JP2019014684A - 真菌感染における宿主応答抑制剤 - Google Patents

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Abstract

【課題】真菌感染を処置するための、ならびに、真菌感染によって生じる疼痛および/または痒みを処置するため、ならびに/あるいは、真菌感染を処置するための、方法および薬学的組成物を提供する。【解決手段】真菌感染によって生じる疼痛および/または痒みならびに/あるいは真菌感染自体を処置するための、VNUT阻害活性を有する化合物を含む薬学的組成物が提供される。真菌感染によって生じる疼痛および/または痒みならびに/あるいは真菌感染自体を処置するための医薬の製造における、VNUT阻害活性を有する化合物の使用が提供される。VNUT阻害活性を有する化合物を投与する工程を包含する、真菌感染によって生じる疼痛および/または痒みならびに/あるいは真菌感染自体を処置する方法が提供される。【選択図】なし

Description

本発明は、真菌感染の治療薬、特に真菌感染における宿主応答、例えば、疼痛や痒みを抑制する治療薬に関する。
真菌感染症とは原因となる真菌が様々な原因で動物の組織内に定着し増殖することに起因する感染症であり、カンジタ症、白癬など多様な疾病が知られている。未曾有の高齢化に不随した整形外科的手術件数の増大や免疫不全・抗癌剤投与の増加に伴って、これまで遭遇することが比較的稀であった皮膚粘膜の真菌感染や真菌性骨髄炎がにわかに顕在化してきた。臨床的に問題となる真菌の大半はC.albicansであり、低病原性の酵母型真菌が菌糸型に変化して皮膚粘膜表層から深部組織へ浸潤を開始すると、かゆみや痛みを伴った炎症が惹起される。たとえば、抗癌剤投与中の高齢者にみられる口腔/食道カンジダ症は著名な口腔粘膜痛や嚥下痛を伴い、患者QOLを著しく低下させる原因となっている。また、女性の25%が生涯のうち一度は罹患するとされるカンジダ膣炎はおりものを伴った痒みや性交痛をもたらす。ことほど左様にC.albicansは不快な感覚を我々にもたらす真菌であるにもかかわらず、これらの症状を緩和するための薬剤は存在しない。その治療は、アズール系抗真菌薬、ポリエン系抗生物質等抗真菌薬を外用、または内服ないし注射薬として用い、真菌の生育を阻害することが主体である。一方、カンジタ膣症等に代表されるように感染により感染の進行に伴う宿主応答の結果、患部に堪え難い疼痛やかゆみが発生することが多く、その対応は大きな問題となっている。
かゆみや痛みをひきおこす白癬菌やカンジダの表在感染に対する一般的な治療としては、アゾール系抗真菌薬の外用が選択される。アゾール系抗真菌薬にはイミダゾール系とトリアゾール系が存在するが、本邦ではイミダゾール系が外用薬として処方可能であり、1日1回の塗布で効果を発揮する優れた薬剤も登場してきている。また、カンジダ膣錠としてはイミダゾール系のクロトリマゾールの選択が一般的である。内服療法としてはトリアゾール系のイトラコナゾールが汎用されており、表在性/深在性真菌症や内臓真菌症への適応が認められている。トリアゾール系のフルコナゾールは深在性真菌症やカンジダ膣炎に対する内服薬として一般的であり、イトラコナゾールより腸管吸収がよいとされる。また、免疫不全患者に頻発する口腔内カンジダ症に対してはポリエンマクロライド系抗生物質であるアムホテリシンBを配合するシロップが汎用される(非特許文献1)。いずれの薬剤も数週間から半年にわたる長期の連用が必要であり、その間の感染に随伴する不快感を取り除くための具体的な工夫はなされていないのが現状である。
日本皮膚科学会 皮膚真菌症診断・治療ガイドライン、日皮会誌:119(5),851−862,2009
以上の経緯により、真菌感染の治療薬、特に真菌感染における宿主応答、例えば、疼痛や痒みを抑制する治療薬が求められている。
本発明者らは、痛覚神経に真菌受容体であるDectin−1が発現していることを見出し(Maruyamaら、Cell Reports 印刷中)、この受容体がC.albicans感染の際の疼痛センサーとして働いていることを見出した(Maruyamaら、論文投稿中)。また、C.albicans細胞壁の主要な構成成分であるβ−glucanは、クロロキン誘発性の掻痒を著名に増幅するという現象を見出した。C.albicansの皮膚感染は疼痛閾値の減弱(アロディニア)をもたらすが、本発明者らは、ATP分泌小胞の形成に不可欠であるATPトランスポーターVNUTのノックアウトマウスにおいてC.albicans誘発性アロディニアが消失することを見出した(Maruyamaら、論文投稿中)。以上より、Dectin−1やVNUTは真菌感染随伴症状の発現に深くかかわっていると考えられる。
発明者らはカンジタ症に伴う疼痛の発生機構を解明し、本発明を完成した。すなわち、発明者らはカンジタ症に伴う疼痛はカンジタの感染を皮膚ケラチノサイトが関知しプリン作動性化学伝達を惹起させ感覚神経を興奮させることにより発生することを発見した。ケラチノサイトから惹起されるプリン作動性化学伝達は小胞型ヌクレオチドトランスポーター(VNUT)によるATPの開口放出であるため、この過程を阻害すれば、疼痛等の感覚の発生を抑えることができるものと考えた。そこで、発明者らは、CSBG(C.albicans由来の可溶性β−glucan)をマウスに注入し疼痛を発生せしめ、VNUTの特異的阻害剤クロドロン酸を静注し、その効果を調べたところ明確な鎮痛効果を認め、本発明を完成した。
本発明は、真菌感染の治療薬、より具体的には、真菌感染によって生じる疼痛および/または痒みの治療薬を提供する。
本発明はまた、以下を提供する。
(項目1)
真菌感染によって生じる疼痛および/または痒みを処置するための、VNUT阻害活性を有する化合物を含む薬学的組成物。
(項目2)
真菌感染を処置するための薬学的組成物であって、VNUT阻害活性を有する化合物および抗真菌剤を含む薬学的組成物。
(項目3)
真菌感染を処置するための組合わせ医薬であって、VNUT阻害活性を有する化合物および抗真菌剤を含む組合わせ医薬。
(項目4)
前記抗真菌剤が、ミコナゾール、クロトリアゾール、エコナゾール硝酸塩、イソコナゾール硝酸塩、ビホナゾール、ケトコナゾール、イトラコナゾール、テルビナフィン塩酸塩、トルナフタート、および、リラナフタートからなる群から選択される、項目2に記載の薬学的組成物または項目3に記載の組合わせ医薬。
(項目5)
前記VNUT阻害活性を有する化合物は、VNUTによるATPの取り込みを阻害する効果を有する化合物、VNUTによって小胞内に蓄積されたATPの細胞外への放出を阻害する効果を有する化合物、VNUTとClとの結合を阻害するアロステリック薬物、VNUTと結合しVNUTとATPとの結合を阻害するATPアナログ、およびVNUTの発現を特異的に抑制する化合物からなる群から選択される化合物である、項目1または2に記載の薬学的組成物あるいは項目3に記載の組合わせ医薬。
(項目6)
前記VNUT阻害活性を有する化合物は、
(I)
以下の式1
で示される化合物であり、
ここで、Rは、H、OH、F、Cl、Br、CH、および、CHOHからなる群から選択され、Rは、H、OH、F、Cl、Br、CH、CHOH、および、Rからなる群から選択され、ここで、R
であり、ここで、
は単結合が3つ、または、単結合が2つと二重結合が1つであり、かつ、NがNであり;Lは結合またはC1−4アルキレンまたはC1−4置換アルキレンまたはC1−4アルケニレンであり;R41は、H、C1−4アルキレン、C1−4置換アルキレン、C1−4アルケニレンおよびC1−4置換アルケニレンからなる群から選択され、−CH=が存在する場合その半数以下が−N=で置換されていてもよく、R42またはR43と5員環を形成してもよく;R42およびR43は、C1−7アルキレン、C1−7置換アルキレン、C1−7アルケニレンおよびC1−7置換アルケニレンからなる群から独立して選択され、−CH=が存在する場合その半数以下が−N=で置換されていてもよく、R42とR43とは6員環を形成してもよく;
は、H、OH、F、Cl、Br、CH、および、CHOHからなる群より独立して選択される、化合物であるか;あるいは、
(II)
以下の式2
で示される化合物であり、
ここで、nは0または1であり、
ここで、RおよびRは、それぞれ独立して、H、OH、および、CH、ならびに、一緒になって、Oからなる群から選択され、
ここで、Rは、H、OH、CH、および、CHOHからなる群から選択され、ただし、RがHである場合、RおよびRは一緒になってOであり、
、R、およびRの少なくとも1つは酸素原子を含む化合物であるか;
(III)
U−73122(Sigma Product No.U6756)であるか;
あるいは上記(I)〜(III)の化合物の誘導体であり、ここで、該化合物の誘導体は、該化合物の薬学的に許容される塩、水和物、溶媒和物、エステル、代謝産物、保護化誘導体、糖鎖修飾体、アシル化誘導体、またはアセチル化誘導体である、項目1または2に記載の薬学的組成物あるいは項目3に記載の組合わせ医薬。
(項目7)
前記VNUT阻害活性を有する化合物がアセトアセテート、3−ヒドロキシ酪酸、グリオキシル酸、クロドロン酸、メドロン酸、ミノドロン酸、イバンドロン酸、ジフルオロメチレン2リン酸、メチレンビスフォスフォ2リン酸、U−73122、あるいは、その薬学的に許容される塩、水和物、溶媒和物、エステル、代謝産物、保護化誘導体、糖鎖修飾体、アシル化誘導体、またはアセチル化誘導体である、項目1または2に記載の薬学的組成物あるいは項目3に記載の組合わせ医薬。
(項目8)
前記VNUT阻害活性を有する化合物がVNUT遺伝子発現阻害剤である、項目1または2に記載の薬学的組成物あるいは項目3に記載の組合わせ医薬。
(項目9)
内服剤、注射剤、軟膏、および、スプレーからなる群から選択される、項目1または2に記載の薬学的組成物あるいは項目3に記載の組合わせ医薬。
(項目10)
項目7に記載の薬学的組成物または組合わせ医薬であって、被験体の体重1kgあたり0.001〜10mgの用量のクロドロン酸、あるいは、その薬学的に許容される塩、水和物、溶媒和物、エステル、代謝産物、保護化誘導体、糖鎖修飾体、アシル化誘導体、またはアセチル化誘導体を含む、薬学的組成物あるいは組合わせ医薬。
(項目11)
さらに、副腎皮質ステロイドを含む、項目1〜10のいずれか一項に記載の薬学的組成物あるいは組合わせ医薬。
(項目12)
前記副腎皮質ステロイドが、クロベタゾールプロピオン酸エステル、ジフロラゾン酢酸エステル、ベタメタゾンジプロピオン酸エステル、ジフルプレドナート、および、フルオシノニドからなる群から選択される、項目11に記載の薬学的組成物あるいは組合わせ医薬。
(項目13)
真菌感染によって生じる疼痛および/または痒みを処置するための医薬の製造、あるいは、真菌感染を処置するための医薬の製造における、VNUT阻害活性を有する化合物の使用。
(項目14)
前記VNUT阻害活性を有する化合物は、VNUTによるATPの取り込みを阻害する効果を有する化合物、およびVNUTによって小胞内に蓄積されたATPの細胞外への放出を阻害する効果を有する化合物、VNUTとClとの結合を阻害するアロステリック薬物、VNUTと結合しVNUTとATPとの結合を阻害するATPアナログ、およびVNUTの発現を特異的に抑制する化合物からなる群から選択される化合物である、項目13に記載の使用。
(項目15)
前記VNUT阻害活性を有する化合物は、
(I)
以下の式1
で示される化合物であり、
ここで、Rは、H、OH、F、Cl、Br、CH、および、CHOHからなる群から選択され、Rは、H、OH、F、Cl、Br、CH、CHOH、および、Rからなる群から選択され、ここで、R
であり、ここで、
は単結合が3つ、または、単結合が2つと二重結合が1つであり、かつ、NがNであり;Lは結合またはC1−4アルキレンまたはC1−4置換アルキレンまたはC1−4アルケニレンであり;R41は、H、C1−4アルキレン、C1−4置換アルキレン、C1−4アルケニレンおよびC1−4置換アルケニレンからなる群から選択され、−CH=が存在する場合その半数以下が−N=で置換されていてもよく、R42またはR43と5員環を形成してもよく;R42およびR43は、C1−7アルキレン、C1−7置換アルキレン、C1−7アルケニレンおよびC1−7置換アルケニレンからなる群から独立して選択され、−CH=が存在する場合その半数以下が−N=で置換されていてもよく、R42とR43とは6員環を形成してもよく;
は、H、OH、F、Cl、Br、CH、および、CHOHからなる群より独立して選択される、化合物であるか;あるいは、
(II)
以下の式2
で示される化合物であり、
ここで、nは0または1であり、
ここで、RおよびRは、それぞれ独立して、H、OH、および、CH、ならびに、一緒になって、Oからなる群から選択され、
ここで、Rは、H、OH、CH、および、CHOHからなる群から選択され、ただし、RがHである場合、RおよびRは一緒になってOであり、
、R、およびRの少なくとも1つは酸素原子を含む化合物であるか;
(III)
U−73122(Sigma Product No.U6756)であるか;
あるいは上記(I)〜(III)の誘導体であり、ここで、該化合物の誘導体は、該化合物の薬学的に許容される塩、水和物、溶媒和物、エステル、代謝産物、保護化誘導体、糖鎖修飾体、アシル化誘導体、またはアセチル化誘導体である、項目13に記載の使用。
(項目16)
前記VNUT阻害活性を有する化合物がアセトアセテート、3−ヒドロキシ酪酸、グリオキシル酸、クロドロン酸、メドロン酸、ミノドロン酸、イバンドロン酸、ジフルオロメチレン2リン酸、メチレンビスフォスフォ2リン酸、U−73122、あるいは、その薬学的に許容される塩、水和物、溶媒和物、エステル、代謝産物、保護化誘導体、糖鎖修飾体、アシル化誘導体、またはアセチル化誘導体である、項目13に記載の使用。
(項目17)
前記VNUT阻害活性を有する化合物がVNUT遺伝子発現阻害剤である、項目13に記載の使用。
(項目18)
前記医薬が抗真菌剤をさらに含む、項目13〜17のいずれか一項に記載の使用。
(項目19)
前記抗真菌剤が、ミコナゾール、クロトリアゾール、エコナゾール硝酸塩、イソコナゾール硝酸塩、ビホナゾール、ケトコナゾール、イトラコナゾール、テルビナフィン塩酸塩、トルナフタート、および、リラナフタートからなる群から選択される、項目18に記載の使用。
(項目20)
前記医薬が副腎皮質ステロイドをさらに含む、項目13〜19のいずれか一項に記載の使用。
(項目21)
前記副腎皮質ステロイドが、クロベタゾールプロピオン酸エステル、ジフロラゾン酢酸エステル、ベタメタゾンジプロピオン酸エステル、ジフルプレドナート、および、フルオシノニドからなる群から選択される、項目20に記載の使用。
(項目22)
