JP2014205788A - 無機結晶の製造方法 - Google Patents

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Akira Yoshikawa
彰 吉川
有為 横田
Yui Yokota
有為 横田
俊介 黒澤
Shunsuke Kurosawa
俊介 黒澤
祥太朗 鈴木
Shotaro Suzuki
祥太朗 鈴木
福田 健太郎
Kentaro Fukuda
健太郎 福田
澄人 石津
Sumito Ishizu
澄人 石津
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Abstract

【課題】 Ce及びEu等の希土類元素をドーパント元素として用いて無機結晶を製造する際に、前記希土類元素を容易に低価数状態で添加することが可能な製造方法を提供する。
【解決手段】 ドーパント元素とドーパント以外の金属元素を含む無機結晶の製造方法であって、ドーパント元素として、Ce、Pr、Sm、Eu、Tb、Dy、Tm及びYbから選ばれる少なくとも一種の希土類元素を用い、金属元素源の少なくとも一部として単体金属を用いる前記製造方法である。
【選択図】 図3

Description

本発明は、シンチレーターに有用な無機結晶の製造方法に関する。詳しくは、Ce及びEu等の希土類元素をドーパント元素として用いる無機結晶の製造方法であって、無機結晶を構成する金属元素源の少なくとも一部として単体金属を用いる製造方法に関する。
放射線検出器は、放射線利用技術を支える要素技術であって、近年の放射線利用技術の発展に伴い、より高性能な放射線検出器が求められている。かかる放射線検出器の内、シンチレーターと光検出器を組み合わせてなる放射線検出器は、構造解析等の学術研究分野、非破壊検査分野、貨物検査等の保安分野、陽電子断層撮影、X線CT等の医療分野等の広範な分野への応用がすすめられており、より高性能なシンチレーターが求められている。
前記シンチレーターは、放射線の入射によって発光を呈する材料であって、Ce及びEu等の希土類元素をドーパント元素として添加した無機結晶が好適に用いられている(特許文献1及び非特許文献1参照)。該無機結晶において、Ce及びEu等は、それぞれCe3+及びEu2+等の価数の状態(以下、低価数状態ともいう)で専ら用いられており、その5d−4f遷移に基づく発光が、シンチレーターの機能の根源となっている。
また、ドーパント元素としてCe及びEu等の希土類元素を含有し、化学式LiCaAlFで表わされるフッ化物結晶等が、中性子シンチレーターとして有用であることが開示されている(特許文献1参照)。該フッ化物結晶は中性子シンチレーターとして優れた特性を有するものの、Ce及びEu等の希土類元素をLiCaAlFで表わされるフッ化物結晶等にドープする際の偏析係数が著しく小さく、したがって該フッ化物結晶を製造する際の歩留まりが悪いという問題があった。
国際公開第2009/119378号パンフレット
Carel W.E. van Eijk, "Inorganic−scintillator development", Nuclear Instruments and Methods in Physics Research A 460 (2001) 1―14.
