JP2012217551A - 医療器具用部材 - Google Patents

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Abstract

【課題】柔軟性をもたせ、かつ薄くしても、耐損傷性に優れた医療器具用部材の提供。
【解決手段】多成分からなる材料より形成された医療器具用部材であって、前記多成分のうち、少なくとも1成分がエラストマーであり、かつ、前記多成分のうち、少なくとも1成分の反発弾性が1〜30%であることを特徴とする医療器具用部材。
【選択図】なし

Description

本発明は、医療器具用部材に関する。
内視鏡の湾曲部やカテーテルなどの医療器具用部材には、体内への挿入時や洗浄時などにおける水漏れによる故障を防ぐために、外皮に被覆処理が施される場合が多い。
例えば、内視鏡の湾曲部の外皮には、フッ素系エラストマーやシリコーン系エラストマーなどの軟質エラストマー材料が用いられている(特許文献1参照。)。
特開2010−104668号公報
ところで、内視鏡やカテーテルなどは体内へ挿入して使用されるため、より一層の柔軟性や薄さが求められる。
しかしながら、特許文献1に記載のように、内視鏡の湾曲部などに軟質エラストマー材料を用いた場合、柔軟性を高めたり、薄くしたりすると、使用時や洗浄時にキレたり穴あき(ピンホール)が発生したりしやすくなり、耐損傷性が低下しやすかった。
本発明は、上記事情を鑑みてなされたもので、柔軟性をもたせ、かつ薄くしても、耐損傷性に優れた医療器具用部材を提供することを目的とする。
本発明者らは鋭意検討した結果、少なくとも1成分がエラストマーであり、かつ、少なくとも1成分の反発弾性が1〜30%である多成分からなる材料を用いることで、外部からの衝撃を吸収でき、その結果、柔軟性をもたせ、薄くしても、キレにくく、穴があきにくい医療器具用部材が得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明の医療器具用部材は、多成分からなる材料より形成された医療器具用部材であって、前記多成分のうち、少なくとも1成分がエラストマーであり、かつ、前記多成分のうち、少なくとも1成分の反発弾性が1〜30%であることを特徴とする。
また、前記多成分からなる材料の反発弾性が1〜30%であることが好ましい。
さらに、前記反発弾性が1〜30%である成分の少なくとも1つが高分子化合物であることが好ましい。
また、前記多成分からなる材料が反発弾性の異なる2種以上のエラストマーを有し、前記反発弾性が1〜30%である成分の少なくとも1つがエラストマーであることが好ましい。
さらに、チューブ状やシート状に成形されたことが好ましい。
本発明によれば、柔軟性をもたせ、かつ薄くしても、耐損傷性に優れた医療器具用部材を提供できる。
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明の医療器具用部材は、多成分からなる材料より形成され、前記多成分のうち、少なくとも1成分がエラストマーであり、かつ、前記多成分のうち、少なくとも1成分の反発弾性が1〜30%であることを特徴とする。
なお、反発弾性は、ISO 4662に準じて測定される値である。
(エラストマー成分)
医療器具用部材の材料を構成する成分のうち、少なくとも1成分はエラストマーである。
エラストマーは、医療器具用部材に柔軟性を付与する役割を果たすので、材料中の少なくとも1成分がエラストマーであることにより、柔軟性に優れた医療器具用部材が得られる。
エラストマーとしては、ゴム(熱硬化性エラストマー)や、熱可塑性エラストマーが挙げられる。
ゴムとしては、例えば天然ゴム、イソプレンゴム、ブタジエンゴム、1,2−ポリブタジエンゴム、スチレン−ブタジエンゴム、クロロプレンゴム、ニトリルゴム、ブチルゴム、エチレン−プロピレンゴム、クロロスルホン化ポリエチレン、アクリルゴム、エピクロルヒドリンゴム、シリコーンゴム、フッ素ゴム、ウレタンゴム等のゴムが挙げられる。
