JP2014113955A - 車両状態判定装置及び車両挙動制御装置 - Google Patents

車両状態判定装置及び車両挙動制御装置 Download PDF

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Abstract

【課題】車両が非牽引車両を牽引して走行している牽引状態か否かを精度良く判定できる車両状態判定装置及び車両挙動制御装置を提供する。
【解決手段】車両状態判定装置、すなわちECU1の牽引状態判定部11は、車両10の駆動輪のタイヤ駆動力とスリップ率との関係に基づいて、車両10が被牽引車両50を牽引して走行している牽引状態か否かを判定する。これにより、車両が牽引状態か否かを精度良く判別することができる。
【選択図】図1

Description

本発明は、車両状態判定装置及び車両挙動制御装置に関する。
車両がトレーラ(被牽引車両)を牽引して走行する際に、トレーラが横方向に振動し、この横方向の振動力が車両に伝達されて、車両が揺動する場合がある。このような揺動(トレーラスウェイ)の発生時に、エンジンなどの動力源からの出力トルクを低減したり、車両の各車輪に独立した制動力を印加することによって、牽引車両の揺動を抑制するための制御、いわゆるトレーラスウェイ制御(Trailer Sway Control:TSC)が知られている(例えば特許文献1)。
特開2009−101994号公報
ここで、急なハンドル操作時や滑りやすい路面を走行中に車両に横滑りが発生した際に、エンジンなどの動力源や各車輪の個別に制動力を与えるブレーキなどの制動装置を制御して、車両の横滑りを低減する挙動安定化制御(Electronic Stability Control:ESC)も知られている。
TSC及びESCは、車両の横方向の摂動発生に応じて車両の動力源や制動装置を制御する点で共通するため、TSC及びESCの開始条件を同時に満たす状況が起こりうる。このとき、TSC及びESCのどちらを優先的に作動させるかによって、車両挙動に悪影響が出る虞がある。例えば、実際には車両がトレーラを牽引していない状況にも関わらず、牽引時に実施するTSCの開始条件を満たす摂動を検知する場合が考えられる。このときTSCを作動させると、本来作動すべきESCを作動することができず、TSCにより不要な減速度が車両に発生する状況が考えられる。
したがって、車両の走行状態に応じて、TSCとESCのどちらを優先的に作動させるかを好適に切り替えることができるのが望ましい。これを実現するためには、車両に発生する摂動が、トレーラスウェイによるものなのか、または、車両の横滑りによるものなのかを精度良く判別できることが望ましい。すなわち、車両がトレーラを牽引して走行している牽引状態か否かを精度良く判別できることが望ましい。
本発明は、上記を鑑みてなされたものであり、車両が非牽引車両を牽引して走行している牽引状態か否かを精度良く判定できる車両状態判定装置及び車両挙動制御装置を提供することを目的とする。
上記課題を解決するために、本実施形態に係る車両状態判定装置は、車両の駆動輪のタイヤ駆動力とスリップ率との関係に基づいて、前記車両が被牽引車両を牽引して走行している牽引状態か否かを判定することを特徴とする。
また、上記の車両状態判定装置は、前記タイヤ駆動力が所定値以上のときに、前記タイヤ駆動力の過去値及び現在値を用いて前記タイヤ駆動力を更新し、前記スリップ率の過去値及び現在値を用いて前記スリップ率を更新して、更新した前記タイヤ駆動力及び前記スリップ率の関係に基づいて、前記牽引状態の判定を行うことが好ましい。
また、上記の車両状態判定装置は、前記車両が、前記駆動輪のスリップ発生時に前記車両の動力源または制動装置を個別に制御してスリップを低減するためのトラクション制御を実行可能であり、前記トラクション制御を実行中には、前記牽引状態の判定を行なわないことが好ましい。
同様に、上記課題を解決するために、本実施形態に係る車両挙動制御装置は、上記の車両状態判定装置と、車両の動力源と、前記車両の各車輪に独立して制動力を付与する制動装置と、を備え、前記車両の揺動を抑制するために前記動力源または前記制動装置を制御するトレーラスウェイ制御を実行可能であり、前記車両状態判定装置が、前記車両が被牽引車両を牽引して走行している前記牽引状態であることを判定し、かつ、前記車両が前記トレーラスウェイ制御の開始条件を満たすとき、前記トレーラスウェイ制御を実行することを特徴とする。
また、上記の車両挙動制御装置は、前記車両の横滑りを抑制するために前記動力源または前記制動装置を制御する挙動安定制御を実行可能であり、前記車両状態判定装置が、前記車両が前記牽引状態でないことを判定し、かつ、前記車両が前記挙動安定制御の開始条件を満たすとき、前記挙動安定制御を実行することが好ましい。
