JP2015017308A - 蒸着マスク、樹脂層付き金属マスク、および有機半導体素子の製造方法 - Google Patents

蒸着マスク、樹脂層付き金属マスク、および有機半導体素子の製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】大型化した場合でも高精細化と軽量化の双方を満たすことができる蒸着マスクを提供すること。
【解決手段】スリットが設けられた金属マスクと、前記金属マスクの表面に位置し、前記スリットと重なる位置に蒸着作製するパターンに対応した開口部が縦横に複数列配置された樹脂マスクと、が積層されてなり、前記樹脂マスクを構成する樹脂層を、σx(Z)=E・z/Rで算出される応力σx(Z)が0.01MPa〜5MPaとする。ただし、式(1)中、Eはヤング率(MPa)、zは樹脂層の厚さの1/2(mm)、Rは曲率半径(mm)とする。
【選択図】図2

Description

本発明は、蒸着マスク、樹脂層付き金属マスク、および有機半導体素子の製造方法に関する。
従来、有機EL素子の製造において、有機EL素子の有機層或いはカソード電極の形成には、例えば、蒸着すべき領域に多数の微細なスリットを微小間隔で平行に配列してなる金属から構成される蒸着マスクが使用されていた。この蒸着マスクを用いる場合、蒸着すべき基板表面に蒸着マスクを載置し、裏面から磁石を用いて保持させているが、スリットの剛性は極めて小さいことから、蒸着マスクを基板表面に保持する際にスリットにゆがみが生じやすく、高精細化或いはスリット長さが大となる製品の大型化の障害となっていた。
スリットのゆがみを防止するための蒸着マスクについては、種々の検討がなされており、例えば、特許文献1には、複数の開口部を備えた第一金属マスクを兼ねるベースプレートと、前記開口部を覆う領域に多数の微細なスリットを備えた第二金属マスクと、第二金属マスクをスリットの長手方向に引っ張った状態でベースプレート上に位置させるマスク引張保持手段を備えた蒸着マスクが提案されている。すなわち、2種の金属マスクを組合せた蒸着マスクが提案されている。この蒸着マスクによれば、スリットにゆがみを生じさせることなくスリット精度を確保できるとされている。
ところで近時、有機EL素子を用いた製品の大型化或いは基板サイズの大型化にともない、蒸着マスクに対しても大型化の要請が高まりつつあり、金属から構成される蒸着マスクの製造に用いられる金属板も大型化している。しかしながら、現在の金属加工技術では、大型の金属板にスリットを精度よく形成することは困難であり、たとえ上記特許文献1に提案されている方法などによってスリット部のゆがみを防止できたとしても、スリットの高精細化への対応はできない。また、金属のみからなる蒸着マスクとした場合には、大型化に伴いその質量も増大し、フレームを含めた総質量も増大することから取り扱いに支障をきたすこととなる。
特開2003−332057号公報
本発明はこのような状況に鑑みてなされたものであり、大型化した場合でも高精細化と軽量化の双方を満たすことができる蒸着マスク、当該蒸着マスクを製造するための樹脂層付き金属マスク、および前記蒸着マスクを用いた有機半導体素子の製造方法を提供することを主たる課題とする。
上記課題を解決するための本発明は、スリットが設けられた金属マスクと、前記金属マスクの表面に位置し、前記スリットと重なる位置に蒸着作製するパターンに対応した開口部が縦横に複数列配置された樹脂マスクと、が積層されてなる蒸着マスクであって、前記樹脂マスクを構成する樹脂層は、次式(1)で算出される応力σx(Z)が0.01MPa〜5MPaであることを特徴とする。
σx(Z)=E・z/R (1)
ただし、式(1)中、
Eは、ヤング率(MPa)
zは、樹脂マスクを構成する樹脂層の厚さの1/2(mm)
Rは、曲率半径(mm)であるが、樹脂マスクを構成する樹脂層が曲率半径を持たずにたわむ場合には、次式(2)で算出されるRを用いる。
R=L2/3δ (2)
ただし、式(2)中、
Lは、樹脂マスクを構成する樹脂層の長さ(mm)
δは、たわみ量(mm)をそれぞれ示している。
また、上記課題を解決するための別の発明は、樹脂層付き金属マスクであって、スリットが設けられた金属マスクと、前記金属マスクの表面に位置し、前記スリットと重なる位置に蒸着作製するパターンに対応した開口部が縦横に複数列配置された樹脂マスクと、が積層されてなる蒸着マスクを製造するために用いられるものであり、スリットが設けられた金属マスクの一方の面に樹脂層が設けられてなり、前記樹脂層は、次式(1)で算出される応力σx(Z)が0.01MPa〜5MPaであることを特徴とする。
σx(Z)=E・z/R (1)
ただし、式(1)中、
Eは、ヤング率(MPa)
zは、樹脂マスクを構成する樹脂層の厚さの1/2(mm)
Rは、曲率半径(mm)であるが、樹脂マスクを構成する樹脂層が曲率半径を持たずにたわむ場合には、次式(2)で算出されるRを用いる。
R=L2/3δ (2)
ただし、式(2)中、
Lは、樹脂マスクを構成する樹脂層の長さ(mm)
δは、たわみ量(mm)をそれぞれ示している。
また、上記課題を解決するための別の発明は、蒸着法を用いた有機半導体素子の製造方法であって、前記有機半導体素子の製造には、貫通孔が形成された金属フレームに、蒸着マスクが溶接固定された金属フレーム付き蒸着マスクが用いられ、前記金属フレームに溶接固定される前記蒸着マスクは、スリットが設けられた金属マスクと、前記金属マスクの表面に位置し、前記スリットと重なる位置に蒸着作製するパターンに対応した開口部が縦横に複数列配置された樹脂マスクと、が積層されてなる蒸着マスクであって、前記樹脂マスクを構成する樹脂層は、次式(1)で算出される応力σx(Z)が0.01MPa〜5MPaであることを特徴とする。
σx(Z)=E・z/R (1)
ただし、式(1)中、
Eは、ヤング率(MPa)
zは、樹脂マスクを構成する樹脂層の厚さの1/2(mm)
Rは、曲率半径(mm)であるが、樹脂マスクを構成する樹脂層が曲率半径を持たずにたわむ場合には、次式(2)で算出されるRを用いる。
