒子であって、高密度ポリエチレン系樹脂とカルボニル基を有するエチレン系共重合体とポリスチレン系樹脂とが、以下の質量比:(i)前記高密度ポリエチレン系樹脂とカルボニル基を有するエチレン系共重合体の合計量/ポリスチレン系樹脂=5/95〜40/60、(ii)前記高密度ポリエチレン系樹脂/カルボニル基を有するエチレン系共重合体=5/95〜50/50で含まれ、前記複合樹脂粒子は、その表面をATR法により赤外分光分析することで得られる赤外線吸収スペクトルから算出された2850cm−1の吸光度(D2850)と698cm−1の吸光度(D698)との比である表面吸光度比D1(D698/D2850)と、前記複合樹脂粒子に由来する発泡粒子の融着体から構成される発泡成形体の表面をATR法により赤外分光分析することで得られる赤外線吸収スペクトルから算出された2850cm−1の吸光度(D2850)及び698cm−1の吸光度(D698)との比である表面吸光度比D2(D698/D2850)とが、D1=0.5〜2.5、D2/D1=0.1〜0.95を示す構造を有し、前記高密度ポリエチレン系樹脂が、935〜960kg/m3の密度を有することを特徴とする複合樹脂粒子により上記課題を解決する。【選択図】なし

Description

本発明は、複合樹脂粒子、発泡性粒子、発泡粒子及び発泡成形体に関する。具体的には、本発明は、機械強度及び耐熱性が改善された発泡成形体を成形加工性よく製造可能な複合樹脂粒子、その複合樹脂粒子に由来する発泡性粒子、発泡粒子及び発泡成形体に関する。
従来、樹脂成分としてポリスチレン系樹脂を含む発泡成形体が、成形加工性、断熱性、耐衝撃性、緩衝性等の優れた物性を有するため、包装用緩衝材、自動車用構造部材、建築用部材等として幅広く使用されている。
緩衝材の用途では、発泡成形体にはより高い耐衝撃性が特に求められるようになっている。そのため、このような特性を満たすものとして、樹脂成分としてポリスチレン系樹脂及びポリエチレン系樹脂を含む発泡成形体が提案されている(特許第6185872号公報:特許文献1)。
特許文献1には、種粒子100質量部と、種粒子にスチレン系モノマーを含浸重合させて得られたスチレン系重合体100〜500質量部とからなる樹脂分を含む複合樹脂粒子に由来する発泡成形体が記載されている。また、種粒子は、高密度ポリエチレン100質量部とエチレン共重合体20〜100質量部との混合樹脂を含み、
高密度ポリエチレンが、935〜960kg/mの密度と115〜130℃の軟化温度を有し、
エチレン共重合体が、アクリル酸アルキルエステル及び脂肪族飽和モノカルボン酸ビニルから選択されるエステル系モノマーとエチレンとの共重合体であり、エステル系モノマー由来成分を1〜20質量%含み、75〜110℃の軟化温度を有し、
アクリル酸アルキルエステルが、アクリル酸メチル及びアクリル酸エチルから選択され、
脂肪族飽和モノカルボン酸ビニルが、酢酸ビニル及びプロピオン酸ビニルから選択される、と記載されている。
特許第6185872号公報
特許文献1の実施例ではエチレン酢酸ビニル共重合体がエチレン共重合体として使用されている。しかし、特許文献1は、高密度ポリエチレン系樹脂量に対するエチレン共重合体量が少ないため、複合樹脂粒子に由来する発泡成形体の機械強度及び耐熱性、発泡成形体を製造する際の成形加工性に改善の余地があった。
本発明者は、鋭意検討の結果、エチレン共重合体の存在位置を特定の範囲内とすることで、エチレン酢酸ビニル共重合体のようなカルボニル基を有するエチレン共重合体を多く使用しても、発泡成形体の機械強度及び耐熱性、発泡成形体を製造する際の成形加工性を改善できることを見出し、本発明に至った。
かくして本発明によれば、高密度ポリエチレン系樹脂とカルボニル基を有するエチレン系共重合体とポリスチレン系樹脂とを含む発泡用の複合樹脂粒子であって、
高密度ポリエチレン系樹脂とカルボニル基を有するエチレン系共重合体とポリスチレン系樹脂とが、以下の質量比:
(i)前記高密度ポリエチレン系樹脂とカルボニル基を有するエチレン系共重合体の合計量/ポリスチレン系樹脂=5/95〜40/60、
(ii)前記高密度ポリエチレン系樹脂/カルボニル基を有するエチレン系共重合体=5/95〜50/50
で含まれ、
前記複合樹脂粒子は、
・その表面をATR法により赤外分光分析することで得られる赤外線吸収スペクトルから算出された2850cm−1の吸光度(D2850)と698cm−1の吸光度(D698)との比である表面吸光度比D1(D698/D2850)と、
・前記複合樹脂粒子に由来する発泡粒子の融着体から構成される発泡成形体の表面をATR法により赤外分光分析することで得られる赤外線吸収スペクトルから算出された2850cm−1の吸光度(D2850)及び698cm−1の吸光度(D698)との比である表面吸光度比D2(D698/D2850)とが、下記値:
D1=0.5〜2.5、
D2/D1=0.1〜0.95
を示す構造を有し、
前記高密度ポリエチレン系樹脂が、935〜960kg/mの密度を有することを特徴とする複合樹脂粒子が提供される。
また、本発明によれば、上記複合樹脂粒子と、発泡剤とを含む発泡性粒子が提供される。
更に、本発明によれば、上記発泡性粒子を発泡させて得られた発泡粒子が提供される。
また、本発明によれば、上記発泡粒子を発泡成形させて得られた発泡成形体が提供される。
本発明によれば、機械強度及び耐熱性が改善された発泡成形体を成形加工性よく製造可能な複合樹脂粒子を提供できる。
以下のいずれかの場合、より機械強度及び耐熱性が改善された発泡成形体を成形加工性よく製造可能な複合樹脂粒子を提供できる。
(1)カルボニル基を有するエチレン系共重合体がエチレン酢酸ビニル共重合体であり、エチレン酢酸ビニル共重合体が酢酸ビニル由来成分を1〜20質量%含む。
(2)高密度ポリエチレンが、40mN以上の160℃における溶融張力を有する。
(3)複合樹脂粒子が、高密度ポリエチレンとエチレン酢酸ビニル共重合体とを含む種粒子と、種粒子に含浸重合したスチレン系モノマー由来のポリスチレン系樹脂とを含む。
(4)高密度ポリエチレンの融点(T1)とエチレン酢酸ビニル共重合体の融点(T2)の差が10〜40℃であり、かつ種粒子の軟化温度(T3)が110〜125℃である。
(複合樹脂粒子)
複合樹脂粒子は、高密度ポリエチレン系樹脂とカルボニル基を有するエチレン系共重合体とポリスチレン系樹脂とを含む。なお、「複合」とは、粒子中に高密度ポリエチレン系樹脂とポリスチレン系樹脂とが存在することを意味する。
(1)高密度ポリエチレン系樹脂
高密度ポリエチレン系樹脂は、935〜960kg/mの密度を有する。
高密度ポリエチレン系樹脂の密度が935kg/m未満の場合、発泡成形体の衝撃吸収性が低下することがある。960kg/mより高い場合、重合工程時に樹脂成分が十分に軟化せず、複合樹脂粒子に由来する発泡性粒子が十分な発泡性を有さないことがある。密度は935〜950kg/mであることが好ましく、935〜940kg/mであることがより好ましい。
高密度ポリエチレン系樹脂は、160℃における溶融張力が40mN以上であり、MFRが2.5g/10分以下であることが好ましい。
また、高密度ポリエチレン系樹脂は、エチレンと炭素数3〜8のα−オレフィンの共重合体であることが好ましい。高密度ポリエチレン系樹脂には、市販品を使用できる。市販品としては、例えば、TOSOH−HMS 10S65B(東ソー社製)、ノバテックHD HY540(日本ポリエチレン社製)等が挙げられる。
なお、例えばニポロンZ ZF260(東ソー社製)やニポロンL M50(東ソー社製)等の密度935kg/m以上の直鎖状低密度ポリエチレン系樹脂が市販されているが、高密度ポリエチレン系樹脂に代えて、この直鎖状低密度ポリエチレン系樹脂を使用したとしても、機械強度及び耐熱性が十分改善された発泡成形体を成形加工性よく製造可能な複合樹脂粒子を得ることはできない。
