JP2012080942A - ミシン - Google Patents

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Abstract

【課題】イサリ量を低減する。
【解決手段】搬送される上布CUと下布CDの終端部をそれぞれ検出する上布と下布の検出手段91、81と、送られる上布のみを押圧する上布送り調節機構9と、送られる下布のみに押圧力を付与する下布送り調節機構5と、布送り機構の送り量と各検出手段の検出タイミングとによりイサリ量を算出する終端部位置算出部51と、イサリ量とそのイサリ量を生じた時の上布と下布の押圧力の差とを対応づけて記録する記録部54と、記録部の二以上の縫製によるイサリ量と上布と下布の押圧力の差との記録から適正な上布と下布の押圧力の差を求め、それ以降の縫製時に適正な上布と下布の押圧力の差を生じるように上布送り調節機構又は下布送り調節機構とを制御する調節制御部51とを備えている。
【選択図】図8

Description

本発明は、縫い合わせる二枚の布地の終端部のずれ(イサリ)を解消するミシンに関する。
上下に二枚の布を重ね合わせて縫いを行う場合、上下の布地の縫いの終端部にズレを生じて布端が一致しない場合がある(図16(A)、(B))。
そこで、従来のミシンは、上布のみを押圧する調節機構と、下布のみを押圧する調節機構と、上布の送り速度を検出するセンサと、下布の送り速度を検出するセンサとを備え、センサによりいずれか一方の布地の送りが先行していることが検出されると、当該布地に対して押圧力を高めて送り速度を調節する制御が行われていた(例えば、特許文献1参照)。
特開昭59−174189号公報
しかしながら、上述のように送り速度を監視して布地の押圧力を制御する方法を採る場合、布地の種類によっては、布が伸び縮みを生じ、押圧力により送り速度を調節しても、縫い終わりの終端のズレが解消できない場合があった。
本発明は、より確実に布地の終端のズレを防止することをその目的とする。
請求項1記載の発明は、
上布と下布を所定の送り方向に送る布送り機構と、
前記布送り機構によって送られる上布の終端部を検出する上布検出手段と、
前記布送り機構によって送られる下布の終端部を検出する下布検出手段と、
前記布送り機構による送り動作に対して上布のみに押圧力を付与する上布送り調節機構と、
前記布送り機構による送り動作に対して下布のみに押圧力を付与する下布送り調節機構とを備えるミシンにおいて、
前記布送り機構の送り量と前記上布検出手段及び下布検出手段の検出タイミングとにより上布と下布の終端部のズレ量を算出する終端部位置算出部と、
前記ズレ量とそのズレを生じた時の上布と下布の押圧力の差とを対応づけて記録する記録部と、
前記記録部の二以上の縫製による前記ズレ量と上布と下布の押圧力の差との記録から適正な上布と下布の押圧力の差を求め、それ以降の縫製時に前記適正な上布と下布の押圧力の差を生じるように前記上布送り調節機構又は下布送り調節機構を制御する調節制御)とを備えることを特徴とする。
請求項2記載の発明は、請求項1記載の発明と同様の構成を備えると共に、前記調節制御部は、縫製による前記ズレ量と上布と下布の押圧力の差との記録が三以上ある場合に、最小二乗法により前記ズレ量と上布と下布の押圧力の差との対応関係を算出し、当該対応関係に基づいて適正な上布と下布の押圧力の差を算出することを特徴とする。
請求項3記載の発明は、請求項1又は2の発明と同様の構成を備えると共に、
前記終端位置算出部が、前記上布と下布のそれぞれの布の終端位置が検出された際の主軸角度に基づいて上布と下布の終端部のズレ量を算出することを特徴とする。
請求項4記載の発明は、請求項3の発明と同様の構成を備えると共に、
送りピッチを入力する操作パネルと、
前記操作パネルにより入力可能な送りピッチ毎に、前記主軸角度と前記布送り機構の送り量を対応させたデータテーブルを備えることを特徴とする。
請求項5記載の発明は、請求項1から4のいずれか一項に記載の発明と同様の構成を備えると共に、
前記調節制御部が前記適正な上布と下布の押圧力の差を生じるように制御する際、前記上布送り調節機構又は下布送り調節機構のいずれか一方、又は両方を制御するように選択可能なことを特徴とする。
請求項1記載の発明は、過去の二以上の縫製によるズレ量と上布と下布の押圧力の差との記録が得られると、それらから相互の対応関係を求め、これによりズレ量が0となる上布と下布の押圧力の差を計算により求めることが可能である。従って、実際に生じた上布と下布のズレ量により適正な上布と下布の押圧力の差の値を特定するので、各布に伸び縮み或いは滑り等を生じたとしても、その影響を排除することができ、よりズレの発生を抑えた品質の高い縫製を行うことが可能となる。
請求項2記載の発明は、調節制御部が最小二乗法によりズレ量と上布と下布の押圧力の差との対応関係を算出し、適正な上布と下布の押圧力の差を算出するので、三以上の縫製によるズレ量と上布と下布の押圧力の差との記録を取得した場合でも適正な押圧力の差を求めることが可能である。
そして、新たな縫製によるズレ量と上布と下布の押圧力の差との記録が取得されるたび、より適正な押圧力の差を求めることができ、繰り返し縫製を行う場合に、その縫い品質をより向上させることが可能となる。
請求項3、4記載の発明は、布終端位置が検出された際の主軸角度から上布と下布の終端部のズレ量を算出するのでより正確にズレ量を算出することができる。
請求項5記載の発明は、制御対象となる上布送り調節機構又は下布送り調節機構を選択可能であるので、種々の縫製物に対して最適な制御を行うことができる。