R=L2/3δ (2)
ただし、式(2)中、
Lは、樹脂マスクを構成する樹脂層の長さ(mm)
δは、たわみ量(mm)をそれぞれ示している。
本発明の蒸着マスク、樹脂層付き金属マスク、および有機半導体素子の製造方法によれば、大型化した場合でも高精細化と軽量化の双方を満たすことができる。
(a)は、本実施形態の蒸着マスクの金属マスク側から見た正面図であり、(b)は、本実施形態の蒸着マスクの拡大断面図である。 応力を算出するための方法の説明図である。 (a)、(b)は、本実施形態の蒸着マスクの金属マスク側から見た正面図である。 シャドウと、金属マスクの厚みとの関係を示す概略断面図である。 金属マスクのスリットと、樹脂マスクの開口部との関係を示す部分概略断面図である。 金属マスクのスリットと、樹脂マスクの開口部との関係を示す部分概略断面図である。 本実施形態の蒸着マスクの製造方法の一例を説明するための工程図である。 本実施形態の蒸着マスクの製造方法の他の一例を説明するための工程図である。
1.蒸着マスク
以下に、本発明の蒸着マスクについて図面を用いて具体的に説明する。
図1(a)は、本発明の実施形態にかかる蒸着マスクの金属マスク側から見た正面図であり、図1(b)は、本発明の実施形態にかかる蒸着マスクの拡大断面図である。
なお、この図は、金属マスクに設けられたスリットおよび蒸着マスクに設けられた開口部を強調するため、全体に対する比率を大きく記載してある。
図1に示すように、本発明の実施形態にかかる蒸着マスク100は、スリット15が設けられた金属マスク10と、金属マスク10の表面(図1(b)に示す場合にあっては、金属マスク10の下面)に位置し、蒸着作製するパターンに対応した開口部25が縦横に複数列配置された樹脂マスク20が積層された構成をとる。以下、それぞれについて具体的に説明する。
(樹脂マスク)
樹脂マスク20は、樹脂から構成され、図1に示すように、スリット15と重なる位置に蒸着作製するパターンに対応した開口部25が縦横に複数列配置されている。また、本実施形態では、開口部が縦横に複数列配置された例を挙げて説明をしているが、開口部25は、スリットと重なる位置に設けられていればよく、スリット15が、縦方向、或いは横方向に1列のみ配置されている場合には、当該1列のスリット15と重なる位置に開口部25が設けられていればよい。
ここで、樹脂マスク20を構成する樹脂層は、次式(1)で算出される応力σx(Z)が0.01MPa〜5MPaであることに特徴を有している。
σx(Z)=E・z/R (1)
ただし、式(1)中、Eはヤング率(MPa)、zは樹脂マスクを構成する樹脂層の厚さの1/2(mm)、Rは曲率半径(mm)であるが、樹脂マスクを構成する樹脂層が曲率半径を持たずにたわむ場合には、次式(2)で算出されるRを用いる。
R=L2/3δ (2)
ただし、式(2)中、Lは樹脂マスクを構成する樹脂層の長さ(mm)、δはたわみ量(mm)をそれぞれ示している。
樹脂マスク20を形成するにあたり、これを構成する樹脂層の、上記式(1)で算出される応力σx(Z)を0.01MPa〜5MPaとすることにより、蒸着マスク100の製造段階、さらには蒸着マスク100の使用段階において、樹脂マスク20にたるみが発生したり、樹脂マスク20が湾曲したり伸縮したりすることにより変形することを防止することができ、高精度かつ高精細な蒸着マスクとすることができる。
ここで、応力σx(Z)が0.01MPaよりも小さい場合、樹脂マスク20を構成する樹脂層は、ほぼ応力を持っていないこととなり、金属マスク10が微少量変形した場合にこれに追従できず、樹脂マスク20のたるみなどが生じる虞がある。一方で、応力σx(Z)が5MPaよりも大きい場合、樹脂マスク20を構成する樹脂内に応力が相当量蓄えられていることとなり、蒸着マスクの製造段階や使用段階において湾曲や伸縮などの変形が生じ易くなり、高精度かつ高精細な蒸着マスクを得ることができない虞がある。
図2は、応力σx(Z)を算出する方法を説明するための図である。
以下に、本実施形態における応力σx(Z)の算出方法について図2を用いて具体的に説明する。
まず、金属板(例えば、サイズ150mm角)を準備し、その一方の面に樹脂を塗工して、乾燥・硬化させることで樹脂層を形成する。この状態では前記樹脂層の応力σx(Z)は測定できないため、金属板をエッチング除去する。その後、樹脂層を所定の大きさ(例えば、幅=15mm×長さ=50mm)にカットする。
ここで、樹脂層の応力σx(Z)が大きい場合は、図2に示すように、樹脂層は完全にカールする。この場合、樹脂層が曲率半径を持っていることとなる。そして、樹脂層の曲率半径を測定し、式(1)に代入することにより樹脂層の応力σx(Z)を算出することができる。なお、曲率半径の測定方法は、定規でもレーザー変位計でも長さが測定できるものであれば良い。
一方で、樹脂層の応力σx(Z)が小さい場合は、図2のように樹脂層はカールせず、端部が少し反った形状となる。この場合、樹脂層は曲率半径を持っていないことになる。樹脂層が曲率半径を持っていない場合においては、樹脂層の片方の端を固定し、たわみ量δを測定して、式(2)を使用して曲率半径を算出することにより、樹脂層の応力σx(Z)を算出することができる。これとは別に、たわみ量δから樹脂層の先端に加わる集中荷重を算出して、固定端に加わるモーメントを計算してから樹脂層の応力σx(Z)を求めることもできる。なお、たわみ量δの測定方法は、定規でもレーザー変位計でも長さが測定できるものであれば良い。
