JP2017049463A - 感光性樹脂組成物およびこれを用いた印刷版原版 - Google Patents

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弘幸 河原
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Abstract

【課題】
レリーフの高い画像再現性を有しながら、しかも、見当性が高い印刷版を得ることができる感光性樹脂組成物、およびこれを用いた印刷版原版を提供する。
【解決手段】
(A)反応性基を側鎖に有する変性部分ケン化ポリ酢酸ビニル、
(B)塩基性窒素を有するポリアミド、
(C)エチレン性二重結合を有する化合物、
(D)光重合開始剤、を含有し、
光硬化後のショアD硬度が45〜65であり、ヤング率が170MPa以下、破断点伸度が250%以上の感光性樹脂組成物。
【選択図】なし

Description

本発明は印刷版原版に関するものであり、詳細には感光性樹脂凸版材に関するものである。
感光性樹脂組成物を用いた感光性樹脂層を有する印刷版材は、一般に感光性樹脂層に可溶性ポリマー、光重合性不飽和基含有モノマーおよび、光重合開始剤を必須成分として含有し、必要に応じて、安定剤、可塑剤等の添加剤が配合される。このような印刷版材は、ネガティブ、ポジティブの原画フィルムや、感光性樹脂層上に設けられた紫外光に対して不透明な画像マスク層を介して紫外光を感光性樹脂層に照射することにより、感光性樹脂層中に溶剤に溶解する部分と溶解しない部分を形成することで、レリーフ像を形成する。
印刷版材は輪転印刷機や間欠式輪転印刷機など円筒状の版胴表面に貼り付けて印刷される場合が多い。多色印刷の場合は版胴と印刷版のセットを複数本同時に使用し、同一印刷面に複数色を同時に印刷する。しかし、絵柄や絵柄面積によっては各色の見当がずれる場合が多かった。
上述の問題を解決する方法として、印刷版が版胴に沿いやすい形状に癖をつける方法や、支持体にスチールなどを用いるなどの工夫がとられる場合があったが、レリーフの高い画像再現性を有しながら、しかも高い見当性を得る点について、依然として満足できるレベルではなかった。
特開平3―274558号公報 特開平4―283749号公報 特開2007−79494号公報
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、レリーフの高い画像再現性を有しながら、しかも、見当性が高い印刷版を得ることができる感光性樹脂組成物と印刷版原版を提供する。
本発明は以下の構成を有する。
(A)反応性基を側鎖に有する変性部分ケン化ポリ酢酸ビニル、
(B)塩基性窒素を有するポリアミド、
(C)エチレン性二重結合を有する化合物、
(D)光重合開始剤、を含有し、
光硬化後のショアD硬度が45〜65であり、ヤング率が170MPa以下、破断点伸度が250%以上であることを特徴とする感光性樹脂組成物、およびこれを用いた印刷版原版とする。
本発明によれば、見当性が高い凸版印刷版を得ることができる。
ベタレリーフ部と非画像部を示した印刷版の概略図である。
以下、本発明の実施の形態を説明する。
感光性樹脂組成物を構成する(A)成分である、反応性基を側鎖に有する変性部分ケン化ポリ酢酸ビニルにおける反応性基とは、ラジカル反応により架橋することができる官能基のことである。一般に、このような官能基としては、通常は非芳香族の不飽和炭素−炭素結合、中でもエチレン性二重結合が多く使用され、ビニル基、(メタ)アクリロイル基が挙げられる。
このような反応性基を部分ケン化ポリ酢酸ビニルの側鎖に導入する方法として、例えば、特許文献1および2に記載の方法や特許文献3にある方法により得ることができる。
特許文献1および2に記載の方法は、部分ケン化ポリ酢酸ビニルと酸無水物とを反応させ、部分ケン化ポリ酢酸ビニルの水酸基を起点としてカルボキシル基をポリマー側鎖に導入し、そのカルボキシル基に不飽和エポキシ化合物を反応させることにより反応性基を導入する方法や、酢酸ビニルと不飽和カルボン酸またはその塩、あるいは不飽和カルボン酸エステルとを共重合させ得られたポリマーを部分ケン化し、このポリマーのもつカルボキシル基と不飽和エポキシ化合物を反応させることにより反応性基を導入する方法である。なかでも前者の方法で得られた部分ケン化ポリ酢酸ビニルが水現像に好適であることから好ましく使用される。
化合物(A)中の反応性基の含有量は、現像時のレリーフ欠けに対する改善効果を高める上で、0.08モル/kg以上存在することが好ましく、0.12以上モル/kg以上であることがより好ましい。一方、印刷版原版の水現像性および水溶解性を維持する上で、0.72モル/kg以下であることが好ましく、0.36モル/kg以下であることがより好ましい。
このようにして得られた反応性基を有する変性部分ケン化ポリ酢酸ビニル(A)は、少なくとも次の(I)、(II)、(III)の構造単位を有する。
Figure 2017049463
反応性基を有する部分ケン化ポリ酢酸ビニル(A)に水現像性が必要なことから、(I)の構造単位が60モル%以上であると水溶性が高く十分な水現像性を得ることができるため好ましく、70モル%以上がより好ましい。また、99モル%以下では十分な水現像性を得ることができるため好ましく、95モル%以下がより好ましい。
一方、特許文献3に記載の反応性基を部分ケン化ポリ酢酸ビニルの側鎖に導入する方法は、部分ケン化ポリ酢酸ビニルとN−メチロール基を有するアクリル系化合物を反応させる方法である。
N−メチロール基を有するアクリル系化合物の配合量は、ポリ酢酸ビニル100質量部に対し、反応性基の十分な反応を得ることができ、現像時のレリーフ欠けなどの効果が発現するため、2質量部以上が好ましく、5質量部以上がより好ましい。また、水溶性が高く、満足するレベルの水現像性が得られるため、40質量部以下が好ましく、30質量部以下がより好ましい。
