以下、本発明の光学樹脂層および光学部品を添付図面に示す好適な実施形態に基づいて詳細に説明する。
<第1実施形態>
図1は、本発明の光学樹脂層(第1実施形態)を備えるサングラスを示す斜視図である。図2は、図1に示す樹脂層付眼鏡レンズ(光学部品)の拡大断面図である。図3は、(a)は、図1に示す樹脂層付眼鏡レンズの断面図であり、(b)は、従来のレンズの断面図である。
なお、図1〜図3では、上側を「上方」または「上」と言い、下側を「下方」または「下」とも言う。また、図1〜図3において、サングラスを使用者の頭部に装着した際に、レンズの使用者の目側の面を裏側の面と言い、その反対側の面を表側の面とも言う。すなわち、図2および図3では、上側の面が「表側(入射側)の面」であり、下側の面が「裏側(入射側)の面」である。また、図2では、樹脂層付眼鏡レンズを平板状に図示しているが、実際は図3に示すように湾曲した形状をなしている。また、図2および図3では、光学シートの厚さ方向を誇張して図示しているが、実際の寸法とは大きく異なる。
図1に示すように、サングラス(眼鏡)1は、使用者の頭部に装着されるフレーム2と、フレーム2に固定された樹脂層付眼鏡レンズ3とを備えている。なお、本明細書中においては、「眼鏡レンズ」とは、集光機能を有するもの、集光機能を有していないものの双方を含む。
図1に示すように、フレーム2は、使用者の頭部に装着されるものであり、リム部21と、ブリッジ部22と、使用者の耳に掛けられるテンプル部23と、ノーズパッド部24とを有している。
各リム部21は、リング状をなしており、内側に樹脂層付眼鏡レンズ3が装着される部分である。
ブリッジ部22は、各リム部21を連結する部分である。
テンプル部23は、つる状をなし、各リム部21の縁部に連結されている。このテンプル部23は、使用者の耳に掛けられる部分である。
ノーズパッド部24は、サングラス1を使用者の頭部に装着した装着状態において、使用者の鼻と当接する部分である。これにより、装着状態を安定的に維持することができる。
このフレーム2の構成材料としては、特に限定されず、各種金属材料や、各種樹脂材料等を用いることができる。
なお、フレーム2の形状は、使用者の頭部に装着することができるものであれば、図示のものに限定されない。
各リム部21には、それぞれ、樹脂層付眼鏡レンズ3が装着されている。各樹脂層付眼鏡レンズ3は、同様の構成であるため、以下、一方の樹脂層付眼鏡レンズ3について代表的に説明する。
図2に示すように、樹脂層付眼鏡レンズ3(光学部品)は、光透過性を有する眼鏡レンズ4(基板)と、眼鏡レンズ4の表側の面に配置された光学樹脂層5とを有している。
眼鏡レンズ4は、外側に向って湾曲した板状をなしている。この眼鏡レンズ4は、外側から入射する入射光Lを集光するレンズ機能を有している。
眼鏡レンズ4の構成材料としては、光透過性を有していれば、特に限定されず、例えば、各種熱可塑性樹脂や、熱硬化性樹脂、光硬化性樹脂等の各種硬化性樹脂の各種樹脂材料や、各種ガラス材料や、各種結晶が挙げられる。
上記樹脂材料としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−プロピレン共重合体等のポリオレフィン、ポリ塩化ビニル、ポリスチレン、ポリアミド、ポリイミド、ポリカーボネート、ポリ−(4−メチルペンテン−1)、アイオノマー、アクリル系樹脂、ポリメチルメタクリレート、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体(ABS樹脂)、アクリロニトリル−スチレン共重合体(AS樹脂)、ブタジエン−スチレン共重合体、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)等のポリエステル、ポリエーテル、ポリエーテルケトン(PEK)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリエーテルイミド、ポリアセタール(POM)、ポリフェニレンオキシド、ポリサルフォン、ポリエーテルサルフォン、ポリフェニレンサルファイド、ポリアリレート、芳香族ポリエステル(液晶ポリマー)、ポリテトラフルオロエチレン、ポリフッ化ビニリデン、その他フッ素系樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ユリア樹脂、メラミン樹脂、シリコーン樹脂、ポリウレタン等、またはこれらを主とする共重合体、ブレンド体、ポリマーアロイ等が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
