JP2019181369A - 超音波化学反応装置及び方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】超微細気泡を利用した場合において超音波化学反応を効率よく誘起させることができる超音波化学反応装置を提供すること。【解決手段】本発明の超音波化学反応装置1は、被処理液W1に対する超音波の照射によって化学反応を誘起することで被処理液W1を処理するものであって、気泡生成槽11A、反応槽11B、液循環装置21を備える。気泡生成槽11Aは、低周波数の超音波を発する第1超音波振動子15Aを有し、第1超音波振動子15Aからの超音波の照射によって被処理液W1中に直径1μm以下の超微細気泡を生成する。反応槽11Bは、高周波数の超音波を発する第2超音波振動子15Bを有し、超微細気泡を含む被処理液W1に対する第2超音波振動子15Bからの超音波の照射によって、被処理液W1中にキャビテーションを生成させる。液循環装置21は、気泡生成槽11A及び反応槽11B間で被処理液W1を循環させる。【選択図】図1

Description

本発明は、被処理液に対する超音波の照射によって化学反応を誘起することで被処理液を処理する超音波化学反応装置及び方法に関するものである。
直径1μm〜100μm程度の微細な気泡であるマイクロバブルが従来知られているが、それよりもさらに細かい直径1μm以下の気泡に対して近年注目が集まっている。このようなものはウルトラファインバブル(UFB)あるいはナノバブルと呼ばれており、例えば、医療、農業、水産業、環境浄化などといった様々な分野で利用が拡大しつつある。
その利用例のひとつとして、被処理液に対する超音波の照射により超音波キャビテーションを発生させ、これにより生じるフリーラジカルに基づく超音波化学反応(ソノケミカル反応)を誘起することで、被処理液を処理する反応装置が従来提案されている。ところで、この種の反応装置では、超音波化学反応の反応速度または反応効率を高めるための工夫が必要であると考えられている。
このような事情の下、UFB水への超音波照射によりラジカルの生成が促進されることが従来報告されている(例えば、非特許文献1を参照)。従って、例えばUFB水を被処理液として用いれば、UFBがキャビテーションの核となることで、超音波化学反応装置における超音波化学反応の反応速度または反応効率を向上できるものと予想されていた。
ソノケミストリー討論会講演論文集 ソノケミストリー討論会講演論文集 22(0),33−34,2013 日本ソノケミストリー学会
ところが、UFB水を被処理液として用いた上記反応装置の場合、期待するほど超音波化学反応の反応速度または反応効率を向上することができなかった。ゆえに、装置の実用化を図る上では、反応速度または反応効率をさらに高める必要があった。そこで、本願発明者らが上記反応装置において超音波化学反応の反応速度または反応効率が高くならない原因を見つけるべく各種試験を行ったところ、以下のような結果を得ている。
図13のグラフは、被処理液であるUFB水を反応槽に入れて、10Wかつ488kHzの超音波を照射したときのUFB数密度の時間的変化を示している。これによると、超音波の照射時間の経過とともにUFB数密度が減少し、相当数のUFBが消滅することがわかった。また、図14のグラフは、超純水を反応槽に入れて、20Wの超音波を周波数を変えて照射した場合におけるUFB数密度の時間的変化を示している。これによると、比較的低い周波数では超音波の照射時間の経過とともにUFB数密度が増加する一方で、比較的高い周波数では超音波の照射時間が経過しても殆どUFB数密度が増加しないことがわかった。なお、比較的高い周波数にてUFB数密度が増加しない理由として、反応槽内でUFBの発生と消滅とが同時に生じていることが考えられ、これが反応速度または反応効率の低下をもたらしている原因であろうと推論している。
本発明は上記の課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、超微細気泡を利用した場合において超音波化学反応を確実に誘起させることができる超音波化学反応装置及び方法を提供することにある。
本発明者らは、上記の課題を解決するべく鋭意研究を行ったところ、被処理液に対する所定周波数の超音波照射により反応槽とは別の場所で超微細気泡を発生させて、この超微細気泡を反応槽に供給するという思想を想到した。本発明者らはこの思想をさらに発展させることにより、最終的に下記の発明を完成させるに至ったのである。以下、上記の課題を解決するための発明を列挙する。
