JP2015087616A - フィルタの設計方法及びそのフィルタを備えた音響再生装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】 予測符号化方式により符号化された音響信号を復号化して再生する際に、量子化雑音を有効に除去して再生音の主観的品質を向上させる。【解決手段】 量子化雑音除去のためのフィルタは、タップ長をパラメータとするフィルタ関数の族でその特性が規定される複数のディジタルフィルタであってフィルタ係数が正負で対称であるようなディジタルフィルタから選定され、ここで、フィルタ関数の族は、その伝達関数において、その利得が、零周波数における1からナイキスト周波数における0まで単調に減少する曲線となるようにフィルタ係数が決定されている。また、フィルタ関数の族からの特定のフィルタ関数の選定は、原信号と量子化雑音について、タップ長をパラメータとする関数の族で規定される複数のフィルタのそれぞれを適用した場合に除去されるエネルギーを算出し、各タップ長ごとに求めたそれらのエネルギー差に基づいて行われる。【選択図】 図1

Description

本発明は、フィルタの設計方法及びそのフィルタを備えた音響再生装置に関し、特に、音響信号の符号化方式として適応的差分パルス符号変調方式を採用する場合のフィルタの設計方法及びそのフィルタを備えた音響再生装置に関する。
時間軸方向に強い相関を有するディジタル信号を符号化する方式としては、予測値との差分を符号化することで符号量を削減する予測符号化方式がある。音響信号もかかる性質を有する信号であり、その符号化には、予測符号化方式の一つである適応的差分パルス符号変調方式(Adaptive Differential Pulse Code Modulation)(以下、「ADPCM符号化方式」と称す)が広く利用されている。このADPCM符号化方式は、予測符号化において、予測係数と量子化幅を適応的に変更する方式である。
図5(a)は、ADPCM符号化方式に基づき、原信号s(n)からADPCM出力信号x(n)を生成するADPCM符号化装置の典型的な構成を示すブロック図である。同図に示すADPCM符号化装置は、減算器11、量子化器12、逆量子化器13、加算器14、及び予測器15を備えている。
図5(a)において、音響信号のサンプルnについて、減算器11により、原信号s(n)から予測値p(n)を差し引くことにより、差分信号d(n)が求められる。なお、予測値p(n)については後述する。量子化器12は、入力する差分信号d(n)に対して適応量子化関数Qを施すことにより、符号化装置の出力としてのADPCM出力信号x(n)を出力する。逆量子化器13は、入力されるADPCM出力信号x(n)に対して適応逆量子化関数Q−1を施すことにより、量子化差分信号Q−1(x(n))を出力する。逆量子化器13から出力された量子化差分信号Q−1(x(n))は、加算器14及び予測器15に入力される。加算器14は、量子化差分信号Q−1(x(n))と予測値p(n)とを加算して再生信号y(n)として出力する。予測器15は、次の原信号s(n)を予測するもので、ADPCM符号化方式においては、入力する再生信号y(n)について、少なくとも直近の過去2サンプルの再生信号y(n−1)及びy(n−2)を記憶しており、それらと量子化差分信号Q−1(x(n))に基づき、式(1)により得られた結果を前述の予測値p(n)として出力する。
p(n)=α×y(n−1)+α×y(n−2) ・・・(1)
ここで、α及びαは予測係数である。
図5(a)に示されたADPCM符号化装置から出力されたADPCM出力信号x(n)を復号化するためのADPCM復号化装置については、同図(b)に示している。但し、同図(a)を見れば分かる通り、同図(b)に示したADPCM復号化装置の構成は、同図(a)に示したADPCM符号化装置の一部として含まれる構成と同一である。従って、その説明を省略する。
特開2008−298881号公報
上述のADPCM符号化方式を一例とする予測符号化方式は、高速な復号化処理が可能で、ハードウェア実装時の回路規模も小さくなるので、処理コスト等の制約から変換符号化が使用できない場面で特に有効な方式である。しかしながら、同程度の圧縮比で比較した場合、予測符号化方式は、変換符号化方式に比べて主観的品質が劣るという課題がある。その主要因は、量子化器の処理により本質的に生ずる量子化雑音による。
