JP2013133782A - ディーゼルエンジンの燃料噴射装置、これを備えたディーゼルエンジン、および船舶 - Google Patents

ディーゼルエンジンの燃料噴射装置、これを備えたディーゼルエンジン、および船舶 Download PDF

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Abstract

【課題】簡素で信頼性が高く、且つ低価格な構成により、排気ガス中のNOx削減効果を向上させるとともに、燃料として重質油を実用化する。
【解決手段】ディーゼルエンジンの燃焼室に燃料を噴射する燃料噴射弁と、前記燃料噴射弁に燃料を圧送する増圧ピストンを備えた燃料ポンプユニットと、前記増圧ピストンの動きを制御する蓄圧管制弁ユニットとを備え、前記蓄圧管制弁ユニットには、前記増圧ピストンに付与される油圧の切り替え操作に関わる少なくとも1つの電磁弁(サブ電磁弁33)が設けられ、該電磁弁(33)はソレノイド48を有し、該ソレノイド48の作用力が複数段階に可変であることを特徴とする。例えばソレノイド48は、個別に電力を印加される複数のソレノイド48a,48bを有し、これら複数のソレノイド48a,48bに選択的に電力を印加することによって作用力が可変するようになっている。
【選択図】図5

Description

本発明は、特に大型船舶に用いて好適なディーゼルエンジンの燃料噴射装置、これを備えたディーゼルエンジン、および船舶に関するものである。
近年の環境保全に対する関心の高まりに伴い、船舶における主機、例えば、2サイクル大型低速ディーゼルエンジンから排出される排気ガスに含まれる窒素酸化物(NOx)を大幅に削減する必要性が生じている。例えば特許文献1,2には、大型低速ディーゼルエンジン等から排出される排気ガス中に含まれるNOx等を削減可能な燃料噴射装置が開示されている。
特許文献1に開示されているディーゼルエンジンの燃料噴射装置は、燃料噴射弁の針弁の弁座への押付け圧力を変化させることにより開弁圧を変化せしめる油圧シリンダ装置と、該油圧シリンダ装置への作動油路に設けられて該作動油路の通路面積を変化させることにより該油圧シリンダ装置による前記針弁の押付け圧力を変化せしめる電磁弁と、エンジンの燃料噴射量の増加に従い開弁圧を上昇せしめるように該燃料噴射量の変化に従い前記電磁弁の開度を変化させて該開弁圧を制御するコントローラとを備えており、エンジン負荷の増大にしたがって針弁の開弁圧を上昇させるように制御している。
上記構成によれば、燃料噴射量の多い高負荷運転時には燃料噴射弁の開弁圧を上昇させて噴射圧力を高くして噴射期間を短くした噴射モードとして燃費を低減し、排煙濃度を良好に保持した運転が可能となるとともに、燃料噴射量の少ない低負荷運転時には開弁圧を低くシフトして初期の噴射率を低くし、燃焼の立ち上がりを抑制してNOxの排出を抑制した運転が可能となる。
また、特許文献2に開示されているディーゼルエンジンの燃料噴射装置は、燃料噴射装置を駆動する作動カムの形状を見直し、燃料の戻り管に設けられる電磁弁の開閉制御によってエンジン負荷に適した噴射率制御により低燃費率、低排気ガス化を達成するべく、前記戻り管および電磁弁を1つの通路及び電磁弁よって構成し、前記作動カムによって形成されるカム速度が立ち上がりから頂部まで等速度部を有さずに増加する特性を有し、前記電磁弁の開閉タイミングをエンジン負荷・回転に応じて制御してカム速度特性の使用期間を変更せしめるコントローラを備えたことを特徴とする。
上記構成によれば、燃料噴射の初期は燃焼室への燃料噴霧量が抑制されることから、燃焼速度が穏やかになり、燃焼室内の高温領域の発生を抑え、NOxの発生を抑制すると共に、燃料噴射の後期はカム速度が増大し、燃料噴射率及び燃料噴射圧が高くなるので、燃料の微細化が行われ、燃料の燃焼が促進されて粒子状物質の排出を抑制することができる。
特開2006−241986号公報 特開2011−106273号公報