また、上記ガラス材料としては、光透過性を有していれば特に限定されず、例えば、ソーダガラス、結晶性ガラス、石英ガラス、鉛ガラス、カリウムガラス、ホウケイ酸ガラス、無アルカリガラス等が挙げられる。
また、上記結晶材料としては、光透過性を有していれば特に限定されず、例えば、サファイア、水晶等が挙げられる。
また、眼鏡レンズ4の厚さT4は、特に限定されず、例えば、0.5mm以上、5.0mm以下であるのが好ましく、1.0mm以上、3.0mm以下であるのがより好ましい。これにより、比較的高い強度と、軽量化とを両立することができる。
次に、光学樹脂層5について説明する。
図2に示すように、光学樹脂層5(光学樹脂膜)は、光学機能付樹脂層50と、偏光層(光透過性樹脂層)53と、一対の接合層54a、54b(光透過性樹脂層)と、保護層(光透過性樹脂層)55とを備えている。また、光学樹脂層5では、接合層54a、偏光層53、接合層54b、光学機能付樹脂層50および保護層55は、下側(眼鏡レンズ4側)から、この順に積層されている。
光学機能付樹脂層50は、樹脂層51と、樹脂層51中に充填された充填材52とを有している。
樹脂層51の構成材料としては、特に限定されないが、アクリル系樹脂、メタクリル系樹脂、ポリカーボネート、ポリスチレン、エポキシ系樹脂やオキセタン系樹脂のような環状エーテル系樹脂、ポリアミド、ポリイミド、ポリベンゾオキサゾール、ポリシラン、ポリシラザン、シリコーン系樹脂、フッ素系樹脂、ポリウレタン、ポリオレフィン系樹脂、ポリブタジエン、ポリイソプレン、ポリクロロプレン、PETやPBTのようなポリエステル、ポリエチレンサクシネート、ポリサルフォン、ポリエーテル、また、ベンゾシクロブテン系樹脂やノルボルネン系樹脂等の環状オレフィン系樹脂等が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて(ポリマーアロイ、ポリマーブレンド(混合物)、共重合体等として)用いることができる。
この樹脂層51の厚さT51は、特に限定されず、例えば、10μm以上、1500μm以下であるのが好ましく、15μm以上、1000μm以下であるのがより好ましい。
樹脂層51の厚さT51を前記範囲内に設定することにより、デザイン性を高くすることができる。また、視認性を確保することができる。
また、光学樹脂層5の厚さT51は、眼鏡レンズ4の厚さT4の3%以上、50%以下であるのが好ましく、5%以上、45%以下であるのがより好ましい。これにより、光学樹脂層5を眼鏡レンズ4に良好に貼着することができ、光学樹脂層5の光学特性が損なわれるのを防止することができる。
また、樹脂層51の色は、無色であっても、赤色、青色、黄色等、如何なる色であってもよい。
これらの色の選択は、樹脂層51に染料を含有させることにより可能になる。この染料としては、例えば、酸性染料、直接染料、反応性染料、および塩基性染料等が挙げられ、これらから選択される1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
染料の具体例としては、例えば、C.I.アシッドイエロー 17,23,42,44,79,142、C.I.アシッドレッド 52,80,82,249,254,289、C.I.アシッドブルー 9,45,249、C.I.アシッドブラック 1,2,24,94、C.I.フードブラック 1,2、C.I.ダイレクトイエロー 1,12,24,33,50,55,58,86,132,142,144,173、C.I.ダイレクトレッド 1,4,9,80,81,225,227、C.I.ダイレクトブルー 1,2,15,71,86,87,98,165,199,202、C.I.ダイレクトブラック 19,38,51,71,154,168,171,195、C.I.リアクティブレッド 14,32,55,79,249、C.I.リアクティブブラック 3,4,35等が挙げられる。
充填材52は、樹脂層51中に分散された多数の粒子521で構成されている。充填材52は、樹脂層51よりも入射光Lを反射しやすい材料で構成されている。このため、入射光Lを粒子521で優先的に反射させることができる。この充填材52は、例えば、ホウケイ酸塩と、金属酸化物とで構成されている。
充填材52を構成するホウケイ酸塩としてはホウケイ酸カルシウムまたはホウケイ酸アルミニウム等が挙げられる。
充填材52を構成する金属酸化物としてはTiO2、SnO2、ZnO、Fe2O3、Fe3O4、SiO2、Al2O3、ZrO2等が挙げられる。
充填材52はホウケイ酸塩と、金属酸化物と、異なる屈折率のもので構成されていることにより、入射光Lが反射して見える色を様々な色度とすることができる。
