カタラーゼは、過酸化水素が水と酸素に分解するのを触媒する酵素である。カタラーゼ活性が無い物質を使用することは、異なる発生源からの同様な物質間、または同じ発生源からの異なる採取物からの同様な物質間でこの活性の量に変動が無いことを意味する。これにより、このような物質から発生し得る抗菌活性での変動が減少する。あるいは、上記の物質がカタラーゼ活性を含み、その物質を酵素と接触させる前にその物質におけるカタラーゼ活性を不活性化することが不可能であるか望ましくない場合は、その物質から生成し得る過酸化水素でのカタラーゼ活性の効果が減少するよう十分な酵素を使用してもよい。これによっても、上記の物質から発生し得る抗菌活性での変動が減少する。いくつかの実施形態においては、上記の物質はカタラーゼ活性が無いことが好ましい。
カタラーゼは多くの植物及び動物に存在する。カタラーゼ活性は、上記の物質の加工中若しくは採取中に除くか、または本発明の組成物でのこの物質の使用前に不活性化させてもよい。カタラーゼ活性は、例えば低温殺菌によって熱不活性化してもよい。カタラーゼ活性の熱不活性化に好適な温度は、少なくとも60℃、70℃または80℃であり、好ましくは2分間以上行う。
本明細書においては、「保存安定性のある」という用語は、上記の組成物の希釈後の抗菌活性発生能力を保ちながら、上記の組成物を室温で数日間以上、好ましくは1週間以上、より好ましくは1または2ヶ月間以上保存することができることを意味するよう使用する。好ましい貯蔵温度は37℃未満、好ましくは20〜25℃である。組成物は光に曝さずに貯蔵することが好ましい。
過酸化水素は一般に室温で不安定である。本発明の保存安定性のある組成物中に十分な遊離水が無いと、酵素が基質を変換して過酸化水素を放出することが妨げられ、したがってこの組成物の安定性を長期間室温で維持するのに役立つ。本発明の保存安定性のある組成物は、上記の酵素が基質を変換するのに十分な遊離水がなければ、いくらかの水を含んでもよい。好適な水の量は、上記の組成物の詳細な成分に応じて変化する。しかしながら典型的には、本発明の保存安定性のある組成物は、好ましくは20%未満の合計含水量、例えば10%〜19%の水を含む。
過酸化水素は、本発明の組成物の希釈後、この組成物中に存在する基質の量と上記の酵素の活性に応じて、持続した時間放出してもよい。上記の組成物中の基質の量及び/または酵素活性は、この組成物の希釈後に、短い時間での比較的高いレベルの過酸化水素の放出、またはより長い時間でのより低いレベルの過酸化水素の放出を提供するよう選択してもよいことが理解されよう。好ましくは上記の組成物は、この組成物の希釈後に過酸化水素を少なくとも24時間、より好ましくは少なくとも48時間持続放出する。好ましくは上記の組成物は、この組成物の希釈後に過酸化水素を2mmol/リットル未満のレベルで少なくとも24時間持続放出する。
本発明の組成物中に存在する酵素は、上記の物質に存在してもよい、基質を変換して過酸化水素を放出することができる任意の酵素活性(本明細書においては「基質変換活性」と呼ぶ)に対して付加的であり、すなわち本発明の組成物は、上記の物質と、加えた酵素とを含む。いくつかの実施形態においては、上記の物質に基質変換活性が無いことが好ましい。
本発明の保存安定性のある組成物の希釈後、必要に応じて上記の基質を変換して過酸化水素を形成させるのに十分な酵素がこの組成物に存在するべきであることが理解されよう。
十分な水の存在下で本発明の保存安定性のある組成物によって過酸化水素が発生することが重要であるので、本発明の組成物は、付加されたペルオキシダーゼをいずれも含むべきでないということが理解されよう。
好ましくは上記の酵素は精製酵素である。本明細書においては、「精製酵素」という用語は、上記の酵素が作製された時に最初から存在する少なくともいくつかの不純物から上記の酵素が分離されている酵素調合物を含むよう使用する。好ましくは、除去されているかまたは減じられている不純物には、上記の基質を変換して過酸化水素を放出する上記の酵素の能力を別の方法で妨げるであろう不純物が含まれる。
上記の酵素が上記の基質を変換して過酸化水素を放出することができるのであれば、上記の精製酵素が高レベルの純度であることが必ずしも必要でなくてもよく、または望ましいことでなくてもよい。いくつかの状況においては、比較的に粗製である酵素調合物を使用することが望ましくてもよい。好適な純度レベルの例としては、少なくとも10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%または90%の純度が挙げられる。
しかしながら、上記の酵素を作製したときに最初から存在していてもよい任意のカタラーゼの量は減じられていることが好ましい。この酵素は、組換え手段または非組換え手段によって作製していてもよく、組換え型酵素または非組換え型酵素であってもよい。この酵素は、微生物源から精製してもよく、好ましくは非遺伝子組換えの微生物から精製してもよい。
上記の酵素の純度レベルは、上記の組成物の意図される用途によって必要に応じて選択してもよい。例えばこの組成物がヒトでの消費を意図される場合、食品グレードの純度が適切であってもよい。医療用途では、医療グレードまたは医療機器グレードの純度を使用する必要がある。
好ましくは上記の酵素はオキシドレダクターゼ酵素である。基質を変換して過酸化水素を放出することができるオキシドレダクターゼ酵素の例としては、グルコースオキシダーゼ、ヘキソースオキシダーゼ、コレステロールオキシダーゼ、ガラクトースオキシダーゼ、ピラノースオキシダーゼ、コリンオキシダーゼ、ピルビン酸オキシダーゼ、グリコール酸オキシダーゼ及びアミノ酸オキシダーゼが挙げられる。これらのオキシドレダクターゼ酵素に対応する基質はそれぞれD‐グルコース、ヘキソース、コレステロール、D‐ガラクトース、ピラノース、コリン、ピルビン酸、グリコール酸及びアミノ酸である。
1種以上のオキシドレダクターゼ酵素と、このオキシドレダクターゼ酵素に対する1種以上の基質との混合物が、本発明の組成物中に存在していてもよい。
本発明の好ましい実施形態によれば、上記のオキシドレダクターゼ酵素はグルコースオキシダーゼであり、上記の基質はD‐グルコースである。
上記の物質は、上記の酵素に対する基質を含む任意の物質であってもよい。好ましくはこの物質はカタラーゼ活性が無い。好ましくはこの物質は未精製物質である。本明細書においては、「未精製」という用語は、純粋な形態へと処理されていない物質を指すのに使用する。未精製物質には、例えば乾燥または煮沸によって濃縮されていてもよい物質が含まれる。
好ましくは上記の物質は、天然源からの1種以上の基質(本明細書においては「天然物質」と呼ぶ)を含む。天然物質の例としては、樹液、根、花蜜、花、種、果実、葉または苗条からの物質を含めた、植物源からの物質が挙げられる。より好ましくはこの物質は未精製天然物質である。
好ましくは上記の物質は、1種以上の以下の基質を含む。D‐グルコース、ヘキソース、コレステロール、D‐ガラクトース、ピラノース、コリン、ピルビン酸、グリコール酸またはアミノ酸。
好ましくは上記の物質は糖物質である。本明細書においては、「糖物質」という用語は、1種以上の糖を含む任意の物質を意味するよう使用する。本明細書においては、「糖」という用語は、一般式Cm(H2O)nを有する炭水化物を指すのに使用する。好ましい糖としては、D‐グルコース、ヘキソースまたはD‐ガラクトースなどの単糖類が挙げられる。好ましくはこの糖物質は、天然源からの1種以上の糖(本明細書においては「天然糖物質」と呼ぶ)を含む。より好ましくは、この天然糖物質は未精製天然糖物質である。この未精製天然糖物質は、天然糖産物であってもよい(または天然糖産物由来であってもよい)。好ましい実施形態においては、この未精製天然糖産物はハチミツである。いくつかの好ましい実施形態においては、このハチミツは、処理を行ってカタラーゼ活性を除いてあるかまたは不活性化してあるハチミツである。あるいは、この未精製天然糖物質は、シロップまたは転化シロップなどの加工天然糖であってもよい。
上記で説明したように、好ましくは上記の物質自身には、上記の基質を変換して過酸化水素を放出することができる酵素活性(「基質変換活性」と呼ぶ)が無くてもよい。この物質に基質変換活性が無いということは、異なる発生源からの同様な物質間、または同じ発生源からの異なる採取物からの同様な物質間で、この活性の量に変動が無いという利点を有する。これにより、このような物質から発生し得る抗菌活性での変動がさらに減少する。そうであれば基質変換活性は、上記の物質と接触する酵素によってのみもたらされ、そして上記の組成物に存在する基質変換活性の量は制御することができる。
基質変換活性は、上記の物質の加工中若しくは採取中に除くか、または本発明の組成物でのこの物質の使用前に不活性化させてもよい。基質変換活性は、例えば低温殺菌によって、熱不活性化により不活性化してもよい。基質変換活性の熱不活性化に好適な温度は少なくとも80℃であり、好ましくは少なくとも2分間行う。熱不活性化の利点は、カタラーゼ活性と基質変換活性の両方を、1工程の熱不活性化工程で不活性化することができることである。
本発明の保存安定性のある組成物は抗菌剤を含んでもよい。例えば、上記の酵素を、この酵素による基質変換の条件下、水溶液中で上記の物質と接触させ、次に上記の組成物を乾燥して、酵素が基質を変換するのに十分ではない遊離水しか存在しないレベルまで組成物の含水量を減らすことよって上記の保存安定性のある組成物を形成させる場合は、過酸化水素が存在してもよい。しかしながら好ましくは、上記の保存安定性のある抗菌組成物は、検出可能な過酸化水素を含まない。このような組成物は、例えば、上記の酵素が上記の基質を変換するのに十分な遊離水が無い中で、この酵素を基質と接触させることにより形成させてもよい。本発明の保存安定性のある組成物中に存在してもよい他の抗菌剤の例としては、抗生物質、抗ウイルス剤または抗真菌剤が挙げられる。
本発明の組成物は食品規格組成物であることが特に好ましい。このような組成物は、ヒトでの消費に使用してもよい。他の特に好ましい実施形態においては、この組成物は医療グレードまたは医療機器グレードの組成物である。あるいは本発明の組成物は、動物での消費用の動物食品規格であってもよい。
上記の組成物の各成分は天然物質である(すなわち、各成分が天然源由来である)ことが特に好ましい。天然成分のみを含有する本発明の組成物は、薬物系抗菌製剤に対する魅力的な代替物を提供する。
好ましくは上記の物質はハチミツである。このハチミツは、好ましくは医療グレードまたは医療機器グレードのハチミツであってもよい。いくつかの実施形態においては、このハチミツは、処理を行ってハチミツに最初から存在するカタラーゼ活性を除いてあるかまたは不活性化してあるハチミツであることが好ましい。本発明の好ましい実施形態によれば、上記の物質は低温殺菌ハチミツであり、上記の酵素はグルコースオキシダーゼである。好ましい実施形態によれば、上記の物質は医療グレードまたは医療機器グレードのハチミツであり、上記の酵素は医療グレードまたは医療機器グレードの酵素、好ましくはグルコースオキシダーゼである。
ハチミツは、花からの花蜜を使用してミツバチにより作られる天然産物である。ハチミツは糖の飽和溶液または過飽和溶液である。ハチミツは、Codex Alimentarius国際食品規格において、「植物の花蜜、植物の生きた部位からの分泌物、または植物の生きた部位で植物を吸う昆虫の排出物から、ミツバチによって作られる天然甘味物質であって、ミツバチが集め、ミツバチが持つ特殊な物質と混合することにより変化させ、置いて脱水し、ハチの巣の中で貯蔵し、放置して成熟及び熟成させたもの」として定義されている(Revised Codex Standard for Honey, 2001)。
花蜜は通常、約14%の単糖(w/w)、1%のフェノール化合物、及び85%の水を含む。このフェノール化合物は、ハチミツに風味、香り及び色を与える。ハチの巣の、通常36℃の暖かい条件では、花蜜は非常に速く発酵する。これを妨げるため、花蜜は、酵素を含有する採餌ミツバチの唾液腺及び下咽頭腺からの分泌物と混合される。ハチの巣において花蜜はミツバチからミツバチへと渡され、ハチの巣の蜜房内に貯蔵される前により多くの分泌物が加えられる。存在する酵素の量は、ミツバチの年齢、食餌及び生理的段階(ミツバチは採餌ミツバチのとき、腺でより多くの消化酵素を生成する)、コロニー強度、ハチの巣の温度、ならびに花蜜の流量及び糖含有量で変化する。
ミツバチによって花蜜に加えられる酵素としては、デンプンをデキストリンと糖に変換するのを触媒するジアスターゼ、スクロースをフルクトースとグルコースに変換するのを触媒するインベルターゼ、グルコースを過酸化水素とグルコン酸に変換するのを触媒するグルコースオキシダーゼが挙げられる。低供与量の過酸化水素は、花蜜を速く発酵させる酵母の増殖を妨げる。ミツバチが進行的に花蜜を乾燥してハチミツを形成させると、グルコン酸によってハチミツは酸性(pH3.5〜4.5)になる。ハチミツの中で水は効果的に糖分子に閉じ込められ、さらなる化学反応に利用できない。ハチミツ中の「遊離」水の量は、水分活性(aw)として測定される。ハチミツにおいて見出されるawの範囲は0.47〜0.70、平均値は0.562及び0.589であると報告されている(RCIEGG, M; BLANC, B, 1981, The water activity of honey and related sugar solutions. Lebensmittel−Wissenschaft und Technologie 14: 1−6)。熟成したハチミツのawはとても低いので、どんな種の増殖も維持されず、含水率が17.1%よりも低ければ発酵が生じない(Molan, P.
