JP2015223562A - 微量液体移送デバイス - Google Patents
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Abstract
Description
従来の技術では、上記のような、蓋のある閉毛管の微細流路を構成するために、代表的な2つの方法がある。
第1の方法は、リソグラフィー技術及び微細加工技術によって、まず、蓋の無い開毛管の微細流路を作製するための「鋳型」を製造し、その「鋳型」を鋳型としてポリジメチルシロキサン(PDMS)ゲルで開毛管の微細流路を有する基板を作製した後、その開毛管の微細流路に「蓋」を接着する方法である(以下、この方法を「PDMSリソグラフィー・モールド法」とも表示する。)。この方法は、一度鋳型を作製すれば、それを利用して閉毛管の微細流路を有する基板を比較的容易に量産することができるという利点があるが、鋳型を作製する際に必要となるリソグラフィー装置が非常に高額であり、また工程も複雑であるという欠点があった。
第2の方法は、微細ミル加工装置を用いて、ポリメチルメタクリレート(PMMA)樹脂などの基板上に溝を直接掘って開毛管の微細流路を形成した後、その開毛管の微細流路に「蓋」を接着する方法である(以下、この方法を「PMMAミル加工法」とも表示する。)この方法に用いる微細ミル加工装置は、前述のリソグラフィー装置よりも安価であり、また、リソグラフィー装置のようにクリーンルームでの使用が必須ともされていないため、簡便に利用することができるという利点がある。また、計算機数値コントロール(CNC)を備えた微細ミル加工装置を利用すると、非常に手軽かつ正確に加工することもできる。しかし、このPMMAミル加工法では、開毛管の微細流路を閉じるための蓋の接着方法について、PDMSリソグラフィー・モールド法における蓋の接着方法のような確立された接着方法がなく、熟練した技術者でないと、蓋のある閉毛管の微細流路を作製することは難しいという欠点があった。
z=k(γcosθwt/(3η))1/2 (I)
(ただし、zが浸透距離(mm)であり、tが経過時間(秒)であり、γが液体の表面張力(mN/m)であり、ηが液体の粘性(mPa・s)であり、wが微細流路の幅(mm)であり、θが液体と開毛管壁との接触角であり、kが0.4〜0.7の範囲内の値である。)
また、上記数式(I)の関係は、溝状の微細流路の幅が0.5mm以下、その深さが幅の2倍以上の場合に特に精度よく成立することを、本発明者らは理論的にも実験的にも確認した。
また、本発明者らは、上記数式(I)の関係を利用すれば、液体の浸透距離などを事前に予測でき、その予測を微量液体移送デバイスの設計の大きな指針とすれば、試行錯誤をほとんど要さずに複雑な微細流路の設計も容易に行うことができることを見いだした。
(1)基板上において微量液体を移送するための微量液体移送デバイスであって、前記微量液体移送デバイスが基板を備え、前記基板上に、
(a)1種又は2種以上の液体を供給するための1箇所又は2箇所以上の凹状の液体供給部と、
(b)前記液体の移送目的部位である1箇所又は2箇所以上の凹状の液体移送目的部と、
(c)前記液体供給部から前記液体移送目的部へと連通し、前記液体供給部から前記液体移送目的部へと液体を移送させるための微細流路とを備え、
前記微細流路が溝状の開毛管流路であり、液体の移送が毛管力を利用してなされることを特徴とする微量液体移送デバイスや、
(2)微細流路の溝の横断面が、略上向きコの字形状であることを特徴とする上記(1)に記載の微量液体移送デバイスや、
(3)微細流路の幅が0.03mm〜3mmの範囲内であり、深さが0.06mm〜15mmの範囲内であることを特徴とする上記(1)又は(2)に記載の微量液体移送デバイスや、
(4)微細流路の深さの、幅に対する比が、1〜12の範囲内であることを特徴とする上記(1)〜(3)のいずれか1つに記載の微量液体移送デバイスや、
