JP2017210395A - ニッケル複合水酸化物とその製造方法、非水系電解質二次電池用正極活物質とその製造方法、ならびに非水系電解質二次電池 - Google Patents
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Abstract
Description
図1は、本実施形態に係るニッケル複合水酸化物を構成する二次粒子1の一例を示す模式図である。図1に示すように、二次粒子1は、コバルトを含まない又はその含有量が非常に低い外殻層2を有する。外殻層2の内部には、中心部3が配置される。ニッケル複合水酸化物は、非水系電解質二次電池用正極活物質(以下、「正極活物質」ともいう。)の前駆体として好適に用いられる。ニッケル複合水酸化物から得られた正極活物質は、非水系二次電池用正極材料として用いた場合に、優れた電池特性を得ることができる。
本実施形態のニッケル複合水酸化物は、一般式(1):Ni1−x−yCoxMny(OH)2+α(但し、式(1)中、xは0.20≦x≦0.35、yは0.20≦y≦0.35、αは0≦α≦0.5の範囲内にある。)で表される。また、上記x及びyは、0.4≦x+y≦0.7を満たす。また、ニッケル複合水酸化物1は、その他の少量の添加元素を含んでもよい。この場合、ニッケル複合水酸化物1は、例えば、一般式(1−2):Ni1−x−yーzCoxMnyMz(OH)2+α(前記式(1−2)中のMは、Ni、Co、Mn以外の遷移金属元素、2族元素、および13族元素からなる群から選ばれる少なくとも1種の元素であり、xは0.20≦x≦0.35、yは0.20≦y≦0.35、zは0≦z≦0.1、αは0≦α≦0.5の範囲内にあり、0.4≦x+y+z≦0.7を満たす。)で表される。
ニッケル複合水酸化物は、複数の一次粒子が凝集した二次粒子1からなる。外殻層2は、該二次粒子1の粒子表面から粒子内部(粒子中心部)にかけて、前記二次粒子直径の10%以上30%以下の厚さを有し、かつ、コバルトの含有量が、外殻層に含まれる金属元素の合計に対して5原子%以下以下の層である。また、コバルトの含有量の下限は0原子%以上である。ニッケル複合水酸化物は、該二次粒子1の粒子表面から粒子内部にかけて組成が制御された外殻層2を有することにより、得られる正極活物質のタップ密度を維持したまま比表面積を上げることが可能となり、出力特性と体積エネルギー密度とを両立させることができる。なお、外殻層2のコバルトの含有量は、例えば、走査型電子顕微鏡の断面観察におけるエネルギー分散型X線分析(EDX)の定量分析により測定することができる。また、外殻層2のコバルトの含有量は、例えば、後述する第2の粒子成長工程(ステップS3)における、第2の混合液の金属組成を制御することにより、所望の範囲に調整できる。
ニッケル複合水酸化物は、レーザー回折散乱法による粒度分布において、体積平均粒径(Mv)が4μm以上10μm以下であることが好ましい。また、ニッケル複合水酸化物は、レーザー回折散乱法による粒度分布におけるD90及びD10と体積平均粒径(Mv)とによって算出される粒径のばらつき指数を示す[(D90−D10)/Mv]が0.60以下であることが好ましい。[(D90−D10)/Mv]を上記範囲とすることで、得られる正極活物質のばらつき指数を小さくすることができ、サイクル特性や出力特性を向上させることができる。
図2は、本実施形態に係るニッケル複合水酸化物の製造方法の一例を示すフローチャートである。図2のフローチャートを説明する際に、適宜図1を参照する。ニッケル複合水酸化物の製造方法は、少なくともニッケル、コバルト、マンガン塩を含有する水溶液と中和剤、好ましくはさらに錯化剤とを、撹拌しながら反応容器に供給して、晶析反応により二次粒子1からなるニッケル複合水酸化物を製造する。図2に示すように、ニッケル複合水酸化物の製造方法は、晶析を3段階に分けて、ニッケル、コバルト、マンガン塩を含有する水溶液と中和剤、好ましくはさらに錯化剤とを供給して反応容器を満たしながら、結晶核の生成を行う核生成工程(ステップS1)と、核生成工程で得られた結晶核を成長させる第1及び第2の粒子成長工程(ステップS2、ステップS3)とを備える。以下、各工程について詳細に説明する。
