JP2013212052A - Krasバリアントおよび腫瘍生物学 - Google Patents

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Abstract

【課題】特定および個別化された療法の発見への前途有望なアプローチとしてこれらの転写モジュールを操縦するものを同定することを提供すること。
【解決手段】本開示は、KRASバリアントとして公知である、KRAS癌遺伝子におけるSNPの存在または不存在を決定することによって、がんを発生するリスクがある被験体を同定するための方法、がんの発症を予測するための方法、および化学療法/処置に対する被験体の応答を予測するための方法を提供する。本開示は、一般に、がん、リプロダクティブヘルス、および分子生物学の分野に関する。本開示は、遺伝マーカーの存在または不存在を決定することによって、がんを有する被験体を診断および予後判断するための方法を提供する。さらに、本開示は、遺伝マーカーの存在または不存在を決定することによって、処置に対する被験体の応答を決定するための方法を提供する。
【選択図】なし

Description

発明の詳細な説明
参考としての援用
2012年3月16日に作成され、サイズが32.2 KBである「34592−515001USST25.txt」という名称のテキストファイルの内容は、これによって、その全体が参考として援用される。
政府の支援
本発明は、部分的に、米国国立衛生研究所の一部門である国立研究資源センターによって提供された、臨床およびトランスレーショナル科学資金(CTSA)(助成金UL1 RR024139)の下で米国政府から支援されてなされた。
本発明は、部分的に、米国国立衛生研究所によって提供された助成金RO1 CA131301−01A1、米国国立衛生研究所によって提供された助成金CA124484(K08)、米国国立衛生研究所によって提供された助成金RO1 CA122728、米国国立衛生研究所によって提供された助成金RO1 CA74415、および米国国立衛生研究所の国立がん研究所および事務局によって提供された助成金RC4CA153828の下で米国政府によって支援されてなされた。
本発明において、上記政府は特定の権利を有する。
開示の分野
本開示は、一般に、がん、リプロダクティブヘルス、および分子生物学の分野に関する。本開示は、遺伝マーカーの存在または不存在を決定することによって、がんを有する被験体を診断および予後判断するための方法を提供する。さらに、本開示は、遺伝マーカーの存在または不存在を決定することによって、処置に対する被験体の応答を決定するための方法を提供する。
背景
がんの異質性は、患者における種々の危険因子、処置応答および転帰に反映される。予後判断の遺伝子発現マーカーは非常に多様であるが、いくつかのモジュール(例えば、DNA修復欠損、免疫応答のシグネチャーまたは上皮から間葉への移行)は、一般的に、あるサブセットの腫瘍と関連があることが見出されている。従って、特定および個別化された療法の発見への前途有望なアプローチとしてこれらの転写モジュールを操縦するものを同定する必要性が当該分野に存在する。
要旨
本開示に示される研究は、がんにおけるmiRNAの役割に関する主要な命題に関する:癌遺伝子または腫瘍抑制遺伝子のmiRNAによる調節の崩壊は、がんのリスク、腫瘍の発生、および処置に対する応答に影響を与える。miRNAは、癌遺伝子または腫瘍抑制遺伝子を直接的または間接的に調節し得る。例えば、KRAS遺伝子の3’UTRのlet−7の相補部位6(LCS6)に位置する1つのSNPであるKRASバリアントは、let−7ファミリーのmiRNAによるKRASの調節を崩壊させる。この場合、let−7によって媒介されるKRASの調節は崩壊されるが、KRASバリアントの二次的な作用が存在する。let−7/KRAS相互作用の上流の崩壊は、下流の因子への異常なシグナル伝達を永続させる。さらに、カノニカルRAS経路以外のシグナル伝達経路の構成要素が影響を受ける。KRASバリアントの存在は、血管新生、生存(低酸素条件下でさえ)、転移を増加させ、頻繁に使用される化学療法薬剤に対して抵抗性を与える。さらに、がん細胞におけるエピジェネティックな変化(例えば、腫瘍抑制遺伝子および細胞周期遺伝子のプロモーターのメチル化に対する変化)は、KRASバリアントに対して陽性であるがん細胞の、発生、生存、および処置に対する応答に影響を及ぼす。結局、KRASバリアントの細胞への影響(cellular consequence)は、KRASにおける他の変異(例えば、KRASのコード領域における獲得変異が挙げられる)とは独立している。多くのがん細胞について、KRASバリアントの出現は、他のKRAS変異の出現と互いに相容れない。KRASにおける獲得変異と違って、KRASバリアントは、生殖細胞系の変異である。従って、KRASバリアントは、腫瘍細胞生物学の遺伝性バイオマーカーである。
KRASバリアント変異の出現は、KRASの増加した発現および/または豊富さ、ならびにlet−7ファミリーのmiRNAの低減した発現をもたらす。KRASバリアントはまた、転写因子およびlet−7ファミリーのmiRNA以外のmiRNAの発現レベルに影響する。例えば、KRASバリアントは、抗血管新生遺伝子(例えば、Sprouty2およびSema6A)を標的とする、miR−23およびmiR−27の上昇した発現レベルと統計学的に有意に関連する。従って、従来の化学療法薬剤に対する低い転帰および抵抗性は、RAS経路だけではなく、腫瘍に血液および栄養素を引き込んで腫瘍中のがん細胞の生存を促進する血管新生経路をも介して、細胞増殖の活性化をもたらすというKRASバリアントの能力から生じ得る。共通のアクチベーターを有する2つの異常な経路に直面しては、特定の化学療法薬剤の活性は、がんの進行に立ち向かうのに不十分であり得る。KRASバリアントを有する腫瘍におけるRASおよび他の経路の混乱状態(perturbation)は、がん細胞および腫瘍のタイプ(例えば、乳がんおよび卵巣がん)の全体で保存される。
KRASバリアントは、種々のがんにおける好ましくない臨床的転帰に関連し、このがんとしては、結腸、卵巣、頭頸部がん、および肺がんが挙げられるが、これらに限定されない。この証拠は、KRASバリアントが、処置に対する患者の応答を決定することを示唆する。KRASバリアントの保有者が、標準的な化学療法薬剤に対して抵抗性がある場合には、患者の転帰はより悪い。本明細書中で示されるデータは、KRASバリアントが従来の化学療法薬剤に対する抵抗性を与え得る一方で、時には、モノクローナル抗体療法に対する上昇した感受性を与えることを実証する。例えば、KRASバリアントは、KRAS経路の上流の調節因子(EGFR)を標的とするセツキシマブが単独の処置として送達される場合のセツキシマブに対する患者の感受性を上昇させる。従って、KRASの上流にある標的に特異的な薬剤はうまくいくが、KRASの下流にある細胞周期チェックポイントを標的とする従来の化学療法薬剤は有効でない場合があることを、KRASバリアントの出現は示唆し得る。同様に、KRASバリアントは、プラチナベースの化学療法に対する抵抗性を与える。プラチナベースの薬剤は、DNA分子を架橋してDNAの複製を妨げ、最終的には、アポトーシスを誘発する。しかし、DNA複製は、KRAS活性化の下流で起きるプロセスであり、従って、(特に、RAS以外のシグナル伝達経路の補充を示すデータを考慮すると)有効ではない場合があり得る。
処置方法としての化学療法は患者には非常に過酷であるので、本明細書中で提供されるKRAS腫瘍生物学についてのこれらの知見は、臨床的に顕著な価値がある。化学療法薬剤は、患者の不快感を増すだけではなく、化学療法剤がなければ機能している身体系に合併症をも導く副作用を示す。例えば、がん細胞を死滅させる化学療法薬剤はまた、患者の心臓に損傷を与えたりまたは弱くしたりする場合がある。従って、KRASバリアントは、既知の化学療法薬剤に対する抵抗性または感受性を決定するためのバイオマーカーである。患者がKRASバリアントに対して陽性であれば、医師は、最適な処置を選ぶか、または有効ではない処置を少なくとも避けることができる。
本開示において、被験体および患者という用語は、交換可能に使用される。
本開示は、腫瘍の血管形成(vascularization)のリスクの増加を予測する方法であって、(a)ヒトKRASのlet−7相補部位LCS6における変異を、第一の患者サンプルにおいて検出する工程(ここで上記変異は、LCS6の4位におけるウラシル(U)またはチミン(T)のグアニン(G)へのトランジション(transition)を含むSNPである)、および(b)miR−23およびmiR−27からなる群から選択されるmiRNAの発現レベルを、第二の患者サンプルにおいて決定する工程を含み、ここで、(a)における上記変異の存在、および対照と比較しての(b)におけるmiRNAの発現レベルの上昇は、抗血管新生遺伝子の増加した転写サイレンシングを示し、それにより上記腫瘍の血管形成の増加したリスクが予測される、方法を提供する。第一の患者サンプルと第二の患者サンプルとは、同じ患者から抽出される。さらに、第一の患者サンプルおよび第二の患者サンプルは、同じ体液、組織、または生検材料を含み得る。好ましくは、第二の患者サンプルは、腫瘍または腫瘍と物理的に接触している(すなわち、腫瘍を取り囲んでいる)非腫瘍組織領域から抽出されるかまたはそれに由来する。例えば、抗血管新生遺伝子は、Sprouty2またはSema6Aであり得る。上記腫瘍は、AIDS関連のがん、乳がん、消化管/胃腸管のがん、肛門がん、虫垂がん、胆管がん、結腸がん、結腸直腸がん、食道がん、胆嚢がん、ランゲルハンス島細胞腫瘍、膵神経内分泌腫瘍、肝がん、膵がん、直腸がん、小腸がん、胃がん(stomach(gastric)cancer)、内分泌系がん、副腎皮質癌腫、副甲状腺がん、褐色細胞腫、下垂体腫瘍、甲状腺がん、眼のがん、眼内黒色腫、網膜芽細胞腫、膀胱がん、腎臓(腎細胞)がん、陰茎がん、前立腺がん、腎盂および尿管の移行上皮がん(transitional cell renal pelvis and ureter cancer)、精巣がん、尿道がん、ウィルムス腫瘍、他の小児腎臓腫瘍、胚細胞がん(germ cell cancer)、中枢神経系がん、頭蓋外胚細胞腫瘍、性腺外胚細胞腫瘍、卵巣胚細胞腫瘍、婦人科がん、子宮頸がん、子宮内膜がん、妊娠性栄養膜腫瘍(gestational trophoblastic tumor)、卵巣上皮がん、子宮肉腫、膣がん、外陰がん、頭頸部がん、下咽頭がん、喉頭がん、口唇および口腔がん、原発不明転移性扁平頸部がん(metastatic squamous neck cancer with occult primary)、口のがん、鼻咽頭がん、口峡がん、副鼻腔および鼻腔がん、咽頭がん、唾液腺がん、喉のがん、筋骨格がん(musculoskeletal cancer)、骨がん、ユーイング肉腫、消化管間質腫瘍(GIST)、骨肉腫、骨の悪性線維性組織球腫、横紋筋肉腫、軟部肉腫、子宮肉腫、神経がん(neurologic cancer)、脳のがん、星細胞腫、脳幹グリオーマ、中枢神経系非定型奇形腫様/ラブドイド腫瘍、中枢神経系胎児性腫瘍、中枢神経系胚細胞腫瘍、頭蓋咽頭腫、上衣腫、髄芽腫、脊髄腫瘍、テント上原始神経外胚葉性腫瘍および松果体芽細胞腫、神経芽細胞腫、呼吸器がん、胸部がん(thoracic cancer)、非小細胞肺がん、小細胞肺がん、悪性中皮腫、胸腺腫、胸腺癌腫、皮膚がん、カポジ肉腫、黒色腫、またはメルケル細胞癌腫由来のがん細胞を含み得る。あるいは、または加えて、上記腫瘍またはがんは、転移性である。
本開示は、低酸素条件下におけるがん細胞の増加した生存または増殖を予測するための方法であって、(a)ヒトKRASのlet−7相補部位LCS6における変異を、第一の患者サンプルにおいて検出する工程(ここで上記変異は、LCS6の4位におけるウラシル(U)またはチミン(T)のグアニン(G)へのトランジションを含むSNPである)、および(b)miR−210 miRNAの発現レベルを、第二の患者サンプルにおいて決定する工程を含み、ここで、(a)における上記変異の存在、および対照と比較しての(b)におけるmiRNAの発現レベルの上昇は、低酸素条件下における上記がん細胞の増加した生存または増殖を予測する、方法を提供する。第一の患者サンプルと第二の患者サンプルとは、同じ患者から抽出される。さらに、第一の患者サンプルおよび第二の患者サンプルは、同じ体液、組織、または生検材料を含み得る。上記がん細胞は、AIDS関連のがん、乳がん、消化管/胃腸管のがん、肛門がん、虫垂がん、胆管がん、結腸がん、結腸直腸がん、食道がん、胆嚢がん、ランゲルハンス島細胞腫瘍、膵神経内分泌腫瘍、肝がん、膵がん、直腸がん、小腸がん、胃がん、内分泌系がん、副腎皮質癌腫、副甲状腺がん、褐色細胞腫、下垂体腫瘍、甲状腺がん、眼のがん、眼内黒色腫、網膜芽細胞腫、膀胱がん、腎臓(腎細胞)がん、陰茎がん、前立腺がん、腎盂および尿管の移行上皮がん、精巣がん、尿道がん、ウィルムス腫瘍、他の小児腎臓腫瘍、胚細胞がん、中枢神経系がん、頭蓋外胚細胞腫瘍、性腺外胚細胞腫瘍、卵巣胚細胞腫瘍、婦人科がん、子宮頸がん、子宮内膜がん、妊娠性栄養膜腫瘍、卵巣上皮がん、子宮肉腫、膣がん、外陰がん、頭頸部がん、下咽頭がん、喉頭がん、口唇および口腔がん、原発不明転移性扁平頸部がん、口のがん、鼻咽頭がん、口峡がん、副鼻腔および鼻腔がん、咽頭がん、唾液腺がん、喉のがん、筋骨格がん、骨がん、ユーイング肉腫、消化管間質腫瘍(GIST)、骨肉腫、骨の悪性線維性組織球腫、横紋筋肉腫、軟部肉腫、子宮肉腫、神経がん、脳のがん、星細胞腫、脳幹グリオーマ、中枢神経系非定型奇形腫様/ラブドイド腫瘍、中枢神経系胎児性腫瘍、中枢神経系胚細胞腫瘍、頭蓋咽頭腫、上衣腫、髄芽腫、脊髄腫瘍、テント上原始神経外胚葉性腫瘍および松果体芽細胞腫、神経芽細胞腫、呼吸器がん、胸部がん、非小細胞肺がん、小細胞肺がん、悪性中皮腫、胸腺腫、胸腺癌腫、皮膚がん、カポジ肉腫、黒色腫、またはメルケル細胞癌腫に由来し得る。
本開示は、がん細胞の増加した生存または増殖を予測するための方法であって、(a)ヒトKRASのlet−7相補部位LCS6における変異を、第一の患者サンプルにおいて検出する工程(ここで上記変異は、LCS6の4位におけるウラシル(U)またはチミン(T)のグアニン(G)へのトランジションを含むSNPである)、および(b)腫瘍抑制遺伝子のプロモーターのメチル化状態を、第二の患者サンプルにおいて決定する工程を含み、ここで、(a)における上記変異の存在、および対照と比較しての(b)プロモーターのメチル化の増加は、上記がん細胞の増加した生存または増殖を予測する、方法を提供する。第一の患者サンプルと第二の患者サンプルとは、同じ患者から抽出される。さらに、第一の患者サンプルおよび第二の患者サンプルは、同じ体液、組織、または生検材料を含み得る。必要に応じて、上記腫瘍抑制遺伝子は、Notch1である。生存は、腫瘍形成の可能性を維持することを含み得る。上記がん細胞は、AIDS関連のがん、乳がん、消化管/胃腸管のがん、肛門がん、虫垂がん、胆管がん、結腸がん、結腸直腸がん、食道がん、胆嚢がん、ランゲルハンス島細胞腫瘍、膵神経内分泌腫瘍、肝がん、膵がん、直腸がん、小腸がん、胃がん、内分泌系がん、副腎皮質癌腫、副甲状腺がん、褐色細胞腫、下垂体腫瘍、甲状腺がん、眼のがん、眼内黒色腫、網膜芽細胞腫、膀胱がん、腎臓(腎細胞)がん、陰茎がん、前立腺がん、腎盂および尿管の移行上皮がん、精巣がん、尿道がん、ウィルムス腫瘍、他の小児腎臓腫瘍、胚細胞がん、中枢神経系がん、頭蓋外胚細胞腫瘍、性腺外胚細胞腫瘍、卵巣胚細胞腫瘍、婦人科がん、子宮頸がん、子宮内膜がん、妊娠性栄養膜腫瘍、卵巣上皮がん、子宮肉腫、膣がん、外陰がん、頭頸部がん、下咽頭がん、喉頭がん、口唇および口腔がん、原発不明転移性扁平頸部がん、口のがん、鼻咽頭がん、口峡がん、副鼻腔および鼻腔がん、咽頭がん、唾液腺がん、喉のがん、筋骨格がん、骨がん、ユーイング肉腫、消化管間質腫瘍(GIST)、骨肉腫、骨の悪性線維性組織球腫、横紋筋肉腫、軟部肉腫、子宮肉腫、神経がん、脳のがん、星細胞腫、脳幹グリオーマ、中枢神経系非定型奇形腫様/ラブドイド腫瘍、中枢神経系胎児性腫瘍、中枢神経系胚細胞腫瘍、頭蓋咽頭腫、上衣腫、髄芽腫、脊髄腫瘍、テント上原始神経外胚葉性腫瘍および松果体芽細胞腫、神経芽細胞腫、呼吸器がん、胸部がん、非小細胞肺がん、小細胞肺がん、悪性中皮腫、胸腺腫、胸腺癌腫、皮膚がん、カポジ肉腫、黒色腫、またはメルケル細胞癌腫に由来し得る。必要に応じて、上記がん細胞は、がん幹細胞である。
乳がん
本開示は、侵襲性(aggressive)形態およびハイリスクな形態の乳がんを発生するリスクがある被験体を同定するための方法、ならびにこれらの形態の発症を予測するための方法を提供する。本明細書中で提供されるデータは、エストロゲン受容体の発現の不足またはプロゲステロン受容体の発現の不足のいずれかによって特徴付けられる乳がん腫瘍の発生をもたらす検出可能なゲノム変異の輪郭を描くメカニズムの最初の開示を構成する。好ましい実施形態において、侵襲性でリスクが高い形態の乳がんは三重陰性乳がん(triple negative breast cancer)であり、これは、ヒト上皮増殖因子受容体2(HER2)遺伝子の転写産物またはタンパク質の発現の不足によってさらに特徴付けられる。
本開示は、エストロゲン受容体(ER)およびプロゲステロン受容体(PR)に陰性(ER/PR陰性)の乳がんを発生するリスクがある被験体を同定するための方法であって、ヒトKRASのlet−7相補部位LCS6における変異を、患者サンプルにおいて検出する工程を含み、ここで上記変異は、LCS6の4位におけるウラシル(U)またはチミン(T)のグアニン(G)へのトランジションを含むSNPであり、そしてここで、変異の存在は、ER/PR陰性乳がんを発生するより大きなリスクを示す、方法を提供する。
本開示は、乳がんを発生するリスクがある被験体において、エストロゲン受容体(ER)およびプロゲステロン受容体(PR)に陰性(ER/PR陰性)の乳がんの発生の発症を予測するための方法であって、ヒトKRASのlet−7相補部位LCS6における変異を患者サンプルにおいて検出する工程を含み、ここで上記変異は、LCS6の4位におけるウラシル(U)またはチミン(T)のグアニン(G)へのトランジションを含むSNPであり、そしてここで、上記変異の存在は、ER/PR陰性乳がんの発生のより早期な発症を示す、方法を提供する。
本明細書中に記載される方法の好ましい実施形態において、ER/PR陰性乳がんはまた、HER2に対しても陰性であり、従って、三重陰性乳がん(TNBC)である。三重陰性乳がん(TNBC)は、基底型(basal)または管腔型(luminal)のがんまたは腫瘍であり得る。これらの方法の特定の局面において、三重陰性乳がん(TNBC)は、上皮増殖因子受容体(EGFR)またはサイトケラチン5/6(CK5/6)の遺伝子によってコードされる転写産物またはタンパク質を発現する基底型腫瘍である。他の局面において、ER/PR陰性またはER/PR/HER2陰性の乳がんは、乳がん1(BRCA1)遺伝子の低発現または発現陰性によってさらに特徴付けられる。
被験体(患者)は、好ましくは、閉経期前の女性であるが、上記被験体は、任意の年齢であり得る。あるいは、または加えて、上記被験体は、51歳未満であるが、上記被験体は、必要に応じて、100歳未満、90歳未満、80歳未満、70歳未満、60歳未満、50歳未満、40歳未満、30歳未満、20歳未満、またはそれらの間の任意の数の年齢であり得る。
結腸直腸がん
本開示は、結腸直腸がん(CRC)を有する被験体の予後判定の方法であって、ヒトKRASのlet−7相補部位LCS6における変異を患者サンプルにおいて検出する工程を含み、ここで上記変異は、LCS6の4位におけるウラシル(U)またはチミン(T)のグアニン(G)へのトランジションを含むSNPであり、ここでKRASバリアントの存在は、対照と比較して増加した生存率を示す、方法を提供する。この方法の1つの局面において、検出する工程は、マイクロサテライト不安定性(MSI)分析をさらに含む。KRASバリアントは、結腸直腸がん細胞および患者における生存についての独立したマーカーであるが、マイクロサテライト不安定性(MSI)分析は、二次的な分析として使用され得る。MSIは、CRC患者における良好な予後判定の分子マーカーである(すなわち、MSI腫瘍を有するCRC患者は、良好な予後を有すると考えられる)が、KRASバリアント状態の決定により、MSI腫瘍を発生しているが、KRASバリアントについて陰性(または、換言すると野生型)である個体が、CRCにおいて、依然として好ましくない予後を有することが明らかになった。従って、本開示は、特にCRC患者が、がんの病期によって階層化される場合に、臨床的転帰またはCRCの予後を予測するためのより優れた方法を提供する。
この方法の特定の実施形態において、結腸直腸がん(CRC)は、早期CRCである。好ましくは、結腸直腸がん(CRC)は、1期または2期のものである。
試験の被験体は、KRAS遺伝子において第二の変異を有し得る(KRASバリアントが第一の変異である)。
上記試験または対照の被験体は、BRAF遺伝子において1つまたはそれより多くの変異を保有し得る。あるいは、または加えて、上記試験または対照の被験体は、過剰メチル化RASSF1Aプロモーターを有し得る。
上記対照の被験体は、KRASバリアントを保有しない(すなわち、上記対照の被験体は、KRASバリアント変異について野生型である)。しかし、上記対照の被験体は、CRCを有していてもよく、またはがんのない個体であってもよい。さらに、上記対照の被験体は、KRAS遺伝子において、KRASバリアントではない第二の変異を有し得る。
この方法の特定の局面において、生存率は、全生存率(例えば、いくつかの例としては、がんの発生または診断の時から、被験体ががんで死ぬ(死亡)か、寛解期に入るか、または被験体は治ったもしくは全てのがん細胞がない状態(clean)であると医師が断言するまでから計算した生存率が挙げられるが、これらに限定されない)、5年生存率、または1年生存率である。より短い生存期間は、例えば、がんの発生または診断のいずれかから、決定された時(例えば、1年または5年)までから計算される。
卵巣がんについての処置に対する応答
本開示は、上皮性卵巣がん(EOC)を有する被験体の予後判定の方法、さらに、プラチナベースの化学療法に対する被験体の応答を予測することによって処置を最適化する方法を提供する。本明細書中に記載される方法およびデータは、KRAS遺伝子の3’非翻訳領域(UTR)内のlet−7 miRNA結合部位における特定のゲノムの変異(KRASバリアントとして公知である)を同定する。
本開示は、上皮性卵巣がん(EOC)を有する被験体の予後判定の方法であって、ヒトKRASのlet−7相補部位LCS6における変異を患者サンプルにおいて検出する工程を含み、ここで上記変異は、LCS6の4位におけるウラシル(U)またはチミン(T)のグアニン(G)へのトランジションを含むSNPであり、ここで、KRASバリアントの存在は、対照と比較して低下した生存率を示す、方法を提供する。
上記方法は、全ての年齢の被験体および女性に適用され得るが、この方法の特定の実施形態において、試験の被験体は、閉経後、または52歳もしくはそれより高齢である。対照の被験体としては、健康な個体、およびEOCを有するがKRASバリアントを保有しない女性が挙げられる。さらに、対照の被験体は、試験の被験体と同じ年に生まれた、または試験の被験体と同じ世代に属する女性の期待生存率に基づいた国の平均であり得る。好ましい実施形態において、この対照の値は、KRASバリアントを保有する個体を含まない。この方法の特定の局面において、生存率は、全生存率(例えば、いくつかの例としては、がんの発生または診断の時から、被験体ががんで死ぬ(死亡)か、寛解期に入るか、または被験体は治ったもしくは全てのがん細胞がない状態であると医師が断言するまでから計算した生存率が挙げられるが、これらに限定されない)、5年生存率、または1年生存率である。より短い生存期間は、例えば、がんの発生または診断のいずれかから、決定された時(例えば、1年または5年)までから計算される。
本開示はまた、プラチナベースの化学療法に対する上皮性卵巣がん(EOC)細胞の応答を予測する方法であって、ヒトKRASのlet−7相補部位LCS6における変異を患者サンプルにおいて検出する工程を含み、ここで上記変異は、LCS6の4位におけるウラシル(U)またはチミン(T)のグアニン(G)へのトランジションを含むSNPであり、そしてここで上記変異の存在は、プラチナベースの化学療法に対する抵抗性を示す、方法を提供する。上記EOC細胞は、インビトロまたはエクスビボで評価され得る。上記EOC細胞がエクスビボで評価される場合、上記細胞は、被験体から得られる。上記被験体は、任意の年齢であり得るが、好ましい実施形態において、上記被験体は、閉経後または少なくとも52歳のいずれかである。あるいは、同じ実施形態において、上記被験体は、少なくとも30歳、少なくとも35歳、少なくとも40歳、少なくとも45歳、少なくとも50歳、少なくとも55歳、少なくとも60歳、少なくとも65歳、少なくとも70歳、少なくとも75歳であるか、またはそれらの間の任意の年齢である。この方法の他の局面において、上記被験体は、閉経後ではないが、第二の医学的状態または医学的処置に起因して、同様のホルモンプロフィールを示す。例示的だが非限定的な閉経期ホルモンプロフィールとしては、例えば、被験体の血液または尿のサンプルの評価によって決定した場合の、エストロゲンおよびプロゲステロンホルモンの低減したレベルが挙げられる。閉経期ホルモンプロフィールをもたらす、例示的だが非限定的な二次的な医学的状態は、少なくとも1つの卵巣の外科的除去(外科的閉経としても公知の卵巣摘出)、子宮摘出(特に、子宮の除去がファロピウス管および一方または両方の卵巣の除去と組み合わせられる場合)を必要とする頸部、子宮、または卵巣がんである。閉経期ホルモンプロフィールをもたらす例示的だが非限定的な第二の医学的状態は、化学療法および抗エストロゲン処置である。
EOC細胞がインビトロで評価される場合、この細胞は、BG1、CAOV3、もしくはIGR−OV1細胞系から単離されるか、繁殖される(reproduced)か、または誘導される。これらの細胞系は、卵巣がん細胞系の非限定的な例である。EOC細胞は、任意の卵巣がん細胞系(KRASバリアント、有害なBRCA1変異、有害なBRCA2変異、またはそれらの任意の組み合わせを保有する細胞系が挙げられるが、これらに限定されない)から単離され得るか、繁殖され得るか、または誘導され得る。有害なBRCA1変異またはBRCA2変異は、その保有者ががん(好ましい実施形態においては、乳がんまたは卵巣がん)を発生するリスクまたは見込みを増加させる変異である。有害なBRCA1変異またはBRCA2変異はまた、その保有者がより若い年齢でがんを発生する(すなわち、がんのより早期な発症を経験する)リスクまたは見込みを増加させる変異であり、好ましい実施形態において、上記がんは、乳がんまたは卵巣がんである。
本明細書中に記載される方法について、好ましいプラチナベースの化学療法は、カルボプラチンまたはパクリタキセルであるが、プラチナベースの化学療法は、がんを処置または予防するためのプラチナまたはプラチナ塩を組み込む全ての化学療法薬剤を包含する。これらの方法の特定の局面において、プラチナベースの化学療法は、アジュバント療法である。従って、本明細書中に記載される方法は、単剤療法か、または他の公知の抗がん剤もしくは技術(例えば、照射および手術)との組み合わせ療法のいずれかとしてのプラチナベースの化学療法の使用に対する患者の応答を予測する。
結腸直腸がんについての処置に対する応答
本開示は、結腸直腸がん(CRC)または転移性CRC(mCRC)を有する被験体の予後判定の方法、さらに単独での、または細胞毒性化学療法と組み合わせた、モノクローナル抗体療法に対する被験体の応答を予測することによって処置を最適化する方法を提供する。本明細書中に記載される方法およびデータは、KRASバリアントと称される、KRAS遺伝子の3’非翻訳領域(UTR)内のlet−7 miRNA結合部位における特定のゲノムの変異を同定する。
本開示は、早期結腸直腸がん(CRC)を有する、試験の被験体の予後判定の方法であって、ヒトKRASのlet−7相補部位LCS6における変異を患者サンプルにおいて検出する工程を含み、ここで上記変異は、LCS6の4位におけるウラシル(U)またはチミン(T)のグアニン(G)へのトランジションを含むSNPであり、そしてここで上記変異の存在は、対照の被験体または進行したCRC(例えば、III期、IV期、および転移性のCRCが挙げられる)を有する被験体と比較して増加した生存率を示す、方法を提供する。
本開示は、進行した結腸直腸がん(CRC)を有する患者の予後判定の方法であって、ヒトKRASのlet−7相補部位LCS6における変異を患者サンプルにおいて検出する工程を含み、ここで上記変異は、LCS6の4位におけるウラシル(U)またはチミン(T)のグアニン(G)へのトランジションを含むSNPであり、そしてここでKRASバリアントの存在は、対照の被験体または早期CRCを有する被験体と比較して低減した生存率を示す、方法を提供する。進行したCRCとしては、例えば、III期、IV期、および転移性のCRCが挙げられる。
本開示は、モノクローナル抗体単剤療法に対するがん細胞の応答を予測する方法であって、ヒトKRASのlet−7相補部位LCS6における変異を患者サンプルにおいて検出する工程を含み、ここで上記変異は、LCS6の4位におけるウラシル(U)またはチミン(T)のグアニン(G)へのトランジションを含むSNPであり、ここで上記変異の存在は、モノクローナル抗体単剤療法に対する感受性を示す、方法を提供する。この方法の特定の実施形態において、上記がん細胞は、結腸直腸がん(CRC)細胞である。上記がん細胞は、インビトロまたはエクスビボで評価され得る。モノクローナル抗体単剤療法の非限定的な例は、セツキシマブである。
本開示は、化学療法とモノクローナル抗体単剤療法との組み合わせに対するがん細胞の応答を予測する方法であって、ヒトKRASのlet−7相補部位LCS6における変異を患者サンプルにおいて検出する工程を含み、ここで上記変異は、LCS6の4位におけるウラシル(U)またはチミン(T)のグアニン(G)へのトランジションを含むSNPであり、そしてここで上記変異の存在は、上記組み合わせに対する抵抗性を示す、方法を提供する。この方法の特定の実施形態において、上記がん細胞は、結腸直腸がん(CRC)細胞である。上記がん細胞は、インビトロまたはエクスビボで評価され得る。モノクローナル抗体単剤療法の非限定的な例は、セツキシマブである。化学療法は、細胞毒性薬剤であり得る。上記細胞毒性薬剤の非限定的な例は、イリノテカンである。特定の実施形態において、KRASバリアントを保有する被験体の化学療法薬剤(例えば、イリノテカン)での処置は、KRASバリアントの増加した発現をもたらす。イリノテカン曝露後にKRASバリアントがん細胞でのレポーター発現がKRAS非バリアントがん細胞に対して比較される場合、野生型3’UTRレポーターの発現における変化は見出されなかった。しかし、KRASバリアント3’UTRレポーターにおける発現の統計学的に有意な増加が見出された(図24Aおよび図24B)。上記データは、イリノテカン曝露が、KRASバリアント対立遺伝子を活性化する様式で細胞状況を変化させることを示す。
上記方法は、全ての年齢の被験体に適用され得るが、この方法の特定の実施形態において、試験の被験体は、新生児、子供、大人、または高齢者(65歳またはそれより高齢)である。上記被験体は、閉経期前または閉経後(52歳またはそれより高齢)であり得る。
対照または対照の被験体としては、健康な個体、およびCRCを有するがKRASバリアントを保有しない個体が挙げられる。さらに、対照の被験体は、試験の被験体と同じ年に生まれた、または試験の被験体と同じ世代に属する個体の期待生存率に基づいた国の平均であり得る。好ましい実施形態において、この対照の値は、KRASバリアントを保有する個体を含まない。この方法の特定の局面において、生存率は、全生存率(例えば、いくつかの例としては、がんの発生または診断の時から、被験体ががんで死ぬ(死亡)か、寛解期に入るか、または被験体は治ったもしくは全てのがん細胞がない状態であると医師が断言するまでから計算した生存率が挙げられるが、これらに限定されない)、5年生存率、または1年生存率である。より短い生存期間は、例えば、がんの発生または診断のいずれかから、決定された時(例えば、1年または5年)までから計算される。
本開示はまた、モノクローナル抗体ベースの療法に対する結腸直腸がん(CRC)細胞の応答を予測する方法であって、ヒトKRASのlet−7相補部位LCS6における変異を患者サンプルにおいて検出する工程を含み、ここで上記変異は、LCS6の4位におけるウラシル(U)またはチミン(T)のグアニン(G)へのトランジションを含むSNPであり、そしてここで上記変異の存在は、モノクローナル抗体ベースの療法に対する増加した感受性を示す、方法を提供する。上記CRC細胞は、インビトロまたはエクスビボで評価され得る。モノクローナル抗体ベースの療法は、セツキシマブであり得る。
本開示はまた、細胞毒性化学療法に対する結腸直腸がん(CRC)細胞の応答を予測する方法であって、ヒトKRASのlet−7相補部位LCS6における変異を、患者サンプルにおいて検出する工程を含み、ここで上記変異は、LCS6の4位におけるウラシル(U)またはチミン(T)のグアニン(G)へのトランジションを含むSNPであり、ここで上記変異の存在は、細胞毒性化学療法に対する抵抗性を示す、方法を提供する。この方法の特定の実施形態において、上記CRC細胞は、インビトロまたはエクスビボで評価され得る。細胞毒性化学療法は、イリノテカンであり得る。この方法の特定の実施形態において、細胞毒性化学療法は、モノクローナル抗体ベースの療法を含む組み合わせ療法である。モノクローナル抗体ベースの療法は、セツキシマブであり得る。
上記CRC細胞がエクスビボで評価されるとき、上記細胞は、被験体から得られる。上記被験体は、任意の年齢であり得る。この方法の特定の実施形態において、上記被験体は、少なくとも30歳、少なくとも35歳、少なくとも40歳、少なくとも45歳、少なくとも50歳、少なくとも55歳、少なくとも60歳、少なくとも65歳、少なくとも70歳、少なくとも75歳であるか、またはそれらの間の任意の年齢である。
上記CRC細胞がインビトロで評価される場合、上記細胞は、確立された細胞系(NCI−60パネルに含まれる結腸または結腸直腸がん細胞系が挙げられる)から単離されるか、繁殖されるか、または誘導され得る。CRC細胞は、任意の結腸または結腸直腸がん細胞系(単独、またはKRASもしくは別の遺伝子における第二もしくは追加の変異との組み合わせのいずれかでKRASバリアントを保有する細胞系が挙げられるが、これらに限定されない)から単離されるか、繁殖されるか、または誘導され得る。
この方法について、好ましいモノクローナル抗体単剤療法は、セツキシマブであるが、モノクローナル抗体単剤療法は、がんを処置または予防するために使用される任意のモノクローナル抗体を包含する。好ましくは、モノクローナル抗体は、部分的または完全に、ヒトまたはヒト化されている。この方法について、好ましい化学療法は、細胞毒性化学療法(例えば、イリノテカン)であるが、化学療法は、がんを処置または予防するために使用される任意の化学療法薬剤を包含する。この方法の特定の局面において、化学療法または細胞毒性化学療法は、アジュバント療法である。従って、この方法は、単剤療法か、または化学療法薬剤もしくはがんを処置もしくは予防するための他の公知の技術(例えば、照射および手術)との組み合わせ療法のいずれかとしてのモノクローナル抗体の使用に対する患者の応答を予測する。
例えば、本発明は以下を提供する。
(項目1)
エストロゲン受容体(ER)およびプロゲステロン受容体(PR)陰性(ER/PR陰性)乳がんを発生するリスクがある被験体または患者を同定する方法であって、ヒトKRASのlet−7相補部位LCS6における変異を、患者サンプルにおいて検出する工程を含み、ここで該変異は、LCS6の4位におけるウラシル(U)またはチミン(T)のグアニン(G)へのトランジションを含むSNPであり、そしてここで、該変異の存在は、該被験体においてER/PR陰性乳がんを発生する増加したリスクを示す、方法。
(項目2)
乳がんを発生するリスクがある被験体または患者におけるエストロゲン受容体(ER)およびプロゲステロン受容体(PR)陰性(ER/PR陰性)乳がんの発生の発症を予測する方法であって、ヒトKRASのlet−7相補部位LCS6における変異を、患者サンプルにおいて検出する工程を含み、ここで該変異は、LCS6の4位におけるウラシル(U)またはチミン(T)のグアニン(G)へのトランジションを含むSNPであり、そしてここで、該変異の存在は、ER/PR陰性乳がんの発生のより早期な発症を示す、方法。