即ち、請求項1に記載の発明は、被処理液に対する超音波の照射によって化学反応を誘起することで前記被処理液を処理する装置であって、相対的に低い周波数の超音波を発する第1超音波振動子を有するとともに、前記被処理液に対する前記第1超音波振動子からの超音波の照射によって、前記被処理液中に直径1μm以下の超微細気泡を生成する気泡生成槽と、相対的に高い周波数の超音波を発する第2超音波振動子を有するとともに、前記超微細気泡を含む前記被処理液に対する前記第2超音波振動子からの超音波の照射によって、前記被処理液中にキャビテーションを生成させる反応槽と、前記気泡生成槽及び前記反応槽間で前記被処理液を循環させる液循環装置とを備えたことを特徴とする超音波化学反応装置をその要旨とする。
従って、請求項1に記載の発明によると、反応槽においては第2超音波振動子からの超音波照射によりキャビテーションが生成されて超音波化学反応が誘起されるが、相対的に高い周波数の超音波の作用により反応槽内の超微細気泡が消滅する。その一方で、気泡生成槽においては第1超音波振動子から相対的に低い周波数の超音波が照射されることで、超微細気泡が新たに生成される。そして、液循環装置により気泡生成槽及び反応槽間で被処理液が循環されることにより、超微細気泡を含む被処理液が反応槽に対して連続供給される。このため、反応槽内にて超微細気泡の数密度が減少せず、超音波化学反応の反応速度または反応効率が高く維持され、ひいては超音波化学反応を確実に誘起させることができる。
請求項2に記載の発明は、請求項1において、前記気泡生成槽及び前記反応槽は、物理的に離間していることをその要旨とする。
従って、請求項2に記載の発明によると、気泡生成槽及び前記反応槽が物理的に離間していない構成である場合とは異なり、槽間での超音波の伝播を回避することができる。このため、異なる周波数の超音波同士が互いに干渉しなくなり、各々の槽において適切な反応を行わせやすくなる。その結果、超音波化学反応をより確実に誘起させることができる。
請求項3に記載の発明は、請求項1または2において、前記第1超音波振動子が発する超音波の周波数は、前記第2超音波振動子が発する超音波の周波数の1/10倍以下であることをその要旨とする。
従って、請求項3に記載の発明によると、各々の槽にて照射される超音波の周波数が大きく異なることから、超音波同士が互いに干渉しにくくなり、超音波化学反応をより確実に誘起させることができる。
請求項4に記載の発明は、請求項1乃至3のいずれか1項において、前記第1超音波振動子が発する超音波の周波数は、10kHz以上100kHz未満であり、前記第2超音波振動子が発する超音波の周波数は、100kHz以上1MHz以下であることをその要旨とする。
従って、請求項4に記載の発明によると、反応槽におけるにキャビテーションの生成及び気泡生成槽における超微細気泡の生成につき、それぞれ適切な周波数で超音波が照射されることとなるため、超音波化学反応をより確実に誘起させることができる。
請求項5に記載の発明は、請求項1乃至4のいずれか1項において、前記気泡生成槽内に細孔を有する物体が収容され、または前記気泡生成槽の内壁面に粗面加工が施されていることをその要旨とする。
従って、請求項5に記載の発明によると、どちらも液中に気泡の核となるものが存在した状態となるため、超音波照射したときに超微細気泡の生成が促進される。よって、キャビテーションの生成効率を向上させることができる。
請求項6に記載の発明は、請求項1乃至5のいずれか1項において、前記反応槽側において気体のバブリングを行うバブリング手段をさらに備えることをその要旨とする。
従って、請求項6に記載の発明によると、超微細気泡の生成に伴って反応槽における被処理液中の溶存気体が消費されたとしても、バブリングにより気体が絶えず補われるため、被処理液中の溶存気体の量の低下が阻止される。このため、超微細気泡の生成がいっそう促進され、キャビテーションの生成効率を高く維持することができる。
請求項7に記載の発明は、被処理液に対する超音波の照射によって化学反応を誘起することで前記被処理液を処理する方法であって、前記被処理液に対して相対的に低い周波数の超音波を照射することによって、前記被処理液中に直径1μm以下の超微細気泡を生成する気泡生成槽と、前記超微細気泡を含む前記被処理液に対して相対的に高い周波数の超音波を照射することによって、前記被処理液中にキャビテーションを生成させる反応槽との間で前記被処理液を循環させながら、前記反応槽において前記被処理液の処理を行うことを特徴とする超音波化学反応方法をその要旨とする。
従って、請求項7に記載の発明によると、反応槽においては相対的に高い周波数の超音波の照射によりキャビテーションが生成されて超音波化学反応が誘起されるが、その超音波の作用により反応槽内の超微細気泡が消滅する。その一方で、気泡生成槽においては相対的に低い周波数の超音波が照射されることで、超微細気泡が新たに生成される。そして、気泡生成槽及び反応槽間で被処理液が循環されることにより、超微細気泡を含む被処理液が反応槽に対して連続供給される。このため、反応槽内にて超微細気泡の数密度が減少せず、超音波化学反応の反応速度または反応効率が高く維持され、ひいては超音波化学反応を確実に誘起させることができる。