また、充填材52の粒子521は、鱗片状をなしている。これにより、例えば、球形等の形状の粒子に比べ、外表面のうちの、入射光Lを反射する反射面522として機能する面積をできるだけ大きくすることができる。よって、外側から樹脂層付眼鏡レンズ3を見たとき、入射光Lが反射して見える部分を多くすることができる。その結果、デザイン性を高くすることができる。
粒子521の平均粒径は、1μm以上、500μm以下であるのが好ましく、5μm以上、100μm以下であるのがより好ましい。充填材52の粒子521の平均粒径を前記範囲内に設定することにより、デザイン性を高くすることができる。また、光学機能付樹脂層50の表面の凹凸性を緩和し、外部ヘイズを抑制することができる。
また、充填材52の含有量は、樹脂層51に対して0.001質量%以上、3.0質量%以下であるのが好ましく、0.005質量%以上、2.5質量%以下であるのがより好ましい。充填材52の含有量を前記範囲内に設定することにより、外側から見たとき、入射光Lが十分に反射して見え、デザイン性を高くすることができる。また、平行透過率を高く保つことができ、視認性を確保することができる。
また、充填材52の色は、無色であっても、赤色、青色、黄色等、如何なる色であってもよいが、樹脂層51とは色度が異なっているのが好ましい。これにより、外側から樹脂層付眼鏡レンズ3を見たとき、粒子521によって入射光Lが反射して見えるのをより際立たせることができる。よって、さらにデザイン性が高くなる。
また、樹脂層51には、粒子521の配向度を向上させる機能を有する配向助剤が含まれていてもよい。配向助剤の含有量を調節することにより、粒子521の配向度を調節することができる。よって、樹脂層付眼鏡レンズ3をどの角度から見てもきらきら光って見えるように構成することができる。
この配向助剤としては、特に限定されず、例えばメタノール、エタノール、プロパノール、n−ブタノール、t−ブタノール等のアルコール類、酢酸、酪酸、安息香酸等のカルボン酸類、酢酸エチル、乳酸エチル等のエステル類、フタル酸ジメチル、フタル酸ジエチル、フタル酸ジブチル、フタル酸ジ−2−エチルヘキシル、フタル酸ジイソデシル、フタル酸ブチルベンジル、アジピン酸ジ−2−エチルヘキシル、アジピン酸ジ−n−アルキル、アゼライン酸ジ−2−エチルヘキシル、セバシン酸ジブチル、セバシン酸ジ−2−エチルヘキシル、リン酸トリブチル、リン酸トリ−2−エチルヘキシル、リン酸トリフェニル、リン酸トリクレジル、アセチルクエン酸トリブチル等が挙げられる。
偏光層53は、入射光L(偏光していない自然光)から、所定の一方向に偏光面をもつ直線偏光を取出す機能を有している。これにより、樹脂層付眼鏡レンズ3を介して目に入射する入射光Lは、偏光されたものとなる。
偏光層53の偏光度は、特に限定されないが、例えば、50%以上、100%以下であるのが好ましく、80%以上、100%以下であるのがより好ましい。また、偏光層53の可視光線透過率は、特に限定されないが、例えば、10%以上、80%以下であるのが好ましく、20%以上、50%以下であるのがより好ましい。
このような偏光層53の構成材料としては、上記機能を有するものであれば特に限定されないが、例えば、ポリビニルアルコール(PVA)、部分ホルマール化ポリビニルアルコール、ポリエチレンビニルアルコール、ポリビニルブチラール、ポリカーボネート、エチレン−酢酸ビニル共重合体部分ケン価物等で構成された高分子フィルムに、ヨウ素や二色性染料等の二色性物質を吸着、染色させ、一軸延伸したもの、ポリビニルアルコールの脱水処理物やポリ塩化ビニルの脱塩酸処理物等のポリエン系配向フィルム等が挙げられる。
これらの中でも、偏光層53は、ポリビニルアルコール(PVA)を主材料とした高分子フィルムに、ヨウ素または二色性染料を吸着、染色させ、一軸延伸したものが好ましい。ポリビニルアルコール(PVA)は透明性、耐熱性、染色剤であるヨウ素または二色性染料との親和性、延伸時の配向性のいずれもが優れた材料である。したがって、PVAを主材料とする偏光層53は、耐熱性に優れたものとなるとともに、偏光能に優れたものとなる。
なお、上記二色性染料としては、例えばクロラチンファストレッド、コンゴーレッド、ブリリアントブルー6B、ベンゾパープリン、クロラゾールブラックBH、ダイレクトブルー2B、ジアミングリーン、クリソフェノン、シリウスイエロー、ダイレクトファーストレッド、アシドブラックなどが挙げられる。
