JP2014185120A - ルテオリンの製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】抗酸化作用に優れるルテオリンを、酵素反応によらず、簡便な操作で効率良く得ることができるルテオリンの製造方法を提供する。
【解決手段】下記化合物(A)を、酵素の非存在下、分子内に金属原子を含まない酸化剤により酸化することを含む、ルテオリンの製造方法。

【選択図】なし

Description

本発明は、ルテオリンの製造方法に関する。
近年、有限といわれる石油資源に由来しない化合物が注目され、なかでも、植物資源を活用した化成品、プラスチック、医薬品などの研究開発が盛んに行われている。
それらの中で、高い抗酸化作用を有するルテオリンが注目されている。ルテオリンは、カプシウム(Capsicum)類に属する植物より抽出することで得られることは知られている。
抗酸化剤として有用なルテオリンは、それ自体が酸化され易いため、単離が困難である。即ち、中間体を酸化してルテオリン骨格を形成しようとする場合、分子内に存在する水酸基も酸化され、副成物が増加して収率が低下するという問題があった。
例えば、酵素活性や酵素の反応の機構を検討した文献にて、酵素の存在下でルテオリンと類似の骨格を有する化合物を酸化することによりルテオリンを得る方法が記載されてはいるが(例えば、非特許文献1、2参照。)、酵素活性や酵素反応の機構を傍証する一例として挙げられたものであり、その収率は10%程度である。
また、植物からルテオリンやその誘導体を抽出する方法が提案されているが(例えば、特許文献1、2参照。)、いずれも工程は煩雑であり、工業的に製造するには不適である。
また、カテコール部がメチル保護された天然の原料を酸化し、最後に脱保護してルテオリンを合成する方法が提案されている(例えば、特許文献3参照。)
特開2008−201795号公報 特開2006−265250号公報 中国特許第1544427号明細書
Phytochemistry、vol.71、P508(2010年) Organic & Biomolecular Chemistry、vol.3、P3117(2005年)
しかしながら、特許文献1〜2に記載の如き、天然物からの抽出方法、非特許文献1、及び2に記載のように酵素を用いた製造方法では、高収率、高生産性は期待できず、また、特許文献3に記載の方法では工程が煩雑であり、いずれの方法も、簡易に高収率、高生産性を達成する必要のある工業的規模の実施には問題があった。
本発明は、上記従来技術の問題点を考慮してなされたものであり、本発明の課題は、抗酸化作用に優れるルテオリンを、酵素などを使用することなく、簡便な操作で、効率良く得ることができる、ルテオリンの製造方法を提供することにある。
発明者らは、上記課題に鑑み鋭意研究の結果、中間体を酸化する際に、特定の酸化剤を用いることで、副反応を抑制し、効率よくルテオリンが得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明の構成は以下の通りである。
<1> 下記化合物(A)を、酵素の非存在下、分子内に金属原子を含まない酸化剤により酸化することを含む、ルテオリンの製造方法である。
本実施形態によれば、特定の中間体を分子内に金属原子を含まない酸化剤により酸化することで、所望されない水酸基部分の酸化が生じることなく、高収率で目的とするルテオリンを得ることができる。
<2> 前記分子内に金属原子を含まない酸化剤が、ハロゲン、下記化合物(B)、及び下記化合物(C)からなる群より選択される少なくとも1種である、<1>に記載のルテオリンの製造方法である。
上記ハロゲン及びキノン型の酸化剤から選ばれる1種以上を用いることで、ルテオリンの収率が一層向上する。
<3> 下記化合物(D)と塩基とを反応させて下記化合物(A)を得ることをさらに含む、<1>又は<2>に記載のルテオリンの製造方法である。
<4> フロログルシノールと下記一般式(I)で表される化合物とを、ブレンステッド酸又はルイス酸の存在下で反応させて下記化合物(D)を得ることをさらに含む、<1>〜<3>のいずれか1項に記載のルテオリンの製造方法である。
上記一般式(I)中、Xはハロゲン原子又は水酸基を表す。
<5> 下記化合物(D)と塩基とを反応させることを含む、下記化合物(A)の製造方法である。
本実施形態においては、中間体である化合物(D)を塩基と反応させることで、ルテオリンの製造に有用な化合物(A)を容易に製造しうる。
<6> フロログルシノールと下記一般式(I)で表される化合物とを、ブレンステッド酸又はルイス酸の存在下で反応させることを含む、下記化合物(D)の製造方法である。