ところで、年間を通して莫大な量の燃料を消費する海運業界においては、近頃の世界的な経済不況の影響もあり、船舶に使用できる安価な燃料が模索されており、その有力な候補として重質油の使用が検討されている。重質油は重油に比べて安価であり、燃焼カロリーの面でも遜色がない。
しかしその反面、重質油は重油よりも分子量が大きくて高粘度であるため、ディーゼルエンジンの燃焼室に噴射されてから着火するまでの時間が長くなる、いわゆる着火遅れの傾向があり、着火不備により燃焼室が劣化することが懸念されている。したがって、従来では重質油を内燃機関の燃料として使用することは困難であった。
特許文献1,2に開示されている燃料噴射装置は、いずれも排気ガス中に含まれるNOx等の有害物質の排出量を低減させることを可能にしたものであり、改善次第では重質油を燃料に使用することも不可能ではない構成ではあるが、いずれも構造が複雑であり、不調や故障を来す確率が高い上に、燃料噴射装置が高価になる傾向があった。
本発明は、上記の課題を解決するためになされたものであって、簡素で信頼性が高く、且つ低価格な構成により、排気ガス中のNOx削減効果を向上させるとともに、燃料として重質油を実用化することができるディーゼルエンジンの燃料噴射装置、これを備えたディーゼルエンジン、および船舶を提供することを目的とする。
上記目的を達成するために、本発明は以下の手段を提供する。
即ち、本発明に係る燃料噴射装置の第1の態様は、ディーゼルエンジンの燃焼室に燃料を噴射する燃料噴射弁と、前記燃料噴射弁に前記燃料を圧送する増圧ピストンを備えた燃料ポンプユニットと、前記増圧ピストンの動きを制御する蓄圧管制弁ユニットと、を備え、前記蓄圧管制弁ユニットには、前記増圧ピストンに付与される油圧の切り替え操作に関わる少なくとも1つの電磁弁が設けられ、該電磁弁はソレノイドを有し、該ソレノイドの作用力が複数段階に可変であることを特徴とする。
上記構成の燃料噴射装置によれば、蓄圧管制弁ユニットに設けられて増圧ピストンに付与される油圧の切り替え操作に関わる少なくとも1つの電磁弁のソレノイドの作用力(磁力)が複数段階に可変するため、この電磁弁により油圧の切り替え操作を行われて摺動する増圧ピストンの挙動、例えば増圧ピストンの突き上げ速度を任意に設定することができる。特に、増圧ピストンの突き上げ動作時の初期の突き上げ速度を低下させることにより、重質油を噴射した時の、初期の燃料量が抑えられるため、噴霧の微粒化が進み、着火しやすくなると考えられる。このため、重質油を実用化することができる。
また、このように増圧ピストンの初期の突き上げ速度を低下させることにより、膨張行程の初期には少ない燃料が燃焼されるため、燃焼室の温度が急激に高温化することを防ぎ、燃焼室の高温化により生成されるNOxの削減を図ることができる。
上記の構成は、電磁弁の変更と、制御装置のプログラムの変更のみにより構築できるため、非常に簡素且つ低価格に実現することができる。また、燃料噴射装置の構造を簡素に保ち、不調や故障を来す確率の低い、信頼性の高い燃料噴射装置とすることができる。しかも、既存の燃料噴射装置についても電磁弁の交換と制御装置のプログラム変更を行うだけで容易に実現することができる。
また、本発明に係る燃料噴射装置の第2の態様は、前記第1の態様において、前記蓄圧管制弁ユニットは、開弁時に前記増圧ピストンに高圧オイル通路の油圧を供給して燃料を圧送させる作動油供給弁と、前記作動油供給弁に供給された油圧を逃がすオイルスピル通路とを備え、前記電磁弁は前記オイルスピル通路を開閉する弁であることを特徴とする。
上記構成の燃料噴射装置によれば、作動油供給弁に供給された油圧を逃がすオイルスピル通路に、ソレノイドの作用力が複数段階に可変である電磁弁が設けられたため、電磁弁の開弁速度を変化させることによってオイルスピル通路の開閉速度が変わり、作動油供給弁に供給された油圧を逃がす速度、即ち作動油供給弁の開弁速度が変わる。このため、増圧ピストンの突き上げ速度、つまり燃料噴射の勢いをコントロールすることができる。そして、増圧ピストンによる燃料噴射の勢いを重質油に見合うように設定すれば、重質油をディーゼルエンジンの燃料として実用化することができる。