この偏光層53の厚さT53は、特に限定されず、例えば、5μm以上、60μm以下であるのが好ましく、10μm以上、40μm以下であるのがより好ましい。偏光層53が厚すぎると、その構成材料にもよるが、光学樹脂層5全体として厚くなる傾向を示す。一方、偏光層53が薄すぎると、偏光能が不十分になるおそれがある。
接合層54aは、光学樹脂層5を眼鏡レンズ4に対して接合する機能を有する。また、接合層54bは、光学機能付樹脂層50と偏光層53とを接合する機能を有している。接合層54aおよび接合層54bは、それぞれ同様の構成であるため、以下、接合層54aについて代表的に説明する。
接合層54aは、光透過性を有する粘着剤により構成されている。前記粘着剤としては特に限定されず、例えば、アクリル系粘着剤、シリコーン系粘着剤等いずれのものでもよいが、その中でも特に、アクリル系粘着剤を主とするのが好ましく、さらには、被着体材料に対しより高い粘着力を発揮し得るものが好ましい。
アクリル系粘着剤としては、粘着性を与える低Tgの主モノマー成分、接着性や凝集力を与える高Tgのコモノマー成分、架橋や接着性改良のための官能基含有モノマー成分を主とする重合体または共重合体よりなるのが好ましい。
主モノマー成分としては、例えば、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、アクリル酸アミル、アクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸オクチル、アクリル酸シクロヘキシル、アクリル酸ベンジル等のアクリル酸アルキルエステルや、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸ベンジル等のメタクリル酸アルキルエステルが挙げられる。
コモノマー成分としては、例えば、アクリル酸メチル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、酢酸ビニル、スチレン、アクリロニトリル等が挙げられる。
官能基含有モノマー成分としては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、イタコン酸等のカルボキシル基含有モノマーや、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、N−メチロールアクリルアミド等のヒドロキシル基含有モノマー、アクリルアミド、メタクリルアミド、グリシジルメタクリレート等が挙げられる。
このような材料が好ましい理由は、粘着力、凝集力に優れるとともに、ポリマー中に不飽和結合がないため光や酸素に対する安定性が高く、また、モノマーの種類や分子量の選択により用途に応じた任意の品質、特性を得ることができるからである。
シリコーン系粘着剤としては、例えば、ジメチルシロキサン系、ジフェニルシロキサン系のものが挙げられる。
また接合層54aの厚さT54は、特に限定されず、例えば、2μm以上、50μm以下であるのが好ましく、5μm以上、35μm以下であるのがより好ましい。
このような接合層54aにより、光学樹脂層5を眼鏡レンズ4に配置することができる。
保護層55は、樹脂層付眼鏡レンズ3において最外層、すなわち、表側に位置しており、樹脂層付眼鏡レンズ3を保護する機能を有する。この保護層55の構成材料としては、特に限定されず、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリエチレンナフタレート(PEN)等のポリエステル系樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレンのようなポリオレフィン系樹脂、ポリイミド系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリメチルメタクリレート等のアクリル系樹脂、アセテート系樹脂、アリル系樹脂、シリコン系樹脂等の各種樹脂材料が挙げられるが、これらの中でもポリアミド系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリウレタン系樹脂、アクリル系樹脂、アリル系樹脂、シリコン系樹脂を主材料とするものが好ましく用いられる。
これらの構成材料で構成された保護層55は、光学機能付樹脂層50を確実に保護することができる。
特に、耐熱性に優れたものとする場合には、ポリカーボネート系樹脂、アリル系樹脂、シリコン系樹脂等を用いるのが好ましい。
また、耐衝撃性に優れたものとする場合には、ポリアミド系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリウレタン系樹脂等を用いるのが好ましい。