(5)液体供給部から液体移送目的部までの微細流路の長さ(mm)の値が、以下の数式(I)により算出されるz(浸透距離)の値(mm)以下になるように、微細流路の長さ(mm)及び/又は幅(mm)が調整されたことを特徴とする上記(1)〜(4)のいずれか1つに記載の微量液体移送デバイス:
z=k(γcosθwt/(3η))1/2 (I)
(ただし、zが浸透距離(mm)であり、tが経過時間(秒)であり、γが液体の表面張力(mN/m)であり、ηが液体の粘性(mPa・s)であり、wが微細流路の幅(mm)であり、θが液体と開毛管壁との接触角であり、kが0.4〜0.7の範囲内の値である。):や、
(6)微細流路の平面視の形状が一直線状であることを特徴とする上記(1)〜(5)のいずれか1つに記載の微量液体移送デバイスに関する。
(7)上記(1)〜(6)のいずれか1つに記載の微量液体移送デバイスを用いた微量液体の移送方法であって、
(A)前記微量液体移送デバイスにおける1箇所又は2箇所以上の凹状の液体供給部に、1種又は2種以上の液体を供給する工程A:
を含むことを特徴とする微量液体の移送方法や、
(8)さらに、(B)微量液体移送デバイスにおける1箇所又は2箇所以上の凹状の液体移送目的部で、2種以上の液体を混合させる工程B:
を含むことを特徴とする上記(7)に記載の微量液体の移送方法や、
(9)さらに、(a1)微量液体移送デバイスにおける1箇所又は2箇所以上の凹状の液体移送目的部に、1種又は2種以上の液体を供給する工程a1:及び、
(b1)液体供給部に供給した前記液体と、液体移送目的部に供給した液体とを、液体移送目的部で混合させる工程b1:
を含むことを特徴とする上記(7)に記載の微量液体の移送方法や、
(10)以下の数式(I)により算出されるz(浸透距離)の値(mm)が、液体供給部から液体移送目的部までの微細流路の長さの値(mm)以上になるように、移送に要する経過時間t(秒)、液体の表面張力(mN/m)及び液体の粘性(mPa・s)から選択される1種又は2種以上を調整されたことを特徴とする上記(7)〜(9)のいずれか1つに記載の微量液体の移送方法:
z=k(γcosθwt/(3η))1/2 (I)
(ただし、zが浸透距離(μm)であり、tが経過時間(秒)であり、γが液体の表面張力(mN/m)であり、ηが液体の粘性(mPa・s)であり、wが微細流路の幅(μm)であり、θが液体と開毛管壁との接触角であり、kが0.4〜0.7の範囲内の値である。)に関する。
(11)基板上において微量液体を移送するための微量液体移送デバイスの製造方法であって、
(X)1種又は2種以上の液体を供給するための1箇所又は2箇所以上の凹状の液体供給部と、
前記液体の移送目的部位である1箇所又は2箇所以上の凹状の液体移送目的部と、
前記液体供給部から前記液体移送目的部へと連通し、前記液体供給部から前記液体移送目的部へと液体を移送させるための微細流路とを基板上に備えた基板を作製する工程X:
を含み、
前記微細流路が溝状の開毛管流路であり、液体の移送が毛管力を利用してなされ得る、微量液体移送デバイスの製造方法や、
(12)工程Xが、
(x1)基板を用意する工程x1:及び、
(x2)前記基板上に、
1種又は2種以上の液体を供給するための1箇所又は2箇所以上の凹状の液体供給部と、
前記液体の移送目的部位である1箇所又は2箇所以上の凹状の液体移送目的部と、
前記液体供給部から前記液体移送目的部へと連通し、前記液体供給部から前記液体移送目的部へと液体を移送させるための微細流路とを設ける工程x2:
を含み、
前記微細流路が溝状の開毛管流路であり、液体の移送が毛管力を利用してなされ得る、上記(11)に記載の微量液体移送デバイスの製造方法や、
(13)工程Xが、
(x3)1種又は2種以上の液体を供給するための1箇所又は2箇所以上の凹状の液体供給部と、
前記液体の移送目的部位である1箇所又は2箇所以上の凹状の液体移送目的部と、
前記液体供給部から前記液体移送目的部へと連通し、前記液体供給部から前記液体移送目的部へと液体を移送させるための微細流路とを基板上に備えた基板を作製するための鋳型を製造する工程x3:及び、