前記N−メチロール基を有するアクリル系化合物としては、例えば、N−メチロールアクリルアミド、N−メチロールメタクリルアミド、N−メチル−N−メチロールアクリルアミド、N−メチル−N−メチロールメタクリルアミド、N−エチル−N−メチロールアクリルアミド、N−エチル−N−メチロールメタクリルアミドなどを挙げることができるが、特にN−メチロールアクリルアミドやN−メチロールメタクリルアミドが好ましい。これらはそれぞれ単独で用いてもよいし、2種以上組み合わせて用いてもよい。
また、本発明の印刷版原版は、高い見当性を発現するため、(A1)平均重合度が1200〜2600のポリマーを含有する。平均重合度が1200以上では十分な見当性を得ることができ、2600以下とすることで感光性樹脂組成物に必要な溶解性を得ることができるため好ましく、2300以下であることがより好ましい。また、(A1)の含有量は15質量部〜70質量部の範囲が好ましい。15質量部以上であれば高い見当性を得ることができ、70質量部以下であれば感光性樹脂組成物に必要な溶解性を得ることができる。
また、ショアD硬度を調整するため、(A2)平均重合度が400〜800のポリマーを含有することも可能である。平均重合度が400以上であれば十分なレリーフ耐水性を得ることができ、水現像工程でレリーフが欠損することを低減させることができるため好ましい。また、800以下であれば感光性樹脂組成物に必要な溶解性を得ることができるため好ましく、600以下がより好ましい。(A2)の含有量は15質量部〜40質量部の範囲が好ましい。15質量部以上であればショアD硬度が高くなりよりシャープな印刷物を得ることができ、40質量部以下であれば十分な見当性を得ることができる。
(A)成分の平均重合度はJIS K 6726:1994「ポリビニルアルコール試験方法」の「3.試験方法」に記載の平均重合度の測定方法に従って得ることができる。
本発明の(B)成分である塩基性窒素を有するポリアミドは、水溶性であり、結晶化度の高い(A)成分の配合によって生じることの多かった現像時のレリーフ欠けや印刷時のレリーフ欠けの問題を改良 できるものである。塩基性窒素を有するポリアミドは、主鎖または側鎖の一部分に塩基性窒素を含有する重合体である。塩基性窒素とは、アミド基でないアミノ基を構成する窒素原子である。そのようなポリアミドとしては、3級アミノ基を主鎖中に有するポリアミドを挙げることができる。塩基性窒素を有するポリアミドは、塩基性窒素を有する単量体を単独もしくは他の単量体を用いて縮重合、重付加反応などを行い、ポリアミドを得ることができる。塩基性窒素としては、ピペラジンやN,N−ジアルキルアミノ基が好ましく、より好ましくはピペラジンである。本発明で要されるポリアミドを提供するための塩基性窒素を有する単量体とは具体的に挙げるとN,N’−ビス(アミノメチル)−ピペラジン、N,N’−ビス(β−アミノエチル)−ピペラジン、N,N’−ビス(γ−アミノベンジル)−ピペラジン、N−(β−アミノエチル)ピペラジン、N−(β−アミノプロピル)ピペラジン、N−(ω−アミノヘキシル)ピペラジン、N−(β−アミノエチル)−2,5−ジメチルピペラジン、N,N−ビス(β−アミノエチル)−ベンジルアミン、N,N−ビス(γ−アミノプロピル)−アミン、N,N’−ジメチル−N,N’−ビス(γ−アミノプロピル)−エチレンジアミン、N,N’−ジメチル−N,N’−ビス(γ−アミノプロピル)−テトラメチレンジアミンなどのジアミン類、N,N’−ビス(カルボキシメチル)−ピペラジン、N,N’−ビス(カルボキシメチル)−メチルピペラジン、N,N’−ビス(カルボキシメチル)−2,6−ジメチルピペラジン、N,N’−ビス(β−カルボキシエチル)−ピペラジン、N,N−ビス(カルボキシメチル)−メチルアミン、N,N−ビス(β−カルボキシエチル)−エチルアミン、N,N−ビス(β−カルボキシエチル)−メチルアミン、N,N−ジ(β−カルボキシエチル)−イソプロピルアミン、N,N’−ジメチル−N,N’−ビス−(カルボキシメチル)−エチレンジアミン、N,N’−ジメチル−N,N’−ビス−(β−カルボキシエチル)−エチレンジアミンなどのジカルボン酸類あるいはこれらの低級アルキルエステル、酸ハロゲン化物、N−(アミノメチル)−N’−(カルボキシメチル)−ピペラジン、N−(アミノメチル)−N’−(β−カルボキシエチル)−ピペラジン、N−(β−アミノエチル)−N’−(β−カルボキシエチル)−ピペラジン、N−カルボキシメチルピペラジン、N−(β−カルボキシエチル)ピペラジン、N−(γ−カルボキシヘキシル)ピペラジン、N−(ω−カルボキシヘキシル)ピペラジン、N−(アミノメチル)−N−(カルボキシメチル)−メチルアミン、N−(β−アミノエチル)−N−(β−カルボキシエチル)−メチルアミン、N−(アミノメチル)−N−(β−カルボキシエチル)−イソプロピルアミン、N,N’−ジメチル−N−(アミノメチル)−N’−(カルボキシメチル)−エチレンジアミンなどのω−アミノ酸などがある。またこれらの単量体のほかにジアミン、ジカルボン酸、ω−アミノ酸、ラクタムなどと併用して重合することによって本発明のポリアミドができる。
これら塩基性窒素を含有する単量体成分は全ポリアミド構成成分、すなわちアミノカルボン酸単位(原料としてラクタムの場合を含む)、ジカルボン酸単位およびジアミン構造単位の和に対して、10〜100モル%、さらに10〜80モル%であることが好ましい。10モル%以上であると水溶性が高く(A)成分との相溶性がよい。80モル%以下の場合、印刷版の吸水性が適切であり、印刷版の厚み精度を高いレベルで維持できる。
これら(B)成分は、(A)成分100質量部に対して1〜40質量部であることが好ましい。1質量部以上であれば、現像時のレリーフ欠けや印刷時のレリーフ欠けを抑制でき、40質量部以下であれば、印刷版に適したショアD硬度を維持できる。