VNUT阻害活性を有する化合物を投与する工程を包含する、真菌感染を処置する方法。
(項目23)
披検物質が、VNUT阻害活性を有するか否かを評価する工程を含む、真菌感染によって生じる疼痛および/または痒みを処置する化学物質のスクリーニング方法。
本発明によれば、VNUT活性が直接的ないし間接的に制御されることで真菌感染によって生じる疼痛および/または痒みを処置することができる。また、本発明は、真菌感染によって生じる疼痛および/または痒みを処置する治療薬も提供する。また、本発明は、VNUT阻害活性を有する化合物を含む薬学的組成物であって、真菌感染によって生じる疼痛および/または痒みを処置するための、薬学的組成物を提供する。本発明によって、これまで対応不能であった真菌感染にともなう疼痛やカユミのような宿主応答を抑えることが可能となった。直接的に考えても、カンジタ膣症にともなう堪え難い痛みカユミを抱えた多くの女性(数百万人/日本)の福音となることはいうまでもない。本発明は、真菌感染症にともない惹起されるプリン作動性化学伝達に係る宿主応答すべてに適用できるものである。
図1は、市販されている種々のビスホスホネートを示した図である。 図2は、種々のビスホスホネートについて、VNUT阻害のIC50と骨粗鬆症治療効果とをまとめた表である。 図3は、クロドロン酸がCl競合を通して可逆的にVNUTを阻害した結果をしめす。(A)Val誘発Dy構造を100μMのクロドロン酸の存在下または非存在下でオキソノールV蛍光の2分消光として測定した。コントロール活性をCCCPの存在下における消光から減じた;n=7〜8。(B)100nMのクロドロン酸の存在下(白三角形)もしくは非存在下(黒円)またはバリノマイシン(白円)の非存在下における様々な[Cl]での1分間のATP取り込み;n=3〜12。(C)100nMのクロドロン酸存在下または非存在下におけるATP取り込みのヒルプロット。データは図3Bより取得。(D)様々な化合物の示された濃度1の存在下または非存在下におけるビオチン−11−ATPを用いたUV照射時のVNUTタンパク質の光親和性標識(上段)。各タンパク質を10%SDS−PAGEを用いて分析し、CBB染色を用いて可視化している(下段)。矢印はVNUTタンパク質の位置を示す。(E)1μMのクロドロン酸による阻害は、プロテオリポソームの洗浄後に完全に元通りに戻った;n=4〜8。全件においてデータは平均±SEM.**P<0.01;NS、統計的有意差なし(両側対応有スチューデントのt検定)。 図4は、クロドロン酸が神経細胞からの小胞ATP放出を阻害した結果を示す。20分後の培養神経細胞からのATP(A)およびグルタミン酸(B)のKCl依存性放出を、示されたクロドロン酸濃度の存在下(グレイのバー)または非存在下(黒のバー)においてアッセイした。100nMのクロドロン酸による阻害は、培養神経細胞の洗浄後に完全に元通りに戻された。洗い出し実験において、クロドロン酸処理細胞を培地で洗浄し、さらに24時間インキュベートした;n=4〜8(C、D)20分後の培養星状細胞からのATP(C)およびグルタミン酸(D)のKCl依存性放出を、示されたクロドロン酸濃度の存在下(グレイのバー)または非存在下(黒のバー)においてアッセイした;n=8。(E)100μMもしくは1mMのクロドロン酸の存在下(グレイのバー)または非存在下(黒のバー)または1mM無機リン酸(Pi)における10分間にわたる培養神経細胞または星状細胞へのアレンドロン酸の取り込み;n=4〜6。データは平均±SEM.**P<0.01;NS、統計的有意差なし(片側ANOVAに続きダネットの検定)。 図5は、クロドロン酸がC.albicans由来可溶ベータ−グルカン(CSBG)誘発機械的アロディニアを阻害した結果を示す。クロドロン酸の予備注射後のC.albicans由来可溶ベータ−グルカン(CSBG)誘発機械的アロディニア(10mg/kg静脈注射、足蹠へのCSBG注射の60分前)。エラーバー、SEM;*p<0.05。 図6は、CSBGによるヒスタミン非依存性掻痒感の増進がクロドロン酸処理により消失した結果を示す。PBSまたはクロドロン酸(300μg/25μl)を頬に注射した。60分後、クロロキン(CQ)を、C.albicans由来可溶ベータ−グルカン(CSBG)とともに/なしで頬に注射し、引っ掻き行動を観察した(各注射グループにおいてn=7)。エラーバー、SEM;*p<0.05。各時間(0〜10分、10〜20分、および、20〜30分)での各棒グラフは、左から順番に、PBS→CQ、クロドロネート→CQ、PBS→CQ+CSBG、および、クロドロネート→CQ+CSBGである。 図7は、CSBGによるヒスタミン非依存性掻痒感の増進がラミナリン(デクチン1アンタゴニスト)処理により消失した結果を示す。PBSまたはラミナリン(5μg/25μl)を頬に注射した。60分後、クロロキン(CQ)を、C.albicans由来可溶ベータ−グルカン(CSBG)とともに/なしで頬に注射し、引っ掻き行動を観察した(各注射グループにおいてn=7)。エラーバー、SEM;*p<0.05。各時間(0〜10分、10〜20分、および、20〜30分)での各棒グラフは、左から順番に、PBS→CQ、ラミナリン→CQ、PBS→CQ+CSBG、および、ラミナリン→CQ+CSBGである。 図8Aは、ケラチノサイト(野生型およびDectin−1−/−)を種々の物質で3時間刺激し、培地上清中に放出されたATPを測定した結果を示す。図8Bは、U−73122がC.albicans由来可溶ベータ−グルカン(CSBG)誘発機械的アロディニアを阻害した結果を示す。U−73122の予備注射30分後のC.albicans由来可溶ベータ−グルカン(CSBG)誘発機械的アロディニア(U73122 10μM、25μL足趾注射、30分後に足趾にCSBG注射)の結果を示す。エラーバー、SEM;*p<0.05。
以下、本発明を説明する。本明細書の全体にわたり、単数形の表現は、特に言及しない限り、その複数形の概念をも含むことが理解されるべきである。また、本明細書において使用される用語は、特に言及しない限り、当該分野で通常用いられる意味で用いられることが理解されるべきである。したがって、他に定義されない限り、本明細書中で使用される全ての専門用語および科学技術用語は、本発明の属する分野の当業者によって一般的に理解されるのと同じ意味を有する。矛盾する場合、本明細書(定義を含めて)が優先する。また、本明細書において「wt%」は、「質量パーセント濃度」と互換可能に使用される。
(1.用語の定義)
以下に本明細書において特に使用される用語の定義を列挙する。
本明細書において使用される用語「クロドロン酸」は、クロドロン酸(CHCl)およびその薬学的に許容される塩、水和物、および、溶媒和物を包含する。
本明細書において使用される用語「小胞型ヌクレオチドトランスポーター」は「VNUT」と互換可能に使用される。代表的には、配列番号1、3、5、7、もしくは9に示される核酸配列、またはヌクレオチド輸送活性を保持する改変体核酸配列によってコードされるポリペプチド、あるいは、配列番号2、4、6、8、または10に示されるアミノ酸配列、またはヌクレオチド輸送活性を保持する改変体アミノ酸配列からなるポリペプチドをいう。
本明細書において使用される用語「VNUT阻害活性を有する化合物」とは、VNUTによって小胞内に蓄積したATPの放出によって生じる作用を阻害する化合物であって、VNUTを直接阻害する化合物であってもVNUTを直接阻害しない化合物であってもよい。VNUT阻害活性を有する化合物としては、例えば、VNUTによるATPの取り込みを阻害する効果を有する化合物、VNUTによって小胞内に蓄積されたATPの細胞外への放出を阻害する効果を有する化合物、細胞外に放出されたATPによる作用を阻害する効果を有する物質が挙げられるがこれらに限定されない。より詳細には、VNUT阻害活性を有する化合物としては、例えば、VNUTとClとの結合を阻害する化合物(アロステリック薬物)、ATPアナログなどのVNUTと結合しVNUTとATPとの結合を阻害する化合物、VNUTの発現を特異的に抑制する核酸等のVNUTの発現を特異的に抑制する化合物、小胞内に蓄積されたATPの放出(エキソサイトーシス)を阻害する化合物などが挙げられるがこれらに限定されない。
VNUTの発現を特異的に抑制する核酸としては、例えば、アンチセンス核酸、siRNA、および、miRNAが挙げられるがこれらに限定されない。
所定の遺伝子からsiRNAを調製する方法は周知であり、例えば、当該分野で公知のsiRNA提供業者(例えば、株式会社 ニッポンイージーティー、富山、日本)により、アニーリングしている2本鎖の合成siRNAを入手することができる。その合成siRNAをRNAseフリーの溶液に溶解し、最終濃度が20μMになるように調整し、その後細胞へ導入する。siRNAを調製する場合には、例えば、(1)GまたはCが連続して4つ以上存在しない、(2)AまたはTが連続して4つ以上存在しない、(3)GあるいはCが9塩基以上存在しない、などの条件を加えてもよい。本発明のsiRNAは、19塩基長、20塩基長、21塩基長、22塩基長、23塩基長、24塩基長、25塩基長、26塩基長、27塩基長、28塩基長、29塩基長、または30塩基長である。本発明のsiRNAは、好ましくは、19塩基長である。本発明のsiRNAはまた、好ましくは20塩基長である。本発明のsiRNAはまた、好ましくは21塩基長である。本発明のsiRNAはまた、好ましくは22塩基長である。本発明のsiRNAはまた、好ましくは23塩基長である。本発明のsiRNAはまた、好ましくは24塩基長である。VNUT阻害活性を有する化合物としては、VNUTの機能を阻害する限り特に限定されることではないが、例えば、アセト酢酸、3−ヒドロキシ酪酸等のケトン体、グリオキシル酸、クロドロン酸、及びVNUTの発現を特異的に抑制する核酸又はこれらの核酸を発現し得るベクター等が挙げられる。
好ましくは、VNUT阻害活性を有する化合物は、アセト酢酸及び3−ヒドロキシ酪酸等のケトン体、グリオキシル酸、又はクロドロン酸であり、より好ましくはアセト酢酸、グリオキシル酸、3−ヒドロキシ酪酸及びクロドロン酸からなる群より選択されるVNUT阻害活性を有する化合物であり、さらに好ましくは、クロドロン酸である。本発明の治療効果・予防効果を奏するために、これらの誘導体もまた使用可能である。
好ましくは、小胞内に蓄積されたATPの放出(エキソサイトーシス)を阻害する化合物としては、例えば、U−73122(1−[6−[[17β−3−メトキシエストラ−1,3,5(10)−トリエン−17−イル]アミノ]ヘキシル]−1H−ピロール−2,5−ジオネル(1−[6−[[17beta−3−methoxyestra−1,3,5(10)−trien−17−yl]amino]hexyl]−1H−pyrrole−2,5−dionel)、Sigma Product No.U6756)が挙げられるがこれに限定されない。
「ポリヌクレオチド」、「核酸」または「核酸分子」は、一本鎖形態、二本鎖形態、または他の形態である、リン酸エステルポリマー形態のリボヌクレオチド(アデノシン、グアノシン、ウリジン、もしくはシチジン;「RNA分子」)またはデオキシリボヌクレオチド(デオキシアデノシン、デオキシグアノシン、デオキシチミジン、もしくはデオキシシチジン(DNA分子」)、またはそれらの任意のホスホエステルアナログ(例えば、ホスホロチオエートおよびチオエステル)を指し得る。
「ポリヌクレオチド配列」、「核酸配列」または「ヌクレオチド配列」は、核酸(例えば、DNAまたはRNA)中の一連のヌクレオチド塩基(「ヌクレオシド」とも呼ばれる)であり、2つの以上のヌクレオチドの任意の鎖またはその相補鎖を意味する。本発明の好ましい核酸は、配列番号1、3、5、7、もしくは9のいずれかに示される核酸またはその相補鎖、あるいはそれらの改変体またはフラグメントを包含する。
「相補鎖」とは、ある核酸配列に対して塩基対を形成し得るようなヌクレオチドの鎖を意味する。例えば、二本鎖DNAの各々の鎖は互いに相補的な塩基配列を有し、一方の鎖から見て他方の鎖は相補鎖である。
本明細書において遺伝子(例えば、核酸配列、アミノ酸配列など)の「相同性」とは、2以上の遺伝子配列の、互いに対する同一性の程度をいう。また、本明細書において配列(核酸配列、アミノ酸配列など)の同一性とは、2以上の対比可能な配列の、互いに対する同一の配列(個々の核酸、アミノ酸など)の程度をいう。従って、ある2つの遺伝子の相同性が高いほど、それらの配列の同一性または類似性は高い。2種類の遺伝子が相同性を有するか否かは、配列の直接の比較、または核酸の場合ストリンジェントな条件下でのハイブリダイゼーション法によって調べられ得る。2つの遺伝子配列を直接比較する場合、その遺伝子配列間でDNA配列が、代表的には少なくとも50%同一である場合、好ましくは少なくとも70%同一である場合、より好ましくは少なくとも80%、90%、95%、96%、97%、98%または99%同一である場合、それらの遺伝子は相同性を有する。本明細書において、遺伝子(例えば、核酸配列、アミノ酸配列など)の「類似性」とは、上記相同性において、保存的置換をポジティブ(同一)とみなした場合の、2以上の遺伝子配列の、互いに対する同一性の程度をいう。従って、保存的置換がある場合は、その保存的置換の存在に応じて相同性と類似性とは異なる。また、保存的置換がない場合は、相同性と類似性とは同じ数値を示す。
本明細書では、アミノ酸配列および塩基配列の類似性、同一性および相同性の比較は、配列分析用ツールであるFASTAを用い、デフォルトパラメータを用いて算出される。
本明細書において「フラグメント」とは、全長のポリペプチドまたはポリヌクレオチド(長さがn)に対して、1〜n−1までの配列長さを有するポリペプチドまたはポリヌクレオチドをいう。フラグメントの長さは、その目的に応じて、適宜変更することができ、例えば、その長さの下限としては、ポリペプチドの場合、3、4、5、6、7、8、9、10、15,20、25、30、40、50およびそれ以上のアミノ酸が挙げられ、ここの具体的に列挙していない整数で表される長さ(例えば、11など)もまた、下限として適切であり得る。また、ポリヌクレオチドの場合、5、6、7、8、9、10、15,20、25、30、40、50、75、100およびそれ以上のヌクレオチドが挙げられ、ここの具体的に列挙していない整数で表される長さ(例えば、11など)もまた、下限として適切であり得る。本明細書において、ポリペプチドおよびポリヌクレオチドの長さは、上述のようにそれぞれアミノ酸または核酸の個数で表すことができるが、上述の個数は絶対的なものではなく、同じ機能を有する限り、上限または下限としての上述の個数は、その個数の上下数個(または例えば上下10%)のものも含むことが意図される。そのような意図を表現するために、本明細書では、個数の前に「約」を付けて表現することがある。しかし、本明細書では、「約」のあるなしはその数値の解釈に影響を与えないことが理解されるべきである。本明細書において有用なフラグメントの長さは、そのフラグメントの基準となる全長タンパク質の機能のうち少なくとも1つの機能が保持されているかどうかによって決定され得る。