また、本発明に係る燃料噴射装置の第3の態様は、前記第2の態様において、前記オイルスピル通路は、前記作動油供給弁に供給された油圧を急速に解放するクイックオイルスピル通路と、前記作動油供給弁に供給された油圧を徐々に解放するスローオイルスピル通路とを備えて構成されており、前記電磁弁は前記クイックオイルスピル通路に設けられていることを特徴とする。
上記構成の燃料噴射装置によれば、電磁弁を閉弁状態に保つ、電磁弁を速く開弁する、電磁弁をゆっくり開弁する、といった選択を行うことにより、作動油供給弁に供給された油圧を、スローオイルスピル通路のみからゆっくり解放させたり、スローオイルスピル通路とクイックオイルスピル通路の両方から急速に解放させたり、中間的な速度で解放させたりすることができる。これにより、増圧ピストンの突き上げ動作の設定範囲がより増大し、燃料の種類に応じた噴射形態を選択することができる。このため、特に重質油のような難着火性の燃料の燃焼状態を改善することができる。
また、本発明に係る燃料噴射装置の第4の態様は、前記第2または第3の態様において、電磁弁は、開弁時の初速が遅く、途中で速くなることを特徴とする。
上記構成の燃料噴射装置によれば、増圧ピストンの突き上げ動作による燃料噴射の勢いが、初期は弱く、途中から強くなるため、燃焼室で多量の燃料が一気に燃えることによる燃焼室温度の上昇とNOx排出量の増大を抑制することができる。
しかも、増圧ピストンの初期の突き出し速度を遅くしてディーゼルエンジンの膨張行程時に少量の燃料を先行投入することが可能となり、これによって燃焼室内に火種が作られた後に、より多くの燃料が噴射される形態となるため、重質油のような難着火性の燃料の燃焼状態を大幅に改善することができる。
また、本発明に係る燃料噴射装置の第5の態様は、前記第1から第4のいずれかの態様において、該電磁弁は、個別に電力を印加される複数のソレノイドを有し、これら複数のソレノイドに選択的に電力を印加することによって作用力が可変することを特徴とする。
上記構成の燃料噴射装置によれば、簡素で故障しにくい構造により電磁弁の作用力を可変式にし、前述の各作用・効果を奏することができる。
また、本発明に係るディーゼルエンジンは、前記第1から第5のいずれかの態様の燃料噴射装置を備えたことを特徴とする。
上記のディーゼルエンジンによれば、簡素で信頼性が高く、且つ低価格な構成により、排気ガス中のNOxを削減して環境規制に適合させ、しかも低価格な重質油を燃料として実用化することができる。
また、本発明に係る船舶は、前記ディーゼルエンジンを主機として搭載したことを特徴とするため、低価格且つ簡素で信頼性の高い構成により、排気ガス中のNOxを削減して環境規制に適合させ、しかも低価格な重質油を燃料として実用化し、経済性を高めることができる。
以上のように、本発明に係るディーゼルエンジンの燃料噴射装置、これを備えたディーゼルエンジン、および船舶によれば、NOx排出量を削減して環境規制に適合させながら、燃料として低価格な重質油が使用可能な経済性の高いディーゼルエンジンおよび船舶を海運業界に提供し、社会に大きく貢献することができる。
本発明の実施形態に係る燃料噴射装置の全体構成を示す縦断面図である。 増圧ピストンが突出位置にあり、サブ電磁弁が開弁した状態にある蓄圧管制弁ユニットの概略構成図である。 増圧ピストンが引込み位置にあり、サブ電磁弁が開弁した状態にある蓄圧管制弁ユニットの概略構成図である。 増圧ピストンが突出位置にあり、サブ電磁弁が閉弁した状態にある蓄圧管制弁ユニットの概略構成図である。 本発明の一実施形態を示すサブ電磁弁の縦断面図である。 サブ電磁弁のソレノイド稼働状態と作用力との関係をグラフで示す図である。 サブ電磁弁のソレノイド稼働状態と、ソレノイドの作用力と、スプール弁のリフト量と、燃料噴射量と、熱発生量との関係をグラフで示す図である。