(2)カルボニル基を有するエチレン系共重合体
カルボニル基を有するエチレン系共重合体(以下、エチレン系共重合体ともいう)は、上記ポリエチレン系樹脂を含まない。カルボニル基を有するエチレン系共重合体としては、エチレン酢酸ビニル共重合体、エチレン−アクリル酸共重合体、エチレン−アクリル酸アルキルエステル共重合体、エチレン−メタクリル酸共重合体、エチレン−メタクリル酸アルキルエステル共重合体等が挙げられる。エチレン系共重合体は、エチレン酢酸ビニル共重合体が好ましい。エチレン酢酸ビニル共重合体は、酢酸ビニル由来成分を1〜20質量%含むことが好ましい。酢酸ビニル由来成分の含有量が、1質量%未満の場合、発泡成形性が悪化し十分な成型加工性の向上効果が期待できないことがある。20質量%より多い場合、発泡成形体の強度が低下し十分な衝撃吸収性が付与できないことがある。含有量は、5〜15質量%であることが好ましく、8〜12質量%であることがより好ましい。
(3)ポリスチレン系樹脂
ポリスチレン系樹脂としては、スチレン単独重合体、又はスチレン単量体を主成分とし、スチレン単量体と共重合可能な他の単量体成分との共重合体等が挙げられる。ここで、主成分とは、スチレン単量体が全単量体成分100質量部中に50質量部以上、好ましくは60質量部以上、より好ましくは70質量部以上を占めることを意味する。
ポリスチレン系樹脂中に含まれる共重合体成分を与える他の単量体としては、所望の物性に影響を与えない限り、公知の単量体を使用できる。具体的には、環状オレフィン系単量体、ジエン系単量体、塩化ビニル、塩化ビニリデン、アクリロニトリル、酢酸ビニル、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、メタクリル酸メチル、無水マレイン酸及びメチルスチレンのようなビニル系単量体を挙げることができる。また、これらは1種又は2種以上で使用できる。
(4)高密度ポリエチレン系樹脂とカルボニル基を有するエチレン系共重合体とポリスチレン系樹脂との含有割合
複合樹脂粒子は、高密度ポリエチレン系樹脂とカルボニル基を有するエチレン系共重合体とポリスチレン系樹脂とを、高密度ポリエチレン系樹脂とカルボニル基を有するエチレン系共重合体の合計量/ポリスチレン系樹脂=5/95〜40/60の質量比で含む。合計量の質量比が5未満の場合、得られる発泡成形体の機械強度が低下することがある。40より多い場合、得られる発泡粒子の発泡成形可能期間が短くなることがある。質量比は、10/90〜40/60であることが好ましく、15/85〜35/65であることがより好ましい。
複合樹脂粒子は、高密度ポリエチレン系樹脂とカルボニル基を有するエチレン系共重合体とを、高密度ポリエチレン系樹脂/カルボニル基を有するエチレン系共重合体=5/95〜50/50の質量比で含む。高密度ポリエチレン系樹脂の質量比が5未満の場合、耐熱性が低下することがある。50より多い場合、発泡成形性が低下することがある。質量比は、20/80〜45/55であることがより好ましく、30/70〜40/60であることが更に好ましい。
(5)吸光度比(D698/D2850)
(a)複合樹脂粒子の表面吸光度比D1(D698/D2850)
複合樹脂粒子の表面は、0.5〜2.5の範囲の表面吸光度比D1(D698/D2850)を示す。D2850及びD698は、ATR法により赤外分光分析することで得られる赤外線吸収スペクトルから算出された2850cm−1の吸光度(D2850)及び698cm−1の吸光度(D698)である。D698は、ポリスチレン系樹脂に含まれるベンゼン環の面外変角振動に由来する吸収スペクトルに対応する吸光度である。一方、D2850は、高密度ポリエチレン系樹脂とエチレン系共重合体とに含まれる−C−CH炭化水素のCHの対称変角振動に由来する吸収スペクトルに対応する吸光度である。表面吸光度比が大きい場合、ポリスチレン系樹脂成分が多いことを意味し、小さい場合、少ないことを意味する。表面吸光度比が0.5未満の場合、得られる発泡成形体の機械強度が低下することがある。2.5より大きい場合、得られる発泡粒子の発泡成形可能期間が短くなることがある。表面吸光度比は、0.5〜2.2であることが好ましく、0.5〜2.0であることがより好ましく、1.0〜2.0であることが更に好ましい。
(b)発泡成形体の表面吸光度比D2(D698/D2850)とD1との比(D2/D1)
発泡成形体の表面吸光度比D2(D698/D2850)とD1との比(D2/D1)は、0.1〜0.95を示す。この比の範囲は、複合樹脂粒子の表面より、それから得られる発泡成形体の表面のポリスチレン系樹脂成分が少ないことを意味する。
ところで、実施例にも記載しているが、本明細書において、「表面」とは、ATR法により赤外線吸収スペクトルを測定可能な試料の約数μmまでの深さの領域を意味している。ここで、赤外線吸収スペクトルが測定された複合樹脂粒子の深さをX1、発泡成形体の測定深さが対応する複合樹脂粒子の深さをX2とすると、X1>X2の関係となる。これは、発泡成形体が、複合樹脂粒子を大きく発泡させた発泡粒子の融着体から構成されるためである。従って、発泡成形体の表面の吸光度比は、複合樹脂粒子の表面の吸光度比より、複合樹脂粒子の浅い領域の表面を測定していることになる。上記D1とD2/D1の範囲は、複合樹脂粒子の表面から深さX1の領域は、ポリスチレン系樹脂成分がより多くなっている。言い換えると、複合樹脂粒子は、最も表面に近い領域で、若干ポリスチレン系樹脂成分を多く含んでいることになる。このようなポリスチレン系樹脂成分の存在量の関係を有する複合樹脂粒子が、機械強度及び耐熱性が改善された発泡成形体を成形加工性よく製造可能であることは意外であると発明者は考えている。
更に言えば、本発明の複合樹脂粒子は、エチレン系共重合体を比較的多く含んでいる。このような複合樹脂粒子であっても、上記D1とD2/D1の範囲を満たすことで、機械強度及び耐熱性が改善された発泡成形体を成形加工性よく製造可能である。
D2/D1が、0.1未満の場合、発泡性が低下することがある。0.95より大きい場合、機械強度や耐熱性が期待された効果ほど得られないことがある。D2/D1は、0.2〜0.9であることが好ましく、0.3〜0.9であることがより好ましい。
また、D2は、0.5〜2.5であることが好ましく、0.5〜2.0であることがより好ましく、0.5〜1.5であることが更に好ましい。
(6)他の成分
他の成分としては、ポリエチレン系樹脂とエチレン系共重合体とポリスチレン系樹脂以外の樹脂(例えば、ポリプロピレン系樹脂、アクリル系樹脂)や、気泡調整剤、被覆剤、光安定剤、紫外線吸収剤、顔料、染料、消泡剤、熱安定剤、難燃剤、滑剤及び帯電防止剤を挙げることができる。
(7)形状
複合樹脂粒子の形状は球状〜略球状であることが好ましい。その平均粒子径は0.71〜2.5mmが好ましく、0.85〜1.6mmがより好ましい。
(複合樹脂粒子の製造方法)
複合樹脂粒子の製造方法としては、上で説明した複合樹脂粒子を得ることができさえすれば、特に限定されない。一例として、以下の製造方法により複合樹脂粒子を得ることができる。
即ち、高密度ポリエチレン系樹脂とエチレン系共重合体とを含む種粒子に含浸させたスチレン系モノマーを重合することにより複合樹脂粒子を得ることができる。この方法は、所謂、シード重合法である。シード重合法によれば、ポリエチレン系樹脂とエチレン系共重合体とが粒子表面に偏在した複合樹脂粒子を得ることができる。
より具体的な複合樹脂粒子の製造方法の一例を下記する。
まず、水性懸濁液中に、高密度ポリエチレン系樹脂とエチレン系共重合体とを含む種粒子と、スチレン系単量体と、重合開始剤とを分散させる。なお、スチレン系単量体と重合開始剤とを予め混合して用いてもよい。
