JP2012144484A - 血中トリグリセリド濃度上昇抑制剤 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】ポリグルタミン酸のカリウム塩を有効成分として含有する血中トリグリセリド濃度上昇抑制剤。
【選択図】なし
Description
一般に、血中トリグリセリド濃度の変化は、食事の影響を強く受けており、薬物のみで完全にコントロールすることは困難であると言われている。そのため、薬物療法以上に食事として摂取する脂質の質が注目され、例えば、リノール酸、リノレン酸を中心とする高度不飽和脂肪酸を摂取することで、血中トリグリセリド濃度を低下させることが推奨されている。しかし、高度不飽和脂肪酸の摂りすぎは生体内で過酸化脂肪酸の生成を招き、種々の成人病を誘発する可能性が指摘されている。
このような事情から、安全性が高く、日常的に投与あるいは摂取しても副作用が生じない方法で、血中のトリグリセリド濃度上昇を抑制することが望まれている。近年、安全かつ有効に血中トリグリセリドの濃度上昇を抑える物質として、脂質の吸収を抑えるキタンサンガム及びアルギン酸プロピレングリコールエステル(特許文献1参照)、キトサン(特許文献2参照)、加工澱粉(特許文献3参照)が報告されている。
本発明の血中トリグリセリド濃度上昇抑制剤は、ポリグルタミン酸のカリウム塩を有効成分として含有する。ポリグルタミン酸は、グルタミン酸のγ位のカルボキシル基とα位のアミノ基がペプチド結合したもので、その構造式は(-NH-CH(COOH)-CH2-CH2-CO-)nで表されるが、本発明に用いられるポリグルタミン酸のカリウム塩は、前記構造式におけるカルボキシル基の水素原子の50%以上がカリウムに置換されたものである。本発明に用いられるポリグルタミン酸のカリウム塩は、前記構造式においてカルボキシル基の水素原子の60%がカリウムに置換されたものであることが好ましく、さらに上記カルボキシル基の水素原子の70%以上、さらに80%以上、さらに90%以上、さらに95%以上、殊更99%以上がカリウムに置換されたものであることが好ましいが、実質的にすべてのカルボキシル基がカリウムに置換されたものであることが特に好ましい。また、前記構造式において末端に位置することになるカルボキシル基も、カリウムで置換されたものであることが好ましい。
ポリグルタミン酸のカリウム塩は、ポリグルタミン酸や、他のポリグルタミン酸の塩に比べて血中のトリグリセリド濃度の上昇を顕著に抑制する作用を有する。従って、当該ポリグルタミン酸のカリウム塩は、血中のトリグリセリド濃度上昇抑制剤として使用することができ、また、当該トリグリセリド濃度上昇抑制剤を製造するために使用することができる。ポリグルタミン酸のカリウム塩が血液中におけるトリグリセリド濃度の上昇を抑制する作用があることは今まで知られていなかった。また、ポリグルタミン酸のカリウム塩に高脂血症や動脈硬化症の予防・改善効果があることも知られていない。ポリグルタミン酸のカリウム塩は、後述の実施例で示すように、血中トリグリセリド濃度の上昇、特に食後(通常の糖質・脂質・蛋白質等を含む食品、飲料などを摂取した後)の血中トリグリセリド濃度の上昇を効率的に抑制しうる。
本発明において用いられるポリグルタミン酸のカリウム塩は、重量平均分子量が500以上であることが好ましく、1000以上であることがより好ましく、2,000以上であることがさらに好ましく、3,000以上であることがさらに好ましく、5,000以上であることが特に好ましい。
使用されるポリグルタミン酸のカリウム塩の重量平均分子量の上限は約5,000,000であるのが好ましいが、製造面、及び本発明の血中トリグリセリド濃度上昇抑制剤を経口用液体製剤としたときの喉ごし、ぬるつき、嚥下のしやすさなどの観点から、その粘度が比較的低い方が好ましく、使用されるポリグルタミン酸のカリウム塩の重量平均分子量は1,000,000以下であることがより好ましく、500,000以下であることがさらに好ましい。
より具体的には、本発明に用いるポリグルタミン酸のカリウム塩の重量平均分子量は500〜5,000,000であることが好ましく、1,000〜1,000,000であることがより好ましく、2,000〜500,000であることがさらに好ましく、3,000〜500,000であることがさらに好ましく、4,000〜400,000であることが特に好ましく、5,000〜300,000であることが殊更好ましい。
重量平均分子量の測定は、例えば、ゲルろ過カラムを用いた高速液体クロマトグラフィーにより行うことができる。