以上詳述したように、請求項1〜6に記載の発明によると、超微細気泡を利用した場合において超音波化学反応を確実に誘起させることができる超音波化学反応装置を提供することができる。また、請求項7に記載の発明によると、超微細気泡を利用した場合において超音波化学反応を確実に誘起させることができる超音波化学反応方法を提供することができる。
本発明を具体化した一実施形態の超音波化学反応装置を示す概略構成図。 本実施形態の実施例1において、気泡生成槽からのUFB供給が有る場合と無い場合のそれぞれにおける超音波化学反応量(I 生成量)を示すグラフ。 本実施形態の実施例1において、反応槽中のUFB数密度の時間的変化を示すグラフ。 本実施形態の実施例2において使用した改良型の超音波化学反応装置の要部を示す概略構成図。 本実施形態の実施例2において、沸騰石が有る場合と無い場合のそれぞれにおけるUFB数密度の時間的変化を示すグラフ。 本実施形態の実施例2において、沸騰石が有る場合と無い場合のそれぞれにおける超音波化学反応量(I 生成量)を示すグラフ。 本実施形態の実施例3において、気泡生成槽(22kHz照射)及び反応槽(488kHz照射)のそれぞれにおいて、液中の溶存気体量の時間的変化を示すグラフ。 本実施形態の実施例3において使用した改良型の超音波化学反応装置の要部を示す概略構成図。 本実施形態の実施例3において、バブリングを行った場合と行わない場合のそれぞれにおいて、液中の溶存気体量の時間的変化を示すグラフ。 本実施形態の実施例3において、バブリングを行った場合と行わない場合のそれぞれにおける超音波化学反応量(I 生成量)を示すグラフ。 本実施形態の実施例1〜3において、超音波化学反応量(I 生成量)を比較して示すためのグラフ。 別の実施形態における改良型の超音波化学反応装置の要部を示す概略構成図。 反応槽中のUFB数密度の時間的変化を示すグラフ。 超音波の周波数を変えた場合における反応槽中のUFB数密度の時間的変化を示すグラフ。
以下、本発明の超音波化学反応装置及び方法を具体化した一実施の形態を図面に基づき詳細に説明する。
図1には、本実施形態の超音波化学反応装置1の概略構成図が示されている。この超音波化学反応装置1は、直径1μm以下の超微細な気泡であるUFBを含むUFB水W1(被処理液)に対する超音波の照射によって超音波化学反応を誘起することで、UFB水W1を処理するための装置である。なお、この超音波化学反応装置1が廃液の無害化処理を目的とする装置であって、被処理液であるUFB水W1中に例えば有害な有機物が含まれているような場合、超音波照射に起因する超音波化学反応により、有機物が化学分解されるようになっている。そして、この超音波化学反応装置1は、気泡生成槽11A、反応槽11B、第1超音波振動子15A、第2超音波振動子15B、液循環装置21、駆動装置等を備えている。
図1において右側に位置する反応槽11Bは、円筒状をなす本体部12に蓋板13及び底板14を設けて密閉した構造の容器であって、その内部にUFB水W1が溜められるようになっている。蓋板13には流入用パイプ16と排出用パイプ17とが設けられている。本体部12は外筒及び内筒とからなる二重円筒構造を有しており、その内部空間には図示しない恒温槽から冷却水が常時循環供給されるようになっている。その結果、反応槽11B内の温度が常温(例えば10℃〜30℃)に保持される。
第2超音波振動子15Bは、反応槽11B内のUFB水W1に超音波を照射するための手段であって、底板14の下面中央部に固定されている。本実施形態における第2超音波振動子15Bは、UFB水W1中にてキャビテーションを生成させる目的で相対的に高い周波数の超音波を発するもの、具体的には周波数が100kHz以上1MHz以下の超音波を発するものとなっている。ここでは、例えば、直径45mmの200kHz用振動子や、直径50mmの300kHz用振動子、488kHz用振動子、1MHz用振動子、2MHz用振動子などが使用可能である(いずれも本多電子社製)。なお、これらの振動子は高周波用であるため、セラミック素子単体からなる振動子を使用することが好適である。
図1において左側に位置する気泡生成槽11Aは、円筒状をなす本体部12に蓋板13及び底板14を設けて密閉した構造の容器であって、その内部にUFB水W1が溜められるようになっている。なお、本実施形態の超音波化学反応装置1では、気泡生成槽11A及び反応槽11Bが互いに物理的に離間した状態、言い換えると各々別体として独立した構造物として設けられている。蓋板13には流入用パイプ16と排出用パイプ17とが設けられている。本体部12は外筒及び内筒とからなる二重円筒構造を有しており、その内部空間には図示しない恒温槽から冷却水が常時循環供給されるようになっている。その結果、気泡生成槽11A内の温度も常温(例えば10℃〜30℃)に保持される。