熱可塑性エラストマーとしては、例えばウレタン系、スチレン系、エステル系、塩化ビニル系、オレフィン系、ニトリル系、ポリアミド系等のエラストマーが挙げられる。
これらエラストマーは、1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
エラストマーとしては、医療器具用部材を成形する際の成形加工性が向上する点から、熱可塑性エラストマーが好ましい。
エラストマーは、公知の合成方法により合成したものを用いてもよく、市販品を用いてもよい。以下に、エラストマーの市販品の一例を示す。
ウレタン系エラストマーの市販品としては、例えばBASF社製の「エラストランC60A」などが挙げられる。
スチレン系エラストマーの市販品としては、クラレプラスチックス社製の「セプトンコンパウンドJL40NFS」、「セプトンコンパウンドFY35N−01」、「セプトンコンパウンドJH50N」などが挙げられる。
エステル系エラストマーの市販品としては、東レ・デュポン社製の「ハイトレルSB654」、「ETPV 60A01L」などが挙げられる。
なお、エラストマーの反発弾性については特に制限されず、反発弾性が1%未満のエラストマーを用いてもよいし、反発弾性が1〜30%のエラストマーを用いてもよいし、反発弾性が30%超のエラストマーを用いてもよい。
エラストマーの割合は、医療器具用部材の材料100質量%中、5〜100質量%が好ましく、10〜90質量%がより好ましい。エラストマーの割合が上記範囲内であれば、十分な柔軟性を有する医療器具用部材が得られやすくなる。
(反発弾性が1〜30%である成分)
医療器具用部材の材料を構成する成分のうち、少なくとも1成分の反発弾性は1〜30%である。
反発弾性が1〜30%である成分は、医療器具用部材に外部からの衝撃を吸収する性能を付与する役割を果たすので、少なくとも1成分が、反発弾性が1〜30%の成分であることにより、薄くしても、耐損傷性に優れた医療器具用部材が得られる。
反発弾性が1%未満であると、材料がゴム弾性を失い、伸びにくくなる。一方、反発弾性が30%を超えると、外部からの衝撃を吸収しにくくなり、耐損傷性が低下しやすくなる。
反発弾性が1〜30%である成分としては、例えば高分子化合物が挙げられる。
高分子化合物としては、ウレタン系、スチレン系、エステル系などの樹脂化合物や、エラストマー成分の説明において先に例示した各種エラストマー等が挙げられる。
これら、高分子化合物は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
なお、反発弾性が1〜30%である成分として樹脂化合物を用いる場合は、上述したエラストマー成分と同じ種類であってもよいし、異なる種類(例えば樹脂化合物がウレタン系で、エラストマー成分がエステル系の組み合わせなど。)であってもよい。相溶化の観点では、樹脂化合物とエラストマー成分は同じ種類の組み合わせが好ましい。
また、反発弾性が1〜30%である成分としてエラストマーを用いる場合は、反発弾性の異なるエラストマーを2種以上用いる。この場合、少なくとも1つのエラストマーの反発弾性が1〜30%の範囲内であれば、残りのエラストマーの反発弾性については特に制限されず、1〜30%であってもよいし、この範囲外であってもよい。
反発弾性が1〜30%である高分子化合物は、公知の合成方法により合成したものを用いてもよく、市販品を用いてもよい。以下に、反発弾性が1〜30%の高分子化合物の市販品の一例を示す。
ウレタン系の高分子化合物の市販品としては、例えばBASF社製のウレタン系樹脂「エラストランNY90A」などが挙げられる。
スチレン系の高分子化合物の市販品としては、クラレプラスチックス社製のスチレン系エラストマー「セプトンコンパウンドJL40NFS」などが挙げられる。
エステル系の高分子化合物の市販品としては、東レ・デュポン社製のエステル系エラストマー「ハイトレルSB654」などが挙げられる。