(項目3)
前記ER/PR陰性乳がんが、HER2に対しても陰性であり、従って、三重陰性乳がん(TNBC)である、上記項目のうちのいずれか一項に記載の方法。
(項目4)
前記三重陰性乳がん(TNBC)が、基底型腫瘍または管腔型腫瘍である、上記項目のうちのいずれか一項に記載の方法。
(項目5)
前記三重陰性乳がん(TNBC)が、上皮増殖因子受容体(EGFR)またはサイトケラチン5/6(CK5/6)遺伝子によってコードされる転写産物またはタンパク質を発現する基底型腫瘍である、上記項目のうちのいずれか一項に記載の方法。
(項目6)
前記乳がんが、乳がん1(BRCA1)遺伝子の低発現または発現陰性によってさらに特徴付けられる、上記項目のうちのいずれか一項に記載の方法。
(項目7)
前記被験体または患者が、閉経期前である、上記項目のうちのいずれか一項に記載の方法。
(項目8)
前記被験体または患者が、51歳またはそれより若い、上記項目のうちのいずれか一項に記載の方法。
(項目9)
上皮性卵巣がん(EOC)を有する被験体または患者を予後判定するための方法であって、ヒトKRASのlet−7相補部位LCS6における変異を、患者サンプルにおいて検出する工程を含み、ここで該変異は、LCS6の4位におけるウラシル(U)またはチミン(T)のグアニン(G)へのトランジションを含むSNPであり、そしてここで、該変異の存在は、対照と比較して低下した生存率を示す、方法。
(項目10)
前記被験体または患者が、閉経後、52歳、または少なくとも52歳である上記項目のうちのいずれか一項に記載の方法。
(項目11)
前記対照が前記変異を保有しない、上記項目のうちのいずれか一項に記載の方法。
(項目12)
前記生存率が、全生存率、5年生存率、または1年生存率である、上記項目のうちのいずれか一項に記載の方法。
(項目13)
プラチナベースの化学療法に対する上皮性卵巣がん(EOC)細胞の応答を予測する方法であって、ヒトKRASのlet−7相補部位LCS6における変異を、患者サンプルにおいて検出する工程を含む、ここで該変異は、LCS6の4位におけるウラシル(U)またはチミン(T)のグアニン(G)へのトランジションを含むSNPであり、ここで該変異の存在は、プラチナベースの化学療法に対する抵抗性を示す、方法。
(項目14)
前記EOC細胞が、インビトロまたはエクスビボで評価される、上記項目のうちのいずれか一項に記載の方法。
(項目15)
前記EOC細胞が、閉経後、52歳、または少なくとも52歳である被験体からエクスビボで評価される、上記項目のうちのいずれか一項に記載の方法。
(項目16)
前記EOC細胞がインビトロで評価され、そしてここで、該EOC細胞は、BG1、CAOV3、もしくはIGR−OV1細胞系から単離されるか、繁殖されるか、または誘導される、上記項目のうちのいずれか一項に記載の方法。
(項目17)
前記プラチナベースの化学療法が、カルボプラチンまたはパクリタキセルである、上記項目のうちのいずれか一項に記載の方法。
(項目18)
前記プラチナベースの化学療法が、アジュバント療法である、上記項目のうちのいずれか一項に記載の方法。
(項目19)
結腸直腸がん(CRC)を有する被験体または患者を予後判定する方法であって、ヒトKRASのlet−7相補部位LCS6における変異を、患者サンプルにおいて検出する工程を含み、ここで該変異は、LCS6の4位におけるウラシル(U)またはチミン(T)のグアニン(G)へのトランジションを含むSNPであり、ここで該変異の存在は、対照と比較して増加した生存率を示す、方法。
(項目20)
前記検出する工程が、マイクロサテライト不安定性(MSI)分析をさらに含む、上記項目のうちのいずれか一項に記載の方法。
(項目21)
前記結腸直腸がん(CRC)が、早期CRCである、上記項目のうちのいずれか一項に記載の方法。
(項目22)
前記結腸直腸がん(CRC)が、1期または2期のCRCである、上記項目のうちのいずれか一項に記載の方法。
(項目23)
前記対照が、KRASバリアントを保有しない、上記項目のうちのいずれか一項に記載の方法。
(項目24)
前記対照が、KRAS遺伝子において第二の変異を有する、上記項目のうちのいずれか一項に記載の方法。
(項目25)
前記被験体または患者が、KRAS遺伝子において第二の変異を有する、上記項目のうちのいずれか一項に記載の方法。
(項目26)
前記被験体または対照が、BRAF遺伝子において1つまたはそれより多くの変異を保有する、上記項目のうちのいずれか一項に記載の方法。
(項目27)
前記被験体または対照が、過剰メチル化RASSF1Aプロモーターを有する、上記項目のうちのいずれか一項に記載の方法。
(項目28)
前記生存率が、全生存率、5年生存率、または1年生存率である、上記項目のうちのいずれか一項に記載の方法。
(項目29)
モノクローナル抗体単剤療法に対するがん細胞の応答を予測する方法であって、ヒトKRASのlet−7相補部位LCS6における変異を、患者サンプルにおいて検出する工程を含み、ここで該変異は、LCS6の4位におけるウラシル(U)またはチミン(T)のグアニン(G)へのトランジションを含むSNPであり、そしてここで、該変異の存在は、モノクローナル抗体単剤療法に対する感受性を示す、方法。
(項目30)
前記がん細胞が、結腸直腸がん(CRC)細胞である、上記項目のうちのいずれか一項に記載の方法。
(項目31)
前記がん細胞が、インビトロまたはエクスビボで評価される、上記項目のうちのいずれか一項に記載の方法。
(項目32)
前記モノクローナル抗体単剤療法がセツキシマブである、上記項目のうちのいずれか一項に記載の方法。
(項目33)
化学療法とモノクローナル抗体療法との組み合わせに対するがん細胞の応答を予測する方法であって、ヒトKRASのlet−7相補部位LCS6における変異を、患者サンプルにおいて検出する工程を含み、ここで該変異は、LCS6の4位におけるウラシル(U)またはチミン(T)のグアニン(G)へのトランジションを含むSNPであり、そしてここで、該変異の存在は、該組み合わせに対する抵抗性を示す、方法。
(項目34)
前記がん細胞が、結腸直腸がん(CRC)細胞である、上記項目のうちのいずれか一項に記載の方法。
(項目35)
前記がん細胞が、インビトロまたはエクスビボで評価される、上記項目のうちのいずれか一項に記載の方法。
(項目36)
モノクローナル抗体単剤療法がセツキシマブである、上記項目のうちのいずれか一項に記載の方法。
(項目37)
前記化学療法が、細胞毒性薬剤である、上記項目のうちのいずれか一項に記載の方法。
(項目38)
前記細胞毒性薬剤がイリノテカンである、上記項目のうちのいずれか一項に記載の方法。
(項目39)
腫瘍の血管形成のリスクの増加を予測する方法であって、
(a)ヒトKRASのlet−7相補部位LCS6における変異を、第一の患者サンプルにおいて検出する工程であって、ここで該変異は、LCS6の4位におけるウラシル(U)またはチミン(T)のグアニン(G)へのトランジションを含むSNPである、工程、および
(b)miR−23およびmiR−27からなる群から選択されるmiRNAの発現レベルを、第二の患者サンプルにおいて決定する工程を含み、
ここで、(a)における該変異の存在、および対照と比較しての(b)におけるmiRNAの発現レベルの上昇は、抗血管新生遺伝子の転写サイレンシングを示し、それにより該腫瘍の血管形成のリスク増加を予測する、
方法。
(項目40)
前記抗血管新生遺伝子がSprouty2またはSema6Aである、上記項目のうちのいずれか一項に記載の方法。
(項目41)
前記腫瘍が、AIDS関連のがん、乳がん、消化管/胃腸管のがん、肛門がん、虫垂がん、胆管がん、結腸がん、結腸直腸がん、食道がん、胆嚢がん、ランゲルハンス島細胞腫瘍、膵神経内分泌腫瘍、肝がん、膵がん、直腸がん、小腸がん、胃がん、内分泌系がん、副腎皮質癌腫、副甲状腺がん、褐色細胞腫、下垂体腫瘍、甲状腺がん、眼のがん、眼内黒色腫、網膜芽細胞腫、膀胱がん、腎臓(腎細胞)がん、陰茎がん、前立腺がん、腎盂および尿管の移行上皮がん、精巣がん、尿道がん、ウィルムス腫瘍、他の小児腎臓腫瘍、胚細胞がん、中枢神経系がん、頭蓋外胚細胞腫瘍、性腺外胚細胞腫瘍、卵巣胚細胞腫瘍、婦人科がん、子宮頸がん、子宮内膜がん、妊娠性栄養膜腫瘍、卵巣上皮がん、子宮肉腫、膣がん、外陰がん、頭頸部がん、下咽頭がん、喉頭がん、口唇および口腔がん、原発不明転移性扁平頸部がん、口のがん、鼻咽頭がん、口峡がん、副鼻腔および鼻腔がん、咽頭がん、唾液腺がん、喉のがん、筋骨格がん、骨がん、ユーイング肉腫、消化管間質腫瘍(GIST)、骨肉腫、骨の悪性線維性組織球腫、横紋筋肉腫、軟部肉腫、子宮肉腫、神経がん、脳のがん、星細胞腫、脳幹グリオーマ、中枢神経系非定型奇形腫様/ラブドイド腫瘍、中枢神経系胎児性腫瘍、中枢神経系胚細胞腫瘍、頭蓋咽頭腫、上衣腫、髄芽腫、脊髄腫瘍、テント上原始神経外胚葉性腫瘍および松果体芽細胞腫、神経芽細胞腫、呼吸器がん、胸部がん、非小細胞肺がん、小細胞肺がん、悪性中皮腫、胸腺腫、胸腺癌腫、皮膚がん、カポジ肉腫、黒色腫、またはメルケル細胞癌腫由来のがん細胞を含む、上記項目のうちのいずれか一項に記載の方法。
(項目42)
前記腫瘍が転移性である、上記項目のうちのいずれか一項に記載の方法。
(項目43)
低酸素条件下におけるがん細胞の増加した生存または増殖を予測する方法であって、
(a)ヒトKRASのlet−7相補部位LCS6における変異を、第一の患者サンプルにおいて検出する工程であって、ここで該変異は、LCS6の4位におけるウラシル(U)またはチミン(T)のグアニン(G)へのトランジションを含むSNPである、工程、および
(b)miR−210 miRNAの発現レベルを、第二の患者サンプルにおいて決定する工程を含み、
ここで、(a)における該変異の存在、および対照と比較しての(b)における該miRNAの発現レベルの上昇は、低酸素条件下における該がん細胞の増加した生存または増殖を予測することを含む、
方法。
(項目44)
前記がん細胞が、AIDS関連のがん、乳がん、消化管/胃腸管のがん、肛門がん、虫垂がん、胆管がん、結腸がん、結腸直腸がん、食道がん、胆嚢がん、ランゲルハンス島細胞腫瘍、膵神経内分泌腫瘍、肝がん、膵がん、直腸がん、小腸がん、胃がん、内分泌系がん、副腎皮質癌腫、副甲状腺がん、褐色細胞腫、下垂体腫瘍、甲状腺がん、眼のがん、眼内黒色腫、網膜芽細胞腫、膀胱がん、腎臓(腎細胞)がん、陰茎がん、前立腺がん、腎盂および尿管の移行上皮がん、精巣がん、尿道がん、ウィルムス腫瘍、他の小児腎臓腫瘍、胚細胞がん、中枢神経系がん、頭蓋外胚細胞腫瘍、性腺外胚細胞腫瘍、卵巣胚細胞腫瘍、婦人科がん、子宮頸がん、子宮内膜がん、妊娠性栄養膜腫瘍、卵巣上皮がん、子宮肉腫、膣がん、外陰がん、頭頸部がん、下咽頭がん、喉頭がん、口唇および口腔がん、原発不明転移性扁平頸部がん、口のがん、鼻咽頭がん、口峡がん、副鼻腔および鼻腔がん、咽頭がん、唾液腺がん、喉のがん、筋骨格がん、骨がん、ユーイング肉腫、消化管間質腫瘍(GIST)、骨肉腫、骨の悪性線維性組織球腫、横紋筋肉腫、軟部肉腫、子宮肉腫、神経がん、脳のがん、星細胞腫、脳幹グリオーマ、中枢神経系非定型奇形腫様/ラブドイド腫瘍、中枢神経系胎児性腫瘍、中枢神経系胚細胞腫瘍、頭蓋咽頭腫、上衣腫、髄芽腫、脊髄腫瘍、テント上原始神経外胚葉性腫瘍および松果体芽細胞腫、神経芽細胞腫、呼吸器がん、胸部がん、非小細胞肺がん、小細胞肺がん、悪性中皮腫、胸腺腫、胸腺癌腫、皮膚がん、カポジ肉腫、黒色腫、またはメルケル細胞癌腫に由来する、上記項目のうちのいずれか一項に記載の方法。
(項目45)
がん細胞の増加した生存または増殖を予測する方法であって、
(a)ヒトKRASのlet−7相補部位LCS6における変異を、第一の患者サンプルにおいて検出する工程であって、ここで該変異は、LCS6の4位におけるウラシル(U)またはチミン(T)のグアニン(G)へのトランジションを含むSNPである、工程、および
(b)腫瘍抑制遺伝子のプロモーターのメチル化状態を、第二の患者サンプルにおいて決定する工程を含み、
ここで、(a)における該変異の存在、および対照と比較しての(b)プロモーターのメチル化の増加は、該がん細胞の増加した生存または増殖を予測することを含む、
方法。
(項目46)
前記腫瘍抑制遺伝子がNotch1である、上記項目のうちのいずれか一項に記載の方法。
(項目47)
前記がん細胞が、AIDS関連のがん、乳がん、消化管/胃腸管のがん、肛門がん、虫垂がん、胆管がん、結腸がん、結腸直腸がん、食道がん、胆嚢がん、ランゲルハンス島細胞腫瘍、膵神経内分泌腫瘍、肝がん、膵がん、直腸がん、小腸がん、胃がん、内分泌系がん、副腎皮質癌腫、副甲状腺がん、褐色細胞腫、下垂体腫瘍、甲状腺がん、眼のがん、眼内黒色腫、網膜芽細胞腫、膀胱がん、腎臓(腎細胞)がん、陰茎がん、前立腺がん、腎盂および尿管の移行上皮がん、精巣がん、尿道がん、ウィルムス腫瘍、他の小児腎臓腫瘍、胚細胞がん、中枢神経系がん、頭蓋外胚細胞腫瘍、性腺外胚細胞腫瘍、卵巣胚細胞腫瘍、婦人科がん、子宮頸がん、子宮内膜がん、妊娠性栄養膜腫瘍、卵巣上皮がん、子宮肉腫、膣がん、外陰がん、頭頸部がん、下咽頭がん、喉頭がん、口唇および口腔がん、原発不明転移性扁平頸部がん、口のがん、鼻咽頭がん、口峡がん、副鼻腔および鼻腔がん、咽頭がん、唾液腺がん、喉のがん、筋骨格がん、骨がん、ユーイング肉腫、消化管間質腫瘍(GIST)、骨肉腫、骨の悪性線維性組織球腫、横紋筋肉腫、軟部肉腫、子宮肉腫、神経がん、脳のがん、星細胞腫、脳幹グリオーマ、中枢神経系非定型奇形腫様/ラブドイド腫瘍、中枢神経系胎児性腫瘍、中枢神経系胚細胞腫瘍、頭蓋咽頭腫、上衣腫、髄芽腫、脊髄腫瘍、テント上原始神経外胚葉性腫瘍および松果体芽細胞腫、神経芽細胞腫、呼吸器がん、胸部がん、非小細胞肺がん、小細胞肺がん、悪性中皮腫、胸腺腫、胸腺癌腫、皮膚がん、カポジ肉腫、黒色腫、またはメルケル細胞癌腫に由来する、上記項目のうちのいずれか一項に記載の方法。
(項目48)
生存が、腫瘍形成の可能性を維持することを含む、上記項目のうちのいずれか一項に記載の方法。
(項目49)
前記がん細胞が、がん幹細胞である、上記項目のうちのいずれか一項に記載の方法。
(項目1A)
ヒトKRASのlet−7相補部位LCS6における変異を、エストロゲン受容体(ER)およびプロゲステロン受容体(PR)陰性(ER/PR陰性)乳がんを発生するリスクがある被験体または患者の同定の指標とするための方法であって、ここでヒトKRASのlet−7相補部位LCS6における該変異は、患者サンプルにおいて検出され、ここで該変異は、LCS6の4位におけるウラシル(U)またはチミン(T)のグアニン(G)へのトランジションを含むSNPであり、そしてここで、該変異の存在は、該被験体においてER/PR陰性乳がんを発生する増加したリスクを示す、方法。
(項目2A)
ヒトKRASのlet−7相補部位LCS6における変異を、乳がんを発生するリスクがある被験体または患者におけるエストロゲン受容体(ER)およびプロゲステロン受容体(PR)陰性(ER/PR陰性)乳がんの発生の発症を予測する指標とするための方法であって、ここでヒトKRASのlet−7相補部位LCS6における該変異は、患者サンプルにおいて検出され、ここで該変異は、LCS6の4位におけるウラシル(U)またはチミン(T)のグアニン(G)へのトランジションを含むSNPであり、そしてここで、該変異の存在は、ER/PR陰性乳がんの発生のより早期な発症を示す、方法。
(項目3A)
前記ER/PR陰性乳がんが、HER2に対しても陰性であり、従って、三重陰性乳がん(TNBC)である、上記項目のうちのいずれか一項に記載の方法。
(項目4A)
前記三重陰性乳がん(TNBC)が、基底型腫瘍または管腔型腫瘍である、上記項目のうちのいずれか一項に記載の方法。
(項目5A)
前記三重陰性乳がん(TNBC)が、上皮増殖因子受容体(EGFR)またはサイトケラチン5/6(CK5/6)遺伝子によってコードされる転写産物またはタンパク質を発現する基底型腫瘍である、上記項目のうちのいずれか一項に記載の方法。
(項目6A)
前記乳がんが、乳がん1(BRCA1)遺伝子の低発現または発現陰性によってさらに特徴付けられる、上記項目のうちのいずれか一項に記載の方法。
(項目7A)
前記被験体または患者が、閉経期前である、上記項目のうちのいずれか一項に記載の方法。
(項目8A)
前記被験体または患者が、51歳またはそれより若い、上記項目のうちのいずれか一項に記載の方法。
(項目9A)
ヒトKRASのlet−7相補部位LCS6における変異を、上皮性卵巣がん(EOC)を有する被験体または患者の予後判定の指標とするための方法であって、ここでヒトKRASのlet−7相補部位LCS6における該変異は、患者サンプルにおいて検出され、ここで該変異は、LCS6の4位におけるウラシル(U)またはチミン(T)のグアニン(G)へのトランジションを含むSNPであり、そしてここで、該変異の存在は、対照と比較して低下した生存率を示す、方法。
(項目10A)
前記被験体または患者が、閉経後、52歳、または少なくとも52歳である、上記項目のうちのいずれか一項に記載の方法。
(項目11A)
前記対照が前記変異を保有しない、上記項目のうちのいずれか一項に記載の方法。
(項目12A)
前記生存率が、全生存率、5年生存率、または1年生存率である、上記項目のうちのいずれか一項に記載の方法。
(項目13A)
ヒトKRASのlet−7相補部位LCS6における変異を、プラチナベースの化学療法に対する上皮性卵巣がん(EOC)細胞の応答の予測の指標とするための方法であって、ここでヒトKRASのlet−7相補部位LCS6における該変異は、患者サンプルにおいて検出され、ここで該変異は、LCS6の4位におけるウラシル(U)またはチミン(T)のグアニン(G)へのトランジションを含むSNPであり、ここで該変異の存在は、プラチナベースの化学療法に対する抵抗性を示す、方法。
(項目14A)
前記EOC細胞が、インビトロまたはエクスビボで評価される、上記項目のうちのいずれか一項に記載の方法。
(項目15A)
前記EOC細胞が、閉経後、52歳、または少なくとも52歳である被験体からエクスビボで評価される、上記項目のうちのいずれか一項に記載の方法。
(項目16A)
前記EOC細胞がインビトロで評価され、そしてここで、該EOC細胞は、BG1、CAOV3、もしくはIGR−OV1細胞系から単離されるか、繁殖されるか、または誘導される、上記項目のうちのいずれか一項に記載の方法。
(項目17A)
前記プラチナベースの化学療法が、カルボプラチンまたはパクリタキセルである、上記項目のうちのいずれか一項に記載の方法。
(項目18A)
前記プラチナベースの化学療法が、アジュバント療法である、上記項目のうちのいずれか一項に記載の方法。
(項目19A)
ヒトKRASのlet−7相補部位LCS6における変異を、結腸直腸がん(CRC)を有する被験体または患者の予後判定の指標とするための方法であって、ここでヒトKRASのlet−7相補部位LCS6における該変異は、患者サンプルにおいて検出され、ここで該変異は、LCS6の4位におけるウラシル(U)またはチミン(T)のグアニン(G)へのトランジションを含むSNPであり、ここで該変異の存在は、対照と比較して増加した生存率を示す、方法。
(項目20A)
前記検出が、マイクロサテライト不安定性(MSI)分析をさらに含む、上記項目のうちのいずれか一項に記載の方法。
(項目21A)
前記結腸直腸がん(CRC)が、早期CRCである、上記項目のうちのいずれか一項に記載の方法。
(項目22A)
前記結腸直腸がん(CRC)が、1期または2期のCRCである、上記項目のうちのいずれか一項に記載の方法。
(項目23A)
前記対照が、KRASバリアントを保有しない、上記項目のうちのいずれか一項に記載の方法。
(項目24A)
前記対照が、KRAS遺伝子において第二の変異を有する、上記項目のうちのいずれか一項に記載の方法。
(項目25A)
前記被験体または患者が、KRAS遺伝子において第二の変異を有する、上記項目のうちのいずれか一項に記載の方法。
(項目26A)
前記被験体または対照が、BRAF遺伝子において1つまたはそれより多くの変異を保有する、上記項目のうちのいずれか一項に記載の方法。
(項目27A)
前記被験体または対照が、過剰メチル化RASSF1Aプロモーターを有する、上記項目のうちのいずれか一項に記載の方法。
(項目28A)
前記生存率が、全生存率、5年生存率、または1年生存率である、上記項目のうちのいずれか一項に記載の方法。
(項目29A)
ヒトKRASのlet−7相補部位LCS6における変異を、モノクローナル抗体単剤療法に対するがん細胞の応答を予測する指標とするための方法であって、ここでヒトKRASのlet−7相補部位LCS6における該変異は、患者サンプルにおいて検出され、ここで該変異は、LCS6の4位におけるウラシル(U)またはチミン(T)のグアニン(G)へのトランジションを含むSNPであり、そしてここで、該変異の存在は、モノクローナル抗体単剤療法に対する感受性を示す、方法。
(項目30A)
前記がん細胞が、結腸直腸がん(CRC)細胞である、上記項目のうちのいずれか一項に記載の方法。
(項目31A)
前記がん細胞が、インビトロまたはエクスビボで評価される、上記項目のうちのいずれか一項に記載の方法。
(項目32A)
前記モノクローナル抗体単剤療法がセツキシマブである、上記項目のうちのいずれか一項に記載の方法。
(項目33A)
ヒトKRASのlet−7相補部位LCS6における変異を、化学療法とモノクローナル抗体療法との組み合わせに対するがん細胞の応答を予測する指標とするための方法であって、ここでヒトKRASのlet−7相補部位LCS6における該変異は、患者サンプルにおいて検出され、ここで該変異は、LCS6の4位におけるウラシル(U)またはチミン(T)のグアニン(G)へのトランジションを含むSNPであり、そしてここで、該変異の存在は、該組み合わせに対する抵抗性を示す、方法。
(項目34A)
前記がん細胞が、結腸直腸がん(CRC)細胞である、上記項目のうちのいずれか一項に記載の方法。
(項目35A)
前記がん細胞が、インビトロまたはエクスビボで評価される、上記項目のうちのいずれか一項に記載の方法。
(項目36A)
モノクローナル抗体単剤療法がセツキシマブである、上記項目のうちのいずれか一項に記載の方法。
(項目37A)
前記化学療法が、細胞毒性薬剤である、上記項目のうちのいずれか一項に記載の方法。
(項目38A)
前記細胞毒性薬剤がイリノテカンである、上記項目のうちのいずれか一項に記載の方法。
(項目39A)
ヒトKRASのlet−7相補部位LCS6における変異、ならびにmiR−23およびmiR−27からなる群から選択されるmiRNAの発現レベルを、腫瘍の血管形成のリスク増加の予測の指標とするための方法であって、ここで
(a)ヒトKRASのlet−7相補部位LCS6における該変異が、第一の患者サンプルにおいて検出され、ここで該変異は、LCS6の4位におけるウラシル(U)またはチミン(T)のグアニン(G)へのトランジションを含むSNPであり、そして
(b)miR−23およびmiR−27からなる群から選択されるmiRNAの発現レベルが、第二の患者サンプルにおいて決定され、
ここで、(a)における該変異の存在、および対照と比較しての(b)におけるmiRNAの発現レベルの上昇は、抗血管新生遺伝子の転写サイレンシングを示し、それにより該腫瘍の血管形成のリスク増加が予測される、
方法。
(項目40A)
前記抗血管新生遺伝子がSprouty2またはSema6Aである、上記項目のうちのいずれか一項に記載の方法。
(項目41A)
前記腫瘍が、AIDS関連のがん、乳がん、消化管/胃腸管のがん、肛門がん、虫垂がん、胆管がん、結腸がん、結腸直腸がん、食道がん、胆嚢がん、ランゲルハンス島細胞腫瘍、膵神経内分泌腫瘍、肝がん、膵がん、直腸がん、小腸がん、胃がん、内分泌系がん、副腎皮質癌腫、副甲状腺がん、褐色細胞腫、下垂体腫瘍、甲状腺がん、眼のがん、眼内黒色腫、網膜芽細胞腫、膀胱がん、腎臓(腎細胞)がん、陰茎がん、前立腺がん、腎盂および尿管の移行上皮がん、精巣がん、尿道がん、ウィルムス腫瘍、他の小児腎臓腫瘍、胚細胞がん、中枢神経系がん、頭蓋外胚細胞腫瘍、性腺外胚細胞腫瘍、卵巣胚細胞腫瘍、婦人科がん、子宮頸がん、子宮内膜がん、妊娠性栄養膜腫瘍、卵巣上皮がん、子宮肉腫、膣がん、外陰がん、頭頸部がん、下咽頭がん、喉頭がん、口唇および口腔がん、原発不明転移性扁平頸部がん、口のがん、鼻咽頭がん、口峡がん、副鼻腔および鼻腔がん、咽頭がん、唾液腺がん、喉のがん、筋骨格がん、骨がん、ユーイング肉腫、消化管間質腫瘍(GIST)、骨肉腫、骨の悪性線維性組織球腫、横紋筋肉腫、軟部肉腫、子宮肉腫、神経がん、脳のがん、星細胞腫、脳幹グリオーマ、中枢神経系非定型奇形腫様/ラブドイド腫瘍、中枢神経系胎児性腫瘍、中枢神経系胚細胞腫瘍、頭蓋咽頭腫、上衣腫、髄芽腫、脊髄腫瘍、テント上原始神経外胚葉性腫瘍および松果体芽細胞腫、神経芽細胞腫、呼吸器がん、胸部がん、非小細胞肺がん、小細胞肺がん、悪性中皮腫、胸腺腫、胸腺癌腫、皮膚がん、カポジ肉腫、黒色腫、またはメルケル細胞癌腫由来のがん細胞を含む、上記項目のうちのいずれか一項に記載の方法。
(項目42A)
前記腫瘍が転移性である、上記項目のうちのいずれか一項に記載の方法。
(項目43A)
ヒトKRASのlet−7相補部位LCS6における変異、およびmiR−210 miRNAの発現レベルを、低酸素条件下におけるがん細胞の増加した生存または増殖の予測の指標とするための方法であって、
(a)ヒトKRASのlet−7相補部位LCS6における該変異が、第一の患者サンプルにおいて検出され、ここで該変異は、LCS6の4位におけるウラシル(U)またはチミン(T)のグアニン(G)へのトランジションを含むSNPであり、そして
(b)miR−210 miRNAの発現レベルが、第二の患者サンプルにおいて決定され、
ここで、(a)における該変異の存在、および対照と比較しての(b)における該miRNAの発現レベルの上昇は、低酸素条件下における該がん細胞の増加した生存または増殖を示すことを含む、
方法。
(項目44A)
前記がん細胞が、AIDS関連のがん、乳がん、消化管/胃腸管のがん、肛門がん、虫垂がん、胆管がん、結腸がん、結腸直腸がん、食道がん、胆嚢がん、ランゲルハンス島細胞腫瘍、膵神経内分泌腫瘍、肝がん、膵がん、直腸がん、小腸がん、胃がん、内分泌系がん、副腎皮質癌腫、副甲状腺がん、褐色細胞腫、下垂体腫瘍、甲状腺がん、眼のがん、眼内黒色腫、網膜芽細胞腫、膀胱がん、腎臓(腎細胞)がん、陰茎がん、前立腺がん、腎盂および尿管の移行上皮がん、精巣がん、尿道がん、ウィルムス腫瘍、他の小児腎臓腫瘍、胚細胞がん、中枢神経系がん、頭蓋外胚細胞腫瘍、性腺外胚細胞腫瘍、卵巣胚細胞腫瘍、婦人科がん、子宮頸がん、子宮内膜がん、妊娠性栄養膜腫瘍、卵巣上皮がん、子宮肉腫、膣がん、外陰がん、頭頸部がん、下咽頭がん、喉頭がん、口唇および口腔がん、原発不明転移性扁平頸部がん、口のがん、鼻咽頭がん、口峡がん、副鼻腔および鼻腔がん、咽頭がん、唾液腺がん、喉のがん、筋骨格がん、骨がん、ユーイング肉腫、消化管間質腫瘍(GIST)、骨肉腫、骨の悪性線維性組織球腫、横紋筋肉腫、軟部肉腫、子宮肉腫、神経がん、脳のがん、星細胞腫、脳幹グリオーマ、中枢神経系非定型奇形腫様/ラブドイド腫瘍、中枢神経系胎児性腫瘍、中枢神経系胚細胞腫瘍、頭蓋咽頭腫、上衣腫、髄芽腫、脊髄腫瘍、テント上原始神経外胚葉性腫瘍および松果体芽細胞腫、神経芽細胞腫、呼吸器がん、胸部がん、非小細胞肺がん、小細胞肺がん、悪性中皮腫、胸腺腫、胸腺癌腫、皮膚がん、カポジ肉腫、黒色腫、またはメルケル細胞癌腫に由来する、上記項目のうちのいずれか一項に記載の方法。
(項目45A)
ヒトKRASのlet−7相補部位LCS6における変異、および腫瘍抑制遺伝子のプロモーターのメチル化状態を、がん細胞の増加した生存または増殖の予測の指標とするための方法であって、
(a)ヒトKRASのlet−7相補部位LCS6における該変異が、第一の患者サンプルにおいて検出され、ここで該変異は、LCS6の4位におけるウラシル(U)またはチミン(T)のグアニン(G)へのトランジションを含むSNPであり、そして
(b)腫瘍抑制遺伝子のプロモーターのメチル化状態が、第二の患者サンプルにおいて決定され、
ここで、(a)における該変異の存在、および対照と比較しての(b)プロモーターのメチル化の増加は、該がん細胞の増加した生存または増殖を示すことを含む、
方法。
(項目46A)
前記腫瘍抑制遺伝子がNotch1である、上記項目のうちのいずれか一項に記載の方法。
(項目47A)
前記がん細胞が、AIDS関連のがん、乳がん、消化管/胃腸管のがん、肛門がん、虫垂がん、胆管がん、結腸がん、結腸直腸がん、食道がん、胆嚢がん、ランゲルハンス島細胞腫瘍、膵神経内分泌腫瘍、肝がん、膵がん、直腸がん、小腸がん、胃がん、内分泌系がん、副腎皮質癌腫、副甲状腺がん、褐色細胞腫、下垂体腫瘍、甲状腺がん、眼のがん、眼内黒色腫、網膜芽細胞腫、膀胱がん、腎臓(腎細胞)がん、陰茎がん、前立腺がん、腎盂および尿管の移行上皮がん、精巣がん、尿道がん、ウィルムス腫瘍、他の小児腎臓腫瘍、胚細胞がん、中枢神経系がん、頭蓋外胚細胞腫瘍、性腺外胚細胞腫瘍、卵巣胚細胞腫瘍、婦人科がん、子宮頸がん、子宮内膜がん、妊娠性栄養膜腫瘍、卵巣上皮がん、子宮肉腫、膣がん、外陰がん、頭頸部がん、下咽頭がん、喉頭がん、口唇および口腔がん、原発不明転移性扁平頸部がん、口のがん、鼻咽頭がん、口峡がん、副鼻腔および鼻腔がん、咽頭がん、唾液腺がん、喉のがん、筋骨格がん、骨がん、ユーイング肉腫、消化管間質腫瘍(GIST)、骨肉腫、骨の悪性線維性組織球腫、横紋筋肉腫、軟部肉腫、子宮肉腫、神経がん、脳のがん、星細胞腫、脳幹グリオーマ、中枢神経系非定型奇形腫様/ラブドイド腫瘍、中枢神経系胎児性腫瘍、中枢神経系胚細胞腫瘍、頭蓋咽頭腫、上衣腫、髄芽腫、脊髄腫瘍、テント上原始神経外胚葉性腫瘍および松果体芽細胞腫、神経芽細胞腫、呼吸器がん、胸部がん、非小細胞肺がん、小細胞肺がん、悪性中皮腫、胸腺腫、胸腺癌腫、皮膚がん、カポジ肉腫、黒色腫、またはメルケル細胞癌腫に由来する、上記項目のうちのいずれか一項に記載の方法。
(項目48A)
生存が、腫瘍形成の可能性を維持することを含む、上記項目のうちのいずれか一項に記載の方法。
(項目49A)
前記がん細胞が、がん幹細胞である、上記項目のうちのいずれか一項に記載の方法。
(摘要)
本開示は、KRASバリアントとして公知である、KRAS癌遺伝子におけるSNPの存在または不存在を決定することによって、がんを発生するリスクがある被験体を同定するための方法、がんの発症を予測するための方法、および化学療法/処置に対する被験体の応答を予測するための方法を提供する。
図1A〜Bは、研究群2からの全ての女性(A)および閉経期前(51歳以下)の女性(B)における乳がんサブタイプにおけるKRASバリアントの分布を示す一対のグラフである。データは、乳がんサブタイプを有すると診断された症例の数/KRASバリアントについて試験された患者の数である。:全ての他のサブタイプに対してp=0.044。†:全ての他のサブタイプに対してp=0.033。 図2A〜Bは、三重陰性乳がんのKRASバリアント陽性症例およびKRASバリアント陰性症例におけるBRCA1遺伝子発現を示す一対の箱ひげ図である。Y軸は任意単位である。(A)BRCA1プローブ1、p=0.06。(B)BRCA1プローブ2、p=0.01。 図3は、三重陰性乳がんのKRASバリアント陰性症例と比較してKRASバリアント陽性症例におけるlet−7ファミリーのマイクロRNAの発現を示す一連の箱ひげ図である。Y軸は任意単位である。 図4は、LIMMAモデルによって分析された、三重陰性乳がん患者において、識別的発現をするKRASバリアント遺伝子を示すヒートマップである。50個の最も顕著な遺伝子が、クラスター化のために使用された;クラスター化についてp<0.0001。KRASバリアントサンプルは、濃い灰色であり、野生型サンプルは、薄い灰色である。白色は、未知のKRASバリアント状態を有する。 図5は、ER/PR−閉経期前乳がん患者と比較してER/PR+閉経期前乳がん患者におけるKRASバリアントを示すグラフである。 図6は、三重陰性乳がん患者の腫瘍におけるKRASバリアントに関連する遺伝子発現シグネチャーを示す一連の箱グラフ(box graph)である。 図7は、KRASバリアントが、52歳を超える年齢の閉経後の卵巣がん患者についての有意により悪い全生存率を予測することを示すグラフである。KRASバリアントを有する卵巣がん患者(n=59)についての全生存率とKRASバリアントを有さない卵巣がん患者(n=220)についての全生存率とが、カプラン−マイヤー解析を用いて比較された。ログランク検定による転帰は、52歳を超える年齢のKRASバリアント陽性EOC患者について、有意に、より悪い(P=0.0399)。 図8は、KRASバリアントがネオアジュバント化学療法後の最適未満の腫瘍縮小(suboptimal debulking)に関連することを示すグラフである。ネオアジュバント化学療法後の外科的腫瘍縮小は、KRASバリアントを有する(n=26)かまたは有さない(n=90)卵巣がん患者(n=116)において比較される。X分析によれば、KRASバリアント患者は、非バリアント患者よりも大きな残存疾患(RD:residual disease)があって、最適未満の腫瘍縮小をされる可能性が有意に高い(P=0.044)。 図9Aは、KV EOCサンプルにおいて、非バリアントサンプルにおいてよりも高いスコアを示す、KRASバリアント(KV)三重陰性乳房腫瘍における50個の識別的発現の遺伝子候補のシグネチャー(TNBC KRASシグネチャー)である。図9Bは、KV EOC腫瘍において上方調節される、KRAS依存腫瘍(KRAS−addicted tumor)(KRAS依存シグネチャー(KRAS Addiction Signature))に関連する遺伝子のシグネチャーである。図9Cは、KV EOC腫瘍における上位20遺伝子の識別的発現のシグネチャーであり、カルボプラチン感受性EOC細胞およびカルボプラチン抵抗性EOC細胞における識別的遺伝子発現の再分析を反映している。図9Dは、KV(濃い灰色)腫瘍サンプルと非バリアント(薄い灰色)腫瘍サンプルとの間での、上位の識別的に発現される遺伝子のヒートマップである。色の手引きは、青色(値0〜5)〜白色(約5)、および白色〜赤色(5〜10)のスペクトルを示す。このヒートマップのカラー版については、Ratner ES,et al.Oncogene(5 December 2011),1−8(その内容は、本明細書中で参考として援用される)を参照のこと。 図10は、KRASバリアントが、細胞系におけるカルボプラチンおよびカルボプラチン/タキソール化学療法に対する抵抗性に関連することを示すグラフである。KRASバリアントを有する細胞系(BG1)およびKRASバリアントを有さない細胞系(CAOV3)が化学療法を用いて処理された。そして、半数阻害濃度(IC50)は、Y軸に示され、化学療法薬剤はX軸に示される。より高いIC50は、試験された化学療法薬剤に対する抵抗性を表す。BG1=KRASバリアント/BRCA野生型細胞系;CAOV3=非バリアント/BRCA野生型細胞系;IGR−OV1=KRASバリアント/BRCA1変異体細胞系。エラーバーはRSEである。 図11Aは、非バリアント系CAOV3には影響を及ぼすことがなく、KRASバリアント系BG1においては細胞生存率が低減したことを示すグラフである(*P<0.001)。KRASバリアントを有する細胞系(BG1)およびKRASバリアントを有さない細胞系(CAOV3)は、選択的にバリアント対立遺伝子に結合するsiRNA/miRNAの組み合わせで処理された。図11Bは、CAOV3(左)には影響を及ぼすことがなく、細胞生存率の低減と一致してBG1(右)においてはKRASタンパク質発現が低減したことを示すグラフである。KRASバリアントを有する細胞系(BG1)およびKRASバリアントを有さない細胞系(CAOV3)は、選択的にバリアント対立遺伝子に結合するsiRNA/miRNAの組み合わせで処理された。異なるsiRNAsは、数字によって示される。 図12は、KRASバリアントを有する細胞系(BG−1およびIGROV1)が、非バリアント細胞系(CaOV3)と比較して、有意に、より低いレベルのlet−7bを有することを示すグラフである。統計的な解析は、一元配置Anovaおよびチューキーの多重比較検定を用いて行われた。 図13A〜Bは、KRASバリアント配列と非バリアント配列とのアラインメントを示す概略図である。パネルAは、KRASの非バリアント配列を示す。パネルBは、KRASバリアント配列を標的とする例示的なバリアントsiRNAオリゴを示す。両方のパネルにおいて、下線を引かれた配列は、let−7結合部位を示す。両方のパネルにおいて、四角で囲ったヌクレオチドは、野生型(非バリアント)ヌクレオチド(A)またはKRASバリアント一塩基多型(B)のいずれかを表す。siRNAは、それらの3’末端から開始して示される。 図14は、全てのがんの病期における、KRASバリアントでかつ原因特異的な生存率(cause−specific survival)についてのカプラン−マイヤー曲線である。 図15Aは、早期(I期およびII期)CRCにおける、KRASバリアントでかつ原因特異的な生存率についてのカプラン−マイヤー曲線である。図15Bは、III期CRCにおける、KRASバリアントでかつ原因特異的な生存率についてのカプラン−マイヤー曲線である。図15Cは、IV期CRCにおける、KRASバリアントでかつ原因特異的な生存率についてのカプラン−マイヤー曲線である。 図16Aは、早期(I期およびII期)における、KRASバリアントで、KRAS変異で、かつ原因特異的な生存率についてのカプラン−マイヤー曲線である、P=0.875。図16Bは、III期CRCにおける、KRASバリアントで、KRAS変異で、かつ原因特異的な生存率についてのカプラン−マイヤー曲線である。図16Cは、IV期CRCにおける、KRASバリアントで、KRAS変異で、かつ原因特異的な生存率についてのカプラン−マイヤー曲線である。 図17は、早期(I期およびII期)CRCにおける、KRASバリアントで、MSI状態で、かつ原因特異的な生存率についてのカプラン−マイヤー曲線である。 図18Aは、抗EGFR moAb単剤療法か、またはサルベージ(salvage)処置としての化学療法と組み合わせて処置された患者におけるKRAS LCS6遺伝子型状態に従ってメジアン無増悪生存率(progression free survival)を示すグラフである。 図18Bは、抗EGFR moAb単剤療法か、またはサルベージ処置としての化学療法と組み合わせて処置された患者におけるKRAS LCS6遺伝子型状態に従ってメジアン全生存率を示すグラフである。 図19Aは、サルベージ処置としての抗EGFR moAb単剤療法で処置された全ての患者におけるKRAS LCS6遺伝子型状態に従ってメジアン無増悪生存率を示すグラフである。 図19Bは、サルベージ処置としての抗EGFR moAbベースの組み合わせ化学療法で処置された全ての患者におけるKRAS LCS6遺伝子型状態に従ってメジアン無増悪生存率を示すグラフである。 図19Cは、全てのKRASバリアント保有者における療法のタイプに従ってメジアン無増悪生存率を示すグラフである。 図19Dは、全ての非KRASバリアント保有者における療法のタイプに従ってメジアン無増悪生存率を示すグラフである。 図20Aは、サルベージ処置としての抗EGFR moAb単剤療法で処置された二重(KRASおよびBRAF)野生型患者の集団におけるKRAS LCS6遺伝子型状態に従ってメジアン無増悪生存率を示すグラフである。 図20Bは、サルベージ処置としての抗EGFR moAbベースの組み合わせ化学療法で処置された二重(KRASおよびBRAF)野生型患者の集団におけるKRAS LCS6遺伝子型状態に従ってメジアン無増悪生存率を示すグラフである。 図20Cは、二重(KRASおよびBRAF)野生型KRASバリアント保有者における療法のタイプに従ってメジアン無増悪生存率を示すグラフである。 図20Dは、二重(KRASおよびBRAF)野生型非KRASバリアント保有者における療法のタイプに従ってメジアン無増悪生存率を示すグラフである。 図21Aは、サルベージ処置としての抗EGFR moAb単剤療法で処置された全ての患者におけるKRAS LCS6遺伝子型状態に従ってメジアン無増悪生存率を示すグラフである。 図21Bは、サルベージ処置としての抗EGFR moAbベースの組み合わせ化学療法で処置された全ての患者におけるKRAS LCS6遺伝子型状態に従ってメジアン全生存率を示すグラフである。 図21Cは、全てのKRASバリアント保有者における療法のタイプに従ってメジアン全生存率を示すグラフである。 図21Dは、全ての非KRASバリアント保有者における療法のタイプに従ってメジアン全生存率を示すグラフである。 図22Aは、サルベージ処置としての抗EGFR moAb単剤療法で処置された二重(KRASおよびBRAF)野生型患者の集団におけるKRAS LCS6遺伝子型状態に従ってメジアン全生存率を示すグラフである。 図22Bは、サルベージ処置としての抗EGFR moAbベースの組み合わせ化学療法で処置された二重(KRASおよびBRAF)野生型患者の集団におけるKRAS LCS6遺伝子型状態に従ってメジアン全生存率を示すグラフである。 図22Cは、二重(KRASおよびBRAF)野生型KRASバリアント保有者における療法のタイプに従ってメジアン全生存率を示すグラフである。 図22Dは、二重(KRASおよびBRAF)野生型非KRASバリアント保有者における療法のタイプに従ってメジアン全生存率を示すグラフである。 図23Aは、KRASおよびBRAF変異KRASバリアント保有者における療法のタイプに従ってメジアン無増悪生存率を示すグラフである。 図23Bは、KRASおよびBRAF変異非KRASバリアント保有者における療法のタイプに従ってメジアン無増悪生存率を示すグラフである。 図23Cは、KRASおよびBRAF変異KRASバリアント保有者における療法のタイプに従ってメジアン全生存率を示すグラフである。 図23Dは、KRASおよびBRAF変異非KRASバリアント保有者における療法のタイプに従ってメジアン全生存率を示すグラフである。 図24Aは、化学療法薬剤イリノテカンでの処置後の野生型KRASおよびKRASバリアントがん細胞における標準化(normalized)ルシフェラーゼ発現を示すグラフである。 図24Bは、がん細胞がイリノテカンで処置された場合のイリノテカン濃度の関数として抑制倍率(fold repression)(KRASバリアント/KRAS野生型として表される)を示すグラフである。