本発明による(C)成分化合物は、エチレン性二重結合を有する化合物を含有する。(C)成分化合物の具体的な例としては、次のようなものが挙げられるが、これに限定されるものではない。
たとえば、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、3−クロロ−2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、β−ヒドロキシ−β’−(メタ)アクリロイルオキシエチルフタレートなどの水酸基を有する(メタ)アクリレート、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、イソアミル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート等のアルキル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート等のシクロアルキル(メタ)アクリレート、クロロエチル(メタ)アクリレート、クロロプロピル(メタ)アクリレート等のハロゲン化アルキル(メタ)アクリレート、メトキシエチル(メタ)アクリレート、エトキシエチル(メタ)アクリレート、ブトキシエチル(メタ)アクリレート等のアルコキシアルキル(メタ)アクリレート、フェノキシエチルアクリレート、ノニルフェノキシエチル(メタ)アクリレートなどのフェノキシアルキル(メタ)アクリレート、エトキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシトリエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシジプロピレングレコール(メタ)アクリレートなどのアルコキシアルキレングリコール(メタ)アクリレート、(メタ)アクリルアミド、ジアセトン(メタ)アクリルアミド、N,N’−メチレンビス(メタ)アクリルアミドのような(メタ)アクリルアミド類、2、2−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、2,2−ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、2ーヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、3ークロロー2ーヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、などのエチレン性不飽和結合を1個だけ有する化合物、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレートのようなポリエチレングリコールのジ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレートのようなポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメリロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、グリセロールトリ(メタ)アクリレート、エチレングリコールジグリシジルエーテルに不飽和カルボン酸や不飽和アルコールなどのエチレン性不飽和結合と活性水素を持つ化合物を付加反応させて得られる多価(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレートなどの不飽和エポキシ化合物とカルボン酸やアミンのような活性水素を有する化合物を付加反応させて得られる多価(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、フェノキシメチル(メタ)アクリレート、2−(メタ)アクリロイロキシエチルヘキサヒドロフタル酸、フェノキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピル(メタ)アクリレート、2−(メタ)アクリロイロキシエチルフタル酸、ネオペンチルグリコール−(メタ)アクリル酸−安息香酸エステル、(メタ)アクリロイルモルフォリン、スチレン及びその誘導体、ビニルピリジン、N−ビニル−2−ピロリドン、β−(メタ)アクリロイルオキシエチルハイドロゲンフタレート、N−フェニルマレイミド及びその誘導体、N−(メタ)アクリルオキシコハク酸イミド、(メタ)アクリル酸−2−ナフチル、N−フェニル(メタ)アクリルアミド、ジビニルエチレン尿素、ジビニルプロピレン尿素、ビニルカプロラクタム、ビニルカルバゾル、ビシクロペンテニル(メタ)アクリレート、1−ビニルイミダゾール、2−メチル−1−ビニルイミダゾール、(2−メチル−エチルジオキソラン−4−イル)メチルアクリレート、イミドアクリレート、[4−(ヒドロキシメチル)シクロヘキシル]メチル(メタ)アクリレート、(2−オキシ−1,3−ジオキソランー4−イル)メチル(メタ)アクリレート、2−(オキシジイミダゾリジン−1−イル)エチル(メタ)アクリレート、2,2、6,6−テトラメチル−4−ピペリジルアクリレートなどの5〜7員環とエチレン性二重結合を有する化合物や、5〜7員環と重合可能なエチレン性二重結合を有する化合物が、複素環や分子内に少なくとも1つ以上の水酸基、カルボキシル基、アミノ基から選ばれる官能基を有する化合物、メチレンビス(メタ)アクリルアミドなどの多価(メタ)アクリルアミド、ジビニルベンゼンなどの多価ビニル化合物、などの2つ以上のエチレン性不飽和結合を有する化合物、などが挙げられる。
これら(C)成分化合物の含有量は(A)成分100質量部に対して、5〜200 質量部であることが好ましい。5質量部以上であれば、高い画像再現性が得られ、200質量部以下であれば感光性樹脂組成物を容易に成形することができる。