上記一般式(I)中、Xはハロゲン原子又は水酸基を表す。
本実施形態によれば、入手容易な化合物を用いて、ルテオリンの合成に有用な、新規中間体である化合物(D)を容易に製造しうる。
<7> 下記化合物(D)である。
前記化合物(D)は新規化合物であり、ルテオリンを簡易な方法で製造する際の中間体として有用である。
本発明によれば、ルテオリンを、簡便な操作で、効率良く得ることができる、ルテオリンの製造方法を提供することができる。
以下、本発明の実施の形態について詳細に説明するが、以下に記載する構成要件の説明は、本発明の実施態様の一例(代表例)であり、これらの内容に特定はされない。その要旨の範囲内で種々変形して実施することができる。
なお、本明細書において「〜」を用いて示された数値範囲は、「〜」の前後に記載される数値をそれぞれ最小値及び最大値として含む範囲を示す。
本発明の製造方法は、下記化合物(A)を、酵素の非存在下、分子内に金属原子を含まない酸化剤により酸化する工程を含む。
なお、以下、本発明のルテオリンの製造方法を、出発物質から工程順に説明する。まず、以下の本発明のルテオリンの製造方法における代表的なスキームを以下に示す。
まず、化合物(D)を合成する。
フロログルシノールを、ニトロメタン、ニトロベンゼン、クロロベンゼン、クロロホルム、塩化メチレン等の如き溶剤に添加し、これに0℃〜50℃で、塩化アルミニウム等のルイス酸またはブレンステッド酸を添加する。その後、10℃〜100℃に昇温する。
昇温後に、下記一般式(I)で示される化合物を徐々に添加し、温度を上記範囲に維持しつつ10分間〜5時間反応させる。一般式(I)中のXは、ハロゲン原子又は水酸基を表すが、ハロゲン原子であることが好ましい。
なお、この反応は、ブレンステッド酸又はルイス酸の存在下で行われる。本工程に用いられるブレンステッド酸又はルイス酸は公知の化合物を適宜用いることができるが、例えば、硫酸、燐酸、塩化アルミニウム、塩化亜鉛などが好ましく、塩化アルミニウムがより好ましい。また、ブレンステッド酸又はルイス酸の添加量は、フロログルシノールに対して、0.5当量〜20当量であることが好ましい。
上記一般式(I)中、Xはハロゲン原子又は水酸基を表す。
Xとしては、ヨウ素、臭素、塩素などのハロゲンが好ましく、なかでも反応性や合成の容易性の観点からは塩素であることが好ましい。
反応液を冷却した後、この反応液に、酢酸エチル、テトラヒドロフラン等の有機溶媒および、水または氷水を加え攪拌する。
ここで混合液を分液し、有機相に2〜10質量%の重曹水を添加する。反応液の抽出時もしくは重曹水の添加時に、必要に応じて不溶物をろ別する操作を行ってもよい。ここで、ろ別を行う場合、吸引ろ過などの減圧ろ過を行ってもよい。
ろ液を分液した後、有機相を必要に応じて食塩水で洗浄し、必要に応じて無水硫酸マグネシウム等で乾燥する。ろ過後、溶媒を減圧留去し、残渣をテトラヒドロフラン/アセトン/ヘキサン混合溶媒等から晶析することで、下記化合物(D)が得られる。
この化合物(D)は、新規化合物であり、ルテオリンの合成用中間体として有用である。同定データは実施例において示す。
次に、新規中間体である化合物(D)から、ルテオリンの前駆体である化合物(A)を合成する。
前記で得た化合物(D)と酢酸ナトリウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウムなどの塩基とを、過剰の溶媒、例えば、メタノール、エタノール、アセトン、アセトニトリル、水などに添加し、0℃〜100℃で30分間〜5時間反応させる。反応後、溶媒を留去し、残渣に、酢酸エチル、テトラヒドロフラン等の有機溶媒及び、若しくは食塩水を加え攪拌する。
分液した後、有機相を必要に応じて食塩水で洗浄し、必要に応じて無水硫酸マグネシウム等で乾燥し、ろ過後、溶媒を減圧留去する。得られた残渣は、必要に応じてシリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製してもよい。その後、残渣、或いは所望により精製した残渣を酢酸エチル/ヘキサン混合溶媒等から晶析することで化合物(A)が得られる。
次に、ルテオリンの前駆体である化合物(A)からルテオリンを合成する。
前記で得た化合物(A)と、分子内に金属原子を有しない酸化剤とを、溶媒に添加する。
ルテオリンはその構造から明らかなように、分子内に複数の水酸基を有する。このため、化合物(A)を酸化する場合、酸化剤の反応性が高すぎると所望されない水酸基部位の酸化も進行してしまい、目的とするルテオリンが得られない場合がある。そこで、本工程では、分子内に金属原子を含まない比較的穏やかな反応性を有する酸化剤を用いると共に、好ましい態様においては、後述するように適度な塩基性の有機塩基を含む反応溶媒を用いることで、過剰な酸化が抑制され、目的とするクロマン環の2位3位の部位のみを選択的に効率よく酸化させることができるため、ルテオリンを高収率で得られるものと考えている。