(x4)工程x3で製造した鋳型に基板材料を供給することによって、
1種又は2種以上の液体を供給するための1箇所又は2箇所以上の凹状の液体供給部と、
前記液体の移送目的部位である1箇所又は2箇所以上の凹状の液体移送目的部と、
前記液体供給部から前記液体移送目的部へと連通し、前記液体供給部から前記液体移送目的部へと液体を移送させるための微細流路とを基板上に備えた基板を作製する工程x4:
を含み、
前記微細流路が溝状の開毛管流路であり、液体の移送が毛管力を利用してなされ得る、上記(11)に記載の微量液体移送デバイスの製造方法に関する。
(14)上記(6)に記載の微量液体移送デバイスと、以下の数式(II)又は(III)を利用することを特徴とするパラメーターの算出方法であって、
zf=2γcosθ/(ρgw) (II)
(ただし、zfが最高到達高さ(mm)であり、γが液体の表面張力(mN/m)であり、ρが液体の密度(g/cm3)であり、gが重力加速度(m/s2)であり、wが微細流路の幅(mm)であり、θが開毛管壁と液体の接触角である。):
η=4k2γcosθwth/(3zf 2) (III)
(ただし、ηが液体の粘性が(mPa・s)であり、kが0.4〜0.7の範囲内の値であり、γが液体の表面張力(mN/m)であり、θが液体と開毛管壁との接触角であり、wが微細流路の幅(mm)であり、thが、液体が前述の最高到達高さzfの半分の高さに到達するまでの時間(秒)であり、zfが液体の最高到達高さ(mm)である。):
(P)数式(II)又は(III)の数式に含まれるパラメーターのうち、1つのパラメーター以外のパラメーターの値を調べる又は測定する工程P:及び、
(Q)工程Pで調べた又は測定した値を数式(II)又は(III)の数式に代入し、前記1つのパラメーターの値を算出する工程Q:
を含むことを特徴とするパラメーターの算出方法や、
(15)(R)数式(II)及び(III)のうち、工程P及び工程Qで用いていない方の数式を選択する工程R:
(S)工程Rで選択した数式のパラメーターのうち、1つのパラメーター以外のパラメーターの値を調べる又は測定する工程S:及び、
(T)工程Sで調べた又は測定した値を、工程Rで選択した数式に代入し、工程Sにおける1つのパラメーターの値を算出する工程T:をさらに含み、
前記工程Sにおける1つのパラメーター以外のパラメーターの値を調べる又は測定することが、工程Qで算出したパラメーターの値を用いることを特徴とする上記(14)に記載のパラメーターの算出方法に関する。
また、マイクロポンプを利用する従来の微量液体移送デバイスでは、特に微細流路を細くした場合、微細流路が細くなるほど粘性抵抗が大きくなるために、粘性の高い液体(例えば、無細胞タンパク質合成に用いる液体、膵液、血液など)の移送が困難であったが、本発明の蓋の無い溝状の開毛管を微細流路とする微量液体移送デバイスでは、微細流路が細くなるほどその力が増す毛管力を利用するため、そのような粘性の高い液体であっても、容易に移送することができる。したがって、病原微生物検査用の簡易デバイスや、酵素反応検査用デバイスといった分野への応用も可能である。
また、本発明の微量液体移送デバイスは、微細ミル加工法を用いた場合は、従来の蓋のある管状の閉毛管を利用する微量液体移送デバイスと比較して、より簡便に、かつ、特に熟練した技術を要することなく製造することができる。
さらに、本発明の微量液体移送デバイスは、上記数式(I)の関係式を利用することにより、液体の浸透距離などを事前に予測でき、その予測を利用すれば、試行錯誤をほとんど要さずに複雑な流路の設計も容易に行うことができる。
基板上において微量液体を移送するための微量液体移送デバイス(以下、「本発明の微量液体移送デバイス」とも表示する。)としては、基板を備えており、前記基板上に、(a)1種又は2種以上の液体を供給するための1箇所又は2箇所以上の凹状の液体供給部と、