上下送りミシンの斜視図である。 針落ち近傍を示す模式図である。 各ローラの駆動に関する機構を示した斜視図である。 布センサの斜視図である。 布センサの検知について説明する模式図である。 制御装置まわりの構成を示すブロック図である。 送り歯の送り動作の軌跡とミシン主軸の回転角度との関係を示す説明図である。 連続的なミシン主軸の回転に対する累積的な布送り量の変化を示した線図である。 イサリ量との各布の押圧力の差とが対応づけて記録されることを示す概念図である。 X軸を上布CUと下布CDの押圧力の差とし、Y軸をイサリ量として、縫製によって得られたイサリ量及びその際の上布と下布の押圧力の取得結果に従ってプロットした線図である。 上下送りミシンの縫製時の全体的な処理を示すフローチャートである。 上布・下布情報取得処理のサブルーチンを示すフローチャートである。 イサリ量算出処理のサブルーチンを示すフローチャートである。 適正押圧力差算出処理のサブルーチンを示すフローチャートである。 押圧力差設定処理のサブルーチンを示すフローチャートである。 上下に二枚の布を重ね合わせて縫いを行う場合に、上下の布地の縫いの終端部にズレを生じて布端が一致しない場合を示しており、図16(A)は下布が長くなり、図16(B)は上布が長くなった場合を示している。
(上下送りミシンの構成)
本発明に係る上下送りミシン100の実施形態について説明する。
この上下送りミシン100は、針板上に重ねて載置された上布CUと下布CDとをそれぞれ同じ方向に送りながら縫い合わせるものである。
図1,2,3に示すように、上下送りミシン100は、布押さえ19と、送り歯1と、送り足2と、下側ローラ3と、下側パルスモータ4と、下布送り調節機構5と、上側ローラ7と、上側パルスモータ8と、上布送り調節機構9と、分離板11と、下側及び上側布センサ80,90と、制御装置13と、を備えている。
(送り歯)
図2に示すように、送り歯1は、針板14上に重ねて載置された二枚の布のうち、下布CDに下方から接して送り動作を行う。送り歯1は、布送り方向に沿った往復動作を付与する送り歯前後送り機構(図示略)と上下方向に沿った往復動作を付与する送り歯上下送り機構(図示略)と、によって駆動する。これにより、送り歯1は、針板14の下方で側面視楕円軌道を描くように運動し、送り歯1が上方に移動した際に針板14から突出して下布CDに下方から接する。以下、この送り歯1による布送り方向をFとする。
なお、この送り歯1と送り歯1に動作を付与する機構は布送り機構を構成する。
(布押さえ及び送り足)
図2に示すように、送り足2は、針板14上に重ねて載置された二枚の布のうち、上布CUに上方から接して送り動作を行い、布押さえ19は上布CUに上方から接して布押さえを行う。送り足2は、布送り方向に沿った往復動作を付与する送り足前後送り機構(図示略)と上下方向に沿った往復動作を付与する送り足上下送り機構(図示略)と、によって駆動し、布押さえ19は前述した送り足上下送り機構により上下動のみを行う。これにより、送り足2は、針板14の上方で側面視楕円軌道を描くように運動し、送り足2が下方に移動した際に上布CUに上方から接する。また、布押さえ19は定位置で送り足2と交互に上下動を行う。つまり、布押さえ19が上布CUの上方に離間している間に送り足2が下降しつつ送り方向下流側へ移動して上布CUの送り動作を行い、布押さえ19が上布CUに接している間に送り足2が上昇しつつ送り方向上流側への復帰移動を行う。
また、縫い針は布押さえ19の位置で上下動を行っており、当該布押さえ19と共に上下動を行う。
なお、この送り足2と送り足2に動作を付与する機構は布送り機構を構成する。
(下側ローラ)
下側ローラ3は、図2及び図3に示すように、針板14の凹状穴内において上下動可能に配設されており、上昇時に針板14上面より幾分突出するように設けられ、下布CDに下方から接して送り歯1による布送り方向Fに対して交差(直交)する方向であって針板14の上面に平行な方向に布を移動させる。下側ローラ3は、下布送り調節機構5(詳細は後述する)に回転自在に支持されている。そして、下側ローラ3は、スイングアーム17の先端部に回転可能に支持されており、スイングアーム17の基端部には土台16を介して下側パルスモータ4が設けられている。下側ローラ3はこの下側パルスモータ4からスイングアーム17の内部を通るベルトにより回転が付与されるようになっている。
そして、下側ローラ3は回転により布送り方向Fに直交する方向G(以下、左右方向とも言う)について下布CDに移動力を付与し、下布CDに形成される縫い目の方向を左右に制御することを可能としている。
(下布送り調節機構)
図3に示すように、下布送り調節機構5は、上述した土台16及びスイングアーム17と、回転軸21と、駆動レバー22と、伝達リンク23と、下側ソレノイド6とを備えている。
下側パルスモータ4が固定される土台16は、五角形状に形成され、その一角に回転軸21が設けられている。
回転軸21は、ミシンフレームに回転可能に支持されており、軸の向きは下側パルスモータ4の出力軸と平行である。そして、その一端部が土台16に固定されており、回転軸21の軸回りの回転と共に土台16も回転する。回転軸21の他端部には駆動レバー22が設けられている。
駆動レバー22は、回転軸21を中心とする半径方向に延びる棒状の板材であり、その一端部において回転軸21が抱き締め固定されている。駆動レバー22の他端部には、伝達リンク23の一端部がネジ等により連結、固定されている。
伝達リンク23は、駆動レバー22の延長方向に延びる板材であり、伝達リンク23の他端部には、下側ソレノイド6のプランジャ62が連結されている。
下側ソレノイド6は、ミシンの上下方向(針の上下方向)に沿ってプランジャ62が移動するように配置されている。下側ソレノイド6は、通電された電流量に応じてプランジャ62の移動量が変化する。これにより、下側ソレノイド6は、通電された電流量に応じて下側ローラ3を介して下布CDに対する押圧力が調整自在となっている。
下側ソレノイド6は、そのコイルに通電することでプランジャ62を引き込む方向に駆動する方向に取り付けられている。そして、通電電流の増大に従ってプランジャ62を引き込む推力を増大させる。