第1超音波振動子15Aは、気泡生成槽11A内のUFB水W1に超音波を照射するための手段であって、底板14の下面中央部に固定されている。本実施形態における第1超音波振動子15Aは、UFBの濃度が低くなったUFB水W1中にてUFBを生成して高濃度のUFB水W1を作製する目的で相対的に低い周波数の超音波を発するもの、具体的には周波数が10kHz以上100kHz未満の超音波を発するものとなっている。ここでは、例えば、直径45mmの22kHz用振動子や、直径45mmの43kHz用振動子などが使用可能である(いずれも本多電子社製)。なお、これらの振動子は低周波用であるため、ボルト締めランジュバン型振動子からなる振動子を使用することが好適である。
第1超音波振動子15Aが発する超音波の周波数は、第2超音波振動子15Bが発する超音波の周波数の1/10倍以下であることが好ましく、さらには1/20倍以下であることがより好ましい。各々の槽にて照射される超音波の周波数がこの程度大きく異なっていると、超音波同士が互いに干渉しにくくなり、超音波化学反応の効率をよりいっそう向上させることができるからである。
また、第1超音波振動子15Aが発する超音波のパワー及び第2超音波振動子15Bが発する超音波のパワーは特に限定されず、被処理物の種類や分量などに応じて任意に設定することができる。
図1において中央に位置する液循環装置21は、気泡生成槽11Aから反応槽11Bに高濃度のUFB水W1を供給するための第1チューブ23と、反応槽11Bから気泡生成槽11Aに低濃度のUFB水W1を戻す第2チューブ24と、第2チューブ24の途上に設けられたチューブポンプ22とにより構成されている。このチューブポンプ22は、気泡生成槽11A及び反応槽11B間でUFB水W1を循環させる役割を果たしている。なお、チューブポンプ22の利点は、ポンプの構成部品(例えばロータ等)に対してUFB水W1が直接触れることがないので、UFB水W1中に不純物が混入するおそれがなく、コンタミレスの装置を実現しやすいことにある。なお、本実施形態では上記のように反応槽11B及び気泡生成槽11Aについて密閉構造を採用していることも、コンタミレスの装置を実現にとって貢献している。
この超音波化学反応装置1における駆動装置は、超音波発振器31A,31B、パワーアンプ32A,32B及び制御手段としてのPC(パーソナル・コンピュータ)33によって構成されている。
気泡生成槽11A側における超音波発生のための超音波発振器31Aは、パワーアンプ32Aを介して第1超音波振動子15Aに電気的に接続されている。超音波発振器31Aは、所定周波数(本実施形態では10kHz以上100kHz未満)の連続正弦波の発振信号を出力する。この発振信号は、パワーアンプ32Aで信号増幅された後、第1超音波振動子15Aに供給され、第1超音波振動子15Aを駆動する。図示しないが、パワーアンプ32Aと第1超音波振動子15Aとの間にインピーダンス・マッチング回路が設けられていてもよい。そして、第1超音波振動子15Aは、超音波発振器21Aの発振周波数に応じた周波数(あるいはインピーダンス・マッチングされた周波数)の超音波を発生する。この結果、気泡生成槽11A内の低濃度のUFB水W1に対し、底板14側から上方に向けて相対的に低周波数の超音波が照射される。
反応槽11B側における超音波発生のための超音波発振器31Bは、パワーアンプ32Bを介して第2超音波振動子15Bに電気的に接続されている。超音波発振器31Bは、所定周波数(本実施形態では100kHz以上1MHz以下)の連続正弦波の発振信号を出力する。この発振信号は、パワーアンプ32Bで信号増幅された後、第2超音波振動子15Bに供給され、第2超音波振動子15Bを駆動する。図示しないが、パワーアンプ32Bと第2超音波振動子15Bとの間にインピーダンス・マッチング回路が設けられていてもよい。そして、第2超音波振動子15Bは、超音波発振器21Bの発振周波数に応じた周波数(あるいはインピーダンス・マッチングされた周波数)の超音波を発生する。この結果、反応槽11B内の高濃度のUFB水W1に対し、底板14側から上方に向けて相対的に高周波数の超音波が照射される。
