JP2011517320A5 - - Google Patents

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JP2011517320A5
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Description

メタロプロテアーゼ9結合タンパク質およびメタロプロテアーゼ2結合タンパク質
関連出願への相互参照
本出願は、2008年3月3日に出願された米国特許出願第61/033,068号に対する優先権を主張する。前述の出願の開示は、本出願の開示の一部であると考えられる(そして、本出願の開示において参考として援用される)。
背景
マトリックスメタロプロテアーゼ(MMP)は、これが結合/会合した細胞または膜により分泌される亜鉛メタロエンドペプチターゼのファミリーであり、マトリックス成分の代謝回転の多くに関与する。MMPファミリーは、少なくとも26のメンバーからなりその全てが、活性部位において亜鉛分子を有する、共通の触媒コアを共有する。
要旨
本開示は、とりわけ、本明細書で「MMP−9/MMP−2結合タンパク質」と称する、MMP−9およびMMP−2の両方に結合するタンパク質、ならびにこのようなタンパク質を同定および使用する方法に関する。これらのタンパク質は、MMP−9(例えば、ヒトMMP−9)およびMMP−2(例えば、ヒトMMP−2)に結合する抗体および抗体フラグメント(例えば、霊長動物の抗体およびFab、とりわけ、ヒト抗体およびヒトFab)を包含する。MMP−9/MMP−2結合タンパク質は、MMP−9またはMMP−2に結合可能である。例えば、該結合タンパク質はMMP−9またはMMP−2に結合するが、MMP−9およびMMP−2の両方に同時に結合することはない。MMP−9/MMP−2結合タンパク質は、MMP−9またはMMP−2を阻害することが可能である。例えば、該結合タンパク質はMMP−9またはMMP−2を阻害するが、MMP−9およびMMP−2の両方を同時に阻害することはない。
一部の実施形態において、これらのタンパク質は、MMP−9(例えば、ヒトMMP−9)を阻害し(例えば、MMP−9の触媒活性を阻害し)、MMP−2(例えば、ヒトMMP−2)を阻害する(例えば、MMP−2の触媒活性を阻害する)抗体および抗体フラグメント(例えば、霊長動物の抗体およびFab、とりわけ、ヒト抗体およびヒトFab)を包含する。MMP−9/MMP−2結合タンパク質は、疾患、特に、癌、炎症、心不全、敗血症性ショック、神経障害性疼痛、または黄斑変性など、MMP−9およびMMP−2の過剰であるかまたは不適切な活性が特徴となるヒト疾患の治療において用いることができる。多くの場合、該タンパク質は、許容される低い毒性を有し、または毒性がない。
一部の態様において、本開示は、MMP−9およびMMP−2に結合するタンパク質(例えば、抗体、ペプチド、およびクニッツドメインタンパク質)、特に、MMP−9に結合してこれを阻害し、またMMP−2に結合してこれを阻害するタンパク質(例えば、抗体(例えば、ヒト抗体)、ペプチド、およびクニッツドメインタンパク質)に関する。
一実施形態において、本開示は、ヒトMMP−9およびヒトMMP−2に結合するヒト抗体、例えば、ヒトMMP−9またはヒトMMP−2に結合可能な抗体を提供する。一実施形態において、該ヒト抗体は、MMP−9の触媒活性に対する阻害剤であり、MMP−
2の触媒活性に対する阻害剤である、例えば、それは、MMP−9またはMMP−2の触媒活性を阻害し得る。該抗体は、例えば、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、Fab、Fab2’、scFv、ミニボディー、scFv::Fc融合体、Fab::HSA融合体、HSA::Fab融合体、Fab::HSA::Fab融合体、または本明細書で列挙される抗体のうちの1つの抗原結合部位を含む他の分子であり得る。一実施形態において、該抗体は、その表面上においてMMP−9またはMMP−2を発現する細胞へとナノ粒子または毒素を誘導するのに用いられる。一実施形態において、該抗体は、エフェクター機能(CDCまたはADCC)を引き起こして、MMP−9および/またはMMP−2を発現する細胞を死滅させ得る。
一部の実施形態において、結合タンパク質(例えば、Fab)のVHおよびVL領域は、IgG、Fab、Fab2、Fab2’、scFv、PEG化Fab、PEG化scFv、PEG化Fab2、VH::CH1::HSA+LC、HSA::VH::CH1+LC、LC::HSA+VH::CH1、HSA::LC+VH::CH1、または他の適切な構築物として提供される。
別の実施形態において、結合タンパク質は、MMP−9およびMMP−2の活性を阻害し得るクニッツドメインタンパク質もしくは改変形(例えば、HSA融合体)またはペプチドベースのMMP−9/MMP−2結合タンパク質を含む。
一態様において、本開示は、MMP−9(例えば、ヒトMMP−9)およびMMP−2(例えば、ヒトMMP−2)に結合するタンパク質(例えば、単離タンパク質)を特徴とし、少なくとも1つの免疫グロブリン可変領域を包含する。例えば、該タンパク質は、重鎖(HC)免疫グロブリン可変ドメイン配列および軽鎖(LC)免疫グロブリン可変ドメイン配列を包含する。該タンパク質は、MMP−9(例えば、ヒトMMP−9)に結合可能である。該タンパク質は、MMP−2(例えば、ヒトMMP−2)に結合可能である。例えば、該結合タンパク質はMMP−9またはMMP−2に結合するが、MMP−9およびMMP−2の両方に同時に結合することはない。一実施形態において、該タンパク質は、MMP−9、例えば、ヒトMMP−9に結合してこれを阻害する(例えば、MMP−9の触媒活性を阻害する)か、またはMMP−2、例えば、ヒトMMP−2に結合してこれを阻害する(例えば、MMP−2の触媒活性を阻害する)。
一部の実施形態において、該タンパク質は、ヒトMMP−9に特異的に結合し、別の種由来のMMP−9には結合しない(例えば、該タンパク質は、バックグラウンドレベルより大きな結合レベルで別の種由来のMMP−9に結合することがない)。一部の実施形態において、該タンパク質は、ヒトMMP−2に特異的に結合し、別の種由来のMMP−2には結合しない(例えば、該タンパク質は、バックグラウンドレベルより大きな結合レベルで別の種由来のMMP−2に結合することがない)。
一部の実施形態において、該タンパク質は、ヒトMMP−9またはヒトMMP−2に結合可能であり、また、Mus musculus、Rattus norvegus、およびMacaca fascicularisからなる群から選択される、げっ歯動物種のMMP−9またはMMP−2にも結合可能である。一部の実施形態において、げっ歯動物種のMMP−9またはMMP−2に対する見かけのKiは、ヒトMMP−9またはヒトMMP−2に対する見かけのKiの10倍以下である。
一部の実施形態において、該タンパク質は、MMP−9およびMMP−2に特異的に結合し、他のいずれのマトリックスメタロプロテアーゼには結合しない(例えば、該タンパク質は、バックグラウンドレベルより大きな結合レベルで他のいずれのマトリックスメタロプロテアーゼに結合することがない)。
このような結合タンパク質を薬物にコンジュゲートさせ(例えば、MMP−9/MMP−2結合タンパク質−薬物コンジュゲートを形成する)て、治療的に用いることができる。本開示は、部分的に、MMP−9/MMP−2結合タンパク質−薬物コンジュゲート、これらのコンジュゲートの調製物、ならびにこれらの使用に関する。該コンジュゲートは、例えば、障害の治療において、例えば、癌、炎症、心不全、敗血症性ショック、神経障害性疼痛、または黄斑変性の治療に用いることができる。例えば、高親和性の結合タンパク質−薬物コンジュゲートによる、MMP−9および/またはMMP−2を発現する細胞および/または腫瘍の治療(例えば、殺滅)は、疾患、例えば、癌、炎症、心不全、敗血症性ショック、神経障害性疼痛、または黄斑変性の治療における強力な療法であり得る。
該タンパク質は、以下の特徴:(a)ヒトCDRまたはヒトフレームワーク領域;(b)HC免疫グロブリン可変ドメイン配列が、本明細書に記載のHC可変ドメインのCDRに対して少なくとも85、88、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99、または100%同一である、1つまたは複数の(例えば、1つ、2つ、または3つの)CDRを含むこと;(c)LC免疫グロブリン可変ドメイン配列が、本明細書に記載のLC可変ドメインのCDRに対して少なくとも85、88、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99、または100%同一である、1つまたは複数の(例えば、1つ、2つ、または3つの)CDRを含むこと;(d)LC免疫グロブリン可変ドメイン配列が、本明細書に記載のLC可変ドメインに対して少なくとも85、88、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99、または100%同一であること;(e)HC免疫グロブリン可変ドメイン配列が、本明細書に記載のHC可変ドメインに対して少なくとも85、88、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99、または100%同一であること;(f)該タンパク質が、本明細書に記載のタンパク質により結合されるエピトープ、またはこのようなエピトープと重複するエピトープに結合すること;および(g)霊長動物CDRまたは霊長動物フレームワーク領域のうちの1つまたは複数を包含し得る。
該タンパク質は、少なくとも10、10、10、10、10、1010および1011−1の結合親和性でMMP−9、例えば、ヒトMMP−9、およびMMP−2、例えば、ヒトMMP−2に結合することができる。一実施形態において、該タンパク質は、1×10−3、5×10−4−1、または1×10−4−1より緩徐なKoffでMMP−9および/またはMMP−2に結合する。一実施形態において、該タンパク質は、1×10、1×10、または5×10−1−1より急速なKonでMMP−9および/またはMMP−2に結合する。一実施形態において、該タンパク質は、例えば、10−5、10−6、10−7、10−8、10−9、および10−10M未満のKiでヒトMMP−9の活性および/またはMMP−2を阻害する。該タンパク質は、例えば、IC50が100nM、10nM、または1nM未満であり得る。一部の実施形態において、該タンパク質は、IC50が約1.8nMである。MMP−9および/またはMMP−2に対する該タンパク質の親和性は、100nM未満、10nM未満、または約3nM(例えば、3.1nM)、約5nM(例えば、5nM)、約6nM(例えば、5.9nM)、約7nM(例えば、7.1nM)、または約10nM(例えば、9.6nM)のKを特徴とすることができる。
一部の実施形態において、該タンパク質は、K<200nMである。
一部の実施形態において、該タンパク質は、t1/2が少なくとも約10分(例えば、11分)、少なくとも約20分(例えば、18分)、少なくとも約25分(例えば、25分)、少なくとも約35分(例えば、33分)、または少なくとも約60分(例えば、57分)である。
一実施形態において、該タンパク質は、ヒトMMP−9の触媒ドメインに結合する、例えば、該タンパク質は、MMP−9の活性部位内またはこの近傍にある残基に接触する。一実施形態において、該タンパク質は、ヒトMMP−2の触媒ドメインに結合する、例えば、該タンパク質は、MMP−2の活性部位内またはこの近傍にある残基に接触する。
一部の実施形態において、該タンパク質は、MMP−9の活性部位内またはこの近傍にある残基に接触せず、代わりにMMP−9上における別の場所で結合し、MMP−9においてその活性に影響を与える(例えば、これを阻害する)立体変化を引き起こす。一部の実施形態において、該タンパク質は、MMP−2の活性部位内またはこの近傍にある残基に接触せず、代わりにMMP−2上における別の場所で結合し、MMP−2においてその活性に影響を与える(例えば、これを阻害する)立体変化を引き起こす。
好ましい実施形態において、該タンパク質は、抗体M0237−D02の軽鎖および重鎖を有するヒト抗体である。好ましい実施形態において、該タンパク質は、M0237−D02の重鎖を含む重鎖を有するヒト抗体である。好ましい実施形態において、該タンパク質は、M0237−D02の軽鎖を含む軽鎖を有するヒト抗体である。好ましい実施形態において、該タンパク質は、1つまたは複数の(例えば、1つ、2つ、または3つの)重鎖CDRが、M0237−D02の重鎖の対応するCDRから選択されるヒト抗体である。好ましい実施形態において、該タンパク質は、1つまたは複数の(例えば、1つ、2つ、または3つの)軽鎖CDRが、M0237−D02の軽鎖から選択されるヒト抗体である。
より好ましい実施形態において、該タンパク質は、M0237−D02の軽鎖および重鎖を有するヒト抗体である。
一部の実施形態において、HCおよびLC可変ドメイン配列は、同じポリペプチド鎖の構成要素である。別の実施形態において、HCおよびLC可変ドメイン配列は、異なるポリペプチド鎖の構成要素である。例えば、該タンパク質は、IgG、例えば、IgG1、IgG2、IgG3、またはIgG4である。該タンパク質は、可溶性Fab(sFab)であり得る。他の実施において、該タンパク質には、Fab2’、scFv、ミニボディー、scFv::Fc融合体、Fab::HSA融合体、HSA::Fab融合体、Fab::HSA::Fab融合体、または本明細書における結合タンパク質のうちの1つの抗原結合部位を含む他の分子が含まれる。これらのFabのVHおよびVL領域は、IgG、Fab、Fab2、Fab2’、scFv、PEG化Fab、PEG化scFv、PEG化Fab2、VH::CH1::HSA+LC、HSA::VH::CH1+LC、LC::HSA+VH::CH1、HSA::LC+VH::CH1、または他の適切な構築物として提供することができる。
一実施形態において、該タンパク質は、ヒト抗体もしくはヒト化抗体であるか、またはヒトにおいて非免疫原性である。例えば、該タンパク質は、1つまたは複数のヒト抗体フレームワーク領域、例えば、全てのヒトフレームワーク領域を包含する。一実施形態において、該タンパク質は、ヒトFcドメイン、またはヒトFcドメインに対して少なくとも95、96、97、98、または99%同一であるFcドメインを包含する。
一実施形態において、該タンパク質は、霊長動物抗体もしくは霊長動物化抗体であるか、またはヒトにおいて非免疫原性である。例えば、該タンパク質は、1つまたは複数の霊長動物抗体フレームワーク領域、例えば、全ての霊長動物フレームワーク領域を包含する。一実施形態において、該タンパク質は、霊長動物Fcドメイン、または霊長動物Fcドメインに対して少なくとも95、96、97、98、または99%同一であるFcドメイ
ンを包含する。「霊長動物」には、ヒト(Homo sapiens)、チンパンジー(Pan troglodytesおよびPan paniscus(ピグミーチンパンジー))、ゴリラ(Gorilla gorilla)、テナガザル(gibon)、サル、キツネザル、アイアイ(Daubentonia madagascariensis)、およびメガネザルが含まれる。
特定の実施形態において、タンパク質は、マウスまたはウサギ由来の配列を包含しない(例えば、マウス抗体またはウサギ抗体ではない)。
一実施形態において、該タンパク質は、MMP−9を発現する腫瘍細胞、例えば、Colo205細胞(ヒト結腸直腸癌の細胞株)またはMCF−7細胞(ヒト乳腺癌の細胞株)に結合可能である。
一実施形態において、該タンパク質はナノ粒子と物理的に会合しており、その細胞表面上においてMMP−9および/またはMMP−2を発現する細胞へとナノ粒子を誘導するのに用いることができる。一実施形態において、該タンパク質は、エフェクター細胞(CDCまたはADCC)に、MMP−9および/またはMMP−2を発現する細胞を死滅させる。
一部の実施形態において、本明細書で開示される抗体は、ヒトMMP−9(hMMP−9)、ヒトMMP−2(hMMP−2)、マウスMMP−9(mMMP−9)、およびマウスMMP−2(mMMP−2)を阻害する。一部の実施形態では、他の種(例えば、ラットおよびカニクイザル)由来のMMP−9およびMMP−2の阻害もまた見られる。MMP−9およびMMP−2の阻害は、治療される状態においては、MMP−9およびMMP−2が共に見出されるという観察に関する。ヒト酵素およびマウス酵素に対して活性を有することは、ヒト対象を治療する前に、マウスにおいて医薬有効成分を調べる必要に関する。したがって、本発明の一部の好ましい実施形態において、結合タンパク質(例えば、抗体)は、hMMP−9に対する見かけのKが1nM未満、hMMP−2に対する見かけのKが1nM未満、mMMP−9に対する見かけのKが1nM未満、mMMP−2に対する見かけのKが1nM未満である。
一部の実施形態において、これらの測定値はFabについてのものである。FabをIgGへと変換すると、見かけのKiを低下させる(すなわち、阻害の程度を上昇させる)ことができる。親和性が強ければ、いかなる所与の用量レベルにおける薬物がそれだけより有効となるので、ヒトMMP−9およびヒトMMP−2に対する親和性は、マウスに対する親和性より重要である。これより、hMMP−9に対する見かけのKが1nM未満、hMMP−2に対する見かけのKが1nM未満、mMMP−9に対する見かけのKが5nM未満、mMMP−2に対する見かけのKが5nM未満であるFabが、許容される実施形態である。hMMP−9に対する見かけのKが0.1nM未満、hMMP−2に対する見かけのKが0.1nM未満、mMMP−9に対する見かけのKが1nM未満、mMMP−2に対する見かけのKが1nM未満であるFabが、好ましい実施形態である。加えて、hMMP−9に対する見かけのKが0.1nM未満、hMMP−2に対する見かけのKが0.1nM未満、mMMP−9に対する見かけのKが5nM未満、mMMP−2に対する見かけのKが5nM未満であるFabも、好ましい実施形態である。
一部の態様において、本開示は、見かけのKi(Ki app)<1nMでhMMP−9に、Ki app<1nMでhMMP−2に、Ki app<1nMでmMMP−9に、かつ/またはKi app<1nMでmMMP−2に結合してこれを阻害(例えば、その触媒活性を阻害)する抗体(例えば、ヒト抗体)を特徴とする。一部の実施形態におい
て、該抗体は、Ki app<1nMでhMMP−9に、Ki app<1nMでhMMP−2に、Ki app<1nMでmMMP−9に、かつKi app<1nMでmMMP−2に結合してこれを阻害する。
一部の態様において、本開示は、Ki app<0.1nMでhMMP9に、Ki app<0.1nMでhMMP2に、Ki app<1nMでmMMP9に、かつ/またはKi app<1nMでmMMP2に結合してこれを阻害する抗体(例えば、ヒト抗体)を特徴とする。一部の実施形態において、該抗体は、Ki app<0.1nMでhMMP9に、Ki app<0.1nMでhMMP2に、Ki app<1nMでmMMP9に、かつKi app<1nMでmMMP2に結合してこれを阻害する。
一部の態様において、本開示は、Ki app<1nMでhMMP9に、Ki app<1nMでhMMP2に、Ki app<5nMでmMMP9に、かつKi app<5nMでmMMP2に結合してこれを阻害する抗体(例えば、ヒト抗体)を特徴とする。一部の実施形態において、該抗体は、Ki app<1nMでhMMP9に、Ki app<1nMでhMMP2に、Ki app<5nMでmMMP9に、かつKi app<5nMでmMMP2に結合してこれを阻害する。
一部の態様において、本開示は、Ki app<1nMでヒトMMP9に、Ki app<1nMでヒトMMP2に、Ki app<約5nMでマウスMMP9に、またはKi
app<約5nMでマウスMMP2に結合可能なヒト抗体またはヒト化抗体である単離タンパク質を特徴とする。
一部の態様において、本開示は、Ki app<1nMでヒトMMP9に、またはKi
app<1nMでヒトMMP2に結合可能なヒト抗体またはヒト化抗体である単離タンパク質を特徴とする。
一部の態様において、本開示は、Ki app<0.1nMでhMMP9に、Ki app<0.1nMでhMMP2に、Ki app<5nMでmMMP9に、かつ/またはKi app<5nMでmMMP2に結合してこれを阻害する抗体(例えば、ヒト抗体)を特徴とする。一部の実施形態において、該抗体は、Ki app<0.1nMでhMMP9に、Ki app<0.1nMでhMMP2に、Ki app<5nMでmMMP9に、かつKi app<5nMでmMMP2に結合してこれを阻害する。
一部の態様において、本明細書で開示される抗体は、ヒトMMP−9(hMMP−9)およびヒトMMP−2(hMMP−2)を阻害するが、マウスMMP−9(mMMP−9)および/またはマウスMMP−2(mMMP−2)を阻害しない(例えば、該抗体がmMMP−9および/またはmMMP−2を阻害する有効性は、それがhMMP−9および/またはhMMP−2を阻害する場合より低い(例えば、陰性対照と比較して、例えば、5分の1、10分の1、50分の1、100分の1、もしくは1000分の1の有効性であるか、または全く有効でない))。
一部の態様において、本開示は、見かけのK(Ki app)<1nMでhMMP9に、またKi app<1nMでhMMP2に結合してこれを阻害(例えば、その触媒活性を阻害)するが、mMMP9および/またはmMMP2は阻害しない抗体(例えば、ヒト抗体)を特徴とする。
一部の態様において、本開示は、Ki app<0.1nMでhMMP9に、またKi
app<0.1nMでhMMP2に結合してこれを阻害するが、mMMP9および/またはmMMP2は阻害しない抗体(例えば、ヒト抗体)を特徴とする。
一部の態様において、本開示は、Ki app<1nMでhMMP9に、またKi app<1nMでhMMP2に結合してこれを阻害するが、mMMP9および/またはmMMP2は阻害しない抗体(例えば、ヒト抗体)を特徴とする。
一部の態様において、本開示は、Ki app<0.1nMでhMMP9に、またKi
app<0.1nMでhMMP2に結合してこれを阻害する抗体(例えば、ヒト抗体)を特徴とする。
別の態様において、本開示は、MMP−9およびMMP−2の競合的阻害剤であるMMP−9/MMP−2結合タンパク質を特徴とする。一部の実施形態において、該結合タンパク質は、MMP−9基質および/またはMMP−2基質(例えば、コラーゲン、フィブロネクチン、およびエラスチン)と競合する、例えば、該基質と同じエピロープに結合し、例えば、基質の結合を防止する。
一部の態様において、本開示は、MMP−9および/またはMMP−2と基質(例えば、コラーゲン、フィブロネクチン、またはエラスチン)との相互作用を阻害する方法を特徴とする。該方法は、本明細書に記載のMMP−9/MMP−2結合タンパク質をMMP−9および/またはMMP−2と接触させる(例えば、インビトロまたはインビボにおいて)工程を包含し、該結合タンパク質がMMP−9およびMMP−2に結合し、これにより、MMP−9および/またはMMP−2に対する基質の結合を防止する。一部の実施形態において、該結合タンパク質は、MMP−9またはMMP−2上における、該基質と同じエピトープに結合する、例えば、該結合タンパク質は、競合的阻害剤である。一部の実施形態において、該結合タンパク質は該基質と同じエピトープには結合せず、該基質の結合能を低下させるかまたは阻害する立体変化をMMP−9またはMMP−2に引き起こす。
一態様において、本開示は、MMP−9/MMP−2結合タンパク質および薬物を包含する、MMP−9/MMP−2結合タンパク質−薬物コンジュゲートを特徴とする。
一実施形態において、該結合タンパク質は、少なくとも1つの免疫グロブリン可変領域を含み、かつ/または、該タンパク質は、MMP−9に結合し、かつ/もしくはこれを阻害し、例えば、MMP−9の触媒活性を阻害し、また、MMP−2に結合し、かつ/もしくはこれを阻害し、例えば、MMP−2の触媒活性を阻害する。
一実施形態において、該薬物は、細胞傷害剤または細胞増殖抑制剤である。該細胞傷害剤は、例えば、アウリスタチン、DNA副溝結合剤(DNA minor groove
binding agent)、DNA副溝アルキル化剤、エンジイン、レキシトロプシン、デュオカルマイシン、タキサン、ピューロマイシン、ドラスタチン、ポドフィロトキシン、バッカチン誘導体、クリプトフィシン、コンブレタスタチン、マイタンシノイド、およびビンカアルカロイドからなる群から選択することができる。一実施形態において、該細胞傷害剤はアウリスタチンであり、例えば、該アウリスタチンは、AFP、MMAF、MMAE、AEB、AEVB、およびアウリスタチンEから選択される。一実施形態において、該アウリスタチンはAFPまたはMMAFである。別の実施形態において、該細胞傷害剤はメイタシンノイドであり、例えば、該マイタンシノイドは、マイタンシノール、マイタシン、DM1、DM2、DM3、およびDM4から選択される。一実施形態において、該マイタンシノイドはDM1である。別の実施形態において、該細胞傷害剤は、パクリタキセル、ドセタキセル、CC−1065、SN−38、トポテカン、モルホリノ−ドキソルビシン、リゾキシン、シアノモルホリノ−ドキソルビシン、ドラスタチン10、エキノマイシン、コンブレタスタチン、カリケアマイシン、およびネトロプシンから選
択される。一実施形態において、該細胞傷害剤はアウリスタチン、マイタンシノイド、またはカリケアマイシンである。
一実施形態において、細胞傷害剤は抗チューブリン剤であり、例えば、該抗チューブリン剤は、AFP、MMAP、MMAE、AEB、AEVB、アウリスタチンE、ビンクリスチン、ビンブラスチン、ビンデシン、ビノレルビン、VP−16、カンプトテシン、パクリタキセル、ドセタキセル、エポチロンA、エポチロンB、ノコダゾール、コルヒチン、コルシミド、エストラムスチン、セマドチン、ジスコデルモリド、マイタンシノール、マイタシン、DM1、DM2、DM3、DM4、およびエレウテロビンから選択される。
一実施形態において、MMP−9/MMP−2結合タンパク質(例えば、抗体)は、リンカーを介して薬物(例えば、細胞傷害剤)にコンジュゲートしている。一実施形態において、該リンカーは、細胞内条件下において切断可能な、例えば、該切断可能なリンカーは、細胞内プロテアーゼにより切断可能なペプチドリンカーである。一実施形態において、該リンカーはペプチドリンカー、例えば、ジペプチドリンカー、例えば、val−citリンカーまたはphe−lysリンカーである。一実施形態において、該切断可能なリンカーは、5.5未満のpHで加水分解可能であり、例えば、該加水分解可能なリンカーは、ヒドラゾンリンカーである。別の実施形態において、切断可能なリンカーはジスルフィドリンカーである。
本明細書に記載の結合タンパク質は、例えば、薬学的に許容される担体を包含する医薬組成物として提供することができる。該組成物は、他のタンパク質分子種を少なくとも10、20、30、50、75、85、90、95、98、99、または99.9%含まない可能性がある。一部の実施形態において、該結合タンパク質は、GMP(「医薬品の製造管理および品質管理の基準」)の下で生産することができる。一部の実施形態において、該結合タンパク質は、薬学的に許容される担体、例えば、適切な緩衝剤または賦形剤中において提供される。
結合タンパク質(例えば、本明細書に記載の結合タンパク質を含有する医薬組成物)の用量は、患者において、例えば、疾患部位において、MMP−9活性の約20%、約30%、約40%、約50%、約60%、約70%、約80%、約85%、約90%、約95%、約99%、または約100%を遮断するのに十分である。疾患に応じて、これには、例えば、約0.01mg/Kg〜約100mg/Kg、例えば、約0.1〜約10mg/Kgの用量が必要となる場合がある。例えば、該用量は、約0.1、約1、約3、約6、または約10mg/Kgの用量であり得る。例えば、150,000g/モルの分子量(2つの結合部位)を有するIgGの場合、これらの用量は、5Lの血液容量に対して、それぞれ約18nM、180nM、540nM、1.08マイクロM、および1.8マイクロMに対応する。薬剤は部分的に技術でもあるので、最適用量は臨床試験により確立されるが、この範囲内にある可能性が最も高い。
別の態様において、本開示は、試料、例えば、患者由来の試料(例えば、組織生検または血液試料)中においてMMP−9および/またはMMP−2を検出する方法を特徴とする。該方法は、該試料をMMP−9/MMP−2結合タンパク質と接触させる工程と、それが存在する場合に、該タンパク質とMMP−9またはMMP−2との相互作用を検出する工程とを包含する。一部の実施形態において、該タンパク質は、検出可能な標識を包含する。MMP−9/MMP−2結合タンパク質を用いて、対象におけるMMP−9および/またはMMP−2を検出することができる。該方法は、MMP−9/MMP−2結合タンパク質を対象に投与する工程と、該対象において該タンパク質を検出する工程とを包含する。一部の実施形態において、該タンパク質は、検出可能な標識をさらに包含する。例えば、該検出する工程は、該対象を画像化する工程を含む。例えば、MMP−9およびM
MP−2の活性は、関節炎を有する対象またはこれを有する疑いがある対象における関節の病理機序および/または疾患の進行についてのマーカーであり得る。
別の態様において、本開示は、MMP−9およびMMP−2の活性を調節する方法を特徴とする。該方法は、MMP−9および/またはMMP−2を、MMP−9/MMP−2結合タンパク質と接触させ(例えば、ヒト対象において)、これにより、MMP−9および/またはMMP−2の活性を調節する工程を包含する。一部の実施形態において、該結合タンパク質は、MMP−9の活性を阻害し(例えば、MMP−9の触媒活性を阻害し)、かつ/またはMMP−2の活性を阻害する(例えば、MMP−2の触媒活性を阻害する)。
別の態様において、本開示は、癌(例えば、転移性癌)(例えば、癌を有する対象または癌を有する疑いがある対象における)を治療する方法を特徴とする。該方法は、MMP−9/MMP−2結合タンパク質を、対象における癌を治療するのに十分な量で該対象に投与する工程を包含する。例えば、該癌は、頭頚部癌、口腔癌、喉頭癌、軟骨肉腫、乳癌(エストロゲン受容体陽性(ER+)、エストロゲン受容体陰性(ER−)、Her2陽性(Her2+)、Her2陰性(Her2−)、またはこれらの組合せ、例えば、ER+/Her2+、ER+/Her2−、ER−/Her2+、またはER−/Her2−)、喉頭癌、膀胱癌、卵巣癌、精巣癌、黒色腫、または脳腫瘍(例えば、星状細胞腫、神経膠芽腫、神経膠腫)である。
MMP−9/MMP−2結合タンパク質は、対象における(例えば、転移性癌を有する対象または転移性癌を有する疑いがある対象における)転移活性を調節するのに有用であり得る。該タンパク質は、転移活性を調節するのに有効な量で該対象に投与することができる。例えば、該タンパク質は、腫瘍の増殖、腫瘍塞栓症、腫瘍の移動性、腫瘍の浸潤性、および癌細胞の増殖のうちの1つまたは複数を阻害する。
癌の治療(例えば、癌の治療および/または転移活性の調節)に関する、本明細書で開示される方法は、抗癌療法である第2の療法を該対象に施す工程(例えば、投与する工程)、例えば、化学療法剤の投与、例えば、VEGF経路を介するシグナル伝達をアンタゴナイズする薬剤、例えば、ベバシズマブ(AVASTIN(登録商標))の投与をさらに包含し得る。一実施形態において、該第2の療法は、5−FU、ロイコボリン、および/またはイリノテカンを投与する工程を包含する。一実施形態において、該第2の療法は、Tie1阻害剤(例えば、抗Tie1抗体)を投与する工程を包含する。別の例として、該第2の薬剤は、抗MMP14結合タンパク質(例えば、IgGもしくはFab、例えば、DX−2400、または米国特許出願公開第2007−0217997号に記載のタンパク質)であり得る。一実施形態において、該第2の療法は、プラスミン阻害剤(例えば、アミノ酸配列:
MHSFCAFKAETGPCRARFDRWFFNIFTRQCEEFIYGGCEGNQNRFESLEECKKMCTRD(配列番号1)
を含むタンパク質またはポリペプチドなど、米国特許第6,010,880号で開示されるクニッツドメイン)である。
別の態様において、本開示は、心不全(例えば、心不全を有する対象または心不全を有する疑いがある対象における)を治療する方法を特徴とする。該方法は、MMP−9/MMP−2結合タンパク質を、対象における心不全を治療するのに十分な量で該対象に投与する工程を包含する。該方法は、心不全療法である第2の療法を該対象に施す工程をさらに包含する。
別の態様において、本開示は、敗血症性ショック(例えば、敗血症性ショックを有する
対象または敗血症性ショックを有する疑いがある対象における)を治療する方法を特徴とする。該方法は、MMP−9/MMP−2結合タンパク質を、対象における敗血症性ショックを治療するのに十分な量で該対象に投与する工程を包含する。該方法は、敗血症性ショックの療法である第2の療法を該対象に施す工程をさらに包含する。
別の態様において、本開示は、神経障害性疼痛(例えば、神経障害性疼痛を有する対象または神経障害性疼痛を有する疑いがある対象における)を治療する方法を特徴とする。該方法は、MMP−9/MMP−2結合タンパク質を、対象における神経障害性疼痛を治療するのに十分な量で該対象に投与する工程を包含する。該方法は、神経障害性疼痛の療法である第2の療法を該対象に施す工程をさらに包含する。
別の態様において、本開示は、眼疾患(ocular condition)(例えば、黄斑変性)(例えば、眼疾患を有する対象または眼疾患を有する疑いがある対象における)を治療する方法を特徴とする。該方法は、MMP−9/MMP−2結合タンパク質を、対象における眼疾患を治療するのに十分な量で該対象に投与する工程を包含する。一実施形態において、該方法は、VEGF経路を介するシグナル伝達をアンタゴナイズする第2の薬剤、例えば、ベバシズマブまたはラニビズマブを投与する工程をさらに包含する。第2の薬剤がVEGF経路阻害剤(例えば、ベバシズマブまたはラニビズマブ)である一実施形態において、眼疾患は黄斑変性、例えば、滲出性加齢黄斑変性などの加齢黄斑変性である。
別の態様において、本開示は、炎症性疾患(例えば、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、喘息、鼻炎、炎症性腸疾患、滑膜炎、関節リウマチ)(例えば、炎症性疾患を有する対象または炎症性疾患を有する疑いがある対象における)を治療する方法を特徴とする。該方法は、MMP−9/MMP−2結合タンパク質を、対象における炎症性疾患を治療するのに十分な量で該対象に投与する工程を包含する。該方法は、抗炎症療法である第2の療法を該対象に施す工程をさらに包含する。例えば、特に、関節リウマチの場合、該第2の療法は、以下の薬剤:アスピリン、ナプロキセン、イブプロフェン、エトドラク、コルチゾン(コルチコステロイド)、アンタシド、スクラルフェート、プロトンポンプ阻害剤、ミソプロストール、金(例えば、金塩、金チオグルコース、金チオマレート、経口金)、メトトレキサート、スルファサラジン、D−ペニシラミン、アザチオプリン、シクロホスファミド、クロラムブシル、シクロスポリン、レフルノミド、エタネルセプト、インフリキシマブ、アナキンラ、アダリムマブ、および/またはヒドロキシクロロキンのうちの1つまたは複数を投与する工程を含む。
MMP−9/MMP−2結合タンパク質を投与する工程を包含する他の例示的な治療方法は、以下で説明される。本明細書に記載のMMP−9/MMP−2結合タンパク質は、1つまたは複数の他のMMP阻害剤、例えば、小分子阻害剤、例えば、広域特異性を有する阻害剤と組み合わせて投与することができる。一実施形態において、該小分子阻害剤は、ネオバスタット、マリマスタット、BAY 12−9566、またはプリノマスタットのうちの1つまたは複数である。別の実施形態において、1つまたは複数のMMP阻害剤は、別のMMP−9結合タンパク質および/または別のMMP−2結合タンパク質を包含する。
MMP−9/MMP−2結合タンパク質は、対象(例えば、腫瘍を有するかまたは腫瘍を有する疑いがある対象)に対する薬剤の標的化された送達、例えば、該薬剤を、該対象における腫瘍へと誘導するのに有用である。例えば、腫瘍を有するかまたは腫瘍を有する疑いがある対象に、抗腫瘍剤(化学療法剤、毒素、薬物、または放射性核種(例えば、131I、90Y、177Lu)など)に連結されたMMP−9/MMP−2結合タンパク質を投与することができる。
別の態様において、本開示は、対象を画像化する方法を特徴とする。該方法は、MMP−9/MMP−2結合タンパク質を該対象に投与する工程を包含する。一部の実施形態において、該タンパク質は、MMP−9および/またはMMP−2の触媒活性を実質的に阻害することのないタンパク質である。該MMP−9/MMP−2結合タンパク質は、検出可能な標識(例えば、放射性核種またはMRIで検出可能な標識)を包含し得る。一実施形態において、該対象は、腫瘍を有するかまたは腫瘍を有する疑いがある。該方法は、癌の診断、手術中における腫瘍の検出、手術後における腫瘍の検出、または腫瘍の浸潤活性のモニタリングに有用である。
一態様において、本開示は、本明細書に記載の障害、例えば、癌、炎症、心不全、敗血症性ショック、神経障害性疼痛、または黄斑変性を治療する薬物を製造するための、本明細書に記載のMMP−9/MMP−2結合タンパク質の使用を特徴とする。
本発明の1つまたは複数の実施形態の詳細は、添付される図面および以下の説明に記載される。本発明の他の特徴、目的、および利点は、該説明および図面、ならびに特許請求の範囲から明らかとなろう。
本出願全体において引用される、参考文献、交付済みの特許、公開済みであるかまたは未公開の特許出願のほか、下記に列挙される参考文献を含めた全ての引用参考文献の内容は、それらの全体において、参照により本明細書に明示的に組み込まれる。齟齬が生じた場合は、本明細書における任意の定義を含め、本出願により裁定される。
例えば、本発明は以下の項目を提供する。
(項目1)
少なくとも1つの免疫グロブリン可変領域を含む、MMP−9またはMMP−2に結合することができる単離タンパク質。
(項目2)
前記MMP−9がヒトMMP−9であり、前記MMP−2がヒトMMP−2である、項目1に記載のタンパク質。
(項目3)
MMP−9またはMMP−2の触媒活性を阻害することができる、項目1に記載のタンパク質。
(項目4)
抗体を含む、項目1に記載のタンパク質。
(項目5)
細胞の表面にMMP−9またはMMP−2を発現する前記細胞にナノ粒子または毒素を誘導する、項目1に記載のタンパク質。
(項目6)
エフェクター機能を引き起こして、MMP−9またはMMP−2を発現する細胞を死滅させる、項目1に記載のタンパク質。
(項目7)
重鎖(HC)免疫グロブリン可変ドメイン配列および軽鎖(LC)免疫グロブリン可変ドメイン配列を含む、項目1に記載のタンパク質。
(項目8)
前記HC可変ドメイン配列および前記LC可変ドメイン配列が、同じポリペプチド鎖の構成要素である、項目7に記載のタンパク質。
(項目9)
前記HC可変ドメイン配列および前記LC可変ドメイン配列が、異なるポリペプチド鎖の構成要素である、項目7に記載のタンパク質。
(項目10)
ヒトMMP−9およびヒトMMP−2に特異的に結合し、別の種由来のMMP−9またはMMP−2には結合しない、項目1に記載のタンパク質。
(項目11)