また、上記の車両挙動制御装置は、前記車両状態判定装置が、前記車両が前記牽引状態であることを判定し、前記車両が前記トレーラスウェイ制御の開始条件を満たしておらず、かつ、前記車両が前記挙動安定制御の開始条件を満たすとき、前記挙動安定制御を実行することが好ましい。
本発明に係る車両状態判定装置及び車両挙動制御装置は、車両が非牽引車両を牽引して走行している牽引状態か否かを精度良く判定できるという効果を奏する。
図1は、本発明の一実施形態に係る車両状態判定装置及び車両挙動制御装置を適用した車両の構成の一例を示す模式図である。 図2は、本発明の一実施形態に係る車両状態判定装置及び車両挙動制御装置の構成を示す機能ブロックである。 図3は、車両の牽引時及び非牽引時における駆動輪の接地荷重を示す図である。 図4は、車両の駆動輪のスリップ率に対する駆動輪のタイヤ駆動力の特性曲線を示す図である。 図5は、車両の加速度と駆動輪のスリップ率との特性を示す図である。 図6は、本実施形態にて実施されるTSC/ESC選択制御を示すフローチャートである。 図7は、実施形態の変形例にて実施されるTSC/ESC選択制御を示すフローチャートである。
以下に、本発明に係る車両状態判定装置及び車両挙動制御装置の実施形態を図面に基づいて説明する。なお、以下の図面において、同一または相当する部分には同一の参照番号を付し、その説明は繰り返さない。
[実施形態]
図1,2を参照して、本実施形態に係る車両状態判定装置及び車両挙動制御装置の構成を説明する。図1は、本実施形態に係る車両状態判定装置及び車両挙動制御装置を適用した車両の構成の一例を示す模式図であり、図2は、本実施形態に係る車両状態判定装置及び車両挙動制御装置の構成を示す機能ブロックである。
本実施形態の車両状態判定装置及び車両挙動制御装置は、車両10に搭載される。車両10には、機関や回転電機等の動力源20が設けられている。この車両10は、その動力源20の動力を駆動輪に駆動力として伝達して走行する。図1に示す車両10は、後輪を駆動輪とする後輪駆動の車両を例示している。また、車両10は、その後方にトレーラ(非牽引車両)50を連結し、トレーラ50を牽引して走行することができる。
この車両10には、その走行中の車両10を停止又は減速させる制動装置が用意されている。その制動装置は、夫々の車輪WFL,WFR,WRL,WRRに対して個別の大きさで目標制動トルク(目標制動力)を発生させることができるよう構成されている。ここでは、ブレーキ液圧の力を利用して係合要素間に摩擦力を発生させ、これにより車輪WFL,WFR,WRL,WRRに目標制動トルクを発生させるものについて例示する。
この制動装置は、ブレーキ液の油圧で各車輪WFL,WFR,WRL,WRRに制動トルクを作用させる制動部31と、この制動部31への供給油圧を車輪WFL,WFR,WRL,WRR毎に制御可能な油圧アクチュエータとしての油圧制御部32と、を備える。その油圧制御部32は、ブレーキペダル35の操作量に応じたマスタシリンダ圧をそのまま出力することも可能であり、そのマスタシリンダ圧を電子制御ユニット(Electronic Control Unit:ECU)1の指令に応じて増減させて出力することも可能である。つまり、各車輪WFL,WFR,WRL,WRRに発生させる目標制動トルクは、運転者のブレーキペダル35の操作量に応じて演算されたもの、ECU1の演算により決められたもの等がある。尚、ブレーキペダル35の操作量は、ペダル開度センサ等のブレーキ操作量の検出装置41によって検出され、電子制御装置1に送信される。
この車両10には、そのブレーキ操作量の検出装置41に加えて、操舵角センサ42等の各種車両操作情報の検出装置が設けられている。この操舵角センサ42は、ステアリングホイール51の実際の操舵角δを検出するセンサである。
また、この車両10には、車速センサ43、車輪速センサ44、ヨーレートセンサ45、前後加速度センサ46、横加速度センサ47等の各種車両走行情報の検出装置が設けられている。車速センサ43は、例えば図示しない変速機の出力軸の回転角を検出するセンサである。車輪速センサ44は、車輪WFL,WFR,WRL,WRR毎に用意され、対象車輪の車輪速を検出する。ECU1は、その出力軸の回転角や車輪速に基づいて車体速度Vの推定を行う。ヨーレートセンサ45は、車両重心位置を中心とする実際のヨーレートγを検出するセンサである。前後加速度センサ46は、車両重心位置において車両前後方向に働く実際の前後加速度Gxを検出するセンサである。横加速度センサ47は、車両重心位置において車両横方向に働く実際の横加速度Gyを検出するセンサである。