下側ソレノイド6は、加える電流の2乗に比例した推力が発生する。すなわち、電流変化に対する推力の変化量は、発生推力が強くなるにしたがって大きくなる。このため、小さな推力では細かい変化量が得られて微少の押圧力変化が可能となり、大きな推力では、大きな変化量が得られて比較的大きな幅で押圧力を変化できるので、下側ローラ3による押圧力調整が容易となる。
(上側ローラ)
図2及び図3に示すように、上側ローラ7は、針板14の上方において上下動可能に設けられ、下降時に上布に上方から接して送り歯1による布送り方向Fに対して交差(直交)する方向であって針板14の上面に平行な方向に布を移動させる。上側ローラ7は、上布送り調節機構9(詳細は後述する)に回転自在に支持されている。そして、上側ローラ7は、スイングアーム32の先端部に回転可能に支持されており、スイングアーム32の基端部には土台31を介して上側パルスモータ8からスイングアーム32の内部を通るベルトにより回転が付与されるようになっている。
そして、上側ローラ7は回転により布送り方向Fに直交する方向Gについて上布CUに移動力を付与し、上布CUに形成される縫い目の方向を左右に制御することを可能としている。
(上布送り調節機構)
上布送り調節機構9は、上述した土台31及びスイングアーム32と、回転軸33と、駆動レバー34と、伝達リンク35と、回転リンク36と、上側ソレノイド10とを備えている。
上側パルスモータ8が固定される土台31は、五角形状に形成され、その一角に回転軸33が設けられている。
回転軸33は、ミシンフレームに回転可能に支持されており、軸の向きは上側パルスモータ8の出力軸と平行である。そして、その一端部が土台31に固定されており、回転軸33の軸回りの回転と共に土台31も回転する。回転軸33の他端部には駆動レバー34が設けられている。
駆動レバー34は、回転軸33を中心とする半径方向に延びる板材であり、その一端部において回転軸33が抱き締め固定されている。駆動レバー34の他端部には、伝達リンク35の一端部が回転自在に連結されている。
伝達リンク35は、駆動レバー34におおむね直交する方向に延びる棒状の板材であり、伝達リンク35の他端部には、回転リンク36の一端部が回転自在に連結されている。
回転リンク36は、その中央部近傍で上側ソレノイド10のハウジング70に取り付けられた板材71に回転自在に支持されている。回転リンク36の他端部は、上側ソレノイド10の出力軸となるプランジャ72に回転自在に連結されている。また、この回転リンク36は、駆動レバー34とおおむね平行に配設されている。
上側ソレノイド10は、伝達リンク35の移動方向(長手方向)に沿ってプランジャ72が移動するように配置されている。
上側ソレノイド10は、ハウジング70、プランジャ72等を備えており、通電された電流量に応じてプランジャ72の移動量が変化する。これにより、上側ソレノイド10は、通電された電流量に応じて上側ローラ7を介して上布CUに対する押圧力が調整自在となっている。
(分離板)
図1に示すように、分離板11は、その一端側が支持板44の底面に不図示のネジにより固定される。支持板44は、不図示のラックとピニオンギアを介して、図1に示す調節ダイヤル45に連結されている。調節ダイヤル45を回動させると、分離板11が布送り方向に対して直交する方向Gに対して、位置調整される。
支持板44の底面に固定された分離板11は、図2に示すように、上側ローラ7と下側ローラ3との間で、針板14より上方に配置される。分離板11は、針板14に取り付けた際に、その先端が針板14から浮き上がるように屈曲形成されている。さらに、分離板11は、各ローラ3,7よりも幾分布送り方向上流側まで延出されている。すなわち、分離板11により、針板14上の空間を上下に仕切ることができ、分離板11の上側に上布CUが下側に下布CDがそれぞれ送られる。
これにより、分離板11は、二枚の布CD,CUの間に配置され、下側ローラ3と分離板11の下面とで下布CDを挟み込み、上側ローラ7と分離板11の上面とで上布CUを挟み込むことを可能とする。
(布センサ)
図4,5に示すように、下側及び上側布センサ80,90は、縫製時に縫い代(布の一方の側端部から縫い目までの長さ)を一定に保つために布端が所定の位置にあるか否かを検知するもの及び布送り方向における上布CU及び下布CDの終端部の通過を検出するためのものである。各布センサ80,90は、下側ローラ3と上側ローラ7に対してそれぞれ布送り方向下流側に近接して設けられている(図2)。これらの布センサ80,90は、共通のセンサ台41に保持されており、水平に配置され、両面が反射面となる反射板46を挟んでそれぞれが対向配置されている。各布センサ80,90は、それぞれ、手前側の布有無センサ81,91と、奥側の布端センサ82,92とを備えている。
センサ台41は、その先端部が布送り方向Fから見て略コ字状に形成され、その内側には前述の反射板46が水平に保持されている。そして、コ字状部の内側下面と内側上面とには、それぞれ、各ローラ3,7による布移動方向(以下、上下ローラ3,7による布移動方向を調整方向Gというものとし、布送り方向を向いた状態で右手方向(図4では左方)を正方向、左手方向(図4では右方)を逆方向とする)に沿って一様にV字状に下方と上方とに窪んだ凹部41a、41bが形成されている。そして、反射板46は、針板14上で重ねられて搬送される下布CDと上布CUとの間に挿入されるように、針板14の上面より幾分高い位置に配置されている。
これにより、下布CDはセンサ台41のコ字状部の内側であって反射板46と下側の凹部41aとの間を通過し、上布CUはセンサ台41のコ字状部の内側であって反射板46と上側の凹部41bとの間を通過することになる。
各凹部41a、41bは、調整方向Gから見てV字状に形成されている。