(金属原子を有しない酸化剤)
本発明に用いる金属原子を有しない酸化剤としては、ヨウ素、臭素、塩素などのハロゲン、下記構造で示す如きキノン型の酸化剤である2,3−ジクロロ−5,6−ジシアノ−1,4−ベンゾキノン(化合物(B))、2,3,5,6−テトラクロロ−1,4−ベンゾキノン(化合物(C))などが挙げられ、なかでも好ましくはハロゲンであり、反応性が良好で、副反応がより抑制されるという観点からは、ヨウ素が最も好ましい。
酸化剤の添加量は、化合物(A)に対して0.1当量〜10当量の範囲であればよく、好ましくは0.5当量〜5当量の範囲であり、最も好ましくは0.7当量〜3当量の範囲である。
反応溶媒としては、ピリジン、トリエチルアミン等の有機塩基、N,N-ジメチルホルムアミドアミド、アセトニトリル、トルエン等の有機溶媒単独あるいはそれらの混合溶媒が挙げられるが、酸化反応により生成する副成物、たとえば、酸化剤としてヨウ素を用いる場合に生成するヨウ化水素(HI)を中和しうるという観点からは、有機塩基、特にピリジンを用いることが好ましい。
即ち、本実施形態では、酸化剤としてハロゲンを用い、有機塩基を含む溶媒を使用することが好ましい。
溶媒に添加後、反応液をたとえば50℃〜150℃に昇温し、その温度に維持したまま1時間〜30時間反応させる。反応後、冷却した後、反応液に酢酸エチル、及び、水を加え攪拌する。このとき、酢酸エチル、水と共に、必要に応じて、さらに亜硫酸水素ナトリウム水溶液等の還元剤や濃塩酸を加えてもよい。
なお、化合物(A)と酸化剤との反応温度としては、−50℃〜200℃の範囲で実施することができ、好ましくは0℃〜180℃であり、さらに好ましくは50℃〜150℃の範囲である。
また、反応時間としては、1時間以上30時間以下であることが好ましく、3時間〜20時間であることがより好ましく、5時間〜10時間であることがさらに好ましい。
この操作により不溶物が生成する場合、不溶物をろ過により除去することが好ましい。ろ過は、例えば、セライトを通して吸引ろ過により行うことができる。
ろ液を分液し、有機相を必要に応じて希塩酸水で洗浄し、さらに必要に応じて食塩水で洗浄し、必要に応じて無水硫酸マグネシウム等で乾燥する。ろ過後、溶媒を減圧留去し、残渣を必要に応じてシリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製した後、テトラヒドロフラン/酢酸エチル/ヘキサン混合溶媒等から晶析することでルテオリンが得られる。
このようにして、煩雑な操作を行うことなく、入手容易な材料からルテオリンを高収率で得ることができる。
得られたルテオリンは、抗酸化作用を必要とする種々の用途に使用しうると共に、合成原料としても有用である。
以下、本発明の実施例を説明するが、本発明はこれらの実施例によって、何ら限定されるものではない。なお、以下、特に断りのない限り、「%」は「質量%」を表す。
[実施例1]
〔1.化合物(D)の合成〕
フロログルシノール3.78gを、反応容器中のニトロメタン100mlに添加し、これに室温(25℃)雰囲気下、塩化アルミニウム10.0gを添加した。
溶液を50℃に昇温した後、一般式(I)で表される化合物に包含される下記化合物(カフェ酸から合成される。CAS No.204273−53−0)を、8分間かけて添加し、さらに50℃で30分間反応させた。
反応液を室温まで冷却した後、この反応液に、酢酸エチル200ml、氷水400ml、テトラヒドロフラン200mlを加え攪拌した。分液し、有機相に2%重曹水500mlを添加した後、不溶物を、セライト(商品名Celite 545、Celite Corporation製)を通して吸引ろ過して除いた。
ろ液を分液した後、有機相を飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。ろ過後、溶媒を減圧留去し、残渣をテトラヒドロフラン/アセトン/ヘキサン混合溶媒から晶析して、5.46gの化合物(D)を得た。化合物(D)の収率は58.0%であった。
以下に化合物(D)の同定データを示す。なお、H−NMRの化学シフト値は、テトラメチルシランを内部基準物質として使用した値である。H−NMRのカッコ内はNMR溶媒を表し、DMSO−d6は重ジメチルスルホキシドを表す。
H−NMR(DMSO−d6:300MHz)12.42(s,2H)、10.50(s,1H)、8.08(d,1H)、7.83(d,1H)、7.70(d,1H)、7.62(dd,1H)、7.54(d,1H)、5.87(s,2H)
