JP2012144484A - 血中トリグリセリド濃度上昇抑制剤 - Google Patents

血中トリグリセリド濃度上昇抑制剤 Download PDF

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Abstract

【課題】血中トリグリセリド濃度上昇抑制剤を提供する。
【解決手段】ポリグルタミン酸のカリウム塩を有効成分として含有する血中トリグリセリド濃度上昇抑制剤。
【選択図】なし

Description

本発明は、血中トリグリセリド濃度上昇抑制剤に関する。
トリグリセリドは中性脂質の一種で、血液中に含まれる中性脂質のほとんどはトリグリセリドである。血液中において、トリグリセリド濃度の高い状態が継続すると高トリグリセリド血症や高脂血症を引き起こすことが知られている。高脂血症は、動脈硬化症の原因であると考えられており、心疾患や脳血管障害等の疾患を引き起こす最初の引き金となる。
一般に、血中トリグリセリド濃度の変化は、食事の影響を強く受けており、薬物のみで完全にコントロールすることは困難であると言われている。そのため、薬物療法以上に食事として摂取する脂質の質が注目され、例えば、リノール酸、リノレン酸を中心とする高度不飽和脂肪酸を摂取することで、血中トリグリセリド濃度を低下させることが推奨されている。しかし、高度不飽和脂肪酸の摂りすぎは生体内で過酸化脂肪酸の生成を招き、種々の成人病を誘発する可能性が指摘されている。
このような事情から、安全性が高く、日常的に投与あるいは摂取しても副作用が生じない方法で、血中のトリグリセリド濃度上昇を抑制することが望まれている。近年、安全かつ有効に血中トリグリセリドの濃度上昇を抑える物質として、脂質の吸収を抑えるキタンサンガム及びアルギン酸プロピレングリコールエステル(特許文献1参照)、キトサン(特許文献2参照)、加工澱粉(特許文献3参照)が報告されている。
一方、ポリグルタミン酸は、その保水力の高さから保湿剤、吸収剤等として広く使用されており、生分解性ポリマーとして注目されている。また、小腸からのカルシウム吸収促進作用や血圧上昇抑制作用があることが報告されている(特許文献4、5参照)。更に、ポリグルタミン酸に中性脂質の吸収を抑制する効果があり、高中性脂肪血症の治療、改善、発症の抑制に使用できることが報告されている(特許文献6参照)。
しかし、ポリグルタミン酸の特定の塩に関する血中トリグリセリド濃度上昇抑制作用についてはこれまで報告がない。
特開平5−186356号公報 特開平3−290170号公報 特開2004−269458号公報 特開平5−95767号公報 特開2008−255063号公報 特開2009−173634号公報
本発明は、医薬又は食品用途として有用な血中トリグリセリド濃度上昇抑制剤を提供することを課題とする。具体的には、本発明は、血中のトリグリセリド濃度が上昇することを抑制し、高トリグリセリド血症、高脂血症や動脈硬化症の発症リスクの低下・予防・改善・緩和・処置のための医薬用途又は非医薬用途である食品用途として有用な血中トリグリセリド濃度上昇抑制剤を提供することを課題とする。
本発明者等は上記課題に鑑み、鋭意検討を行った。その結果、ポリグルタミン酸の塩に食後の血中トリグリセリド濃度上昇を抑制する効果があることを見い出した。さらに、該ポリグルタミン酸の塩の中でも、カリウム塩に特に優れた血中トリグリセリド上昇を抑制する効果があることを見出した。本発明はこれらの知見に基づいて完成するに至ったものである。
本発明は、ポリグルタミン酸のカリウム塩を有効成分として含有する血中トリグリセリド濃度上昇抑制剤に関する。
本発明の血中トリグリセリド濃度上昇抑制剤によれば、血中のトリグリセリド濃度の上昇、特に食後における血中トリグリセリド濃度の上昇を減少させることができる。さらに、本発明の血中トリグリセリド濃度上昇抑制剤は、血中脂質濃度を正常な範囲に調節し、高トリグリセリド血症、高脂血症の発症リスクの低下・予防・改善・緩和・処置、さらには動脈硬化症の発症リスクの低下・予防・改善・緩和・処置に有用である。