ここで、図5(a)における原信号s(n)と再生信号y(n)の差である量子化雑音n(n)は、式(2)に示すように、結果的に差分信号(予測誤差)d(n)に対する量子化誤差そのものに帰着する。
(n)=s(n)−y(n)
=d(n)+p(n)−(Q−1(x(n))+p(n))
=d(n)−Q−1(Q(d(n))) ・・・(2)
そこで、量子化器12における量子化係数をqとした場合、量子化雑音n(n)は、剰余d(n)mod qで表現できるので、量子化係数qに対して差分信号(予測誤差)d(n)の振幅幅が大きく、ある程度の複雑性を有していれば、量子化雑音n(n)は、周波数領域全域に一様なエネルギーを有する信号とみなせる。一方、符号化の対象となる楽音の原信号s(n)は、一般にエネルギーが低周波域に集中し、高周波になるに従って減衰する傾向がある。
そこで、原信号s(n)のエネルギーと量子化雑音n(n)のエネルギーとを、想定する周波数全域に渡って比較したグラフを図6に示す。同図で明らかなように、楽音によっては、高周波域で量子化雑音n(n)のエネルギーが原信号s(n)のエネルギーを上回る場合があり、これが上述の主観的品質の劣化に直接影響していると考えられる。
なお、特許文献1には、ADPCM符号化方式で符号化された音声信号を復号化して再生する音声再生装置において、再生時にノイズを抑制して再生する技術が開示されているが、その目的は、特定の処理、具体的には16kbpsADPCM符号化におけるノイズフロアや無線エラー時のノイズを低減することであり(段落[0015])、量子化雑音に焦点を当てるものではない。また、その構成も、ノイズ判定の結果であるノイズの有無に応じて、フィルタの遮断周波数を変更(例えば、3000Hzから2000Hzに下げる)する、という単純なものである(段落[0022]〜[0023]、[0052]〜[0053])。
本発明は上述のような事情から為されたものであり、本発明の目的は、予測符号化方式により符号化された音響信号を復号化して再生する際に、その再生信号に含まれる量子化雑音を有効に除去して再生音の主観的品質を向上させることができるフィルタの設計方法及びそのフィルタを備えた音響再生装置を提供することにある。
上記目的を達成するため、本発明のフィルタの設計方法は、予測符号化に基づく符号化方式により符号化された音響信号を復号化して再生する音響再生装置における復号化後の信号に含まれる量子化雑音を除去するためのフィルタの設計方法であって、前記フィルタは、タップ長をパラメータとするフィルタ関数の族でその特性が規定される複数のディジタルフィルタであってフィルタ係数が正負で対称であるようなディジタルフィルタから選定され、前記フィルタ関数の族は、その伝達関数において、その利得が、零周波数における1からナイキスト周波数における0まで単調に減少する曲線となるように前記フィルタ係数が決定されていることを要旨とする。なお、前記ディジタルフィルタとしては、FIRディジタルフィルタが好適である。
このとき、前記フィルタ関数の族h(n)の前記伝達関数H(f)を、下の第一式で規定し、前記零周波数における1からナイキスト周波数における0まで単調に減少する曲線を規定するために、下の第二及び第三式を前記第一式に対する条件式として規定することが好適である。
Figure 2015087616
ここで、fは、F/F∈[0,1]、すなわち、周波数F[Hz]をサンプリング周波数F[Hz]で除した正規化周波数であり、Lは、タップ長であり、正の奇数である。
(1/2)=0
Figure 2015087616
更に、前記フィルタ関数の族からの特定のフィルタ関数の選定は、個々の音響について、その原信号と、その原信号から得られた再生信号との差である前記量子化雑音を求め、前記原信号と前記量子化雑音の両者について、前記タップ長をパラメータとする関数の族で規定される複数のディジタルフィルタのそれぞれを適用した場合に除去されるエネルギーを算出し、個々のタップ長ごとに、前記原信号に係る除去エネルギーと前記量子化雑音に係る除去エネルギーとの差を求め、その差が最も小さいタップ長に係る前記フィルタ関数をその特性として有するディジタルフィルタを最適なフィルタとして選定することを要旨とする。
このとき、前記除去されるエネルギーは、前記原信号又は前記量子化雑音に対して、注目するタップ長に係るフィルタの関数を周波数領域上で反転して得たハイパスフィルタを畳み込んだ二乗和として得られる。
また、前記タップ長L=3,5,7,9について前記算出処理を行うことが好適である。