核生成工程(ステップS1)では、原料水溶液として用いられる所定量のニッケル塩、コバルト塩、マンガン塩のすくなくとも一つを含有する第1の混合水溶液(核生成用溶液)の組成を、所望の組成とし、酸素濃度が5容量%以下の非酸化性雰囲気中で、pH値を液温25℃で12.5以上となるように調整することによって、核の生成を優先的に生じさせる。以下、核生成工程(ステップ1)の各条件について説明する。
核生成工程(ステップS1)においては、第1の混合水溶液(核生成用水溶液)のpH値が、液温25℃基準で12.5以上の範囲となるように制御する必要がある。液温25℃を基準としたpH値が12.5未満の場合、核が生成されるものの核自体が成長して大きくなるため、その後の第1及び第2の粒子成長工程(ステップS2、S3)で粒径の均一性が高い二次粒子が得られず、外殻層2の厚さtの制御が困難となる。一方、pH値が高いほど微細な核が得られるが、14.0を超える場合、反応液がゲル化して晶析が困難となったり、ニッケル複合水酸化物の核が小さくなり過ぎたりする等の問題が生じることがある。即ち、核生成工程(ステップS1)においては、第1の混合水溶液(核生成用水溶液)のpH値が12.5以上であり、好ましくは12.5以上14.0以下、より好ましくは12.5以上13.5以下の範囲内とすることによって、核を十分に生成することができる。
pHは、中和剤であるアルカリ溶液を添加することにより制御することができる。アルカリ溶液は、特に限定されるものではなく、たとえば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなどの一般的なアルカリ金属水酸化物水溶液を用いることができる。アルカリ金属水酸化物を、直接、混合水溶液に添加することもできるが、pH制御の容易さから、水溶液として添加することが好ましい。この場合、アルカリ金属水酸化物水溶液の濃度は、12.5質量%以上30質量%以下とすることが好ましく、20質量%以上25質量%以下程度とすることがより好ましい。アルカリ金属水酸化物水溶液の濃度の低い場合、スラリー濃度が低下して生産性が悪化することがあるため、濃度を高めることが好ましく、具体的には、アルカリ金属水酸化物の濃度を20質量%以上とすることが好ましい。一方、アルカリ金属水酸化物の濃度が30質量%を超えると、添加位置でのpHが局部的に高くなり、微粒子が発生することがある。
核生成工程(ステップS1)における核生成用水溶液の温度は、40℃以上70℃以下に保持することが好ましい。温度が上記範囲である場合、ニッケル複合水酸化物の微細な核を十分に生成させることができる。
次いで、第1の粒子成長工程(ステップS2)では、まず、核生成工程(ステップS1)の終了後、反応槽内の核を含むスラリーを、酸素濃度が5容量%以下の非酸化性雰囲気中で、pH値が、液温25℃基準で10.5以上12.5以下、且つ核生成工程(ステップS1)におけるpHより低くなるように調整して、pHが調整されたスラリー(粒子成長用スラリー)を得る。pH値の制御は、例えば、上述したように第1の混合水溶液を供給しながら無機アルカリ水溶液(中和剤)の供給量を調節することにより行う。また、混合水溶液に含まれる塩を構成する無機酸を添加してpHを調整してもよい。