また、耐摩耗性に優れたものとする場合には、アリル系樹脂、シリコン系樹脂、ポリウレタン系樹脂等を用いるのが好ましい。
また、耐候性に優れたものとする場合には、アクリル系樹脂、シリコン系樹脂等を用いるのが好ましい。
また、耐薬品性に優れたものとする場合には、ポリアミド系樹脂等を用いるのが好ましい。
また、これらの樹脂材料は、熱膨張率が比較的小さい。このため、サングラス1を比較的気温が高い場所で用いたとしても、保護層55が熱により変形して光学機能付樹脂層50から剥離したりするのを防止することができる。さらに、上記のような樹脂材料は、耐光性が比較的高いため、サングラス1を長期にわたって使用しても、保護層55が劣化したりするのを防止することができる。また、保護層55によれば、光学機能付樹脂層50の表面の凹凸性を緩和し、外部ヘイズを抑制することができる。
また、保護層55の厚さT55は、特に限定されず、例えば、3μm以上、800μm以下であるのが好ましく、7μm以上、500μm以下であるのがより好ましい。
保護層55の厚さT55を前記範囲内に設定することにより、光学機能付樹脂層50の表面の凹凸性を緩和し、外部ヘイズを抑制することができる。
保護層55の透過率は、50%以上、94%以下であるのが好ましく、85%以上、93%以下であるのがより好ましい。
ここで、図3は、従来の樹脂層付眼鏡レンズ3’と樹脂層付眼鏡レンズ3とを比較するための断面図であって、(a)は、本発明における樹脂層付眼鏡レンズ3を示す図であり、(b)は、従来の眼鏡レンズ4’を示す図である。図3(a)に示す樹脂層付眼鏡レンズ3の厚さ(総厚)と、図3(b)に示す眼鏡レンズ4’の厚さ(総厚)とは、同じになっており、厚さT3である。
図3(b)に示すように、従来の眼鏡レンズ4’では、厚さT3の眼鏡レンズ4’に充填材52’が充填されている。これに対し、図3(a)に示すように、樹脂層付眼鏡レンズ3では、厚さT3よりも薄い厚さの樹脂層51中に充填材52が充填されている。これにより、樹脂層付眼鏡レンズ3では、従来と充填材52の含有量が同じ場合、充填材52の粒子521の密度を高めることができる。よって、外側から樹脂層付眼鏡レンズ3を見たとき、入射光Lが反射して光って見える部分を多くすることができる。よって、デザイン性を高めることができる。
さらに、眼鏡レンズ4’を、例えば切削等により、図3(b)中二点鎖線で示す部分を除去する加工を行い眼鏡レンズ4’の度を調整する場合には、除去された部分に分散している充填材52’も除去される。このため、眼鏡レンズ4’では、図3(b)に示すように、厚さがT4aの部分と、厚さがT4aよりも薄い厚さT4bの部分とが形成される。その結果、厚さがT4aの部分では、厚さT4bの部分よりも充填材52’の量が少なくなる。その結果、厚さがT4aの部分と厚さT4bの部分とでは、外側から見たとき、光り方が異なり、デザイン性が損なわれる。
これに対し、樹脂層付眼鏡レンズ3では、充填材52は、眼鏡レンズ4ではなく樹脂層51に充填されているため、眼鏡レンズ4の一部を除去する加工を行ったとしても、充填材52が除去されるのを確実に防止することができる。よって、眼鏡レンズ4の加工を行っても、見る部分によって光り方が変化するのを防止することができる。その結果、高いデザイン性を確保することができる。
なお、光学樹脂層5の厚さT5は、0.1mm以上、3.0mm以下であるのが好ましく、0.15mm以上、1.5mm以下であるのがより好ましい。
光学樹脂層5の厚さT5が厚すぎると、構成材料にもよるが、可撓性が損なわれる可能性がある。一方、光学樹脂層5が薄すぎると、曲げ変形させたとき、たるみやしわが生じる恐れがある。
また、光学樹脂層5は、可撓性を有しているため、眼鏡レンズ4の表側の面が図3(a)に示すような湾曲凸面であっても、その形状に追従して貼着することができる。すなわち、眼鏡レンズ4の表面の形状を問わず、光学樹脂層5を貼着することができる。従って、光学樹脂層5は、汎用性に優れる。
なお、接合層54aは、眼鏡レンズ4に貼着される以前は、離型シートに覆われていてもよい。眼鏡レンズ4に貼着するときに離型シートを接合層54aから剥がして使用することにより、光学樹脂層5を眼鏡レンズ4に貼着する以前に接合層54aにごみが付着したり、粘着力が低下したりするのを防止することができる。
この離型シートとしては、特に限定されず、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリアリレート等の各種樹脂よりなるフィルムや、ポリエチレンラミネート紙、クレーコート紙、グラシン紙、再生紙等の各種紙材を基材とし、この基材の接合層54aとの接合面に、離型処理が施されたものを用いることができる。この場合、離型処理の代表例としては、シリコーン系樹脂、長鎖アルキル系樹脂、フッ素系樹脂等の離型剤よりなる離型剤層の塗布、形成が挙げられる。