〔2.化合物(A)の合成〕
前工程で得られた化合物(D) 1.62gおよび酢酸ナトリウム4.23gを反応容器中のメタノール150mlに添加し、60℃に昇温して、2時間反応させた。
室温まで冷却した後、溶媒を留去し、残渣に、酢酸エチル200ml、飽和食塩水200ml、テトラヒドロフラン200mlを加え攪拌した。分液した後、有機相を飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。ろ過後、溶媒を減圧留去し、残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製した後、酢酸エチル/ヘキサン混合溶媒から晶析して、1.21gの化合物(A)を得た。化合物(A)の収率は81.4%であった。
化合物(A)の構造は、化合物(D)と同様の条件にて、H−NMRにより確認した。
H−NMR(DMSO−d6:300MHz)12.14(s,1H)、10.79(s,1H)、9.08(s,1H)、9.03(s,1H)、6.88(s,2H)、6.74(s,1H)、5.88(s,2H)、5.38(dd,1H)、3.19(dd,1H)、2.69(dd,1H)
〔3.ルテオリンの合成〕
前工程で得られたルテオリンの前駆体である化合物(A) 2.88gおよびヨウ素3.05gを反応容器中のピリジン200mlに添加し、100℃に昇温して、7時間反応させた。室温まで冷却した後、反応液に酢酸エチル1000ml、水1000ml、1%亜硫酸水素ナトリウム水50ml、濃塩酸150mlを加え攪拌した。
生成した不溶物を、セライトを通して吸引ろ過して除去した後、ろ液を分液し、有機相を希塩酸水で3回および飽和食塩水で1回洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。
ろ過後、溶媒を減圧留去し、残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製した後、テトラヒドロフラン/酢酸エチル/ヘキサン混合溶媒から晶析して、1.24gのルテオリンを得た。ルテオリンの収率は43.4%であった。
ルテオリンの構造は、化合物(D)と同様の条件にて、H−NMRにより確認した。 H−NMR(DMSO−d6:300MHz)12.99(s,1H)、10.83(s,1H)、9.92(s,1H)、9.41(s,1H)、7.47〜7.39(m,2H)、6.93(d,1H)、6.68(s,1H)、6.46(s,1H)、6.21(s,1H)
[比較例1]
実施例1と同様にして得た化合物(A)2.88gを用い、酸化剤として、ヨウ素に代えて、分子内に金属原子を含む酸化剤である過マンガン酸カリウム1.90gを用いた以外は実施例1と同様の条件で反応させた。
その結果、目的とする部位のみならず、化合物(A)の水酸基の箇所まで酸化されてしまい、目的とするルテオリンは得られなかった。
本発明の製造方法によれば、ルテオリンを簡便な操作で効率良く製造することができ、工業用のスケールにも展開が可能である。
これらのルテオリンは、抗酸化作用に優れ、医薬品、機能性食品、化粧品等、多くの用途が期待されるものである。

Claims (7)

  1. 下記化合物(A)を、酵素の非存在下、分子内に金属原子を含まない酸化剤により酸化することを含む、ルテオリンの製造方法。
  2. 前記分子内に金属原子を含まない酸化剤が、ハロゲン、下記化合物(B)、及び下記化合物(C)からなる群より選択される少なくとも1種である、請求項1に記載のルテオリンの製造方法。
  3. 下記化合物(D)と塩基とを反応させる下記化合物(A)を得ることをさらに含む、請求項1又は請求項2に記載のルテオリンの製造方法。
  4. フロログルシノールと下記一般式(I)で表される化合物とを、ブレンステッド酸又はルイス酸の存在下で反応させて下記化合物(D)を得ることをさらに含む、請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載のルテオリンの製造方法。

    上記一般式(I)中、Xはハロゲン原子又は水酸基を表す。
  5. 下記化合物(D)と塩基とを反応させることを含む、下記化合物(A)の製造方法。
  6. フロログルシノールと下記一般式(I)で表される化合物とを、ブレンステッド酸又はルイス酸の存在下で反応させることを含む、下記化合物(D)の製造方法。

    上記一般式(I)中、Xはハロゲン原子又は水酸基を表す。
  7. 下記化合物(D)。
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