上記各食品や製剤中の有効投与(摂取)量は、ポリグルタミン酸のカリウム塩として、1日当たり0.01g/kg体重〜1.0g/kg体重とするのが好ましく、0.003g/kg体重〜0.5g/kg体重とするのがより好ましく、0.01g/kg体重〜0.2g/kg体重とするのが更に好ましい。また、本発明の血中トリグリセリド濃度上昇抑制剤は、食前・食中・食後に用いると効果的であり、特に食前又は食中に用いることが好ましく、食前1時間から食中に用いることがより好ましい。
投与又は摂取対象者としては、それを必要としている者であれば特に限定されないが、空腹時血中トリグリセリド値が100mg/dL以上の人が好ましい。
ポリグルタミン酸のカリウム塩の定量法及び重量平均分子量測定法−1:
ポリグルタミン酸のカリウム塩の定量及び重量平均分子量測定は、D−6000(日立ハイテクノロジーズ社製)HPLCシステムを用いてゲルろ過法にて実施した。分析条件は、分析カラムにTSKGel G4000PWXL及びTSKGelG6000PWXLゲルろ過カラム(商品名、東ソー社製)を用い、溶離液に0.1M硫酸ナトリウムを使用し、流速1.0mL/分、カラム温度50℃とし、UV検出波長を210nmとした。また、濃度は分子量880kのポリグルタミン酸(明治フードマテリア社製)を標準品として用いて検量線を作成することで算出した。また、重量平均分子量は、プルラン(商品名:Shodex STANDARD P−82、昭和電工社製)を用いて予め重量平均分子量を求めた分子量の異なる複数のポリグルタミン酸(和光純薬工業社製(商品名:162−21411、162−21401)、SIGMA−ALDRICH社製(商品名:P−4886、P−4761)、明治フードマテリア社製(分子量880k))を標準品として用いて測定した。
分子量が10k前後となる低分子量ポリグルタミン酸のカリウム塩の重量平均分子量測定は、D−6000(日立ハイテクノロジーズ社製)HPLCシステムを用いてゲルろ過法にて実施した。分析条件は、分析カラムにTSKGel G3000PWXLゲルろ過カラム(商品名、東ソー社製)を用い、溶離液に0.1M硫酸ナトリウムを使用し、流速0.8mL/分、カラム温度50℃とし、UV検出波長を210nmとした。重量平均分子量は、プルラン(商品名:Shodex STANDARD P−82、昭和電工社製)を用いて予め重量平均分子量を求めたポリグルタミン酸(明治フードマテリア社製、分子量9k)、ポリーヒドロキシプロリン(SIGMA−ALDRICH社製、分子量4k)を標準品として用い測定した。
ポリグルタミン酸塩の金属分析は、D−7000(日立ハイテクノロジーズ社製)HPLCシステムを用いてイオンクロマト法にて実施した。分析条件は、ガードカラムにShodex IC YK−G、分析カラムにShodex IC YK−421(いずれも商品名、昭和電工社製)を用い、溶離液を1.5mMクエン酸水溶液とし、流速1.0mL/分、カラム温度40℃で電気伝導度検出器を用いて検出を行なった。標準試料として関東化学社製のナトリウム標準液(1000ppm)及びカリウム標準液(1000ppm)を用い、これらの標準品について10〜100mg/Lの範囲で検量線を作成し、これらの検量線に基づきポリグルタミン酸塩の金属分析を実施した。
重量平均分子量9,000のポリグルタミン酸のナトリウム塩(明治フードマテリア社製)を初発材料として、10%(w/w)水溶液を500mL作製し、氷冷下にて塩酸を用いてpH2以下に調整した。続いて、生成した酸沈殿物を8,000rpm、5分の遠心分離(商品名:himacCR21GIII、日立工機社製)にて回収し、得られた沈殿物を同量の蒸留水を用いて洗浄し、再度遠心分離に供した。この洗浄操作を2回繰り返し行なった後、得られた沈殿物を300mLの蒸留水に懸濁し、これをpH7以上となるように水酸化カリウム水溶液を用いて中和した。この上記酸処理および水酸化カリウムによる中和処理を再度実施し、得られた中和試料に対して2.5倍量のエタノールを添加し、氷冷下にて一晩放置した。このエタノール添加により生成した沈殿物を14,000rpm、5分の遠心分離(同上)にて回収し、回収試料を減圧乾燥に供して、27.4gの固形物を得た。この試料の重量平均分子量は前述の分析方法により、12,000と算出された。また、この試料はポリグルタミン酸のカルボキシル基量に相当する量のカリウムが検出され、ナトリウムは検出限界以下であったため、中和前のポリグルタミン酸の実質的にすべてのカルボキシル基の水素原子がカリウムに置換されたものであることが確認された。