また、上記目的を達成するため、本発明の音響再生装置は、予測符号化に基づく符号化方式により符号化された音響信号を復号化して再生信号を生成する復号化部と、前記復号化部から出力された前記再生信号に含まれる量子化雑音を除去するためのフィルタと、を備える音響再生装置であって、前記フィルタは、タップ長をパラメータとするフィルタ関数の族でその特性が規定される複数のディジタルフィルタであってフィルタ係数が正負で対称であるようなディジタルフィルタから選定され、前記フィルタ関数の族は、その伝達関数において、その利得が、零周波数における1からナイキスト周波数における0まで単調に減少する曲線となるように前記フィルタ係数が決定されていることを要旨とする。
本発明によれば、予測符号化に基づく符号化方式により符号化された音響信号を復号化して再生する際に、その再生信号に含まれる量子化雑音を有効に除去して再生音の主観的品質を向上させることができる。
特に、上述の具体的なフィルタ関数の群を規定する式は、原信号と量子化雑音の周波数領域におけるエネルギー分布の特徴を鑑みて定めているので、確実に有効である。
また、上述のフィルタ関数の族からの特定のフィルタ関数の選定においては、個々の音響について実際に量子化雑音を求めて、その量子化雑音に基づいてフィルタの選定を行っているので、最適なフィルタが期待できる。
本発明のフィルタの設計方法の一実施形態の手順を示すフローチャートである。 最適なフィルタ関数を選定する処理の機能構成図である。 表1に示したフィルタ係数h(n)により定まる関数に基づくフィルタの周波数特性を、各タップ長Lについて示す図である。 本発明のフィルタの設計方法により選定されたフィルタを後段に含む音響再生装置の構成ブロック図である。 ADPCM符号化装置及びADPCM復号化装置の構成を示すブロック図である。 原信号s(n)のエネルギーと量子化雑音n(n)のエネルギーとを、想定する周波数全域に渡って比較したグラフを示す図である。
以下、図面を参照して、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
想定する周波数領域における原信号s(n)のエネルギーと量子化雑音n(n)のエネルギーとの関係は、図6に示したようになっているので、予測符号化の一例であるADPCM符号化方式により符号化された音響信号を復号して再生する音響再生装置における復号化の後処理用に設けられるフィルタを適切に設計することにより、量子化雑音n(n)を有効に除去し得ることに着目した。
まず、前提として、通過域の品質を維持するために、かかるフィルタは、通過域の利得と位相を変えない特性を有していることが望ましい。また、図6に示すように、音響信号の周波数スペクトルは緩やかに変化するので、どの周波数以上を除去すべきか、その閾値が曖昧であることから、位相が保たれる特性(線形位相特性)を考慮する必要がある。従って、フィルタとしては、柔軟な特性が設計できるよう、線形位相特性のディジタルフィルタ(特に、有限インパルス応答(Finite Impulse Response:FIR)フィルタ)により実現することが好適である。
図1は、本発明のフィルタの設計方法の一実施形態の手順を示すフローチャートである。
そこで、かかるフィルタの設計方法としては、同図(a)を参照して、まず、フィルタ関数族を規定する(ステップS1)。具体的には、タップ長Lをパラメータとするディジタルフィルタh(n)を考える。ここで、制約として、h(n)が零位相特性を有するよう、フィルタ係数を正負で対称となるようにする。すなわち、h(n)=h(−n)とする。すると、当該フィルタの伝達関数H(f)は、式(3)のように表現される。なお、ここでLは正の奇数であり、fは、F/F∈[0,1]、すなわち、周波数F[Hz]をサンプリング周波数F[Hz]で除した正規化周波数である。
Figure 2015087616
式(3)に対して更に以下の2つの制約条件を導入する。
条件[1]:式(4)で示すように、ナイキスト周波数f=1/2における利得を零にする。
(1/2)=0 ・・・(4)
条件[2]:低周波域の特性を平坦にするため、式(5)に示すように、零周波数f=0に関するm階微分までの条件を導入する。
Figure 2015087616
条件[1]における式(4)と条件[2]における式(5)とを式(3)に代入したものを連立させて解くことで、一意にフィルタ係数h(n)を求めることができる。このようにステップS1においては、各タップ長Lについて求められたフィルタ係数h(n)により定まるフィルタ関数の各タップ長についての集合体をフィルタ関数族として規定する。例として、タップ長L={3,5,7,9}について求めたフィルタ係数h(n)の一例を表1に示す。