樹脂マスク20を構成する樹脂層の種類にあっては、上記で説明した応力σx(Z)が所定の範囲内にあることを条件に、従来公知の樹脂材料を適宜選択して用いることができ、レーザー加工等によって高精細な開口部25の形成が可能であり、熱や経時での寸法変化率や吸湿率が小さく、軽量な材料を用いることが好ましい。このような材料としては、ポリイミド樹脂、ポリアミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリエステル樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリアクリロニトリル樹脂、エチレン酢酸ビニル共重合体樹脂、エチレン−ビニルアルコール共重合体樹脂、エチレン−メタクリル酸共重合体樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリ塩化ビニリデン樹脂、セロファン、アイオノマー樹脂等を挙げることができる。上記に例示した材料の中でも、その熱膨張係数が16ppm/℃以下である樹脂材料が好ましく、吸湿率が1.0%以下である樹脂材料が好ましく、この双方の条件を備える樹脂材料が特に好ましい。
前記の樹脂材料、例えばポリイミド樹脂を用いた場合であって、樹脂層の応力σx(Z)を所定の範囲とするためには、当該ポリイミド樹脂を硬化させる際の温度や時間、雰囲気ガス、風量等を適宜コントロールすればよい。
樹脂マスク20の厚みについても特に限定はないが、本発明の蒸着マスクを用いて蒸着を行ったときに、蒸着作成するパターンに不充分な蒸着部分、つまり目的とする蒸着膜厚よりも薄い膜厚となる蒸着部分、所謂シャドウが生じることを防止するためには、樹脂マスク20は可能な限り薄いことが好ましい。しかしながら、樹脂マスク20の厚みが3μm未満である場合には、ピンホール等の欠陥が生じやすく、また変形等のリスクが高まる。一方で、25μmを超えるとシャドウの発生が生じ得る。この点を考慮すると樹脂マスク20の厚みは3μm以上25μm以下であることが好ましい。樹脂マスク20の厚みをこの範囲内とすることで、ピンホール等の欠陥や変形等のリスクを低減でき、かつシャドウの発生を効果的に防止することができる。特に、樹脂マスク20の厚みを、3μm以上10μm以下、より好ましくは4μm以上8μm以下とすることで、300ppiを超える高精細パターンを形成する際のシャドウの影響をより効果的に防止することができる。
樹脂マスク20に形成される開口部25の形状、大きさについて特に限定はなく、蒸着作製するパターンに対応する形状、大きさであればよい。また、図1(a)に示すように、隣接する開口部25の横方向のピッチP1や、縦方向のピッチP2についても蒸着作製するパターンに応じて適宜設定することができる。したがって、レーザー照射により開口部を形成する際には、上記ピッチP1、P2を適宜設計すればよい。
開口部25を設ける位置や、開口部25の数についても特に限定はなく、スリット15と重なる位置に1つ設けられていてもよく、縦方向、或いは横方向に複数設けられていてもよい。例えば、図3(a)に示すように、スリットが縦方向に延びる場合に、当該スリット15と重なる開口部25が、横方向に2つ以上設けられていてもよい。
開口部25の断面形状についても特に限定はなく、開口部25を形成する樹脂マスクの向かいあう端面同士が略平行であってもよいが、図1(b)に示すように、開口部25はその断面形状が、蒸着源に向かって広がりをもつような形状であることが好ましい。換言すれば、金属マスク10側に向かって広がりをもつテーパー面を有していることが好ましい。開口部25の断面形状を当該構成とすることにより、本発明の蒸着マスクを用いて蒸着を行ったときに、蒸着作成するパターンにシャドウが生じることを防止することができる。テーパー角θについては、樹脂マスク20の厚み等を考慮して適宜設定することができるが、樹脂マスクの開口部における下底先端と、同じく樹脂マスクの開口部における上底先端を結んだ角度が25°〜65°の範囲内であることが好ましい。特には、この範囲内の中でも、使用する蒸着機の蒸着角度よりも小さい角度であることが好ましい。さらに、図1(b)にあっては、開口部25を形成する端面25aは直線形状を呈しているが、これに限定されることはなく、外に凸の湾曲形状となっている、つまり開口部25の全体の形状がお椀形状となっていてもよい。このような断面形状を有する開口部25は、開口部25の形成時における、レーザーの照射位置や、レーザーの照射エネルギーを適宜調整する、或いは照射位置を段階的に変化させる多段階のレーザー照射を行うことで形成可能である。
また、本発明では、蒸着マスク100の構成として樹脂マスク20が用いられることから、この蒸着マスク100を用いて蒸着を行ったときに、樹脂マスク20の開口部25には非常に高い熱が加わり、樹脂マスク20の開口部25を形成する端面25a(図1参照)から、ガスが発生し、蒸着装置内の真空度を低下させる等のおそれが生じ得る。したがって、この点を考慮すると、図1に示すように、樹脂マスク20の開口部25を形成する端面25aには、バリア層26が設けられていることが好ましい。バリア層26を形成することで、樹脂マスク20の開口部25を形成する端面25aからガスが発生することを防止できる。
バリア層26は、無機酸化物や無機窒化物、金属の薄膜層または蒸着層を用いることができる。無機酸化物としては、アルミニウムやケイ素、インジウム、スズ、マグネシウムの酸化物を用いることができ、金属としてはアルミニウム等を用いることができる。バリア層26の厚みは、0.05μm〜1μm程度であることが好ましい。
さらに、バリア層は、樹脂マスク20の蒸着源側表面を覆っていることが好ましい。樹脂マスク20の蒸着源側表面をバリア層26で覆うことによりバリア性が更に向上する。バリア層は、無機酸化物、および無機窒化物の場合は各種PVD法、CVD法によって形成することが好ましい。金属の場合は、真空蒸着法によって形成することが好ましい。なお、ここでいうところの樹脂マスク20の蒸着源側表面とは、樹脂マスク20の蒸着源側の表面の全体であってもよく、樹脂マスク20の蒸着源側の表面において金属マスクから露出している部分のみであってもよい。
(金属マスク)
金属マスク10は、金属から構成され、該金属マスク10の正面からみたときに、開口部25と重なる位置、換言すれば、樹脂マスク20に配置された全ての開口部25がみえる位置に、縦方向或いは横方向に延びるスリット15が複数列配置されている。なお、図1では、金属マスク10の縦方向に延びるスリット15が横方向に連続して配置されている。また、本実施形態では、スリット15が縦方向、或いは横方向に延びるスリット15が複数列配置された例を挙げて説明をしているが、スリット15は、縦方向、或いは横方向に1列のみ配置されていてもよい。