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明の血中トリグリセリド濃度上昇抑制剤は、ポリグルタミン酸のカリウム塩を有効成分として含有する。ポリグルタミン酸は、グルタミン酸のγ位のカルボキシル基とα位のアミノ基がペプチド結合したもので、その構造式は(-NH-CH(COOH)-CH2-CH2-CO-)nで表されるが、本発明に用いられるポリグルタミン酸のカリウム塩は、前記構造式におけるカルボキシル基の水素原子の50%以上がカリウムに置換されたものである。本発明に用いられるポリグルタミン酸のカリウム塩は、前記構造式においてカルボキシル基の水素原子の60%がカリウムに置換されたものであることが好ましく、さらに上記カルボキシル基の水素原子の70%以上、さらに80%以上、さらに90%以上、さらに95%以上、殊更99%以上がカリウムに置換されたものであることが好ましいが、実質的にすべてのカルボキシル基がカリウムに置換されたものであることが特に好ましい。また、前記構造式において末端に位置することになるカルボキシル基も、カリウムで置換されたものであることが好ましい。
ポリグルタミン酸のカリウム塩は、ポリグルタミン酸や、他のポリグルタミン酸の塩に比べて血中のトリグリセリド濃度の上昇を顕著に抑制する作用を有する。従って、当該ポリグルタミン酸のカリウム塩は、血中のトリグリセリド濃度上昇抑制剤として使用することができ、また、当該トリグリセリド濃度上昇抑制剤を製造するために使用することができる。ポリグルタミン酸のカリウム塩が血液中におけるトリグリセリド濃度の上昇を抑制する作用があることは今まで知られていなかった。また、ポリグルタミン酸のカリウム塩に高脂血症や動脈硬化症の予防・改善効果があることも知られていない。ポリグルタミン酸のカリウム塩は、後述の実施例で示すように、血中トリグリセリド濃度の上昇、特に食後(通常の糖質・脂質・蛋白質等を含む食品、飲料などを摂取した後)の血中トリグリセリド濃度の上昇を効率的に抑制しうる。
ポリグルタミン酸のカリウム塩は、その分子量に関わらず全般的に血中トリグリセリド濃度上昇抑制効果を有するが、低分子量側でより効果が高い傾向がある。
本発明において用いられるポリグルタミン酸のカリウム塩は、重量平均分子量が500以上であることが好ましく、1000以上であることがより好ましく、2,000以上であることがさらに好ましく、3,000以上であることがさらに好ましく、5,000以上であることが特に好ましい。
使用されるポリグルタミン酸のカリウム塩の重量平均分子量の上限は約5,000,000であるのが好ましいが、製造面、及び本発明の血中トリグリセリド濃度上昇抑制剤を経口用液体製剤としたときの喉ごし、ぬるつき、嚥下のしやすさなどの観点から、その粘度が比較的低い方が好ましく、使用されるポリグルタミン酸のカリウム塩の重量平均分子量は1,000,000以下であることがより好ましく、500,000以下であることがさらに好ましい。
より具体的には、本発明に用いるポリグルタミン酸のカリウム塩の重量平均分子量は500〜5,000,000であることが好ましく、1,000〜1,000,000であることがより好ましく、2,000〜500,000であることがさらに好ましく、3,000〜500,000であることがさらに好ましく、4,000〜400,000であることが特に好ましく、5,000〜300,000であることが殊更好ましい。
重量平均分子量の測定は、例えば、ゲルろ過カラムを用いた高速液体クロマトグラフィーにより行うことができる。