C. (1992). The antibacterial activity of honey: 1. The nature of the antibacterial activity. Bee World, 73(1), 5−28)。ハチミツの酸性度と、遊離水が無いことにより、さらなる発酵可能性が防がれ、グルコースオキシダーゼの作用が停止する。ハチミツはまた、不定量の、花蜜から生じるカタラーゼも含有する。
花ハチミツの典型的な化学組成は以下のとおりである。
さらに、微量の花粉と、酵素のインベルターゼ、ジアスターゼ、カタラーゼ及びグルコースオキシダーゼが存在する。花粉は、ハチミツの植物原産地の同定に使用することができる。植物化学成分も存在する。これはハチミツの発生源によって変動するが、典型的には約1%以下である。
希釈されると、天然ハチミツ中に存在するグルコースオキシダーゼは、希釈されたハチミツ中のグルコース基質を変換して過酸化水素を放出する。しかしながら、ハチミツの含有量における変動性(特にグルコースオキシダーゼ活性、グルコース及びカタラーゼ活性の含有量における変動性)は、異なる発生源からのハチミツ、または同じ発生源からのハチミツの別の採取物で、その抗菌効力が大きく変動し得ることを意味している。
本発明の実施形態によれば、上記のハチミツは低温殺菌してもよい。ハチミツの低温殺菌は、このハチミツに存在するカタラーゼ活性及びグルコースオキシダーゼ活性を不活性化する。任意に、この低温殺菌ハチミツを濾過して、採取後のハチミツ中に存在してもよい任意の粒子(蝋粒子及びミツバチの羽など)を除去してもよい。本発明の保存安定性のある組成物を形成させるためには、付加するグルコースオキシダーゼが不活性化しない温度であり、且つこの低温殺菌ハチミツが、グルコースオキシダーゼとの混合を容易にするのに十分な程度に液体のままである温度(好適には、35〜40℃)にこのハチミツを冷却したら、このハチミツとグルコースオキシダーゼを接触させる。
ハチミツは、カタラーゼ活性の熱不活性化に十分である温度で低温殺菌することができる。好適な最小温度は60℃〜80℃である。この温度は、好ましくは2分以上維持する必要がある。
ハチミツを加熱することによる副産物は、ハチミツにおける熱変化及び保存変化の指標として使用されるHMF(ヒドロキシメチルフルフラルデヒド)の生成であるので、熱処理の制御は重要であってもよい。HMFは、酸存在下でのフルクトースの分解によって生成する。熱はこの反応の速度を増加させる。速度は、熱の増加とともに指数関数的に増加する。ハチミツが、通常のハチの巣の周囲温度に近い40℃を超えて1℃上昇する毎に、HMFは急速に増加する。HMFは有害生成物ではない。ジャム、糖蜜、ゴールデンシロップなどは、ハチミツのHMF濃度の10〜100倍のHMF濃度を有し得る。しかしながらHMF濃度はハチミツの劣化の指標として使用されており、Codex Alimentarius Standardに従うと、EUにおいては、40mg/lが食卓用ハチミツでの最大許容濃度である。
HMFの増大を防ぐためには、カタラーゼが不活性化する温度レベルまで上記のハチミツを急速に温度上昇させ、次に熱交換機構を使用して、このハチミツの温度を最大40〜45℃まで急速に下げることが好ましい。
この好ましい実施形態のプロセス中は水を加えず、よって得られる組成物は、グルコースオキシダーゼが存在しているグルコースを変換して過酸化水素を放出するのに十分な遊離水を含まない。上記の保存安定性のある組成物は、低温殺菌ハチミツと、付加したグルコースオキシダーゼとを含む。検出可能な過酸化水素は存在しない。この組成物は、数日間以上、室温で保存することができる。
本発明の他の実施形態においては、上記のハチミツは低温殺菌していなくてもよい。
いくつかの好ましい実施形態によると、上記のハチミツ(低温殺菌したもの、または低温殺菌していないもの)は、クリーム状ハチミツである。クリーム状ハチミツは、加工して結晶化を制御してあるハチミツである。クリーム状ハチミツは多数の小結晶を含有し、この小結晶は、未加工ハチミツで生じ得る大結晶の形成を妨げる。クリーム状ハチミツの製造方法は、米国特許第1,987,893号において記載された。この加工においては、原料ハチミツをまず低温殺菌し、次にこの低温殺菌ハチミツに、あらかじめ加工してあるクリーム状ハチミツを加え、クリーム状ハチミツ10%と低温殺菌ハチミツ90%の混合物を作製する。次いでこの混合物を14℃に制御した温度で休ませる。この方法により、約1週間で1バッチのクリーム状ハチミツが作製される。種バッチは、通常のハチミツを結晶化させ、この結晶を所望の大きさに砕くことによって作製することができる。大規模製造者らは、上記のハチミツ混合物を14℃で保ちながら、撹拌棒を使用してこの混合物を撹拌することで、この加工を改造した。代替のクリーム化方法においては、上記の低温殺菌工程を省いてもよく、代わりに上記のハチミツをゆっくり37℃まで温める。
グルコースオキシダーゼは、好ましくは精製した天然グルコースオキシダーゼ調合物であり、この調合物はヒトでの消費用の食品規格であるか、または医療用の医療グレード若しくは医療機器グレードのものである。このグルコースオキシダーゼの活性は、上記の保存安定性のある組成物の希釈後に発生する過酸化水素の所望の発生速度に応じて選択してもよい。数種のグルコースオキシダーゼ調合物が市販されている(グルコースオキシダーゼは参考資料CAS:9001−37−0により同定される)。非遺伝子組換え生物からのグルコースオキシダーゼの一般的な微生物起源としては、Aspergillus niger、Penicillium amagasakiense、Penicillium variabile、Penicillium notatumの選択菌株が挙げられる。GMO Aspergillus nigerからの医療機器グレードのグルコースオキシダーゼは、Biozyme UKより入手可能であり、活性は240iu/mgである。Aspergillus nigerからの食品規格グルコースオキシダーゼは、BIO−CAT INCより入手可能であり、活性は15,000ユニット/gである。非遺伝子組換えグルコースオキシダーゼは、BIO−CAT INCより入手可能であり、活性は12,000/gである。Aspergillus nigerからのグルコースオキシダーゼ(GO3B2)は、BBI Enzymes Limitedより入手可能であり、活性は360ユニット/mgである。夾雑物:アルファアミラーゼ0.05%以下、サッカラーゼ0.05%以下、マルターゼ0.05%以下、及びGO/Cat2000以上。
上記の酵素の活性(例えば、グルコースオキシダーゼ活性)は、例えば1〜400IU/mgまたは1〜300IU/mg、例えば250〜280IU/mgの範囲であってもよい。使用する酵素の量は、上記の組成物の所望の用途、上記の物質に存在するあらゆるカタラーゼ活性の量、上記の物質に存在する基質の量、所望の過酸化水素放出レベル、及び所望の過酸化水素放出時間の長さを含めた、いくつかの要因によると思われる。好適な酵素の量は、当業者によって容易に決定することができ、必要であれば、以下の実施例2において説明されるようなウェル拡散アッセイを使用して、異なる量の酵素に対する過酸化水素放出の範囲を測定して決定することができる。好適な酵素(グルコースオキシダーゼなど)の量は、上記の組成物の0.0001%〜0.5% w/wであってもよい。使用する酵素の量は、選択したフェノール標準(例えば10%、20%または30%フェノール標準)に等しい抗菌活性を発生させる組成物を作製するよう選択してもよい。
本発明の組成物、特に上記の物質がハチミツ(例えば、低温殺菌していないハチミツ)であり、上記の酵素が、このハチミツ中のD−グルコースを変換して過酸化水素を放出することができるグルコースオキシダーゼである本発明の組成物は、この組成物1グラムあたり1ユニット以上、好ましくは1500ユニット以下のグルコースオキシダーゼを含んでもよい。このグルコースオキシダーゼは、上記の物質中に天然で存在してもよい任意のグルコースオキシダーゼに対して付加的(すなわち、ヒトの介入の結果加えられる)である。
本明細書においては、「ユニット」は、25摂氏度、pH7.0で、1分間あたり1マイクロモルのグルコースを酸化させる酵素の量として規定する。
出願人は、本発明の組成物の抗菌力が、単にこの組成物に存在するグルコースオキシダーゼ活性の量を増加させることのみによって増加してもよいことを見出している。
本発明のいくつかの実施形態においては、本発明の組成物は、この組成物1グラムあたり15ユニット超、例えば少なくとも30ユニット、少なくとも50ユニットまたは少なくとも100ユニット、且つ好適には685ユニット未満、例えば100〜500ユニットのグルコースオキシダーゼを含む。このような組成物は、この組成物1グラムあたり15ユニット以下のグルコースオキシダーゼを有する組成物よりも優れた抗菌特性を有すると見出されている。特に、このような組成物は、MSSA、MRSA、グループA及びBのStreptococci、Enterococcus、E.coli、E.coli
ESBL、Serr.liquefaciens Amp C、Kleb.pneumoniae、Pseud.aeruginosa及びCandida albicansを含めた広域の微生物に対して高い効力を有する。
本発明の他の実施形態においては、本発明の組成物は、この組成物1グラムあたり少なくとも500ユニット、例えば500〜1000ユニットまたは685〜1000ユニットのグルコースオキシダーゼを含む。このような組成物は、さらに優れた抗菌特性を有すると見出されている。特に、このような組成物は、MSSA、MRSA、E.coli ESBL及びStaphylococcus aureusを含めた広域の微生物に対してさらに高い効力を有する。
上記の低温殺菌プロセスは、上記のハチミツに存在するあらゆる酵素活性を不活性化させるので、異なる発生源からの低温殺菌ハチミツ間、または同じ発生源からのハチミツの別の採取物間で、カタラーゼ活性及び基質変換活性における変動がない。基質交換活性の量は、明確な量及び明確な活性の酵素を有する精製グルコースオキシダーゼ調合物の付加によって制御することができる。したがって、異なる種類及び異なる採取物のハチミツ間で本来ある抗菌活性変動性はかなり減らされ、また低抗菌力のハチミツの抗菌特性は改善される。
本発明のさらに好ましい実施形態によれば、上記の物質は転化物質、好ましくは転化メープルシロップなどの転化シロップであってもよい。本明細書においては、「転化」という用語は、物質内に最初から存在するスクロースが、例えばインベルターゼまたはスクラーゼ酵素の活性によって、グルコースとフルクトースに変換されていることを意味するよう使用する。したがってこのような添加物質は、グルコースオキシダーゼ酵素を有する本発明の組成物において使用してもよい。
メープルシロップは、サトウカエデまたはクロカエデの樹の樹液から作製される。寒冷気候地帯では、これらの樹は冬になる前にその茎と根にデンプンを蓄え、そのデンプンは糖に変換されると春に樹液中に上がってくる。カエデの樹は穴をあけて液をとることができ、しみ出た樹液を集め、濃縮してメープルシロップを作製することができる。メープルシロップは通常、約66%のスクロース、33%の水、ならびに1%のグルコース及びフルクトースを含む。存在するグルコースの量が少ないので、メープルシロップはグルコースオキシダーゼと混合した際に強力な抗菌発生特性を有しない。しかしながら、スクロースが例えばインベルターゼまたはスクラーゼと処理することによってまずグルコースとフルクトースに変換されると、得られた転化シロップはずっと高い濃度のグルコースオキシダーゼ用基質を含む。
本発明によれば、カタラーゼ活性がない物質と、この物質中の基質を変換して過酸化水素を放出することができる酵素とを含む抗菌組成物、または抗菌活性発生用組成物がさらに提供される。
本発明によれば、基質を変換して過酸化水素を放出することができる酵素を、この酵素に対する基質を含み且つカタラーゼ活性が無い物質と接触させることを含む、抗菌組成物または抗菌活性発生用組成物の製造方法も提供される。
本発明によれば、物質と、この物質中の基質を変換して過酸化水素を放出することができる精製酵素とを含む抗菌組成物、または抗菌活性発生用組成物がさらに提供される。
本発明によれば、基質を変換して過酸化水素を放出することができる精製酵素を、この酵素に対する基質を含む物質と接触させることを含む、抗菌組成物または抗菌活性発生用組成物の製造方法も提供される。
本発明の組成物または抗菌組成物は、過酸化水素をさらに含んでもよい。本発明によれば、本発明の組成物または抗菌組成物を含む抗菌溶液がさらに提供される。
本発明の組成物及び溶液を使用して、過酸化水素によって治療することができる任意の微生物感染を治療することができる。例としては、グラム陽性細菌、グラム陰性細菌、抗酸菌、ウイルス、酵母、寄生性または病原性の微生物または真菌によって引き起こされる感染症が挙げられる。特に、以下の微生物によって引き起こされる感染症を治療してもよい。Escherichia coli、Staphylococcus aureus、Pseudomonas aeruginosa、Candida albicans、Propionibacterium acnes、Staphylococcus aureus、Staphylococcus epidermidis、Staphylococcus saprophytics、ベータ溶血性StreptococciグループAまたはB、Campylobacter coli、Campylobacter jejuni、メチシリン耐性Staphylococcus Aureus(MRSA)、メチシリン感受性Staphylococcus Aureus(MSSA)、Botrytis cinerea、Mycobacterium tuberculosis、Cryptosporidium、Plasmodium及びToxoplasma。
本発明によれば、微生物増殖を防ぐか、または阻止する本発明の組成物または溶液の使用も提供される。
本発明によれば、医薬品としての用途の本発明の組成物または溶液も提供される。本発明によれば、微生物感染の予防、治療または改善用の本発明の組成物または溶液がさらに提供される。本発明はまた、微生物感染の予防、治療または改善用の医薬品の製造における本発明の組成物または溶液の使用も提供する。
本発明によれば、微生物感染を予防、治療または改善する方法がさらに提供され、この方法は、そのような予防、治療または改善を必要とする対象に本発明の組成物または溶液を投与することを含む。この対象は、ヒトまたは動物の対象であってもよい。本発明の組成物は、局所投与してもよい。
出願者は、本発明の組成物、特に上記の未精製天然物質がハチミツである本発明の組成物が優れた創傷治癒特性を有することを見出している。特に、1ヶ月から1年以上の間持続している慢性創傷が、本発明の組成物を用いた治療の2、3日以内に目に見えて治癒し始めている。
特に、上記のような組成物の創傷治癒活性は、本発明の組成物が例えば創傷滲出液によって希釈された際にもたらす、持続性で低濃度の過酸化水素の放出に起因すると考えられる。これにより、酸素が創傷部位に運ばれることとなる。
酸素は、創傷治癒の補助において種々の重要な役割を有する。複雑な創傷治癒プロセスは、大量のエネルギーを必要とする。創傷が感染した場合にはさらに大きなエネルギーが必要とされ、結果としてそれはさらに多くの酸素が必要とされることを意味する。酸素は自然治癒プロセスの多くの機構に関わる。酸素は代謝補助、基質修復、防腐/感染制御、ならびに細胞応答の情報伝達及び制御において主要な役割を有する。十分な酸素を受け取る創傷は概して、十分な酸素を有しない創傷と比較して大きな速度で治癒する。虚血/低酸素は、血管形成、コラーゲン合成及び上皮化などの創傷治癒プロセスを直接阻害し、細菌を殺す白血球の能力も妨害し得る。細菌が増殖すると、より多くの白血球が創傷部位へと補充され、酸素消費がさらに増大する。
創傷が治癒するには、治癒プロセスを駆動するのに十分なエネルギーと栄養とを有する必要がある。酸素はこれらの代謝プロセスに必要不可欠である。組織再生及び治癒は、肉芽組織の形成、上皮化、収縮及び再構築を必要とする。治癒プロセスは、基質が形成し、新しい血管が形成し、また上皮が置き換わる際に、様々な種類の細胞の増殖を必要とする。このような細胞活動は酸素可用性に依存し、酸素可用性は妨げられない呼吸を可能にする。すべての生体高分子(例えばプロテオグリカン、構造タンパク質など)を作るのに必要とされる生合成経路は酸素に依存し、酸素は基本となるエネルギー要求を満足させる。マトリックスメタロプロテアーゼを含めた様々な酵素が必要とされ、これらもエネルギー要求すなわち酸素要求に関して消費が大きい。
コラーゲン合成は、上記のプロセスの重要部分である。コラーゲン沈着は、結合組織の修復にとって、また血管形成プロセスの一部として非常に重要である。酸素は、プロコラーゲンの形成中にプロリンとリジンの水酸化で必要とされる補助因子である。成熟したコラーゲンの合成には、プロリルヒドロキシラーゼ酵素とリジルヒドロキシラーゼ酵素が必要とされ、これらは両方ともにその機能について酸素に依存する。
血管新生/血管形成は治癒の完了に必要不可欠である。これは適切なシグナルによって誘発される必要がある。高酸素環境では、マクロファージ白血球がこのシグナルを誘発して、組織分解後のコラーゲン形成及び組織化、内皮細胞移動/コロニー形成、ならびに血管形成を含む、組織化された複雑な一連のイベントへと導くことができる。
創傷ができると、体の自然防御能が活性化される。好中球は外傷後すぐに創傷部位に集まり、殺菌性活性酸素種(ROS)及び過酸化水素(H2O2)を放出して細菌を殺し、感染を防ぐ。環境刺激に応答してマクロファージが創傷部位に到着し、異物を貪食し、創傷治癒に対し非常に重要な血管形成因子である血管内皮細胞増殖因子(VEGF)を放出する。酸素はこれらのイベントにおいて主要な役割を有する。マクロファージ及び好中性白血球の主要な殺微生物機構の1つは、「呼吸バースト」であり、呼吸バーストは、これらの細胞が微生物を殺す自然の活性である。呼吸バーストプロセスに欠陥を有する個体は、細菌感染に罹患する。白血球は呼吸バースト効果の運搬に酸素を必要とし、高い酸素濃度によってその効力は増大し得る。これらの白血球は、白血球が微生物を飲み込んだとき(貪食)に誘発される他の殺細菌機構も有する。これは相当量のエネルギー消費を伴うので、酸素依存性プロセスであり、よって酸欠環境においては十分に働かない。酸素豊富状態で最も良く働く。酸素はまた、嫌気性菌も殺し、いくつかの抗生物質が効果的に機能するには重要である。
酸素分子は、増殖因子及び他のシグナル(例えば、酸化還元シグナル)と相互作用してシグナル伝達経路を制御する重要な細胞シグナルである。マクロファージによって放出され、血管形成を誘発する分子シグナルは、「血管内皮細胞増殖因子」(VEGF)である。酸素濃度が高いと、マクロファージ白血球はVEGFを放出することができる。いくつかの他の重要な因子及び酵素に関連する遺伝子は、高い酸素濃度によって誘発される。
一酸化窒素(NO)の生成も中枢の情報伝達として認識されており、創傷治癒におけるイベントを制御する。NOは一酸化窒素シンターゼ(NOS)酵素によって作られ、創傷治癒の初期段階でその誘導型酵素(iNOS)は上方制御される。しかしながら、その酵素はアルギニン及び酸素が豊富に供給されている場合にのみ機能することができ、適切な速度でのNO生成が可能になる。
酸素はまた、上皮化プロセスの情報伝達(刺激)においても直接的な役割を有する。上皮化プロセスは、新しい上皮細胞が増殖し、自身を組織化して、構造化された上皮へと分化する、主要な後期段階治癒イベントである。
したがって、本発明の組成物によって酸素を創傷部位に持続的に供給することは、創傷治癒の促進において特に重要であると考えられる。
