JP2011513974A - 純粋なまたはドープされた半導体材料の非支持型物品の製造方法 - Google Patents

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Abstract

本発明は、半導体材料の物品の製造方法、およびそれにより形成された半導体材料物品、例えば太陽電池の製造に有用となり得る半導体材料の物品に関する。

Description

関連出願
本出願は、表題「METHOD OF MAKING AN UNSUPPORTED ARTICLE OF A PURE OR DOPED SEMICONDUCTING ELEMENT OR ALLOY」の2008年2月29日出願の米国仮特許出願第61/067,679号に優先権を主張する。
本発明は、半導体材料の非支持型物品の製造方法、およびそれにより形成された半導体材料物品、例えば太陽電池の製造に有用とし得る半導体材料の物品などに関する。
半導体材料は多くの応用に使用されている。例えば半導体材料を、半導体ウエハに形成された処理装置として電子デバイスで使用することができる。別の例では、半導体材料はまた、光起電力効果による太陽放射の電気エネルギーへの変換にも使用できる。
シリコンベースの太陽電池用に、シリコンを、例えば非支持型シートとして、または基板にシリコンを形成することによって支持されて形成することもできる。シリコンシートなどの半導体材料の非支持型物品および支持型物品を製造するための従来の方法には、いくつかの欠点がある。
非支持型半導体材料の薄板、すなわち、一体式の基板のない薄板の製造方法では、半導体材料のフィードストックが緩慢であるかまたはその無駄が多いことがある。半導体材料のバルク成長、例えば、単結晶および多結晶のシリコンインゴットは、一般にその後インゴットを薄板にスライスすることを伴い、これにより材料の損失、例えばワイヤーソーから約50%の切り目(kerf)幅のカーフロスをもたらす。リボン成長技術は、スライシングによる材料の損失の問題を打開するものの、例えば、多結晶シリコンリボン成長技術では1〜2cm/分と緩慢となり得る。
支持型半導体材料の薄板をより安価に製造し得るが、半導体材料の薄板は、それが作製される基板によって制限されており、かつ基板は、様々なプロセス要件および適用要件に適合する必要があり、それらの要件は相反し得る。
それゆえ、産業界では長年にわたり、材料浪費を少なくしおよび/または生産率を向上し得る半導体材料の物品の製造方法が必要とされている。
本発明の種々の例示的な実施形態に従って、温度TMoldで鋳型を提供する工程、バルク温度T(T>TMold)で溶融半導体材料を提供する工程、任意選択的に鋳型の外面を粒子で被覆する工程、鋳型の外面上に半導体材料の固体層を形成するのに十分な期間、鋳型を溶融半導体材料に浸漬させる工程、半導体材料の固体層を有する鋳型を溶融半導体材料から取り出す工程、および半導体材料の固体層を鋳型から分離して、半導体材料の非支持型物品を形成する工程を含む、半導体材料の物品の製造方法が提供される。
本発明の他の例示的な実施形態は、温度TMoldで鋳型を提供する工程、バルク温度T(T>TMold)で溶融半導体材料を提供する工程、任意選択的に鋳型の外面を粒子で被覆する工程、鋳型の外面上に半導体材料の固体層を形成するのに十分な期間、鋳型を溶融半導体材料に浸漬し、かつその場合、鋳型の温度が溶融半導体材料の温度によってのみ変更される工程、半導体材料の固体層を有する鋳型を溶融半導体材料から取り出す工程、および半導体材料の層を鋳型から分離して、半導体材料の非支持型物品を形成する工程を含む、半導体材料の物品の製造方法に関する。
本発明の他の例示的な実施形態は、温度TMoldで鋳型を提供する工程、バルク温度T(T>TMold)で溶融半導体材料を提供する工程、任意選択的に鋳型の外面を粒子で被覆する工程、半導体材料の固体層が鋳型の外面上に形成され、かつ再溶融を始めるのに十分な期間、鋳型を溶融半導体材料に浸漬させる工程、半導体材料の固体層を有する鋳型を溶融半導体材料から取り出す工程、および半導体材料の層を鋳型から分離して、半導体材料の非支持型物品を形成する工程を含む、半導体材料の物品の厚さの制御方法に関する。
本発明の例示的な実施形態はまた、温度TMoldで鋳型を提供する工程、バルク温度T(T>TMold)で溶融半導体材料を提供する工程、任意選択的に鋳型の外面を粒子で被覆する工程、半導体材料の固体層が鋳型の外面上に形成されるのに十分な期間、鋳型を溶融半導体材料に浸漬させる工程、半導体材料の固体層を有する鋳型を溶融半導体材料から取り出す工程、および半導体材料の層を鋳型から分離して、半導体材料の非支持型物品を形成する工程を含む方法によって形成された半導体材料の物品に関する。
別の本発明の例示的な実施形態は、半導体材料の物品を形成する鋳型に関し、ここで、鋳型は外面、および外面上に粒子を含む。
少なくともいくつかの実施形態では、本発明による方法は、材料浪費を少なくし、および/または半導体材料の生産率を向上させる。
ここで使用されるように、用語「半導体材料」は、半導体特性を有する材料、例えばシリコン、ゲルマニウム、スズ、およびヒ化ガリウム、ならびにそれらの合金、化合物および混合物などを含む。種々の実施形態では、半導体材料は純粋であっても(例えば真性すなわちi型シリコンなど)またはドープされていてもよい(例えばn型またはp型ドーパント、それぞれリンまたはホウ素などを含むシリコン)。