実施形態の説明
詳細な説明
がんに関連するKRAS癌遺伝子の3’UTRにおけるlet−7マイクロRNA相補部位における機能的なバリアント(rs61764370)は、以前に同定された(国際特許出願第PCT/US2008/065302号、その内容は、その全体が本明細書中で参考として援用される)。このバリアントとがん腫瘍生物学との関連性の調査報告は、本明細書に記載される。
乳がん
乳房腫瘍は、ER(エストロゲン受容体)および/またはPR(プロゲステロン受容体)陽性、増幅されたHER2(Her2/neu/ERBB2)、および三重陰性腫瘍(すなわち、ER/PR陰性およびHER2陰性)に分類される(Sorlie T,et al.Proc Natl Acad Sci USA 2001;98:10869−74)。遺伝子発現および受容体のプロファイリングにより、乳がんは以下の4つの生物学的サブグループにさらに分類される:管腔型A(ERおよび/またはPR受容体陽性、HER2陰性)腫瘍、管腔型B(ERおよび/またはPR受容体陽性、HER2陽性)、HER2陽性(HER2陽性、ER/PR陰性)、および基底型(三重陰性乳がん(TNBC)とも称される、ER/PR/HER2陰性)腫瘍(Sorlie T,et al.Proc Natl Acad Sci USA 2001;98:10869−74)。
三重陰性乳がん(TNBC)は、他のサブタイプと比較して原因特異的な5年生存率がより悪い、最も侵襲性の高いサブクラスである(Haffty BG et al.J Clin Oncol 2006;24:5652−57)。最近の転写プロファイリング研究は、TNBC内にさらなる異質性が存在すること、およびこれらの腫瘍が、2つの大まかなサブグループ(EGFRまたはサイトケラチン(CK)5/6を発現するER/PR/HER2(三重)陰性腫瘍(従って、「基底型様」と呼ばれる)、およびEGFRまたはCK5/6を発現しないER/PR/HER2(三重)陰性腫瘍)に類別され得ることを示唆する。基底型様三重陰性(TN)腫瘍はまた、非基底型形態よりも早期な年齢(すなわちより若い年齢)での発症およびBRCA1(乳がん1(BReast CAncer 1))の低発現によって特徴付けられる;基底型様表現型は、BRCA1変異の保有者の中では一般的である(Rakha EA and Ellis IO.Pathology 2009;41:40−47)。(ER陽性であり得る)異常な管腔型前駆細胞集団は、BRCA−1関連基底型腫瘍におけるトランスフォーメーションに対する標的である(Lim E,et al.Nat Med 2009;15:907−13)。予後判定の遺伝子発現マーカーは非常に多様であるが、いくつかのモジュール(例えば、DNA修復の欠陥、免疫応答のシグネチャー、または上皮から間葉への移行)は、一般的に、これらの腫瘍のサブセットについて言及される(Bild AH,et al.Breast Cancer Res 2009;11:R55)。これらの転写モジュールを操縦する物の同定は、特定および個別化された療法の発見のための1つのアプローチである。
三重陰性乳がん表現型と若い年齢での発症との関連性、および公知のリスクまたはリプロダクティブ因子との関連性の欠如(Yang XR,et al.Cancer Epidemiol Biomarkers Prev 2007;16:439−43)は、このがんの発生に対する遺伝的リスクが存在することを示唆する(Bauer KR et al.Cancer 2007;109:1721−28)。この開示の前には、このような増加したリスクの遺伝マーカーはほとんど存在しなかった。BRCA1変異は、三重陰性腫瘍にしばしば関連するが、これらの変異は稀であり、三重陰性乳がんを有する患者の10%〜15%のみを占め、民族背景および家族歴に依存する(Young SR,et al.BMC Cancer 2009;9:86;Nanda R,et al.JAMA 2005;294:1925−33)。
本明細書において提供される研究は、米国コネチカット州からの組織学的に確認された乳がんを有する415人の患者および457人の対照(研究群1)におけるKRASバリアントの度数分布、ならびに公知のエストロゲン受容体(ER)、プロゲステロン受容体(PR)、およびHER2状態を有する690人のアイルランド人女性および360人の対照(研究群2)におけるこのバリアントと乳がんサブタイプとの関連性を決定した。研究群1および2についてのデータは、三重陰性乳がんを有する140人の女性および113人の対照のコホートについてプールされ、KRASバリアントと三重陰性乳がんリスクとの関連性、ならびに三重陰性乳がんを有する患者におけるゲノム全体のmRNAおよび特定のmiRNA発現を評価した。
研究群1におけるKRASバリアントの度数分布は、遺伝子型が判定された全ての個体の間では異ならなかったが、201人の閉経期前の対照のうちの27人(13%)がKRASバリアントを有したのに対して、ER/PR陰性がんを有する24人の閉経期前の女性のうち8人(33%)はKRASバリアントを有した(p=0.015)。研究群2において、KRASバリアントは、管腔型Aサブグループについて478人のうち64人(13%)であり、管腔型Bサブグループについて87人のうち13人(15%)であり、そしてHER2陽性サブグループについて35人のうち2人(6%)であるのと比較して、三重陰性乳がんを有する女性においては有意に富化された(90人の症例のうち19人の症例[21%])(p=0.044)。プールされた研究群における多変量解析は、KRASバリアントが閉経期前の女性における三重陰性乳がんに関連することを示した(オッズ比2.307、95% CI 1.261−4.219、p=0.0067)。三重陰性乳がん腫瘍の遺伝子発現解析は、KRASバリアント陽性腫瘍が、著しく改変された遺伝子発現を有し、管腔型前駆細胞およびBRCA1欠陥のシグネチャーが富化されることを示唆した。miRNA分析は、KRASバリアント腫瘍におけるlet−7 miRNA種の減少したレベルを示唆した。
KRASバリアントは、閉経期前の女性における三重陰性乳がんの発生についての遺伝マーカーである。改変された遺伝子およびmiRNA発現シグネチャーは、三重陰性乳がんを有する患者の分子的および生物学的な階層化を可能にする。
結腸直腸がん
KRASバリアントは、早期結腸直腸がん(CRC)における予後判定のバイオマーカーである。さらに、KRASバリアントは、より高いレベルのKRAS癌遺伝子タンパク質、およびより低いレベルの腫瘍抑制因子lethal−7(let−7)miRNAを誘導する。KRASバリアントの影響は、大規模なオランダの前向きコホート研究(NLCS)からの409人の早期(I期およびII期)症例、182人のIII期症例および69人のIV期症例において、研究された。KRASバリアントを有する早期患者、特に追加のKRAS変異をも有する早期患者は、より良好な予後を有した。この発見は、マイクロサテライト不安定性または他の予後判定の要因から独立している。さらに、CRCリスクにおけるKRASバリアントの影響をまた、NLCSからの1,886のサブコホートメンバーからのデータを用いることによって研究した。G対立遺伝子(すなわち、KRASバリアント対立遺伝子)は、総合的にCRCを発生する見込みに関連しなかったが、進行した病期のCRCにおいて富化されていた。このことは、それが、より進行した疾患を呈し得ることを予測し得ることを示唆する。この研究集団は、現在までに分析された唯一の非処置集団であるので、これらの結果は、KRASバリアントを有する結腸直腸がんの自然生物学への新たな見識を提供する。
本明細書中で示されるデータが実証するように、KRASバリアントは、結腸直腸がん(CRC)における新しいバイオマーカーであり、早期の患者における処置の決定を導く。KRASバリアントを有する早期CRCの症例は、より良好な転帰を有するが、進行した疾患においては、このより良好な転帰は、もはや存在しない。早期の患者について、KRASバリアント遺伝子型と少なくとも1つのKRAS変異との組み合わせもまた、療法の意思決定において考慮されるべき、より良好な転帰の予後判定のバイオマーカーである。
診断および治療の革新にもかかわらず、結腸直腸がん(CRC)は、欧米の世界におけるがんによる死亡の第二の主要な原因のままである。腫瘍−結節−転移システム(TNM)は、現在、予後判定の情報を提供する標準ツールである。TNMシステムは、極端な場合(早期および後期のCRC)の予後については非常に予測精度が高い(predictive)が、中間の病期についてはあまり予測精度が高くない。現在のガイドラインによれば、アジュバント化学療法は、早期の患者に与えられない(すなわち、International Union Against Cancer TNMによればT1−3−N0−M0である)。この群の早期の患者(すなわち、T1−3−N0−M0)における5年生存率は、70%よりも高い。それにもかかわらず、早期の患者(I期およびII期)の20%〜30%は5年以内にCRCで死亡するであろうので、これらの患者が前もって同定されて、それに応じて療法が適合された場合にはこれらの死亡が避けることができたのではないかという疑問が喚起される。以前に、分子マーカーの予後判定の影響を主張する数多くの研究が公開されてきた。これらの以前の報告での主張とは対照的に、これらの研究の結果は、一貫性がない。従って、本明細書中で記載される方法の開発の前には、どの分子改変が予後に影響を及ぼすのかという疑問は、依然として解明されていなかった(Smits KM,et al.Pharmacogenomics.2008;9(12):1903−16)。
マイクロRNA(miRNA)は、がんの発生および進行における重要な因子として同定されている。証拠は、単一のmiRNAは、多くのmRNAを同時に調節し得ることを示唆する(Paranjape T,et al.Gut.2009;58(11):1546−54)。さらに、miRNAは、腫瘍抑制因子および癌遺伝子の両方として働き得る(Johnson SM,et al.Cell.2005;120(5):635−47)。miRNAのlethal−7(let−7)ファミリーは、発見された最初のmiRNAファミリーのうちの1つである。let−7ファミリーmiRNAの発現は、多くのがんにおいて改変される。例えば、肺がんにおいて、let−7は、発現が乏しく(Calin GA,et al.Proc Natl Acad Sci U S A.2004;101(9):2999−3004;Takamizawa J,et al.Cancer Res.2004;64(11):3753−6)、let−7の過剰発現は、インビトロ(Takamizawa J,et al.Cancer Res.2004;64(11):3753−6)、およびインビボ(Kumar MS,et al.Proc Natl Acad Sci U S A.2008;105(10):3903−8;Esquela−Kerscher A,et al.Cell Cycle.2008;7(6):759−64)での細胞増殖を阻害し、このことは、let−7 miRNAが、腫瘍抑制因子として働き得ることを示唆する(Johnson SM,et al.Cell.2005;120(5):635−47)。
結腸がん細胞において、let−7発現は、隣接する非がん組織と比較して、腫瘍組織において著しく低減される(Akao Y,et al.Biol Pharm Bull.2006;29(5):903−6)。さらに、let−7a−1 miRNA前駆体のトランスフェクション後、細胞系において、let−7発現は増加され、そしてRAS発現は低減された。このことは、let−7が、結腸がん細胞の成長を調節することに関与することを示唆する(Akao Y,et al.Biol Pharm Bull.2006;29(5):903−6)。
miRNAは、標的mRNAの3’非翻訳領域(UTR)における相補エレメントに結合することによって遺伝子発現を制御し得る。let−7は、KRAS mRNAの3’−UTRにおける特定の部位に結合した後、RASの下方調節を誘導する。KRASバリアントは、KRAS発現のlet−7媒介調節に影響を及ぼす。バリアントG対立遺伝子(すなわち、KRASバリアント)の出現は、野生型と比較して、より高いKRASレベル、およびより低いlet−7レベルをもたらす。G対立遺伝子保有者は、中程度喫煙者における増加した肺がんリスク、増加した卵巣がんのリスク(特に閉経後の女性について)、乳がん(特に三重陰性乳がんサブタイプ)を発生する増加したリスク、および肺がんにおいてではなく、口腔のがん(oral cancer)において減少した生存率を有する。KRAS/BRAF変異CRC、G対立遺伝子保有者(KRASバリアント保有者)は、後期CRCにおける減少した生存率、およびセツキシマブに対する改変された応答を示し、結腸がんにおけるKRASバリアントの役割を実証した。早期CRCにおけるKRASバリアント遺伝子型の役割は未解明だったので、本明細書中に示される実験およびデータは、大規模な前向きコホート研究からの409人の早期(TNM I期およびII期;T1−4、N0、M0)CRC症例、182人のIII期(T1−4、N1、M0)CRC症例、および69人のIV期(T1−4、N0−1、M1)CRC症例において予後に及ぼす影響を評価した。CRCリスクにおけるKRASバリアント遺伝子型の影響はまた、NLCSからの1,886のサブコホートメンバーからのデータを用いることによって評価された。
この研究の結果は、KRASの3’UTR領域におけるLCS6におけるT>Gバリアントが早期(I期およびII期)CRCにおける予後に影響を及ぼすことを実証する。KRASバリアントは、症例の16.4%において存在したが、一方、これは、世界人口のたった6%(Chin LJ,et al.Cancer Res 2008;68:8535−40)、および欧州の家系の人の12%〜15%(Ratner E,et al.Cancer Res 2010;70:6509−15)においてしか見出されない。このKRASバリアント(G対立遺伝子)の増加した頻度は、進行した症例において見出され(早期は14%、III期およびIV期においてはそれぞれ19.2%および21.4%)、これは以前に報告されたIII期における頻度に匹敵する(Graziano F,et al.Pharmacogenomics J 2010;10:458−64)。G対立遺伝子(KRASバリアント)は、サブコホートメンバーの18%において見出された。KRASバリアントと進行した結腸がんに伴って増加した提示との間で統計学的に有意な関連性が見出され、KRASバリアント保有者における結腸がんの自然生物学への価値ある見識を提供した。さらに、KRASバリアントを有する早期CRC症例について、統計学的に有意な生存率の増加が見出された;KRAS変異患者の中で、G対立遺伝子(KRASバリアント)を保有する早期の患者は、誰もCRCで死ななかった。KRASバリアントを有する早期CRC症例についてのこの統計学的に有意な生存率の増加は、他の予後判定の要因(例えば、腫瘍の分化またはサブロケーション(sublocation))から独立していた。T4腫瘍は、早期症例の研究群において稀であったので、KRAS野生型の中でより頻度が高いIIb期症例は、観察されたよりも悪い転帰の原因として除外される。統計学的に有意な影響は、III期またはIV期のいずれにおいても見出されなかったが、この結果は、KRASバリアント(G対立遺伝子)およびKRAS変異を有するIII期症例についてのより悪い予後を示す。さらに、CRCリスクに対するKRASバリアント(G対立遺伝子)の影響が研究された。早期CRCの低減したリスクが見出されたが、進行した病期のCRCのリスクに対する影響は見出されなかった。このことは、G対立遺伝子(KRASバリアント)が、CRC全般を発生するより高い見込みに関連しないことを示した。
以前の研究において、KRASにおける変異は、より好ましくない予後に関連付けられた。しかし、この論題における結果は一貫性がなく、さらに、これらの結果の臨床的関連性ははっきりしない(Smits KM,et al.Pharmacogenomics 2008;9:1903−16)。獲得KRAS変異は、先天性の変異であるKRASバリアントと同じではなく、従って、腫瘍発生、生物学、および従って予後に対して異なる影響を有する。
KRASバリアントが、早期CRCにおける増加した生存率に関連するという発見は、興味をそそる。以前の調査は、細胞老化が、癌遺伝子のRasの過剰発現によって引き起こされ得、前悪性または良性新生物における成長停止の一因となり得たことを示唆している(Mooi WJ and Peeper DS.N Engl J Med 2006;355:1037−46)。腫瘍細胞老化は、ヒトのがんにおいて報告されている。前悪性結腸腺腫も、老化の特徴を表す(Collado M and Serrano M.Nat Rev Cancer 2010;10:51−7)。癌遺伝子誘導老化は、前悪性病変においてのみ役割を果たし得る。それにもかかわらず、KRASの生理学的レベルは、転写因子ウィルムス腫瘍1(WT1)の不存在において老化を誘導し得る(Vicent S,et al.J Clin Invest 2010;120:3940−52)。高いKRAS遺伝子発現を有する肺がん患者は、WT1関連遺伝子の低減した発現を有する場合に良好な予後を有した(Vicent S,et al.J Clin Invest 2010;120:3940−52)。まとめると、これらの結果は、他の分子要因が細胞運命の決定に関与し得ること、および癌遺伝子誘導老化が、他の遺伝的標的またはエピジェネティック標的の改変された発現後に起こり得ることを意味する。癌遺伝子誘導老化はまた、CRCにおいて役割を果たし得た:KRAS−LCS6遺伝子型は、進行した病期の腫瘍、または影響される他の遺伝マーカー(またはエピジェネティックマーカー)に基づいてより良好な予後を有する早期腫瘍のいずれかをもたらし得た。
より良好な転帰は、KRASバリアントおよびBRAF変異、またはRASSF1A過剰メチル化を有する早期(I期およびII期)症例について見出され、その両方は、Rasシグナル伝達経路に関与する。BRAF関連老化は、黒色腫において起こることが以前に報告されている(Michaloglou C,et al.Nature 2005;436:720−4)が、癌遺伝子誘導老化におけるRASSF1Aの可能な役割は実証されていない。本明細書中に記載される研究集団においてのように、KRASバリアントと、BRAF変異および/またはRASSF1A過剰メチル化との同時発生は、あまり一般的ではなく、従って、統計学的有意性に達しなかった。これらの(エピ)ジェネティック事象が組み合わさった場合、KRASバリアント(G対立遺伝子)と、KRAS、BRAF、またはRASSF1Aの改変(alternation)との組み合わせを有する患者のより良好な転帰は、さらにより高められた。従って、Ras経路からの遺伝子における(エピ)ジェネティック改変と組み合わせた、KRASバリアント(G対立遺伝子)に起因する、Rasの過剰発現は、早期CRCにおける老化を誘導し得、それによって、生存率に影響を及ぼした。進行した病期の症例については、予後に影響を及ぼす漸増する数の分子経路が影響を受ける。
let−7ファミリーのmiRNAは、KRASバリアントの存在下において、野生型と比較して、低減したlet−7発現および増加したKRASレベルでの腫瘍成長抑制作用を実証する(13)。従って、KRASバリアントを有する患者は、例えば、口腔のがんにおいて示されるように、より悪い予後を有すると期待される(Christensen BC,et al.Carcinogenesis 2009;30:1003−7)。CRCについて、処置された患者における転帰に及ぼすKRAS遺伝子型の影響を研究する2つの報告がある(Graziano F,et al.Pharmacogenomics J 2010;10:458−64;Zhang W et al.Ann Oncol 2011;22:104−9)。第一のものは、イリノテカンおよびセツキシマブで処置された、KRASバリアントを有するイリノテカン不応性転移患者の小さい集団の中での低い生存率、ならびにKRAS変異と、BRAF変異の不存在との関連性を報告する(Graziano F,et al.Pharmacogenomics J 2010;10:458−64)が、これらの知見は、患者が最初に未処置であったので、この研究において再現され得なかった。第二のものは、転移性CRCにおいて、セツキシマブ単独に対してより良好な応答、およびKRAS変異のないKRASバリアントを有する患者におけるより長い生存率を報告するが、応答は、統計学的に有意ではなかった(Zhang W et al.Ann Oncol 2011;22:104−9)。本明細書中に示されるデータは、IV期KRASバリアント保有者においてより良好な予後を実証するが、この比較は、統計学的に有意ではなく、これは、IV期の患者の群が小さいことによって説明され得る。他の研究は、KRAS遺伝子型を評価するために生殖細胞系組織を使用したが、本明細書中に記載される研究は、KRAS遺伝子型を評価するために腫瘍DNAを使用した。正常組織および腫瘍組織の遺伝子型が、KRASバリアントについて同じであることは、よく記録されている。
早期および進行した病期のCRCにおける、見たところ不一致な結果は、がんの異なる病期における腫瘍の起源および進行に関して、ならびに早期CRCが、進行した病期と比較して分子的に異なる経路を介して発生し得るかどうかに関して疑問を提起する。KRASバリアントは、進行した病期の疾患を有する症例の中ではより一般的であるが、KRASバリアントを有する、早期と診断された患者は、より有利な転帰を有するようである。従って、このデータは、進行した病期の症例と比較して早期では異なる生物学を暗示する。早期KRAS野生型患者が好ましくない予後を有するという発見は、彼らがMSI腫瘍を有する場合でさえ、これらの患者が追加のアジュバント処置から利益を得るであろうことを示し得た。無作為化臨床試験を含むさらなる調査は、好ましくない予後を有するこれらの早期患者が、追加のアジュバント処置から利益を得るかどうかを評価することを必要とした。本明細書中に記載されるバイオマーカーおよび方法の発見の前には、MSIは、良好な予後についてのマーカーであると考えられていた(Boland CR and Goel A. Gastroenterology 2010;138:2073−87.e3)が、この研究からのデータは、MSI状態とは独立して、KRASバリアント対立遺伝子保有者についてのより良好な転帰を実証する。
早期CRC症例におけるKRASバリアントの影響についての本明細書中に示される分析は、KRAS変異を有する早期G対立遺伝子(KRASバリアント)保有者についてのより良好な転帰を実証する。この研究において使用された集団は、一般に未処置である、現在までに研究された唯一の群であり、この研究から集められたデータが、KRASバリアントを有する早期CRCの自然生物学への価値ある見識を初めて提供する。結果的には、本明細書中に示された証拠は、KRASバリアント遺伝子型が、良好な予後を有するCRC患者を同定するために使用され得る早期CRCについての可能な予後判定のバイオマーカーであるという最初のしるしである。
処置に対する応答
卵巣がん
上皮性卵巣がん(EOC)は、米国において上位から二番目の女性の骨盤生殖器官のがんであり、欧米世界におけるこのカテゴリーでは死亡率が最も高い。米国での女性におけるがんによる死亡の総合的な原因の第5位であり、この疾患により毎年13,850人の女性が亡くなっている。処置に対する複数の新しいアプローチにもかかわらず、EOCによる高い死亡率は、何年間もの間、大きくは変わっておらず、5年全生存率はたった30%〜39%である(Parmar MK,et al.(2003).Lancet 361:2099−2106)。
現在使用されているEOCを処置するための標準的な化学療法レジメンは、前向き無作為化試験(Herzog T and Pothuri B.(2006).Nat Clin Pract Oncol 3:604−611;Esquela−Kerscher A and Slack F.(2006).Nat Rev Cancer 6:259−269;Iorio M,et al.(2007).Cancer Res 67:8699−8707)に基づくカルボプラチンおよびパクリタキセルである(Pfisterer J,et al.(2006).J Clin Oncol 24:4699−4707)。一部の患者は、初めは、プラチナベースの化学療法に対して抵抗性であり(「プラチナ抵抗性」と称される)、6ヶ月間の処置の間に再発するが、これは、全てのEOC患者に与えられる第一選択処置である。EOC患者の中でのプラチナ抵抗性を説明し得るEOC腫瘍における根本的な生物学的違いの改善された理解は、処置のより合理的な選択を可能にした(Parmar MK,et al.(2003).Lancet 361:2099−2106;Pfisterer J,et al.(2006).J Clin Oncol 24:4699−4707;Herzog T and Pothuri B.(2006).Nat Clin Pract Oncol 3:604−611)。
マイクロRNA(miRNA)は、事実上全てのがんのタイプにおいて異常に発現される、一クラスの22ヌクレオチドの非コードRNAであり、新規なクラスの癌遺伝子または腫瘍抑制因子として機能し得る。EOCにおいて、正常卵巣組織を悪性卵巣組織と区別すること(Iorio M, et al.(2007).Cancer Res 67:8699−8707;Zhang L,et al.(2008).Proc Natl Acad Sci USA 105:7004−7009)の他に、miRNA発現パターンは、EOCの病因において重要であること(Mezzanzanica D,et al.(2010).Int J Biochem Cell Biol 42:1262−1272;van Jaarsveld M,et al.(2010).Int J Biochem Cell Biol 42:1282−1290)、ならびにEOC患者の変更された転帰(Eitan R,et al.(2009).Gynecol Oncol 114:253−259)、および処置に対する応答(Lu L,et al.(2011).Gynecol Oncol 122:366−371)に関連することが示されている。miRNA発現の違いはまた、EOCにおける化学療法およびプラチナ抵抗性に関連付けられている(Eitan R,et al.(2009).Gynecol Oncol 114:253−259;Lu L,et al.(2011).Gynecol Oncol 122:366−371;Chen K,et al.(2008).Carcinogenesis 29:1306−1311)。
がんにおけるmiRNAの重要性についてのさらなる見識は、miRNAコード配列(Chin LJ,et al.(2008).Cancer Res 68:8535−8540)、および癌遺伝子の3’非翻訳領域(3’UTR)におけるmiRNA結合部位(Chen K,et al.(2008).Carcinogenesis 29:1306−1311;Chin LJ,et al.(2008).Cancer Res 68:8535−8540)を崩壊させる、遺伝によって受け継がれた一塩基多型の発見から来ている。このような機能的なバリアントの例は、KRASバリアントと称されるrs61764370であり、これは、let−7 miRNA相補部位におけるKRAS 3’UTRに位置する。rs61764370と上皮性卵巣がん(EOC)リスクとの間の関連性は、以前に報告された(国際特許出願第PCT/US2008/065302号、および国際特許出願第PCT/US2010/023412号を参照のこと;それらの内容は、それらの全体がそれぞれ本明細書中で援用される)。さらに、提供される方法および例は、このバリアントが、上皮性卵巣がん(EOC)における臨床的転帰および化学療法抵抗性のバイオマーカーであることを実証する。この証拠は、侵襲性腫瘍生物学および好ましくないがん特異的転帰との関連性という、腫瘍におけるKRASバリアントの引き続いての機能的役割を支持する。
KRASバリアントが有害なBRCA変異の存在および不存在の両方においてEOCにおける転帰のバイオマーカーとして働く可能性は、本明細書中で評価される。さらに、KRASバリアントEOC患者における変更された転帰の可能な原因は、ネオアジュバントプラチナベースの化学療法に対する応答を研究すること、プラチナ抵抗性を評価すること、およびEOC腫瘍遺伝子発現を評価することによって決定される。このデータは、この機能獲得型KRASバリアントの直接的標的化が、この病変を有するEOC細胞系において、細胞増殖および生存率を減少し得ることを実証する。
KRASバリアントは、EOCを有する閉経後の(年齢が52歳を超える)女性についての好ましくない転帰のバイオマーカーである。KRASバリアント関連卵巣がんにおける好ましくない転帰は、少なくとも部分的に、KRASバリアントと、ネオアジュバントプラチナベースの化学療法に対するより悪い応答に基づく、プラチナベースの化学療法に対しての抵抗性、およびKRASバリアントを有する、アジュバントにより処置されたEOC患者における統計学的に有意に増加したプラチナ抵抗性との関連性に起因する。
KRASバリアントEOC腫瘍と非バリアントEOC腫瘍との間の生物学的違いは、遺伝子発現データによって支持され、これは、KRASバリアント関連EOCにおいてKRAS依存およびAKT媒介プラチナ抵抗性を示す。プラチナ抵抗性は、非バリアント系と比較して、KRASバリアントを有する卵巣がん細胞系においてインビトロでさらに確認された。KRASバリアント生殖細胞系病変におけるKRASバリアント関連EOCの引き続いての依存についての証拠は、この変異の直接的標的化を介して示され、非バリアントEOC系と比較して、KRASバリアントEOC細胞系において、腫瘍の成長および細胞生存の両方の著しい阻害をもたらした。
閉経後の女性についての、KRASバリアントと、低い生存率との関連性は、このバリアントに関連する基礎となる生物学に起因し得た。発見された関連性が、基礎となる生物学を反映するという仮説を支持して、KRASバリアントは、閉経後卵巣がんに関連付けられており(Ratner E,et al.(2010).Cancer Res 15:6509−6515)、診断のメジアン年齢は59歳付近である。相対的な生存率は、年齢によって変動し、より高齢な女性は、EOCの診断の5年以内に死亡する可能性が2倍高く、閉経後の女性が、より若い女性とは生物学的に異なる腫瘍を有し得る(ACS (2010).Cancer facts & figures 2010.Cancer Facts & Figures.ACS:Atlanta,GA,pp 1−56)という仮説をさらに支持する。さらに、KRASバリアントは、52歳超の年齢の閉経前の女性におけるTNBCのリスクのバイオマーカーであることが示されている。従って、がんのリスクにおけるKRASバリアントの役割、および異なる組織における生物学は、生理学的状態(例えば、閉経)に応答したmiRNA発現の変化に依存し得る。KRASバリアントを有する女性は、まず、乳がんについてのリスクがあり得、次に、引き続いて、閉経後の卵巣がんを発生するリスクがあり得る。