また、5〜7員環とエチレン性二重結合を有する化合物の場合、5〜7員環は嵩高い置換基であるため、5〜7員環を有する化合物は、分子運動の障壁が高くなる。そのため、感光性樹脂組成物に配合した場合、5〜7員環と重合可能なエチレン性二重結合を有する化合物のまわりの化合物の分子運動も制限されるため、(A)成分の結晶化を抑制し、印刷中の繰り返しの衝撃力に対して耐性が向上することが期待される。また、分子内に5〜7員環と重合可能なエチレン性二重結合を有する化合物が、複素環や分子内に少なくとも1つ以上の水酸基、カルボキシル基、アミノ基から選ばれる官能基を有することで(A)成分の水酸基と水素結合により相互作用し、(A)成分の結晶化を抑制する効果が向上すると共に、(A)成分との相溶性が良くなる。
分子内に5〜7員環とエチレン性二重結合を有する化合物は、数平均分子量が100以上300以下の範囲が好ましい。分子量が100以上であれば十分な光重合速度を得られるため好ましい。また、300以下であれば(A)成分と高い相溶性が得られるため好ましい。
また、本発明の感光性樹脂層には、画像再現性を調整するために、(C)成分化合物以外のエチレン性二重結合を有する化合物を含有しても良い。
また、感光性樹脂組成物中に(D)成分である光重合開始剤を加えるのが一般的である。光重合開始剤としては、光によって重合性の炭素−炭素不飽和基を重合させることができるものであれば全て使用できる。なかでも、光吸収によって、自己分解や水素引き抜きによってラジカルを生成する機能を有するものが好ましく用いられる。例えば、ベンゾインアルキルエーテル類、ベンゾフェノン類、アントラキノン類、ベンジル類、アセトフェノン類、ジアセチル類などある。
光重合開始剤の配合量としては、(A)成分100質量部に対して0.1〜20質量部の範囲が好ましい。
本発明の感光性樹脂組成物に相溶性、柔軟性を高めるための相溶助剤として多価アルコール類を添加することも可能である。このような多価アルコール類としては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、グリセリン及びその誘導体、トリメチロールプロパン及びその誘導体、トリメチロールエタンおよびその誘導体、ペンタエリスリトールおよびその誘導体などの多価アルコール類を添加することも可能であるが挙げられる。
これらの多価アルコールは、感光性樹脂組成物全体に対して、30質量%以下であることが好ましい。特に相溶性が向上することで、樹脂組成物の濁り、低分子量成分のブリードアウトを抑制できる。
本発明の感光性樹脂組成物の熱安定性を上げる為に、従来公知の重合禁止剤を添加することができる。好ましい重合禁止剤としては、フェノール類、ハイドロキノン類、カテコール類、ヒドロキシアミン誘導体などが挙げられる。
これらの配合量は、全感光性樹脂組成物に対して、0.001〜5質量%の範囲で使用することが一般的である。
また、他の成分として、染料、顔料、界面活性剤、消泡剤、紫外線吸収剤、香料などを添加することができる。
次に、本発明の印刷版原版について説明する。本発明の印刷版原版は、少なくとも支持体(E)と、前記本発明の感光性樹脂組成物から形成した感光性樹脂層(F)を有する。
支持体(E)としては、ポリエステルなどのプラスチックシートやスチレン−ブタジエンゴムなどの合成ゴムシート、スチール、ステンレス、アルミニウムなどの金属板を使用することができる。
支持体の厚さは特に限定されないが、取扱性、柔軟性の観点から100〜350μmの範囲が好ましい。100μm以上であれば支持体としての取扱性が向上し、350μm以下であれば印刷版原版としての柔軟性が向上する。また、さらに柔軟性を向上させるため、内部に気泡を形成し密度を減少させたプラスチックシートなども使用することができる。
支持体の弾性は5〜50gが好ましく、より好ましくは10〜25gの範囲である。5g以上であれば支持体としての取扱性が向上し、50g以下であれば版胴への貼付、版胴からの剥離などの工程で高い作業性を得ることができる。
支持体(E)は、感光性樹脂層(F)との接着性を向上させる目的で、易接着処理されていることが好ましい。易接着処理の方法としては、サンドブラストなどの機械的処理、コロナ放電などの物理的処理、コーティングなどによる化学的処理などが例示できるが、コーティングにより易接着層(G)を設けることが接着性の観点から好ましい。
感光性樹脂層(F)は、本発明の感光性樹脂組成物から形成される。感光性樹脂層(F)の厚さは、十分なレリーフ深度を有し印刷適性を向上させる観点から、0.3mm以上が好ましく、0.5mm以上がより好ましい。一方、露光に用いられる活性光線を底部まで十分に到達させて画像再現性をより向上させる観点から、5mm以下が好ましく、3mm以下がより好ましい。
本発明の印刷版原版は、表面保護、異物等の付着防止の観点から、感光性樹脂層(F)上にカバーフィルム(H)を有することが好ましい。感光性樹脂層(F)はカバーフィルム(H)と直接接していてもよいし、感光性樹脂層(F)とカバーフィルム(H)の間に1層または複数の層を有していてもよい。感光性樹脂層(F)とカバーフィルム(H)の間の層としては、例えば、感光性樹脂層表面の粘着を防止する目的で設けられる粘着防止層などが挙げられる。
カバーフィルム(H)の材質は特に限定されないが、ポリエステル、ポリエチレンなどのプラスチックシートが好ましく使用される。カバーフィルム(H)の厚さは特に限定されないが、10〜150μmの範囲が取扱性、コストの観点から好ましい。またカバーフィルム表面は、原画フィルムの密着性向上を目的として粗面化されていてもよい。
本発明の印刷版原版は、さらに感熱マスク層(I)を有してもよい。感熱マスク層(I)は、紫外光を事実上遮断し、描画時には赤外レーザー光を吸収し、その熱により瞬間的に一部または全部が昇華または融除するものが好ましい。これによりレーザーの照射部分と未照射部分の光学濃度に差が生じ、従来の原画フィルムと同様の機能を果たすことができる。