スリット15の幅Wについて特に限定はないが、少なくとも隣接する開口部25間のピッチよりも短くなるように設計することが好ましい。具体的には、図1(a)に示すように、スリット15が縦方向に延びる場合には、スリット15の横方向の幅Wは、横方向に隣接する開口部25のピッチP1よりも短くすることが好ましい。同様に、図示はしないが、スリット15が横方向に伸びている場合には、スリット15の縦方向の幅は、縦方向に隣接する開口部25のピッチP2よりも短くすることが好ましい。一方で、スリット15が縦方向に延びる場合の縦方向の長さLについては、特に限定されることはなく、金属マスク10の縦の長さおよび樹脂マスク20に設けられている開口部25の位置に応じて適宜設計すればよい。
また、縦方向、或いは横方向に連続して延びるスリット15が、図3(b)に示すようにブリッジ18によって複数に分割されていてもよい。なお、図3(b)は、蒸着マスク100の金属マスク10側から見た正面図であり、図1(a)に示される縦方向に連続して延びる1つのスリット15が、ブリッジ18によって複数(スリット15a、15b)に分割された例を示している。ブリッジ18の幅について特に限定はないが5μm〜20μm程度であることが好ましい。ブリッジ18の幅をこの範囲とすることで、金属マスク10の剛性を効果的に高めることができる。ブリッジ18の配置位置についても特に限定はないが、分割後のスリットが、2つ以上の開口部25と重なるようにブリッジ18が配置されていることが好ましい。
金属マスク10に形成されるスリット15の断面形状についても特に限定されることはないが、上記樹脂マスク20における開口部25と同様、図1(b)に示すように、蒸着源に向かって広がりをもつような形状であることが好ましい。
金属マスク10の材料について特に限定はなく、蒸着マスクの分野で従来公知のものを適宜選択して用いることができ、例えば、ステンレス鋼、鉄ニッケル合金、アルミニウム合金などの金属材料を挙げることができる。中でも、鉄ニッケル合金であるインバー材は熱による変形が少ないので好適に用いることができる。
また、本発明の蒸着マスク100を用いて、基板上へ蒸着を行うにあたり、基板後方に磁石等を配置して基板前方の蒸着マスク100を磁力によって引きつけることが必要な場合には、金属マスク10を磁性体で形成することが好ましい。磁性体の金属マスク10としては、純鉄、炭素鋼、W鋼、Cr鋼、Co鋼、KS鋼、MK鋼、NKS鋼、Cunico鋼、Al−Fe合金、鉄ニッケル合金、鉄ニッケル合金であるインバー等を挙げることができる。また、金属マスク10を形成する材料そのものが磁性体でない場合には、当該材料に上記磁性体の粉末を分散させることにより金属マスク10に磁性を付与してもよい。
金属マスク10の厚みについても特に限定はないが、5μm〜100μm程度であることが好ましい。蒸着時におけるシャドウの防止を考慮した場合、金属マスク10の厚さは薄い方が好ましいが、5μmより薄くした場合、破断や変形のリスクが高まるとともにハンドリングが困難となる可能性がある。ただし、本発明では、金属マスク10は樹脂マスク20と一体化されていることから、金属マスク10の厚さが5μmと非常に薄い場合であっても、破断や変形のリスクを低減させることができ、5μm以上であれば使用可能である。なお、100μmより厚くした場合には、シャドウの発生が生じ得るため好ましくない。
図4は、シャドウの発生と金属マスク10のスリット15との関係を説明するための部分概略断面図である。
以下、図4(a)〜図4(c)を用いてシャドウの発生と、金属マスク10の厚みとの関係について具体的に説明する。図4(a)に示すように、金属マスク10の厚みが薄い場合には、蒸着源から蒸着対象物に向かって放出される蒸着材は、金属マスク10のスリット15の内壁面や、金属マスク10の樹脂マスク20が設けられていない側の表面に衝突することなく金属マスク10のスリット15、及び樹脂マスク20の開口部25を通過して蒸着対象物へ到達する。これにより、蒸着対象物上へ、均一な膜厚での蒸着パターンの形成が可能となる。つまりシャドウの発生を防止することができる。一方、図4(b)に示すように、金属マスク10の厚みが厚い場合、例えば、金属マスク10の厚みが100μmを超える厚みである場合には、蒸着源から放出された蒸着材の一部は、金属マスク10のスリット15の内壁面や、金属マスク10の樹脂マスク20が形成されていない側の表面に衝突し、蒸着対象物へ到達することができない。蒸着対象物へ到達することができない蒸着材が多くなるほど、蒸着対象物に目的とする蒸着膜厚よりも薄い膜厚となる未蒸着部分が生ずる、シャドウが発生することとなる。
シャドウ発生を十分に防止するには、図4(c)に示すように、スリット15の断面形状を、蒸着源に向かって広がりをもつような形状とすることが好ましい。このような断面形状とすることで、蒸着マスク100に生じうる歪みの防止、或いは耐久性の向上を目的として、蒸着マスク全体の厚みを厚くしていった場合であっても、蒸着源から放出された蒸着材が、スリット15の当該表面や、スリット15の内壁面に衝突等することなく、蒸着材を蒸着対象物へ到達させることができる。より具体的には、金属マスク10のスリット15における下底先端と、同じく金属マスク10のスリット15における上底先端を結んだ直線と金属マスク10の底面とのなす角度が25°〜65°の範囲内であることが好ましい。特には、この範囲内の中でも、使用する蒸着機の蒸着角度よりも小さい角度であることが好ましい。このような断面形状とすることで、蒸着マスク100に生じうる歪みの防止、或いは耐久性の向上を目的として金属マスク10の厚みを比較的厚くした場合であっても、蒸着源から放出された蒸着材が、スリット15の内壁面に衝突等することなく、蒸着材を蒸着対象物へ到達させることができる。これにより、シャドウ発生をより効果的に防止することができる。なお、図4(c)に示す形態では、金属マスク10のスリット15が蒸着源側に向かって広がりを持つ形状となっており、樹脂マスク20の開口部の向かいあう端面は略平行となっているが、シャドウの発生をより効果的に防止するためには、金属マスク10のスリット、及び樹脂マスク20の開口部25は、ともにその断面形状が、蒸着源側に向かって広がりを持つ形状となっていることが好ましい。