種粒子は、公知の方法により得ることができる。例えば、高密度ポリエチレン系樹脂とエチレン系共重合体とを、必要に応じて添加剤(例えば、無機核剤)と共に、押出機中で溶融混練して押出すことでストランドを得、得られたストランドを、空気中でカット、水中でカット、加熱しつつカットすることで、造粒する方法が挙げられる。
また前記種粒子は、110〜130℃の軟化温度を有していることが好ましい。種粒子の軟化温度が110℃未満の場合、十分な加熱寸法安定性を有さないことがある。種粒子の軟化温度が135℃より高い場合、発泡成形性が悪く、生産性が悪化することがある。種粒子の軟化温度は114〜130℃であることが好ましく、116〜128℃であることがより好ましい。
重合開始剤としては、一般にスチレン系単量体の懸濁重合用の開始剤として用いられているものが使用できる。例えば、ベンゾイルパーオキサイド、ジ−t−ブチルパーオキサイド、t−ブチルパーオキシベンゾエート、ジクミルパーオキサイド、2,5−ジメチル−2,5−ジ−t−ブチルパーオキシヘキサン、t−ブチルパーオキシ−3,5,5−トリメチルヘキサノエート、t−ブチル−パーオキシ−2−エチルヘキシルカーボネート等の有機化過酸化物である。これらの重合開始剤は1種又は2種以上を使用できる。
水性懸濁液を構成する水性媒体としては、水、水と水溶性溶媒(例えば、低級アルコール)との混合媒体が挙げられる。
重合開始剤の使用量は、スチレン系単量体100質量部に対して、0.1〜0.9質量部が好ましく、0.2〜0.5質量部がより好ましい。重合開始剤の使用量が0.1質量部未満ではスチレン系単量体の重合に時間がかかり過ぎることがある。重合開始剤の使用量が0.9質量部を超えると、ポリスチレン系樹脂の分子量が低くなることがある。
水性懸濁液には、必要に応じて分散剤を添加してもよい。分散剤としては、特に限定されず、公知のものをいずれも使用できる。具体的には、リン酸カルシウム、ピロリン酸マグネシウム、ピロリン酸ナトリウム、酸化マグネシウム等の難溶性無機物が挙げられる。更に、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウムのような界面活性剤を使用してもよい。
次に、得られた分散液をスチレン系単量体が実質的に重合しない温度に加熱してスチレン系単量体を種粒子に含浸させる。種粒子内部にスチレン系単量体を含浸させる時間は、30分〜2時間が適当である。十分に含浸させる前に重合が進行するとポリスチレン系樹脂の重合体粉末を生成してしまうことがある。単量体が実質的に重合しない温度とは、高い方が含浸速度を速めるには有利であるが、重合開始剤の分解温度を考慮して決定する必要がある。
次いで、スチレン系単量体の重合を行う。重合は、特に限定されないが、115〜140℃で、1.5〜5時間行うことが好ましい。重合は、通常、加圧可能な密閉容器中で行われる。なお、スチレン系単量体の含浸と重合を複数回に分けて行ってもよい。複数回に分けることで、スチレン系樹脂の重合体粉末の発生を極力少なくできる。また、重合開始剤の分解温度を考慮して、スチレン系単量体を種粒子に含浸させてからではなく、スチレン系単量体を含浸させながら重合を行ってもよい。
上記方法により複合樹脂粒子を得ることができる。
好ましい複合樹脂粒子の製造方法としては、スチレン系単量体の含浸と重合を2回に分け、1回目の含浸時において、スチレン系単量体の投入後、重合前に、特定の温度でスチレン系単量体を種粒子に吸収させる工程を含む方法が挙げられる。この好ましい製造方法に使用される種粒子は、種粒子のDSC曲線に少なくとも2つ以上の融解ピーク温度(高温側をT1、低温側をT2)を有するものが好ましい。特定の温度範囲は、T1とT2の温度範囲内である。また、この好ましい製造方法に使用される種粒子は、種粒子のDSC曲線に少なくとも2つ以上の融解ピーク温度(高温側をT1、低温側をT2)を有し、TMA曲線で規定される軟化温度T3を有するものがより好ましい。特定の温度範囲は、T3とT1の温度範囲内であってもよい。特定の温度でスチレン系単量体を種粒子に吸収させる工程は、更に好ましくは使用される種粒子のTMA曲線で規定される軟化温度T3以上の温度であり、かつ使用する重合開始剤の10時間半減期温度T10℃〜T10+5℃の温度範囲内で行うことが好ましく、またスチレン系単量体を種粒子に吸収させる工程は、使用される重合開始剤の分解率が10〜20%に達する時間行うことが好ましい。更に、特定の温度でスチレン系単量体を種粒子に吸収させた場合、1回目の重合温度は、T2〜T1+10℃の範囲内であることが好ましい。
加えて、2回目の重合工程において、スチレン系単量体は、種粒子100質量部に対して1.5質量部/分以下の速度で投入しつつ重合を行うことが好ましい。
(発泡性粒子)
発泡性粒子は、上記複合樹脂粒子と、発泡剤とを含む。
発泡剤としては揮発性を有する公知の発泡剤を使用できる。例えば、プロパン、n−ブタン(ノルマルブタン)、i−ブタン(イソブタン)、n−ペンタン(ノルマルペンタン)、i−ペンタン(イソペンタン)、n−ヘキサン(ノルマルヘキサン)及びi−ヘキサン(イソヘキサン)の単独又はそれらの混合物を挙げられる。これらの内、より大きな発泡性能を発泡性粒子に導入できる、n−ブタン、i−ブタン、n−ペンタン、i−ペンタンのいずれかが好ましい。発泡剤は単独で用いてもよく2種以上を使用してもよい。
発泡剤の含有量は、複合樹脂粒子100質量部に対して、好ましくは5〜20質量部、より好ましくは8〜17質量部である。発泡剤の含有量が5質量部より低い場合、発泡剤量が不足し、発泡性粒子は十分な発泡性を有さないことがある。他方、発泡剤の含有量が20質量部より多い場合、発泡剤量が過剰となり、この場合も、発泡性粒子は十分な発泡性を有さないことがある。
発泡性粒子の形状は球状〜略球状であることが好ましい。その平均粒子径は0.71〜2.5mmが好ましく、0.85〜1.6mmがより好ましい。
発泡性粒子は、重合中もしくは重合終了後の複合樹脂粒子に発泡剤を含浸することで得ることができる。含浸は、それ自体公知の方法により行うことができる。例えば、重合中での含浸は、重合反応を密閉式の容器中で行い、容器中に発泡剤を圧入することにより行うことができる。重合終了後の含浸は、密閉式の容器中で、発泡剤を圧入することにより行われる。
(発泡粒子)
発泡粒子は、上記発泡性粒子を発泡(予備発泡とも称する)させて得られた粒子である。
発泡粒子は、好ましくは20〜100kg/m、より好ましくは25〜100kg/mの嵩密度を有する。嵩密度が20kg/mより低いと、得られる発泡成形体の機械特性が低下することがある。一方、嵩密度が100kg/mより高いと、得られる発泡成形体の質量が増加することがある。
発泡粒子の形状は球状〜略球状であることが好ましい。その平均粒子径は、1.0〜9.0mmであることが好ましく、2.0〜6.4mmであることがより好ましい。
発泡粒子は、発泡性粒子を、公知の方法で所定の嵩密度に発泡させることで得ることができる。発泡は、好ましくは0.05〜0.20MPa(ゲージ圧)、より好ましくは0.06〜0.15MPaの加熱蒸気を使用して発泡性粒子を発泡させることにより得ることができる。
(発泡成形体)
発泡成形体は、上記発泡粒子を発泡成形させて得られ、発泡粒子の融着体から構成された発泡体である。発泡成形体は、上記複合樹脂粒子を原料として使用するため、優れた機械特性を有する。
発泡成形体の密度は、20〜100kg/mであることが好ましく、25〜100kg/mであることがより好ましい。
発泡成形体は、発泡粒子を発泡成形機の金型内に充填し、再度加熱して発泡粒子を発泡させながら、発泡粒子同士を熱融着させることで得ることができる。加熱用の媒体は水蒸気が好適に使用できる。