KRASバリアントは既知の有害なBRCA変異を有するEOC患者のコホートにおける好ましくない転帰を予測しないという発見は、BRCA変異がプラチナ感受性に関連するという事実によって部分的に説明され得る。プラチナ感受性に関連するBRCA変異の帰結は、KRASバリアントによって引き起こされるかまたは悪化させられる、プラチナ薬剤に対する任意の抵抗性の下流で起こり得る。本明細書中に示される研究におけるより若い患者が、記録されていない有害なBRCA変異を有したかもしれないことは可能である。あるいは、または加えて、本明細書中に示される研究におけるより若い患者はまた、より若い女性においてより頻繁に見られる他のサブタイプの卵巣がん(例えば、境界型腫瘍)を有したかもしれず、このことは、これらの患者の誤診をもたらし得る。本明細書中に提供されるデータは、広範囲に臨床的に注釈付けされたが、BRCA状態は、本発明者らのEOC患者の全てにおいて得られたわけではなく、そして、病理学報告は利用可能であったが、腫瘍組織は、再検討に利用可能ではなかった。KRASバリアントとEOCにおける好ましくない転帰および療法に対する抵抗性との関連性を見出すことができなかった最近の研究は、臨床的情報が非常に限定された(すなわち、例えば、BRCA状態および卵巣がん特異的生存率のような要因が、それらの分析において利用可能でもなく、含まれもしなかった)ゲノム全体の関連性研究に使用される卵巣収集物を使用した(Pharoah P,et al.(2011).Clin Cancer Res 17:3742−3750)。
同様の遺伝子誤発現パターンは、2つの異なるタイプのKRASバリアント関連腫瘍において見出された。このことは、これらの腫瘍が、起源の組織にかかわらず、発癌において同様の経路を使用することを示した。KRASバリアント関連EOC細胞系におけるKRASバリアント病変の直接的標的化は、著しく高められた細胞死およびKRASレベルの減少をもたらす。これらの発見は、この単一の非コード生殖細胞系病変に対するKRASバリアント腫瘍の、引き続いての重大な依存を示唆する。腫瘍遺伝子発現を測定し、そして腫瘍獲得変異を決定することによってがんの処置を調整するための著しい努力がなされているが、がんにおける療法についての重大な標的であると以前に示されている生殖細胞バリアントは、あるとしてもほとんど存在しない。
本明細書中で提供されるデータに基づけば、KRASバリアントは、卵巣がんにおいて重要である機能的がん変異であること、およびKRASバリアントにより、それが関連する卵巣腫瘍の有意義なサブクラス分類を可能にすることが決定される。これらの発見は、卵巣がん患者の転帰を改善するのに有用である。
結腸直腸がん
単剤療法として、または化学療法と組み合わせてのいずれかで使用される、上皮増殖因子受容体(抗EGFR moAb)を標的とする2つのモノクローナル抗体(セツキシマブおよびパニツムマブ)を転移性結腸直腸がん(mCRC)臨床的実施に組み込むことは、予め処置された患者において適度な臨床的利益を提供する(Cunningham D,et al.N Engl J Med 2004;351(4):337−345;Saltz LB,et al.J Clin Oncol 2004;22(7):1201−1208;Saltz LB,et al.N Engl J Med 2000;343(13):905−914;Van CE,et al.J Clin Oncol 2007;25(13):1658−1664)。それにもかかわらず、それらの効力は、あるサブセットの患者に制限されることがすぐに明らかになった。非無作為化後ろ向き研究(Amado RG,et al.J Clin Oncol 2008;26(10):1626−1634;De RW,et al.Ann Oncol 2008;19(3):508−515;Lievre A,et al.Cancer Res 2006;66(8):3992−3995;Lievre A,et al.J Clin Oncol 2008;26(3):374−379;Moroni M,et al.Lancet Oncol 2005;6(5):279−286;Sartore−Bianchi A,al.J Clin Oncol 2007;25(22):3238−3245)、前向き無作為化試験の後ろ向き分析(Bokemeyer C,et al.J Clin Oncol 2009;27(5):663−671;Douillard J et al.AnnOncol supp.2009;Karapetis CS,et al.N Engl J Med 2008;359(17):1757−1765;Tol J,et al.N Engl J Med 2009;360(6):563−572;Van Cutsem E,et al.N Engl J Med 2009;360(14):1408−1417)、および大欧州コンソーシアム研究(De RW,et al.Lancet Oncol 2010;11(8):753−762)は、腫瘍獲得KRAS変異が存在すると、抗EGFR moAb療法に対する抵抗性が予測されること、ならびにその存在が、より悪い予後およびより短い生存率と関連することを実証した。KRASの変異状態は、今や数年間にわたって抗EGFR moAb処置の開始に必須となっているが、KRAS野生型腫瘍を有するmCRC患者の約50%〜約65%は、これらの処置から利益を得られないので問題は未解決であり、このことは、抵抗性またはおそらく感受性の追加の遺伝的決定基が存在することを暗示する(De RW,et al.Ann Oncol 2008;19(3):508−515; Allegra CJ,et al.J Clin Oncol 2009;27(12):2091−2096;De RW,al.Lancet Oncol 2010;11(8):753−762;Roock WD,et al.Lancet Oncol 2010)。ますます増える証拠は、BRAF V600E変異が、抗EGFR moAbに対する抵抗性を与えることを示し(De RW, et al.Lancet Oncol 2010;11(8):753−762;Di NF,et al.J Clin Oncol 2008;26(35):5705−5712;Laurent−Puig P,et al.J Clin Oncol 2009;27(35):5924−5930;Saridaki Z,et al.IPLoS One 2011;6(1):e15980;Souglakos J,et al.Br J Cancer 2009;101(3):465−472)、他方、まだ完全には明らかでないが、PIK3CA変異体腫瘍は、このような処置からほとんどまたは全く利益を得ない利益を得ないようである(De RW,et al.Lancet Oncol 2010;11(8):753−762;Prenen H,et al.Clin Cancer Res 2009;15(9):3184−3188;Sartore−Bianchi A,et al.Cancer Res 2009; 69(5):1851−1857;Jhawer M, et al.Cancer Res 2008;68(6):1953−1961;Ogino S,et al.J Clin Oncol 2009;27(9):1477−1484)。
腫瘍の遺伝的特徴付けに加えて、患者の生殖細胞ゲノムはまた、抗EGFR moAb療法に対する抵抗性または感受性を与える役割を果たし得るという、ますます増える証拠が存在する。この考えを支持して、FcγRIIaおよびFcγRIIΙa、EGFR、EGF、サイクリンD1、ならびにCOX−2についてコードする遺伝子における多型は、単剤療法として、および化学療法と組み合わせての両方で投与されるセツキシマブで処置されたmCRC患者における転帰に関連付けられている。
マイクロRNA(miRNA)は、それらの標的mRNAの3’非翻訳領域(UTR)における部分的相補部位に結合することによって遺伝子発現を負に調節する、豊富なクラスの、高度に保存された、内在性で非コード性の、長さ18〜25ヌクレオチドの低分子RNA分子である。ダイサーおよびドローシャRNアーゼIIIエンドヌクレアーゼによって処理されると、成熟miRNAは、RNA誘導サイレンシング複合体を標的mRNAへと差し向けることによってmRNA翻訳を抑制し得る。miRNAは、基本的生物学的プロセス(例えば、増殖、細胞分化、およびアポトーシス)に関与する多数の遺伝子を調節し、癌遺伝子または腫瘍抑制因子のいずれかとして挙動することによって、がんの発生および進行において重要なプレーヤーとして働く。700よりも多くのmiRNA配列がヒトゲノムにおいて、現在までに確認されているが、この数は、2倍になると期待される。さらに、各miRNAは、多くのmRNAを同時に調節することによって何百もの遺伝子を制御し得る。
mRNAに結合するmiRNAは、mRNAレベルの調節プロセス、およびその後のタンパク質発現について重大であり、この調節は、miRNA標的部位において起こる一塩基多型(SNP)によって影響され得る。これらのSNPは、誤った結合部位を作り出すか、または正しいものを破壊(abolish)(排除)し得、miRNA調節に対する抵抗性をもたらし、がんのようなヒトの疾患において役割を果たすことが可能である別の種類の遺伝的変動性を反映する(または、がんのような特定の疾患についての増加したリスクを与える)。新たな調査は、これらの部位の系統的ゲノム評価、ならびに検出されたSNPの機能的および生物学的関連に焦点を合わせており、このSNPは急速に成長している個別化医療の領域において重要な分子マーカーである。このようなSNPは、遺伝子発現だけではなく、腫瘍生物学ならびに薬物応答および薬物抵抗性にも影響を及ぼすと思われる。
miRNAのLethal−7(let−7)ファミリーは、最初に発見されたものの1つであり、その異なった発現は、多数のがんにおいて検出されている。KRAS癌遺伝子は、let−7 miRNAファミリーの直接的標的であり、より正確には、let−7は、KRAS mRNAの3’非翻訳領域(3’−UTR)の特定の部位へ結合するとKRASの下方調節を誘導することが示された。
KRASバリアントは、KRAS 3’−UTR mRNAにおけるlet−7相補部位(LCS)において起こる機能的な一塩基多型(SNP)である。このSNP(rs61764370)は、成熟let−7のKRAS mRNAへの結合可能性を改変することが見出された、TからGへの塩基置換からもたらされ、おそらく負のフィードバックループに起因して、インビトロでのKRAS癌遺伝子タンパク質の増加した発現、およびインビボでのより低いlet−7 miRNAレベルの両方をもたらす。KRAS遺伝子の癌遺伝子性質と矛盾なく、このKRASバリアント(G対立遺伝子とも称される)は、中程度喫煙者において増加した非小細胞肺がん(NSCLC)リスク、三重陰性乳がんおよび女性のサブセットにおける卵巣がんの発生についての増加したリスクを与えることが示されている。さらに、KRASバリアント対立遺伝子の増加した頻度は、小さいコホートにおけるBRCA1保有者の中で検出された。さらに、頭頸部がんを有するがNSCLCは有さないKRASバリアント(G対立遺伝子)保有者は、減少した全生存率を示した。統計学的に有意により悪い生存率およびプラチナ抵抗性がKRASバリアント(G対立遺伝子)を有する卵巣がん患者において見出された。まとめると、この証拠は、KRASバリアント(KRAS 3’−UTR LCS6 SNPとしても公知)の機能的および臨床的な重要性を実証する。
現在までのmCRC標的化抗EGFR moAb療法設定において、KRASバリアントは、小さい選択された集団を用いて2つの研究において評価されており、その結果は、矛盾し、対立している(Graziano F,et al.Pharmacogenomics J 2010;10(5):458−464;Zhang W,et al.Ann Oncol 2011;22(1):104−109)。KRASおよびBRAF野生型対立遺伝子を有し、サルベージイリノテカン−セツキシマブ組み合わせ療法で処置された患者集団における第一の研究(Graziano F,et al.Pharmacogenomics J 2010;10(5):458−464)においては、KRASバリアント(G対立遺伝子)保有者は、統計学的に有意により悪い無増悪生存率(PFS)および全生存率(OS)を有することが示された。対照的に、患者がサルベージセツキシマブ単剤療法に曝された第二の研究(Zhang W,et al.Ann Oncol 2011;22(1):104−109))においては、KRASバリアント(G対立遺伝子)保有者は、より長いPFSおよびOSを示し、より良好な奏効率(ORR)を有した。これらの研究は反対の結果を有するようであるが、これらの患者は、同一の処置をされたわけでなく、そして、実際には、セツキシマブに対するイリノテカン化学療法の追加もまた、KRASバリアント(G対立遺伝子)保有者における好ましくない応答が予測されることが見出された(Winder T,et al.J.Clin.Oncol.[27(15S Suppl)].2009.Abstract)。この証拠は、腫瘍獲得KRASタンパク質変異とは違って、KRASバリアント(G対立遺伝子)保有者に与えられる療法の組み合わせが、セツキシマブに対する応答に識別的に影響を与えることを示す(Winder T,et al.J.Clin.Oncol.[27(15S Suppl)].2009.Abstract)。これは、疾患において、このようなmiRNA結合部位バリアントがダイナミックに調節されるというデータに合致している。
この研究において、他の分子マーカー(例えば、KRASおよびBRAF変異状態)とともにKRASバリアントは、サルベージ抗EGFR MoAb単剤療法または化学療法と組み合わせたMoAbを受けた一連の559人のmCRC患者において評価される。本明細書中に示されるデータは、MoAb療法に対する応答を予測することにおけるKRASバリアントの役割を明らかにする。この患者のコホート、ならびに細胞系において、KRASバリアント(G対立遺伝子)は、細胞毒性化学療法の追加の利益なく、MoAb単剤療法に対する陽性応答を予測する。
本明細書中に示された研究は、抗EGFR moAb単剤療法を受けた、転移性結腸がんを有する全てのKRASバリアント保有者についてのメジアンPFSにおいて統計学的に有意な改善(および二重野生型患者における改善されたOSに対する傾向)を実証する。さらに、KRASまたはRAF変異体患者をはじめとする、抗EGFR moAbに対する応答において研究された全てのコホートについて、非KRASバリアント保有者と比較して、これらの患者の好ましい予後について統計学的有意性が見出された。この改善された予後は、化学療法の追加に依存しなかった。そして、実際に、KRASバリアント(G対立遺伝子)保有者は、抗EGFR moAb療法に加えての化学療法に利益がないと思われた。これは、全てのコホートにわたって抗EGFR moAbへの化学療法の追加から著しい利益を得た非KRASバリアント患者と対照的であり、化学療法の追加は、抗EGFR moAb単剤療法を受けたKRASバリアント対立遺伝子保有者と同じレベルの彼らの予後をもたらした。細胞系研究は、KRASバリアント細胞系において非KRASバリアント細胞系と比較して組み合わせ療法の利益がなく、同じ影響を示した。これらの知見は、転移性結腸がんを有するKRASバリアント対立遺伝子患者が、化学療法処置の毒性および時には、致命的な影響を避け得たこと、およびおそらく避けるべきであること、そして抗EGFR moAb単剤療法単独で有意義に処置され得たことを初めて示唆する。
主に欧州起源の患者の集団は、報告されたベースライン有病率と比較して、19.5%というKRASバリアントの増大した頻度を示した。KRASバリアントは、世界人口の6%で見出されるが、その頻度は、健常な白色人種において10%を超越すると見積もられている。さらに、KRASバリアントの保有率は、NSCLCに苦しむ患者においてほぼ20%まで実質的に増加し、増加したリスクの関連性を強調する。Graziano et al (Pharmacogenomics J 2010;10(5):458−464)によって研究された、欧州の家系の白色人種のmCRC患者集団においては、(TGおよびGG遺伝子型の両方を組み込んでいる)KRASバリアント(G対立遺伝子)は患者の25%において見出され、他方、Zhang et al (Ann Oncol 2011; 22(1):104−109)による研究における、より異質性な集団においては、KRASバリアントの頻度は15.3%であった。本明細書中に提供されるデータは、KRASバリアント対立遺伝子が、結腸がんを発生するリスクであることを見出さなかったが、KRASバリアントは、IV期疾患を有する患者において富化された。まとめると、この証拠は、KRASバリアント(G対立遺伝子)は結腸がんの全てのタイプについてのリスクではないが、これは、進行し、転移性の結腸がんを発生する見込みに関連するということを示す。KRASバリアントは、セツキシマブ単剤療法で処置された場合に早期結腸がん患者、ならびに転移性結腸がん患者の両方において良好な予後を予測する。しかし、KRASバリアント(G対立遺伝子)は、普遍的に致死である、結腸がんにおける転移性疾患の発生に関連し得る。
以前の報告と比較して異なる、KRASおよびBRAF変異状態によるKRASバリアント遺伝子型の分布は、この研究においてmCRC患者集団に関して観察された。この研究において、KRAS遺伝子型は、KRAS野生型および変異群の中に同等に分布したが、BRAF変異群において、KRASバリアントの頻度は、統計学的に有意に増加した(すなわち、野生型と比較して2倍高い)。より後期のCRC発癌現象において、KRASバリアント対立遺伝子は、BRAF変異を保有する、分化度がより低く、より侵襲性の高いクローンの選択を媒介し得る。さらに、選択圧は、特定の療法に対する曝露に依存して、KRASバリアントの存在下においてKRASまたはBRAF変異の発生に有利であり得る。KRASバリアント(G対立遺伝子)を有する患者は、患者がKRASまたはBRAF変異をも有していることに関係なく、セツキシマブで処置される場合に異なる予後を有しており、このことは、これらの群が、セツキシマブ処置の可能性について再評価を必要とすることを示唆している。
処置に従って生存率の転帰が分析された場合、抗EGFR moAb単剤療法で処置された、患者集団全体および二重野生型患者集団において、KRASバリアント遺伝子型保有者は、統計学的に有意により長いPFSを有した(それぞれ、p=0.019およびp=0.039)。単剤療法患者集団全体において、KRASバリアント遺伝子型保有者は、野生型保有者の28.85週間と比較して、45週間というより長いOSを有したが、それにもかかわらず、この差は、統計学的有意性に達しなかった。二重(KRASおよびBRAF)野生型患者集団において、統計学的有意性(p=0.087)に対する傾向が観察され、KRASバリアント保有者に有利なより長いOSがみられた(55.43週間対35.71週間)。
KRASバリアント(G対立遺伝子)遺伝子型を有するセツキシマブ/イリノテカンで処置されたKRAS変異患者は、LCS6野生型遺伝子型を有する患者における12週間と比較して6.4週間という著しくより悪いPFSを示した(p=0.037、ログランク検定)。本発明者らの分析において、人々が多様な薬剤で処置された、抗EGFR moAbベースの組み合わせ化学療法群において、KRASバリアント遺伝子型保有者とKRAS野生型遺伝子型保有者との間の任意の集団におけるPFSまたはOSにおいて統計学的有意差は見出されなかった。KRASまたはRAF変異を有するKRASバリアント保有者において、化学療法対単剤療法をそれぞれ受けた場合、より悪い生存率(23週間対28週間)についての傾向があった。これらの知見は、KRASバリアント保有者における抗EGFR moAbベースの療法との組み合わせにおける特定の化学療法が有害であることを集合的に示し得る。
他のがんの中でもCRCの発生における重要な段階は、miRNAの調節解除(deregulation)である。過去数年間にわたって、miRNAは、分子腫瘍学の舞台の中央に出されており、遺伝子調節を発明者らが見て理解する様式を実質的に変化させている。KRASバリアントは、がんのリスクに関連付けられた、miRNA結合部位における最初のSNPであった。本明細書中に示されるデータは、KRASバリアント対立遺伝子遺伝子型を保有する患者が、非バリアント、またはLCS6野生型患者と生物学的に異なることを示す。KRASバリアント対立遺伝子遺伝子型を保有する患者は、化学療法の追加による利益がなく、抗EGFR moAb単剤療法から利益を得る確率がより高く、そして総合的予後がより良好である。KRASバリアントを有する腫瘍は、KRAS経路の過剰発現を誘導するので、この経路の上流阻害は、これらの腫瘍を特異的に感作させ得る。このメカニズムは、腫瘍獲得KRAS変異体腫瘍においてmoAb療法が効力がないことと矛盾すると思われるが、KRASバリアントが、腫瘍獲得KRAS変異と同じくらい高いレベルの、独立したKRAS経路シグナル伝達を誘導しないことは可能である。
KRASバリアント腫瘍は、moAb単剤療法に対する細胞毒性療法の追加から利益を得ない。KRASバリアントは、let−7ファミリーのmiRNAによって調節され、化学療法は、let−7のレベルを下げ、(特にKRASバリアント存在下で)より高いKRAS発現を可能にするので、化学療法での処置は、この対立遺伝子の活性化を増加し得、それにより、上流のmoAb療法の能力を除去して、KRAS経路の活性化を克服し得る。KRASバリアントを含む、3’UTR機能的バリアントが、改変された腫瘍生物学および処置に対する応答を予測する可能性は、患者のより良好なリスク階層化を可能にする。
マイクロRNA
マイクロRNA(miRNA)は、標的mRNAの3’非翻訳領域(UTR)、ならびに5’非翻訳領域(UTR)、およびコード配列領域内の配列と塩基対合を形成してmRNA切断および/または翻訳抑制を引き起こすことによって遺伝子発現を調節する、新規のクラスの低分子非コードRNAである(He L,et al.Nature 2005;435:828−33;Esquela−Kerscher A.and Slack FJ.Nat Rev Cancer 2006;6:259−69)。miRNAは、これまでのところ研究された全てのがんにおいて誤調節されており、このがんとしては、乳がんおよび結腸直腸がんが挙げられるが、これらに限定されず、ここで特定のmiRNA改変(および特異的に減少したlet−7)は、腫瘍開始細胞において見出されており、このことは、低let−7がこれらの細胞の自己再生および増幅を可能にすること(Yu F,et al. Cell 2007;131:1109−23)、およびがんのリスクを増加させることを示唆する。
miRNAは、包括的な遺伝子調節因子として働くので、miRNAにおける遺伝によって受け継がれたバリエーションは、増加したがんのリスクに関連する。miRNAコード配列を崩壊させる多型(Hoffman A, et al.Cancer Res 2009;69:5970−77)または3’UTR miRNA結合部位が、乳がんおよび結腸直腸がんが挙げられるがこれらに限定されないがんのリスクの強力な予測因子であるという証拠が急速に増えつつある(Pongsavee M,et al.Genet Test Mol Biomarkers 2009;13:307−17;Tchatchou S,et al.Carcinogenesis 2009;30:59−64)。しかし、以前に同定されたmiRNA改変多型のどれも三重陰性乳がん(TNBC)、または腫瘍における改変された遺伝子および/もしくはmiRNA発現に関連付けられていない。
「LCS6−SNP」または「KRASバリアント」と称される、KRAS癌遺伝子の3’UTR内のlet−7 miRNA相補部位における新規の生殖細胞多型(rs61764370)が最近同定された(国際特許出願第PCT/US2008/065302号、その内容は、その全体が本明細書中で参考として援用される)。
このKRASバリアントは、腫瘍における低濃度のlet−7および肺がんにおける改変されたKRAS調節に関連する(Chin L,et al.Cancer Res 2008;68:8535−40)。さらに、このKRASバリアントは、頭頸部がんにおける好ましくないがん特異的転帰(Christensen BC,et al.Carcinogenesis 2009;30:1003−07)、および結腸がんにおける改変された薬物応答(Graziano F,et al.Pharmacogenomics J 2010;10:458−64;Zhang W,et al.Ann Oncol 2011;22:104−09)を予測する。このKRASバリアントはまた、卵巣がんにおいて富化されており、遺伝性乳がんおよび卵巣がん(HBOC)を有する家族からの患者に最も頻繁に関連している(Ratner E,et al.Cancer Res 2010;70:6509−15)。本明細書中に提供される研究は、がんのリスクおよび腫瘍生物学におけるKRASバリアントの役割をさらに評価した。
本明細書中に提供されるデータは、例えば、「KRASバリアント」として公知であるKRAS 3’UTRにおける生殖細胞多型が、閉経期前の女性について、三重陰性乳がんを発生する増加したリスクの遺伝マーカーであることを実証する。研究群1は小規模であり、既知のERおよびPR状態を有する患者において評価したのみだったので、この関連性は、完全な受容体状態を有するより大規模な症例対照において確認された。最も重要なことに、このデータは、KRASバリアントを有する三重陰性乳がん(TNBC)を有する患者の腫瘍は、KRASバリアントを有さない他の患者と比較して異なる遺伝子発現パターンを有することを実証しており、このことは、KRASバリアントが、腫瘍生物学に影響を及ぼし、腫瘍発生を変更することが公知である特定の経路を操縦することを実証する。従って、KRASバリアントは、予後を予測することならびに将来の処置決定を指示することの両方について有意義な生物学的サブグループへと腫瘍を分類し得る。
KRASバリアントに関連するTNBC腫瘍における減少したlet−7発現の知見は臨床的に重要である。KRAS過剰発現は、NFKBを通して、let−7の負の調節因子であるlin−28の誘導をもたらし得、結果的に、let−7発現の低下をもたらし得る(Iliopoulos D,et al.Cell 2009;139:1−14;Meylan E,et al.Nature 2009;462:104−08;Barbie D,et al.Nature 2009;462:108−12)。これは、KRASバリアントに関連する、前悪性組織、最終的には、腫瘍においてlet−7を低下させる、可能性のあるメカニズムを示唆する。さらにlet−7は、乳房様幹細胞の増殖を調節し(Yu F,Yao H,Zhu P,et al.Cell 2007;131:1109−23)、低いlet−7発現または濃度は、この群の細胞の拡大を可能にし、それによって、KRASバリアントを有する女性における乳がんのリスクを増加させる。KRASバリアントと、閉経期前の女性のみにおけるTNBCのリスクとの関連性は、KRASバリアントとホルモン曝露との間の有意義な相互作用を示す。
BRCA1変異を保有する乳房腫瘍の半分より多くが、三重陰性サブタイプ(TNBC)へと発達する(Atchley DP, et al. J Clin Oncol 2008;26:4282−88)が、BRCA1変異は稀であり、従って、全てのTNBC症例の約10%〜約15%しか占めない(Young SR,et al.BMC Cancer 2009;9:86;Nanda R,et al.JAMA 2005;294:1925−33)。KRASバリアントは、閉経期前TNBC患者の最大23%において見出されるが、これらのコホートからのBRCA変異保有者または若いER/PR陰性BRCA1変異保有者においては明らかに著しい富化はない(www.appliedbiosystems.com/absite/us/en/home/applications−technologies/real−time−pcr/mirna−profiling.html(2008年1月1日にアクセスした)において公的に利用可能であるmiRNAプロファイリング)。KRASバリアントは、BRCA1変異体様遺伝子発現シグネチャーに関連しており、このことは、KRASバリアント、高KRAS発現および低BRCA1発現の存在下において、変異または他のメカニズムのいずれかを介して、増加した癌遺伝子のリスクが存在し得ることを示す。
KRASバリアントは、インビトロでのKRAS発現の調節、およびより高いKRAS濃度の促進に影響を与える(Chin L,et al.Cancer Res 2008;68:8535−40)。KRAS癌遺伝子は、MAPK経路の重要な上流の媒介因子であり、その過剰発現は、Raf/MEK/MAPK経路の増加した活性化をもたらし得、それにより腫瘍形成を促進する。本明細書中に提供される研究は、KRASバリアントおよびTNBCを有する患者が、MAPK経路の活性化を示すことを実証する(表X)。乳がん細胞におけるMAPKの過剰活性化は、ER発現を低減してER陰性表現型をもたらし(Atchley DP,et al.J Clin Oncol 2008;26:4282−88)、これは、KRASバリアントが、これらの組織学的ER陰性腫瘍におけるより低いエストロゲンシグナル伝達に関連するという発明者らの知見と一致する。MAPK活性化は、エストロゲン非依存腫瘍成長および抗エストロゲン処置に対する非感受性に関連付けられ(Oh AS,et al.Mol Endocrinol 2001;15:1344−59)、KRASバリアントが、他の乳がんのサブタイプよりもTNBCの発生をもたらすメカニズムであり得る。
KRASバリアントは、頭頸部がんを含む、いくつかのがんにおける好ましくない転帰のバイオマーカーである(Christensen BC,et al.Carcinogenesis 2009;30:1003−07)。KRASバリアントはまた、結腸がんにおける化学療法と組み合わせた標的化療法に対する好ましくない応答のバイオマーカーである(Graziano F,et al.Pharmacogenomics J 2010;10:458−64)。KRASバリアント陽性TNBC患者が、管腔型前駆細胞シグネチャー、ならびにこのシグネチャー内の血管新生および転移性マーカーの識別的発現を有するという発見は、KRASバリアントを含む腫瘍が、TNBCの侵襲性サブグループであることを実証する。
本明細書中に提供される研究は、KRASバリアントが、独特の遺伝子発現パターンを維持する腫瘍に関連することを実証する。研究は進行中であるが、これらの研究からのデータは、これらの女性における、トランスフォーメーションおよび腫瘍発生に必要とされる重大な段階および経路への価値ある見識を提供する。これらは、がん生物学における機能獲得型miRNA崩壊多型のメカニズムを理解に対する有意義な段階であり、以前に発見されたがんのリスクの遺伝マーカーと比べて機能の点で独特である。
KRASバリアント
本開示は、本明細書中で「LCS6 SNP」または「KRASバリアント」と称されるKRASの3’非翻訳領域(UTR)におけるSNPの存在により、がんを発生する個体のリスクおよびがんについての処置に対する個体の応答が予測されるという予期しない発見に一部基づく。このKRASバリアントは、LCS6に位置し、その野生型およびバリアント配列は、以下に提供される。
KRASバリアントは、以下の配列のうちの1つまたはそれより多くによって表され得る。例えば、KRASバリアントは、GenBank受託番号rs61764370および以下の配列によって定義され得る
(配列番号22、ここでSNPは、太字にされ、下線が引かれている)。
HRAS、KRAS、およびNRASを含む3つのヒトRAS遺伝子が存在する。各遺伝子は、それらのmRNA転写産物の3’UTRにおいて複数のmiRNA相補部位を含む。具体的には、各ヒトRAS遺伝子は、複数のlet−7相補部位(LCS)を含む。let−7ファミリーのマイクロRNA(miRNA)は、それらの標的メッセンジャーRNA(mRNA)の3’UTR(非翻訳領域)に結合することによって、肺がん癌遺伝子発現を制御することにおいて重要である包括的な遺伝子調節因子を含む。
具体的には、用語「let−7相補部位」は、遺伝子または遺伝子転写産物における、let−7ファミリーのメンバーのmiRNAを結合する任意の領域を表すことを意味する。さらに、この用語は、遺伝子または遺伝子転写産物内の、let−7ファミリーmiRNAの配列に相補的である配列を包含する。用語「相補」は、各配列におけるヌクレオチドの大多数は、他の配列内でヌクレオチドの大多数にトランスで結合することが可能である、2つの配列間の結合の閾値を表す。
ヒトKRAS 3’UTRは、それぞれLCS1〜LCS8と名前が付けられた8個のLCSを含む。以下の配列について、チミン(T)が、ウラシル(U)の代わりに用いられ得る。LCS1は、配列GACAGUGGAAGUUUUUUUUUCCUCG(配列番号1)を含む。LCS2は、配列AUUAGUGUCAUCUUGCCUC(配列番号2)を含む。LCS3は、配列AAUGCCCUACAUCUUAUUUUCCUCA(配列番号3)を含む。LCS4は、配列GGUUCAAGCGAUUCUCGUGCCUCG(配列番号4)を含む。LCS5は、配列GGCUGGUCCGAACUCCUGACCUCA(配列番号5)を含む。LCS6は、配列GAUUCACCCACCUUGGCCUCA(配列番号6)を含む。LCS7は、配列GGGUGUUAAGACUUGACACAGUACCUCG(配列番号7)を含む。LCS8は、配列AGUGCUUAUGAGGGGAUAUUUAGGCCUC(配列番号8)を含む。
ヒトKRASは、転写産物aおよびbによってコードされる2つの野生型形態を有し、それぞれ配列番号9および10として以下に提供される。LCS6 SNPを含む、各ヒトKRAS転写産物の配列は、配列番号11および12として以下に提供される。
ヒトKRASの転写産物バリアントaは、以下のmRNA配列によってコードされる(NCBI受託番号NM_033360および配列番号9)(非翻訳領域は太字にされ、LCS6は下線が引かれている):
ヒトKRASの転写産物バリアントbは、以下のmRNA配列によってコードされる(NCBI受託番号NM_004985および配列番号10)(非翻訳領域は太字にされ、LCS6は下線が引かれている):
LCS6 SNPを含む、ヒトKRASの転写産物バリアントaは、以下のmRNA配列によってコードされる(配列番号11)(非翻訳領域は太字にされ、LCS6は下線が引かれ、SNPは大文字にされている):
LCS6 SNPを含む、ヒトKRASの転写産物バリアントbは、以下のmRNA配列によってコードされる(配列番号12)(非翻訳領域は太字にされ、LCS6は下線が引かれ、SNPは大文字にされている):
KRASバリアントは、LCS6の配列番号6の4位での、Uの代わりにGを用いる置換の結果である。このKRASバリアントは、以下の配列を含む:
(強調のためにSNPは太字にされている)(配列番号13)。
KRASバリアントは、KRASのmiRNA調節を崩壊させることによって改変されたKRAS発現をもたらす。KRASバリアントの同定および特徴付けは、国際出願第PCT/US08/65302号(WO 2008/151004)(その内容は、その全体が参考として援用される)においてさらに記載される。
let−7ファミリーmiRNA
let−7ファミリーmiRNAの発現は、KRASバリアントを保有する細胞において増加される。興味深いことに、let−7ファミリーのmiRNAは、KRASバリアントが位置するlet−7相補部位に結合する。KRASバリアントの存在は、let−7のKRASへの結合に干渉する。干渉することによって、KRASバリアントは、let−7がKRASのLCS6に対してより強固にかまたはより弱くのいずれかで結合するように誘導する。KRASバリアントを含む細胞は、野生型の細胞と比較して、より低レベルのKRAS mRNA、および増加したレベルのKRASタンパク質を有することが発見された。従って、理論によって縛られることを望まないが、細胞内でのKRASバリアントの存在は、KRASに結合するlet−7の能力に干渉し、タンパク質翻訳を阻害し得、より高いKRASタンパク質レベルを可能にする。