本発明に用いられるポリグルタミン酸のカリウム塩は、化学的合成や微生物によって生産したポリグルタミン酸又はその塩、あるいは市販されているポリグルタミン酸又はその塩を、後述する実施例に記載されているように水酸化カリウム水溶液を用いて中和することで得ることができる。また、カリウムを含有する混合培地で培養した微生物によって生産することもできる。ポリグルタミン酸のカリウム塩を構成するグルタミン酸の光学活性はD体でもL体でもよく、それらの混合物でもよい。天然のポリグルタミン酸は、グルタミン酸がγ位で結合した重合体であり、野生型でポリグルタミン酸を生産する微生物としては、例えば、納豆菌を含む一部のバチルス(Bacillus)属細菌とその近縁種(Bacillus subtilis var.chungkookjangBacillus licheniformisBacillus megateriumBacillus anthracisBacillus halodurans)や、Natrialba aegyptiacaHydra等を挙げることができる[Ashiuchi,M.,et al.:Appl.Microbiol.Biotechnol.,59,pp.9-14(2002)]。また、遺伝子組換え技術を用いたポリグルタミン酸の生産例としては、プラスミドにて遺伝子導入された組換え枯草菌(Bacillus subtilis ISW1214株)において約9g/L/5日[Ashiuchi,M.,et al.:Biosci.Biotechnol.Biochem.,70,pp.1794-1797(2006)]、プラスミドにて遺伝子導入された組換え大腸菌において約4g/L/1.5日[Jiang,H.,et al.:Biotechnol.Lett.,28,pp.1241-1246(2006)]の生産性が得られることが知られている。或いは、ポリグルタミン酸は、食品添加物、化粧品素材及び増粘剤等として商業的に生産されており、国内及び海外のポリグルタミン酸メーカーが供給するポリグルタミン酸を購入することもできる(例えば、国内メーカー:日本ポリグル、一丸ファルコス、明治フードマテリア等、海外メーカー:バイオリーダース等)。
本発明に用いられるポリグルタミン酸のカリウム塩は、糖質、脂質及び/又は蛋白質を摂取した後の血中トリグリセリド濃度の上昇を抑制することができる。しかもその抑制効果は、ポリグルタミン酸や他のポリグルタミン酸塩と比較して顕著に優れている。
本発明の血中トリグリセリド濃度上昇抑制剤は、前記ポリグルタミン酸のカリウム塩そのものであってもよい。また、本発明の血中トリグリセリド濃度上昇抑制剤は、ポリグルタミン酸のカリウム塩の他に、例えば酸化チタン、炭酸カルシウム、蒸留水、乳糖、デンプン等の適当な液体または固体の賦形剤または増量剤を含んでもよい。この場合、ポリグルタミン酸のカリウム塩の配合量は特に制限されないが、血中トリグリセリド濃度上昇抑制剤中0.01〜100質量%含まれるのが好ましく、0.1〜95質量%含まれるのがより好ましく、1〜90質量%含まれるのが更に好ましく、5〜85質量%含まれるのが特に好ましい。
本発明の血中トリグリセリド濃度上昇抑制剤を食品や医薬品等の用途に用いる場合、ポリグルタミン酸を単体でヒト及び動物に、消化管内投与、腹腔内投与、血管内投与、皮内投与、皮下投与等により投与できる他、各種食品、医薬品、ペットフード等に配合して摂取することができる。食品としては、一般食品のほか、血中のトリグリセリド濃度の上昇抑制、高トリグリセリド血症、高脂血症や動脈硬化症の発症リスクの低下・予防・改善・緩和・処置をコンセプトとし、必要に応じてその旨を表示した美容食品、病者用食品、特定保健用食品等の食品に応用できる。医薬品として使用する場合は、例えば、錠剤、顆粒剤等の経口用固形製剤や、内服液剤、シロップ剤等の経口用液体製剤とすることができる。
なお、経口用固形製剤を調製する場合には、ポリグルタミン酸のカリウム塩に、賦形剤、必要に応じて結合剤、崩壊剤、滑沢剤、着色剤、矯味剤、矯臭剤等を加えた後、常法により錠剤、被覆錠剤、顆粒剤、散剤、カプセル剤等を製造することができる。また、経口用液体製剤を調製する場合は、矯味剤、緩衝剤、安定化剤、矯味剤等を加えて常法により内服液剤、シロップ剤、エリキシル剤等を製造することができる。
上記各食品や製剤中のポリグルタミン酸のカリウム塩の配合量は特に制限されないが、0.01〜100質量%含まれるのが好ましく、0.03〜90質量%含まれるのがより好ましく、0.1〜80質量%含まれるのがさらに好ましく、0.3〜70質量%含まれるのが特に好ましく、1〜60質量%含まれるのが殊更好ましい。