(b)前記液体の移送目的部位である1箇所又は2箇所以上の凹状の液体移送目的部と、
(c)前記液体供給部から前記液体移送目的部へと連通し、前記液体供給部から前記液体移送目的部へと液体を移送させるための微細流路とを備え、
前記微細流路が溝状の開毛管流路であり、液体の移送が毛管力を利用してなされるものである限り特に制限されない。
z=k(γcosθwt/(3η))1/2 (I)
(ただし、zが浸透距離(mm)であり、tが経過時間(秒)であり、γが液体の表面張力(mN/m)であり、ηが液体の粘性(mPa・s)であり、wが微細流路の幅(mm)であり、θが液体と開毛管壁の接触角であり、kが0.4〜0.7(好ましくは0.55〜0.65)の範囲内の値である。)
[I−1]微細流路の横断面の形状が略上向きコの字形状である:
[I−2]微細流路の幅が3mm以下(より好ましくは0.1〜1mmの範囲内)である:
[I−3]微細流路の深さが幅の2〜10倍の範囲内である:
[I−4]浸透距離zが1〜100mmの範囲内である:
[I−5]液体の表面張力γが10〜100mN/mの範囲内である:
[I−6]液体の粘性ηが1〜1000mPa・sの範囲内(好ましくは10〜1000mPa・sの範囲内、より好ましくは20〜1000mPa・sの範囲内)である:
[I−7]液体が液体供給部から液体移送目的部に到達するのに要する時間が1秒間〜30分間の範囲内である:
[I−8]微細流路が略水平である:
zf=2γcosθ/(ρgw) (II)
(ただし、zfが最高到達高さ(mm)であり、γが液体の表面張力(mN/m)であり、ρが液体の密度(g/cm3)であり、gが重力加速度(m/s2)であり、wが微細流路の幅(mm)であり、θが開毛管壁と液体の接触角である。)
[II−1]微細流路の横断面の形状が略上向きコの字形状である:
[II−2]微細流路の幅wが3mm以下(より好ましくは0.1〜1mmの範囲内)である:
[II−3]微細流路の深さが幅の2〜10倍の範囲内である:
[II−4]最高到達高さzfが5〜100mmの範囲内である:
[II−5]液体の表面張力γが10〜100mN/mの範囲内である:
[II−6]液体の密度ρが0.4〜15g/cm3の範囲内である:
η=4k2γcosθwth/(3zf 2) (III)
(ただし、ηが液体の粘性が(mPa・s)であり、kが0.4〜0.7(好ましくは0.55〜0.65)の範囲内の値であり、γが液体の表面張力(mN/m)であり、θが液体と開毛管壁との接触角であり、wが微細流路の幅(mm)であり、thが、液体が前述の最高到達高さzfの半分の高さに到達するまでの時間(秒)であり、zfが液体の最高到達高さ(mm)である。)
[III−1]微細流路の横断面の形状が略上向きコの字形状である:
[III−2]微細流路の幅wが3mm以下(より好ましくは0.1〜1mmの範囲内)である:
[III−3]微細流路の深さが幅の2〜10倍の範囲内である:
[III−4]液体の表面張力γが10〜100mN/mの範囲内である:
[III−5]最高到達高さzfが5〜100mmの範囲内である:
[III−6]液体が最高到達高さzfの半分の高さに到達するまでの時間thが
0.1秒〜24時間の範囲内である:
[III−7]液体の粘性ηが0.1〜1000mPa・sの範囲内(好ましくは10〜1000mPa・sの範囲内、より好ましくは20〜1000mPa・sの範囲内)である:
本発明の微量液体の移送方法としては、本発明の微量液体移送デバイスを用いた微量液体の移送方法であって、(A)前記微量液体移送デバイスにおける1箇所又は2箇所以上の凹状の液体供給部に、1種又は2種以上の液体を供給する工程A:を含んでいる限り特に制限されないが、中でも、2箇所以上の液体供給部に2種以上の液体を供給して、それらの液体を混合することを含む、微量液体の混合方法であることが好ましい。
本発明の微量液体移送デバイスの製造方法としては、基板上において微量液体を移送するための微量液体移送デバイスの製造方法であって、