前記Ce及びEu等の希土類元素をドーパント元素として用いた無機結晶からなるシンチレーターは、優れた特性を有するものの、Ce4+及びEu3+等の価数の状態(以下、高価数状態ともいう)も取り得るため、無機結晶の製造において酸化され、高価数状態となり、所期のシンチレーターの性能が得られない場合があった。特に、Eu等の希土類元素は、空気中で容易に酸化されて高価数状態となるため、低価数状態の原料を入手し難く、低価数状態で無機結晶に添加することが困難であった。
本発明は、前記問題を解決すべくなされたものであって、Ce及びEu等の希土類元素をドーパント元素として用いて無機結晶を製造する際に、前記希土類元素を容易に低価数状態で添加することが可能な製造方法を提供することを目的とする。
本発明者等は、Ce及びEu等の希土類元素を低価数状態で添加することが可能な製造方法について種々検討した。その結果、無機結晶を構成する金属元素源の少なくとも一部として単体金属を用いることにより、希土類元素を容易に低価数状態で添加できることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明によれば、ドーパント元素とドーパント以外の金属元素を含む無機結晶の製造方法であって、ドーパント元素として、Ce、Pr、Sm、Eu、Tb、Dy、Tm及びYbから選ばれる少なくとも一種の希土類元素を用い、金属元素源の少なくとも一部として単体金属を用いる前記製造方法が提供される。
本発明によれば、Ce及びEu等の希土類元素を低価数状態で添加した無機結晶を容易に得ることができる。かかる無機結晶はシンチレーターとして有用であり、構造解析等の学術研究分野、非破壊検査分野、貨物検査等の保安分野、陽電子断層撮影、X線CT等の医療分野等において好適に使用できる。
本図は、マイクロ引き下げ法による結晶製造装置の概略図である。 本図は、チョクラルスキー法による結晶製造装置の概略図である。 本図は、実施例1及び比較例1で得られた吸収スペクトルである。 本図は、実施例1及び比較例1で得られた波高分布スペクトルである。
本発明は、ドーパント元素とドーパント以外の金属元素を含む無機結晶の製造方法である。
本発明において、ドーパント元素として、Ce、Pr、Sm、Eu、Tb、Dy、Tm及びYbから選ばれる少なくとも一種の希土類元素を用いる。該希土類元素の内、Ce、Pr、Tb及びDyは、3価の低価数状態と4価の高価数状態を取り得、Sm、Eu、Tm及びYbは、2価の低価数状態と3価の高価数状態を取り得る。該希土類元素は、いずれも低価数状態において優れた発光特性を示すため、前記無機結晶の製造において、該希土類元素を低価数状態で添加することが肝要である。
前記ドーパント元素とドーパント以外の金属元素を含む無機結晶を具体的に例示すれば、Eu:LiSrAlF、Ce:LiSrAlF、Eu:LiCaAlF、Ce:LiCaAlF、Ce:CaF、Eu:CaF、Ce:LaCl、Ce:CsLiYCl、Ce:LaBr、Eu:LiI等のハロゲン化物結晶及びCe:YAlO、Ce:LuAlO、Ce:YAl12、Ce:LuAl12、Ce:YSiO、Ce:GdSiO、Ce:LuSiO等の酸化物結晶等が挙げられる。
本発明は、前記無機結晶の製造において、金属元素源(原料)の少なくとも一部として単体金属を用いることを最大の特徴とする。該単体金属の還元作用によって、前記希土類元素を確実に低価数状態とすることが可能となる。
具体的には、例えばEu:LiSrAlF結晶の製造において、従来はLiF、SrF、AlFを金属元素源として用いるところを、本発明では該金属元素源の少なくとも一部としてLi、Sr、Alの単体金属を用いる。或いは、Ce:LuSiO結晶の製造において、従来はLu、SiOを金属元素源として用いるところを、本発明では該金属元素源の少なくとも一部としてLu、Siの単体金属を用いる。なお、本発明において、Si等の非金属についても、便宜上、酸素やハロゲン元素等を有しない金属元素源という意味で単体金属という。