上記各食品や製剤中の有効投与(摂取)量は、ポリグルタミン酸のカリウム塩として、1日当たり0.01g/kg体重〜1.0g/kg体重とするのが好ましく、0.003g/kg体重〜0.5g/kg体重とするのがより好ましく、0.01g/kg体重〜0.2g/kg体重とするのが更に好ましい。また、本発明の血中トリグリセリド濃度上昇抑制剤は、食前・食中・食後に用いると効果的であり、特に食前又は食中に用いることが好ましく、食前1時間から食中に用いることがより好ましい。
投与又は摂取対象者としては、それを必要としている者であれば特に限定されないが、空腹時血中トリグリセリド値が100mg/dL以上の人が好ましい。
以下、本発明を実施例に基づきさらに詳細に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
〔分析方法〕
ポリグルタミン酸のカリウム塩の定量法及び重量平均分子量測定法−1:
ポリグルタミン酸のカリウム塩の定量及び重量平均分子量測定は、D−6000(日立ハイテクノロジーズ社製)HPLCシステムを用いてゲルろ過法にて実施した。分析条件は、分析カラムにTSKGel G4000PWXL及びTSKGelG6000PWXLゲルろ過カラム(商品名、東ソー社製)を用い、溶離液に0.1M硫酸ナトリウムを使用し、流速1.0mL/分、カラム温度50℃とし、UV検出波長を210nmとした。また、濃度は分子量880kのポリグルタミン酸(明治フードマテリア社製)を標準品として用いて検量線を作成することで算出した。また、重量平均分子量は、プルラン(商品名:Shodex STANDARD P−82、昭和電工社製)を用いて予め重量平均分子量を求めた分子量の異なる複数のポリグルタミン酸(和光純薬工業社製(商品名:162−21411、162−21401)、SIGMA−ALDRICH社製(商品名:P−4886、P−4761)、明治フードマテリア社製(分子量880k))を標準品として用いて測定した。
ポリグルタミン酸のカリウム塩の重量平均分子量測定法−2:
分子量が10k前後となる低分子量ポリグルタミン酸のカリウム塩の重量平均分子量測定は、D−6000(日立ハイテクノロジーズ社製)HPLCシステムを用いてゲルろ過法にて実施した。分析条件は、分析カラムにTSKGel G3000PWXLゲルろ過カラム(商品名、東ソー社製)を用い、溶離液に0.1M硫酸ナトリウムを使用し、流速0.8mL/分、カラム温度50℃とし、UV検出波長を210nmとした。重量平均分子量は、プルラン(商品名:Shodex STANDARD P−82、昭和電工社製)を用いて予め重量平均分子量を求めたポリグルタミン酸(明治フードマテリア社製、分子量9k)、ポリーヒドロキシプロリン(SIGMA−ALDRICH社製、分子量4k)を標準品として用い測定した。
ポリグルタミン酸塩の金属分析法:
ポリグルタミン酸塩の金属分析は、D−7000(日立ハイテクノロジーズ社製)HPLCシステムを用いてイオンクロマト法にて実施した。分析条件は、ガードカラムにShodex IC YK−G、分析カラムにShodex IC YK−421(いずれも商品名、昭和電工社製)を用い、溶離液を1.5mMクエン酸水溶液とし、流速1.0mL/分、カラム温度40℃で電気伝導度検出器を用いて検出を行なった。標準試料として関東化学社製のナトリウム標準液(1000ppm)及びカリウム標準液(1000ppm)を用い、これらの標準品について10〜100mg/Lの範囲で検量線を作成し、これらの検量線に基づきポリグルタミン酸塩の金属分析を実施した。
〔調製例1〕重量平均分子量12,000のポリグルタミン酸のカリウム塩の調製