重量平均分子量350,000のポリグルタミン酸のナトリウム塩(明治フードマテリア社製)を初発材料として、5%(w/w)水溶液を1L作製し、氷冷下にて塩酸を用いてpH1以下に調整した。続いて、生成した酸沈殿物を8,000rpm、5分の遠心分離(商品名:himacCR21GIII、日立工機社製)にて回収し、得られた沈殿物を同量の蒸留水を用いて洗浄し、再度遠心分離に供した。この洗浄操作を2回繰り返し行なった後、得られた沈殿物を800mLの蒸留水に懸濁し、これをpH7以上となるように水酸化カリウム水溶液を用いて中和した。この上記酸処理および水酸化カリウムによる中和処理を再度実施し、このエタノール添加により生成した沈殿物を14,000rpm、5分の遠心分離(同上)にて回収し、回収試料を減圧乾燥に供して、36.2gの固形物を得た。この試料の重量平均分子量は前述の分析方法により、240,000と算出された。また、この試料はポリグルタミン酸のカルボキシル基量に相当する量のカリウムが検出され、ナトリウムは検出限界以下であったため、中和前のポリグルタミン酸の実質的にすべてのカルボキシル基の水素原子がカリウムに置換されたものであることが確認された。
重量平均分子量9,000のポリグルタミン酸のナトリウム塩(明治フードマテリア社製)を初発材料として、20%(w/w)水溶液を125mL作製し、塩酸を用いてpH1以下に調整した。続いた後、得られて、このPGA溶液を95℃にて12時間恒温し、生成した酸沈殿物を8,000rpm、5分の遠心分離(商品名:himacCR21GIII、日立工機社製)にて回収し、得られた沈殿物を同量の蒸留水を用いて洗浄し、再度遠心分離に供した。この洗浄操作を2回繰り返し行なった沈殿物を300mLの蒸留水に懸濁し、これをpH7以上となるように水酸化カリウム水溶液を用いて中和した。この上記酸処理および水酸化カリウムによる中和処理を再度実施し、得られた中和試料に対して2.5倍量のエタノールを添加し、氷冷下にて一晩放置した。このエタノール添加により生成した沈殿物を14,000rpm、5分の遠心分離(同上)にて回収し、回収試料を減圧乾燥に供して、16.5gの固形物を得た。この試料の重量平均分子量は前述の分析方法により、6,000と算出された。
重量平均分子量12,000及び240,000(調製例1、2で調製)のポリグルタミン酸のカリウム塩と、重量平均分子量9,000及び350,000(明治フードマテリア製)のポリグルタミン酸のナトリウム塩(明治フードマテリア社製)を用いて下記のように経口投与サンプルを調製した。
また、8週齢の雄性マウス(C57BL/6J Jcl:日本クレア社製)を各群10匹ずつ用いて下記のように経口投与試験を行った。
重量平均分子量6,000(調製例3で調製)のポリグルタミン酸のカリウム塩と、重量平均分子量12,000のポリグルタミン酸のカリウム塩(調製例1で調製)及び重量平均分子量9,000のポリグルタミン酸のナトリウム塩(明治フードマテリア社製)を用いて下記のように経口投与サンプルを調製した。
また、8週齢の雄性マウス(C57BL/6J Jcl:日本クレア社製)を各群7匹ずつ用いて下記のように経口投与試験を行った。
グルコース(関東化学社製)とトリオレイン(Glyceryl trioleate:Sigma社製)をレシチン(卵製、和光純薬社製)とアルブミン(ウシ血清由来、Sigma社製)を用いて乳化し、乳液を調製した。この乳液に、ポリグルタミン酸塩試料を添加し、最終濃度がポリグルタミン酸塩試料5(w/w)%、グルコース5(w/w)%、トリオレイン5(w/w)%、乳化剤(レシチン0.2(w/w)%、アルブミン1.0(w/w)%となるよう、経口投与サンプルを調製した。なお、コントロールサンプルとして、ポリグルタミン酸塩の代わりに水を添加したサンプルを調製した。
一晩絶食させたマウスをエ−テル麻酔下、眼窩静脈よりヘパリン処理ヘマトクリット毛細管(VITREX社製)を用い、初期採血を行った。その後、経口投与サンプルを経口ゾンデ針にて経口投与し、10分、30分、1時間、2時間後にエーテル麻酔下、眼窩静脈より採血を行った。マウスに対する経口投与量を下記の表1に示す。
サンプル経口投与後から2時間後までの血中トリグリセリド濃度の各測定結果をもとに、血中トリグリセリド濃度の最大値と初期値(初期採血時)の差(Δ値)を最大トリグリセリド濃度上昇と定義し、コントロール群を100としたときの値を下記表2(試験例1の結果)及び表3(試験例2の結果)に示した。
また、ポリグルタミン酸のカリウム塩を投与すると、ポリグルタミン酸のナトリウム塩を投与した場合に比べて顕著に優れた血中トリグリセリド濃度上昇抑制効果が認められた。これは、重量平均分子量が9,000のポリグルタミン酸のナトリウム塩を用いて得られた最大トリグリセリド濃度上昇抑制効果以上の抑制効果が、その2.5倍もの分子量である重量平均分子量240,000のポリグルタミン酸のカリウム塩により達成されていることからも理解することができる。
また、平均重量分子量6,000のポリグルタミン酸のカリウム塩の血中トリグリセリド濃度上昇抑制効果は平均重量分子量12,000のポリグルタミン酸のカリウム塩と同等であることが明らかとなった。
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