JP2014159655A - 無機繊維集合体の製造方法、及び、無機繊維集合体 - Google Patents

無機繊維集合体の製造方法、及び、無機繊維集合体 Download PDF

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Abstract

【課題】脱脂ムラ及び焼成ムラを低減することで、無機繊維集合体の面圧を向上させることができる無機繊維集合体の製造方法、及び、無機繊維集合体を提供すること。
【解決手段】無機繊維前駆体がシート状に集合した無機繊維前駆体シートを、焼成炉内で加熱により生じた気流が、上記無機繊維前駆体シート表面に接しながら吹き抜けていくように上記焼成炉内に配置する工程と、上記無機繊維前駆体シートを、上記焼成炉を用いて加熱する工程とを行うことを特徴とする無機繊維集合体の製造方法。
【選択図】図1

Description

本発明は、無機繊維集合体の製造方法、及び、無機繊維集合体に関する。
ディーゼルエンジン等の内燃機関から排出される排ガス中には、パティキュレートマター(以下、PMともいう)が含まれており、近年、このPMが環境や人体に害を及ぼすことが問題となっている。また、排ガス中には、COやHC、NOx等の有害なガス成分も含まれていることから、この有害なガス成分が環境や人体に及ぼす影響についても懸念されている。
そこで、排ガス中のPMを捕集したり、有害なガス成分を浄化したりする排ガス浄化装置として、炭化ケイ素やコージェライトなどの多孔質セラミックからなる排ガス処理体と、排ガス処理体を収容するケーシングと、排ガス処理体とケーシングとの間に配設される無機繊維集合体からなる保持シール材とから構成される排ガス浄化装置が種々提案されている。この保持シール材は、自動車の走行等により生じる振動や衝撃により、排ガス処理体がその外周を覆うケーシングと接触して破損するのを防止することや、排ガス処理体とケーシングとの間から排気ガスが漏れることを防止すること等を主な目的として配設されている。そのため、保持シール材には、圧縮されることによる反発力で発生する面圧を高め、排ガス処理体を確実に保持する機能が求められている。
従来、このような無機繊維集合体の製造方法としては、ノズルからセラミック紡糸液を吐出し、延伸、熱風乾燥により繊維化したセラミック繊維前駆体シートを、コンベアに平置きして脱脂・焼成工程を行うことによりセラミック化する方法が知られている(例えば、特許文献1参照)。
特開2003−41478号公報
しかしながら、特許文献1に開示された方法を用いて無機繊維前駆体シートを脱脂・焼成すると、上記シートの表裏で脱脂ムラ及び焼成ムラが生じる。また、生産性を上げるために、複数枚の無機繊維前駆体シートを積み重ねて平置きすると、シート全体の厚みが大きくなるため、脱脂ムラ及び焼成ムラがより大きくなる。その結果、無機繊維集合体の面圧が劣るという問題があった。
本発明は、上記の問題を解決するためになされたものであり、脱脂ムラ及び焼成ムラを低減することで、無機繊維集合体の面圧を向上させることができる無機繊維集合体の製造方法、及び、無機繊維集合体を提供することを目的とする。
上記目的を達成するために、本発明の無機繊維集合体の製造方法は、無機繊維前駆体がシート状に集合した無機繊維前駆体シートを、焼成炉内で加熱により生じた気流が、上記無機繊維前駆体シート表面に接しながら吹き抜けていくように上記焼成炉内に配置する工程と、上記無機繊維前駆体シートを、上記焼成炉を用いて加熱する工程とを行うことを特徴とする。
上記無機繊維集合体の製造方法では、無機繊維前駆体がシート状に集合した無機繊維前駆体シートを、焼成炉内で加熱により生じた気流が、上記無機繊維前駆体シート表面に接しながら吹き抜けていくように上記焼成炉内に配置する。
そのため、上記焼成炉を用いて加熱することにより、上記無機繊維前駆体シート内部から発生する分解ガスが上記無機繊維前駆体シートの表面から周囲の環境に阻害されずに無理なく追い出され、かつ、上記無機繊維前駆体シート内での酸素拡散速度が一定以上の速さとなるため、無機繊維集合体の脱脂ムラを低減させることができる。また、上記無機繊維前駆体シートに均一に熱がかかり易くなるため、無機繊維集合体の焼成ムラを低減させることができる。このように、無機繊維集合体の脱脂ムラ及び焼成ムラを低減させることで、面圧の高い無機繊維集合体を得ることができる。
本発明の無機繊維集合体の製造方法では、複数枚の上記無機繊維前駆体シートを、上記焼成炉内で、上記無機繊維前駆体シートの主面間に所定の間隔を設けて配置することが望ましい。
複数枚の上記無機繊維前駆体シートを、上記焼成炉内に配置することで、生産性を向上させることができる。また、上記無機繊維前駆体シートの主面間に所定の間隔を設けることで、上記焼成炉内の空気対流をスムーズにさせることができ、上記無機繊維前駆体シート表面の温度の偏りを抑えることができる。
本発明の無機繊維集合体の製造方法では、上記無機繊維前駆体がアルミナ短繊維前駆体からなることが望ましい。
上記無機繊維前駆体がアルミナ短繊維前駆体からなると、無機繊維集合体の耐熱性を高めることができる。なお、本明細書において短繊維とは、ゾル−ゲル法によって製造される繊維であり、ブローイング法又は遠心法にて繊維化した繊維をいう。
本発明の無機繊維集合体の製造方法では、無機繊維前駆体がシート状に集合した無機繊維前駆体シートを、吊り下げて焼成炉内に配置する工程と、上記無機繊維前駆体シートを、上記焼成炉を用いて加熱する工程とを行うことを特徴とする。
上記無機繊維集合体の製造方法では、無機繊維前駆体がシート状に集合した無機繊維前駆体シートを、吊り下げて焼成炉内に配置する。