重量平均分子量9,000のポリグルタミン酸のナトリウム塩(明治フードマテリア社製)を初発材料として、10%(w/w)水溶液を500mL作製し、氷冷下にて塩酸を用いてpH2以下に調整した。続いて、生成した酸沈殿物を8,000rpm、5分の遠心分離(商品名:himacCR21GIII、日立工機社製)にて回収し、得られた沈殿物を同量の蒸留水を用いて洗浄し、再度遠心分離に供した。この洗浄操作を2回繰り返し行なった後、得られた沈殿物を300mLの蒸留水に懸濁し、これをpH7以上となるように水酸化カリウム水溶液を用いて中和した。この上記酸処理および水酸化カリウムによる中和処理を再度実施し、得られた中和試料に対して2.5倍量のエタノールを添加し、氷冷下にて一晩放置した。このエタノール添加により生成した沈殿物を14,000rpm、5分の遠心分離(同上)にて回収し、回収試料を減圧乾燥に供して、27.4gの固形物を得た。この試料の重量平均分子量は前述の分析方法により、12,000と算出された。また、この試料はポリグルタミン酸のカルボキシル基量に相当する量のカリウムが検出され、ナトリウムは検出限界以下であったため、中和前のポリグルタミン酸の実質的にすべてのカルボキシル基の水素原子がカリウムに置換されたものであることが確認された。
〔調製例2〕重量平均分子量240,000のポリグルタミン酸のカリウム塩の調製
重量平均分子量350,000のポリグルタミン酸のナトリウム塩(明治フードマテリア社製)を初発材料として、5%(w/w)水溶液を1L作製し、氷冷下にて塩酸を用いてpH1以下に調整した。続いて、生成した酸沈殿物を8,000rpm、5分の遠心分離(商品名:himacCR21GIII、日立工機社製)にて回収し、得られた沈殿物を同量の蒸留水を用いて洗浄し、再度遠心分離に供した。この洗浄操作を2回繰り返し行なった後、得られた沈殿物を800mLの蒸留水に懸濁し、これをpH7以上となるように水酸化カリウム水溶液を用いて中和した。この上記酸処理および水酸化カリウムによる中和処理を再度実施し、このエタノール添加により生成した沈殿物を14,000rpm、5分の遠心分離(同上)にて回収し、回収試料を減圧乾燥に供して、36.2gの固形物を得た。この試料の重量平均分子量は前述の分析方法により、240,000と算出された。また、この試料はポリグルタミン酸のカルボキシル基量に相当する量のカリウムが検出され、ナトリウムは検出限界以下であったため、中和前のポリグルタミン酸の実質的にすべてのカルボキシル基の水素原子がカリウムに置換されたものであることが確認された。
〔調製例3〕重量平均分子量6,000のポリグルタミン酸のカリウム塩の調製
重量平均分子量9,000のポリグルタミン酸のナトリウム塩(明治フードマテリア社製)を初発材料として、20%(w/w)水溶液を125mL作製し、塩酸を用いてpH1以下に調整した。続いた後、得られて、このPGA溶液を95℃にて12時間恒温し、生成した酸沈殿物を8,000rpm、5分の遠心分離(商品名:himacCR21GIII、日立工機社製)にて回収し、得られた沈殿物を同量の蒸留水を用いて洗浄し、再度遠心分離に供した。この洗浄操作を2回繰り返し行なった沈殿物を300mLの蒸留水に懸濁し、これをpH7以上となるように水酸化カリウム水溶液を用いて中和した。この上記酸処理および水酸化カリウムによる中和処理を再度実施し、得られた中和試料に対して2.5倍量のエタノールを添加し、氷冷下にて一晩放置した。このエタノール添加により生成した沈殿物を14,000rpm、5分の遠心分離(同上)にて回収し、回収試料を減圧乾燥に供して、16.5gの固形物を得た。この試料の重量平均分子量は前述の分析方法により、6,000と算出された。
〔試験例1〕ポリグルタミン酸のカリウム塩の血中トリグリセリド濃度上昇抑制作用
重量平均分子量12,000及び240,000(調製例1、2で調製)のポリグルタミン酸のカリウム塩と、重量平均分子量9,000及び350,000(明治フードマテリア製)のポリグルタミン酸のナトリウム塩(明治フードマテリア社製)を用いて下記のように経口投与サンプルを調製した。
また、8週齢の雄性マウス(C57BL/6J Jcl:日本クレア社製)を各群10匹ずつ用いて下記のように経口投与試験を行った。
〔試験例2〕低分子量のポリグルタミン酸のカリウム塩の血中トリグリセリド濃度上昇抑制作用
重量平均分子量6,000(調製例3で調製)のポリグルタミン酸のカリウム塩と、重量平均分子量12,000のポリグルタミン酸のカリウム塩(調製例1で調製)及び重量平均分子量9,000のポリグルタミン酸のナトリウム塩(明治フードマテリア社製)を用いて下記のように経口投与サンプルを調製した。