ヒトMMP−9またはヒトMMP−2に結合することができ、また、Mus musculus、Rattus norvegus、およびMacaca fascicularisからなる群から選択されるげっ歯動物種のMMP−9またはMMP−2にも結合することができる、項目1に記載のタンパク質。
(項目12)
げっ歯動物のMMP−9またはMMP−2に対するKi,appが、ヒトMMP−9またはMMP−2に対するKi,appの10倍以下である、項目11に記載のタンパク質。
(項目13)
MMP−9またはMMP−2に特異的に結合することができ、別のマトリックスメタロプロテアーゼに結合可能でない、項目1に記載のタンパク質。
(項目14)
以下の特徴:
(a)ヒトCDRまたはヒトフレームワーク領域;
(b)HC免疫グロブリン可変ドメイン配列が、本明細書に記載のHC可変ドメインのCDRに対して少なくとも85%同一である1つまたは複数のCDRを含むこと;
(c)LC免疫グロブリン可変ドメイン配列が、本明細書に記載のLC可変ドメインのCDRに対して少なくとも85%同一である1つまたは複数のCDRを含むこと;
(d)前記LC免疫グロブリン可変ドメイン配列が、本明細書に記載のLC可変ドメイ
ンに対して少なくとも85%同一であること;
(e)前記HC免疫グロブリン可変ドメイン配列が、本明細書に記載のHC可変ドメインに対して少なくとも85%同一であること;
(f)前記タンパク質が、本明細書に記載のタンパク質により結合されるエピトープ、またはこのようなエピトープと重複するエピトープに結合すること;および
(g)霊長類CDRまたは霊長類フレームワーク領域
のうちの1つまたは複数を含む、項目1に記載のタンパク質。
(項目15)
抗体M0237−D02の軽鎖および重鎖を含む抗体を含む、項目1に記載のタンパク質。
(項目16)
抗体M0237−D02の重鎖を含む抗体を含む、項目1に記載のタンパク質。
(項目17)
抗体M0237−D02の軽鎖を含む抗体を含む、項目1に記載のタンパク質。
(項目18)
抗体M0237−D02由来の1つまたは複数の重鎖CDRを含む抗体を含む、項目1に記載のタンパク質。
(項目19)
抗体M0237−D02由来の1つまたは複数の軽鎖CDRを含む抗体を含む、項目1に記載のタンパク質。
(項目20)
抗体M0237−D02の軽鎖および重鎖を含む、項目1に記載のタンパク質。
(項目21)
ヒト抗体もしくはヒト化抗体であるか、またはヒトにおいて非免疫原性である、項目1に記載のタンパク質。
(項目22)
MMP−9またはMMP−2を発現する腫瘍細胞に結合することができる、項目1に記載のタンパク質。
(項目23)
MMP−9またはMMP−2とMMP−9またはMMP−2の(それぞれの)基質との相互作用を阻害する方法であって、項目1に記載のMMP−9/MMP−2結合タンパク質をMMP−9またはMMP−2と接触させる工程を含み、前記結合タンパク質がMMP−9またはMMP−2に結合し、これにより、MMP−9またはMMP−2に対するMMP−9またはMMP−2の(それぞれの)基質の結合を防止する方法。
(項目24)
項目1に記載のMMP−9/MMP−2結合タンパク質および薬物を含む、MMP−9/MMP−2結合タンパク質−薬物コンジュゲート。
(項目25)
前記薬物が細胞傷害剤または細胞増殖抑制剤である、項目24に記載のコンジュゲート。
(項目26)
前記薬物が細胞傷害剤であって、アウリスタチン、DNA副溝結合剤、DNA副溝アルキル化剤、エンジイン、レキシトロプシン、デュオカルマイシン、タキサン、ピューロマイシン、ドラスタチン、ポドフィロトキシン、バッカチン誘導体、クリプトフィシン、コンブレタスタチン、マイタンシノイド、およびビンカアルカロイドからなる群から選択される、項目25に記載のコンジュゲート。
(項目27)
前記薬物が細胞傷害剤であり、抗チューブリン剤である、項目25に記載のコンジュゲート。
(項目28)
前記タンパク質が、リンカーを介して前記薬物にコンジュゲートしている、項目24に記載のコンジュゲート。
(項目29)
項目1に記載のMMP−9/MMP−2結合タンパク質および薬学的に許容される担体を含む医薬組成物。
(項目30)
試料中のMMP−9またはMMP−2を検出する方法であって、
前記試料を項目1に記載のMMP−9/MMP−2結合タンパク質と接触させる工程と、存在する場合に、前記タンパク質とMMP−9またはMMP−2との間の相互作用を検出する工程と
を含む方法。
(項目31)
前記タンパク質が、検出可能な標識を含む、項目30に記載の方法。
(項目32)
MMP−9またはMMP−2の活性を調節する方法であって、
MMP−9またはMMP−2を、項目1に記載のMMP−9/MMP−2結合タンパク質と接触させ、これにより、MMP−9またはMMP−2の活性を調節する工程
を含む方法。
(項目33)
対象における転移活性を調節する方法であって、
項目1に記載のMMP−9/MMP−2結合タンパク質を、転移活性を調節するのに有効な量で対象に投与する工程
を含む方法。
(項目34)
癌を治療する方法であって、
項目1に記載のMMP−9/MMP−2結合タンパク質を、対象における癌を治療するのに十分な量で前記対象に投与する工程
を含む方法。
(項目35)
抗癌療法である第2の療法を前記対象に施す工程をさらに含む、項目34に記載の方法。
(項目36)
心不全を治療する方法であって、
項目1に記載のMMP−9/MMP−2結合タンパク質を、対象における心不全を治療するのに十分な量で前記対象に投与する工程
を含む方法。
(項目37)
心不全療法である第2の療法を前記対象に施す工程をさらに含む、項目36に記載の方法。
(項目38)
敗血症性ショックを治療する方法であって、
項目1に記載のMMP−9/MMP−2結合タンパク質を、対象における敗血症性ショックを治療するのに十分な量で前記対象に投与する工程
を含む方法。
(項目39)
敗血症性ショックの療法である第2の療法を前記対象に施す工程をさらに含む、項目38に記載の方法。
(項目40)
神経障害性疼痛を治療する方法であって、
項目1に記載のMMP−9/MMP−2結合タンパク質を、対象における神経障害性
疼痛を治療するのに十分な量で前記対象に投与する工程
を含む方法。
(項目41)
神経障害性疼痛の療法である第2の療法を前記対象に施す工程をさらに含む、項目40に記載の方法。
(項目42)
炎症性疼痛を治療する方法であって、
項目1に記載のMMP−9/MMP−2結合タンパク質を、対象における炎症性疼痛を治療するのに十分な量で前記対象に投与する工程
を含む方法。
(項目43)
炎症性疼痛の療法である第2の療法を前記対象に施す工程をさらに含む、項目42に記載の方法。
(項目44)
眼疾患を治療する方法であって、
項目1に記載のMMP−9/MMP−2結合タンパク質を、対象における眼疾患を治療するのに十分な量で前記対象に投与する工程
を含む方法。
(項目45)
VEGF経路を介するシグナル伝達をアンタゴナイズする第2の作用物質を前記対象に提供する工程をさらに含む、項目44に記載の方法。
(項目46)
炎症性疾患を治療する方法であって、
項目1に記載のMMP−9/MMP−2結合タンパク質を、対象における炎症性疾患を治療するのに十分な量で前記対象に投与する工程
を含む方法。
(項目47)
抗炎症療法である第2の療法を前記対象に施す工程をさらに含む、項目46に記載の方法。
(項目48)
対象を画像化する方法であって、
項目1に記載のMMP−9/MMP−2結合タンパク質を前記対象に投与する工程
を含む方法。
(項目49)
前記MMP−9/MMP−2結合タンパク質が、検出可能な標識を含む、項目48に記載の方法。
(項目50)
Ki,app<1nMでヒトMMP−9に、またはKi,app<1nMでヒトMMP−2に、Ki,app<約5nMでマウスMMP−9に、またはKi,app<約5nMでマウスMMP−2に結合することができるヒト抗体またはヒト化抗体である単離タンパク質。
(項目51)
Ki,app<1nMでヒトMMP−9に、またはKi,app<1nMでヒトMMP−2に結合することができるヒト抗体またはヒト化抗体である単離タンパク質。
図1Aおよび1Bは、MMP−9結合タンパク質(539A−M0237−D02)の基質濃度(μM)に対するIC50(nM)を示す2つの線グラフである。図1Aにおいて、基質はヒトMMP−9である。図1Bにおいて、基質はマウスMMP−9である。 図2は、カラギーナンにより刺激されたマウス空気嚢への炎症細胞の浸潤に対するMMP−9/MMP−2結合タンパク質(539A−M0237−D02)の影響を示す棒グラフである。 図3は、関節炎指数に対するMMP−9/MMP−2結合タンパク質(539A−M0237−D02)の影響を示すグラフである。 図4は、Colo205結腸異種移植片癌モデルにおけるMMP−9結合タンパク質の活性を示す線グラフである。 図5は、BxPC−3膵臓癌モデルにおけるMMP−9結合タンパク質の効力を示す線グラフである。 図6は、親和性成熟(LC+HCDR1−2−プレスクリーニング)から選択される19個の固有のFab、539A−M0256−G09、539A−M0256−A04、539A−M0256−D03、539A−M0265−A07、39A−M0263−F01、539A−M0263−F05、539A−M0256−C09、539A−M0256−B03、539A−M0265−A04、539A−M0256−A07、539A−M0264−A09、539A−M0265−C07、539A−M0256−D11、539A−M0266−E02、539A−M0256−E10、539A−M0256−C07、539A−M0266−D03、539A−M0256−E03、539A−M0237−D02 Fabおよび539A−M0237−D02 IgG1のhMMP−9、hMMP−2、mMMP−9およびmMMP−2に対する阻害活性(%)を示す棒グラフである。 図7は、ヒトMMP−9、ヒトMMP−2、マウスMMP−9およびマウスMMP−2に対する539A−M0266−E02のKiapp([25μM](nM)を示す表である。 図8は、ヒトMMP−1、−7、−8、10および−12に対する539A−M0266−E02の交差反応性データを示す表である。
マトリックスメタロプロテアーゼ−2(MMP−2)およびマトリックスメタロプロテアーゼ−9(MMP−9)は、哺乳動物において、細胞外マトリックスのコラーゲン、フィブロネクチン、およびエラスチンを分解する分泌型亜鉛メタロプロテアーゼ群のメンバーである、それぞれ、72kDおよび92kDのIV型コラゲナーゼである。この群の他のメンバーには、間質コラゲナーゼ(MMP−1)およびストロメライシン(MMP−3)が含まれる。72kDのIV型コラゲナーゼ(CLG4Aとしても公知)であるMMP−2が、正常な皮膚の線維芽細胞から分泌されるのに対し、92kDのコラゲナーゼであるMMP−9(CLG4Bとしても公知)は、正常な肺胞マクロファージおよび顆粒球により生成される。本開示は、MMP−9およびMMP−2に結合し、場合によって、MMP−9およびMMP−2の活性を阻害するタンパク質を提供する。
「結合タンパク質」という用語は、標的分子と相互作用し得るタンパク質を指す。この用語は、「リガンド」と互換的に用いられる。「MMP−9/MMP−2結合タンパク質」とは、MMP−9およびMMP−2と相互作用し得るタンパク質を指し、特に、MMP−9およびMMP−2と優先的に相互作用し、かつ/またはこれらを阻害するタンパク質を包含する。例えば、MMP−9/MMP−2結合タンパク質は、抗体である。
「抗体」という用語は、少なくとも1つの免疫グロブリン可変ドメインまたは免疫グロブリン可変ドメイン配列を包含するタンパク質を指す。例えば、抗体は、重(H)鎖可変領域(本明細書ではVHと略記する)および軽(L)鎖可変領域(本明細書ではVLと略記する)を包含することができる。別の例において、抗体は、2つの重(H)鎖可変領域および2つの軽(L)鎖可変領域を包含する。「抗体」という用語は、抗体の抗原結合フラグメント(例えば、単鎖抗体、FabフラグメントおよびsFabフラグメント、F(ab’)、Fdフラグメント、Fvフラグメント、scFv、ならびにドメイン抗体(dAb)フラグメント(de Wildtら、Eur J Immunol.、1996年、26巻、3号、629〜39頁))のほか、完全抗体を包含する。抗体は、IgA、IgG、IgE、IgD、IgM(ならびに、これらの亜型)の構造的特徴を有し得る。抗体は、任意の供給源に由来し得るが、霊長動物(ヒトおよび非ヒト霊長動物)および霊長化動物が好ましい。
VHおよびVL領域は、「フレームワーク領域」(「FR」)と称するより保存的な領域がその間を占める、「相補性決定領域」(「CDR」)と称する超可変領域へとさらに細分される。フレームワーク領域およびCDRの範囲(extent)は正確に定義されている(Kabat, E.A.ら(1991年)、「Sequences of Proteins of Immunological Interest」、第5版、U.S. Department of Health and Human Services、NIH Publication 91−3242号;およびChothia, C.ら(1987年)、J. Mol. Biol.、196巻、901〜917頁;また、www.hgmp.mrc.ac.ukも参照されたい)。本明細書では、Kabatによる定義を用いる。各VHおよびVLは3つずつのCDRおよび4つずつのFRからなることが典型的であり、以下の順序:FR1、CDR1、FR2、CDR2、FR3、CDR3、FR4でアミノ末端からカルボキシ末端へと配列される。
本明細書で用いられる「免疫グロブリン可変ドメイン配列」とは、1つまたは複数のCDR領域が抗原結合部位に適する高次構造に位置するように、免疫グロブリン可変ドメイ
ン構造を形成し得るアミノ酸配列を指す。例えば、該配列は、天然に存在する可変ドメインのアミノ酸配列の全部または一部を包含し得る。例えば、該配列は、1つ、2つ、またはこれを超えるN末端アミノ酸またはC末端アミノ酸、内部アミノ酸を除外する場合もあり、1つまたは複数の挿入または付加的末端アミノ酸を包含する場合もあり、他の変化物を包含する場合もある。一実施形態において、免疫グロブリン可変ドメイン配列を包含するポリペプチドは、別の免疫グロブリン可変ドメイン配列と会合して、抗原結合部位、例えば、MMP−9タンパク質と優先的に相互作用する構造、例えば、MMP−9触媒ドメインを形成し得る。
抗体のVH鎖またはVL鎖は、重鎖または軽鎖の定常領域の全部または一部をさらに包含し、これにより、それぞれ、免疫グロブリンの重鎖または軽鎖を形成し得る。一実施形態において、抗体は、2本の免疫グロブリン重鎖および2本の免疫グロブリン軽鎖による4量体であり、該免疫グロブリンの重鎖および軽鎖は、例えば、ジスルフィド結合により相互接続される。IgGにおいて、重鎖定常領域は、3つの免疫グロブリンドメインである、CH1、CH2、およびCH3を包含する。軽鎖定常領域は、CLドメインを包含する。重鎖および軽鎖の可変領域は、抗原と相互作用する結合ドメインを含有する。抗体の定常領域は、免疫系の各種細胞(例えば、エフェクター細胞)および古典的な補体系の第1成分(C1q)を含めた、宿主組織または因子に対する抗体の結合を媒介することが典型的である。免疫グロブリンの軽鎖は、κ型の場合もあり、λ型の場合もある。一実施形態において、抗体はグリコシル化されている。抗体は、抗体依存性細胞傷害作用および/または補体媒介性細胞傷害作用について機能的であり得る。
抗体の1つまたは複数の領域は、ヒトであるかまたは事実上ヒトであり得る。例えば、1つまたは複数の可変領域は、ヒトであるかまたは事実上ヒトであり得る。例えば、1つまたは複数のCDR、例えば、HC CDR1、HC CDR2、HC CDR3、LC
CDR1、LC CDR2、およびLC CDR3はヒトであり得る。軽鎖CDRの各々はヒトであり得る。HC CDR3はヒトであり得る。1つまたは複数のフレームワーク領域、例えば、HCまたはLCのFR1、FR2、FR3、およびFR4は、ヒトであり得る。例えば、Fc領域はヒトであり得る。一実施形態において、全てのフレームワーク領域は、ヒトである、例えば、ヒト体細胞、例えば、免疫グロブリンを生成する造血細胞または非造血細胞に由来する。一実施形態において、ヒト配列は、生殖細胞系列配列である、例えば、生殖細胞系列核酸によりコードされる。一実施形態において、選択されたFabのフレームワーク(FR)残基は、最も類似する霊長動物生殖細胞系列遺伝子、とりわけ、ヒト生殖細胞系列遺伝子内における対応する残基のアミノ酸の種類へと転換することができる。定常領域のうちの1つまたは複数は、ヒトであるかまたは事実上ヒトであり得る。例えば、免疫グロブリン可変ドメイン、該定常領域、該定常ドメイン(CH1、CH2、CH3、CL1)、または全抗体の少なくとも70、75、80、85、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99、または100%が、ヒトであるかまたは事実上ヒトであり得る。
抗体の全部または一部が、免疫グロブリン遺伝子またはそのセグメントによりコードされ得る。例示的なヒト免疫グロブリン遺伝子には、κ、λ、α(IgA1およびIgA2)、γ(IgG1、IgG2、IgG3、IgG4)、δ、ε、およびμの定常領域遺伝子のほか、多数の免疫グロブリン可変領域遺伝子が含まれる。全長免疫グロブリン「軽鎖」(約25KDaまたは約214のアミノ酸)は、NH2末端(約110アミノ酸)における可変領域遺伝子、およびCOOH末端におけるκまたはλの定常領域遺伝子によりコードされる。全長免疫グロブリン「重鎖」(約50KDaまたは約446のアミノ酸)は、可変領域遺伝子(約116アミノ酸)、および前述の他の定常領域遺伝子のうちの1つ、例えば、γ(約330アミノ酸をコードする)により同様にコードされる。HC CDR3は、約3アミノ酸残基〜35アミノ酸残基超で変化するので、ヒトHCの長さはかな
り変化する。
全長抗体の「抗原結合フラグメント」という用語は、目的の標的に特異的に結合する能力を保持する、全長抗体の1つまたは複数のフラグメントを指す。全長抗体の「抗原結合フラグメント」という用語の内に包含される結合フラグメントの例には、(i)VLドメイン、VHドメイン、CLドメイン、およびCH1ドメインからなる1価フラグメントである、Fabフラグメント;(ii)ヒンジ領域においてジスルフィド架橋により連結された2つのFabフラグメントを包含する2価フラグメントである、F(ab’)フラグメント;(iii)VHドメインおよびCH1ドメインからなる、Fdフラグメント;(iv)抗体の1本のアームのVLドメインおよびVHドメインからなる、Fvフラグメント;(v)VHドメインからなる、dAbフラグメント(Wardら(1989年)、Nature、341巻、544〜546頁);および(vi)機能性を保持する、単離された相補性決定領域(CDR)が含まれる。さらに、Fvフラグメントの2つのドメインであるVLおよびVHは、個別の遺伝子によりコードされるが、合成リンカーによる組換え法を用いてこれらを接合することができ、これにより、これらを単鎖タンパク質として作製することが可能となり、ここで、該VL領域およびVH領域は対合して、単鎖Fv(scFv)として公知の1価分子を形成する。例えば、米国特許第5,260,203号、同第4,946,778号、および同第4,881,175号;Birdら(1988年)、Science、242巻、423〜426頁;およびHustonら(1988年)、Proc. Natl. Acad. Sci. USA、85巻、5879〜5883頁を参照されたい。
当業者に公知の従来の技法を含めた任意の適切な技法を用いて、抗体フラグメントを得ることができる。「単一特異性抗体」という用語は、特定の標的、例えば、エピトープに対して単一の結合特異性および親和性を示す抗体を指す。この用語は、「モノクローナル抗体」または「モノクローナル抗体組成物」を包含し、これは、本明細書で用いられる通り、該抗体がどのようにして作製されたかに関わらず、単一の分子組成による抗体またはこれらのフラグメントの調製物を指す。
「事実上ヒト」免疫グロブリン可変領域とは、該免疫グロブリン可変領域が、正常なヒトにおいて免疫原性反応を誘発しないように、十分な数のヒトフレームワークアミノ酸位置を包含する免疫グロブリン可変領域である。「事実上ヒト」抗体とは、該抗体が、正常なヒトにおいて免疫原性反応を誘発しないように、十分な数のヒトアミノ酸位置を包含する抗体である。
「ヒト化」免疫グロブリン可変領域とは、該免疫グロブリン可変領域が、正常なヒトにおいて免疫原性反応を誘発しないように、十分な数のヒトフレームワークアミノ酸位置を包含するように改変された免疫グロブリン可変領域である。「ヒト化」免疫グロブリンについての記載には、例えば、US6,407,213およびUS5,693,762が含まれる。
本明細書で用いられる「結合親和異性」とは、見かけの会合定数またはKを指す。Kとは、解離定数(K)の逆数である。結合タンパク質は、例えば、特定の標的分子、例えば、MMP−9およびMMP−2に対する結合親和性が、少なくとも10、10、10、10、10、1010および1011−1であり得る。第2の標的と比べて第1の標的に対してより高い親和性による結合タンパク質の結合は、第1の標的に対する結合について、第2の標的に対する結合についてのK(またはKの数値)より高いK(またはより小さなKの数値)により表示することができる。このような場合、結合タンパク質は、第2の標的(例えば、第2の高次構造にある同じタンパク質もしくはその模倣体;または第2のタンパク質)と比べて、第1の標的(例えば、第1の高次構造
にあるタンパク質またはその模倣体)に対する特異性を有する。結合親和性の差(例えば、特異性または他の比較についての差)は、少なくとも1.5、2、3、4、5、10、15、20、37.5、50、70、80、91、100、500、1000、または10倍であり得る。
結合親和性は、平衡透析、平衡結合、ゲル濾過、ELISA、表面プラズモン共鳴、または分光光度法(例えば、蛍光アッセイを用いる)を含めた各種の方法により決定することができる。結合親和性を評価するための例示的な条件は、トリス緩衝液(pH7.5の50mMトリス、150mM NaCl、5mM CaCl)に存在する。これらの技法を用いて、結合タンパク質(または標的)濃度の関数として、結合した結合タンパク質および遊離の結合タンパク質の濃度を測定することができる。結合した結合タンパク質の濃度([結合])は、以下の式:
[結合]=N・[遊離]/((1/Ka)+[遊離])
[式中、(N)とは、標的分子当たりの結合部位数である]により、遊離の結合タンパク質の濃度([遊離])および標的上における結合タンパク質の結合部位濃度と関係する。
しかし、例えば、ELISAまたはFACS解析などの方法を用いて決定され、Kに比例し、したがって、より高い、例えば、2倍の親和性が、親和性の定性的測定値を得ることであるのか、または、例えば、機能的アッセイ、例えば、インビトロアッセイもしくはインビボアッセイにおける活性により親和性の推定値を得ることであるのかの決定など、比較に用い得る親和性の定量的測定値を得れば十分な場合もあるので、Kを正確に決定することが常に必要なわけではない。
阻害定数(Ki)は、阻害効力の尺度を提供するが、これは、酵素活性を50%低下させるのに必要とされる阻害剤の濃度であり、酵素または基質の濃度には依存しない。見かけのKi(Ki app)とは、異なる基質濃度において、反応の程度(例えば、酵素活性)に対する、異なる濃度の阻害剤(例えば、阻害性結合タンパク質)の阻害効果を測定することにより得られるもので、阻害剤濃度の関数としての擬一次速度定数における変化を、モリソンの式(式1)にあてはめることにより、見かけのKi値の推定値が得られる。Kiは、Ki,app対基質濃度のプロットに対する線形回帰解析から抽出されるy切片から得られる。
[式中、v=測定された速度;v=阻害剤の不在下における速度;Ki,app=見かけの阻害定数;I=総阻害濃度;およびE=総酵素濃度]
「単離組成物」とは、そこから単離組成物を得ることができる天然試料の少なくとも1つの成分のうち、少なくとも90%が除去された組成物(例えば、タンパク質)を指す。目的の分子種または分子種集団が、重量−重量ベースで少なくとも5、10、25、50、75、80、90、92、95、98、または99%純粋である場合、人工的に作製されるかまたは天然に生成される組成物は、「少なくとも」特定程度の純度「の組成物」であり得る。
「エピトープ」とは、結合タンパク質(例えば、Fabまたは全長抗体などの抗体)が結合する、標的化合物上における部位を指す。標的化合物がタンパク質である場合、該部位は、完全にアミノ酸成分からなる場合もあり、完全に該タンパク質のアミノ酸に対する
化学修飾(例えば、グリコシル部分)からなる場合もあり、これらの組合せからなる場合もある。重複するエピトープには、少なくとも1つの共通するアミノ酸残基、グリコシル基、リン酸基、硫酸基、または他の分子特徴が含まれる。
2つの配列間における「相同性」または「配列同一性」(本明細書において、該用語は互換的に用いられる)の計算は、以下の通りに実施される。配列は、最適比較を目的として整列される(例えば、最適アライメントのために、第1および第2のアミノ酸配列または核酸配列の一方または両方にギャップを導入し、比較を目的として非相同配列を除外する(disregard)ことができる)。ギャップペナルティーを12、ギャップ伸長ペナルティーを4、また、フレームシフトギャップペナルティーを5とするBlossum62スコアリング行列を伴う、GCGソフトウェアパッケージ中のGAPプログラムを用いると、最高のスコアとして、最適アライメントが決定される。次いで、対応するアミノ酸位置またはヌクレオチド位置にあるアミノ酸残基またはヌクレオチドを比較する。第1の配列における位置が、第2の配列における対応する位置と同じアミノ酸残基またはヌクレオチドによって占められている場合、該分子は、その位置において同一である(本明細書で用いられるアミノ酸または核酸の「同一性」とは、アミノ酸または核酸の「相同性」と同義である)。該2つの配列間における百分率による同一性は、該配列によって共有される同一位置数の関数である。
好ましい実施形態において、比較を目的として整列された基準配列(reference sequence)の長さは、該基準配列の長さの少なくとも30%、好ましくは少なくとも40%、より好ましくは少なくとも50%、さらにより好ましくは少なくとも60%、またさらにより好ましくは少なくとも70%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%である。例えば、該基準配列は、免疫グロブリン可変ドメイン配列の全長であり得る。
本明細書で用いられる「実質的に同一な」(または「実質的に相同な」)という用語は、本明細書において、第1および第2のアミノ酸配列または核酸配列が、同様の活性、例えば、結合活性、結合優先性、または生物学的活性を有する(またはこれを有するタンパク質をコードする)ように、第2のアミノ酸配列または核酸配列に対して十分な数の同一または同等の(例えば、類似の側鎖、例えば、保存的アミノ酸置換を伴う)アミノ酸残基またはヌクレオチドを含有する、第1のアミノ酸配列または核酸配列を指す。抗体の場合、第2の抗体は、同じ抗原に対する特異性が同じであり、同じ抗原に対する親和性が少なくとも50%、少なくとも25%、または少なくとも10%である。
本明細書で開示される配列に対して類似であるかまたは相同な配列(例えば、少なくとも85%の配列同一性)もまた、この適用の一部である。一部の実施形態において、該配列同一性は、約85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%以上であり得る。加えて、該核酸セグメントが選択的なハイブリダイゼーション条件(例えば、高度に厳密なハイブリダイゼーション条件)下でハイブリダイズする場合は、該鎖の相補体に対しても実質的な同一性が存在する。該核酸は、全細胞に存在する場合もあり、細胞溶解物に存在する場合もあり、部分的に精製された形態または実質的な純粋形態で存在する場合もある。
本明細書で用いられる「低度の厳密性条件、中程度の厳密性条件、高度の厳密性条件、または極めて高度の厳密性条件下でハイブリダイズする」という用語は、ハイブリダイゼーションおよび洗浄の条件について記載するものである。ハイブリダイゼーション反応を実施するための指針は、「Current Protocols in Molecular Biology」、John Wiley & Sons, N.Y.(1989年)、第6.3.1〜6.3.6節において見出すことができる。この参考文献には、水
性の方法、または非水性の方法が記載されており、いずれも使用することができる。本明細書で参照される具体的なハイブリダイゼーション条件は以下の通りである:(1)約45℃で6倍濃度の塩化ナトリウム/クエン酸ナトリウム(SSC)中で静置した後、少なくとも50℃で0.2倍濃度のSSC、0.1%SDS中において2回の洗浄を行う低度の厳密性ハイブリダイゼーション条件(低度の厳密性条件の場合、洗浄温度を55℃まで上げることができる);(2)約45℃で6倍濃度のSSC中で静置した後、60℃で0.2倍濃度のSSC、0.1%SDS中における1または複数回の洗浄を行う中程度の厳密性ハイブリダイゼーション条件;(3)約45℃で6倍濃度のSSC中で静置した後、65℃で0.2倍濃度のSSC、0.1%SDS中における1または複数回の洗浄を行う高度の厳密性ハイブリダイゼーション条件;(4)極めて高度の厳密性ハイブリダイゼーション条件では、約65℃の0.5Mリン酸ナトリウム、7%SDS中で静置した後、65℃で0.2倍濃度のSSC、1%SDS中における1または複数回の洗浄を行う。極めて高度の厳密性条件である(4)が好ましい条件であり、別段に指定しない限り、これを用いるものとする。本開示は、本明細書に記載の核酸またはその相補体、例えば、本明細書に記載の結合タンパク質をコードする核酸に対して、低度、中程度、高度、または極めて高度の厳密性でハイブリダイズする核酸を包含する。該核酸は、基準核酸と同じ長さの場合もあり、同核酸の長さの30、20、または10%以下の場合もある。該核酸は、本明細書に記載の免疫グロブリン可変ドメインをコードする領域に対応し得る。
MMP−9/MMP−2結合タンパク質は、本明細書に記載の結合タンパク質と比べて、タンパク質の機能に対して実質的な影響を及ぼさない変異(例えば、少なくとも1、2または4、および/または15、10、5または3より少ない)(例えば、保存的アミノ酸置換または非必須アミノ酸置換)を有し得る。特定の置換が許容されるかどうか、すなわち、結合活性などの生物学的特性に有害な影響を与えないかどうかは、例えば、該変異が保存的であるかどうかを評価することにより予測することもでき、Bowieら(1990年)、Science、247巻、1306〜1310頁の方法により予測することもできる。
「保存的アミノ酸置換」とは、アミノ酸残基が、類似の側鎖を有するアミノ酸残基により置き換えられる置換である。類似の側鎖を有するアミノ酸残基のファミリーは、当技術分野において規定されている。これらのファミリーには、塩基性側鎖を有するアミノ酸(例えば、リシン、アルギニン、ヒスチジン)、酸性側鎖を有するアミノ酸(例えば、アスパラギン酸、グルタミン酸)、非荷電極性側鎖を有するアミノ酸(例えば、グリシン、アスパラギン、グルタミン、セリン、トレオニン、チロシン、システイン)、非極性側鎖を有するアミノ酸(例えば、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、プロリン、フェニルアラニン、メチオニン、トリプトファン)、β−分枝側鎖を有するアミノ酸(例えば、トレオニン、バリン、イソロイシン)、および芳香環側鎖を有するアミノ酸(例えば、チロシン、フェニルアラニン、トリプトファン、ヒスチジン)が含まれる。多くのフレームワークおよびCDRのアミノ酸残基は、1つまたは複数の保存的置換を包含することが可能である。
生体ポリマーのモチーフ配列は、アミノ酸を変化させることが可能な位置を包含し得る。例えば、このような文脈での記号「X」は一般に、任意のアミノ酸(例えば、20の天然アミノ酸のうちのいずれか、またはシステイン以外の19のアミノ酸のいずれか)を指す。他の許容されるアミノ酸はまた、例えば、カッコおよびスラッシュを用いても表示することができる。例えば、「(A/W/F/N/Q)」とは、その特定の位置において、アラニン、トリプトファン、フェニルアラニン、アスパラギン、およびグルタミンが許容されることを意味する。
「非必須」アミノ酸残基が、生物学的活性を消失させずに、またはより好ましくは、生
物学的活性を実質的に変化させずに、結合剤、例えば、抗体の野生型配列から変化させることが可能な残基であるのに対し、「必須」アミノ酸残基を変化させると、結果として活性が実質的に失われる。
「同種リガンド」とは、その天然に存在する変異体(例えば、スプライス変異体、天然に存在する変異体、およびアイソフォーム)を含めた、MMP−9および/またはMMP−2の天然に存在するリガンドを指す。
統計学的有意性は、当技術分野で公知の任意の方法により決定することができる。例示的な統計学的検定には、スチューデントt検定、マンホイットニーによるノンパラメトリックのU検定、およびウィルコクソンによるノンパラメトリックの統計学的検定が含まれる。一部の統計学的に有意な関係では、P値が0.05または0.02未満である。特定の結合タンパク質は、例えば、特異性または結合において、統計学的な有意差を示し得る(例えば、P値<0.05または0.02)。「誘導する」、「阻害する」、「強化する」、「上昇させる」、「増加させる」、「減少させる」などの用語は、2つの状態間における識別可能で定性的または定量的な差を示し、該2つの状態間における差、例えば、統計学的な有意差を指す場合がある。
MMP−9/MMP−2結合タンパク質
本開示は、MMP−9(例えば、ヒトMMP−9)およびMMP−2(例えば、ヒトMMP−2)に結合し、少なくとも1つの免疫グロブリン可変領域を包含するタンパク質を提供する。例えば、MMP−9/MMP−2結合タンパク質は、重鎖(HC)免疫グロブリン可変ドメイン配列および軽鎖(LC)免疫グロブリン可変ドメイン配列を包含する。本明細書では、例示的なMMP−9/MMP−2結合タンパク質が説明される。
MMP−9/MMP−2結合タンパク質は、単離タンパク質(例えば、他のタンパク質を少なくとも70、80、85、90、91、92、93、94、95、96、97、98、または99%含まない)であり得る。
MMP−9/MMP−2結合タンパク質はさらに、MMP−9、例えば、ヒトMMP−9、および/またはMMP−2、例えば、ヒトMMP−2を阻害し得る。該結合タンパク質は、MMP−9(例えば、ヒトMMP−9)および/またはMMP−2(例えば、ヒトMMP−2)の触媒活性を阻害し得る。一実施形態において、該タンパク質は、ヒトMMP−9の触媒ドメインに結合し、例えば、該タンパク質は、MMP−9の活性部位内またはその近傍にある残基に接触し、かつ/または該タンパク質は、ヒトMMP−2の触媒ドメインに結合する、例えば、該タンパク質は、MMP−2の活性部位内またはその近傍にある残基に接触する。一部の実施形態において、該タンパク質は、MMP−9の活性部位内またはその近傍にある残基には接触せず、代わりにMMP−9上における別の場所で結合し、MMP−9においてその活性に影響を与える(例えば、これを阻害する)立体変化を引き起こす。他の実施形態において、該タンパク質は、MMP−2の活性部位内またはその近傍にある残基には接触せず、代わりにMMP−2上における別の場所で結合し、MMP−2においてその活性に影響を与える(例えば、これを阻害する)立体変化を引き起こす。
例示的なMMP−9/MMP−2結合タンパク質は、M0237−D02である。
MMP−9/MMP−2結合タンパク質は、抗体であり得る。MMP−9/MMP−2結合抗体では、それらのHCおよびLC可変ドメイン配列を、単一のポリペプチド(例えば、scFv)内、または異なるポリペプチド(例えば、IgGまたはFab)に組み入れることができる。
マトリックスメタロプロテアーゼ9(MMP−9)
MMP−9の配列:MMP−9は、フルネームがマトリックスメタロプロテアーゼ9前駆体である、MMP9と称する遺伝子によりコードされる。MMP−9の同義語には、マトリックスメタロプロテアーゼ9、ゼラチナーゼB(GELB)、92kDaのゼラチナーゼ(CLG4B)、92kDaのIV型コラゲナーゼ(EC 3.4.24.35)が含まれる。Homo sapiensおよびMus musculusについて、DNA配列が知られている。ヒトMMP9をコードする例示的なcDNA配列およびそのアミノ酸配列を以下に示す。マウスMMP9をコードする例示的なcDNA配列およびアミノ酸配列もまた以下に示す。例示的なMMP−9タンパク質には、ヒトまたはマウスのMMP−9アミノ酸配列、これらの配列のうちの1つ、またはそのフラグメント、例えば、シグナル配列またはプロドメインを伴わないフラグメントに対して80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、または99%同一である配列が含まれ得る。
表1は、他の生物における類似の遺伝子、およびヒトMMP−9との類似性の百分率を示す。チンパンジー(Pan troglodytes)、ブタ(Sus scrofa)、ウシ(Bos taurus)、ショウジョウバエ(Drosophila melanogaster)、蠕虫(Caenorhabditis elegans)、パン酵母(Saccharomyces cerevisiae)、ネッタイツメガエル(Silurana tropicalis)、アフリカマラリア蚊(Anopheles gambiae)、緑藻(Chlamydomonas reinhardtii)、ダイズ(Glycine max)、オオムギ(Hordeum vulgare)、トマト(Lycopersicon esculentum)、イモチ病菌(Magnaporthe grisea)、サトウキビ(Saccharum officinarum)、テーダマツ(Pinus taeda)、トウモロコシ(Zea mays)、コムギ(Triticum aestivum)、アリカンテブドウ(Vitis vinifera)、パンカビ(Neurospora crassa)、分裂酵母(Schizosaccharomyces pombe)、ホヤ(Ciona intestinalis)、アメーバ(Dictyostelium discoideum)、A.gosspyii酵母(Ashbya gossypii)、K.lactis酵母(Kluyveromyces lactis)、タルウマゴヤシ(Medicago truncatula)、マラリア原虫(Plasmodium falciparum)、住血原虫(Schistosoma mansoni)、モロコシ(Sorghum bicolor)、トキソプラズマ原虫(Toxoplasma gondii)については、MMP−9のヒトに対する類似性データが見出されていない。
MMP−9のドメイン:MMP−9は、ペプチダーゼM10Aファミリーに属する。MMP−9は、5つのドメイン:分泌型メタロプロテアーゼ遺伝子ファミリーの全てのメンバーにより共有される、アミノ末端ドメインおよび亜鉛結合ドメイン;72kDaのIV型コラゲナーゼ中にも存在する、コラーゲン結合型フィブロネクチン様ドメイン;PUMP−1を例外として、このファミリーのうちの公知の酵素全てにより共有される、カルボキシ末端ヘモペキシン様ドメイン;およびV型コラーゲンのα2鎖と相同な、54アミノ酸長のプロリンに富む固有のドメインからなる(Wilhelmら(1989年)、J.