各製造工程における工程温度、工程圧力及び工程時間のようなその他の製造条件は、使用する製造設備、原料等に従って適宜設定される。
発泡成形体は、自動車部材、部品梱包材及び緩衝材に使用できる。
以下、実施例及び比較例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
(高密度ポリエチレン系樹脂の密度)
高密度ポリエチレン系樹脂の密度は、JIS K6922−1:1998に準拠して密度勾配管法で測定した。
(高密度ポリエチレン系樹脂のメルトフローレート(MFR))
MFRは、JIS K6922−1:1998に準拠して、190℃、2.16kgの荷重下で測定した。
(高密度ポリエチレン系樹脂の融点)
融点は、JIS K7122:1987「プラスチックの転移熱測定方法」記載の方法により測定した。即ち、示差走査熱量計装置RDC220型(セイコー電子工業社製)を用い、測定容器に試料を7mg充填して、窒素ガス流量30mL/分のもと、室温から220℃の間で10℃/Lの昇、降温スピードにより昇温、降温、昇温を繰り返し、2回目の昇温時のDSC曲線の融解ピーク温度を測定した。この融解ピーク温度を融点とした。また、融解ピークが2つ以上ある場合は、低い側のピーク温度を融点とした。
(溶融張力(160℃)の測定)
ポリオレフィン系樹脂に、耐熱安定剤(チバスペシャリティケミカルズ社製、イルガノックス1010TM;1500ppm、イルガフォス168TM;1500ppm)を添加したものを、インターナルミキサー(東洋精機製作所社製、商品名ラボプラストミル)を用いて、窒素気流下、190℃、回転数30rpmで30分間混練したもの測定用試料とした。
バレル直径9.55mmの毛管粘度計(東洋精機制作所社製、商品名キャピログラフ)に、長さが8mm、直径が2.095mmのダイス状の試料を流入角が90°になるように装着して溶融張力を測定した。
160℃での溶融張力は温度を160℃に設定し、ピストン降下速度を10mm/分、延伸比を47に設定し、引き取りに必要な荷重(mN)とした。なお、最大延伸比が47未満の場合、破断しない最高の延伸比での引き取りに必要な荷重(mN)とした。
(種粒子の融解ピーク温度)
融点は、JIS K7122:1987「プラスチックの転移熱測定方法」に記載の方法により測定した。
すなわち、示差走査熱量計装置DSC6220型(エスアイアイナノテクノロジー社製)を用い、アルミニウム製測定容器の底にすきまのないよう試料を約6mg充てんした。次いで、窒素ガス流量20mL/minのもと、30℃から−40℃まで降温した後10分間保持し、−40℃から220℃まで昇温(1st Heating)、10分間保持後220℃から−40℃まで降温(Cooling)、10分間保持後−40℃から220℃まで昇温(2nd Heating)した時のDSC曲線を得た。なお、全ての昇温・降温は速度10℃/minで行い、基準物質としてアルミナを用いた。
装置付属の解析ソフトを用いて、2nd Heating過程にみられる融解ピークのトップの温度を読みとった値を融点とした。融解ピークが2つ以上ある場合、最も深いピークとその次に深いピークとを選択し、低い温度側のピークを融解ピーク温度T1(℃)と高い温度側のピークを融解ピーク温度T2(℃)とした。
(エチレン系共重合体及び種粒子の軟化温度)
JIS K7196:1991「熱可塑性プラスチックフィルム及びシートの熱機械分析による軟化温度試験方法」記載の方法に準拠し測定した。
すなわち、試料を180℃で5分間熱プレスして、厚み1mm、直径10mmの円盤プレート状試験片を作製する。熱・応力・歪み測定装置(エスアイアイ・ナノテクノロジー社製、商品名「EXSTRAR TMA/SS6100」)を用い、窒素雰囲気下で針入試験モード(針の先端 φ1mm、石英製プローブ)、荷重500mNで、試験片に針を当てて、30℃から昇温速度5℃/minで温度を上げていきTMA曲線を得た。得られたTMA曲線を装置付属の解析ソフトで石英係数設定による補正を行い、TMA曲線の圧子(針)が侵入を始めるよりも低温側に認められる直線部分を高温側に延長し、侵入速度が最大となる部分の接線の低温側への延長との交点を針入温度とし、その針入温度をこの試料の軟化温度とした。
(複合樹脂粒子の吸光度比(D698/D2850))
(a)表面の吸光度比(D698/D2850)を次の要領で測定した。
なお、赤外吸収スペクトルから得られる各吸光度は、複合樹脂粒子に含まれる各樹脂成分の振動に由来するピークの高さとした。
無作為に選択した10個の粒子について、赤外分光分析ATR測定法により粒子断面分析を行って赤外吸収スペクトルを得た。この分析では、試料表面から数μm(約2μm)までの深さの範囲の赤外吸収スペクトルが得られた。
各赤外吸収スペクトルから個別の吸光度比(D698/D2850)を算出し、それらの相加平均を吸光度比とした。
吸光度D698及びD2850は、Nicolet社から商品名「フーリエ変換赤外分光分析計 MAGNA560」で販売されている測定装置と、ATRアクセサリーとしてSpectra−Tech社製「サンダードーム」を用いて次の条件で測定した。
(1)測定条件
高屈折率結晶種:Ge(ゲルマニウム)
入射角:45°±1°
測定領域:4000cm−1〜675cm−1
測定深度の端数依存性:補正せず
反射回数:1回
検出器:DTGS KBr
分解能:4cm−1
積算回数:32回
その他:試料と接触させずに赤外線吸収スペクトルを下記の条件で測定し、測定されたスペクトルをバックグラウンドとした。試料の測定時には、バックグラウンドが測定スペクトルに関与しないように、測定データを処理した。ATR法では、試料と高屈折率結晶の密着度合によって、赤外吸収スペクトルの強度が変化した。そのため、ATRアクセサリーの「サンダードーム」で掛けられる最大荷重を掛けて密着度合をほぼ均一にして測定を行った。
(2)バックグランド測定条件
モード:透過
ピクセルサイズ:6.25μm
測定領域:4000cm−1〜650cm−1
検出器:MCT
分解能:8cm−1
スキャン/ピクセル:60回
その他:試料近傍の試料のない部分のフッ化バリウム結晶を測定した赤外吸収スペクトルをバックグランドとして測定スペクトルに関与しない処理を実施した。
以上の条件で得られた赤外線吸収スペクトルについて、次のようにピーク処理をしてそれぞれの吸光度を求めた。
赤外吸収スペクトルから得られる698cm−1での吸光度D698は、ポリスチレン系樹脂に含まれるベンゼン環の面外変角振動に由来する吸収スペクトルに対応する吸光度とした。この吸光度の測定では、698cm−1で他の吸収スペクトルが重なっている場合でもピーク分離を実施しなかった。吸光度D698は、2000cm−1と870cm−1を結ぶ直線をベースラインとして、710cm−1と685cm−1間の最大吸光度とした。
また、赤外吸収スペクトルから得られる2850cm−1での吸光度D2850は、ポリエチレン系樹脂とエチレン系共重合体とに含まれる−C−CH炭化水素のCHの対称変角振動に由来する吸収スペクトルに対応する吸光度とした。この吸光度の測定では、2850cm−1で他の吸収スペクトルが重なっている場合でもピーク分離を実施しなかった。吸光度D2850は、3125cm−1と2720cm−1を結ぶ直線をベースラインとして、2875cm−1と2800cm−1間の最大吸光度とした。
吸光度比からポリスチレン系樹脂とポリエチレン系樹脂及びエチレン系共重合体との組成割合を求める方法としては、ポリスチレン系樹脂とポリエチレン系樹脂及びエチレン系共重合体とを所定の組成割合に均一に混合してなる複数種類の標準試料を作製し、各標準試料についてATR法赤外分光分析により粒子表面分析を行なって赤外線吸収スペクトルを得た。得られた赤外吸収スペクトルのそれぞれから吸光度比を算出した。そして、縦軸に組成割合(標準試料中のポリスチレン系樹脂比率(質量%))を、横軸に吸光度比(D698/D2850)をとることで、検量線を描いた。この検量線に基づいて、本発明の複合樹脂粒子の吸光度比から、本発明の複合樹脂粒子におけるポリスチレン系樹脂とポリエチレン系樹脂及びエチレン系共重合体との組成割合を求めた。