(X)1種又は2種以上の液体を供給するための1箇所又は2箇所以上の凹状の液体供給部と、
前記液体の移送目的部位である1箇所又は2箇所以上の凹状の液体移送目的部と、
前記液体供給部から前記液体移送目的部へと連通し、前記液体供給部から前記液体移送目的部へと液体を移送させるための微細流路とを基板上に備えた基板を作製する工程X:
を含み、
前記微細流路が溝状の開毛管流路であり、液体の移送が毛管力を利用してなされ得るものである限り特に制限されない。
(x2)前記基板上に、
1種又は2種以上の液体を供給するための1箇所又は2箇所以上の凹状の液体供給部と、
前記液体の移送目的部位である1箇所又は2箇所以上の凹状の液体移送目的部と、
前記液体供給部から前記液体移送目的部へと連通し、前記液体供給部から前記液体移送目的部へと液体を移送させるための微細流路とを設ける工程x2:
前記液体の移送目的部位である1箇所又は2箇所以上の凹状の液体移送目的部と、
前記液体供給部から前記液体移送目的部へと連通し、前記液体供給部から前記液体移送目的部へと液体を移送させるための微細流路とを基板上に備えた基板を作製するための鋳型を製造する工程x3:及び、
(x4)工程x3で製造した鋳型に基板材料を供給することによって、
1種又は2種以上の液体を供給するための1箇所又は2箇所以上の凹状の液体供給部と、
前記液体の移送目的部位である1箇所又は2箇所以上の凹状の液体移送目的部と、
前記液体供給部から前記液体移送目的部へと連通し、前記液体供給部から前記液体移送目的部へと液体を移送させるための微細流路とを基板上に備えた基板を作製する工程x4:
本発明の微量液体移送デバイスの製造装置としては、本発明の微量液体移送デバイスの製造方法の各工程を実施できる装置である限り特に制限されず、製造する微量液体移送デバイスの微細流路を溝状の開毛管流路とすること以外は、公知の微細ミル加工装置や、リソグラフィー装置と同様のものである。
本発明のパラメーターの算出方法としては、本発明のパラメーター算出用デバイスと、以下の数式(II)又は(III)を利用することを特徴とするパラメーターの算出方法であって、
zf=2γcosθ/(ρgw) (II)
(ただし、zfが最高到達高さ(mm)であり、γが液体の表面張力(mN/m)であり、ρが液体の密度(g/cm3)であり、gが重力加速度(m/s2)であり、wが微細流路の幅(mm)であり、θが開毛管壁と液体の接触角である。):
η=4k2γcosθwth/(3zf 2) (III)
(ただし、ηが液体の粘性が(mPa・s)であり、kが0.4〜0.7(好ましくは0.55〜0.65)の範囲内の値であり、γが液体の表面張力(mN/m)であり、θが液体と開毛管壁との接触角であり、wが微細流路の幅(mm)であり、thが、液体が前述の最高到達高さzfの半分の高さに到達するまでの時間(秒)であり、zfが液体の最高到達高さ(mm)である。):
(P)数式(II)又は(III)の数式に含まれるパラメーターのうち、1つのパラメーター以外のパラメーターの値を調べる又は測定する工程P:及び、
(Q)工程Pで調べた又は測定した値を数式(II)又は(III)の数式に代入し、前記1つのパラメーターの値を算出する工程Q:
を含んでいる限り特に制限されない。
(R)数式(II)及び(III)のうち、工程P及び工程Qで用いていない方の数式を選択する工程R:
(S)工程Rで選択した数式のパラメーターのうち、1つのパラメーター以外のパラメーターの値を調べる又は測定する工程S:及び、
(T)工程Sで調べた又は測定した値を、工程Rで選択した数式に代入し、工程Sにおける1つのパラメーターの値を算出する工程T:
を含み、
前記工程Sにおける1つのパラメーター以外のパラメーターの値を調べる又は測定することが、工程Qで算出したパラメーターの値を用いることであってもよい。