本発明の好ましい組成物の創傷治癒活性には、この組成物の過酸化水素放出活性のほかに、この組成物のいくつかの活性も寄与していると考えられる。特に、好ましい組成物は、創傷清拭する能力及び創傷を脱臭する能力を有し、抗炎症特性を有し、組織増殖を刺激することができ、また疼痛に対処して瘢痕を最小限にすることができると考えられる。
悪臭は慢性創傷によくある特徴であり、腐敗した血清及び組織タンパク質から悪臭のある化合物を生成する嫌気性細菌種の存在が原因とされる。抗菌作用に加え、グルコースを含む(好ましくは24〜40重量%)本発明の組成物は、これをアミノ酸より優先して細菌に代謝させ、その結果、無臭の代謝産物の乳酸が生成する。
高いオスモル濃度を有する(好適には、ハチミツに近い範囲、すなわち0.47〜0.7のawを有する)本発明の組成物は、組織プロテアーゼの自己融解作用によって創傷清拭を促進すると考えられる。本発明の組成物は、その強力な浸透作用により、創傷組織からリンパ液を抜き出すことによって湿性創傷環境を作る。これにより、創傷床と、上を覆う壊死組織の界面で、絶え間なくプロテアーゼが供給される。この作用はまた、創傷床の表面を下からも洗浄する。水と接触した本発明の組成物によって放出される過酸化水素によるプロテアーゼの活性化も、助力してもよい。創傷清拭作用はまた、壊死組織を除去することによって創傷の細菌負荷を減少させることにも寄与してもよい。壊死組織は細菌増殖に対して良好な培地を提供し、創傷に残っていると感染症の危険性を増加させることがよく知られている。
体の炎症反応は治癒プロセスの開始の特徴であるが、長引いた反応は治癒を阻害し、組織にさらなる損害を与え、創傷に対処することをより困難にし得る。長引いた炎症反応は、多くの場合、高レベルの滲出液を伴う。炎症を抑制することにより患者の痛みが減るだけでなく、血管の開口が減少し、したがって浮腫及び滲出液が軽減する。感染を除去し、創傷清拭する本発明の組成物の能力は、抗炎症作用に寄与すると考えられる。抗酸化剤(好ましくはハチミツに存在する1種以上の抗酸化剤)を含む本発明の組成物は、遊離基を取り除くことによっても過剰な炎症を減少させてもよい。
炎症が長引くと、創傷において肥大性瘢痕として現れる線維症が生じる。本発明の好ましい組成物は、炎症を減少させ、血管形成を促進し、また肉芽組織の形成を刺激することによって瘢痕を減らしてもよい。本発明の好ましい組成物は、上皮の成長も刺激してよい。
本発明の組成物は、インターロイキン−1(IL−1)によって媒介される免疫賦活性効果も有すると考えられる。本発明の組成物は皮膚細胞からのIL−1の放出を促進すると考えられる。IL−1は、マクロファージ、単球及び樹状細胞によっても分泌されるサイトカインである。IL−1は、感染に対する体の炎症反応の重要部分である。IL−1は内皮細胞で接着因子の発現を増加させて、白血球が感染部位へ移動できるようにする。また脳の体温調節中枢でも作用して、体温を上昇させる。内因性発熱物質と呼ばれる。体温が上昇すると体の免疫システムが感染と戦う助けとなる。これが免疫システムの抗菌活性を増大させる炎症性免疫反応の初期段階である。炎症反応は、起こり得る感染に対する防衛力を通じて、また細胞及び組織の修復と再増殖に関与することによって、創傷治癒において中心的な役割を担う。本発明の組成物の抗菌効果は、損傷組織及び/または細胞の再増殖と修復を助ける免疫賦活性効果により助けられ、補完されると考えられる。
本発明の組成物、特にハチミツ系組成物は、周囲の皮膚の浸軟の危険性無く創傷組織に湿性治癒環境をもたらし、創傷床に被覆材が付着することを防ぐので、被覆材を交換する際に痛みが無く、組織損傷が無い。このような組成物は正常細胞の成長も刺激し、創傷における肉芽形成と上皮化プロセスを加速させる。この組成物は、創傷及び損傷組織を保護する閉塞作用も有する。ハチミツ系組成物は、創傷のpHを有意に減らし、治癒プロセスを助けるとも考えられる。
本発明の好ましい態様によれば、本発明の組成物は、創傷の治療、または創傷敗血症の治療若しくは対処を含めた、創傷ケアの方法で使用してもよい。
上記の創傷は、急性創傷、慢性創傷、手術創傷(例えば、帝王切開創傷)、慢性熱傷または急性熱傷であってもよい。本発明の組成物は、創傷敗血症の予防的阻止において使用してもよい。本発明の保存安定性のある組成物を使用する場合、これが創傷部位に存在する液体で希釈され、それにより、希釈された組成物が過酸化水素を放出するに至ってもよいことが理解されよう。
任意の組織の完全性が損なわれたとき、創傷が生じる(例えば、皮膚の割れ、筋断裂、熱傷または骨折)。創傷は、行為(外傷)若しくは外科手技によって、感染症によって、または基礎症状によって生じてもよい。
急性創傷としては、裂創、擦過創、裂離、穿通または咬傷などの術創及び外傷、ならびに熱傷が挙げられる。急性創傷は通常、順序正しく適時の回復プロセスを進み、その結果、解剖学的完全性及び機能的完全性が持続して修復される。
慢性創傷は、3週間を超えて存在しているか、または解剖学的完全性及び機能的完全性を生ずる、順序正しく適時のプロセスを進んでいないか、持続的結果及び機能的結果を築かず、修復プロセスを進んでいない創傷である(Lazarusら, Arch Dermatol. 1994;130(4):489−493)。
慢性創傷は4つの分類:静脈性潰瘍、動脈性潰瘍、糖尿病性潰瘍及び褥瘡に分けることができる。これらの分類に入らない数少ない創傷は、放射能中毒または虚血などの理由に起因してもよい。
静脈性潰瘍は通常、脚に生じ、慢性創傷の約70%〜90%を占め、多くは高齢者に発症する。それらは、静脈に存在して血液の逆流を防ぐ弁が適切に機能しないことによって生じる静脈性高血圧に起因すると考えられる。虚血は機能障害から生じ、再灌流傷害と合わさって、創傷に至る組織損傷を引き起こす。静脈疾患では潰瘍は通常、足首とふくらはぎの間のゲートル範囲にあり、多くの場合、脚の内側面にある。
動脈性脚潰瘍は、動脈血流が減少し、それに続く組織内灌流の結果として生じる。アテローム性動脈硬化症または末梢血管疾患は、動脈性脚潰瘍化の最もよくある原因である。血液供給の減少を未治療のままにしておくと、罹患動脈によって供給されている範囲で組織の壊死が生じ得る。潰瘍の成長は多くの場合急速で、組織が深く破壊される。動脈性脚潰瘍は下腿のどこにでも生じ得る。多くの場合、明確な境界を有する深めで円形のものである。
糖尿病性潰瘍:糖尿病は免疫低下を引き起こし、微小血管を損傷させて、組織への適切な酸素供給を妨げ、これにより慢性創傷が生じ得る。糖尿病は神経障害を引き起こし、神経障害は痛覚、及び疼痛の認知を阻害する。したがって患者は始め、脚及び足の小さな創傷に気付かない可能性があり、その結果、感染または繰り返す傷害を防ぐことができない可能性がある。圧力も糖尿病性潰瘍の形成において役割を担う。糖尿病患者は一般の集団に比べ、慢性潰瘍に起因する切断の危険性が15%高い。
褥瘡は通常、麻痺などの症状を有するヒトにおいて生じ、麻痺では、踵、肩甲骨及び仙骨などのよく圧力がかかる身体部分の動きが妨げられる。褥瘡は、組織での圧力が毛細血管での圧力よりも大きく、そうしてその範囲への血流が制限されるときに生じる虚血によって引き起こされる。筋組織は、皮膚よりも多くの酸素と栄養を必要とし、長期の圧力から最も悪い影響を受ける。他の慢性潰瘍のように、再灌流傷害が組織を損傷する。
潰瘍を治療する場合、障壁を作り、治癒の間創傷を保護すること;湿性創傷環境を与えること;創傷の瘡蓋を取ること;細菌負荷を減少させること;理想的には免疫修飾及び栄養改善を用いて治癒を促進することが望ましい。従来の創傷治療製品は、これらの効果のすべてを実現することができない。従来の治療のなかには、これらの効果のうちのいくつかを有するものもあるが、相当の毒性があり、よって理想的な治療ではない。しかしながら、本発明の組成物、特に上記の物質がハチミツである本発明の組成物は、これらの特性を全て有する。さらに、本発明の組成物の抗菌力は、他のハチミツ系創傷ケア製品よりもはるかに効力があるよう調整することができ、またこの組成物は、MRSAなどの抗生物質耐性菌を含めた、慢性創傷に関わる広域の病原菌に対して有効である。
本発明の組成物は、創傷の初期治療において特に有利であり、特に、創傷が悪化すると思われる糖尿病患者などの患者において有利である。本発明の組成物を用いた初期治療は、慢性創傷で生じる合併症を防ぎ、患者を活動的な状態に保ち、そして合併症の対処での消費を防ぐ。
本発明の組成物は、手術創感染の低減または防止に有効であることも見出されている。手術創感染は特に帝王切開において問題であり、帝王切開では約10%のかなり高い感染率がある。本発明の組成物は、術後の塗布に簡便である。例えば本発明の組成物を被覆材に塗布し、その後創傷に接触させ、そして2番目の被覆材で適所に保ってもよい。以下の実施例40では、本発明の組成物を術後の帝王切開創傷に単回塗布することにより、過去のデータと比較して手術部位感染率が60%減少したことが実証されている。
末梢挿入中心静脈カテーテル(PICCライン)は、化学療法治療及び/または他の薬剤の投与に使用される。PICCラインは長く薄い柔軟なチューブであり、肘の曲がる箇所付近の腕にある大静脈の1つに挿入する。次に、先端が心臓のすぐ上の大静脈に入るまで血管内を通す。しかしながら、線の内部、または血管内に入る領域で感染が起こり得る。感染が起こったら、患者には通常、抗生物質が与えられる。これらにより感染が除去されない場合、または感染が重篤である場合、ラインを取り除いてもよい。感染が起こる機会を減らすため、ラインが入る部位に、クロルヘキシジンまたは銀などの抗菌剤を含有する被覆材を使用してもよい。
本発明の組成物は、本発明の組成物をラインが入る部位に局所的に使用することによって、PICCラインでのコロニー形成の予防及び除去に有効であることが見出されている(以下の実施例39を参照のこと)。
本発明の組成物は、専門家の訓練または複雑な装置をまったく用いずに簡単に使用することができる。この組成物は第3世界での使用に大変好適である。第3世界では、多くの場合患者が感染に高い感受性を有し、また手術に使用する材料及び機器、ならびに創傷ケアが、先進国よりも感染している場合が多いからである。
本発明の組成物は無毒であり、銀含有被覆材、PVP−Iまたはクロルヘキシジンに伴う問題をいずれも有しない。
本発明の組成物は、ドナーまたはレシピエントの移植部位の治療にも使用してよい。
本発明によれば、創傷の治療方法が提供され、この方法は、本発明の組成物をその創傷に投与することを含む。
本発明によれば、創傷治療用の本発明の組成物も提供される。
本発明によれば、創傷治療用の医薬品の製造における本発明の組成物の使用がさらに提供される。
本発明によると、炎症の治療方法も提供され、この方法は、本発明の組成物を炎症部位に投与することを含む。
本発明によれば、炎症治療用の本発明の組成物も提供される。
本発明によれば、炎症治療用の医薬品の製造における本発明の組成物の使用がさらに提供される。
本発明によると、組織増殖の刺激方法も提供され、この方法は、そのような刺激を必要とする部位に本発明の組成物を投与することを含む。
本発明によれば、組織増殖の刺激用の本発明の組成物も提供される。
本発明によれば、組織増殖の刺激用の医薬品の製造における本発明の組成物の使用がさらに提供される。
本発明によると、創傷清拭の方法も提供され、この方法は、創傷清拭を必要とする創傷に本発明の組成物を投与することを含む。
本発明によれば、創傷清拭用の本発明の組成物も提供される。
本発明によれば、創傷清拭用の医薬品の製造における本発明の組成物の用途がさらに提供される。
本発明によると、創傷の脱臭方法も提供され、この方法は、脱臭を必要とする創傷に本発明の組成物を投与することを含む。
本発明によれば、創傷の脱臭用の本発明の組成物も提供される。
本発明によれば、創傷の脱臭用の医薬品の製造における本発明の組成物の使用がさらに提供される。
創傷治癒用途では、本発明の組成物は、医療提供者によって決定される適切な頻度で投与してもよい。好適には、本発明の組成物は少なくとも2〜3日毎に、例えば毎週投与してもよいが、好ましくは毎日または1日おきに投与してもよい。
投与する本発明の組成物の量は、その組成物の抗菌特性の強さ、及びその組成物の他の創傷治癒特性などの多くの要因、創傷の大きさ、ならびに治療する対象の年齢及び症状に依存する。しかしながら多くの用途で、本発明の組成物2〜100gまたは5〜100gの投与が好適であると思われ、好ましくは10〜50gの投与である。
本発明の好ましい実施形態によると、本発明の組成物は無菌である。無菌組成物は、創傷治癒などの医療用途で好ましく使用される。
本発明の組成物は、任意の好適な手段によって殺菌してもよい。出願人は、本発明の組成物が、ガンマ線照射への曝露による殺菌後にグルコースオキシダーゼ活性(したがって、希釈によって過酸化水素を放出する能力)を保持していることを見出している。
よって本発明によれば、ガンマ線照射への曝露によって殺菌されている本発明の組成物が提供される。
本発明によれば、本発明の組成物の殺菌方法も提供され、この方法はその組成物をガンマ線照射に曝すことを含む。
好適なガンマ線照射レベルは10〜70kGy、好ましくは25〜70kGy、より好ましくは35〜70kGyである。
オゾンは、米国FDAにより、創傷治癒用途のハチミツ系製品の殺菌に対して承認されていないので、本発明の組成物は、好ましくはオゾン処理による殺菌がなされておらず、オゾン、またはオゾン処理による殺菌に付されたいずれの成分も含んでいない。特に、本発明の組成物は、オゾン処理されたハチミツまたはオゾン処理された油を含むべきではない。
医療用の本発明の好ましい組成物は、無菌の使い捨て組成物である。
光に曝さずに保存した本発明の無菌組成物は、6ヶ月以上の間安定性を保持すると予想される。例えばこのような組成物は、高密度ポリエチレン/低密度ポリエチレン(HDPE/LDPE)管内、またはポリエステル−アルミニウム−ポリエチレン(PET/Al/PE)小袋内に包装してもよい。
本発明の組成物は、好ましくは医療グレードまたは医療機器グレードの組成物である。好ましくは上記の未精製天然物質はハチミツであり、好適には医療グレードまたは医療機器グレードのハチミツである。
好ましくは本発明の組成物はクリーム状ハチミツを含み、より好ましくは低温殺菌していないクリーム状ハチミツを含む。存在している大結晶または多くの大結晶をクリーム化プロセスにより最小化してあるので、このような組成物は容易に局所投与することができる。
ハチミツを含む本発明の組成物では、その組成物を殺菌するならば、その組成物において低温殺菌ハチミツを使用する必要はなくてもよいことが理解されよう。代わりに低温殺菌していないハチミツ(好ましくはクリーム状ハチミツ)または他の未精製天然物質を使用することが好ましくてもよい。特に好ましい実施形態においては、本発明の組成物は、低温殺菌していないハチミツと、付加した精製グルコースオキシダーゼとを含む。
したがって本発明によれば、抗菌活性発生用の保存安定性のある組成物が提供され、この組成物は、低温殺菌していないハチミツと、付加した精製グルコースオキシダーゼとを含み、このグルコースオキシダーゼは十分な遊離水の存在下でハチミツ中のD−グルコースを変換して過酸化水素を放出することができ、この組成物は、このグルコースオキシダーゼがD−グルコースを変換するのに十分な遊離水を含まない。
本発明によれば、抗菌活性発生用の保存安定性のある組成物の製造方法も提供され、この方法は、低温殺菌していないハチミツを、精製グルコースオキシダーゼと接触させることを含み、このグルコースオキシダーゼは十分な遊離水の存在下でハチミツ中のD−グルコースを変換して過酸化水素を放出することができ、この組成物は、このグルコースオキシダーゼがD−グルコースを変換するのに十分な遊離水を含まない。
このような組成物は、好ましくはその組成物1グラムあたり少なくとも1ユニット、且つ好ましくは1500ユニット以下のグルコースオキシダーゼを含む。好適にはこのような組成物は、その組成物1グラムあたり15ユニット超のグルコースオキシダーゼ、例えばその組成物1グラムあたり少なくとも100ユニット、好ましくは100〜500ユニットのグルコースオキシダーゼ、またはその組成物1グラムあたり少なくとも500ユニット、好ましくは500〜1000ユニットのグルコースオキシダーゼを含む。
このような組成物のハチミツは、低温殺菌していないクリーム状ハチミツを含んでもよい。
また、本発明によれば、本発明の組成物を、薬学的に許容できる担体、賦形剤または希釈剤と共に含む医薬組成物も提供される。
本発明の特定の好ましい態様によれば、本発明の組成物を含む被覆材が提供される。好適な被覆材としては、ガーゼ、包帯、ティッシュペーパー、フィルム、ゲル、泡、親水コロイド、アルギン酸塩、ヒドロゲル、または多糖ペースト、多糖顆粒剤若しくは多糖ビーズが挙げられる。本発明の組成物は、コラーゲン基材またはコラーゲン−グリコサミノグリカン基材などの、創傷被覆材基材と共に存在してもよい。
本発明の組成物は、固体または半固体調合物の形態であってもよい。固体または半固体調合物の例としては、カプセル、ペレット、ゲルカプセル、粉末、ヒドロゲル、丸剤、小丸剤または球剤が挙げられる。あるいは、本発明の組成物は、液体調合物の形態であってもよい。液体調合物の例としては、シロップ、ペースト、スプレー、ドロップ、軟膏、クリーム、ローション、油、リニメント剤またはゲルが挙げられる。典型的なゲルとしては、イソプロパノールゲル、エタノールゲル若しくはプロパノールゲルなどのアルコール性ゲル、またはヒドロゲルが挙げられる。
本発明の組成物は、ヒト対象または動物対象への投与に好適な形態であってもよい。好適な形態としては、局所投与または経口投与に適合した形態が挙げられる。局所投与に好適な形態としては、局所軟膏、クリーム、ローション、油、リニメント剤、液体、ゲルまたは溶ける細片が挙げられる。経口投与に好適な形態としては、カプセル、ペレット、ゲルカプセル、丸剤、小丸剤、球剤、トローチ剤、デンタルフロス、歯磨き粉、洗口液、溶けるフィルム細片が挙げられる。本発明の保存安定性のある組成物を使用する場合、これを投与部位に存在する液体によって(例えば、経口投与では唾液によって、または創傷からの滲出液によって)希釈して、投与部位で過酸化水素を放出させてもよい。
本発明の組成物は、1種以上の好適な抗菌性若しくは免疫賦活性の成分、賦形剤若しくは補助剤、または抗菌活性を発生する能力を提供することが望まれる、任意の他の好適な成分と共に存在してもよい。例えば本発明の組成物は、防腐剤、鎮咳剤、おむつケア製剤、保湿剤、かゆみ緩和剤、クレンザー、スクラブ、洗剤、バリアー剤、剥離剤と共に存在してもよい。しかしながら好ましくは本発明の組成物は、いずれの抗生物質も含まない。
本発明の組成物は、放出制御送達または徐放性送達に好適な形態であってもよい。例えば経口投与形態は、腸溶コーティングを有して、放出制御送達または徐放性送達をもたらしてもよい。
本発明の別の態様によれば、本発明の組成物は、化粧品組成物としての用途の形態であってもよい。本発明の組成物は、1種以上の好適な化粧品賦形剤または補助剤と共に存在してもよい。化粧品用途は、フケなどの毛髪状態の処置または体臭の処置を含めた、多くの異なるパーソナルケア用途を含む。
本発明の組成物は、予防的ハンドバリアー液または手消毒液の形態で提供されてもよい。このようなハンドバリアー液は、クリーム、ローションまたはヒドロゲルの形態で提供されてもよく、微生物感染を予防的に防ぐことに対して有利な特性を有する、手洗い洗剤タイプの製品として使用される。
有利に、本発明の組成物は、MRSAまたは他の耐抗生物質微生物及び細菌の治療または予防において使用してもよい。本発明は、微生物の耐抗生物質菌株が出現する問題を、無毒性の手段で克服する。この用途では、本発明の組成物は、例えば局所軟膏、クリーム、ローション、油、リニメント剤、液体及び/またはゲルとして局所投与してもよい。本発明の組成物は、ティッシュペーパーまたは皮膚拭き取り布の一部として投与してもよい。