反発弾性が1〜30%である成分の割合は、医療器具用部材の材料100質量%中、5〜100質量%が好ましく、10〜90質量%がより好ましい。反発弾性が1〜30%である成分の割合が上記範囲内であれば、外部からの衝撃を十分に吸収できる医療器具用部材が得られやすくなる。
(カーボン)
医療器具用部材の材料には、上述したエラストマー成分および反発弾性が1〜30%である成分以外に、着色剤としてカーボンが含まれていてもよい。カーボンは着色剤の役割の他、補強剤の役割を果たす。カーボンを含有すれば、着色効果が得られる他、その含有量によっては医療器具用部材を所望の硬さに容易に調節することができたり、医療器具用部材の耐熱性が向上したりする。
カーボンの割合は、医療器具用部材の材料100質量%中、0.5〜10質量%が好ましい。カーボンの割合が0.5質量%以上であれば、着色効果が十分に得られる。一方、カーボンの割合が10質量%以下であれば、医療器具用部材が硬くなりすぎるのを抑制できる。
(シリカ)
医療器具用部材の材料には、さらにシリカが含まれていてもよい。シリカは補強剤の役割を果たすので、シリカを含有すれば、上述したカーボンを含有した場合と同様の効果、具体的は、医療器具用部材を所望の硬さに容易に調節することができたり、医療器具用部材の耐熱性が向上したりするといった効果が得られる。
シリカの割合は、医療器具用部材の材料100質量%中、0.05〜50質量%が好ましく、0.5〜15質量%がより好ましい。シリカの割合が0.05質量%以上であれば、補強効果が十分に得られる。一方、シリカの割合が50質量%以下であれば、医療器具用部材が硬くなりすぎるのを抑制できる。
(その他)
本発明の医療器具用部材の材料には、さらに任意成分として各種充填剤や繊維などの任意成分が含まれていてもよい。
充填剤としては、例えば硫酸バリウム、酸化チタン、酸化アルミニウム、炭酸カルシウム、ケイ酸カルシウム、ケイ酸マグネシウム、ケイ酸アルミニウム等の無機系充填剤;ポリテトラフロロエチレン樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、フェノール樹脂、ポリイミド樹脂、メラミン樹脂、シリコーン樹脂等の有機系充填剤などが挙げられる。
これら充填剤は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
繊維としては、例えば石綿、ガラス繊維、アルミナ繊維、ロックウール等の無機繊維;綿、羊毛、絹、麻、ナイロン繊維、アラミド繊維、ビニロン繊維、ポリエステル繊維、レーヨン繊維、アセテート繊維、フェノール−ホルムアルデヒド繊維、ポリフェニレンサルファイド繊維、アクリル繊維、ポリ塩化ビニル繊維、ポリ塩化ビニリデン繊維、ポリウレタン繊維、テトラフルオロエチレン繊維等の有機繊維などが挙げられる。
これら繊維は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
(製造方法)
本発明の医療器具用部材は、種々の慣用の方法で製造することができる。
まず、エラストマー成分と反発弾性が1〜30%である成分を二軸ロール、ニーダー、バンバリーミキサー等の混練機で素練りし、必要に応じてカーボン、シリカ、および任意成分を混錬しながら添加して医療器具部材の材料を調製する。
得られた材料の反発弾性は1〜30%であることが好ましい。材料の反発弾性が1〜30%であれば、この材料から成形される医療器具用部材の反発弾性も、材料の反発弾性と同じ値(すなわち、1〜30%)となり、柔軟性と耐損傷性のバランスに優れた医療器具用部材が得られやすくなる。
材料の反発弾性は、材料を構成する各成分の種類や配合量を調節することで、調整できる。
ついで、得られた材料を用いて所望の形状に成形する。成形方法としては、射出成形、押出し成形等の公知のゴム成形方法を用いることができる。例えば、材料を所望形状の金型に充填し、加熱プレスした後、冷却する。
医療器具部材の形状については特に制限されず、例えばチューブ状、シート状、棒状、リング状、各種ブロック形状など、用途に応じて適宜選択される。