Figure 2015087616
また、表1に示したフィルタ係数h(n)により定まる関数に基づくフィルタの周波数特性を、各タップ長Lについて、図3に示す。
図1(a)に戻り、次に、ステップS1で規定されたフィルタ関数から、個々の音響信号について、量子化雑音n(n)を除去するのに最適なフィルタ関数(特定のタップ数)を選定する(ステップS2)。このステップS2の処理の詳細を示すフローチャートを図1(b)に示し、その処理の機能構成図を図2に示す。概要としては、量子化雑音n(n)のエネルギーが原信号s(n)のエネルギーを上回る帯域に対して、より除去機能が働くフィルタが品質向上に有効であるので、原信号s(n)と量子化雑音n(n)の周波数分布を比較することにより、タップ長Lを決定して特定のフィルタ関数を選定する。
詳細には、図1(b)及び図2を参照して、まず、フィルタ関数を選定しようとする音響を選択してくる(ステップS21)。次に、選択した音響の原信号s(n)から、図5に示すような使用する符号化装置により再生信号y(n)を求め、更に、図2に示すように、減算器2により原信号s(n)から再生信号y(n)を減算して量子化雑音n(n)を求める(ステップS22)。
次に、想定するタップ長Lのうちから1つのタップ長Lを選択することにより、ステップS1において規定したフィルタ関数族の内から1つの関数を選択して1つのフィルタh(n)を選択する(ステップS23)。そして、選択したフィルタh(n)により除去される成分を得るために、その通過・遮断特性を逆にしたハイパスフィルタh (n)を導入する(ステップS24)。なお、表記の便宜上、フィルタhに対応するハイパスフィルタをhと以後表記する。そこで、フィルタh(n)に対応するハイパスフィルタh (n)は、それぞれの伝達関数の関係が式(6)で表されることから、求められる。
(f)=1−H(f) ・・・(6)
図3には、ハイパスフィルタの例として、タップ長L=9のフィルタに対応するハイパスフィルタが示されている。
選択したタップ長Lにおけるハイパスフィルタh (n)が得られると、次に、原信号s(n)及び量子化雑音n(n)について、選択したフィルタh(n)により除去される除去されるエネルギーE及びエネルギーEを求める(ステップS25)。各エネルギーE及びEは、ステップS24において求めたハイパスフィルタh (n)を利用して、それぞれ式(7)、式(8)により算出できる。すなわち、ハイパスフィルタh (n)を畳み込んだ[s*h ](n)及び[n*h ](n)の二乗和である 。
Figure 2015087616
次に、ステップS25で求めたそれぞれのエネルギーから、それらの差の絶対値|E−E|を求める(ステップS26)。
そして、ステップS23〜ステップS26までの処理を、想定するタップ長L、言い換えれば想定するフィルタ関数すべてについて行う(ステップS27)。つまり、ステップS27において、まだ検討すべきフィルタ関数が残っていればステップS23に戻って次のタップ長Lを選択し、一方、すべて終了したならば、ステップS28に移行する。なお、想定するタップ長L、すなわちいくつまでのタップ長について検討するかの範囲については、最適なタップ長Lが得られる期待と、得られた最適なタップ長Lによるフィルタのための計算量又は回路規模とのトレードオフの観点から決めればよい。つまり、大きなタップ長Lに処理を延ばせば延ばすほど最適なタップ長Lが求まる可能性は高いが、逆にそのタップ長Lを求める計算量又は回路規模は大きくなり、またそれを実現するフィルタリング処理の計算量又は回路規模は大きくなってしまう。
ところで、エネルギーEよりエネルギーEが小さい場合、選択したフィルタh(n)により除去される帯域では原信号s(n)よりも量子化雑音n(n)のエネルギーが大きいということであり、より低域までフィルタリングを行ってもよいということが分かる。逆に、エネルギーEよりエネルギーEが大きい場合、原信号s(n)よりも量子化雑音n(n)のエネルギーが小さいということであり、過剰にフィルタリングをしているといえる。かかる観点から、ステップS26で求めた、各タップ長L、言い換えれば各フィルタ、についての各エネルギー差絶対値|E−E|が、小さいほど最適にフィルタリングを行っていることとなる。従って、ステップS28では、各エネルギー差絶対値|E−E|を比較する。そして、それが最も小さいタップ長で定まるフィルタ関数を選定する(ステップS29)。
