JP2016108581A - 透明導電体の製造方法 - Google Patents

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一成 多田
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Abstract

【課題】本発明の課題は、生産効率(成膜速度)が高く、光透過性に優れ、かつ高温高湿環境下での耐湿性に優れた透明導電体を製造する透明導電体の製造方法を提供することである。【解決手段】本発明の透明導電体の製造方法は、透明基板上に、少なくとも第1高屈折率層、透明金属層及び第2高屈折率層をこの順に形成する透明導電体の製造方法であって、前記第1高屈折率層に硫化物を含有させ、前記第2高屈折率層に金属酸化物を含有させ、かつ前記第1高屈折率層、透明金属層及び第2高屈折率層の全ての層を、蒸着法により形成することを特徴とする。【選択図】図1

Description

本発明は、透明導電体の製造方法に関する。より詳しくは、生産性が高く、高い光透過性と、高温高湿環境下に保存した際の耐久性に優れた透明導電体を製造する透明導電体の製造方法に関する。
近年、液晶ディスプレイやプラズマディスプレイ、無機及び有機エレクトロルミネッセンス(electroluminescence:EL)ディスプレイ等の表示装置、タ
ッチパネル、太陽電池等の各種装置に透明導電体が使用されている。
タッチパネル型の表示装置等では、表示素子の画像表示面上に、透明導電体を含む配線が配置される。したがって、透明導電体には、光の透過性が高いことが求められる。このような各種表示装置には、光透過性の高いITO(インジウム・スズ酸化物)を用いた透明導電体が多用されている。
そのような中で、静電容量方式のタッチパネル表示装置が開発され、透明導電体の表面電気抵抗を更に低くすることが求められている。しかし、従来のITO膜では、表面電気抵抗を十分に下げられないという問題があった。
そこで、透明金属層として銀蒸着層(以下、Ag層ともいう。)を適用した方法の検討が盛んになされている。
例えば、特許文献1には、ガラス基板やフレキシブル基板上に、スパッタリング法により、ZnS−SiO層、銀層、ZnS−SiO層を積層して作製する多層導電性薄膜の製造方法が開示されている。この方法によれば、良好な光学的及び電気的特性を得るため、温度として200℃でアニール処理をすることにより、低いシート抵抗値と、高い光透過率を得ることができるとされ、更に高湿安定性も良好であると報告がなされている。しかしながら、銀層に隣接して設けられるZnS・SiO層は絶縁層であるため、タッチパネル用の透明導電体としては適用することができない、また、銀層の両面に隣接して設けているZnS・SiO層にはい硫黄原子が含有されており、この硫黄原子による硫化を銀層が受け、黄変等により光透過率が低下するという問題を抱えている。加えて、特許文献1で開示されている方法では、構成層の全層を、マグネトロンスパッタあるいはRF(高周波)スパッタを適用した成膜方法であり、成膜速度が低く、生産効率に劣るという問題がある。
また、非特許文献1においては、透明導電体の光透過性を高めるため、銀層を屈折率の高い膜(例えば、Nb(酸化ニオブ)、IZO(インジウム・亜鉛酸化物)、ICO(インジウム・セリウム酸化物)、a−GIO(ガリウム・インジウム酸化物)等からなる膜)で挟み込む構成も提案されている。非特許文献2で開示されている構成の透明導電体では、銀層を高出力で成膜することにより光透過性に関しては良好なIZO層を得ることができるが、非特許文献1で開示されている方法も、Nb、銀層、IZO層の全てが、スパッタ法で成膜されている方法であり、成膜速度が低く、生産効率に劣るという問題がある。
また、非特許文献2では、Ag層を、硫化亜鉛を含有する層(以下、ZnS含有層又は硫化亜鉛含有層ともいう。)で挟み込むことが提案されている。
非特許文献2で開示されている方法では、全て蒸着法を用いて成膜しており、生産性という観点では問題はないが、上記構成の透明導電体では、透明基板とZnS含有層との密着性が不十分であり、かつ通電性としても不十分である。
中国特許第102677012号明細書
Transparent Conductive Film Nb2O5/Ag/IZO with an Anti−Reflection Design,Ywh−Tarng Leu,et al.,SID 2012 DIGEST p.352−353 Xuanjie Liu,et al.,2003,Thin Solid Films 441,200−206
本発明は、上記問題に鑑みてなされたものであり、その解決課題は、生産効率(成膜速度)が高く、光透過性に優れ、かつ高温高湿環境下での耐湿性に優れた透明導電体を製造する透明導電体の製造方法を提供することである。
本発明者は、上記課題に鑑み鋭意検討を進めた結果、透明基板上に、少なくとも硫化物を含有する第1高屈折率層、透明金属層及び、金属酸化物を含有する第2高屈折率層をこの順で形成する製造方法であって、少なくとも前記第1高屈折率層に硫化物を含有させ、前記第2高屈折率層に金属酸化物を含有させ、かつ前記第1高屈折率層、透明金属層及び第2高屈折率層の全ての層を、蒸着法により形成することを特徴とする透明導電体の製造方法により、高い生産効率(成膜速度)で、光透過性及び高温高湿環境下での耐湿性に優れた透明導電体を製造することができることを見出し、本発明に至った。
すなわち、本発明に係る上記課題は、以下の手段により解決される。
1.透明基板上に、少なくとも第1高屈折率層、透明金属層及び第2高屈折率層をこの順に形成する透明導電体の製造方法であって、
前記第1高屈折率層に硫化物を含有させ、前記第2高屈折率層に金属酸化物を含有させ、
かつ前記第1高屈折率層、透明金属層及び第2高屈折率層の全ての層を、蒸着法により形成することを特徴とする透明導電体の製造方法。
2.前記透明金属層と前記第2高屈折率層との間に、酸化スズを含有する中間層を蒸着法により形成することを特徴とする第1項に記載の透明導電体の製造方法。
3.前記第2高屈折率層に、酸化スズを含有させることを特徴とする第1項又は第2項に記載の透明導電体の製造方法。
4.前記第1高屈折率層に、前記硫化物として硫化亜鉛を含有させることを特徴とする第1項から第3項までのいずれか一項に記載の透明導電体の製造方法。
5.前記透明基板と第1高屈折率層との間に、密着層を形成することを特徴とする第1項から第4項までのいずれか一項に記載の透明導電体の製造方法。
6.前記第2高屈折率層上に、インジウム・スズ酸化物層(ITO層)を蒸着法により形成することを特徴とする第1項から第5項までのいずれか一項に記載の透明導電体の製造方法。
7.前記透明金属層として、銀又は銀を主成分とする合金より銀薄膜層を形成することを特徴とする第1項から第6項までのいずれか一項に記載の透明導電体の製造方法。
本発明の上記手段により、生産効率(成膜速度)が高く、光透過性に優れ、かつ高温高湿環境下での耐湿性に優れた透明導電体を製造する透明導電体の製造方法を提供することができる。
本発明の効果の発現機構・作用機構については明確になっていないが、以下のように推察している。
透明導電膜であるITOに対し良好な導電性を付与するためには、組成中の酸素欠損量の綿密な合わせ込みが必要であり、スパッタ法以外では良好な導電性能が得られなかった。しかしながら、スパッタ法では高パワー成膜時にターゲットが割れる問題があるため、高スピードで生産できず生産コストを下げにくい。また、材料は材料ターゲットを焼結し、ボンディングする加工費が高く、材料費:加工費が3:7の割合を占めるため、結果として材料コストが高くなっていた。
一方、Agを用いた透明導電体では、Ag層が導電性を担保するため、ITOに求められるような組成の調整は不要である。このため、組成調整が難しい蒸着法でも成膜が可能となる。上記成膜において、蒸着法を用いることができれば、スパッタ使用時より成膜スピードが向上し、その結果、コストが大きく下がる。しかしながら、電気接続方法とAg層の信頼性が課題であった。これを解決する為に、第1高屈折率層を硫化物にして信頼性を向上させ、第2高屈折率層を電気接続が可能で、かつ信頼性を向上させる金属酸化物により構成される組成とした。
更に、蒸着法はスパッタ法ほどの高エネルギー成膜ではないため、全層蒸着にすることで、Ag層と硫化物の間にある硫化防止層が不要になり、かつ第2高屈折率層もAg層を傷めることなく成膜できるため、第2高屈折率層の成膜スピードを落とすことなく高速での成膜が可能になった。このように蒸着法と材料の組み合わせによって、信頼性を損なうことなく、電気接続が良好で、かつ生産コストの低いAg系透明導電体の製造が可能になった。