Biol. Chem.、264巻、17213〜17221頁)(表2)。
MMP−9を調節する因子。MMP−9の触媒活性は、ヒスタチン31/24(ヒスタチン5)により阻害される。MMP−9は、ウロキナーゼ型のプラスミノーゲン活性化因子;プラスミノーゲン;IL−1β、酢酸4−アミノフェニル水銀、およびホルボールエステルにより活性化される。MMP−9は、単量体、ジスルフィド結合したホモ二量体、および25kDaのタンパク質を伴うヘテロ二量体として存在する。マクロファージおよび形質転換された細胞株は、単量体のMMP−9だけを生成し、該ヘテロ二量体の形態は、正常な肺胞マクロファージおよび顆粒球により生成される。その前駆体のプロセシング
により、64、67、および82kDaの異なる活性形態がもたらされる。MMP−3による連鎖的なプロセシングにより、82kDaのマトリックスメタロプロテアーゼ9がもたらされる。関節炎患者の場合、この酵素が関節破壊の病理機序に寄与し、疾患状態の有用なマーカーとなり得る。
MMP−9の内因性阻害剤。MMP−9には、いくつかの内因性阻害剤が存在する。他のMMPと同様、MMP−9もTIMPにより阻害される(Murphy, G.およびWillenbrock, F.(1995年)、Methods Enzymol.、248巻、496〜510頁)。MMP−9(およびMMP−2)の特徴は、それらの酵素原が、TIMPと強固な非共有結合の安定的な複合体を形成する能力である。プロ−MMP−2がTIMP−2に結合する(Goldbergら(1989年)、Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A.、86巻、8207〜8211頁)のに対し、プロ−MMP−9は、TIMP−1に結合する(Wilhelmら(1989年)、J. Biol. Chem.、264巻、17213〜17221頁)ことが示されている。TIMPは、緩徐で強固な結合阻害剤であることが典型的である。タンパク質のファージディスプレイライブラリーから選択されたMMP−9結合タンパク質(例えば、抗体)は、動態がより急速であり得る。例えば、組換えTIMP−1を、例えば、本明細書に記載のMMP−9結合タンパク質と組み合わせて投与し、MMP−9を阻害することができる。
MMP−9の小分子阻害剤。Skilesら(2004年、Curr Med Chem、11巻、2911〜77頁)の報告によれば、第1世代の小分子MMP阻害剤はバイオアベイラビリティが低く、該第2世代は、筋骨格の疼痛および炎症を引き起こした。大半の小分子MMP阻害剤は、触媒性亜鉛と相互作用するが、親和性が極めて低い。したがって、効果を及ぼすには、より高濃度が必要とされる。触媒性亜鉛との相互作用により、他のMMPの阻害および毒性のある副作用がもたらされる。本明細書に記載のMMP−9結合タンパク質は、小分子阻害剤と組み合わせて用いることができる。例えば、該阻害剤は組合せで用いられるので、用いられる小分子の用量を低減することができ、したがって、結果として副作用が軽減される。小分子MMP−9阻害剤の例には、合成によるアントラニル酸ベースの小分子阻害剤(例えば、Calibiochem製のInhibitor−I、型番444278;およびLevinら、2001年、Bioorg. Med. Chem. Lett.、11巻、2975〜2978頁を参照されたい)が含まれる。
MMP−9の低分子干渉RNA阻害剤。MMP−9は、低分子干渉RNA(siRNA)により阻害することができる。用い得るsiRNAの例には、
が含まれる。
また、Kawasakiら、2008年2月10日、Nat. Med. advance on−line publication doi、10.1038/nm1723も参照されたい。siRNAを、例えば、本明細書に記載のMMP−9結合タンパク質
と組み合わせて投与し、MMP−9を阻害することができる。
マトリックスメタロプロテアーゼ2(MMP−2)
MMP−2の配列。MMP−2は、フルネームがマトリックスメタロプロテアーゼ−2前駆体である、MMP2と称する遺伝子によりコードされる。MMP−2の同義語には、マトリックスメタロプロテアーゼ2、72kDaのIV型コラゲナーゼ前駆体(72kDaのゼラチナーゼ)、ゼラチナーゼA、およびTBE−1が含まれる。Homo sapiensおよびMus musculusについて、DNA配列が知られている。ヒトMMP2をコードする例示的なcDNA配列およびそのアミノ酸配列を以下に示す。マウスMMP2をコードする例示的なcDNA配列およびアミノ酸配列もまた以下に示す。例示的なMMP−2タンパク質には、ヒトまたはマウスのMMP−2アミノ酸配列、これらの配列のうちの1つ、またはそのフラグメント、例えば、シグナル配列またはプロドメインを伴わないフラグメントに対して80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、または99%同一である配列が含まれ得る。

MMP−2の小分子阻害剤。本明細書に記載のMMP−9/MMP−2結合タンパク質は、小分子阻害剤と組み合わせて用いることができる。例えば、該阻害剤は組合せで用いられるので、用いられる小分子の用量を低減することができ、かつ/または、結果として副作用を軽減することができる。小分子MMP−2阻害剤の例には、(2−((イソプロポキシ)−(1,1’−ビフェニル−4−イルスルホニル)−アミノ))−N−ヒドロキシアセトアミド(Calbiochem製、型番444288)およびN−アリールスルホニル−N−アルコキシアミノアセトヒドロキサム酸が含まれる。
MMP−2の低分子干渉RNA阻害剤。MMP−2は、低分子干渉RNA(siRNA)により阻害することができる。用い得るsiRNAの例には、
が含まれる。
また、Kawasakiら、2008年2月10日、Nat. Med. advance on−line publication doi、10.1038/nm1723も参照されたい。siRNAを、例えば、本明細書に記載のMMP−9/MMP−2結合タンパク質と組み合わせて投与し、MMP−2を阻害することができる。
薬物コンジュゲート
本明細書に記載のMMP−9/MMP−2結合タンパク質は、薬物(例えば、細胞傷害剤、細胞増殖抑制剤、または免疫調節剤)にコンジュゲートさせることができる。該コンジュゲートは、治療的に用いることもでき、予防的に用いることもできる、例えば、該結合タンパク質により、例えば、薬物が疾患部位に効果を及ぼす(例えば、標的細胞に対して細胞増殖抑制効果または細胞傷害効果を引き起こす)ように、例えば、インビボにおいて、例えば、疾患部位(例えば、腫瘍または炎症部位)を該薬物の標的とすることができる。
一部の実施形態において、結合タンパク質は、それ自体で治療的または予防的効力を有する(例えば、該タンパク質は、MMP−9およびMMP−2を調節する(例えば、アンタゴナイズする)場合もあり、MMP−9またはMMP−2を発現する細胞(例えば、内皮細胞または腫瘍細胞)に対して、細胞増殖抑制効果または細胞傷害効果を引き起こす場合もある)。結合タンパク質および薬物の両方が、MMP−9および/またはMMP−2に対して効果(例えば、インビボにおける、例えば、疾患部位(例えば、腫瘍または望ましくない新脈管形成部位もしくは血管形成部位)に対する、例えば、治療効果)を及ぼす(例えば、相加的または相乗作用的に)ように、結合タンパク質−薬物コンジュゲートを用いることができる。薬物および/または結合タンパク質は、例えば、細胞傷害性の場合もあり、細胞増殖抑制性の場合もあり、標的とされる細胞が分裂および/または存続する能力を他の形で防止するかまたは低下させる(例えば、標的とされる細胞により該薬物が取り込まれるかまたは内部化されるとき、および/またはMMP−9もしくはMMP−2に該結合タンパク質が結合するとき)場合もある。例えば、標的とされる細胞が癌細胞である場合、薬物および/または結合タンパク質は、該細胞が分裂および/または転移する能力を防止するかまたは低下させることが可能である。
本明細書に記載の結合タンパク質−薬物コンジュゲートにおいて用い得る有用な薬物のクラスには、例えば、抗チューブリン剤、アウリスタチン、DNA副溝結合剤、DNA複製阻害剤、アルキル化剤(例えば、シスプラチン、モノ(白金)錯体、ビス(白金)錯体、および三核白金錯体、ならびにカルボプラチンなどの白金錯体)、アントラサイクリン、抗生剤、抗葉酸剤、代謝拮抗剤、化学療法増感剤、デュオカルマイシン、エトポシド、フッ素化ピリミジン、イオノフォア、レキシトロプシン、ニトロソウレア、プラチノールのプレフォーミング化合物、プリン代謝拮抗剤、ピューロマイシン、放射線増感剤、ステロイド、タキサン、トポイソメラーゼ阻害剤、ビンカアルカロイドなどの細胞傷害剤または免疫調節剤が含まれる。
個々の細胞傷害剤または免疫調節剤には、例えば、アンドロゲン、アントラマイシン(AMC)、アスパラギナーゼ、5−アザシチジン、アザチオプリン、ブレオマイシン、ブスルファン、ブチオニン、スルホキシイミン、カンプトテシン、カルボプラチン、カルムスチン(BSNU)、CC−1065、クロラムブシル、シスプラチン、コルヒチン、シクロホスファミド、シタラビン、シチジンアラビノシド、サイトカラシンB、ダカルバジン、ダクチノマイシン(アクチノマイシン)、ダウノルビシン、ダカルバジン、ドセタキセル、ドキソルビシン、エストロゲン、5−フルオロデオキシウリジン、5−フルオロウラシル、グラミシジンD、ヒドロキシウレア、イダルビシン、イホスファミド、イリノテカン、ロムスチン(CCNU)、メクロレタミン、メルファラン、6−メルカプトプリン、メトトレキサート、ミトラマイシン、マイトマイシンC、ミトキサントロン、ニトロイミダゾール、パクリタキセル、プリカマイシン、プロカルバジン、ラパマイシン(Sirolimus)、ストレプトゾトシン、テノポシド、6−チオグアニン、チオテパ、トポテカン、ビンブラスチン、ビンクリスチン、ビノレルビン、VP−16、およびVM−26が含まれる。
一部の典型的な実施形態において、薬物は、細胞傷害剤を含む。適切な細胞傷害剤には、例えば、ドラスタチン(例えば、アウリスタチンE、AFP、MMAF、およびMMAE)、DNA副溝結合剤(例えば、エンジインおよびレキシトロプシン)、デュオカルマイシン、タキサン(例えば、パクリタキセルおよびドセタキセル)、ピューロマイシン、ビンカアルカロイド、CC−1065、SN−38、トポテカン、モルホリノ−ドキソルビシン、リゾキシン、シアノモルホリノ−ドキソルビシン、エキノマイシン、コンブレタスタチン、ネトロプシン、エポチロンA、エポチロンB、エストラムスチン、クリプトフィシン、セマドチン、マイタンシノイド、ジスコデルモリド、エレウテロビン、ミトキサントロンが含まれる。
一部の実施形態において、薬物は、AFP、MMAF、およびMMAE、AEB、AEVB、アウリスタチンE、パクリタキセル、ドセタキセル、CC−1065、SN−38、トポテカン、モルホリノ−ドキソルビシン、リゾキシン、シアノモルホリノ−ドキソルビシン、ドラスタチン10、エキノマイシン、コンブレタスタチン、カリケアマイシン、マイタンシン、DM−1、またはネトロプシンなどの細胞傷害剤である。
一部の実施形態において、薬物は、例えば、ドキソルビシン、パクリタキセル、メルファラン、ビンカアルカロイド、メトトレキサート、マイトマイシンC、またはエトポシドなど、従来の化学療法剤を含む細胞傷害剤である。一部の実施形態において、薬物は、CHOP(シクロホスファミド、ドキソルビシン、プレドニゾロン、およびビンクリスチン)、CHOP−R(シクロホスファミド、ドキソルビシン、ビンクリスチン、プレドニゾロン、およびリツキシマブ)、またはABVD(ドキソルビシン、ブレオマイシン、ビンブラスチン、およびダカルバジン)などの組合せ療法であり得る。CC−1065類似体(例えば、DC1)、カリケアマイシン、マイタンシン、ドラスタチン10の類似体、リゾキシン、およびパリトキシンなどの薬剤もまた用いることができる。
具体的な実施形態において、薬物は、アウリスタチンE(当技術分野では、ドラスタチン10としても公知)またはその誘導体を含む、細胞傷害剤または細胞増殖抑制剤であり得る。一般に、アウリスタチンE誘導体は、例えば、アウリスタチンEとケト酸との間で形成されるエステルである。例えば、アウリスタチンEは、パラアセチル安息香酸またはベンゾイル吉草酸と反応して、それぞれ、AEBおよびAEVBを生成し得る。他のアウリスタチン誘導体には、AFP、MMAF、およびMMAEが含まれる。アウリスタチンEおよびその誘導体の合成および構造は、US20030083263およびUS20050009751、ならびに米国特許第6,323,315号;同第6,239,104号;同第6,034,065号;同第5,780,588号;同第5,665,860号
;同第5,663,149号;同第5,635,483号;同第5,599,902号;同第5,554,725号;同第5,530,097号;同第5,521,284号;同第5,504,191号;同第5,410,024号;同第5,138,036号;同第5,076,973号;同第4,986,988号;同第4,978,744号;同第4,879,278号;同第4,816,444号;および同第4,486,414において説明されている。一部の好ましい実施形態では、MMAFまたはAFPが用いられる。
具体的な実施形態において、薬物は、DNA副溝結合剤を含む細胞傷害剤である。例えば、米国特許第6,130,237号を参照されたい。例えば、一部の実施形態において、該副溝結合剤は、CBI化合物である。他の実施形態において、該副溝結合剤は、エンジイン(例えば、カリケアマイシン)である。
MMP−9/MMP−2結合タンパク質−薬物コンジュゲートにおいて用い得る抗チューブリン剤の例には、タキサン(例えば、TAXOL(登録商標)(パクリタキセル)、TAXOTERE(登録商標)(ドセタキセル))、T67(Tularik)、ビンカアルカロイド(例えば、ビンクリスチン、ビンブラスチン、ビンデシン、およびビノレルビン)、およびドラスタチン(例えば、アウリスタチンE、AFP、MMAF、MMAE、AEB、AEVB)が含まれるがこれらに限定されない。他の抗チューブリン剤には、例えば、バッカチン誘導体、タキサン類似体(例えば、エポチロンAおよびB)、ノコダゾール、コルヒチン、およびコルシミド、エストラムスチン、クリプトフィシン、セマドチン、マイタンシノイド、コンブレタスタチン、ジスコデルモリド、エレウテロビン、リゾキシン/マイタンシン、アウリスチン、ドラスタチン10、MMAE、およびペロルシドAが含まれる。
一部の実施形態において、薬物は、抗チューブリン剤などの細胞傷害剤である。一部の実施形態において、該抗チューブリン剤は、アウリスタチン、ビンカアルカロイド、ポドフィロトキシン、タキサン、バッカチン誘導体、クリプトフィシン、マイタンシノイド、コンブレタスタチン、またはドラスタチンである。一部の実施形態において、該抗チューブリン剤は、AFP、MMAP、MMAE、AEB、AEVB、アウリスタチンE、ビンクリスチン、ビンブラスチン、ビンデシン、ビノレルビン、VP−16、カンプトテシン、パクリタキセル、ドセタキセル、エポチロンA、エポチロンB、ノコダゾール、コルヒチン、コルシミド、エストラムスチン、セマドチン、ジスコデルモリド、マイタンシン、DM1、DM2、DM3、DM4、およびエレウテロビンである。
一部の実施形態において、該細胞傷害剤は、抗チューブリン剤の別の群であるマイタンシノイドを含む。例えば、具体的な実施形態において、該マイタンシノイドは、マイタンシンまたはDM−1(ImmunoGen,Inc.製;また、Chariら、Cancer Res.、52巻、127〜131頁(1992年)も参照されたい)である。一部の実施形態では、硫黄原子を保有するα炭素原子が、1つまたは2つのアルキル置換基を保有する、立体障害された、チオールおよびジスルフィドを含有するマイタンシノイドが、結合タンパク質−薬物コンジュゲートにおいて用いられる(例えば、US2007−0292422;US2007−0264266)。
一部の実施形態において、薬物は、DNAを破壊するように作用する作用物質を含む。薬物は、エンジイン(例えば、カリケアマイシンおよびエスペラマイシン)およびエンジイン以外の小分子薬剤(例えば、ブレオマイシン、メチジウムプロピル−EDTA−Fe(II))から選択することができる。他の有用な薬物には、ダウノルビシン、ドキソルビシン、ジスタマイシンA、シスプラチン、マイトマイシンC、エクテイナシジン、デュオカルマイシン/CC−1065、およびブレオマイシン/ペプレオマイシンが含まれる。
他の実施形態において、薬物は、Asaley(NSC 167780)、AZQ(NSC 182986)、BCNU(NSC 409962)、ブスルファン(NSC 750)、カルボキシフタラト白金(NSC 271674)、CBDCA(NSC 241240)、CCNU(NSC 79037)、CHIP(NSC 256927)、クロラムブシル(NSC 3088)、クロロゾトシン(NSC 178248)、シス白金(NSC 119875)、クロメソン(NSC 338947)、シアノモルフォリノドキソルビシン(NSC 357704)、シクロジソン(NSC 348948)、ジアンヒドロガラクチトール(NSC 132313)、フルオロドパン(NSC 73754)、ヘプスルファム(NSC 329680)、ヒカントン(NSC 142982)、メルファラン(NSC 8806)、メチルCCNU(NSC 95441)、マイトマイシンC(NSC 26980)、ミトゾラミド(NSC 353451)、ナイトロジェンマスタード(NSC 762)、PCNU(NSC 95466)、ピペラジン(NSC 344007)、ピペラジンジオン(NSC 135758)、ピポブロマン(NSC 25154)、ポルフィロマイシン(NSC 56410)、スピロヒダントインマスタード(NSC 172112)、テロキシロン(NSC 296934)、テトラプラチン(NSC 363812)、チオ−テパ(NSC 6396)、トリエチレンメラミン(NSC 9706)、ウラシルナイトロジェンマスタード(NSC 34462)、またはYoshi−864(NSC 102627)などのアルキル化剤を含み得る。
一部の実施形態において、薬物は、アロコルヒチン(NSC 406042)、ハリコンドリンB(NSC 609395)、コルヒチン(NSC 757)、コルヒチン誘導体(NSC 33410)、ドラスタチン10(NSC 376128)(NG−アウリスタチンに由来)、マイタンシン(NSC 153858)、リゾキシン(NSC 332598)、タキソール(NSC 125973)、タキソール誘導体(NSC 608832)、チオコルヒチン(NSC 361792)、トリチルシステイン(NSC 83265)、硫酸ビンブラスチン(NSC 49842)、または硫酸ビンクリスチン(NSC 67574)などの抗有糸分裂剤を含み得る。
他の実施形態において、薬物は、カンプトテシン(NSC 94600)、カンプトテシンNa塩(NSC 100880)、アミノカンプトテシン (NSC 603071、 カンプトテシン誘導体(NSC 95382)、カンプトテシン誘導体(NSC 107124)、カンプトテシン誘導体(NSC 643833)、カンプトテシン誘導体(NSC 629971)、カンプトテシン誘導体(NSC 295500)、カンプトテシン誘導体(NSC 249910)、カンプトテシン誘導体(NSC 606985)、カンプトテシン誘導体(NSC 374028)、カンプトテシン誘導体(NSC 176323)、カンプトテシン誘導体(NSC 295501)、カンプトテシン誘導体(NSC 606172)、カンプトテシン誘導体(NSC 606173)、カンプトテシン誘導体(NSC 610458)、カンプトテシン誘導体(NSC 618939)、カンプトテシン誘導体(NSC 610457)、カンプトテシン誘導体(NSC
610459)、カンプトテシン誘導体(NSC 606499)、カンプトテシン誘導体(NSC 610456)、カンプトテシン誘導体(NSC 364830)、カンプトテシン誘導体(NSC 606497)、またはモルホリノドキソルビシン(NSC
354646)などのトポイソメラーゼI阻害剤を含み得る。
他の実施形態において、薬物は、ドキソルビシン(NSC 123127)、アモナフィド(NSC 308847)、m−AMSA(NSC 249992)、アントラピラゾール誘導体(NSC 355644)、ピラゾロアクリジン(NSC 366140)、ビサントレンHCL(NSC 337766)、ダウノルビシン(NSC 82151
)、デオキシドキソルビシン(NSC 267469)、ミトキサントロン(NSC 301739)、メノガリル(NSC 269148)、N,N−ジベンジルダウノマイシン(NSC 268242)、オキサントラゾール(NSC 349174)、ルビダゾン(NSC 164011)、VM−26(NSC 122819)、またはVP−16(NSC 141540)などのトポイソメラーゼII阻害剤を含み得る。
他の実施形態において、薬物は、L−アラノシン(NSC 153353)、5−アザシチジン(NSC 102816)、5−フルオロウラシル(NSC 19893)、アシビシン(NSC 163501)、アミノプテリン誘導体(NSC 132483)、アミノプテリン誘導体(NSC 184692)、アミノプテリン誘導体(NSC 134033)、アンチフォール(NSC 633713)、アンチフォール(NSC 623017)、Bakerの可溶性アンチフォール(NSC 139105)、ジクロロアリルローソン(NSC 126771)、ブレキナール(NSC 368390)、フトラフール(プロドラッグ)(NSC 148958)、5,6−ジヒドロ−5−アザシチジン(NSC 264880)、メトトレキサート(NSC 740)、メトトレキサート誘導体(NSC 174121)、N−(ホスホノアセチル)−L−アスパレート(PALA)(NSC 224131)、ピラゾフリン(NSC 143095)、トリメトレキサート(NSC 352122)、3−HP(NSC 95678)、2’−デオキシ−5−フルオロウリジン(NSC 27640)、5−HP(NSC 107392)、α−TGDR(NSC 71851)、アフィジコリングリシネート(NSC 303812)、アラ−C(NSC 63878)、5−アザ−2’−デオキシシチジン(NSC 127716)、β−TGDR(NSC 71261)、シクロシチジン(NSC 145668)、グアナゾール(NSC 1895)、ヒドロキシウレア(NSC 32065)、イノシングリコジアルデヒド(NSC 118994)、マクベシン11(NSC 330500)、ピラゾロイミダゾール(NSC 51143)、チオグアニン(NSC 752)、またはチオプリン(NSC 755)などのRNA代謝拮抗剤またはDNA代謝拮抗剤を含み得る。また、US2007−0292441も参照されたい。
「AFP」という略号は、ジメチルバリン−バリン−ドライソロイイン−ドラプロイン−フェニルアラニン−p−フェニレンジアミン(phenylened−iamine)を指す(例えば、US2006−0233794における化学式XVIを参照されたい)。
「MAE」という略号は、モノメチルアウリスタチンEを指す(例えば、US2006−0233794における化学式XIを参照されたい)。
「AEB」という略号は、アウリスタチンEをパラアセチル安息香酸と反応させることにより生成されるエステルを指す(例えば、US2006−0233794における化学式XXを参照されたい)。
「AEVB」という略号は、アウリスタチンEをベンゾイル吉草酸と反応させることにより生成されるエステルを指す(例えば、US2006−0233794における化学式XXIを参照されたい)。
「MMAF」という略号は、ドバリン−バリン−ドライソロイ二ン−ドラプロイン−フェニルアラニンを指す(例えば、US2006−0233794における化学式IVIVを参照されたい)。
「fk」および「phe−lys」という略号は、フェニルアラニン−リシンリンカーを指す。
「vc」および「val−cit」という略号は、バリン−シトルリンリンカーを指す。
一部の実施形態において、薬物は、アウリスタチン、DNA副溝結合剤、DNA副溝アルキル化剤、エンジイン、レキシトロプシン、デュオカルマイシン、タキサン、ピューロマイシン、ドラスタチン、マイタンシノイド、およびビンカアルカロイドからなる群から選択される細胞傷害剤である。
一部の実施形態において、薬物は、AFPまたはMMAFなどの細胞傷害剤である。
一部の実施形態において、薬物は、ガンシクロビル、エタネルセプト、シクロスポリン、タクロリムス、ラパマイシン、シクロホスファミド、アザチオプリン、ミコフェノール酸モフェチル、メトトレキサート、コルチゾール、アルドステロン、デキサメタゾン、シクロオキシゲナーゼ阻害剤、5−リポキシゲナーゼ阻害剤、またはロイコトリエン受容体アンタゴニストなどの免疫抑制剤である。
一般に、US2007−0292441;US2007−0292422;US2007−0264266;およびUS2006−0233794を参照されたい。
リンカー
本明細書に記載の結合タンパク質は、薬物へと直接に連結されることにより該薬物と会合して、結合タンパク質−薬物コンジュゲートを形成し得る。一部の実施形態において、結合タンパク質は、薬物へと直接にコンジュゲートしている。代替的に、本明細書に記載の結合タンパク質は、薬物と結合タンパク質との間のリンカー領域を用いることにより該薬物と会合して、結合タンパク質−薬物コンジュゲートを形成し得る。一部の実施形態において、結合タンパク質は、リンカーを介して薬物とコンジュゲートしている。リンカーは、例えば、細胞内環境において、リンカーの切断により、薬物が結合タンパク質から放出されるように、細胞内環境下において切断可能であり得る。一部の実施形態において、該切断可能なリンカーは、細胞内プロテアーゼにより切断可能なペプチドリンカーである。一部の実施形態において、該ペプチドリンカーは、ジペプチドリンカーである。
一部の実施形態において、該ジペプチドリンカーは、val−cit(vc)リンカーまたはphe−lys(fk)リンカーである。一部の実施形態において、該切断可能なリンカーは、5.5未満のpHで加水分解可能である。一部の実施形態において、該加水分解可能なリンカーは、ヒドラゾンリンカーである。一部の実施形態において、該切断可能なリンカーは、ジスルフィドリンカーである。
例えば、一部の実施形態において、リンカーは、細胞内環境(例えば、リソソームまたはエンドソームまたは小胞(caveolea)内)において存在する切断剤により切断可能である。該リンカーは、例えば、リソソームのプロテアーゼまたはエンドソームのプロテアーゼが含まれるがこれらに限定されない細胞内のペプチダーゼまたはプロテアーゼ酵素により切断されるペプチジルリンカーであり得る。一部の実施形態において、該ペプチジルリンカーは、少なくとも2アミノ酸の長さまたは3アミノ酸の長さである。切断剤には、カテプシンBおよびDならびにプラスミンが含まれ得るが、これらは、ジペプチドの薬物誘導体を加水分解し、その結果、標的細胞内部において活性薬物を放出させることが公知である(例えば、DubowchikおよびWalker Pharm. Therapeutics、83巻、67〜123頁(1999年)を参照されたい)。一部の実施形態において、ペプチジルリンカーは、標的細胞(例えば、癌細胞)内に存在する酵素により切断可能である。例えば、癌性組織内において高度に発現する、チオール依存性
プロテアーゼであるカテプシンBにより切断可能なペプチジルリンカー(例えば、Phe−LeuリンカーまたはGly−Phe−Leu−Glyリンカー(配列番号1277))を用いることができる。他のこのようなリンカーは、例えば、米国特許第6,214,345号において説明されている。一部の実施形態において、細胞内プロテアーゼにより切断可能なペプチジルリンカーは、Val−Cit(vc)リンカーまたはPhe−Lys(fk)リンカーである(例えば、val−citリンカーによるドキソルビシンの合成について説明する米国特許第6,214,345号を参照されたい)。細胞内におけるタンパク質分解による薬物の放出を用いることの1つの利点は、コンジュゲートさせると薬物を緩和する(attenuate)ことができ、該コンジュゲートの血清中における安定性が典型的に高まることである。
一部の好ましい実施形態において、本明細書に記載の結合タンパク質−薬物コンジュゲートでは、vcリンカーが用いられる。例えば、結合タンパク質−vcAFPコンジュゲートまたは結合タンパク質−vcMMAFコンジュゲート(例えば、MMP−9/MMP−2結合タンパク質−vcAFPコンジュゲートまたはMMP−9/MMP−2結合タンパク質−vcMMAFコンジュゲート)が調製される。
他の実施形態において、該切断可能なリンカーは、pH感受性である、すなわち、特定のpH値において加水分解に感受性である。例えば、該pH感受性リンカーは、酸性条件下において加水分解可能である。例えば、リソソーム内において加水分解可能である、酸に不安定なリンカー(例えば、ヒドラゾン、セミカルバゾン、チオセミカルバゾン、cis−アコニチン酸アミド、オルトエステル、アセタール、ケタールなど)を用いることができる。例えば、米国特許第5,122,368号;同第5,824,805号;同第5,622,929号;DubowchikおよびWalker Pharm. Therapeutics、83巻、67〜123頁(1999年);Nevilleら、Biol. Chem.、264巻、14653〜14661頁(1989年)を参照されたい。このようなリンカーは、血中における場合など、中性のpH条件下では比較的安定であるが、リソソームのおおよそのpHであるpH5.5または5.0未満では不安定である。特定の実施形態において、該加水分解可能なリンカーは、チオエーテルリンカー(例えば、アシルヒドラゾン結合を介して治療剤に結合したチオエーテル(例えば、米国特許第5,622,929号を参照されたい)など)である。
さらに他の実施形態において、リンカーは、還元性条件下において切断可能なである(例えば、ジスルフィドリンカー)。例えば、SATA(N−スクシンイミジル−S−アセチルチオアセテート)、SPDP(N−スクシンイミジル−3−(2−ピリジルジチオ)プロピオネート)、SPDB(N−スクシンイミジル−3−(2−ピリジルジチオ)ブチレート)、ならびにSMPT(N−スクシンイミジル−オキシカルボニル−α−メチル−α−(2−ピリジルジチオ)トルエン)、SPDBおよびSMPTを用いて形成し得るリンカーなどを含めた各種のジスルフィドリンカーが、当技術分野では公知である(例えば、Thorpeら、Cancer Res.、47巻、5924〜5931頁(1987年); Wawrzynczakら、「Immunoconjugates: Antibody Conjugates in Radioimagery and Therapy of Cancer」(C. W. Vogel編、Oxford U. Press、1987年)を参照されたい。また、米国特許第4,880,935号も参照されたい)。
さらに他の実施形態において、リンカーは、マロン酸リンカー(Johnsonら、Anticancer Res.、15巻、1387〜93頁(1995年))、マレイミドベンゾイルリンカー(Lauら、Bioorg−Med−Chem.、3巻、10号、1299〜1304頁(1995年))、または3’−N−アミド類似体(Lauら、B
ioorg−Med−Chem.、3巻、10号、1305〜12頁(1995年))である。
一部の実施形態において、リンカーは、細胞外環境に対して実質的に感受性でない。リンカーとの関連で本明細書において用いられる「細胞外環境に対して実質的に感受性でない」とは、結合タンパク質−薬物コンジュゲートが細胞外環境(例えば、血漿中)において存在する場合に、該結合タンパク質−薬物コンジュゲートの試料中において切断されるリンカーが約20%以下、典型的には約15%以下、より典型的には約10%以下、またさらにより典型的には約5%以下、約3%以下、または約1%以下であることを意味する。リンカーが細胞外環境に対して実質的に感受性でないかどうかは、例えば、(a)結合タンパク質−薬物コンジュゲート(「コンジュゲート試料」)、および(b)等モル量のコンジュゲートしていない結合タンパク質または薬物(「対照試料」)の両方を、所定の期間(例えば、2、4、8、16、または24時間)にわたり、血漿と共に個別にインキュベートし、次いで、例えば、高性能液体クロマトグラフィーにより測定された、該コンジュゲート試料中に存在する、コンジュゲートしていない結合タンパク質または薬物の量を、対照試料中に存在する該量と比較することにより決定することができる。
他の相互に除外的ではない実施形態において、リンカーは、細胞の内部化を促進する。特定の実施形態において、リンカーは、薬物にコンジュゲートすると(すなわち、本明細書に記載の結合タンパク質−薬物コンジュゲートのリンカー−薬物部分の環境において)細胞の内部化を促進する。さらに他の実施形態において、リンカーは、薬物および結合タンパク質の両方にコンジュゲートすると、細胞の内部化を促進する。
WO2004010957では、本組成物および本方法と共に用い得る各種のリンカーが説明されている。
一部の実施形態において、本明細書に記載の結合タンパク質−薬物コンジュゲートは、障害(例えば、癌または炎症)の処置において治療的に用いられる。特定の実施形態では、例えば、毒性を最小化するため、結合タンパク質が結合する標的を発現する細胞だけを結合タンパク質−薬物コンジュゲートの標的とする(例えば、MMP−9/MMP−2結合タンパク質が結合する、MMP−9またはMMP−2を発現する細胞だけを標的とし、近傍の「バイスタンダー」細胞は標的としない)ことが望ましい。他の実施形態では、結合タンパク質が結合する標的を発現する細胞、およびバイスタンダー細胞もまた、結合タンパク質−薬物コンジュゲートの標的とする(例えば、「バイスタンダー効果」を誘発する)ことが望ましい。一部の実施形態では、例えば、チオールエーテルが連結されたコンジュゲートを調製することにより、近傍の抗原陰性組織を損傷することなく、抗原提示細胞だけを正確に死滅させるように、結合タンパク質−薬物コンジュゲート(例えば、MMP−9結合タンパク質−薬物コンジュゲート)を操作することができる。代替的に、例えば、ジスルフィド結合したコンジュゲートを調製することにより該コンジュゲートを操作して、バイスタンダード効果をもたらすことができる。
例えば、多くの充実性腫瘍は、不均一な形で標的(例えば、抗原)を発現し、これらには、標的陽性細胞および標的陰性細胞が共に密集する。ジスルフィドリンカーを含有するコンジュゲートと関連する、バイスタンダー細胞傷害作用により、障害(例えば、腫瘍)部位が不均一な標的発現を示す場合であっても、結合タンパク質−薬物コンジュゲートにより該障害部位を治療することの正当性がもたらされる。バイスタンダー効果により、ある程度の非選択的な殺滅活性が付加される。潜在的に、障害(例えば、腫瘍)部位を取り囲む組織内における正常細胞が影響を受ける場合、これは、欠点となり得る。しかし、潜在的な利点として、バイスタンダー細胞傷害作用により、腫瘍新生血管の内皮細胞および周皮細胞、または腫瘍間質細胞など、該障害の維持に複雑に関与する組織を損傷し、例え
ば、均一または不均一に抗原を発現する腫瘍に対する結合タンパク質−薬物コンジュゲートの抗腫瘍活性を結果として増強することができる。また、Kovtumら、Cancer Res.、66巻、3214頁(2006年)も参照されたい。
治療剤をタンパク質(結合タンパク質、例えば、MMP−9/MMP−2結合タンパク質など)にコンジュゲートさせる技法は公知である。例えば、Arnonら、「Monoclonal Antibodies For Immunotargeting Of
Drugs In Cancer Therapy」、「Monoclonal Antibodies And Cancer Therapy」(Reisfeldら編、Alan R. Liss, Inc.、1985年);Hellstromら、「Antibodies For Drug Delivery」、「Controlled Drug Delivery」(Robinsonら編、Marcel Deiker,
Inc.、第2版、1987年);Thorpe、「Antibody Carriers Of Cytotoxic Agents In Cancer Therapy: A Review」、「Monoclonal Antibodies ’84: Biological And Clinical Applications」(Pincheraら編、1985年);「Analysis, Results, and Future Prospective of the Therapeutic Use of Radiolabeled Antibody In Cancer Therapy」、「Monoclonal Antibodies For Cancer Detection And Therapy」(Baldwinら編、Academic Press、1985年);およびThorpeら、Immunol. Rev.、62巻、119〜58頁(1982年)を参照されたい。また、例えば、US2006−0233794およびPCT特許公開WO89/12624も参照されたい。
ディスプレイライブラリー
ディスプレイライブラリーとは、実体のコレクションであり、各実体は、利用可能なポリペプチド成分と、該ポリペプチド成分をコードまたは同定する回収可能な成分とを包含する。異なるアミノ酸配列が提示されるようにポリペプチド成分を変化させる。ポリペプチド成分は、任意の長さ、例えば、3アミノ酸〜300アミノ酸超であり得る。ディスプレイライブラリーの実体は、複数のポリペプチド成分、例えば、sFabの2本のポリペプチド鎖を包含し得る。例示的な一実施では、ディスプレイライブラリーを用いて、MMP−9に結合するタンパク質を同定することができる。選択においては、MMP−9(例えば、MMP−9の触媒ドメインまたは他のフラグメント)によりライブラリーの各メンバーのポリペプチド成分をプローブし、該ポリペプチド成分がMMP−9に結合する場合、典型的には支持体上において保持することにより、該ディスプレイライブラリーメンバーを同定する。
保持されたディスプレイライブラリーメンバーを支持体から回収し解析する。解析は、増幅、および類似する条件下または類似しない条件下における後続の選択を包含し得る。例えば、陽性選択と陰性選択とを交互に行うことができる。解析はまた、ポリペプチド成分のアミノ酸配列の決定、および詳細な特徴づけのための該ポリペプチド成分の精製も包含し得る。
保持されたファミリーメンバーを後続の解析にかけ、MMP−2にも結合する結合タンパク質を回収する。
ディスプレイライブラリーには、各種のフォーマットを用いることができる。例には以下が含まれる。
ファージディスプレイ:タンパク質成分は、バクテリオファージの被覆タンパク質に共有結合により連結することが典型的である。連結は、該被覆タンパク質に融合したタンパク質成分をコードする核酸の翻訳から生じる。連結は、可撓性のペプチドリンカー、プロテアーゼ部位、または終止コドンの抑制の結果として組み込まれるアミノ酸を包含し得る。ファージディスプレイは、例えば、U.S.5,223,409;Smith(1985)、Science、228巻、1315〜1317頁;WO92/18619;WO91/17271;WO92/20791;WO92/15679;WO93/01288;WO92/01047;WO92/09690;WO90/02809;de Haardら(1999年)、J.Biol. Chem、274巻、18218〜30頁;Hoogenboomら(1998年)、Immunotechnology、4巻、1〜20頁;Hoogenboomら(2000年)、Immunol Today、2巻、371〜8頁;およびHoetら(2005年)、Nat Biotechnol.、23巻、3号、344〜8頁において説明されている。標準的なファージ調製方法、例えば、増殖培地からのPEGによる沈殿を用いて、タンパク質成分を提示するバクテリオファージを増殖させて回収することができる。個々のディスプレイファージの選択後、選択されたファージを感染させた細胞から、または増幅後のファージそれ自体から、選択されたタンパク質成分をコードする核酸を単離することができる。個々のコロニーまたはプラークを採取し、核酸を単離して配列決定することができる。
他のディスプレイフォーマット。他のディスプレイフォーマットには、細胞ベースのディスプレイ(例えば、WO03/029456を参照されたい)、タンパク質−核酸融合体(例えば、US6,207,446を参照されたい)、リボソームディスプレイ(例えば、Mattheakisら(1994年)、Proc. Natl. Acad. Sci. USA、91巻、9022頁;およびHanesら(2000年)、Nat Biotechnol.、18巻、1287〜92頁;Hanesら(2000年)、Methods Enzymol.、328巻、404〜30頁;およびSchaffitzelら(1999年)、J Immunol Methods.、231巻、1〜2号、119〜35頁を参照されたい)、およびE.coliペリプラズムディスプレイ(例えば、J Immunol Methods.、2005年11月22日、PMID、16337958頁を参照されたい)が含まれる。
足場:ディスプレイに有用な足場には、抗体(例えば、Fabフラグメント、単鎖Fv分子(scFv)、単一ドメイン抗体、ラクダ科動物抗体、およびラクダ科動物化抗体);T細胞受容体;MHCタンパク質;細胞外ドメイン(例えば、フィブロネクチンIII型反復、EGF反復);プロテアーゼ阻害剤(例えば、クニッツドメイン、エコチン、BPTIなど);TPR反復;トリフォイル構造;亜鉛フィンガードメイン;DNA結合タンパク質;特に、単量体のDNA結合タンパク質;RNA結合タンパク質;酵素、例えば、プロテアーゼ(特に、不活化プロテアーゼ);RNアーゼ;シャペロン、例えば、チオレドキシンおよび熱ショックタンパク質;細胞内シグナル伝達ドメイン(SH2ドメインおよびSH3ドメインなど);直鎖ペプチドおよび拘束ペプチド;ならびに直鎖ペプチドの基質が含まれる。ディスプレイライブラリーは、合成および/または天然の多様性を包含し得る。例えば、US2004−0005709を参照されたい。