第1の粒子成長工程(ステップS2)では、粒子成長用スラリーのpH値が、液温25℃基準で10.5以上12.5以下、好ましくは11.0以上12.0以下の範囲、且つ核生成工程におけるpHより低くなるように制御する。液温25℃を基準としたpH値が10.5未満の場合、得られるニッケル複合水酸化物中に含まれる不純物、例えば、金属塩に含まれるアニオン構成元素等が多くなるという問題が生じる。また、スラリーの液成分中に残留する金属成分が多くなって組成ずれや歩留まりが低下するという問題が生じる。一方、pH12.5を超える場合、粒子成長生成工程で新たな核が生成し、粒度分布が悪化し、後工程で形成される外殻層2の厚さtが制御できない。即ち、粒子成長工程において、粒子成長用スラリーのpH値を上記範囲に制御することにより、核生成工程(ステップS1)で生成した核の成長を優先的に起こさせ、新たな核形成を抑制することができ、得られるニッケル複合水酸化物を均質、且つ粒度分布の範囲が狭く、形状が制御されたものとすることができる。核生成と粒子成長とをより明確に分離するためには、粒子成長用スラリーのpH値を核生成工程(ステップS1)におけるpHより、0.5以上低く制御することが好ましく、1.0以上低く制御することがより好ましい。
第1及び第2の粒子成長工程においては、錯化剤としてアンモニアを添加することが好ましい。その際の粒子成長用スラリー中のアンモニア濃度は、5g/L以上20g/L以下に制御することが好ましい。アンモニアは錯化剤として作用するため、アンモニア濃度が5g/L未満の場合、金属イオンの溶解度を一定に保持することができず、結晶が発達した一次粒子が不均一となり、ニッケル複合水酸化物の粒径の幅がばらつき、外殻層2の厚さtがばらつく原因となることがある。アンモニア濃度が20g/Lを超える場合、金属イオンの溶解度が大きくなり過ぎ、粒子成長用スラリーに残存する金属イオン量が増えて、組成のずれ等が起きる場合がある。また、アンモニア濃度が変動すると、金属イオンの溶解度が変動し、均一なニッケル複合水酸化物が形成されないため、一定値に保持することが好ましい。例えば、アンモニア濃度の変動は、設定濃度に対して増加又は減少の幅が5g/L程度として所望の濃度に保持することが好ましい。なお、上記の核生成工程においても、同様の条件で錯化剤を添加してもよい。
第1の粒子成長工程(ステップS2)における反応水溶液の温度は、40℃〜70℃に保持することが好ましい。これにより、ニッケル複合水酸化物の粒径を目標とする範囲まで成長させることができる。40℃未満では、粒子成長用スラリーの液成分における金属塩の溶解度が低く塩濃度が低いため、粒子成長工程では核生成が多く微細な粒子が多くなり、粒度分布が悪化することがある。さらには、前記体積平均粒径比が0.2〜0.6の範囲から外れるといった可能性も高くなる。混合水溶液の温度が70℃を超えると、アンモニアを用いた場合にはその揮発が多く、ニッケルアンミン錯体濃度が安定せず、粒径がばらつく原因となる。また、中和剤については、核生成工程と同様のものを用いることができる。
原料水溶液である第1の混合水溶液は、ニッケル塩、コバルト塩、マンガン塩の少なくとも一つを含む。これらの金属塩としては、硫酸塩、硝酸塩および塩化物などを使用することができ、コスト、不純物および廃液処理の観点から、硫酸塩を使用することが好ましい。第1の混合水溶液には、所定の組成比のニッケル複合水酸化物が得られるように必要に応じてニッケル、コバルト、マンガン、添加元素Mを含有する金属化合物を含有させる。なお、最終的に、上記式(1)で表されるニッケル複合水酸化物1を得られる範囲であれば、第1の混合溶液中のニッケル、コバルト、マンガン、元素Mの含有量は特に限定されない。なお、核生成工程(ステップS1)で用いられる第1の混合溶液と、第1の粒子成長工程(ステップS2)で用いられる第1の混合溶液とは、その組成が同一であってもよく、異なっていてもよい。なお、第1の粒子成長工程(ステップ2)では、上記核生成工程(ステップ1)と同様に、酸素濃度が5容量%以下の非酸化性雰囲気中で行うことができるため、雰囲気制御のため原料水溶液(例えば、第1の混合水溶液)の供給を一時的に停止する必要はない。