本明細書において「高度にストリンジェントな条件」は、核酸配列において高度の相補性を有するDNA鎖のハイブリダイゼーションを可能にし、そしてミスマッチを有意に有するDNAのハイブリダイゼーションを除外するように設計された条件をいう。ハイブリダイゼーションのストリンジェンシーは、主に、温度、イオン強度、およびホルムアミドのような変性剤の条件によって決定される。このようなハイブリダイゼーションおよび洗浄に関する「高度にストリンジェントな条件」の例は、0.0015M塩化ナトリウム、0.0015M クエン酸ナトリウム、65〜68℃(好ましくは68℃)、または0.015M 塩化ナトリウム、0.0015Mクエン酸ナトリウム、および50% ホルムアミド、42℃である。このような高度にストリンジェントな条件については、Sambrooket al.,Molecular Cloning:A Laboratory Manual、第2版、Cold Spring Harbor Laboratory(ColdSpring Harbor,N,Y.1989);およびAnderson et al.、Nucleic Acid Hybridization:a Practical approach、IV、IRL Press Limited(Oxford,England).Limited,Oxford,Englandを参照のこと。必要により、よりストリンジェントな条件(例えば、より高い温度、より低いイオン強度、より高いホルムアミド、または他の変性剤)を、使用してもよい。他の薬剤が、非特異的なハイブリダイゼーションおよび/またはバックグラウンドのハイブリダイゼーションを減少する目的で、ハイブリダイゼーション緩衝液および洗浄緩衝液に含まれ得る。そのような他の薬剤の例としては、0.1%ウシ血清アルブミン、0.1%ポリビニルピロリドン、0.1%ピロリン酸ナトリウム、0.1%ドデシル硫酸ナトリウム(NaDodSO4またはSDS)、Ficoll、Denhardt溶液、超音波処理されたサケ精子DNA(または別の非相補的DNA)および硫酸デキストランであるが、他の適切な薬剤もまた、使用され得る。これらの添加物の濃度および型は、ハイブリダイゼーション条件のストリンジェンシーに実質的に影響を与えることなく変更され得る。ハイブリダイゼーション実験は、通常、pH6.8〜7.4で実施されるが;代表的なイオン強度条件において、ハイブリダイゼーションの速度は、ほとんどpH独立である。Anderson et al.、NucleicAcid Hybridization:a Practical Approach、第4章、IRL Press Limited(Oxford,England)を参照のこと。
本明細書において、ポリペプチドまたはポリヌクレオチドの「置換、付加または欠失」とは、もとのポリペプチドまたはポリヌクレオチドに対して、それぞれアミノ酸もしくはその代替物、またはヌクレオチドもしくはその代替物が、置き換わること、付け加わることまたは取り除かれることをいう。このような置換、付加または欠失の技術は、当該分野において周知であり、そのような技術の例としては、部位特異的変異誘発技術などが挙げられる。置換、付加または欠失は、1つ以上であれば任意の数でよく、そのような数は、その置換、付加または欠失を有する改変体において目的とする機能(例えば、ホルモン、サイトカインの情報伝達機能など)が保持される限り、多くすることができる。例えば、そのような数は、1または数個であり得、そして好ましくは、全体の長さの20%以内、10%以内、または100個以下、50個以下、25個以下などであり得る。
(2.本発明の治療効果)
本発明の治療効果は、小胞型核酸トランスポーター(VNUT)の機能および/または活性および/または発現を阻害ないし抑制することによって発揮される。
具体的には、「VNUTの機能」とは、細胞内分泌小胞へのATPの取り込みや細胞外へのATPの放出等が挙げられ、「VNUTの機能を阻害する」とは、例えば、VNUTによる小胞へのATPの取り込みを阻害する、または、VNUTによる小胞性ATPの細胞外への放出を阻害する等を指し、例えば、「VNUTの発現を抑制する」ことも結果としてVNUTによるATPの取り込みを阻害するため、VNUTの機能を阻害することに含まれる。
「VNUT阻害活性を有する化合物」とは、例えば、VNUTによるATPの取り込みを阻害する効果を有する化合物、VNUTによって小胞内に蓄積されたATPの細胞外への放出を阻害する効果を有する化合物、細胞外に放出されたATPによる作用を阻害する効果を有する物質が挙げられるがこれらに限定されない。より詳細には、VNUT阻害活性を有する化合物としては、例えば、VNUTとClとの結合を阻害する化合物(アロステリック薬物)、ATPアナログなどのVNUTと結合しVNUTとATPとの結合を阻害する化合物、VNUTの発現を特異的に抑制する核酸等のVNUTの発現を特異的に抑制する化合物、小胞内に蓄積されたATPの放出(エキソサイトーシス)を阻害する化合物などが挙げられるがこれらに限定されない。
本発明に用いられるVNUT阻害活性を有する化合物は、VNUT阻害活性を有する限り特に限定されず、無機塩基、有機塩基、無機酸、有機酸等との塩の形態であってもよい。上記無機塩基との塩の例としては、例えばナトリウム塩、カリウム塩などのアルカリ金属塩;カルシウム塩、マグネシウム塩などのアルカリ土類金属塩;ならびにアルミニウム塩、アンモニウム塩などが挙げられる。上記有機塩基との塩の例としては、例えばトリメチルアミン、トリエチルアミン、ピリジン、ピコリン、エタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、ジシクロヘキシルアミン、N,N’−ジベンジルエチレンジアミンとの塩が挙げられる。上記無機酸との塩の例としては、例えば塩酸、臭化水素酸、硝酸、硫酸、リン酸との塩が挙げられる。上記有機酸との塩の例としては、例えばギ酸、酢酸、トリフルオロ酢酸、フマル酸、シュウ酸、酒石酸、マレイン酸、クエン酸、コハク酸、リンゴ酸、メタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸との塩が挙げられる。これらの塩のなかでも、薬理学的に許容される塩が好ましい。
VNUTに対するアンチセンス核酸等のVNUTの発現を特異的に抑制する核酸、又はこれらの核酸を発現し得るベクターも、VNUTの発現を抑制することにより結果としてVNUTによるATPの取り込みを阻害するため、VNUT阻害活性を有する化合物に含まれ得る。VNUTの発現を特異的に抑制する核酸又はこれらの核酸を発現し得るベクター等を使用することもできる。
VNUT阻害活性を有する化合物としては、VNUTを介したATP神経伝達を阻害する限り特に限定されることはなく、VNUTを直接阻害する物質であっても、直接阻害しない物質であってもよい。理論に拘束されることは望まないが、本発明における疼痛、痒み、および/または、真菌感染の処置におけるVNUT阻害活性を有する化合物が作用するメカニズムは、以下のとおりである。VNUT阻害活性を有する化合物は、VNUTによって小胞内に蓄積したATPの放出によって生じる作用を阻害する化合物であって、VNUTを直接阻害する化合物であってもVNUTを直接阻害しない化合物であってもよい。VNUTは神経伝達物質であるATPを分泌小胞に蓄積し、蓄積されたATPはエキソサイトーシスによって細胞外に放出され、ATPを介した神経伝達(信号伝達)を行う。すなわち、神経伝達物質であるATPによるシナプス前細胞からシナプス後細胞へのシナプス伝達には、シナプス前細胞中の分泌小胞へのATPの蓄積およびシナプス前細胞でのエキソサイトーシスによるATPの細胞外への放出が必須である。そのため、VNUTによるATPの分泌小胞への蓄積が阻害されると、ATPが分泌小胞内に蓄積されなくなり、その結果、シナプス伝達が阻害される。また、シナプス前細胞からのエキソサイトーシスが阻害されると、分泌小胞内に蓄積されたATPが細胞外に放出されなくなり、シナプス伝達が阻害される。あるいは、V−ATPaseを阻害しATP輸送の駆動力をなくすこと、あるいは、V−ATPaseがもたらしたプロトン濃度勾配をプロトンコンダクターによって消失させることによっても、ATPが分泌小胞に蓄積されなくなるので、VNUTを介したATP神経伝達を阻害することができる。その一方で、例えば、プロトンコンダクターなどはATPの分泌小胞への蓄積のみならず他の多くの事象を阻害する(例えば、ATP以外の化学伝達物質(例えば、グルタミン酸、GABA、モノアミン類など)の化学伝達を阻害)可能性があるため、VNUTを直接阻害する化合物と同程度に効力を発揮する可能性は低いか、および/または、副作用が大きいと予測される。
しかしながら、本発明者らは、VNUTによって小胞内に蓄積されたATPの細胞外への放出を阻害する効果を有する化合物であるU−73122(1−[6−[[17β−3−メトキシエストラ−1,3,5(10)−トリエン−17−イル]アミノ]ヘキシル]−1H−ピロール−2,5−ジオネル(1−[6−[[17beta−3−methoxyestra−1,3,5(10)−trien−17−yl]amino]hexyl]−1H−pyrrole−2,5−dionel)、Sigma Product No.U6756)がVNUTを直接阻害する化合物と同程度に薬理効果を発揮し、かつ、重篤な副作用を示さないことを始めて示した。
VNUT阻害活性を有する化合物としては、以下が挙げられるがこれらに限定されない:
(I)例えば、VNUT阻害活性を有する化合物としては、以下の式1
で示される化合物であって、
ここで、Rは、H、OH、F、Cl、Br、CH、および、CHOHからなる群から選択され、Rは、H、OH、F、Cl、Br、CH、CHOH、および、Rからなる群から選択され、ここで、R
であり、ここで、
は単結合が3つ、または、単結合が2つと二重結合が1つであり、かつ、NがNであり;Lは結合またはC1−4アルキレンまたはC1−4置換アルキレンまたはC1−4アルケニレンであり;R41は、H、C1−4アルキレン、C1−4置換アルキレン、C1−4アルケニレンおよびC1−4置換アルケニレンからなる群から選択され、−CH=が存在する場合その半数以下が−N=で置換されていてもよく、R42またはR43と5員環を形成してもよく;R42およびR43は、C1−7アルキレン、C1−7置換アルキレン、C1−7アルケニレンおよびC1−7置換アルケニレンからなる群から独立して選択され、−CH=が存在する場合その半数以下が−N=で置換されていてもよく、R42とR43とは6員環を形成してもよく;
は、H、OH、F、Cl、Br、CH、および、CHOHからなる群より独立して選択される、化合物(ビスホスホネートまたはその誘導体もしくは類似体)、あるいは、その薬学的に許容される塩、水和物、溶媒和物、エステル(例えば、脂肪酸エステル)、代謝産物、保護化誘導体、糖鎖修飾体、アシル化誘導体、またはアセチル化誘導体が挙げられる。そのような化合物またはその誘導体としては、例えば、クロドロン酸、エチドロン酸、メドロン酸、ミノドロン酸、イバンドロン酸、エチドロン酸、ジフルオロメチレン2リン酸、および、メチレンビスフォスフォ2リン酸が挙げられるがこれらに限定されない。理論に拘束されることは好まないが、上記R4がアデノシンと類似の構造を持つことがVNUT阻害効果にとって重要である。
(II)あるいは、VNUT阻害活性を有する化合物としては、以下の式2
で示される化合物であり、
ここで、nは0または1であり、
ここで、RおよびRは、それぞれ独立して、H、OH、および、CH、ならびに、一緒になって、Oからなる群から選択され、
ここで、Rは、H、OH、CH、および、CHOHからなる群から選択され、ただし、RがHである場合、RおよびRは一緒になってOであり、
、R、およびRの少なくとも1つは酸素原子を含む化合物であるか;
(III)
U−73122(Sigma Product No.U6756)であるか;
あるいは上記(I)〜(III)の化合物の誘導体であり、ここで、該化合物の誘導体は、該化合物の薬学的に許容される塩、水和物、溶媒和物、エステル、代謝産物、保護化誘導体、糖鎖修飾体、アシル化誘導体、またはアセチル化誘導体である。
VNUT阻害活性を有する物質としては、例えば、アセトアセテート、3−ヒドロキシ酪酸、グリオキシル酸、クロドロン酸、メドロン酸、ミノドロン酸、イバンドロン酸、ジフルオロメチレン2リン酸、メチレンビスフォスフォ2リン酸およびU−73122が挙げられるがこれらに限定されない。
さらに、アミノ酸代謝物、脂肪酸代謝物のような化合物もまたVNUT阻害活性を有する化合物として利用可能である。また、これら化合物の誘導体もまた、本発明において使用可能である。誘導体としては、例えば、薬学的に許容される塩、アミド、水和物、溶媒和物、エステル化誘導体(例えば、脂肪酸エステル)、代謝産物、保護化誘導体、糖鎖修飾体、アシル化誘導体、又はアセチル化誘導体が挙げられるがこれらに限定されない。
ATPアナログもまた、VNUT阻害活性を有する化合物として利用可能である。種々のATPアナログが周知であり、市販されている。ATPアナログとしては、例えば、AMP−PCP、AMP−PNP、ATPγS、AMP−PCHP、AMP−PSP、dATP、ddATP、d−α−S−ATP、およびATPβSが挙げられるがこれらに限定されない。
(3.真菌感染における疼痛および/または痒みに対する治療効果)
本発明者らは、痛覚神経に真菌受容体であるDectin−1が発現していることを見出し(Maruyamaら、Cell Reports 印刷中)、この受容体がC.albicans感染の際の疼痛センサーとして働いていることを見出した(Maruyamaら、論文投稿中)。また、C.albicans細胞壁の主要な構成成分であるβ−glucanは、クロロキン誘発性の掻痒を著名に増幅するという現象を見出した。C.albicansの皮膚感染は疼痛閾値の減弱(アロディニア)をもたらすが、本発明者らは、ATP分泌小胞の形成に不可欠であるATPトランスポーターVNUTのノックアウトマウスにおいてC.albicans誘発性アロディニアが消失することを見出した(Maruyamaら、論文投稿中)。以上より、Dectin−1やVNUTは真菌感染随伴症状の発現に深くかかわっていると考えられる。