上記の微生物感染は、口、眼、耳、皮膚、胸部または爪の感染であってもよい。口の感染は、歯肉疾患、口腔内潰瘍及び/または口腔衛生障害であってもよい。この口腔衛生障害は、口臭及び/または歯肉炎であってもよい。あるいは口の感染は、咽頭感染、または鼻のStaphylococci感染を含めた鼻の感染であってもよい。眼の感染には結膜炎が含まれてもよい。皮膚感染は皮膚真菌感染症であってもよい。皮膚真菌感染症としては、足白癬及び/またはヒトでの白癬が挙げられる。獣医学においては、皮膚真菌症状としては腐蹄症、白癬及び人畜共通皮膚感染症の制御が挙げられる。爪の感染は爪真菌症などの真菌の爪の感染であってもよい。
本発明の組成物は、座瘡、湿疹または乾癬などの皮膚障害の治療に使用してもよい。座瘡及び湿疹は、この組成物によって治療することができる微生物感染成分を有してもよく、また引っ掻きによって生じる乾癬病巣の2次微生物感染は、本発明の組成物によって治療することができる。
本発明の組成物は獣医学において使用してもよい。重要な獣医学用途としては、微生物感染の治療、及び創傷ケアの治療若しくは対処、または熱傷治療が挙げられる。特定の症状としては、イヌにおける慢性皮膚感染症(皮下のStaphylococcus感染)、外耳炎(耳の感染)、動物における口腔ケア、ニワトリにおけるCampylobacter感染、側弯症、ブタ、家禽及びウシにおける腸内微生物感染、Cryptosporidium感染、人蓄共通性感染症の排除、創傷被覆材、例えば角の除去、及び膿瘍治療が挙げられる。本発明は、獣医学での利用において、食物連鎖内へ抗生物質を入れずに微生物感染の治療が可能になるという特定の利点を有する。
本発明の組成物は、抗菌活性を発生する能力を提供することが望まれる、任意の他の組成物または製品と共に提供されてもよい。本発明の組成物は、他の組成物または製品と共に混合物として提供されてもよく、またはそれらと別々で提供されてもよく、例えば他の組成物または製品と共にキットとしてパッケージにされてもよい。本発明の組成物が、他の組成物または製品と共に混合物として提供される場合、この他の組成物または製品は、上記の酵素がこの本発明の組成物の基質を変換するのに十分な遊離水を含まないことが好ましい。
本発明の組成物は、この組成物の使用説明書と共に提供してもよい。例えば本発明の組成物は、この説明書と共にキットとしてパッケージにしてもよい。
本発明によれば、微生物感染の予防、治療若しくは改善用、または創傷治療用のキットが提供され、このキットは、本発明の組成物または溶液と、この組成物または溶液の投与説明書とを含む。
本発明によれば、微生物増殖を予防または阻止する方法がさらに提供され、この方法は、微生物増殖を予防または阻止することを所望する表面または領域に、本発明の組成物または溶液を使用することを含む。
本発明の組成物または溶液は、植物または昆虫の病原体の増殖を予防または阻止するのに特に有用であってもよい。例えば本発明の組成物または溶液は、食用産物(果実若しくは野菜など)、または他の産物(球根、特にユリ球根、若しくは花を含めた高価な植物材料)の保存期間を、微生物増殖を予防または阻止することによって延長させるのに特に好適であってもよい。この微生物増殖を予防または阻止しなければ、この産物は傷むこととなる。本発明の組成物または溶液を用いた、食用産物または他の産物の処理は、この組成物または溶液が天然成分のみを含有する場合特に、殺虫剤または医薬製品を使用することよりも好ましくてもよい。
好ましい実施形態によれば、本発明の組成物または溶液は、Erwiniaの増殖の予防または阻止に使用してもよい。Erwiniaは腸内細菌科の1属であり、主に植物病原体種が含まれる。これらの種は、植物細胞間のペクチンを加水分解する酵素を生産し、細胞を離れさせる。これは「植物腐敗」と呼ばれる病害である。この属でよく知られているメンバーはE.amylovora種であり、これはリンゴ、ナシ及び他のバラ科作物で火傷病を引き起こす。Erwinia carotovora(Pectobacte
rium carotovorumとしても知られる)は別の種であり、ニンジン、ジャガイモ、トマト、葉物野菜、カボチャ及び他のカボチャ属、タマネギ、ピーマンを含めた幅広い宿主範囲を有する。この種は、これが侵入するほぼすべての植物組織で病害を引き起こし得る。これは、保存された果実及び野菜において、よくある腐敗の原因であるので、非常に重要な病原体である。E.carotovoraによって生じる腐敗は、しばしば細菌性軟腐病(BSR)と呼ばれる。
Erwinia感染はジャガイモの保存にとって特に問題である。Erwiniaが発生すると有意な損失が生じ得る。また、ジャガイモの中心で黒色の腐敗を生じさせる。この問題は現在、医薬製品を用いて制御されている。本発明の好ましい実施形態によれば、本発明の組成物または溶液は、Erwinia感染によって生じるジャガイモの腐敗の予防または阻止に使用してもよい。天然成分のみを含有する本発明の組成物または溶液を使用することが特に好ましい。
本発明のさらなる態様によれば、本発明の組成物または溶液は、昆虫病原体の増殖、特にミツバチにおけるNosemaの増殖の予防または阻止に使用してもよい。
Nosemaは最も蔓延した成虫ミツバチの疾患である。これは単細胞の微胞子虫目の寄生虫によって引き起こされ、この寄生虫は、長命胞子段階及び複製増殖段階の2段階で存在する。成虫のミツバチが胞子を摂取すると胞子は増殖段階へと生育し、ミツバチの腸の内側を形成する細胞に侵入する。ミツバチに影響を及ぼす2種、Nosema apis及びNosema ceranaeが説明されている。Nosema apisは、感染したミツバチの寿命を減少させる。Nosema ceranaeはアジア宿主から種の壁を超えており、N. apisよりも病原性であることがわかっている。感染した採餌ミツバチは、ハチの巣から離れた場所で死に、こうして連続的にミツバチを失うことでハチの巣への食物の運び込みが減少し、その後コロニーが崩壊する。
抗生物質Fumidil B(Aspergillus fumigatusから調製、ストーンブルード病の原因物質)を用いたNosemaの治療は、中腸での胞子の複製を阻害するが、胞子を死滅させない。この抗生物質は非常に高価でもある。また、シーズンオフに使用して、市場用のハチミツを汚染してヒトの食物連鎖に入る危険性を最小限にしなければならない。
我々は、本発明の組成物がNosema胞子と増殖段階のNosemaを死滅させることができることを見出している。本発明によれば、ミツバチにおいてNosemaを予防または治療する方法が提供され、この方法は、本発明の組成物または溶液をハチに投与することを含む。好ましくは、粉末形態の本発明の保存安定性のある組成物を水で希釈して、ミツバチの巣に使用する。粉末形態の本発明の保存安定性のある組成物は、例えば粉末形態のグルコースオキシダーゼと接触させる前にハチミツを乾燥低温殺菌することにより作製してもよい。
本発明の好ましい実施形態を、添付の図面を参照しながら、単なる例としてこれより説明する。
実施例1
この実施例では、本発明の保存安定性のある組成物の好ましい製造プロセスと、この保存安定性のある組成物を希釈して過酸化水素を放出させる好ましいプロセスとについて説明する。
「活性化」ハチミツの製造プロセス
熱交換器を使用して、ハチミツを80℃で2分間加熱する(所望であれば、カタラーゼを不活性化するのに十分であるならばより低い温度を使用することができ、好適には60℃以上である)。この加熱プロセスの目的は、ハチミツを低温殺菌すること、濾過を行って採取後のハチミツ中に存在してもよいあらゆる蝋粒子及びハチの羽を除去することができるようハチミツの粘度を減少させること、ならびに過酸化水素の効果的な発生に影響を及ぼすハチミツ中のあらゆるカタラーゼを不活性化することである。
次に上記の低温殺菌ハチミツを濾過し、放置して、通常のハチの巣の温度(35〜40℃)まで自然に冷却させる。次いでグルコースオキシダーゼを低濃度(ハチミツで通常見られる濃度と等しい)で加えて、このハチミツ中に天然で存在するが低温殺菌プロセスで不活性化しているグルコースオキシダーゼを置き換える。この濾過した低温殺菌ハチミツは35〜40℃でかなり液体であるので、このグルコースオキシダーゼと簡単に混合することができる。しかしながら、この混合を室温で行うことができないという理由はない。その後、得られた「活性化」ハチミツを室温で保存する。
上記の不活性化したグルコースオキシダーゼの置換えのほかには、上記の天然ハチミツ組成物への改変はない。上記の「活性化」ハチミツ中には検出可能な過酸化水素はない。
「活性化」ハチミツの希釈
「活性化」ハチミツの希釈後、遊離水が利用できるようになり、上記のグルコースオキシダーゼがこのハチミツ中に存在するグルコースの変換を開始するので、時間の経過後に過酸化水素が放出される。過酸化水素濃度は2mmol/リットル未満であるが、長い時間放出される。
実施例2
この実施例では、活性化Ulmoハニーの抗菌効果を実証する試験の結果を説明する。このハチミツは、付加したグルコースオキシダーゼを含有する場合は「活性化」と記載する。
ウェル拡散アッセイ
Staphylococcus aureus(NCIMB 9518)を栄養寒天上または栄養ブロス中で増殖させた。
一晩培養物を綿棒で採取して寒天プレートの表面上に置くことにより、抗菌拡散寒天プレートに培養物を播種した。プレートを15分間室温に置いた。直径7mmのウェルを寒天表面にあけた。試料(フェノール標準またはハチミツ)200マイクロリットルを各ウェル内に置いた。
プレートを16時間インキュベートし、ダイヤル式ノギス(+/−0.1mm)を使用して阻止円を測定した。ウェルの直径を含んだゾーンの直径を記録した。
フェノール標準は、フェノールを精製水中で、必要な濃度で希釈することによって調製した。例えば10%フェノール標準は、フェノール1gを精製水9g中で希釈することによって調製した。この標準物は30℃で保存し、使用前に振盪した。
ハチミツ
ハチミツ:低温殺菌Ulmoハニー
非活性化ハチミツ(すなわち、グルコースオキシダーゼが付加されていないハチミツ)を対照として使用した。
酵素調製
グルコースオキシダーゼ:医療機器グレード材料、非食品グレード、GMO Aspergillus niger起源、Biozyme UKにより供給、活性240iu/mg。最初に0.5% w/wの酵素を使用したが、これを0.005% w/wの酵素に減らして20%フェノール標準と同等にすることができる。
過酸化水素の検出
Merckoquantの過酸化物テスト:カタログ番号1.10011.0002 測定範囲/カラースケールメモリ mg/l H2O2 0.5−2−5−10−25。
水溶液中での測定手順:50/50 w/wで水中にハチミツを溶解する。試験用細片の反応ゾーンを1秒間測定試料(15〜30℃)中に浸す。余剰の液体を試験用細片の長端から吸収性ペーパータオル上へと流し、15秒(カタログ番号110011)または5秒(カタログ番号110081)後、反応ゾーンの色が最も正確に一致するラベル上の色領域を用いて決定する。対応する結果をmg/l H2O2単位で読み取るか、または必要であれば中間値を見積もる。
上記のハチミツ中で内在性の過酸化水素が利用できないことを確かめるため、50/50 w/wでメタノールに溶解する。有機溶媒(容易に揮発するエーテル)中での測定:試験用細片の反応ゾーンを1秒間測定試料(15〜30℃)中に浸す。溶媒を蒸発させた後(3〜30秒間、試験用細片を前後に優しくあおぐ)、反応ゾーンを1秒間蒸留水中に浸し、余剰の液体を試験用細片の長端から吸収性ペーパータオル上へと流すか、または反応ゾーン上に4回、各回3〜5秒間優しく息を吹きかける。15秒(カタログ番号110011)または5秒(カタログ番号110081)後、反応ゾーンの色が最も正確に一致するラベル上の色領域を用いて決定する。対応する結果をmg/l H2O2単位で読み取るか、または必要であれば中間値を見積もる。
結果
図1aはウェル拡散アッセイの結果を示す。このアッセイでは、低温殺菌Ulmoハニー、異なる量のグルコースオキシダーゼ酵素調合物を付加してある低温殺菌Ulmoハニー(0.1%、0.01%、0.01%、0.0015または0.0001% w/w)、またはマヌカUMF25+ハニーを含有する試料を、Staphylococcus aureusを播種した寒天プレートのウェルに加えた。この結果は、各試料で記録した阻止円の直径を示している。
0.001% w/w以上のグルコースオキシダーゼ(240iu/mg)を含有する活性化ハチミツのStaphylococcus aureus上での抗菌効果は、マヌカ25+ハニーの抗菌効果と同等であった。
活性化ハチミツの効果は殺菌性である。
図1bはウェル拡散アッセイの結果を示す。このアッセイでは、0.5% w/wのグルコースオキシダーゼ酵素調合物を付加してある低温殺菌Ulmoハニーを含有する試料を、MGOマヌカハニー、マヌカ25+ハニー、及び一連の異なるフェノール標準(10%〜40%)の試料と比較した。この結果は、各試料の阻止円の面積を示している。
上記の結果は、活性化Ulmoハニーの効果は、30%フェノール標準と同等であり、MGOマヌカハニーの2倍以上の効果であり、マヌカUMF25+ハニーのほぼ2倍の効果であったことを示している。
図2は、活性化ハチミツの効力は、好適な量の酵素を付加することにより、要求に適合するよう調整することができることを示している。
実施例3
この実施例では、活性化Tineoハニーの抗菌効果を実証する試験の結果を説明する。このハチミツは、付加したグルコースオキシダーゼを含有する場合は「活性化」と記載する。
TINEOハニーの試料及び種々のフェノール標準を使用して、実施例2に記載のようにウェル拡散アッセイを行った。図3aは、種々の試料によって生じたStaphylococcus aureusの阻止円を示す、2連の寒天プレートの写真である。この図は、寒天プレートのウェル内の試料の配置を示す描画を含んでいる。
1.10%フェノール標準
2.20%フェノール標準
3.30%フェノール標準
4.Tineoハニー(付加グルコースオキシダーゼを含有しない低温殺菌Tineoハニー)
5.Tineo不活性化(さらなる熱不活性化を行った低温殺菌Tineoハニー)
6.マヌカUMF25+
7.Tineo20+(付加グルコースオキシダーゼ(0.005% Biozyme酵素)を有する低温殺菌Tineoハニー)
図3aは、Tineoハニー単独、またはTineo不活性化ハニーのどちらも、Staphylococcus aureus増殖の阻止を生じなかったことを示している。付加グルコースオキシダーゼを有するTineoハニー(Tineo20+)の効果は、マヌカUMF25+の効果よりも大きく、30%フェノール標準と同等であった。
図3bは、種々の試料によって生じたStaphylococcus aureusの阻止円を示す寒天プレートの写真である。この種々の試料は、以下に示すように配列した。
1.10%フェノール標準
2.20%フェノール標準
3.30%フェノール標準
4.Tineoハニー活性25+(0.005%酵素 w/w)
5.Tineoハニー活性25+(0.005%酵素 w/w)
6.Tineoハニー活性40+(0.05%酵素 w/w)
7.マヌカハニーUMF25+
図3bは、Tineoハニー活性25+及び40+の試料は、マヌカハニー25+の試料よりもStaphylococcus aureusの増殖の阻止において効果的であったことを示している。
実施例4
この実施例では、活性化Ulmoハニー及びTineoハニーの抗菌効果を実証する試験の結果を説明する。
図4aは、24時間のインキュベーション後に、Staphylococcus aureusの増殖の阻止円を測定した、ウェル拡散アッセイの3回反復の結果を示している。このアッセイは、実施例2に記載のように行った。濃度範囲40〜10%の脱イオン水中のフェノールの試料と、2種類のマヌカ(マヌカUMF25+、マヌカ550MGO)の試料と、0.01% w/wのBiozymeグルコースオキシダーゼを有する活性化Ulmoハニーの試料(実施例2と同様)。
図4bは、さらなるウェル拡散アッセイの結果を示す。グルコースオキシダーゼ(実施例2に記載のBiozyme調合物)を低温殺菌Ulmoハニーに付加し(0.005%酵素w/w)、40℃で24時間または72時間保存した。次に保存した活性化ハチミツの試料を、実施例2に記載のように、ウェル拡散アッセイにおいてStaphylococcus aureusに対する活性について試験し、一連の4〜25%フェノール標準と比較した。図4bは、40℃で72時間保存したとき活性化ハチミツが安定であり、活性化ハチミツはStaphylococcus aureusに対する有効性において、20%フェノール標準と同程度であったことを示している。
図4cはさらなるウェル拡散アッセイの結果を示しており、このアッセイでは、低温殺菌Ulmoハニー(実施例2に記載のBiozyme調合物、0.5% w/w)の新しいバッチと古いバッチ(古いバッチは新しいバッチの約4ヶ月前に受け取った)の活性、及び付加するグルコースオキシダーゼの量を増やしていったTineoハニー(実施例2に記載のBiozyme調合物、0.0005〜0.5% w/w)の活性を、マヌカ18+及び25+UMFハニー、ならびに一連の10〜40%フェノール標準と比較した。図4cにおいては、「通常」は受け入れたままの低温殺菌ハチミツを指し、「不活性化」はさらなる熱不活性化を行っている低温殺菌ハチミツを指し、「再活性化」はさらなる熱不活性化を行った後にグルコースオキシダーゼを付加している低温殺菌ハチミツを指す。したがって、Ulmoハニーは付加グルコースオキシダーゼ無し(「Ulmo古4 通常」、「Ulmo新X」及び「Ulmo新Y」)と、付加グルコースオキシダーゼ有りとで試験した。図4cでは、Staphylococcus aureusの阻止円の面積が示されている。低温殺菌Ulmoハニーの古いバッチは(「Ulmo古4 再活性化」)、新しい低温殺菌バッチ(「Ulmo新X 再活性化」及び「Ulmo新Y 再活性化」)と同程度の活性を保持していることがわかる。これらのバッチはすべて、マヌカハニー18+よりも約2倍高い活性を示し、マヌカハニー25+より高い活性を示した。低温殺菌Tineoハニーに付加するグルコースオキシダーゼの量を増やしていくと、ハチミツの活性は増加した。
この試験では、0.005% w/wの酵素は、10%フェノール標準とほぼ同等であり、0.05% w/wの酵素は、15%フェノール標準とほぼ同等であり、0.5% w/wの酵素は、25%フェノール標準とほぼ同等であった。マヌカ18+ハニーは10%フェノール標準と同等であり、マヌカ25+ハニーは、10%フェノール標準と15%フェノール標準の中間の活性を示した。
実施例5
この実施例では、異なるグルコースオキシダーゼ酵素調合物の効果を、低温殺菌Tineoハニーを用いて試験した。使用した酵素調合物は、実施例2に記載のBiozyme調合物、及びANHUI MINMETALS DEVELOPMENT I/E CO., LTD(以下、「Anhui」酵素調合物と呼ぶ)からの食品グレードの非GMO起源グルコースオキシダーゼであった。
図5aは、実施例2に記載のように実施したウェル拡散アッセイの結果を示しており、このアッセイにおいては、酵素を含有しない低温殺菌Tineoハニー、または0.005〜0.05% w/wのAnhui酵素を含有する低温殺菌Tineoハニーの試料を、種々のフェノール標準(10%、20%、30%)及びマヌカハニーUMF25+の試料と比較した。この結果は、酵素の量を増やすと、Staphylococcus aureusに対する活性化ハチミツの有効性が増加することを示している。0.0125%
w/wの酵素は、20%フェノール標準及びマヌカハニー試料とほぼ同等であり、0.05% w/wの酵素は、30%フェノール標準とほぼ同等であった。