本発明に係る透明導電体の構成の一例を示す概略断面図 本発明に係る透明導電体の構成の他の一例を示す概略断面図 本発明に係る透明導電体の構成の他の一例を示す概略断面図 本発明に適用可能な蒸着法の一つであるイオンプレーディング蒸着装置の構成の一例を示す概略構成図 本発明に係るパターニングされた電極を有する透明導電体を具備したタッチパネルの構成の一例を示す斜視図
本発明の透明導電体の製造方法は、透明基板上に、少なくとも第1高屈折率層、透明金属層及び第2高屈折率層をこの順に形成する透明導電体の製造方法であって、前記第1高屈折率層に硫化物を含有させ、前記第2高屈折率層に金属酸化物を含有させ、かつ前記第1高屈折率層、透明金属層及び第2高屈折率層の全ての層を、蒸着法により形成することを特徴とする。この特徴は、請求項1から請求項7までの請求項に係る発明に共通する技術的特徴である。
本発明の実施態様としては、本発明の目的とする効果をより発現できる観点から、透明金属層と前記第2高屈折率層との間に、酸化スズを含有する中間層を蒸着法により形成することにより、高温高湿環境下での耐久性がさらに向上し、かつ第2高屈折率層から透明金属層への影響を抑制でき、プラズモン吸収が起きにくくなり、より高い光透過性を得ることができる点で好ましい。
また、第2高屈折率層が、酸化スズを含有する構成とすることが、高温高湿環境下での耐久性がさらに向上した透明導電体を製造することができる観点から好ましい。
また、第1高屈折率層を、硫化物として少なくとも硫化亜鉛を含有させて形成することが、優れた高屈折率層を形成することができる観点から好ましい。
また、透明基板と第1高屈折率層との間に、密着層を形成することが、折り曲げによる応力を受けた際に、膜はがれ等の発生を防止することができ、膜はがれ耐性に優れた透明導電体を製造することができる観点から好ましい。
また、第2高屈折率層上に、インジウム・スズ酸化物層(ITO層)を蒸着法により形成することが、例えば、タッチパネルとして、透明光学粘着層(OCA)を設けた際の耐湿性に優れた透明導電体を製造することができる観点から好ましい。
また、透明金属層を、銀又は銀を主成分とする合金より銀薄膜層を形成することが、低抵抗性を備え、均一性が高く、不正吸収のない透明金属層を安定して形成することができる点から好ましい。
以下、本発明とその構成要素、及び本発明を実施するための形態・態様について詳細な説明をする。なお、本願において、数値範囲を表す「〜」は、その前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む意味で使用している。
《透明導電体の基本構成》
はじめに、本発明に係る透明導電体の基本的な構成について、図を交えて説明する。なお、各構成要素のあとの括弧内に記載の数字は、各図に記載した構成要素の符号を表す。
本発明に係る透明導電体は、透明基板上に、少なくとも硫化物を含有させた第1高屈折率層、透明金属層及び、金属酸化物を含有させた第2高屈折率層をこの順で配置し、前記第1高屈折率層、透明金属層及び第2高屈折率層の全ての層を、蒸着法により形成することを特徴とする。
図1は、本発明に係る透明導電体の構成を示す概略断面図である。
図1に示す透明導電体(1)は、透明基板(2)上に、少なくとも硫化物を含有させ、蒸着法で形成した第1高屈折率層(3D)、蒸着法で形成した透明金属層(4D)、及び少なくとも金属酸化物を含有させ、蒸着法で形成した第2高屈折率層(5D)を、この順で積層した構成である。
図2は、本発明に係る透明導電体の好ましい構成の他の一例を示す概略断面図である。
図2に示す透明導電体(1)は、図1に示す構成に対し、更に、蒸着法で形成した透明金属層(4D)と蒸着法で形成した第2高屈折率層(5D)の間に、蒸着法で形成した酸化スズを含有する中間層(6D)を有する構成を示してある。
図3は、本発明に係る透明導電体の好ましい構成の他の一例を示す概略断面図である。
図3に示す透明導電体(1)は、図2に示す構成に対し、更に、透明基板(2)と蒸着法で形成した第1高屈折率層(3D)との間に密着層(7)と、蒸着法で形成した第2高屈折率層(5D)上に、更に最表層として蒸着法で形成したITO層(8)を設けた構成を示してある。
図3において、密着層(7)としては、蒸着法で形成した密着層(7D)であっても、例えば、スパッタ法で形成した密着層(7S)であってもよい。同様に、ITO層(8)としては、蒸着法で形成したITO層(8D)であっても、スパッタ法で形成したITO層(8S)であってもよいが、図3では一例として蒸着法で形成した密着層(7D)と蒸着法で形成したITO層(8D)を示してある。
なお、本発明に係る透明導電体でいう「透明」とは、JIS K 7361−1:1997(プラスチック−透明材料の全光線透過率の試験方法)に準拠した方法で測定した可視光波長領域における全光線透過率が、70%以上であることをいう。
《透明導電体の各構成要素》
次いで、図1〜図3で示した本発明に係る透明導電体(1)を構成する各構成要素の詳細につて説明する。
〔透明基板〕
本発明に係る透明導電体(1)に適用可能な透明基板(2)としては、各種表示デバイスの透明基板に適用されている材料を適宜用いることができる。
透明基板(2)としては、ガラス基板や、セルロースエステル樹脂(例えば、トリアセチルセルロース(略称:TAC)、ジアセチルセルロース、アセチルプロピオニルセルロース等)、ポリカーボネート樹脂(例えば、パンライト、マルチロン(以上、帝人社製))、シクロオレフィン樹脂(例えば、ゼオノア(日本ゼオン社製)、アートン(JSR社製)、アペル(三井化学社製))、アクリル樹脂(例えば、ポリメチルメタクリレート、アクリライト(三菱レイヨン社製)、スミペックス(住友化学社製))、ポリイミド、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、ポリフェニレンエーテル(略称:PPE)樹脂、ポリエステル樹脂(例えば、ポリエチレンテレフタレート(略称:PET)、ポリエチレンナフタレート(略称:PEN))、ポリエーテルスルホン樹脂、アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン樹脂(略称:ABS樹脂)/アクリロニトリル・スチレン樹脂(略称:AS樹脂)、メチルメタクリレート・ブタジエン・スチレン樹脂(略称:MBS樹脂)、ポリスチレン、メタクリル樹脂、ポリビニルアルコール/エチレンビニルアルコール樹脂(EVOH)、スチレン系ブロックコポリマー樹脂等からなる透明樹脂フィルムが挙げられる。透明基板(2)が透明樹脂フィルムである場合、当該フィルムには2種以上の樹脂が含まれてもよい。
高い光透過性を達成することができる観点から、本発明に適用する透明基板(2)としては、ガラス基板や、セルロースエステル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエステル樹脂(特にポリエチレンテレフタレート)、トリアセチルセルロース、シクロオレフィン樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、ポリフェニレンエーテル(PPE)樹脂、ポリエーテルスルホン、ABS/AS樹脂、MBS樹脂、ポリスチレン、メタクリル樹脂、ポリビニルアルコール/EVOH(エチレンビニルアルコール樹脂)、スチレン系ブロックコポリマー樹脂等の樹脂成分から構成されるフィルムであることが好ましい。
透明基板(2)でいう透明とは、波長450〜800nmの光の平均光透過率が70%以上であることをいい、80%以上であることが好ましく、85%以上であることが更に好ましい。透明基板(2)の光の平均光透過率が70%以上であると、透明導電体(1)の光透過性が高まりやすい。また、透明基板(2)の波長450〜800nmの光の平均光吸収率は10%以下であることが好ましく、より好ましくは5%以下、更に好ましくは3%以下である。
本発明において、平均光透過率は、透明基板(2)の表面の法線に対して、5°傾けた角度から光を入射させた時の透過光の屈折率を測定する。
一方、平均光吸収率は、平均光透過率と同様の角度から光を入射させて、透明基板(2)の平均反射率を測定し、
平均光吸収率(%)=100−(平均光透過率+平均反射率)(%)
として算出する。平均光透過率及び平均反射率は、分光光度計(例えば、U4100:日立ハイテクノロジーズ社製)を用いて測定することができる。