下側の凹部41aの二つの傾斜面には、手前側(調整方向Gの逆方向寄り)に発光センサ83と受光センサ84からなる布有無センサ81が設けられている。また、上側の凹部41aの二つの傾斜面には、手前側(調整方向Gの逆方向寄り)に発光センサ93と受光センサ94からなる布有無センサ91が設けられている。
上壁面の布有無センサ91は、上布CUの布送り方向の終端部を検知する上布検出手段であり、下壁面の布有無センサ81は、下布CDの布送り方向の終端部を検知する下布検出手段である。
下側の凹部41a、41bの二つの傾斜面には、奥側(調整方向Gの逆方向寄り)に発光センサ85と受光センサ86からなる布端センサ82が設けられている。また、上側の凹部41a、41bの二つの傾斜面には、奥側(調整方向Gの逆方向寄り)に発光センサ95と受光センサ96からなる布端センサ92が設けられている。
上壁面(41b側)の布端センサ92は、上布CUの側端部が所定位置にあるか否かを検出するセンサであり、下壁面(41a側)の布端センサ82は、下布CDの側端部が所定位置にあるか否かを検出するセンサである。
反射板46は、各発光センサ83,85,93,95から発光された光を反射するものであり、光路上に布端が存在しなければ反射板46により反射された光は高強度で各受光センサ84,86,94,96にて受光される。
上記構造により、上布CUは反射板46と上壁面の布有無センサ91及び布端センサ92との間に進入することができ、下布CDは反射板46と下壁面の布有無センサ81及び布端センサ82との間に進入することができる。布が進入していれば、各発光センサ83,85,93,95からの光を布が遮って反射板46により反射されなくなるので、各受光センサ84,86,94,96は光を検知することができない。この原理を利用して布の有無、布の側端部を検知している。
(制御装置)
図6に示すように、制御装置13は、各種の演算処理を行うCPU51と、上述した各構成の駆動制御に関するプログラムが格納されたROM52と、CPU51の処理に関する各種データをワークエリアに格納するRAM53と、各種の設定データ、蓄積データ等を記録する記憶部としてのEEPROM54とを備えている。
また、制御装置13には、縫い針を上下動させるためのミシンモータ20と、各パルスモータ4,8と、各ソレノイド6,10とがそれぞれ駆動回路20a,4a,8a,6a,10aを介して接続されている。
また、制御装置13には、下側布センサ80と上側布センサ90とが、それぞれインターフェイス80a,90aを介して接続されている。
また、ミシンモータ20により回転駆動する図示しないミシン主軸には、その軸角度を検出するエンコーダ24が設けられており、インターフェイス24aを介して検出軸角度を制御装置13に出力するようになっている。
さらに、上下送りミシン100は、各種設定を入力したり、各種情報を表示したりするための操作パネル40を備えており、かかる操作パネル40もインターフェイス40aを介して制御装置13に接続されている。
制御装置13のROM52には、縫製時に縫い代を一定に維持して布送りを行う送り制御をCPU51に実行させる送り制御プログラム、縫製終了時に上布と下布の終端部における送り方向のズレを求める終端部位置算出処理をCPU51に実行させる終端部位置算出プログラム、既に行われた縫製によって得られたデータから終端部のズレを解消するための上布CUと下布CDの押圧力の差を求めると共に、上布送り調節機構9及び下布送り調節機構5のそれぞれのソレノイド10,6の出力を適宜制御する調整制御をCPU51に実行させる調整制御プログラムなどが主に格納されている。
操作パネル40からは、後述するイサリ量を取得するための終端部位置算出処理の実行の有無、各布送り調節機構5,9のソレノイド6,10の初期押圧力(上下個別に設定可)、各ソレノイド6,10の初期押圧力に対して自動的に調節を行うか固定とするかの選択、送りピッチ(上下共通)、上下の布地を縫い合わせる二枚縫いモードか一枚の布地のみで縫いを行う一枚縫いモードかの設定、終端部位置算出処理の実行の有無、調整制御の実行の有無の各々について設定入力を行うことが可能であり、その設定データはEEPROM54に記憶される。
(送り制御)
制御装置13は、CPU51が送り制御プログラムを実行することにより、下側及び上側布センサ80,90における各布有無センサ81,91が布を検知している場合に、布端センサ82,92が布端を検知し、その検知結果に基づいて、各ローラ3,7の回転方向及び回転量を決定し、各パルスモータ4,8を駆動させる。
具体的には、制御装置13は、布端センサ82(92)により下布CD(上布CU)の側端部が検出されたときには、下側ローラ3(上側ローラ7)により下布CD(上布CU)を調整方向Gにおける逆方向に移動させるよう下側パルスモータ4(上側パルスモータ8)を制御し、布端センサ82(92)により下布CD(上布CU)の側端部が検出されなくなったときには、下側ローラ3(上側ローラ7)により下布CD(上布CU)を調整方向Gにおける正方向に移動させるよう下側パルスモータ4(上側パルスモータ8)を制御する。
(終端部位置算出処理)
制御装置13は、CPU51が終端部位置算出プログラムを実行することにより、縫製終了時に上布と下布の終端部における送り方向のズレ(イサリ量)を求める終端部位置算出処理を実行する。以下、かかる処理を詳細に説明する。
イサリ量は、縫製開始から終了までの上布CUと下布CDのそれぞれの送り総量の差により算出する。このミシン100では、毎針の送りピッチ(布送り機構の送り歯1及び送り足2による1針ごとの送り量を意味する。また、送りピッチは、上布送り調節機構9及び下送り調節機構5による押圧力の付与が行われない状態での一針ごとの送り量を設定するものである)は操作パネル40からの設定入力により段階的に任意に選択することが可能となっており、おおよその送り総量の算出は、(設定送りピッチ)×(縫製開始から終了までの針数)で求めることができる。しかしながら、最後の送りストロークに関しては、設定された送りピッチ分の送りが行われない場合が殆どであることから、正確な送り総量は上記単純計算では求めることができない。