以上説明した本発明の医療器具用部材は、上述した多成分からなる材料より成形されるので、外部からの衝撃を吸収できる。よって、柔軟性をもたせ、薄くしても、耐損傷性に優れ、キレにくく、穴があきにくい。
なお、医療器具用部材の材料は、反発弾性の異なる2種以上のエラストマーで構成されていてもよい。この場合、少なくとも1つのエラストマーの反発弾性が1〜30%である。
本発明の医療器具用部材は、例えば内視鏡やカテーテルなどの部材に適しているが、特に、内視鏡の湾曲部外皮、内視鏡の折れ止め部材、内視鏡のスイッチボタンまたはスイッチボタンを覆う外皮、及び内視鏡の内部に使用されるO−リングとして好適である。
以下、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
実施例および比較例で用いた原料、および評価方法は以下の通りである。
[原料]
医療器具用部材の材料を構成する各成分(原料)の種類、商品名、メーカー名、反発弾性を表1に示す。
Figure 2012217551
[測定・評価]
<反発弾性の測定>
ISO 4662に準ずる反発弾性試験により測定した。
<引張強度の測定>
JIS K 6251に準ずる引張り試験により測定した。
<引裂強度の測定>
JIS K 6252に準ずる引裂き試験により測定した。
<硬度の測定>
JIS K 6252に準じ、デュロメータ硬さを測定した。
<耐損傷性の評価>
厚さ0.5mmのチューブ状に加工した成形品に、70gの錘をつけた直径1.5mmのピンを、110mmの高さより垂直に落下させて亀裂試験を行い、試験後の亀裂の発生具合を目視にて観察し、以下の評価基準にて評価した。
○:亀裂の発生なし。
×:亀裂の発生あり。
[実施例1]
スクリュー径20mmのスクリューを備えた二軸混練機に、表2に示す配合組成に従って各成分を投入し、温度200℃の条件で溶融混練し、ペレット状の材料を調製した。ついで、単軸押出成形機を用いて、得られたペレット状の材料を厚さ2mmのシート状に成形し、成形品を得た。得られた成形品について、反発弾性、引張強度、引裂強度、硬度の測定を行った。結果を表2に示す。
別途、ペレット状の材料を、単軸押出成形機を用いて200℃の条件で厚さ0.5mmのチューブ状に成形し、成形品(内視鏡の湾曲部外皮)を得た。得られた成形品について、耐損傷性を評価した。結果を表2に示す。
[実施例2〜7、比較例1〜4]
各成分の配合組成を表2に示すように変更した以外は、実施例1と同様にして材料を調製し、シート状の成形品およびチューブ状の成形品を製造し、各測定・評価を行った。結果を表2に示す。
Figure 2012217551
表2から明らかなように、各実施例で得られた成形品は、亀裂試験において亀裂が発生せず、耐損傷性に優れていた。
一方、各比較例で得られた成形品は、亀裂試験において亀裂が発生し、耐損傷性に劣っていた。

Claims (6)

  1. 多成分からなる材料より形成された医療器具用部材であって、
    前記多成分のうち、少なくとも1成分がエラストマーであり、
    かつ、前記多成分のうち、少なくとも1成分の反発弾性が1〜30%であることを特徴とする医療器具用部材。
  2. チューブ状に成形されたことを特徴とする請求項1に記載の医療器具用部材。
  3. 前記多成分からなる材料の反発弾性が1〜30%であることを特徴とする請求項1に記載の医療器具用部材。
  4. 前記反発弾性が1〜30%である成分の少なくとも1つが高分子化合物であることを特徴とする請求項1または3に記載の医療器具用部材。
  5. 前記多成分からなる材料が反発弾性の異なる2種以上のエラストマーを有し、前記反発弾性が1〜30%である成分の少なくとも1つがエラストマーであることを特徴とする請求項1、3、4のいずれか一項に記載の医療器具用部材。
  6. チューブ状に成形されたことを特徴とする請求項3〜5のいずれか一項に記載の医療器具用部材。
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