ディスプレイ技術はまた、標的の特定のエピトープに結合する結合タンパク質(例えば、抗体)を得るのにも用いることができる。これは、例えば、特定のエピトープを欠くか、または該エピトープ内において、例えば、アラニンを伴い突然変異する、競合的な非標的分子を用いることにより行うことができる。以下で説明される陰性選択手順では、このような非標的分子を、ディスプレイライブラリーを該標的に結合させる場合の競合分子として用いることもでき、例えば、該標的に対して特異的でないディスプレイライブラリーメンバーを、これを解離させる洗浄液中において捕捉するための前溶出剤として用いるこ
ともできる。
逐次選択。好ましい一実施形態では、ディスプレイライブラリー技術が、逐次方式で用いられる。第1のディスプレイライブラリーを用いて、標的に対する1つまたは複数の結合タンパク質を同定する。次いで、変異誘発法を用いて、これらの同定された結合タンパク質を変化させ、第2のディスプレイライブラリーを形成する。次いで、例えば、より高度の厳密性条件、またはより競合的な結合条件および洗浄条件を用いることにより、該第2のライブラリーからより親和性の高い結合タンパク質を選択する。
一部の実施では、結合界面にある領域が、変異誘発の標的とされる。例えば、同定される結合タンパク質が抗体である場合、変異誘発は、本明細書に記載の重鎖または軽鎖のCDR領域を指向し得る。さらに、変異誘発は、該CDRの近傍であるかまたはこれに隣接するフレームワーク領域を指向することもできる。抗体の場合、変異誘発はまた、例えば、CDRのうちの1つまたはいくつかに限定して、正確に段階改善がなされるようにすることもできる。例示的な変異誘発技法には、誤りがちのPCR、組換え、DNAシャッフリング、部位特異的変異誘発、およびカセット型変異誘発が含まれる。
逐次選択の一例では、本明細書に記載の方法を用いて、標的に対する少なくとも最小限の結合特異性または最小限の活性、例えば、1nM、10nM、または100nM未満の、結合に対する平衡解離定数によりMMP−9に結合する、ディスプレイライブラリー由来のタンパク質をまず同定する。最初に同定されたタンパク質をコードする核酸配列を、変化を導入するための鋳型核酸として用いて、例えば、最初のタンパク質と比べて特性(例えば、結合親和性、動態、または安定性)が増強された第2のタンパク質を同定する。該方法はまた、標的に対する少なくとも最小限の結合特異性または最小限の活性、例えば、1nM、10nM、または100nM未満の、結合に対する平衡解離定数によりMMP−2に結合する、ディスプレイライブラリー由来のタンパク質を同定する工程も包含する。
オフ速度選択。特に、ポリペプチドとそれらの標的との相互作用に関わる高親和性には緩徐な解離速度を予測し得るので、本明細書に記載の方法を用いて、標的に対する結合相互作用に望ましい(例えば、低速の)解離反応速度を有する結合タンパク質を単離することができる。
ディスプレイライブラリー由来の、解離が緩徐な結合タンパク質を選択するために、該ライブラリーを固定化標的へと接触させる。次いで、固定化標的を、非特異的にまたは弱く結合した生体分子を除去する第1の溶液により洗浄する。次いで、結合した結合タンパク質を、飽和量の遊離標的、すなわち、粒子に結合していない標的の複製物、または標的特異的な高親和性の競合モノクローナル抗体を包含する第2の溶液により溶出させる。遊離標的は、標的から解離する生体分子に結合する。はるかに低濃度の固定化標的と比べて飽和量の遊離標的により、再結合が有効に防止される。
第2の溶液は、実質的に生理学的であるかまたは厳密な溶液条件を有し得る。第2の溶液の溶液条件は、第1の溶液の溶液条件と同一であることが典型的である。時間的な順序により第2の溶液の画分を回収し、後期の画分から早期の画分を区別する。後期の画分は、早期の画分中における生体分子より緩徐な速度で標的から解離する生体分子を包含する。
さらに、長時間にわたるインキュベーション後においても標的に対する結合を維持するディスプレイライブラリーメンバーを回収することも可能である。これらは、カオトロピック条件を用いて解離させることもでき、標的に結合させながら増幅することもできる。
例えば、標的に結合したファージを細菌細胞に接触させることができる。
特異性についての選択またはスクリーニング。本明細書に記載のディスプレイライブラリーによるスクリーニング方法は、非標的分子に結合するディスプレイライブラリーメンバーを廃棄する、選択またはスクリーニングの過程を包含し得る。非標的分子の例には、磁気ビーズ上におけるストレプトアビジン、ウシ血清アルブミンなどのブロッキング剤、脱脂牛乳、任意の捕捉用モノクローナル抗体もしくは標的固定化用モノクローナル抗体、またはヒトMMP−9標的を発現しない非トランスフェクション細胞が含まれる。
一実施では、いわゆる「陰性選択」の工程を用いて、標的と、類縁の非標的分子および類縁ではあるが異なる非標的分子とを区別する。ディスプレイライブラリーまたはそのプールを該非標的分子に接触させる。非標的に結合しない試料メンバーは回収され、標的分子に対する結合についての後続の選択において、またはさらに後続の陰性選択に用いられる。陰性選択の工程は、標的分子に結合するライブラリーメンバーを選択する前に行うこともでき、これを選択した後で行うこともできる。
別の実施では、スクリーニングの工程が用いられる。標的分子に対する結合についてディスプレイライブラリーメンバーを単離した後で、単離された各ライブラリーメンバーを、それが非標的分子(例えば、上記で列挙された非標的)に結合する能力について調べる。例えば、ハイスループットのELISAスクリーンを用いて、このデータを得ることができる。該ELISAスクリーンはまた、標的に対する各ライブラリーメンバーの結合についての定量的データほか、類縁の標的または該標的のサブユニット(例えば、マウスMMP−9)に対する分子種の交差反応性についての定量的データ、また、pH6またはpH7.5など、異なる条件下における定量的データを得るのにも用いることができる。非標的および標的の結合データを比較して(例えば、コンピュータおよびソフトウェアを用いて)、標的に特異的に結合するライブラリーメンバーを同定する。
他の例示的な発現ライブラリー
例えば、抗体タンパク質アレイ(例えば、De Wildtら(2000年)、Nat. Biotechnol.、18巻、989〜994頁を参照されたい)、λgt11ライブラリー、二重ハイブリッドライブラリーなどを含めた、他の種類のタンパク質コレクション(例えば、発現ライブラリー)を用いて、特定の特性(例えば、MMP−9もしくはMMP−2に結合する能力、および/またはMMP−9もしくはMMP−2を調節する能力)を有するタンパク質を同定することができる。
例示的なライブラリー
非ヒト霊長動物を免疫し、ファージ上に提示され得る霊長動物の抗体遺伝子を回収することができる(下記を参照されたい)。このようなライブラリーからは、免疫で用いられる抗原に結合する抗体を選択することができる。例えば、Vaccine.(2003年)、22巻、2号、257〜67頁;またはImmunogenetics.(2005年)、57巻、10号、730〜8頁を参照されたい。したがって、チンパンジーまたはマカクザルを免疫し、MMP−9(またはMMP−2)に結合してこれを阻害する霊長動物抗体について選択またはスクリーニングする各種の手段を用いることによれば、MMP−9(またはMMP−2)に結合してこれを阻害する霊長動物抗体を得ることができるであろう。ヒト定常領域を有する、霊長動物化されたFabのキメラ体を作製することもできる(Curr Opin Mol Ther.(2004年)、6巻、6号、675〜83頁を参照されたい)。カニクイザル成分およびヒト成分から遺伝子操作された「霊長動物化抗体」は、構造的にヒト抗体と区別されない。したがって、これらは、ヒトにおいて有害作用を引き起こす可能性がより低く、これらを長期にわたる慢性治療に潜在的に適するものとしている(Curr Opin Investig Drugs.(2001
年)、2巻、5号、635〜8頁)。
ライブラリーの例示的な1つの種類は、その各々が免疫グロブリンドメイン、例えば、免疫グロブリン可変ドメインを包含するポリペプチドの多様なプールを提示する。ライブラリーのメンバーが、霊長動物もしくは「霊長動物化」(例えば、ヒト、非ヒト霊長動物、または「ヒト化」)免疫グロブリンドメイン(例えば、免疫グロブリン可変ドメイン)、またはヒト定常領域を伴うキメラ霊長動物化Fabを包含するディスプレイライブラリーが重要である。ヒト免疫グロブリンドメインまたはヒト化免疫グロブリンドメインのライブラリーを用いて、例えば、ヒト抗原を認識するヒト抗体または「ヒト化」抗体を同定することができる。抗体の定常領域およびフレームワーク領域がヒト由来であるため、これらの抗体は、ヒトに投与された場合に、自らが抗原として認識されて標的とされることを回避し得る。定常領域はまた、ヒト免疫系のエフェクター機能を動員するように最適化することもできる。インビトロにおけるディスプレイによる選択過程は、正常なヒト免疫系による自己抗原に対する抗体生成能の欠如を克服する。
典型的な抗体ディスプレイライブラリーにより、VHドメインおよびVLドメインを包含するポリペプチドが提示される。「免疫グロブリンドメイン」とは、免疫グロブリン分子の可変ドメインまたは定常ドメインに由来するドメインを指す。免疫グロブリンドメインは、約7本のβ鎖、および保存的ジスルフィド結合から形成される2枚のβシートを含有することが典型的である(例えば、A. F. WilliamsおよびA. N. Barclay、1988年、Ann. Rev. Immunol.、6巻、381〜405頁を参照されたい)。ディスプレイライブラリーにより、Fabフラグメント(例えば、2本のポリペプチド鎖を用いる)または単鎖Fv(例えば、単鎖ポリペプチドを用いる)としての抗体を提示することができる。他のフォーマットもまた用いることができる。
Fabフォーマットおよび他のフォーマットの場合における提示抗体は、軽鎖および/または重鎖の一部としての、1つまたは複数の定常領域を包含し得る。一実施形態において、例えば、Fabの場合における各鎖は、1つの定常領域を包含する。他の実施形態では、さらなる定常領域が提示される。
抗体ライブラリーは、多くの過程により構築することができる(例えば、de Haardら(1999年)、J. Biol. Chem、274巻、18218〜30頁;Hoogenboomら(1998年)、Immunotechnology、4巻、1〜20頁;Hoogenboomら(2000年)、Immunol Today、2巻、371〜8頁;およびHoetら(2005年)、Nat Biotechnol.、23巻、3号、344〜8頁を参照されたい)。さらに、各過程の要素を、他の過程の要素と組み合わせることもできる。単一の免疫グロブリンドメイン(例えば、VHまたはVL)内または複数の免疫グロブリンドメイン(例えば、VHおよびVL)内に変化を導入するように該過程を用いることができる。免疫グロブリン可変ドメイン内に、例えば、重鎖可変ドメインおよび軽鎖可変ドメインの一方および両方の以下のような領域を指す、CDR1、CDR2、CDR3、FR1、FR2、FR3、およびFR4のうちの1つまたは複数の領域内に変化を導入することができる。(1つまたは複数の)変化は、所与の可変ドメインの3つのCDR全てに導入することができるか、または例えば、重鎖可変ドメインのCDR1およびCDR2に導入することもできる。任意の組合せが実施可能である。一過程では、CDRをコードする多様なオリゴヌクレオチドを対応する核酸領域に挿入することにより、抗体ライブラリーを構築する。該オリゴヌクレオチドは、単量体ヌクレオチドまたはトリヌクレオチドを用いて合成することができる。例えば、Knappikら、2000年、J. Mol. Biol.、296巻、57〜86頁は、トリヌクレオチド合成と、制限部位を操作してオリゴヌクレオチドを受容する鋳型とを用いて、CD
Rをコードするオリゴヌクレオチドを構築する方法について説明している。
別の過程では、動物、例えば、げっ歯動物を、MMP−9(またはMMP−2)により免疫する。場合によっては、該動物に抗原を追加免疫して、反応をさらに刺激する。次いで、該動物から脾臓細胞を単離し、VHドメインおよび/またはVLドメインをコードする核酸を増幅およびクローニングし、ディスプレイライブラリー内において発現させる。
さらに別の過程では、ナイーブ生殖細胞系列の免疫グロブリン遺伝子から増幅された核酸により、抗体ライブラリーを構築する。増幅された核酸は、VHドメインおよび/またはVLドメインをコードする核酸を包含する。免疫グロブリンをコードする核酸の供給源については、以下で説明する。増幅には、例えば、保存的定常領域にアニーリングするプライマーによるPCR、または別の増幅方法が含まれてよい。
免疫グロブリンドメインをコードする核酸は、例えば、霊長動物(例えば、ヒト)、マウス、ウサギ、ラクダ、またはげっ歯動物の免疫細胞から得ることができる。一例において、細胞は、特定の特性について選択される。種々の成熟段階にあるB細胞を選択することができる。別の例において、B細胞はナイーブである。
一実施形態では、蛍光活性化細胞選別(FACS)を用いて、表面に結合するIgM、IgD、またはIgG分子を発現するB細胞を選別する。さらに、IgGの異なるアイソタイプを発現するB細胞を単離することができる。別の好ましい実施形態では、B細胞またはT細胞をインビトロで培養する。フィーダー細胞と共に培養することにより、またはCD40、CD40リガンド、またはCD20に対する抗体、酢酸ミリスチン酸ホルボール、細菌のリポ多糖、コンカナバリンA、フィトヘマグルチニン、またはヤマゴボウマイトジェンなどの、マイトジェンまたは他の調節試薬を添加することにより、インビトロにおいて細胞を刺激することができる。
別の実施形態において、細胞は、本明細書に記載の疾患状態、例えば、癌(例えば、転移性癌、例えば、転移性乳癌)、炎症性疾患(例えば、滑膜炎、アテローム性動脈硬化)、関節リウマチ、骨関節炎、眼疾患(例えば、黄斑変性)、糖尿病、アルツハイマー病、脳虚血、子宮内膜症、フィブリン浸潤活性、新脈管形成、または毛細管形成を有する対象から単離される。別の実施形態において、細胞は、ヒト免疫グロブリン遺伝子座を含むトランスジェニック非ヒト動物から単離される。
好ましい一実施形態において、細胞は、体細胞超変異プログラムを活性化している。例えば、抗免疫グロブリン抗体、抗CD40抗体、および抗CD38抗体を用いる処理により細胞を刺激して、免疫グロブリン遺伝子の体細胞変異誘発にかけることができる(例えば、Bergthorsdottirら、2001年、J. Immunol.、166巻、2228頁を参照されたい)。別の実施形態において、細胞はナイーブである。
免疫グロブリン可変ドメインをコードする核酸は、以下の例示的な方法により、天然のレパートリーから単離することができる。まず、免疫細胞からRNAを単離する。全長(すなわち、キャップ化)mRNAを分離する(例えば、ウシ腸ホスファターゼにより脱キャップ化RNAを分解することにより)。次いで、タバコの酸ピロホスファターゼによりキャップを除去し、逆転写を用いてcDNAを作製する。
第1(アンチセンス)鎖の逆転写は、任意の適切なプライマーにより、任意の形で行うことができる。例えば、de Haardら(1999年)、J. Biol. Chem、274巻、18218〜30頁を参照されたい。例えば、免疫グロブリンの異なるアイソタイプを逆転写するために、プライマーの結合領域を異なる免疫グロブリン間で一定
とする場合がある。プライマー結合領域はまた、免疫グロブリンの特定のアイソタイプに特異的な場合もある。プライマーは、少なくとも1つのCDRをコードする配列に対して3’側の領域に特異的な場合が典型的である。別の実施形態では、ポリdTプライマーを用いることができる(また、これが重鎖遺伝子に好ましい場合がある)。
逆転写鎖の3’端に合成配列をライゲーションすることができる。合成配列は、逆転写後のPCR増幅の間において順方向プライマーが結合するためのプライマー結合部位として用いることができる。合成配列を用いることにより、得られる多様性を完全に捕捉する、異なる順方向プライマーのプールを用いる必要を取り除くことができる。
次いで、例えば、1つまたは複数のラウンドを用いて、可変ドメインをコードする遺伝子を増幅する。複数のラウンドを用いる場合、ネステッドプライマーを用いて忠実度を上昇させることができる。次いで、増幅された核酸を、ディスプレイライブラリーベクターにクローニングする。
二次スクリーニング法
標的に結合する候補ライブラリーメンバーを選択した後では、例えば、標的、例えば、MMP−9に対するその結合特性をさらに特徴づけるように各候補ライブラリーメンバーをさらに解析することもでき、他のタンパク質、例えば、MMP−2に対する結合について各候補ライブラリーメンバーをさらに解析することもできる。各候補ライブラリーメンバーは、1つまたは複数の二次スクリーニングアッセイにかけることができる。該アッセイは、結合特性、触媒特性、阻害特性、生理学的特性(例えば、細胞傷害作用、腎クリアランス、免疫原性)、構造的特性(例えば、安定性、高次構造、オリゴマー化状態)、または別の機能的特性についてのものであり得る。同じアッセイを繰り返し、しかし条件を変化させて用いて、例えば、pH感受性、イオン感受性、または熱感受性を決定することができる。
適切な場合、アッセイは、ディスプレイライブラリーメンバーを直接に用いることもでき、選択されたポリペプチドをコードする核酸から作製された組換えポリペプチドを用いることもでき、選択されたポリペプチドの配列に基づき合成された合成ペプチドを用いることもできる。Fabを選択した場合、該Fabを評価することもでき、改変して完全なIgGタンパク質として作製することもできる。結合特性についての例示的なアッセイには、以下が含まれる。
ELISA。結合タンパク質は、ELISAアッセイを用いて評価することができる。例えば、その底面に標的、例えば、限定量の標的をコーティングしたマイクロ滴定プレートに各タンパク質を接触させる。緩衝液により該プレートを洗浄して、非特異的に結合したポリペプチドを除去する。次いで、結合タンパク質(例えば、タグまたは結合タンパク質の定常部分)を認識し得る抗体を用いてプレートをプロービングすることにより、プレート上の標的に結合した結合タンパク質の量を決定する。抗体は、検出系(例えば、適切な基質が供給されると比色生成物を生成する、アルカリホスファターゼまたは西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRP)などの酵素)に連結される。
ホモジニアス結合アッセイ。本明細書に記載の結合タンパク質が標的に結合する能力は、ホモジニアスアッセイ、すなわち、アッセイの全ての成分を添加した後ではさらなる流体操作が不要なアッセイを用いて解析することができる。例えば、ホモジニアスアッセイとして、蛍光共鳴エネルギー移動(FRET)を用いることができる(例えば、Lakowiczら、米国特許第5,631,169号;Stavrianopoulosら、米国特許第4,868,103号を参照されたい)。第1の分子(例えば、画分中において同定された分子)上におけるフルオロフォア標識は、第2の分子(例えば、標的)が該第
1の分子の近傍にある場合、それが放出する蛍光エネルギーが、該第2の分子上における蛍光標識により吸収され得るように選択される。第2の分子上における蛍光標識は、移動したエネルギーをそれが吸収するときに蛍光を発する。標識間におけるエネルギー移動の効率は、該分子を隔てる距離に関係するので、該分子間における空間的な関係を評価することができる。分子間の結合が生じる状況において、アッセイにおける「受容体」分子標識の蛍光発光が最大になるものとする。FRETによりモニタリングされるように構成される結合イベントは、標準的な蛍光測定検出手段により、例えば、蛍光測定器を用いて測定することが好都合であり得る。第1または第2の結合分子の量を滴定することにより、結合曲線を作製し、平衡結合定数を推定することができる。
ホモジニアスアッセイの別の例は、ALPHASCREEN(商標)(コネチカット州、メリデン、Packard Bioscience製)である。ALPHASCREEN(商標)では、2つの標識ビーズが用いられる。レーザーにより励起されると、1つのビーズにより一重項酸素が生成される。一重項酸素が第1のビーズから拡散して他のビーズに衝突すると、これにより光のシグナルが発生する。2つのビーズが近接する場合に限り、該シグナルが発生する。1つのビーズをディスプレイライブラリーメンバーへと結合させ、他のビーズを標的へと結合させる。シグナルを測定して、結合量を決定する。
表面プラズモン共鳴(SPR)。結合タンパク質と標的との相互作用は、SPRを用いて解析することができる。SPRまたは生体分子相互作用解析(BIA)により、相互作用体のいずれに標識することもなく、リアルタイムで生体特異的な相互作用が検出される。BIAチップの結合表面における質量が変化(結合イベントを示す)すると、表面近傍における光の屈折率が結果として変化する(表面プラズモン共鳴(SPR)の光学現象)。屈折度の変化により検出可能なシグナルが発生し、これが、生物学的分子間におけるリアルタイムの反応の指標として測定される。SPRを用いる方法は、例えば、米国特許第5,641,640号;Raether、1988年、「Surface Plasmons」、Springer Verlag;SjolanderおよびUrbaniczky、1991年、Anal. Chem.、63巻、2338〜2345頁;Szaboら、1995年、Curr. Opin. Struct. Biol.、5巻、699〜705頁;ならびにBIAcore International AB社(スウェーデン、ウプサラ)により提供されるオンライン情報源において説明されている。BIAcore Flexchipを用いると、標識を用いることなく、動態、親和性、または特異性に関し、リアルタイムで相互作用を比較してランクづけすることができる。
SPRからの情報を用いると、標的に対する結合タンパク質の結合について、平衡解離定数(K)、ならびにKonおよびKoffを含めた速度論パラメータの正確で定量的な測定値を提供することができる。このようなデータを用いて、異なる生体分子を比較することができる。例えば、発現ライブラリーから選択されたタンパク質を比較して、標的に対する親和性が高いタンパク質、またはKoffが緩徐なタンパク質を同定することができる。この情報はまた、構造−活性関係(SAR)を導出するのにも用いることができる。例えば、親タンパク質の成熟変化形についての速度論パラメータおよび平衡結合パラメータを、該親タンパク質のパラメータと比較することができる。特定の結合パラメータ、例えば、高親和性および緩徐なKoffと相関する、所与の位置における変異体アミノ酸を同定することができる。この情報を、構造モデリング(例えば、相同性モデリング、エネルギーの最小化、またはx線結晶構造解析もしくはNMRによる構造決定)と組み合わせることができる。結果として、タンパク質とその標的との物理的相互作用の理解が定式化し、これを用いて他の設計過程を導くことができる。
細胞アッセイ。その表面上において目的の標的を一過性または安定的に発現および提示する細胞に対する結合能について、結合タンパク質をスクリーニングすることができる。
例えば、MMP−9/MMP−2結合タンパク質を蛍光標識し、アンタゴニスト性抗体の存在下または不在下におけるMMP−9またはMMP−2に対する結合を、フローサイトメトリー、例えば、FACS機を用いて、蛍光強度の変化により検出することができる。
MMP−9/MMP−2結合抗体を得るための他の例示的な方法
ディスプレイライブラリーの使用に加え、他の方法を用いても、MMP−9/MMP−2結合抗体を得ることができる。例えば、MMP−9タンパク質、MMP−2タンパク質、またはこれらのいずれかに由来する領域を、非ヒト動物、例えば、げっ歯動物における抗原として用いることができる。
一実施形態において、非ヒト動物は、ヒト免疫グロブリン遺伝子の少なくとも一部を包含する。例えば、ヒトIg遺伝子座の大型断片によりマウス株を操作して、マウス抗体の生成を欠損させることができる。ハイブリドーマ技術を用いて、所望の特異性を有する遺伝子に由来する、抗原特異的なモノクローナル抗体(Mab)を作製および選択することができる。例えば、XENOMOUSE(商標)、Greenら、1994年、Nat.
Gen.、7巻、13〜21頁;U.S.2003−0070185、1996年10月31日に公開のWO96/34096、および1996年4月29日に出願のPCT出願第PCT/US96/05928号を参照されたい。
別の実施形態では、非ヒト動物からモノクローナル抗体を得、次いで、これを改変する、例えば、ヒト化または脱免疫化する。Winterは、ヒト化抗体を調製するのに用い得るCDR移植法について説明している(1987年3月26日に出願の英国特許出願第GB2188638A号;米国特許第5,225,539号)。特定のヒト抗体の全てのCDRを非ヒトCDRの少なくとも一部により置換することもでき、該CDRの一部だけを非ヒトCDRにより置換することもできる。所定の抗原に対するヒト化抗体の結合に必要な数のCDRを置換することだけが必要である。
抗原の結合に直接には関与しないFv可変領域の配列を、ヒトFv可変領域に由来する同等の配列により置換することにより、ヒト化抗体を作製することができる。ヒト化抗体を作製する一般的な方法は、Morrison, S. L.、1985年、Science、229巻、1202〜1207頁;Oiら、1986年、BioTechniques、4巻、214頁;およびQueenら、米国特許第5,585,089号、US5,693,761、およびUS5,693,762により提供されている。これらの方法は、重鎖または軽鎖の少なくとも1つに由来する免疫グロブリンFv可変領域の全部または一部をコードする核酸配列を単離する工程、操作する工程、および発現させる工程を包含する。このような核酸の多数の供給源が利用可能である。例えば、上記で説明した通り、所定の標的に対する抗体を生成するハイブリドーマから核酸を得ることができる。次いで、ヒト化抗体またはそのフラグメントをコードする組換えDNAを適切な発現ベクターにクローニングすることができる。
MMP−9/MMP−2結合タンパク質の免疫原性の低減
免疫グロブリンMMP−9/MMP−2結合タンパク質(例えば、IgGまたはFabのMMP−9/MMP−2結合タンパク質)を改変して、免疫原性を低下させることができる。免疫原性を低下させると、対象が、治療分子に対して免疫反応を発生させる可能性が低下するので、それは、治療剤として用いられることが意図されるMMP−9/MMP−2結合タンパク質において望ましい。MMP−9/MMP−2結合タンパク質の免疫原性を低下させるのに有用な技法には、潜在的なヒトT細胞エピトープの欠失/改変、およびCDR以外(例えば、フレームワークおよびFc)の配列の「生殖細胞系列化」が含まれる。
MMP−9/MMP−2結合抗体は、ヒトT細胞エピトープの特異的な欠失により改変することもでき、WO98/52976およびWO00/34317で開示される方法により「脱免疫化(deimmunization)」することもできる。略述すると、抗体の重鎖可変領域および軽鎖可変領域を、MHCクラスIIに結合するペプチド(これらのペプチドは、潜在的なT細胞エピトープを表す(WO98/52976およびWO00/34317において規定される通り))について解析する。潜在的なT細胞エピトープを検出するには、「ペプチドスレディング」と称するコンピュータモデリング法を適用することができ、また、加えて、WO98/52976およびWO00/34317で説明される通り、ヒトMHCクラスII結合ペプチドのデータベースを、VH配列およびVL配列内に存在するモチーフについて検索することもできる。これらのモチーフは18の主要なMHCクラスII DRアロタイプのいずれかに結合し、したがって、潜在的なT細胞エピトープを構成する。検出された潜在的なT細胞エピトープは、可変領域内における少数のアミノ酸残基を置換することによって除去することもでき、好ましくは、単一のアミノ酸置換により除去することもできる。可能な保存的置換がなされる限りにおいて、ヒト生殖細胞系列の抗体配列内のこの位置において共通なアミノ酸を用い得る場合が多いが、これ以外の場合が除外されるわけではない。ヒト生殖細胞系列の配列は、Tomlinson, I.A.ら、1992年、J. Mol. Biol.、227巻、776〜798頁;Cook, G. P.ら、1995年、Immunol. Today、16巻、5号、237〜242頁;Chothia, D.ら、1992年、J. Mol. Bio.、227巻、799〜817頁において開示されている。V BASE要覧により、ヒト免疫グロブリン可変領域配列の包括的な要覧(Tomlinson, I.A.ら、MRC Centre for Protein Engineering、Cambridge、UKにより編纂された)が提供されている。脱免疫化する変化を同定した後は、変異誘発または他の合成方法(例えば、de novo合成、カセット置換など)により、VおよびVをコードする核酸を構築することができる。変異誘発された可変配列は、場合によって、ヒト定常領域、例えば、ヒトIgG1の定常領域またはκ定常領域に融合させることができる。
一部の場合において、潜在的なT細胞エピトープは、抗体機能にとって重要であることが公知であるかまたは予測される残基を包含する。例えば、潜在的なT細胞エピトープは通常、CDRに対してバイアスがかかっている。加えて、潜在的なT細胞エピトープは、抗体の構造および結合にとって重要なフレームワーク残基内において発生し得る。これらの潜在的なエピトープを除去するための変化は、例えば、変化を伴う鎖および変化を伴わない鎖を作製して調べることによる、一層の精査を場合によって必要とする。可能な場合、CDRと重複する潜在的なT細胞エピトープは、CDR以外の置換により除去した。一部の場合において、CDR内における変化は任意選択に限られ、したがって、この置換を伴う変異体およびこれを伴わない変異体について調べるものとする。他の場合において、潜在的なT細胞エピトープを除去するのに必要な置換は、抗体結合にとって極めて重要であり得るフレームワーク内の残基位置においてのものである。これらの場合では、この置換を伴う変異体およびこれを伴わない変異体について調べるものとする。したがって、一部の場合では、最適の脱免疫化抗体を同定するために、脱免疫化された変異体である複数の重鎖可変領域および軽鎖可変領域を設計し、各種の重鎖/軽鎖の組合せについて調べた。次いで、脱免疫化の範囲、すなわち、該可変領域内に残存する潜在的なT細胞エピトープの数と共に、異なる変異体の結合親和性を考慮することにより、最終的な脱免疫化抗体を選択することができる。脱免疫化を用いて、任意の抗体、例えば、非ヒト配列を包含する抗体、例えば、合成抗体、マウス抗体、他の非ヒトモノクローナル抗体、またはディスプレイライブラリーから単離された抗体を改変することができる。
結合特性が実質的に保持される限りにおいて、フレームワーク領域内における非生殖細胞系列の1つまたは複数のアミノ酸を、対応する抗体の生殖細胞系列のアミノ酸へ戻すこ
とにより、MMP−9/MMP−2結合抗体を「生殖細胞系列化」することができる。定常領域(例えば、免疫グロブリンの定常ドメイン)においてもまた、同様の方法を用いることができる。
MMP−9およびMMP−2に結合する抗体、例えば、本明細書に記載の抗体の可変領域を1つまたは複数の生殖細胞系列配列により類似させるために、該抗体を改変することができる。例えば、フレームワーク領域、CDR領域、または定常領域内における、1つ、2つ、3つ以上のアミノ酸置換を抗体に組み入れて、それを、基準の生殖細胞系列配列により類似させることができる。例示的な1つの生殖細胞系列化法は、単離抗体の配列に類似する(例えば、特定のデータベースにおいて最も類似する)1つまたは複数の生殖細胞系列配列を同定する工程を包含し得る。次いで、付加により、または他の変異との組合せにより、単離抗体内において変異(アミノ酸レベルにおける)を作製する。例えば、生殖細胞系列の一部または全部の可能な変異をコードする配列を包含する核酸ライブラリーを作製する。次いで、変異した抗体を評価して、例えば、単離抗体と比べて1つまたは複数の付加的な生殖細胞系列残基を有し、依然として有用である(例えば、機能的活性を有する)抗体を同定する。一実施形態では、可能な限り多くの生殖細胞系列残基を、単離抗体に導入する。
一実施形態では、変異誘発を用いて、1つまたは複数の生殖細胞系列残基を、フレームワーク領域および/または定常領域に置換または挿入する。例えば、生殖細胞系列のフレームワーク領域および/または定常領域の残基は、改変される非可変領域に類似する(例えば、最も類似する)生殖細胞系列配列に由来し得る。変異誘発後には、該抗体の活性(例えば、結合活性または他の機能的活性)を評価して、該1つまたは複数の生殖細胞系列残基が許容される(すなわち、活性を消失させない)かどうかを判定することができる。フレームワーク領域においても、同様の変異誘発を実施することができる。
生殖細胞系列配列の選択は、異なる方法により実施することができる。例えば、生殖細胞系列配列が、選択性または類似性についての所定の基準、例えば、少なくともある百分率の同一性、例えば、少なくとも、75、80、85、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99、または99.5%の同一性を満たす場合、これを選択することができる。少なくとも、2、3、5、または10の生殖細胞系列配列を用いて選択を実施することができる。CDR1およびCDR2の場合、類似の生殖細胞系列配列の同定は、1つのこのような配列の選択を包含し得る。CDR3の場合、類似の生殖細胞系列配列の同定は、1つのこのような配列の選択を包含し得るが、そのアミノ末端部分およびカルボキシ末端部分に個別に寄与する2つの生殖細胞系列配列の使用も包含し得る。他の実施では、1つまたは2つを超える生殖細胞系列配列を用いて、例えば、コンセンサス配列を形成する。
一実施形態において、特定の基準可変ドメイン配列、例えば、本明細書に記載の配列に対して類縁の可変ドメイン配列は、CDRアミノ酸位置のうち、少なくとも30、40、50、60、70、80、90、95、または100%が、ヒト生殖細胞系列配列内の対応する位置にある残基と同一な残基(すなわち、ヒト生殖細胞系列の核酸によりコードされるアミノ酸配列)である、基準CDR配列内における残基と同一ではない。
一実施形態において、特定の基準可変ドメイン配列、例えば、本明細書に記載の配列に対して類縁の可変ドメイン配列は、FR領域のうち、少なくとも30、50、60、70、80、85、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99、または100%が、ヒト生殖細胞系列配列、例えば、基準可変ドメイン配列に類縁の生殖細胞系列配列に由来するFR配列と同一である。
したがって、所与の目的の抗体と同様の活性を有するが、1つまたは複数の生殖細胞系列配列、特に、1つまたは複数のヒト生殖細胞系列配列により類似する抗体を単離することができる。例えば、抗体は、CDR以外の領域(例えば、フレームワーク領域)において、生殖細胞系列配列に対して少なくとも90、91、92、93、94、95、96、97、98、99、または99.5%同一であり得る。さらに、抗体は、CDR領域内において少なくとも1つ、2つ、3つ、4つ、または5つの生殖細胞系列残基を包含する場合があり、該生殖細胞系列残基は、改変される可変領域に類似する(例えば、最も類似する)生殖細胞系列配列に由来する。主要目的である生殖細胞系列配列は、ヒト生殖細胞系列配列である。抗体の活性(例えば、Kにより測定される結合活性)は、元の抗体の100、10、5、2、0.5、0.1、および0.001倍以内であり得る。
ヒト免疫グロブリン遺伝子の生殖細胞系列配列は決定されており、ワールドワイドウェブのimgt.cines.frを介して利用可能である、国際的なImMunoGeneTics情報システム(登録商標)(IMGT)、およびV BASE要覧(Tomlinson, I.A.ら、MRC Centre for Protein Engineering、Cambridge、UKにより編纂され、ワールドワイドウェブのvbase.mrc−cpe.cam.ac.ukを介して利用可能である)を含めた、多数の情報源から入手可能である。
κappaの例示的な基準生殖細胞系列配列には、O12/O2、O18/O8、A20、A30、L14、L1、L15、L4/18a、L5/L19、L8、L23、L9、L24、L11、L12、O11/O1、A17、A1、A18、A2、A19/A3、A23、A27、A11、L2/L16、L6、L20、L25、B3、B2、A26/A10、およびA14が含まれる。例えば、Tomlinsonら、1995年、EMBO J.、14巻、18号、4628〜3頁を参照されたい。
HC可変ドメインに対する生殖細胞系列の基準配列は、特定の標準構造、例えば、H1超可変ループおよびH2超可変ループ内の1つ〜3つの構造を有する配列に基づき得る。Chothiaら、1992年、J. Mol. Bio.、227巻、799〜817頁;Tomlinsonら、1992年、J. Mol. Biol.、227巻、776〜798頁;およびTomlinsonら、1995年、EMBO J.、14巻、18号、4628〜38頁において説明される通り、免疫グロブリン可変ドメインの超可変ループの標準構造は、その配列から推定することができる。1〜3つの構造を有する例示的な配列には、DP−1、DP−8、DP−12、DP−2、DP−25、DP−15、DP−7、DP−4、DP−31、DP−32、DP−33、DP−35、DP−40、7−2、hv3005、hv3005f3、DP−46、DP−47、DP−58、DP−49、DP−50、DP−51、DP−53、およびDP−54が含まれる。
タンパク質の生成
標準的な組換え核酸法を用いて、MMP−9およびMMP−2に結合するタンパク質を発現させることができる。一般に、該タンパク質をコードする核酸を、核酸発現ベクターにクローニングする。当然ながら、該タンパク質が、複数のポリペプチド鎖を包含する場合、各鎖を発現ベクター、例えば、同じであるかまたは異なる細胞内において発現する、同じであるかまたは異なるベクターにクローニングすることができる。
抗体の生成。一部の抗体、例えば、Fabは、細菌細胞、例えば、E.coli細胞内において生成することができる。例えば、ディスプレイ実体とバクテリオファージタンパク質(またはそのフラグメント)との間において抑制可能な終止コドンを包含する、ファージディスプレイベクター内の配列によりFabがコードされる場合、そのベクター核酸を、終止コドンを抑制できない細菌細胞に移入することができる。この場合、該Fabは
、遺伝子IIIタンパク質に融合せず、ペリプラズムおよび/または培地に分泌される。
抗体はまた、真核生物細胞内においても生成させることができる。一実施形態において、抗体(例えば、scFv)は、Pichia属(例えば、Powersら、2001年、J. Immunol. Methods.、251巻、123〜35頁を参照されたい)、Hanseula属、またはSaccharomyces属などの酵母細胞内において発現する。
好ましい一実施形態において、抗体は、哺乳動物細胞内で生成する。クローン抗体またはそれらの抗原結合フラグメントを発現するのに好ましい哺乳動物宿主細胞には、チャイニーズハムスター卵巣細胞(CHO細胞)(例えば、KaufmanおよびSharp、1982年、Mol. Biol.、159巻、601 621頁で説明されるDHFR選択マーカーと共に用いられ、UrlaubおよびChasin、1980年、Proc. Natl. Acad. Sci. USA、77巻、4216〜4220頁で説明されるdhfrCHO細胞を含めた)、リンパ球細胞株、例えば、NS0骨髄腫細胞およびSP2細胞、COS細胞、HEK293T細胞(J. Immunol. Methods(2004年)、289巻、1〜2号、65〜80頁)、およびトランスジェニック動物、例えば、トランスジェニック哺乳動物に由来する細胞が含まれる。例えば、細胞は、哺乳動物の上皮細胞である。
多様化した免疫グロブリンドメインをコードする核酸配列に加え、組換え発現ベクターは、宿主細胞内における該ベクターの複製を調節する配列(例えば、複製起点)、および選択マーカー遺伝子など、さらなる配列を保有し得る。選択マーカー遺伝子は、ベクターが導入された宿主細胞の選択を容易にする(例えば、米国特許第4,399,216号、同第4,634,665号、同第5,179,017号を参照されたい)。例えば、選択マーカー遺伝子は、G418、ハイグロマイシン、またはメトトレキサートなどの薬物に対する耐性を、ベクターが導入された宿主細胞に付与することが典型的である。好ましい選択マーカーには、ジヒドロ葉酸レダクターゼ(DHFR)遺伝子(メトトレキサート選択/増幅を伴う、dhfr宿主細胞内において用いられる)、およびneo遺伝子(G418選択用)が含まれる。
抗体またはその抗原結合部分の例示的な組換え発現系では、抗体重鎖および抗体軽鎖の両方をコードする組換え発現ベクターを、リン酸カルシウムを介するトランスフェクションによりdhfr CHO細胞に導入する。組換え発現ベクター内では、高レベルの遺伝子転写を駆動するように、抗体の重鎖および軽鎖の遺伝子各々を、エンハンサー/プロモーター調節エレメント(例えば、SV40、CMV、アデノウイルスなどに由来する、CMVエンハンサー/AdMLPプロモーター調節エレメントまたはSV40エンハンサー/AdMLPプロモーター調節エレメントなど)へと作動的に連結する。組換え発現ベクターはまた、メトトレキサート選択/増幅を用いて、ベクターをトランスフェクトしたCHO細胞の選択を可能とする、DHFR遺伝子も保有する。選択された形質転換体の宿主細胞を培養して、抗体の重鎖および軽鎖の発現を可能にし、培地から完全抗体を回収する。標準的な分子生物学の技法を用いて組換え発現ベクターを調製し、宿主細胞にトランスフェクトし、形質転換体について選択し、該宿主細胞を培養し、培地から抗体を回収する。例えば、プロテインAまたはプロテインGを結合させたマトリックスを用いるアフィニティークロマトグラフィーにより、一部の抗体を単離することができる。
Fcドメインを包含する抗体の場合、抗体生成系は、Fc領域がグリコシル化した抗体を生成し得る。例えば、IgG分子のFcドメインは、CH2ドメインのアスパラギン297においてグリコシル化される。このアスパラギンが、二分枝型(biantennary)オリゴ糖による改変部位である。Fcg受容体および補体C1qを介するエフェク