発明者らはカンジタ症に伴う疼痛の発生機構を解明し、本発明を完成した。すなわち、発明者らはカンジタ症に伴う疼痛はカンジタの感染を皮膚ケラチノサイトが関知しプリン作動性化学伝達を惹起させ感覚神経を興奮させることにより発生することを発見した。ケラチノサイトから惹起されるプリン作動性化学伝達は小胞型ヌクレオチドトランスポーター(VNUT)によるATPの開口放出であるため、この過程を阻害すれば、疼痛等の感覚の発生を抑えることができるものと考えた。そこで、発明者らは、CSBG(C.albicans由来の可溶性β−glucan)をマウスに注入し疼痛を発生せしめ、VNUTの特異的阻害剤クロドロン酸を静注し、その効果を調べたところ明確な鎮痛効果を認め、本発明を完成した。さらに本発明者らは、ATPの分泌小胞からのエキソサイトーシスを阻害する化合物を用いた場合にも、VNUTを直接阻害する化合物と同様の薬理効果が発揮され、かつ、副作用が観察されなかったことを実証した。
それゆえ、本発明が対象とする疼痛および/または痒みとしては、真菌感染に関連する疼痛および/または痒みが挙げられる。本発明が対象とする真菌感染としては、任意の真菌による真菌感染、例えば、Candida albicans、Candida glabrata、Candida parapsilosis、Candida krusei、Candida tropicalis、Gardnerella vaginalis、Trichomonas vaginalis、Neisseria gonorrhoeae、Escherichia coli、Herpes simplex および Haemophilus ducreyiからなる群から選択される真菌による感染が包含される。
(4.薬学的組成物の処方)
本発明はまた、有効量の治療剤の被験体へのクロドロン酸などのようにVNUTを直接阻害する化合物および/またはU−73122のようにVNUTを直接阻害することなくATPのエキソサイトーシスを阻害する化合物の投与によってVNUTを阻害し、真菌感染に起因する疼痛および/または痒みを治療するための方法および薬学的組成物を提供する。治療剤とは、薬学的に受容可能なキャリア型(例えば、滅菌キャリア)と組み合せた、本発明の組成物を意味する。
治療剤を、個々の患者の臨床状態(特に、治療剤単独処置の副作用)、送達部位、投与方法、投与計画および当業者に公知の他の因子を考慮に入れ、医療実施基準(GMP=good medical practice)を遵守する方式で処方および投薬する。従って、本明細書において目的とする「有効量」は、このような考慮を行って決定される。
一般的提案として、クロドロン酸などのVNUT阻害活性を有する化合物の用量としては、限定されることはないが、例えば、約0.1μg/kg/日〜約100mg/kg/日、約0.2μg/kg/日〜約50mg/kg/日、約0.5μg/kg/日〜約20mg/kg/日、および、約1μg/kg/日〜約10mg/kg/日が挙げられるがこれらに限定されない。最も好ましくは、クロドロン酸の用量は、患者体重を基準として、約1μg/kg/日〜10mg/kg/日の範囲にあるが、上記のようにこれは治療的裁量に委ねられる。
あるいは、本発明の薬学的組成物の投与量は、週に1回をまとめて服用することも可能である。例えば、本発明の薬学的組成物の用量は、約0.7μg/kg/週〜約700mg/kg/週、約1.4μg/kg/週〜約350mg/kg/週、約3.5μg/kg/週〜約140mg/kg/週、および、約7μg/kg/週〜約70mg/kg/週、ならびに、約5μg/kg/月〜約5000mg/kg/月、約10μg/kg/月〜約2500mg/kg/月、約25μg/kg/月〜約1000mg/kg/月、および、約50μg/kg/月〜約500mg/kg/月が挙げられるがこれらに限定されない。
皮下注射の10mg/kgの効果は、静注の0.01mg/kgと同等(約50%の治療効果)と考えられ、その場合、皮下注は1000倍の薬剤を投与可能ということになる。クロドロン酸経口投与の場合は、吸収量が2%程度と言われている(BONEFOS:クロドロン酸の医薬品名の説明文書に記載)。したがって、経口投与であれば、静注の50倍多く投与することで同等の効果が得られると考えられる。
治療剤を、経口的、直腸内、非経口的、槽内(intracistemally)、膣内、腹腔内、局所的(粉剤、軟膏、ゲル、点滴剤、または経皮パッチによるなど)、口内あるいは経口または鼻腔スプレーとして、あるいは点眼薬としてまたは眼球内注射によって投与し得る。代表的には、本発明の薬学的組成物は静脈内投与されるが、投与経路は当業者が適宜選択することができる。当業者はまた、投与経路に応じて用量を適切に調整することができる。
本発明の治療剤は、例えば、内服剤、注射剤、軟膏、および、スプレーからなる群から選択される薬学的組成物である。
「薬学的に受容可能なキャリア」とは、非毒性の固体、半固体または液体の充填剤、希釈剤、被包材または任意の型の処方補助剤をいう。
本発明の治療剤・予防剤はまた、徐放性システムにより適切に投与される。徐放性治療剤の適切な例は、経口的、直腸内、非経口的、槽内(intracistemally)、膣内、腹腔内、局所的(粉剤、軟膏、ゲル、点滴剤、または経皮パッチによるなど)、口内あるいは経口または鼻腔スプレーとして投与され得る。あるいは、本発明の薬学的組成物は、点眼薬としてまたは眼球内注射によって投与され得る。本明細書で用いる用語「非経口的」とは、静脈内、筋肉内、腹腔内、胸骨内、皮下および関節内の注射および注入を含む投与の様式をいう。代表的には、本発明の薬学的組成物は静脈内投与されるが、投与経路は当業者が適宜選択することができる。当業者はまた、投与経路に応じて用量を適切に調整することができる。
本発明の治療剤はまた、徐放性システムにより適切に投与される。徐放性治療剤の適切な例は、適切なポリマー物質(例えば、成形品(例えば、フィルムまたはマイクロカプセル)の形態の半透過性ポリマーマトリックス)、適切な疎水性物質(例えば、許容品質油中のエマルジョンとして)またはイオン交換樹脂、および貧可溶性誘導体(例えば、貧可溶性塩)を包含する。
徐放性マトリックスとしては、ポリラクチド(米国特許第3,773,919号、EP58,481)、L−グルタミン酸およびγ−エチル−L−グルタメートのコポリマー(Sidmanら、Biopolymers 22:547−556(1983))、ポリ(2−ヒドロキシエチルメタクリレート)(Langerら、J.Biomed.Mater.Res.15: 167−277(1981)、およびLanger,Chem.Tech.12:98−105(1982))、エチレンビニルアセテート(Langerら、同書)またはポリ−D−(−)−3−ヒドロキシ酪酸(EP133,988)が挙げられる。
徐放性治療剤はまた、リポソームに包括された本発明の治療剤を包含する(一般に、Langer,Science 249:1527−1533(1990);Treatら,Liposomes in the Therapy of Infectious Disease and Cancer,Lopez−Berestein and Fidler(編),Liss,New York,317−327頁および353−365(1989)を参照のこと)。治療剤を含有するリポソームは、それ自体が公知である方法により調製され得る:DE3,218,121;Epsteinら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 82:3688−3692(1985);Hwangら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 77:4030−4034(1980);EP52,322;EP36,676;EP88,046;EP143,949;EP142,641;日本国特許出 願第83−118008号;米国特許第4,485,045号および同第4,544,545号ならびにEP第102,324号。通常、リポソームは、小さな(約200〜800Å)ユニラメラ型であり、そこでは、脂質含有量は、約30モル%コレステロールよりも多く、選択された割合が、最適治療剤のために調整される。
なおさらなる実施態様において、本発明の治療剤は、ポンプにより送達されうる(Langer、前出;Sefton、CRC Crit.Ref.Biomed.Eng.14:201(1987);Buchwaldら、Surgery 88:507(1980);Saudekら、N.Engl.J.Med.321:574(1989)を参照のこと)。
他の制御放出系は、Langer(Science 249:1527−1533(1990))による総説において議論される。
非経口投与のために、1つの実施態様において、一般に、治療剤は、それを所望の程度の純度で、薬学的に受容可能なキャリア、すなわち用いる投薬量および濃度でレシピエントに対して毒性がなく、かつ処方物の他の成分と適合するものと、単位投薬量の注射可能な形態(溶液、懸濁液または乳濁液)で混合することにより処方される。例えば、この処方物は、好ましくは、酸化、および治療剤に対して有害であることが知られている他の化合物を含まない。
一般に、治療剤を液体キャリアまたは微細分割固体キャリアあるいはその両方と均一および緊密に接触させて処方物を調製する。次に、必要であれば、生成物を所望の処方物に成形する。好ましくは、キャリアは、非経口的キャリア、より好ましくはレシピエントの血液と等張である溶液である。このようなキャリアビヒクルの例としては、水、生理食塩水、リンゲル溶液およびデキストロース溶液が挙げられる。不揮発性油およびオレイン酸エチルのような非水性ビヒクルもまた、リポソームと同様に本明細書において有用である。
キャリアは、等張性および化学安定性を高める物質のような微量の添加剤を適切に含有する。このような物質は、用いる投薬量および濃度でレシピエントに対して毒性がなく、このような物質としては、リン酸塩、クエン酸塩、コハク酸塩、酢酸および他の有機酸またはその塩類のような緩衝剤;アスコルビン酸のような抗酸化剤;低分子量(約10残基より少ない)ポリペプチド(例えば、ポリアルギニンまたはトリペプチド);血清アルブミン、ゼラチンまたは免疫グロブリンのようなタンパク質;ポリビニルピロリドンのような親水性ポリマー;グリシン、グルタミン酸、アスパラギン酸またはアルギニンのようなアミノ酸;セルロースまたはその誘導体、ブドウ糖、マンノースまたはデキストリンを含む、単糖類、二糖類、および他の炭水化物;EDTAのようなキレート剤;マンニトールまたはソルビトールのような糖アルコール;ナトリウムのような対イオン;および/またはポリソルベート、ポロキサマーもしくはPEGのような非イオン性界面活性剤が挙げられる。
治療剤は、代表的には約4〜9のpHで、このようなビヒクル中に処方される。前記の特定の賦形剤、キャリアまたは安定化剤を使用することにより、塩が形成されることが理解される。
治療的投与に用いられるべき任意の薬剤は、細菌・ウイルスを含まない状態、すなわち、無菌状態であり得る。滅菌濾過膜(例えば0.2ミクロンメンブレン)で濾過することにより無菌状態は容易に達成される。一般に、治療剤は、滅菌アクセスポートを有する容器、例えば、皮下用注射針で穿刺可能なストッパー付の静脈内用溶液バッグまたはバイアルに配置される。
治療剤は、通常、単位用量または複数用量容器、例えば、密封アンプルまたはバイアルに、水溶液または再構成するための凍結乾燥処方物として貯蔵される。凍結乾燥処方物の例として、10mlのバイアルに、滅菌濾過した5%(w/v)治療剤水溶液5mlを充填し、そして得られる混合物を凍結乾燥する。凍結乾燥した治療剤を、注射用静菌水を用いて再構成して注入溶液を調製する。
本発明はまた、本発明の治療剤の1つ以上の成分を満たした一つ以上の容器を備える薬学的パックまたはキットを提供する。医薬品または生物学的製品の製造、使用または販売を規制する政府機関が定めた形式の通知が、このような容器に付属し得、この通知は、ヒトへの投与に対する製造、使用または販売に関する政府機関による承認を表す。さらに、治療剤を他の治療用化合物と組み合わせて使用し得る。
本発明の治療剤は、単独または他の治療剤と組合わせて投与され得る。組合わせは、例えば、混合物として同時に;同時にまたは並行してだが別々に;あるいは経時的のいずれかで投与され得る。これは、組み合わされた薬剤が、治療用混合物として共に投与されるという提示、およびまた、組み合わされた薬剤が、別々にしかし同時に、例えば、同じ個体に別々の静脈ラインを通じて投与される手順を含む。「組み合わせて」の投与は、一番目、続いて二番目に与えられる化合物または薬剤のうち1つの別々の投与をさらに含む。
(5.VNUT遺伝子発現阻害剤)
本発明において使用されるVNUT阻害活性を有する化合物としては、クロドロン酸以外に例えば、VNUT遺伝子発現阻害剤が挙げられるがこれらに限定されない。VNUT遺伝子発現阻害剤は、本発明の薬学的組成物の有効成分として用いることができる。VNUT遺伝子発現阻害剤としては、例えば、siRNAが挙げられるがこれに限定されない。
本発明の遺伝子は、siRNAを用いてその発現をノックダウン(抑制)することが可能である。所定の遺伝子からsiRNAを調製する方法は周知であり、例えば、当該分野で公知のsiRNA提供業者(例えば、株式会社 ニッポンイージーティー、富山、日本)により、アニーリングしている2本鎖の合成siRNAを入手することができる。その合成siRNAをRNAseフリーの溶液に溶解し、最終濃度が20μMになるように調整し、その後細胞へ導入する。siRNAを調製する場合には、例えば、(1)GまたはCが連続して4つ以上存在しない、(2)AまたはTが連続して4つ以上存在しない、(3)GあるいはCが9塩基以上存在しない、などの条件を加えてもよい。本発明のsiRNAは、19塩基長、20塩基長、21塩基長、22塩基長、23塩基長、24塩基長、25塩基長、26塩基長、27塩基長、28塩基長、29塩基長、または30塩基長である。本発明のsiRNAは、好ましくは、19塩基長である。本発明のsiRNAはまた、好ましくは20塩基長である。本発明のsiRNAはまた、好ましくは21塩基長である。本発明のsiRNAはまた、好ましくは22塩基長である。本発明のsiRNAはまた、好ましくは23塩基長である。本発明のsiRNAはまた、好ましくは24塩基長である。
VNUT遺伝子発現阻害剤によるVNUT遺伝子発現の阻害効果は、周知の方法で確認することが可能である。
(6.他の薬剤との併用)
本発明のVNUT阻害剤は、以下からなる群から選択される活性成分と併用することが可能である:
・抗真菌剤(カンジダ、白癬などに使用)
・ステロイド剤(掻痒症状がひどい場合にやむをえず)
・乾癬の治療薬(自己免疫疾患であり痒みや痛みを伴うことがある)
・褥瘡などの潰瘍に使用する薬剤
・痛みどめの外用剤
・痒みどめの外用剤
・アトピー性皮膚炎の治療薬
・にきび治療薬
・皮膚細菌感染症一般。
これらを以下の表にまとめた。