ECU1は、車両10内のセンサ類から入力される各種情報に基づいて、車両10の各部の制御を行う。特に本実施形態では、ECU1は、動力源20及び制動装置(油圧制御部32)に接続され、動力源20または油圧制御部32を適宜作動させることでTSC及びESCを実行することができる。TSC(トレーラスウェイ制御)は、トレーラ50を牽引して走行している車両10に揺動(トレーラスウェイ)が発生した際に、車両10の動力源20からの出力トルクを低減したり、車両10の制動装置により車両10の各車輪に独立した制動力を印加することによって、車両10の揺動を抑制するための制御である。また、ESC(挙動安定化制御)は、急なハンドル操作時や滑りやすい路面を走行中に車両10に横滑りが発生した際に、車両10の動力源20や各車輪の個別に制動力を与える制動装置を制御して、車両10の横滑りを低減する制御である。また、ECU1は、車両10がトレーラ50を牽引して走行している牽引状態か否かを判別して、牽引状態に応じてTSCまたはESCのいずれかを優先的に実施するよう選択することができる。これらを実行可能とするため、ECU1は、図2に示すように、牽引状態判定部11、TSC実行部12、及びESC実行部13の各機能を実現するよう構成されている。
牽引状態判定部11は、車両10の走行状態に基づき、車両10がトレーラ50を牽引して走行している牽引状態か否かを判定する。ここで、図3〜5を参照して、牽引状態判定部11が具体的にどのように牽引状態を判定するかについて説明する。図3は、車両の牽引時及び非牽引時における駆動輪の接地荷重を示す図であり、図4は、車両の駆動輪のスリップ率に対する駆動輪のタイヤ駆動力の特性曲線を示す図であり、図5は、車両の加速度と駆動輪のスリップ率との特性を示す図である。
図3中の(a)で示す領域は、車両10がトレーラ50を牽引して走行している牽引時における駆動輪の接地荷重Wを示す図であり、(b)で示す領域は、車両10がトレーラ50を牽引しないで走行している非牽引時における駆動輪の接地荷重Wを示す図である。図3の例では、車両10の重量はmであり、牽引時、非牽引時ともに、重量Mの積載物を積載しているものとする。ただし積載物は、牽引時にはトレーラ50に積載され、非牽引時には車両10内に積載されているものとする。
図3の(a)に示すように、牽引時には、トレーラ50に積載された積載物による荷重は、その大半がトレーラの車輪に加わり、連結部を介して車両10の駆動輪には荷重の一部のみが加わる。例えば積載物の荷重の10%が車両10の駆動輪に伝わると仮定すると、牽引時における駆動輪の接地荷重Wは、車両10の重量mと積載物重量Mの10%分の和(W=m+0.1M)として算出することができる。
一方、図3の(b)に示すように、非牽引時には、車両10に積載された積載物による荷重は、すべて車両10の駆動輪に伝わる。したがって、非牽引時における駆動輪の接地荷重Wは、車両10の重量mと積載物の重量Mとの和(W=m+M)として算出することができる。つまり、牽引時及び非牽引時において同じ重量の積載物を積載した場合、車両10の駆動輪の接地荷重Wは、非牽引時の方が牽引時より大きい傾向がある。
ここで、駆動輪におけるスリップ率Sとタイヤ駆動力Fとの関係を考える。なお、本実施形態で用いる「タイヤ駆動力」とは、タイヤと路面との接触部にてタイヤから路面に伝達される力であり、車両10を進行方向に移動させるための駆動力と、車両10を減速/停止させるための制動力とを含むものと定義することができる。タイヤ駆動力Fは、タイヤの接地荷重Wと、タイヤと路面との間の摩擦係数μの積により表すことができる(F=μ×W)。
図4に、車両10の駆動輪のスリップ率に対する駆動輪のタイヤ駆動力の特性曲線(所謂μ−S特性)を示す。図4に示すように、μ−S特性は、スリップ率Sが比較的小さい領域では、スリップ率Sとタイヤ駆動力Fとの関係はほぼ線形である。そして、このような線形関係の領域よりスリップ率Sが比較的大きい領域では、スリップ率Sとタイヤ駆動力Fとの関係は非線形となり、タイヤ駆動力Fは、スリップ率Sの増加に伴い一旦増加した後に減少に転じる。
ここで図4のμ−S特性の線形関係の部分に注目すると、図4に示すように、駆動輪と路面との間の摩擦係数μが同一条件の場合には、接地荷重Wが大きいほど傾きが大きくなる傾向となる。言い換えると、接地加重Wが比較的大きい非牽引時のμ−S特性の傾きは、接地荷重Wが非牽引時より小さくなる牽引時のμ−S特性よりも、大きくなる。同一のタイヤ駆動力Fを発生させた場合に、非牽引時における駆動輪のスリップ率Sは、牽引時におけるスリップ率Sより小さくなる。