PC33は超音波発振器31A,31Bにそれぞれ電気的に接続されている。PC33は、第1超音波振動子15Aから発生される超音波の出力を調整して駆動するべく、超音波発振器31Aの発振信号の信号レベルを制御する。同様にPC33は、第2超音波振動子15Bから発生される超音波の出力を調整して駆動するべく、超音波発振器31Bの発振信号の信号レベルを制御する。なお、PC33には図示しないオシロスコープが電気的に接続されていてもよい。オシロスコープを設けた場合には、各々のパワーアンプ32A,32Bから出力された信号の電圧及び電流を読み取り、電圧波形及び電流波形としてそれぞれ画面上に表示することが可能となる。また、PC33は図示しないドライバ回路を介してチューブポンプ22に電気的に接続されており、チューブポンプ22のオンオフ制御や回転数制御を行うようになっている。なお、チューブポンプ22は必ずしもPC33に接続されていなくてもよく、この場合には操作者がマニュアルでオンオフや回転数を制御すればよい。
次に、上記のように構成された超音波化学反応装置1の作動方法の一例を説明する。
まず、作業者は、超音波化学反応装置1の気泡生成槽11A内及び反応槽11B内に、被処理液であるUFB水W1をそれぞれ溜めておく。この状態であらかじめ冷却水を循環させて、槽内の温度を一定に保つようにしておく。ここで、図示しない開始スイッチをオンすると、駆動装置としてのPC33がそのスイッチ操作に基づき、超音波発振器31A,31Bを駆動させる。
このとき、超音波発振器31Aは、相対的に低周波数の発振信号をパワーアンプ32Aを介して出力し、第1超音波振動子15AからUFBの生成に適した周波数の超音波を発生させる。超音波振動子15Aから発生された超音波は、気泡生成槽11A内のUFB水W1を伝搬して槽内全体に音場を形成する。このようにして上記周波数の超音波を照射することにより気泡生成槽11A内においてUFBが生成され、高濃度のUFB水W1が作製される。なお、気泡生成槽11Aにおいて、最初からUFB水W1を溜めておくのではなく、UFBを含まない水から出発して、UFBの生成により高濃度のUFB水W1を作製してもよい。
また、超音波発振器31Bは、相対的に高周波数の発振信号をパワーアンプ32Bを介して出力し、第2超音波振動子15BからUFB水W1中にてキャビテーションを生成させるのに適した周波数の超音波を発生させる。超音波振動子15Bから発生された超音波は、反応槽11B内のUFB水W1を伝搬して槽内全体に音場を形成する。このようにして上記周波数の超音波を照射することにより、反応槽11B内においてキャビテーションを生成させる。すると、キャビテーション生成により超音波化学反応が誘起されると、時間の経過とともに反応槽11B内におけるUFB水W1中のUFBが消費されて消滅し、UFBの数密度が低下するようになる。
このような兆候が見られた場合、図示しない液循環スイッチをオン操作し、チューブポンプ22を所定回転数で駆動させる。すると、気泡生成槽11A及び反応槽11B間でUFB水W1が循環される結果、高濃度のUFB水W1が反応槽11Bに対して連続供給される。従って、反応槽11Bにおいては、絶えず高濃度のUFB水W1が存在する条件下で超音波を照射することが可能となる。よって、超音波化学反応の反応速度または反応効率が高く維持され、ひいては超音波化学反応を確実に誘起させることができる。
また、気泡生成槽11A及び反応槽11B間でUFB水W1が循環される結果、UFBの濃度が低くなったUFB水W1が気泡生成槽11Aに対して連続的に戻される。そして、そこで再び超音波の照射を受けることにより、UFBが新たに生成され、低濃度のUFB水W1が高濃度のUFB水W1に復帰する。
以下、上記の実施形態をより具体化した実施例を紹介するが、本発明は以下の実施例に限定されるわけではない。
[実施例1]:超音波化学反応に及ぼす高濃度UFB水の影響の調査
1.実験方法
ここでは、超音波化学反応に及ぼす高濃度UFB水の影響を調査するために、図1に示す超音波化学反応装置1を用いて実験を行った。なお、この超音波化学反応装置1では、周波数が22kHzの第1超音波振動子15Aを気泡生成槽11Aに用いるとともに、周波数が488kHzの第2超音波振動子15Bを第2超音波振動子15Bに用いた。
試料(被処理液)としては、0.1MのKI水溶液を用い、水温を25℃とした。KI水溶液に用いる水として、超純水(Elix-UV20 and Milli-Q Advantage, Millipore)、あるいは加圧溶解法(ultrafineGaLF, IDEC)で作製した高濃度UFB水(数密度が約36×10個/mL)を用いた。
この実験では、超音波化学反応装置1の気泡生成槽11A内及び反応槽11B内に高濃度UFB水W1を100mLずつ入れた試験区を設定した。そして、槽内の溶液に投入される単位時間当たりの超音波エネルギー(以下「超音波パワー」とする。)を気泡生成槽11Aでは20W、反応槽11Bでは10Wに設定し、2槽間で液循環させながら3分間超音波を照射した。またこれとは別に、気泡生成槽11Aを使用せず反応槽11Bのみを用いた試験区(言い換えると、気泡生成槽11AからのUFBの供給が無い試験区)をコントロールとして設定し、同様の条件で超音波を照射した。