透明基板(2)の波長570nmの光に対する屈折率は、1.40〜1.95の範囲内であることが好ましく、より好ましくは1.45〜1.75の範囲内であり、更に好ましくは1.45〜1.70の範囲内である。透明基板(2)の屈折率は、通常、透明基板(2)の材質によって定まる。
透明基板(2)の屈折率は、エリプソメーターを用い、25℃の環境下で測定することにより求めることができる。
透明基板(2)のヘイズ値は、0.01〜2.5%の範囲内であることが好ましく、より好ましくは0.1〜1.2%の範囲内である。透明基板(2)のヘイズ値が2.5%以下であると、透明導電体としてのヘイズ値を抑制することができ、好ましい。ヘイズ値は、ヘイズメーターを用いて測定することができる。
透明基板(2)の厚さは、1μm〜20mmの範囲内であることが好ましく、より好ましくは10μm〜2mmの範囲内であり、さらに好ましくは、25〜150μmの範囲内である。透明基板(2)の厚さが1μm以上であれば、透明基板(2)の強度が高まり、第1高屈折率層(3D)を蒸着法により形成する際に、割れたり、裂けたりすることを防止することができる。一方、透明基板(2)の厚さが20mm以下であれば、透明導電体(1)の十分なフレキシブル性を得ることができる。さらに、本発明に係る透明導電体(1)を具備したタッチパネル等の厚さを薄くできる。また、本発明に係る透明導電体(1)を用いたタッチパネルを軽量化することもできる。
本発明においては、使用する透明基板(2)は、各構成層を成膜する前に、透明基板中に含まれている水分や残留している溶媒を、クライオポンプ等を用いてあらかじめ除いた後、形成工程で使用することが好ましい。
また、本発明に適用する透明基板(2)上に形成する第1高屈折率層(3D)の平滑性を得ることができる観点から、公知の構成からなるクリアハードコート層(略称:CHC層)を設けてもよい。
〔第1高屈折率層〕
本発明に係る第1高屈折率層(3D)は、蒸着法で形成した層で、少なくとも硫化物を含有することを特徴とし、波長570nmの光に対し、透明基板の屈折率よりも高い屈折率を有する構成であることが好ましく、更には、少なくとも硫化物としても硫化亜鉛の含有する層(ZnS含有層)であることが好ましい。
(硫化物含有層)
本発明に係る蒸着法により形成する第1高屈折率層(3D)は、少なくとも硫化物を含有する層であることを特徴とし、更には、硫化物が硫化亜鉛であることが好ましい態様である。
本発明に係る第1高屈折率層(3D)にZnSを含有することにより、透明金属層(4D)の構成材料である金属元素、とりわけ銀を用いた場合の連続造膜性が向上し、プラズモン吸収を低減させることができる。また、透明基板(2)側から水分が透過しにくくなり、透明金属層(4D)の腐食を抑制することができる。
また、ZnSを含有する第1高屈折率層(3D)には、硫化亜鉛とともに、金属酸化物を含有されてもよい。硫化亜鉛とともに含有される金属酸化物は、誘電性材料又は酸化物半導体材料である。
第1高屈折率層(3D)に含まれるZnS、誘電性材料又は酸化物半導体材料の波長570nmの光に対する屈折率は、1.5より高いことが好ましく、1.7〜2.5の範囲内であることがより好ましく、更に好ましくは1.8〜2.5の範囲内である。ZnS、誘電性材料又は酸化物半導体材料の屈折率が1.5より高いと、第1高屈折率層(3D)によって、透明導電体(1)の光学アドミッタンスが十分に調整される。
なお、第1高屈折率層(3D)の屈折率は、構成する材料の屈折率、膜厚、構成する材料の密度で調整することができる。
ZnSを含有する第1高屈折率層(3D)の形成に好ましく用いられる誘電性材料又は酸化物半導体材料としては、ZnS単独の他に、ZnS・SiO、ZnS・SnO、ZnS・ZnO・Ga、ZnS・In・ZnO・Ga等を挙げることができる。
ZnSを含有する第1高屈折率層(3D)に含まれる誘電性材料又は酸化物半導体材料は、絶縁性の材料であってもよく、導電性の材料であってもよい。
誘電性材料又は酸化物半導体材料としては、以下の金属酸化物(無機酸化物も含む。)が挙げられ、例えば、TiO、ITO(インジウム・スズ酸化物)、ZnO、Nb、ZrO、CeO、Ta、Ti、Ti、Ti、TiO、SnO、LaTi、(インジウム・亜鉛酸化物)、AZO(アルミニウム・亜鉛酸化物)、GZO(ガリウム・亜鉛酸化物)、ATO(アンチモン・スズ酸化物)、ICO(インジウム・セリウム酸化物)、Bi、a−GIO、Ga、GeO、SiO、Al、HfO、SiO、MgO、Y、WO、a−GIO(ガリウム・インジウム酸化物)等が挙げられる。上記金属酸化物の中でも、特に、二酸化ケイ素(SiO)が好ましい。
第1高屈折率層(3D)の層厚は、10〜150nmの範囲内であることが好ましく、より好ましくは10〜80nmの範囲内である。第1高屈折率層(3D)の層厚が10nm以上であると、第1高屈折率層(3D)によって、透明導電体(1)の光学アドミッタンスが十分に調整される。一方、第1高屈折率層(3D)の層厚が150nm以下であれば、第1高屈折率層(3D)の光透過性が低下しにくくなる。第1高屈折率層(3D)の層厚は、エリプソメーターで測定される。
(第1高屈折率層の形成方法:蒸着法)
一般に、乾式法による薄膜形成方法としては、
1)物理気相成長法(PVD):真空蒸着、イオンプレーディング、スパッタリング、レーザーアブレーション、分子線エピタキシー等、
2)化学気相成長法(CVD):プラズマCVD、熱CVD、有機金属CVD、光CVD等を挙げることができるが、本発明においては、上記成膜方法の中でも、蒸着法を用いて、第1高屈折率層を形成することが、一つの特徴である。
蒸着法(以下、真空蒸着法ともいう)とは、真空中で第1高屈折率層の成膜物質、例えば、ZnS等を、抵抗加熱方式、電子ビーム方式、高周波誘導方式、レーザー方式等を用いて加熱、蒸発あるいは昇華させ、その生じた蒸気が樹脂基板に到達して堆積することにより、第1高屈折率層を形成する方法である。この真空蒸着法は、成膜物質や樹脂基板に対し、電気的に印加させることなく、気化した材料成分そのまま樹脂基板上に到達するため、樹脂基板へのダメージが少なく、純度の高い第1高屈折率層を形成することができる。
蒸着法は、スパッタ法(ここでは詳細な説明は省略する。)に比較して成膜速度が数倍速いため、生産効率が優れていること、蒸着装置としての構造が簡単であること、高真空中で純度の高い成膜を形成することができること、スパッタ法のようなプラズマによる樹脂基板や成膜済みの膜に対する損傷がない等の多くの利点を有している。
本発明においては、蒸着法としては、更に、イオンプレーディング法を用いることが好ましい。
イオンプレーディング法は、上記説明した蒸着法とほぼ同一の原理であるが、異なる構成は、真空中で第1高屈折率層の成膜物質、例えば、ZnSを加熱、蒸発あるいは昇華させて成膜物質粒子を生成した後、当該成膜物質粒子を、プラズマ空間中を通過させることにより、プラスの電荷を帯びさせ、成膜側の樹脂基板を保持している基板支持台にマイナスの電荷を印加して、プラズマ空間を通過した成膜物質粒子(+電荷)を引き付けて、堆積させ、例えば、第1高屈折率層を形成する方法である。このイオンプレーディング法で形成した膜は、蒸着法に比較し、より緻密で、密着性の高い膜を形成することができる。また、比較的低温でも密着性が得られること、成膜条件の多様性が得られること等の特徴を備えている。また、イオンプレーティング効果により、高反応性成膜の実現と表面拡散効果による膜質の緻密性・平滑性を向上させることができる。
なお、本発明でいうイオンプレーディング法とは、上記のようなプラズマアシストを有する蒸着法全般を指す。適用するプラズマアシストの形態は、特に問わないが、例えば、プラズマガン方式、RFプラズマ方式等を挙げることができる。
以下、イオンプレーディング法で適用可能な蒸着装置について、図を交えて説明する。
図4は、本発明に適用可能なイオンプレーディング法による成膜原理の一例を示す概略構成図である。
図4において、イオンプレーディング装置(10)は、真空容器(11)内の上部には、樹脂基板(13)を保持している基板保持台(12)が設けられており、印加電源(19)より、マイナス(−)の電荷が基板支持台(12)に付与されている。
一方、真空容器(11)内の下部には、例えば、抵抗加熱方式の加熱ボート(14)内に、成膜物質(15)として、例えば、ZnSが装填されている。真空容器(11)内の中間部には、高周波電源(16)が接続されているプラズマ形成部(17)が配置されている。プラズマ形成部(17)に高周波電圧を印加することにより、プラズマ形成部(17)の周辺部に、プラズマ放電空間(18)が形成される。