以下に、本発明の実施形態について、図1〜図7を参照しながら説明する。
図1は、本発明の実施形態に係る燃料噴射装置の全体構成を示す縦断面図である。この燃料噴射装置1は、例えば船舶の主機として搭載される2サイクル大型低速ディーゼルエンジンに付設され、重質油を燃料としてディーゼルエンジンに供給するように構成されたものである。
燃料噴射装置1は、図示しないディーゼルエンジンの燃焼室に燃料を噴射する燃料噴射弁2と、この燃料噴射弁2に燃料を圧送する増圧ピストン4を備えた燃料ポンプユニット5と、増圧ピストン4の動きを制御する蓄圧管制弁ユニット7とを主な構成要素として備えている。蓄圧管制弁ユニット7は箱状に形成されてディーゼルエンジンのシリンダーブロック側面等に設置され、塔状に形成された燃料ポンプユニット5が蓄圧管制弁ユニット7の上面に気筒数分立設されている。燃料噴射弁2は所定圧が加わると開弁する針弁式であり、燃料分配管8を介して燃料ポンプユニット5の頂部に接続されている。
燃料ポンプユニット5の内部で増圧ピストン4は鉛直方向に摺動することができ、図1、図3に示すように蓄圧管制弁ユニット7の上面に当接した引込み位置と、図2、図4に示すように上方に突出した突出位置との間をスライドできる。増圧ピストン4は、その上半分をなす小径部4aと、下半分をなす大径部4bとが一体に形成された段付ピストン(異径ピストン)状であり、リターンスプリング10によって常に引込み位置側に付勢されている。小径部4aの上面は、燃料ポンプユニット5の内部に形成された燃料圧縮室12の床面を構成している。このため、増圧ピストン4が上方に摺動すると燃料圧縮室12の容積が減少する。燃料圧縮室12の上部には逆止弁13を介して燃料噴射弁2に繋がる燃料分配管8が接続され、燃料圧縮室12の側部には燃料インレット14と燃料アウトレット15が繋がっている。
上記のように構成された燃料ポンプユニット5において、燃料圧縮室12内には燃料インレット14から燃料が充填される。本実施形態においては燃料として重質油が用いられ、重質油は加熱されて粘度を低減されて供給される。後述するように、増圧ピストン4の大径部4bの下面には蓄圧管制弁ユニット7から油圧が付与される。これにより、増圧ピストン4が引込み位置から突出位置に移動し、小径部4aの上面によって燃料圧縮室12内に充填された燃料が圧縮される。小径部4aの上面の面積は、油圧を受ける大径部4bの下面の面積よりも小さいため、油圧力が増圧されて燃料圧縮室12内の燃料を圧縮する。そして、燃料の圧力が燃料分配管8を経て燃料噴射弁2に伝わり、この燃圧が燃料噴射弁2の開弁圧を上回ると燃料噴射弁2が開弁して燃料がディーゼルエンジンの燃焼室に噴射される。なお、燃料圧縮室12内の余剰な燃料は燃料アウトレット15から戻される。
一方、蓄圧管制弁ユニット7の内部には、増圧ピストン4の下面に油圧を付与する高圧オイル通路18が形成されている。図2は蓄圧管制弁ユニット7の概略構成図である。高圧オイル通路18には、図示しないオイルポンプおよび高圧油タンク19から高圧な作動油が供給される。高圧オイル通路18は、作動油供給弁21と作動油スピル弁22によって開閉制御される。これらの弁21,22は、それぞれリターンスプリング23,24によって開弁方向に常時付勢されている。また、蓄圧管制弁ユニット7の内部には低圧オイル通路27が形成されており、これに高圧オイル通路18および低圧油タンク28が接続されている。
さらに、蓄圧管制弁ユニット7には、作動油供給弁21と作動油スピル弁22の作動を制御するメイン電磁弁30と、作動油供給弁21に供給された油圧を逃がすオイルスピル通路31とが設置されている。オイルスピル通路31は、作動油供給弁21に供給された油圧を急速に解放するクイックオイルスピル通路31aと、作動油供給弁21に供給された油圧を徐々に解放するスローオイルスピル通路31bとを備えて構成されている。クイックオイルスピル通路31aには後に詳述するサブ電磁弁33が設けられ、スローオイルスピル通路31bには通路面積を縮小させるオリフィス34が設けられている。サブ電磁弁33は、増圧ピストン4に付与される油圧の切り替え操作に関わる電磁弁である。