したがって、スリップ率Sとタイヤ駆動力Fとがほぼ線形関係となる、スリップ率Sが比較的小さい領域では、図4に点線で示す所定の傾きを有する直線S=εF(εは定数)によって、牽引時のμ−S特性と、非牽引時のμ−S特性とを区分することができる。つまり、図4において直線S=εFより下方の領域、すなわちS>εF(S/F>ε)を満たす領域に、スリップ率Sとタイヤ駆動力Fから成るデータがプロットされる場合には、車両10が牽引状態であると判断することができる。一方、直線S=εFより上方の領域、すなわちS<εF(S/F<ε)を満たす領域に、スリップ率Sとタイヤ駆動力Fから成るデータがプロットされる場合には、車両10が非牽引状態であると判断することができる。
ところで、タイヤ駆動力Fは、車両10の重量mと加速度Aを用いてF=mAとも表現することができる。したがって、タイヤ駆動力Fと加速度Aとは相対的な関係にある。したがって、加速度Aとスリップ率Sとの関係も、図4のμ−S特性と同様となる。図5に、車両10の加速度Aに対する駆動輪のスリップ率Sの特性(「A−S特性」と記載する)を示す。図5に示すように、接地加重Wが比較的大きい非牽引時におけるA−S特性の傾きは、接地荷重Wが非牽引時より小さくなる牽引時のA−S特性の傾きよりも、小さくなる。同一の加速度Aを発生させた場合に、非牽引時における駆動輪のスリップ率S´は、牽引時におけるスリップ率S´より小さくなる。
したがって、図5のA−S特性においても、図4のμ―S特性と同様に、図5に点線で示す所定の傾きを有する直線S=ε´A(ε´は定数)によって、牽引時のA−S特性と、非牽引時のA−S特性とを区分することができる。つまり、図5において直線S=ε´Aより上方の領域、すなわちS>ε´A(S/A>ε´)を満たす領域に、スリップ率Sと加速度Aから成るデータがプロットされる場合には、車両10が牽引状態であると判断することができる。一方、直線S=ε´Aより下方の領域、すなわちS<ε´A(S/A<ε´)を満たす領域に、スリップ率Sとタイヤ駆動力Fから成るデータがプロットされる場合には、車両10が非牽引状態であると判断することができる。
本実施形態では、図3〜5を参照して説明した理論に基づき、牽引状態判定部11は、車両10の駆動輪のスリップ率Sとタイヤ駆動力Fとの関係が、図4のグラフの直線S=εFより下方の領域に含まれるとき、すなわちスリップ率S/タイヤ駆動力F>εを満たすときに、車両10が牽引状態であると判定するよう構成されている。
図2に戻り、TSC実行部12は、動力源20及び油圧制御部32を制御して、トレーラスウェイ制御(TSC)を実行する。TSC実行部12は、牽引状態判定部11によって車両10が牽引状態で走行中と判定された場合に、ESC実行部13より優先して実行される。TSC実行部12は、まず現在の車両10の走行状態が所定のTSC実施条件を満たすか否かを確認する。そして、この実施条件を満たしていると判定した場合には、TSC実行部12は、TSCを作動させる。具体的には、車両10の揺動の振幅に応じて、この揺動を低減するために必要な動力源20または油圧制御部32の制御量を算出し、算出した制御量に基づき動力源20または油圧制御部32を制御する。
また、TSC実行部12は、現在の車両10の走行状態がTSC実施条件を満たしていないと判定した場合には、TSCを作動させずにその旨をESC実行部13に出力する。
ESC実行部13は、動力源20及び油圧制御部32を制御して、挙動安定化制御(ESC)を実行する。ESC実行部13は、牽引状態判定部11によって車両10が牽引状態でない、すなわちトレーラ50を牽引せずに自車両のみで走行中と判定された場合に、TSC実行部12より優先して実行される。ESC実行部13は、まず現在の車両10の走行状態が所定のESC実施条件を満たすか否かを確認する。そして、この実施条件を満たしていると判定した場合には、ESC実行部13は、ESCを作動させる。具体的には、車両10の横滑り量に応じて、横滑りを低減するために必要な動力源20または油圧制御部32の制御量を算出し、算出した制御量に基づき動力源20または油圧制御部32を制御する。
また、ESC実行部13は、先にTSC実行部12がTSC実施条件を確認した結果、現在の車両10の走行状態がTSC実施条件を満たしていないと判定した場合にも、その旨がTSC実行部12から入力されるのに応じて、ESC実施条件を判定して、実施条件が成立する場合にはESCを実行することができる。