ここで、紫外光を遮断する機能を有するというのは、感熱マスク層(I)の光学濃度が2.5以上のことを指し、3.0以上であることがより好ましい。光学濃度は一般にDで表され、以下の式で定義される。D=log10(100/T)=log10(I/I)(ここでTは透過率(%)、Iは透過率測定の際の入射光強度、Iは透過光強度である。)
光学濃度の測定には、入射光強度を一定にして透過光強度の測定値から算出する方法と、ある透過光強度に達するまでに必要な入射光強度の測定値から算出する方法が知られているが、本発明における光学濃度は前者の透過光強度から算出した値をいう。
光学濃度は、オルソクロマチックフィルターを用いてマクベス透過濃度計「TR−927」(コルモルゲンインスツルメンツ(Kollorgen Instruments Corp.)社製)を用いることで測定することができる。
感熱マスク層(I)の好ましい具体例としては、赤外線吸収物質を分散させた樹脂を例示することができる。赤外線吸収物質としては、赤外光を吸収して熱に変換し得る物質であれば、特に限定されるものではない。例えば、カーボンブラック、アニリンブラック、シアニンブラック等の黒色顔料、フタロシアニン、ナフタフロシアニン系の緑色顔料、ローダミン色素、ナフトキノン系色素、ポリメチン系染料、ジイモニウム塩、アゾイモニウム系色素、カルコゲン系色素、カーボングラファイト、鉄粉、ジアミン系金属錯体、ジチオール系金属錯体、フェノールチオール系金属錯体、メルカプトンフェノール系金属錯体、アリールアルミニウム金属塩類、結晶水含有無機化合物、硫酸銅、硫化クロム、珪酸塩化合物、酸化チタン、酸化バナジウム、酸化マンガン、酸化鉄、酸化コバルト、酸化タングステン等の金属酸化物、これらの金属の水酸化物、硫酸塩、さらにビスマス、スズ、テルル、鉄、アルミの金属粉などが挙げられる。
これらの中でも、光熱変換率および経済性、取り扱い性、および後述する紫外線吸収機能の面から、カーボンブラックが特に好ましい。バインダーとなる樹脂成分としては特に限定されないが、感熱マスク層(I)の安定性や耐傷性の観点から熱硬化性樹脂が好ましく使用できる。
本発明の印刷版原版は、感光性樹脂層(F)と感熱マスク層(I)との間に接着力調整層(J)を有してもよい。接着力調整層(J)は、ケン化度30モル%以上の部分ケン化ポリ酢酸ビニル、ポリアミドなどの水溶解性および/または水分散性の樹脂を含有することが好ましい。また、接着力調整層(J)には、接着力を最適化するための樹脂類やモノマー類、塗工性や安定性を確保するための界面活性剤や可塑剤などの添加剤を含有させてもよい。
接着力調整層(J)の膜厚は15μm以下が好ましく、0.1μm以上5μm以下がより好ましい。15μm以下であれば、紫外光を露光した際の該層による光の屈折や散乱が抑制され、よりシャープなレリーフ画像が得られる。また、0.1μm以上であれば、接着力調整層(J)の形成が容易となる。
本発明の印刷版原版は、感熱マスク層(I)の上に剥離補助層(K)を有してもよい。剥離補助層(K)は好ましくは感熱マスク層(F)とカバーフィルム(H)の間に設けられる。剥離補助層(K)は、印刷版原版から剥離補助層(K)のみまたはカバーフィルム(H)のみまたはカバーフィルム(H)および剥離補助層(K)の両方を容易に剥離せしめる機能を有することが好ましい。カバーフィルム(H)と感熱マスク層(I)が隣接して積層されており、両層間の接着力が強い場合、カバーフィルム(H)が剥離できないあるいは剥離した際に感熱マスク層(I)がカバーフィルム(H)側に一部接着したまま残留し、感熱マスク層(I)に抜けが生じる可能性がある。
したがって、剥離補助層(K)は、感熱マスク層(I)との接着力が強く、カバーフィルム(H)との接着力が剥離可能な程度に弱い物質、あるいは感熱マスク層(I)との接着力が剥離可能な程度に弱く、カバーフィルム(H)との接着力が強い物質から構成されることが好ましい。なお、カバーフィルム(H)を剥離した後、剥離補助層(K)は感熱マスク層(I)側に残留して最外層になる場合があるので、取り扱いの面から粘着質でないことや、該層を通して紫外光露光されるため実質透明であることが好ましい。
剥離補助層(K)に使用される材料としては、例えば、ポリビニルアルコール、ポリ酢酸ビニル、部分ケン化ポリビニルアルコール、ヒドロキシアルキルセルロース、アルキルセルロース、ポリアミド樹脂などを挙げることができ、水に溶解または分散可能で粘着性の少ない樹脂を主成分とすることが好ましい。これらの中で、粘着性の面から、ケン化度60〜99モル%の部分ケン化ポリビニルアルコール、アルキル基の炭素数が1〜5のヒドロキシアルキルセルロースおよびアルキルセルロースが特に好ましく用いられる。
剥離補助層(K)はさらに、赤外線で融除しやすくするために、赤外線吸収物質を含有してもよい。赤外線吸収物質としては、感熱マスク層(I)で例示したものを使用することができる。また、塗工性や濡れ性、剥離性向上のために界面活性剤を含有してもよい。特にリン酸エステル系の界面活性剤を剥離補助層(K)に含有するとカバーフィルム(H)からの剥離性が良化する。
剥離補助層(K)の膜厚は6μm以下が好ましく、0.1μm以上1μm以下がより好ましい。1μm以下であれば、下層の感熱マスク層(I)のレーザー融除性を損なうことがない。また、0.1μm以上であれば剥離補助層(K)の形成が容易である。
次に、本発明の感光性樹脂組成物およびそれを用いた印刷版原版の製造方法について説明する。例えば、(A)成分、(B)成分を、水/アルコール混合溶媒に加熱溶解した後に、(C)エチレン性不飽和化合物、(D)光重合開始剤および必要に応じて可塑剤その他の添加剤等を添加し、撹拌して十分に混合し、感光性樹脂組成物溶液を得る。
得られた感光性樹脂組成物溶液を、必要により易接着層(G)を有する支持体(E)に流延し、乾燥して感光性樹脂組成物からなる感光性樹脂層(F)を形成する。その後、必要により粘着防止層を塗布したカバーフィルム(H)を感光性樹脂層(F)上に密着させることで印刷版原版を得ることができる。また、乾燥製膜により感光性樹脂シートを作製し、支持体(E)とカバーフィルム(H)で感光性シートを挟み込むようにラミネートすることでも印刷版原版を得ることができる。