メイン電磁弁30は、例えば円柱状のスプール弁37を2つのソレノイド38,39で軸方向に移動させる構造である。図2では大幅に簡略化されているが、スプール弁37には周方向に沿って複数のスプール溝37a,37bが刻設されている。上側のソレノイド38がONになると、ソレノイド38の作用力(磁力)によりスプール弁37が引き上げられて図2の位置となる。この時には、作動油供給弁21の背面に油圧を供給するオイル通路41がスプール溝37aを介してオイルスピル通路31に連通する。このため、オイル通路41がオイルスピル通路31を経て低圧オイル通路27に連通し、作動油供給弁21の背面に掛かる油圧が逃げるため、作動油供給弁21はリターンスプリング23の付勢力に押圧されて開弁する。
同時に、高圧オイル通路18から延びてY字状に分岐する分配通路42の一方の分岐管42aがスプール弁37の外周面により閉塞され、他方の分岐管42bがスプール溝37bを介して、作動油スピル弁22に油圧を供給するオイル通路43に連通する。このため、高圧オイル通路18の油圧が分配通路42(分岐管42b)とオイル通路43を経て作動油スピル弁22の背面に油圧を掛け、これにより作動油スピル弁22がリターンスプリング24の付勢力に抗して閉弁する。
上記のように作動油供給弁21が開弁し、作動油スピル弁22が閉弁するため、高圧オイル通路18の油圧が増圧ピストン4の下面に掛かり、増圧ピストン4が突出位置に突き上げられて前述の如く燃料ポンプユニット5から燃料噴射弁2に燃料が圧送される。
また、下側のソレノイド38がONになると、ソレノイド38の作用力によりスプール弁37が引き下げられて図3の位置となる。この時には、オイルスピル通路31がスプール弁37の外周面により閉塞される一方、分配通路42の分岐管42aがスプール溝37aを介してオイル通路41に連通する。このため、高圧オイル通路18の油圧が作動油供給弁21の背面に油圧を掛け、これにより作動油供給弁21がリターンスプリング23の付勢力に抗して閉弁する。同時に、オイル通路43がスプール溝37bを介して低圧オイル通路27に連通するため、作動油スピル弁22の背面に掛かっていた油圧が低圧オイル通路27に抜けて作動油スピル弁22はリターンスプリング24の付勢力に押圧されて開弁する。なお、低圧オイル通路27には逆止弁45が設けられており、高圧オイル通路18の油圧がオイルスピル通路31側に流れないようになっている。
上記のように作動油供給弁21が閉弁し、作動油スピル弁22が開弁するため、増圧ピストン4の下面に掛かっていた高圧オイル通路18の油圧が解除され、増圧ピストン4がリターンスプリング10の付勢力により引込み位置に押し下げられる。なお、ここでは説明しないが、スプール弁37のスプール溝37a,37bの形状次第では、作動油供給弁21と作動油スピル弁22の両方が開弁するといった場合もあり得る。そして、上記のように作動油供給弁21と作動油スピル弁22とが交互に、もしくは所定のシーケンスで開弁および閉弁を繰り返すことにより、増圧ピストン4が引込み位置と突出位置の間を往復して燃料の噴射が連続的に行われる。
ところで、クイックオイルスピル通路31aに設けられたサブ電磁弁33は、メイン電磁弁30と同様な円柱状のスプール弁47を1つのソレノイド48で軸方向に移動させる構造である。例えばスプール弁47は直立しており、ソレノイド48はスプール弁47の上部に配置されている。スプール弁47には周方向に沿ってスプール溝47aが刻設されている。ソレノイド48がONになると、図2および図3に示すように、ソレノイド48の作用力(磁力)によりスプール弁47が引き上げられ、スプール溝47aを介してクイックオイルスピル通路31aが連通する。ソレノイド48がOFFになると、図4に示すようにスプール弁47が重力により降下してスプール溝47aがクイックオイルスピル通路31aからずれ、クイックオイルスピル通路31aが遮断される。