真空容器(11)内を、例えば、1×10−4Pa程度まで減圧した後、加熱ボート(14)を通電して、成膜物質(15)を蒸発させて、成膜物質粒子を飛散させ、次いで、プラズマ放電空間(18)を通過させることにより成膜物質粒子(20)をプラス(+)に帯電させる。プラス(+)帯電した成膜物質粒子(20)は、マイナス(−)に帯電している基板支持台(12)に保持されている樹脂基板(13)上に堆積して密着性の高い第1高屈折率層(21)を形成する。
本発明に適用可能な蒸着装置としては、例えば、シンクロン社製のBMC−800T蒸着機、日本電子株式会社製の真空蒸着装置 JEE−400、パルスレーザー蒸着装置としては、マツボー社が販売しているPicodeon社(フィンランド)製のColdab(登録商標)、イオンプレーディング装置としては、例えば、月島機械社製のロールtoロール プラズマアシスト蒸着装置、中外炉工業社製のSUPLaDUO(登録商標)等を挙げることができる。
〔透明金属層〕
本発明に係る透明金属層(4D)は、金属元素で構成されている層であるが、本発明においては、透明金属層(4D)が、銀又は銀を主成分とする合金より形成されている銀薄膜層であることが好ましい。透明金属層(4D)は、透明導電体(1)において電気を導通させるための層である。透明金属層(4D)は、図1〜3に示すように透明基板(2)上の全面に形成されていてもよいが、所定の形状にパターニングされている構成であることが好ましい。
なお、本発明において、銀を主成分とする合金とは、銀の含有比率が60at%(原子%)以上であることをいう。銀の含有比率としては、導電性の観点から、好ましくは90at%以上であり、より好ましくは95at%以上であり、更には透明金属層(4D)が銀単体で構成されていることが好ましい。
銀と組み合わせて合金を形成する金属としては、例えば、亜鉛、金、銅、パラジウム、アルミニウム、マンガン、ビスマス、ネオジム、モリブデン、白金、チタン、クロム等が挙げられる。例えば、銀と亜鉛とが組み合わされると、透明金属層(4D)の耐硫化性が高まり、銀と金とが組み合わされると、耐塩(NaCl)性が高まり、銀と銅とが組み合わされると、耐酸化性が高まる。
透明金属層(4D)のプラズモン吸収率は、波長400〜800nmにわたって(全範囲で)10%以下であることが好ましく、7%以下であることがより好ましく、5%以下であることが更に好ましい。波長400〜800nmの一部にプラズモン吸収率が大きい領域があると、透明導電体(1)の透過光が着色しやすくなる。
透明金属層(4D)の層厚は、10nm以下であることが好ましく、より好ましくは3〜9nmの範囲内であり、更に好ましくは5〜8nmの範囲内である。透明導電体(1)では、透明金属層(4D)の層厚が10nm以下の場合、透明金属層(4D)に金属本来の反射が生じにくい。また、第1高屈折率層(3D)、例えば、ZnS含有層及び後述する第2高屈折率層(5D)によって、透明導電体(1)の光学アドミッタンスが調整されやすく、導通領域a表面での光の反射が抑制されやすい。
透明金属層(4D)の層厚は、エリプソメーターを用いて測定して求めることができる。
透明金属層(4D)に関しても、上記説明した第1高屈折率層(3D)と同様に蒸着法により形成することを特徴の一つとする。透明金属層(4D)に適用可能な蒸着方法は、上記第1高屈折率層(3D)の形成に使用する蒸着法と同様の方法を挙げることができる。
本発明に係る透明金属層(4D)の形成に蒸着法を適用することにより、平面性の高い透明金属層(4D)を極めて速い形成速度で形成することができる。また、第1高屈折率層(3D)、例えば、ZnS含有層上に透明金属層(4D)を成膜する際、層の形成速度が速ければ金属、例えば、銀の硫化物が生成しにくいため、銀を主成分として含有する透明金属層(4D)の形成速度は0.3nm/秒以上であることが好ましい。透明金属層(4D)の形成速度は、0.5〜30nm/秒の範囲内であることがより好ましく、特に好ましくは1.0〜15nm/秒の範囲内である。また、成膜時の温度は、−25〜25℃の範囲内であることが好ましい。成膜開始前の到達真空度は、3×10−3Pa以下が好ましく、7×10−4Pa以下がより好ましい。
また、透明金属層(4D)は、電子デバイス等へ適用する際には、所望の形状にパターニングされた膜とすることができ、パターニング方法は特に制限されない。透明金属層(4D)は、例えば、所望のパターンを有するマスクを配置して形成された層であってもよく、公知のエッチング法によってパターニングされた膜であってもよい。
《第2高屈折率層》
本発明に係る第2高屈折率層(5D)は、少なくとも金属酸化物を含有し、かつ上記説明した第1高屈折率層(3D)及び透明金属層(4D)と同様に、蒸着法で形成することを特徴とする。更には、酸化スズを含有することが好ましい態様である。
第2高屈折率層(5D)は、波長570nmの光に対し、透明基板(2)の屈折率より高い屈折率を有することが好ましく、第2高屈折率層(5D)の屈折率は、透明基板(2)の屈折率より0.1〜1.1の範囲で高いことが好ましく、0.4〜1.0の範囲で高いことがより好ましい。
このような屈折率の関係を透明導電体(1)が有することにより、透明金属層(4D)に含有される金属、例えば、銀による反射を相殺することができる。
具体的には、第2高屈折率層(5D)の屈折率が高いほど、第2高屈折率層(5D)表面で発生する反射が高まり、透明金属層(4D)における銀の反射光を相殺させることが可能になる。したがって、第2高屈折率層(5D)の屈折率は、透明基板(2)の屈折率より高いことが必要な条件となる。
第2高屈折率層(5D)の層厚は、1〜150nmの範囲内であることが好ましく、より好ましくは10〜100nmの範囲内であり、さらに好ましくは10〜50nmの範囲内である。第2高屈折率層(5D)の層厚が1nm以上であると、耐湿性が向上する。一方、第2高屈折率層(5D)の層厚が150nm以下であれば、光透過性が低下しにくくなる。
〔金属酸化物〕
金属酸化物の例には、TiO、ITO(インジウム・スズ酸化物)、ZnO、Nb、ZrO、CeO、Ta、Ti、Ti、Ti、TiO、SnO、LaTi、IZO(インジウム・亜鉛酸化物)、AZO(アルミニウム・亜鉛酸化物)、GZO(ガリウム・亜鉛酸化物)、ATO(アンチモン・スズ酸化物)、ICO(インジウム・セリウム酸化物)、Bi、Ga、GeO、WO、HfO、In、GIO(ガリウム・インジウム酸化物)等が挙げられるが、上記例示した金属酸化物の中でも、原子番号40以下の金属化合物を含有することが好ましく、特に、亜鉛成分を含有することが好ましい。当該亜鉛成分として、酸化亜鉛(ZnO)を主成分として含有することが好ましく、上記例示した金属酸化物の中では、IZO(インジウム・亜鉛酸化物)、AZO(アルミニウム・亜鉛酸化物)、GZO(ガリウム・亜鉛酸化物)、等がより好ましい。また、ZnO・In・Ga・GeO(例えば、O:Zn:In:Ga:Ge=48:34:3:12:3(原子数比))から構成される金属化合物群も用いることができる。
〔アモルファス金属酸化物〕
本発明に係る第2高屈折率層(5D)には、金属酸化物の例としては、導電性のアモルファス金属酸化物を用いることもできる。本発明でいう導電性とは、比抵抗として1000Ω・cm未満をいい、好ましくは1Ω・cm未満であり、さらに好ましくは、0.1Ω・cm未満である。
本発明でいうアモルファスとは、形成した薄膜のXRD解析(X線回折法)を行った際に、固体を構成する原子や分子等として三次元的な規則性が少なく、測定されたX線回折スペクトラムにおいて、ハローパターンのみが観測され、結晶性を示す特定の回折線ピークを示さない状態の物質であると定義する。
第2高屈折率層(5D)に適用可能なアモルファス材料は、非結晶性の誘電性材料又は酸化物半導体材料であることが好ましく、当該誘電性材料又は酸化物半導体材料の波長570nmの光に対する屈折率は、1.5より高いことが好ましく、1.7〜2.5であることがより好ましく、更に好ましくは1.8〜2.5である。
第2高屈折率層(5D)に好適に用いることができるアモルファス金属酸化物としては、例えば、IGZO(非晶質−インジウム・ガリウム・亜鉛酸化物)、IZO(非晶質−インジウム・亜鉛酸化物)等を挙げることができる。また、ZSnO(非晶質−亜鉛・スズ酸化物)も用いることができる。また、その他には、非晶質のZnO・In・SnO(例えば、O:Zn:In:Sn=48:32:16:4(原子数比))、ZnO・In・SnO・TiO(例えば、O:Ti:Zn:In:Sn=57:2:8:23:10(原子数比))、ZnO・In・Ga・GeO(例えば、O:Zn:In:Ga:Ge=48:34:3:12:3(原子数比))、ZnO・In(例えば、O:Zn:In=54:29:17(原子数比))等が挙げられる。