印刷版原版が感熱マスク層(I)を有する場合、感熱マスク層(I)の形成方法は特に限定されないが、例えば、カーボンブラックを分散させた樹脂を適当な溶媒で溶解・希釈し、感光性樹脂層(F)上に塗布して溶媒を乾燥することにより、感熱マスク層(I)を形成することができる。また、前述のカーボンブラック溶液を一旦カバーフィルム(H)に塗布し、このカバーフィルム(H)と支持体(E)で感光性樹脂層(F)を挟み込むようにラミネートすることでも感熱マスク層(I)を形成することができる。
印刷版原版が接着力調整層(J)を有する場合、接着力調整層(J)の形成方法は特に限定されないが、薄膜形成の簡便さから、接着力調整層(J)成分を溶媒に溶解した溶液を感熱マスク層(I)上に塗布し、溶媒を除去する方法が特に好ましく行われる。溶媒の除去方法としては、例えば熱風乾燥、遠赤外線乾燥、自然乾燥などを挙げることができる。接着力調整層(J)成分を溶解する溶媒は特に限定されないが、水やアルコール、または水とアルコールの混合物が好ましく使用される。水やアルコールを使用した場合、感熱マスク層(I)が水不溶性であると、感熱マスク層(I)上に塗布しても感熱マスク層(I)が浸食を受けることがないため好ましい。
印刷版原版が剥離補助層(K)を有する場合、剥離補助層(K)の形成方法は特に限定されないが、薄膜形成の簡便さから、剥離補助層(K)成分を溶媒に溶解した溶液をカバーフィルム(H)上に塗布し、溶媒を除去する方法が特に好ましく行われる。溶媒の除去方法としては、例えば熱風乾燥、遠赤外線乾燥、自然乾燥などを挙げることができる。剥離補助層(K)成分を溶解する溶媒は特に限定されないが、水やアルコール、または水とアルコールの混合物が好ましく使用される。
次に、本発明の印刷版について説明する。本発明の印刷版は、前述の本発明の印刷版原版を露光および現像することにより得られる。
例えば、印刷版原版が感熱マスク層(I)を具備しない場合(以下アナログ版と呼ぶ)、カバーフィルム(H)を具備する場合はこれを剥離した感光性樹脂層(F)上にネガティブまたはポジティブの原画フィルムを密着させ、紫外線照射することによって、感光性樹脂層(F)を光硬化させる。また、印刷版原版が感熱マスク層(I)を具備するいわゆるCTP(コンピュータ・トゥ・プレート)版の場合は、カバーフィルム(H)を剥離後、レーザー描画機を用いて原画フィルムに相当する像の描画を実施した後、紫外線照射することによって、感光性樹脂層(F)を光硬化させる。紫外線照射は、通常300〜400nmの波長を照射できる高圧水銀灯、超高圧水銀灯、メタルハライドランプ、キセノン灯、カーボンアーク灯、ケミカル灯などを用いて行う。特に微細な細線、独立点の再現性が要求される場合は、カバーフィルム(H)の剥離前に支持体(E)側から短時間露光(裏露光)することも可能である。
次に、印刷版原版を現像液に浸漬し、未硬化部分をブラシで擦りだして除去するブラシ式現像装置により基板上にレリーフ像を形成する。また、ブラシ式現像装置の他にスプレー式現像装置を使用することも可能である。現像液は水または界面活性剤を添加した水を用いることができる。
なお、現像時の液温は15〜40℃が好ましい。レリーフ像形成後、50〜70℃において10分間程度乾燥し、必要に応じてさらに大気中ないし真空中で活性光線処理して印刷版を得ることができる。
また、印刷版のショアD硬度は45〜65°の範囲が好ましい。この範囲であれば、凸版方式による輪転式印刷機や間欠式輪転印刷機、平台式印刷機などを用いたラベル印刷やフィルム印刷などでシャープな印刷物を得ることができる。ヤング率は50〜120MPaの範囲が好ましい。50MPa以上であればドットゲインの少ない印刷物を得ることができ、120MPa以下であれば高い見当性を得ることができる。破断点伸度は250〜650%が好ましい。250%以上であれば印刷後の印刷版を保管しても印刷面に割れが発生せず再使用することができ、650%以下であれば、印刷物のドットが印刷方向に伸長されることなく正確な印刷物を得ることができる。
印刷版の弾性は10〜140gの範囲が好ましく、より好ましくは15〜110gの範囲である。10g以上であれば取扱い性を向上させることができ、140g以下であれば版胴への貼付、版胴からの剥離などの工程で高い作業性を得ることができる。
また、印刷版が版胴に沿いやすい形状に癖をつける方法として、プリカービングすることも可能である。紙管や塩化ビニル製パイプのような円筒状管に印刷版の支持体が管側となるように巻き付けた状態で保持し、熱風乾燥機などを用いて熱を与えて曲率をつけることができる。雰囲気温度は70℃〜120℃が好ましい。70℃を下回ると支持体に多く使用されるPET樹脂の軟化点が約70℃であるため癖がつきにくく、120℃を超える温度では感光性樹脂から成分が揮発する可能性がある。
次に、印刷用版胴に印刷版を貼り付ける。支持体がフィルムの場合、版胴に両面テープを貼り、その上に印刷版の支持体を版胴側にして貼り合わせる。支持体がスチールの場合、マグネット版胴に貼付することや、クランプで印刷版の端部を把持して固定することも可能である。
なお、本発明の感光性樹脂組成物は、凸版印刷用に用いることが最も適しているが、平版印刷用、凹版印刷用、孔版印刷用、フォトレジストとして使用することも可能である。
以下、本発明を実施例で詳細に説明する。
<変性部分ケン化ポリ酢酸ビニルの変性>
合成例1:
日本合成化学工業(株)製の部分ケン化ポリ酢酸ビニル“KL−05”(平均重合度約500、ケン化度80モル%)をアセトン中で膨潤させ、無水コハク酸1.0モル%を添加し、60℃で6時間撹拌して分子鎖にカルボキシル基を付加させた。このポリマーをアセトンで洗浄して未反応の無水コハク酸を除去乾燥した。酸価を測定したところ、10.0mgKOH/gであった。このポリマー100質量部をエタノール/水=30/70(重量比)の混合溶媒200質量部に80℃で溶解した。ここにグリシジルメタクリレートを6質量部添加して部分ケン化ポリ酢酸ビニル中に反応性基を導入した。電位差滴定法による分析結果からポリマー中のカルボキシル基がグリシジルメタクリレートのエポキシ基と反応しポリマー側鎖中にメタクロイル基が導入されたことを確認し、(A)成分である変性部分ケン化ポリ酢酸ビニルを得た。また、部分ケン化ポリ酢酸ビニルの平均重合度約2200を用いて上記方法で反応させ、平均重合度2200の変性部分ケン化ポリ酢酸ビニルを得た。(A)成分の平均重合度はJIS K 6726:1994「ポリビニルアルコール試験方法」の「3.試験方法」に記載の平均重合度の測定方法に従って確認した。すなわち、けん化されていない部分(残存酢酸基)をあらかじめ40℃±2℃の水浴中で水酸化ナトリウムを用いて完全にけん化した。水との相対粘度は測定温度を25℃±0.1℃としオストワルド粘度計を用いて測定し、「3.試験方法」に記載の計算式によって算出した。その結果を用いて「3.試験方法」に記載の計算式によって平均重合度を算出した。
<塩基性窒素を有するポリアミドの合成>
合成例2:
ε−カプロラクタム10質量部、N−(2−アミノエチル)ピペラジンとアジピン酸のナイロン塩90質量部および水100質量部をステンレス製オートクレーブに入れ、内部の空気を窒素ガスで置換した後に180℃で1時間加熱し、ついで水分を除去して水溶性ポリアミド樹脂である塩基性窒素を有するポリアミドを得た。
(C)化合物、(D)成分には表1記載のものを使用した。表1に実施例と比較例の各成分の配合量と使用した支持体について示す。
Figure 2017049463
<易接着層(G)を有する支持体(E)の作製>
“バイロン”(登録商標)31SS(不飽和ポリエステル樹脂のトルエン溶液、東洋紡績(株)製)260重慮部および“PS−8A”(ベンゾインエチルエーテル、和光純薬工業(株)製)2質量部の混合物を70℃で2時間加熱後30℃に冷却し、エチレングリコールジグリシジルエーテルジメタクリレート7質量部を加えて2時間混合した。さらに、“コロネート”(登録商標)3015E(多価イソシアネート樹脂の酢酸エチル溶液、日本ポリウレタン工業(株)製)25質量部および“EC−1368”(工業用接着剤、住友スリーエム(株)製)14質量部を添加して混合し、易接着層(G)用塗工液1を得た。
“ゴーセノール”(登録商標)KH−17(ケン化度78.5〜81.5モル%のポリビニルアルコール、日本合成化学工業(株)製)50質量部を“ソルミックス”(登録商標)H−11(アルコール混合物、日本アルコール(株)製)200質量部および水200質量部の混合溶媒中70℃で2時間混合した後、“ブレンマー”(登録商標)G(グリシジルメタクリレート、日本油脂(株)製)1.5質量部を添加して1時間混合し、さらに(ジメチルアミノエチルメタクリレート)/(2−ヒドロキシエチルメタクリレート)重量比2/1の共重合体(共栄社化学(株)製)3質量部、“イルガキュア”(登録商標)651(ベンジルメチルケタール、チバ・ガイギー(株)製)5質量部、“エポキシエステル70PA”(プロピレングリコールジグリシジルエーテルのアクリル酸付加物、共栄社化学(株)製)21質量部およびエチレングリコールジグリシジルエーテルジメタクリレート20質量部を添加して90分間混合し、50℃に冷却後、“メガファック F−470”(DIC(株)製)を0.1質量部添加して30分間混合して易接着層(G)用塗工液2を得た。
厚さ188μmの“ルミラー”(登録商標)T60(ポリエステルフィルム、東レ(株)製)、厚さ188μmの“ルミラー”(登録商標)E6SR(ポリエステルフィルム、東レ(株)製)上に易接着層(G)用塗工液1を乾燥後膜厚が40μmになるようにバーコーターで塗布し、180℃のオーブンで3分間加熱して溶媒を除去した後、その上に易接着層(G)用塗工液2を乾燥膜厚が30μmとなるようにバーコーターで塗布し、160℃のオーブンで3分間加熱して、易接着層(G)を有する支持体(E)を得た。
<カバーフィルム(H1)の作製>
表面粗さRaが0.1〜0.6μmとなるように粗面化された厚さ100μmの“ルミラー”S10(ポリエステルフィルム、東レ(株)製)に、“ゴーセノール”AL−06(ケン化度91〜94モル%の部分ケン化ポリビニルアルコール、日本合成化学工業(株)製)を乾燥膜厚が1μmとなるように塗布し、100℃で25秒間乾燥し、アナログ版用のカバーフィルムH1を得た。
[評価方法]
各実施例および比較例における評価は、次の方法で行った。
(1)画像再現性
10cm×10cmのアナログ版印刷版原版からカバーフィルム(H1)のポリエステルフィルムのみを剥離し(剥離後の印刷版原版の最表面は乾燥膜厚1μmの部分ケン化ポリビニルアルコール層)、感度測定用グレースケールネガフィルムおよび画像再現性評価用ネガフィルム(150線4%網点、φ200独立点を有する)を真空密着させ、ケミカル灯FL20SBL−360 20ワット(三菱電機オスラム(株)製)でグレースケール感度16±1段となる条件で露光した(主露光)。その後、現像液温25℃の水でブラシ式現像装置により現像し、60℃で10分間乾燥した後、さらにケミカル灯FL20SBL−360 20ワット(三菱電機オスラム(株)製)で主露光と同条件で後露光し、画像再現性評価用印刷版を得た。
得られた印刷版について、以下の方法で網点、独立点を評価した。
網点:1cm×1cmの領域に形成された150線4%の網点を倍率20倍の拡大鏡を用いて観察し、ネガを密着した位置に網点が再現しているかどうかを以下の点数基準で判定し、4点以上であれば合格とした。
5:欠けなし
4:最外周部エリアの網点に欠けが見られる
3:最外周部および最外周から2列目のエリアに欠けが見られる
2:最外周から3列目を含む内部のエリアに欠けが見られる
1:全網点エリアの20%以上の面積に欠けが見られる。