また、図2に示すように、保護層55の屈折率N55と、樹脂層51の屈折率N51との差は、−0.4以上、0.4以下であるのが好ましく、−0.3以上、0.3以下であるのがより好ましい。これにより、入射光Lが、保護層55と樹脂層51との界面を通過する際、入射光Lが屈折するのを抑制することができる。
また、樹脂層51の屈折率N51と、接合層54bの屈折率N54との差は、−0.4以上、0.4以下であるのが好ましく、−0.3以上、0.3以下であるのがより好ましい。これにより、入射光Lが、樹脂層51と接合層54bとの界面を通過する際、入射光Lが屈折するのを抑制することができる。
また、接合層54a、54bの屈折率N54と偏光層53の屈折率N53との差は、−0.4以上、0.4以下であるのが好ましく、−0.3以上、0.3以下であるのがより好ましい。これにより、入射光Lが、接合層54bと偏光層53との界面を通過する際と、偏光層53と接合層54aとの界面を通過する際とに、入射光Lが屈折するのを抑制することができる。
また、保護層55の屈折率N55と、眼鏡レンズ4の屈折率N4との差は、−0.4以上、0.4以下であるのが好ましく、−0.3以上、0.3以下であるのがより好ましい。これにより、入射光Lが、保護層55と眼鏡レンズ4との界面を通過する際、入射光Lが屈折するのを抑制することができる。
樹脂層付眼鏡レンズ3では、上記数値範囲を満足することにより、入射光Lが樹脂層付眼鏡レンズ3を通過する際に屈折するのを効果的に抑制することができる。よって、使用者は、周囲が歪んで見えるのを防止または抑制することができる。
ここで、図2に示すように、入射光Lの一部は、粒子521によって反射され、その反射光Laを外側から見た際、きらきら光って見える。この反射光Laを際立たせる(鮮明にする)ためには、反射光La以外の光が、光学樹脂層5から出射するのをできるだけ抑制するのが好ましい。すなわち、樹脂層付眼鏡レンズ3の裏面32側から樹脂層付眼鏡レンズ3の表面31側に向う光Lbが少ないのが好ましい。
光学樹脂層5では、偏光層53の透過率は、光学機能付樹脂層50(樹脂層51)の透過率よりも低い。これにより、樹脂層付眼鏡レンズ3の裏面32側から樹脂層付眼鏡レンズ3の表面31側に向う光Lbの一部を、偏光層53において遮断することができる(図2参照)。よって、樹脂層付眼鏡レンズ3を外側から見たとき、粒子521以外の部分は、光Lbが遮断されている分、比較的暗く見える。その結果、粒子521によって反射された反射光Laを際立たせることができる。以上より、光学樹脂層5は、デザイン性に優れる。
また、例えば、粒子521の色と、眼鏡レンズ4の色とが同じかまたは似ている場合には、外側から見たとき、粒子521の反射光Laが際立って見えにくくなる傾向にある。このような場合であっても、光学樹脂層5では、外側から見たとき、粒子521の周辺の色が粒子521よりも暗く見えるため、粒子521の反射光Laが際立って見える。
さらに、例えば、粒子521の色が黄色であった場合には、黄色人種がサングラス1を装着すると、外側から見たとき、粒子521の色(色度)と、その周辺の色(色度)とが似ているため、粒子521の反射光Laが際立って見えにくくなる傾向にある。このような場合であっても、光学樹脂層5では、外側から見たとき、粒子521の周辺が暗く見えるため、粒子521の反射光Laが際立って見える。
このように、光学樹脂層5によれば、粒子521の色や、眼鏡レンズ4の色や、使用者の肌の色を問わず、粒子521の反射光Laを際立たせることができる。
また、樹脂層51の透過率は、70%以上、95%以下であるのが好ましく、80%以上、90%以下であるのがより好ましい。
樹脂層51の透過率が大きすぎると、材料の選定が困難になったり、材料のコストが高くなる傾向にある。一方、樹脂層51の透過率が小さすぎると、入射光Lが樹脂層51内にて遮断され過ぎて、結果的に反射光Laが弱くなるおそれがある。その結果、デザイン性が低下する傾向を示す。
また、偏光層53の透過率は、7%以上、60%以下であるのが好ましく、8%以上、50%以下であるのがより好ましい。これにより、デザイン性および外部視認性を両立することができる。
偏光層53の透過率が大きすぎると、光Lbを十分に遮断することができない可能性がある。このため、反射光Laを際立たせるのが不十分となるおそれがある。一方、偏光層53の透過率が小さすぎると、入射光Lを必要以上に遮断するおそれがある。この場合、サングラス1の使用者にとって、装着状態における外側の視認性が低下するおそれがある。