なお、前記検量線は、下記の式で近似した。
・D698/D2850≦1.42の場合
Y=21.112X
・1.42<(D698/D2850)<8.24の場合
Y=28.415Ln(X)+20.072
式中、X=(D698/D2850)、Y=ポリスチレン系樹脂量(%)
(発泡成形体の吸光度比(D698/D2850))
発泡成形体の吸光度比は、発泡成形体に以下の処理を施した後、複合樹脂粒子と同様に、測定した。
発泡成形体を120℃のオーブンに6〜12時間投入することで、発泡成形体の密度を500kg/m以上まで収縮処理を行うことで、ポリマー同士が点接着したポーラス形状の成形体を作製した。この得られた成形体から複合樹脂粒子を剥離採取することで吸光度比測定用のサンプルを得た。
(発泡粒子の嵩密度)
発泡粒子の嵩密度は、下記の要領で測定した。まず、発泡粒子をメスシリンダーに500cmの目盛りまで充填した。但し、メスシリンダーを水平方向から目視し、発泡粒子が一粒でも500cmの目盛りに達していれば、充填を終了した。次に、メスシリンダー内に充填した発泡粒子の質量を小数点以下2位の有効数字で秤量し、その質量をW(g)とした。次式により発泡粒子の嵩密度を算出した。
嵩密度(kg/m)=W/500×1000
(発泡成形体の密度)
発泡成形体(成形後、50℃で4時間以上乾燥させたもの)から切り出した試験片(例75mm×300mm×35mm)の質量(a)と体積(b)をそれぞれ有効数字3桁以上になるように測定し、式(a)/(b)により発泡成形体の密度(kg/m)を求めた。
(落球衝撃値)
発泡成形体を、215mm×40mm×20mmの大きさにカットしたサンプルを作製し、このサンプルを、155mmのスパンで配置された一対の保持部材上に載置したのち、両保持部材の中間位置でかつサンプルの幅方向の中心位置に、所定の高さから重さ321gの鋼球を落下させて、サンプルの破壊の有無を確認した。
この試験は、鋼球を落下させる高さを変えて繰り返し行い、サンプルが破壊された高さの最低値を落球衝撃値とし、衝撃強度を評価した。従って、落球衝撃値が高いほど衝撃強度は高くなった。
(発泡成形体の25%圧縮強度)
圧縮強度は、JIS K7220:2006「硬質発泡プラスチック−圧縮特性の求め方」記載の方法により測定した。すなわち、テンシロン万能試験機UCT−10T(オリエンテック社製)を用いて、50mm×50mm×25mmのサイズの試験体について、圧縮速度10mm/分として25%圧縮時(10mm変位時)の圧縮強度を測定した。
(耐熱収縮率)
発泡成形体の耐熱収縮率をJIS K6767:1999「発泡プラスチック−ポリエチレン−試験方法」記載のB法にて測定した。具体的には、発泡成形体から縦150mm×横150mm×高さ20mmの試験片を切り出した。前記試験片の表面に、縦方向に指向する長さ50mmの直線を3本、互いに平行に50mm間隔毎に記入すると共に、横方向に指向する長さ50mmの直線を3本、互いに平行に50mm間隔毎に記入した。しかる後、試験片を80℃の熱風循環式乾燥機の中に168時間に亘って放置した後に取出し、標準状態(20±2℃、湿度65±5%)の場所にて1時間に亘って放置した。次に、試験片の表面に記入した6本の直線の長さをそれぞれ測定し、6本の直線の長さの相加平均値L1を算出した。下記の式に基づいて変化度Sを算出し、変化度Sの絶対値を耐熱収縮率(%)とした。
S=100×(L1−50)/50
耐熱収縮率について、
○(良) :0≦S<1.5;寸法変化率が低く、寸法の安定性が良好であった
×(不可):S≧1.5;寸法の変化が著しく見られた
(燃焼性)
燃焼性は、米国自動車安全基準FMVSS 302に準拠した方法で測定した燃焼速度により評価した。但し、難燃剤を添加した試料のみ燃焼性を評価した。試験片は、350mm×100mm×12mm(厚み)とし、少なくとも350mm×100mmの二面には表皮が存在するものとした。
燃焼速度は、以下の基準で評価した。
○:所定の嵩発泡倍数の発泡成形体において、燃焼速度が80mm/min以下の場合もしくは、所定の嵩発泡倍数の発泡成形体において、測定開始点に達する前に消火した場合。この場合の燃焼速度をAE(自己消火性)とした。
×:所定の嵩発泡倍数の発泡成形体において、燃焼速度が80mm/minより大きい場合
(成型性)
発泡粒子を発泡成形機の300mm×400mm×30mmの金型内に充填し、水蒸気により加熱して予備発泡粒子を発泡させながら、発泡粒子同士を熱融着させた。
水蒸気による加熱の際、水蒸気の蒸気圧力を0.08MPaから0.25MPaまで0.01MPa刻みで変化させて50秒間水蒸気を導入し成型テストを実施した。
得られた発泡成形体の、融着率を前記評価基準によって評価し、融着率が90%以上えられた最も低い蒸気圧力を基に、以下の基準で評価した。
〇:0.10MPa以下の蒸気圧で融着率90%以上の発泡成形体が得られた。低い蒸気調圧での融着良好な発泡成形体が得られ、高い生産性を有していた。
×:0.10MPaを超える蒸気圧が融着率90%以上の発泡成形体を得るためには必要であり、生産性に難が見られた。
実施例1
高密度ポリエチレン系樹脂〔A樹脂:東ソー社製、品番10S65B、密度940kg/m、MFR2.0g/10分、融点126℃、160℃における溶融張力70mN〕とエチレン酢酸ビニル共重合体〔B樹脂:日本ポリエチレン製、品番LV−115、MFR0.3g/10分、融点108℃、軟化温度80℃、酢酸ビニル含有量4質量%〕とを20:80の質量比になるようにタンブラーミキサーに投入し、10分間混合した。
次いで、この樹脂混合物を押出機に供給して温度230〜250℃で溶融混練し、水中カット方式により造粒して楕円球状(卵状)に切断し、改質高密度ポリエチレン系樹脂よりなる種粒子を得た。なお、この種粒子の平均質量は0.6mgであった。
次に、撹拌機付の5リットルのオートクレーブに、ピロリン酸マグネシウム40g、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム0.6gを純水2kgに分散させて分散用媒体を得た。分散用媒体に30℃で種粒子400gを分散させて10分間保持し、次いで60℃に昇温して懸濁液を得た。更に、この懸濁液に、重合開始剤としてジクミルパーオキサイド(10時間半減期温度T10は116.4℃)を0.4g溶解させたスチレン200gを30分かけて滴下した。滴下後、120℃に60分(1℃/分)かけて昇温し、120℃で60分間保持することで、種粒子中にスチレンを含浸させた。含浸後、135℃に15分(1℃/分)かけて昇温し、この温度で2時間重合(第1重合)させた。
次に、115℃に下げた懸濁液中に、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム3gを純水20gに分散させ10分かけて滴下した後、t−ブチルパーオキシベンゾエート(10時間半減期温度T10は104.3℃)を5g溶解させたスチレン1400gを0.50質量部/秒の速度(種粒子100質量部に対する速度)で滴下した。その後、気泡調整剤としてエチレンビスステアリン酸アミド3gを純水100gに分散させて作製した分散媒体を30分かけて滴下し、滴下後、115℃で1時間保持することで、種粒子中にスチレン及び気泡調整剤を含浸させた。含浸後、140℃に昇温し、この温度で3時間保持して重合(第2重合)させた。この重合の結果、複合樹脂粒子を得ることができた(種粒子とポリスチレンとの質量比20/80)。