そのため、上記焼成炉内で加熱により生じた気流が流れを作り、上記無機繊維前駆体シート表面に接しながら吹き抜けていく。これにより、上記無機繊維前駆体シート内部から発生する分解ガスが上記無機繊維前駆体シートの表面から周囲の環境に阻害されずに無理なく追い出され、かつ、上記無機繊維前駆体シート内での酸素拡散速度が一定以上の速さとなるため、無機繊維集合体の脱脂ムラを低減させることができる。また、上記無機繊維前駆体シートに均一に熱がかかり易くなるため、無機繊維集合体の焼成ムラを低減させることができる。このように、無機繊維集合体の脱脂ムラ及び焼成ムラを低減させることで、面圧の高い無機繊維集合体を得ることができる。
本発明の無機繊維集合体の製造方法では、上記無機繊維前駆体シートを吊り下げて焼成炉内に配置する際、複数枚の上記無機繊維前駆体シートを、上記焼成炉内で、上記無機繊維前駆体シートの主面間に所定の間隔を設けて配置することが望ましい。
複数枚の上記無機繊維前駆体シートを、上記焼成炉内に配置することで、生産性を向上させることができる。また、上記無機繊維前駆体シートの主面間に所定の間隔を設けることで、上記焼成炉内の空気対流をスムーズにさせることができ、上記無機繊維前駆体シート表面の温度の偏りを抑えることができる。
本発明の無機繊維集合体の製造方法では、上記無機繊維前駆体がアルミナ短繊維前駆体からなることが望ましい。
上記無機繊維前駆体がアルミナ短繊維前駆体からなると、無機繊維集合体の耐熱性を高めることができる。
本発明の無機繊維集合体の製造方法では、無機繊維前駆体がシート状に集合した無機繊維前駆体シートを、上記無機繊維前駆体シートの主面が重力方向に対して平行になるように焼成炉内に配置する工程と、上記無機繊維前駆体シートを、上記焼成炉を用いて加熱する工程とを行うことを特徴とする。
上記無機繊維集合体の製造方法では、無機繊維前駆体がシート状に集合した無機繊維前駆体シートを、上記無機繊維前駆体シートの主面が重力方向に対して平行になるように焼成炉内に配置する。
そのため、上記焼成炉内で加熱により生じた気流が流れを作り、上記無機繊維前駆体シート表面に接しながら吹き抜けていく。これにより、上記無機繊維前駆体シート内部から発生する分解ガスが上記無機繊維前駆体シートの表面から周囲の環境に阻害されずに無理なく追い出され、かつ、上記無機繊維前駆体シート内での酸素拡散速度が一定以上の速さとなるため、無機繊維集合体の脱脂ムラを低減させることができる。また、上記無機繊維前駆体シートに均一に熱がかかり易くなるため、無機繊維集合体の焼成ムラを低減させることができる。このように、無機繊維集合体の脱脂ムラ及び焼成ムラを低減させることで、面圧の高い無機繊維集合体を得ることができる。
本発明の無機繊維集合体の製造方法では、上記無機繊維前駆体シートの主面が重力方向に対して平行になるように焼成炉内に配置する際、複数枚の上記無機繊維前駆体シートを、上記焼成炉内で、上記無機繊維前駆体シートの主面間に所定の間隔を設けて配置することが望ましい。
複数枚の上記無機繊維前駆体シートを、上記焼成炉内に配置することで、生産性を向上させることができる。また、上記無機繊維前駆体シートの主面間に所定の間隔を設けることで、上記焼成炉内の空気対流をスムーズにさせることができ、上記無機繊維前駆体シート表面の温度の偏りを抑えることができる。
本発明の無機繊維集合体の製造方法では、上記無機繊維前駆体がアルミナ短繊維前駆体からなることが望ましい。
上記無機繊維前駆体がアルミナ短繊維前駆体からなると、無機繊維集合体の耐熱性を高めることができる。
本発明の無機繊維集合体は、無機繊維が多数集合してなる無機繊維集合体であって、無機繊維前駆体がシート状に集合した無機繊維前駆体シートを、焼成炉内で加熱により生じた気流が、上記無機繊維前駆体シート表面に接しながら吹き抜けていくように上記焼成炉内に配置する工程と、上記無機繊維前駆体シートを、上記焼成炉を用いて加熱する工程とから得られることを特徴とする。
上記無機繊維集合体は、無機繊維前駆体がシート状に集合した無機繊維前駆体シートを、焼成炉内で加熱により生じた気流が、上記無機繊維前駆体シート表面に接しながら吹き抜けていくように上記焼成炉内に配置する工程から得られる。
そのため、上記焼成炉を用いて加熱することにより、上記無機繊維前駆体シート内部から発生する分解ガスが上記無機繊維前駆体シートの表面から周囲の環境に阻害されずに無理なく追い出され、かつ、上記無機繊維前駆体シート内での酸素拡散速度が一定以上の速さとなるため、無機繊維集合体の脱脂ムラを低減させることができる。また、上記無機繊維前駆体シートに均一に熱がかかり易くなるため、無機繊維集合体の焼成ムラを低減させることができる。このように、無機繊維集合体の脱脂ムラ及び焼成ムラを低減させることで、無機繊維集合体の面圧を向上させることができる。
本発明の無機繊維集合体は、上記無機繊維がアルミナ短繊維からなることが望ましい。
上記無機繊維がアルミナ短繊維からなると、無機繊維集合体の耐熱性を高めることができる。
本発明の無機繊維集合体は、上記無機繊維の平均繊維径が1〜50μmであることが望ましい。
上記無機繊維の平均繊維径が1〜50μmであると、無機繊維は、ニードルパンチング処理により交絡し易いので無機繊維が飛散しにくい他に、例え無機繊維が飛散したとしても人体に悪影響を与えにくい性質がある。
上記無機繊維の平均繊維径が1μm未満であると、無機繊維が飛散して体内に取り込まれた場合、中皮腫等を患う可能性があり、人体に対して悪影響を与える場合がある。
また、上記無機繊維の平均繊維径が50μmを超えると、繊維自体の弾性が低下する場合がある。その結果、上記無機繊維集合体を保持シール材として用いた際に、反発性能が劣る場合がある。
図1(a)は、本発明の第一実施形態に係る無機繊維集合体の製造方法において、焼成炉内に配置された無機繊維前駆体シートの一例を模式的に示す斜視断面図であり、図1(b)は、図1(a)に示した焼成炉内のA−A線断面図である。 図2は、本発明の第一実施形態に係る無機繊維集合体から得られる保持シール材の一例を模式的に示す斜視図である。 図3(a)は、本発明の第一実施形態に係る無機繊維集合体から得られる排ガス浄化装置の一例を模式的に示す斜視図であり、図3(b)は、図3(a)に示した排ガス浄化装置のB−B線断面図である。