PMMA樹脂製の基板を用意し、微細ミル加工装置(「MM100」、モディアシステムズ株式会社製)を用いて、平面図が図1の例えば10sの部分に示されるような微量液体移送デバイスを作製した。このデバイスは、互いに平行な6本の一直線状の微細流路を備えており、図1に示される微細流路の下端に液体供給部を、上端に液体移送目的部を備えている。微細流路は溝状の開毛管流路であり、横断面の形状は上向きコの字形状とした。微細流路の幅は0.2mm、深さは0.4mm、長さ100mmとした。なお、後述するように、本実施例の微量液体移送試験では、液体として、親油性の液体、すなわち、シリコンオイルの1種であるポリジメチルシロキサン(PDMS)を用いたため、微細流路に対する親水化処理は行わなかった。
PMMA樹脂製の基板を用意し、微細ミル加工装置(「MM100」、モディアシステムズ株式会社製)を用いて、平面図が図2に示されるような微量液体移送デバイスを作製した。このデバイスの円形の液体供給部S1、S2の直径はそれぞれ3mmとし、正方形の液体移送目的部Mの一辺は1mmとした。また、微細流路C1及びC2の長さはそれぞれ40mm(20mm+20mm)とした。さらに、液体供給部S1、S2の深さはそれぞれ2mmとし、液体移送目的部の深さは0.6mmとした。また、溝状の開毛管流路である微細流路の横断面の形状は上向きコの字形状とし、微細流路の幅は0.2mm。深さは0.6mmとした。なお、この微量液体移送デバイスの微細流路の長さ及び幅は、後述の液体を液体供給部に供給した場合に、液体移送目的部に到達するように、前述の数式(I)で調整したものである。
微量液体移送デバイスの液体供給部S1に20μL程度の液体aを、液体供給部S2に20μL程度の液体bを同時に滴下したところ、液体aは微細流路C1内を、液体bは微細流路C2内を移動し、両液体はそれぞれ5秒以内に液体移送目的部に到達し、液体移送目的部にて両液体は混合された。混合後、液体移送目的部におけるGFP蛍光を経時的に観察した結果を図2に示す。混合後、時間が経過するにつれて、GFP蛍光の強度が高くなっていることから、液体供給部に供給された2種の液体が液体移送目的部で混合して正しく反応したことが示された。
実施例2と同様の製法を用いて、平面図が図4に示されるような微量液体移送デバイス、及び、図5に示されるような微量液体移送デバイスをそれぞれ作製した。図4のデバイスの円形の液体供給部の直径(φ)は4mmとし、正方形の液体移送目的部の1辺の長さは2mmとした。また、図5のデバイスの円形の液体供給部の直径は4mmとし、円形の液体移送目的部の直径は2mmとした。また、図4及び図5のデバイスの微細流路の長さは、図4や図5に示すとおりとした。これらの微細流路における曲がった部分は、液体がよりスムーズに流れるように、円弧曲線を利用した。液体供給部に近い方の分岐点(第1分岐点)から次の分岐点(第2分岐点)に至るまでの曲がった部分ではでは曲率半径2mm(直径4mm)の円弧を利用し、第2分岐点から液体移送目的部に至るまでの曲がった部分では曲率半径1mm(直径2mm)の円弧を利用した。図4及び図5のデバイスのいずれでも、液体供給部の深さは0.3mmとし、液体移送目的部の深さは1.2mm又は1.7mmとした。また、溝状の開毛管流路である微細流路の横断面の形状は上向きコの字形状とし、微細流路の幅は0.2mm、深さは0.6mmとした。液体移送目的部を微細流路よりも深くすることにより、液体移送目的部から微細流路に液体が逆流することを防止し、微細流路を液体供給部よりも深くすることにより、液体が移送目的部で混合するまで微細流路から液体供給部に液体が逆流することを防止した。なお、図4及び図5のデバイスのいずれでも、微細流路の長さ及び幅は、後述の液体を液体供給部に供給した場合に、液体移送目的部に到達するように、前述の数式(I)で調整したものである。また、図4や図5では、液体供給部はそれぞれ1つずつであり、液体移送目的部はそれぞれ4つずつであるが、液体供給部の数や液体移送目的部の数は使用目的に合わせて増減させてもよい。例えば、1箇所の液体供給部に対して2n箇所(ただしnは1以上の整数であり、好ましくは1〜5の範囲内の整数である)の液体移送目的部を設けてもよい。