最終ストロークの送り量を求める処理について説明する。図7は送り歯1の送り動作の軌跡とミシン主軸の回転角度θ(縫い針の上下動の位相)との関係を示す説明図、図8は連続的なミシン主軸の回転に対する累積的な布送り量の変化を示した線図である。なお、図8においてnは縫い始めからの針数、Aは一方の布について終端が検出された時の主軸角度、aはその時の送り総量、Bは他方の布について終端が検出された時の主軸角度、bはその時の送り総量を示している。
送り歯1は、縫い針の上下動(ミシン主軸の回転と同周期)と同期した上下方向の往復動作と布送り方向Fの往復動作とが合成されて付与されており、その結果、図7に示すように、送り歯1は楕円状の長円の軌跡を描いて周回運動を行う。そして、その長円軌跡の上側の一部の区間で刃先が針板14よりも上方を通過し、当該区間において刃先が下布CDの下面に接して布送りを行うようになっている。従って、図8に示すように、毎回の針落ちにおける主軸角度0°(上死点)を含むその前後の区間でのみ間欠的に送り量が増加するような略階段状の変化を示す。
送り歯1による送りピッチが一定の場合、毎針の布送り動作において送り歯1が下布CDの送りを開始する主軸角度θs及び送りを終える主軸角度θeは常に一定となり、この角度区間内における各主軸角度での送り歯の送り方向の位置も一定である。従って、この区間での各主軸角度における送り歯1の位置をテーブルとして記憶手段としてのEEPROM54内に用意しておくことにより、縫製における最後の送り動作の際に下布CDの終端部の通過が布有無センサ81により検出された時のエンコーダ24の検出主軸角度を読み採ることで、その瞬間での送り歯1の位置を特定することが可能となる。そして、主軸角度θsから上記検出主軸角度までの送り歯1の移動量が、最後のストロークにおける送り歯1による下布CDの送り量ということとなる。
なお、ミシンの送りピッチは前述した操作パネル40からの設定入力により段階的に設定を変更することが可能となっている。このため、主軸角度ごとの送り歯1の位置を示すデータテーブルは、送りピッチの設定値ごとに用意する必要がある。
このデータテーブルは、操作パネルにより入力可能な送りピッチ毎に、送りを開始する主軸角度θsから送りを終える主軸角度θeまでの範囲内の任意の主軸角度における布送り機構による送り量を対応させたテーブルである。つまり、当該テーブルを参照することにより、下布CDの終端部の通過が布有無センサ81により検出された時のエンコーダ24の検出主軸角度に対応する送り量を速やかに取得することが可能である。
以上のことを前提として、CPU51は、縫製時において、開始から終了(布有無センサ81により布の終端通過が検出された時の針落ちを最終針落ちとする)までの針数をエンコーダ24の出力に基づいて累積的にカウントし、また、布有無センサ81により布の終端通過が検出された時の主軸角度を記憶する。
そして、このときの針数のカウント値をn、設定縫いピッチをPi、テーブルが示す布の終端通過が検出された時の主軸角度における送り歯1の位置をBtとすると、下布CDの送り総量Sdは、
Sd=(n−1)×Pi+Bt
となる。
なお、上述の説明では、送り歯1と下布CDの関係のみを例示したが、送り足2と上布CUも同様の原理で動作するため、同様に各送りピッチごとにテーブルを用意することにより上布CUの送り総量も算出することが可能である。
そして、これらの処理により求められた上布CUの送り総量から下布CDの送り総量を減算する(逆としても良い)ことで、上布CUと下布CDの終端部のズレ量であるイサリ量を算出することができる。
なお、このイサリ量の算出において、上記手法では上布CUと下布CDの送り総量をそれぞれ算出しているが、これに限らず、他の手法を用いても良い。
例えば、上布CUと下布CDのいずれか一方が先に終端が検出されると、先に終端に達した布についてはそのストロークにおける布送り量のみを算出し、後から終端が検出された布については、余分に行われた針数×設定送りピッチとそれぞれの最終ストロークの送り量の差分の合計とによりイサリ量を算出することも可能である。
CPU51は、縫製終了時又は縫製終了後において、算出した上記イサリ量をEEPROM54に記録する。即ち、EEPROM54は「記録部」として機能する。
かかるイサリ量は、次に説明する上布CUと下布CDの押圧力の差の調節設定を行う調整制御において必要となるパラメータであり、かかる調整制御では、イサリ量と共に当該イサリ量が得られた時の上布CUと下布CDの押圧力の差の値も必要とする。このため、図9に示すように、イサリ量をEEPROM54に記録する際には、同時にその時の各布の押圧力の差(上側ソレノイド10の押圧力に対する下側ソレノイド6の押圧力の差)も対応づけて記録する。
以上の処理を実行することにより、CPU51は、「終端部位置算出部」として機能する。このように、CPU51は、布の終端位置が検出された際の主軸角度に基づいて上布と下布の終端部のズレ量を算出しているので、正確にズレ量を算出することができる。また、CPU51は、累積針数と、送りピッチと、布の終端位置が検出された際の主軸角度に基づいて上布と下布の終端部のズレ量を算出しているので、より正確にズレ量を算出することができる。
(調整制御)
制御装置13は、CPU51が調整制御プログラムを実行することにより、これまでの縫製によって得られたイサリ量及び上布CUと下布CDの押圧力の差の関係を示すデータに基づいて、イサリを解消するために各ソレノイド6,10に対して適正な押圧力を設定する調整制御を実行する。以下、かかる処理を詳細に説明する。