〔形成方法〕
本発明に係る第2高屈折率層(5D)は、上記説明した第1高屈折率層(3D)及び透明金属層(4D)と同様に蒸着法により形成することを特徴の一つとする。第2高屈折率層(5D)に適用可能な蒸着方法は、上記第1高屈折率層(3D)の形成で説明した蒸着法を同様に適用することができる。
《その他の構成層》
〔中間層〕
本発明に係る透明導電体においては、図2又は図3に示すように透明金属層(4D)と第2高屈折率層(5D)との間に、酸化スズを含有する中間層(6D)を蒸着法により形成することが好ましい態様である。
本発明において、中間層(6D)としては、層厚が、0.1〜10nmの範囲内であることが好ましい。0.1nm以上にすれば次に積層する第2高屈折率層(5D)の高パワー成膜時のボンバードから、透明金属層(4D)を保護することができる。また、中間層の層厚を10nm以下にすれば、高生産性を阻害することがなく、好ましい。
本発明においては、中間層(6D)も、蒸着法により形成することが好ましい。本発明に適用可能な蒸着法としては、前述の各構成層の形成で記載した蒸着法を適用することができる。
中間層(6D)は、透明金属層(4D)、特に、銀層の直上に成膜される層である。銀層の上に層を成膜する場合、その際発生するプラズマによる銀層へのアタックや、成膜材料そのものの銀へのボンバード(攻撃)や、酸素原子によるAgへのボンバードが発生し、銀層の表面を荒らしてしまう。この結果、荒らされた銀層表面でプラズモン吸収が発生し、透過率を低下させていたが、中間層を設けることにより、上記影響を抑制することができる。
〔ITO層〕
本発明に係る第2高屈折率層(5D)上には、図3に示すように、更に、機械的、化学的耐久性を向上させる目的で、第3高屈折率層としてインジウム・スズ酸化物層(ITO層、8D)を設ける構成とすることが好ましい態様である。このITO層(8D)は、タッチパネルを作製した際に、透明光学粘着層(OCA)中の成分による透明金属層、特に、銀層や第2高屈折率層の侵食を防止することができる。
ITO層(8D)は、第2高屈折率層(5D)よりも導電性を高めやすく、薬品性に優れた酸化物膜である。このようなITO層(8D)を積層することで、第2高屈折率層(5D)全体の導電性をさらに増加させることも可能となる。
なお、ITO層の屈折率は、その組成により幅があり、ほぼ1.7〜2.3の範囲内である。
このITO層(8D)の層厚は、ITO層に保護層としての機能を付与し、かつ光学特性の観点から、10〜70nmの範囲内が好ましく、さらに好ましくは10〜50nmの範囲内であり、特に好ましくは、15〜30nmの範囲内である。
本発明に係るITO層(8D)は、ITO焼結体を用いて、蒸着法又はスパッタ法により形成することが好ましいが、特に、前述の各構成層の形成で記載した蒸着法、例えば、イオンプレーディング法等を適用することが好ましい。
〔密着層〕
本発明に係る透明導電体(1)には、透明基板(2)と第1高屈折率層(3D)を構成するZnS含有層との密着改善性を向上させるため、図3に示すように、透明基板(2)上に密着層(7)を形成することができる。密着層(7)は、ZnS含有層である第1高屈折率層(3D)が透明基板(2)としっかり密着する特性を有するものであればよい。
密着層(6)には、上記の第1高屈折率層(3D)や第2高屈折率層(5D)で例示した誘電性材料、酸化物半導体材料、絶縁性又は導電性の材料を含有してもよい。誘電性材料又は酸化物半導体材料は、金属酸化物、金属硫化物又は金属窒化物であることが好ましい。中でも、亜鉛化合物が含有されていることがより好ましい。
ZnSを含有する第1高屈折率層(3D)を蒸着法で成膜する際には、特に、密着層(7)を設けることが好ましい。これは、明確な作用機構は明らかになっていないが、スパッタ法で成膜した場合に比べて、蒸着法で成膜されるほうが成膜にかかるエネルギーが小さいため、密着性が透明基板(2)及び第1高屈折率層(3D)の材質による相性に左右されると考えている。
密着層(7)としては、具体的には、SiO膜やZnO膜、ZnS−SiO膜、GZO膜等が挙げられる。
密着層(7)の層厚は特に制限されず、好ましくは0.01〜15nmの範囲内であり、より好ましくは0.1〜3nmの範囲内である。
密着層の形成方法としては、特に制限はなく、蒸着法であってもスパッタ法であってもよいが、蒸着法であることが好ましい。
《透明導電体の適用分野》
上記構成からなる本発明に係る透明導電体(1)は、液晶方式、プラズマ方式、有機エレクトロルミネッセンス方式、フィールドエミッション方式など各種ディスプレイをはじめ、タッチパネルや携帯電話、電子ペーパー、各種太陽電池、各種エレクトロルミネッセンス調光素子など様々なオプトエレクトロニクスデバイスの基板等に好ましく用いることができる。
タッチパネル等の構成においては、透明導電体(1)の表面(例えば、透明基板(2)と反対側の表面)は、透明光学粘着層(OCA)を有するOCAシートを介して、他の部材と貼り合わせられてもよい。この場合には、透明導電体(1)の表面の等価アドミッタンス座標と、OCAシートのアドミッタンス座標とがそれぞれ近似することが好ましい。これにより、透明導電体とOCAシートとの界面での反射が抑制される。具体的には、波長550nmの反射率が1%以下になるように透明導電体(1)の表面のアドミッタンス座標を調整するのが好ましい。OCAシートの屈折率は一般的に、大きく調整することが難しいためである。
本発明において、本発明に係る透明導電体を具備したタッチパネルに適用可能なOCAシートとしては特に制限はないが、例えば、粘着剤としては、アクリル系共重合体やエポキシ系樹脂、ポリウレタン、シリコーン系ポリマー、ポリエーテル、ブチラール系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリビニルアルコール系樹脂、合成ゴムなどの接着剤若しくは粘着剤等を挙げることができる。また、市販品を用いることもでき、例えば、アクリル酸フリーで、ITO電極フィルムの貼合に適性を有するグンゼ社製のOCAフィルム NNZ−50、3M社製の高透明性のOCAテープで、ITO対策グレードの8146−1〜4、OCR1202、OCR1204(基板なし、屈折率:1.48)、日東電工社製のLUCIACS(登録商標)CR9707(ポリエーテル系粘着剤)等を挙げることができる。
以下、本発明に係る透明導電体(1)をタッチパネルに適用した一例を示す。
図5に示すタッチパネル(22)は、投影型静電容量式のタッチパネルである。このタッチパネル(22)は、2つの透明電極ユニットを具備する構成で、第1の透明導電体(1A)は、透明基板(2−1)の一主面上に、特定の電極バターンを形成している第1の透明電極ユニット(EU−1)を有している。同じく、第2の透明導電体(1B)は、透明基板(2−2)の一主面上に、特定の電極バターンを形成している第2の透明電極ユニット(EU−2)を有している。
本発明のタッチパネル(22)は、下部より本発明の第1の透明導電体(1A)と本発明の第2の透明導電体(1B)との間に、第1のOCAシート(OCA1)が配置され、同じく、本発明の第2の透明導電体(1B)と前面板(23)の間に、第2のOCAシート(OCA2)が配置さている構成である。このような構成においても、本発明に係る透明導電体(1A及び1B)は優れた耐久性を発現し、特に、高温高湿環境下で長期間にわたり保存した際の耐湿性に優れたタッチパネルを得ることができる。
本発明に係る透明導電体(1)は、上記説明した様な投影型静電容量式のタッチパネルに加え、種々の方式のタッチパネルのタッチセンサー(タッチセンサー電極部ともいう。)に適用することができる。例えば、表面型静電容量方式タッチパネル、抵抗膜式タッチパネルなどに適用することもできる。
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、実施例において「%」の表示を用いるが、特に断りがない限り「質量%」を表す。
各層の層厚は、蒸着法を用いる場合には蒸着時間を調整することで調節し、スパッタ法を用いる場合には、スパッタ時間を調整することで調節した。各層の層厚は、J.A.Woollam Co.Inc.製のVB−250型VASEエリプソメーターで測定した。
下記の透明導電体の作製において、表1及び表2に略称で記載した各構成材料及び成膜方法の詳細は、以下のとおりである。
(透明基板)
PET/CHC;株式会社きもと製クリアハードコート付きポリエチレンテレフタレートフィルム(G1SBF 「PET/CHC」と称する。厚さ:125μm、屈折率:1.59)
(各屈折率層構成材料)