次いで、第2の粒子成長工程(ステップS3)では、原料水溶液の切り替え以外はpH条件等は同様のまま、原料水溶液である第1の混合水溶液を、外殻層に含まれる金属元素の合計に対して5原子%以下のコバルトを含む第2の混合水溶液に切り替えて、前記スラリーに供給する。第2の粒子成長工程(ステップS3)では、上記の外殻層2を形成するため、反応水溶液内のコバルトの含有量を低減させる必要がある。そこで、第1の粒子成長工程において用いられた第1の混合水溶液を、第1の混合水溶液よりもコバルト含有量が低い第2の混合水溶液へと切り替える。これにより、目的とする粒子表面のコバルト含有量の少ないニッケル複合水酸化物粒子が得られる。
本実施形態の正極活物質は、複数の一次粒子が互いに凝集した二次粒子からなり、一般式(2):Li1+uNi1−x−yCoxMnyO2(但し、前記式(2)中のuは−0.05≦u≦0.50、xは0.20≦x≦0.35、yは0.20≦y≦0.35の範囲内にあり、0.4≦x+y≦0.7を満たす。)で表され、六方晶系の層状構造を有するリチウムニッケル複合酸化物を含み、高い比表面積と高いタップ密度を両立することができる。以下、リチウムニッケル複合酸化物の特性について説明する。
リチウムニッケル複合酸化物は、比表面積が1.0m2/g以上3.0m2/g以下であり、1.2m2/g以上2.5m2/g以下であることが好ましい。比表面積が上記範囲である場合、得られる二次電池の出力特性を向上させることができる。なお、比表面積は、BET法により測定することができる。
リチウムニッケル複合酸化物は、タップ密度が2.0g/ml以上3.0g/ml以下であり、2.0g/ml以上2.5g/ml以下であることが好ましい。タップ密度が上記範囲である場合、得られる二次電池の電池容量を向上させることができる。なお、タップ密度は、例えば、振とう比重測定器(株式会社蔵持科学器械製作所製、KRS−409)により測定することができる。
リチウムニッケル複合酸化物は、比表面積とタップ密度との積(比表面積×タップ密度)が3以上である。一般的に、比表面積とタップ密度との関係は相反するところ、比表面積とタップ密度との積が3以上である場合、高比表面積による高い出力特性と高タップ密度による電池内への高い充填性を両立させることができる。比表面積とタップ密度との積を評価に用いることで両方がバランスよく大きいものを選定する事ができる。比表面積とタップ密度の積が3未満の場合、比表面積が低く高い出力特性得られないか、あるいはタップ密度が低く電池内への充填性が低下する。比表面積とタップ密度の積の上限は、特に限定されるものではないが、6以下程度であり、より好ましくは5以下程度である。
リチウムニッケル複合酸化物は、レーザー回折散乱法によって測定された粒度分布において、体積平均粒径(Mv)が4μm以上10μm以下であることが好ましい。これにより、電池内での高い充填密度と優れた出力特性を両立させることができる。
リチウムニッケル複合酸化物は、一般式(2):Li1+uNi1−x−yCoxMnyO2(前記式(2)中のuは、−0.05≦u≦0.50、xは0.20≦x≦0.35、yは0.20≦y≦0.35の範囲内にあり、0.4≦x+y≦0.7を満たす。)で表される。
図3は、本実施形態に係る正極活物質の製造方法の一例を示すフローチャートである。本実施系の製造方法は、一般式(2):Li1+uNi1−x−yCoxMnyO2(前記式(2)中、uは−0.05≦u≦0.50、xは0.20≦x≦0.35、yは0.20≦y≦0.35である。)で表され、六方晶系の層状構造を有するリチウムニッケル複合酸化物により構成された非水系電解質二次電池用の正極活物質の製造方法である。以下、図3を参照して、正極活物質を製造する方法について説明する。
まず、上述のニッケル複合水酸化物とリチウム化合物と混合して、リチウム混合物を形成する(ステップS4)。リチウム化合物としては、特に限定されず公知のリチウム化合物が用いられることができ、例えば、入手が容易であるという観点から、水酸化リチウム、硝酸リチウム、炭酸リチウム、又は、これらの混合物が好ましく用いられる。これらの中でも、リチウム化合物としては、取り扱いの容易さ、品質の安定性の観点から、酸化リチウム又は炭酸リチウムがより好ましい。混合工程の前にニッケル複合水酸化物を酸化してニッケル複合酸化物の形態にした後、混合してもよい。