以下、本発明の実施形態について具体的に説明する。しかしながら、本発明は、以下の実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を変更しない範囲において適宜変更して適用することができる。
(第一実施形態)
以下、本発明の無機繊維集合体の製造方法、及び、無機繊維集合体の一実施形態である第一実施形態について説明する。
まず、本発明の第一実施形態に係る無機繊維集合体の製造方法について説明する。
本実施形態に係る無機繊維集合体の製造方法では、無機繊維前駆体がシート状に集合した無機繊維前駆体シートを、焼成炉内で加熱により生じた気流が、上記無機繊維前駆体シート表面に接しながら吹き抜けていくように上記焼成炉内に配置する工程と、上記無機繊維前駆体シートを、上記焼成炉を用いて加熱する工程とを行う。
以下、無機繊維前駆体シートを焼成炉内に配置する工程について説明する。
図1(a)は、本発明の第一実施形態に係る無機繊維集合体の製造方法において、焼成炉内に配置された無機繊維前駆体シートの一例を模式的に示す斜視断面図であり、図1(b)は、図1(a)に示した焼成炉内のA−A線断面図である。
「無機繊維前駆体がシート状に集合した無機繊維前駆体シートを、焼成炉内で加熱により生じた気流が、上記無機繊維前駆体シート表面に接しながら吹き抜けていくように上記焼成炉内に配置する」とは、例えば、図1(a)及び図1(b)に示すように無機繊維前駆体シート11が配置することをいう。
このように無機繊維前駆体シート11が配置されていると、図1(b)に示すように、焼成炉10内で加熱された空気が気流12となって、焼成炉10の壁と無機繊維前駆体シート11の間、及び、無機繊維前駆体シート11同士の間を、無機繊維前駆体シート11表面に接しながら吹き抜けていくことになる。
よって、気流12が、無機繊維前駆体シート11表面に接しながら吹き抜けていくことができない場合、例えば、無機繊維前駆体シート11が平置きにして配置されている場合、又は、複数の無機繊維前駆体シート11が隙間なく並べられている場合等は、本発明の第一実施形態には含まれない。
本実施形態に係る無機繊維前駆体シート11は、焼成炉10内で加熱により生じた気流12が、無機繊維前駆体シート11表面に接しながら吹き抜けていくように、焼成炉10内に配置されていれば、配置方法は特に限定されるものではない。
例えば、図1(a)に示すように、無機繊維前駆体シート11を、吊り下げて焼成炉10内に配置してもよい。吊り下げる方法としては、特に限定されるものではなく、例えば、無機繊維前駆体シート11の一辺(図1(a)中における上側の辺)から数mm程度内側に設けられた2箇所の切込み14にパイプ15を通し、パイプ15を治具17に引っ掛けることにより、無機繊維前駆体シート11を吊り下げてもよい。
パイプ15及び治具17は、耐熱性のある素材であることが好ましい。ただ、耐熱性がなくとも、焼成する温度に耐えることが可能ならば、素材は特に限定されない。
切込み14の位置は特に限定されるものではないが、無機繊維前駆体シート11が破れたりしないように、無機繊維前駆体シート11の一辺から100〜200mm内側に入った箇所から切込みを設けることが好ましい。また、切込み14の長さは特に限定されるものではないが、パイプ15の外周の長さの55〜65%の長さであることが好ましい。さらに、無機繊維前駆体シート11が吊り下げた際に折れ曲がらないように、2箇所の切込み14は略平行に設けられ、2箇所の切込み14の間隔は、無機繊維前駆体シート11の幅方向(重力方向に垂直な方向)の長さの50〜95%であることが好ましい。
また、例えば、図1(b)に示すように、無機繊維前駆体シート11を、無機繊維前駆体シートの主面11aが重力方向に対して平行になるように配置してもよい。
重力方向とは、図1(b)中、両矢印gで示す方向であって、重力によって物が落ちる方向をいう。よって、必ずしも、焼成炉10の壁と平行である必要はない。
図1(b)に示すように、複数枚の無機繊維前駆体シート11は、焼成炉10内で、無機繊維前駆体シートの主面11a間に所定の間隔dを設けて配置することが望ましい。
所定の間隔dは、30〜100mmであることが好ましく、45〜60mmであることがより好ましい。
所定の間隔dが30mm未満であると、焼成炉内で加熱により生じた気流が、無機繊維前駆体シート間を吹き抜けにくくなり、無機繊維集合体に脱脂ムラ及び焼成ムラが生じる場合がある。また、所定の間隔dが100mmを超えると、焼成炉内で一度に加熱できる無機繊維前駆体シートの枚数が少なすぎて、生産性が劣る場合がある。
図1(a)及び図1(b)に示す配置方法の他にも、焼成炉内にエアーを打ち込んだり、無機繊維前駆体シート下端を斜めに固定するなどして、無機繊維前駆体シートを斜めに配置した場合にも、焼成炉内で加熱により生じた気流が、無機繊維前駆体シート表面に接しながら吹き抜けていくため、同じような効果を得ることができる。
図1(a)及び図1(b)では、焼成炉10内に複数枚の無機繊維前駆体シート11を配置する場合について説明しているが、焼成炉10内に配置される無機繊維前駆体シート11の枚数は複数枚に限定されるものではなく、1枚であってもよい。
複数枚の無機繊維前駆体シート11を焼成炉10内に配置する場合、焼成炉10内に配置される無機繊維前駆体シート11の枚数は、焼成炉10の大きさによって適宜変更することができるが、3〜10枚であることが好ましく、6〜8枚であることがより好ましい。