図5bは、実施例2に記載のように実施したウェル拡散アッセイの結果を示しており、このアッセイにおいては、市販のバッチの低温殺菌Tineoハニーの試料に異なる量の酵素を加えた。「Tineo」試料はグルコースオキシダーゼを付加していない低温殺菌ハチミツである。「Tineo 不活性化」試料は、さらなる熱処理を行っている低温殺菌ハチミツであり、付加グルコースオキシダーゼを含有しない。「Tineo20+」試料は、0.005% w/wのBiozymeグルコースオキシダーゼを含有する。この結果は、Tineo試料はStaphylococcus aureusに対して活性を有しないことを示している。Tineo20+試料はStaphylococcus aureusに対し、マヌカ25+よりも有効であり、20%フェノール標準と30%フェノール標準の中間であった。
実施例6
この実施例では、60日または90日間保存した活性化ハチミツの安定性の試験結果を説明する。
低温殺菌UlmoまたはTineoハニーに、実施例2に記載のBiozymeからのグルコースオキシダーゼ酵素を0.005% w/wで加え、得られた混合物を37℃で2ヶ月間(Ulmoハニー試料)または室温で90日間(Tineoハニー試料)保存した。使用した酵素の量は、市販の食料品に使用されている量に相当する。
保存後、実施例2に記載のように実施したStaphylococcus aureusに対するウェル拡散アッセイにおいて、試料を試験した。保存した試料を、10%、20%及び30%フェノール標準と比較した。図6aではUlmoハニー試料の結果が示されており、図6bではTineoハニー試料の結果が示されている。どちらの種類のハチミツでも、保存期間で明らかな活性の損失はなかった。
実施例7
この実施例では、粉末形態のグルコースオキシダーゼ酵素を粉末ハチミツに付加した、粉末活性化ハチミツの抗菌活性の試験結果を説明する。
粉末ハチミツは、ADM Specialty IngredientsからのHoni Bakeより得た。0.1% w/w Biozymeグルコースオキシダーゼ(実施例2に記載のもの)をこの粉末ハチミツに加えた。実施例2に記載のように実施したStaphylococcus aureusに対するウェル拡散アッセイにおいて、この混合物の抗菌活性を試験した。混合物は、寒天プレートの2つの異なるウェルに加えた。対照は、ハチミツ粉末のみを用いて使用した。結果を図7aに示す。対照は全く活性を示さないが、活性化ハチミツは明らかな阻止円を示した。
図7bは別のウェル拡散アッセイの結果を示しており、このアッセイでは、種々の粉末ハチミツを、ANHUI MINMETALS DEVELOPMENT I/E CO., LTDからの粉末酵素(実施例5)と混合した。試料ウェル24aはハチミツ粉末のみであり、試料ウェル24bは1% w/wの酵素と混合したハチミツ粉末である。再度明らかな阻止円を見ることができる。
実施例8
この実施例では、様々な異なる製品単独での抗菌活性、及びそれらを活性化ハチミツ(すなわち、付加グルコースオキシダーゼを有するハチミツ)と混合した際の抗菌活性の試験結果を示している。Staphylococcus aureusに対する抗菌活性を、実施例2に記載のように実施したウェル拡散アッセイにおいて試験した。試験した種々の試料を以下の表2に列挙し、結果の写真を図8に示す。
この結果は、製品を活性化ハチミツと混合すると抗菌効果が増加することをはっきりと示している。
実施例9
この実施例では、様々な異なる製品単独での抗菌活性、及びそれらを活性化ハチミツ(すなわち、付加グルコースオキシダーゼを有するハチミツ)と混合した際の抗菌活性のさらなる試験結果を示している。Staphylococcus aureusに対する抗菌活性を、実施例2に記載のように実施したウェル拡散アッセイにおいて試験した。試験した種々の試料を以下に列挙し、結果の写真を図9に示す。
図9a:
1.有名ブランド消毒クリーム番号1
2.有名ブランド消毒クリーム番号1+10%Ulmo 40+
3.有名ブランド消毒クリーム番号2
4.有名ブランド消毒クリーム番号2+10%Ulmo 40+
5.Tineoハニー活性20+
6.マヌカハニー25+
7.Ulmoハニー活性20+
図9b:
1.咳止めシロップ
2.咳止めシロップ+10%Ulmo 40+
3.有名ブランドハンドクリーム
4.有名ブランドハンドクリーム+10%Ulmo 40+
5.Tineoハニー活性20+
6.マヌカハニー25+
7.Ulmoハニー活性20+
この結果は、製品を活性化ハチミツと混合すると抗菌効果が増加することをはっきりと示している。
実施例10
この実施例では、低温殺菌していないハチミツと、付加した精製グルコースオキシダーゼとを含む本発明の組成物の殺菌法について説明している。
上記の組成物50gをそれぞれ含む10個の密封小袋に、標的線量11.6〜14.2kGy(線量計によって測定した場合、線量は13.1〜13.6kGyであった)でガンマ線照射し、続いて無菌性について別個に試験した。
無菌性試験では、全ての作業をクリーンルーム内の層流下で行った。上記の試料10gを100mlの無菌トリプトン大豆ブロス(TSB:カゼインの膵液消化物、17g/L、大豆ミールのパパイン消化物、3g/L、塩化ナトリウム、5g/L、リン酸水素二カリウム、2.5g/L、グルコース2.5g/L、pH7.3±0.2)に加え、振って混合し、次に無菌容器へ移した。さらなるTSB100mlを加えて全ての試料残渣を取り除き、同じ容器へ加えた。TSBを試料に加え、30℃±2℃で最低14日間インキュベートし、微生物増殖の兆候を目視観察した。試験開始前に全ての培地で陽性対照を実施した。
インキュベーション期間完了後、1個の陽性結果に着目した。35kGyを殺菌線量とする実証が認められた。
実施例2に記載のアッセイと同様なウェル拡散アッセイを使用した、ガンマ線照射による殺菌前後の小袋の試験では、上記の組成物の抗菌活性に及ぼす照射の影響は無視できることが確かめられた。殺菌後の活性レベルにおいて、観測可能な減少はなかった。
実施例11
この実施例では、マヌカUMF25+ハニー及び熱不活性化ハチミツ(不活性ハチミツ)と比較して、本発明の組成物の抗菌効果を実証する試験の結果を説明する。この組成物は、低温殺菌していないハチミツと、付加した精製グルコースオキシダーゼとを含み(「Surgihoney」と呼ぶ)、ガンマ線照射を使用して殺菌している。
マヌカハニーUMF25+、不活性ハチミツ及びSurgihoneyの試料を使用して、実施例2に記載のようなウェル拡散アッセイを行った。図10(a)は、種々の試料によって生じたStaphylococcus aureus(ATCC9518)の阻止円を示す寒天プレートの写真である。図中、マヌカハニーUMF25+はプレートの最上段にあり、不活性ハチミツは中段にあり、Surgihoneyは下段にある。図10(b)は、マヌカUMF25+ハニーで処理したプレート(最上段)、及びSurgihoneyで処理したプレート(下段)を示している。
この結果は、Surgihoneyが殺菌後にStaphylococcus aureusに対する有意な抗菌活性を保持しており、またSurgihoneyはマヌカハニーUMF25+よりもStaphylococcus aureusに対して有効であったことをはっきりと示している。
実施例12
低温殺菌していないハチミツと、付加した精製グルコースオキシダーゼとを含み、ガンマ線照射(最小線量35kGyにて)を使用して殺菌してある本発明の組成物の安定性試験。
促進老化技術は、材料の劣化に関わる化学反応がアレニウスの反応速度関数に従うという仮定に基づく。この関数は、均一のプロセスで温度が10℃増加または減少すると、化学反応速度が約2倍または1/2倍変化することを述べている。例えば、55℃での5.3週間は、棚上での保存1年間に相当し、55℃での10.6週間は2年に相当し、26.5週間は5年間に相当する。
2つの異なる作製バッチからの製品をこの研究で使用した。製品は、上記の組成物10gを含有する小袋である。この小袋は、最小線量35kGyのガンマ線照射で殺菌してある。試料を促進老化条件の55℃(±2℃)で保存した。
試験、試験間隔及び必要な試料
各バッチからの試料を同じ時間間隔で試験した。以下の表では、実施した試験、及び各バッチに対し、各時点で必要な試料の合計数をまとめている。
試験方法
充填小袋重量:空の小袋の平均風袋重量は1.7gである。10袋の小袋を、較正済みの実験室用秤で個々に秤量し、風袋重量を引いて結果を記録した。
圧力試験:標準的な操作手順に従って、各小袋を圧力試験装置で試験した。合格及び不合格数を記録した。
ハチミツのpH:5袋の含有物をガラスビーカーに入れた。3種の標準液を使用してHanna pH計を較正し、次に電極を脱イオン水中ですすいだ。pH電極及び電極プローブをハチミツ試料に浸し、pH値と温度をデジタル表示装置から読み取って記録した。
水分レベル:5袋のハチミツを各時点で取った。各小袋から試料約1mlを取り、屈折計の試料プレート上に置いた(1回につき1試料)。試料カバーを閉め、装置を窓などの光源に向けながら、ユーザーがレンズを通して観察した。影の線によって指示される目盛りの値を読み取り、結果を記録した。
色:1小袋のハチミツを開封し、少量のハチミツ組成物を白色タイル上に置いた。ハチミツ組成物の色をHoney Colour Chart Pfund Scaleと比較し、スコアを記録した(30〜800)。
以下の実施例13〜35では、低温殺菌していないハチミツを付加グルコースオキシダーゼと共に含む本発明の組成物(これらの実施例においては、この組成物を「Surgihoney」と呼ぶ)を使用した、創傷の治療結果を説明している。Surgihoneyは、各小袋が組成物10gを含有する密閉小袋で提供した。この小袋は、ガンマ線照射を使用して殺菌した。小袋は、治療0日目より使用した。被覆材を交換する毎に、新しいSurgihoneyを使用した。被覆材は、実施例に記録されている日ごとに交換するか、またはもっと頻繁に交換する場合もあった。Surgihoneyは被覆材に使用するか、または創傷に直接塗布した後、被覆材によって覆った。両方の場合でSurgihoneyは創傷と直接接触しており、被覆材によって覆われた。
実施例13
この実施例では、Surgihoneyを使用した、感染性足趾の治療結果を説明する。結果を図11に示す。
患者は78歳、糖尿病の男性であった。左足の創傷は、治療開始前の1ヶ月にわたって発生し、軽度の痛みを生じさせていた。
a)0日目−創傷プロファイル:創傷:3×2×1cm;99%健常な肉芽であるが、1%の緑色コロニー形成;周囲の皮膚のはがれ;臭いを発する少量の黄色膿滲出液;
b)5日目−創傷プロファイル:創傷改善;各回ハチミツ1小袋を使用して、2回目の被覆材交換;メトロニダゾール及びアモキシシリン;ティーツリー油も使用;
c)10日目−創傷プロファイル:創傷改善;緑色コロニー形成消失;創傷を洗浄し、乾燥皮膚を取り除き、さらなるハチミツ小袋を使用した。
実施例14
この実施例では、Surgihoneyを使用した、足趾潰瘍の治療結果を説明する。結果を図12に示す。
患者は61歳、糖尿病の女性であり、右足に、治療前の1ヶ月間にわたって発生し、軽度の痛みを生じさせている、感染性足趾潰瘍を有していた。
a)0日目−創傷プロファイル:創傷:2×2×0.2cm;1%の黄褐色瘡蓋、残りは肉芽組織;低量の黄色滲出液;
b)7日目−創傷プロファイル:創傷改善;毎日の被覆材交換と共にSurgihoney0.5小袋を使用;Flucox;
c)10日目−創傷プロファイル:創傷さらに改善;Flucox中止。
実施例15
この実施例では、Surgihoneyを使用した、足趾潰瘍の治療結果を説明する。結果を図13に示す。
患者は61歳、糖尿病の女性であり、左足の第1足趾と第2足趾の両方に足趾潰瘍を有していた。軽度の痛み。
a)0日目−創傷プロファイル:創傷:0.8×0.8×0.2cm;100%肉芽組織;小量の漿液滲出;
b)7日目−創傷プロファイル:既に開口していない程度まで治癒した創傷;各日、ハチミツ小袋半分;Flucox;
c)10日目−創傷プロファイル:創傷改善;現在は乾燥し、瘡蓋や滲出液なし;Flucox中止。
実施例16
この実施例では、Surgihoneyを使用した、足部潰瘍の治療結果を説明する。結果を図14に示す。
患者は50歳、糖尿病の女性であり、治療前月に発生した足部潰瘍を有していた。皮膚が脆弱であったが痛みは報告されなかった。
a)0日目−創傷プロファイル:創傷:1×0.5×0.5cm;1%の黄褐色瘡蓋、残りは肉芽組織;極低量の黄色滲出液;
b)7日目−創傷プロファイル:創傷改善;乾燥;瘡蓋は健常肉芽によって置き換えられた;大きさ及び深さ減少;創傷を生理食塩水で洗浄後、ハチミツ被覆材(0.5小袋)を使用;抗生物質無し;
c)9日目−創傷プロファイル:創傷大きく改善;ほぼ閉じており、滲出液は存在せず;引き続き被覆材を各々0.5小袋と共に使用。
実施例17
この実施例では、Surgihoneyを使用した、足部潰瘍の治療結果を説明する。結果を図15に示す。
患者は87歳、末梢血管疾患を有する糖尿病の男性であり、1年を超えて発生している糖尿病性足部潰瘍を有していた。周囲の皮膚は脆弱であったが、痛みは現れていなかった。
a)0日目−創傷プロファイル:創傷:1×1.8cm;1%の黄褐色瘡蓋、残りは肉芽組織;少量の黄色漿液滲出;
b)3日目−創傷プロファイル:創傷改善;被覆材交換と共にハチミツ1小袋使用;痛みの報告無し;抗生物質無し;
c)6日目−創傷プロファイル:創傷改善;創傷床は現在100%肉芽組織;さらなるハチミツ小袋使用;潰瘍周囲の乾燥皮膚上にDiprosalic。
実施例18
この実施例では、Surgihoneyを使用した、糖尿病性足部潰瘍の治療結果を説明する。結果を図16に示す。
患者は男性で、低品質の靴の刺激作用によって生じた糖尿病性足部潰瘍を有していた。この患者は、治療前の1月未満に潰瘍を有していた。
a)0日目−創傷プロファイル:赤色周囲皮膚と軽度の痛み;1%の瘡蓋、99%の肉芽;感染症及び糖尿病;低量の黄色漿液滲出;創傷の大きさ:2cm×2cm×0.2cm;
b)7日目−創傷プロファイル:病院における診断は終了したが、1日目から現在まで毎日被覆材を交換。被覆材は正看護師である息子の妻が手順書に従って交換した。創傷改善;100%健常肉芽;健常な周囲皮膚、軽度の痛み;抗生物質を使用、Flucoxacillin、500mg、6時間毎に7日間;創傷の大きさ:1.5cm×1.3cm×0.1。
実施例19
この実施例では、Surgihoneyを使用した、足部潰瘍の治療結果を説明する。結果を図17に示す。
患者は55歳、男性で、重症且つ管理不良の糖尿病を有していた。この患者は、切断後の第3足趾の部位に深い潰瘍を有していた。
a)0日目−創傷プロファイル:創傷:3×3×3cm;1%の黄褐色瘡蓋;1%の緑色コロニー形成;残りは肉芽組織;中量の黄色膿滲出液;
b)1日目−創傷プロファイル:創傷改善;ハチミツの使用(1小袋)前に全ての瘡蓋を取り除いた;メトロニダゾール;
c)3日目−創傷プロファイル:創傷改善;さらなる小袋を使用;患者退院;拭き取り検体:+++皮膚微生物叢;抗生物質無し。
実施例20
この実施例では、Surgihoneyを使用した、外傷性脚部創傷の治療結果を説明する。結果を図18に示す。
患者は95歳、女性で、中程度の痛みを生じている外傷性創傷を下腿部に有していた。
a)0日目−創傷プロファイル:創傷:15×12×1cm;大部分は肉芽組織であるが、創傷床の1%は壊死して黒色;中量の血性滲出液;
b)3日目−創傷プロファイル:創傷変化無し;さらなる壊死は無いが創傷はほぼ同じ;ハチミツ1小袋使用;拭き取り検体:Entrecoccus sp.;抗生物質無し;
c)8日目−創傷プロファイル:創傷改善;滲出液の量が減り、及び壊死組織が減少。
実施例21
この実施例では、Surgihoneyを使用した、感染性脚部創傷の治療結果を説明する。結果を図19に示す。
患者は91歳、女性で、感染性創傷を下腿部に有していた。周囲の皮膚は脆弱であり、軽度の痛みが存在した。
a)0日目−創傷プロファイル:創傷の大きさ:4.5×2.5cm;大部分の赤色肉芽組織と、1%の黄色/茶色瘡蓋;中量の黄色漿液滲出。
b)15日目−創傷プロファイル:創傷改善;大きさ:4×2cm;瘡蓋が少なくなり、漿液滲出がある;
c)19日目−創傷プロファイル:創傷改善;各被覆材と共にSurgihoneyを使用。
実施例22
この実施例では、Surgihoneyを使用した、足部潰瘍の治療結果を説明する。結果を図20に示す。
患者は53歳、糖尿病の女性であり、第1、第2、第3及び第4足趾の切断後に持続している慢性糖尿病性足部潰瘍を有していた。
a)0日目−創傷プロファイル:創傷:6.5×3×0.2cm;肉芽組織と、低量の黄色漿液滲出;
b)5日目−創傷プロファイル:創傷の大きさはわずかに改善したが、創傷床の状態はほとんど変化無し;結合していない肉芽組織を取り除いた;吸収性被覆材と共にハチミツ小袋を使用;抗生物質無し;
c)7日目−創傷プロファイル:創傷洗浄、健常肉芽組織を有する;2日ごとに各回ハチミツ小袋を使用して被覆材を交換;
d)9日目−創傷プロファイル:創傷改善;大きさが減少し、滲出液が減った;患者退院。
実施例23
この実施例では、Surgihoneyを使用した、脚部潰瘍の治療結果を説明する。結果を図21に示す。
患者は女性で、治療開始前の1年にわたり発生している脚部潰瘍を有しており、軽度の痛みが生じていた。
a)0日目−創傷プロファイル:健常な周囲皮膚;1%の瘡蓋、99%の肉芽;中量の黄色漿液滲出;創傷の大きさ:7cm×3cm;
b)7日目−創傷プロファイル:創傷改善、そして患者は地域ケアを利用;Surgihoneyを1小袋使用;大きさが減少し、存在する滲出液が減った;より耐えられる痛みになった。
実施例24
この実施例では、Surgihoneyを使用した、脚部潰瘍の治療結果を説明する。結果を図22に示す。
患者は77歳、男性で、栄養不良状態及び脱水状態であった。貧血。前立腺癌。この患者は、治療前6〜12ヶ月間にわたり発生している脚部潰瘍を有していた。軽度の痛み。
a)0日目−創傷プロファイル:創傷:20×10×0.5cm;1%の黄褐色瘡蓋、残りは肉芽組織であるが、中程度の緑色膿滲出液を有する;拭き取り検体:+++Coliform及びPseudomonasの混合;抗生物質:Ben Pen及びClinda;
b)4日目−創傷プロファイル:創傷変化無し;ハチミツのみの被覆材;Ben Pen及びClinda;
c)8日目−創傷プロファイル:創傷改善;緑色瘡蓋は全て消失;抗生物質無し;パラセタモール。
実施例25
この実施例では、Surgihoneyを使用した、脚部潰瘍の治療結果を説明する。結果を図23に示す。
患者は91歳、女性で、6〜12ヶ月間にわたり発生している脚部潰瘍を有していた。彼女は入院しており、強い痛みが生じていた。
a)0日目−創傷プロファイル:痛みが酷く、臭いのある創傷;感染症;瘡蓋10%、緑色コロニー形成50%、蜂窩織炎20%、健常肉芽20%;創傷:15cm×5cm×0.3cm;滲出液:低量、黄色漿液;
b)11日目−創傷プロファイル:痛みは軽度で、創傷は大きく改善;100%健常肉芽;感染無し;創傷:10cm×5cm×0.2cm;滲出液:低量、血性赤色;創傷の大きさ50%減少。
実施例26
この実施例では、Surgihoneyを使用した、脚部潰瘍の治療結果を説明する。結果を図24に示す。
患者は78歳、男性、尿路感染症患者であった。この患者は感染性脚部潰瘍を有していた。周囲皮膚は浸軟されていた。創傷は軽度の痛みを生じさせていた。
a)0日目−創傷プロファイル:創傷の大きさ:5cm×6cm×0.5cm;赤色肉芽98%、黄色/茶色瘡蓋1%、壊死組織1%;低量の血性赤色滲出液;
b)8日目−創傷プロファイル:創傷改善;被覆材交換ごとにハチミツ1小袋使用;拭き取り検体によりわずかな皮膚微生物叢判明;抗生物質無し。
実施例27
この実施例では、Surgihoneyを使用した、脚部潰瘍の治療結果を説明する。結果を図25に示す。
患者は82歳、女性で、栄養不良状態及び脱水状態であった。この患者は、治療前3ヶ月にわたり発生している脚部潰瘍を有していた。
a)0日目−創傷プロファイル:創傷:3×3×0.5cm;健常肉芽組織からなる創傷床;少量の黄色血性滲出液;