複数の活性成分は、単一の組成物として処方しても、別々の組成物として処方してもよい。あるいは、複数の活性成分は、単一の処方物において、別の層として、別の微粒子として、別の相として存在してもよい。複数の活性成分を別々の組成物として処方した場合、これら別々の組成物は、同じ投与レジメンによって投与されても、異なる投与レジメンによって投与されてもよい。あるいは、これら別々の組成物は、ほぼ同時に投与されても、逐次的に投与されても、あるいは、別の時点で投与されてもよい。
本発明において、周知の種々の抗真菌剤を使用することができる。抗真菌剤は、例えば、ミコナゾール、クロトリアゾール、エコナゾール硝酸塩、イソコナゾール硝酸塩、ビホナゾール、ケトコナゾール、イトラコナゾール、テルビナフィン塩酸塩、トルナフタート、および、リラナフタートからなる群から選択されるが、これらに限定されない。
本発明において、周知の種々の副腎皮質ステロイド剤を使用することができる。副腎皮質ステロイド剤は、例えば、クロベタゾールプロピオン酸エステル、ジフロラゾン酢酸エステル、ベタメタゾンジプロピオン酸エステル、ジフルプレドナート、および、フルオシノニドからなる群から選択されるが、これらに限定されない。
以下に、実施例に基づいて本発明を説明するが、以下の実施例は、例示の目的のみに提供される。従って、本発明の範囲は、上記発明の詳細な説明にも下記実施例にも限定されるものではなく、請求の範囲によってのみ限定される。
(方法および材料)
(1)昆虫細胞における輸送体の発現および精製
小胞神経伝達物質輸送体を昆虫細胞において発現し、精製した(Jugeら、(2010)Metabolic control of vesicular glutamate transport and release、Neuron 68:99−112)。目的の遺伝子を含む組換えバキュロウイルスは、Bac−to−Bacバキュロウイルス発現システム(Invitrogen;Carlsbad,CA)を使用してメーカーの手順に従って作製された。細胞(1〜2×10)を20mM Tris−HCl(pH8.0)、100mM酢酸ナトリウム、10%グリセロール、0.5mMジチオスレイトール、10μg/mLペプスタチンA、および10μg/mLロイペプチンを含む緩衝液に懸濁し、TOMY UD200超音波発生機を使用した超音波処理により破砕した。細胞溶解物を、破片を除去するために700×gで10分間遠心分離し、得られた上清を160,000×gで1時間4℃で遠心分離した。ペレット(膜画分)を20mM Tris−HCl(pH8.0)、10%グリセロール、10μg/mLペプスタチンA、および10μg/mLロイペプチンを含む緩衝液に約1.5mgタンパク質/mLで懸濁し、2%オクチルグルコシド(同仁化学研究所、熊本)で可溶化した。260,000×gでの30分間の遠心分離後、上清が採取され、1mLのNi−NTA Superflow樹脂(Qiagen)を用いて精製した。4℃で4時間のインキュベーション後、樹脂を20mLの20mM MOPS−Tris(pH7.0)、4mMイミダゾール、20%グリセロール、および1%オクチルグルコシドで洗浄した。タンパク質が60mMイミダゾールを含む3mLの同様の緩衝液で樹脂から溶出され、少なくとも数ヶ月間活性を失うことなく−80℃での保存が可能であった。
(2)蛍光消光を介したΔψの測定
発明者らは、オキソノールV(Sigma Aldrich)の蛍光消光を測定することによってΔψ(内側プラス)をアッセイした。プロテオリポソームに組み込まれた1μgのタンパク質、20mM MOPS−Tris(pH7.0)、140mM酢酸カリウム、5mMの酢酸マグネシウム、10mM KCl、および1μMオキソノールVからなる反応混合物(450μL)を27℃で50秒間インキュベートした。反応は、列挙されている阻害剤の存在下/不在下における2μMバリノマイシンの追加により開始され、2μMカルボニルシアニド−m−クロロフェニルヒドラゾン(CCCP)の追加により停止した。
(3)ATP結合アッセイ
VNUTタンパク質の光親和性標識を実質的に前記されたように実施した(Shimada−Shimizuら、(2013) Evidence that Na/H exchanger 1 is an ATP−binding protein、FEBS J.280:1430−1442)。20mM MOPS−Tris(pH7.4)、50mM酢酸カリウム、2mM酢酸マグネシウム、10mM KCl、および0.1%DTMを含む50μLの緩衝液において、20μMの濃度のビオチン−11−ATP(PerkinElmer)を4μgのVNUTタンパク質と暗所において氷上で混合した。氷上で3分のインキュベーション後、10分間携帯UVランプを用いて254nmで溶液を照射した。照射後、10%SDS、50%グリセロール、0.3%EDTA、6%トリスおよびブロモフェノールブルーを含む試料緩衝液を追加することにより架橋反応を中止させた。その後、試料をSDS−ポリアクリルアミドゲル電気泳動法(PAGE)、続いて抗ストレプトアビジン抗体(Sigma Aldrich)による免疫ブロットに供した。
(4)動物実験
動物実験は、岡山大学動物実験委員会、大阪大学実験動物委員会、および味の素株式会社により制定されたガイドラインに従って行われた。すべての実験は承認された施設ガイドラインに従って実施された。C57BL/6マウスおよびウィスターラットを日本エスエルシー株式会社(浜松)より購入した。VNUT−/−マウスを前記されたように生成した(Sakamotoら、(2014)Impairment of vesicular ATP release affects glucose metabolism and increase insulin sensitivity、Sci.Rep.4:6689)。これらの動物を12時間の明暗周期下において23±1℃の温度で個別で、またはケージにつき4匹以下のグループで飼育し、飼料および水への自由なアクセスを与えた。慢性炎症性疼痛モデルでは、C57BL/6マウス(雄、試験時22〜30g)に対し、27ゲージ針を有する100μLハミルトンマイクロシリンジを使用して左後足の足底表面に20μLの1mg/mL CFA(Sigma Aldrich)または1%カラゲニン溶液(Sigma Aldrich)を注射した(Xuら、(2010)Resolvins RvE1 and RvD1 attenuate inflammatory pain via central and peripheral actions、Nat.Med、16:592−597)。慢性神経障害性疼痛モデルでは、C57BL/6マウス(雄、試験時22〜30g)に対し、上腿部の約半分の坐骨神経を片側結紮に供した(Seltzerら、(1990)A novel behavioral model of neuropathic pain disorder produced in rats by partial sciatic nerve injury、Pain 43:450−456)。すべての実験において、動物を各実験グループに無作為に分割した。
(5)細胞培養ならびに神経細胞および星状細胞の単離
ラット胎児海馬神経細胞を単離し、前記されたように培養した(Bankerら、(1977)Rat hippocampal neurons in dispersed cell culture、Brain Res.126:397−442)。単離後、海馬を37℃で15分間0.25%トリプシンと0.01%デオキシリボヌクレアーゼIを含むハンクス液においてインキュベートした。細胞をダルベッコ変法イーグル培地(DMEM)で二度洗浄し、37℃で5%CO/95%空気下において0.5mMグルタミン、100単位/mLのペニシリン、100μg/mLストレプトマイシン、0.25μg/mLファンギゾン、およびB27サプリメント(GIBCO)を追加したNeurobasal培地(GIBCO、Waltham、MA)において2.0×10個/3.5cm培養皿で培養した。海馬星状細胞を、神経細胞に対して使用されたものと同様な手順を使用して単離し、37℃で5%CO/95%空気下において10%ウシ胎児血清を含むDMEMにおいて培養した。
(6)アレンドロン酸の神経細胞および星状細胞への取り込み
初代培養細胞(2.0×10個/3.5cm培養皿)を、128mM NaCl、2mM KCl、1mM MgCl、および10mM HEPES−Tris(pH7.4)から構成される取込溶液で二度洗浄した。37℃で20分間の取込溶液におけるインキュベーション後、細胞を、128mM NaClまたは256mMショ糖、2mM KCl、1mM MgCl、および10mM HEPES−Tris(pH7.4)から構成される取込溶液で再度二度洗浄した。アレンドロン酸を、10μM[l−14C]アレンドロン酸(0.5MBq/μmol;Moravek;Brea,CA)を含む取込溶液において37℃で10分間取り込ませた。インキュベーション後、細胞を取込溶液において三度洗浄し、1%SDSで溶解した。液体シンチレーション計数法を介して溶解物における放射能を測定した(PerkinElmer)。
(7)足底試験
足底試験を前記されたように実施した(Xuら、(2010)Resolvins RvE1 and RvD1 attenuate inflammatory pain via central and peripheral actions、Nat.Med、16:592−597)。C57BL/6マウス(雄、試験時22〜30g)を、足底試験前に60分間にわたり高架アクリル観察室(14.0×17.0×11.0cm)に順応させた。熱痛覚過敏をハーグリーブス放射熱装置(Ugo Basile,Varese,Italy)を用いて評価した。熱源である携帯型赤外線フォトビームを左後足の足底表面の下に配置した。未処理コントロールマウスにおける組織損傷を防止するために、停止点を20秒に設定した。クロドロン酸を100μL/10g体重の容量で足底試験の60分前に尾静脈から静脈注射した。
%MPE=[(PL−BL2)/(BL1−BL2)]×100
と算定し、ここでBL1は炎症以前の標準潜伏期間を表し、BL2は炎症後であるが投薬前の標準潜伏期間を表し、PLは投薬後の潜伏期間を表す。
(実施例1)
クロドロン酸は、ビスホスホネートの一種である。ビスホスホネートは骨粗鬆症の治療薬の有効成分として第一世代から第三世代まで開発されている。世代が進むにつれ、骨粗鬆症の治療効果は高いものの、副作用も強くなる。第一世代のクロドロン酸は骨粗鬆症の治療効果も弱く、副作用も弱い特徴がある。市販されている種々のビスホスホネートを図1に示す。
図2は、図1に示した種々のビスホスホネートについて、VNUT阻害のIC50と骨粗鬆症治療効果とをまとめたものである。IC50は10mM Cl存在下で、2分間の処理によってVNUT活性の50%を阻害するために必要な濃度である。VNUT活性は、精製VNUTを含むプロテオリポソームへのΔψ依存性ATP取り込みによって測定した(n=3〜13)。骨粗鬆症治療効果は、以下の指標により示した:−効果なし;+弱い効果;++中程度の効果;+++強力な効果;++++非常に強力な効果。
(実施例2:クロドロン酸はVNUT Cl依存性のアロステリック調節因子である)
発明者らは、VNUT媒介ATP取り込みに対するクロドロン酸の阻害効果の根本的なメカニズムを検討した。オキソノール―V蛍光消光に基づいた実験で、高濃度のクロドロン酸への暴露がΔψに影響を与えなかったことが示された(図3A)。ATPの取り込みのCl依存性の分析から、2mMClまでの暴露後のATP輸送に変化がないことが明らかになった:ATPの取り込みは3〜7mMのClでの処理後に顕著に増加し、8mM Cl以上で安定化した(図3B)。特に、Cl依存性VNUT活性化は、ATP輸送に対し高い正の協働性を示し、ヒル係数はClに対し約3であった(図3C)。クロドロン酸は、Cl濃度をより高い活性化水準に移行させるため、これは競争的相互作用を示唆する(図3B、C)。ATP結合の光親和性標識はATP輸送媒介基質特異性に対するものとほぼ同一であり、クロドロン酸とエチドロン酸のいずれによっても阻害されなかった(図3D)。また、Cl依存的にSLC17輸送体を阻害することが知られている(Jugeら、(2010)Metabolic control of vesicular glutamate transport and release、Neuron 68:99−112、および、Hiasaら、(2014)Essential role of vesicular nucleotide transporter in vesicular storage and release of nucleotides in platelets.Physiol. Rep.2:e12034)アセト酢酸またはグリオキシル酸などのケト酸は、ATP結合を阻害しなかった(図3D)。これらのクロドロン酸の効果は完全に可逆的であった(図3E)。
(実施例3:クロドロン酸は小胞ATP放出を調整する)
ATPは主にVNUT媒介性開口放出を介して神経細胞または星状細胞から放出される(Sakamotoら、(2014)Impairment of vesicular ATP release affects glucose metabolism and increase insulin sensitivity、Sci.Rep.4:6689、および、Jungら、(2013)Possible ATP release through lysosomal exocytosis from primary sensory neurons、Biochem.Biophys.Res.Commun.430:488−493)。100nMの低濃度でのクロドロン酸は、骨吸収阻害について記載されたものと比較して、高KCl濃度を介した脱分極依存性刺激時の神経細胞ATP放出を完全に阻害した(図4A)(Sahniら、(1993)Bisphosphonates act on rat bone resorption through the mediation of osteoblasts、J.Clin.Invest.91:2004−2011)。並行して実施された実験においては、1μMのクロドロン酸は、グルタミン酸放出を阻害しないため、これはクロドロン酸が選択的に小胞ATP放出を選択的に阻害することを示唆する(図4B)。また、ATP放出に対するクロドロン酸の効果は、完全に可逆的であった(図4A)。さらに、星状細胞からの分極依存性ATPおよびグルタミン酸放出は1μMのクロドロン酸でも阻害されなかった(図4C、D)。神経細胞および星状細胞へのビスホスホネートのアクセス性を調査するために、発明者らは、市販の放射標識されたビスホスホネートの取り込みを測定した。Na依存性ビスホスホネート輸送活性は、神経細胞において検出されるが星状細胞においては検出されず、クロドロン酸および無機リン酸(Pi)により完全に阻害されるため、Pi輸送に神経細胞へのビスホスホネートの取り込みが関与することを示唆する(図4E)。