図5(a)〜(d)は、金属マスクのスリットと、樹脂マスクの開口部との関係を示す部分概略断面図であり、図示する形態では、金属マスクのスリット15と樹脂マスクの開口部25とにより形成される開口全体の断面形状が階段状を呈している。図5に示すように、開口全体の断面形状を蒸着源側に向かって広がりをもつ階段状とすることでシャドウの発生を効果的に防止することができる。
したがって、本発明の蒸着マスクにあっては、金属マスクのスリットと樹脂マスクの開口部25とにより形成される開口全体の断面形状が階段状となっていることが好ましい。
金属マスクのスリット15や、樹脂マスク20の断面形状は、図5(a)に示すように、向かいあう端面が略平行となっていてもよいが、図5(b)、(c)に示すように、金属マスクのスリット15、樹脂マスクの開口部の何れか一方のみが、蒸着源側に向かって広がりをもつ断面形状を有しているものであってもよい。なお、上記で説明したように、シャドウの発生をより効果的に防止するためには、金属マスクのスリット15、及び樹脂マスクの開口部25は、図1(b)や、図5(d)に示すように、ともに蒸着源側に向かって広がりをもつ断面形状を有していることが好ましい。
上記階段状となっている断面における平坦部(図5における符号(X))の幅について特に限定はないが、平坦部(X)の幅が1μm未満である場合には、金属マスクのスリットの干渉により、シャドウの発生防止効果が低下する傾向にある。したがって、この点を考慮すると、平坦部(X)の幅は、1μm以上であることが好ましい。好ましい上限値については特に限定はなく、樹脂マスクの開口部の大きさや、隣り合う開口部の間隔等を考慮して適宜設定することができ、一例としては、20μm程度である。
なお、上記図5(a)〜(d)では、スリットが縦方向に延びる場合に、当該スリット15と重なる開口部25が、横方向に1つ設けられた例を示しているが、図6に示すように、スリットが縦方向に延びる場合に、当該スリット15と重なる開口部25が、横方向に2つ以上設けられていてもよい。図6では、金属マスクのスリット15、及び樹脂マスクの開口部25は、ともに蒸着源側に向かって広がりをもつ断面形状を有しており、当該スリット15と重なる開口部25が、横方向に2つ以上設けられていている。
2.蒸着マスクの製造方法、および樹脂層付き金属マスク
(第1の製造方法)
図7は、本実施形態の蒸着マスクの製造方法の一例を説明するための工程図である。なお(a)〜(e)はすべて断面図である。
図7(a)に示すように、金属板61の一方の面に樹脂層67が設けられている樹脂層付き金属板60を準備する。ここで、樹脂層付き金属板60の準備方法については特に限定することはなく、たとえば金属板の表面に樹脂層を設けることで樹脂層付き金属板60としてもよい。しかしながら、いかなる方法において樹脂層を設けた場合であっても、当該樹脂層を構成している樹脂は、上記で説明した応力σx(Z)が0.01MPa〜5MPaであることが必要である。
金属板の表面に樹脂層を設ける方法としては、例えば、金属板に樹脂層となる樹脂を含む塗工液を塗工し、乾燥することで樹脂層付き金属板60を得ることができる。
次いで、前記樹脂層付き金属板60における金属板61に対し、当該金属板のみを貫通するスリットを形成することにより樹脂層付き金属マスク68を形成する。本方法におけるこの工程は特に限定されることはなく、所望のスリットを金属マスクのみに形成することができればいかなる工程であってもよい。本願明細書で言う、樹脂層付き金属マスク68は、上記樹脂層付き金属板60の金属板にスリットが形成されたもののことを意味し、これが本発明の樹脂層付き金属マスクである。
図7(b)〜(d)は、本発明の樹脂層付き金属マスク68を形成する工程の一例を示している。図7(b)に示すように、前記樹脂層付き金属板60の樹脂層67が設けられていない面にレジスト材62を塗工し、スリットパターンが形成されたマスク63を用いて当該レジスト材をマスキングし、露光、現像する。これにより、図7(c)に示すように、金属板67の表面にレジストパターン64を形成する。そして、当該レジストパターン64を耐エッチングマスクとして用いて、金属板60のみをエッチング加工し、エッチング終了後に前記レジストパターンを洗浄除去する。これにより、図7(d)に示すように、金属板67のみにスリット65が形成された金属マスク66(樹脂層付き金属マスク68)を得ることができる。
レジスト材のマスキング方法について特に限定はなく、図7(b)に示すように樹脂層付き金属板60の樹脂層67が設けられていない面側にのみレジスト材62を塗工してもよく、樹脂層付き金属板60の両面にレジスト材62を塗工してもよい(図示しない)。また、樹脂層付き金属板60の樹脂層67が設けられていない面、或いは樹脂層付き金属板60の両面にドライフィルムレジストを貼り合せるドライフィルム法を用いることもできる。レジスト材62の塗工法について特に限定はなく、樹脂層付き金属板60の樹脂層67が設けられていない面側にのみレジスト材62を塗工する場合には、スピンコート法や、スプレーコート法を用いることができる。一方、長尺シート状の樹脂層付き金属板60を用いる場合には、ロール・ツー・ロール方式でレジスト材を塗工することができるディップコート法等を用いることが好ましい。なお、ディップコート法では、樹脂層付き金属板60の両面にレジスト材62が塗工されることとなる。