そして、3分間照射後のI 生成量を紫外可視分光光度計で測定した。なお、UFB水W1中のUFBの数密度については、ナノ粒子ブラウン運動追跡装置(NanoSight,Malvern)を用いて測定した。溶存酸素濃度については蛍光法で測定した。超音波パワーについてはカロリメトリ法により求めた。その結果を図2等のグラフに示す。
2.実験結果及び考察
図2のグラフは、気泡生成槽11AからのUFBの供給が有る場合と無い場合のそれぞれにおける超音波化学反応量(I 生成量)を示している。その結果、高濃度UFB水W1を供給した試験区は、高濃度UFB水を供給していないコントロールの試験区よりもI 生成量が6%増加していた。従って、反応槽11Bへの高濃度UFB水W1の供給により、若干ではあるが超音波化学反応が促進されることがわかった。しかし、超音波照射時間を5分間に延長したところ、高濃度UFB水W1を使用しても両者のI 生成量に違いが見られなくなった。この理由を考察するために、超音波照射による高濃度UFB水W1中のUFB数密度の変化を測定した。
図3のグラフは、反応槽11B中のUFB数密度の時間的変化を示している。これによると、反応槽11B中のUFB数密度は、488kHzかつ10Wの超音波照射によって時間の経過とともに減少し、5分間でほぼ半数となることがわかった。よって、5分間照射で両者のI 生成量に違いが見られなかったのは、反応槽11B中のUFB数密度が減少したことが原因であるとの結論に達し、次にUFBを連続的に生成する方法を模索した。
これについては、反応槽11B中の超純水に各種周波数(22kHz,43kHz,129kHz,488kHz)の超音波を照射する実験の結果より、直径が100nm程度のUFBが発生することを確認した。また、超音波の周波数が低く、超音波パワーが大きいときほど、UFBが多く発生することがわかった(前述の図13、図14のグラフを参照)。
[実施例2]:気泡生成槽におけるUFB発生効率向上による効果の調査、検討
1.実験方法
ここでは、実施例1の超音波化学反応装置1を改良した超音波化学反応装置1Aを用いて超音波の照射を行った。図4は、実施例2において使用した改良型の超音波化学反応装置1Aの要部を示す概略構成図である。この超音波化学反応装置1Aでは、気泡生成槽11AにてUFBを多く発生させてUFBの供給量を増やすための方策として、気泡生成槽11A内に細孔を有する物体を収容した。細孔を有する物体としてここではPTFE製の沸騰石43を用いるとともに、金属製のメッシュ容器42内に沸騰石43を5g入れた状態にして、気泡生成槽11A内にて水面よりも下の位置となるように配置した。
この実験では、上記の改良型の超音波化学反応装置1Aを用い、その気泡生成槽11A内及び反応槽11B内に高濃度UFB水(数密度が約36×10個/mL)を100mLずつ入れたものを好適例の試験区とした。一方、上記実施例1の超音波化学反応装置1(即ち、気泡生成槽11A内に沸騰石43を収容していない装置)を用い、その気泡生成槽11A内及び反応槽11B内に上記高濃度UFB水W1を100mLずつ入れたものをコントロールの試験区とした。そして、これらについて第1超音波振動子15Aの周波数を28kHzかつパワーを20Wに設定し、第2超音波振動子15Bの周波数を488kHzかつパワーを10Wに設定して、3分間超音波を照射した。その結果を図5、図6のグラフに示す。
2.実験結果及び考察
図5のグラフは、沸騰石43が有る場合と無い場合のそれぞれにおけるUFB数密度の時間的変化を示している。図6のグラフは、沸騰石43が有る場合と無い場合のそれぞれにおける超音波化学反応量(I 生成量)を示している。これによると、沸騰石43が無い試験区では、時間の経過とともにUFB数密度が減少する傾向が見られ、3分間経過後の時点ではUFB数密度が約27×10個/mLとなっていた。それに対して、沸騰石43が有る試験区では、時間の経過とともにUFB数密度が増加する傾向が見られ、3分間経過後の時点ではUFB数密度が約37×10個/mLとなっていた。また、沸騰石43が有る試験区では、沸騰石43が無い試験区よりもI 生成量が17.3%増加しており、反応効率が向上していた。これについては、沸騰石43表面には細孔が存在しこれが気泡の核となり、超音波を照射したときにUFBの生成を促進するのではないか、と考えられた。
[実施例3]:反応槽への空気供給による効果の検討、調査
1.実験方法
図7のグラフは、実施例2の超音波化学反応装置1Aの気泡生成槽11A(22kHz照射)及び反応槽11B(488kHz照射)のそれぞれにおける液中の溶存気体量(ここでは溶存酸素量を示すDO値)の時間的変化を示している。30分間の超音波照射を行ったところ、気泡生成槽11AではDO値に殆ど変化は見られず、約8mg/Lのままであった。これに対し、反応槽11BではDO値が約8mg/Lから約6mg/Lに低下した。一般的にキャビテーションバブルの成長には被処理液中の溶存気体が使われることから、キャビテーション頻度が高くなると、溶存気体の減少量が大きくなると考えられた。つまり、実施例2の装置ではキャビテーション生成量の減少が懸念されたため、次に反応槽11Bに空気を供給する方策について検討した。