焼成炉10内に配置される無機繊維前駆体シート11の枚数が3枚未満であると、焼成炉内で一度に加熱できる無機繊維前駆体シートの枚数が少なすぎて、生産性が劣る場合がある。また、焼成炉10内に配置される無機繊維前駆体シート11の枚数が10枚を超えると、焼成炉内で加熱により生じた気流が、無機繊維前駆体シート間を吹き抜けにくくなり、無機繊維集合体に脱脂ムラ及び焼成ムラが生じる場合がある。
無機繊維前駆体シート11の大きさは、特に限定されるものではなく、焼成炉10の大きさによって適宜変更することができる。
無機繊維前駆体シート11の厚さは、20〜100mmであることが好ましく、30〜60mmであることがより好ましい。
無機繊維前駆体シート11の厚さが20mm未満であると、無機繊維前駆体シートの厚さが小さすぎて、無機繊維前駆体シートが破れやすくなる場合がある。また、無機繊維前駆体シート11の厚さが100mmを超えると、無機繊維前駆体シートの厚さが大きすぎるため、本実施形態に係る無機繊維集合体の製造方法を用いても、脱脂ムラ及び焼成ムラが大きくなる場合がある。
無機繊維前駆体は、アルミナ短繊維前駆体、アルミナ−シリカ短繊維前駆体、シリカ短繊維前駆体、又は、ガラス短繊維前駆体からなることが望ましく、耐熱性の観点から、アルミナ短繊維前駆体であることがより望ましく、ムライト組成のアルミナ短繊維前駆体であることがさらに望ましい。
ここで、アルミナ短繊維前駆体とは、65〜99重量%のAl及び1〜35重量%のSiOを含む短繊維前駆体をいう。
無機繊維前駆体シート11を焼成炉10内に配置する方法としては、特に限定されるものではないが、例えば、図1(a)及び図1(b)に示すように、あらかじめ治具17に取り付けた無機繊維前駆体シート11を、搬送機構16を用いて一方向(図1(b)中における左から右方向)に搬送し、焼成炉10内に配置する方法が好ましい。
搬送機構16は、特に限定されるものではないが、ローラーコンベア、又は、金属メッシュコンベアであることが好ましく、ローラーコンベアであることがより好ましい。
無機繊維前駆体シートは、従来から知られた方法で製造することができる。
例えば、無機繊維前駆体シートがニードルシートである場合、以下の方法により、無機繊維前駆体シートを製造することができる。
(1)紡糸工程
Al含有量、及び、AlとClとの原子比が所定の値となるように調製された塩基性塩化アルミニウム水溶液に、焼成後の無機繊維における組成比が、Al:SiO=60:40〜80:20(重量比)となるようにシリカゾルを添加する。さらに、成形性向上を目的として有機重合体を適量添加して混合液を調製する。
得られた混合液を濃縮して紡糸用混合物とし、この紡糸用混合物をブローイング法により紡糸して3〜10μmの平均繊維径を有する無機繊維前駆体を作製する。
なお、本明細書において、ブローイング法とは、エアーノズルから吹き出す高速のガス流(空気流)の中に、紡糸用混合物供給用ノズルから押し出される紡糸用混合物を供給することによって無機繊維前駆体の紡糸を行う方法のことをいう。
(2)圧縮工程
次に、上記無機繊維前駆体を圧縮して所定の大きさの連続したシート状物を作製する。
(3)ニードリング工程
上記シート状物の一方の表面の上方に、ニードルが7〜30個/cmの密度で取り付けられたニードルボードを配設する。そして、ニードルボードをシート状物の厚さ方向に沿って一回上下させることによりニードリング処理を行い、ニードリング処理体を作製する。この場合に、ニードルの先端部分に形成されたバーブがシート状物の反対側の表面に完全に貫出するまでニードルを貫通させる。
上記ニードリング処理によって得られるニードリング処理体の表面のニードルが貫入した箇所には、ニードル貫入痕が形成され、また、ニードリング処理体の表面のニードルが貫出した箇所には、ニードル貫出痕が形成されることとなる。そして、ニードル貫出痕においては、無機繊維前駆体が閉ループ状に配向してなる束状の無機繊維前駆体が形成されることとなる。
以上の工程により、無機繊維前駆体シートを製造することができる。
また、例えば、無機繊維前駆体シートが抄造シートである場合、以下の方法により、無機繊維前駆体シートを製造することができる。
(1)混合液準備工程
アルミナ繊維と、シリカ繊維と、無機粒子を含む無機バインダと、水とを原料液中の無機繊維(アルミナ繊維及びシリカ繊維)の含有量が所定の値となるように混合し、攪拌機で攪拌することで混合液を調製する。混合液には、必要に応じて、有機バインダが含まれていてもよい。
無機バインダとしては、例えば、アルミナゾル、シリカゾル、及び、それらのコロイド分散液等を用いることができる。しかし、市販されている原液では濃度が高すぎることがあるので、無機粒子の濃度が固形分換算で0.5〜5重量%程度になるように薄めた液を無機バインダとして使用することが望ましい。
また、無機バインダとしてアルミナゾルを使用する場合、水溶液中(無機バインダ中)の二次粒子の形状が鎖状であるアルミナ粒子を含むアルミナゾル(例えば、日産化学工業株式会社製AS550)を使用することが望ましい。
鎖状のアルミナ粒子を用いると、二次粒子の絡みが大きく、粒子同士が接合しながら無機繊維の表面に付着する。そのため、無機粒子が均一に無機繊維の表面に付着しやすくなるため、保持シール材の面圧がより向上すると考えられる。
(2)抄造工程
次に、底面にろ過用のメッシュが形成された成形器に混合液を流し込んだ後に、混合液中の水をメッシュを介して脱水することにより原料シートを作製する。
必要であれば、サクションポンプ、真空ポンプ等を使用して、成型器の下側から、ろ過用メッシュを介して、水分の強制吸引を行ってもよい。
(3)加熱圧縮工程
原料シートを所定の条件で加熱圧縮して所定の嵩密度を有する無機繊維前駆体シートを作製する。この工程を経ることにより、アルミナ繊維とシリカ繊維とが、無機バインダを介して互いに固着され、マットの形状が保持されることになる。
以上の工程により、無機繊維前駆体シートを製造することができる。