三重陰性乳がんにおけるKRASバリアントの存在はまた、著しくより低いレベルのlet−7 miRNAに関連する。例えば、let−7 miRNA発現は、2倍(2×)、3倍(3×)、4倍(4×)、5倍(5×)、6倍(6×)、7倍(7×)、8倍(8×)、9倍(9×)、10倍(10×)、20倍(20×)、50倍(50×)、100倍(100×)、200倍(200×)、500倍(500×)、1000倍(1000×)、またはそれらの間の任意の乗数で低くされる。あるいは、または加えて、三重陰性乳がんを有さない被験体から得られる細胞(すなわち、正常または対照の細胞)におけるlet−7 miRNA発現のレベルと比較した、三重陰性乳がんを有する被験体から得られる細胞におけるlet−7 miRNA発現の減少の統計学的有意差は、0.05未満のp値、好ましくは0.01未満のp値、または最も好ましくは0.001未満のp値によって例示される。三重陰性乳がんを有する被験体から得られる細胞に存在するlet−7 miRNA発現のレベルはまた、当該分野における公知の標準レベルと比較され得る。さらに、let−7発現のレベルは、乳がんまたは具体的には三重陰性乳がんを有する被験体内の罹患細胞と非罹患細胞との間で比較され得、ここで、非罹患細胞は、内部対照として役立つ。
例示的なlet−7 miRNAとしては、let−7a(let−7a−1、let−7a−2、let−7a−3)、let−7b、let−7c、let−7d、let−7e、let−7f(let−7f−1およびlet−7f−2)、let−7g、およびlet−7iが挙げられるが、これらに限定されない。以下の配列について、チミン(T)は、ウラシル(U)の代わりに用いられ得る。let−7aは、配列UUGAUAUGUUGGAUGAUGGAGU(配列番号14)を含む。let−7bは、配列UUGGUGUGUUGGAUGAUGGAGU(配列番号15)を含む。let−7cは、配列UUGGUAUGUUGGAUGAUGGAGU(配列番号16)を含む。let−7dは、配列UGAUACGUUGGAUGAUGGAGA(配列番号17)を含む。let−7eは、配列UAUAUGUUGGAGGAUGGAGU(配列番号18)を含む。let−7fは、配列UUGAUAUGUUAGAUGAUGGAGU(配列番号19)を含む。let−7gは、配列GACAUGUUUGAUGAUGGAGU(配列番号20)を含む。let−7iは、配列UGUCGUGUUUGUUGAUGGAGU(配列番号21)を含む。
let−7ファミリーの追加のメンバーの配列は、(www.mirbase.org)におけるmiRBaseから公的に利用可能である。
治療の方法
KRASバリアント変異の同定は、三重陰性乳がんを発生する増加したリスクを示す。本開示の文脈において、「リスク」は、特定の期間において事象が起こる確率に関連し、被験体の「絶対的」リスクまたは「相対的」リスクを意味し得る。絶対的リスクは、適切な時間コホートについての実見後測定(actual observation post−measurement)に関して、または適切な期間にわたって追跡された統計学的に有効な歴史的コホートから引き出した指数値に関してのいずれかで測定され得る。相対的なリスクとは、低リスクコホートの絶対的リスクまたは平均人口のリスクのいずれかと比較された被験体の絶対的なリスクの比を指し、それは、臨床的危険因子がどのように評価されるかによって変動し得る。所定の試験結果についての陽性事象の、陰性事象に対する割合であるオッズ比もまた、無転換(no−conversion)のために一般的に使用される(オッズは、式p/(1−p)に従い、ここでpは、事象の確率であり、(1−p)は、無事象の確率である)。
本開示の文脈において、「リスク評価」または「リスクの評価」は、事象または疾患状態が起こり得る、確率、オッズ、または見込み、1つの疾患状態から別のものへの事象または転換(すなわち、原発性腫瘍から転移性腫瘍もしくは転移性を発生するリスクがあるものへの、または原発性転移性事象のリスクがあるものから二次的転移性事象への、または1つのタイプの原発性腫瘍を発生するリスクがあるものから1つもしくはそれより多くの異なるタイプの原発性腫瘍を発生することへの)の出現率の予測を行うことを包含する。リスク評価はまた、以前に測定された集団に関して、絶対的または相対的期間のいずれかにおいて、将来の臨床的パラメーター、従来の研究所危険因子の値、またはがんの他の指数を予測することを含み得る。
「増加したリスク」は、KRASバリアントを保有する個体が、KRASバリアントを保有さない個体と比較して増加した、がんを発生するかまたはがんを発生した確率を記載することを意味する。特定の実施形態において、KRASバリアント保有者は、KRASバリアントを保有しない個体よりも、1.5倍、2倍、2.5倍、3倍、3.5倍、4倍、4.5倍、5倍、5.5倍、6倍、6.5倍、7倍、7.5倍、8倍、8.5倍、9倍、9.5倍、10倍、20倍、30倍、40倍、50倍、60倍、70倍、80倍、90倍、または100倍、がんを発生しやすいかまたは有しやすい。
好ましくない予後とは、個体が、特に侵襲性の、ハイリスクな、重篤な、もしくは遺伝によって受け継がれた形態のがん(例えば、三重陰性乳がん)の発生から生き延びる確率、または侵襲性の、ハイリスクな、重篤な、もしくは遺伝によって受け継がれた形態の発生もしくは進行から生き延びる確率が、より良性な形態の発生もしくは進行から生き延びる確率よりも低いことを意味する。
好ましくない予後はまた、より満足しない回復、より長い回復期間、より侵襲性またはハイリスクな治療レジメ、またはがんもしくはその転移の再発の増加した確率を記載することを意味する。例えば、三重陰性乳がんまたはその転移は、乳がんサブタイプの最も悪い予後に関連しており、被験体についての好ましくない予後をもたらす。
被験体、患者、および個体という用語は、明細書を通して交換可能に使用される。被験体は、好ましくは哺乳動物である。上記哺乳動物は、ヒト、非ヒト霊長類、マウス、ラット、イヌ、ネコ、ウマ、またはウシであり得るが、これらの例に限定されない。被験体は、男性または女性である。被験体は、がん、がんの特定のタイプ(例えば、乳がん)、またはがんのサブタイプ(例えば、乳がんのサブタイプとしての三重陰性乳がん)を有すると以前に診断されていなくてもよい。上記被験体は、がん、がんの特定のタイプ(例えば、乳がん)、またはがんのサブタイプ(例えば、乳がんのサブタイプとしての三重陰性乳がん)についての1つまたはそれより多くの危険因子を示し得る。あるいは、上記被験体は、がん、がんの特定のタイプ(例えば、乳がん)、またはがんのサブタイプ(例えば、乳がんのサブタイプとしての三重陰性乳がん)についての危険因子を示さない。
乳がん(三重陰性乳がんが挙げられる)の危険因子としては、KRASバリアントの存在;女性であること、加齢、肥満であること、出産経験がないことまたは母乳育児をしていないこと、より高いホルモンレベル、喫煙、放射線への曝露、乳がんの個人歴、乳がんの家族歴、および特定の乳房変化(例えば、線維嚢胞状態に関連する変化(インサイチュでの異型過形成および小葉癌腫が挙げられるが、これらに限定されない))が挙げられるが、これらに限定されない。三重陰性乳がんの発生に対する例示的な保護対策としては、定期的な運動、環境的誘引因子(例えば、喫煙、飲酒、肥満をもたらす高脂肪食、職業を介した放射線曝露)を避けること、子供を母乳で育てることを選ぶこと、および、最も重篤なリスクにある人について、予防的な左右の乳房切除術が挙げられるが、これらに限定されない。本開示の被験体は、保護対策によってさらに緩和または変更され得る1つまたはそれより多くの危険因子を示し得る。
本明細書中に記載される方法は、被験体からサンプルを得ることを提供する。上記サンプルは、核酸を含む任意の組織または体液であり得る。種々の実施形態としては、パラフィン埋包組織、凍結組織、外科用微細針吸引法、および乳房の細胞(管、小葉、または結合組織から採取された細胞が挙げられる)、リンパ節(センチネルリンパ節または腋窩リンパ節が挙げられる)、胸部または腹部の、筋肉または結合組織、臓器(潜在的転移性細胞についての任意の潜在的蓄積部位(例えば、脳、肝臓、腎臓、胃、腸、骨髄、膵臓、結腸、または肺)が挙げられる)が挙げられるが、これらに限定されない。他の実施形態としては、体液サンプル(例えば、血液、血漿、血清、リンパ液、腹水、漿液、および尿)が挙げられる。
SNP遺伝子型決定方法
KRASバリアントは、ヒトKRAS遺伝子の3’UTR内に起こる一塩基多型である。連鎖不平衡(LD)とは、2つまたはそれより多くの異なるSNP部位における、所定の集団における各対立遺伝子の個別の出現頻度から予期されるよりも大きい頻度での対立遺伝子(例えば、代替のヌクレオチド)の共遺伝を指す。独立して遺伝によって受け継がれた2つの対立遺伝子が一緒に出現すると予測される頻度は、第一の対立遺伝子の頻度に第二の対立遺伝子の頻度を掛けたものである。予測される頻度で一緒に起こる対立遺伝子は、「連鎖不平衡」にあると言われる。対照的に、LDは、染色体に沿って2つの遺伝子座が物理的に近接していることに一般に起因する、2つの異なるSNP部位での対立遺伝子(複数可)間の任意の非無作為遺伝的関連性を指す。LDは、2つまたはそれより多くのSNP部位が、所定の染色体上で互いに密接に物理的に近接しているときに起こり得、従って、これらのSNP部位における対立遺伝子は、複数の世代にわたって分離しないままである傾向があり、その結果、1つのSNP部位における特定のヌクレオチド(対立遺伝子)は、近くに位置する異なるSNP部位における特定のヌクレオチド(対立遺伝子)との非無作為関連性を示す。従って、SNP部位のうちの1つを遺伝子型決定することは、LDにある他のSNP部位を遺伝子型決定するのとほとんど同じ情報を与える。
個体を遺伝障害(例えば、予後またはリスク)についてスクリーニングする目的については、特定のSNP部位が、障害をスクリーニングするのに有用であると見出されるならば、当業者は、このSNP部位とともにLDにある他のSNP部位もまた、この状態をスクリーニングするのに有用であることを認識する。2つまたはそれより多くのSNP間で様々な程度のLDに遭遇し得、その結果、いくつかのSNPは他のものよりもより密接に(すなわち、より強いLDにおいて)関連する。さらに、LDが染色体に沿って広がる物理的距離は、ゲノムの異なる領域間で異なり、従って、LDが起こるために必要な2つまたはそれより多くのSNP部位間の物理的分離の程度は、ゲノムの異なる領域間で異なり得る。
スクリーニングの適用については、実際の疾患を引き起こす(原因となる)多型ではないが、このような原因となる多型とともにLDにある多型(例えば、SNPおよび/またはハプロタイプ)もまた有用である。このような例において、原因となる多型とともにLDにある多型(複数可)の遺伝子型は、原因となる多型の遺伝子型のしるしとなり、結果として、原因となるSNP(複数可)によって影響される表現型(例えば、疾患)のしるしとなる。従って、原因となる多型とLDにある多型マーカーはマーカーとして有用であり、実際の原因となる多型(複数可)が未知である場合に特に有用である。
ヒトゲノムにおける連鎖不平衡は、Wall et al.,「Haplotype blocks and linkage disequilibrium in the human genome」,Nat Rev Genet.2003 August;4(8):587−97;Gamer et al.,「On selecting markers for association studies:patterns of linkage disequilibrium between two and three diallelic loci」,Genet Epidemiol.2003 January;24(1):57−67; Ardlie et al.,「Patterns of linkage disequilibrium in the human genome」,Nat Rev Genet.2002 April;3(4):299−309(erratum in Nat Rev Genet 2002 July;3(7):566);およびRemm et al.,「High−density genotyping and linkage disequilibrium in the human genome using chromosome 22 as a model」;Curr Opin Chem Biol.2002 February;6(1):24−30に概説される。
本開示のスクリーニング技術は、試験の被験体が、SNPまたは検出可能な形質を発生する増加したリスクまたは低減したリスクに関連するSNPパターンを有するかどうか、または特定の多型/変異の結果として、個体が検出可能な形質に苦しんでいるかどうかを決定するために多様な方法論を用いることができ、例えば、ハプロタイピング、家族研究、単一精子DNA解析(single sperm DNA analysis)、または体細胞の雑種についての個々の染色体の分析を可能にする方法が挙げられる。本開示の診断を用いて分析される形質は、病状および障害において一般的に観察される任意の検出可能な形質であり得る。
特定のヌクレオチド(すなわち、対立遺伝子)が、1つまたはそれより多くのSNP位置(例えば、配列番号11、12、13、または22において開示される核酸分子におけるSNP位置)のそれぞれに存在することを決定するプロセスは、SNP遺伝子型決定と称される。本開示は、SNP遺伝子型決定の方法(例えば、多様な障害についてのスクリーニングすること、またはそれに対する素因を決定すること、または処置の形態に対する応答性、または予後を決定することにおいて使用するため、またはゲノムマッピングもしくはSNP関連分析などにおいて使用するための方法)を提供する。
核酸サンプルは、どの対立遺伝子(複数可)が、目的の、任意の所定の遺伝領域(例えば、SNP位置)に存在するかを決定するために、当該分野において周知の方法によって、遺伝子型決定され得る。隣接する配列は、SNP検出試薬(例えば、オリゴヌクレオチドプローブ)を設計するために使用され得、必要に応じて、キット形式に実装され得る。例示的なSNP遺伝子型決定方法は、Chen et al.,「Single nucleotide polymorphism genotyping:biochemistry, protocol, cost and throughput」,Pharmacogenomics J.2003;3(2):77−96;Kwok et al.,「Detection of single nucleotide polymorphisms」,Curr Issues Mol. Biol. 2003 April;5(2):43−60;Shi,「Technologies for individual genotyping:detection of genetic polymorphisms in drug targets and disease genes」,Am J Pharmacogenomics.2002;2(3):197−205;およびKwok,「Methods for genotyping single nucleotide polymorphisms」,Annu Rev Genomics Hum Genet 2001;2:235−58に記載される。高スループットSNP遺伝子型決定のための例示的な技術は、Marnellos,「High−throughput SNP analysis for genetic association studies」,Curr Opin Drug Discov Devel.2003 May;6(3):317−21に記載される。一般的なSNP遺伝子型決定方法としては、TaqManアッセイ、分子ビーコンアッセイ(molecular beacon assay)、核酸アレイ、対立遺伝子特異的プライマー伸長(allele−specific primer extension)、対立遺伝子特異的PCR、アレイ化プライマー伸長(arrayed primer extension)、均質プライマー伸長アッセイ、質量分析法による検出を伴うプライマー伸長、パイロシークエンシング、遺伝子アレイ上にてソートされる多重プライマー伸長、ローリングサークル増幅法でのライゲーション、均質ライゲーション、OLA(米国特許第4,988,167号)、遺伝子アレイ上にソートされる多重ライゲーション反応、制限酵素断片長多型(restriction−fragment length polymorphism)、一塩基伸長タグアッセイ、およびインベーダーアッセイが挙げられるが、これらに限定されない。このような方法は、検出メカニズム(例えば、発光または化学発光検出、蛍光検出、時間分解蛍光検出、蛍光共鳴エネルギー移転、蛍光分極、質量分析法、および電気的検出)と組み合わせて使用され得る。
多型を検出するための種々の方法としては、RNA/RNAまたはRNA/DNA二重鎖部位(duplex)におけるミスマッチ塩基を検出するために切断薬剤からの保護が使用される方法(Myers et al.,Science 230:1242(1985);Cotton et al.,PNAS 85:4397(1988);およびSaleeba et al.,Meth.Enzymol.217:286−295(1992))、バリアント核酸分子と野生型核酸分子との電気泳動移動度の比較(Orita et al.,PNAS 86:2766(1989);Cotton et al.,Mutat.Res.285:125−144(1993);およびHayashi et al.,Genet.Anal.Tech.Appl.9:73−79(1992))、および変性剤濃度勾配ゲル電気泳動法(DGGE)を用いて変性剤の勾配を含むポリアクリルアミドゲルにおける多型または野生型のフラグメントの移動をアッセアイすること(Myers et al., Nature 313:495(1985))が挙げられるが、これらに限定されない。特定の場所における配列のバリエーションはまた、ヌクレアーゼ保護アッセイ(例えば、RNアーゼおよびSI保護)または化学的切断方法によって判定され得る。
好ましい実施形態において、SNP遺伝子型決定は、5’ヌクレアーゼアッセイとしても公知であるTaqManアッセイを用いて行われる(米国特許第5,210,015号および同第5,538,848号)。TaqManアッセイは、PCRの間に増幅された特異的産物の蓄積を検出する。TaqManアッセイは、蛍光レポーター色素およびクエンチャー色素で標識されたオリゴヌクレオチドプローブを利用する。レポーター色素は、適切な波長での照射によって励起され、蛍光共鳴エネルギー移動(FRET)と呼ばれるプロセスを介して同じプローブにおいてエネルギーをクエンチャー色素へと移動する。プローブに付着した場合、励起されたレポーター色素は、シグナルを出さない。インタクトなプローブにおいてクエンチャー色素がレポーター色素に近接すると、レポーターに対する減少した蛍光を維持する。レポーター色素およびクエンチャー色素は、それぞれ、5’側の最も末端および3’側の最も末端にあり得、逆もまた同様である。あるいは、クエンチャー色素が内部ヌクレオチドに付着した場合、レポーター色素は、5’側の最も末端または3’側の最も末端にあり得、逆もまた同様である。さらに別の実施形態において、レポーターおよびクエンチャーの両方は、レポーターの蛍光が減少するような互いからの距離で内部ヌクレオチドに付着され得る。
PCRの間に、DNAポリメラーゼの5’ヌクレアーゼ活性は、プローブを切断し、それによって、レポーター色素とクエンチャー色素とを分離し、レポーターの増加した蛍光をもたらす。PCR産物の蓄積は、レポーター色素の蛍光の増加を監視することによって直接的に検出される。DNAポリメラーゼは、プローブが、PCRの間に増幅される標的SNP含有鋳型とハイブリッド形成する場合に限り、レポーター色素とクエンチャー色素との間でプローブを切断し、上記プローブは、特定のSNP対立遺伝子が存在する場合に限り、標的SNP部位にハイブリッド形成するように設計される。
好ましいTaqManプライマーおよびプローブの配列は、本明細書中に提供されるSNPおよび関連する核酸配列情報を用いて容易に決定され得る。多数のコンピュータープログラム(例えば、Primer Express(Applied Biosystems, Foster City, Calif.))が最適なプライマー/プローブセットを迅速に得るために使用され得る。本開示のSNPを検出するためにこのようなプライマーおよびプローブが、がんを含む多様な障害についての予後判定のアッセイにおいて有用であること、およびキット形式に容易に組み込まれ得ることは、当業者に明らかである。本開示はまた、当該分野において周知であるTaqmanアッセイの改良を含む(例えば、分子ビーコンプローブ(米国特許第5,118,801号および同第5,312,728号)および他のバリアント形式(米国特許第5,866,336号および同第6,117,635号)の使用)。
多型の正体(identity)はまた、ミスマッチ検出技術を用いて決定され得、この技術としては、リボプローブ(Winter et al.,Proc.Natl.Acad Sci.USA 82:7575,1985;Meyers et al.,Science 230:1242,1985)およびヌクレオチドのミスマッチを認識するタンパク質(例えば、E.coli mutSタンパク質)(Modrich,P.Ann.Rev.Genet.25:229−253,1991)を用いたRNアーゼ保護方法が挙げられるが、これらに限定されない。あるいは、バリアント対立遺伝子は、一本鎖高次構造多型(SSCP)分析(Orita et al.,Genomics 5:874−879,1989;Humphries et al.,in Molecular Diagnosis of Genetic Diseases,R.Elles,ed.,pp.321−340,1996)、または変性剤濃度勾配ゲル電気泳動法(DGGE)(Wartell et al.,Nuci.Acids Res.18:2699−2706,1990;Sheffield et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 86:232−236,1989)によって同定され得る。
ポリメラーゼ媒介プライマー伸長方法はまた、多型(複数可)を同定するために使用され得る。数個のこのような方法は、特許および特定の文献に記載されており、「遺伝子ビット解析(Genetic Bit Analysis)」方法(WO92/15712)およびリガーゼ/ポリメラーゼ媒介遺伝子ビット解析(米国特許第5,679,524号)が挙げられる。関連する方法は、WO91/02087、WO90/09455、WO95/17676、米国特許第5,302,509および同第5,945,283号に開示される。多型を含む伸長されたプライマーは、米国特許第5,605,798号に記載されるように質量分析法によって検出され得る。別のプライマー伸長方法は、対立遺伝子特異的PCRである(Ruano et al.,Nucl.Acids Res.17:8392,1989;Ruano et al.,Nucl.Acids Res.19,6877−6882,1991;WO 93/22456;Turki et al.,J Clin.Invest.95:1635−1641,1995)。さらに、複数の多型部位は、Wallaceら(WO89/10414)に記載されるように対立遺伝子特異的プライマーのセットを用いて核酸の複数の領域を同時に増幅することによって調べられ得る。
KRASバリアントを遺伝子型決定するための別の好ましい方法は、OLAにおける2つのオリゴヌクレオチドプローブの使用である(例えば、米国特許第4,988,617号を参照のこと)。この方法において、1つのプローブは、その3’側の最も末端がSNP部位と整列されて、標的核酸のセグメントにハイブリッド形成する。第二のプローブは、標的核酸分子の隣接するセグメントに、第一のプローブに対して直接的に3’にハイブリッド形成する。2つの並列したプローブは、標的核酸分子にハイブリッド形成し、第一のプローブの最も3’側のヌクレオチドとSNP部位との間に完全な相補性が存在する場合に、連結剤(例えば、リガーゼ)の存在下でライゲーションする。ミスマッチが存在する場合、ライゲーションは起こらない。反応後、ライゲーションしたプローブは、標的核酸分子から分離され、SNPの存在のインジケーターとして検出される。
以下の特許、特許出願、および公開国際特許出願(それらは、全てが本明細書中で参考として援用される)は、種々のタイプのOLAを実施するための技術に付属する追加の情報を提供する:米国特許第6,027,889号、同第6,268,148号、同第5494810号、同第5830711号、および同第6054564号は、SNP検出を行うためのOLA戦略を記載する;WO 97/31256、およびWO 00/56927は、ユニバーサルアレイを用いたSNP検出を行うためのOLA戦略を記載し、ここでジップコード(zipcode)配列は、ハイブリッド形成プローブのうちの1つに導入され得、結果として得られる産物、または増幅された産物は、ユニバーサルジップコードアレイにハイブリッド形成される;米国出願第US01/17329(およびシリアル番号09/584,905)は、PCR後のOLA(またはLDR)を記載し、ここでジップコードは、OLAプローブに組み込まれ、増幅されたPCR産物は、電気泳動またはユニバーサルジップコードアレイの読出しによって決定される;米国出願第60/427,818号、同第60/445,636号、および同第60/445,494号は、PCR後のOLAを用いた多重SNP検出のためのSNPlex方法およびソフトウェアを記載し、ここでジップコードは、OLAプローブに組み込まれ、増幅されたPCR産物は、zipchute試薬とハイブリッド形成され、SNPの正体は、zipchuteの電気泳動の読出しから決定される。いくつかの実施形態において、OLAは、PCR(または、核酸増幅の別の方法)の前に実施される。他の実施形態において、PCR(または、核酸増幅の別の方法)は、OLAの前に実施される。
SNP遺伝子型決定のための別の方法は、質量分析法に基づく。質量分析法は、DNAの4つのヌクレオチドについてのそれぞれの独特な質量を利用する。SNPは、代替的なSNP対立遺伝子を有する核酸の質量の差を測定することによる質量分析法によって、明白に遺伝子型決定され得る。MALDI−TOF(マトリックス支援レーザー脱離イオン化法−−飛行時間)質量分析法テクノロジーは、分子質量(例えば、SNP)の極めて正確な決定により好ましい。SNP分析に対する数多くのアプローチは、質量分析法に基づいて開発されてきた。SNP遺伝子型決定の好ましい質量分析法ベースの方法としては、他のアプローチ(例えば、従来のゲルベースの形式およびマイクロアレイ)と組み合わせても利用され得るプライマー伸長アッセイが挙げられる。
代表的に、プライマー伸長アッセイは、標的SNP位置から上流(5’)の鋳型PCRアンプリコンに対するプライマーを設計およびアニールすることを包含する。ジデオキシヌクレオチド三リン酸(ddNTP)および/またはデオキシヌクレオチド三リン酸(dNTP)の混合物は、鋳型(例えば、(例えば、PCRによって)代表的に増幅されているSNP含有核酸分子)、プライマー、およびDNAポリメラーゼを含む反応混合物に添加される。プライマーの伸長は、混合物中のddNTPのうちの1つに対するヌクレオチドの相補が鋳型において起こる最初の位置で終結する。プライマーは、すぐ隣接する(すなわち、プライマーの3’末端におけるヌクレオチドが標的SNP部位の隣のヌクレオチドとハイブリッド形成する)ものか、またはSNP位置から2つもしくはそれより多くのヌクレオチド離れたものかのいずれかであり得る。プライマーが標的SNP位置から数ヌクレオチド離れている場合、唯一の制限は、プライマーの3’末端とSNP位置との間の鋳型配列が、検出されるべきものと同じタイプのヌクレオチドを含むことができないということであり、そうでなければ、これが伸長プライマーの早発な終結を引き起こす。あるいは、dNTPなしで、4つ全てのddNTPだけを反応混合物に添加する場合、プライマーは常に、標的SNP位置に対応する1ヌクレオチドのみが伸長される。この例において、プライマーは、SNP位置から上流の1ヌクレオチドに結合するように設計される(すなわち、プライマーの3’末端におけるヌクレオチドが、標的SNP部位の5’側上の標的SNP部位にすぐ隣接するヌクレオチドとハイブリッド形成する)。1ヌクレオチドのみの伸長は、伸長されたプライマーの質量全体を最小限にし、それにより代替的なSNPヌクレオチド間の質量の差の分解を増加させるので、好ましい。さらに、質量タグ(mass−tagged)ddNTPは、プライマー伸長反応において非修飾のddNTPの代わりに用いられ得る。これは、これらのddNTPで伸長されるプライマー間での質量の差を増加させ、それにより、増加した感度および正確性を提供し、異型接合の塩基位置を型に分類するのに特に有用である。質量タグはまた、集中的なサンプル調製手順の必要性を軽減し、質量分析計の必要な分解力を低減させる。
伸長されたプライマーは、次にMALDI−TOF質量分析法によって精製および分析されて、標的SNP位置に存在するヌクレオチドの正体が決定され得る。分析の1つの方法において、プライマー伸長反応からの産物は、マトリックスを形成する光吸収結晶と組み合わせられる。上記マトリックスは、次にエネルギー源(例えば、レーザー)が当てられて、核酸分子を気相へとイオン化および脱離する。イオン化された分子は、次に、フライトチューブへと噴出され、検出器へと向かって上記チューブを下って加速される。イオン化事象(例えば、レーザーパルス)と、検出器と分子との衝突との間の時間がその分子の飛行時間である。飛行時間は、イオン化分子の質量電荷比(m/z)に正確に関連する。より小さいm/zを有するイオンは、より大きいm/zを有するイオンよりも早くチューブを下って進み、従って、より軽いイオンは、より重いイオンの前に検出器に到着する。飛行時間は次に、対応する、より正確なm/zへと変換される。この様式でSNPは、単一の塩基位置において異なるヌクレオチドを有する核酸分子に固有の、質量のわずかな差、および対応する飛行時間の差に基づいて同定され得る。SNP遺伝子型決定に関するMALDI−TOF質量分析法と関連したプライマー伸長アッセイの使用に関するさらなる情報については、例えば、Wise et al.,「A standard protocol for single nucleotide primer extension in the human genome using matrix−assisted laser desorption/ionization time−of−flight mass spectrometry」,Rapid Commun Mass Spectrom.2003;17(11):1195−202を参照のこと。
以下の参考文献は、SNP遺伝子型決定のための質量分析法ベースの方法を記載するさらなる情報を提供する:Bocker,「SNP and mutation discovery using base−specific cleavage and MALDI−TOF mass spectrometry」,Bioinformatics.2003 July;19 Suppl 1:144−153;Storm et al.,「MALDI−TOF mass spectrometry−based SNP genotyping」,Methods Mol.Biol.2003;212:241−62;Jurinke et al.,「The use of MassARRAY technology for high throughput genotyping」,Adv Biochem Eng Biotechnol.2002; 77:57−74;およびJurinke et al.,「Automated genotyping using the DNA MassArray technology」,Methods Mol. Biol.2002;187:179−92。
SNPはまた、直接的なDNAシーケンシングによってスコア付けされ得る。多様な自動シーケンシング手順が利用され得((1995) Biotechniques 19:448)、質量分析法によるシーケンシングが挙げられる(例えば、PCT国際公開第WO94/16101号;Cohen et al.,Adv.Chromatogr.36:127−162(1996);およびGriffin et al.,Appl.Biochem.Biotechnol.38:147−159(1993)を参照のこと)。本開示の核酸配列は、当業者が、このような自動シーケンシング手順のためのシーケンシングプライマーを容易に設計することを可能にする。商業的機器(例えば、the Applied Biosystems 377、3100、3700、3730、および3730.times.1 DNA Analyzers(Foster City,Calif.))は、自動シーケンシングに関して当該分野において一般的に使用される。
KRASバリアントを遺伝子型決定するために使用され得る他の方法としては、一本鎖高次構造多型(SSCP)および変性剤濃度勾配ゲル電気泳動法(DGGE)が挙げられる(Myers et al.,Nature 313:495(1985))。SSCPは、Orita et al.,Proc.Nat.Acad.に記載されるように、一本鎖のPCR産物の電気泳動移動度の変化によって塩基の違いを同定する。一本鎖のPCR産物は、二本鎖のPCR産物を加熱するかまたはそうでなければ変性することによって生成され得る。一本鎖の核酸は、再び折りたたまれるか、または塩基配列に部分的に依存する二次構造を形成し得る。一本鎖増幅産物の異なる電気泳動の移動度は、SNP位置における塩基配列の違いに関連する。DGGEは、多型DNAに固有の異なる配列依存安定性および溶解特性、および変性剤濃度勾配ゲルにおける電気泳動の移動パターンにおける対応する差に基づいてSNP対立遺伝子を識別する(Erlich,ed.,PCR Technology,Principles and Applications for DNA Amplification,W.H.Freeman and Co, New York,1992,Chapter 7)。
配列特異的リボザイム(米国特許第5,498,531号)はまた、リボザイム切断部位の発生または損失に基づいてSNPをスコア付けするために使用され得る。完全にマッチする配列は、ヌクレアーゼ切断消化アッセイによって、または融点の差によってミスマッチ配列と区別され得る。SNPが制限酵素切断部位に影響を及ぼす場合、SNPは、制限酵素消化パターンの変更、およびゲル電気泳動によって決定される核酸フラグメント長における対応する変化によって同定され得る。
SNP遺伝子型決定は、例えば、ヒト被験体から生物学的サンプル(例えば、組織、細胞、体液、分泌物などのサンプル)を収集する工程、サンプルの細胞から核酸(例えば、ゲノムDNA、mRNA、または両方)を単離する工程、上記核酸を、標的核酸領域のハイブリッド形成および増幅が起こるような条件下で、標的SNPを含む、単離された核酸の領域に特異的にハイブリッド形成する1つもしくはそれより多くのプライマーと接触させる工程、および目的のSNP位置に存在するヌクレオチドを決定する工程、またはいくつかのアッセイにおいて、増幅産物の存在もしくは不存在を検出する工程(アッセイは、ハイブリッド形成および/もしくは増幅が、特定のSNP対立遺伝子が存在もしくは不存在である場合にのみ起こるように設計され得る)を含み得る。いくつかのアッセイにおいて、増幅産物のサイズが検出され、対照サンプルの長さと比較される;例えば、正常な遺伝子型と比較しての、欠失および挿入が増幅された産物のサイズの変化によって検出され得る。
実施例1:三重陰性乳がん(TNBC)におけるKRASバリアント
研究集団
この症例対照研究および遺伝子分析において、データを4つのコホートから評価した(表1)。KRASバリアント遺伝子型の度数分布を評価するために、エール(Yale)乳がん研究からの個体(研究群1)を判定した。エール乳がん研究からの個体(研究群1)を、エールインスティテューションレビューボード(the Yale institutional review board)(Hoffman A,et al.Cancer Res 2009;69:5970−77)によって承認された、米国コネチカットにおける乳がん症例対照研究に登録した。手短に言えば、患者は、30歳〜80歳であり、付随して(incident)組織学的に確認された乳がんを有し、がん歴(非黒色腫皮膚がん以外)がなかった。ER状態およびPR状態を全ての症例について確立したが、HER2状態は知られておらず、入手可能でなかった。対照をエールニューヘイブン病院(New Haven,CT,USA)か、またはアメリカ合衆国コネチカット州のトーランドカウンティのいずれかから召集した。エールニューヘイブン病院からの対照は、組織学的に確認された良性の乳房疾患に対して乳房関連手術を受けた。トーランドカウンティからの対照を、無作為番号ダイアル(random−digit dialing)(65歳未満の個体について)を介してか、またはヘルスケアファイナンス管理ファイル(the Health Care Finance Administration file)(=65歳)を通して同定した。インフォームドコンセントおよびがんの家族歴についてのデータ、妊娠歴(reproductive history)、人口統計学的要因、および血液サンプルを全ての参加者から得た。415人の症例および457人の対照は、この研究に利用可能なDNAサンプルを有し、これらは1990年と1999年との間に得られた。