ZnSnO;ZnO・SnO(Zn:Sn:O=28:15:57(at%))
GZO;ZnOにGaが5.7質量%混ざったもの
IGZO;In・Ga・ZnO(In:Ga:Zn:O=1:1:1:4(at%比))
ITO;In:SnO=90:10(質量%比)
IZO;In:ZnO=90:10(質量%比)
金属酸化物1;ZnO・In・SnO(O=48、Zn=32、In=16、Sn=4(at%))
金属酸化物2;ZnO・In・Ga・GeO(O=48、Zn=34、In=3、Ga=12、Ge=3(at%))
(成膜方法)
〈蒸着法〉
蒸着法(1):真空蒸着法 真空蒸着装置=シンクロン社製のBMC−800T蒸着装置
蒸着法(2):イオンプレーディング法 シンクロン社製のBMC−800T蒸着装置(イオンプレーディング法)
蒸着法(3):パルスレーザー方式の蒸着装置 マツボー社販売、Picodeon社(フィンランド)製のColdab(登録商標)
蒸着法(4):イオンプレーディング法 月島機械社製 ロールtoロール方式プラズマアシスト蒸着装置
蒸着法(5);イオンプレーディング法 中外炉工業社製 SUPLaDUO(登録商標)
《透明導電体の作製》
〔透明導電体101の作製〕
透明基板として、株式会社きもと製クリアハードコート付きポリエチレンテレフタレートフィルム(G1SBF 「PET/CHC」と称する。厚さ:125μm、屈折率:1.59)を用い、PET/CHCフィルム上に、下記の方法に従って、密着層(ZnO)/第1高屈折率層(ZnS含有層)/透明金属層(Ag)/第2高屈折率層(GZO)をこの順に積層して、透明導電体101を作製した。なお、密着層、第1高屈折率層、透明金属層及び第2高屈折率層の全ての層は、蒸着法(1)(真空蒸着法、シンクロン社製のBMC−800T蒸着装置)により形成した。
(密着層(ZnO)の形成)
真空蒸着装置として、シンクロン社製のBMC−800T蒸着装置を用い、モリブデン製抵抗加熱ボートにZnOを装填し、真空槽を1×10−4Paまで減圧した後、抵抗加熱ボートに通電加熱し、抵抗加熱ボートの通電加熱条件を調整して、形成速度0.1nm/秒の条件で蒸着して、層厚が1.0nmの密着層(ZnO)を形成した。
(第1高屈折率層(ZnS)の形成)
真空蒸着装置として、シンクロン社製のBMC−800T蒸着装置を用い、モリブデン製抵抗加熱ボートに、硫化物としてZnSを装填し、真空槽を1×10−4Paまで減圧した後、抵抗加熱ボートに通電加熱し、抵抗加熱ボートの通電加熱条件を調整して、形成速度2.0nm/秒の条件で蒸着して、層厚が36nmの第1高屈折率層(ZnS)を形成した。
(透明金属層(Ag)の形成)
真空蒸着装置として、シンクロン社製のBMC−800T蒸着装置を用い、モリブデン製抵抗加熱ボートにAgを装填し、真空槽を1×10−4Paまで減圧した後、抵抗加熱ボートに通電加熱し、抵抗加熱ボートの通電加熱条件を調整して、形成速度1.0nm/秒の条件で蒸着して、層厚7.0nmの透明金属層を形成した。
(第2高屈折率層(GZO)の形成)
真空蒸着装置として、シンクロン社製のBMC−800T蒸着装置を用い、モリブデン製抵抗加熱ボートに、金属酸化物としてGZOを装填し、真空槽を1×10−4Paまで減圧した後、抵抗加熱ボートに通電加熱し、抵抗加熱ボートの通電加熱条件を調整して、形成速度2.0nm/秒の条件で蒸着して、層厚が43nmの第2高屈折率層(GZO)を形成した。
〔透明導電体102の作製〕
上記透明導電体101の作製において、第2高屈折率層の形成に用いた金属酸化物を、GZOからアモルファス金属酸化物であるIGZOに変更した以外は同様にして、透明導電体102を作製した。
〔透明導電体103の作製〕
上記透明導電体101の作製において、密着層の形成材料をZnOからSiOに変更し、かつ第2高屈折率層の形成材料を、GZOからITOに変更した以外は同様にして、透明導電体103を作製した。
〔透明導電体104の作製〕
上記透明導電体103の作製において、第1高屈折率層の形成材料をZnSからZnSSiOに変更し、かつ第2高屈折率層の形成材料を、ITOからSnOに変更した以外は同様にして、透明導電体104を作製した。
〔透明導電体105の作製〕
透明基板として、株式会社きもと製クリアハードコート付きポリエチレンテレフタレートフィルム(PET/CHC、前出)を用い、PET/CHCフィルム上に、下記の方法に従って、第1高屈折率層(ZnS含有層)/透明金属層(Ag)/中間層(SnO)/第2高屈折率層(GZO)をこの順に積層して、透明導電体105を作製した。なお、密着層、第1高屈折率層、透明金属層及び第2高屈折率層の全ての層は、蒸着法(1)(真空蒸着法、シンクロン社製のBMC−800T蒸着装置)により形成した。
(第1高屈折率層(ZnS)の形成)
真空蒸着装置として、シンクロン社製のBMC−800T蒸着装置を用い、モリブデン製抵抗加熱ボートに、硫化物としてZnSを装填し、真空槽を1×10−4Paまで減圧した後、抵抗加熱ボートに通電加熱し、抵抗加熱ボートの通電加熱条件を調整して、形成速度2.0nm/秒の条件で蒸着して、層厚が36nmの第1高屈折率層(ZnS)を形成した。
(透明金属層(Ag)の形成)
真空蒸着装置として、シンクロン社製のBMC−800T蒸着装置を用い、モリブデン製抵抗加熱ボートにAgを装填し、真空槽を1×10−4Paまで減圧した後、抵抗加熱ボートに通電加熱し、抵抗加熱ボートの通電加熱条件を調整して、形成速度1.0nm/秒の条件で蒸着して、層厚7.0nmの透明金属層を形成した。
(中間層(SnO)の形成)
真空蒸着装置として、シンクロン社製のBMC−800T蒸着装置を用い、モリブデン製抵抗加熱ボートにSnOを装填し、真空槽を1×10−4Paまで減圧した後、抵抗加熱ボートに通電加熱し、抵抗加熱ボートの通電加熱条件を調整して、形成速度0.1nm/秒の条件で蒸着して、層厚が1.0nmの中間層(SnO)を形成した。
(第2高屈折率層(GZO)の形成)
真空蒸着装置として、シンクロン社製のBMC−800T蒸着装置を用い、モリブデン製抵抗加熱ボートに、金属酸化物としてGZOを装填し、真空槽を1×10−4Paまで減圧した後、抵抗加熱ボートに通電加熱し、抵抗加熱ボートの通電加熱条件を調整して、形成速度2.0nm/秒の条件で蒸着して、層厚が43nmの第2高屈折率層(GZO)を形成した。
〔透明導電体106の作製〕
上記透明導電体105の作製において、第2高屈折率層の形成に用いた金属酸化物を、GZOからアモルファス金属酸化物であるIGZOに変更した以外は同様にして、透明導電体106を作製した。
〔透明導電体107の作製〕
上記透明導電体105の作製において、第2高屈折率層の形成に用いた金属酸化物を、GZOからITOに変更した以外は同様にして、透明導電体107を作製した。
〔透明導電体108の作製〕
透明基板として、株式会社きもと製クリアハードコート付きポリエチレンテレフタレートフィルム(PET/CHC、前出)を用い、PET/CHCフィルム上に、下記の方法に従って、第1高屈折率層(ZnS含有層)/透明金属層(Ag)/第2高屈折率層(SnO)をこの順に積層して、透明導電体108を作製した。なお、第1高屈折率層、透明金属層及び第2高屈折率層の全ての層は、蒸着法(2)(イオンプレーディング法、シンクロン社製のBMC−800T蒸着装置)により形成した。
(第1高屈折率層(ZnS含有層)の形成)
真空蒸着装置として、シンクロン社製のBMC−800T蒸着装置を用い、イオンプレーディング法により、第1高屈折率層を形成した。モリブデン製抵抗加熱ボートにZnSを装填し、真空槽を4×10−4Paまで減圧した後、Arガスを導入して真空槽を2×10−3Paに設定した。次いで、300WでRFプラズマを焚きながら、抵抗加熱ボートに通電加熱し、抵抗加熱ボートの通電加熱条件を調整して、形成速度2.0nm/秒の条件で蒸着して、層厚36nmのZnS含有層(第1高屈折率層)を形成した。
(透明金属層(Ag)の形成)
真空蒸着装置として、シンクロン社製のBMC−800T蒸着装置を用い、イオンプレーディング法により、透明金属層を形成した。モリブデン製抵抗加熱ボートにAgを装填し、真空槽を1×10−4Paまで減圧した後、Arガスを導入して真空槽を2×10−3Paに設定した。次いで、300WでRFプラズマを焚きながら、抵抗加熱ボートに通電加熱し、抵抗加熱ボートの通電加熱条件を調整して、形成速度1.0nm/秒の条件で蒸着して、層厚7.0nmの透明金属層を形成した。
(第2高屈折率層(SnO含有層)の形成)