以下、無機繊維前駆体シートを、焼成炉を用いて加熱し、無機繊維集合体を得る工程について説明する。
無機繊維前駆体シート11を、焼成炉10を用いて加熱する方法としては、特に限定されるものではないが、例えば、以下の2つの方法が挙げられる。
まず、1つ目の方法としては、あらかじめ治具17に取り付けた無機繊維前駆体シート11を、搬送機構16を用いて焼成炉10内に搬送し、一定時間保持した後、再び搬送機構16を用いて焼成炉10から搬送する方法が挙げられる。
当該方法を用いた場合、無機繊維前駆体シート11は、焼成炉10内で2〜3時間保持されることが好ましい。また、加熱温度は、脱脂を行う場合には、最高温度700〜850℃であることが好ましく、焼成を行う場合には、最高温度1100〜1300℃であることが好ましい。
2つ目の方法としては、あらかじめ治具17に取り付けた無機繊維前駆体シート11を、搬送機構16を用いて搬送しつつ、焼成炉10内を通過させる方法が挙げられる。
当該方法を用いた場合、搬送速度は特に限定されるものではなく、繊維の組成などの状態により、適宜最適な速度を選択することができる。
加熱温度は、脱脂を行う場合には、最高温度700〜850℃であることが好ましく、焼成を行う場合には、最高温度1100〜1300℃であることが好ましい。
本実施形態に係る無機繊維集合体において、無機繊維の平均繊維径は1〜50μmであることが好ましく、1〜20μmであることがより好ましい。
また、無機繊維の平均繊維長は、交絡構造を呈するために、ある程度の平均繊維長を有しており、例えば、50μm〜100mmであることが好ましく、400〜500μmであることがより好ましい。
本実施形態に係る無機繊維集合体において、無機繊維は、アルミナ短繊維、アルミナ−シリカ短繊維、シリカ短繊維、又は、ガラス短繊維からなることが望ましく、アルミナ短繊維であることがより望ましく、ムライト組成のアルミナ短繊維であることがさらに望ましい。
ここで、アルミナ短繊維とは、65〜99重量%のAl及び1〜35重量%のSiOを含む短繊維をいう。
続いて、本発明の第一実施形態に係る無機繊維集合体から得られる保持シール材について説明する。本発明の第一実施形態に係る無機繊維集合体から得られる保持シール材もまた、本発明の好適な実施形態の1つである。
図2は、本発明の第一実施形態に係る無機繊維集合体から得られる保持シール材の一例を模式的に示す斜視図である。
図2に示すように、保持シール材20は、所定の長手方向の長さ(図2中、矢印Lで示す)、幅(図2中、矢印Wで示す)及び厚さ(図2中、矢印Tで示す)を有する平面矩形状のマットである。
また、保持シール材20では、マットの長手方向の端部のうち、一方の端部には、凸部21が形成されており、他方の端部には、凹部22が形成されている。凸部21及び凹部22は、後述する排ガス浄化装置を組み立てるために排ガス処理体に保持シール材20を巻き付けた際に、ちょうど互いに嵌合するような形状となっている。
なお、本明細書において、マットの長手方向の長さLとは、マットの端部に形成される凸部又は凹部の寸法を考慮しない長さである。
マットの長手方向の長さLは、巻き付けようとしている柱状の排ガス処理体の外周の長さの±95mm以内であることが望ましい。マットの長手方向の長さLが上記範囲内であると、保持シール材を排ガス処理体に巻き付けた際に隙間ができることがなく、また、保持シール材がずれたり、よれたりすることがない。
マットの幅Wは、排ガス処理体の長手方向の長さに対して5〜15mm短いことが望ましい。
また、マットの厚さTは、1.5〜15mmであることが望ましい。
保持シール材20は、本実施形態に係る無機繊維集合体から、所定形状の保持シール材を打ち抜く打ち抜き工程を行うことにより製造する。
無機繊維集合体の打ち抜きの方法及び無機繊維集合体の打ち抜きに使用する装置は、特に限定されるものではなく、従来公知の方法を使用することができる。
例えば、打ち抜き刃としては、無機繊維集合体を打ち抜く際の打ち抜きパターンと同形状に設計された刃を有するトムソン刃を用い、打ち抜き装置としては、油圧プレス機等を用いることができる。
上記保持シール材では、上記打ち抜き工程の前に、必要に応じて、無機繊維集合体にバインダを付着させてもよい。無機繊維集合体にバインダを付着させることで、無機繊維同士の交絡構造をより強固なものとすることができるとともに、保持シール材の嵩高さを抑えることができる。
バインダとしては、アクリル系ラテックスやゴム系ラテックス等を水に分散させて調製したエマルジョンを用いることができる。このバインダをスプレー等を用いて無機繊維集合体全体に均一に吹きかけて、バインダを無機繊維集合体に付着させる。
バインダを付着させる量は、繊維量に対して0.01〜15重量%であることが望ましく、0.05〜10重量%であることがより望ましく、0.1〜3重量%であることがさらに望ましい。
その後、バインダ中の水分を除去するために、無機繊維集合体を乾燥させる。乾燥条件としては、例えば、95〜150℃で1〜30分間乾燥させればよい。乾燥工程を経ることでバインダが付着した無機繊維集合体を作製することができる。
最後に、本発明の第一実施形態に係る無機繊維集合体から得られる排ガス浄化装置について説明する。本発明の第一実施形態に係る無機繊維集合体から得られる排ガス浄化装置もまた、本発明の好適な実施形態の1つである。
図3(a)は、本発明の第一実施形態に係る無機繊維集合体から得られる排ガス浄化装置の一例を模式的に示す斜視図であり、図3(b)は、図3(a)に示した排ガス浄化装置のB−B線断面図である。
図3(a)に示すように、排ガス浄化装置30は、排ガス処理体31と、排ガス処理体31を収容するケーシング32と、排ガス処理体31の周囲に巻き付けられ、排ガス処理体31及びケーシング32の間に配設された保持シール材20とを備える。