本発明の製造方法は、ハロゲン化物結晶及び酸化物結晶の製造において特に有効である。ハロゲン化物結晶の製造において、一般にハロゲン化物は吸湿性があるため、原料として用いるハロゲン化物に含まれる水分の影響により、希土類元素の酸化が生じて高価数状態となるおそれがあるが、本発明によれば、かかる希土類元素の酸化を効果的に抑制することができる。また、酸化物結晶の製造において、酸素が過剰な雰囲気によって、希土類元素が酸化され、高価数状態となることを効果的に抑制することができる。
本発明の製造方法は、前記無機結晶の内、化学式LiM(ただし、MはMg、Ca、Sr及びBaから選ばれる少なくとも1種のアルカリ土類金属元素であり、MはAl、Ga及びScから選ばれる少なくとも1種の金属元素であり、XはF、Cl、Br及びIから選ばれる少なくとも1種のハロゲン元素である)で表わされコルキライト型構造を有するハロゲン化物結晶(以下、コルキライト型結晶ともいう)であって、ドーパント元素として、Sm、Eu、Tm及びYbから選ばれる少なくとも一種の希土類元素を用いてなるハロゲン化物結晶の製造において特別の効果を発揮する。
一般に、ドーパント元素とドーパント以外の金属元素を含む無機結晶は、ドーパント以外の金属元素で構成される結晶中の金属元素の一部を、ドーパント元素で置換することによって得ることができる。かかる置換を効率良く行うためには、置換される金属元素とドーパント元素のイオン半径が近似しており、且つ、価数が一致していることが重要である。該金属元素とドーパント元素のイオン半径が乖離しているか、又は、価数が一致しない場合には、ドーパント元素の偏析が起こり、前記無機結晶の製造における歩留まりが低下する。
前記コルキライト型結晶において、Li及びMは、イオン半径がドーパント元素よりも著しく小さいため、ドーパント元素で置換され難い。Mは、イオン半径がドーパント元素に近似しているが、その価数は2価である。ここで、Sm、Eu、Tm及びYbは、空気中で容易に酸化されるため、2価の低価数状態で入手することが困難であり、一般には3価の高価数状態で市販されている。該高価数状態のドーパント元素の価数は前記Mの価数と一致しない。したがって、前記コルキライト型結晶には、ドーパント元素で容易に置換され得る金属元素が存在せず、ドーパント元素の著しい偏析が起こるという問題があった。本発明者らの検討によれば、例えばEu:LiSrAlF及びEu:LiCaAlFの製造において、その偏析係数、すなわち無機結晶中に含まれるドーパント元素の濃度(C)の、原料混合物中に含まれるドーパント元素の濃度(C)に対する比(C/C)は、わずか約0.02に留まり、極めて歩留りが悪いという問題があった。
これに対して、本発明によれば、高価数状態のドーパント元素を原料に用いても、製造の過程でドーパント元素を2価の低価数状態とすることができるため、前記Mの価数と一致せしめることができ、Mの一部をドーパント元素で効率よく置換することが可能となる。本発明者らの検討によれば、例えばEu:LiSrAlFの製造において、金属元素源の少なくとも一部としてAlの単体金属を用いた場合には、前記偏析係数は約0.8に達し、製造の歩留まりを飛躍的に向上することができる。
以下、本発明の製造方法について、具体的に説明する。
まず、ドーパント元素とドーパント以外の金属元素の各原料を混合し、混合原料を調整する。かかる各原料としては、ドーパント元素とドーパント以外の金属元素の化合物を主原料として用いてよい。すなわち、ハロゲン化物結晶を製造する際にはドーパント元素とドーパント以外の金属元素のハロゲン化物を、酸化物結晶を製造する際にはドーパント元素とドーパント以外の金属元素の酸化物をそれぞれ主原料として用いる。該主原料に、ドーパント以外の金属元素の単体金属を混合し、混合原料として用いる。
より具体的には、例えばEu:LiSrAlFの製造においては、EuF、LiF、SrF及びAlFを主原料とし、これにLi、Sr、Alの内、少なくとも一つの単体金属を混合する。単体金属として用いる原料は、取り扱いの容易さに鑑みて選択することが好ましく、この場合はAlの単体金属を用いることが好ましい。