KRASバリアントと受容体状態および乳がんサブタイプとの関連性を定義するために、完全な受容体状態およびサブタイプ分類を有する、乳がんと診断された690人のアイルランド人女性のコホートを評価した。このコホート(研究群2)からの患者は、組織学的に確認された乳がんを有し、ゴールウェイ大学病院(Galway University Hospital)(Galway,Ireland)倫理学委員会からの適切な倫理的な承認後にアイルランド西部から召集した。インフォームドコンセントおよび乳がんまたは卵巣がんの詳細な家族歴、および血液サンプルを全ての症例から得た。侵襲前の癌腫は別とした、全ての病期および組織学的タイプの乳がんの710人の症例。ER、PR、およびHER2状態を、標準組織病理学分析および免疫組織化学の使用によって、全てのサンプルについて確立し、HER2の陽性度について蛍光インサイチュハイブリッド形成によって確認した。これらのサンプルを、受容体状態によって管腔型A、管腔型B、HER2、または三重陰性乳がんと分類した(表2)。710人の患者のうちの690人は完全な情報を有し、彼らをこの研究において評価した。このコホートにおける360人の対照は、何らかのがんが自己報告された個人歴がなく、乳がんまたは卵巣がんのいずれの家族歴もない、同じ地理上の地域からの健常な女性であり、主に60歳よりも高齢であった。症例および対照を、主に、2006年7月〜2010年7月に召集した。
KRASバリアントが三重陰性乳がんの発生の増加したリスクを予測したかどうかを確立するために、三重陰性乳がんを有する患者のコホートおよびエールからの対照(研究群3)、三重陰性乳がんを有する患者および研究群2からの対照、ならびに研究群1からの対照のプールされた分析を行った。研究群3における患者は、エールニューヘイブン病院またはブリッジポート病院(Bridgeport, CT, USA)のいずれかにおいて処置を受けていた。エールヒューマンインベスティゲーション委員会(the Yale Human Investigation Committee)による承認後、組織または唾液の標本を156人の患者から得た。完全なデータは、1990年〜2007年に診断された140人の患者に関して利用可能であり、この研究に含まれた。三重陰性乳がんの130人の症例は、遺伝子およびmiRNA発現解析についての任意の処置の前に利用可能である腫瘍のサンプルを有し、そのうち78人をまた、KRASバリアントについても遺伝子型決定した。このコホートにおける113人の対照は、エールニューヘイブン病院に示された健常な女性であり、非黒色腫皮膚がんを別としたがんの個人歴を有さず、2000年と2007年との間に召集された。全ての症例および対照についての医学的情報、年齢、民族起源、および家族歴を得た。表3は、これら3つのコホートについての基礎情報を要約する。
KRASバリアントとER陰性腫瘍におけるBRCA変異との関連性を評価するために、ロッテルダム集団の本発明者らの以前の研究からの乳がんおよび公知のKRASバリアント状態を有するBRCA1変異保有者を分析した。上記ロッテルダム集団は、記載されている(Hollestelle A, et al.Breast Cancer Res Treat 2010;published online July 30.DOI:10.1007/s10549−010−1080−z)が、手短に言えば、この集団は、ロッテルダムファミリークリニック(Rotterdam Family Clinic)(Rotterdam,Netherlands)を介してエラスムス大学(Erasmus University)において調査者によって同定された、乳がんおよび記録されたBRCA1変異を有するオランダ人の患者を含んでいた。
手順
KRAS−バリアント遺伝子型決定アッセイ:カスタムTaqman SNP遺伝子型決定アッセイを用いて、全てのサンプルからのDNAをKRASバリアントについて遺伝子型決定した。バリアントG対立遺伝子について異型接合または同型接合のサンプルをKRAS−バリアントについて陽性であると考えた(Chin L,et al.Cancer Res 2008;68:8535−40)。
遺伝子発現解析:KRASバリアントについても試験されたエール三重陰性コホートからの78人の患者においてゲノム全体のmRNA発現を測定した。総RNAを、RecoverAll総核酸単離キット(Applied Biosystems)を用いて組織標本から単離し、全ゲノムDASLアッセイ(HumanRef−8 version 3.0,Illumina,San Diego,CA,USA)に対してハイブリッド形成した。データ処理および統計解析を、Bioconductor/Rソフトウェアにおけるlumiパッケージを用いて行った。3回の全ゲノムDASL実行からの遺伝子発現データを、一緒に組み合わせて処理した。30%未満の検出可能なプローブ、およびサンプルの10%未満において検出可能であるプローブを有するサンプルを、分位数標準化(quantile−normalization)の前に捨てた。74サンプルおよび18345プローブが、フィルタリング後に残った。
マイクロRNA分析:マイクロRNAアレイを、製造者のプロトコル(www.appliedbiosystems.com/absite/us/en/home/applications−technologies/real−time−pcr/mirna−profiling.htmlにおいて公的に利用可能である、miRNAプロファイリング(2008年1月1日にアクセスした)に従ってMultiplex RTおよびTaqMan低密度アレイヒトmiRNAパネルリアルタイムPCRシステム(Applied Biosystems)を用いて行った。目的のmiRNAの発現レベルを調べた。
統計解析
ハーディ−ヴァインベルク平衡について、全ての症例および対照の遺伝子型分布を検定し、平衡であることを見出した。無条件ロジスティック回帰を行って各遺伝子型に関連する相対的リスクを見積もった。対照を年齢(連続)および民族起源(白人、黒人、ヒスパニック、または他)について調整した。集団を、閉経期状態によって階層化(51歳以下、または51歳超によって見積もった)し、対照について0、ER陽性および/またはPR陽性腫瘍を有する症例について1、およびER/PR陰性腫瘍について2でコード化された3つのレベルの転帰変動要因での多項式ロジスティック回帰でのERおよびPR状態によって個別のリスクの見積もりを得た。ER/PR陰性疾患と比較して、ER陽性および/またはPR陽性疾患の症例における各遺伝子型について得られたパラメーター見積もりを比較して、相互作用についてWaldカイ二乗検定を行った。
研究群2における患者を乳がんのサブタイプに従って階層化し、GraphPad Prism4ソフトウェアを用いてカイ二乗検定を行って、p値、オッズ比(Or)および95%信頼区間(CI)を計算した。KRASバリアントの低頻度に起因して、全ての遺伝的関連分析について優性モデルを使用した。
カテゴリーの変動要因(例えば、民族起源、病期、および研究部位)をカイ二乗検定または両側フィッシャーの正確検定を用いて、そして連続変動要因(例えば、年齢)をt検定を用いて研究群間で比較した。ORおよび95% CIを、バイナリー帰結変動要因での無条件ロジスティック回帰モデルで三重陰性乳がんの対照および症例におけるKRASバリアントについて計算した。対照および症例としてコード化されるバイナリー帰結変動要因での多変量ロジスティック回帰分析は、変動要因(KRAS−バリアント状態、年齢、民族起源、および研究部位)を含んでいた。集団をまた、年齢群によって階層化し、51歳もしくはそれより若い患者(閉経期前の群)または51歳以上(閉経後の群)について個別のロジスティック回帰分析を行った。統計解析をSASバージョン9.1.3で行った。
発現セットの主成分分析に由来する、以前に公開された発現シグネチャーおよび軸に対応するように、経路活性化を測定した。生物学的産物(biological)を遺伝子発現データセットにおける技術的な情報源から分離するために主成分分析を使用した。各構成成分を、RNAの質、バッチ作用の構造、および分布しているプローブの生物学的注釈付け(すなわち、指定した構成成分についての高い絶対投影値(absolute projection value)を有する発現プロフィールを有するプローブ)に対する対応によって特徴付けた。遺伝子発現のシグネチャーを、遺伝子および特定の条件下におけるそれらの発現変化のリストとして提供する。このようなシグネチャーは、代表的にほぼ100程度の複数のプローブの調和した識別的発現を必要とするので、ノイズ入りデータ(noisy data)について特に価値がある。mRNAを、20年までの古さであるホルマリン固定のパラフィン包埋(FFPE)塊から抽出したので、シグネチャーアプローチでのデータセットの分析をジャスティファイ(justify)した(Kibriya M,et al.BMC Genomics 2010;11:622)。Sシグネチャースコアを、遺伝子寄与(contribution)のそれぞれのシグネチャーベクターとこれらの遺伝子についてのサンプルの発現プロフィールとの間で計算した。KRASバリアントと、それぞれのシグネチャーによって記載された転帰との関連性を、KRASバリアントのシグネチャースコアと野生型サンプルとの間で対応のあるコルモゴロフ−スミルノフ検定によって分析した。識別的遺伝子発現を、オフセットとして技術的バッチアーティファクトを考慮して線形モデルで評価した。変化倍率のモデル当てはめおよび経験的なBayesian誤差モデレーション(moderation)を、RについてのLIMMAパッケージを用いて行った(Smyth GK.Limma:linear models for microarray data.In:Gentleman R,et al,eds.Bioinformatics and computational biology solutions using R and bioconductor.New York,USA Springer,2005:397−420)。
miRNA発現を、それぞれ46個のmiRNAおよび2つの内部対照の8バッチにおいて分析した。マイクロRNA発現を、全ての発現したサンプルにまたがる幾何平均を用いて標準化した:miRNAを、35サイクル未満(ct<35)の後に閾値蛍光が検出される場合に発現していたと判断し、全ての発現したmiRNAの幾何平均サイクル数を減算した。全てのサンプルの3分の2超において発現されなかったmiRNAを除去し、その後、全ての残りの閾値サイクル(C)値にわたってスケールを標準化した。
KRASバリアント遺伝子型の度数分布は、研究群1(表1および表4)からの遺伝子決定された症例と対照との間で異ならなかった。しかし、KRASバリアントは、ER/PR陰性腫瘍を有する閉経期前患者における乳がんと著しく関連があった(表4)。閉経後の女性について、この関連性は観察されなかった。201人の対照のうち27人(13%)ならびにERおよび/またはPRについて陽性であるがんを有する44人の閉経期前の女性のうち4人(9%)がKRASバリアントを有したのと比較して、ER/PR陰性がんを有する24人の閉経期前の女性のうち8人(33%)がKRASバリアントを有した(図5)。従って、KRASバリアントは、閉経期前の女性についての受容体陰性乳がんの発生の増加したリスクの遺伝子マーカーであり得た。
研究群2において、478人の女性が管腔型A乳がんを有し、87人が管腔型B乳がんを有し、90人が三重陰性乳がんを有し、35人がHER2陽性乳がんを有した。このコホートからの690人の乳がん症例のうち98人の症例(14%)がKRASバリアントを有したが、乳がんのサブタイプ間で保有率は変動した:管腔型Aについて478人の症例のうち64人の症例(13%)、管腔型Bについて87人の症例のうち13人の症例(15%)およびHER2陽性サブグループについて35人の症例のうち2人の症例(6%)であるのと比較して、三重陰性乳がんを有する女性においてKRASバリアントは統計学的に有意に富化された(90人の症例のうち19人[21%])(p=0.044;図1)。三重陰性乳がんとのこの関連性もまた、51歳よりも若い女性において着目された(p=0.033、図1)。
群2および3ならびに全3コホート(n=1160)にわたる対照からの三重陰性乳がんの症例の比較によって、KRASバリアントの保有率について症例間または対照間に統計学的有意差が見出された(表5)。研究群1および3からの対照において、研究群2においてよりも多くの非白人女性が存在し、多変量解析において、非白人女性におけるKRASバリアントと三重陰性乳がんとの関連性の評価を可能にした。年齢、民族起源、および研究部位について制御した後、KRASバリアントは、多変量解析において、全ての女性について、三重陰性乳がんの発生の増加したリスクを予測しなかった(表6および表7)。しかし、KRASバリアントは、多変量解析において、このプールされた群において361人の閉経期前の女性における三重陰性乳がんの発生の統計学的有意差な増加したリスクに関連した(表6、表8、および表9)。
BRCA1コード配列変異は、三重陰性乳がんのリスクに関連し、KRASバリアントは、乳がんを有するBRCA1変異保有者において富化される(Hollestelle A,et al.Breast Cancer Res Treat 2010;published online July 30.DOI:10.1007/s10549−010−1080−z)ので、KRASバリアントと閉経期前三重陰性乳がんとの関連性が、BRCA1変異の保有者との関連性のみに起因するかどうかを決定した。BRCA試験された、コホート2および3からの三重陰性乳がんを有する36人の女性のうち、25人(69%)は、BRCA陰性であり、11人(31%)は、BRCA陽性であった。これらの患者のうち、BRCA陽性である女性では3人(27%)がKRASバリアントを有したのと比較して、8人(32%)のBRCA陰性の女性がKRASバリアントを有した。これらの知見は、KRASバリアントが、BRCA変異がなく、三重陰性乳がんを有する患者の独立した群に関連することを示唆する。
ロッテルダム集団コホートにおいて、KRASバリアント状態とERまたはPR陰性状態との間での関連性が発見された(Hollestelle A,et al.Breast Cancer Res Treat 2010;published online July 30.DOI:10.1007/s10549−010−1080−z;Kibriya M,et al.BMC Genomics 2010;11:622)が、この研究において、閉経後状態は考慮されていなかった。本明細書中に記載される研究の結果に関して、ロッテルダムコホートからの268人のBRCA1変異保有者と比較して、ER/PR陰性乳がんを有する126人のBRCA1変異保有者において、KRASバリアントの富化は観察されなかった(21.8%対23.5%、p=0.95)。従って、KRASバリアントと閉経期前三重陰性乳がんとの関連性は、BRCA1変異との関連性から独立している。
三重陰性乳がんにおけるKRASバリアントと改変されたBRCA1発現との間の潜在的な生物学的相互作用をさらに評価するために、研究群3からの74個の三重陰性腫瘍において、BRCA1発現レベルを決定した(表1)。KRASバリアントを有するそれらの患者は、KRASバリアント陰性三重陰性腫瘍と比較して、BRCA1発現の統計学的に有意な減少を実証した(プローブ1[ILMN_2311089]について、p=0.06、およびプローブ2[ILMN_1738027]についてp=0.01、図2)。さらに、KRASバリアントは、低減されたBRCA1活性の遺伝子発現シグネチャーとの統計学的に有意な関連性を実証した(p=0.04)(van‘t Veer LJ,et al.Nature 2002;415:530−36)。本明細書中に提供されるデータは、KRASバリアントが、公知のBRCA1変異を有する三重陰性乳がんを有する患者に限られていないが、KRASバリアント、改変されたBRCA1発現または機能性、および三重陰性乳がんの発生との間に生物学的相互作用が存在し得ることを示す。
KRASバリアント陽性である三重陰性乳がん腫瘍におけるシグナル伝達経路を、研究群3における患者からのKRASバリアント陰性であるものと比較した。KRAS mRNAの分析はKRASバリアント状態によって変動しなかったが、KRASの3’UTRに結合するmiRNAの作用に関して、このデータは、他の刊行物と一貫している(Chin L,et al.Cancer Res 2008;68:8535−40;Johnson SM,et al.Cell 2005;120:635−47)。KRASバリアントを有する腫瘍において、NRAS変異(Croonquist PA,et al.Blood 2003;102 2581−92)およびMAPキナーゼ活性化シグネチャー(Creighton CJ, et al.Cancer Res 2006;66:3903−11)(表10)の両方の増加が見出された。このデータは、KRASバリアントが、カノニカルRAS経路の遺伝子発現を改変することを示す。さらに、このデータは、KRASバリアントが、それが関連する腫瘍において、引き続いての、改変された下流遺伝子発現をもたらすという初めてのインビボでの証拠を提供する。
let−7 miRNAの濃度は、KRASバリアントを有する肺の腫瘍において改変されるので、KRASバリアントを有する三重陰性乳がん腫瘍におけるlet−7の濃度を調べた。このデータにより、KRASバリアント関連腫瘍における全てlet−7 miRNAファミリーメンバーのより低い濃度が実証された(図3)。
どのようにKRASバリアントが三重陰性乳がんの公知の遺伝子発現シグネチャーと統合するかを確立するために、このような腫瘍において識別的発現をする公知のシグネチャーを評価した。KRASバリアント腫瘍は、三重陰性および基底型腫瘍生物学の数個の特徴を有し、この特徴としては、発現セットに由来する主要な構成成分における低減したエストロゲンシグナル伝達が挙げられる(p=0.04)。さらに、KRASバリアント腫瘍は、管腔型前駆細胞シグネチャーを有し(p=0.04)、それは基底型様乳がんについての候補前駆細胞である(Lim E, et al.Nat Med 2009;15:907−13)(表10および図6)。管腔型前駆細胞およびBRCA変異様シグネチャー内で、細胞接着、組織侵入、増殖、および血管新生のマーカー(例えば、α5インテグリン、DUSP6、およびオーロラキナーゼB)は、識別的に調節をした(表11)。この発見は、データセットについてKRASバリアントを非バリアントに対して比較した線形モデルにおける識別的発現の遺伝子に基づいて、創傷治療について41遺伝子のうち3つ(p=0.02)、グリカン発現について151遺伝子のうち3つ(p=0.05)、およびMEK活性化について148遺伝子のうち4つ(p=0.009)において観察された機能的注釈付けによるわずかな富化と合う(図4、表12および表13)。
実施例2:種々のがん細胞系におけるKRASバリアントの保有率
材料および方法
遺伝子型決定:NCI−60細胞系パネルからのDNAを、NCIのDevelopmental Therapeutics Programから得た。Taqman遺伝子型決定を行って、以前に記載される(Bussey KJ,et al.Mol Cancer Ther 2006;5:853−67)ようにKRASバリアント対立遺伝子の存在を決定した。細胞を、凍結ストックから最大20継代にわたって標準条件下で培養した(dtp.cancer.gov/branches/btb/ivclsp.html;Monks A,et al.J Natl Cancer Inst 1991;83:757−66を参照のこと)。Qiagen QIAamp DNA血液マキシキット手順(cat.51192)を用いてDNAを単離した。
統計解析:KRASバリアント対立遺伝子データを数字でコード化した。1はKRASバリアント対立遺伝子の存在を表し、0はKRASバリアント対立遺伝子の不存在を表す。このパターンを、COMPARE分析(Paull KD,et al.J Natl Cancer Inst 1989;81:1088−9248)において、「種」として使用して、NCI−DTPデータベースにおける、存在しているNCI−60データセットにプローブした。相関は、例えば、miRNA測定およびDNAメチル化測定を含んだ。正の相関は、例えば、バリアント対立遺伝子を有する細胞系が、miRNA/mRNAのより高い発現、またはより大きい百分率のDNAメチル化を有する傾向があることを示す。逆に負の相関は、バリアント対立遺伝子を有する細胞系が、所定のmiRNA/mRNAのより低い発現、または示された遺伝子において、より低い百分率のDNAメチル化を有する傾向があることを示す。これらのデータセットは、dtp.cancer.gov.において問い合わせまたはダウンロードされ得る。
KRASバリアントの存在は、リスクの予測および腫瘍生物学、ならびに複数のがんにおける処置に対する応答についての遺伝マーカーである。KRASバリアントの存在は、KRAS 3’UTRによる改変された調節をもたらす。この研究により、がん細胞におけるKRASバリアントの生物学的重要性が解明される。本明細書中に提供されるデータにより、KRASバリアントの存在によって影響される例示的な分子経路が解明される。広い範囲のがんのタイプを同時に分析するために、がん細胞系(Blower PE,et al.Mol Cancer Ther 2007;6:1483−91;Liu H,et al.Mol Cancer Ther 2010;9:1080−91)の広範囲NCI−60パネルを使用した。種々の分子パラメーターを研究して、これらのがん細胞系においてどの分子事象がKRASバリアントの存在に相関するかを決定した(Kundu,S.T.et al.2012 Jan 15.Cell Cycle 11:2,361−366)。
NCI−60パネルにおける60細胞系のうちの7つは、KRASバリアント対立遺伝子を含む(表14)。細胞系のNCI−60パネルが、KRASコード領域における獲得優性変異(KRAS変異)の存在、またはKRASバリアントの存在のいずれかに基づいてカテゴリー化される場合、KRASバリアントを含んだ7つの細胞系全てがKRAS活性化変異の存在について陰性であることを決定した。同様に、KRASコード配列変異を保有する細胞系は、KRASバリアント対立遺伝子を欠いていた。従って、KRASコード変異またはKRASバリアント対立遺伝子のいずれかの存在または出現は、これらの細胞系において互いに相容れない。さらに、この互いに相容れないことが、多様ながんのタイプに由来する細胞系において起こるので、この互いに相容れないことは、特定の組織のタイプに対して特異的ではない。むしろ、この互いに相容れないことは、起源に関わらず、これらのがん細胞系の一般的な特徴である。これらの結果は、これら2つの事象のいずれか単独の出現(すなわち、KRASバリアントの出現またはKRASコード変異の出現)が、これらのがんのタイプにおいて、腫瘍形成に影響するのに十分であることを示す。これらの結果はまた、カノニカルコード配列変異によって引き起こされるKRAS活性化のレベルが、3’UTRにおけるKRASバリアントの存在によって誘導される増大したKRAS発現に対して機能的に同等であることを示す。獲得KRASコード変異およびKRASバリアントについての、この互いに相容れないことをまた、非小細胞肺がん患者において(Chin LJ,et al.Cancer Res 2008;68:8535−40)および卵巣がん患者において(Ratner E,Cancer Res 2010;70:6509−15)見出されたが、結腸がん患者においては見出さなかった(Zhang W,et al.Ann Oncol 2011;22:484−5;Zhang W,et al.Ann Oncol 2011;22:104−9)。
KRASバリアント対立遺伝子を有する細胞系が、miRNAの発現において保存された改変を示すかどうかを決定するために、KRASバリアント対立遺伝子を含む7つの細胞系から生成されたmiRNA発現プロフィールにおいて、NCI−60パネルの残りの細胞系のmiRNA発現プロフィールと比較して統計解析を行った(Blower PE, et al. Mol Cancer Ther 2007; 6:1483−91; Gaur A, et al. Cancer Res 2007; 67:2456−68)。KRASバリアント対立遺伝子の存在は、miR−23、miR−27、およびmiR−210の増加した発現と統計学的に有意な正の相関を示す(表15)。miR−23およびmiR−27は、同じクラスター、ならびに血管新生および転移の事前の進行から発現した(Zhou Q, et al.Proc Natl Acad Sci USA 2011; 108:8287−92)。例えば、miR−23およびmiR−27は、内皮細胞および高く血管形成された組織において富化された。さらに、miR−23およびmiR−27は、抗血管新生機能を有する、Sprouty2およびSema6Aの発現を減少させることによって、血管新生に不可欠であるシグナル伝達経路を増大させた。miR−23またはmiR−27のいずれかの機能をブロックすることは、インビトロでのVEGFに応答した毛管形成および移動の低減、ならびにインビボでの生後の網膜の減少した血管形成をもたらす(Zhou Q, et al.Proc Natl Acad Sci USA 2011;108:8287−92)。KRASバリアントと、miR−23、miR−27の増加した発現との統計学的に有意な正の相関は、KRASバリアント対立遺伝子を有する腫瘍細胞が、増大したレベルのmiR−23およびmiR−27の結果として、成長および転移性進行の傾向があることを示唆する。
miR−210の発現は、細胞におけるKRASバリアント対立遺伝子の存在と統計学的に有意に相関する。miR−210は、慢性低酸素症のマーカーである。さらに、miR−210は、乳房および黒色腫の腫瘍の増殖および転移、ならびに好ましくない予後に関連する。miR−210は、HIFタンパク質の直接的な転写標的である。miR−210の増大したレベルは、低酸素条件下での腫瘍細胞の生存に必要とされる。miR−210は、低酸素下での細胞周期停止に必要とされるMYCのアンタゴニストである、MNTの発現を直接的に調節する。結果として、miR−210の増加したレベルは、腫瘍細胞における低酸素ストレス条件下での細胞周期停止のオーバーライドの一因となる。増加したmiR−210発現は、KRASバリアントの存在に関連するので、KRASバリアントを含む腫瘍細胞は、低酸素条件下で生存および増殖する。
本明細書中に提供されるデータは、KRASバリアントが、数個のmiRNA(例えば、miR−23、miR−27、およびmiR−210が挙げられる)の発現を制御する異常なシグナル伝達経路の一因となること、またはこれを開始することを実証する。miRNA(例えば、miR−23、miR−27、およびmiR−210)の発現を調節するシグナル伝達経路の混乱は、腫瘍増殖および転移性トランスフォーメーションの開始、発生、維持、または増強をもたらす。
遺伝子プロモーターのメチル化状態における変化が遺伝子発現の減少をもたらすので、プロモーターのメチル化は、多くのがんにおいて遺伝子発現をサイレンシングさせる1つのメカニズムである。具体的には、DNAメチル化は、しばしば遺伝子のプロモーター領域において、CpGジヌクレオチドがメチル化される場合に引き起こされるエピジェネティックな作用である。メチル化は、遺伝子の転写を媒介する分子によるプロモーターへの接近をブロックするので、プロモーターのメチル化は、遺伝子サイレンシングをもたらす。異なるがんは、明瞭なメチル化パターンを示し、その結果は、遺伝子発現シグネチャーにおける改変である。従って、KRASバリアントを有する腫瘍細胞系において、DNAメチル化パターンにおける改変があるかどうかを決定するために、これらの細胞系のメチル化状態を、NCI−60パネルにおける非KRASバリアント系と比較した(Ehrich M, et al. Proc Natl Acad Sci USA 2008; 105:4844−9)。KRASバリアント対立遺伝子の存在は、多くの遺伝子(例えば、Notch1、サイクリンD3、およびCNBP(ZNF9としても公知)が挙げられる)のプロモーターの増加したメチル化と統計学的に有意な正の相関を示す(表16)。
がんにおけるNotch1発現の役割は、様々である。多くの腫瘍において、Notch1の過剰発現または活性化は、がんの進行および転移をもたらす。例えば、Notch1の活性化は、乳がん細胞の侵襲性および移動性の特徴付けにおける増加をもたらす。あるいは、MYC背景におけるNotch1の過剰発現は、マウスの肺において腺腫を誘導し、肺腺癌腫の形成をもたらす。従って、この証拠は、Notch1が癌遺伝子として機能し得ることを示す。対照的に、Notch1はまた、腫瘍抑制因子としても機能し得る。例えば、Notch1における阻害性変異(inhibitory mutation)は、頭頸部の扁平上皮癌腫において同定されている。マウスの皮膚のケラチノサイトにおけるNotch1の枯渇(depletion)は、化学的発癌物質またはがん遺伝子のRasによる、高められた腫瘍形成をもたらす。ヒト乳頭腫ウイルス(HPV)に対して陽性である子宮頸がんにおいて、Notch1発現は、正常な隣接する組織と比較して低減する。HPV−陽性子宮頸がん、および神経芽細胞腫細胞(Zage PE, et al. Pediatr Blood Cancer 2011)の活性化Notch1の過剰発現は、成長阻害をもたらす。ひとまとめに考えると、Notch1が多くのがんにおいて、異常に調節される(dysregulate)こと、そして、いくつかの例において、事実上の腫瘍抑制因子として機能し得ることを、この証拠は示す。Notch1プロモーターのメチル化は、KRASバリアント陽性がん細胞において増加するので、Notch1発現は、KRASバリアント対立遺伝子を保有する細胞において減少され得、従って、KRASバリアント細胞系は、Notch1の腫瘍抑制作用を阻害することによって、それらの腫瘍形成の可能性を誘導または維持し得る。
サイクリンD3は、細胞周期のG/S移行に必要とされる細胞周期タンパク質のサイクリンファミリーのメンバーである。KRASバリアント細胞系において、サイクリンD3のプロモーターのメチル化は増加し、これは、サイクリンD3転写の抑制を示す。結果として、サイクリンD3がこれらの細胞系のトランスフォーメーションされた表現型に必要とされないか、またはサイクリンD3プロモーターのメチル化がサイクリンD3の転写抑制体をブロックするかのいずれかの、2つの例示的なメカニズムを証拠は示唆する。
Notch1およびサイクリンD3と対照的に、ZNF9とも呼ばれるCNBP(細胞性核酸結合タンパク質)は、がんの発生または進行のいずれにも関連しない。しかし、CNBP/ZNF9は、MYCプロモーターに結合する複合体の一部である。MYCの発現が異常に調節される場合、MYCは、がんの発生および進行の一因となる。KRASバリアントとZNF9のメチル化状態との関連性が、KRASバリアント細胞におけるがんの進行の一因となるメカニズムは、明らかではない。
KRASバリアント対立遺伝子を含む7つの細胞系における遺伝子発現を、NCI−60パネルにおける残りの細胞系のプロフィールと比較し、これらの細胞系において遺伝子発現における特定の改変を決定した。表17に示すように、発現の増大が、細胞系におけるKRASバリアントの存在に統計学的に有意に相関する遺伝子は、グルタチオンS−トランスフェラーゼθ1(GSTT1)である。GSTT1遺伝子は、グルタチオン基をこれらの化合物に結合体化することによって、複合体代謝副産物、生体異物および薬物を解毒し、従って、それらをより可溶性および容易に細胞から排出されるようにする、ヒトフェーズII解毒酵素のグルタチオンSトランスフェラーゼファミリーのメンバーをコードする。θ1アイソフォームは、いくつかのがんにおいて関連付けられている。例えば、GSTT1の増加した発現は、侵襲性の膀胱がんに統計学的に有意に相関する。他の異なる腫瘍タイプにおいて、遺伝的多型に起因して、GSTT1は、非機能的であるか、または存在せず、従って、毒性代謝物の蓄積または増加した蓄積の結果として、発癌現象および好ましくない予後判定の増加したリスクをもたらす。
マイトジェン活性化プロテインキナーゼ3(MAPK3)は、MAPキナーゼファミリーのメンバーである。さらに、マイトジェン活性化プロテインキナーゼ3(MAPK3)の増加した発現は、がん細胞におけるKRASバリアントに関連する。MAPK3は、細胞外の合図からのシグナルを変換し、細胞内プロセス(例えば、細胞増殖および分化)を調節する。例えば、リン酸化MAPK3の増加した発現は、侵襲性の結腸直腸腫瘍および転移性髄芽腫に関連している。KRASバリアント陽性がん細胞におけるKRASの増加したレベルは、MAPK3 mRNAにおける増加に関連する。少なくとも部分的に、増加したMAPK3発現は、これらの細胞における増加した細胞増殖および新生物進行を誘導する。同様に、別のMAPK(MAP2K4)の発現は、KRASバリアント陽性発現プロフィールにおいて増加した。さらに、KRASおよびMAPK(MAPK3および/またはMAP2K4)は、細胞増殖および/または新生物進行を誘導するかまたは高めるKRASバリアントがん細胞におけるKRASとMAPKシグナル伝達との間の相乗的な相互作用の一因となり得る。
シナプトタグミン−12の増加した発現およびインター−αグロブリンインヒビター−H1の増加した発現は、がん細胞系におけるKRASバリアントの存在に正に相関する。正常条件下において、シナプトタグミンは、シナプス伝達の間にカルシウム依存膜輸送を調節する。シナプトタグミン−12とがんとの関与の証拠はないが、シナプトタグミン−12のファミリーメンバーであるシナプトタグミン−13の過剰発現は、ラットの肝臓腫瘍細胞系に由来する細胞のトランスフォーメーションされた表現型を抑制する。KRASバリアント陽性がん細胞系におけるシナプトタグミン−12の過剰発現は、がん細胞におけるシナプトタグミンに関与する新規経路の調節解除を示す。インター−α(グロブリン)インヒビターH1は、プラズマセリンプロテアーゼインヒビターの重鎖である。機能的に、インター−α(グロブリン)インヒビターH1は、細胞外マトリックスの安定性に必要とされる。がんにおけるインター−α(グロブリン)インヒビターH1の役割は、未探索のままであるが、最近の証拠は、インター−α(グロブリン)インヒビターH1の発現が種々の固形腫瘍(例えば、肺、結腸、および乳房の腫瘍が挙げられる)において、欠損しているか、または抑えられるかのいずれかであることを示す。
実施例3:KRASバリアントおよび処置(卵巣がん)に対する患者の応答
材料および方法
全生存率分析コホート:既知のBRCA変異のないEOCと診断された女性からの、完全な臨床データおよびDNAを、個々のインターナショナルレビューボード(International Review Board)の承認下で以下の3つの機関から含めた。全てのプロトコルは、患者を、選択の偏りを避けるために、彼らの診断時に前向き収集した。参考文献は、これらの患者の以前の詳細な説明を示す:(1)イタリア、トリノ#1(n=197)(Lu L,et al.(2007).Cancer Res 67:10117−10122)、(2)イタリア、ブレッシア#2(n=59)(Ratner E,et al.(2010).Cancer Res 15: 6509−6515)、および(3)エールニューヘイブン病院(YNHH)(n=198)。エールの患者を、エールメディカルスクール(the Yale Medical School)において2000年と2009年との間に診断された、新たに診断されたEOC患者の、2つ臨床試験において前向き収集した(表18)。
公知の転帰を有する記録されたBRCA変異体EOC症例を以下の2つの機関から収集した:(1)YNHH(n=17)および(2)シティーオブホープ包括がんセンター(ホームthe City of Hope Comprehensive Cancer Center)(n=62)(表19)。