ター機能には、このグリコシル化が必要とされることが示されている(BurtonおよびWoof、1992年、Adv. Immunol.、51巻、1〜84頁;Jefferisら、1998年、Immunol. Rev.、163巻、59〜76頁)。一実施形態では、アスパラギン297に対応する残基を適切にグリコシル化する哺乳動物発現系内において、Fcドメインが生成される。Fcドメインはまた、他の真核生物における翻訳後修飾も包含し得る。
抗体はまた、トランスジェニック動物によっても生成させることができる。例えば、米国特許第5,849,992号は、トランスジェニック哺乳動物の乳腺において抗体を発現させる方法について説明している。ミルクに特異的なプロモーター、ならびに目的の抗体および分泌のためのシグナル配列をコードする核酸を包含するトランス遺伝子が構築される。このようなトランスジェニック哺乳動物の雌により生成されるミルクは、その中に分泌される形で、目的の抗体を包含する。抗体はミルクから精製することもでき、一部の適用の場合、直接用いることもできる。
MMP−9/MMP−2結合タンパク質の特徴づけ
MMP−9および/またはMMP−2を発現する細胞に対するMMP−9/MMP−2結合タンパク質の結合は、FACS(蛍光活性化細胞選別)、免疫蛍光、および免疫組織化学を含めた、当技術分野で公知の幾つかのアッセイにおいて特徴づけることができる。MMP−9/MMP−2結合タンパク質を、MMP−9および/またはMMP−2を発現または含有する細胞および/または組織と接触させ、用いられる方法に従って結合を検出する。例えば、これらのアッセイでは、FACS解析および免疫蛍光解析に用いられる蛍光検出系(例えば、蛍光標識された二次抗体)、または免疫組織化学に用いられる酵素系は、組み合せずに(non−perm)実施されるこれらのアッセイスキャンにおいて一般的に用いられる。MMP−9および/またはMMP−2を発現する細胞を用いるFACS(蛍光活性化細胞選別)により、MMP−9/MMP−2結合タンパク質を、細胞の結合について特徴づけることができる。流体の細流内に保持された個々の細胞に、1つまたは複数のレーザービーム中を通過させて光を散乱させ、蛍光色素に種々の振動数の光を発光させる。高電子増倍管(PMT)により光を電気信号へと転換し、細胞データを収集する。細胞の予備的な同定には、前方散乱および側方散乱を用いる。前方散乱および側方散乱は、残屑および死細胞を除外するのに用いる。蛍光標識化により、細胞の構造および機能の探索が可能となる。蛍光色素を用いて細胞構造を標識することにより、細胞の自己蛍光が発生する。FACSでは、異なるレーザー励起波長および蛍光発光波長に対応する1つ〜複数のチャネルにおける、蛍光シグナルが収集される。最も広範に用いられる適用である免疫蛍光は、フルオレセインおよびフィコエリトリン(PE)などの蛍光色素にコンジュゲートした抗体による細胞の染色を伴う。この方法を用いると、ビオチニル化されたMMP−9/MMP−2結合タンパク質を用いるMDA−MB−231細胞の細胞表面における、MMP−9またはMMP−2を標識することができる。これらの2段階検出系では、コンジュゲートさせたストレプトアビジンと共にビオチンが用いられる。ビオチンは、第一アミン(すなわち、リシン)を介して、タンパク質へとコンジュゲートすることが典型的である。通常各抗体には1.5〜3個のビオチン分子がコンジュゲートする。ビオチンに特異的な第2の蛍光コンジュゲート抗体(ストレプトアビジン/PE)が添加される。
MMP−9/MMP−2結合タンパク質は、MMP−9抗原またはMMP−2抗原を発現する培養細胞内において特徴づけることができる。一般に用いられる方法は、免疫細胞化学である。免疫細胞化学は、細胞表面において発現すると外部環境に曝露される受容体部分を認識する抗体(「一次抗体」)の使用を伴う。完全細胞(intact cell)内で実験を実施する場合、このような抗体は、表面で発現する受容体だけに結合する。ビオチニル化MMP−9/MMP−2結合タンパク質を用いることもでき、非ビオチニル
化MMP−9/MMP−2結合タンパク質を用いることもできる。次いで、二次抗体は、ストレプトアビジン/HRP抗体(ビオチニル化MMP−9/MMP−2結合タンパク質の場合)または抗ヒトIgG/HRP(非ビオチニル化MMP−9/MMP−2結合タンパク質の場合)のいずれかである。次いで、倒立顕微鏡を用いて染色を検出することができる。アッセイは、MMP−9/MMP−2結合タンパク質の不在下において、また10μg/mLのMMP−9/MMP−2結合タンパク質の存在下において実施することができる。
MMP−9/MMP−2結合タンパク質は、インビトロまたはインビボにおけるMMP−9、MMP−2、またはこれらのフラグメントに対するそれらの調節活性を測定するアッセイにおいて特徴づけることができる。例えば、MMP−9(またはMMP−2)は、MMP−9(またはMMP−2)による切断を許容するアッセイ条件下において、Mca−Pro−Leu−Ala−Cys(Mob)−Trp−Ala−Arg−Dap(Dnp)−NH (配列番号1278)などの基質と組み合わせることができる。アッセイは、MMP−9/MMP−2結合タンパク質の不在下において、また濃度を増加させたMMP−9/MMP−2結合タンパク質の存在下において実施する。MMP−9活性(またはMMP−2活性)(例えば、基質に対する結合)の50%が阻害される結合タンパク質濃度が、その結合タンパク質のIC50値(50%の阻害濃度)またはEC50(50%の有効濃度)値である。一連または一群の結合タンパク質内において、IC50値またはEC50値がより低値の結合タンパク質が、IC50値またはEC50値がより高値の結合タンパク質より強力な阻害剤であると考えられる。例示的な結合タンパク質は、例えば、MMP−9(またはMMP−2)が2pMの場合におけるMMP−9活性(またはMMP−2活性)の阻害について、インビトロアッセイで測定される場合、IC50値が800nM、400nM、100nM、25nM、5nM、または1nM未満である。
MMP−9/MMP−2結合タンパク質はまた、基質(例えば、コラーゲン、ゼラチン)におけるMMP−9またはMMP−2の活性との関連でも特徴づけることができる。例えば、MMP−9によるゼラチンの切断は、ザイモグラフィーにおいて検出することができる。該方法は、基質を含浸させたSDSゲルに基づくもので、該基質は、プロテアーゼにより分解され、インキュベーション期間中に溶解される。該ゲルに対するクーマシーブルー染色により、暗青色のバックグラウンド上における白色バンドとして、タンパク質分解によるフラグメントが示される。特定の範囲内において、該バンド強度は、添加されたプロテアーゼ量と直線的に関係し得る。このアッセイでは、MMP−9およびMMP−2の両方を発現する細胞が用いられる。アッセイは、MMP−9/MMP−2結合タンパク質の不在下において、また濃度を増加させたMMP−9/MMP−2結合タンパク質の存在下において実施することができる。MMP−9活性(例えば、基質に対する結合)の50%が阻害される結合タンパク質濃度が、その結合タンパク質のIC50値(50%の阻害濃度)またはEC50(50%の有効濃度)値である。一連または一群の結合タンパク質内において、IC50値またはEC50値がより低値の結合タンパク質が、IC50値またはEC50値がより高値の結合タンパク質より強力なMMP−9阻害剤であると考えられる。例示的な結合タンパク質は、例えば、MMP−9活性の阻害についてインビトロアッセイで測定される場合、IC50値が800nM、400nM、100nM、25nM、5nM、または1nM未満である。MMP−2の結合および阻害についても同じことがあてはまる。
MMP−9またはMMP−2に対する選択性についてもまた、結合タンパク質を評価することができる。例えば、MMP−9/MMP−2結合タンパク質は、MMP−9、MMP−2、ならびにMMPおよび他の酵素、例えば、ヒト酵素および/またはマウス酵素、例えば、MMP−1、MMP−3、MMP−7、MMP−8、MMP−12、MMP−13、MMP−14、MMP−16、MMP−17、MMP−24、およびTACEのパネ
ルに対するその効力についてアッセイすることができ、各MMPについてIC50値またはEC50値を決定することができる。一実施形態において、MMP−9に対して低値のIC50値またはEC50値を示し、被験パネル内の別のMMP(例えば、MMP−1、MMP−10)に対してより高値のIC50値またはEC50値、例えば、少なくとも2、5、または10倍の高値を示す化合物は、MMP−9に対して選択的であると考えられる。
MMP−9/MMP−2結合タンパク質は、細胞ベースのアッセイにおいてそれらがMMP−9を阻害する能力について評価することができる。
MMP−9/MMP−2結合タンパク質について、ラット、マウス、またはサルにおける薬物動態試験を実施して、血清中におけるMMP−9またはMMP−2の半減期を決定することができる。同様に、例えば、本明細書に記載の疾患または状態、例えば、癌(例えば、転移性癌、例えば、転移性乳癌)、炎症性疾患(例えば、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、喘息、鼻炎(例えば、アレルギー性鼻炎)、炎症性腸疾患、滑膜炎、関節リウマチ)、心不全、敗血症性ショック、神経障害性疼痛、骨関節炎、または眼疾患(例えば、黄斑変性)を治療するための、治療剤としての使用についても、インビボにおいて、例えば、疾患の動物モデルにおいて該結合タンパク質の効果を評価することができる。
医薬組成物
別の態様において、本開示は、例えば、MMP−9/MMP−2結合タンパク質、例えば、本明細書に記載の抗体分子、MMP−9およびMMP−2に結合すると同定された他のポリペプチドまたはペプチドを包含する組成物、例えば、薬学的に許容される組成物または医薬組成物を提供する。MMP−9/MMP−2結合タンパク質は、薬学的に許容される担体と共に製剤化することができる。医薬組成物は、治療組成物および診断組成物、例えば、インビボにおける画像化のために標識されたMMP−9/MMP−2結合タンパク質を包含する組成物を包含する。
薬学的に許容される担体は、生理学的に適合する、任意および全ての溶媒、分散媒、コーティング剤、抗菌剤および抗真菌剤、等張剤および吸収遅延剤などを包含する。吸入投与および鼻腔内投与に適する担体もまた意図されるが、担体は、静脈内投与、筋肉内投与、皮下投与、非経口投与、脊髄投与、または表皮投与(例えば、注射または注入による)に適することが好ましい。投与経路に応じて、MMP−9/MMP−2結合タンパク質は、該化合物を不活化させ得る酸の作用および他の天然条件から該化合物を保護する物質中においてコーティングすることができる。
薬学的に許容される塩とは、親化合物の所望の生物学的活性を保持し、望ましくない毒性作用を及ぼさない塩である(例えば、Berge, S.M.ら、1977年、J. Pharm. Sci.、66巻、1〜19頁を参照されたい)。このような塩の例には、酸付加塩および塩基付加塩が含まれる。酸付加塩には、塩酸塩、硝酸塩、リン酸塩、硫酸塩、臭化水素塩、ヨウ化水素塩、亜リン酸塩などの、非毒性の無機酸に由来する塩のほか、脂肪族モノカルボン酸および脂肪族ジカルボン酸、フェニル置換アルカン酸、ヒドロキシアルカン酸、芳香族酸、脂肪族スルホン酸および芳香族スルホン酸などの、非毒性の有機酸に由来する塩が含まれる。塩基付加塩には、ナトリウム、カリウム、マグネシウム、カルシウムなどの、アルカリ土類金属に由来する塩のほか、N,N’−ジベンジルエチレンジアミン、N−メチルグルカミン、クロロプロカイン、コリン、ジエタノールアミン、エチレンジアミン、プロカインなどの、非毒性の有機アミンに由来する塩も含まれる。
組成物は、各種の形態であり得る。これらには、例えば、液剤(例えば、注射液および注入液)、分散剤または懸濁剤、錠剤、丸剤、散剤、リポソーム、および坐剤など、液体
剤形、半固体剤形、および固体剤形が含まれる。該形態は、意図される投与方式および治療適用に依存し得る。多くの組成物が、ヒトにおける投与に用いられる、抗体を伴う組成物に類似の組成物など、注射液または注入液の形態である。例示的な投与方式は、非経口投与(例えば、静脈内投与、皮下投与、腹腔内投与、筋肉内投与)である。一実施形態において、MMP−9結合タンパク質は、静脈内注入または静脈内注射により投与される。別の好ましい実施形態において、MMP−9/MMP−2結合タンパク質は、筋肉内注射または皮下注射により投与される。
本明細書で用いられる「非経口投与」および「非経口投与される」という語句は、通常は注射による、経口投与および局所投与以外の投与方式を意味し、静脈内、筋肉内、動脈内、髄腔内、包内、眼窩内、心臓内、皮内、腹腔内、経気管、皮下、表皮下、関節内、被膜下、くも膜下、脊髄内、硬膜外、および胸骨内における注射および注入が含まれるがこれらに限定されない。
組成物は、液剤、マイクロエマルジョン、分散剤、リポソーム、または高薬物濃度に適する他の秩序構造として製剤化することができる。必要に応じて、上記で列挙された成分のうちの1つまたはこれらの組合せを伴う適切な溶媒中において、結合タンパク質を必要とされる量で組み込むことにより無菌の注射溶液を調製した後で、濾過により滅菌することができる。一般に、基本的な分散媒と、上記で列挙された成分に由来する、他の必要とされる成分とを含有する無菌のビヒクル中へと活性化合物を組み込むことにより、分散剤を調製する。無菌の注射溶液を調製するための無菌散剤の場合、好ましい調製方法は、既に滅菌濾過されたその溶液に由来する、任意のさらなる所望の成分を有効成分に加えた散剤をもたらす、真空乾燥法および凍結乾燥法である。溶液の適正な流体性は、例えば、レシチンなどコーティング剤を用いることにより、分散剤の場合は必要とされる粒子サイズを維持することにより、また、界面活性剤を用いることにより維持することができる。組成物中に吸収を遅延させる薬剤、例えば、モノステアリン酸塩およびゼラチンを組み入れることにより、注射用組成物の遅延吸収をもたらすことができる。
多くの適用に好ましい投与経路/投与方式は、静脈内注射または静脈内注入であるが、MMP−9/MMP−2結合タンパク質は、各種の方法により投与することができる。例えば、治療的な適用の場合、30、20、10、5、または1mg/分未満の速度で約1〜100mg/mまたは7〜25mg/mの用量に達する静脈内注入によりMMP−9結合タンパク質を投与することができる。投与経路および/または投与方式は、所望される結果に応じて変化する。特定の実施形態において、活性化合物は、インプラントおよびマイクロ封入による送達系を含めた、制御放出製剤など、急速な放出に対して化合物を保護する担体と共に調製することができる。エチレンビニルアセテート、ポリアンハイドライド、ポリグリコール酸、コラーゲン、ポリオルトエステル、およびポリ乳酸などの生体分解ポリマー、生体適合性ポリマーを用いることができる。このような製剤の多くの調製法が利用可能である。例えば、「Sustained and Controlled
Release Drug Delivery Systems」、J.R. Robinson編、1978年、Marcel Dekker, Inc., New Yorkを参照されたい。
医薬組成物は、医療デバイスにより投与することができる。例えば、一実施形態において、本明細書に記載の医薬組成物は、デバイス、例えば、注射針なしの皮下注射デバイス、ポンプ、またはインプラントにより投与することができる。
特定の実施形態では、MMP−9/MMP−2結合タンパク質を製剤化して、インビボにおける適正な分布を確保することができる。例えば、血液−脳関門(BBB)は、多くの高度に親水性の化合物を排除する。本明細書に記載の治療化合物がBBBを確実に超え
るように(所望の場合)、それらを、例えば、リポソームに製剤化することができる。リポソームを製造する方法については、例えば、米国特許第4,522,811号;同第5,374,548号;および同第5,399,331号を参照されたい。リポソームは、特定の細胞または臓器に選択的に輸送され、これにより、標的化された薬物送達を増強する1つまたは複数の部分を含み得る(例えば、V.V. Ranade、1989年、J. Clin. Pharmacol.、29巻、685頁を参照されたい)。
投与レジメンは、所望される最適の応答(例えば、治療応答)をもたらすように調整される。例えば、単一のボーラスを投与することもでき、複数に分割された用量をある時間にわたって投与することもでき、治療状況の要件により示されるのに比例して用量を減少または増加させることもできる。投与を容易にし、用量を均一にするために、非経口組成物を用量単位形態に製剤化することがとりわけ有利である。本明細書で用いられる用量単位形態とは、対象を治療するための単位用量として適する、物理的に個別の単位を指し、各単位は、必要とされる医薬担体と併せて、所望の治療効果をもたらすように計算された所定量の活性化合物を含有する。(a)活性化合物の固有の特徴および達成される特定の治療効果、ならびに(b)個体における感受性に対し処置するようにこのような活性化合物を配合する、当技術分野に固有の制約により、またこれらに直接に依存して、用量単位形態の規格を決定することができる。
本明細書で開示される抗体の治療有効量または予防有効量の例示的であるが非限定的な範囲は、0.1〜20mg/kg、より好ましくは、1〜10mg/kgである。例えば、30、20、10、5、または1mg/分未満の速度で約1〜100mg/mまたは約5〜30mg/mの用量に達するための、例えば、静脈内注入により、抗MMP−9抗体を投与することができる。抗体より低分子量の結合タンパク質の場合、適切な量もこれに比例して低量となる。用量値は、緩和される疾患の種類および重症度と共に変えることができる。特定の対象には、個別の必要、および組成物投与の管理者または監督者の職業的判断により、ある期間にわたって特定の投与レジメンを調整することができる。
本明細書で開示される医薬組成物は、「治療有効量」または「予防有効量」の、本明細書で開示されるMMP−9/MMP−2結合タンパク質を包含し得る。「治療有効量」とは、投薬のときにおいて、また必要な期間にわたり、所望の治療結果を達成するのに有効な量を指す。組成物の治療有効量は、個体の疾患状態、年齢、性別、および体重、ならびにタンパク質が個体において所望の応答を誘発する能力などの因子によって変えることができる。治療有効量はまた、治療的に有益な効果が組成物の任意の毒性作用または有害作用を凌駕する量でもある。
「治療有効用量」は、好ましくは、測定可能なパラメータ、例えば、循環のIgG抗体レベルまたは酵素活性のレベルを、非治療の対象と比べて、統計学的に有意な程度、または少なくとも約20%、より好ましくは少なくとも約40%、さらにより好ましくは少なくとも約60%、さらにまたより好ましくは少なくとも約80%調節する。化合物が測定可能なパラメータ、例えば、疾患に関連するパラメータを調節する能力は、ヒトの疾患または状態、例えば、癌(例えば、転移性癌、例えば、転移性乳癌)、炎症性疾患(例えば、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、喘息、鼻炎(例えば、アレルギー性鼻炎)、炎症性腸疾患、滑膜炎、関節リウマチ)、心不全、敗血症性ショック、神経障害性疼痛、骨関節炎、または眼疾患(例えば、黄斑変性)における有効性を予測する動物モデル系において評価することができる。代替的に、組成物のこの特性は、化合物がインビトロにおいてパラメータを調節する能力を試験することにより評価することができる。
「予防有効量」とは、投薬のときにおいて、また必要な期間にわたり、所望の予防結果を達成するのに有効な量を指す。予防用量は、疾患の前または疾患の早期にある対象にお
いて用いられるため、予防有効量は、治療有効量未満であることが典型的である。
安定化および保持
一実施形態において、MMP−9/MMP−2結合タンパク質は、循環における、例えば、血液、血清、リンパ、または他の組織におけるその安定化および/または保持を、例えば、少なくとも1.5、2、5、10、または50倍向上させる部分と物理的に結合している。例えば、MMP−9/MMP−2結合タンパク質は、ポリマー、例えば、ポリアルキレンオキシドまたはポリエチレンオキシドなどの実質的に非抗原性のポリマーと結合することができる。適当なポリマーは、重量が実質的に異なる。約200〜約35000(または約1000〜約15000、および2000〜約12500)の範囲の数平均分子量を有するポリマーを使用することができる。例えば、MMP−9/MMP−2結合タンパク質を、水溶性ポリマー、例えば、親水性ポリビニルポリマー、例えば、ポリビニルアルコールおよびポリビニルピロリドンとコンジュゲートさせることができる。このようなポリマーの非限定的な例としては、ポリエチレングリコール(PEG)またはポリプロピレングリコールなどのポリアルキレンオキシドホモポリマー、ポリオキシエチレン化ポリオール、これらのコポリマーおよびこれらのブロックコポリマーが挙げられ、ただし、ブロックコポリマーの水溶性は維持されている。
MMP−9/MMP−2結合タンパク質はまた、担体タンパク質、例えば、ヒト血清アルブミンなどの血清アルブミンと結合することができる。例えば、翻訳融合を使用して、担体タンパク質をMMP−9/MMP−2結合タンパク質と結合させることができる。
キット
本明細書に記載のMMP−9/MMP−2結合タンパク質は、キットで、例えば、キットの構成要素として提供することができる。例えば、キットは、(a)MMP−9/MMP−2結合タンパク質、例えば、MMP−9/MMP−2結合タンパク質を含む組成物、および任意選択で(b)情報資料を含む。情報資料は、本明細書に記載の方法および/または本明細書に記載の方法のためのMMP−9/MMP−2結合タンパク質の使用に関する説明資料、使用説明資料、宣伝資料または他の資料とすることができる。
キットの情報資料は、その形態が限定されない。一実施形態において、情報資料は、化合物の製造、化合物の分子量、濃度、有効期限、バッチまたは製造地情報などについての情報を含むことができる。一実施形態において、情報資料は、障害および疾患、例えば、癌(例えば、転移性癌、例えば、転移性乳癌)、炎症性疾患(例えば、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、喘息、鼻炎(例えば、アレルギー性鼻炎)、炎症性腸疾患、滑膜炎、関節リウマチ)、心不全、敗血症性ショック、神経障害性疼痛、骨関節炎、または眼疾患(例えば、黄斑変性)を治療、予防、または診断するための結合タンパク質の使用に関する。
一実施形態において、情報資料は、本明細書に記載の方法を実施するための適当な方法で、例えば、適当な用量、剤形、または投与方法(例えば、本明細書に記載の用量、剤形、または投与方法)で、MMP−9/MMP−2結合タンパク質を投与するための使用説明書を含むことができる。別の実施形態において、情報資料は、適当な対象に、例えば、ヒト、例えば、本明細書に記載の障害または疾患、例えば、癌(例えば、転移性癌、例えば、転移性乳癌または膀胱癌)、炎症性疾患(例えば、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、喘息、鼻炎(例えば、アレルギー性鼻炎)、炎症性腸疾患、滑膜炎、関節リウマチ)、心不全、敗血症性ショック、神経障害性疼痛、骨関節炎、または眼疾患(例えば、黄斑変性)を有する、またはそのリスクのあるヒトに、MMP−9/MMP−2結合タンパク質を投与するための使用説明書を含むことができる。例えば、情報資料は、本明細書に記載の障害または疾患、例えば、癌(例えば、転移性癌、例えば、転移性乳癌または膀胱癌)、炎症性疾患(例えば、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、喘息、鼻炎(例えば、アレルギー
性鼻炎)、炎症性腸疾患、滑膜炎、関節リウマチ)、心不全、敗血症性ショック、神経障害性疼痛、骨関節炎、または眼疾患(例えば、黄斑変性)の患者に、MMP−9/MMP−2結合タンパク質を投与するための使用説明書を含むことができる。キットの情報資料は、その形態が限定されない。多くの場合、情報資料、例えば、使用説明書は、印刷されて提供されるが、コンピュータで読み取り可能な資料などの別の形態であってもよい。
MMP−9/MMP−2結合タンパク質は、任意の形態で、例えば、液体形態、乾燥形態または凍結乾燥形態で提供することができる。MMP−9/MMP−2結合タンパク質は、実質的に純粋および/または無菌であることが好ましい。MMP−9/MMP−2結合タンパク質が液体溶液で提供される場合、液体溶液は好ましくは水溶液であり、無菌の水溶液が好ましい。MMP−9/MMP−2結合タンパク質が乾燥形態として提供される場合、再形成は一般に適当な溶媒の添加により行われる。溶媒、例えば、無菌の水または緩衝液は、任意選択で、キットで提供することができる。
キットは、MMP−9/MMP−2結合タンパク質を含有する組成物のための1つまたは複数の容器を含むことができる。いくつかの実施形態において、キットは、組成物および情報資料のための別個の容器、仕切りまたは区画を含む。例えば、組成物は、瓶、バイアル、またはシリンジ中に含めることができ、情報資料は容器に結合させて含めることができる。別の実施形態において、キットの別個の要素は、単一の分割されていない容器内に含まれる。例えば、組成物は、ラベルの形態で情報資料を付着させた瓶、バイアルまたはシリンジ中に含まれる。いくつかの実施形態において、キットは、MMP−9結合タンパク質の1つまたは複数の単位剤形(例えば、本明細書に記載の剤形)をそれぞれが含む複数(例えば、1パック)の個々の容器を含む。例えば、キットは、単回単位用量のMMP−9/MMP−2結合タンパク質をそれぞれが含む複数のシリンジ、アンプル、ホイルパケット、またはブリスターパックを含む。キットの容器は、気密性、防水性(例えば、湿気の変化または蒸発に対して不透過性)、および/または遮光性とすることができる。
キットは、組成物の投与に適当なデバイス、例えば、シリンジ、吸入器、点滴器(例えば、点眼器)、スワブ(例えば、コットンスワブまたは木製スワブ)、または任意のこのような送達デバイスを任意選択で含む。一実施形態において、デバイスは、定量の結合タンパク質を投薬する移植可能なデバイスである。本開示はまた、例えば、本明細書に記載の構成要素を組み合わせることによって、キットを提供する方法を特徴とする。
治療
MMP−9およびMMP−2に結合し、本明細書に記載および/または本明細書に詳述される方法によって特定されるタンパク質は、特にヒト対象において、治療的および予防的有用性を有する。これらの結合タンパク質を、例えば、癌(例えば、転移性癌、例えば、転移性乳癌または膀胱癌)、炎症性疾患(例えば、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、喘息、鼻炎(例えば、アレルギー性鼻炎)、炎症性腸疾患、滑膜炎、関節リウマチ)、心不全(例えば、心筋梗塞、高血圧またはウイルス性心筋炎)、敗血症性ショック、神経障害性疼痛、骨関節炎、または眼疾患(例えば、黄斑変性)を含む様々な障害を治療、予防および/または診断するために対象に、または培養下の細胞にも、例えば、インビトロでまたはエクスビボで投与する。治療は、障害、障害の症状、または障害に対する素因を緩和する、軽減する、改変する、矯正する、回復させる、改善するまたはそれに影響を及ぼすための有効な量を投与する工程を含む。治療はまた、疾患または状態の発症を遅らせる、例えば、発症を予防する、または悪化を予防することもできる。
例示的な障害は、癌(例えば、転移性癌、例えば、転移性乳癌または膀胱癌)、炎症性疾患(例えば、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、喘息、鼻炎(例えば、アレルギー性鼻炎)、炎症性腸疾患、滑膜炎、関節リウマチ)、心不全(例えば、心筋梗塞、高血圧または
ウイルス性心筋炎)、敗血症性ショック、神経障害性疼痛、骨関節炎、または眼疾患(例えば、黄斑変性)を含む。これらの障害のいくつかは、上記で論じられている。MMP−9/MMP−2結合タンパク質を使用して治療することができるさらに別の障害は、大動脈瘤、脳卒中、出血、再灌流傷害、脳梗塞、脳虚血、歯周炎、自己免疫性水疱性皮膚疾患、皮膚の光老化を含む。
本明細書において使用される場合、障害を予防するために有効な標的結合剤の量、または予防的に有効な結合剤の量とは、対象への単回用量または複数回用量投与のときに、障害、例えば、本発明に記載の障害の発症または再発の発生を予防するまたは遅らせるために有効な、本明細書に記載の標的結合剤、例えば、MMP−9/MMP−2結合タンパク質、例えば、抗MMP−9/MMP−2抗体の量をいう。
本明細書に記載の結合剤を使用して、対象において新脈管形成を減少させる、例えば、癌(例えば、充実性腫瘍)または新脈管形成関連障害を治療することができる。方法は、例えば、新脈管形成、障害の症状、または障害の進行を調節するために有効な量で、対象に結合剤を投与する工程を含む。作用物質(例えば、MMP−9/MMP−2結合タンパク質、例えば、抗MMP−9/MMP−2抗体)を、治療有効量に到達する前に複数回(例えば、少なくとも2、3、5、または10回)投与してもよい。MMP−9/MMP−2結合タンパク質および別の作用物質を投与する方法はまた、「Pharmaceutical Compositions」にも記述されている。使用される分子の適当な用量は、対象の年齢および体重ならびに使用される特定の薬物に依存し得る。結合タンパク質は、例えば、天然因子または病理学的因子とMMP−9およびMMP−2との間の、望ましくない相互作用を阻害する、減少させるための競合剤として使用することができる。MMP−9/MMP−2結合タンパク質の用量は、患者において、特に、疾患の部位でMMP−9/MMP−2活性の90%、95%、99%、または99.9%を遮断するために十分な量とすることができる。疾患に応じて、この量は0.1、1.0、3.0、6.0、または10.0mg/Kgを必要とする場合がある。150000g/モル(2つの結合部位)の分子量を有するIgGに関して、これらの用量は、5Lの血液量に対して約18nM、180nM、540nM、1.08μM、および1.8μMの結合部位に相当する。
一実施形態において、MMP−9/MMP−2結合タンパク質を使用して、細胞、例えば、癌細胞の活性をインビボで阻害する(例えば、その少なくとも1つの活性を阻害する、その増殖、移動、成長または生存可能性を減少させる)。結合タンパク質は、単独で使用することができ、または作用物質、例えば、細胞傷害性薬、細胞傷害性酵素、または放射性同位体とコンジュゲートさせることができる。この方法は、単独のまたは作用物質(例えば、細胞傷害性薬)に結合した結合タンパク質を、このような治療を必要としている対象に投与する工程を含む。例えば、MMP−9またはMMP−2を実質的に阻害しないMMP−9/MMP−2結合タンパク質は、毒素などの作用物質を含有するナノ粒子を、MMP−9および/またはMMP−2関連細胞または組織、例えば、腫瘍へ送達するために使用することができる。
MMP−9/MMP−2結合タンパク質は、MMP−9発現細胞およびMMP−2発現細胞を認識し、癌細胞、例えば、癌性肺、肝臓、結腸、乳房、卵巣、表皮、喉頭、および軟骨の細胞、特にこれらの転移細胞と結合している(例えば、これらの細胞に近接している、またはこれらの細胞と混ざり合っている)細胞に結合することができるため、MMP−9/MMP−2結合タンパク質を使用して、任意のこのような細胞を阻害し(例えば、少なくとも1つの活性を阻害する、成長および増殖を減少させる、または死滅させる)、発癌を阻害することができる。癌近くのMMP−9活性および/またはMMP−2活性を減少させることにより、転移、成長因子の活性化などについてのMMP−9活性および/
またはMMP−2活性に依存している可能性がある癌細胞を間接的に阻害する(例えば、少なくとも1つの活性を阻害する、成長および増殖を減少させる、または死滅させる)ことができる。
代替として、結合タンパク質は、癌性細胞の近傍にあって、癌細胞を直接または間接的に阻害する(例えば、少なくとも1つの活性を阻害する、成長および増殖を減少させる、または死滅させる)ために癌性細胞に十分に近い細胞に結合する。したがって、MMP−9/MMP−2結合タンパク質(例えば、毒素、例えば、細胞毒で修飾した)を使用して、癌性組織中の細胞(癌性細胞自体、および癌と結合するかまたは癌に進入している細胞を含む)を選択的に阻害することができる。
結合タンパク質を、作用物質(例えば、様々な細胞傷害性薬および治療薬のいずれか)をMMP−9および/またはMMP−2が存在する細胞および組織へ送達するために使用してもよい。例示的な作用物質は、放射線を放出する化合物、植物、真菌、または細菌起源の分子、生体タンパク質、およびこれらの混合物を含む。細胞傷害性薬は、毒素、短距離放射線放射体、例えば、短距離高エネルギーα放射体などの細胞内作用性の細胞傷害性薬であってもよい。
MMP−9発現細胞および/またはMMP−2発現細胞、特に癌性細胞を標的化するために、プロドラッグシステムを使用することができる。例えば、第1の結合タンパク質を、プロドラッグ活性化剤とごく近接するときのみ活性化されるプロドラッグとコンジュゲートする。プロドラッグ活性化剤を、第2の結合タンパク質、好ましくは標的分子の非競合部位に結合するものとコンジュゲートする。2つの結合タンパク質が競合または非競合結合部位に結合するかどうかは、従来の競合的結合アッセイによって決定することができる。例示的な薬物プロドラッグ対は、Blakelyら、(1996年)Cancer Research、56巻:3287〜3292頁において記述されている。
MMP−9/MMP−2結合タンパク質を直接インビボで使用して、天然の補体依存性細胞傷害(CDC)または抗体依存性細胞傷害(ADCC)を介して抗原発現細胞を排除することができる。本明細書に記載の結合タンパク質は、補体に結合するIgG1、−2、もしくは−3のFc部分またはIgMの対応する部分などの補体結合エフェクタードメインを含むことができる。一実施形態において、標的細胞の集団を、本明細書に記載の結合剤および適切なエフェクター細胞を用いてエクスビボで処理する。処理は、補体または補体を含有する血清の添加によって補足することができる。さらに、本明細書に記載の結合タンパク質で被覆された標的細胞の貪食を、補体タンパク質の結合によって改善することができる。別の実施形態の標的において、補体結合エフェクタードメインを含む結合タンパク質で被覆された細胞は、補体によって溶解される。
MMP−9/MMP−2結合タンパク質を投与する方法は、「Pharmaceutical Compositions」に記述されている。使用される分子の適当な用量は、対象の年齢および体重ならびに使用される特定の薬物に依存する。結合タンパク質は、例えば、天然因子または病理学的因子とMMP−9またはMMP−2との間の、望ましくない相互作用を阻害する、または減少させるための競合剤として使用することができる。
MMP−9/MMP−2結合タンパク質を使用して、内皮または上皮中への遺伝子療法の目的でマクロおよびミクロ分子、例えば、遺伝子を細胞中へ送達し、MMP−9およびMMP−2を発現する組織のみを標的化することができる。結合タンパク質を、治療薬、放射線を放出する化合物、植物、真菌、または細菌起源の分子、生体タンパク質、およびこれらの混合物を含む様々な細胞傷害性薬を送達するために使用してもよい。細胞傷害性薬は、本明細書に記載の通り、例えば、短距離高エネルギーα放射体を含む短距離放射線
放射体などの細胞内作用性の細胞傷害性薬であってもよい。
ポリペプチド毒素の場合は、組換え核酸技術を使用して、結合タンパク質(例えば、抗体またはその抗原結合断片)および細胞毒(またはそのポリペプチド構成要素)を翻訳融合物としてコードする核酸を構築することができる。次いで組換え核酸を、例えば細胞中で発現させ、コードされている融合ポリペプチドを単離する。
代替として、MMP−9/MMP−2結合タンパク質を、高エネルギー放射線放射体、例えば、ある部位に局在化する場合に細胞数個分の直径の死滅をもたらすγ−放射体である131Iなどの放射性同位体に結合することができる。例えば、S.E. Order、「Analysis, Results, and Future Prospective of the Therapeutic Use of Radiolabeled Antibody in Cancer Therapy」、Monoclonal Antibodies for Cancer Detection and Therapy、R.W. Baldwinら(編)、303〜316頁(Academic
Press 1985年)を参照されたい。他の適当な放射性同位体は、212Bi、213Bi、および211Atなどのa放射体、ならびに186Reおよび90Yなどのb放射体を含む。さらに、177Luもまた、造影剤および細胞傷害剤の両方として使用してもよい。
131I、90Y、および177Luで標識した抗体を使用した放射免疫療法(RIT)は、熱心に臨床研究されている。これらの3つの核種の物理的特性には顕著な違いが存在し、結果として、目的の組織へ最大の放射線量を送達するために、放射性核種の選択は極めて重要である。90Yのより高いβエネルギー粒子は、大きな腫瘍に有利である可能性がある。131Iの比較的低いエネルギーβ粒子は理想的であるが、抗体取り込みに関して放射性ヨウ化分子のインビボ脱ハロゲン化が主な不利点である。対照的に、177Luは、わずか0.2〜0.3mmの範囲の低いエネルギーβ粒子を有し、90Yと比較してはるかに低い放射線量を骨髄へ送達する。加えて、(90Yと比較して)長い物理的半減期のために、滞留時間がより長い。結果として、177Lu標識された作用物質のより高い活性(より多量のmCi)を、比較的少ない放射線量で骨髄に投与することができる。様々な癌の治療において177Lu標識抗体の使用を研究するいくつかの臨床研究がなされてきた。(Mulligan Tら、1995年、Clin. Canc. Res.1巻:1447〜1454頁;Meredith RFら、1996年、J. Nucl. Med.37巻:1491〜1496頁;Alvarez RDら、1997年、Gynecol. Oncol.65巻:94〜101頁)。
例示的な疾患および状態
本明細書に記載のMMP−9/MMP−2結合タンパク質は、MMP−9および/またはMMP−2が関係している疾患または状態、例えば、本明細書に記載の疾患または状態を治療するために、またはそれらに関連する1つまたは複数の症状を治療するために有用である。いくつかの実施形態において、MMP−9/MMP−2結合タンパク質(例えば、MMP−9/MMP−2結合IgGまたはFab)は、MMP−9活性、例えば、触媒活性、および/またはMMP−2活性、例えば、触媒活性を阻害する。
このような疾患および状態の例は、癌(例えば、転移性癌、例えば、転移性乳癌)、炎症性疾患(例えば、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、喘息、鼻炎(例えば、アレルギー性鼻炎)、炎症性腸疾患、滑膜炎、関節リウマチ)、心不全、敗血症性ショック、神経障害性疼痛、骨関節炎、または眼疾患(例えば、黄斑変性)を含む。治療有効量のMMP−9/MMP−2結合タンパク質を、MMP−9および/またはMMP−2が関係している障害を有する対象またはそれを有する疑いがある対象に投与し、これにより障害を治療する
(例えば、障害の症状または特徴を回復させるまたは改善する、疾患進行を遅らせる、安定させるまたは停止させる)。
MMP−9/MMP−2結合タンパク質を、治療有効量で投与する。治療有効量のMMP−9/MMP−2結合タンパク質は、対象への単回用量または複数回用量投与のときに、このような治療を行わない場合に予想される以上の程度までの対象の治療、例えば、対象の少なくとも1つの障害の症状の回復、緩和、軽減または改善に有効な量である。組成物の治療有効量は、個体の病態、年齢、性別、および体重、ならびに化合物の個体において所望の応答を誘発する能力などの因子によって異なる場合がある。治療有効量はまた、組成物の任意の毒性作用または有害作用よりも治療的に有益な効果が勝る量である。
治療有効量、典型的には、対象への単回用量または複数回用量投与のときに、このような治療を行わない場合に予想される以上の程度までの対象の治療、例えば、対象の少なくとも1つの障害の症状の回復、緩和、軽減または改善に有効な化合物の量を投与することができる。組成物の治療有効量は、個体の病態、年齢、性別、および体重、ならびに化合物の個体において所望の応答を誘発する能力などの因子によって異なる場合がある。治療有効量はまた、組成物の任意の毒性作用または有害作用よりも治療的に有益な効果が勝る量である。治療有効用量は、好ましくは、測定可能なパラメータを、治療していない対象に比較して有利に調節する。化合物の測定可能なパラメータを阻害する能力は、ヒト障害における有効性を予測する動物モデル系において評価することができる。
投薬レジメンは、最適な所望の応答(例えば、治療的応答)をもたらすために調整することができる。例えば、単回ボーラスを投与してもよく、いくつかの分割用量を経時的に投与してもよく、または用量を、治療状況の要件に示されるように比例的に減少または増加させてもよい。投与の容易さおよび用量の均一性のために、投薬単位形態で非経口組成物を調合することは特に有利である。本明細書において使用される場合、投薬単位形態は、治療される対象のための単一用量として適する、物理的に分離した単位をいう。各単位は、所要の医薬担体と関連して所望の治療効果を生じさせるように計算された所定量の活性化合物を含む。

MMP−9およびMMP−2などのマトリックスメタロプロテアーゼ(MMP)は、ECMおよび基底膜の構成要素を切断し、これにより癌細胞がその下の間質マトリックスに浸透および浸潤できるようにすることによって癌に寄与すると考えられている。さらに、多くの成長因子受容体、細胞接着分子、ケモカイン、サイトカイン、アポトーシスリガンド、および脈管形成因子が、MMPの基質である。したがって、MMP活性は、成長因子の活性化、腫瘍細胞アポトーシスの抑制、宿主免疫応答によって発生したケモカイン勾配の破壊、または脈管形成因子の放出を引き起こし得る。MMPは、特異的な結合タンパク質(IGFBP)に結合しているインスリン様成長因子などの細胞増殖因子の放出を促進することによって腫瘍成長を容易にし得る(Manesら、1997年J. Biol.