次に、上述したフィルタの設計方法により選定されたフィルタを後処理フィルタとして含む音響再生装置の一実施形態について説明する。図4は、かかる音響再生装置の構成ブロック図である。同図に示した音響再生装置は、逆量子化器13、加算器14、予測器15、フィルタ1、及びスピーカ50を少なくとも備えている。なお、増幅器等は省略している。そこで、逆量子化器13は、入力されるADPCM出力信号x(n)に対して逆量子化を施して量子化差分信号Q−1(x(n))を出力する。予測器15は、入力される量子化差分信号Q−1(x(n))及び再生信号y(n)に基づいて、予測値p(n)を生成する。加算器14は、逆量子化器13から出力された量子化差分信号Q−1(x(n))と、予測器15から出力された予測値p(n)を加算して再生信号y(n)として出力する。フィルタ1は、前述のように、特定の音源に対して最適に設計されたフィルタであり、入力される再生信号y(n)に対してフィルタリング処理を行う。そして、最終的に音響としてスピーカ50から出力される。
具体的ないくつかの音響について評価を実施した。なお、この実施例では、音質の評価としてPEAQ客観評価法(ITU−R勧告BS.1387-1)を採用した。PEAQは、基準信号と評価対象信号を入力とし、基準信号からの音質劣化度をODG(Objective Difference Grade)で表すというものである。このODGと評価語の対応を表2に示す。
Figure 2015087616
今回、具体的な音響信号として、表3に示すような性質の異なる6つの信号(音響番号T1〜T6)を例として採用した。ここで、これらの音響信号はすべて、サンプリング周波数44.1[kHz]の16[bit]で直線量子化された2[channel]のディジタル信号である。また、図1の手順における想定するタップ長Lとしては、{3,5,7,9}の範囲とした。
Figure 2015087616
各音響信号T1〜T6について、フィルタなしの場合の再生信号y(n)についてのODGと、L=3,5,7,9の4つのフィルタを採用した場合の再生信号y(n)についてのODGを表4に示す。なお、音質比較に使用した基準信号はすべて符号化前の原信号である。表4から分かることは、フィルタを採用した場合には、フィルタなしの場合と比較してODGが概して向上している。故に、まず、本発明のフィルタ設計方法におけるフィルタ関数族の規定のしかたは有意に効果があると評価できる。詳細には、表4にあるように、音響番号T1についてL=9が最適であり、また、T2についてはL=3、T3についてはL=7、T4についてはL=5、T5についてはL=7、T6についてはL=9が最適と評価された。特に、音響番号T5については、L=7のとき、ODGが2.13上昇している。
Figure 2015087616
一方、本発明のフィルタ設計方法による、タップ長L、すなわち特定のフィルタ関数、の選定の結果を表5に示す。これによれば、音響番号T3及びT6については、本発明により選定されたタップ長Lと最適なODGを示すタップ長L(表4)が一致した。また、他の音響番号についても近接したタップ長Lが選定されており、表4の最適なODGと、本発明により選定されたLについて表4が示すODGとの差は、いずれも僅かである。また、本発明により選定されたタップ長Lについて表4が示すODGと、フィルタなしの場合のODGとから、ODGは平均0.76程度向上していることが分かる。
Figure 2015087616
以上のように、上述の本発明の実施形態によれば、音響再生装置の復号化処理の後処理として入れるフィルタの特性を表す関数として、式(3)〜(5)により規定される関数族を採用しているので、例えば単純な遮断周波数を有するフィルタと比較して、個々の音響に応じて量子化雑音をきめ細やかに排除して主観的品質を向上させることができる。また、短いタップ長のフィルタで実装できるので、ADPCM符号化方式を代表とする符号化方式の特徴である処理速度や回路規模の利点を生かしつつ、再生音の主観的品質を向上させることができる。
特に、式(3)〜(5)は、原信号と量子化雑音の周波数領域におけるエネルギー分布の特徴を鑑みて定めているので、極めて有効である。
また、フィルタ関数の族からの特定のフィルタ関数の選定においては、個々の音響について実際に量子化雑音を求めて、その量子化雑音に基づいてフィルタの選定を行っているので、最適なフィルタが期待できる。