ECU1は、物理的には、CPU(Central Processing Unit)、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)及びインターフェースなどを含む周知のマイクロコンピュータを主体とする電子回路である。上述したECU1の各機能は、ROMに保持されるアプリケーションプログラムをRAMにロードしてCPUで実行することによって、CPUの制御のもとで車両内の各種装置を動作させると共に、RAMやROMにおけるデータの読み出し及び書き込みを行うことで実現される。
なお、ECU1の牽引状態判定部11、TSC実行部12、及びESC実行部13が、本実施形態に係る車両挙動制御装置として機能し、車両の各種センサ類から入力される車両の走行状態を示す情報に基づいて、動力源20または油圧制御部32を適宜作動させることで、車両の挙動を制御することができる。また、ECU1の各機能のうち、牽引状態判定部11が、本実施形態に係る車両状態判定装置として機能し、車両の各種センサ類から入力される情報に基づいて、車両の状態を判定することができる。
次に、図6を参照して、本実施形態に係る車両状態判定装置及び車両挙動制御装置の動作を説明する。図6は、本実施形態にて実施されるTSC/ESC選択制御を示すフローチャートである。図6に示す制御フローは、ECU1により例えば所定周期ごとに実施される。
ステップS101では、駆動輪のタイヤ駆動力が所定値αより大きいか否かが判定される。タイヤ駆動力は、例えば、動力源20から出力される動力を駆動輪に伝達する動力伝達装置のギヤ比と、動力源20の出力トルクとを乗算することで算出することができる。ステップS101の判定の結果、タイヤ駆動力が所定値αより大きい場合には(S101のYes)、車両の運転者が加速したいと意図しているものと判断できるので、ステップS102に移行し、そうでない場合(S101のNo)には、ステップS104に移行する。
なお、ステップS101の判定は、車両の運転者が加速したいと意図していることを判別するためのパラメータの一例としてタイヤ駆動力を例示したものであり、タイヤ駆動力と連動して変化するエンジントルク(動力源20の出力トルク)、スロットル開度、前後加速度Gxなどの他のパラメータをタイヤ駆動力の代わりに適用してもよい。これらのタイヤ駆動力の代わりにステップS101の判定に適用できる情報は、タイヤ駆動力と連動して変化し、タイヤ駆動力の大きさを把握することができる情報である。本実施形態では「タイヤ駆動力」という用語に、これらのタイヤ駆動力の代わりに適用できる情報も包含するものとする。
ステップS102では、ステップS101の条件成立時からの平均タイヤ駆動力が算出される。平均タイヤ駆動力は、例えば、ステップ101にて駆動輪のタイヤ駆動力が所定値αより大きいと判定された時点からのタイヤ駆動力の平均値である。言い換えると、平均タイヤ駆動力は、タイヤ駆動力の過去値及び現在値を用いて、本ステップで最新のものに更新される。ステップS102の処理が完了するとステップS103に移行する。
ステップS103では、ステップS101の条件成立時からの平均後輪(駆動輪)スリップ率が演算される。平均後輪(駆動輪)スリップ率は、ステップ101にて駆動輪のタイヤ駆動力が所定値αより大きいと判定された時点からの、駆動輪である後輪一方または両方のスリップ率の時間平均である。言い換えると、平均後輪スリップ率は、後輪スリップ率の過去値及び現在値を用いて、本ステップで最新のものに更新される。後輪スリップ率は、例えば下記の式で算出できる。
後輪スリップ率=(後輪回転速度×車輪半径−車体速度)/車体速度
ここで、車体速度(Vx)は、車速センサ43の計測値に基づき算出してもよいし、転動輪である前輪の車輪速を車輪速センサ44から取得し、この車輪速と回転速度と車輪半径とを乗算したものを用いてもよい。ステップS103の処理が完了するとステップS107に移行する。
ステップS104では、ステップS101にて駆動輪のタイヤ駆動力が所定値α以下と判定された場合に、車体速度が0でない(車体速度≠0)か否かが判定される。判定の結果、車体速度が0でない場合には(ステップS104のYes)ステップS107に移行し、そうでない場合、すなわち車体速度が0である場合には(ステップS104のNo)ステップS105に移行する。
ステップS105では、ステップS101にて駆動輪のタイヤ駆動力が所定値α以下であり、かつ、ステップS104にて車体速度が0であると判定され、車両10の走行が停止したものと判断できるので、平均タイヤ駆動力がリセットされる。ステップS105の処理が完了するとステップS106に移行する。