独立点:φ200μmの独立点3個を目視観察し、独立点が再現されている数を計数した。3つ全てが再現していれば合格とした。
(2)ショアD硬度
10cm×10cmの印刷原版からカバーフィルムGのポリエステルフィルムを剥離し、ケミカル灯FL20SBL−360 20ワット(三菱電機オスラム(株)製)を備えた製版装置DX−A3(タカノ(株)製)で、大気下で、全面露光(露光量:2400mJ/cm)して硬さ評価用印刷版を作製した。その後、タイプDデュロメータを用いて、JIS K7215に規定される方法でデュロメータ硬さを測定した。
(3)ヤング率
10cm×10cmの感光性樹脂組成物を用いた厚さ600μmのシート(感光性樹脂シート)をケミカル灯FL20SBL−360 20ワット(三菱電機オスラム(株)製)を備えた製版装置DX−A3(タカノ(株)製)で、大気下で、全面露光した(露光量:2400mJ/cm)。次いで、製版装置のブラシを備えた現像糟で25℃の水道水により1.5分間現像を行い、その後、60℃で10分間乾燥した。再度ケミカル灯で、大気下で、全面露光(露光量:2400mJ/cm)し、樹脂シートを作製した。その後、SD型レバー式試料裁断器(ダンベル(社)製)を用いて、平行部巾10mm、平行部長さ20mmを有する形状に断裁し、測定用シートを作製した。
その後、100kgfのロードセルを備えた、テンシロン万能材料試験機RTM−100(オリエンテック(株)製)で、1cmのチャック間隔に測定用シートの平行部をセットし、100mm/minの速度で引っ張り、ヤング率を測定した。
(4)破断点伸度
ヤング率と同様の方法にて、破断点伸度を測定した。
(5)支持体、印刷版の弾性
100mm×150mmの支持体を、電子天秤FX−120i(A&D(株)製)の上に100mm辺が接触するように垂直に置き、100mm辺同士の距離が垂直に50mmになるよう上辺の100mm辺を押さえて屈曲させ、重量(g)を測定した。
印刷版の場合、100mm×150mmのアナログ版印刷版原版を用いて、絵柄が異なるネガを用いること以外は(1)画像再現性と同様の方法で全面ベタレリーフの弾性評価用印刷版を得た。それを用いて、弾性測定と同様の方法で、印刷面を外側に向けて屈曲させて重量を測定した。
(6)見当性の評価
100mm×240mmのアナログ版印刷版原版からカバーフィルム(H1)のポリエステルフィルムのみを剥離し、ネガフィルムを真空密着させ、ケミカル灯FL20SBL−360 20ワット(三菱電機オスラム(株)製)でグレースケール感度16±1段となる条件で露光した。その後、現像液温25℃の水でブラシ式現像装置により現像し、60℃で10分間乾燥した後、さらにケミカル灯FL20SBL−360 20ワット(三菱電機オスラム(株)製)で主露光と同条件で後露光し、図1記載の印刷版を得た。その後、直径75mmの金属製シリンダーに両面テープDF715(東洋インキ(株)製)を貼り、その上に上記印刷版を100mm辺が対峙するように巻き付けて貼付し、隣り合う100mm辺と100mm辺の間隔をスケール付25倍ルーペで測定した。
[実施例1]
<感光性樹脂組成物溶液1の調整>
攪拌用ヘラおよび冷却管を取り付けた3つ口フラスコ中に、表に示す(A)成分及び(B)成分を添加し、“ソルミックス”(登録商標)H−11(アルコール混合物、日本アルコール(株)製)50質量部および水50質量部の混合溶媒を混合した後、攪拌しながら90℃2時間加熱し、溶解させた。70℃に冷却した後、その他の成分を添加し、30分攪拌し、感光性樹脂組成物溶液1を得た。
表2に実施例、比較例の(A)成分の配合比率を示す。
Figure 2017049463
<感光性樹脂シート1の製造>
ポリエステルフィルムに感光性樹脂組成物1用の組成物溶液1を流延させ、60℃で2時間乾燥し、フィルムを剥がして、650μmの感光性樹脂シート1を得た。感光性樹脂シート1の膜厚は、基板上に所定の厚みのスペーサーをはみ出している部分の組成物溶液1を、水平な金尺で掻き出すことによって行った。
<印刷版原版1の製造>
得られた感光性樹脂組成物溶液を、前記易接着層(G)を有する支持体(E)に流延し、60℃で2.5時間乾燥した。このとき乾燥後の版厚(ポリエステルフィルム+感光性樹脂層)が0.95mmとなるよう調節した。このようにして得られた感光性樹脂層上に、水/エタノール=50/50(重量比)の混合溶剤を塗布し、表面に前記アナログ版用のカバーフィルム(H1)を圧着し、感光性印刷原版を得た。得られた感光性印刷原版を用いて、前記方法により印刷版の特性を評価した結果を表3に示す。
[実施例2〜4、比較例1および2]
感光性樹脂組成物の組成と支持体を表2および3のとおり変更した以外は実施例1と同様にして感光性樹脂シートおよび感光性印刷原版を作製した。評価結果を表3に示す。
Figure 2017049463
1 ベタレリーフ部(着色部)
2 非画像部(無色部)

Claims (5)

  1. (A)反応性基を側鎖に有する変性部分ケン化ポリ酢酸ビニル、
    (B)塩基性窒素を有するポリアミド、
    (C)エチレン性二重結合を有する化合物、
    (D)光重合開始剤、を含有し、
    光硬化後のショアD硬度が45〜65であり、ヤング率が170MPa以下、破断点伸度が250%以上の感光性樹脂組成物。
  2. 前記(A)反応性基を側鎖に有する変性部分ケン化ポリ酢酸ビニルとして、平均重合度が1000〜2600の(A1)を含有する、請求項1に記載の感光性樹脂組成物。
  3. 支持体上に請求項1または2に記載の感光性樹脂組成物を用いて形成された感光性樹脂層を有する、感光性樹脂印刷版原版。
  4. 弾性が5〜50gの支持体を有する、請求項3に記載の感光性樹脂印刷版原版。
  5. 光硬化したときの感光性樹脂印刷版の弾性が10〜140gである、請求項3または4に記載の感光性樹脂印刷版原版。
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