図5は、サブ電磁弁33のより詳細な縦断面図である。ソレノイド48は、例えば内側ソレノイド48aと、外側ソレノイド48bとを有する2重ソレノイドである。これら内外のソレノイド48a,48bは、コイルの巻数を異ならせる等の手段により、同じ電圧が印加された場合には内側ソレノイド48aよりも外側ソレノイド48bの方が強い作用力を発揮するように設定されている。例えば、外側ソレノイド48bの作用力は内側ソレノイド48aの作用力の約2倍に設定されている。
内側ソレノイド48aと外側ソレノイド48bには個別に電力を印加できるよう、それぞれ電源51,52とスイッチ53,54が設けられている。このため、スイッチ53,54の操作如何により、内側ソレノイド48aと外側ソレノイド48bに選択的に電力を印加し、ソレノイド48の作用力を複数段階に変化させることができる。
例えば、図6に示すように、内側ソレノイド48aのみに電力を印加した時には作用力F1、外側ソレノイド48bのみに電力を印加した時には作用力F2、両方のソレノイド48a,48bに同時に電力を印加した時には作用力F3、というように、ソレノイド48の作用力を3段階に変化させることができる。この操作は図示しない制御装置によって行われる。
サブ電磁弁33が閉じてクイックオイルスピル通路31aが遮断された状態で、メイン電磁弁30が図3の状態から図4の状態に変化した場合は、前述の通り作動油供給弁21の背面に油圧を供給していたオイル通路41がスプール溝37aを介してオイルスピル通路31に連通する。この時にはオイル通路41の油圧はスローオイルスピル通路31bからしか低圧オイル通路27側に逃げることができない。低圧オイル通路27には通路面積を縮小させるオリフィス34が設けられているため、オイル通路41の油圧は流動抵抗を伴いながら徐々に解放され、作動油供給弁21が低速で開弁する。このため、高圧オイル通路18の油圧が一気に増圧ピストン4に加わることがなく、増圧ピストン4は最も遅い速度で突出する。したがって、燃料噴射弁2から噴射される燃料の噴射量(時間あたりの噴射量)が少なくなる。
また、サブ電磁弁33が開弁してクイックオイルスピル通路31aが連通している状態で、メイン電磁弁30が図3の状態から図4の状態に変化した場合には、作動油供給弁21の背面に供給されていた油圧がオイル通路41とクイックオイルスピル通路31aを通って一気に低圧オイル通路27側に逃げることができるため、作動油供給弁21は高速で開弁する。このため、高圧オイル通路18の油圧が一気に増圧ピストン4に加わり、増圧ピストン4は最も速い速度で突出する。したがって、燃料噴射弁2から噴射される燃料の噴射量(時間あたりの噴射量)が多くなる。
ここで、サブ電磁弁33のソレノイド48の作用力を変化させることで、サブ電磁弁33によって油圧の切り替え操作を行われて開閉する増圧ピストン4の挙動、例えば増圧ピストン4の突き上げ速度を任意に設定し、燃料噴射弁2からの燃料噴射量を調整することができる。
即ち、サブ電磁弁33のソレノイド48の作用力を弱くすれば、スプール弁47の開弁速度が遅くなり、クイックオイルスピル通路31aが開かれるまでに時間が掛かる。このため、作動油供給弁21の開弁速度は、サブ電磁弁33が閉弁している時よりは速くなるものの、比較的低速で開弁する。したがって、燃料噴射弁2から噴射される燃料の噴射量が減少する傾向となる。逆に、ソレノイド48の作用力を強くすれば、燃料噴射弁2から噴射される燃料の噴射量が増大する傾向となる。
図7は、サブ電磁弁33におけるソレノイド48の稼働状態およびエンジンのクランク角を横軸に取り、ソレノイド48の作用力と、スプール弁47のリフト量と、燃料噴射量と、熱発生量とを縦軸に取って、これらの相関関係をグラフに表したものである。なお、ここに示すクランク角は、圧縮上死点付近において燃料が噴射される間の微小な角度、例えば上死点前15度〜上死点後10度程度の範囲を具体例として挙げることができる。そして、本実施形態では、サブ電磁弁33の開弁時の初速が遅く、途中で速くなるように、ソレノイド48の内側ソレノイド48aと外側ソレノイド48bに選択的に電力を印加している。