本発明において、単体金属を用いる量は、特に制限されないが、同種の金属元素源の総量に対して、金属元素の割合が0.1〜10mol%とすることが好ましい。すなわち、前記Eu:LiSrAlFの製造においてAlの単体金属を用いる例においては、Alの単体金属を用いる量を、該Alの単体金属とAlFの総量に対して、0.1〜10mol%とすることが好ましい。前記該単体金属を用いる量を0.1mol%以上とすることによって、ドーパント元素を容易に低価数状態とすることができ、10mol%以下とすることによって、過剰な還元作用による結晶欠陥の発生を抑制することができる。該結晶欠陥、すなわちハロゲン化物結晶におけるハロゲン元素の欠損や酸化物結晶における酸素の欠損等が生じると、シンチレーターとして用いた際に、発光量の低下や残光が生じ、特性が低下するおそれがある。
各原料の純度は特に限定されないが、99.99質量%以上とすることが好ましい。このような純度の高い原料を用いることにより、得られる無機結晶の純度を高めることができ、シンチレーターとして用いた際の発光量等の特性が向上する。各原料は、粉末状あるいは粒状の原料を用いても良く、あらかじめ焼結するか、或いは、加熱して溶融せしめた後に冷却して固化せしめて用いても良い。
前記混合原料から無機結晶を得る方法は、特に制限されないが、混合原料を加熱して溶融せしめた後、冷却して固化せしめて無機結晶を得る方法(以下、溶融固化法ともいう)が好ましい。該溶融固化法によれば、均質且つ高品質な無機結晶を生産性良く得ることができる。
該溶融固化法の中でも、無機結晶を単結晶として得る場合には、マイクロ引き下げ法、チョクラルスキー法またはブリッジマン法によって製造することが好ましい。マイクロ引き下げ法、チョクラルスキー法またはブリッジマン法で製造することにより、透明性等の品質に優れた無機結晶を製造することができる。特にマイクロ引下げ法によれば、結晶を特定の形状にて直接製造することができ、しかも短時間で製造することができる。また、チョクラルスキー法またはブリッジマン法によれば、直径が数インチの大型結晶を安価に製造することが可能となる。
一方、無機結晶を多結晶として得る場合には、単純に混合原料を加熱して溶融せしめた後、冷却して固化せしめれば良い。或いは、混合原料を加圧下で加熱し、固相反応によって所期の無機結晶の多結晶を得つつ、該多結晶を焼結せしめて所謂セラミックスを得る方法も好適に採用できる。
以下、マイクロ引き下げ法によって無機結晶を製造する際の、一般的な方法について、図1を用いて説明する。
まず、前記混合原料を、底部に孔を設けた坩堝(5)に充填する。坩堝底部に設ける孔の形状は、特に限定されないが、直径が0.5〜5mm、長さが0〜2mmの円柱状とすることが好ましい。次いで、前記混合原料を充填した坩堝(5)、アフターヒーター(1)、ヒーター(2)、断熱材(3)、及びステージ(4)を図1に示すようにセットする。
ハロゲン化物結晶を製造する場合には、真空排気装置を用いて、チャンバー(6)の内部を1.0×10−3Pa以下まで真空排気した後、高純度アルゴン等の不活性ガスをチャンバー内に導入してガス置換を行うことが好ましい。ガス置換後のチャンバー内の圧力は特に限定されないが、大気圧が一般的である。このガス置換操作によって、混合原料或いはチャンバー内に付着した水分を除去することができ、かかる水分に由来する結晶の劣化を妨げることができる。前記ガス置換操作によっても除去できない水分による悪影響を避けるため、水分との反応性の高いスカベンジャーを用いて、水分を除去することが好ましい。かかるスカベンジャーとしては、製造するハロゲン化物結晶と同種のハロゲン元素を含有し、水分に対して高い反応性を有する化合物が好適に使用できる。より具体的には、例えばフッ化物結晶を製造する際には、四フッ化メタンまたはフッ化カルボニル等のスカベンジャーが好適に用いることができる。なお、該スカベンジャーは常温で気体であるため、上記不活性ガスに混合してチャンバー内に導入する方法が好適である。
次いで、高周波コイル(7)及びヒーター(2)によって混合原料を加熱して溶融せしめる。本発明において、加熱方法は特に限定されず、例えば上記高周波コイルとヒーターを用いた誘導加熱方式に替えて、カーボンヒーター等を用いた抵抗加熱方式を採用しても良い。
溶融した混合原料の融液を、引き下げロッド(8)を用いて坩堝底部の孔から引き出し、無機結晶の製造を開始する。なお、原料融液を坩堝底部の孔から円滑に引き出す目的で、前記引下げロッドの先端に金属ワイヤーを設けることが好ましい。当該金属ワイヤーとしては、例えば、PtあるいはW−Re合金からなる外径約0.5mmのワイヤー等が好適に使用できる。高周波コイルの出力を適宜調整しながら一定の引き下げ速度で連続的に引き下げることにより、所期の無機結晶を得ることができる。該引き下げ速度は、特に限定されないが、0.5〜50mm/hrの範囲とすることが好ましい。