(実施例4:クロドロン酸はC.albicans由来可溶ベータ−グルカン(CSBG)誘発機械的アロディニアを阻害する)
B6Jマウスを12〜36時間、試験を行う部屋で飼育し環境に慣れさせた。B6JマウスにPBSまたはクロドロネートを静注(10mg/kg bw)し60分後、後肢にPBSまたはカンジダ由来の可溶性βグルカン(15μg/25μl PBS)を、Ishibashiら((2002)Relationship between the physical properties of Candida albicans cell well beta−glucan and activation of leukocytes in vitro. International Immunopharmacology 2(8):1109−1122)の方法に従ってカンジダより抽出)を皮下注射した。その後、経時的に電子Von Frey痛覚測定装置(electronic Von Freyanesthesiometer,IITC Inc.,Woodland Hills, CA, USA)を用いてマウス後肢のメカニカルセンシティビティーを測定した。その結果、図5に示されるように、クロドロン酸がC.albicans由来可溶ベータ−グルカン(CSBG)誘発機械的アロディニアを阻害したことが示された。
(実施例5:CSBGによるヒスタミン非依存性掻痒感の増進はクロドロン酸処理により消失する)
B6Jマウスを12〜36時間、試験を行う部屋で飼育し環境に慣れさせた。B6Jマウスの頬にPBSまたはクロドロネート(300μg/25μl PBS)を皮下注し60分後、同じ頬にクロロキン(CQ)(200μg/25μl PBS,C6628,Sigma−Aldrich,USA)またはクロロキン(200μg/25μl PBS,C6628,Sigma−Aldrich, USA)にカンジダ由来可溶性βグルカン(150 μg per 25 μl PBS)を追加した混合物を投与し、後肢による頬のひっかき行動の回数を計測した。その結果、図6に示されるように、CSBGによるヒスタミン非依存性掻痒感の増進はクロドロン酸処理により消失したことが示された。
(実施例6:CSBGによるヒスタミン非依存性掻痒感の増進はラミナリン(デクチン1アンタゴニスト)処理により消失する)
B6Jマウスを12〜36時間、試験を行う部屋で飼育し環境に慣れさせた。B6Jマウスの頬にPBSまたはラミナリン(laminarin 5μg/25μl PBS,sigma cas−no 9008 22−4)を皮下注し60分後、同じ頬にクロロキン(CQ)(200μg/25μl PBS,C6628,Sigma−Aldrich,USA)またはクロロキン(200μg/25μl PBS,C6628,Sigma−Aldrich,USA)にカンジダ由来可溶性βグルカン(150μg/25μl PBS)を添加した混合物を投与し、後肢による頬のひっかき行動の回数を計測した。その結果、図7に示されるように、CSBGによるヒスタミン非依存性掻痒感の増進はラミナリン(デクチン1アンタゴニスト)処理により消失したことが示された。
(実施例7:小胞内に蓄積されたATPの放出(エキソサイトーシス)を阻害する化合物による薬理効果)
VNUTによって小胞内に蓄積したATPの細胞外への放出を阻害する効果を有する化合物が、真菌感染によって生じる疼痛および/または痒みの処置、ならびに/あるいは、真菌感染の処置において優れた効果を発揮することが以下のとおり示された。
VNUTによって小胞内に蓄積したATPはエキソサイトーシスによって細胞外へ放出される。そこで、ホスホリパーゼCおよびAのインヒビターであるU−73122(1−[6−[[17β−3−メトキシエストラ−1,3,5(10)−トリエン−17−イル]アミノ]ヘキシル]−1H−ピロール−2,5−ジオネル(1−[6−[[17beta−3−methoxyestra−1,3,5(10)−trien−17−yl]amino]hexyl]−1H−pyrrole−2,5−dionel)、Sigma Product No.U6756)を用いた疼痛および/または痒みに対する治療効果を試験した。
(A)まず最初に、U−73122がインビトロ(ケラチノサイト)においてC.albicansに起因するATP放出を抑制するか否かについて試験した。マンナン(100μg/ml)、C.albicans由来可溶ベータ−グルカン(CSBG)(100μg/ml)、C.albicans由来微粒子状ベータ−グルカン(CPBG)(100μg/ml)、hk C.albicans(65℃で1時間加熱して死滅させたC.albicans)、または、hk C.albicans+U−73122(10μM)の組み合わせのそれぞれを用いてケラチノサイト(野生型およびDectin−1−/−)を3時間刺激し、培養上清に放出されたATP濃度を測定した。結果を図8Aに示す(n=4)。C.albicansに起因するATP放出がU−73122によって抑制されたことが示された。また、Dectin−1−/−ケラチノサイトでは、C.albicansに起因するATP放出が大きく減少したことから、ATP放出は、C.albicans由来の物質が、真菌受容体であるDectin−1に結合することによって生じたと考えられる。
(B)次に、U−73122がC.albicans由来可溶ベータ−グルカン(CSBG)誘発機械的アロディニアを阻害するか否か試験した。U−73122の予備注射30分後にC.albicans由来可溶ベータ−グルカン(CSBG)を注射し(10mg/kg静脈注射、足蹠へのCSBG注射)、誘発された機械的アロディニアを測定した。結果を図8Bに示す(n=6/グループ)。エラーバー、SEM;*p<0.05。その結果、C.albicans由来可溶ベータ−グルカン(CSBG)によって誘発される機械的アロディニア(疼痛および/または痒みの指標)がU−73122によって顕著に抑制されたことが示された。この抑制のレベルは、VNUTを直接阻害する化合物の場合と同程度であった(図5参照)。
(実施例8)
VNUTへの阻害活性を指標として、真菌感染によって生じる疼痛および/または痒みを処置するための治療剤の探索を以下のとおりに行う。例えば、候補物質(被検物質)がVNUTへの阻害活性を有するか否か、また、候補物質(被検物質)が下記疾患の予防剤又は治療剤であるか否かを決定する方法を以下のとおりに行うことができる。
本発明はさらに、被検物質が、VNUTを阻害し得るか否かを評価する工程を含む、真菌感染によって生じる疼痛および/または痒みの治療剤のスクリーニング方法(本発明のスクリーニング方法)を提供する。後述の実施例に示されるように、VNUTの働きを阻害すると、これら疾患の症状が軽減されるので、VNUTの阻害活性を指標として、真菌感染によって生じる疼痛および/または痒みの治療剤をスクリーニングすることが可能である。
本発明のスクリーニング方法は、被検物質が、VNUT活性を阻害し得るか否かを評価する工程を含む。VNUT活性を阻害し得るか否かを評価する工程は、具体的には、被検物質の存在下及び非存在下でのVNUT活性を測定し両者を比較することによって実施される。VNUT活性の測定は、通常、インビトロにおいて行われる。
本発明のスクリーニング方法は、具体的には、以下の工程を含む:
(1)被検物質の存在下において、VNUT活性を測定する工程;
(2)当該被検物質の非存在下において、VNUT活性を測定する工程;
(3)当該被検物質の存在下における当該VNUT活性を、当該被検物質の非存在下における当該VNUT活性と比較する工程;及び
(4)比較の結果、当該被検物質の非存在下におけるVNUTの活性と比較して、当該被検物質の存在下におけるVNUT活性が低い被検物質を、真菌感染によって生じる疼痛および/または痒みの治療剤の候補物質として選択する工程。
本発明のスクリーニング方法に供される被検物質は、いかなる公知化合物及び新規化合物であってもよく、例えば、核酸、糖質、脂質、蛋白質、ペプチド、有機低分子化合物、コンビナトリアルケミストリー技術を用いて作製された化合物ライブラリー、ランダムペプチドライブラリー、あるいは微生物、動植物、海洋生物等由来の天然成分等が挙げられる。
VNUT活性の指標としては、トランスポーター活性、ATPによるシグナル伝達活性が挙げられるがこれらに限定されない。一実施態様として、VNUT活性の測定は、例えば、Juge,N.et al.Neuron 68,99−112.(2010)に記載の方法、上述の方法等に準じて、VNUTを介したATPのとりこみを測定することにより測定することができる。例えば、精製したVNUTタンパク質が組込まれたプロテオリポソームを、標識したATP(例えば、[H]−ATP等の放射性同位元素で標識されたATP等)を含む測定溶液中でインキュベートし、リポソーム内に取り込まれたATP量を測定することにより(例えば、標識したATPとして放射性同位元素で標識されたATPを用いる場合、液体シンチレーションカウンターを用いて測定する等)、VNUTの活性を測定することができるが、これに限定されない。VNUTが組込まれたプロテオリポソームは、例えば、精製したVNUTタンパク質とリポソームとを混合し、凍結させた後に溶解をし、再構成バッファーに溶解することにより作製することができる。このプロテオリポソームを、Δψを付与する物質(例、バリノマイシン等)、Cl(例、KCl等)及び標識したATP(例、[H]−ATP)を含む溶液中で、一定時間インキュベートし、遠心カラムを用いてプロテオリポソームを外部培地から分離することにより輸送を終結させ、液体シンチレーションカウンターにより得られた溶出物中の放射線を測定し取り込まれたATP量を計算することにより、VNUTの活性を測定することができる。
また別の態様として、VNUT活性の測定は、VNUT依存的にATPを細胞外に放出し得る細胞を用い、ATP放出刺激に対して、細胞外に放出されるATP量を測定することにより測定することができる。VNUT依存的にATPを細胞外に放出し得る細胞を用いたVNUTの活性の測定は、例えば、Jugeら、Neuron 68,99−112.(2010)に記載の方法、Sakamotoら、Sci.Rep.4,1−10(2014)に記載の方法、HiasaらPhysiol.Rep.2,e12034(2014)に記載の方法等に準じて行うことができる。VNUT依存的にATPを細胞外に放出し得る細胞としては、海馬神経初代培養等の神経細胞、血小板などが挙げられるがこれらに限定されない。例えば、VNUTの活性の測定は、VNUT依存的にATPを細胞外に放出し得る細胞に被検物質を接触させた後、該細胞にVNUT依存的なATP放出刺激を与え、細胞外に放出されるATP量を測定することにより、測定することができる。
工程(1)及び(2)は、同時に行ってもよく、別々に行ってもよいが、実験の精度、再現性の観点から同時に行うことが好ましい。
VNUTの活性の比較は、好ましくは、有意差の有無に基づいて行なわれ得る。なお、被検物質の非存在下におけるVNUTの活性は、被検物質の存在下におけるVNUTの活性の測定に対し、事前に測定した値であっても、同時に測定した値であってもよいが、実験の精度、再現性の観点から同時に測定した値であることが好ましい。
尚、被検物質の存在下におけるVNUTの活性測定についての試験条件(リポソームの作製方法、用いる細胞の種類及び培養条件等)は、被検物質が存在する点を除き、被検物質の非存在下で行うVNUTの活性測定と同一であることが好ましい。
そして、比較の結果、VNUTの活性を抑制した被検物質を、真菌感染によって生じる疼痛および/または痒みを治療する作用を有する物質の候補物質として選択することが出来る。
このようにして選択された候補物質が、実際に真菌感染によって生じる疼痛および/または痒みを治療する作用を有するか確認する試験を引き続き行ってもよい。具体的には、本発明のスクリーニング方法は、さらに下記の(5)〜(7)の工程を含み得る;
(5)真菌感染によって生じる疼痛および/または痒みの疾患または状態モデル非ヒト哺乳動物に工程(4)で選択した候補物質を投与すること;
(6)該非ヒト哺乳動物における真菌感染によって生じる疼痛および/または痒みを評価すること;
(7)候補物質を投与した非ヒト哺乳動物における疾患の症状を、候補物質を投与していない対照非ヒト哺乳動物における真菌感染によって生じる疼痛および/または痒みと比較すること。
非ヒト哺乳動物における真菌感染によって生じる疼痛および/または痒み症状の評価は、当業者に周知のパラメーター等に基づき行われる。
尚、対照非ヒト哺乳動物についての試験条件(動物の種類、疾患モデルの種類等)は、候補物質を投与しない点を除き、候補物質を投与する非ヒト哺乳動物と同一であることが好ましい。
そして、候補物質を投与した非ヒト哺乳動物における症状が、候補物質を投与していない対照非ヒト哺乳動物における症状よりも有意に軽減されている場合には、当該候補物質を、真菌感染によって生じる疼痛および/または痒みを治療する活性を有する物質として得ることが出来る。
本明細書中、VNUTは、通常、ヒト、イヌ、ウシ、ウマ、カンガルー、ブタ、ヒツジ、ヤギ、ネコ、マウス、ウサギ、ラット等の哺乳動物由来のものを意味する。本明細書中、VNUTが哺乳動物由来であるとは、VNUTのアミノ酸配列又はヌクレオチド配列が、哺乳動物のものであることを意味する。
以上のように、本発明の好ましい実施形態を用いて本発明を例示してきたが、本発明は、この実施形態に限定して解釈されるべきものではない。本発明は、特許請求の範囲によってのみその範囲が解釈されるべきであることが理解される。当業者は、本発明の具体的な好ましい実施形態の記載から、本発明の記載および技術常識に基づいて等価な範囲を実施することができることが理解される。本明細書において引用した特許、特許出願および文献は、その内容自体が具体的に本明細書に記載されているのと同様にその内容が本明細書に対する参考として援用されるべきであることが理解される。
配列番号1は、ヒトSLC17A9の核酸配列である。
配列番号2は、ヒトSLC17A9のアミノ酸配列である。
配列番号3は、マウスSLC17A9の核酸配列である
配列番号4は、マウスSLC17A9のアミノ酸配列である。
配列番号5は、ラットSLC17A9の核酸配列である
配列番号6は、ラットSLC17A9のアミノ酸配列である。
配列番号7は、ウシSLC17A9の核酸配列である
配列番号8は、ウシSLC17A9のアミノ酸配列である。
配列番号9は、イヌSLC17A9の核酸配列である
配列番号10は、イヌSLC17A9のアミノ酸配列である。