ステップS106では、ステップS105に引き続き平均後輪スリップ率がリセットされる。ステップS106の処理が完了するとステップS101に戻り制御フローを継続する。
ステップS107では、平均タイヤ駆動力に対する平均スリップ率の比を演算し、それが閾値εより大きい(平均後輪スリップ率/平均タイヤ駆動力>ε)か否かが判定される。閾値εは、図4を参照して説明したように、タイヤのμ−S特性において車両10の牽引状態と非牽引状態とを区分する直線(図4の例ではS=εF)の傾きに対応するパラメータである。ステップS107の判定の結果、平均タイヤ駆動力に対する平均スリップ率の比がεより大きい場合には(ステップS107のYes)ステップS108に移行し、そうでない場合には(ステップS107のNo)ステップS109に移行する。
ステップS108では、ステップS107にて平均タイヤ駆動力に対する平均スリップ率の比がεより大きいと判定された場合に、図4を参照して説明した理論に従って、車両10がトレーラ50を牽引して走行している牽引状態であるものと判断する。牽引状態と判定するのに応じて、TSCを優先実施すべく、TSCの開始条件が成立しているか否かが判定される。TSC開始条件は、例えば車両のヨーレート(ヨー角速度)γ、ヨー角加速度、横加速度Gyが下記の条件(1)及び(2)を両方満たすときに成立したものと判定することができる。ヨー角加速度は、例えばヨーレートセンサ45により検出されたヨーレート(ヨー角速度)γを時間微分することで算出することができる。
(1)ヨーレート(ヨー角速度)γの振幅が閾値を超えた回数≧N(回)
(2)α1(deg)<ヨー角加速度と横加速度Gyの位相差<α2(deg)
ステップS108の判定の結果、TSCの開始条件が成立している場合(ステップS108のYes)にはステップS110に移行し、TSCの開始条件が成立していない場合(ステップS108のNo)にはステップS109に移行する。
ステップS109では、ステップS107にて平均タイヤ駆動力に対する平均スリップ率の比がεより大きいと判定された場合に、図4を参照して説明した理論に従って、車両10が牽引状態でないものと判断する。非牽引状態と判定するのに応じて、ESCを優先実施すべく、ESCの開始条件が成立しているか否かが判定される。また、ステップS108にて車両が牽引状態であると判定されたものの、TSCの開始条件が成立しなかった場合にも、本ステップにてESCの開始条件が成立しているか否かが判定される。
ESC開始条件は、例えば、車両の推定ヨーレートγestとヨーレートγとの関係が下記の条件(3)または(4)の少なくとも一方を満たすときに成立したものと判定することができる。
Figure 2014113955
ここで、Vは車体速度、nはステアリングギヤ比、lはホイールベースである。Tos,Tusは所定の定数である。
推定ヨーレートγestは、次式により算出できる。
Figure 2014113955
ここで、δは操舵角、Kはスタビリティファクタである。ステップS109の判定の結果、ESCの開始条件が成立している場合には(ステップS109のYes)ステップS111に移行し、ESCの開始条件が成立していない場合にはステップS101に戻り制御フローを継続する。
ステップS110では、ステップS108にてTSCの開始条件が成立していると判定された場合に、TSCが制御開始される。ステップS110の処理が完了すると、本制御フローは終了する。
ステップS111では、ステップS109にてESCの開始条件が成立していると判定された場合に、ESCが制御開始される。ステップS111の処理が完了すると、本制御フローは終了する。
次に、本実施形態に係る車両状態判定装置及び車両挙動制御装置の効果を説明する。
本実施形態に係る車両状態判定装置、すなわちECU1の牽引状態判定部11は、車両10の駆動輪のタイヤ駆動力とスリップ率との関係に基づいて、車両10が被牽引車両50を牽引して走行している牽引状態か否かを判定する。
タイヤ駆動力とスリップ率との関係は、図4に示したようにタイヤのμ−S特性として知られており、その特性は駆動輪の接地荷重によって異なる。接地荷重は、同重量の積載物を積載する場合でも、自車両に積載するか、被牽引車両に積載するかによって異なる。したがって、車両10の駆動輪のタイヤ駆動力とスリップ率との関係に基づいて、より詳細には、タイヤ駆動力とスリップ率との比が所定値εより大きいか否かを判定基準とすることで、車両が牽引状態か否かを精度良く判別することができる。
また、本実施形態の車両状態判定装置、すなわちECU1の牽引状態判定部11は、駆動輪のタイヤ駆動力が所定値以上のときに、タイヤ駆動力の過去値及び現在値を用いて平均タイヤ駆動力を更新し、スリップ率の過去値及び現在値を用いて平均スリップ率を更新し、更新した平均タイヤ駆動力及び平均スリップ率の関係に基づいて、車両10の牽引状態の判定を行う。