また、8週齢の雄性マウス(C57BL/6J Jcl:日本クレア社製)を各群7匹ずつ用いて下記のように経口投与試験を行った。
経口投与サンプルの調製:
グルコース(関東化学社製)とトリオレイン(Glyceryl trioleate:Sigma社製)をレシチン(卵製、和光純薬社製)とアルブミン(ウシ血清由来、Sigma社製)を用いて乳化し、乳液を調製した。この乳液に、ポリグルタミン酸塩試料を添加し、最終濃度がポリグルタミン酸塩試料5(w/w)%、グルコース5(w/w)%、トリオレイン5(w/w)%、乳化剤(レシチン0.2(w/w)%、アルブミン1.0(w/w)%となるよう、経口投与サンプルを調製した。なお、コントロールサンプルとして、ポリグルタミン酸塩の代わりに水を添加したサンプルを調製した。
経口投与試験:
一晩絶食させたマウスをエ−テル麻酔下、眼窩静脈よりヘパリン処理ヘマトクリット毛細管(VITREX社製)を用い、初期採血を行った。その後、経口投与サンプルを経口ゾンデ針にて経口投与し、10分、30分、1時間、2時間後にエーテル麻酔下、眼窩静脈より採血を行った。マウスに対する経口投与量を下記の表1に示す。
Figure 2012144484
ヘパリン処理ヘマトクリット毛細管で採取した血液は血漿分離まで氷冷下で保存後、11000rpmにて5分間遠心し、血漿を得た。得られた血漿から、トリグリセライドE−テストワコー(和光純薬社製、GPO・DAOS法)を用いて血中トリグリセリド濃度を測定した。
サンプル経口投与後から2時間後までの血中トリグリセリド濃度の各測定結果をもとに、血中トリグリセリド濃度の最大値と初期値(初期採血時)の差(Δ値)を最大トリグリセリド濃度上昇と定義し、コントロール群を100としたときの値を下記表2(試験例1の結果)及び表3(試験例2の結果)に示した。
得られた最大トリグリセリド濃度上昇の値をもとに、群間の統計学的有意差についても検討し、その結果も表2に示した。分散分析によって有意性(P<0.05)が認められた場合、多重比較検定(Bonferroni/Dunn法)により、コントロール群と各ポリグルタミン酸塩投与群との間、及び類似分子量のナトリウム塩投与群とカリウム塩投与群との間での検定を行い、得られた結果から、P<0.05を有意な差として有意性を判断した。
Figure 2012144484
表2の結果から、ポリグルタミン酸塩を投与したいずれのケースでも最大トリグリセリド濃度上昇を効果的に抑制できることがわかった。この最大トリグリセリド濃度上昇抑制効果は、重量平均分子量が15,000よりも低い比較的低分子のものを用いた場合に特に優れていた。
また、ポリグルタミン酸のカリウム塩を投与すると、ポリグルタミン酸のナトリウム塩を投与した場合に比べて顕著に優れた血中トリグリセリド濃度上昇抑制効果が認められた。これは、重量平均分子量が9,000のポリグルタミン酸のナトリウム塩を用いて得られた最大トリグリセリド濃度上昇抑制効果以上の抑制効果が、その2.5倍もの分子量である重量平均分子量240,000のポリグルタミン酸のカリウム塩により達成されていることからも理解することができる。
Figure 2012144484
表3の結果から、ポリグルタミン酸のカリウム塩を投与すると、ポリグルタミン酸のナトリウム塩を投与した場合に比べて顕著に優れた血中トリグリセリド濃度上昇抑制効果が認められることが再確認できた。
また、平均重量分子量6,000のポリグルタミン酸のカリウム塩の血中トリグリセリド濃度上昇抑制効果は平均重量分子量12,000のポリグルタミン酸のカリウム塩と同等であることが明らかとなった。
前述のように、血中トリグリセリド濃度が上昇することで、高脂血症ひいては動脈硬化症を引き起こすことが知られている。そのため、前記ポリグルタミン酸のカリウム塩は、血中のトリグリセリド濃度の上昇を効果的に抑制することで、高脂血症や動脈硬化症の予防・改善に好適に用いることができる。

Claims (1)

  1. ポリグルタミン酸のカリウム塩を有効成分として含有する血中トリグリセリド濃度上昇抑制剤。
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