真空蒸着装置として、シンクロン社製のBMC−800T蒸着装置を用い、イオンプレーディング法により、第1高屈折率層を形成した。モリブデン製抵抗加熱ボートにSnOを装填し、真空槽を4×10−4Paまで減圧した後、Arガスを導入して真空槽を2×10−3Paに設定した。次いで、300WでRFプラズマを焚きながら、抵抗加熱ボートに通電加熱し、抵抗加熱ボートの通電加熱条件を調整して、形成速度2.0nm/秒の条件で蒸着して、層厚43nmのSnO含有層(第2高屈折率層)を形成した。
〔透明導電体109の作製〕
上記透明導電体108の作製において、第2高屈折率層の形成に用いた金属酸化物を、SnOからITOに変更した以外は同様にして、透明導電体109を作製した。
〔透明導電体110の作製〕
透明基板として、株式会社きもと製クリアハードコート付きポリエチレンテレフタレートフィルム(PET/CHC、前出)を用い、PET/CHCフィルム上に、下記の方法に従って、第1高屈折率層(ZnSSiO含有層)/透明金属層(Ag)/中間層(SnO)/第2高屈折率層(IGZO)をこの順に積層して、透明導電体110を作製した。なお、第1高屈折率層、透明金属層及び第2高屈折率層の全ての層は、蒸着法(2)(イオンプレーディング法、シンクロン社製のBMC−800T蒸着装置)により形成した。
(第1高屈折率層(ZnS含有層)の形成)
真空蒸着装置として、シンクロン社製のBMC−800T蒸着装置を用い、イオンプレーディング法により、第1高屈折率層を形成した。モリブデン製抵抗加熱ボートにZnSSiOを装填し、真空槽を4×10−4Paまで減圧した後、Arガスを導入して真空槽を2×10−3Paに設定した。次いで、300WでRFプラズマを焚きながら、抵抗加熱ボートに通電加熱し、抵抗加熱ボートの通電加熱条件を調整して、形成速度2.0nm/秒の条件で蒸着して、層厚36nmのZnSSiO含有層(第1高屈折率層)を形成した。
(透明金属層(Ag)の形成)
真空蒸着装置として、シンクロン社製のBMC−800T蒸着装置を用い、イオンプレーディング法により、透明金属層を形成した。モリブデン製抵抗加熱ボートにAgを装填し、真空槽を1×10−4Paまで減圧した後、Arガスを導入して真空槽を2×10−3Paに設定した。次いで、300WでRFプラズマを焚きながら、抵抗加熱ボートに通電加熱し、抵抗加熱ボートの通電加熱条件を調整して、形成速度1.0nm/秒の条件で蒸着して、層厚7.0nmの透明金属層を形成した。
(中間層(SnO)の形成)
真空蒸着装置として、シンクロン社製のBMC−800T蒸着装置を用い、イオンプレーディング法により、透明金属層を形成した。モリブデン製抵抗加熱ボートにAgを装填し、真空槽を1×10−4Paまで減圧した後、Arガスを導入して真空槽を2×10−3Paに設定した。次いで、300WでRFプラズマを焚きながら、抵抗加熱ボートに通電加熱し、抵抗加熱ボートの通電加熱条件を調整して、形成速度0.1nm/秒の条件で蒸着して、層厚1.0nmの中間層(SnO)を形成した。
(第2高屈折率層(SnO含有層)の形成)
真空蒸着装置として、シンクロン社製のBMC−800T蒸着装置を用い、イオンプレーディング法により、第1高屈折率層を形成した。モリブデン製抵抗加熱ボートにIGZOを装填し、真空槽を4×10−4Paまで減圧した後、Arガスを導入して真空槽を2×10−3Paに設定した。次いで、300WでRFプラズマを焚きながら、抵抗加熱ボートに通電加熱し、抵抗加熱ボートの通電加熱条件を調整して、形成速度2.0nm/秒の条件で蒸着して、層厚43nmのIGZO含有層(第2高屈折率層)を形成した。
〔透明導電体111の作製〕
上記透明導電体110の作製において、第2高屈折率層の形成に用いた金属酸化物を、IGZOから金属酸化物1(ZnO・In・SnO(O=48、Zn=32、In=16、Sn=4(at%)))に変更し、かつ層厚を40nmとした以外は同様にして、透明導電体111を作製した。
〔透明導電体112の作製〕
上記透明導電体110の作製において、第2高屈折率層の形成に用いた金属酸化物を、IGZOから金属酸化物2(ZnO・In・Ga・GeO(O=48、Zn=34、In=3、Ga=12、Ge=3(at%)))に変更し、かつ層厚を10nmとし、更に第2高屈折率層上に、下記の方法に従って第3高屈折率層(ITO含有層)を形成した以外は同様にして、透明導電体112を作製した。
(第3高屈折率層(ITO含有層)の形成)
真空蒸着装置として、シンクロン社製のBMC−800T蒸着装置を用い、イオンプレーディング法により、第1高屈折率層を形成した。モリブデン製抵抗加熱ボートにITOを装填し、真空槽を4×10−4Paまで減圧した後、Arガスを導入して真空槽を2×10−3Paに設定した。次いで、300WでRFプラズマを焚きながら、抵抗加熱ボートに通電加熱し、抵抗加熱ボートの通電加熱条件を調整して、形成速度2.0nm/秒の条件で蒸着して、層厚33nmのITO含有層(第3高屈折率層)を形成した。
〔透明導電体113の作製〕
透明基板として、株式会社きもと製クリアハードコート付きポリエチレンテレフタレートフィルム(PET/CHC、前出)を用い、PET/CHCフィルム上に、下記の方法に従って、第1高屈折率層(ZnS含有層)/透明金属層(Ag)/中間層(SnO)/第2高屈折率層(IGZO)をこの順に積層して、透明導電体113を作製した。なお、第1高屈折率層、透明金属層及び第2高屈折率層の全ての層は、蒸着法(3)として、パルスレーザー方式の蒸着装置であるマツボー社販売、Picodeon社(フィンランド)製のColdab(登録商標)により形成した。
(第1高屈折率層(ZnS含有層)の形成)
真空蒸着装置として、パルスレーザー方式の蒸着装置であるPicodeon社(フィンランド)製のColdab(登録商標)を用い、形成速度2.0nm/秒の条件で蒸着して、層厚36nmのZnS含有層(第1高屈折率層)を形成した。
(透明金属層(Ag層)の形成)
真空蒸着装置として、パルスレーザー方式の蒸着装置であるPicodeon社(フィンランド)製のColdab(登録商標)を用い、形成速度1.0nm/秒の条件で蒸着して、層厚7.0nmの透明金属層(Ag層)を形成した。
(中間層(SnO)の形成)
真空蒸着装置として、パルスレーザー方式の蒸着装置であるPicodeon社(フィンランド)製のColdab(登録商標)を用い、形成速度0.1nm/秒の条件で蒸着して、層厚1.0nmの中間層(SnO)を形成した。
(第2高屈折率層(IGZO含有層)の形成)
真空蒸着装置として、パルスレーザー方式の蒸着装置であるPicodeon社(フィンランド)製のColdab(登録商標)を用い、形成速度2.0nm/秒の条件で蒸着して、層厚43nmのIGZO含有層(第2高屈折率層)を形成した。
〔透明導電体114の作製〕
上記透明導電体113の作製において、蒸着法(3)のパルスレーザー方式の蒸着装置であるPicodeon社(フィンランド)製のColdab(登録商標)に代えて、蒸着装置として、イオンプレーディング方式の月島機械社製 ロールtoロール方式プラズマアシスト蒸着装置(蒸着法(4)と称す。)を用いた以外は同様にして、透明導電体114を作製した。
〔透明導電体115の作製〕
上記透明導電体113の作製において、蒸着法(3)のパルスレーザー方式の蒸着装置であるPicodeon社(フィンランド)製のColdab(登録商標)に代えて、蒸着装置として、イオンプレーディング方式の中外炉工業社製 SUPLaDUO(登録商標)(蒸着法(5)と称す。)を用い、かつ第2高屈折率層の形成に用いる金属酸化物を、IGZOに代えてITOを用いた以外は同様にして、透明導電体115を作製した。
〔透明導電体116〜118の作製〕
上記透明導電体113〜115の作製において、中間層(SnO)を除いた以外は同様にして、透明導電体116〜118を作製した。
〔透明導電体119の作製〕
透明基板であるPET/CHCフィルム(前出)上に、下記の方法に従って、第1高屈折率層(ZnS・SiO、RFスパッタ)/透明金属層(Ag、12nm、DCスパッタ)/第2高屈折率層(ZnS・SiO、RFスパッタ)をこの順に積層して、透明導電体119を作製した。
(第1高屈折率層(ZnSSiO)の形成)
アネルバ社のL−430S−FHSスパッタ装置を用い、Ar 20sccm、O 0sccm、スパッタ圧0.25Pa、室温(25℃)下、形成速度0.15nm/sで、層厚40nmとなるようZnSSiOをRF(交流、周波数:13.56MHz)スパッタし、第1高屈折率層を形成した。ターゲット−基板間距離は、86mmであった。
(透明金属層(Ag)の形成)
アネルバ社のL−430S−FHSスパッタ装置を用い、Ar 20sccm、スパッタ圧0.25Pa、背圧5×10−4Pa、室温(25℃)下、形成速度0.7nm/sでAgを層厚12nmとなるようにDCスパッタし、透明金属層を形成した。ターゲット−基板間距離は、86mmであった。