つまり、排ガス浄化装置30は、図2に示した保持シール材20と、図3(a)に示した排ガス処理体31及びケーシング32とから構成されている。
図3(a)に示すケーシング32は、主にステンレス等の金属からなり、その形状は、円筒状である。また、その内径は、排ガス処理体31の端面の直径と排ガス処理体31に巻付けられた状態の保持シール材20の厚さとを合わせた長さより若干短くなっており、その長さは、排ガス処理体31の長手方向(図3(a)中、両矢印Wで示される方向)における長さと略同一となっている。
保持シール材20の構成については、既に述べているので省略する。
排ガス浄化装置30は、図3(a)に示すように、排ガス処理体31として、各々のセルにおけるいずれか一方が封止材33によって目封じされたハニカムフィルタ31を用いている。
ハニカムフィルタ31は、主に多孔質セラミックからなり、その形状は円柱状である。また、ハニカムフィルタ31の外周には、ハニカムフィルタ31の外周部を補強したり、形状を整えたり、ハニカムフィルタ31の断熱性を向上させたりする目的で、シール材層35が設けられている。
上述した構成を有する排ガス浄化装置を排ガスが通過する場合について、図3(b)を用いて以下に説明する。
図3(b)に示したように、内燃機関から排出され、排ガス浄化装置30に流入した排ガス(図3(b)中、排ガスをGで示し、排ガスの流れを矢印で示す)は、ハニカムフィルタ31の排ガス流入側端面36aに開口した一のセル301に流入し、セル301を隔てるセル壁302を通過する。この際、排ガス中のPMがセル壁302で捕集され、排ガスが浄化されることとなる。浄化された排ガスは、排ガス流出側端面36bに開口した他のセル301から流出し、外部に排出される。
上記排ガス浄化装置は、上記保持シール材を排ガス処理体に巻き付ける巻き付け工程と、ケーシング内に収容する収容工程とを行うことにより製造する。
まず、巻き付け工程では、保持シール材20を排ガス処理体31の外周に巻き付け、保持シール材20の凸部21及び凹部22を嵌合させる。
上記巻き付け工程の後に、収容工程を行う。
収容工程では、保持シール材20を巻き付けた排ガス処理体31を、所定の大きさを有する円筒状であって、主に金属等からなるケーシング32に圧入する。
圧入後にシール材が圧縮して所定の反発力(すなわち、ハニカムフィルタを保持する力)を発揮するために、ケーシング32の内径は、保持シール材20を巻き付けた排ガス処理体31の保持シール材20の厚さを含めた最外径より少し小さくなっている。
保持シール材を巻きつけた排ガス処理体をケーシング内に収容させる方法は、圧入方式(スタッフィング方式)に限定されるものではなく、サイジング方式(スウェージング方式)、及び、クラムシェル方式等も挙げられる。
サイジング方式(スウェージング方式)では、保持シール材を巻きつけた排ガス処理体をケーシングの内部に挿入した後、ケーシングの内径を縮めるように外周側から圧縮する。クラムシェル方式では、ケーシングを、第1のケーシング及び第2のケーシングの2つの部品に分離可能な形状としておき、保持シール材を巻きつけた排ガス処理体を第1のケーシング上に載置した後に第2のケーシングを被せて密封する。
保持シール材を巻きつけた排ガス処理体をケーシングに収容する方法の中では、圧入方式(スタッフィング方式)又はサイジング方式(スウェージング方式)が望ましい。圧入方式(スタッフィング方式)又はサイジング方式(スウェージング方式)では、ケーシングとして2つの部品を用いる必要がないため、製造工程の数を少なくすることができるからである。
以下に、本発明の第一実施形態に係る無機繊維集合体の製造方法、及び、無機繊維集合体の作用効果について列挙する。
(1)本実施形態に係る無機繊維集合体の製造方法では、無機繊維前駆体がシート状に集合した無機繊維前駆体シートを、焼成炉内で加熱により生じた気流が、上記無機繊維前駆体シート表面に接しながら吹き抜けていくように上記焼成炉内に配置する。
そのため、上記焼成炉を用いて加熱することにより、上記無機繊維前駆体シートの表面から無駄なく分解ガスが追い出され、かつ、上記無機繊維前駆体シート内での酸素拡散速度が一定以上の速さとなるため、無機繊維集合体の脱脂ムラを低減させることができる。また、上記無機繊維前駆体シートに均一に熱がかかり易くなるため、無機繊維集合体の焼成ムラを低減させることができる。このように、無機繊維集合体の脱脂ムラ及び焼成ムラを低減させることで、面圧の高い無機繊維集合体を得ることができる。
(2)本実施形態に係る無機繊維集合体の製造方法では、複数枚の上記無機繊維前駆体シートを、上記焼成炉内で、上記無機繊維前駆体シートの主面間に所定の間隔を設けて配置することが望ましい。
複数枚の上記無機繊維前駆体シートを、上記焼成炉内に配置することで、生産性を向上させることができる。また、上記無機繊維前駆体シートの主面間に所定の間隔を設けることで、上記焼成炉内の空気対流をスムーズにさせることができ、上記無機繊維前駆体シート表面の温度の偏りを抑えることができる。
(3)本実施形態に係る無機繊維集合体の製造方法では、上記無機繊維前駆体がアルミナ短繊維前駆体からなることが望ましい。
上記無機繊維前駆体がアルミナ短繊維前駆体からなると、無機繊維集合体の耐熱性を高めることができる。
(4)本実施形態に係る無機繊維集合体の製造方法では、無機繊維前駆体がシート状に集合した無機繊維前駆体シートを、吊り下げて焼成炉内に配置する。
そのため、上記焼成炉内で加熱により生じた気流が流れを作り、上記無機繊維前駆体シート表面に接しながら吹き抜けていく。これにより、上記無機繊維前駆体シート内部から発生する分解ガスが上記無機繊維前駆体シートの表面から周囲の環境に阻害されずに無理なく追い出され、かつ、上記無機繊維前駆体シート内での酸素拡散速度が一定以上の速さとなるため、無機繊維集合体の脱脂ムラを低減させることができる。また、上記無機繊維前駆体シートに均一に熱がかかり易くなるため、無機繊維集合体の焼成ムラを低減させることができる。このように、無機繊維集合体の脱脂ムラ及び焼成ムラを低減させることで、面圧の高い無機繊維集合体を得ることができる。