Chem. 272巻:25706〜25712頁)。
MMP−9およびMMP−2を含むコラゲナーゼは、メラノーマならびに結腸癌、乳癌、肺癌、前立腺癌、および膀胱癌において高レベルで見出されている。通常、これらの高レベルは、高い腫瘍悪性度および侵襲性と相関関係にある。MMP−2レベルは、転移肺癌患者の血清において、および化学療法に対する応答が減少している患者においては高レベルで、顕著に上昇する。MMP−9は、腫瘍侵襲性および再発に寄与している可能性がある。
したがって、本開示は、有効量のMMP−9/MMP−2結合タンパク質(例えば、抗
MMP−9/MMP−2 IgGまたはFab)を投与することによって、癌(例えば、Her2+、Her2−、ER+、ER−、Her2+/ER+、Her2+/ER−、Her2−/ER+、およびHer2−/ER−乳癌を含む乳癌)、頭頚部癌、口腔癌、喉頭癌、軟骨肉腫、膀胱癌、卵巣癌、睾丸癌、メラノーマ、脳腫瘍(例えば、星状細胞腫、膠芽腫、神経膠腫))を治療する(例えば、腫瘍成長を遅らせる、排除する、もしくは逆転させる、数もしくは大きさにおいて転移を予防するもしくは減少させる、腫瘍細胞侵襲性を減少させるもしくは排除する、腫瘍進行の間隔増加をもたらす、または無病生存期間を増加させる)方法を提供する。いくつかの実施形態において、MMP−9/MMP−2結合タンパク質は、MMP−9活性およびMMP−2活性を阻害する。
特定の実施形態において、MMP−9/MMP−2結合タンパク質を、単剤治療として投与する。別の実施形態において、MMP−9/MMP−2結合タンパク質を、さらなる抗癌剤と併用して投与する。
有効量のMMP−9/MMP−2結合タンパク質を、癌を発症するリスクのある対象に投与し、これにより対象の癌を発症するリスクを減少させることによって、癌を発症するリスクを予防するまたは減少させる方法もまた提供される。
本開示はさらに、有効量のMMP−9/MMP−2結合タンパク質を投与し、これにより腫瘍部位の新脈管形成を減少させるまたは予防することによって、腫瘍部位の新脈管形成を調節する(例えば、減少させるまたは予防する)方法を提供する。MMP−9/MMP−2結合タンパク質を、単剤療法としてまたはさらなる作用物質と併用して投与してもよい。
有効量のMMP−9/MMP−2結合タンパク質を対象に投与し、これにより対象の腫瘍による細胞外マトリックス(ECM)分解を減少させる工程を含む、腫瘍によるECM分解を減少させるための方法もまた提供される。
開示される方法は、充実性腫瘍、軟組織腫瘍、およびこれらの転移の予防および治療において有用である。充実性腫瘍は、肺、乳房、リンパ系、膀胱、胃腸(例えば、結腸)、および泌尿生殖(例えば、腎臓、尿路上皮、または睾丸腫瘍)路、咽頭、前立腺、および卵巣などの様々な器官系の悪性腫瘍(例えば、肉腫、腺癌、および癌腫)を含む。例示的な腺癌は、直腸結腸癌、腎細胞癌、肝臓癌、非小細胞肺癌、および小腸癌を含む。さらなる例示的な充実性腫瘍は、線維肉腫、粘液肉腫、脂肪肉腫、軟骨肉腫、骨原性肉腫、脊索腫、血管肉腫、内皮肉腫、リンパ管肉腫、リンパ管内皮肉腫、滑膜腫、中皮腫、ユーイング腫瘍、平滑筋肉腫、横紋筋肉腫、胃腸系癌腫、結腸癌腫、膵臓癌、乳癌、泌尿生殖系癌腫、卵巣癌、前立腺癌、扁平上皮癌腫、基底細胞癌腫、腺癌、汗腺癌腫、脂腺癌腫、乳頭癌腫、乳頭腺癌、嚢胞腺癌、髄様癌腫、気管支原性癌腫、腎細胞癌腫、肝臓癌、胆管癌腫、絨毛癌、精上皮腫、胎児性癌腫、ウィルムス腫瘍、子宮頚癌、内分泌系癌腫、睾丸腫瘍、肺癌腫、小細胞肺癌腫、非小細胞肺癌腫、膀胱癌腫、上皮癌腫、神経膠腫、星状細胞腫、髄芽腫、頭蓋咽頭腫、上衣腫、松果体腫、血管芽腫、聴神経腫、乏突起膠細胞腫、髄膜腫、メラノーマ、神経芽腫、および網膜芽腫を含む。前述した癌の転移もまた、本明細書に記載の方法に従って治療または予防することができる。
癌治療に対する治療有効量を決定するための指針は、治療される癌のインビボモデルを参照することにより入手してもよい。例えば、癌のげっ歯動物またはLibechovミニブタモデルにおいて治療有効量であるMMP−9/MMP−2結合タンパク質の量を、治療有効量である用量の選択を導くために使用してもよい。ヌードマウス/腫瘍異種移植片系(例えば、メラノーマ異種移植片;例えば、TrikhaらCancer Research 62巻:2824〜2833頁(2002年)を参照)および乳癌または神経
膠腫のマウスモデル(例えば、Kuperwasserら、Cancer Research 65巻、6130〜6138頁、(2005年);Bradfordら、Br J
Neurosurg.3(2)巻:197〜210頁(1989年))を含む、多くのヒト癌のげっ歯動物モデルが利用可能である。黒芽細胞腫担癌Libechovミニブタ(MeLiM)は、メラノーマの動物モデルとして利用可能である(例えば、Boisgardら、Eur J Nucl Med Mol Imaging 30(6)巻:826〜34頁(2003年))。
滑膜炎
滑膜炎は、通常わずか細胞数個の層の厚さの組織である滑膜の炎症によって特徴づけられる疾患である。滑膜炎において、滑膜は、体液で肥厚し、より細胞質性になり、鬱滞する可能性がある。滑膜炎は、患部の関節内で疼痛および炎症を引き起こす可能性があり、関節炎状態(例えば、関節リウマチ)においてよく見られる。
活性な滑膜MMP−2は、初期滑膜炎患者におけるX線像のびらんに関連している(Goldbach−Manskyら、2000年、Arthritis Res、2巻:145〜153頁)。MMP−2およびTIMP−2の滑膜組織発現は、正常な滑膜組織試料において実質的に検出不能である。びらん性疾患を有する患者の滑膜組織試料は、びらんを有さない患者のものよりも顕著に高いレベルの活性なMMP−2を有する。このことは、これらの組織において見られるMMP−9レベルの増加および低レベルのTIMP−2によって増大したMMP−2の活性化を反映し得る。したがって、活性なMMP−2は、関節リウマチおよび骨関節炎の発症および/または進行に寄与し得る。
MMP−9レベルの増加は、関節炎を有する対象の滑液において見出されている(正常な個体と比較して)。本開示は、治療有効量のMMP−9/MMP−2結合タンパク質を投与することによって、滑膜炎を治療する(例えば、疼痛、関節腫脹、滑膜肥厚、滑液の増加などの滑膜炎の症状を改善する、安定させる、減少させる、または除去する)方法を提供する。MMP−9/MMP−2結合タンパク質療法をさらなる療法と組み合わせる方法もまた提供される。滑膜炎に対する現在の療法は、抗炎症薬(例えば、NSAIDSおよびイブプロフェン)、関節へのコルチゾン注射、および外科治療(例えば、滑膜切除)を含む。これらの治療の1つまたは複数を、MMP−9/MMP−2結合タンパク質(例えば、阻害性MMP−9/MMP−2結合タンパク質、例えば、抗MMP−9/MMP−2 IgGまたはFab)と併用して使用して、この状態を治療することができる。
MMP−9/MMP−2結合タンパク質の治療有効量を決定するための指針は、滑膜炎の動物モデルから入手してもよい。滑膜炎様炎症のラットモデル(Cirinoら、J Rheumatol.21(5)巻:824〜9頁(1994年))、およびオスのWistarラットにおけるカラギーナン滑膜炎モデル(WalshらLab Invest.78(12)巻:1513〜21頁(1998年))を含む滑膜炎のげっ歯動物モデルが利用可能である。
関節リウマチおよび関連する状態
関節リウマチ(RA)は、関節腫脹および疼痛を引き起こす自己免疫性の慢性炎症性疾患であり、通常、関節破壊をもたらす。RAは一般に、疾患症状の寛解に挟まれる疾患活性の「フレア(flare)」と共に、再発/寛解経過に続いて起こる。RAは、シェーグレン症候群(涙腺および唾液腺の炎症によって引き起こされるドライアイおよびドライマウス)、胸膜炎(深呼吸および咳嗽時に疼痛を引き起こす胸膜の炎症)、リウマチ結節(肺内で発生する結節部位の炎症)、心膜炎(伏臥または前傾時に疼痛を引き起こす心膜の炎症)、フェルティ症候群(対象を感染症にかかり易くする、RAと共に観察される巨脾症および白血球減少症、)および血管炎(血流を遮断する可能性がある血管の炎症)を
含む、多くのさらなる炎症障害と関連している。MMP−2、MMP−9およびMMP−16は、関節リウマチに関与している。
活動性RAの症状は、倦怠感、食欲不振、微熱、筋肉および関節痛、ならびにこわばりを含む。筋肉および関節のこわばりは、通常、朝および無活動期間の後に最も顕著である。フレアの間、一般に滑膜炎の結果として、関節は頻繁に発赤、腫脹し、疼痛、圧痛を感じるようになる。
関節リウマチに対する治療は、薬物治療、安静、関節強化訓練、および関節保護の組合せを含む。関節リウマチの治療において2つのクラスの薬剤:抗炎症「第一選択薬」、および疾患修飾性抗リウマチ薬(DMARD)が使用される。第一選択薬は、NSAIDS(例えば、アスピリン、ナプロキセン、イブプロフェン、およびエトドラク)およびコルチゾン(コルチコステロイド)を含む。金(例えば、金塩、金チオグルコース、金チオリンゴ酸塩、経口金)、メトトレキサート、スルファサラジン、D−ペニシラミン、アザチオプリン、シクロホスファミド、クロラムブシル、およびシクロスポリン、レフルノミド、エタネルセプト、インフリキシマブ、アナキンラ、およびアダリムマブ、およびヒドロキシクロロキンなどのDMARDSは、疾患寛解を促進し、進行性の関節破壊を予防するが、これらは抗炎症剤ではない。
MMP−9レベルの増加は、関節炎を有する対象の滑液において見出されている(正常な個体と比較して)。本開示は、治療有効量のMMP−9/MMP−2結合タンパク質をRAを有する対象またはそれを有する疑いがある対象に投与することによって、関節リウマチを治療する(例えば、1つまたは複数の症状を改善する、安定させる、もしくは除去する、またはRA尺度の対象のスコアを改善するもしくは安定させる)方法を提供する。治療有効量のMMP−9/MMP−2結合タンパク質および少なくとも1つのNSAIDおよび/またはDMARDSを投与することによって、RAを治療する方法がさらに提供される。
治療有効量のMMP−9/MMP−2結合タンパク質を投与することによって、関節リウマチに関連する障害(シェーグレン症候群、胸膜炎、肺のリウマチ結節、心膜炎、フェルティ症候群、および血管炎)を治療する(例えば、1つまたは複数の症状を改善する、安定させる、または除去する)方法がさらに提供される。
RAおよびRAの症状を評価するために有用な尺度は、関節リウマチ重症度尺度(RASS;Bardwellら、(2002年)Rheumatology 41(1)巻:38〜45頁)、SF−36関節炎特有の健康指標(ASHI;Wareら、(1999年)Med. Care.37(5Suppl):MS40〜50頁)、関節炎の影響測定尺度または関節炎の影響測定尺度2(AIMSまたはAIMS2;Meenanら(1992年)Arthritis Rheum.35(1)巻:1〜10頁);スタンフォード健康評価質問票(HAQ)、HAQII、または改訂HAQ(例えば、Pincusら(1983年)Arthritis Rheum.26(11)巻:1346〜53頁を参照)を含む。
治療有効量のMMP−9/MMP−2結合タンパク質を送達する用量を決定するための指針は、アジュバントにおいて自己由来または異種のII型コラーゲンを免疫化することによって、典型的にはげっ歯動物において誘導されるコラーゲン誘導性関節炎(CIA)などの関節リウマチの動物モデルから入手してもよい(WilliamsらMethods Mol Med.98巻:207〜16頁(2004年))。
COPD
慢性閉塞性気道疾患(COAD)としても公知の慢性閉塞性肺疾患(COPD)は、完全には可逆的でない気道における気流の病理学的制限によって特徴づけられる疾患群である。COPDは、慢性気管支炎、肺気腫および様々な別の肺障害の包括的な用語である。これは喫煙に起因することが最も多いが、炭塵、アスベストまたは溶媒、ならびにα−1アンチトリプシン欠損症などの先天的状態などの別の空気中の刺激物に起因する可能性もある。
COPDの主な症状は、場合により喘鳴、および痰の生成を伴う持続性の咳を伴う、数カ月またはおそらく数年間続く呼吸困難(息切れ)を含む。通常は気道の血管の損傷のために、痰が血液を含有(喀血)し、粘性が高くなることもあり得る。重度のCOPDは、血液中の酸素欠乏によって引き起こされるチアノーゼにつながることもある。極端な場合には、心臓が血液を肺に流すために必要とされる余分な活動のために、肺性心につながることもある。
COPDは、1秒間努力呼気容量(FEV)の努力肺活量(FVC)に対する比が0.7未満であり、FEVが、プレチスモグラフによって測定される予測値の80%未満である肺活量測定値によって特に特徴づけられる。他の徴候は、速い呼吸速度(頻呼吸)および聴診器を通して聞こえる喘鳴音を含む。肺気腫は、触診時に生じる捻髪音によって検出することができる皮下の空気の集まりである皮下気腫と同じではない。
COPDに対する治療は、気道を広げる吸入剤(気管支拡張薬)および時にテオフィリンを含む。COPD患者は喫煙を中止しなければならない。場合によっては吸入ステロイドを使用して肺炎症を抑制し、重症例または再発では静脈内または経口ステロイドを投与する。感染症がCOPDを悪化させる可能性があるので、症状の再発中は抗生物質を使用する。場合によって、長期にわたる低流量の酸素、非侵襲性の換気、または挿管が必要な場合もある。疾患肺の一部を除去するための手術は、一部のCOPD患者にとって有益であることが示されている。肺リハビリテーションプログラムは、一部の患者に有益であり得る。重症例では、時に肺移植が行われる。使用することができる気管支拡張薬は、以下を含む。
様々な効力を有する、臨床で使用されるいくつかの種類の気管支拡張薬、例えば、βアゴニスト、M抗ムスカリン薬、ロイコトリエンアンタゴニスト、クロモン、コルチコステロイド、およびキサンチンが存在する。これらの薬物は、気道の平滑筋を弛緩させて気流の改善を可能にする。βアゴニストは、サルブタモール(ヴェントリン)、バンブテロール、クレンブテロール、フェノテロール、およびホルモテロール、ならびにサルメテロールなどの長時間作用型βアゴニスト(LABA)を含む。Mムスカリンアンタゴニスト(抗コリン作用薬)は、LABAおよび吸入ステロイドと組み合わせることができる、βアゴニストのサルブタモール、イプラトロピウム、およびチオトロピウムと共に広範に処方されている、第4のMムスカリンアンタゴニストのイプラトロピウムを含む。クロモンは、クロモグリケートおよびネドクロミルを含む。ロイコトリエンアンタゴニストを使用することができ、これはモンテルカスト、プランルカスト、ザフィルルカストを含む。キサンチンは、テオフィリン、メチルキサンチン、テオブロミンを含む。より積極的なEMR介入は、IV H抗ヒスタミン薬およびIVデキサメタゾンを含む。ホスホジエステラーゼ4アンタゴニストは、ロフルミラストおよびシロミラストを含む。コルチコステロイドを使用することができ、これはグルココルチコイド、ベクロメタゾン、モメタゾン、およびフルチカゾンを含む。コルチコステロイドは、単一の吸入器において気管支拡張薬と併用されることが多い。サルメテロールおよびフルチカゾンは併用することができる(ADVAIR)。TNFアンタゴニストは、カケキシン、カケクチン インフリキシマブ、アダリムマブおよびエタネルセプトを含む。
本開示は、治療有効量のMMP−9/MMP−2結合タンパク質(例えば、阻害性MMP−9/MMP−2結合タンパク質、例えば、抗MMP−9/MMP−2 IgGまたはFab)を、COPDを有する対象またはそれを有する疑いがある対象に投与することによって、COPDを治療する(例えば、COPDの症状または悪化を改善する)方法を提供する。別のCOPD治療薬(例えば、βアゴニスト、M抗ムスカリン薬、ロイコトリエンアンタゴニスト、クロモン、コルチコステロイド、およびキサンチン)と共に治療有効量のMMP−9/MMP−2結合タンパク質を投与することによって、COPDを治療する方法もまた提供される。
治療有効量のMMP−9/MMP−2結合タンパク質を送達する該タンパク質の効力および用量に関する指針は、COPDの動物モデルから入手することができ、例えば、PCT公開第WO2007/084486号およびそれに引用されている参考文献を参照されたい。
喘息
喘息は、しばしば1つまたは複数のトリガーに応答して、気道が時々収縮し、炎症を起こし、過剰量の粘液に覆われている呼吸器系を含む慢性疾患である。こうしたエピソードは、冷気、暖気、湿った空気、運動または激しい活動(exertion)または感情的ストレスなどの環境刺激物(またはアレルゲン)への曝露のようなものによって誘発され得る。小児において、最も一般的なトリガーは、感冒を引き起こすものなどのウイルス性疾患である。この気道狭窄は、喘鳴、息切れ、胸部圧迫感、および咳などの症状を引き起こす。気道収縮は、気管支拡張薬に反応する。
一部の個体において、喘息は、慢性呼吸障害によって特徴づけられる。その他において、喘息は、上気道感染、ストレス、空気中のアレルゲン、大気汚染物質(煤煙または排気ガス(traffic fumes)など)、または運動を含む多くの誘発事象によって生じ得る、偶発的な症状を特徴とする間欠的な病気である。呼吸困難、喘鳴、ぜん音、咳、身体活動不能の症状の一部または全てが、喘息を有する人において存在し得る。重度の息切れおよび肺の締めつけを有する一部の喘息患者は、全く喘鳴またはぜん音を生じず、これらの症状はCOPD型の疾患と混同される場合がある。
喘息の急性憎悪は、一般に喘息発作と呼ばれる。発作の臨床的特質は、息切れ(呼吸困難)および、喘鳴またはぜん音のいずれかである。
喘息エピソードの間、炎症を起こした気道は煤煙、塵、または花粉などの環境誘因物質に反応する。気道は狭窄し、過剰な粘液を産生して呼吸を困難にする。本質的に、喘息は、気管支気道における免疫応答の結果である。
喘息患者の気道は、特定のトリガー/刺激に対して「過敏性」である。これらのトリガーへの曝露に応答して、気管支(太い気道)は収縮して痙攣を起こす(「喘息発作」)。すぐに炎症が続いて起こり、さらに気道の狭窄および過剰な粘液産生をもたらし、これにより咳および別の呼吸困難をもたらす。
喘息の最も有効な治療は、ペットまたはアスピリンなどのトリガーを特定すること、およびこれらへの曝露を制限または除去することである。脱感作は、現在、この疾患に対する唯一の公知の「治療法」である。
喘鳴および息切れのエピソードの症状管理は、一般に、速効性の気管支拡張薬によって達成される。
軽減薬:サルブタモール(アルブテロールUSAN)、レバルブテロール、テルブタリンおよびビトルテロールなどの短時間作用型の選択的β−アドレナリン作用性受容体アゴニストを使用することができる。吸入エピネフリンおよびエフェドリン錠などの以前からの、選択性の低いアドレナリン作用性アゴニストを使用することができる。臭化イプラトロピウムなどの抗コリン作用薬を使用してもよい。
予防薬:現在の治療プロトコールは、頻繁に(週に2回を超える)軽減剤を必要とするまたは重度の症状を有する人であれば、炎症を抑制し気道内部の腫脹を減少させるのに役立つ吸入コルチコステロイドなどの予防薬を推奨している。症状が持続する場合、喘息が抑制されるまでさらなる予防薬を加える。予防薬の適切な使用により、喘息患者は、軽減薬の使いすぎから生じる合併症を避けることができる。予防剤は、吸入グルココルチコイド(例えば、シクレソニド、ベクロメタゾン、ブデソニド、フルニソリド、フルチカゾン、モメタゾン、およびトリアムシノロン)、ロイコトリエン修飾剤(例えば、モンテルカスト、ザフィルルカスト、プランルカスト、およびジレウトン)、マスト細胞安定化剤(例えば、クロモグリケート(クロモリン)、およびネドクロミル)、抗ムスカリン薬/抗コリン作用薬(例えば、イプラトロピウム、オキシトロピウム、およびチオトロピウム)、メチルキサンチン(例えば、テオフィリンおよびアミノフィリン)、抗ヒスタミン薬、オマリズマブ、メトトレキサートなどのIgE遮断剤)を含む。
長時間作用型β−アドレナリン受容体作用性アゴニストを使用することができ、これは、サルメテロール、ホルモテロール、バンブテロール、および持続放出経口アルブテロールを含む。吸入ステロイドと長時間作用型気管支拡張薬との組合せはより広範になってきている。現在使用されている最も一般的な組合せは、フルチカゾン/サルメテロール(米国ではAdvair、および英国ではSeretide)である。別の組合せは、Symbicortとして公知の市販されているブデソニド/ホルモテロールである。
喘息対象の気管支肺胞洗浄液(BAL)、痰、気管支、および血清において、正常な個体と比較してMMP−9の濃度が増加している。本開示は、治療有効量のMMP−9/MMP−2結合タンパク質(例えば、阻害性MMP−9/MMP−2結合タンパク質、例えば、抗MMP−9/MMP−2 IgGまたはFab)を、喘息を有する対象またはそれを有する疑いがある対象に投与することによって、喘息を治療する(例えば、喘息の症状または悪化を改善する)方法を提供する。別の喘息治療薬(例えば、グルココルチコイド、ロイコトリエン修飾剤、マスト細胞安定化剤、抗ムスカリン薬/抗コリン作用薬、抗ヒスタミン薬、IgE遮断剤、メトトレキサート)と共に治療有効量のMMP−9/MMP−2結合タンパク質を投与することによって喘息を治療する方法もまた提供される。
治療有効量のMMP−9/MMP−2結合タンパク質を送達する該タンパク質の効力および用量に関する指針は、喘息の動物モデルから入手することができ、例えば、米国特許第5,602,302号、または欧州特許第EP1192944B1号およびそれらに引用されている参考文献を参照されたい。
鼻炎
鼻炎は、鼻内部領域の一部に対する刺激および炎症を説明する医学用語である。鼻炎の主な症状は、鼻水である。これは、ウイルス、細菌または刺激物による鼻粘膜の慢性または急性炎症によって引き起こされる。炎症は、鼻水を産生する粘液の過剰量の生成、鼻づまりおよび後鼻漏をもたらす。鼻炎はまた、単に鼻、喉、および眼以外にも有害な影響を及ぼすことも分かっている。このことは睡眠障害、耳の障害と関連しており、学習障害にも関連している。鼻炎は、ヒスタミンの増加によって引き起こされる。この増加は、空気中のアレルゲンによって引き起こされるようである。これらのアレルゲンは、個体の鼻、喉、または眼に影響を及ぼし、これらの領域内の体液産生の増加をもたらし得る。一般的
集団が罹患し得る2つの種類の鼻炎:アレルギー性鼻炎および非アレルギー性鼻炎が存在する。罹患者がアレルギー性鼻炎を有すると分類される場合、鼻炎がIgEに仲介されると考えられる。
アレルギー性鼻炎の診断およびモニタリングの典型的な方法は、「スクラッチ試験」および「プリック試験」としても公知の、患者の皮膚に作製した一連の刺傷および/または引っ掻き傷による皮膚試験である。少量の疑わしいアレルゲンおよび/またはそれらの抽出物(花粉、草、ダニタンパク質、落花生抽出物など)を、ペンまたは色素で印をつけた皮膚の部位に導入する。
鼻炎の管理は大部分が内科的である。季節性鼻炎に対する治療は、適切な時期の間のみ必要とされる。現在の治療は、抗ヒスタミン錠およびスプレー、ロイコトリエンアンタゴニスト、鼻コルチコステロイドスプレー、充血除去剤錠またはスプレー、アレルゲン免疫療法、ネティポットの使用によるまたは別の手段による副鼻腔の生理食塩水洗浄を含む。通年性鼻炎における鼻閉塞は、手術によって治療してもよい。
本開示は、治療有効量のMMP−9/MMP−2結合タンパク質(例えば、阻害性MMP−9/MMP−2結合タンパク質、例えば、抗MMP−9/MMP−2 IgGまたはFab)を、鼻炎を有する対象またはそれを有する疑いがある対象に投与することによって、鼻炎(例えば、アレルギー性鼻炎)を治療する(例えば、鼻炎の症状または悪化を改善する)方法を提供する。別の鼻炎治療(例えば、βアゴニスト、M抗ムスカリン薬、ロイコトリエンアンタゴニスト、クロモン、コルチコステロイド、およびキサンチン)と共に治療有効量のMMP−9/MMP−2結合タンパク質を投与することによって、鼻炎を治療する方法もまた提供される。
治療有効量のMMP−9/MMP−2結合タンパク質を送達する該タンパク質の効力および用量に関する指針は、鼻炎の動物モデルから入手することができ、例えば、Zhaoら(2005年)Rhinology43巻:47〜54頁、およびそれに引用されている参考文献を参照されたい。
IBD
炎症性腸疾患(IBD)は、大腸および、いくつかの場合、小腸の炎症疾患の一群である。IBDの主な型はクローン病および潰瘍性大腸炎(UC)である。IBDの他の型のさらにいくつかの例を占めるのは、コラーゲン性大腸炎、リンパ球性大腸炎、虚血性大腸炎、多様性大腸炎、ベーチェット症候群、感染性大腸炎、および未定型大腸炎である。
クローン病とUCの間の主な差は、炎症変化の位置および性質である。クローン病は、(病変を除く)口から肛門までの胃腸管の任意の部分に影響を与える可能性があるが、大部分の症例は回腸末端において始まる。潰瘍性大腸炎は対照的に、結腸および直腸に限られる。
顕微鏡で見ると、潰瘍性大腸炎は粘膜(消化管の上皮内層)に限られるが、一方クローン病は腸壁全体に影響を与える。
最後に、クローン病および潰瘍性大腸炎は、異なる割合で腸管外徴候(肝臓障害、関節炎、皮膚徴候および眼障害など)と共に存在する。
まれに、クローン病も潰瘍性大腸炎のいずれの確定診断も、提示される特異体質のため行うことができない。この場合、未定型大腸炎の診断を行うことができる。
診断:非常に異なる疾患であるが、両者は以下の症状:腹痛、嘔吐、下痢、血便排泄、体重減少、体重増加および様々な関連愁訴または疾患(関節炎、壊疽性膿皮症、原発性硬化性胆管炎)のいずれかと共に存在し得る。診断は一般に病変の生検を伴う結腸鏡検査およびによる。
治療:重症度のレベルに応じて、IBDは症状を制御するために免疫抑制を必要とする場合がある。アザチオプリン、メトトレキサート、または6−メルカプトプリンなどの免疫抑制剤を使用することができる。より一般的には、IBDの治療はある型のメサラミンを必要とする。しばしば、ステロイドが疾患再燃を制御するために使用され、ステロイドは維持薬物として以前は許容されていた。クローン病患者における数年間の使用において、および近年では潰瘍性大腸炎を有する患者において、レミケードなどの生物学的製剤が使用されている。重症例は、腸切除、狭窄形成術または一時的もしくは永久人工肛門または回腸フィステル形成術などの外科手術を必要とする場合がある。腸疾患に対する他の医学療法が様々な形で存在するが、しかしながらこのような方法は、根底の病状の制御に専念して、長時間のステロイド曝露または外科的切除を回避する。
通常治療は、高い抗炎症効果を有するプレドニソンなどの薬剤を投与することによって開始する。炎症を首尾良く制御した後、患者は通常、メサラミンであるアサコールなどの軽い薬に変更して、疾患を寛解したままに保つ。成功しなかった場合、前述の免疫抑制剤とメサラミンの組合せ(これも抗炎症効果を有し得る)を、患者に応じて投与することができる、または投与することができない。
本開示は、IBDを有する対象またはそれを有する疑いがある対象に、治療有効量のMMP−9/MMP−2結合タンパク質(例えば、阻害性MMP−9/MMP−2結合タンパク質、例えば、抗MMP−9/MMP−2 IgGまたはFab)を投与することによって、IBDを治療する(例えば、IBDの症状または悪化を改善する)方法を提供する。治療有効量のMMP−9/MMP−2結合タンパク質および別のIBD治療剤(例えば、アザチオプリン、メトトレキサート、6−メルカプトプリン、メサラミン、レミケード)を投与することによる、IBDを治療する方法も提供する。
治療有効量のMMP−9/MMP−2結合タンパク質を送達する該タンパク質の効力および用量に関する指針は、IBDの動物モデルから得ることができる。例えば、米国特許第6,114,382号、PCT公開WO2004/071186およびその中で列挙された参照文献中に記載されたものを参照されたい。
眼疾患
黄斑変性。黄斑変性は、黄斑、網膜の中心部分を次第に破壊し、中心視野を悪化させ、明瞭なな中心視野を必要とする、読書、運転、および/または他の日常の活動に困難をもたらす。いくつかの異なる型の黄斑変性が存在するが、最も一般的なのは加齢性黄斑変性(AMD)である。AMDは「乾燥型」または「滲出型」のいずれかとして現れ、「滲出型」が一層より一般的である。滲出型AMDでは、新たに形成された網膜下血管(網膜下血管新生)から漏出する液体が、黄斑を弯曲させ視野を悪化させる。AMDの症状には、中心視野の消失または悪化(一般に乾燥型AMDでは緩慢であり滲出型AMDでは急速である)および直線の異常な視覚(例えば、直線が波状に見える)がある。亜鉛および抗酸化剤のビタミンC、ビタミンEおよびβ−カロテンの補充は、滲出型AMDの進行を遅らせると報告されている。
本開示は、AMDを有する対象またはそれを有する疑いがある対象に、治療有効量のMMP−9/MMP−2結合タンパク質(例えば、阻害性MMP−9/MMP−2結合タンパク質、例えば、抗MMP−9/MMP−2 IgGまたはFab)を投与することによ
って、AMD(滲出型AMDまたは乾燥型AMD)を治療する(例えば、視野を改善する、視野の劣化を安定化させる、または視野の劣化速度を低下させる)方法を提供する。治療有効量のMMP−9/MMP−2結合タンパク質および別のAMD治療剤(例えば、亜鉛、ビタミンC、ビタミンEおよび/またはβ−カロテン)を投与することによって、AMDを治療する方法も提供する。
治療有効量のMMP−9/MMP−2結合タンパク質を送達する該タンパク質の効力および用量に関する指針は、黄斑変性の動物モデル、例えば、黄斑変性のCoturnix
coturnix japonica(日本ウズラ)モデル(米国特許第5,854,015号)、または例えばクリプトンレーザーによるC57BL/6Jマウスのブルッフ膜上の創傷作製のモデル(米国出願第20030181531号)から得ることができる。
角膜疾患。円錐角膜は、角膜が薄くなり形状が変わる進行性疾患である。結果として生じる弯曲(乱視)は、しばしば近視を引き起こす。円錐角膜は、角膜の膨張および瘢痕化ならびに視野消失を引き起こす場合もある。
本開示は、有効量のMMP−9/MMP−2結合タンパク質(例えば、阻害性MMP−9/MMP−2結合タンパク質、例えば、抗MMP−9/MMP−2 IgGまたはFab)を投与することによって、円錐角膜を有する対象またはそれを有する疑いがある対象において、円錐角膜を治療する(例えば、視野を改善または安定化する、または角膜の瘢痕化を改善、安定化、低減、除去、もしくは予防する)方法を提供する。
治療有効量のMMP−9/MMP−2結合タンパク質を送達する該タンパク質の効力および用量に関する指針は、円錐角膜の動物モデル、例えば、円錐角膜のサブセットのモデルとして働く近親交配SKCマウス系(Tachibanaら、Investig Ophthalmol Visual Sci、43巻:51〜57頁(2002年))から得ることができる。
角膜感染症。角膜感染症を有する対象またはそれを有する疑いがある対象に、有効量のMMP−9/MMP−2結合タンパク質(例えば、阻害性MMP−9/MMP−2結合タンパク質、例えば、抗MMP−9/MMP−2 IgGまたはFab)を投与することによって、角膜感染症を治療する(例えば、感染の結果としての角膜の瘢痕化を予防、低減、安定化または除去する)方法も提供する。さらに、MMP−9/MMP−2結合タンパク質および感染性病原体を治療する治療薬(例えば、抗生物質または抗ウイルス薬)を投与することによって、角膜感染症を治療する方法を提供する。
治療有効量のMMP−9/MMP−2結合タンパク質を送達する該タンパク質の効力および用量に関する指針は、角膜感染症の動物モデル、例えば、鮮創角膜にCandida
albicans(SC5314)の標準接種物を置くことによって角膜炎を誘導する実験的角膜真菌症のウサギモデル(Goldblumら、Antimicrob Agents Chemother49巻:1359〜1363頁(2005年))から得ることができる。
骨関節炎
骨関節炎は、変形性関節症としても公知であり、1または複数の関節の軟骨の破損および最終的な喪失によって特徴づけられる。骨関節炎は、一般に、手、足、脊椎、ならびに股関節部および膝などの高重量を支える関節で発症する。本開示は、骨関節炎を有する対象またはそれを有する疑いがある対象に、治療有効量のMMP−9/MMP−2結合タンパク質(例えば、阻害性MMP−9/MMP−2結合タンパク質、例えば、抗MMP−9
/MMP−2 IgGまたはFab)を投与することによって骨関節炎を治療する(例えば、関節痛を安定させる、減少させる、または消失させる、一般健康における動作または骨関節炎の尺度(scale)における成績を安定させる、または改善する)方法を提供する。
骨関節炎の現在の医療処置は、保存的措置(例えば、安静、減量、理学および作業療法)ならびにアセトアミノフェンなどの薬物、例えばカプサイシン、サリシン(salycin)、サリチル酸メチルおよびメントールなどの、関節を覆う皮膚に塗られる鎮痛クリーム、例えばアスピリン、イブプロフェン、ナブメトンおよびナプロキセンなどの非ステロイド系抗炎症薬(NSAID)、ならびにCox−2阻害剤を含む。本開示は、治療有効量のMMP−9/MMP−2結合タンパク質(例えば、阻害性MMP−9/MMP−2結合タンパク質、例えば、抗MMP−9/MMP−2 IgGまたはFab)、および別の骨関節炎療法(例えばアセトアミノフェン、局所鎮痛クリーム、アスピリン、イブプロフェン、ナブメトンもしくはナプロキセンなどの非ステロイド性抗炎症薬(NSAID)、またはCox−2阻害剤)を投与することによって骨関節炎を治療する方法をさらに提供する。
骨関節炎の評価に有用な尺度は、膝関節損傷と骨関節炎転帰スコア(KOOS;Roosら、(1998年)J.Orthop.Sports Phys.Ther.28(2)巻:88〜96頁)、ウェスタンオンタリオ大学およびMcMaster大学の骨関節炎インデックス(WOMAC;Roosら(2003年)Health Qual.Life Outcomes 1(1)巻:17頁)、およびSF−36 GHS(36−item Short Form General Health Scale)、ならびに当技術分野で公知の他の評価ツールを含む。
治療有効量のMMP−9/MMP−2結合タンパク質を送達する該タンパク質の効力および用量に関する指針は、骨関節炎の動物モデル、例えば、ヒト骨関節炎で見られるものと同様な関節軟骨の減失を促進する、げっ歯動物の大腿脛骨関節内へのモノヨードアセテート(MIA)の注入(Guzmanら、Toxicol Pathol.31(6)巻:619〜24頁(2003年))、または骨関節炎を誘発する、イヌの前十字靱帯(ACL)の切断(FifeおよびBrandt J Clin Invest.84(5)巻:1432〜1439頁(1989年))から得ることができる。
心不全
損傷または過負荷を通して、心筋、すなわち心臓筋肉の効率を低下させるいかなる状態も心不全を引き起こす。それゆえ、心筋梗塞、高血圧およびアミロイドーシスといった多様な一群の状態が心不全を引き起こし得る。時間の経過と共に、仕事負荷(workload)におけるこれらの増加が、心臓自体に、変化をもたらす。うっ血性心不全(CHF)、うっ血性心不全(CCF)または単に心不全は、十分な量の血液を全身に満たす、またはポンピングする心臓の能力を損なういかなる構造的または機能的な心障害からももたらされ得る状態である。
他の関連語は、虚血性心筋症(心不全の原因が冠動脈疾患であることを意味する)および拡張型心筋症(これは、心不全に特徴的であるが、いかなる特定の病因も示唆しない心エコー所見の記述である)を含む。
うっ血心不全増悪または代償不全の心不全(DHF)は、既知の慢性心不全患者が急性的に症状を現すエピソードを指す。
症候は、2つの因子に依存する。第1は、関与するのが心臓のどちら側か、右か、左か
に基づく。第2の因子は、不全の型、すなわち拡張期性であるか、収縮期性であるかに基づく。症候および症状は、症候に基づいた診断を不可能にする識別不能なものであり得る。
心臓の左側が肺から臓器へと血液をポンプで送るということを考慮すると、その動作の不全は、肺静脈のうっ血およびこれを反映する症候、ならびに組織への血液供給の減少をもたらす。主な呼吸器症候は、労作時−または重症例では安静時−の息切れ(呼吸困難(dyspnea, dyspnee d’effort))および易疲労感である。起坐呼吸は、横になっているときの息切れの増加である。発作性夜間呼吸困難は、通常は眠りに入ってから数時間後における、重度の息切れの夜間発作である。体への貧弱な循環は、眩暈感、錯乱および発汗、ならびに安静時における四肢の冷え(cool extremity)をもたらす。
心臓の右側は、組織から戻ってきた血液を、COをOと交換するために、肺へとポンピングする。それゆえ、右側での不全は、末梢組織のうっ血をもたらす。これは、末梢浮腫または全身浮腫および夜間頻尿をもたらし得る。より重度な症例では、腹水および肝腫大が発症し得る。
心不全は容易に代償不全になり得る。これは、いかなる介入疾患(例えば肺炎)の結果としても起こり得るが、特に心筋梗塞、貧血、甲状腺機能亢進症または不整脈の結果として起こり得る。これらはさらなる緊張を心筋に与え、これが症候の急速な悪化を引き起こし得る。過度の液体摂取または塩摂取(無関係な徴候に対する静脈内補液も含まれるが、より一般的には食傷による)、および体液貯留を引き起こす薬物(例えばNSAIDおよびチアゾリジンジオン)も代償不全を引き起こし得る。