そこで、実施例2の超音波化学反応装置1Aをさらに改良した超音波化学反応装置1Bを考えた。図8は、実施例3において使用した改良型の超音波化学反応装置1Bの要部を示す概略構成図である。この超音波化学反応装置1Bでは、反応槽11B内における溶存気体量を多い状態に保つために、反応槽11B内にバブリング手段としての多孔体製のエアストーン45を配置した。
そしてこの実験では、上記改良型の超音波化学反応装置1Bを用い、その気泡生成槽11A内及び反応槽11B内に高濃度UFB水W1(数密度が約50×10個/mL)を100mLずつ入れた状態で、エアストーン45に空気を送ってバブリングを行い、反応槽11Bに空気(流量:100 mL/min)を供給するものを好適例の試験区とした。一方、上記実施例2の超音波化学反応装置1A(即ち、反応槽11B内にてバブリングを行わない装置)を用い、その気泡生成槽11A内及び反応槽11B内に上記高濃度UFB水W1を100mLずつ入れたものをコントロールの試験区とした。そして、これらについて第1超音波振動子15Aの周波数を22kHzかつパワーを20Wに設定し、第2超音波振動子15Bの周波数を488kHzかつパワーを10Wに設定して、30分間超音波を照射した。その結果を図9、図10のグラフに示す。
2.実験結果及び考察
図9のグラフは、バブリングを行った場合と行わない場合のそれぞれにおいて、液中の溶存酸素量(DO値)の時間的変化を示している。図10のグラフは、バブリングを行った場合と行わない場合のそれぞれにおける超音波化学反応量(I 生成量)を示している。これによると、バブリングを行わない試験区ではDO値が約8mg/Lから約6mg/Lに低下したのに対し、バブリングを行った試験区ではDO値が低下したもののその程度は僅かであった。また、バブリングを行った試験区では、バブリングを行わない試験区よりもI 生成量が12.2%増加しており、反応効率がさらに向上していた。
[結論]
上記一連の実験結果からすると、実施例1のコントロールの試験区(即ち、気泡生成槽11AからのUFBの供給が無い試験区)と比較して、気泡生成槽11AからのUFB28の供給が有り、沸騰石43が配置されかつバブリングを行っている実施例3の好適例の試験区は、I 生成量が40%ほど高くなっていた。従って、当初のものより反応効率がかなり向上していることがわかった。
従って、以上詳述したように、本実施形態によれば次のような効果を得ることができる。即ち、反応槽11B、気泡生成槽11A及び液循環装置21を備えていることから、気泡生成槽11A及び反応槽11B間で高濃度UFB水W1が循環され、高濃度UFB水W1が反応槽11Bに対して連続供給される。そのため、反応槽11B内にてUFB数密度が減少せず、超音波化学反応の反応速度または反応効率が高く維持され、ひいては超音波化学反応を確実に誘起させることができる。従って、本実施形態によれば、長時間作動させたときでも一定の処理効率を維持することが可能となり、実用化を図るうえで好適な装置とすることができる。
なお、本発明は上記実施形態に限定されることはなく、発明の趣旨を逸脱しない範囲内において任意に変更可能であることは言うまでもない。
・上記実施の形態では、多孔体製のエアストーン45をバブリング手段として用いて空気のバブリングを行ったが、エアストーン45とは異なる別の手段によりバブリングを行ってもよい。また、バブリングで液中に空気を導入してもよいが、他の気体(例えば、窒素、酸素、アルゴン等)を導入してもよい。
・上記実施の形態では、気泡生成槽41AにてUFBを多く発生させてUFBの供給量を増やすための方策として、PTFE製の沸騰石43を用いたが、PTFE以外の樹脂からなる沸騰石43を用いてもよいほか、ゼオライト等の鉱物からなる多孔質体を用いてもよい。
・気泡生成槽41AにてUFBを多く発生させてUFBの供給量を増やすための方策として、例えば、図12に示す別の実施形態の超音波化学反応装置1Cのようにしてもよい。即ち、この超音波化学反応装置1Cでは、気泡生成槽11Aの内壁面12aに粗面加工(サンドブラスト加工など)が施されている。このような粗面加工部12bが内壁面12aに形成されていると、液中に気泡の核となるものが存在した状態となるため、超音波照射したときにUFBの生成が促進される。よって、キャビテーションの生成効率を向上させることができる。