なお、レジスト材としては処理性が良く、所望の解像性があるものを用いることが好ましい。また、エッチング加工の際に用いるエッチング材については、特に限定されることはなく、公知のエッチング材を適宜選択すればよい。
金属板61のエッチング法について特に限定はなく、例えば、エッチング材を噴射ノズルから所定の噴霧圧力で噴霧するスプレーエッチング法、エッチング材が充填されたエッチング液中に浸漬エッチング法、エッチング材を滴下するスピンエッチング法等のウェットエッチング法や、ガス、プラズマ等を利用したドライエッチング法を用いることができる。
次いで、樹脂層付き金属板68の金属マスク66側からスリット65を通してレーザーを照射し、前記樹脂層67に蒸着作製するパターンに対応した開口部69を縦横に複数列形成し、樹脂マスク70とする。ここで用いるレーザー装置については特に限定されることはなく、従来公知のレーザー装置を用いればよい。これにより、図7(e)に示すような、蒸着マスク80を得る。なお、本願明細書において蒸着作製するパターンとは、当該蒸着マスクを用いて作製しようとするパターンを意味し、例えば、当該蒸着マスクを有機EL素子の有機層の形成に用いる場合には、当該有機層の形状である。
(第2の製造方法)
図8は、本実施形態の蒸着マスクの製造方法の他の一例を説明するための工程図である。なお(a)〜(e)はすべて断面図である。
図7に示した第1の製造方法においては、金属マスク66を形成する際にエッチングマスクとして用いたエッチングパターン64を除去したが、これを除去することなく、図8(d)および図8(e)に示すように、そのまま残存させておいてもよい。その他の工程、つまり図8(a)〜(c)については、図7のそれと同様なのでここでの説明は省略する。
なお、上記第1および第2の製造方法では、金属マスク66(樹脂層付き金属マスク68)が形成された後、つまり図7および図8の(d)と(e)との間で金属を含むフレームに樹脂層付き金属マスク68を固定してもよい。このように最終的に蒸着作製するパターン形状を律する樹脂マスク70の開口部69を形成する前の段階でフレームに固定することにより、蒸着マスクをフレームに固定する際に生じる取り付け誤差をゼロにすることができる。なお、従来公知の方法では、開口が決定された金属マスクをフレームに対して引っ張りながら固定するために、開口位置座標精度は低下する。
また、フレームに固定された状態の樹脂層付き金属マスク68の樹脂層にレーザー加工法によって開口部69を設けるに際し、蒸着作製するパターン、すなわち形成すべき開口部69に対応するパターンが予め設けられた基準板を準備し、この基準板を、樹脂層付き金属マスク68の金属マスク66が設けられていない側の面に貼り合せた状態で、金属マスク66側から、基準板のパターンに対応するレーザー照射を行ってもよい。この方法によれば、樹脂層付き金属マスク68と貼り合わされた基準板のパターンを見ながらレーザー照射を行う、いわゆる向こう合わせの状態で、樹脂層67に開口部69を形成することができ、開口の寸法精度が極めて高い高精細な開口部69を有する樹脂マスク70を形成することができる。また、この方法は、フレームに固定された状態で開口部69の形成が行われることから、寸法精度のみならず、位置精度にも優れた蒸着マスクとすることができる。
なお、上記方法を用いる場合には、金属マスク66側から、樹脂層67を介して基準板のパターンをレーザー照射装置等で認識することができることが必要である。樹脂層67としては、ある程度の厚みを有する場合には透明性を有するものを用いることが必要となるが、後述するようにシャドウの影響を考慮した好ましい厚み、例えば、3μm〜25μm程度の厚みとする場合には、着色された樹脂層であっても、基準板のパターンを認識させることができる。
樹脂層と基準板との貼り合せ方法についても特に限定はなく、例えば、金属マスク66が磁性体である場合には、基準板の後方に磁石等を配置して、樹脂層67と基準板とを引きつけることで貼り合せることができる。これ以外に、静電吸着法等を用いて貼り合せることもできる。基準板としては、例えば、所定のパターンを有するTFT基板や、フォトマスク等を挙げることができる。
このような第1および第2の製造方法によれば、いずれも大型化した場合でも高精細化と軽量化の双方を満たすことができる蒸着マスクを歩留まり良く製造することができる。また、本発明の一実施形態によれば、フレームと蒸着マスク100との位置精度を向上させることができる。また、基準板を用いて開口部69を形成することで、寸法精度に極めて優れる開口部69とすることができる。
本発明の実施形態にかかる蒸着マスクは、樹脂マスク70と金属マスク66が積層されている。当該蒸着マスク100の質量と、従来公知の金属のみから構成される蒸着マスクの質量とを、蒸着マスク全体の厚みが同一であると仮定して比較すると、従来公知の蒸着マスクの金属材料の一部を樹脂材料に置き換えた分だけ、本実施形態の蒸着マスク100の質量は軽くなる。また、金属のみから構成される蒸着マスクを用いて、軽量化を図るためには、当該蒸着マスクの厚みを薄くする必要などがあるが、蒸着マスクの厚みを薄くした場合には、蒸着マスクを大型化した際に、蒸着マスクに歪みが発生する場合や、耐久性が低下する場合が起こる。一方、本実施形態の蒸着マスクによれば、大型化したときの歪みや、耐久性を満足させるべく、蒸着マスク全体の厚みを厚くしていった場合であっても、樹脂マスク70の存在によって、金属のみから形成される蒸着マスクよりも軽量化を図ることができる。
また、本実施形態の蒸着マスクは、金属材料と比較して、高精細な開口の形成が可能な樹脂層67にレーザーを照射することで樹脂マスク70が得られることから、高精細な開口部69を有する蒸着マスク100を製造することができることに加え、本実施形態の蒸着マスクを構成する樹脂マスクは、所定の応力σx(Z)を有しているため、さらに湾曲や変形する虞がなく、高精度かつ高精細な樹脂マスクとすることができる。
(スリミング工程)