(5)本実施形態に係る無機繊維集合体の製造方法では、無機繊維前駆体がシート状に集合した無機繊維前駆体シートを、上記無機繊維前駆体シートの主面が重力方向に対して平行になるように焼成炉内に配置する。
そのため、上記焼成炉内で加熱により生じた気流が流れを作り、上記無機繊維前駆体シート表面に接しながら吹き抜けていく。これにより、上記無機繊維前駆体シート内部から発生する分解ガスが上記無機繊維前駆体シートの表面から周囲の環境に阻害されずに無理なく追い出され、かつ、上記無機繊維前駆体シート内での酸素拡散速度が一定以上の速さとなるため、無機繊維集合体の脱脂ムラを低減させることができる。また、上記無機繊維前駆体シートに均一に熱がかかり易くなるため、無機繊維集合体の焼成ムラを低減させることができる。このように、無機繊維集合体の脱脂ムラ及び焼成ムラを低減させることで、面圧の高い無機繊維集合体を得ることができる。
(6)本実施形態に係る無機繊維集合体は、無機繊維が多数集合してなる無機繊維集合体であって、無機繊維前駆体がシート状に集合した無機繊維前駆体シートを、焼成炉内で加熱により生じた気流が、上記無機繊維前駆体シート表面に接しながら吹き抜けていくように上記焼成炉内に配置する工程から得られる。
そのため、上記焼成炉を用いて加熱することにより、上記無機繊維前駆体シート内部から発生する分解ガスが上記無機繊維前駆体シートの表面から周囲の環境に阻害されずに無理なく追い出され、かつ、上記無機繊維前駆体シート内での酸素拡散速度が一定以上の速さとなるため、無機繊維集合体の脱脂ムラを低減させることができる。また、上記無機繊維前駆体シートに均一に熱がかかり易くなるため、無機繊維集合体の焼成ムラを低減させることができる。このように、無機繊維集合体の脱脂ムラ及び焼成ムラを低減させることで、無機繊維集合体の面圧を向上させることができる。
(7)本実施形態に係る無機繊維集合体は、上記無機繊維がアルミナ短繊維からなることが望ましい。
上記無機繊維がアルミナ短繊維からなると、無機繊維集合体の耐熱性を高めることができる。
(8)本発明の無機繊維集合体は、上記無機繊維の平均繊維径が1〜50μmであることが望ましい。
上記無機繊維の平均繊維径が1〜50μmであると、無機繊維は、ニードルパンチング処理により交絡し易いので無機繊維が飛散しにくい他に、例え無機繊維が飛散したとしても人体に悪影響を与えにくい性質がある。
(実施例)
以下に、図1(a)及び図1(b)に示す本発明の第一実施形態をより具体的に開示した実施例を示すが、本発明の第一実施形態はこれらの実施例のみに限定されるものではない。
(実施例1)
ゾルゲル法で作製したアルミナ繊維前駆体(平均繊維径:5.3μm)を積層し、素地マットを用意した。この素地マットに対し、低密度でニードリング処理を施すことで、坪量が1400g/mであるニードル処理マットを作製した。ニードル処理マットの厚さは、60mmであった。
次に、ニードル処理マットを700mm×700mmの大きさに裁断し、アルミナ繊維前駆体シートを作製した。
次に、このようにして作製したアルミナ繊維前駆体シートを、焼成炉を用いて脱脂及び焼成した。
まず、図1(a)に示すように、アルミナ繊維前駆体シートの一辺から150mm内側に入った箇所から、幅50mmの切込みを2箇所設けた。そして、2箇所の切込みにパイプを通し、治具に引っ掛けることにより、アルミナ繊維前駆体シートを吊り下げた。同様にして、7枚のアルミナ繊維前駆体シートを45mm間隔で吊り下げた。その後、焼成炉内でアルミナ繊維前駆体シートを600℃で2時間保持して脱脂した後、1200℃で1時間保持して焼成することにより、無機繊維集合体を製造した。
(比較例1)
実施例1で作製したアルミナ繊維前駆体シートを、4枚積み重ねて平置きにして配置したこと以外は、実施例1と同様に無機繊維集合体を製造した。
(面圧の測定)
実施例1及び比較例1で製造した無機繊維集合体から評価サンプルを作製し、万能試験機(INSTRON社製)を用い、面圧の測定を行った。
まず、実施例1及び比較例1で製造した1枚の無機繊維集合体から、繊維30gを、その繊維長が0.1〜5.0mmとなるように、ミキサーを用いて湿式開繊した。
次に、上記開繊繊維の濃度が2.0wt%となるように水を加え、攪拌機を用いて5分間攪拌した。続いて、有機バインダとしてラテックス(日本ゼオン株式会社製、LX−874)を8wt%添加し、5分間攪拌した。また、無機バインダとしてアルミナゾル(日産化学工業株式会社製、アルミナゾル溶液AS550)を1wt%添加し、5分間攪拌した。さらに、凝集剤としてパコール(BASF社製、PERCOL47)を0.5wt%添加し、2分間攪拌することにより、混合液を調製した。
次に、底面にろ過用のメッシュ(メッシュ寸法:30メッシュ)が形成された成形器に混合液を流し込んだ後、混合液中の水をメッシュを介して脱水することにより、原料シートを作製した。
続いて、得られた原料シートを成形器から取り出し、プレス機を用いて厚さが0.5倍となるように圧縮すると同時に、150℃で1時間加熱・乾燥させることにより、抄造シートを作製した。
次に、抄造シートを25mm×25mmの大きさに裁断した後、焼成炉を用いて600℃で2時間保持して脱脂することにより、評価サンプルを作製した。
続いて、試験機の上部及び下部に、ステンレス鋼製の平板(縦150mm×横150mm)をそれぞれ取り付け、対向するように配置した。次に、評価サンプルを試験機の下部に配置した平板(以下、下部平板という)の中央に配置した。そして、試験機の上部に配置した平板(以下、上部平板という)を、評価サンプルとの隙間が10mmとなるように、あらかじめ下降させた。このときの評価サンプルの嵩密度(以下、GBDという)は、0.38g/cmであった。