・上記実施の形態では、液循環装置21を構成するポンプとしてチューブポンプ22を用いたが、これとは異なるタイプのポンプを用いてもよい。また、液圧送手段としてポンプ以外のものを用いた液循環装置21を採用してもよい。
・上記実施の形態では、試料(被処理液)を作製するにあたり超純水を使用したが、これに限定されることはなく、純度がそれほど高くない水、例えば市水(水道水)などを用いても勿論よい。なお、市水のように微細な不純物を若干含んだ水は、液中に気泡の核となるものが存在していると考えられるため、超音波照射したときにUFBの生成促進を期待することができる。
・上記実施の形態では、反応槽11Bと気泡生成槽11Aとの間で液循環装置21による液循環を行わせるために、反応槽11B及び気泡生成槽11Aの両方を密閉構造としたが、これに限定されることはなく、これらのうちのいずれか一方のみを密閉構造とするようにしてもよい。
次に、特許請求の範囲に記載された技術的思想のほかに、前述した実施の形態によって把握される技術的思想を以下に列挙する。
(1)請求項1乃至7のいずれか1項において、前記第1超音波振動子が発する超音波の周波数は、前記第2超音波振動子が発する超音波の周波数の1/20倍以下であること。
(2)請求項1乃至7のいずれか1項において、前記液循環装置は、前記気泡生成槽から前記反応槽に前記被処理液を供給するための第1チューブと、前記反応槽から前記気泡生成槽に前記被処理液を戻す第2チューブと、いずれかの配管の途上に設けられたチューブポンプとを含むこと。
(3)請求項1乃至7のいずれか1項において、前記気泡生成槽及び前記反応槽のうちの少なくとも一方は密閉されていること。
(4)請求項1乃至7のいずれか1項において、前記装置は、前記被処理液中に含まれる有機物を化学分解させるものであること。
1,1A,1B,1C…超音波化学反応装置
11A…気泡生成槽
11B…反応槽
12a…内壁面
12b…粗面加工部
15A…第1超音波振動子
15B…第2超音波振動子
21…液循環装置
43…細孔を有する物体としての沸騰石
45…バブリング手段としてのエアストーン
W1…被処理液としてのUFB水

Claims (7)

  1. 被処理液に対する超音波の照射によって化学反応を誘起することで前記被処理液を処理する装置であって、
    相対的に低い周波数の超音波を発する第1超音波振動子を有するとともに、前記被処理液に対する前記第1超音波振動子からの超音波の照射によって、前記被処理液中に直径1μm以下の超微細気泡を生成する気泡生成槽と、
    相対的に高い周波数の超音波を発する第2超音波振動子を有するとともに、前記超微細気泡を含む前記被処理液に対する前記第2超音波振動子からの超音波の照射によって、前記被処理液中にキャビテーションを生成させる反応槽と、
    前記気泡生成槽及び前記反応槽間で前記被処理液を循環させる液循環装置と
    を備えたことを特徴とする超音波化学反応装置。
  2. 前記気泡生成槽及び前記反応槽は、物理的に離間していることを特徴とする請求項1に記載の超音波化学反応装置。
  3. 前記第1超音波振動子が発する超音波の周波数は、前記第2超音波振動子が発する超音波の周波数の1/10倍以下であることを特徴とする請求項1または2に記載の超音波化学反応装置。
  4. 前記第1超音波振動子が発する超音波の周波数は、10kHz以上100kHz未満であり、前記第2超音波振動子が発する超音波の周波数は、100kHz以上1MHz以下であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の超音波化学反応装置。
  5. 前記気泡生成槽内に細孔を有する物体が収容され、または前記気泡生成槽の内壁面に粗面加工が施されていることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の超音波化学反応装置。
  6. 前記反応槽側において気体のバブリングを行うバブリング手段をさらに備えることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載の超音波化学反応装置。
  7. 被処理液に対する超音波の照射によって化学反応を誘起することで前記被処理液を処理する方法であって、
    前記被処理液に対して相対的に低い周波数の超音波を照射することによって、前記被処理液中に直径1μm以下の超微細気泡を生成する気泡生成槽と、
    前記超微細気泡を含む前記被処理液に対して相対的に高い周波数の超音波を照射することによって、前記被処理液中にキャビテーションを生成させる反応槽と
    の間で前記被処理液を循環させながら、前記反応槽において前記被処理液の処理を行う
    ことを特徴とする超音波化学反応方法。
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