本発明のフィルタの設計方法及びそのフィルタを備えた音響再生装置は、音響信号を、例えばADPCM符号化方式をはじめとする予測符号化方式で符号化する場合に採用される。
1 フィルタ
2 加算器
3 ハイパスフィルタ
11 減算器
12 量子化器
13 逆量子化器
14 加算器
15 予測器
50 スピーカ

Claims (7)

  1. 予測符号化に基づく符号化方式により符号化された音響信号を復号化して再生する音響再生装置における復号化後の信号に含まれる量子化雑音を除去するためのフィルタの設計方法であって、
    前記フィルタは、タップ長をパラメータとするフィルタ関数の族でその特性が規定される複数のディジタルフィルタであってフィルタ係数が正負で対称であるようなディジタルフィルタから選定され、前記フィルタ関数の族は、その伝達関数において、その利得が、零周波数における1からナイキスト周波数における0まで単調に減少する曲線となるように前記フィルタ係数が決定されていることを特徴とするフィルタの設計方法。
  2. 前記フィルタ関数の族h(n)の前記伝達関数H(f)を、下の第一式で規定し、
    前記零周波数における1からナイキスト周波数における0まで単調に減少する曲線を規定するために、下の第二及び第三式を前記第一式に対する条件式として規定することを特徴とする請求項1に記載のフィルタの設計方法。
    Figure 2015087616
    ここで、fは、F/F∈[0,1]、すなわち、周波数F[Hz]をサンプリング周波数F[Hz]で除した正規化周波数であり、Lは、タップ長であり、正の奇数である。
    (1/2)=0
    Figure 2015087616
  3. 前記フィルタ関数の族からの特定のフィルタ関数の選定は、個々の音響について、その原信号と、その原信号から得られた再生信号との差である前記量子化雑音を求め、前記原信号と前記量子化雑音の両者について、前記タップ長をパラメータとする関数の族で規定される複数のディジタルフィルタのそれぞれを適用した場合に除去されるエネルギーを算出し、個々のタップ長ごとに、前記原信号に係る除去エネルギーと前記量子化雑音に係る除去エネルギーとの差を求め、その差が最も小さいタップ長に係る前記フィルタ関数をその特性として有するディジタルフィルタを最適なフィルタとして選定することを特徴とする請求項2に記載のフィルタの設計方法。
  4. 前記除去されるエネルギーは、前記原信号又は前記量子化雑音に対して、注目するタップ長に係るフィルタの関数を周波数領域上で反転して得たハイパスフィルタを畳み込んだ二乗和として得ることを特徴とする請求項3に記載のフィルタの設計方法。
  5. 前記タップ長L=3,5,7,9について前記算出処理を行うことを特徴とする請求項3又は4に記載のフィルタの設計方法。
  6. 前記ディジタルフィルタは、FIRディジタルフィルタであることを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載のフィルタの設計方法。
  7. 予測符号化に基づく符号化方式により符号化された音響信号を復号化して再生信号を生成する復号化部と、
    前記復号化部から出力された前記再生信号に含まれる量子化雑音を除去するためのフィルタと、
    を備える音響再生装置であって、
    前記フィルタは、タップ長をパラメータとするフィルタ関数の族でその特性が規定される複数のディジタルフィルタであってフィルタ係数が正負で対称であるようなディジタルフィルタから選定され、前記フィルタ関数の族は、その伝達関数において、その利得が、零周波数における1からナイキスト周波数における0まで単調に減少する曲線となるように前記フィルタ係数が決定されていることを特徴とする音響再生装置。
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WO2005057550A1 (ja) * 2003-12-15 2005-06-23 Matsushita Electric Industrial Co., Ltd. 音声圧縮伸張装置
JP2010529511A (ja) * 2007-06-14 2010-08-26 フランス・テレコム 符号器の量子化ノイズを復号化中に低減するための後処理方法及び装置

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