続いて、室温状態で、上部平板を1mm/minの速度で下降させ、評価サンプルのGBDが0.33g/cmとなるまで圧縮した。その後、上部平板を1mm/minの速度で上昇させ、評価サンプルのGBDが0.38g/cmとなるまで開放した。これを10サイクル繰り返し、最後にGBDが0.33g/cmとなったときの荷重を測定した。得られた荷重を、評価サンプルの面積で除算することにより、面圧(kPa)を求めた。
なお、評価サンプルの嵩密度(GBD)は、「嵩密度=評価サンプルの重量/(評価サンプルの面積×評価サンプルの厚さ)」で求められる値である。
このようにして、1枚の無機繊維集合体から、1つの面圧の値を得た。残りの無機繊維集合体についても同様に面圧を測定することにより、実施例1では、7枚の無機繊維集合体から7つの面圧の値を得た。また、比較例1では、4枚の無機繊維集合体から4つの面圧の値を得た。実施例1及び比較例1の各無機繊維集合体について、測定した面圧の平均値を、それぞれ表1に示す。
Figure 2014159655
実施例1及び比較例1の無機繊維集合体を比較すると、実施例1の無機繊維集合体では、面圧の値が大きいことがわかる。これは、実施例1の無機繊維集合体において、脱脂ムラ及び焼成ムラが低減されているためだと考えられる。
以上より、本発明に係る無機繊維集合体の製造方法の優位性が実証された。
(その他の実施形態)
本発明の実施形態に係る保持シール材は、1枚のマットから構成される場合に限定されず、2枚以上のマットが積層されて構成されていてもよい。
本発明の実施形態に係る排ガス浄化装置を構成する排ガス処理体の形状は、柱状であれば特に限定されず、略円柱状の他に、例えば、略楕円柱状や略角柱状等任意の形状、大きさのものであってもよい。
本発明の実施形態に係る排ガス浄化装置を構成する排ガス処理体としては、コージェライト等からなり、一体的に形成された一体型ハニカム構造体であってもよく、あるいは、炭化ケイ素等からなり、多数の貫通孔が隔壁を隔てて長手方向に並設された柱状のハニカム焼成体を主にセラミックを含む接着材層を介して複数個結束してなる集合型ハニカム構造体であってもよい。
本発明の実施形態に係る排ガス浄化装置を構成する排ガス処理体には、触媒が担持されていてもよい。
排ガス処理体に担持されている触媒としては、例えば、白金、パラジウム、ロジウム等の貴金属、カリウム、ナトリウム等のアルカリ金属、バリウム等のアルカリ土類金属、又は、酸化セリウム等の金属酸化物等が挙げられる。これらの触媒は、単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
本発明の実施形態に係る排ガス浄化装置において、排ガス処理体がハニカム構造体である場合、セルに封止材が設けられずに、セルの端部が封止されていなくてもよい。この場合、排ガス処理体は、白金等の触媒を担持させることによって、排ガス中に含まれるCO、HC又はNOx等の有害なガス成分を浄化する触媒担体として機能する。
10 焼成炉
11 無機繊維前駆体シート
11a 無機繊維前駆体シートの主面
12 気流
13 焼成炉内の天井

Claims (12)

  1. 無機繊維前駆体がシート状に集合した無機繊維前駆体シートを、焼成炉内で加熱により生じた気流が、前記無機繊維前駆体シート表面に接しながら吹き抜けていくように前記焼成炉内に配置する工程と、
    前記無機繊維前駆体シートを、前記焼成炉を用いて加熱する工程とを行うことを特徴とする無機繊維集合体の製造方法。
  2. 複数枚の前記無機繊維前駆体シートを、前記焼成炉内で、前記無機繊維前駆体シートの主面間に所定の間隔を設けて配置する請求項1に記載の無機繊維集合体の製造方法。
  3. 前記無機繊維前駆体がアルミナ短繊維前駆体からなる請求項1又は2に記載の無機繊維集合体の製造方法。
  4. 無機繊維前駆体がシート状に集合した無機繊維前駆体シートを、吊り下げて焼成炉内に配置する工程と、
    前記無機繊維前駆体シートを、前記焼成炉を用いて加熱する工程とを行うことを特徴とする無機繊維集合体の製造方法。
  5. 複数枚の前記無機繊維前駆体シートを、前記焼成炉内で、前記無機繊維前駆体シートの主面間に所定の間隔を設けて配置する請求項4に記載の無機繊維集合体の製造方法。
  6. 前記無機繊維前駆体がアルミナ短繊維前駆体からなる請求項4又は5に記載の無機繊維集合体の製造方法。
  7. 無機繊維前駆体がシート状に集合した無機繊維前駆体シートを、前記無機繊維前駆体シートの主面が重力方向に対して平行になるように焼成炉内に配置する工程と、
    前記無機繊維前駆体シートを、前記焼成炉を用いて加熱する工程とを行うことを特徴とする無機繊維集合体の製造方法。
  8. 複数枚の前記無機繊維前駆体シートを、前記焼成炉内で、前記無機繊維前駆体シートの主面間に所定の間隔を設けて配置する請求項7に記載の無機繊維集合体の製造方法。
  9. 前記無機繊維前駆体がアルミナ短繊維前駆体からなる請求項7又は8に記載の無機繊維集合体の製造方法。
  10. 無機繊維が多数集合してなる無機繊維集合体であって、
    無機繊維前駆体がシート状に集合した無機繊維前駆体シートを、焼成炉内で加熱により生じた気流が、前記無機繊維前駆体シート表面に接しながら吹き抜けていくように前記焼成炉内に配置する工程と、
    前記無機繊維前駆体シートを、前記焼成炉を用いて加熱する工程とから得られることを特徴とする無機繊維集合体。
  11. 前記無機繊維がアルミナ短繊維からなる請求項10に記載の無機繊維集合体。
  12. 前記無機繊維の平均繊維径が1〜50μmである請求項10又は11に記載の無機繊維集合体。
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