以下、チョクラルスキー法によって無機結晶を製造する際の、一般的な方法について、図2を用いて説明する。
まず、前記混合原料を、坩堝(9)に充填し、該混合原料を充填した坩堝(9)、ヒーター(10)、断熱材(11)、及び可動ステージ(12)を図2に示すようにセットする。坩堝(9)の上に、底部に穴の開いた坩堝をもう一つ設置し、ヒーター(10)等に固定して吊るすことで、二重坩堝構造としてもよい。
また、種結晶を引上げロッド(15)の先端に取り付ける。種結晶に替えて、高温下での耐蝕性に優れた白金などの金属を用いてもよいが、製造する無機結晶もしくはそれと近い結晶構造を持った単結晶からなる単結晶を用いた方が、結晶の割れを回避することができ、好適である。
なお、前記引上げロッド(15)を自動直径制御装置に連結することが好ましい。自動直径制御装置は、結晶の重量を測定するロードセルと、測定された重量をヒーター出力にフィードバックする回路系で構成されており、当該自動直径制御装置を用いることによって、所期の直径の結晶を精度よく安定して製造することができる。
ハロゲン化物結晶を製造する場合には、真空排気装置を用いて、チャンバー(13)の内部を1.0×10−3Pa以下まで真空排気した後、高純度アルゴン等の不活性ガスをチャンバー内に導入してガス置換を行う。ガス置換後のチャンバー内の圧力は特に限定されないが、大気圧が一般的である。このガス置換操作によって、原料或いはチャンバー内に付着した水分を除去することができ、かかる水分に由来する結晶の劣化を妨げることができる。前記ガス置換操作によっても除去できない水分による悪影響を避けるため、水分との反応性の高いスカベンジャーを用いて、水分を除去することが好ましい。かかるスカベンジャーとしては、製造するハロゲン化物結晶と同種のハロゲン元素を含有し、水分に対して高い反応性を有する化合物が好適に使用できる。より具体的には、例えばフッ化物結晶を製造する際には、四フッ化メタンまたはフッ化カルボニル等のスカベンジャーが好適に用いることができる。なお、該スカベンジャーは常温で気体であるため、上記不活性ガスに混合してチャンバー内に導入する方法が好適である。
ガス置換操作を行った後、高周波コイル(14)、及びヒーター(10)によって原料を加熱して溶融させる。加熱方式は特に限定されず、例えば上記高周波コイルとヒーターを用いた誘導加熱方式に替えて、カーボンヒーター等を用いた抵抗加熱方式を適宜用いることができる。
次いで、溶融した原料融液を、種結晶と接触させる。種結晶と接触した部分が凝固する温度になるようヒーター出力を調整した後、自動直径制御装置による制御の元、引上げロッド(15)の引き上げ速度を自動調整しながら結晶を引き上げる。なお、液面高さの調整のため可動ステージ(12)を上下方向に適宜動かしてもよい。高周波コイルの出力を適宜調整しながら連続的に引き上げ、所望の長さとなったところで液面から切り離し、結晶に割れが入らないように十分な時間をかけて冷却することで、所期の無機結晶を得ることができる。
なお、熱歪に起因する結晶欠陥を除去する目的で、製造した無機結晶に対しアニール処理を行ってもよい。
本発明によって得られた無機結晶は、良好な加工性を有しており、所望の形状に加工してシンチレーターとして用いることができる。加工に際しては、公知のブレードソー、ワイヤーソー等の切断機、研削機、或いは研磨盤を何ら制限無く用いる事ができる。
以下、本発明の実施例を挙げて具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例によって何ら制限されるものではない。また、実施例の中で説明されている特徴の組み合わせすべてが本発明の解決手段に必須のものとは限らない。
実施例1
化学式LiSrAlFで表わされるコルキライト型結晶であり、ドーパント元素としてEuを用いた無機結晶を製造した。
原料としては、純度が99.99%以上のEuF、LiF、SrF及びAlFを主原料として用い、これにAlの単体金属を加えた。なお、LiFは、Liの同位体比が95%のものを用いた。