次いで、30℃以下まで冷却し、オートクレーブから複合樹脂粒子を取り出した。複合樹脂粒子2kgと水2リットル、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム2.0gとを、5リットルの撹拌機付オートクレーブに入れた。更に、発泡剤としてブタン(n−ブタン:i−ブタン=7:3)15質量部300g(520mL)をオートクレーブに入れた。この後、70℃に昇温し、4時間撹拌を続けることで発泡性粒子を得ることができた。その後、30℃以下まで冷却して、発泡性粒子をオートクレーブから取り出し、脱水乾燥させた。
次いで、得られた発泡性粒子を嵩密度29kg/mに発泡させることで、発泡粒子を得た。得られた発泡粒子を1日間室温(23℃)に放置した後、400mm×300mm×30mmの大きさの成形用金型に入れた。
その後、0.06MPaの水蒸気を50秒間導入して加熱し、次いで、発泡成形体の最高面圧が0.01MPaに低下するまで冷却することで、密度29kg/mの発泡成形体を得た。
得られた発泡成形体の外観及び融着は共に良好であった。得られた発泡成形体の80℃×7日間の条件下における寸法変化率、圧縮強度、表面吸光度比、落球衝撃値を測定した。結果を表に示す。
実施例2
実施例1と同様に平均質量0.6mgの種粒子を得た。
次に、撹拌機付の5リットルのオートクレーブに、ピロリン酸マグネシウム40g、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム0.6gを純水2kgに分散させて分散用媒体を得た。分散用媒体に30℃で種粒子800gを分散させて10分間保持し、次いで60℃に昇温して懸濁液を得た。更に、この懸濁液に、重合開始剤としてジクミルパーオキサイドを0.8g溶解させたスチレン400gを30分かけて滴下した。滴下後、120℃に60分(1℃/分)かけて昇温し、120℃で60分間保持することで、種粒子中にスチレンを含浸させた。含浸後、135℃に15分(1℃/分)かけて昇温し、この温度で2時間重合(第1重合)させた。
次に、115℃に下げた懸濁液中に、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム3gを純水20gに分散させ10分かけて滴下した後、t−ブチルパーオキシベンゾエートを1.8g溶解させたスチレン800gを0.50質量部/秒の速度(種粒子100質量部に対する速度)で滴下した。その後、気泡調整剤としてエチレンビスステアリン酸アミド3gを純水100gに分散させて作製した分散媒体を30分かけて滴下し、滴下後、115℃で1時間保持することで、種粒子中にスチレン及び気泡調整剤を含浸させた。含浸後、140℃に昇温し、この温度で3時間保持して重合(第2重合)させた。この重合の結果、複合樹脂粒子を得ることができた(種粒子とポリスチレンとの質量比40/60)。
その後、反応系の温度を60℃にして、この懸濁液中に、難燃剤としてトリス(2,3−ジブロモプロピル)イソシアヌレート(日本化成社製:TAIC6B)50gと、難燃助剤としてジクミルパーオキサイド(DCP)10gとを投入した。投入後、反応系の温度を130℃に昇温し、2時間撹拌を続けることで難燃剤を含有した複合樹脂粒子を得た。
次いで、実施例1と同様にして、発泡性粒子、発泡粒子(嵩密度29kg/m)及び発泡成形体(密度29kg/m)を得た。
得られた発泡成形体の外観及び融着は共に良好であった。得られた発泡成形体の80℃×7日間の条件下における寸法変化率、圧縮強度、表面吸光度比、落球衝撃値を測定した。結果を表に示す。また、難燃剤添加の効果を確認するため、燃焼性の測定も行った。
実施例3
高密度ポリエチレン系樹脂とエチレン酢酸ビニル共重合体とを40:60の質量比になるようにすること以外は実施例1と同様にして種粒子を得た。
撹拌機付の5リットルのオートクレーブに、ピロリン酸マグネシウム40g、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム0.6gを純水2kgに分散させて分散用媒体を得た。分散用媒体に30℃で種粒子600gを分散させて10分間保持し、次いで60℃に昇温して懸濁液を得た。更に、この懸濁液に、重合開始剤としてジクミルパーオキサイドを0.6g溶解させたスチレン300gを30分かけて滴下した。滴下後、120℃に60分(1℃/分)かけて昇温し、120℃で60分間保持することで、種粒子中にスチレンを含浸させた。含浸後、135℃に15分(1℃/分)かけて昇温し、この温度で2時間重合(第1重合)させた。
次に、115℃に下げた懸濁液中に、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム3gを純水20gに分散させ10分かけて滴下した後、t−ブチルパーオキシベンゾエートを2.1g溶解させたスチレン1100gを0.50質量部/秒の速度(種粒子100質量部に対する速度)で滴下した。その後、気泡調整剤としてエチレンビスステアリン酸アミド3gを純水100gに分散させて作製した分散媒体を30分かけて滴下し、滴下後、115℃で1時間保持することで、種粒子中にスチレン及び気泡調整剤を含浸させた。含浸後、140℃に昇温し、この温度で3時間保持して重合(第2重合)させた。この重合の結果、複合樹脂粒子を得ることができた(種粒子とポリスチレンとの質量比30/70)。
その後、反応系の温度を60℃にして、この懸濁液中に、難燃剤としてトリス(2,3−ジブロモプロピル)イソシアヌレート(日本化成社製:TAIC6B)50gと、難燃助剤としてビスクミル10gとを投入した。投入後、反応系の温度を130℃に昇温し、2時間撹拌を続けることで難燃剤を含有した複合樹脂粒子を得た。
次いで、実施例1と同様にして、発泡性粒子、発泡粒子(嵩密度29kg/m)及び発泡成形体(密度29kg/m)を得た。
得られた発泡成形体の外観及び融着は共に良好であった。得られた発泡成形体の80℃×7日間の条件下における寸法変化率、圧縮強度、表面吸光度比、落球衝撃値を測定した。結果を表に示す。また、難燃剤添加の効果を確認するため、燃焼性の測定も行った。
実施例4
エチレン酢酸ビニル共重合体として〔日本ポリエチレン製、品番LV−430、MFR1.0g/10分、融点89℃、軟化温度73℃、酢酸ビニル由来成分含有量15重量%〕を使用し、高密度ポリエチレン系樹脂とエチレン酢酸ビニル共重合体とを30:70の質量比になるようにすること以外は実施例1と同様にして種粒子を得た。
撹拌機付の5リットルのオートクレーブに、ピロリン酸マグネシウム40g、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム0.6gを純水2kgに分散させて分散用媒体を得た。分散用媒体に30℃で種粒子300gを分散させて10分間保持し、次いで60℃に昇温して懸濁液を得た。更に、この懸濁液に、重合開始剤としてジクミルパーオキサイドを0.3g溶解させたスチレン150gを30分かけて滴下した。滴下後、115℃に55分(1℃/分)かけて昇温し、115℃で60分間保持することで、種粒子中にスチレンを含浸させた。含浸後、130℃に15分(1℃/分)かけて昇温し、この温度で2時間重合(第1重合)させた。
次に、115℃に下げた懸濁液中に、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム3gを純水20gに分散させ10分かけて滴下した後、t−ブチルパーオキシベンゾエートを2.8g溶解させたスチレン1550gを0.40質量部/秒の速度(種粒子100質量部に対する速度)で滴下した。その後、気泡調整剤としてエチレンビスステアリン酸アミド3gを純水100gに分散させて作製した分散媒体を30分かけて滴下し、滴下後、115℃で1時間保持することで、種粒子中にスチレン及び気泡調整剤を含浸させた。含浸後、140℃に昇温し、この温度で3時間保持して重合(第2重合)させた。この重合の結果、複合樹脂粒子を得ることができた(種粒子とポリスチレンとの質量比15/85)。