b)3日目−創傷プロファイル:創傷改善;拭き取り検体により+++皮膚微生物叢判明;被覆材と共にハチミツ1小袋使用;抗生物質無し;
c)8日目−創傷プロファイル:創傷改善;創傷の大きさが減少し、滲出液の量が減った。
実施例28
この実施例では、Surgihoneyを使用した、脚部潰瘍の治療結果を説明する。結果を図26に示す。
患者は83歳、低血清アルブミンである運動不能男性であった。この患者は、治療前3ヶ月間にわたり発生している脚部潰瘍を有しており、中レベルの痛みが生じていた。
a)0日目−創傷プロファイル:創傷:20×18×0.5cm;黄色/茶色瘡蓋1%、緑色コロニー形成1%、残りは肉芽組織;中量の緑色漿液滲出;わずかな創傷の臭い;
b)4日目−創傷プロファイル:創傷改善;2小袋のSurgihoneyを使用;拭き取り検体により++Pseudomonas;抗生物質の摂取無し;
c)8日目−創傷プロファイル:ハチミツのみの被覆材を2回交換後、創傷が改善;+++Pseudomonas;著しく、十分に改善し、ハチミツ中止。
実施例29
この実施例では、Surgihoneyを使用した、脚部潰瘍の治療結果を説明する。結果を図27に示す。
患者は74歳、喫煙者の男性で、2型呼吸不全を患い、また運動不良であった。この患者は、治療前の1週にわたり発生していた敗血性皮膚裂傷を有しており、中レベルの痛みが生じていた。
a)0日目−創傷プロファイル:創傷:15×20×0.3cm;99%は健常肉芽であるが、1%が危険な状態で感染;中量の黄色滲出液;拭き取り検体によりわずかな大腸菌判明;抗生物質:クリンダマイシン;
b)6日目−創傷プロファイル:被覆材を2回交換後、創傷が改善;ハチミツのみの被覆材;潰瘍は現在乾燥;拭き取り検体では増殖無し;クリンダマイシン;
c)9日目−創傷プロファイル:創傷改善;蜂窩織炎がまだ残っているが、潰瘍は治癒;再度拭き取り検体では増殖無し;クリンダマイシン。
実施例30
この実施例では、Surgihoneyを使用した、脚部潰瘍の治療結果を説明する。結果を図28に示す。
患者は81歳、男性で、脚部及び腕部に重く広範な潰瘍を有していた。この患者は末梢血管疾患を患っており、栄養不良状態であった。創傷は、治療前の1月にわたり発生していた。周囲皮膚は剥がれており、激痛が生じていた。
a)0日目−創傷プロファイル:創傷:30×28×1cm;黄色/茶色瘡蓋1%、残りは肉芽組織;大量の赤色血性滲出液;拭き取り検体により+++大腸菌及びPseudomonasの混合が判明;
b)6日目−創傷プロファイル:創傷改善;わずかなPseudomona;抗生物質無しだが、疼痛用にoromorph;
c)10日目−創傷プロファイル:創傷改善;+Pseudomonasが未だ存在;激痛が減少。
実施例31
この実施例では、Surgihoneyを使用した、脚部潰瘍の治療結果を説明する。結果を図29に示す。
患者は67歳、末梢血管疾患を患う男性であった。治療前の1週にわたり脚部潰瘍が発生していた。周囲皮膚は脆弱であり、痛みは中程度であった。
a)0日目−創傷プロファイル:創傷:1×1×0.2cm;黄色/茶色瘡蓋1%、残りは肉芽組織;創傷にて少量の黄色漿液滲出;
b)11日目−創傷プロファイル:創傷の変化が無い箇所にて一連の被覆材交換後、現在は改善の兆しを示す;滲出液は減少し、創傷は小さくなった;各交換でハチミツ1小袋を使用;拭き取り検体によりstaph aureus++判明;
c)18日目−創傷プロファイル:創傷変化無し;創傷の大きさ:3×3×0.2cm;staph aureus++存在。
実施例32
この実施例では、Surgihoneyを使用した、脚部潰瘍の治療結果を説明する。結果を図30に示す。
患者は43歳の女性であり、1ヶ月間存在する大きな糖尿病性潰瘍を有していた。この潰瘍は潜在する骨髄炎と併発しており、骨は創傷切除され、踵骨から金属加工されていた。患者は足の骨を折っており、その後の治療によって骨感染症となった。主要な臨床医の意見は、この患者は足切断になる可能性が高いというものであった。
a)0日目−創傷プロファイル:瘡蓋40%、緑色コロニー形成10%、健常肉芽50%の創傷;周囲皮膚は健常;中程度の疼痛;中量の黄色膿滲出液;創傷9cm×8cm×2cm;抗生物質無し;
b)1日目−創傷プロファイル:創傷変化無し;拭き取り検体:大腸菌及びPseudomonas;抗生物質無し;鎮痛剤無し;
c)14日目−創傷プロファイル:創傷改善;Surgihoneyを1小袋使用;創傷はゆっくり肉芽形成し、大きく改善;拭き取り検体:わずかな皮膚微生物叢判明。
実施例33
この実施例では、Surgihoneyを使用した、褥瘡の治療結果を説明する。結果を図31に示す。
患者は88歳、糖尿病の女性で、栄養不良状態であった。この患者は、治療前6ヶ月間にわたり発生している褥瘡(グレード3)を有していた。中レベルの痛みが生じており、周囲皮膚は脆弱であった。
a)0日目−創傷プロファイル:創傷の大きさ:0.7×0.7×0.2cm;黄色/茶色瘡蓋1%、蜂窩織炎組織1%、残りは肉芽;低量の黄色膿滲出液;
b)3日目−創傷プロファイル:創傷治癒(創傷は閉じた);Surgihoneyを1小袋使用。
実施例34
この実施例では、Surgihoneyを使用した、感染性腋窩傷の治療結果を説明する。結果を図32に示す。
患者は21歳、女性で、腋の下に感染性創傷を有していた。周囲皮膚は赤色であり、痛みは軽度であった。
a)0日目−創傷プロファイル:蜂窩織炎1%、肉芽99%;低量の黄色漿液滲出;創傷の大きさ:5cm×5cm;
b)24日目−創傷プロファイル:創傷改善;休暇中、2週間にわたりハチミツを使用;抗生物質無し。
実施例35
この実施例では、Surgihoneyを使用した、カテーテルの入口周囲の感染の治療結果を説明する。結果を図33に示す。
患者は41歳、ガン患者の女性であった。この患者はカテーテルの入口周囲の乳房領域の感染症を有していた。創傷は治療前1週間未満存在しており、軽度の痛みが生じていた。
a)0日目−創傷プロファイル:創傷:2cm×2cm;蜂窩織炎1%、残りは肉芽組織;低量の赤色漿液滲出;
b)6日目−創傷プロファイル:創傷は大きく改善;滲出液無し;Surgihoneyを1小袋使用;拭き取り検体を行ったが増殖無し;抗生物質無し;
c)14日目−創傷プロファイル:創傷はもはや問題ではない程度まで改善。
実施例36
Surgihoney
Surgihoneyは、付加したグルコースオキシダーゼを有する低温殺菌していないハチミツである。異なる抗菌力を有する、3種の異なるSurgihoney調合物を作製した。
S1 Surgihoney:0.1%(w/w)の付加グルコースオキシダーゼを有する低温殺菌していないハチミツ。使用した酵素は、BIO−CAT INC製Aspergillus niger起源の食品グレードグルコースオキシダーゼであり、活性は15,000ユニット/gであった。50gのS1 Surgihoneyを含有する密閉した小袋を、標的線量11/6〜14.2kGyでガンマ線照射した。
S2 Surgihoney:0.1%(w/w)の付加グルコースオキシダーゼを有する低温殺菌していないハチミツ。使用した酵素は、BBI Enzymes Limited製Aspergillus niger起源のグルコースオキシダーゼ(GO3B2)であり、活性は274ユニット/mgであった。ユニットの規定:25摂氏度、pH7.0で、1分間あたり1マイクロモルのグルコースを酸化させる酵素の量。夾雑物:アルファアミラーゼ0.05%以下、サッカラーゼ0.05%以下、マルターゼ0.05%以下、及びGO/Cat2000以上。
S3 Surgihoney:0.25%(w/w)の付加グルコースオキシダーゼを有する低温殺菌していないハチミツ。使用した酵素は、BBI Enzymes Limited製グルコースオキシダーゼ(GO3B2)であり、活性は274ユニット/mgであった。
したがって、S1 Surgihoneyは、組成物1グラムあたり15ユニットのグルコースオキシダーゼを含有し、S2 Surgihoneyは、組成物1グラムあたり274ユニットのグルコースオキシダーゼを含有し、S3 Surgihoneyは、組成物1グラムあたり685ユニットのグルコースオキシダーゼを含有する。
実施例37
Surgihoneyのインビトロ抗菌活性
この実施例では、ディスク拡散法、最小発育阻止濃度(MIC)及び最小殺菌濃度(MBC)の測定、ならびに時間殺菌測定による、一連の創傷及び潰瘍細菌分離株のSurgihoneyへの感受性試験を説明する。
概要
結果:Surgihoneyは、広域のグラム陽性及びグラム陰性細菌及び真菌に対し、非常に強力な阻止性と殺菌活性と示す。MIC/MBCは、局所的な臨床使用で到達すると思われる濃度よりも有意に低い。創傷におけるSurgihoneyの局所濃度は、約500グラム/Lと見積もられる。Staph. Aureusに対するSurgihoney1のMIC/MBCは31及び125グラム/Lであり、Surgihoney3のMIC/MBCは0.12及び0.24グラム/Lである。
殺菌速度は効力に依存する。最も効力が弱いSurgihoney 1においては、完全な殺菌活性が、試験した全微生物に対し48時間以内に生じた。最も効力が高いSurgihoney 3では、殺菌活性は30分以内に生じた。Surgihoney接種物調合物の1週間以内の維持では、完全な殺菌活性が示され、細菌の残留が示されなかった。
結論:Surgihoneyは、ハチミツの治癒特性の効果と、皮膚病変、創傷、潰瘍及びキャビティー用バイオ工学製品の強力な抗菌活性とを組み合わせる、高活性の局所治療法として、幅広い可能性を有している。多剤耐性細菌に対して、高活性である。試験したその他のハチミツよりも活性であり、抗菌活性において化学消毒剤に匹敵する。
表層創傷及び皮膚潰瘍は、多くの国で住民の年齢が上がると共に、また肥満及び2型糖尿病の世界的な流行と共に、ますますありふれたものとなっている。英国においては、地域看護師が脚部潰瘍の手当に多くの時間を費やしており、また、地域の脚部潰瘍サービスにおいて水準を保とうとするならば、脚部潰瘍看護師による監督が必須である。皮膚にある慢性の傷は多くの場合、細菌でコロニー形成される。これらがいつ病原性になるか、またこれらが病原性であるかどうかを知ることは困難であるが、明らかな感染が存在していなかったとしても、細菌コロニー形成は、組織の治癒を遅らせ、バイオフィルムを築き、その結果、創傷瘡蓋及び悪臭を生じさせる役割を担うものと思われる。
組織の生存率は、特に併存症と合併した際に困難なものになる。慢性創傷は常に細菌でコロニー形成され、細菌は治癒プロセスを不安定にさせる可能性がある。微生物試料が増殖中の細菌であると報告された場合、その試料を送り、全身の抗生物質を提供しようとしてしまう。これが貢献することは、さらにより耐性のある微生物を選択することだけであり、これがなぜ慢性下肢潰瘍がこんなにも頻繁に、メチシリン耐性Staphylococcus aureus及びPseudomonas aeruginosaなどの多剤耐性微生物でコロニー形成されるかの理由である。
Surgihoneyは、創傷に対する予防的被覆材として開発されてきた。この研究では、Surgihoneyのインビトロ特性を調べる。Surgihoneyは、確立された天然ハチミツの治癒特性を全て保持するが、その抗菌活性は、必要とされるどの程度の効力においてでも設定することができる。この研究では、Surgihoney1、2及び3の最小発育阻止濃度(MIC)及び最小殺菌濃度(MBC)、ならびに時間殺菌曲線を測定した。
方法
Surgihoneyは効力グレード1、2及び3として提供した。Surgihoneyは、半固体形態で、小袋内の無菌医薬品グレードとして与えられている。
臨床分離株を軟組織微生物学試料から回収した。Staphylococcus aureusの分離株18株、メチシリン感受性(MSSA)12株及びメチシリン耐性(MRSA)6株、β溶血性streptococciの分離株6株、ランスフィールド群A(2)、B(2)、C(1)、G(1)、バンコマイシン耐性E. faeciumを含むEnterococcus spp.の分離株5株、広域スペクトルβラクタマーゼ産生株を含むEsch. coli6株、Klebsiella spp.2株、Serratia Marcescens Amp C産生株1株、Pseudomonas aeruginosa4株、Acinetobacter lwoffii1株、Propionibacterium acnes1株、Bacteroides fragilis1株、及びCandida albicans2株、Candida glabrata1株、Aspergillus fumigates1株をSurgihoneyに対して試験した。
寒天拡散
セミコンフルエントの増殖を与える濃度で試験微生物を既に播種してあるisosenitest寒天内で、6mmのウェルを切り取った。試験Surgihoneyと、予備研究のその他のハチミツをそのウェルに加えた。
最初に予備研究を実施して、Surgihoney効力S1、S2、S3を、世界中からの種々のハチミツ、ヨーロッパハチミツ、南アメリカハチミツ、ニュージーランドハチミツ、Yemaniハチミツ、Sudaneseハチミツと比較し、また医療用ハチミツMedihoneyと比較し、ならびに銀(Silver Aquacell)及びヨウ素(Iodoflex)を含有する抗菌被覆材と比較した。Staphylococcus aureusを播種したプレート内でウェルを切り取り、試験ハチミツで満たすか、または包帯材の場合は、これらを2×2cmに切断して播種したプレートの表面に置いた。
予備研究後、Surgihoney効力S1、S2、S3を、皮膚病変からの一連の細菌分離株に対して単独で試験した。希釈していない3種の効力のSurgihoney約2グラムを等容量の滅菌水で希釈して乳化した調合物を用いて、ウェルを表面まで満たした。好気性インキュベーションを18〜24時間行った後(Candida及びAspergillus spp.では長めで、またPropionibacterium sp.及びBacteroides sp.では嫌気性で)、ゾーンの大きさを測定した。
最小発育阻止濃度及び最小殺菌濃度
Surgihoney製品を37℃に温めて液化し、その5グラムを無菌脱イオン水10mLと混合した。この希釈は、系列希釈用の「希釈なし」物質として見なした。最小発育阻止濃度(MIC)及び最小殺菌濃度(MBC)の実施用の英国抗菌剤化学療法学会(BSAC)の方法を使用した(Andrews JM. Determination of minimum inhibitory concentrations. J Antimicrob 372 Chemother 2001; 48(Supp 1): 5−16)。Surgihoney製品を、マイクロタイタートレイのウェルで、希釈なしから1024倍まで系列希釈した。各ハチミツ希釈液75μLをマイクロタイタートレイのストリップ内の各ウェルに加えた。希釈なしの濃度は250グラム/Lの濃度を示し、2048倍希釈は約0.12グラム/Lを示した。
試験微生物は、各微生物に対し、形態学的に同一である4コロニーを純粋培養から取って調製し、0.5マクファーランド密度を作った。これを1:10にさらに希釈した。
対照を含むすべてのウェルに、試験単離株調合物75μLを播種した。ウェルトレイを37℃で18時間インキュベートした。MICは、検出可能な濁度を示さない、最も希釈したウェルとして見なした。
MICウェル、及びMICウェル付近のウェルを血液寒天培地で継代培養し、37℃で18時間インキュベートしてMBCを測定した。MBCは、インキュベーション後に増殖を示さない、最も希釈した濃度であった。
時間殺菌曲線
試験生物接種物は、0.5マクファーランド密度の試験生物0.1mLを取り、栄養ブロス3mL中でこれをインキュベートすることによって調製した。試験接種物を別個のビジューバイアル(Bijou)3個に分け、対照と、試験調合物3個に、Surgihoney1(S1)、Surgihoney3(S3)またはMedihoney(MH)0.5gを加えた。接種物のコロニー数は、1:10の系列希釈を行い、血液寒天プレート上に0.1mLプレーティングすることによって測定し、3回反復した。
試験接種物及び対照接種物を30℃で維持して、表層皮膚病変の温度を模擬した。コロニー計数は、0.5、2、4、24、48、72及び168時間の時点で、3回反復で上記のように行った。
ターミナル培養は、最初の接種物0.1mlを栄養ブロスへ播種して、Surgihoneyのあらゆる残留効果を中和し、37℃で72時間インキュベート後、血液寒天状にプレーティングして試験生物生存を判定することによって行った。
結果
阻止円の大きさ
予備比較研究では、すべてのSurgihoney効力が、医療グレードハチミツのMedihoneyを含めて、試験したあらゆるその他のハチミツよりも高い抗菌活性を有したことが実証された。S1の阻止円は、あらゆるその他のハチミツによって形成された阻止円よりも大きかった。銀被覆材は、被覆材の下で多少の阻止効果を発生したが、Surgihoneyで存在したような阻止円は無かった。ヨウ素被覆材は、Staphylococcus aureusに対する大きな阻止円(約70mm)を形成し、S1(36mm)よりも大きく、S3(67mm)と同等であった。
定量的な阻止円サイズ試験では、全効力のSurgihoneyが、試験した全細菌、多重耐抗生物質細菌を含めたグラム陽性及びグラム陰性細菌の両方、ならびに真菌種に対し、寒天拡散での阻止円を形成した。各種に対する阻止円サイズは、Surgihoney調合物効力の増加と共に増大した。表12。Surgihoneyの阻止効果は、銀被覆材を用いた場合のように活性剤との直接的な接触に依存するだけではなく、ウェルを超えてよく拡散し、表12に挙げられるような大きな阻止円を形成した。
MIC及びMBC
Surgihoneyは、試験した全単離株に対し、有意な抗菌活性を示した。MIC及びMBCは、単離株が多剤耐性であるか、または高感受性であるかどうかよらず、同一種の単離株の中でよく一致した。表13には、希釈比によって試験した単離株種に対するMIC及びMBC値を列挙しており、表14では、1リットルあたりのグラム数単位でのMIC及びMBCを示している。効力の度合いはSurgihoneyのグレードと共に上昇した。各単離株に対するMBCはMICに近く、大半の場合で1回希釈以内であった。
創傷におけるSurgihoneyの局所濃度は、約500グラム/Lと見積もられる。Staph. Aureusに対するSurgihoney1のMIC/MBCは、それぞれ31及び125グラム/Lであり、Surgihoney3のMIC/MBCは0.12及び0.24グラム/Lである。
時間殺菌曲線
Surgihoneyは速やかに細菌を殺す。1ミリリットルあたりのコロニー形成ユニット(cfu/mL)約105で開始して、対照中でのcfu/mL数は絶え間なく増加した一方、Surgihoney接種物中においては、両方の効力のSurgihoneyと接触後、cfu/mLは速やかに下降した。30分までに、S1及びS3の両方において、多くの場合、cfu数は1000倍減少した(図34)。S1では、多くの場合、2時間までに細菌増殖が検出不可能となり、S3では30分までに検出不可能となった。Enterococciはより丈夫であると思われ、48時間生き残った。栄養ブロス中でのターミナル培養とそれに続く血液寒天でのプレーティングでは、S1またはS3接種物中でいずれの生物も検出されなかったので、殺菌活性は全ての生物に対して完全であった。
考察
Surgihoneyは天然ハチミツであり、ヒトでの消費用の多くの市販ハチミツとは異なり、農業添加物または抗菌残留物を有しないという現在の言葉の意味では、有機物でもある。Surgihoneyは、マヌカなどの、高い活性のためには特定の植物の花蜜源に依存するハチミツとは異なり、特定の花蜜源に依存しない。Surgihoneyでは、調合プロセスによって抗菌活性を調節することができ、測定された均一な効力を有する種々のグレードの製造が可能となる。