全ての1期卵巣がん患者がアジュバント化学療法を受けるわけではないので、1期腫瘍を有する患者についてサブステージ情報が利用可能ではない場合、これらの患者を分析から除外した。そうでなければ、2〜4期に1B期および1C期の腫瘍を含めた。境界型腫瘍の不注意な包含を最小限にするために、未知のグレードを有する腫瘍をこの分析から除外した。ネオアジュバント化学療法で処置される女性について、病理学的診断の日を処置の開始日と考えた。アジュバント化学療法で処置される女性について、手術の日を処置の開始日と考えた。野生型BRCAを有するか、またはBRCA変異について試験されていない386人の患者、および記録されたBRCA変異を有する79人の患者の総計は、上記パラメーターに適合し、2つの生存率分析に含んだ。
ネオアジュバント化学療法コホート:1996年と2010との間にYNHHで、ネオアジュバントプラチナベースの化学療法後、細胞減少手術を受けたEOCを有する女性を、インターナショナルレビューボード(International Review Board)が承認したプロトコルにおいて同定した(n=125)(表20)。このコホートの患者は、提示の際に最適な腫瘍縮小手術のためには腫瘍量が大きすぎることに起因して、主要な処置として化学療法を受けた。化学療法後、患者は、細胞減少手術および追加のアジュバント処置を受けた。ネオアジュバントプラチナ含有の組み合わせの4回またはそれより多くのサイクルで処置された患者のみを、この分析に含めた(n=116)。最適な細胞減少を、手術後に1cm未満の残りを測定する残存疾患と定義し、他方、最適未満の細胞減少を、手術の完了において1cm以上を測定する残存疾患と定義した。残存疾患に影響を与える要因としての手術の技量の偏りを避けるために、同じ外科医団によってエールで手術を受けた女性のみを含めた。
プラチナ抵抗性の分析のための患者:プラチナ抵抗性を、プラチナ含有アジュバント化学療法の完了から再発の日まで6ヶ月未満の無増悪生存率と定義した。無増悪生存率区間は、イタリア#1、イタリア#2、およびYNHH患者(n=291)からの女性から利用可能であった。表21は、これらの患者の臨床病理学的パラメーターを記載する。
KRASバリアントの検出:DNAを、腫瘍、血液、または唾液から標準方法を用いて単離した。KRASバリアントは、体細胞的に獲得されたとは思われないし、異種接合性の欠損を必要ともしない(Chin LJ,et al.(2008).Cancer Res 68:8535−8540);それゆえに、例えば、血液および唾液は、試験するのに適しており、結果は、試験された組織に関わらず同一である。全てのサンプルにおいて、KRASバリアントに特異的なプライマーおよびTaqMan(Applied Biosystems,Foster City,CA,USA)PCRアッセイを用いて、KRASバリアント対立遺伝子を検出した。遺伝子型決定を、COHからのサンプル(彼らの施設において遺伝子型決定が行われたので)を除いて、YNHHにおいて行った。集団の3%未満がKRASバリアントの2つのコピーを保有する(Chin LJ, et al. (2008). Cancer Res 68: 8535−8540)。このように、KRASバリアント対立遺伝子の少なくとも1つのコピーを保有した患者をKRASバリアント保有者として分類した。
KRASバリアントを有する、および有さない、EOCの遺伝子発現解析:16人の患者(9人の非バリアント、および7人のKRASバリアント)から得られた新鮮凍結腫瘍サンプルにおける遺伝子発現を、Affymetrix GeneChip Human Genome U133 Plus 2.0プラットフォーム(Affymetrix,Santa Clara,CA,USA)において、プロファイリングした。全てのサンプルは、IIIC期またはIV期である高グレード漿液上皮卵巣腫瘍からであった。画像をMAS5アルゴリズムで処理し、サンプルの少なくとも75%において不存在であると判断されたプローブを除去した。強度の値をlog変換し、分位数で標準化した。R統計ソフトウェア(R Foundation for Statistical Computing,publicly available at www.r−project.org)のためのLIMMAパッケージに実装されるような、線形モデルおよび経験的Bayesian誤差モデレーション(moderation)を用いて、識別的遺伝子発現を52歳以上の患者(n=6 非バリアントおよび4 KRASバリアント)から得られたサンプルにおいて評価した(Smyth G.(2005).Limma.in Gentleman R, et al.(eds)Bioinformatics and Computational Biology Solutions using R and Bioconductor. Springer:New York,pp.397−420)。
公開された結果と、このデータセットにおけるKRASバリアントとの関連性を、異なるプラットフォームに対応した作用を減少させるためのシグネチャーアプローチを用いて評価した(Paranjape T,et al.(2011).Lancet Oncol 12:377−386)。手短に言えば、シグネチャースコアを、これらの遺伝子について、遺伝子貢献のそれぞれのシグネチャーベクターと各サンプルの発現プロフィールとの間のピアソンの正の相関としてコンピューターで計算した。KRASバリアントおよび非バリアントのEOCサンプルにおけるシグネチャースコア間の差を、両側コルモゴロフ−スミルノフ検定を用いて判定した。そうでないと示されない限り、それぞれの刊行物からの遺伝子リストをシグネチャーベクターとして使用した。Petersら(Mol Cancer Ther 4:1605−1616)による研究からのデータを、Gene Expression Omnibus(GSE1926)から得、再分析して、プラチナ感受性サンプルとプラチナ抵抗性サンプルとの間の50個の最も著しく識別的発現をする遺伝子からのシグネチャーを生成した。
化学的感受性および細胞生存力アッセイ:単独、または組み合わせにおける薬物の活性を、高スループットCellTiter−Blue細胞生存力アッセイによって決定した。これらのアッセイについて、1.2×10細胞を、Precision XSリキッドハンドリングステーション(Bio−Tek Instruments Inc.,Winooski,VT,USA)を用いて、384ウェルプレートの各ウェルにプレートし、37℃、5%COでインキュベートして、一晩、付着させた。リキッドハンドリングステーションを用いて、全ての薬物を培地において2:3または1:2に連続希釈し、5μlのこれらの希釈物を、示された回数で適切なウェルに加えた。4つの複製ウェルを各薬物濃度のために使用し、追加の4つの対照ウェルには薬物のない希釈物対照を入れた。薬物とのインキュベーション期間の終わりに、5μlのCellTiter−Blue試薬(Promega Corp.,Madison,WI,USA)を各ウェルに加えた。細胞生存力を、残りの生存可能な細胞がリザズリンをレソルフィンへと生物還元させる能力によって評価した。レソルフィンの蛍光(579nm Ex/584nm Em)をSynergy 4マイクロプレートリーダー(Bio−Tek Instruments Inc.)を用いて測定した。蛍光データをMicrosoft Excel(Microsoft)に移して、薬物を入れられていない4つの複製細胞ウェルに関する生存力百分率を計算した。IC50を、XLfitバージョン5.2(ID Business Solutions Ltd)を用いたS状平衡モデル回帰(sigmoidal equilibrium model regression)を用いて決定した。IC50を、成長/生存力における50%の減少に必要とされる薬物の濃度と定義した。全ての実験を、最低3回実施した。
KRASバリアントの標的化:いわゆる「シード配列」に対応するsiRNAガイド鎖の5’末端における6個のヌクレオチドの変動する位置に一塩基多型を置くことによって、低分子干渉RNA配列を設計してKRASバリアント配列を標的化した。Blast検索を行って、交差反応性(cross reactivity)を最小限にした。siRNA配列のいくつかにおいて、DNAヌクレオチドを導入して、ガイド鎖のアルゴノートエフェクター複合体への好ましい組み込みに対する熱エネルギーの(thermoenergetic)特徴を最適化するか、またはバリアントに対する特異性を増加させた。
実験において使用される低分子干渉RNAガイド鎖配列は、以下の通りである(小文字=RNA、大文字=DNA;GS=ガイド鎖、PS=パッセンジャー鎖):
2−1 GS ugcaucacuugaggucaggag(配列番号23)
2−1 PS ccugaccucaagugaugcacc(配列番号24)
2−3 GS TGCATCACuugaggucaggag(配列番号25)(2−1と同じパッセンジャー鎖)
3−2 GS ucaucacuugaggucaggagu(配列番号26)
3−2 PS uccugaccucaagugaugcac(配列番号27)
使用される陰性対照をQiagen(Valencia, CA, USA)(AllStars Negative−Control siRNA)から購入した。これらの配列のKRASバリアントに対するノックダウンの有効性および特異性を、二重ルシフェラーゼアッセイを用いて確認した(WO/2009/155100を参照のこと、その内容は、本明細書中で参考として援用される)。オリゴヌクレオチドの組み合わせを、標準条件を用いてアニーリングし、次に、標準プロトコルを用いて細胞へトランスフェクションした。MTTアッセイを用いて細胞生存率をアッセイし、実験を4連で行い、全ての系について、4つの独立した実験において繰り返した。以前に記載された(Chin LJ, et al. (2008). Cancer Res 68: 8535−8540)ように、細胞溶解物をトランスフェクション後72時間で収集し、KRASタンパク質レベルをKRASに特異的なプローブを用いて、ウエスタン分析によって測定した。
統計:人口統計学的変動要因の有意性を判定するために、カテゴリー的変動要因について、カイ二乗検定または両側フィッシャーの正確検定を使用した。t検定を連続変動要因(例えば、年齢)について使用した。カプラン−マイヤー方法(Kaplan E and Meier P. (1958). J Am Stat Assoc 53: 457−481)を用いて、KRASバリアント患者およびKRAS野生型患者の全生存期間を比較し、生存曲線の統計学的有意性をログランク検定(Mantel N.(1966).Cancer Chemother Rep 50:163−170)によって決定した。Cox比例ハザード回帰モデル(Cox D.(1972).J R Stat Soc 34:187−220)を、全生存率に及ぼす、KRASバリアント、ならびに人口統計学的変動要因および予後変動要因(例えば、年齢、病期、および組織学)の影響を判定するために使用した。多変量ロジスティック回帰分析(Cox D.(1970).The Analysis of Binary Data. Methuen,London)を、最適未満の細胞減少の確率に及ぼす、KRASバリアントならびに他の人口統計学的要因および予後判定の要因の影響を決定するために使用した。多変量ロジスティック回帰分析(Cox D. (1970). The Analysis of Binary Data.Methuen,London)を、プラチナ抵抗性の確率におけるKRASバリアントと他の予後判定の要因との関連性を判定するために使用した。全ての統計学的分析をSAS 9.1.3(SAS Institute Inc.,Cary,NC,USA)を用いて、R 2.12.1(R Foundation for Statistical Computing)において行った。
データおよび結果
有害なBRCA変異について試験して陰性であるか、または試験していないかのいずれかである454人のEOC患者におけるKRASバリアントと全生存率との関連性を評価した。全体のコホートを考慮した場合、KRASバリアントは、カプラン−マイヤー解析によって、より悪い生存率を予測しなかった。KRASバリアントは、閉経後の卵巣がん(Chin LJ, et al.(2008).Cancer Res 68:8535−8540)ととても強く関連するので、52歳以上の女性(n=279)における生存率を評価した。52歳以上は、閉経期状態の適切な代用物であると考えられる。カプラン−マイヤー解析によって、非バリアントEOC患者(n=220、図7、ログランク P=0.0399、非KRASバリアント生存率メジアン(survival median)60ヶ月、KRASバリアント生存率メジアン34ヶ月)と比較して、閉経後のKRASバリアントEOC患者(n=59)において生存率を著しく減少させた。他の変動要因(年齢、病期、グレード、組織学、および処置センターが挙げられる)を、多変量Cox比例ハザード回帰モデルにおけるKRASバリアント状態に含む場合、KRASバリアントは、EOCを有する閉経後の女性について減少した全生存率の統計学的に有意な予測子であった(表22);KRASバリアントについてのハザード比は、1.67であった(95%信頼区間:1.09−−2.57、P=0.019)。
KRASバリアントと有害なBRCA1またはBRCA2変異を保有するEOC患者(n=79)の個別のコホートにおける生存率との関連性を評価した。BRCA変異を保有するEOC患者は、BRCA変異を有さないEOC患者よりも統計学的に有意に若かった(52.7歳対60.8歳、P<0.0001)。さらに、BRCA変異を有するEOC患者は、年齢、病期、グレード、および組織学について制御した多変量解析によれば、BRCA変異を有さないEOC患者よりも著しく長いメジアン生存率を有した(120ヶ月対52ヶ月、P=0.0036)。多変量Cox比例ハザード回帰モデルを用いた多変量解析において、KRASバリアントを有するかまたは有さないBRCA変異を有するEOC患者間での生存率において有意差はない(表23、KRASバリアントハザード比=0.75、95%信頼区間:0.21−2.72、P=0.66)。この研究において、有害なBRCA変異を有する閉経後のEOC患者において生存率におけるKRASバリアントの影響を評価するには、患者が少なすぎた。
閉経後のKRASバリアント陽性EOC患者において、減少した生存率を説明するために、KRASバリアントの陽性度とプラチナベースの化学療法に対する応答との関連性を評価した。プラチナベースの化学療法は、EOCの処置において標準の第一選択化学療法である。第一に、エールニューヘイブン病院(YNHH)において、ネオアジュバントプラチナ含有化学療法で、その後、外科的細胞減少で処置されたEOCを有する全ての女性(n=116)を評価した。手術(細胞減少)後の残存疾患を、化学療法に対する患者の応答の代理マーカーとして使用した。非バリアント患者(n=90)ではたった3.33%であったのと比較して、KRASバリアント患者(n=26)では15.4%が最適未満で細胞減少した(手術後41cmの残存疾患)ことが決定された(図8、P=0.044)。KRASバリアントはまた、年齢、病期、グレード、および組織学について制御した多変量ロジスティック回帰モデルにおいて、ネオアジュバント化学療法および手術後の、最適未満の細胞減少に有意に関連した(表24、オッズ比=9.36、95%信頼区間:1.34−−65.22、P=0.024)。
KRASバリアントEOC患者に見られるネオアジュバントプラチナベースの化学療法に対する好ましくない応答の原因が、プラチナ化学療法に対する抵抗性に起因するかどうかを決定するために、利用可能な応答データ(n=291)を用いて、記録されたBRCA変異がなく、プラチナ化学療法でアジュバントにより処置された全てのEOC患者におけるプラチナ抵抗性を評価した。プラチナ抵抗性(プラチナベースの化学療法を受けた6ヶ月以内での疾患再発としてこの実施例において定義される)が、KRASバリアント陽性EOC患者において、非KRASバリアントEOC患者よりも著しく起こりやすいことが決定された(16.67%対7.56%、P=0.034)。KRASバリアントは、全ての年齢のEOC患者についてのプラチナ抵抗性について、細胞減少手術後に残っている残存疾患、病期、組織学、年齢、およびグレードについて制御した多変量ロジスティック回帰分析において、統計学的に有意な予測因子であった(表25、オッズ比=3.18、95%信頼区間:1.31−−7.72、P=0.0106)。
遺伝子発現研究を、利用可能な新鮮凍結組織を有した卵巣がん患者の小さいコホートにおいて行い(ブレッシアコホート)、KRASバリアントを有する7つの漿液EOCサンプルと9つのKRASバリアントを有さないものとの間で比較した(n=16)。このコホート内で、EOCを有する52歳超の閉経後のEOC患者において(n=10)、KRASバリアント関連TNBCに関連すると以前に見出された遺伝子シグネチャー(Paranjape T, et al.(2011).Lancet Oncol 12:377−86)をまた、KRASバリアント関連EOCにおいて上方調節した(図9a)。TNBCにおける以前の分析と同様に、EOC KRASバリアント腫瘍におけるKRAS関連下流経路の過剰発現が見出された。これは「KRAS依存」(Singh A,et al.(2009).Cancer Cell 15:489−500)と一貫している(図9b)。
プラチナ感受性シグネチャーと比較したプラチナ抵抗性シグネチャーを同定する遺伝子発現データの以前の分析を用いて(Peters D, et al. (2005). Mol Cancer Ther 4: 1605−1616)、KRASバリアントEOCサンプルが、非バリアントEOCサンプルと比較して、より低いカルボプラチン感受性シグネチャーを有することを決定した(図9c)。AKT経路の活性化が、頻繁にプラチナ抵抗性に関与することを示す知見と一致して、AKT3が、KRASバリアントEOC腫瘍において、最も著しく上方調節された転写産物のうちの1つであることが決定された(図9d)。
miRNA発現データは腫瘍サンプルにおいて利用可能でなかったが、KRASバリアントを有する2つの細胞系(BG−1およびIGROV1)におけるlet−7b miRNAの発現を、非KRASバリアント系(CAOV3)におけるlet−7bの発現と比較した。let−7b miRNAの発現は、KRASバリアント陽性肺腫瘍(Chin LJ,et al.(2008).Cancer Res 68:8535−8540)および三重陰性乳房腫瘍(Paranjape T,et al.(2011).Lancet Oncol 12:377−386)において改変される。
let−7bが、KRASバリアントを有する細胞において統計学的に有意により低いことが決定された(図12)。
KRASバリアントの存在下での改変された化学感受性を確認するために、KRASバリアントを有する、および有さない、EOC細胞系を、異なる化学療法薬剤に対するそれらの感受性を試験するために使用した。例えば、KRASバリアント陽性/BRCA野生型(BG1)、非バリアント/BRCA野生型細胞系(CAOV3)、およびKRASバリアント陽性/BRCA1変異体である細胞系(IGR−OV1)である細胞系を試験した。KRASバリアント系(BG1)は、KRASバリアントを有さない細胞系であるCAOV3と比較して、カルボプラチン(P<0.04)、およびカルボプラチン/パクリタキセル組み合わせ化学療法(P<0.0001)に対して統計学的に有意に抵抗性であることを決定した。対照的に、KRASバリアントおよび有害なBRCA1変異を有する細胞系であるIGROV1は、CAOV3と比較した場合、これらの薬剤に対して抵抗性ではなかった(図10)。これらの結果は、KRASバリアントはプラチナ抵抗性に関連するが、有害なBRCA変異の存在下では関連しないことを実証する、対応する臨床的結果と一致している。
追加的に、カルボプラチン/パクリタキセル化学療法に失敗した患者について第2選択療法として頻繁に使用される薬物を評価した。これらの第2選択治療剤としては、ドキソルビシン、トポテカン、およびゲムシタビンが挙げられた。KRASバリアント系(BG1)は、非バリアント細胞系であるCAOV3と比較して、これらの薬剤のそれぞれに対して有意に抵抗性であった(表26)。
本明細書中に示されるデータは、KRASバリアント関連腫瘍におけるKRASシグナル伝達の連続している使用を実証するので、KRAS−バリアントを直接的標的化する影響を評価した。低分子干渉RNA(siRNA)/miRNA様複合体を、KRASバリアント転写産物中の改変された対立遺伝子に直接的に結合するが、非バリアント転写産物には結合しないように設計した(図13)。KRASバリアントを標的とするこれらのオリゴヌクレオチド二重鎖部位をトランスフェクションすることが、BG1細胞系を保有するKRASバリアントにおける細胞生存率の統計学的に有意な低減を引き起こすこと(P<0.001)、しかし、2つの非バリアントEOC細胞系であるCAOV3(図11a)、またはSKOV3において作用がなかったことが決定された。この結果は、BG1におけるウエスタンブロットによるKRASタンパク質レベルの中程度の低減に一致するが、処置後のCAOV3(図11b)またはSKOV3においては、一致しない。
実施例4:早期結腸直腸がん(CRC)における予後判定のバイオマーカーとしてのKRASバリアント
材料および方法
試験集団:1994年まで、925の罹患CRC症例(ICD−O:153.0−154.1)を、55歳と69歳との間の120,852b人の健常な人物において1986年に始まった治療食およびがんにおけるオランダコホート研究(NLCS:Netherlands Cohort Study on diet and cancer)において同定した。罹患がん症例を、Netherlands Cancer Registry(NCR)とPALGA(組織病理学および細胞病理学の全国的な登録)との繋がりによって同定した(Van den Brandt PA,et al.Int J Epidemiol.1990;19(3):553−8)。NLCSは、他のところに詳細に記載されている(Van den Brandt PA,et al.J Clin Epidemiol.1990;43(3):285−95。815人のCRC症例は、PALGAに関連し得、パラフィン包埋腫瘍組織をオランダ中の54の病理学登録から収集した。十分な量の良質なDNAを、734人(90%)の症例について抽出した(Brink M,et al.Carcinogenesis.2003;24(4):703−10)。ベースラインにおいて、5000人の健康な人物のサブコホートを、全体のコホートから無作為にサンプル化して、生命状態の2年ごとの追跡調査を介して、コホートのリスクがある人年(personyears)を見積もった。1,886人の人物について、頬の綿棒からのDNAは、KRASバリアント遺伝子型決定に利用可能であった。
データ収集:腫瘍の局在、病期、分化グレード、発生日(incidence date)、および診断後3ヶ月での処置における情報は、NCRを解して利用可能であった。2005年5月までの生命状態を、系統学の中央局(Central Bureau of Genealogy)および市の人口登録から回収し、全ての734人の症例について得ることができた。死因を、オランダ統計局(Statistics Netherlands)との繋がりを介して回収した。CRC関連死を、結腸、直腸S状結腸、直腸、胃腸管(非特異的)、または肝臓の転移における癌腫の結果の死亡と定義した。胃腸管(非特定)または肝臓の転移の場合、NCRおよびPALGAからの情報を、死因として別の原発性がんの可能性を排除するために使用した。
DNA単離およびKRASバリアント決定:それぞれの腫瘍組織塊の5μmの切片を、ヘマトキシリンおよびエオシンで染色し、病理学者によって修正した。20μmの5つの切片をパラフィン除去(deparaffinate)し、Puregene(登録商標)DNA単離キット(Gentra systems)を製造者の使用説明書に従って用いてDNAを抽出した。手短に言えば、細胞溶解溶液およびプロテイナーゼK(20mg/ml、Qiagen)を組織に添加し、55℃で一晩インキュベートした。37℃で72時間にわたってDNAを抽出し、タンパク質を除去し、100%の2−プロパノールを用いてDNAを沈殿させた。最終的に、DNAを水和バッファーにおいて再水和した。単離したDNAを、KRASの3’UTR内のlet−7相補部位6(LCS6)のT対立遺伝子またはG対立遺伝子(それぞれ野生型対立遺伝子およびバリアント対立遺伝子)を特異的に同定するように設計されたTaqMan PCRアッセイを用いて増幅した(Applied Biosciences)。腫瘍DNAを、遺伝子型を決定するために使用したが、正常組織の遺伝子型と腫瘍組織の遺伝子型とが、KRASバリアント対立遺伝子保有者において同じであることはよく記録されている(Chin LJ,et al. Cancer Res.2008;68(20):8535−40)。
KRASおよびBRAF変異を、以前に記載されたように(Brink M,et al.Carcinogenesis.2003;24(4):703−10;de Vogel S,et al.Carcinogenesis.2008;29(9):1765−73)、ネスティッドポリメラーゼ連鎖反応(PCR)および直接シークエンシング(direct sequencing)(KRAS)、ならびに制限断片長多型(BRAF)によって評価した。Weisenberger(Weisenberger DJ,et al.Nat Genet.2006;38(7):787−93)によって提案されるようにRASSF1A、O−MGMT、CHFRおよびCIMPマーカーのプロモーターメチル化を、亜硫酸水素ナトリウムおよびメチル化特異的PCR(MSP)(de Vogel Set al.Carcinogenesis.2008;29(9):1765−73;26.Herman JG,et al.Proc Natl Acad Sci U S A.1996;93(18):9821−6;Derks S,et al.Cell Oncol.2004;26(5−6):291−9)を用いてゲノムDNAの化学修飾によって判定した。MSI状態を、以前に記載されたように(Suraweera N,et al.Gastroenterology.2002;123(6):1804−11)、BAT−26、BAT−25、NR−21、NR−22、およびNR−24を用いて決定した。主要な研究終点(すわなち、CRC関連死)を見ないで、全てのアッセイを行い、分析した。
統計解析:原因特異的生存率を、がんの診断からCRC関連死または追跡調査の終了までの時間と定義した。カプラン−マイヤー曲線およびログランク検定を、原因特異的生存率におけるKRASバリアントの影響を見積もるために使用した。HRおよび対応する95% CIを、潜在的交絡因子について調整されたCox比例ハザードモデルの使用によって評価した。因子を、それらがCRCについて公知の予後判定の要因であり、粗HRに10%より多く影響する場合、可能性のある交絡因子と考えた。含まれた交絡因子は、診断時の年齢(連続)、性別、腫瘍分化グレード(高、中、低、および未分化)、および場所(近位、遠位、直腸S状結腸、および直腸)であった。比例ハザードの仮定を、シェーンフィールド残差およびlog(−log)ハザードプロットを用いて試験した。生存率の分析を診断後10年に制限した(その時点より後にはCRCに関連する死因が起こりそうもないので)。発生率比(RR)および95% CIを、Cox比例ハザードモデルを用いて見積もった。標準誤差を、コホートからのサンプル化によって導入された追加の分散についてロバストHuber−Whiteサンドイッチ評価物(robust Huber−White sandwich estimator)を用いて見積もった。全ての分析を、統計パッケージSTATA10.0を用いて行った。
データおよび結果
この研究における患者は、よりしばしば、早期腫瘍(62.0%)、または近位腫瘍もしくは遠位腫瘍(65.3%;表27)と診断された男性であった(55.6%)。追跡調査の間、患者の41.4%は、CRCで死亡した。KRAS−LCS6バリアントは、早期(I期およびII期)患者の14.0%において、III期患者の19.2%、およびIV期患者の21.4%において検出された(P=0.160;Ptrend=0.060)。KRASバリアント患者は、よりしばしば、進行した病期の疾患と診断された(47.5%対野生型患者において36.9%、P=0.046)。他の統計学的有意差は、性別、診断時の年齢、分化グレード、腫瘍場所、MSI、またはKRAS(表27)、BRAF(P=0.640)、またはRASSF1AプロモーターCpGアイランドメチル化(P=0.423)における変異について、野生型保有者とKRASバリアント保有者との間に見出されなかった。期待されたように、III期またはIV期の疾患を有する患者は、よりしばしば、CRCで死亡し(P<0.001)、よりしばしば、好ましくない分化した腫瘍を有した(P<0.001)。進行した病期の患者は、よりしばしば、早期患者と比較して、近位腫瘍(P=0.036)またはMSS腫瘍(P=0.047)を有した。
IV期G対立遺伝子(KRASバリアント)保有者は、女性である可能性がより高く(66.7%;P=0.097)、他の病期におけるG対立遺伝子(KRASバリアント)保有者と比較して、近位腫瘍(71.4%;P=0.004)を示す可能性が高い(表28)。
KRASバリアントは、早期CRCにおけるより良好な生存率に関連する。総集団におけるKRASバリアントおよび原因特異的生存率について、カプラン−マイヤー解析において統計学的有意差は観察されなかった(ログランク検定、P=0.864)(図14)。
生存率はがんの病期に依存するので、行われた分析を病期について階層化した。早期G対立遺伝子(KRASバリアント)保有者は、野生型症例と比較して、統計学的に有意により良好な生存率を示した(ログランク検定、P=0.038;図15A)。この差は、進行した病期の症例については観察されなかった(図1BおよびC;ログランク、III期およびIV期症例について、それぞれ、P=0.775および0.875)。
KRAS/BRAF変異状態は、KRASバリアントと生存率との間の関連性を高める。図16Aは、KRASバリアントおよびKRAS変異を有する早期(I期およびII期)CRC症例についてのカプラン−マイヤー解析を示す。KRAS変異を有する20人のG対立遺伝子(KRASバリアント)保有者のうちの誰もCRCに起因して死亡しなかった。KRAS野生型患者は、特に彼らがKRAS変異を有する場合により好ましくない生存率を有した(ログランク検定、P=0.043;ログランク検定 KRAS変異を有さないKRASバリアント対立遺伝子保有者と比較したKRAS変異を有するKRAS−バリアント対立遺伝子保有者 P=0.017)。この発見は、T期から独立していた;KRAS変異を有する115人のKRAS野生型症例中、たった5人(4%)が高リスクIIb期(T4N0M0)と診断された。G対立遺伝子(KRASバリアント対立遺伝子)保有者中、どの患者もIIb期と診断されなかった。進行した病期の患者について、生存率の差が見出されなかった(図16Bおよび16C、ログランク検定、III期についてP=0.535およびIV期についてP=0.989))。III期患者についての結果は、KRAS変異を有するKRAS野生型患者が、より悪い予後を有することを示す。サブグループ分析は、早期KRASバリアント保有者についてのより良好な転帰が、主にII期症例において見出されたことを示した。T期について階層化された分析は、限定された患者数に起因して可能ではなかった。
G対立遺伝子を保有するBRAF変異したCRCは、同様のより良好な転帰を示したが、KRASバリアントおよびKRAS変異の両方を有する患者が少数であったこと(9患者)におそらく起因して、これは統計学的に有意ではなかった(ログランク検定、P=0.166)。同様に、Ras経路に関与する別の遺伝子である異常なRASSF1Aプロモーター過剰メチル化を有するG対立遺伝子(KRASバリアント対立遺伝子)保有者は、それほど統計学的に有意ではないが、RASSF1A過剰メチル化を有さない野生型保有者と比較して、より良好な予後を有した(ログランク検定、P=0.062)。KRAS、BRAF、およびRASSF1A状態を組み合わせた分析は、KRAS、BRAF、およびRASSF1Aにおいて、追加の改変を有する早期G対立遺伝子(KRASバリアント)保有者が、より良好な予後を有することを示した(ログランク検定、P=0.026)。対照的に、Ras経路(例えば、MGMTまたはCHFR)に関与しない遺伝子のメチル化状態を加えるとき、生存率の差は観察されなかった(MGMT:ログランク検定、P=0.220;CHFR:ログランク検定、P=0.118)。
KRAS変異状態と組み合わせたKRASバリアントの生存率の影響は、他の予後判定の要因から独立している。多変量解析において、原因特異的生存率における統計学的有意差は、野生型と比較して、G対立遺伝子(KRASバリアント)を有する、早期症例(HR 0.46;95% CI:0.18−1.14)、III期症例(HR 0.98、95% CI:0.55−1.74)、またはIV期症例(HR 0.42;95% CI:0.17−1.06)について見出されなかったが、早期およびIV期のG対立遺伝子(KRASバリアント)保有者は、改善された生存率を実証した(表29)。
KRAS変異を有する早期G対立遺伝子(KRASバリアント)保有者は、これらの患者のうちの誰もCRCに起因して死亡しなかったので、良好な予後を有した。対照的に、生存率における統計学的有意差は、KRASバリアントを有する、KRAS非変異の早期症例(HR 0.77;95% CI:0.30−1.97)、III期症例(HR 0.95;95% CI:0.44−2.05)、またはIV期症例(HR 0.35;95% CI:0.11−1.13)とKRASバリアントとの間で見出されなかった。しかし、KRAS変異を有するIII期G対立遺伝子(KRASバリアント)保有者は、好ましくない予後を示した(HR 1.52;95% CI:0.66−3.54)が、比較は統計学的に有意ではなかった。オランダのガイドラインは、NLCSにおいて患者がCRCと診断される時点でアジュバント処置を勧めなかったので、アジュバント処置を受けた患者の割合は非常に低かった。早期症例内で、9%がアジュバント化学療法を受けた。より進行した病期に関して、III期患者の31%およびIV期患者の19%がアジュバント化学療法を受けた。アジュバント化学療法処置患者の除外は、本発明者らの結論を変えなかった。実際には、アジュバント化学療法処置患者の除外は、KRAS変異を有する、早期G対立遺伝子(KRASバリアント)保有者とIII期G対立遺伝子(KRASバリアント)保有者との間の差を増大させ(早期:CRC関連死なし;III期:HR 2.36 95% CI:0.99−5.67)、III期G対立遺伝子(KRASバリアント)保有者が疾患のより悪い自然経過を有することを意味した。しかし、この分析は、少数の患者に基づく。
KRASバリアントの生存率の影響は、マイクロサテライト不安定性(MSI)から独立している。本明細書中に提供されるバイオマーカーおよび方法の開発の前に、MSIは、CRCにおける唯一の確立された分子予後判定マーカーであった。従って、KRASバリアント遺伝子型の作用を、MSIについて階層化された患者集団において研究した。良好な予後に関連する、MSI腫瘍を有した患者の除外は、本明細書中に提供される結論を変えなかった;KRASバリアントを有するMSIおよびMSS症例の両方は、良好な予後を有した。対照的に、KRAS野生型を有する患者は、たとえ、彼らがMSI腫瘍を有していても、好ましくない予後を有した(ログランク検定、P=0.036)(図17)。MSI患者内での、性別、腫瘍サブロケーション、または分化グレードについて階層化された追加の分析は、限定された患者数に起因して可能ではなかった。
進行した病期のCRCのリスクは、KRASバリアントに関連しない。KRASバリアント対立遺伝子が、進行した病期のCRCについて素因をつくる可能性を研究するために、KRAS遺伝子型とCRCリスクとの間の関連性を研究した。KRASバリアント(G対立遺伝子)は、サブコホートメンバーの18%に見出された。CRCについて、KRASバリアント(G対立遺伝子)を保有する場合、早期(I期およびII期)CRCを発生する低減したリスクが見出された(RR 0.68、95% CI:0.49−0.94)。進行した病期のCRC(III期またはIV期)を発生するリスクは、KRAS遺伝子型によって影響されなかった(RR III期:1.02、95% CI:0.68−1.53;RR IV期:1.15、95% CI:0.63−2.09)。
実施例5:KRASバリアント、転移性結腸直腸がんにおける患者転帰、および処置に対する応答
材料および方法