次いで、実施例1と同様にして、発泡性粒子、発泡粒子(嵩密度29kg/m)及び発泡成形体(密度29kg/m)を得た。
実施例5
高密度ポリエチレン系樹脂として〔日本ポリエチレン社製、品番HY350、密度951kg/m、MFR2.5g/10分、融点132℃〕を使用し、高密度ポリエチレン系樹脂とエチレン酢酸ビニル共重合体とを10:90の質量比になるようにすること以外は実施例1と同様にして種粒子を得た。
撹拌機付の5リットルのオートクレーブに、ピロリン酸マグネシウム40g、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム0.6gを純水2kgに分散させて分散用媒体を得た。分散用媒体に30℃で種粒子600gを分散させて10分間保持し、次いで60℃に昇温して懸濁液を得た。更に、この懸濁液に、重合開始剤としてジクミルパーオキサイドを0.6g溶解させたスチレン300gを30分かけて滴下した。滴下後、120℃に60分(1℃/分)かけて昇温し、120℃で60分間保持することで、種粒子中にスチレンを含浸させた。含浸後、135℃に15分(1℃/分)かけて昇温し、この温度で2時間重合(第1重合)させた。
次に、115℃に下げた懸濁液中に、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム3gを純水20gに分散させ10分かけて滴下した後、t−ブチルパーオキシベンゾエートを2.1g溶解させたスチレン1100gを0.30質量部/秒の速度(種粒子100質量部に対する速度)で滴下した。その後、気泡調整剤としてエチレンビスステアリン酸アミド3gを純水100gに分散させて作製した分散媒体を30分かけて滴下し、滴下後、115℃で1時間保持することで、種粒子中にスチレン及び気泡調整剤を含浸させた。含浸後、140℃に昇温し、この温度で3時間保持して重合(第2重合)させた。この重合の結果、複合樹脂粒子を得ることができた(種粒子とポリスチレンとの質量比30/70)。
次いで、実施例1と同様にして、発泡性粒子、発泡粒子(嵩密度29kg/m)及び発泡成形体(密度29kg/m)を得た。
比較例1
高密度ポリエチレン系樹脂とエチレン酢酸ビニル共重合体とを70:30の質量比になるようにすること以外は実施例1と同様にして種粒子を得た。
撹拌機付の5リットルのオートクレーブに、ピロリン酸マグネシウム40g、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム0.6gを純水2kgに分散させて分散用媒体を得た。分散用媒体に30℃で種粒子600gを分散させて10分間保持し、次いで60℃に昇温して懸濁液を得た。更に、この懸濁液に、重合開始剤としてジクミルパーオキサイドを0.6g溶解させたスチレン300gを30分かけて滴下した。滴下後、120℃に60分(1℃/分)かけて昇温し、120℃で60分間保持することで、種粒子中にスチレンを含浸させた。含浸後、135℃に15分(1℃/分)かけて昇温し、この温度で2時間重合(第1重合)させた。
次に、115℃に下げた懸濁液中に、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム3gを純水20gに分散させ10分かけて滴下した後、t−ブチルパーオキシベンゾエートを2.1g溶解させたスチレン1100gを0.50質量部/秒の速度(種粒子100質量部に対する速度)で滴下した。その後、気泡調整剤としてエチレンビスステアリン酸アミド3gを純水100gに分散させて作製した分散媒体を30分かけて滴下し、滴下後、115℃で1時間保持することで、種粒子中にスチレン及び気泡調整剤を含浸させた。含浸後、140℃に昇温し、この温度で3時間保持して重合(第2重合)させた。この重合の結果、複合樹脂粒子を得ることができた(種粒子とポリスチレンとの質量比30/70)。
次いで、実施例1と同様にして、発泡性粒子、発泡粒子(嵩密度29kg/m)及び発泡成形体(密度29kg/m)を得た。
比較例2
エチレン酢酸ビニル共重合体を使用しないこと以外は実施例1と同様にして種粒子を得た。
撹拌機付の5リットルのオートクレーブに、ピロリン酸マグネシウム40g、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム0.6gを純水2kgに分散させて分散用媒体を得た。分散用媒体に30℃で種粒子800gを分散させて10分間保持し、次いで60℃に昇温して懸濁液を得た。更に、この懸濁液に、重合開始剤としてジクミルパーオキサイドを0.8g溶解させたスチレン400gを30分かけて滴下した。滴下後、120℃に60分(1℃/分)かけて昇温し、120℃で60分間保持することで、種粒子中にスチレンを含浸させた。含浸後、135℃に15分(1℃/分)かけて昇温し、この温度で2時間重合(第1重合)させた。
次に、115℃に下げた懸濁液中に、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム3gを純水20gに分散させ10分かけて滴下した後、t−ブチルパーオキシベンゾエートを1.8g溶解させたスチレン800gを0.50質量部/秒の速度(種粒子100質量部に対する速度)で滴下した。その後、気泡調整剤としてエチレンビスステアリン酸アミド3gを純水100gに分散させて作製した分散媒体を30分かけて滴下し、滴下後、115℃で1時間保持することで、種粒子中にスチレン及び気泡調整剤を含浸させた。含浸後、140℃に昇温し、この温度で3時間保持して重合(第2重合)させた。この重合の結果、複合樹脂粒子を得ることができた(種粒子とポリスチレンとの質量比40/60)。
次いで、実施例1と同様にして、発泡性粒子、発泡粒子(嵩密度29kg/m)及び発泡成形体(密度29kg/m)を得た。
比較例3
高密度ポリエチレン系樹脂〔東ソー社製、品番09S53B、密度936kg/m、MFR2.6g/10分、融点123℃〕を使用し、エチレン酢酸ビニル共重合体を使用しないこと以外は実施例1と同様にして種粒子を得た。
撹拌機付の5リットルのオートクレーブに、ピロリン酸マグネシウム40g、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム0.6gを純水2kgに分散させて分散用媒体を得た。分散用媒体に30℃で種粒子600gを分散させて10分間保持し、次いで60℃に昇温して懸濁液を得た。更に、この懸濁液に、重合開始剤としてジクミルパーオキサイドを0.6g溶解させたスチレン300gを30分かけて滴下した。滴下後、30分間保持することで、種粒子中にスチレンを含浸させた。含浸後、140℃に昇温し、この温度で2時間重合(第1重合)させた。
次に、120℃に下げた懸濁液中に、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム3gを純水20gに分散させ10分かけて滴下した後、ジクミルパーオキサイドを2.5g溶解させたスチレン1100gを0.50質量部/秒の速度(種粒子100質量部に対する速度)で滴下した。滴下後、気泡調整剤としてエチレンビスステアリン酸アミド3gを純水100gに分散させて作製した分散媒体を30分かけて滴下した。次いで、140℃に昇温し、この温度で3時間保持して重合(第2重合)させた。この重合の結果、複合樹脂粒子を得ることができた(種粒子とポリスチレンとの質量比30/70)。