潜在的な心不全を有する患者を検査する際に、医療専門家は、特定の徴候を探すであろう。心不全を指示する一般徴候は、心尖拍動の横ずれ(心臓が拡大しているので)、および代償不全の場合には奔馬調律(付加的な心音)である。心雑音は、心不全の原因(例えば大動脈狭窄)または結果(例えば僧帽弁逆流)のいずれかとしての、心臓弁の疾患の存在を示している場合がある。
主な左側臨床徴候は、頻呼吸および呼吸仕事量増加(心不全に特有でない呼吸困難の徴候)、ラ音またはパチパチ音(肺水腫の発生を示唆する)、打診における肺野の濁音および肺底部における呼吸音の減弱(濾出性の胸水(胸腔内の流体貯留)の発生を示唆する)、ならびに液体が満ちた肺胞から肺毛細管への酸素の拡散速度の低下に起因するチアノーゼ(低酸素血症を示唆する)である。
右側徴候は、末梢浮腫、腹水および肝腫大、頚静脈圧の増大(これは肝頚静脈逆流によって更に増大し得る)、ならびに胸骨傍上下動である。
左心不全の原因は、高血圧(高血圧)、大動脈および僧帽弁疾患、大動脈縮窄症を含む。右心不全の原因は、肺性高血圧(例えば慢性肺疾患による)、肺または三尖弁疾患を含む。両方の型の原因は、慢性のものでも、急性心筋梗塞(心発作)によるものでもあり得る、虚血性心臓病(通常は冠動脈疾患の結果である不十分な血管供給による)、慢性不整脈(例えば心房細動)、任意の原因による心筋症、心線維症、慢性重度貧血、甲状腺疾患(甲状腺機能亢進症および甲状腺機能低下症)を含む。
心不全の治療は、適度な身体活動、床上安静、減量、体重モニタリング、ナトリウム制限、流体制限、利尿剤、血管拡張剤、陽性変力作用薬、ACE阻害薬、β遮断薬、およびアルドステロンアンタゴニスト(例えば、スピロノラクトン)、アンギオテンシンII受
容体アンタゴニスト療法(AT−アンタゴニストまたはアンギオテンシン受容体遮断薬とも呼ばれる)(特にカンデサルタンを使用するもの)を含む。利尿剤は、ループ利尿薬(例えば、フロセミド、ブメタニド)、チアジド系利尿薬(例えば、ヒドロクロロチアジド、クロロサリドン、クロロチアジド)、カリウム保持性利尿剤(例えば、アミロライド)、スピロノラクトン、エプレレノンを含む。β遮断薬は、ビソプロロール、カルベジロールおよび持続放出メトプロロールを含む。陽性変力作用薬は、ジゴキシン、ドブタミンを含む。ミルリノンなどのホスホジエステラーゼ阻害剤は、時折、重度の心筋症で用いられる。代替の血管拡張薬は、イソソルビドジニトレート/ヒドララジンの組合せを含む。アルドステロン受容体アンタゴニストは、スピロノラクトンおよび関連薬エプレレノンを含む。組換え神経内分泌ホルモンも使用でき、これらは、組換え型B−ナトリウム利尿ペプチドであるネシリチドを含む。使用できるバソプレシン受容体アンタゴニストは、トルバプタンおよびコニバプタンを含む。デバイスおよび手術オプションは、両心室性ペースメーカーの植え込みを介した心臓再同期化療法(CRT;左心室および右心室両方のペーシング)、または外科的心臓リモデリング、植え込み型電気除細動器−除細動器(ICD)、左室補助装置(LVAD)を含む。
本開示は、心不全を有する対象またはそれを有する疑いがある対象に、治療有効量のMMP−9/MMP−2結合タンパク質(例えば、阻害性MMP−9/MMP−2結合タンパク質、例えば、抗MMP−9/MMP−2 IgGまたはFab)を投与することによって、心不全を治療する(例えば、心不全の症候または悪化を緩解する)方法を提供する。別の心不全治療(例えば、利尿剤、血管拡張剤、陽性変力作用薬、ACE阻害薬、β遮断薬、およびアルドステロンアンタゴニスト(例えば、スピロノラクトン)、アンギオテンシンII受容体アンタゴニスト療法(AT−アンタゴニストまたはアンギオテンシン受容体遮断薬とも呼ばれる))と共に、治療有効量のMMP−9/MMP−2結合タンパク質を投与することによって、心不全を治療する方法も提供する。
治療有効量のMMP−9/MMP−2結合タンパク質を送達する該タンパク質の効力および用量に関する指針は、心不全の動物モデルから得ることができる。例えば、米国特許第7,166,762号およびその中の引用文献を参照されたい。
敗血症性ショック
敗血症性ショックは、感染および敗血症の結果として起こる、組織灌流および酸素送達の低下に起因する重篤な医学的状態である。これは、多臓器不全および死亡を引き起こし得る。小児、免疫不全状態の個人、および高齢者は、健康的成人ができるほどには、免疫系が感染に対処できないので、その最も一般的な犠牲者となっている。敗血症性ショックからの死亡率は約50%である。
症候は、治療抵抗性低血圧−適切な流体蘇生にもかかわらず生じる低血圧である。成人では、それは、変力性サポートの必要量なしでの収縮期血圧<90mmHgもしくはMAP<60mmHg、またはベースラインからの収縮期血圧の40mmHgの低下と定義される。小児では、それは正常血圧のBP<2SDである。上記の2つの基準に加えて、以下のうちの2つ以上が存在し得る:過換気(高呼吸速度)1分当たり>20呼吸数もしくは血液ガスについて、32mmHg未満のPCO、および/または白血球数<4000細胞/mmまたは>12000細胞/mm(<4×10または>12×10細胞/L)。
分配ショック(distributive shock)のサブクラス、ショックは、特に、結果として末端器官機能不全を起こす組織灌流の低下を指す。大規模な炎症反応で放出されるサイトカインのTNFα、IL−1β、IL−6は、結果として大規模な血管拡張、毛細管透過性の増大、全身血管抵抗の低下および低血圧をもたらす。低血圧は、組
織灌流圧を低下させ、それゆえ、組織低酸素が起こる。最後に、低下した血圧を相殺しようとして、心室拡張および心筋機能不全が起こる。
細菌または真菌による感染の過程は、結果として様々に記載される全身性徴候および症候を起こし得る。おおまかな重症度の順序で、これらは、菌血または真菌血症;敗血症(septicemia);敗血症(sepsis)、重度の敗血症または敗血症症候群;敗血症性ショック;難治性敗血症性ショック;多臓器機能障害症候群および死亡である。
これらの状態は、細胞性媒介物質、例えば腫瘍壊死因子(TNF)(これらは免疫応答を刺激するように作用する)の産生および放出を誘発する特定の微生物分子に対する反応として発症する。TNFαの他に、敗血症性ショックの発生に関係する他のサイトカインは、インターロイキン−1βおよびインターフェロンγを含む。
治療は、主に、1)体積蘇生(volume resuscitation)、2)初期の抗生物質の投与、3)迅速な発生源同定および制御ならびに4)主要臓器機能障害のサポートからなる。昇圧剤の選択肢の中で、ノルエピネフリン(任意に、心拍出の必要に応じてドブタミンを加える)またはエピネフリンを用いることができる。抗媒介物質薬、すなわちコルチコステロイド(特に鉱質コルチコイドと併用される場合、相対的副腎不全を有する患者の間で死亡率を低下させることができる)または組換え型活性化プロテインC(ドロトレコギンα)は、重度な臨床状況ではいくらかの限定的な有用性を有し得る。ソホロ脂質混合物が使用できる。
本開示は、敗血症性ショックを有する対象またはそれを有する疑いがある対象に、治療有効量のMMP−9/MMP−2結合タンパク質(例えば、阻害性MMP−9/MMP−2結合タンパク質、例えば、抗MMP−9/MMP−2 IgGまたはFab)を投与することによって、敗血症性ショックを治療する方法を提供する。別の敗血症性ショック療法(例えば、コルチコステロイド、ソホロ脂質混合物または抗生物質)と共に、治療有効量のMMP−9/MMP−2結合タンパク質を投与することによって、敗血症性ショックを治療する方法も提供する。
治療有効量のMMP−9/MMP−2結合タンパク質を送達する該タンパク質の効力および用量に関する指針は、敗血症性ショックの動物モデルから得られることができる。例えば、米国特許第7,262,178号およびその中の引用文献を参照されたい。
神経障害性疼痛
神経障害性疼痛は、通常組織傷害を伴う複雑な慢性疼痛状態である。神経障害性疼痛により、神経線維それ自体が損傷、機能障害または傷害を受ける可能性がある。これらの損傷した神経線維は、他の疼痛中枢に間違ったシグナルを送る。神経線維傷害の影響は、傷害部位および傷害周辺領域の両方の神経機能の変化を含む。
神経障害性疼痛は、多くの場合明白な原因がないようにみえる。神経障害性疼痛は標準的な疼痛治療にはほとんど反応せず、時として、時間と共に快方に向かうどころか悪化することがある。一部の人々に関しては、重篤な身体障害の原因となり得る。神経障害性疼痛の一例は、幻肢症候群と呼ばれる。疾患または傷害のため腕または脚を取り除いてしまったが、脳が、本来なくした手足よりインパルスが運ばれる神経からいまだに疼痛メッセージを受け取る場合に起こる。これらの神経は、今では働かず(misfire)、痛みの原因となようである。神経障害性疼痛のいくつかの一般的原因は、アルコール依存症、切断術、背部、脚および腰の問題、がん化学療法、糖尿病、顔面神経の問題、HIV感染またはAIDS、多発性硬化症、帯状疱疹および脊椎外科手術を含む。
神経障害性疼痛のいくつかの症状は、ずきずきする痛み、灼熱痛、刺痛および無感覚を含む。
適切な治療により、多くの場合改善が可能である。治療は、NSAID、鎮痛剤(例えば、モルヒネを用いて)、抗痙攣剤(例えば、米国特許第5,760,007号に記載の抗痙攣剤)、抗鬱剤または他の鎮静剤(pain reliever)を投与することを含む。糖尿病などの別の病態が関与する場合、その傷害のより良い管理により、神経障害性疼痛の緩和が可能である。治療が難しい症例の場合、疼痛専門医は、侵襲的または移植可能なデバイスによる治療を用いて、疼痛を効果的に管理することができる。神経障害性疼痛の発生に関与する神経の電気的刺激は、疼痛症状を顕著に調節できる。
MMP−9およびMMP−2は、神経障害性疼痛の進行において役割を果たすことが発見されている。MMP−9は、神経障害性疼痛進行の初期段階において上方制御され、一方、MMP−2は、神経障害性疼痛進行の後期段階において上方制御される。MMP−9および/またはMMP−2の標的化および阻害は、神経障害性疼痛を治療するための治療的取り組みである。本開示は、治療有効量のMMP−9/MMP−2結合タンパク質(例えば、阻害性MMP−9/MMP−2結合タンパク質、例えば、抗MMP−9/MMP−2 IgGまたはFab)を、神経障害性疼痛を有する対象またはそれを有する疑いがある対象に投与することによって神経障害性疼痛を治療する方法を提供する。治療有効量のMMP−9/MMP−2結合タンパク質を、別の神経障害性疼痛治療(例えば、NSAID、鎮痛剤(例えば、モルヒネと)、抗痙攣剤、抗鬱剤または他の鎮静剤;侵襲的または移植可能なデバイスによる治療)と併用して投与することによって神経障害性疼痛を治療する方法をさらに提供する。
治療有効量のMMP−9/MMP−2結合タンパク質を送達する該タンパク質の効力および用量に関する指針は、神経障害性疼痛の動物モデル、例えばL5脊髄神経結紮(SNL)動物モデルから得ることができ、例えばKawasakiら、2008年2月10日、Nat. Med. advance on−line publication doi:10.1038/nm1723を参照されたい。さらに、米国特許第5,760,007号およびその引用文献を参照されたい。
子宮内膜症
子宮内膜症は、正常には子宮を裏打ちする組織である子宮内膜が子宮を超えて、または子宮外側に成長することにより特徴づけられる、よく見られる病状である。子宮内膜症では、子宮内膜は子宮外側、身体の他の領域上、または領域中に成長していることが見出される。子宮内膜は、正常には月経周期の間に毎月脱落するが、子宮内膜症では通常、誤った場所にある子宮内膜は体外に排出することができない。子宮内膜症性組織は依然として剥離して出血するが、その結果は全く異なり、内出血、変性した血液および組織脱落、周辺領域の炎症、疼痛、ならびに瘢痕組織の形成が生じるおそれがある。加えて、成長部位に応じて、腸、膀胱、小腸および骨盤腔内の他の器官の正常な機能の妨害が起こるおそれがある。非常にまれな場合には、子宮内膜症は、皮膚、肺、眼、横隔膜、および脳にも見られた。
子宮内膜症の主症状は、激しい反復性の疼痛である。女性が感じる疼痛の量は、必ずしも子宮内膜症の程度またはステージ(1〜4)に関係しない。一部の女性は、大きな領域に波及する大規模な子宮内膜症または瘢痕形成を伴う子宮内膜症を有するにもかかわらず、ほとんどまたは全く疼痛を有さない。他方、たとえ小領域の子宮内膜症を少数だけ有しても、激しい疼痛を有する女性の場合がある。
子宮内膜症の症状には(非限定的に)、有痛性で、時に日常生活に支障をきたす月経痙
攣(月経困難症)をおこし、疼痛は経時的に悪化し得る(進行性の疼痛)、慢性痛(概して腰痛および骨盤痛、ならびに腹痛)、性交痛(性交疼痛症)、腸管運動痛(排便障害)または排尿痛(排尿障害)、重い月経期間(月経過多)、悪心および嘔吐、月経前または月経中間期出血(月経中間の出血)、ならびに不妊および生殖能力の低下(subfertility)が含まれ得る。子宮内膜症は、ファローピウス管閉塞に至るおそれがある。腸閉塞(封鎖部位および原因に応じて、嘔吐、痙攣性疼痛(crampy pain)、下痢、痙性および圧痛の腹部、ならびに腹部の膨満を場合により含む)または完全な尿貯留。加えて、子宮内膜症を有すると診断された女性は、過敏性腸症候群を模倣し得る消化管症状および疲労を有するおそれがある。
子宮内膜症性嚢胞が破裂した患者は、医学的な緊急事態として急性腹症を示すおそれがある。胸腔における子宮内膜症性嚢胞は、ある形態の胸郭内子宮内膜症症候群を、最も高頻度には月経周期性気胸を引き起こすおそれがある。
診断。健康歴および身体検査は、多くの患者で医師に診断を疑わせることがある。画像検査(例えば超音波および磁気共鳴画像(MRI))の利用により、結節または子宮内膜症性嚢胞などの比較的大きな子宮内膜症領域を特定することができる。子宮内膜症の診断を確定する唯一の確実な方法は、腹腔鏡検査による。診断は、疾患の特徴的な所見に基づくが、必要であれば生検により実証される。腹腔鏡検査は、また、子宮内膜症の外科的治療も可能にする。
治療。一般に、子宮内膜症用の薬物療法(経口避妊薬以外)は、子宮内膜症外科的診断が確定された後に利用される。治療には、NSAIDおよび他の鎮痛剤(一般に他の治療法と併用される);性腺刺激ホルモン放出ホルモン(GnRH)アゴニスト;ホルモン抑制療法;プロゲステロンまたはプロゲスチン;自然生成エストロゲンと類似の効果を有し、子宮内膜の成長を増加させ得る外因性エストロゲン(xenoestrogen)を有する製品の回避;ホルモン避妊の継続;ダナゾール(ダノクリン)およびゲストリノンなどの抑制性ステロイド;アロマターゼ阻害剤が含まれる。外科的治療は、普通、子宮内膜症が広範囲であるか、または非常に痛い場合に良い選択である。外科的治療は、小手術から大手術の外科手技にわたる。腹腔鏡検査は、子宮内膜症の診断だけでなく、その治療にも非常に有用であり、正常な解剖学的形態を回復させることを試みて、子宮内膜症の組織を切除または除去することができる。または、より大規模な外科手術には、正常な解剖学的形態を回復させることを試みて、開腹手術を採用することもできる。他の手技には、子宮摘出、両側卵管卵巣摘除(ファローピウス管および卵巣の摘出)、腸切除が含まれる。極度の疼痛を有する患者には、子宮への神経を切断する仙骨前交感神経叢切断が指示されることがある。
MMP−9は、子宮内膜症で上方制御されており、子宮内膜症の生き残りおよび浸潤に寄与し得る。本開示は、MMP−9/MMP−2結合タンパク質(例えば、阻害性MMP−9/MMP−2結合タンパク質、例えば抗MMP−9/MMP−2 IgGまたは抗MMP−9/MMP−2 Fab)を治療有効量で、子宮内膜症を有する対象またはそれを有する疑いがある対象に投与することにより、子宮内膜症を治療する方法を提供する。MMP−9/MMP−2結合タンパク質を治療有効量で別の子宮内膜症治療薬(例えば、コルチコステロイド、ソホロ脂質混合物、または抗生物質)と共に投与することにより、子宮内膜症を治療する方法もまた提供される。
治療有効量のMMP−9/MMP−2結合タンパク質を送達する該タンパク質の効力および用量に関する指針は、子宮内膜症の動物モデルから得ることができるが、例えば米国特許第6,429,353号および第7,220,890号、ならびにそれらに引用されている参考文献を参照されたい。
併用療法
本明細書に記載のMMP−9/MMP−2結合タンパク質、例えば、抗MMP−9/MMP−2 FabまたはIgGは、MMP−9活性および/またはMMP−2活性に関連する疾患または状態、例えば、本明細書に記載の疾患または状態を治療するための他の療法の1つまたは複数と組み合わせて投与することができる。例えば、MMP−9/MMP−2結合タンパク質は、手術、別のMMP−9阻害剤(例えば、小分子阻害剤、別の抗MMP−9 FabまたはIgG(例えば、本明細書に記載の別のFabまたはIgG)、ペプチド阻害剤、または小分子阻害剤)、別の抗MMP−9結合タンパク質(例えば、IgGもしくはFab、例えば、539A−M0166−F10、もしくは1種もしくは複数のその重鎖および/もしくは軽鎖CDRを含有するタンパク質、または539A−M0240−B03、もしくは1つもしくは複数のその重鎖および/もしくは軽鎖CDRを含有するタンパク質、または本明細書に記載の別のFabもしくはIgG)、抗MMP14結合タンパク質(例えば、IgGもしくはFab、例えば、DX−2400、または米国特許出願公開第2007−0217997号に記載のタンパク質)、または別のMMP−2阻害剤(別のMMP−2阻害剤、例えば、小分子阻害剤、別の抗MMP−2 FabまたはIgG(例えば、本明細書に記載の別のFabまたはIgG)、ペプチド阻害剤、または小分子阻害剤)と共に、治療上または予防上使用することができる。本明細書に記載のMMP−9/MMP−2結合タンパク質との併用療法に使用することができる他のMMP−9阻害剤およびMMP−2阻害剤の例が本明細書に示されている。
1種または複数の小分子MMP阻害剤を本明細書に記載の1種または複数のMMP−9/MMP−2結合タンパク質と組み合わせて使用することができる。例えば、その組合せにより、より低い用量の必要とされている小分子阻害剤を得ることができ、その結果、副作用が低減される。
本明細書に記載のMMP−9/MMP−2結合タンパク質は、それだけに限らないが、手術、放射線療法および化学療法を含めた、癌を治療するための他の療法の1つまたは複数と組み合わせて投与することができる。例えば、MMP−9、MMP−2を阻害する、またはMMP−9活性もしくはMMP−2活性の下流の事象を阻害するタンパク質を、放射線療法、化学療法、手術または第2の作用物質の投与などの他の抗癌療法と組み合わせて使用することもできる。例えば、第2の作用物質は、Tie−1阻害剤(例えば、Tie−1結合タンパク質、例えば、両方とも2005年8月9日出願の米国特許出願第11/199,739号およびPCT/US2005/0284を参照されたい)であってもよい。別の例として、第2の作用物質は、抗MMP14結合タンパク質(例えば、IgGもしくはFab、例えば、DX−2400、または米国特許出願公開第2007−0217997号に記載のタンパク質)であってもよい。別の例として、第2の作用物質は、VEGFシグナル伝達経路を標的とする、または負に調節するものであってもよい。この後者のクラスの例としては、VEGFアンタゴニスト(例えば、ベバシズマブなどの抗VEGF抗体)およびVEGF受容体アンタゴニスト(例えば、抗VEGF受容体抗体)が挙げられる。特に好ましいある組合せはベバシズマブを含む。さらなる例として、第2の作用物質は、クニッツドメイン含有タンパク質またはポリペプチド(例えば、米国特許第6,010,880号に開示されているプラスミン阻害性クニッツドメイン、例えば、アミノ酸配列MHSFCAFKAETGPCRARFDRWFFNIFTRQCEEFIYGGCEGNQNRFESLEECKKMCTRD(配列番号1)を含むタンパク質またはポリペプチド)などのプラスミンの阻害剤である。別の例として、第2の作用物質は、Her2結合抗体(例えば、トラスツズマブ)などの、Her2に結合する作用物質である。組合せは、5−FUおよびロイコボリン、および/またはイリノテカンをさらに含むことができる。
MMP−9およびMMP−2の阻害剤(例えば、本明細書で開示されるMMP−9/MMP−2結合タンパク質)は、Her2を標的とする作用物質(例えば、トラスツズマブなどのHer2結合抗体)の活性を増強することができる。したがって、乳癌を治療するためのある併用療法において、第2の療法は、Her2結合抗体(例えば、トラスツズマブ)などの、Her2に結合する作用物質である。MMP−9/MMP−2結合タンパク質をHer2結合作用物質との併用療法において使用する場合、Her2結合作用物質の用量は、MMP−9/MMP−2結合タンパク質と組み合わせずに投与する場合のHer2結合作用物質の用量から低減することもできる(例えば、MMP−9/MMP−2結合タンパク質と組み合わせずに投与する場合のHer2結合作用物質の用量よりも少なくとも10%、25%、40%または50%低い)。例えば、MMP−9/MMP−2結合タンパク質との併用療法において投与されるトラスツズマブの用量は、初回(負荷)用量として約4.0、3.6、3.0、2.4または2mg/kg未満であり、その後の用量として約2.0、1.8、1.5、1.2または1mg/kg未満である。
本明細書に記載のMMP−9/MMP−2結合タンパク質は、外科的または内科的(例えば、第2の作用物質の投与)療法など、眼の障害を治療するための1つまたは複数の他の療法と組み合わせて投与することもできる。例えば、加齢性黄斑変性(例えば、滲出型加齢性黄斑変性)治療では、MMP−9/MMP−2結合タンパク質は、レーザー手術(レーザー光凝固療法または光凝固療法)と(例えば、その前、その間またはその後に)組み合わせて投与することができる。別の例として、MMP−9/MMP−2結合タンパク質は、VEGFアンタゴニスト(例えば、ベバシズマブまたはラニビズマブなどの抗VEGF抗体)またはVEGF受容体アンタゴニスト(例えば、抗VEGF受容体抗体)などの第2の作用物質と組み合わせて投与することができる。
「組合せ(併用)」という用語は、同じ患者を治療するための2種以上の作用物質または療法の使用を指し、この作用物質または療法の使用または作用は時間内に重複する。この作用物質または療法は、同じ時間に(例えば、患者に投与される単一の製剤として、または同時に投与される2つの別個の製剤として)投与するか、または任意の順序で逐次投与することができる。逐次投与は、異なる時点で施される投与である。ある作用物質と別の作用物質の投与間隔は、数分、数時間、数日または数週であってよい。本明細書に記載のMMP−9/MMP−2結合タンパク質を使用して、別の療法の用量を低減する、例えば、投与されている別の作用物質に伴う副作用を低減する、例えば、ベバシズマブなどの抗VEGF抗体の副作用を低減することもできる。したがって、組合せは、第2の作用物質を、MMP−9/MMP−2結合タンパク質の非存在下で使用される用量よりも少なくとも10、20、30または50%低い用量で投与することを含むことができる。
さらに、対象に第1および第2の作用物質を投与することにより、対象の血管形成関連障害、例えば、癌を治療することもできる。例えば、第1の作用物質は早期の血管形成を調節し、第2の作用物質は血管形成のその後の段階を調節し、または初期の血管形成も調節する。第1および第2の作用物質は、単一の医薬組成物を使用して投与することができ、または別々に投与することができる。一実施形態において、第1の作用物質は、VEGF経路アンタゴニスト(例えば、VEGFの阻害剤(例えば、VEGF−A、−Bまたは−C)またはVEGF受容体(例えば、KDRまたはVEGF受容体III(Flt4))またはbFGF経路アンタゴニスト(例えば、bFGFまたはbFGF受容体に結合する抗体)である。他のVEGF経路アンタゴニストは、本明細書などにも記載されている。一実施形態において、第2の作用物質は、腫瘍細胞の移動性または侵襲性を阻害または低減する。例えば、第2の作用物質は、MMP−9/MMP−2結合タンパク質を含む。例えば、第2の作用物質は、本明細書に記載のMMP−9/MMP−2結合タンパク質である。
腫瘍が一定のサイズ(例えば約1〜2mm)に達すると、腫瘍は、その腫瘤を増大させる前に、新しい血管系を必要とする。初期段階の腫瘍血管形成は、宿主からの新しい血管の成長および血管による腫瘍の浸透を刺激する腫瘍からのシグナル、例えばVEGFの分泌を含むことができる。VEGFは、例えば、後に血管に集成される内皮細胞の増殖を刺激することができる。腫瘍成長の後段階は、腫瘍細胞の転移、移動および侵襲を含むことができる。この移動および浸潤は、マトリックスメタロプロテアーゼ、例えばMMP−2またはMMP−9の活性を含むことができる。したがって、新脈管形成関連障害を治療するための有効な治療法は、初期段階の新脈管形成を調節する薬剤(例えば、VEGF経路アンタゴニスト、例えば抗VEGF(例えばベバシズマブ)もしくは抗VEGF受容体(例えば抗KDR)抗体;または他の前新脈管形成経路のアンタゴニスト、例えば、抗bFGF抗体または抗bFGF受容体(例えば抗bFGF受容体−1、−2、−3)抗体)と、後段階の腫瘍成長(腫瘍細胞の転移、移動および侵襲を含むことができる)を調節する薬剤(例えば、MMP−9およびMMP2のアンタゴニスト(例えば、抗MMP−9/MMP−2抗体(例えば本明細書に開示されている抗体))との組合せを含むことができる。これらの薬剤の1種または複数種を併用することができる。これらの薬剤の1種または複数種を放射線治療または化学療法などの他の抗癌治療と併用することもできる。
例示的なVEGF受容体アンタゴニストとしては、VEGFの阻害薬(例えば、VEGF−A、−Bまたは−C、例えばベバシズマブ)、VEGF発現のモジュレータ(例えば、INGN−241、経口テトラチオモリブデート、2−メトキシエストラジオール、2−メトキシエストラジオールナノ結晶分散体、ベバシラニブナトリウム、PTC−299、ベグリン)、VEGF受容体の阻害薬(例えば、KDRまたはVEGF受容体III(Flt4)、例えば抗KDR抗体、CDP−791、IMC−1121BなどのVEGFR2抗体、CT−322などのVEGFR2遮断薬)、Imclone SystemsのmF4−31C1などのVEGFR3抗体、VEGFR発現のモジュレータ(例えばVEGFR1発現モジュレータSirna−027)またはVEGF受容体下流シグナル伝達の阻害薬が挙げられる。
VEGFの例示的な阻害薬としては、ベバシズマブ、ペガプタニブ、ラニビズマブ、NEOVASTAT(登録商標)、AE−941、VEGF TrapおよびPI−88が挙げられる。
例示的なVEGF受容体アンタゴニストとしては、VEGF受容体チロシンキナーゼ活性の阻害薬が挙げられる。4−[4−(1−アミノ−1−メチルエチル)フェニル]−2−[4−(2−モルホリン−4−イル−エチル)フェニルアミノ]ピリミジン−5−カルボニトリル(JNJ−17029259)は、血管内皮成長因子受容体−2(VEGF−R2)の経口利用可能な選択的ナノモル阻害薬である5−シアノピリミジンの構造類の1つである。さらなる例としては、PTK−787/ZK222584(Astra−Zeneca)、SU5416、SU11248(Pfizer)およびZD6474([N−(4−ブロモ−2−フルオロフェニル)−6−メトキシ−7−[(1−メチルピペリジン−4−イル)メトキシ]キナゾリン−4−アミン])、バンデタニブ、セジラニブ、AG−013958、CP−547632、E−7080、XL−184、L−21649およびZK−304709が挙げられる。他のVEGFアンタゴニスト薬は、幅広特異性チロシンキナーゼ阻害薬、例えば、SU6668(例えば、Bergers, B.ら、2003年J. Clin. Invest. 111:1287〜95参照)、ソラフェニブ、スニチニブ、パゾパニブ、バタラニブ、AEE−788、AMG−706、アキシチニブ、BIBF−1120、SU−14813、XL−647、XL−999、ABT−869、BAY−57−9352、BAY−73−4506、BMS−582664、CEP−7055、CHIR−265、OSI−930およびTKI−258である。細胞表面上のVEGF受容体を下方制御するフェンレチニドなどの薬剤、およびVEGF
受容体下流信号伝達を阻害するスクアラミンなどの薬剤も有用である。
第2の薬剤または療法は、別の抗癌薬または療法でもあり得る。抗癌薬の非限定的な例としては、例えば、抗微小管薬、トポイソメラーゼ阻害薬、代謝拮抗薬、有糸分裂阻害薬、アルキル化剤、挿入剤、シグナル伝達経路に干渉することが可能な薬剤、アポトーシスを促進する薬剤、放射線、および他の腫瘍関連抗原に対する抗体(裸抗体、免疫毒素および放射性コンジュゲートを含む)が挙げられる。特定の種類の抗癌薬の例を詳細に示すと、抗チューブリン薬/抗微小管薬、例えば、パクリタキセル、ビンクリスチン、ビンブラスチン、ビンデシン、ビノレルビン、タキソテール;トポイソメラーゼI阻害薬、例えば、イリノテカン、トポテカン、カンプトテシン、ドキソルビシン、エトポシド、ミトキサントロン、ダウノルビシン、イダルビシン、テニポシド、アムサクリン、エピルビシン、メルバロン、塩酸ピロキサントロン;代謝拮抗薬、例えば、5フルオロウラシル(5FU)、メトトレキサート、6メルカプトプリン、6チオグアニン、リン酸フルダラビン、シタラビン/アラC、トリメトレキサート、ゲムシタビン、アシビシン、アラノシン、ピラゾフリン、N−ホスホルアセチル−L−アスパレート=PALA、ペントスタチン、5アザシチジン、5アザ2’デオキシシチジン、アラA、クラドリビン、5フルオロウリジン、FUDR、チアゾフリン、N−[5−[N−(3,4−ジヒドロ−2−メチル−4−オキソキナゾリン−6−イルメチル)−N−メチルアミノ]−2−テノイル]−L−グルタミン酸;アルキル化剤、例えば、シスプラチン、カルボプラチン、マイトマイシンC、BCNU=カルムスチン、メルファラン、チオテパ、ブスルファン、クロラムブシル、プリカマイシン、ダカルバジン、リン酸イホスファミド、シクロホスファミド、ナイトロジェンマスタード、ウラシルマスタード、ピポブロマン、4イポメアノール;他の作用メカニズムを介して作用する薬剤、例えば、ジヒドロレンペロン、スピロムスチンおよびデシペプチド;抗腫瘍応答を強化する生物応答改質剤、例えばインターフェロン;アポトーシス薬、例えばアクチノマイシンD;抗ホルモン薬、例えばタモキシフェンなどの抗エストロゲン剤、または例えば4’−シアノ−3−(4−フルオロフェニルスルホニル)−2−ヒドロキシ−2−メチル−3’−(トリフルオロメチル)プロピオンアニリドなどの抗アンドロゲン剤が挙げられる。
組合せ療法は、他の療法の副作用を軽減する薬剤を投与することを含むことができる。薬剤は、抗癌治療の副作用を軽減する薬剤であり得る。例えば、薬剤はロイコボリンであり得る。
MMP−9/MMP−2結合タンパク質または本明細書に記載の他の結合タンパク質を投与することを含む組合せ療法を使用して、別の血管形成関連障害(例えば、癌以外の障害、例えば、望ましくない内皮細胞増殖または望ましくない炎症、例えば関節リウマチを含む障害)にかかっている対象、またはそのリスクがある対象を治療することもできる。
診断使用
MMP−9およびMMP−2に結合し、本明細書に記載および/または本明細書に詳述される方法によって同定されるタンパク質は、インビトロおよびインビボでの診断的有用性を有する。本明細書に記載するMMP−9/MMP−2結合タンパク質(例えば、MMP−9およびMMP−2に結合し阻害するタンパク質、またはこれらに結合するが阻害しないタンパク質)を、例えば、インビボの画像化用に、例えば、MMP−9および/またはMMP−2が活性である疾患または状態(例えば、本明細書に記載する疾患または状態)に対する治療の経過の間に、あるいは本明細書に記載する疾患または状態を診断する上で用いることができる。
一態様において、本開示は、MMP−9、MMP−2、または両方の存在を、インビトロまたはインビボで検出するための診断方法(例えば、対象におけるインビボの画像化)
を提供する。本方法は、MMP−9、MMP−2、または両方を、対象内に、または対象からの試料内に局在化させることを含むことができる。試料の評価に関して、本方法は、例えば、(i)試料をMMP−9/MMP−2結合タンパク質と接触させる工程、および(ii)試料におけるMMP−9/MMP−2結合タンパク質の位置を検出する工程を含むことができる。
MMP−9/MMP−2結合タンパク質を用いて、試料中のMMP−9および/またはMMP−2の発現レベルを定性的または定量的に決定することもできる。本方法は、また、基準試料(例えば、対照試料)を結合タンパク質と接触させる工程、および基準試料の対応する評価を決定する工程も含むことができる。対照試料または対象に比べた、試料または対象中の複合体の形成における統計上有意な変化などの変化は、試料中のMMP−9および/またはMMP−2の存在を示し得る。
MMP−9/MMP−2結合タンパク質は、インビボの腫瘍画像化にも有用である。酵素機能を阻止するように設計されている、MMP阻害薬などの薬物の効力をモニタリングするのに、より良好な臨床上のエンドポイントが必要とされる(Zuckerら、2001年、Nature Medicine、7巻、655〜656頁)。標識したMMP−9/MMP−2結合タンパク質を用いることによるインビボの腫瘍の画像化は、癌の診断用に、手術内(intraoperative)の腫瘍の検出用に、ならびに薬物送達および腫瘍の生理機能の調査用に、腫瘍への結合タンパク質の送達を目的とするのに役立ち得る。MMP−9/MMP−2結合タンパク質は、侵襲性部位の天然の酵素活性をインビボでモニタリングするのにも用いられ得る。別の例示的な方法には、(i)MMP−9/MMP−2結合タンパク質を対象に投与する工程、および(iii)対象におけるMMP−9/MMP−2結合タンパク質の位置を検出する工程が含まれる。検出は、複合体の形成の位置または時間を決定することを含むことができる。
MMP−9/MMP−2結合タンパク質は、結合している、または非結合の抗体の検出を容易にするための検出可能な物質で、直接、または間接的に標識されていてよい。適切な検出可能な物質には、様々な酵素、補欠分子族、蛍光物質、発光物質、および放射性物質が含まれる。
MMP−9/MMP−2結合タンパク質とMMP−9および/またはMMP−2との間の複合体形成を、MMP−9および/またはMMP−2に結合している結合タンパク質、あるいは非結合の結合タンパク質を評価することによって検出してもよい。酵素結合免疫吸着検定法(ELISA)、ラジオイムノアッセイ(RIA)、または組織の免疫組織化学などの、従来の検出アッセイを用いることができる。さらにMMP−9/MMP−2結合タンパク質を標識するために、試料中のMMP−9および/またはMMP−2の存在を、検出可能な物質で標識した標準品、および非標識のMMP−9/MMP−2結合タンパク質を利用して競合的免疫アッセイによってアッセイすることができる。このアッセイの一例において、生物学的試料、標識した標準品、およびMMP−9/MMP−2結合タンパク質を合わせ、非標識の結合タンパク質に結合している標識した標準品の量を決定する。試料中のMMP−9および/またはMMP−2の量は、MMP−9/MMP−2結合タンパク質に結合している標識した標準品の量に反比例する。
蛍光団および発色団で標識したタンパク質を調製してもよい。抗体および他のタンパク質は約310nmまでの波長を有する光を吸収するので、蛍光部分を、310nmを超え、好ましくは400nmを超える波長で実質的な吸収を有するように選択すべきである。多様な適切な蛍光剤および発色団は、Stryer、1968年、Science、162巻、526頁;およびBrand, L.ら、1972年、Annu. Rev. Biochem.、41巻、843〜868頁に記載されている。タンパク質を、米国特許
第3,940,475号、第4,289,747号、および第4,376,110号に開示されているものなどの従来の手順によって、蛍光の発色団の群で標識してもよい。数々の上記に記載した望ましい性質を有する蛍光剤の一つの群はキサンテン染料であり、これにはフルオレセインおよびローダミンが含まれる。蛍光化合物の別の一つの群はナフチルアミンである。蛍光団または発色団で標識した後、そのタンパク質を用いて、例えば、蛍光顕微鏡(例えば、共焦点顕微鏡もしくはデコンボリューション顕微鏡)を用いて、試料中のMMP−9および/またはMMP−2の存在または局在を検出することができる。
組織学的分析。本明細書に記載するタンパク質を用いて、免疫組織化学的分析を行ってもよい。例えば、抗体の場合、抗体を標識(例えば、精製またはエピトープのタグ)と合成してもよく、または、例えば、標識または標識結合性の基をコンジュゲートすることによって、検出可能に標識してもよい。例えば、キレート剤を抗体に結合させてもよい。次いで、抗体を組織学的プレパラート(例えば、顕微鏡用スライド上にある固定された組織切片)に接触させる。結合させるためにインキュベートした後、プレパラートを洗浄して非結合の抗体を除去する。次いで、例えば、顕微鏡を用いてプレパラートを分析して、抗体がプレパラートに結合しているか否かを同定する。