また、偏光層53の透過率は、樹脂層51の透過率の7%以上、85%以下であるのが好ましく、8%以上、75%以下であるのがより好ましく、10%以上、65%以下であるのがさらに好ましい。これにより、反射光Laを際立たせつつ、使用者の十分な視認性を確保することができる。
なお、このような透過率は、JIS K 7105に規定された方法に準拠して測定することができる。
以上説明したように、本発明では、光学機能付樹脂層50は、光透過性を有する樹脂層51(樹脂材料)と、樹脂層51(樹脂材料)に充填され、表側の面に入射する入射光に対して光学的に作用する充填材52とを有する。これにより、眼鏡レンズ4の加工を行っても、見る部分によって光り方が変化するのを防止することができ、高いデザイン性を確保することができる。
<第2実施形態>
図4は、本発明の光学樹脂層(第2実施形態)を示す断面図である。
以下、この図を参照して本発明の光学樹脂層および光学部品の第2実施形態について説明するが、前述した実施形態との相違点を中心に説明し、同様の事項はその説明を省略する。
本実施形態は、接合層および偏光層が省略されていること以外は前記第1実施形態と同様である。
図4に示すように、光学樹脂層5Aでは、第1実施形態での一対の接合層および偏光層が省略されている。このため、光学樹脂層5Aでは、図中下側から、すなわち、眼鏡レンズ4側から光学機能付樹脂層50および保護層55の順に積層されている。これにより、一対の接合層および偏光層が省略されている分、光学樹脂層5Aの厚さを薄くすることができるとともに、可視光線透過率を向上させることができる。
<第3実施形態>
図5は、本発明の光学樹脂層および光学部品(第3実施形態)を備えるサングラスを示す断面図であって、(a)が平板状の眼鏡レンズに光学樹脂層を貼着した場合を示す図であり、(b)が湾曲面を有する眼鏡レンズに光学樹脂層を貼着した場合を示す図である。
以下、これらの図を参照して本発明の光学樹脂層および光学部品の第3実施形態について説明するが、前述した実施形態との相違点を中心に説明し、同様の事項はその説明を省略する。
本実施形態は、充填材の粒子の向きが異なること以外は前記第2実施形態と同様である。
図5(a)では、図中矢印方向から入射する入射光Lを一例として図示している。図5(a)からも分かるように、粒子521によって反射した反射光L’は、一方向に反射することとなる。このため、外側から見た場合、反射光L’が進む方向から見たら粒子521が光って見えるが、その他の方向から見たら粒子521が光って見えにくくなる。
これに対し、図5(b)に示すように、光学樹脂層5Bでは、眼鏡レンズ4の表側の面が湾曲しているため、眼鏡レンズ4の表側の面に貼着された光学樹脂層5Bもそれに追従して湾曲することとなる。その結果、粒子521の反射面522も湾曲形状に沿って外側を向くこととなり、各粒子521ごとに反射面522の向きが互いに異なる。
このような構成によれば、図5(b)に示すように、入射光Lは、粒子521ごとに異なる方向に反射する。その結果、光学樹脂層5Bを外側から見た場合、見る方向に関わらず、光って見える粒子521が存在することとなる。その結果、デザイン性を高めることができる。
以上、本発明の光学樹脂層および光学部品を図示の実施形態について説明したが、本発明は、これに限定されるものではなく、光学樹脂層および光学部品を構成する各部は、同様の機能を発揮し得る任意の構成のものと置換することができる。また、任意の構成物が付加されていてもよい。
なお、本発明の光学樹脂層および光学部品は、前記各実施形態のうちの、任意の2以上の構成(特徴)を組み合わせたものであってもよい。
また、前記実施形態では、充填材は、入射光を反射する機能を有するものであったが、本発明ではこれに限定されず、例えば、入射光のうちの赤外線または紫外線等の特定の波長の光を反射させて、その他の成分を透過させる機能を有するものであってもよい。
また、光学樹脂層は、レンズと一体成型されていてもよく、接着剤を介してレンズに貼着されていてもよい。また、光学樹脂層と偏光層と基材とをラミネートした後に、レンズと接合してもよい。
以下、本発明を実施例に基づいて詳細に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
(実施例1)
<光学樹脂層の製造>