患者の特徴付け:総数559人のmCRC患者(ルーヴェン大学病院(the University Hospital of Leuven)において抗EGFR moAb単剤療法および化学療法と組み合わせたMoAbで処置された300人、ならびにセツキシマブベースのサルベージ組み合わせ化学療法(De RW,et al.Lancet Oncol 2010;11(8):753−762)で処置されたパリ第5大学(the Universite Paris Descartes)からの148人の患者、およびフルオロピリミジン、イリノテカン、およびオキサリプラチン含有計画(Zhang W,al.Ann Oncol 2011;22(1):104−109;Lenz HJ,et al.J Clin Oncol 2006;24(30):4914−4921)に失敗後、セツキシマブ単剤療法で処置された111人の以前に公開された(Zhang W,al.Ann Oncol 2011;22(1):104−109)mCRC患者)は、KRASバリアント多型の分析に利用可能であり、かつ分析に耐えられる組織を有した。上記患者集団におけるKRASおよびBRAF遺伝子の変異状態は、公的に利用可能である(De RW,et al.Lancet Oncol 2010;11(8):753−762;Zhang W,al.Ann Oncol 2011;22(1):104−109)。上記分子特徴付けはORR、PFS、およびOSに相関した。研究に入った559人のmCRC患者から、KRAS 3’−UTR LCS6バリアントを、他の分子試験からの利用可能なDNAの枯渇に起因して512人において決定した。
遺伝的分析:患者の標本からのホルマリン固定のパラフィン包埋正常組織を肉眼的にメスの刃を用いて切開し、DNAを以前に記載されたように(De RW, et al.Lancet Oncol 2010;11(8):753−762;Zhang W,al.Ann Oncol 2011;22(1):104−109)単離した。DNAを、以前に記載されたように(Hollestelle A,et al.Breast Cancer Res Treat 2010)、フォワードプライマー:5’−GCCAGGCTGGTCTCGAA−3’(配列番号28)、リバースプライマー:5’−CTGAATAAATGAGTTCTGCAAAACAGGT T−3’(配列番号29)、VICレポータープローブ:5’−CTCAAGTGATTCACCCA C−3’(配列番号30)、およびFAM レポータープローブ:5’−CAAGTGATTCACCCAC−3’(配列番号31)を用いて、KRASバリアント(rs61764370)のT対立遺伝子またはバリアントG対立遺伝子を同定するために特異的に設計された特注のTaqman遺伝子型決定アッセイ(Applied Biosystems, Foster City, CA)を用いて増幅した。KRASおよびBRAF変異状態を以前に記載されたように(De RW, et al.Lancet Oncol 2010; 11(8):753−762; Zhang W, al. Ann Oncol 2011; 22(1):104−109)決定した。
細胞系研究:KRASバリアント(G対立遺伝子)(HCC2998)を有する細胞系、および対立遺伝子がなく、KRAS腫瘍獲得変異(HT−29)がない細胞系を、単独かまたはセツキシマブと組み合わせた化学療法での処置の影響を評価するために研究した。細胞系をセツキシマブ(100nM)、または、なし、およびイリノテカンの希釈物(1mg/ml〜100mg/ml)で処理した。細胞をプレートし、プレート後、薬剤で24時間処理し、培地を24時間の曝露後に交換し、その後生存率を、MTTアッセイを用いて48時間後にスコア付けした。
統計解析:遺伝子型の分布を、ハーディ−ヴァインベルク平衡について検定し、カイ二乗検定はp=0.8であった。KRASバリアント対立遺伝子についての同型接合体の低頻度に起因して、KRASバリアント対立遺伝子について、異型接合(TG)または同型接合(GG)のいずれかである患者のサンプルを、LCS6(KRASバリアントまたはG対立遺伝子)に対して陽性であると考え、少なくとも1つのKRASバリアント(G対立遺伝子)遺伝子型の1群として分析に入れた。PFSおよびOSを、以前に記載されたように(De RW,et al.Lancet Oncol 2010;11(8):753−762;Zhang W,al.Ann Oncol 2011;22(1):104−109)測定した。
両側(two−tailed)フィッシャーの正確検定を、野生型(wt)TT遺伝子型の保有者と少なくとも1つのG対立遺伝子の遺伝子型(TGおよびGG)の保有者との間の割合を比較するために使用した。PFSおよびOSを、カプラン−マイヤー方法を使用して見積もり、それらと遺伝子型との関連性を、ログランク検定を使用して検定した。遺伝子型と客観的な応答との関連性を、分割表およびフィッシャーの正確検定によって決定した。KRASバリアントの可能な影響を完全に探索するために、KRASおよびBRAF遺伝子(二重野生型集団)において、およびKRASバリアント集団において変異を含まない患者において、分析を全mCRC集団において行った。有意性のレベルを、0.05未満の両側p値に設定した。全ての統計学的検定を、統計パッケージSPSSバージョン13を用いて行った。
結果
全体の患者コホートにおけるKRAS LCS6:これらの512人のmCRC患者において、403人の、野生型LCS6 TT遺伝子型の保有者(72%)、102人(18%)の、異型接合のKRASバリアントTG対立遺伝子の保有者、7人(1.3%)の同型接合のKRASバリアントGG対立遺伝子の保有者、従って、109人(19.5%)の、少なくとも1つのG対立遺伝子遺伝子型の保有者が存在した。コドン12、13、および61におけるKRAS変異が、184人の患者(33%)において見出され、BRAF V600Eは29人の患者(5.3%)において見出された。全ての患者は、抗EGFR moAbベースのサルベージ処置を受けていた(169人は、単剤療法として、337人は、化学療法と組み合わせて)。診断時の性別および年齢について、統計学的有意差は、KRAS野生型保有者とKRASバリアント保有者との間に見出されなかった。559人の患者の特徴付けは、以前に公開されている(De RW, et al. Lancet Oncol 2010; 11(8):753−762; Zhang W, al. Ann Oncol 2011; 22(1):104−109)。
表30に示されるように、KRAS遺伝子型の分布は、KRASおよびBRAF変異を含む患者の中で異なった。特に、少なくとも1つのGバリアント対立遺伝子遺伝子型の百分率がKRAS野生型および変異体群(各20%)内で等しく分布した一方で、KRASバリアント(G対立遺伝子)は、野生型の群(20%)と比較して、BRAF V600E変異した群(40%)において2倍の頻度であり、統計学的有意差をもたらした(フィッシャーの正確検定 p=0.030)。
全体の患者コホートにおける転帰および生存率分析:全体としてのコホートにおいて、PFSおよびOS情報、ならびにLCS6遺伝子型決定(それぞれ、n=510および503)を有する患者について、LCS6野生型TT遺伝子型保有者とLCS6 Gバリアント(KRASバリアント)遺伝子型保有者との間のメジアンPFSおよびOSに関して、有意差は検出されなかった(図18Aおよび18B)。同様に、PFSおよびOSにおける差は、二重(KRASおよびBRAF)野生型またはKRASバリアント患者コホートにおいて観察されなかった。さらに、全体および二重野生型患者のコホートにおいて、KRASバリアント保有者と野生型保有者との間で、応答(n=483)および皮膚発疹(n=359)に関して、有意な相関は観察されなかった(表31)。
処置に相関する無増悪生存率分析:moAb単剤療法およびmoAb組み合わせ療法を受けた患者を個別に分析した。LCS6 SNP遺伝子型決定および処置施与について評価可能である501人の患者のうち160人(32%)が単剤療法として抗EGFR moAbを受けた。単剤療法の患者のうち、128人(80%)がLCS6野生型TT遺伝子型の保有者であり、32人(20%)がLCS6 Gバリアント遺伝子型の保有者であった。複数の化学療法の組み合わせを受けた341人(68%)の患者が存在した。組み合わせ処置の患者のうち、266人(78%)がLCS6野生型TT遺伝子型の保有者であり、75人(22%)が、LCS6少なくとも1つのGバリアント遺伝子型の保有者であった。
全単剤療法患者集団のメジアンPFSは、10.43週間(95% CI:7.73〜13.12週間)であり、統計学的有意差(p=0.019、ログランク検定)がLCS6野生型TT遺伝子型保有者(7.85週間(95% CI:3.897〜11.817週間))とLCS6 Gバリアント(KRASバリアント)遺伝子型保有者(16.86週間(95% CI:10.2〜23.51週間))との間で観察された(図19A)。全組み合わせ療法患者の集団のメジアンPFSは、18週間(95% CI:15.87〜20.12週間)であり、LCS6野生型TT遺伝子型保有者(18.43週間(95% CI:16.16〜20.69週間))とLCS6 Gバリアント遺伝子型保有者(18週間(95% CI:9.97〜26.02週間))との間で統計学的有意差は観察されなかった(p=0.760、ログランク検定)(図19B)。moAb療法[16.86週間、(95% CI:8.55〜25.18週間)]対組み合わせ療法[18週間、(95% CI:13.37〜22.64週間)]を受けたKRASバリアント患者についてのPFS間で有意差は存在しなかった(p=0.291、ログランク検定)(図19C)が、非KRASバリアント患者について、対組み合わせ療法(19.29週間、(95% CI:17〜21.58週間)に対してmoAb単剤療法(7.86週間、(95% CI:3.9−11.82週間))についてPFS間で化学療法の追加での有意な利益が存在した[p<0.0001、ログランク検定](図19D)。注目すべきことに、単剤療法の療法で処置されたKRASバリアント患者対組み合わせ療法で処置された非KRASバリアント患者との間で、PFSにおける有意差は存在しなかった。
二重(KRASおよびBRAF)野生型患者の集団において、単剤療法患者のメジアンPFSは、12週間(95% CI:8.38〜15.61週間)であり、統計学的有意差(p=0.039、ログランク検定)は、LCS6野生型TT遺伝子型保有者(10.43週間(95% CI:6.74〜14.11週間))とLCS6 Gバリアント遺伝子型保有者(18週間(95% CI:5.16〜30.83週間))との間で再び観察された(図20A)。二重野生型患者の集団において、組み合わせ療法患者のメジアンPFSは、28.71週間(95% CI:24.98〜32.43週間)であり、統計学的有意差(p=0.39、ログランク検定)は、LCS6野生型TT遺伝子型保有者(28.3週間(95% CI:24.15〜32.45週間))とLCS6 Gバリアント遺伝子型保有者(28.85週間(95% CI:14.82〜42.87週間))との間で観察されなかった(図20B)。組み合わせ療法[28週間、(95% CI:14.83〜42.87週間)]と比較して、moAb単剤療法[23週間、(95% CI:9.5〜36.5週間)]を受けたLCS6バリアント患者についてのPFS間で有意な改善は存在しなかった(p=0.096、ログランク検定)(図20C)が、非LCS6患者[p<0.0001、ログランク検定]について、組み合わせ療法(28.71週間、(95% CI:24.8〜32.6週間))と比較してmoAb単剤療法(10.43週間、(95% CI:6.75〜14.15週間))についてのPFS間では存在した(図20D)。moAb単剤療法を受けているKRASバリアント(G対立遺伝子)患者と組み合わせ療法を受けている非KRASバリアント患者との間のPFSで差はなかった。
処置に相関する全生存率分析:全単剤療法患者の集団のメジアンOSは、33.14週間(95% CI:26.70〜39.57週間)であり、LCS6野生型TT 遺伝子型保有者(28.85週間(95% CI:22.53〜35.18週間))とLCS6 Gバリアント遺伝子型保有者(45週間(95% CI:35.02〜54.97週間))との間で統計学的有意差は観察されなかった(p=0.139、ログランク検定)(図21A)。全組み合わせ療法患者の集団のメジアンOSは、44週間(95% CI:40.11〜47.88週間)であり、LCS6野生型TT遺伝子型保有者(44週間(95% CI:40.06〜47.93週間)とLCS6少なくとも1つのGバリアント遺伝子型保有者(43週間(95% CI:29.8〜56.2週間)との間で統計学的有意差は観察されなかった(p=0.759、ログランク検定)(図21B)。再度、moAb単剤療法[45週間、(95% CI:35〜55週間)]対組み合わせ療法[43週間、(95% CI:29.8〜56.2週間)]を受けたKRASバリアント患者についてのOS間で有意な改善は存在しなかった(p=0.574、ログランク検定)(図21C)が、非KRASバリアント患者[p<0.0001、ログランク検定]について、moAb単剤療法(28.86週間、(95% CI:22.53〜35.18週間)対組み合わせ療法(44週間、(95% CI:40〜47.93週間))についてのOS間で化学療法追加の利益が存在した(図21D)。再度、単剤療法で処置されたLCS6 Gバリアント保有者と組み合わせ療法で処置された非KRASバリアント保有者との間のOSにおける有意差は存在しなかった。
二重(KRASおよびBRAF)野生型患者の集団において、単剤療法患者のメジアンOSは、37週間(95% CI:30.82〜43.17週間)であり、統計学的有意差(p=0.087、ログランク検定)に対するトレンドを、LCS6野生型TT遺伝子型保有者(35.71週間(95% CI:32.03〜39.4週間))とLCS6少なくとも1つのGバリアント遺伝子型保有者(55.43週間(95% CI:36.98〜73.87週間))との間で観察した(図22A)。二重野生型患者の集団において、組み合わせ療法患者のメジアンOSは、55週間(95% CI:48.3〜61.7週間)であり、LCS6野生型TT遺伝子型保有者(57週間(95% CI:49.4〜64.6週間))とLCS6少なくとも1つのGバリアント遺伝子型保有者(54週間(95% CI:45.46〜62.53週間))との間で統計学的有意差は観察されなかった(p=0.649、ログランク検定)(図22B)。moAb単剤療法[55.43週間、(95% CI:37〜73.87週間)]対組み合わせ療法[54週間、(95% CI:45.47〜62.54週間)]を受けたKRASバリアント(G対立遺伝子)患者についてのOS間で有意な改善は存在しなかった(p=0.705、ログランク検定)(図22C)が、非KRASバリアント患者[p<0.0001、ログランク検定]について、組み合わせ療法(57週間、(95% CI:49.4〜64.6週間))と比較したmoAb単剤療法(35.71週間、(95% CI:32〜39.4週間))についてのOS間では存在した(図22D)。組み合わせ療法で処置された非LCS6 保有者と、単剤療法で処置された二重野生型患者KRASバリアント保有者との間で有意差は存在しなかった。
LCS6バリアントは、KRASおよびBRAF変異した患者においての予後徴候である。KRASおよびBRAF変異した患者の集団において、PFSおよびOSに関する統計学的有意差は、抗EGFR moAb単剤療法および化学療法と組み合わせての両方で処置された患者において観察されなかった(データ示さず)。メジアンPFS時間は、KRASバリアント患者と非KRASバリアント患者との間で同一であり、moAb単剤療法[6週間、(95% CI:0〜13.25週間)]対組み合わせ療法[12週間、(95% CI:6.45〜17.56週間)]を受けたKRASバリアント患者についてのPFS間での有意な改善はなかった(p=0.641、ログランク検定)(図23A)。非KRASバリアント患者[p<0.0001、ログランク検定]について、moAb単剤療法(6週間、(95% CI:4.46〜7.53週間)対組み合わせ療法(12週間、(95% CI:9.72〜14.28週間)についてのPFS間において有意な改善が存在した(図23B)。OSについて、moAb単剤療法[28.43週間、(95% CI:9.47〜47.39週間)]対組み合わせ療法[23週間、(95% CI:10.8〜35.19週間)]を受けたKRASバリアント(G対立遺伝子)患者についてのOS間で有意差は存在しなかった(p=0.303、ログランク検定)(図23C)が、非KRASバリアント患者[p=0.002、ログランク検定]について、組み合わせ療法(31週間、(95% CI:25.65〜36.34週間))と比較してmoAb単剤療法(21.29週間、(95% CI:15〜27.55週間))についてのOS間では存在した(図23D)。
KRASバリアントおよび応答:応答およびKRASバリアント遺伝子型決定の両方について評価可能である483人の患者の全集団から、147人(30.4%)が、単剤療法として抗EGFR moAbを受け、336人(69.6%)が複数の化学療法の組み合わせを受けた。単剤療法群において、123人(83.6%)の患者は、非応答者(SDおよびPD)(104人がLCS6野生型、19人がLCS6バリアント(KRASバリアント)保有者)であり、24人(16.4%)が応答者(PRおよびCR)(13人がLCS6野生型および11人がLCS6バリアント(KRASバリアント)保有者)であった。応答者および非応答者群における野生型の遺伝子型の保有者の分布とKRASバリアント遺伝子型の保有者の分布との間で、統計学的有意差が観察された(フィッシャーの正確検定 p=0.002)。化学療法との組み合わせ群において、252人(75%)の患者が、非応答者(SDおよびPD)であり、84人(25%)が応答者(PRおよびCR)であった。野生型の遺伝子型の保有者とKRASバリアント遺伝子型保有者との間で統計学的有意差は観察されなかった(それぞれ197人対55人の非応答者および66人対18人の応答者)(フィッシャーの正確検定 p=1)。
270人の二重(KRASおよびBRAF)野生型集団において、90人(33.3%)が単剤療法として抗EGFR moAbを受け、180人(66.6%)が、複数の化学療法の組み合わせを受けた。単剤療法群において、71人(78.8%)の患者は、非応答者(SDおよびPD)(60人がLCS6野生型、および11人がLCS6バリアント(KRASバリアント)保有者)であり、19人(21.2%)が応答者(PRおよびCR)(10人がLCS6野生型、および9人がLCS6バリアント(KRASバリアント)保有者)であった。応答者および非応答者群における野生型の遺伝子型の保有者の分布とKRASバリアント遺伝子型の保有者の分布との間で、統計学的有意差が観察された(フィッシャーの正確検定 p=0.010)。化学療法との組み合わせ群において、102人(56.6%)の患者は、非応答者(SDおよびPD)であり、78人(43.4%)は応答者(PRおよびCR)であった。野生型の遺伝子型の保有者とKRASバリアント遺伝子型保有者との間で統計学的有意差は観察されなかった(それぞれ、81人対21人の非応答者、および62人対16人の応答者)(フィッシャーの正確検定 p=1)。
moAb単剤療法および組み合わせ療法ならびにLCS6バリアントの影響の細胞系研究:KRASバリアント(G対立遺伝子)が、追加の細胞毒性療法に何の利益もなく、moAb単剤療法に対する応答を予測することを確認するために、LCS6 Gバリアントを有する、または有さない結腸がん細胞系における単剤療法対組み合わせ療法の影響を評価した。非KRASバリアント細胞系において、細胞毒性療法(照射ならびにイリノテカン化学療法の両方)へのセツキシマブの追加が、細胞毒性療法単独と比較して、細胞死を増加させたことを発見した。対照的に、KRASバリアント(G対立遺伝子)を有する細胞系において、細胞毒性療法へのセツキシマブの追加による追加の細胞殺傷は存在せず、照射の場合、実際には、セツキシマブが添加されたときにより高い細胞生存率が存在した。これらの知見は、KRASバリアント(G対立遺伝子)保有者においては、セツキシマブと細胞毒性療法との組み合わせには利益がないという本発明者らのインビボでの知見と矛盾していない。
他の実施形態
本開示は、その詳細な説明と共に記載されるが、先行する記載は、説明することを意図し、添付の特許請求の範囲によって定義される、本開示の範囲を限定することを意図しない。他の局面、利点、および変更は、以下の特許請求の範囲の範囲内である。
本明細書中で参照された特許および特定の文献は、当業者に利用可能である知識を確立する。本明細書中に引用される全ての米国特許、および公開または非公開の米国特許出願は、参考として援用される。本明細書中に引用される全ての公開された外国の特許および特許出願は、本明細書により参考として援用される。本明細書中に引用される、受託番号によって示されるGenbankおよびNCBI提出物は、本明細書により参考として援用される。本明細書中に引用される全ての他の公開された参考文献、文書、原稿、および科学的文献は、本明細書により参考として援用される。
この開示は、その好ましい実施形態に対する参考文献を用いて特に示され、記載されているが、そこにおける形式および詳細における種々の変化が、添付の特許請求の範囲によって包含される開示の範囲から外れることなくなされ得ることが当業者によって理解される。

Claims (49)

  1. ヒトKRASのlet−7相補部位LCS6における変異を、エストロゲン受容体(ER)およびプロゲステロン受容体(PR)陰性(ER/PR陰性)乳がんを発生するリスクがある被験体または患者の同定の指標とするための方法であって、ここでヒトKRASのlet−7相補部位LCS6における該変異は、患者サンプルにおいて検出され、ここで該変異は、LCS6の4位におけるウラシル(U)またはチミン(T)のグアニン(G)へのトランジションを含むSNPであり、そしてここで、該変異の存在は、該被験体においてER/PR陰性乳がんを発生する増加したリスクを示す、方法。
  2. ヒトKRASのlet−7相補部位LCS6における変異を、乳がんを発生するリスクがある被験体または患者におけるエストロゲン受容体(ER)およびプロゲステロン受容体(PR)陰性(ER/PR陰性)乳がんの発生の発症を予測する指標とするための方法であって、ここでヒトKRASのlet−7相補部位LCS6における該変異は、患者サンプルにおいて検出され、ここで該変異は、LCS6の4位におけるウラシル(U)またはチミン(T)のグアニン(G)へのトランジションを含むSNPであり、そしてここで、該変異の存在は、ER/PR陰性乳がんの発生のより早期な発症を示す、方法。
  3. 前記ER/PR陰性乳がんが、HER2に対しても陰性であり、従って、三重陰性乳がん(TNBC)である、請求項2に記載の方法。
  4. 前記三重陰性乳がん(TNBC)が、基底型腫瘍または管腔型腫瘍である、請求項3に記載の方法。
  5. 前記三重陰性乳がん(TNBC)が、上皮増殖因子受容体(EGFR)またはサイトケラチン5/6(CK5/6)遺伝子によってコードされる転写産物またはタンパク質を発現する基底型腫瘍である、請求項4に記載の方法。
  6. 前記乳がんが、乳がん1(BRCA1)遺伝子の低発現または発現陰性によってさらに特徴付けられる、請求項1、2、または3に記載の方法。
  7. 前記被験体または患者が、閉経期前である、請求項1、2、または3に記載の方法。
  8. 前記被験体または患者が、51歳またはそれより若い、請求項1、2、または3に記載の方法。
  9. ヒトKRASのlet−7相補部位LCS6における変異を、上皮性卵巣がん(EOC)を有する被験体または患者の予後判定の指標とするための方法であって、ここでヒトKRASのlet−7相補部位LCS6における該変異は、患者サンプルにおいて検出され、ここで該変異は、LCS6の4位におけるウラシル(U)またはチミン(T)のグアニン(G)へのトランジションを含むSNPであり、そしてここで、該変異の存在は、対照と比較して低下した生存率を示す、方法。
  10. 前記被験体または患者が、閉経後、52歳、または少なくとも52歳である、請求項9に記載の方法。
  11. 前記対照が前記変異を保有しない、請求項9に記載の方法。
  12. 前記生存率が、全生存率、5年生存率、または1年生存率である、請求項9に記載の方法。
  13. ヒトKRASのlet−7相補部位LCS6における変異を、プラチナベースの化学療法に対する上皮性卵巣がん(EOC)細胞の応答の予測の指標とするための方法であって、ここでヒトKRASのlet−7相補部位LCS6における該変異は、患者サンプルにおいて検出され、ここで該変異は、LCS6の4位におけるウラシル(U)またはチミン(T)のグアニン(G)へのトランジションを含むSNPであり、ここで該変異の存在は、プラチナベースの化学療法に対する抵抗性を示す、方法。
  14. 前記EOC細胞が、インビトロまたはエクスビボで評価される、請求項13に記載の方法。
  15. 前記EOC細胞が、閉経後、52歳、または少なくとも52歳である被験体からエクスビボで評価される、請求項14に記載の方法。
  16. 前記EOC細胞がインビトロで評価され、そしてここで、該EOC細胞は、BG1、CAOV3、もしくはIGR−OV1細胞系から単離されるか、繁殖されるか、または誘導される、請求項14に記載の方法。
  17. 前記プラチナベースの化学療法が、カルボプラチンまたはパクリタキセルである、請求項13に記載の方法。
  18. 前記プラチナベースの化学療法が、アジュバント療法である、請求項13に記載の方法。
  19. ヒトKRASのlet−7相補部位LCS6における変異を、結腸直腸がん(CRC)を有する被験体または患者の予後判定の指標とするための方法であって、ここでヒトKRASのlet−7相補部位LCS6における該変異は、患者サンプルにおいて検出され、ここで該変異は、LCS6の4位におけるウラシル(U)またはチミン(T)のグアニン(G)へのトランジションを含むSNPであり、ここで該変異の存在は、対照と比較して増加した生存率を示す、方法。
  20. 前記検出が、マイクロサテライト不安定性(MSI)分析をさらに含む、請求項19に記載の方法。
  21. 前記結腸直腸がん(CRC)が、早期CRCである、請求項19に記載の方法。
  22. 前記結腸直腸がん(CRC)が、1期または2期のCRCである、請求項19に記載の方法。
  23. 前記対照が、KRASバリアントを保有しない、請求項19に記載の方法。
  24. 前記対照が、KRAS遺伝子において第二の変異を有する、請求項23に記載の方法。
  25. 前記被験体または患者が、KRAS遺伝子において第二の変異を有する、請求項19に記載の方法。
  26. 前記被験体または対照が、BRAF遺伝子において1つまたはそれより多くの変異を保有する、請求項19に記載の方法。
  27. 前記被験体または対照が、過剰メチル化RASSF1Aプロモーターを有する、請求項19に記載の方法。
  28. 前記生存率が、全生存率、5年生存率、または1年生存率である、請求項19に記載の方法。
  29. ヒトKRASのlet−7相補部位LCS6における変異を、モノクローナル抗体単剤療法に対するがん細胞の応答を予測する指標とするための方法であって、ここでヒトKRASのlet−7相補部位LCS6における該変異は、患者サンプルにおいて検出され、ここで該変異は、LCS6の4位におけるウラシル(U)またはチミン(T)のグアニン(G)へのトランジションを含むSNPであり、そしてここで、該変異の存在は、モノクローナル抗体単剤療法に対する感受性を示す、方法。
  30. 前記がん細胞が、結腸直腸がん(CRC)細胞である、請求項29に記載の方法。
  31. 前記がん細胞が、インビトロまたはエクスビボで評価される、請求項29に記載の方法。
  32. 前記モノクローナル抗体単剤療法がセツキシマブである、請求項29に記載の方法。
  33. ヒトKRASのlet−7相補部位LCS6における変異を、化学療法とモノクローナル抗体療法との組み合わせに対するがん細胞の応答を予測する指標とするための方法であって、ここでヒトKRASのlet−7相補部位LCS6における該変異は、患者サンプルにおいて検出され、ここで該変異は、LCS6の4位におけるウラシル(U)またはチミン(T)のグアニン(G)へのトランジションを含むSNPであり、そしてここで、該変異の存在は、該組み合わせに対する抵抗性を示す、方法。
  34. 前記がん細胞が、結腸直腸がん(CRC)細胞である、請求項33に記載の方法。
  35. 前記がん細胞が、インビトロまたはエクスビボで評価される、請求項33に記載の方法。
  36. モノクローナル抗体単剤療法がセツキシマブである、請求項33に記載の方法。
  37. 前記化学療法が、細胞毒性薬剤である、請求項33に記載の方法。
  38. 前記細胞毒性薬剤がイリノテカンである、請求項37に記載の方法。
  39. ヒトKRASのlet−7相補部位LCS6における変異、ならびにmiR−23およびmiR−27からなる群から選択されるmiRNAの発現レベルを、腫瘍の血管形成のリスク増加の予測の指標とするための方法であって、ここで
    (a)ヒトKRASのlet−7相補部位LCS6における該変異が、第一の患者サンプルにおいて検出され、ここで該変異は、LCS6の4位におけるウラシル(U)またはチミン(T)のグアニン(G)へのトランジションを含むSNPであり、そして
    (b)miR−23およびmiR−27からなる群から選択されるmiRNAの発現レベルが、第二の患者サンプルにおいて決定され、
    ここで、(a)における該変異の存在、および対照と比較しての(b)におけるmiRNAの発現レベルの上昇は、抗血管新生遺伝子の転写サイレンシングを示し、それにより該腫瘍の血管形成のリスク増加が予測される、
    方法。
  40. 前記抗血管新生遺伝子がSprouty2またはSema6Aである、請求項39に記載の方法。
  41. 前記腫瘍が、AIDS関連のがん、乳がん、消化管/胃腸管のがん、肛門がん、虫垂がん、胆管がん、結腸がん、結腸直腸がん、食道がん、胆嚢がん、ランゲルハンス島細胞腫瘍、膵神経内分泌腫瘍、肝がん、膵がん、直腸がん、小腸がん、胃がん、内分泌系がん、副腎皮質癌腫、副甲状腺がん、褐色細胞腫、下垂体腫瘍、甲状腺がん、眼のがん、眼内黒色腫、網膜芽細胞腫、膀胱がん、腎臓(腎細胞)がん、陰茎がん、前立腺がん、腎盂および尿管の移行上皮がん、精巣がん、尿道がん、ウィルムス腫瘍、他の小児腎臓腫瘍、胚細胞がん、中枢神経系がん、頭蓋外胚細胞腫瘍、性腺外胚細胞腫瘍、卵巣胚細胞腫瘍、婦人科がん、子宮頸がん、子宮内膜がん、妊娠性栄養膜腫瘍、卵巣上皮がん、子宮肉腫、膣がん、外陰がん、頭頸部がん、下咽頭がん、喉頭がん、口唇および口腔がん、原発不明転移性扁平頸部がん、口のがん、鼻咽頭がん、口峡がん、副鼻腔および鼻腔がん、咽頭がん、唾液腺がん、喉のがん、筋骨格がん、骨がん、ユーイング肉腫、消化管間質腫瘍(GIST)、骨肉腫、骨の悪性線維性組織球腫、横紋筋肉腫、軟部肉腫、子宮肉腫、神経がん、脳のがん、星細胞腫、脳幹グリオーマ、中枢神経系非定型奇形腫様/ラブドイド腫瘍、中枢神経系胎児性腫瘍、中枢神経系胚細胞腫瘍、頭蓋咽頭腫、上衣腫、髄芽腫、脊髄腫瘍、テント上原始神経外胚葉性腫瘍および松果体芽細胞腫、神経芽細胞腫、呼吸器がん、胸部がん、非小細胞肺がん、小細胞肺がん、悪性中皮腫、胸腺腫、胸腺癌腫、皮膚がん、カポジ肉腫、黒色腫、またはメルケル細胞癌腫由来のがん細胞を含む、請求項39または40に記載の方法。
  42. 前記腫瘍が転移性である、請求項39または41に記載の方法。
  43. ヒトKRASのlet−7相補部位LCS6における変異、およびmiR−210 miRNAの発現レベルを、低酸素条件下におけるがん細胞の増加した生存または増殖の予測の指標とするための方法であって、
    (a)ヒトKRASのlet−7相補部位LCS6における該変異が、第一の患者サンプルにおいて検出され、ここで該変異は、LCS6の4位におけるウラシル(U)またはチミン(T)のグアニン(G)へのトランジションを含むSNPであり、そして
    (b)miR−210 miRNAの発現レベルが、第二の患者サンプルにおいて決定され、
    ここで、(a)における該変異の存在、および対照と比較しての(b)における該miRNAの発現レベルの上昇は、低酸素条件下における該がん細胞の増加した生存または増殖を示すことを含む、
    方法。
  44. 前記がん細胞が、AIDS関連のがん、乳がん、消化管/胃腸管のがん、肛門がん、虫垂がん、胆管がん、結腸がん、結腸直腸がん、食道がん、胆嚢がん、ランゲルハンス島細胞腫瘍、膵神経内分泌腫瘍、肝がん、膵がん、直腸がん、小腸がん、胃がん、内分泌系がん、副腎皮質癌腫、副甲状腺がん、褐色細胞腫、下垂体腫瘍、甲状腺がん、眼のがん、眼内黒色腫、網膜芽細胞腫、膀胱がん、腎臓(腎細胞)がん、陰茎がん、前立腺がん、腎盂および尿管の移行上皮がん、精巣がん、尿道がん、ウィルムス腫瘍、他の小児腎臓腫瘍、胚細胞がん、中枢神経系がん、頭蓋外胚細胞腫瘍、性腺外胚細胞腫瘍、卵巣胚細胞腫瘍、婦人科がん、子宮頸がん、子宮内膜がん、妊娠性栄養膜腫瘍、卵巣上皮がん、子宮肉腫、膣がん、外陰がん、頭頸部がん、下咽頭がん、喉頭がん、口唇および口腔がん、原発不明転移性扁平頸部がん、口のがん、鼻咽頭がん、口峡がん、副鼻腔および鼻腔がん、咽頭がん、唾液腺がん、喉のがん、筋骨格がん、骨がん、ユーイング肉腫、消化管間質腫瘍(GIST)、骨肉腫、骨の悪性線維性組織球腫、横紋筋肉腫、軟部肉腫、子宮肉腫、神経がん、脳のがん、星細胞腫、脳幹グリオーマ、中枢神経系非定型奇形腫様/ラブドイド腫瘍、中枢神経系胎児性腫瘍、中枢神経系胚細胞腫瘍、頭蓋咽頭腫、上衣腫、髄芽腫、脊髄腫瘍、テント上原始神経外胚葉性腫瘍および松果体芽細胞腫、神経芽細胞腫、呼吸器がん、胸部がん、非小細胞肺がん、小細胞肺がん、悪性中皮腫、胸腺腫、胸腺癌腫、皮膚がん、カポジ肉腫、黒色腫、またはメルケル細胞癌腫に由来する、請求項43に記載の方法。
  45. ヒトKRASのlet−7相補部位LCS6における変異、および腫瘍抑制遺伝子のプロモーターのメチル化状態を、がん細胞の増加した生存または増殖の予測の指標とするための方法であって、
    (a)ヒトKRASのlet−7相補部位LCS6における該変異が、第一の患者サンプルにおいて検出され、ここで該変異は、LCS6の4位におけるウラシル(U)またはチミン(T)のグアニン(G)へのトランジションを含むSNPであり、そして
    (b)腫瘍抑制遺伝子のプロモーターのメチル化状態が、第二の患者サンプルにおいて決定され、
    ここで、(a)における該変異の存在、および対照と比較しての(b)プロモーターのメチル化の増加は、該がん細胞の増加した生存または増殖を示すことを含む、
    方法。
  46. 前記腫瘍抑制遺伝子がNotch1である、請求項45に記載の方法。
  47. 前記がん細胞が、AIDS関連のがん、乳がん、消化管/胃腸管のがん、肛門がん、虫垂がん、胆管がん、結腸がん、結腸直腸がん、食道がん、胆嚢がん、ランゲルハンス島細胞腫瘍、膵神経内分泌腫瘍、肝がん、膵がん、直腸がん、小腸がん、胃がん、内分泌系がん、副腎皮質癌腫、副甲状腺がん、褐色細胞腫、下垂体腫瘍、甲状腺がん、眼のがん、眼内黒色腫、網膜芽細胞腫、膀胱がん、腎臓(腎細胞)がん、陰茎がん、前立腺がん、腎盂および尿管の移行上皮がん、精巣がん、尿道がん、ウィルムス腫瘍、他の小児腎臓腫瘍、胚細胞がん、中枢神経系がん、頭蓋外胚細胞腫瘍、性腺外胚細胞腫瘍、卵巣胚細胞腫瘍、婦人科がん、子宮頸がん、子宮内膜がん、妊娠性栄養膜腫瘍、卵巣上皮がん、子宮肉腫、膣がん、外陰がん、頭頸部がん、下咽頭がん、喉頭がん、口唇および口腔がん、原発不明転移性扁平頸部がん、口のがん、鼻咽頭がん、口峡がん、副鼻腔および鼻腔がん、咽頭がん、唾液腺がん、喉のがん、筋骨格がん、骨がん、ユーイング肉腫、消化管間質腫瘍(GIST)、骨肉腫、骨の悪性線維性組織球腫、横紋筋肉腫、軟部肉腫、子宮肉腫、神経がん、脳のがん、星細胞腫、脳幹グリオーマ、中枢神経系非定型奇形腫様/ラブドイド腫瘍、中枢神経系胎児性腫瘍、中枢神経系胚細胞腫瘍、頭蓋咽頭腫、上衣腫、髄芽腫、脊髄腫瘍、テント上原始神経外胚葉性腫瘍および松果体芽細胞腫、神経芽細胞腫、呼吸器がん、胸部がん、非小細胞肺がん、小細胞肺がん、悪性中皮腫、胸腺腫、胸腺癌腫、皮膚がん、カポジ肉腫、黒色腫、またはメルケル細胞癌腫に由来する、請求項45に記載の方法。
  48. 生存が、腫瘍形成の可能性を維持することを含む、請求項45に記載の方法。
  49. 前記がん細胞が、がん幹細胞である、請求項45または48に記載の方法。
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