もちろん、抗体(または他のポリペプチドもしくはペプチド)は、結合時に非標識であってもよい。結合および洗浄の後、抗体を検出可能にするために抗体を標識する。
タンパク質アレイ。MMP−9結合タンパク質を、タンパク質アレイ上に固定化してもよい。タンパク質アレイを、例えば、医学的試料(例えば、単離細胞、血液、血清、バイオプシーなど)をスクリーニングするための、診断ツールとして用いてもよい。もちろん、タンパク質アレイは、他の結合タンパク質(例えば、MMP−9、MMP−2に、または他の標的分子に結合するもの)も含むことができる。
ポリペプチドアレイを生成する方法は、例えば、De Wildtら、2000年、Nat. Biotechnol.、18巻、989〜994頁;Luekingら、1999年、Anal. Biochem.、270巻、103〜111頁;Ge、2000年、Nucleic Acids Res.、28巻、e3、I〜VII;MacBeathおよびSchreiber、2000年、Science、289巻、1760〜1763頁;WO01/40803およびWO99/51773A1に記載されている。アレイ用のポリペプチドは、市販のロボットの装置(例えば、Genetic MicroSystemsまたはBioRoboticsからのもの)を用いて高速でスポットすることができる。アレイ物質は、例えば、ニトロセルロース、プラスチック、ガラス(例えば、表面を修飾したガラス)であってよい。アレイは、多孔質のマトリックス(例えば、アクリルアミド、アガロース、または別のポリマー)も含むことができる。
例えば、アレイは抗体のアレイ(例えば、De Wildt、上述に記載されている通り)であってよい。タンパク質を生成する細胞を、アレイフォーマットにおけるフィルター上で増殖させることができる。ポリペプチドの生成を誘発し、発現したポリペプチドは、細胞の位置でフィルターに固定化される。タンパク質アレイを標識した標的と接触させて、固定化した各ポリペプチドに対する標的の結合の程度を決定することができる。アレイの各アドレスの結合の程度に関する情報を、例えば、コンピュータのデータベース中に、プロファイルとして蓄えることができる。タンパク質アレイを、複製において生成してもよく、例えば、標的および非標的の結合プロファイルを比較するのに用いてもよい。
FACS(蛍光活性化細胞選別)。MMP−9/MMP−2結合タンパク質を用いて、細胞、例えば試料(例えば、患者試料)における細胞を標識することができる。また、結合タンパク質は、蛍光化合物に結合される(または結合され得る)。次いで、細胞は、蛍
光活性化細胞選別装置(例えば、Becton Dickinson Immunocytometry Systems、San Jose CAから入手可能な選別装置を用いて、また、米国特許第5,627,037号;第5,030,002号;および第5,137,809号をも参照されたい)を用いて選別され得る。細胞が選別装置を通過する際、レーザービームにより蛍光化合物が励起されるが、一方で検出器は、通過する細胞を計数し、蛍光を検出することにより蛍光化合物が細胞に結合されているかどうかを決定する。各細胞に結合した標識の量を定量し、分析して、試料を特徴づけることができる。
また、選別装置は、細胞を偏向させ、結合タンパク質により結合されなかったそれらの細胞から結合タンパク質により結合された細胞を分離することができる。分離された細胞は、培養および/または特徴づけされ得る。
インビボ画像化。また、インビボでMMP−9発現および/またはMMP−2発現組織の存在を検出するための方法も特徴とされる。前記方法は、(i)検出可能なマーカーに結合した抗−MMP−9/MMP−2抗体を、対象(例えば、癌(例えば、転移性癌、例えば、転移性乳癌)、炎症性疾患(例えば、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、喘息、鼻炎(例えば、アレルギー性鼻炎)、炎症性腸疾患、滑膜炎、関節リウマチ)、心不全、敗血症性ショック、神経障害性疼痛、骨関節炎、または眼疾患(例えば、黄斑変性)を有する患者等)に投与する工程;(ii)MMP−9/MMP−2発現組織または細胞に対する前記検出可能なマーカーを検出するための手段に対象を曝露させる工程を含む。例えば、対象は、例えばNMRまたは他の断層撮影手段により撮像される。
画像診断に有用な標識の例としては、131I、111In、123I、99mTc、32P、125I、H、14C、188Rhなどの放射標識、フルオレセインやローダミンなどの蛍光標識、核磁気共鳴活性標識、陽電子放出断層撮影(「PET」)スキャナにより検出可能な陽電子放出同位体、ルシフェリンなどの化学発光物質、ペルオキシダーゼやホスファターゼなどの酵素マーカーが挙げられる。短距離検出用プローブにより検出可能な同位体などの短距離放射線放出体を用いることもできる。前記タンパク質は、かかる試薬で標識することが可能であり、例えば、抗体の放射標識に関する技術についてはWenselおよびMeares、1983年、Radioimmunoimaging and Radioimmunotherapy、Elsevier、New Yorkを、ならびにD. Colcherら、1986年、Meth. Enzymol.121巻:802〜816頁を参照されたい。
結合タンパク質は、放射性同位体(例えば、14C、H、35S、125I、32P、131I)で標識することが可能である。放射標識結合タンパク質は、診断試験、例えば、インビトロアッセイのために使用され得る。同位体標識した結合タンパク質の比活性は、半減期、放射性標識の同位体純度、および標識が抗体に組み込まれる方法に依存する。
放射標識結合タンパク質の場合、結合タンパク質は、患者に投与され、結合タンパク質と反応する抗原を担持する細胞に局在化され、例えばγカメラまたは放出断層撮影を用いる放射性核スキャニングなどの公知の技術を用いてインビボで検出または「撮像」される。例えば、A.R. Bradwellら、「Developments in Antibody Imaging」、Monoclonal Antibodies for
Cancer Detection and Therapy、R.W. Baldwinら、(編)、65〜85頁(Academic Press1985年)を参照されたい。あるいは、放射標識が陽電子(例えば、11C、18F、15O、13N)を放出する場合は、Brookhaven National Laboratoryに設置された所定のPet VIなどの陽電子放出型体軸横断断層撮影スキャナを使用することが
できる。
MRI造影剤。磁気共鳴映像法(MRI)は、生きた対象の内部特徴を視覚化するためにNMRを使用し、予後、診断、治療および手術に有用である。MRIは、明白な利益のために放射性トレーサー化合物なしで使用され得る。いくつかのMRI技術は、EP−A−0502814に要約されている。一般に、異なる環境における水プロトンの緩和時間定数T1およびT2に関連する差を用いて画像が生成される。しかし、これらの差は、鮮明な高解像度画像を提供するには不十分である可能性がある。
これらの緩和時間定数の差は、造影剤によって高めることができる。かかる造影剤の例としては、多くの磁性剤や常磁性剤(主にT1を変更する)や、強磁性剤や超常磁性剤(主にT2応答を変更する)が挙げられる。いくつかの常磁性体(例えば、Fe+3、Mn+2、Gd+3)の結合(および毒性の減少)のためにキレート剤(例えば、EDTAキレート、DTPAキレート、NTAキレート)を用いることができる。他の作用物質は、粒子形態(例えば、直径10mm未満〜約10nM)であってよい。粒子は、強磁性、反強磁性または超常磁性の特性を有することができる。粒子は、例えば、マグネタイト(Fe)、γ−Fe、フェライト、および遷移元素の他の磁性無機化合物を含むことができる。磁性粒子は、非磁性材料を伴っておよび伴わないで1種以上の磁性結晶を含んでよい。非磁性材料は、合成または天然のポリマー(例えば、セファロース、デキストラン、デキストリン、デンプンなど)を含むことができる。
(i)天然で豊富なフッ素原子のほとんど全てが19F同位体であり、したがってほとんど全てのフッ素含有化合物はNMR活性であり、(ii)多くの化学的に活性なポリフッ化化合物、例えばトリフルオロ酢酸無水物は、比較的低コストで商業的に入手可能であり、(iii)ヘモグロビンの代用物として酸素を運ぶために利用されるペルフルオロポリエーテル等、多くのフッ素化化合物が、ヒトにおける使用のために医学的に許容されることが明らかにされてきたため、MMP−9結合タンパク質は、NMR活性19F原子を含む指示基または複数のかかる原子で標識され得る。インキュベーションのためのかかる時間を可能にした後、Pykett、1982年、Sci. Am.246巻:78〜88頁に記載されるもののうちの1つなどの装置を使用して全身MRIを行い、MMP−9およびMMP−2を発現する組織を見つけ、撮像する。
本出願の全体にわたって引用される全ての参考文献、係属中の特許出願、および公開された特許の内容は、参照により本明細書に明白に組み込まれる。以下の実施例は、さらなる例示を提供するものであって、限定的なものではない。
本開示全体を通じて、結合タンパク質に関して、大文字に続くゼロおよび3つの数字−ダッシュ記号−文字および2つの数字という形式(例えば、M0237−D02)とは、大文字に続く3つの数字−ダッシュ記号−文字および2つの数字という形式(例えば、M237−D02)と同じタンパク質を指す。例えば、抗体M0237−D02はまたM237−D02とも呼ばれる。さらに接頭語が存在してもよいし、存在しなくてもよく、どのタンパク質が言及されているかという接頭語の存在は変化しない。例えば、抗体539A−M0237−D02はまたM0237−D02またはM237−D02とも呼ばれる。
(実施例1)
抗MMP−9のFabおよびIgGの選択およびスクリーニング
2つのストラテジーを使用して抗MMP−9抗体を特定した:
(1)ビオチン化結合によるMMP−9(PMA活性化)の非ビオチン化型の捕捉であ
って、ただしストレプトアビジンコーティング表面上でのビオチン化物の引き続く固定でのFabの阻害はしない。
(2)溶液中のMMP−9(PMA活性化)。適切に枯渇させた(例えば、ストレプトアビジンと事前に接触)ファージを標的と相互作用させ、未結合のファージを洗い流し、そのアウトプットをサンプリングするか、および/または次回の選択のために増幅させた。これをELISA分析でアウトプットのファージが高い割合のバインダーを示すまで繰り返した。128/2076個の固有のsFabをELISAによって特定して配列決定した。
配列決定分析の後、ファージディスプレイをsFabに、次いでIgG1に変換した。MMP−9および他のMMP(1、3、7、8、9、10、12、13、14)を阻害する能力を通常の手段によって決定した。化合物は最初、MMP−9に対して1μMでスクリーニングし、MMP−9を80%を上回って阻害した化合物を、精製組換えヒトMMP−2(APMA活性化酵素)および他のMMPに対する追加のスクリーニングに供した。これらの追加のスクリーニングについて、IC50値を決定した。阻害剤のKi値および特異性は下記の通り決定した。
(実施例2)
ヒトおよびマウスMMP−9についてのKiの決定
本実施例はM0237−D02 hIgG1のヒトおよびマウスのMMP−9との相互作用を特徴づけた。Kiを測定して、阻害機序を決定した。
材料:
−基質:BACHEM(521575)のMca−KPLGL−Dap(Dnp)−AR−NH (配列番号1279)(M−2350)。10mMのストック溶液をDMSO中で調製した。
−酵素:
○ヒトMMP−9触媒ドメイン(BIOMOL,SE−244)。酵素濃度はTIMP−1(2522−104)を用いた滴定によって測定した。
○マウスMMP−9(R&D,909−MM),APMA−活性化。
−M0237−D02 hIgG1:2517−014。TCNに対して透析。
−TCNB:50mM Tris/HCl、10mM CaCl、150mM NaCl、0.05% Brij 35、pH7.5。
−Perkin Elmerの96ウェルの黒色プレート(6005270)
−加水分解の際の基質の蛍光放射を測定するSpectramax M2e
(温度制御は30℃に設定;λexe=328nmおよびλem=393nm)
Kiの測定および阻害モデルの特徴づけ
この酵素(最終濃度=ヒトおよびマウスのMMP−9についてそれぞれ0.23nMおよび0.17nM)を、種々の濃度(0〜50nM)のM0237−D02と共に30℃で1時間プレインキュベートした。次いで、基質を5〜40μMの範囲に及ぶ最終濃度で添加して、初速度を記録した。
各々のデータポイントを三連で測定し、初速度を平均した。
平均した初速度を、各々の基質濃度についてのM0237−D02濃度に対してプロッ
トして、IC50を以下の式を用いて算出した:
図1Aおよび図1Bは、MMP−9結合タンパク質(539A−M0237−D02)の基質濃度(μM)に対するIC50(nM)を示している2つの線グラフである。図1Aでは、基質はヒトMMP−9である。図1Bでは、基質はマウスMMP−9である。
次いでIC50値を基質濃度に対してプロットした。
Kiの決定および阻害のモデルの特徴づけ
図1Aおよび図2Bに示される通り、ヒトMMP−9について0.92±0.04nMというKiおよびマウスMMP−9について1.3±0.1nMというKiが算出された。
(実施例3)
h−TIMP−1/h−MMP−9複合体とのM0166−F10およびM0237−D02の相互作用
蛍光発生ペプチド基質で得られた実験データによって、ヒトおよびマウスMMP−9の非競合的阻害剤としてM0237−D02が挙動することが示唆される。この非競合的阻害モデルによって、三元複合体である酵素−基質−阻害剤が形成され得ることが示される。しかし、この複合体は、より大きい基質とは形成することはできず、この場合は、この抗体は競合的阻害剤として挙動する可能性がある。この問題に取り組むため、酵素がその天然の阻害剤h−TIMP−1に複合体化された場合、M0237−D02抗体がh−MMP−9に対して結合する能力を決定した。その理由は、この抗体がh−MMP−9/h−TIMP−1複合体に結合できない場合、より大きい基質の存在下において、この酵素の競合的阻害剤としておそらく挙動するであろうということである。あるいは、三元複合体である酵素−TIMP−1−抗体が形成できる場合、この抗体は、大きい基質の存在下でさえ非競合的阻害剤として挙動する。
実験は25℃でBiacore 3000装置の補助によって行った。MMP−9結合タンパク質(M0166F10)およびM0237−D02抗体を、標準的なアミンカップリングを介して、または抗Fc抗体表面を用いてCM5チップにコーティングした。次いで、いずれかの活性な、ヒトMMP−9触媒ドメイン(BIOMOL,SE−244)、ヒトプロ−MMP−9(R&D,911−MP)、ヒトTIMP−1(R&D,970−TM)またはh−MMP−9/h−TIMP−1複合体を、抗体表面の上に流して、その結合を記録した。そのデータを下の表にまとめる。
ヒトMMP−9触媒ドメインは、M0166−F10がアミンカップリングを介して直接捕捉されようと、または抗Fc抗体表面で捕捉されようと、この抗体に結合することが示された。対照的に、酵素がh−TIMP−1に対して複合体化された場合、M0166−F10に対する結合は観察されなかった。M0237−D02に対するヒトMMP−9触媒ドメインの結合は、この抗体が抗Fc抗体を介して捕捉される場合にのみ観察され得、このことは、アミンカップリングがM0237−D02の不活性化を生じることを示唆する。M0166−F10と同様、MMP−9/TIMP−1複合体では結合は観察されなかった。興味深いことに、プロMMP−9に対する結合は、M237−D02についても、M0166−F10についても観察されなかった。
このことは、M0237−D02がTIMP−1/MMP−9複合体に結合できないことを示しており、このことはM0237−D02が、より大きい基質の存在下で競合的阻害剤として挙動することを示唆する。M0166−F10抗体についての同様の知見によって、後者はまた、少なくとも大きい基質では競合的阻害剤でもあることが示唆される。
(実施例4)
M0237−D02によるヒトMMP−9の阻害:プログレス曲線および反応速度論的解析
M0237−D02とヒトMMP−9との間の相互作用の反応速度論を決定した。速度は、以下の式を用いて決定した:
酵素Eおよび阻害剤Iの会合についての二次速度定数(kon)ならびに複合体EIの解離についての一次速度定数(koff)は、種々の阻害剤濃度で得られた阻害プログレス曲線から算出できる。
材料:
−基質:BACHEM(521575)のMca−KPLGL−Dap(Dnp)−AR−NH (配列番号1279)(M−2350)。10mMのストック溶液をDMSO中で調製した。
−ヒトMMP−9触媒ドメイン(BIOMOL,SE−244)。
−M0237−D02 hIgG1:2517−068。
−全ての測定は、TCNB(50mMのTris/HCl、10mMのCaCl、150mMのNaCl、0.05%のBrij 35、pH7.5)中で25℃で行った。
−Perkin Elmerの96ウェルの黒色プレート(6005270)
−加水分解の際の基質の蛍光放射を測定するSpectramax M2e
(λexe=328nmおよびλem=393nm)
手順:
この酵素(最終濃度は1.5〜12.3nMに及ぶ)、基質(最終9μM)、およびM0237−D02抗体を混合して、その蛍光を基質の加水分解を追跡するために直ちに記録した。観察された阻害速度(kobs)は単一指数関数を用いてプログレス曲線を分析することによって得た。konおよびkoffについての値は、以下の式を用いて抗体濃度に対するkobsのプロットから算出した:
obsは4つの抗体濃度(下の表)で測定した:
抗体濃度(下)に対するkobsのプロットによってkon約7×10−1−1およびkoff約4×10−4−1が得られた。
(実施例5)
フィルムインサイチュザイモグラフィー
PBS対照で処理した腫瘍を、FIZアプローチを用いてゲラチナーゼ発現についてM0237−D02を用いてスクリーニングした。試験した腫瘍はColo205およびMCF−7であった。要するに、腫瘍切片の凍結スライドを室温で乾燥し、200μlのインサイチュZymo緩衝液(TCNB)+20μg/mlのゼラチンクエンチした基質(Molecular Probes)を添加した。そのスライドを、M0237−D02(500nM)または陽性対照として用いるGM6001(100μM)の存在下で、37℃で一晩インキュベートした。基質をMilliQ中で(3回)洗浄し、装着したスライドを抗Fade+Dapiマウンティング培地を用いて処理した。
Colo205およびMCF−7腫瘍切片では、二重のMMP−2/−9阻害剤M02
37−D02(500nM)の存在下でゼラチン分解活性の完全な阻害が観察され、M0237−D02は腫瘍MMP−2−9に結合して阻害する。
(実施例6)
炎症における539A−M0237−D02の評価
以下の実験の目的は、炎症に対する、特に、カラギーナン刺激マウスの空気嚢への炎症性細胞浸潤に対する、およびコラーゲン誘発性関節炎(CIA)マウスにおける関節炎指数に対する、539A−M0237−D02の効果を決定することであった。
カラギーナン刺激マウスの空気嚢モデルについては、マウスの後部側腹部または背部への空気の皮下注射によって1週間で空気嚢を作製し、その内部表面が線維芽様細胞およびマクロファージ様細胞の両方を含む。空気嚢の炎症性刺激によって、この空気嚢への白血球の動員および浸出液へのメディエーター(サイトカイン)の放出が生じる。空気嚢への炎症性細胞浸潤の予防は、関節リウマチで滑膜の炎症を予防することに置き換えてもよい。
炎症性細胞浸潤に対する539A−M0237−D02の効果をインドメタシンおよび対照(PBS)における炎症性細胞浸潤と比較した。さらに、炎症性細胞の動因を、刺激してないマウスと比較した。図2に示される通り、539A−M0237−D02は総白血球浸潤、特に好中球およびリンパ球の浸潤を有意に低減した。
コラーゲン誘発の関節炎(CIA)を、天然のII型コラーゲンでのマウスの感受性系統の免疫によって作製した。コラーゲンはフロイントの完全アジュバント中で乳化して皮下注射した。不完全アジュバント中へのコラーゲンのブースター注射は初回免疫の21日後にIPで投与した。この疾患はコラーゲンでの免疫の際に誘導された自己免疫応答に起因する。
関節炎指数に対する539A−M0237−D02の効果を、メトトレキサート(MTX)の投与と比較した。図3に示される通り、関節炎指数は、未処置のマウスと比較してCIAモデルで低下した。
(実施例7)
539A−M0237−D02のsFABの可変領域のDNAおよびアミノ酸配列は以下の通りである:
(実施例8)
結腸癌細胞での研究
Colo205結腸癌モデルにおける新規な抗体DL8、DL12、DL15およびDL2の効力を評価した。この抗体は、単独または組み合わせて試験した。結果を図4に示す。
手順:
・HRLN雌性nu/nuマウスを、50%Matrigel中の1×10個のColo205腫瘍細胞を側腹部皮下(sc)に用いて設定する
・腫瘍が100〜150mgという平均サイズに達する時点でペアマッチングを行い、処置を開始する
・体重:最初の5日間は毎日、次に週2(biwk)で終わりまで
・カリパスでの測定:週2で終わりまで
・最終の体重およびカリパスでの測定は研究の最終日にすべきである。
・エンドポイントTGI(tumor growth inhibition(腫瘍増殖阻害))。動物は1群としてモニタリングすべきである。実験のエンドポイントは、対照群での平均腫瘍重量が1gになるかまたは45日のどちらかが最初に達するときである。エンドポイントに達した場合、全ての動物を屠殺するものとする。
研究の条件:
・データの統計学的分析は以下を用いて行う:
○クラスカル・ウォリスでの検定後ダン検定を第3〜7群対第1群、ならびに第7群対第4群および6群
○マンホイットニー検定を第1群対第2群
・臨床薬PACLITAXELを陽性対照としてだけ用いる
投与:
・投与溶液を調製する:
○DL2、DL8、DL12、DL15−毎週、4℃で保管
○パクリタキセル−全ての用量、室温で保管
・DL12=PBS中にB03=539A−M0240−B03 IgG1(h/mMMP−9抗体阻害剤)(親(parental))
・DL8=PBS中にD02=539A−M0237−D02 IgG1(MMP−9/−2二重反応性抗体阻害剤)(親)
・DL15=PBS中にF10=539A−M0166−F10 IgG1(hMMP−9抗体阻害剤)(親)
・DL2=クエン酸緩衝液中のDX−2400。
・パクリタキセル=5%エタノール:5%クレモフォールEL:90% D5W中のパクリタキセル
・ビヒクル=PBS
・投与容量=10mL/kg(マウス20g当たり0.200mL)。体重によって容量を調節する。
・将来の使用のために残りの化合物をとっておく
・残りの投与溶液を廃棄する
サンプリング:
・サンプリング1
○時点:DL10の5回目の投与の24時間後(10日目)
○全ての群の6匹の動物は平均に最も近い:
○血液収集
●CO麻酔下で末端の心穿刺によって血液全量を収集する
●血液を処理する:
●血清(抗凝固剤:なし、保存:凍結、運搬条件:−80℃)
・サンプリング2
○時点:DL10の10回目の投与の24時間後(20日目)
○全ての群ともサンプリング1でサンプリングした同じ動物:
○血液収集は上記の通り
・サンプリング3
○時点:エンドポイントで(最終のDL投与の24時間後)
○全ての群の全ての動物:
○血液収集
●CO麻酔下で末端の心穿刺によって血液全量を収集する
●血液を処理する:
●血清(抗凝固剤:なし、保存:凍結、運搬条件:−80℃)
○臓器の収集
●腫瘍(サンプルを秤量し、2つの部分に分ける)
●第1部分:保存:冷凍バイアル中で急速冷凍、運搬条件:−80℃。
●第2部分:保存:OCT、運搬条件:−80℃。
539A−M0166−F10:539A−M0166−F10は阻害性MMP−9結合抗体である。539A−M0166−F10の可変ドメイン配列は以下である:
DX−2400:DX−2400は阻害性MMP−14結合抗体である。DX−2400の可変ドメイン配列は以下である:
539A−M0237−D02:539A−M0237−D02の可変ドメイン配列は上記に示す。
(実施例9)
膵臓癌細胞での研究
BxPC−3膵臓癌モデルにおける新規な抗体DL8、DL12およびDL2の効力を
評価した。抗体は、単独または組み合わせて試験した。結果を図5に示す。
手順:
・HRLN雌性nu/nuマウスを、1mmのBx−PC3腫瘍断片を側腹部にscで用いて設定する
・腫瘍が80〜120mgという平均サイズに達する時点でペアマッチングを行い、処置を開始する
・体重:5/2、次に週2で終わりまで
・カリパスでの測定:週2で終わりまで
・最終の体重およびカリパスでの測定は研究の最終日にすべきである。
・エンドポイントTGI。動物は群としてモニタリングすべきである。実験のエンドポイントは、対照群での平均腫瘍重量が1gになるかまたは45日のどちらかが最初に達するときである。エンドポイントに達すると、全ての動物を屠殺するものとする。
研究の条件:
・データの統計学的分析は以下を用いて行う:
○クラスカル・ウォリスでの検定後ダン検定を第3〜6群対第1群、ならびに第6群対第3群および5群
○マンホイットニー検定を第1群対第2群
・臨床薬PACLITAXELを陽性対照としてだけ用いる。
投与:
・投与溶液を調製する:
○DL2、DL8、DL12−毎週、4℃で保管
○パクリタキセル−全ての用量、室温で保管
・DL12=PBS中にB03
・DL8=PBS中にD02
・DL2=クエン酸緩衝溶液中にDX−2400
・パクリタキセル=5%エタノール:5%クレモフォールEL:90%のD5W中のパクリタキセル
・ビヒクル=PBS
・投与容量=10mL/kg(マウス20g当たり0.200mL)。体重によって容量を調節する。
・将来の使用のために残りの化合物をとっておく
・残りの投与溶液を廃棄する
サンプリング:
・サンプリング1
○時点:5回目の投与の24時間後(10日目)
○全ての群の6匹の動物は平均に最も近い:
○血液収集
●CO麻酔下で末端の心穿刺によって血液全量を収集する
●血液を処理する:
●血清(抗凝固剤:なし、保存:凍結、運搬条件:−80℃)
・サンプリング2
○時点:10回目の投与の24時間後(20日目)
○全ての群ともサンプリング1でサンプリングした同じ動物:
○血液収集は上記の通り
・サンプリング3
○時点:エンドポイントで(最終の投与の24時間後)
○全ての群の全ての動物:
○血液収集
●CO麻酔下で末端の心穿刺によって血液全量を収集する
●血液を処理する:
●血清(抗凝固剤:なし、保存:凍結、運搬条件:−80℃)
○臓器の収集
●腫瘍(サンプルを秤量し、2つの部分に分ける)
●第1部分:保存:冷凍バイアル中で急速冷凍、運搬条件:−80℃。
●第2部分:保存:OCT、運搬条件:−80℃。
(実施例10)
539A−M0237−D02の親和性成熟改変体
M237−D02(本明細書では539A−M0237−D02とも呼ばれる)を親和性成熟のための親抗体として用いた。2つのライブラリーを構築して、全ての標的(hMMP9、hMMP2、mMMP9およびmMMP2)に結合するFabを選択した。1つのライブラリーで、選択されたM237−D02のLCをFAB−310ライブラリーの任意のLCで置き換えることが可能である(Hoetら、Nat Biotechnol.2005年23巻:344〜348頁)。他のライブラリーによって、HC CDR1−2をFAB−310ライブラリーの任意のHC CDR1−2で置換することができた。表5では、M237−D02の親和性成熟改変体のLVおよびHVのCDR配列を示す。以下の表5は、これらの抗体のLVおよびHVの全配列の列挙である。表6は、25〜66の位置でのHC−CDR1−2ライブラリーから選択したFABを示す。標準でない位置58aによって、挿入部分を有している配列が提示できるようになった。表6では、「−」とは、この配列がM237−D02に同一であることを意味し、「#」とは、欠失があることを意味する。
(実施例11)
h/mMMP−2およびh/mMMP−9に対する親和性成熟から選択された19個の固有のFabの阻害性活性(LC+HCDR1−2−プレスクリーニング)。
539A−M0256−G09、539A−M0256−A04、539A−M0256−D03、539A−M0265−A07、39A−M0263−F01、539A−M0263−F05、539A−M0256−C09、539A−M0256−B03、539A−M0265−A04、539A−M0256−A07、539A−M0264−A09、539A−M0265−C07、539A−M0256−D11、539A−M0266−E02、539A−M0256−E10、539A−M0256−C07、539A−M0266−D03、539A−M0256−E03、539A−M0237−D02のFabおよび539A−M0237−D02のIgG1を、hMMP−9、hMMP−2、mMMP−9およびmMMP−2に対して試験した。
結果を図6にまとめる。
(実施例12)
ヒトMMP−9、ヒトMMP−2、マウスMMP−9およびマウスMMP−2に対する539A−M0266−E02のKiapp([25μM](nM))。
結果を図7にまとめる。
(実施例13)
ヒトMMP−1、−7、−8、10および−12に対する539A−M0266−E02の交差反応性のデータ。
結果を図8にまとめる。
本発明の多数の実施形態を記載してきた。しかし、種々の改変が本発明の趣旨および範囲から逸脱することなくなされ得ることが理解される。したがって、他の実施形態が添付の特許請求の範囲内である。

Claims (21)

  1. 少なくとも1つの免疫グロブリン可変領域を含む、MMP−9またはMMP−2に結合する単離タンパク質。
  2. a)前記MMP−9がヒトMMP−9であり、前記MMP−2がヒトMMP−2である、
    b)MMP−9またはMMP−2の触媒活性を阻害することができる、
    c)抗体を含む、
    d)細胞の表面にMMP−9またはMMP−2を発現する前記細胞にナノ粒子または毒素を誘導する、
    e)エフェクター機能を引き起こして、MMP−9またはMMP−2を発現する細胞を死滅させる、
    f)重鎖(HC)免疫グロブリン可変ドメイン配列および軽鎖(LC)免疫グロブリン可変ドメイン配列を含む、
    g)ヒトMMP−9およびヒトMMP−2に特異的に結合し、別の種由来のMMP−9またはMMP−2には結合しない、
    h)ヒトMMP−9またはヒトMMP−2に結合することができ、また、Mus musculus、Rattus norvegus、およびMacaca fascicularisからなる群から選択されるげっ歯動物種のMMP−9またはMMP−2にも結合することができる、
    i)MMP−9またはMMP−2に特異的に結合することができ、別のマトリックスメタロプロテアーゼに結合可能でない、
    j)抗体M0237−D02の軽鎖および重鎖を含む抗体を含む、
    k)抗体M0237−D02の重鎖を含む抗体を含む、
    l)抗体M0237−D02の軽鎖を含む抗体を含む、
    m)抗体M0237−D02由来の1つまたは複数の重鎖CDRを含む抗体を含む、
    n)抗体M0237−D02由来の1つまたは複数の軽鎖CDRを含む抗体を含む、
    o)抗体M0237−D02の軽鎖および重鎖を含む、
    p)ヒト抗体もしくはヒト化抗体であるか、またはヒトにおいて非免疫原性である、そして/または
    q)MMP−9またはMMP−2を発現する腫瘍細胞に結合することができる、
    請求項1に記載のタンパク質。
  3. 以下の特徴:
    (a)ヒトCDRまたはヒトフレームワーク領域;
    (b)前記HC免疫グロブリン可変ドメイン配列が、本明細書に記載のHC可変ドメインのCDRに対して少なくとも85%同一である1つまたは複数のCDRを含むこと;
    (c)前記LC免疫グロブリン可変ドメイン配列が、本明細書に記載のLC可変ドメインのCDRに対して少なくとも85%同一である1つまたは複数のCDRを含むこと;
    (d)前記LC免疫グロブリン可変ドメイン配列が、本明細書に記載のLC可変ドメインに対して少なくとも85%同一であること;
    (e)前記HC免疫グロブリン可変ドメイン配列が、本明細書に記載のHC可変ドメインに対して少なくとも85%同一であること;
    (f)前記タンパク質が、本明細書に記載のタンパク質により結合されるエピトープ、またはこのようなエピトープと重複するエピトープに結合すること;および
    (g)霊長類CDRまたは霊長類フレームワーク領域
    のうちの1つまたは複数を含む、請求項1に記載のタンパク質。
  4. MMP−9またはMMP−2とMMP−9またはMMP−2の(それぞれの)基質との相互作用を阻害するための組成物であって、請求項1〜3のいずれかに記載のMMP−9/MMP−2結合タンパク質を含み、前記結合タンパク質がMMP−9またはMMP−2に結合し、これにより、MMP−9またはMMP−2に対するMMP−9またはMMP−2の(それぞれの)基質の結合を防止する組成物
  5. 請求項1〜3に記載のMMP−9/MMP−2結合タンパク質および細胞傷害剤または細胞増殖抑制剤などの薬物を含む、MMP−9/MMP−2結合タンパク質−薬物コンジュゲート。
  6. 前記薬物が細胞傷害剤であって、アウリスタチン、DNA副溝結合剤、DNA副溝アルキル化剤、エンジイン、レキシトロプシン、デュオカルマイシン、タキサン、ピューロマイシン、ドラスタチン、ポドフィロトキシン、バッカチン誘導体、クリプトフィシン、コンブレタスタチン、マイタンシノイド、およびビンカアルカロイドからなる群から選択される、請求項に記載のコンジュゲート。
  7. 請求項1〜3のいずれかに記載のMMP−9/MMP−2結合タンパク質および薬学的に許容される担体を含む医薬組成物。
  8. 試料中のMMP−9またはMMP−2を検出する方法であって、
    前記試料を請求項1〜3のいずれかに記載のMMP−9/MMP−2結合タンパク質と接触させる工程と、存在する場合に、前記タンパク質とMMP−9またはMMP−2との間の相互作用を検出する工程と
    を含む方法。
  9. MMP−9またはMMP−2の活性を調節するための組成物であって
    求項1〜3のいずれかに記載のMMP−9/MMP−2結合タンパク質を含む組成物
  10. 対象における転移活性を調節するための組成物であって、
    請求項1〜3のいずれかに記載のMMP−9/MMP−2結合タンパク質を、転移活性を調節するのに有効な量で含組成物
  11. 癌を治療するための組成物であって、
    請求項1〜3のいずれかに記載のMMP−9/MMP−2結合タンパク質を、癌を治療するのに十分な量で含組成物
  12. 心不全を治療するための組成物であって、
    請求項1〜3のいずれかに記載のMMP−9/MMP−2結合タンパク質を、心不全を治療するのに十分な量で含組成物
  13. 敗血症性ショックを治療するための組成物であって、
    請求項1〜3のいずれかに記載のMMP−9/MMP−2結合タンパク質を、敗血症性ショックを治療するのに十分な量で含組成物
  14. 神経障害性疼痛を治療するための組成物であって、
    請求項1〜3のいずれかに記載のMMP−9/MMP−2結合タンパク質を、神経障害性疼痛を治療するのに十分な量で含組成物
  15. 炎症性疼痛を治療するための組成物であって、
    請求項1〜3のいずれかに記載のMMP−9/MMP−2結合タンパク質を、炎症性疼痛を治療するのに十分な量で含組成物
  16. 眼疾患を治療するための組成物であって、
    請求項1〜3のいずれかに記載のMMP−9/MMP−2結合タンパク質を、眼疾患を治療するのに十分な量で含組成物
  17. 炎症性疾患を治療するための組成物であって、
    請求項1〜3のいずれかに記載のMMP−9/MMP−2結合タンパク質を、炎症性疾患を治療するのに十分な量で含組成物
  18. 対象を画像化するための組成物であって、
    請求項1〜3のいずれかに記載のMMP−9/MMP−2結合タンパク質を含組成物
  19. Ki,app<1nMでヒトMMP−9に、またはKi,app<1nMでヒトMMP−2に、Ki,app<約5nMでマウスMMP−9に、またはKi,app<約5nMでマウスMMP−2に結合することができるヒト抗体またはヒト化抗体である単離タンパク質。
  20. Ki,app<1nMでヒトMMP−9に、またはKi,app<1nMでヒトMMP−2に結合することができるヒト抗体またはヒト化抗体である単離タンパク質。
  21. 自己免疫性水疱性皮膚疾患を治療するための組成物であって、
    請求項1〜3のいずれかに記載のMMP−9/MMP−2結合タンパク質を含む組成物。
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