次いで、リチウム混合物を焼成して、リチウムニッケル複合酸化物を得る(ステップS5)。焼成は、酸化性雰囲気中で、850℃以上1100℃以下で行う。焼成温度が850℃未満である場合、焼成が十分行われず、タップ密度が低下することがある。また、焼成温度が850℃未満である場合、リチウムの拡散が十分に進行せず、余剰のリチウムが残存し、結晶構造が整わなくなったり、粒子内部のニッケル、コバルト、マンガン組成の均一性が十分に得られず、電池に用いられた場合に十分な特性が得られないことがある。一方、1100℃を超えると、粒子表面の疎の部分が緻密化してしまう。また、複合酸化物の粒子間で激しく焼結が生じるとともに異常粒成長を生じる可能性があり、このため、焼成後の粒子が粗大となって略球状の粒子形態を保持できなくなる可能性がある。このような正極活物質は、比表面積が低下するため、電池に用いた場合、正極の抵抗が上昇して電池容量が低下する問題が生じる。また、焼成時間は、特に限定されないが、1時間以上24時間以内程度である。
本実施形態の非水系電解質二次電池は、一般の非水系電解質二次電池と同様の構成要素により構成されることができ、例えば、正極、負極及び非水系電解液を含む。なお、以下で説明する実施形態は例示に過ぎず、本実施形態の非水系電解質二次電池は、本明細書に記載されている実施形態を基に、当業者の知識に基づいて種々の変更、改良を施した形態で実施することができる。また、本実施形態の非水系電解質二次電池は、その用途を特に限定するものではない。
先に述べた非水系電解質二次電池用正極活物質を用い、例えば、以下のようにして、非水系電解質二次電池の正極を作製する。まず、粉末状の正極活物質、導電材、結着剤を混合し、さらに必要に応じて活性炭、粘度調整等の目的の溶剤を添加し、これを混練して正極合材ペーストを作製する。正極合材ペースト中のそれぞれの成分の混合比は、例えば、溶剤を除いた正極合材の固形分の全質量を100質量部とした場合、一般の非水系電解質二次電池の正極と同様、正極活物質の含有量を60〜95質量部とし、導電材の含有量を1〜20質量部とし、結着剤の含有量を1〜20質量部とすることが好ましい。
負極には、金属リチウムやリチウム合金等、あるいは、リチウムイオンを吸蔵及び脱離できる負極活物質に、結着剤を混合し、適当な溶剤を加えてペースト状にした負極合材を、銅等の金属箔集電体の表面に塗布し、乾燥し、必要に応じて電極密度を高めるべく圧縮して形成したものを使用する。
正極と負極との間には、セパレータを挟み込んで配置する。セパレータは、正極と負極とを分離し、電解質を保持するものであり、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン等の薄い膜で、微少な孔を多数有する膜を用いることができる。
非水系電解液としては、例えば、支持塩としてのリチウム塩を有機溶媒に溶解したものが用いられる。使用する有機溶媒としては、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ブチレンカーボネート、トリフルオロプロピレンカーボネート等の環状カーボネート、また、ジエチルカーボネート、ジメチルカーボネート、エチルメチルカーボネート、ジプロピルカーボネート等の鎖状カーボネート、さらに、テトラヒドロフラン、2−メチルテトラヒドロフラン、ジメトキシエタン等のエーテル化合物、エチルメチルスルホン、ブタンスルトン等の硫黄化合物、リン酸トリエチル、リン酸トリオクチル等のリン化合物等から選ばれる1種を単独で、あるいは2種以上を混合して用いることができる。
支持塩としては、LiPF6、LiBF4、LiClO4、LiAsF6、LiN(CF3SO2)2等、及びそれらの複合塩を用いることができる。さらに、非水系電解液は、ラジカル捕捉剤、界面活性剤及び難燃剤等を含んでいてもよい。