まず、EuF 27mg、LiF 106mg、SrF 515mg、AlF 352mg及びAlの単体金属 1.1mgをそれぞれ秤量し、よく混合して混合原料を調製した。なお、本実施例において、単体金属を用いる量は、同種の金属元素源の総量に対して、1mol%とした。また、ドーパント元素であるEuの添加量は、LiSrAlFに対して3mol%とした。
本実施例において、該無機結晶の製造には、図1に示すマイクロ引下げ法による結晶製造装置を用いた。
前記混合原料を坩堝(5)に充填し、該混合原料を充填した坩堝(5)を、アフターヒーター(1)の上部にセットし、その周囲にヒーター(2)、及び断熱材(3)を順次セットした。なお、アフターヒーター(1)、ヒーター(2)、断熱材(3)、ステージ(4)、及び坩堝(5)は、高純度カーボン製のものを使用し、坩堝底部に設けた孔の形状は直径2.3mm、長さ2mmの円柱状とした。
次いで、油回転ポンプ及び油拡散ポンプからなる真空排気装置を用いて、チャンバー(6)内を5.0×10−4Paまで真空排気した後、四フッ化メタン−アルゴン混合ガスをチャンバー(6)内に大気圧まで導入し、ガス置換を行った。
高周波コイル(7)に高周波電流を印加し、誘導加熱によって原料を加熱して溶融せしめ、引き下げロッド(8)の先端に設けたW−Reワイヤーを、坩堝(5)底部の孔上記孔に挿入し、原料の融液を上記孔より引き下げ、結晶化を開始した。
高周波の出力を調整しながら、6mm/hrの速度で連続的に11時間引き下げ、無機結晶を得た。該結晶は直径が2.3mm、長さが65mmであり、白濁やクラックの無い良質な単結晶であった。
上記無機結晶を、ダイヤモンドワイヤーを備えたワイヤーソーによって5mmの長さに切断した後、研削して、長さ5mm、幅2mm、厚さ1mmの形状に加工し、無機結晶の試験片を得た。なお、長さ5mm、幅2mmの面の両面に鏡面研磨を施し、該鏡面研磨した面を後述する測定に供した。
該無機結晶の試験片について、電子プローブX線マイクロアナリシス(EPMA)により、元素分析を行った。その結果、該無機結晶に含まれるEuの量は、LiSrAlFに対して2.4mol%であり、前記結晶の製造における偏析係数は0.8であることが分かった。
次いで、分光光度計を用いて、120〜370nmの波長の光に対する該試験片の吸収スペクトルを測定した。
得られた吸収スペクトルを図3に示す。Eu:LiSrAlFにおいて、Eu3+及びEu2+は、それぞれ約130nm及び約300nmに吸収を示すことが知られている。図3から、本実施例で製造されたEu:LiSrAlFについては、高価数状態のEu3+はほとんど存在せず、低価数状態のEu2+が支配的であることから、本発明によれば、希土類元素を低価数状態で添加することが容易であることが分かる。
次いで、前記無機結晶の試験片を中性子用シンチレーターとして用い、その性能を以下の方法によって評価した。
まず光電子増倍管(浜松ホトニクス社製 R7600U)の光電面に、中性子用シンチレーターを光学グリースで接着した後、外部からの光が入らないように遮光シートで遮光した。
約2MBqの放射能を有するCf−252から生じる中性子を、100mmの厚みのポリエチレンブロックで減速し、シンチレーターに照射した。
次いで、シンチレーターより発せられたシンチレーション光を計測するため、600Vの高電圧を光電子増倍管に印加し、シンチレーション光を電気信号に変換した。ここで、光電子増倍管より出力される電気信号は、シンチレーション光を反映したパルス状の信号であり、パルスの波高がシンチレーション光の発光量を表し、また、その波形はシンチレーション光の減衰時定数に基づいた減衰曲線を呈する。
かかる光電子増倍管より出力された電気信号を整形増幅器で整形、増幅した後、多重波高分析器に入力して解析し、波高分布スペクトルを作成した。
得られた波高分布スペクトルを図4に示す。該波高分布スペクトルの横軸は、電気信号の波高値すなわちシンチレーション光の発光量を表しており、ここでは、多重波高分析器のチャンネル数で示した。また、縦軸は各波高値を示した電気信号の頻度を表す。
当該波高分布スペクトルにおいて、波高値が300〜440Chの領域において、シンチレーション光による明瞭なピークが見られ、本発明の製造方法で製造された無機結晶が、中性子シンチレーターとして充分な発光量を有することが分かる。