Claims (15)
- 基板上において微量液体を移送するための微量液体移送デバイスであって、
前記微量液体移送デバイスが基板を備え、
前記基板上に、
(a)1種又は2種以上の液体を供給するための1箇所又は2箇所以上の凹状の液体供給部と、
(b)前記液体の移送目的部位である1箇所又は2箇所以上の凹状の液体移送目的部と、
(c)前記液体供給部から前記液体移送目的部へと連通し、前記液体供給部から前記液体移送目的部へと液体を移送させるための微細流路とを備え、
前記微細流路が溝状の開毛管流路であり、液体の移送が毛管力を利用してなされることを特徴とする微量液体移送デバイス。 - 微細流路の溝の横断面が、略上向きコの字形状であることを特徴とする請求項1に記載の微量液体移送デバイス。
- 微細流路の幅が0.03mm〜3mmの範囲内であり、深さが0.06mm〜15mmの範囲内であることを特徴とする請求項1又は2に記載の微量液体移送デバイス。
- 微細流路の深さの、幅に対する比が、1〜12の範囲内であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の微量液体移送デバイス。
- 液体供給部から液体移送目的部までの微細流路の長さ(mm)の値が、以下の数式(I)により算出されるz(浸透距離)の値(mm)以下になるように、微細流路の長さ(mm)及び/又は幅(mm)が調整されたことを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の微量液体移送デバイス:
z=k(γcosθwt/(3η))1/2 (I)
(ただし、zが浸透距離(mm)であり、tが経過時間(秒)であり、γが液体の表面張力(mN/m)であり、ηが液体の粘性(mPa・s)であり、wが微細流路の幅(mm)であり、θが液体と開毛管壁との接触角であり、kが0.4〜0.7の範囲内の値である。)。 - 微細流路の平面視の形状が一直線状であることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の微量液体移送デバイス。
- 請求項1〜6のいずれか1項に記載の微量液体移送デバイスを用いた微量液体の移送方法であって、
(A)前記微量液体移送デバイスにおける1箇所又は2箇所以上の凹状の液体供給部に、1種又は2種以上の液体を供給する工程A:
を含むことを特徴とする微量液体の移送方法。 - さらに、(B)微量液体移送デバイスにおける1箇所又は2箇所以上の凹状の液体移送目的部で、2種以上の液体を混合させる工程B:
を含むことを特徴とする請求項7に記載の微量液体の移送方法。 - さらに、(a1)微量液体移送デバイスにおける1箇所又は2箇所以上の凹状の液体移送目的部に、1種又は2種以上の液体を供給する工程a1:及び、
(b1)液体供給部に供給した前記液体と、液体移送目的部に供給した液体とを、液体移送目的部で混合させる工程b1:
を含むことを特徴とする請求項7に記載の微量液体の移送方法。 - 以下の数式(I)により算出されるz(浸透距離)の値(mm)が、液体供給部から液体移送目的部までの微細流路の長さの値(mm)以上になるように、移送に要する経過時間t(秒)、液体の表面張力(mN/m)及び液体の粘性(mPa・s)から選択される1種又は2種以上を調整されたことを特徴とする請求項7〜9のいずれか1項に記載の微量液体の移送方法:
z=k(γcosθwt/(3η))1/2 (I)
(ただし、zが浸透距離(μm)であり、tが経過時間(秒)であり、γが液体の表面張力(mN/m)であり、ηが液体の粘性(mPa・s)であり、wが微細流路の幅(μm)であり、θが液体と開毛管壁との接触角であり、kが0.4〜0.7の範囲内の値である。)。 - 基板上において微量液体を移送するための微量液体移送デバイスの製造方法であって、
(X)1種又は2種以上の液体を供給するための1箇所又は2箇所以上の凹状の液体供給部と、