例えば、図7において、燃料噴射の開始時(0)からクランク角が上死点前5度に達するまでの区間Aでは内側ソレノイド48aのみに電力が印加され、クランク角が上死点前5度〜上死点後5度となる区間Bでは外側ソレノイド48bのみに電力が印加され、クランク角が上死点後5度〜上死点後10度となる区間Cでは内側ソレノイド48aと外側ソレノイド48bの両方に電力が印加される制御が行われている。これにより、前述の通りソレノイド48の作用力がF1→F2→F3と段階的に変化する。
これに伴い、スプール弁47のリフト量が後上りに増加して行くものの、区間Aにおいては立ち上がり方が非常になだらかなものになる。このため、増圧ピストン4の初期の突き上げ速度が低く抑えられ、増圧ピストン4の突き上げ動作に伴う燃料噴射の勢いが、区間Aでは弱く、区間Bから区間Cに移行するにつれて強くなる傾向となる。したがって、ディーゼルエンジンの膨張行程時に少量の燃料を先行投入することが可能となり、これによって燃焼室内に火種部分が作られた後に、より多くの燃料が噴射される形態となるため、重質油のような難着火性の燃料の燃焼状態を大幅に改善することができる。
しかも、このように増圧ピストン4の突き上げ動作による燃料噴射の勢いが、初期は弱く、途中から強くなるため、燃焼室で多量の燃料が一気に燃えることによる燃焼室温度の上昇とNOx排出量の増大を抑制することができる。
以上説明したように、本実施形態の燃料噴射装置1によれば、サブ電磁弁33のソレノイド48の作用力を複数段階に可変できるようにしたことにより、増圧ピストン4の突き上げ速度を任意に設定することができる。特に、増圧ピストン4の突き上げ動作時の初期の突き上げ速度を低下させることにより、燃焼室における重質油の燃焼状態を改善し、ディーゼルエンジンの燃料として重質油を実用化することができる。
また、このように増圧ピストン4の初期の突き上げ速度を低下させることにより、膨張行程の初期には少ない燃料が燃焼されるため、燃焼室の温度が急激に高温化することを防いで排気ガス中のNOx削減を図ることができる。
本構成は、サブ電磁弁33の変更と、これを制御する制御装置のプログラムの変更のみにより構築できるため、非常に簡素且つ低価格に実現することができる。また、燃料噴射装置1の構造を簡素に保ち、不調や故障を来す確率の低い、信頼性の高いものにすることができる。しかも、既存の燃料噴射装置についても電磁弁の交換と制御装置のプログラム変更を行うだけで容易に実現することができる。
ところで、上記実施形態では、作動油供給弁21に供給された油圧を逃がすオイルスピル通路31が、作動油供給弁21に供給された油圧を急速に解放するクイックオイルスピル通路31aと、作動油供給弁21に供給された油圧を徐々に解放するスローオイルスピル通路31bとを備えて構成されており、そのスローオイルスピル通路31bの方に、ソレノイド48の作用力を複数段階に変更できるサブ電磁弁33を設けている。
上記構成によれば、サブ電磁弁33を閉弁状態に保つ、サブ電磁弁33を速く開弁する、サブ電磁弁33をゆっくり開弁する、といった選択を行うことにより、作動油供給弁21に供給された油圧を、スローオイルスピル通路31bのみからゆっくり解放させたり、スローオイルスピル通路31bとクイックオイルスピル通路32aの両方から急速に解放させたり、中間的な速度で解放させたりすることができる。これにより、増圧ピストン4の突き上げ動作の設定範囲がより増大し、燃料の種類に応じた噴射形態を選択することができる。このため、特に重質油のような難着火性の燃料の燃焼状態を改善することができる。