本実施形態の非水系電解質二次電池は、例えば、上述したような正極、負極、セパレータ及び非水系電解液で構成される。また、非水系電解質二次電池の形状は、特に限定されず、円筒型、積層型等、種々のものとすることができる。いずれの形状を採る場合であっても、正極及び負極を、セパレータを介して積層させて電極体とし、得られた電極体に、非水系電解液を含浸させ、正極集電体と外部に通ずる正極端子との間、及び、負極集電体と外部に通ずる負極端子との間を、集電用リード等を用いて接続し、電池ケースに密閉して、非水系電解質二次電池を完成させる。
本実施形態の非水系電解質二次電池は、上記構成であり、上述の正極活物質を用いた正極を有しているので、高い充填密度と高い比表面積が得られ、体積エネルギー密度と出力特性とに優れたものとなる。
本実施形態の二次電池は、上記性質を有するので、常に高容量を要求される小型携帯電子機器(ノート型パーソナルコンピュータや携帯電話端末など)の電源に好適である。
また、本実施形態の二次電池は、高い充放電特性が要求されるモーター駆動用電源としての電池にも好適である。電池は、大型化すると安全性の確保が困難になり、高価な保護回路が必要不可欠であるが、本発明の二次電池は、優れた安全性を有しているため、安全性の確保が容易になるばかりでなく、高価な保護回路を簡略化し、より低コストにできる。そして、小型化、高出力化が可能であることから、搭載スペースに制約を受ける輸送機器用の電源として好適である。
以下の実施例および比較例において、体積平均粒径および粒度分布測定は、レーザ回折式粒度分布計(日機装株式会社製、商品名:マイクロトラック)により測定した。
得られた非水系電解質二次電池用正極活物質の評価は、図4に示すコイン型電池CBAを以下のように作製し、評価することで行なった。非水系電解質二次電池用正極活物質52.5mg、アセチレンブラック15mg、およびポリテトラフッ化エチレン樹脂(PTFE)7.5mgを混合し、100MPaの圧力で直径11mm、厚さ100μmにプレス成形して図5に示す正極PE(評価用電極)を作製した。その作製した正極PEを真空乾燥機中120℃で12時間乾燥した。そして、この正極PEを用いて2032型のコイン型電池CBAを、露点が−80℃に管理されたAr雰囲気のグローブボックス内で作製した。
初期放電容量は、コイン型電池CBAを製作してから24時間程度放置し、開回路電圧OCV(Open Circuit Voltage)が安定した後、正極に対する電流密度を0.1mA/cm2としてカットオフ電圧4.3Vまで充電し、1時間の休止後、カットオフ電圧3.0Vまで放電したときの容量を初期放電容量とした。充放電容量の測定には,マルチチャンネル電圧/電流発生器(株式会社富士通アクセス製)を用いた。
また、充電電位4.1Vで充電した2032型コイン電池を用いて、交流インピーダンス法により抵抗値を測定した。測定には、周波数応答アナライザおよびポテンショガルバノスタット(ソーラトロン製)を使用して、交流インピーダンス法により測定すると、図5に示すナイキストプロットが得られる。ナイキストプロットは、溶液抵抗、負極抵抗と容量、及び、正極抵抗と容量を示す特性曲線の和として表しているため、等価回路を用いてフィッテング計算し、正極抵抗の値を算出した。
第1の混合水溶液として、硫酸ニッケル(濃度:38.8g/L)と、硫酸コバルト(濃度:39.0g/L)と、硫酸マンガン(濃度:36.3g/L)の複合溶液を用意し、第2の混合水溶液として、硫酸ニッケル(濃度:115.9g/L)溶液を用意した。
第1の混合水溶液を、硫酸ニッケル(濃度:78.3g/L)と硫酸コバルト(濃度:39.3g/L)の複合溶液とし、第2の混合水溶液を、硫酸ニッケル(濃度:58.7g/L)溶液と硫酸マンガン(濃度:54.9g/L)の複合溶液としたこと以外は、実施例1と同様にして正極活物質を得るとともに評価した。評価結果を表1および表2に示す。