Claims (23)

  1. 真菌感染によって生じる疼痛および/または痒みを処置するための、VNUT阻害活性を有する化合物を含む薬学的組成物。
  2. 真菌感染を処置するための薬学的組成物であって、VNUT阻害活性を有する化合物および抗真菌剤を含む薬学的組成物。
  3. 真菌感染を処置するための組合わせ医薬であって、VNUT阻害活性を有する化合物および抗真菌剤を含む組合わせ医薬。
  4. 前記抗真菌剤が、ミコナゾール、クロトリアゾール、エコナゾール硝酸塩、イソコナゾール硝酸塩、ビホナゾール、ケトコナゾール、イトラコナゾール、テルビナフィン塩酸塩、トルナフタート、および、リラナフタートからなる群から選択される、請求項2に記載の薬学的組成物または請求項3に記載の組合わせ医薬。
  5. 前記VNUT阻害活性を有する化合物は、VNUTによるATPの取り込みを阻害する効果を有する化合物、VNUTによって小胞内に蓄積されたATPの細胞外への放出を阻害する効果を有する化合物、VNUTとClとの結合を阻害するアロステリック薬物、VNUTと結合しVNUTとATPとの結合を阻害するATPアナログ、およびVNUTの発現を特異的に抑制する化合物からなる群から選択される化合物である、請求項1または2に記載の薬学的組成物あるいは請求項3に記載の組合わせ医薬。
  6. 前記VNUT阻害活性を有する化合物は、
    (I)
    以下の式1