上布CU及び下布CDは、それぞれ上布送り調節機構9と下布送り調節機構5とにより押圧力が付与されると、圧縮されて送り方向にも伸びを生じ、これによってイサリ量に影響を及ぼすこととなる。従って、例えば、上布CUの終端部の方が長くなるようにイサリ量が生じている場合には、下布CDの押圧力をより高めるように押圧力差を設定し直すことによりイサリ量を低減し、下布CDの終端部の方が長くなるようにイサリ量が生じている場合には、上布CUの押圧力をより高めるように押圧力差を設定し直すことによりイサリ量を低減することが可能となる。
図10はX軸を上布CUと下布CDの押圧力の差とし、Y軸をイサリ量として、縫製によって得られたイサリ量及びその際の上布CUと下布CDの押圧力の取得結果に従ってプロットした線図である。図においてX軸は上布CUの押圧力が大きい場合を正、また、Y軸は上布CUの終端部の方が長くなる場合を正としている。
例えば、上側ソレノイド10の圧力がxu1、下側ソレノイド6の圧力がxd1として上下の押圧力差をx1=xu1−xd1>0、当該各押圧力で縫製終了した時に取得したイサリ量をy1(>0)とするデータと、上側ソレノイド10の圧力がxu2、下側ソレノイド6の圧力がxd2として上下の圧力差をx2=xu2−xd2<0、当該各押圧力で縫製終了した時に取得したイサリ量をy2(<0)とするデータの2点分のデータを取得している場合には、CPU51は、これら二点を結ぶ近似直線(1)であるy=ax+bの傾きaとy切片bの値を算出する。
そして、その次の縫製の際には、近似直線(1)であるy=ax+b上の点(x3’,y3’)を目標点に設定する。即ち、y3’=0であり、0=ax+bを満たすx3’を算出する。
そして、上記押圧力差x3’となるように、上側ソレノイド10の圧力と下側ソレノイド6の圧力とを再設定し直して当該設定値をEEPROM54に記録する。そして、次の縫製の実行が指示入力されると、各ソレノイド10,6の押圧力を新たな設定値となるように制御して縫製を実行する。
また、3点分以上のデータを取得している場合、例えば、上記押圧力差x3’で縫製を行った結果、図10に示す点(x3,y3)となるような結果が得られた場合(y3≠0)には、CPU51は、三点(x1,y1),(x2,y2),(x3,y3)に対して最小二乗法により新たな近似直線(2)であるy=ax+bを求め、その傾きaとy切片bの値をEEPROM54に格納する。
そして、さらに次の縫製の際には、近似直線(2)であるy=ax+b上の点(x4’,y4’)を目標点とし(y4’=0)、0=ax+bを満たすx4’を算出する。
そして、再び、押圧力差x4’となるように、上側ソレノイド10の圧力と下側ソレノイド6の圧力とを再設定し直して当該設定値をEEPROM54(記録部とも称する)に記録する。
なお、前述したように、各ソレノイドの押圧力の設定値は、操作パネル40により自動的に補正しないように固定する設定を行うことが可能である。その場合、(1)上側ソレノイド10の設定値のみ固定、(2)下側ソレノイド6の設定値のみ固定、(3)上側と下側ソレノイド10、6の設定値の双方を固定しないの3パターンの設定が可能である。
そして、上記処理によって新たな押圧力差xnが算出された場合には、
(1)の設定の場合には、押圧力差xnとなるように下側ソレノイド6の設定値のみを補正する。
(2)の設定の場合には、押圧力差xnとなるように上側ソレノイド10の設定値のみを補正する。
(3)の設定の場合には、押圧力差xnとなるように上側ソレノイド10の設定値と下側ソレノイド6の設定値とがそれぞれ等しい補正量(一方は+Δx、他方は−Δx)となるように補正が行われる。
上記のように調整制御を行うことにより、CPU51は「調整制御部」として機能する。
このように、CPU51は、適正な上布と下布の押圧力の差を生じるように制御する際、上布送り調節機構又は下布送り調節機構のいずれか一方、又は両方を制御するように選択可能なので、
種々の縫製物に対して最適な制御を行うことができる。
なお、縫製を行いソレノイドの圧力差xn’のときの縫製によるイサリ量ynが予め定めた一定の閾値以上の場合には、再び近似直線を算出し、新たな(xn+1,yn+1)を求めて各ソレノイド6,10の押圧力を再設定する制御を行い、イサリ量ynが予め定めた一定の閾値未満となった場合には、新たな近似曲線を算出せずにソレノイドの圧力差xn’に設定してそれ以降の縫製を行うようにして、押圧力補正値の算出の繰り返し回数を抑制するように設定しても良い。
(縫製時における各種の処理)
上記終端部位置算出処理及び調整制御を実行する場合の縫製時の処理全体を説明する。図11は全体的な処理を示すフローチャートである。
まず、上下送りミシン100に上布CU及び下布CDをセットして(ステップS1)、操作パネル40の縫製開始のスタートスイッチを押下すると(ステップS3)、CPU51は縫いモードの設定を読み込んで二枚縫いモード且つ終端部位置算出処理の実行の設定がなされているか判定する(ステップS5)。
そして、一枚縫いモード又は終端部位置算出処理の非実行が設定されている場合(ステップS5:NO)には処理をステップS13までスキップし、二枚縫いモード且つ終端部位置算出処理の実行が設定されている場合(ステップS5:YES)には、上布CUの送り総量を取得するための上布情報取得フラグをONとし(ステップS7)、次いで、下布CDの送り総量を取得するための下布情報取得フラグをONとし(ステップS9)、各ソレノイド6,10の適正な押圧力を算出するための押圧力算出フラグをONとする(ステップS11)。
次に、縫製を開始する(ステップS13)。このとき、エラーの発生や一時停止の入力があった場合には(ステップS15:YES)、押圧力算出フラグをクリアして(ステップS17)、縫製を終了する(ステップS23)。