第1の混合水溶液を、硫酸ニッケル(濃度:39.1g/L)と、硫酸コバルト(濃度:58.9g/L)と、硫酸マンガン(濃度:18.3g/L)の複合溶液とし、第2の混合水溶液を、硫酸ニッケル(濃度:58.7g/L)溶液と硫酸マンガン(濃度:54.9g/L)の複合溶液とし、焼成温度を950℃にしたこと以外は、実施例1と同様にして正極活物質を得るとともに評価した。評価結果を表1および表2に示す。
実施例1で得られた前駆体を用いて、焼成温度を900℃としたこと以外は、実施例1と同様にして正極活物質を得るとともに評価した。評価結果を表2に示す。
使用した混合水溶液を、硫酸ニッケル(濃度:70.4g/L)と硫酸コバルト(濃度:23.6g/L)と硫酸マンガン(濃度:22.0g/L)の複合溶液(第1の原料溶液)のみで晶析を行ったこと以外は、実施例1と同様にして前駆体及び正極活物質を得るとともに評価した。評価結果を表1および表2に示す。
第1の混合水溶液を、硫酸ニッケル(濃度:65.2g/L)と、硫酸コバルト(濃度:26.2g/L)の複合溶液とし、第2の混合水溶液を、硫酸ニッケル(濃度:24.4g/L)溶液と硫酸ニッケル(濃度:115.9g/L)の複合溶液とし、それぞれの粒子成長晶析時間を3.6時間と0.4時間にしたこと以外は実施例1と同様にして前駆体及び正極活物質を得るとともに評価した。評価結果を表1および表2に示す。
第1の混合水溶液を、硫酸ニッケル(濃度:78.3g/L)と、硫酸マンガン(濃度:36.6g/L)の複合溶液とし、第2の混合水溶液を、硫酸ニッケル(濃度:58.7g/L)溶液と硫酸コバルト濃度:58.9g/L)の複合溶液、2種類としたこと以外は、実施例1と同様にして前駆体及び正極活物質を得るとともに評価した。評価結果を表1および表2に示す。
実施例1で得られた前駆体を用いて、焼成温度を800℃としたこと以外は、実施例1と同様にして正極活物質を得るとともに評価した。評価結果を表2に示す。
実施例のニッケル複合水酸化物(前駆体)は、前駆体粒子表面より内部にかけてコバルト含有量の低い層(外殻層)を一定量有する。また、実施例の前駆体から得られた正極活物質は、例えば、比較例1のように粒子内部が均一な組成を有する前駆体から作製した正極活物質と比べて、高いタップ密度は維持したまま比表面積が高い粒子が得られることが示された。さらに、得られた正極物質を用いた二次電池は、比較例1と比べて、初期放電容量が高く、反応抵抗が低減されて、電気特性が向上したことが示された。
2…外殻層
3…中心部
t…外殻層の厚さ
d…二次粒子の直径
CBA…コイン型電池
PC…正極缶
NC…負極缶
GA…ガスケット
PE…正極
NE…負極
SE…セパレータ
WW…ウェーブワッシャー
Claims (10)
- 複数の一次粒子が凝集した二次粒子からなり、一般式(1):Ni1−x−yCoxMny(OH)2+α(前記式(1)中のxは0.20≦x≦0.35、yは0.20≦y≦0.35、αは0≦α≦0.5の範囲内にあり、0.4≦x+y≦0.7を満たす。)で表されるニッケル複合水酸化物であって、
前記二次粒子の粒子表面から粒子内部にかけて、外殻層を有し、
前記外殻層は、前記二次粒子直径の10%以上30%以下の厚さを有し、かつ、コバルトの含有量が、外殻層に含まれる金属元素の合計に対して5原子%以下であるニッケル複合水酸化物。 - レーザー回折散乱法によって測定された粒度分布において、体積平均粒径(Mv)が4μm以上10μm以下であり、累積90体積%径(D90)及び累積10体積%径(D10)と、前記体積平均粒径(Mv)とによって算出される、粒径のばらつき指数を示す[(D90−D10)/Mv]が0.60以下である、請求項1に記載のニッケル複合水酸化物。
- 複数の一次粒子が凝集した二次粒子からなり、一般式(1):Ni1−x−yCoxMny(OH)2+α(前記式(1)中のxは0.20≦x≦0.35、yは0.20≦y≦0.35、αは0≦α≦0.5の範囲内にあり、0.4≦x+y≦0.7を満たす。)で表されるニッケル複合水酸化物を製造する方法であって、