また、上記の製造方法においては、各工程間、或いは工程後にスリミング工程を行ってもよい。当該工程は任意の工程であり、金属マスク66の厚みや、樹脂マスク70の厚みを最適化する工程である。金属マスク66や樹脂マスク70の好ましい厚みとしては、前述した好ましい範囲内で適宜設定すればよく、ここでの詳細な説明は省略する。
たとえば、樹脂層付き金属板60として、ある程度の厚みを有するものを用いた場合には、製造工程中において、樹脂層付き金属板60や、樹脂層付き金属マスク68を搬送する際、上記製造方法で製造された蒸着マスク100を搬送する際に優れた耐久性や搬送性を付与することができる。一方で、シャドウの発生等を防止するためには、本発明の製造方法で得られる蒸着マスク100の厚みは最適な厚みであることが好ましい。スリミング工程は、製造工程間、或いは工程後において耐久性や搬送性を満足させつつ、蒸着マスク100の厚みを最適化する場合に有用な工程である。
金属マスク66となる金属板61や金属マスク66のスリミング、すなわち金属マスクの厚みの最適化は、上記で説明した工程間、或いは工程後に、金属板61の樹脂層67と接しない側の面、或いは金属マスク66の樹脂層67又は樹脂マスク70と接しない側の面を、金属板61や金属マスク66をエッチング可能なエッチング材を用いてエッチングすることで実現可能である。
樹脂マスク70となる樹脂層67や樹脂マスク70のスリミング、すなわち、樹脂層67、樹脂マスク70の厚みの最適化についても同様であり、上記で説明した何れかの工程間、或いは工程後に、樹脂層67の金属板61や金属マスク66と接しない側の面、或いは樹脂マスク70の金属マスク66と接しない側の面を、樹脂層67や樹脂マスク70の材料をエッチング可能なエッチング材を用いてエッチングすることで実現可能である。また、蒸着マスク100を形成した後に、金属マスク66、樹脂マスク70の双方をエッチング加工することで、双方の厚みを最適化することもできる。
スリミング工程において、樹脂層67、或いは樹脂マスク70をエッチングするためのエッチング材については、樹脂層67や樹脂マスク70の樹脂材料に応じて適宜設定すればよく、特に限定はない。例えば、樹脂層67や樹脂マスク70の樹脂材料としてポリイミド樹脂を用いる場合には、エッチング材として、水酸化ナトリウムや水酸化カリウムを溶解させたアルカリ水溶液、ヒドラジン等を用いることができる。エッチング材は市販品をそのまま使用することもでき、ポリイミド樹脂のエッチング材としては、東レエンジニアリング(株)製のTPE3000などが使用可能である。
3.有機半導体素子の製造方法
次に、本発明の有機半導体素子の製造方法について説明する。本発明の有機半導体素子の製造方法は、金属フレーム付き蒸着マスクを用いた蒸着法により蒸着パターンを形成する工程を有し、当該有機半導体素子を形成する工程において以下の金属フレーム付き蒸着マスクが用いられる点に特徴を有する。
金属フレーム付き蒸着マスクを用いた蒸着法により蒸着パターンを形成する工程を有する一実施形態の有機半導体素子の製造方法は、基板上に電極を形成する電極形成工程、有機層形成工程、対向電極形成工程、封止層形成工程等を有し、各任意の工程において金属フレーム付き蒸着マスクを用いた蒸着法により基板上に蒸着パターンが形成される。例えば、有機層形成工程に、金属フレーム付き蒸着マスクを用いた蒸着法を適用する場合には、基板上に有機層の蒸着パターンが形成される。なお、本発明の有機半導体素子の製造方法は、これらの工程に限定されるものではなく、蒸着法を用いる従来公知の有機半導体素子の任意の工程に適用可能である。
上記有機半導体素子の製造方法に用いられる一実施形態の金属フレーム付き蒸着マスクは、貫通孔が形成された金属フレームに、蒸着マスクが溶接固定されてなる金属フレーム付き蒸着マスクであって、金属フレームに溶接固定される蒸着マスクは、スリットが設けられた金属マスクと、前記金属マスクの表面に位置し、前記スリットと重なる位置に蒸着作製するパターンに対応した開口部が縦横に複数列配置された樹脂マスクと、が積層されてなる蒸着マスクであって、前記樹脂マスクを構成する樹脂層は、次式(1)で算出される応力σx(Z)が0.01MPa〜5MPaであることを特徴とする。
σx(Z)=E・z/R (1)
ただし、式(1)中、Eはヤング率(MPa)、zは樹脂マスクを構成する樹脂層の厚さの1/2(mm)、Rは曲率半径(mm)であるが、樹脂マスクを構成する樹脂層が曲率半径を持たずにたわむ場合には、次式(2)で算出されるRを用いる。
R=L2/3δ (2)
ただし、式(2)中、Lは樹脂マスクを構成する樹脂層の長さ(mm)、δはたわみ量(mm)をそれぞれ示している。
金属フレーム付き蒸着マスクを構成する蒸着マスクについては、上記で説明した本発明の製造方法で製造された蒸着マスク100をそのまま用いることができ、ここでの詳細な説明は省略する。上記で説明した本発明の製造方法で製造される蒸着マスクによれば、金属フレームに溶接固定する際に、または有機半導体素子を実際に製造している際において、蒸着マスクにたるみが発生したり、湾曲や伸縮などに起因する変形が生じることを防止することができ、開口部に寸法変動が生じない、或いは殆ど寸法変動のない高精細な金属フレーム付き蒸着マスクとすることができる。したがって、当該金属フレーム付き蒸着マスクを用いて、高精細なパターンを有する有機半導体素子を形成することができる。本発明の製造方法で製造される有機半導体素子としては、例えば、有機EL素子の有機層、発光層や、カソード電極等を挙げることができる。特に、本発明の有機半導体素子の製造方法は、高精細なパターン精度が要求される有機EL素子のR、G、B発光層の製造に好適に用いることができる。
(実施例および比較例)
樹脂マスクを構成する樹脂層を選定するにあたって、金属板に樹脂層を設けた樹脂層付き金属板のサンプルA〜Mの13種類を準備した。
次いで、サンプルA〜Mのそれぞれを構成する各樹脂層の応力σx(Z)を前述の方法にて測定した。なお、応力σx(Z)の測定にあっては、縦方向(MD方向)および横方向(TD方向)の2つの方向において測定した。