この研究では、Surgihoneyの効力は、非常に強力な抗菌剤として、試験した全種の細菌及び真菌に対して活性であることがはっきりと実証された。Surgihoneyを、世界中を発生源とする種々のハチミツと比較し、また医療グレードハチミツのMedihoneyと比較した予備研究では、Surgihoneyが有意に高い抗菌効力を示した。よく使用される局所消毒剤である銀及びヨウ素と比較すると、Surgihoney3はヨウ素被覆材と同じくらい高い抗菌効果を発生し、銀被覆材(Aquacel
Ag)よりも高い抗菌効果を発生した。銀被覆材は、被覆材と直接接触している細菌の阻止のみに有効であった。
MIC及びMBC試験では、Surgihoneyは微生物を阻止するだけでなく、局所治療において達成されると思われる濃度(500グラム/Lと見積もられる)未満である10〜1000倍の濃度において、微生物を殺すことが示されている。Surgihoneyの殺菌活性は、その阻止活性に近い濃度で生じる。したがってSurgihoneyは、あらゆるコロニー形成創傷若しくは表層感染創傷または軟組織キャビティーに局所使用した際に、多微生物性阻止及び根絶において、高活性となる可能性がある。多くの慢性創傷は耐性菌でコロニー形成されており、バイオフィルム形成での細菌残留によって創傷治癒が遅れる。よって、Surgihoneyの使用は、創傷治癒を促進するだけでなく、しかるべき抗生物質の使用を減らすのを助ける可能性がある。臨床用途においては、創傷部位でのSurgihoneyの局所濃度は、血清または深部組織での全身性抗生物質の濃度よりもかなり高いであろう。これは、SurgihoneyのMIC及びMBC値に反映されており、これらは全身性抗生物質で一般的に示される値よりも相応して高い。
殺菌活性速度は、時間殺菌曲線により、極めて速いことが示されており、Surgihoney3では30分以内、またSurgihoney1では2時間以内である。これはグラム陽性及びグラム陰性生物の両方の場合であるが、Enterococciはわずかにより丈夫であると思われる。真菌類、Candida spp.、Aspergillus sp.も、増殖を阻止して生物を殺すには、高めの濃度と、より長い曝露とを必要とする。
Surgihoneyは、微生物コロニー形成も減らしながら湿性創傷治癒環境を提供して、瘡蓋の除去ならびに肉芽形成及び上皮化の促進を補助することを目的として、皮膚病変及びキャビティーに対する局所創傷被覆材として使用するよう、無菌製品として製剤している。
他の抗菌調合物は、創傷感染症の治療または予防を意図した局所用調合物として入手可能である。銀含浸被覆材は良好な抗菌活性を有すると思われるが、ハチミツ調合物と比較すると細胞毒性も示す。ヨウ素類似物も良好な抗菌活性を有するが、特定の状況においては毒性であることも報告されている。創傷被覆材中でクロルヘキシジン調合物を使用することについての懸念も、抗菌耐性の発生及び毒性に起因して増加している。
Surgihoneyの臨床的有用性は、皮膚上の、創傷及びキャビティーでの局所使用であると思われる。創傷は、バイオフィルムを形成して治癒を遅らせ得る細菌で、コロニー形成される可能性が有る。抗菌薬耐性についての懸念が増加し、また新しい抗菌剤が不足していることから、広域の抗菌活性を有する局所薬剤は、軟組織病変における全身性抗生物質の使用を減らすことにおいて役割を果たし得る。これらのインビトロ研究は、高い抗菌活性を有する創傷被覆材としてのSurgihoneyの能力を実証した。Surgihoneyの効力は調節することができ、Surgihoneyはまた、創傷治癒におけるその他の重要な機能:湿性バリアー、瘡蓋を取ること、局所的な栄養供給、局所的な免疫調節も発揮し、且つ細胞有毒性ではない。
結論
これらのインビトロ結果は、創傷被覆材としてのSurgihoneyの臨床用途を支持し、そしてこれは、強力且つ無毒性の抗菌剤であるだけでなく、創傷治癒のプロセスで必要とされる全ての役割を発揮することができる初めての製品である可能性がある。
実施例38
Surgihoneyの抗ウイルス活性
細胞培地において、S1またはS2 Surgihoneyを単純ヘルペスウイルスと混合し(細胞培地において、ハチミツとウイルスの50%混合物)、次に37℃で1時間インキュベートした。次いでこの混合物を細胞上に蒔き、各混合物で形成したウイルスプラークの数を記録した。ハチミツを含まない対照、または対照ハチミツを含む対照も実施した。
1時間のインキュベーション後に記録したウイルス(単純ヘルペスウイルス)プラークの数を図35に示す。S1またはS2 Surgihoney混合物ではプラークは形成されず、それと比較して、ハチミツを含まない混合物では160プラーク、また対照ハチミツを含む混合物では150プラークが形成された。
この結果は、S1及びS2 Surgihoney調合物は両方とも、強力な抗ウイルス活性を有することを示している。
実施例39
ライン部位被覆材でのSurgihoneyの使用
末梢挿入中心静脈カテーテル(PICCライン)の感染予防におけるSurgihoneyの有効性を評価するため、S1 Surgihoneyを、30人の患者の腕にあるライン入口部位に局所的に使用した。S1 Surgihoney約3g〜8gを被覆材に使用し、次にこれを創傷に接触させ、そして2番目の被覆材で適所に保った。ライン部位のコロニー形成と、ライン関連菌血症とを評価し、Surgihoney被覆材を受けなかった30人の患者と比較した。結果を以下の表15に示す。
ライン部位被覆材での使用において、Surgihoneyは有効な抗菌剤であると結論された。
実施例40
帝王切開創傷の感染を予防するSurgihoneyの使用
手術創感染は帝王切開において特に問題であり、帝王切開では約10%のかなり高い感染率がある。英国では、毎年147,726件の帝王切開に伴って、帝王切開創傷感染(8〜24.6%)、及びNHS病院全体にわたる広域の変種(13.6〜31.9%)が全国的に増加している(Braggら, 2010. Variation in rates of caesarean section among English NHS trusts after accounting for maternal and clinical risk: cross sectional study. BMJ 2010; 341)。帝王切開創傷感染は、長い入院、資源消費、ならびにその他の罹患率及び死亡率の大きな原因である。帝王切開からの回復は、術後創傷感染を発症した女性では、より困難である。
帝王切開創傷の感染の予防におけるSurgihoneyの有効性を評価するため、手術後の創傷にS1 Surgihoneyを局所的に1度使用した。S1 Surgihoney約25g〜35gを被覆材に使用し、次にこれを創傷に接触させ、そして2番目の被覆材で適所に保った。3ヶ月間にわたり、200人近くの患者を評価した。
臨床評価
2012年10月から2013年1月までの間に帝王切開(CS)を受ける女性に、外科手技の最後で創傷を被覆する際の単回使用の創傷被覆材としてSurgihoneyを提供した。患者1人が使用するのは、それぞれ10gのSurgihoney小袋であった。無菌技術を使用して、「非無菌」の手術助手がSurgihoney小袋を空け、無菌の内容物を無菌の被覆材上に注意深く塗布した。次に産科医または手術室の助産師が、被覆材を手術創に付けた。外科手技後、担当の助産師が評価記録を完成させた。収集したデータは、MRSA状態、糖尿病歴、投薬及び体容積指数であった。外科手技後14日間、担当の助産師は、あらゆる創傷治癒問題、特に滲出、痛み、炎症の存在の記録も行った。炎症がある場合には、創傷培養拭き取り検体を要請し、微生物学的結果を記録した。Surgihoney被覆剤を使用した3ヶ月間の評価中の手術部位感染(SSI)率を、感染対策チームによって収集されたデータに基づく、評価前の9ヶ月における感染率と比較した。創傷感染は、抗生物質治療を必要とする炎症性創傷(紅斑症、腫大、分泌)として臨床的に規定された。SSI率は、実施されたすべてのCS外科手技の百分率として計算した。
結果
結果を以下の表16に示す。2012年10月から2013年1月までの3ヶ月の期間で186件のCSがあり、うち102件(55%)は緊急であった。MRSAでコロニー形成された女性はいなかった。4人(2.23%)が糖尿病を患っていた。42人(27.3%)が25超の体容積指数を有した。評価中、186件のうち4件のCS SSIが確認された。これは2.15%の感染率を示した。1人の患者でSurgihoney使用に関わる有害事象が報告され、それは創傷刺激作用の形態であり、さらなる治療介入をしないことで、3日で解消した。先の9ヶ月においては、590件のCS外科手技(234件は選択による、356件は緊急)があり、感染対策監視者によって32件のCS SSIが記録されており、これは5.42%の感染率を示した。感染率の減少は有意である:p=0.042(χ
2試験)。
上記の結果は、歴史的データと比較して、S1 Surgihoneyを用いて治療したグループにおいて手術部位感染率が減少(60%の減少)したことを示している。Surgihoney被覆材は耐容性がよく、有害事象はほとんど報告されなかった。
Surgihoneyを使用した場合、創傷感染率は60.33%減少した。この研究の2つの群からのSSIデータを使用すると、Surgihoney前のCS SSI率(予想)は5.42%であり、後では2.15%(観測)であった。これらのレベル(以前報告された9.6%の感染率よりも低い)では、推定される英国でのCS SSI感染率は、1年あたり8007症例(予想)、及び1年あたり3176症例(観測)である。Surgihoneyを使用することによって可能性的に減少し得るその差は、4831症例である。
S1 Surgihoneyは、手術後の帝王切開創傷の感染率を効果的に減少させると結論された。治癒している組織に対して毒性が無く、また治癒プロセスの促進も行う薬剤であるSurgihoneyを用いた、創傷のコロニー形成予防は、新しく、また可能性として重要な発見であり、これは手術創に対処する方法を変化させる可能性がある。Surgihoneyは、臨床的に有効で、費用対効果の大きい治療介入を提供して、帝王切開を受ける女性においてSSIを有意に減少させる。
考察
この評価は、効果の高い抗菌創傷被覆材であるSurgihoneyを、感染を予防する、初期のCS創傷の創傷被覆材として使用することができることを実証した。確立された創傷治癒特性を有する「天然」製品として、Surgihoneyは、創傷のコロニー形成及び感染を予防する強力な抗菌活性を提供することに加え、創傷治癒を促進すると思われる。いくつかのハロゲン系化学消毒剤は、同程度の抗菌活性を提供する可能性があるが、創傷治癒を遅らせる可能性がある(Jan WA. Comparison of conventional pyodine dressing with honey
dressing for the treatment of diabetic foot ulcers. JPMI − Journal of Postgraduate Medical Institute 2012; 26(4): 402−7))。ヨウ素創傷被覆材は、CSにおいて禁忌であり(Joint Formulary
Committee. The British National Formulary. London: The Pharmaceutical Press; 2013)、その使用では様々な毒性が伴う(Pietsch及びMeakins: Complications of povidone−iodine absorption
in topically treated burn patients. The
Lancet 1976; 307(7954): 280−2; Scogginら: Hypernatramia and acidosis in associat
ion with topical treatment of burns. The
Lancet 1977; 309(8018): 959; Donovanら: Seizures in a Patient Treated with Continuous Povidone−Iodine Mediastinal Irrigation. New England Journal of Medicine 1992; 326(26): 1784; Colpaert: Iodine toxicity as a cause of total atrioventricular block in burn patients. Burns 2009; 35: S45−S6; Ramaswamykanive: Cardiovascular collapse following povidone−iodine wash. Anaesthesia and Intensive Care 2011; 39(1): 127−30; Lakhal: Povidone iodine: Features of critical systemic absorption. Annales Francaises d’Anesthesie et de Reanimation 2011; 30(7−8): e1−8):e1−e3.)。
同様に、Cochrane systematic reviewsでは、銀含有被覆材または局所薬剤が創傷治癒を促進し、創傷感染を予防するかどうか(Storm−Verslootら: Topical silver for preventing wound infection. Cochrane Database of Systematic Reviews 2010)、またはそれらが、感染性慢性創傷若しくは汚染慢性創傷の有効な治療法であるかどうか(Vermeulenら: Topical silver for treating infected wounds (Review). Cochrane review 2010; (10): 42)を証明する十分な証拠は無いと示されている。
先のsystematic reviewsでは、創傷被覆材としてのハチミツの臨床効果について、多義的な有益性の証拠が示されているが、この新しい調合物は、CS患者において有意な臨床的有益性を提供すると思われる(Jullら: Honey as a topical treatment for wounds: The Cochrane Collaboration, 2009; Jullら: Honey as a topical treatment for wounds. Cochrane database of systematic reviews (Online) 2013; 2)。創傷感染率の時間的な比較では、感染率が、治療介入前の5.42%から、Surgihoneyを使用した場合の2.15%まで、60.33%減少したことを上記の評価が示している。
医療関連感染は、入院患者の約8%が患う重大かつ犠牲の大きい医療合併症であり、SSIはこれらの感染の14%を占め、外科手技を受けた患者の5%近くがSSIを発症したことが判明した。SSIはかなり高い罹患率を伴い、3分の1を超える手術後の死が、少なくとも部分的にSSIに関連している。抗菌予防法は、多くの外科手技で日常的に使用され、手術創感染を減少させている。皮膚消毒も、外科医によって皮膚切開前に日常的に使用され、皮膚細菌負荷を減少させているが、抗菌被覆材の使用は日常的に実施されていない。この理由は、大半の局所消毒剤が組織治癒において有害作用を有するからである可能性がある。
Surgihoneyは強力な抗菌活性を有する製品であり、無毒性で、組織治癒を促進する。この製品を「清潔な」手術創に局所使用することにより、特定の種類の手術においては、全身性抗生物質による予防が実際に置き換えられ得る。このような進展は、使用する抗生物質の量と、コロニー形成している細菌の淘汰圧とを減らすことに助力するであろう。
この評価において帝王切開創傷を選択したのは、なぜなら帝王切開の患者は概して健康であり、病的状態では全くないか、またはほとんど病的状態ではなく、また、CS感染率が増加していると報告されているからである。この増加に対してあり得る理由は、高齢の母親の増加、併存症、特に糖尿病を有する母親の増加、及び高めの体容積指数を有する母親の全体的な増加である。初期の創傷被覆材で抗菌剤を使用することはこれまで日常的ではなかったが、この評価により、CS創傷感染の予防における、Surgihoneyの興味深く且つ効果的な役割が示されている。
実施例41
感染性脚部潰瘍を治療するS1 Surgihoneyの使用
患者は52歳、糖尿病及び慢性腎疾患を患う男性であった。潰瘍は広範囲にわたっており、痛みがあり、臭いがあり、そして大量の深刻な滲出を発生していた。
抗生物質と共に、S1 Surgihoneyを局所被覆材として使用した。7日目までに、創傷の臭いは減少し、痛みはとれ、大量の深刻な滲出とpseudomonas感染は無くなっていた。この患者は7日目に退院した。
結果の写真を図36に示す。図36においては、(a)は治療1日目;(b)は治療4日目;及び(c)は治療7日目を示す。
実施例42
褥瘡を治療するS1 Surgihoneyの使用
患者は50歳、脊椎披裂を患う女性患者であり、身体障害者で運動不能であった。この患者は、1年を超えて持続している、腰から仙骨までの褥瘡を有していた。キャビティーはStreptococcus pyogenesに感染していた。
S1 Surgihoneyを局所被覆材として使用した。2日目より創傷の改善が報告された。30日目までに、軟組織キャビティーはほぼ完全に治癒した。この時点でStreptococcusは検出されなかった。
結果の写真を図37に示す。図37においては、(a)は治療1日目及び(b)は治療30日目を示す。
実施例43
Surgihoneyの抗菌活性
Staphylococcus aureus(NCIMB 9518)に対するSurgihoney(SH)の抗菌活性と、Apis mellifera(ミツバチ)によって作られた2種のプロトタイプ変性ハチミツの抗菌活性を試験した。我々はまた、試料からの過酸化水素の発生レベルを変化させる能力のために、いくつかの変性型のSurgihoneyも調べた。
方法:Staphylococcus aureus標準株に対するバイオアッセイ法を使用して、Surgihoney(SH)を2種の変性ハチミツ、プロトタイプ1(PT1)及びプロトタイプ2(PT2)と比較した。さらなる作業により、これらの調合物からの過酸化水素の発生速度を考察した。
結果:Surgihoneyの抗菌活性は、主に過酸化水素発生によるものと示された。Surgihoneyの変性により、より強力な2種のハチミツプロトタイプが、2倍〜3倍の間の程度高い抗菌活性を生じ、10倍に達する高い過酸化物活性を生じることが示された。
結論:Surgihoneyは、良好な抗菌活性を示す、臨床的に利用可能な創傷消毒被覆材である。2種のさらなるハチミツプロトタイプは、実証された過酸化物活性の増加に起因して、増強させることが可能な抗菌活性を有すると示された。
方法
1.バイオアッセイ法によるハチミツの活性の測定
Surgihoney(SH)、ならびに2種の変性ハチミツ、プロトタイプ1(PT1)及びプロトタイプ2(PT2)の抗菌活性を、Staphylococcus aureus(NCIMB 9518)を使用して測定し、%フェノール相当として示した。値は、3日で繰り返した3つの試料の反復試験からの平均値から計算したものである。
アッセイ法。使用した寒天ウェル拡散法は、Microbiology Standard Methods Manual for the New Zealand Dairy Industry (1982)[ Bee Products Standards Council: Proposed standard for measuring the non peroxide activity of honey.