酸素濃度が5容量%以下の非酸化性雰囲気中で、液温25℃基準でpH値が12.5以上となるように調整して、核の生成を行う核生成工程と、
前記核生成工程において形成された核を含有するスラリーを、酸素濃度が5容量%以下の非酸化性雰囲気中で、液温25℃基準でpH値が10.5以上12.5以下、かつ、該核生成工程におけるpH値より低くなるように調整し、前記スラリーに、ニッケル塩、コバルト塩及びマンガン塩の少なくとも一つを含む第1の混合水溶液を供給する第1の粒子成長工程と、
前記第1の混合水溶液を、前記二次粒子中の全金属原子に対して5原子%以下のコバルトを含む第2の混合水溶液に切り替えて、前記スラリーに供給する第2の粒子成長工程と、を含み、
前記第2の粒子成長工程において、前記二次粒子表面から粒子内部にかけて直径の10%以上30%以下の厚さを有し、かつ、コバルトの含有量が外殻層に含まれる金属元素の合計に対して5原子%以下となる外殻層を形成させる、ニッケル複合水酸化物の製造方法。 - 上記第1及び第2の粒子成長工程において、前記スラリーのアンモニア濃度を5g/L以上20g/L以下に調整する、請求項3に記載のニッケル複合水酸化物の製造方法。
- 複数の一次粒子が凝集した二次粒子からなり、一般式(2):Li1+uNi1−x−yCoxMnyO2(前記式(2)中のuは、−0.05≦u≦0.50、xは0.20≦x≦0.35、yは0.20≦y≦0.35の範囲内にあり、0.4≦x+y≦0.7を満たす。)で表され、六方晶系の層状構造を有するリチウムニッケル複合酸化物を含む非水系電解質二次電池用の正極活物質であって、
前記リチウムニッケル複合酸化物は、比表面積が1.0m2/g以上3.0m2/g以下、タップ密度が2.0g/ml以上3.0g/ml以下であり、かつ、比表面積とタップ密度との積が3.0以上である、非水系電解質二次電池用正極活物質。 - 前記リチウムニッケル複合酸化物は、レーザー回折散乱法による粒度分布において、体積平均粒径(Mv)が4μm以上10μm以下であり、累積90体積%径(D90)及び累積10体積%径(D10)と、前記体積平均粒径(Mv)とによって算出される、粒径のばらつき指数を示す[(D90−D10)/Mv]が0.60以下である、請求項5に記載の非水系電解質二次電池用正極活物質。
- 前記正極活物質は、二次粒子の粒子表面から粒子内部にかけて外殻層を有し、前記外殻層は、前記二次粒子直径の10%以上30%以下の厚さを有し、かつ、コバルトの含有量が、内部のコバルトの含有量より少ない請求項5に記載の非水系電解質二次電池用の正極活物質。
- 一般式(2):Li1+uNi1−x−yCoxMnyO2(前記式(2)中、uは、−0.05≦u≦0.50、xは、0.20≦x≦0.35、yは、0.20≦y≦0.35の範囲内にあり、0.4≦x+y≦0.7を満たす。)で表され、六方晶系の層状構造を有するリチウムニッケル複合酸化物により構成された非水系電解質二次電池用の正極活物質の製造方法であって、
請求項1又は請求項2に記載のニッケル複合水酸化物と、リチウム化合物とを混合してリチウム混合物を形成することと、
上記混合工程で形成されたリチウム混合物を、酸化性雰囲気中において850℃以上1100℃以下の温度で焼成することと、を含む
ことを特徴とする非水系電解質二次電池用の正極活物質の製造方法。 - 前記ニッケル複合水酸化物と、リチウム化合物との混合は、前記リチウム混合物に含まれるリチウム以外の金属の原子数の和(Me)に対するリチウムの原子数(Li)の比(Li/Me)が、0.95以上1.5以下となるように混合する、請求項8に記載の非水系電解質二次電池用正極活物質の製造方法。
- 正極と、負極と、非水系電解質と、セパレータとを備え、上記正極は、請求項5又は請求項6に記載の非水系電解質二次電池用正極活物質を含むことを特徴とする非水系電解質二次電池。
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