その後、反応系の温度を60℃にして、この懸濁液中に、難燃剤としてトリス(2,3−ジブロモプロピル)イソシアヌレート(日本化成社製:TAIC6B)50gと、難燃助剤としてジクミルパーオキサイド(DCP)10gとを投入した。投入後、反応系の温度を130℃に昇温し、2時間撹拌を続けることで難燃剤を含有した複合樹脂粒子を得た。
次いで、実施例1と同様にして、発泡性粒子、発泡粒子(嵩密度29kg/m)及び発泡成形体(密度29kg/m)を得た。
比較例4
高密度ポリエチレン系樹脂の代わりに直鎖状低密度ポリエチレン〔日本ポリエチレン社製、品番NF444A、密度912kg/m、MFR2g/10分、融点121℃〕を使用すること以外は実施例1と同様にして種粒子を得た。
撹拌機付の5リットルのオートクレーブに、ピロリン酸マグネシウム40g、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム0.6gを純水2kgに分散させて分散用媒体を得た。分散用媒体に30℃で種粒子800gを分散させて10分間保持し、次いで60℃に昇温して懸濁液を得た。更に、この懸濁液に、重合開始剤としてジクミルパーオキサイドを0.8g溶解させたスチレン400gを30分かけて滴下した。滴下後、120℃に60分(1℃/分)かけて昇温し、120℃で60分間保持することで、種粒子中にスチレンを含浸させた。含浸後、135℃に15分(1℃/分)かけて昇温し、この温度で2時間重合(第1重合)させた。
次に、115℃に下げた懸濁液中に、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム3gを純水20gに分散させ10分かけて滴下した後、t−ブチルパーオキシベンゾエートを1.8g溶解させたスチレン800gを0.50質量部/秒の速度(種粒子100質量部に対する速度)で滴下した。その後、気泡調整剤としてエチレンビスステアリン酸アミド3gを純水100gに分散させて作製した分散媒体を30分かけて滴下し、滴下後、115℃で1時間保持することで、種粒子中にスチレン及び気泡調整剤を含浸させた。含浸後、140℃に昇温し、この温度で3時間保持して重合(第2重合)させた。この重合の結果、複合樹脂粒子を得ることができた(種粒子とポリスチレンとの質量比40/60)。
その後、反応系の温度を60℃にして、この懸濁液中に、難燃剤としてトリス(2,3−ジブロモプロピル)イソシアヌレート(日本化成社製:TAIC6B)50gと、難燃助剤としてジクミルパーオキサイド(DCP)10gとを投入した。投入後、反応系の温度を130℃に昇温し、2時間撹拌を続けることで難燃剤を含有した複合樹脂粒子を得た。
次いで、実施例1と同様にして、発泡性粒子、発泡粒子(嵩密度29kg/m)及び発泡成形体(密度29kg/m)を得た。
比較例5
撹拌機付の5リットルのオートクレーブに、ピロリン酸マグネシウム40g、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム0.6gを純水2kgに分散させて分散用媒体を得た。分散用媒体に30℃で実施例1と同様の種粒子400gを分散させて10分間保持し、次いで60℃に昇温して懸濁液を得た。更に、この懸濁液に、重合開始剤としてジクミルパーオキサイドを0.4g溶解させたスチレン200gを30分かけて滴下した。滴下後、30分間保持することで、種粒子中にスチレンを含浸させた。含浸後、135℃に昇温し、この温度で2時間重合(第1重合)させた。
次に、120℃に下げた懸濁液中に、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム3gを純水20gに分散させ10分かけて滴下した後、t−ブチルパーオキシベンゾエートを2.1g溶解させたスチレン1400gを0.50質量部/秒の速度(種粒子100質量部に対する速度)で滴下した。滴下後、気泡調整剤としてエチレンビスステアリン酸アミド3gを純水100gに分散させて作製した分散媒体を30分かけて滴下した。次いで、135℃に昇温し、この温度で3時間保持して重合(第2重合)させた。この重合の結果、複合樹脂粒子を得ることができた(種粒子とポリスチレンとの質量比30/70)。
その後、反応系の温度を60℃にして、この懸濁液中に、難燃剤としてトリス(2,3−ジブロモプロピル)イソシアヌレート(日本化成社製:TAIC6B)50gと、難燃助剤としてジクミルパーオキサイド(DCP)10gとを投入した。投入後、反応系の温度を130℃に昇温し、2時間撹拌を続けることで難燃剤を含有した複合樹脂粒子を得た。
次いで、実施例1と同様にして、発泡性粒子、発泡粒子(嵩密度29kg/m)及び発泡成形体(密度29kg/m)を得た。
表1に実施例及び比較例の発泡成形体の製造条件を示す。表2に実施例及び比較例の評価結果を示す。
Figure 2020050784
Figure 2020050784
表2より、実施例では、発泡成形体の機械強度及び耐熱性、発泡成形体を製造する際の成形加工性を改善できていることが分かる。

Claims (9)

  1. 高密度ポリエチレン系樹脂とカルボニル基を有するエチレン系共重合体とポリスチレン系樹脂とを含む発泡用の複合樹脂粒子であって、
    高密度ポリエチレン系樹脂とカルボニル基を有するエチレン系共重合体とポリスチレン系樹脂とが、以下の質量比:
    (i)前記高密度ポリエチレン系樹脂とカルボニル基を有するエチレン系共重合体の合計量/ポリスチレン系樹脂=5/95〜40/60、
    (ii)前記高密度ポリエチレン系樹脂/カルボニル基を有するエチレン系共重合体=5/95〜50/50
    で含まれ、
    前記複合樹脂粒子は、
    ・その表面をATR法により赤外分光分析することで得られる赤外線吸収スペクトルから算出された2850cm−1の吸光度(D2850)と698cm−1の吸光度(D698)との比である表面吸光度比D1(D698/D2850)と、
    ・前記複合樹脂粒子に由来する発泡粒子の融着体から構成される発泡成形体の表面をATR法により赤外分光分析することで得られる赤外線吸収スペクトルから算出された2850cm−1の吸光度(D2850)及び698cm−1の吸光度(D698)との比である表面吸光度比D2(D698/D2850)とが、下記値:
    D1=0.5〜2.5、
    D2/D1=0.1〜0.95
    を示す構造を有し、
    前記高密度ポリエチレン系樹脂が、935〜960kg/mの密度を有することを特徴とする複合樹脂粒子。
  2. 前記カルボニル基を有するエチレン系共重合体がエチレン酢酸ビニル共重合体であり、前記エチレン酢酸ビニル共重合体が酢酸ビニル由来成分を1〜20質量%含む請求項1に記載の複合樹脂粒子。
  3. 前記高密度ポリエチレンが、40mN以上の160℃における溶融張力を有する請求項1又は2に記載の複合樹脂粒子
  4. 前記複合樹脂粒子が、高密度ポリエチレンとエチレン酢酸ビニル共重合体とを含む種粒子と、前記種粒子に含浸重合したスチレン系モノマー由来のポリスチレン系樹脂とを含む請求項1〜3のいずれか1つに記載の複合樹脂粒子。
  5. 前記高密度ポリエチレンの融点(T1)と前記エチレン酢酸ビニル共重合体の融点(T2)の差が10〜40℃であり、かつ前記種粒子の軟化温度(T3)が110〜125℃である請求項4に記載の複合樹脂粒子。
  6. 請求項1〜5のいずれか1つに記載の複合樹脂粒子と、発泡剤とを含む発泡性粒子。
  7. 請求項6に記載の発泡性粒子を発泡させて得られた発泡粒子。
  8. 請求項7に記載の発泡粒子を発泡成形させて得られた発泡成形体。
  9. 前記発泡成形体が、自動車部材用、部品梱包材用又は緩衝材用である請求項8に記載の発泡成形体。
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