駆動力が小さいと牽引と非牽引との差が小さく牽引状態を判別しにくいので、駆動力が所定値以上のときに牽引状態の判定を行なう構成とすることで、牽引と非牽引との間に充分な差がある状態で判別ができるので、牽引状態の判定精度を向上できる。
また、本実施形態の車両挙動制御装置、すなわちECU1のTSC実行部12及びESC実行部13は、車両状態判定装置であるECU1の牽引状態判定部11と、車両10の動力源20と、車両10の各車輪に独立して制動力を付与する制動手段(制動部31及び油圧制御部32)と、を備える。車両挙動制御装置は、車両10の揺動を抑制するために動力源20または制動装置を制御するトレーラスウェイ制御(TSC)を実行可能である。車両挙動制御装置は、牽引状態判定部11が、車両10が被牽引車両50を牽引して走行している牽引状態であることを判定し、かつ、車両10がTSCの開始条件を満たすとき、TSCを実行する。
この構成により、車両10が牽引状態の場合には、TSCを優先的に実行することができ、牽引状態でESCを誤って実行する機会を抑制できる。これにより、牽引時に誤判定によりESCが実行され、トレーラスウェイが低減しない事態を避けることができ、車両挙動を確実に安定化させることが可能となる。
また、本実施形態の車両挙動制御装置、すなわちECU1のTSC実行部12及びESC実行部13は、車両10の横滑りを抑制するために動力源20または制動装置を制御する挙動安定制御(ESC)を実行可能であり、牽引状態判定部11が、車両10が牽引状態でないことを判定し、かつ、車両10がESCの開始条件を満たすとき、ESCを実行する。
この構成により、車両10が非牽引状態の場合には、ESCを優先的に実行することができ、非牽引状態でTSCを誤って実行する機会を抑制できる。これにより、非牽引時に誤判定によりTSCが実行され、横滑りに応じたエンジンやブレーキの制御量を必要以上に出力するのを防ぐことができ、車両挙動をより一層確実に安定化させることが可能となる。
また、本実施形態の車両挙動制御装置、すなわちECU1のTSC実行部12及びESC実行部13は、牽引状態判定部11が、車両10が牽引状態であることを判定し、車両10がTSCの開始条件を満たしておらず、かつ、車両10がESCの開始条件を満たすとき、ESCを実行する。
この構成により、車両10が牽引状態のとき横滑りが発生した場合にも、牽引時にESCを実行することができるので、両挙動をより一層確実に安定化させることが可能となる。
[変形例]
次に、図7を参照して、本実施形態の変形例を説明する。図7は、実施形態の変形例にて実施されるTSC/ESC選択制御を示すフローチャートである。
図7に示すように、本実施形態の車両状態判定装置、すなわちECU1の牽引状態判定部11は、車両10がトラクション制御を実行中には、車両10が非牽引車両を牽引して走行する牽引状態か否かの判定を行わない構成を追加することもできる。
この構成の追加部分であるステップS207の処理について図7のフローチャートを参照して説明する。なお、図7のフローチャートのうちステップS201〜S206,208〜212は、それぞれ図6のフローチャートのステップS101〜S111と同一の内容のため説明を省略する。
ステップS207は、ステップS203にて平均後輪スリップ率が演算された後、または、ステップS204の判定の結果、車体速度が0ではないと判定されたときに、実行される。ステップS207では、車両10のトラクション制御が作動中か否かが判定される。トラクション制御は、車両10が駆動輪のスリップ発生時に動力源20または各車輪の制動装置を個別に制御してスリップを低減するための制御である。ステップS207の判定の結果、トラクション制御が作動中の場合には(S207のYes)ステップS209に移行する。すなわち、ステップS208の牽引状態判定は行なわずに、ステップS209のTSC開始条件判定を直接実行する。
車両10がトラクション制御を作動している場合、駆動輪のスリップ率が極端に大きい状態であると考えられる。このとき、図4に示したタイヤのμ−S特性では、比較的スリップ率の小さい領域の線形部分から外れている可能性が高く、ステップS208の牽引状態判定では牽引状態と非牽引状態とを切り分けることができない虞がある。トラクション制御を実行中には、牽引状態の判定を行なわない構成とすることで、牽引状態の誤判定を抑制することでき、車両挙動をより一層安定化することができる。