一方、エラーの発生又は一時停止の入力がない場合には(ステップS15:NO)、終端部位置算出処理における上布・下布情報取得処理を開始して、主軸回転数などのカウントを開始する(ステップS19)。
その後、布有無センサ81,91が上布CUと下布CDの少なくともいずれか一方を検出している状態が続いているか判定を行い(ステップS21)、上布CUと下布CDのいずれか一方を検出している間はステップS15〜S21の処理を繰り返し実行する。また、上布CUと下布CDの両方が未検出となった場合には、縫製が終了となる(ステップS23)。
次に、押圧力算出フラグがONの状態か判定し(ステップS25)、クリア状態の場合には全体的な処理が終了となる。
また、押圧力算出フラグがONである場合には、終端部位置算出処理におけるイサリ量の算出処理を実行する(ステップS27)。
次いで、調整制御における適正な押圧力差の算出処理を実行し(ステップS29)、さらに、算出された適正な押圧力差となるように各ソレノイド6,10の押圧力が再設定され(ステップS31)、押圧力算出フラグがクリアされて全体的な処理が終了となる(ステップS33)。
次に、上記ステップS19の上布・下布情報取得処理について詳細に説明する。図12は上布・下布情報取得処理のサブルーチンを示すフローチャートである。
上布・下布情報取得処理では、まず、上布の布有無センサ91が上布を未検出且つ上布情報取得フラグがONであるか判定を行い、これらを満たさない場合(ステップS41:NO)にはステップS47まで処理をスキップする。
また、これらを満たす場合(ステップS41:YES)には、初めて上布の終端部のセンサ位置の通過が検出されたものとして、その時点での積算針数、縫いピッチ、主軸角度を記録する(ステップS43)。そして、上布情報取得フラグをクリアする(ステップS45)。
従って、上記クリア処理により、前述したステップS15〜S21の繰り返しルーチンにより上布・下布情報取得処理が繰り返される場合でも、次回のステップS41の判定がNOとなる。
次に、下布の布有無センサ81が下布を未検出且つ下布情報取得フラグがONであるか判定を行い、これらを満たさない場合(ステップS47:NO)には上布・下布情報取得処理が終了となる。
また、これらを満たす場合(ステップS47:YES)には、初めて下布の終端部のセンサ位置の通過が検出されたものとして、その時点での積算針数、縫いピッチ、主軸角度を記録する(ステップS49)。そして、下布情報取得フラグをクリアする(ステップS51)。
この場合も、クリア処理により、前述したステップS15〜S21の繰り返しルーチンにより上布・下布情報取得処理が繰り返される場合でも、次回のステップS47の判定がNOとなる。
上記上布・下布情報取得処理によって、上布CUの終端部が布有無センサ91を通過した時点での積算針数、縫いピッチ、主軸角度と、下布CDの終端部が布有無センサ81を通過した時点での積算針数、縫いピッチ、主軸角度とがそれぞれ取得される。
次に、前述したステップS27のイサリ量算出処理について詳細に説明する。図13はイサリ量算出処理のサブルーチンを示すフローチャートである。
まず、CPU51は、RAM53に格納された上布CUの縫製時の針数と縫いピッチと採取ストロークの主軸角度とから上布CUの送り総量を算出する(ステップS61)。
次いで、CPU51は、RAM53に格納された下布CDの縫製時の針数と縫いピッチと採取ストロークの主軸角度とから下布CDの送り総量を算出する(ステップS63)。
そして、上布CUの送り総量から下布CDの送り総量を減算してイサリ量を算出する(ステップS65)。
さらに、上記イサリ量が生じた縫製時の各ソレノイド6,10の設定押圧力を読み出して、上側ソレノイド10の設定押圧力から下側ソレノイド6の設定押圧力を減算し、押圧力差を算出する(ステップS67)。
そして、算出したイサリ量と押圧力差とを対応づけてEEPROM54内に記録する(ステップS69)。
これにより、イサリ量算出処理が完了する。
次に、前述したステップS29の適正押圧力差算出処理について詳細に説明する。図14は適正押圧力差算出処理のサブルーチンを示すフローチャートである。
まず、CPU51は、EEPROM54の記憶領域に二以上の縫製によるイサリ量及び押圧力差のデータが記憶されているか判定し(ステップS71)、一つ以下しか記憶していない場合には、処理を終了する。
また、二以上のイサリ量及び押圧力差のデータが記憶されている場合には、前述した近似直線y=ax+bの算出を行う。データが二つの場合には二点を結ぶ直線から近似直線を求め、データが三つ以上の場合には最小二乗法により近似直線を算出する。
即ち、近似直線からy切片bを求め(ステップS73)、さらに、直線の傾きaを算出する(ステップS75)。
さらに、近似直線からイサリ量が0となる押圧力差の値を特定する(ステップS77)。即ち、押圧力差の値をGとした場合、G=(0−b)/aにより算出する。
これにより、適正押圧力差算出処理が完了する。
次に、前述したステップS31の押圧力差設定処理について詳細に説明する。図15は押圧力差設定処理のサブルーチンを示すフローチャートである。
まず、CPU51は、前述した適正押圧力差算出処理で求めた適正押圧力差の値が設定可能な限界値の範囲内が判定する(ステップS81)。上側と下側の各ソレノイド10,6について各々の設定押圧力が0〜200の範囲なので、押圧力差の限界値は200となる。
そして、算出された適正押圧力差が限界を超えている場合には(ステップS81:NO)、新たな押圧力を設定することなく処理を終了する。なお、設定押圧力の数値100が押圧力200g基準となるように設定されている。
また、適正押圧力差が限界範囲内±200以内(上側と下側の差なので±の符号がつく)である場合には(ステップS81:YES)、押圧力の補正値Hを算出する(ステップS83)。押圧力の補正値Hは、適正押圧力差Gから現在の押圧力差(現在の上側ソレノイド10の設定押圧力−下側ソレノイド6の設定押圧力)を減じた値である。