前記液体の移送目的部位である1箇所又は2箇所以上の凹状の液体移送目的部と、
前記液体供給部から前記液体移送目的部へと連通し、前記液体供給部から前記液体移送目的部へと液体を移送させるための微細流路とを基板上に備えた基板を作製する工程X:
を含み、
前記微細流路が溝状の開毛管流路であり、液体の移送が毛管力を利用してなされ得る、微量液体移送デバイスの製造方法。 - 工程Xが、
(x1)基板を用意する工程x1:及び、
(x2)前記基板上に、
1種又は2種以上の液体を供給するための1箇所又は2箇所以上の凹状の液体供給部と、
前記液体の移送目的部位である1箇所又は2箇所以上の凹状の液体移送目的部と、
前記液体供給部から前記液体移送目的部へと連通し、前記液体供給部から前記液体移送目的部へと液体を移送させるための微細流路とを設ける工程x2:
を含み、
前記微細流路が溝状の開毛管流路であり、液体の移送が毛管力を利用してなされ得る、請求項11に記載の微量液体移送デバイスの製造方法。 - 工程Xが、
(x3)1種又は2種以上の液体を供給するための1箇所又は2箇所以上の凹状の液体供給部と、
前記液体の移送目的部位である1箇所又は2箇所以上の凹状の液体移送目的部と、
前記液体供給部から前記液体移送目的部へと連通し、前記液体供給部から前記液体移送目的部へと液体を移送させるための微細流路とを基板上に備えた基板を作製するための鋳型を製造する工程x3:及び、
(x4)工程x3で製造した鋳型に基板材料を供給することによって、
1種又は2種以上の液体を供給するための1箇所又は2箇所以上の凹状の液体供給部と、
前記液体の移送目的部位である1箇所又は2箇所以上の凹状の液体移送目的部と、
前記液体供給部から前記液体移送目的部へと連通し、前記液体供給部から前記液体移送目的部へと液体を移送させるための微細流路とを基板上に備えた基板を作製する工程x4:
を含み、
前記微細流路が溝状の開毛管流路であり、液体の移送が毛管力を利用してなされ得る、請求項11に記載の微量液体移送デバイスの製造方法。 - 請求項6に記載の微量液体移送デバイスと、以下の数式(II)又は(III)を利用することを特徴とするパラメーターの算出方法であって、
zf=2γcosθ/(ρgw) (II)
(ただし、zfが最高到達高さ(mm)であり、γが液体の表面張力(mN/m)であり、ρが液体の密度(g/cm3)であり、gが重力加速度(m/s2)であり、wが微細流路の幅(mm)であり、θが開毛管壁と液体の接触角である。):
η=4k2γcosθwth/(3zf 2) (III)
(ただし、ηが液体の粘性が(mPa・s)であり、kが0.4〜0.7の範囲内の値であり、γが液体の表面張力(mN/m)であり、θが液体と開毛管壁との接触角であり、wが微細流路の幅(mm)であり、thが、液体が前述の最高到達高さzfの半分の高さに到達するまでの時間(秒)であり、zfが液体の最高到達高さ(mm)である。):
(P)数式(II)又は(III)の数式に含まれるパラメーターのうち、1つのパラメーター以外のパラメーターの値を調べる又は測定する工程P:及び、
(Q)工程Pで調べた又は測定した値を数式(II)又は(III)の数式に代入し、前記1つのパラメーターの値を算出する工程Q:
を含むことを特徴とするパラメーターの算出方法。 - (R)数式(II)及び(III)のうち、工程P及び工程Qで用いていない方の数式を選択する工程R:
(S)工程Rで選択した数式のパラメーターのうち、1つのパラメーター以外のパラメーターの値を調べる又は測定する工程S:及び、
(T)工程Sで調べた又は測定した値を、工程Rで選択した数式に代入し、工程Sにおける1つのパラメーターの値を算出する工程T:をさらに含み、
前記工程Sにおける1つのパラメーター以外のパラメーターの値を調べる又は測定することが、工程Qで算出したパラメーターの値を用いることを特徴とする請求項14に記載のパラメーターの算出方法。
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