In. New Zealand: Bee Products Standards
Council; 1982.]において記載されている阻害物質用パンチプレートアッセイから適合させた。
接種物調製。無菌栄養ブロスをブランク及び希釈液として使用し、1cmの光路を有するキュベットを使用して、540nmで測定される吸光度が0.5になるよう一晩培養物を調節した。
アッセイプレート調製。吸光度0.5に調節した培養物100μlを使用して、栄養寒天150mlに播種し、アッセイプレートを作製した。寒天を回転させてしっかり混合し、大きなペトリ皿へ注ぎ、これを水平面上に置いた。寒天が固まったらすぐにプレートを逆さにひっくり返して一晩置き、その後、翌日に使用した。アッセイでは、これらの播種したプレートを4℃から取り出し、室温で15分間静置した後、寒天表面で直径7.0mmのウェルを切り取った。試験材料(試料または標準物)250μlを各ウェルに置いた。
カタラーゼ溶液。蒸留水中、ウシ肝臓(Sigma C9322、2900ユニット/mg)からのカタラーゼ200mg/mlの溶液を毎日新しく調製した。
試料調製。普遍的な方法で、試料4gを蒸留水4mlに加えて最初の試料溶液を調製し、37℃で30分置いて混合を促進させた。2番目の溶液を調製するため、最初の試料溶液2mlを蒸留水2mlに普遍的な方法で加え、合計活性試験用に混合し、また、最初の試料溶液2mlをカタラーゼ溶液2mlに加え、非過酸化物活性用に混合した。
フェノール標準の調製。フェノールを水に溶かすことにより、標準(w/v)10%、30%、50%フェノールを調製した。フェノール標準は使用前に暗い場所で室温にし、試験ウェルへの添加前によく混合した。各標準物を3つのウェルに置いて、3回反復で試験した。標準物は4℃で保管し、使用期限を1ヶ月とした。
試料及び標準物の使用。3ウェルのそれぞれに250μl加えることにより、全試料及び標準物を3回反復で試験した。
プレートインキュベーション。試料の使用後、プレートを37℃で約18時間インキュベートした。ウェルの直径(7.0mm)を含んだ阻止円の直径を記録した。
試料の抗菌活性の計算。各フェノール標準の周りのはっきりとした円の平均直径を計算し、2乗した。はっきりとした円の平均直径の2乗に対する%フェノールの較正図をプロットした。線形回帰を使用して最適化直線を得た。この直線の式を使用して、はっきりとした円の直径の平均測定値の2乗から、各希釈のハチミツ試料の活性を計算した。希釈が可能となるよう(Surgihoneyの密度は1.35g/mlであると仮定して)この図を4.69倍にして、試料の活性をフェノール濃度(% w/v)相当として表した。
合計活性:過酸化水素(H2O2)に起因する活性を含んだ全活性。
非過酸化物活性:試料をカタラーゼ酵素と処理することによってH2O2を取り除く。
2.H2O2法によるハチミツ活性の測定
Merckoquant(登録商標)1.10011.及び1.10081を使用して活性を測定した。
過酸化水素試験キット濃度はmg/L H2O2相当として表した。
精製水を用いて試料を1:10で希釈した。5分間のインキュベーション後、1時間あたりのH2O2発生について、12時間にわたって全試料を測定し、その後24時間及び48時間の時点で測定した。
測定方法。ペルオキシダーゼは過酸化物から有機物酸化還元指示薬へと酸素を運び、次にその指示薬は青色酸化生成物に変換される。試験細片の反応ゾーンを色スケールの領域と目視比較することにより、過酸化物濃度が半定量的に測定される。試験細片の反応ゾーンをSurgihoney試料中に1秒間浸し、余剰の液体を細片から吸収性ペーパータオル上へと流し、15秒(カタログ番号110011)または5秒(カタログ番号110081)後、色スケールの領域により正確に一致する、反応ゾーンにできた色を測定する。
結果
1.活性評価
ハチミツ試料の変性によって作製した抗菌活性については、PT1及びPT2でのフェノール活性が、Surgihoney単独と比較してそれぞれ2倍及びほぼ3倍に増加する結果となった。Surgihoney(SH)の3つの試料、ならびに2種の変性プロトタイプ、PT1及びPT2の結果を表17に示す。
2.H2O2法によるハチミツ活性の測定
プロトタイプの変性は、Surgihoneyの過酸化水素活性の7倍及び10倍に達する過酸化水素活性を生じさせることが観測される。3つの試料についての結果を図38に示す。3つのハチミツプロトタイプそれぞれに対して過酸化水素発生の最大レベルを取り、これを合計フェノール活性に対してプロットすることにより、線形の関係性が観測される(図39)。
考察
この作業による結果は、Surgihoney(SH)、ならびに2種の変性プロトタイプ、PT1及びPT2の主な抗菌活性は、過酸化水素に起因するということを示している。これは、様々な花源からの、他の特定のハチミツと類似した発見である。しかしながら、以前の作業とは異なり、試料からの過酸化水素の入手可能性は増強させることができ、12時間の時点では、Surgihoney(SH)単独の値のそれぞれ7倍及び10倍である。抗菌活性と、3種のハチミツプロトタイプからの過酸化水素の最大放出量との間には、顕著な線形関係がある。
この過酸化物活性は、急性または慢性創傷に使用して創傷感染症を治療または予防する創傷被覆材に理想的に適合する強力な抗菌活性を提供する。創傷には少量のカタラーゼが存在し、男性でのカタラーゼの血清中濃度は50kU/lであると報告されているが、治
癒中の創傷におけるカタラーゼ活性は、創傷ができた後第1週の間、実際には減少し、カタラーゼの活性レベルは、創傷ができた後2週間で最初のレベルに回復することが示されている。したがってこのようなカタラーゼ濃度が、外側で使用するSurgihoneyまたは2種の変性プロトタイプ、PT1及びPT2で観測される抗菌活性に影響することは極めて起こりそうにない。
抗菌創傷被覆材に対する理想的な特性は、有効性、毒性が無いこと、使い易さ、患者及び臨床医の受容性、ならびに金額に見合う価値である。過酸化水素は有効な抗菌剤であり、野菜細菌、酵母及び胞子に対する強力な活性により、殺生物剤として既に使用されている。過酸化水素は、細胞成分の化学的な酸化によって抗菌効果を生じさせている。
過酸化水素のヒトへの毒性は濃度に依存し、ある1つの研究では、抗菌に対する特異濃度と、ヒトへの毒性に対する特異濃度は、重なり合う可能性があると主張している。対照的に、特定のハチミツ調合物は、過酸化水素を一度に大量に供給するのではなく、低濃度の過酸化水素を、時間をかけて連続的に創傷に供給することによって有効な被覆材抗菌剤であり、このような毒性を有しないことが示されている。確かに、生理学的濃度の過酸化水素を哺乳動物の細胞に与えると、生物学的反応が刺激され、これらの細胞における特定の生化学的経路が活性化するという説得のある証拠がある。
明らかに、Surgihoneyならびに2種の変性プロトタイプ、PT1及びPT2は、24時間以上にわたり有効な過酸化水素放出を提供する抗菌被覆材である。
結論
Surgihoneyならびに2種の変性プロトタイプ、PT1及びPT2は、Staphylococcus aureus標準株に対して、強力な抗菌活性を有することが示されている。これらの抗菌活性は、過酸化水素に起因することが示されている。この活性は大きさを変更することができ、過酸化水素活性によって説明することができる。これらの変性ハチミツは、効果的で、無毒性で、また投与しやすい被覆剤を提供する。
実施例44
この実施例では、本発明の好ましいハチミツ系組成物を呈示している。この組成物はハチミツと、付加したグルコースオキシダーゼとを含む(「活性ハチミツ」と呼ぶ)。
アルコール性ゲル
Carbopol 940 0.3%
トリエタノールアミン 0.4%(pH調節及び安定性調節に必要)
活性ハチミツ(5+) 65%
エタノール 25.0%
水 十分量
用法:座瘡治療用。傷のある皮膚には使用しない。
「活性ハチミツ(5+)」は、(5+)の明示がないその他の製剤よりも、多いグルコースオキシダーゼが使用されていることを示すよう使用する。
実施例45
この実施例では、本発明の好ましいハチミツ系組成物を呈示している。この組成物はハチミツと、付加したグルコースオキシダーゼとを含む(「活性ハチミツ」と呼ぶ)。
水性スプレー
25mlプラスチックビンに以下のものを含有する:
活性ハチミツ 10g
Triton CF 0.1g
マルトデキストリンまたはトウモロコシデンプン 1g
用法:創傷全般、及び熱傷への使用
Triton CFは、この組成物において界面活性剤として作用する。マルトデキストリンまたはトウモロコシデンプンは、膜形成剤として作用する。
実施例46
この実施例では、本発明の好ましいハチミツ系組成物を呈示している。この組成物はハチミツと、付加したグルコースオキシダーゼとを含む(「活性ハチミツ」と呼ぶ)。
非水性スプレー
活性ハチミツ 70%
プロピレングリコール 30%
用法:創傷全般
実施例47
この実施例では、本発明の好ましいハチミツ系組成物を呈示している。この組成物はハチミツと、付加したグルコースオキシダーゼとを含む(「活性ハチミツ」と呼ぶ)。
被覆材−プラスチックパウチ
種々のアルギン酸カルシウム被覆材
10cm×10cm、20cm×20cm
活性ハチミツ 10% w/w
用法:創傷清拭、比較的滲出が多い創傷。この組成物は、相対的に湿性の環境を提供する。
実施例48
この実施例では、本発明の好ましいハチミツ系組成物を呈示している。この組成物はハチミツと、付加したグルコースオキシダーゼとを含む(「活性ハチミツ」と呼ぶ)。
ハチミツ及び鎮痛剤
活性ハチミツ 99%
イブプロフェン 1%
用法:全段階の創傷に対処し、創傷治癒における疼痛対処を提供する
実施例49
この実施例では、本発明の好ましいハチミツ系組成物を呈示している。この組成物はハチミツと、付加したグルコースオキシダーゼとを含む(「活性ハチミツ」と呼ぶ)。
粉末
活性ハチミツ
マルトデキストリン
イブプロフェン
微結晶性セルロース(CMC)
ポリビニルピロリドン(PVP)
好ましくは、イブプロフェンは1〜2% w/wで組成物中に含まれる。他の成分は、例えば種々の吸湿レベルが得られるよう、変動することができる。
用法:ホイル内に包装して吸水を防ぐ。PVP−顆粒化を提供。CMC−水分乾燥力を提供。
実施例50
この実施例では、本発明の好ましいハチミツ系組成物を呈示している。この組成物はハチミツと、付加したグルコースオキシダーゼとを含む(「活性ハチミツ」と呼ぶ)。
創傷清拭
活性ハチミツ(例えば、活性ハチミツ5〜50%)を含み、任意に、好適には1〜2%
w/wで鎮痛剤、好ましくはイブプロフェンも含む再構成水溶液。
用法:例えばディスペンサー(ポンプ式ディスペンサーなど)内に入れ、創傷清拭後の創傷の洗い流し液として使用し、創傷治癒の早期開始、及び疼痛緩和を提供する。
実施例51
この実施例では、本発明の好ましいハチミツ系組成物を呈示している。この組成物はハチミツと、付加したグルコースオキシダーゼとを含む(「活性ハチミツ」と呼ぶ)。
フォーム被覆材
滲出液吸収用のポリウレタン裏材
活性ハチミツに浸したアルギン酸カルシウムの島状部分
創傷への付着防止用シリコン
用法:創傷滲出液の吸い上げを補助するフォーム系包帯材。
実施例52
この実施例では、本発明の好ましいハチミツ系組成物を呈示している。この組成物はハチミツと、付加したグルコースオキシダーゼとを含む(「活性ハチミツ」と呼ぶ)。
爪真菌症の治療
活性ハチミツ(5+)をフォームの窪み内に含有する膏薬
ヒドロキシプロピルセルロース
グリセロール
イソプロピルアルコール
クエン酸
一水化物
用法:真菌性爪感染症の治療用
実施例53
この実施例では、本発明の好ましいハチミツ系組成物を呈示している。この組成物はハチミツと、付加したグルコースオキシダーゼとを含む(「活性ハチミツ」と呼ぶ)。
のどスプレー
ハチミツ及びグリセロール、好ましくはハチミツを5〜20%含む
用法:のどの痛み。この製剤は、スプレー用複式ディスペンサー内に入れるか、または使用前に水で再構成し、その後スプレーすることができる。
実施例54
この実施例では、本発明の好ましいハチミツ系組成物を呈示している。この組成物はハチミツと、付加したグルコースオキシダーゼとを含む(「活性ハチミツ」と呼ぶ)。
ポマード
活性ハチミツ 25%
白色ワセリン
軽質流動パラフィン
タルク
カオリン
酸化亜鉛
用途:感染性湿疹の治療用。
実施例55
この実施例では、本発明の好ましいハチミツ系組成物を呈示している。この組成物はハチミツと、付加したグルコースオキシダーゼとを含む(「活性ハチミツ」と呼ぶ)。
リップバーム
ペトロラクタム5594 50%
微結晶蝋 9%
シクロメチコンD5 31%
活性ハチミツ 10%
用法:唇のひび割れ用
実施例56
この実施例では、本発明の好ましいハチミツ系組成物を呈示している。この組成物はハチミツと、付加したグルコースオキシダーゼとを含む(「活性ハチミツ」と呼ぶ)。
クリーム
ハチミツ 15%
カルボマー 2.63%
ジメチコン 0.13%
スルホコハク酸ラウリル二ナトリウム 0.05%
エデト酸二ナトリウム 0.13%
グリセロール 5.26%
コロイドケイ酸 0.33%
ポロキサマー 0.26%
水酸化ナトリウム 0.41%
精製水 85.03%
用法:座瘡治療用。ハチミツは、Propionibacterium acnesに対して活性であることが知られている。