サブ電磁弁33のソレノイド48の作用力を複数段階に変更可能にする構造として、本実施形態では、ソレノイド48を内側ソレノイド48aと外側ソレノイド48bとを有する2重ソレノイドとし、各々のソレノイド48a,48bに個別に、且つ選択的に電力が印加される構成としたため、サブ電磁弁33を簡素で故障しにくい構造とし、しかもサブ電磁弁33の作用力を可変式にして、前述の各作用・効果を奏することができる。
また、この燃料噴射装置1を備えたディーゼルエンジン、およびこのディーゼルエンジンを主機として搭載した船舶によれば、NOx排出量を削減して環境規制に適合させつつ、燃料として低価格な重質油を使用可能にし、その経済性を高めて海運業界等に貢献することができる。
なお、本発明は上記実施形態の構成のみに限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において適宜変更や改良を加えることができ、このように変更や改良を加えた実施形態も本発明の権利範囲に含まれるものとする。
例えば、上記実施形態では、サブ電磁弁33の作用力を可変できるようになっているが、サブ電磁弁33に限らず、メイン電磁弁30や、増圧ピストン4に付与される油圧の切り替え操作に関わる他の電磁弁の作用力を可変できるようにしてもよい。
また、電磁弁の作用力を可変する構造として、上記実施形態ではソレノイド48を内側ソレノイド48aと外側ソレノイド48bからなる2重ソレノイドとしているが、この構造に限らず、例えば単一のソレノイドに印加する電圧を変更することで作用力をより多段階に変化させるようにしてもよい。
1 燃料噴射装置
2 燃料噴射弁
4 増圧ピストン
5 燃料ポンプユニット
7 蓄圧管制弁ユニット
18 高圧オイル通路
21 作動油供給弁
31 オイルスピル通路
31a クイックオイルスピル通路
31b スローオイルスピル通路
33 サブ電磁弁
34 オリフィス
47 スプール弁
48 ソレノイド
48a 内側ソレノイド
48b 外側ソレノイド

Claims (7)

  1. ディーゼルエンジンの燃焼室に燃料を噴射する燃料噴射弁と、
    前記燃料噴射弁に前記燃料を圧送する増圧ピストンを備えた燃料ポンプユニットと、
    前記増圧ピストンの動きを制御する蓄圧管制弁ユニットと、を備え、
    前記蓄圧管制弁ユニットには、前記増圧ピストンに付与される油圧の切り替え操作に関わる少なくとも1つの電磁弁が設けられ、
    該電磁弁はソレノイドを有し、該ソレノイドの作用力が複数段階に可変であることを特徴とするディーゼルエンジンの燃料噴射装置。
  2. 前記蓄圧管制弁ユニットは、
    開弁時に前記増圧ピストンに高圧オイル通路の油圧を供給して燃料を圧送させる作動油供給弁と、
    前記作動油供給弁に供給された油圧を逃がすオイルスピル通路と、を備え、
    前記電磁弁は前記オイルスピル通路を開閉する弁であることを特徴とする請求項1に記載のディーゼルエンジンの燃料噴射装置。
  3. 前記オイルスピル通路は、前記作動油供給弁に供給された油圧を急速に解放するクイックオイルスピル通路と、前記作動油供給弁に供給された油圧を徐々に解放するスローオイルスピル通路とを備えて構成されており、前記電磁弁は前記クイックオイルスピル通路に設けられていることを特徴とする請求項2に記載のディーゼルエンジンの燃料噴射装置。
  4. 前記電磁弁は、開弁時の初速が遅く、途中で速くなることを特徴とする請求項2または3に記載のディーゼルエンジンの燃料噴射装置。
  5. 該電磁弁は、個別に電力を印加される複数のソレノイドを有し、これら複数のソレノイドに選択的に電力を印加することによって作用力が可変することを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載のディーゼルエンジンの燃料噴射装置。
  6. 請求項1から5のいずれかに記載の燃料噴射装置を備えたことを特徴とするディーゼルエンジン。
  7. 請求項6に記載のディーゼルエンジンを主機として搭載したことを特徴とする船舶。
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