    で示される化合物であり、
    ここで、Rは、H、OH、F、Cl、Br、CH、および、CHOHからなる群から選択され、Rは、H、OH、F、Cl、Br、CH、CHOH、および、Rからなる群から選択され、ここで、R

    であり、ここで、

    は単結合が3つ、または、単結合が2つと二重結合が1つであり、かつ、NがNであり;Lは結合またはC1−4アルキレンまたはC1−4置換アルキレンまたはC1−4アルケニレンであり;R41は、H、C1−4アルキレン、C1−4置換アルキレン、C1−4アルケニレンおよびC1−4置換アルケニレンからなる群から選択され、−CH=が存在する場合その半数以下が−N=で置換されていてもよく、R42またはR43と5員環を形成してもよく;R42およびR43は、C1−7アルキレン、C1−7置換アルキレン、C1−7アルケニレンおよびC1−7置換アルケニレンからなる群から独立して選択され、−CH=が存在する場合その半数以下が−N=で置換されていてもよく、R42とR43とは6員環を形成してもよく;
    は、H、OH、F、Cl、Br、CH、および、CHOHからなる群より独立して選択される、化合物であるか;あるいは、
    (II)
    以下の式2

    で示される化合物であり、
    ここで、nは0または1であり、
    ここで、RおよびRは、それぞれ独立して、H、OH、および、CH、ならびに、一緒になって、Oからなる群から選択され、
    ここで、Rは、H、OH、CH、および、CHOHからなる群から選択され、ただし、RがHである場合、RおよびRは一緒になってOであり、
    、R、およびRの少なくとも1つは酸素原子を含む化合物であるか;
    (III)
    U−73122(Sigma Product No.U6756)であるか;
    あるいは上記(I)〜(III)の化合物の誘導体であり、ここで、該化合物の誘導体は、該化合物の薬学的に許容される塩、水和物、溶媒和物、エステル、代謝産物、保護化誘導体、糖鎖修飾体、アシル化誘導体、またはアセチル化誘導体である、請求項1または2に記載の薬学的組成物あるいは請求項3に記載の組合わせ医薬。
  7. 前記VNUT阻害活性を有する化合物がアセトアセテート、3−ヒドロキシ酪酸、グリオキシル酸、クロドロン酸、メドロン酸、ミノドロン酸、イバンドロン酸、ジフルオロメチレン2リン酸、メチレンビスフォスフォ2リン酸、U−73122、あるいは、その薬学的に許容される塩、水和物、溶媒和物、エステル、代謝産物、保護化誘導体、糖鎖修飾体、アシル化誘導体、またはアセチル化誘導体である、請求項1または2に記載の薬学的組成物あるいは請求項3に記載の組合わせ医薬。
  8. 前記VNUT阻害活性を有する化合物がVNUT遺伝子発現阻害剤である、請求項1または2に記載の薬学的組成物あるいは請求項3に記載の組合わせ医薬。
  9. 内服剤、注射剤、軟膏、および、スプレーからなる群から選択される、請求項1または2に記載の薬学的組成物あるいは請求項3に記載の組合わせ医薬。
  10. 請求項7に記載の薬学的組成物または組合わせ医薬であって、被験体の体重1kgあたり0.001〜10mgの用量のクロドロン酸、あるいは、その薬学的に許容される塩、水和物、溶媒和物、エステル、代謝産物、保護化誘導体、糖鎖修飾体、アシル化誘導体、またはアセチル化誘導体を含む、薬学的組成物あるいは組合わせ医薬。
  11. さらに、副腎皮質ステロイドを含む、請求項1〜10のいずれか一項に記載の薬学的組成物あるいは組合わせ医薬。
  12. 前記副腎皮質ステロイドが、クロベタゾールプロピオン酸エステル、ジフロラゾン酢酸エステル、ベタメタゾンジプロピオン酸エステル、ジフルプレドナート、および、フルオシノニドからなる群から選択される、請求項11に記載の薬学的組成物あるいは組合わせ医薬。
  13. 真菌感染によって生じる疼痛および/または痒みを処置するための医薬の製造、あるいは、真菌感染を処置するための医薬の製造における、VNUT阻害活性を有する化合物の使用。
  14. 前記VNUT阻害活性を有する化合物は、VNUTによるATPの取り込みを阻害する効果を有する化合物、およびVNUTによって小胞内に蓄積されたATPの細胞外への放出を阻害する効果を有する化合物、VNUTとClとの結合を阻害するアロステリック薬物、VNUTと結合しVNUTとATPとの結合を阻害するATPアナログ、およびVNUTの発現を特異的に抑制する化合物からなる群から選択される化合物である、請求項13に記載の使用。
  15. 前記VNUT阻害活性を有する化合物は、
    (I)
    以下の式1

    で示される化合物であり、
    ここで、Rは、H、OH、F、Cl、Br、CH、および、CHOHからなる群から選択され、Rは、H、OH、F、Cl、Br、CH、CHOH、および、Rからなる群から選択され、ここで、R

    であり、ここで、

    は単結合が3つ、または、単結合が2つと二重結合が1つであり、かつ、NがNであり;Lは結合またはC1−4アルキレンまたはC1−4置換アルキレンまたはC1−4アルケニレンであり;R41は、H、C1−4アルキレン、C1−4置換アルキレン、C1−4アルケニレンおよびC1−4置換アルケニレンからなる群から選択され、−CH=が存在する場合その半数以下が−N=で置換されていてもよく、R42またはR43と5員環を形成してもよく;R42およびR43は、C1−7アルキレン、C1−7置換アルキレン、C1−7アルケニレンおよびC1−7置換アルケニレンからなる群から独立して選択され、−CH=が存在する場合その半数以下が−N=で置換されていてもよく、R42とR43とは6員環を形成してもよく;
    は、H、OH、F、Cl、Br、CH、および、CHOHからなる群より独立して選択される、化合物であるか;あるいは、
    (II)
    以下の式2

    で示される化合物であり、
    ここで、nは0または1であり、
    ここで、RおよびRは、それぞれ独立して、H、OH、および、CH、ならびに、一緒になって、Oからなる群から選択され、
    ここで、Rは、H、OH、CH、および、CHOHからなる群から選択され、ただし、RがHである場合、RおよびRは一緒になってOであり、
    、R、およびRの少なくとも1つは酸素原子を含む化合物であるか;
    (III)
    U−73122(Sigma Product No.U6756)であるか;
    あるいは上記(I)〜(III)の誘導体であり、ここで、該化合物の誘導体は、該化合物の薬学的に許容される塩、水和物、溶媒和物、エステル、代謝産物、保護化誘導体、糖鎖修飾体、アシル化誘導体、またはアセチル化誘導体である、請求項13に記載の使用。
  16. 前記VNUT阻害活性を有する化合物がアセトアセテート、3−ヒドロキシ酪酸、グリオキシル酸、クロドロン酸、メドロン酸、ミノドロン酸、イバンドロン酸、ジフルオロメチレン2リン酸、メチレンビスフォスフォ2リン酸、U−73122、あるいは、その薬学的に許容される塩、水和物、溶媒和物、エステル、代謝産物、保護化誘導体、糖鎖修飾体、アシル化誘導体、またはアセチル化誘導体である、請求項13に記載の使用。
  17. 前記VNUT阻害活性を有する化合物がVNUT遺伝子発現阻害剤である、請求項13に記載の使用。
  18. 前記医薬が抗真菌剤をさらに含む、請求項13〜17のいずれか一項に記載の使用。
  19. 前記抗真菌剤が、ミコナゾール、クロトリアゾール、エコナゾール硝酸塩、イソコナゾール硝酸塩、ビホナゾール、ケトコナゾール、イトラコナゾール、テルビナフィン塩酸塩、トルナフタート、および、リラナフタートからなる群から選択される、請求項18に記載の使用。
  20. 前記医薬が副腎皮質ステロイドをさらに含む、請求項13〜19のいずれか一項に記載の使用。
  21. 前記副腎皮質ステロイドが、クロベタゾールプロピオン酸エステル、ジフロラゾン酢酸エステル、ベタメタゾンジプロピオン酸エステル、ジフルプレドナート、および、フルオシノニドからなる群から選択される、請求項20に記載の使用。
  22. VNUT阻害活性を有する化合物を投与する工程を包含する、真菌感染を処置する方法。
  23. 披検物質が、VNUT阻害活性を有するか否かを評価する工程を含む、真菌感染によって生じる疼痛および/または痒みを処置する化学物質のスクリーニング方法。
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