次いで、CPU51は、各ソレノイド6,10の押圧力の設定変更が可能か否かを示す設定情報を読み込んで、両方のソレノイド6,10が共に設定変更可能か判定する(ステップS85)。
そして、両方のソレノイド6、10が共に設定変更可能である場合には、上側ソレノイド10の現在の設定押圧力に対して補正値H/2の値を加算し(ステップS87)、下側ソレノイド6の現在の設定押圧力に対して補正値H/2の値を減算する(ステップS89)。
一方、両方のソレノイド6,10が共に設定変更可能ではない場合には(ステップS85:NO)、さらに、上側ソレノイド10のみについて設定変更が可能か判定し(ステップS91)、上側ソレノイド10のみが設定変更可能である場合には(ステップS91:YES)、上側ソレノイド10の現在の設定押圧力に対して補正値Hの値を加算する(ステップS93)。
また、上側ソレノイド10のみについて設定変更が可能かを判定した結果、上側ソレノイド10は設定変更不可であった場合には(ステップS91:NO)、下側ソレノイド6の現在の設定押圧力に対して補正値Hの値を減算する(ステップS95)。
各ソレノイド6,10のいずれか或いは双方について押圧力の設定を変更した結果、それぞれの設定押圧力が設定における限界範囲内(0〜200)か否かを判定し(ステップS97)、超えている場合にはその超えているソレノイドについては押圧力の設定変更は行わず、限界範囲であれば設定押圧力を更新する。
また、各ソレノイド6,10についてその押圧力の設定値データを操作パネル40に送信する(ステップS99)。
以上により、押圧力差設定処理が完了する。
(実施形態の効果)
以上のように、上下送りミシン100は、過去の二以上の縫製によるイサリ量と上布CUと下布CDの押圧力の差との記録データが得られると、それらから相互の対応関係を示す近似直線を求め、これによりイサリ量が0となる上布CUと下布CDの押圧力差を計算により求めることが可能である。従って、実際に生じた上布CUと下布CDのイサリ量により適正な上布CUと下布CDの押圧力差の値を特定するので、いずれかの布に伸び縮み或いは滑り等を生じたとしても、その影響を排除することができ、よりズレの発生を抑えた品質の高い縫製を行うことが可能となる。
また、制御装置13は、調節制御部として機能するCPU51が最小二乗法によりイサリ量と押圧力差との対応関係を示す近似直線を算出し、適正な上布CUと下布CDの押圧力の差を算出するので、三以上の縫製によるズレ量と上布CUと下布CDの押圧力差との記録を取得した場合でも適正な押圧力差を求めることが可能である。
そして、新たな縫製によるズレ量と上布CUと下布CDの押圧力差との記録が取得されるたび、より適正な押圧力の差を求めることができ、繰り返し縫製を行う場合に、その縫い品質をより向上させることが可能となる。
(その他)
なお、上記実施形態では、上下送りミシン100を例示したが、上下送りではないミシン、例えば、通常の上から押さえるだけの布押さえと送り歯からなる布送り機構を搭載するミシンであっても良い。
1 送り歯
2 送り足
3 下側ローラ
4 下側パルスモータ
5 下布送り調節機構
6 下側ソレノイド
7 上側ローラ
8 上側パルスモータ
9 上布送り調節機構
10 上側ソレノイド
13 制御装置
51 CPU(終端部位置算出部、調整制御部)
54 EEPROM(記録部)
80 下側布センサ
81 布有無センサ(下側検出手段)
82 布端センサ
90 上側布センサ
91 布有無センサ(上側検出手段)
92 布端センサ
100 上下送りミシン
CD 下布
CU 上布

Claims (5)

  1. 上布と下布を所定の送り方向に送る布送り機構と,
    前記布送り機構によって送られる上布の終端部を検出する上布検出手段と、
    前記布送り機構によって送られる下布の終端部を検出する下布検出手段と、
    前記布送り機構による送り動作に対して上布のみに押圧力を付与する上布送り調節機構と、
    前記布送り機構による送り動作に対して下布のみに押圧力を付与する下布送り調節機構とを備えるミシンにおいて、
    前記布送り機構の送り量と前記上布検出手段及び下布検出手段の検出タイミングとにより上布と下布の終端部のズレ量を算出する終端部位置算出部と、
    前記ズレ量とそのズレを生じた時の上布と下布の押圧力の差とを対応づけて記録する記録部と、
    前記記録部の二以上の縫製による前記ズレ量と上布と下布の押圧力の差との記録から適正な上布と下布の押圧力の差を求め、それ以降の縫製時に前記適正な上布と下布の押圧力の差を生じるように前記上布送り調節機構又は下布送り調節機構とを制御する調節制御部とを備えることを特徴とするミシン。
  2. 前記調節制御部は、縫製による前記ズレ量と上布と下布の押圧力の差との記録が三以上ある場合に、最小二乗法により前記ズレ量と上布と下布の押圧力の差との対応関係を算出し、当該対応関係に基づいて適正な上布と下布の押圧力の差を算出することを特徴とする請求項1記載のミシン。
  3. 前記終端位置算出部が、前記上布と下布のそれぞれの終端位置が検出された際の主軸角度に基づいて上布と下布の終端部のズレ量を算出することを特徴とする請求項1又は2記載のミシン。
  4. 送りピッチを入力する操作パネルと、
    前記操作パネルにより入力可能な送りピッチ毎に、前記主軸角度と前記布送り機構の送り量を対応させたデータテーブルを備えることを特徴とする請求項3記載のミシン。
  5. 前記調節制御部が前記適正な上布と下布の押圧力の差を生じるように制御する際、前記上布送り調節機構又は下布送り調節機構のいずれか一方、又は両方を制御するように選択可能なことを特徴とする請求項1から4のいずれか一項に記載のミシン。
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