次いで、各サンプルA〜Mにおける樹脂層が蒸着マスクとして使用可能か否かの評価を(1)樹脂層の開口位置変動量、(2)金属/樹脂−樹脂層間のたるみ量、という2種類の項目で評価した。
(1)樹脂層の開口位置変動量の評価方法
まず、樹脂層の開口位置変動量の評価方法を説明する。
・有効部150mmの四角形の開口を有するマスクフレームを用意した。
・各応力を持つ樹脂層付き金属マスクに縦/横方向から張力を架け、溶接固定した。なお、金属マスクは、70mm×120mmの開口エリア(樹脂層のみ)を有する。
・波長355nmのYAGレーザー(1J/cm2)にて、30μm×500μmの矩形パターンを樹脂層面に複数回照射し、縦横2列の開口を形成した。長辺側のギャップは5μm、短辺側のギャップは50μmにした。その時の開口状態を顕微鏡にて観察した。
・片側のブリッジ部(短辺側のギャップ50μm)をレーザーにより切断した。この時の開口位置変動を顕微鏡映像モニターに映して観察して、目視と変動量の測定にて評価した。
(2)金属/樹脂−樹脂層間のたるみ量の評価方法
次に、金属/樹脂−樹脂層間のたるみ量の評価方法を説明する。
・有効部150mmの四角形の開口を有するマスクフレームを用意した。
・各応力を持つ樹脂層付き金属マスクに縦/横方向から張力を架け、溶接固定した。なお、金属マスクは、70mm×120mmの金属スリット加工エリアを有する。
・目視にて樹脂層のたるみ量を官能検査した。
・樹脂面を上にして、焦点深度計でスリットに対して垂直方向の表面凹凸を測定した。
・測定データから、樹脂層のたるみを周期的な変動の波高値で評価した。
各サンプルの樹脂層の応力σx(Z)、および上記2つの評価結果を表1にまとめる。
Figure 2015017308
なお、表1中、樹脂層の開口位置変化量にあって、「小」は1μm以下を意味し、「中」は1〜5μmを意味し、「大」は5μm以上を意味する。また、金属/樹脂−樹脂層間のたるみ量にあって、「小」は2μm以下であって張力を架ける前からシワがないことを意味し、「中」は2〜12μmであって張力を架けた後シワがないことを意味し、「大」は12μm以上し張力を架けた後もシワがあることを意味する。
上記の結果より、応力σx(Z)が0.01MPa〜5MPaのサンプルD〜Jは良好な判定を得ていることが分かり、特に応力σx(Z)が0.02MPa〜4MPaのサンプルF〜Iが良好であることが分かる。
100…蒸着マスク
10、66…金属マスク
15…スリット
18…ブリッジ
20、70…樹脂マスク
25…開口部
60…樹脂層付き金属板
61…金属板
62…レジスト材
64…レジストパターン
67…樹脂層
68…樹脂層付き金属マスク
80…蒸着マスク

Claims (3)

  1. スリットが設けられた金属マスクと、前記金属マスクの表面に位置し、前記スリットと重なる位置に蒸着作製するパターンに対応した開口部が縦横に複数列配置された樹脂マスクと、が積層されてなる蒸着マスクであって、
    前記樹脂マスクを構成する樹脂層は、次式(1)で算出される応力σx(Z)が0.01MPa〜5MPaであることを特徴とする蒸着マスク。
    σx(Z)=E・z/R (1)
    ただし、式(1)中、
    Eは、ヤング率(MPa)
    zは、樹脂マスクを構成する樹脂層の厚さの1/2(mm)
    Rは、曲率半径(mm)であるが、樹脂マスクを構成する樹脂層が曲率半径を持たずにたわむ場合には、次式(2)で算出されるRを用いる。
    R=L2/3δ (2)
    ただし、式(2)中、
    Lは、樹脂マスクを構成する樹脂層の長さ(mm)
    δは、たわみ量(mm)をそれぞれ示している。
  2. スリットが設けられた金属マスクと、前記金属マスクの表面に位置し、前記スリットと重なる位置に蒸着作製するパターンに対応した開口部が縦横に複数列配置された樹脂マスクと、が積層されてなる蒸着マスクを製造するために用いられるものであり、
    スリットが設けられた金属マスクの一方の面に樹脂層が設けられてなり、
    前記樹脂層は、次式(1)で算出される応力σx(Z)が0.01MPa〜5MPaであることを特徴とする樹脂層付き金属マスク。
    σx(Z)=E・z/R (1)
    ただし、式(1)中、
    Eは、ヤング率(MPa)
    zは、樹脂マスクを構成する樹脂層の厚さの1/2(mm)
    Rは、曲率半径(mm)であるが、樹脂マスクを構成する樹脂層が曲率半径を持たずにたわむ場合には、次式(2)で算出されるRを用いる。
    R=L2/3δ (2)
    ただし、式(2)中、
    Lは、樹脂マスクを構成する樹脂層の長さ(mm)
    δは、たわみ量(mm)をそれぞれ示している。
  3. 蒸着法を用いた有機半導体素子の製造方法であって、
    前記有機半導体素子の製造には、貫通孔が形成された金属フレームに、蒸着マスクが溶接固定された金属フレーム付き蒸着マスクが用いられ、
    前記金属フレームに溶接固定される前記蒸着マスクは、
    スリットが設けられた金属マスクと、前記金属マスクの表面に位置し、前記スリットと重なる位置に蒸着作製するパターンに対応した開口部が縦横に複数列配置された樹脂マスクと、が積層されてなる蒸着マスクであって、
    前記樹脂マスクを構成する樹脂層は、次式(1)で算出される応力σx(Z)が0.01MPa〜5MPaであることを特徴とする有機半導体素子の製造方法。
    σx(Z)=E・z/R (1)
    ただし、式(1)中、
    Eは、ヤング率(MPa)
    zは、樹脂マスクを構成する樹脂層の厚さの1/2(mm)
    Rは、曲率半径(mm)であるが、樹脂マスクを構成する樹脂層が曲率半径を持たずにたわむ場合には、次式(2)で算出されるRを用いる。
    R=L2/3δ (2)
    ただし、式(2)中、
    Lは、樹脂マスクを構成する樹脂層の長さ(mm)
    δは、たわみ量(mm)をそれぞれ示している。
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