また、光電子増倍管より出力される電気信号をオシロスコープで観測し、シンチレーション光の減衰時定数を求めた結果、1.6μsecであった。
比較例1
AlF 352mg及びAlの単体金属 1.1mgに替えて、AlF 353mgを用いる以外は、実施例1と同様にして無機結晶を製造した。すなわち、Alの単体金属を加えず、従来公知の製造方法を採用した。
得られた無機結晶は直径が2.3mm、長さが65mmであった。該無機結晶において、前半に製造された部分は白濁やクラックの無い良質な単結晶であったものの、後半に製造された部分はドーパントの偏析による白濁が見られた。
上記無機結晶の前半に製造された良質な部分を、実施例1と同様に加工し、無機結晶の試験片を得た。
該無機結晶の試験片について、電子プローブX線マイクロアナリシス(EPMA)により、元素分析を行った。その結果、該無機結晶に含まれるEuの量は、検出下限である0.5mol%未満であった。そのため、後述する中性子用シンチレーターとしての性能評価の後に該試験片を溶解し、誘導結合プラズマ発光分析(ICP−OES)によって元素分析を行った。その結果、該無機結晶に含まれるEuの量は、LiSrAlFに対して0.06mol%であり、前記結晶の製造における偏析係数は0.02であることが分かった。
前記無機結晶の試験片の吸収スペクトルを実施例1と同様にして測定した。
得られた吸収スペクトルを図3に示す。本比較例で製造されたEu:LiSrAlFについては、高価数状態のEu3+と低価数状態のEu2+が混在しており、従来の製造方法では、希土類元素を低価数状態で添加し難いことが分かる。
次いで、前記無機結晶の試験片を中性子用シンチレーターとして用い、その性能を実施例1と同様にして評価した。
得られた波高分布スペクトルを図4に示す。当該波高分布スペクトルにおいて、波高値が340〜430Chの領域において、シンチレーション光による明瞭なピークが見られ、従来の製造方法で製造された無機結晶においても、白濁やクラックの無い良質な部分については中性子シンチレーターとして充分な発光量を有することが分かる。
また、光電子増倍管より出力される電気信号をオシロスコープで観測し、シンチレーション光の減衰時定数を求めた結果、1.6μ秒であった。
前記実施例1と比較例1の比較より、本発明の製造方法によれば、従来の製造方法に比較して、ドーパント元素として用いる希土類金属を低価数状態で容易に添加することができ、また、良質な無機結晶を高い歩留りで得られることが分かる。さらに、本発明の製造方法によって得られた無機結晶は、シンチレーターとして使用した際に発光量の低下や残光の発生は見られず、従来のシンチレーターと遜色ない性能を有することが分かる。
1 アフターヒーター
2 ヒーター
3 断熱材
4 ステージ
5 坩堝
6 チャンバー
7 高周波コイル
8 引き下げロッド
9 坩堝
10 ヒーター
11 断熱材
12 可動ステージ
13 チャンバー
14 高周波コイル
15 引上げロッド

Claims (3)

  1. ドーパント元素とドーパント以外の金属元素を含む無機結晶の製造方法であって、
    ドーパント元素として、Ce、Pr、Sm、Eu、Tb、Dy、Tm及びYbから選ばれる少なくとも一種の希土類元素を用い、
    金属元素源の少なくとも一部として単体金属を用いる前記製造方法。
  2. 無機結晶が、ハロゲン化物結晶または酸化物結晶である請求項1記載の製造方法。
  3. 無機結晶が、化学式LiM(ただし、MはMg、Ca、Sr及びBaから選ばれる少なくとも1種のアルカリ土類金属元素であり、MはAl、Ga及びScから選ばれる少なくとも1種の金属元素であり、XはF、Cl、Br及びIから選ばれる少なくとも1種のハロゲン元素である)で表わされ、コルキライト型構造を有するハロゲン化物結晶であり、
    ドーパント元素として、Sm、Eu、Tm及びYbから選ばれる少なくとも一種の希土類元素を用い、
    金属元素源の少なくとも一部としてM及び/またはMの単体金属を用いることを特徴とする請求項2記載の製造方法。
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