厚さが75μmのポリビニルアルコールフィルム(商品名:「ポバールVF−PS」、クラレ社製)を、2色性染料を溶解させた水溶液(ブリリアントブルー6Bの濃度が0.4g/L、ベンゾパープリンの濃度が0.2g/L、クロラゾールブラックBHの濃度が0.1g/L)中で、40℃条件で10分間染色した。この染色フィルムを酢酸ニッケル4水塩(0.4g/L)とホウ酸(40g/L)とを溶解せしめた水溶液中に40℃で20分間浸漬した後、この溶液中で1軸方向に約4倍延伸し、次いで水洗、乾燥を行って、透過率30%、偏光度99%の偏光層を得た。得られた偏光層の厚さT53は、20μmであった。
一方で、100質量部のポリカーボネート(三菱瓦斯化学社製「E−2000N」)と、充填材として、酸化チタンが被覆されているホウケイ酸ガラスの粒子(日本板硝子社製、「メタシャインMC1030TY」)0.02質量部とを混合して、光学機能付樹脂層形成材料を用意した。
そして、光学機能付樹脂層形成材料を1軸混錬押出機に投入し、250℃で混錬後、押し出してロールでシート状に成形後、冷却して、光学機能付樹脂層を得た。なお、光学機能付樹脂層の透過率は、88%であり、厚さT51は、0.7mmであった。
40質量部の紫外線硬化型アクリルモノマー(新中村化学社製「A−DPH」)と、40質量部のウレタンアクリレートオリゴマー(ダイセル・オルネクス社製「EBECRYL2000」)と、20質量部のアクリルモノマー(新中村化学社製「A−BPE−4」)とを合わせて100質量部とし、さらに、5質量部の光重合材(BASF社製「IRGACURE 184」)とを溶剤に溶かし、光学機能付樹脂層の一方の面上に塗布し、乾燥後、紫外線を照射して、保護層を積層した。
次いで、厚さT4が3mmの眼鏡レンズ(三菱瓦斯化学社製「H−3000」)の表側の面上にアクリル系粘着剤で構成された第1の接合層(接合層54a)を形成した。なお、眼鏡レンズの透過率は、82%であった。
次いで、第1の接合層上に、偏光層を積層し、偏光層の第1の接合層と反対側の面上に、第1の接合層と同様の構成材料である第2の接合層(接合層54b)を形成した。
そして、第2の接合層上に、第2の接合層と光学機能付樹脂層とが接触するように、前記積層体を積層し、その状態で、第1の接合層および第2の接合層を硬化させて、眼鏡レンズに光学樹脂層が積層された樹脂層付眼鏡レンズを製造した。
なお、光学機能付樹脂層と眼鏡レンズとの厚さの比(T51/T4)は、0.23であった。
(実施例2〜実施例6)
樹脂層付眼鏡レンズの構成を表1に示すように変更したこと以外は、実施例1と同様にして実施例2〜実施例6の偏光性積層体を得た。
なお、表1中のA1は、酸化チタンが被覆されているホウケイ酸ガラス(日本板硝子社製、「メタシャインMC1030TY」を示し、A2は、酸化チタンと酸化ケイ素とが被覆されているホウケイ酸ガラス(メルク社製「miraval 5411」)を示している。
(比較例)
100質量部のポリカーボネート(三菱瓦斯化学社製「E−2000N」)と、酸化チタンが被覆されているホウケイ酸ガラスの粒子(日本板硝子社製、「メタシャインMC1020RSJA1」)0.02質量部とを混合し、射出成型を行い、図3(b)に示すような湾曲したレンズを製造し、比較例のレンズを得た。
そして、湾曲凹側から研削を行い、度を調整した。なお、中央部における研削した最大深さ(研削量)は12.5mmであった。
<評価>
1.全光線透過率
JISK7361−1に準拠して、光学機能付樹脂層の全光線透過率を測定した。各符号は、以下の通りであり、◎、○、△を合格とし、×を不合格とした。
◎:90%以上
○:80%以上
△:70%以上
×:70%未満
2.視認性
JISK7136に準拠して、光学機能付樹脂層の視認性を測定した。各符号は、以下の通りであり、◎、○、△を合格とし、×を不合格とした。
◎:0.3%未満
○:0.3%以上1.0%未満
△:1.0%以上3.0%未満
×:3.0%以上
3.拡散反射率(デザイン性)
V−670分光測定機の積分球拡散反射測定において、波長が560nmの光反射率を測定した。そして、異なる位置5ヶ所で測定し、光反射率の最大値と最小値との差の値(%)を算出し、評価した。各符号は、以下の通りであり、◎、○、△を合格とし、×を不合格とした。
◎:0.1%未満
○:0.1%以上0.3%未満
△:0.3%以上0.7%未満
×:0.7%以上
4.デザイン性
晴天下で樹脂層付眼鏡レンズを表側から視認しつつ、樹脂層付眼鏡レンズから離れていき、きらきら光って見える距離を測定した。各符号は、以下の通りであり、◎、○、△を合格とし、×を不合格とした。
◎:2m以上
○:1m以上2m未満
△:0.5m以上1m未満
×:0.5m未満
これらの結果を、表1にまとめて示す。
各実施例の光学樹脂層は、比較例のレンズに比べ、全光線透過率、視認性およびデザイン性に優れる結果となった。