(第2高屈折率層(ZnSSiO)の形成)
アネルバ社のL−430S−FHSスパッタ装置を用い、Ar 20sccm、O 0sccm、スパッタ圧0.25Pa、室温(25℃)下、形成速度0.15nm/sで、層厚40nmとなるようZnSSiOをRF(交流、周波数:13.56MHz)スパッタし、第2高屈折率層を形成した。ターゲット−基板間距離は、86mmであった。
以上のようにして、透明導電体119を作製した。
〔透明導電体120の作製〕
透明基板であるPET/CHCフィルム(前出)上に、下記の方法に従って、第1高屈折率層(Nb、DCスパッタ)/透明金属層(Ag、7.7nm、、DCスパッタ)/第2屈折率層(IZO、DCスパッタ)をこの順に積層して、透明導電体120を作製した。
(第1高屈折率層(Nb)の形成)
アネルバ社のL−430S−FHSスパッタ装置を用い、Ar 20sccm、O 2sccm、スパッタ圧0.25Pa、室温(25℃)下、形成速度0.15nm/sで、層厚27.7nmとなるようNb(株式会社豊島製作所製)をDCパルススパッタした。ターゲット−基板間距離は、86mmであった。
(透明金属層(Ag)の形成)
アネルバ社のL−430S−FHSスパッタ装置を用い、Ar 20sccm、スパッタ圧0.25Pa、背圧5×10−4Pa、室温(25℃)下、形成速度0.7nm/sでAgを層厚7.7nmとなるようにDCスパッタし、透明金属層を形成した。ターゲット−基板間距離は、86mmであった。
(第2高屈折率層(IZO)の形成)
アネルバ社のL−430S−FHSスパッタ装置を用い、Ar 20sccm、O 2sccm、スパッタ圧0.25Pa、室温(25℃)下、形成速度1.0nm/秒で、層厚36nmとなるようにIZO(株式会社豊島製作所製)をDCパルススパッタした。成膜した膜厚はターゲット−基板間距離は86mmであった。
以上のようにして、透明導電体120を作製した。
〔透明導電体121の作製〕
透明基板であるPET/CHCフィルム(前出)上に、下記の方法に従って、第1高屈折率層(ZnSnO、DCスパッタ)/透明金属層(Ag、10.0nm、DCスパッタ)/第2屈折率層(ZnSnO、DCスパッタ)をこの順に積層して、透明導電体121を作製した。
(第1高屈折率層(ZnSnO)の形成)
アネルバ社のL−430S−FHSスパッタ装置を用い、Ar 20sccm、O 2sccm、スパッタ圧0.25Pa、室温(25℃)下、形成速度0.15nm/sで、層厚40nmとなるようZnSnO(亜鉛・スズ酸化物)をDCパルススパッタした。ターゲット−基板間距離は、86mmであった。
(透明金属層(Ag)の形成)
アネルバ社のL−430S−FHSスパッタ装置を用い、Ar 20sccm、スパッタ圧0.25Pa、背圧5×10−4Pa、室温(25℃)下、形成速度0.7nm/sでAgを層厚10nmとなるようにDCスパッタし、透明金属層を形成した。ターゲット−基板間距離は、86mmであった。
(第2高屈折率層(ZnSnO)の形成)
アネルバ社のL−430S−FHSスパッタ装置を用い、Ar 20sccm、O 2sccm、スパッタ圧0.25Pa、室温(25℃)下、形成速度0.15nm/秒で、層厚40nmとなるようにZnSnOをDCパルススパッタした。成膜した膜厚はターゲット−基板間距離は86mmであった。
以上のようにして、透明導電体121を作製した。
上記作製した透明導電体101〜121の構成を、表1及び表2に示す。
Figure 2016108581
Figure 2016108581
《各特性の評価》
〔生産効率の評価〕
上記各透明導電体の単位面積当たりの作製に要する総成膜時間(秒/100cm)を、それぞれ算出した。
次いで、透明導電体119の作製に要した時間を100とした相対作製時間(秒/100cm)を求め、下記の基準に従って生産効率の評価を行った。
◎:相対作製時間が、20(秒/100cm)未満である
○:相対作製時間が、20(秒/100cm)以上、50(秒/100cm)未満である
△:相対作製時間が、50(秒/100cm)以上、100(秒/100cm)未満である
×:相対作製時間が、100(分/100cm)以上である
〔光透過性の評価〕
作製した各透明導電体について、平均光透過率を以下の方法に従って測定した。
各透明導電体の第2屈折率調整層群側の表面に、マッチングオイル(ニコン社製 屈折率=1.515)を塗布し、透明導電体とコーニング社製無アルカリガラス基板(EAGLE XG(厚さ7mm×縦30mm×横30mm)とを貼り合わせた。この状態で、無アルカリガラス基板側から透明導電体の450〜800nmの波長範囲における平均光透過率(%)を測定した。このとき、無アルカリガラス基板の表面の法線に対して5°傾けた角度から測定光を入射させ、株式会社日立ハイテクノロジーズ製:分光光度計 U−4100にて、各波長における透過率を測定した。
次いで、測定した平均透過率を、下記の評価基準に従ってランク付を行って、光透過性を評価した。
◎:平均光透過率が、88%以上である
○:平均光透過率が、85%以上、88%未満である
△:平均光透過率が、83%以上、85%未満である
×:平均光透過率が、83%未満である
〔耐久性の評価〕
上記作製した各透明導電体を、85℃、85%RHの環境下で500時間保存する強制劣化処理を施した後、30mm×30mmの領域について、ルーペを用いて観察し、透明金属膜における、サイズが20μm以上の腐食箇所(白点故障)の発生数を計測し、下記の評価基準に従って、耐久性の評価を行った。
◎:サイズが20μm以上の腐食箇所(白点故障)の発生が認められない
○:サイズが20μm以上の腐食箇所(白点故障)の発生数が、1個以上、5個未満である
△:サイズが20μm以上の腐食箇所(白点故障)の発生数が、5個以上、10個未満である
×:サイズが20μm以上の腐食箇所(白点故障)の発生数が、10個以上ある
以上により得られた各評価結果を、表3に示す。
Figure 2016108581
表3に記載の結果より明らかなように、本発明の製造方法により作製した透明導電体は、比較例の透明導電体と比較して、生産効率、光透過性、及び高温高湿環境下で保存した際の耐久性に優れていることが分かる。
1、1A、1B 透明導電体
2、2−1、2−2 透明基板
3D、21 第1高屈折率層(蒸着法)
4D 透明金属層(蒸着法)
5D 第2高屈折率層(蒸着法)
6D 中間層(蒸着法)
7 密着層
8D 第3高屈折率層(蒸着法)
10 イオンプレーディング装置
11 真空容器
12 基板保持台
13 樹脂基板
14 加熱ボート
15 成膜物質
16 高周波電源
17 プラズマ形成部
18 プラズマ放電空間
19 印加電源
20 成膜物質粒子
22 タッチパネル
23 前面板
EU−1、EU−2 透明電極ユニット
OCA1、OCA2 OCAシート

Claims (7)

  1. 透明基板上に、少なくとも第1高屈折率層、透明金属層及び第2高屈折率層をこの順に形成する透明導電体の製造方法であって、
    前記第1高屈折率層に硫化物を含有させ、前記第2高屈折率層に金属酸化物を含有させ、
    かつ前記第1高屈折率層、透明金属層及び第2高屈折率層の全ての層を、蒸着法により形成することを特徴とする透明導電体の製造方法。
  2. 前記透明金属層と前記第2高屈折率層との間に、酸化スズを含有する中間層を蒸着法により形成することを特徴とする請求項1に記載の透明導電体の製造方法。
  3. 前記第2高屈折率層に、酸化スズを含有させることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の透明導電体の製造方法。
  4. 前記第1高屈折率層に、前記硫化物として硫化亜鉛を含有させることを特徴とする請求項1から請求項3までのいずれか一項に記載の透明導電体の製造方法。
  5. 前記透明基板と第1高屈折率層との間に、密着層を形成することを特徴とする請求項1から請求項4までのいずれか一項に記載の透明導電体の製造方法。
  6. 前記第2高屈折率層上に、インジウム・スズ酸化物層(ITO層)を蒸着法により形成することを特徴とする請求項1から請求項5までのいずれか一項に記載の透明導電体の製造方法。
  7. 前記透明金属層として、銀又は銀を主成分とする合金より銀薄膜層を形成することを特徴とする請求項1から請求項6までのいずれか一項に記載の透明導電体の製造方法。
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