以上、本発明の実施形態を説明したが、上記実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。上記実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。上記実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
上記実施形態では、駆動輪のタイヤ駆動力Fとスリップ率Sの比に基づき車両10の牽引状態を判別しているが、タイヤ駆動力Fと相対的な関係にある加速度Aに置き換えても良い。すなわち、車両10の加速度Aと駆動輪のスリップ率Sとの比に基づき牽引状態を判別する構成としてもよい。図5に示すように、加速度Aとスリップ率Sの関係からも、牽引と非牽引とを切り分けることができるためである。この場合、図6のフローチャートでは、ステップS101,S102,S105の「タイヤ駆動力」が「加速度」に置き換えられ、ステップS107の判定条件は、「平均後輪スリップ率/平均加速度>ε´」に置き換えられる。同様に、図7のフローチャートでは、ステップS201,S202,S205の「タイヤ駆動力」が「加速度」に置き換えられ、ステップS208の判定条件は、「平均後輪スリップ率/平均加速度>ε´」に置き換えられる。
また、上記実施形態では、図6のステップS107に示したように車両の牽引状態の判定のために、平均タイヤ駆動力と平均後輪スリップ率との比を用いていたが、例えば、平均タイヤ駆動力及び平均後輪スリップ率の代わりに、駆動輪のタイヤ駆動力と後輪スリップ率の現在の瞬時値(現在値)を用いて牽引状態の判定を行なってもよい。この場合、図6のフローチャートでは、ステップS107の処理は、「後輪スリップ率の現在値/タイヤ駆動力の現在値」が所定値εより大きいか否かを判定する処理に置き換えられる。
また、上記実施形態では、後輪駆動の車両10を例示したが、本発明は、前輪駆動や四輪駆動にも適用可能である。
1 ECU
10 車両
11 牽引状態判定部(車両状態判定装置、車両挙動制御装置)
12 TSC実行部(車両挙動制御装置)
13 ESC実行部(車両挙動制御装置)
20 動力源
32 油圧制御部(制動装置)
50 トレーラ(被牽引車両)
WRL,WRR 駆動輪
TSC トレーラスウェイ制御
ESC 挙動安定化制御

Claims (6)

  1. 車両の駆動輪のタイヤ駆動力とスリップ率との関係に基づいて、前記車両が被牽引車両を牽引して走行している牽引状態か否かを判定することを特徴とする車両状態判定装置。
  2. 前記タイヤ駆動力が所定値以上のときに、前記タイヤ駆動力の過去値及び現在値を用いて前記タイヤ駆動力を更新し、前記スリップ率の過去値及び現在値を用いて前記スリップ率を更新して、更新した前記タイヤ駆動力及び前記スリップ率の関係に基づいて、前記牽引状態の判定を行うことを特徴とする、請求項1に記載の車両状態判定装置。
  3. 前記車両が、前記駆動輪のスリップ発生時に前記車両の動力源または制動装置を個別に制御してスリップを低減するためのトラクション制御を実行可能であり、
    前記トラクション制御を実行中には、前記牽引状態の判定を行なわないことを特徴とする、請求項1または2に記載の車両状態判定装置。
  4. 請求項1〜3のいずれか1項に記載の車両状態判定装置と、
    車両の動力源と、
    前記車両の各車輪に独立して制動力を付与する制動装置と、を備え、
    前記車両の揺動を抑制するために前記動力源または前記制動装置を制御するトレーラスウェイ制御を実行可能であり、
    前記車両状態判定装置が、前記車両が被牽引車両を牽引して走行している前記牽引状態であることを判定し、かつ、前記車両が前記トレーラスウェイ制御の開始条件を満たすとき、前記トレーラスウェイ制御を実行することを特徴とする車両挙動制御装置。
  5. 前記車両の横滑りを抑制するために前記動力源または前記制動装置を制御する挙動安定制御を実行可能であり、
    前記車両状態判定装置が、前記車両が前記牽引状態でないことを判定し、かつ、前記車両が前記挙動安定制御の開始条件を満たすとき、前記挙動安定制御を実行する
    ことを特徴とする、請求項4に記載の車両挙動制御装置。
  6. 前記車両状態判定装置が、前記車両が前記牽引状態であることを判定し、前記車両が前記トレーラスウェイ制御の開始条件を満たしておらず、かつ、前記車両が前記挙動安定制御の開始条件を満たすとき、前記挙動安定制御を実行することを特徴とする、請求項5に記載の車両挙動制御装置。
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