ここで使用されるように、用語「半導体材料の物品」は、本発明の方法を使用して作製されたいずれの形状または形態の半導体材料も含む。そのような物品の例としては、なめらかなまたはテクスチャード加工された物品;平坦な、湾曲した、屈曲した、または角度が付けられた物品;および対称的なまたは非対称的な物品が挙げられる。半導体材料の物品は、例えばシートやチューブなどの形態を備え得る。
ここで使用されるように、用語「非支持型」は、半導体材料の物品が鋳型と一体でないことを意味する。非支持型物品は、形成されている間、鋳型に緩く結合され得るが、鋳型上に形成された後には鋳型から分離される。しかしながら、その後非支持型物品を、光起電力応用などの種々の応用において基板に適用し得る。
ここで使用されるように、用語「鋳型」は、半導体材料の物品の最終的な形状に影響を及ぼし得る物理的構造を意味する。ここで説明する方法では、融解されたまたは凝固した半導体材料は実際に鋳型の表面と物理的に接触する必要はないが、鋳型の表面と融解されたまたは凝固した半導体材料との間で接触が起こり得る。
ここで使用されるように、用語「鋳型の外面」は、浸漬すると溶融半導体材料に暴露される鋳型の表面を意味する。例えば、鋳型が浸漬されるときに内面が溶融半導体材料と接触し得る場合には、チューブ状の鋳型の内部表面を外面とし得る。
ここで使用されるように、用語「鋳型の外面に半導体材料の固体層を形成する」およびその変形例は、鋳型の外面上に、外面全体に、または外面付近で溶融半導体材料からの半導体材料が凝固する(ここでは凍結または結晶化とも称す)ことを意味する。いくつかの実施形態では、鋳型の外面全体に半導体材料の固体層を形成することは、鋳型の外面を被覆する粒子の層の上に半導体材料を凝固させることを含み得る。種々の実施形態では、鋳型と溶融半導体材料との間に温度差があるために、半導体材料は、鋳型の外面に物理的に接触する前に凝固し得る。いくつかの実施形態では、半導体材料が鋳型に物理的に接触する前に凝固するとき、凝固した半導体材料は、その後、鋳型とまたは鋳型を被覆する粒子と物理的に接触するようになる。いくつかの実施形態では、半導体材料はまた、鋳型の外面と、または存在する場合には鋳型の外面を被覆する粒子と物理的に接触した後に凝固し得る。
ここで使用されるように、用語「生産率の向上」およびその変形例は、リボン成長方法などの半導体材料を製造するための従来の方法に関する半導体材料物品の生産率の一切の向上を含み得る。例えば、生産率の向上は1〜2CM/分超のいずれかの率とし得る。
ここで使用されるように、用語「材料浪費を少なくする」およびその変形例は、半導体材料の物品の製造に続いてスライシングまたは切断を使用する従来の方法による半導体材料の損失量の一切の低減も意味する。
ここで使用されるように、用語「結晶」は、例えば単結晶および多結晶の半導体材料を含む結晶構造を有するいずれかの材料を意味する。
ここで使用されるように、用語「多結晶質」は、複数の結晶粒で構成されたいずれかの材料を含む。例えば、多結晶質の材料は多結晶材料、微結晶材料、およびナノ結晶材料を含み得る。
ここで使用されるように、用語「溶融半導体材料の温度」、「溶融半導体材料のバルク温度」およびそれらの変形例は、好適な槽内に入れられた溶融半導体材料の平均温度を意味する。溶融半導体材料内の局所的な温度は、例えば、鋳型が浸漬されているときに溶融半導体材料の領域が鋳型の近傍となるか、または溶融半導体材料が槽の上面で大気条件に曝されるなど、いずれかの時点で変化し得る。種々の実施形態では、溶融半導体材料の平均温度は、どのような局所的な温度変動にも関わらず実質的に均一である。
ここで説明するように、本発明は、半導体材料の物品の製造方法、およびそれにより形成された半導体材料物品に関する。以下の説明では、特定の態様および実施形態が明らかとなる。本発明は、広義で、これらの態様および実施形態の1つ以上の特徴を有することなく実施できることを理解されたい。これらの態様および実施形態は単に例示および説明にすぎず、特許請求される本発明を限定するものではないことを理解されたい。
下記で説明し、かつ明細書に包含されその一部を構成する以下の図面は、本発明の例示的な実施形態を示し、かつ、本発明は他の同等に効果的な実施形態を認め得るため、本発明の範囲を限定するものではない。図面は必ずしも縮尺通りではなく、特定の特徴および特定の図を、明瞭および簡潔にするために誇張して示すかまたは概略的に示す。
本発明の実施形態による半導体材料の非支持型物品を作製する例示的な方法の概略図である。 本発明の実施形態による種々の鋳型の厚さに対する浸漬時の鋳型の温度とシリコン膜の最大厚さとの関係を示すグラフである。 本発明の例示的な方法に従って作製された非支持型シリコン物品の写真である。 本発明の例示的な方法に従って作製された非支持型シリコン物品の写真である。 本発明の実施形態による鋳型に形成された固体シリコン層の厚さと溶融シリコン中への鋳型の浸漬時間との関係を示すグラフである。 本発明の例示的な実施形態によって形成された非支持型シリコン物品の写真である。 本発明の例示的な実施形態によって形成された非支持型シリコン物品の写真である。 本発明による例示的な方法によって形成された平坦な非支持型シリコン物品の前面の写真である。 本発明による例示的な方法によって形成された平坦な非支持型シリコン物品の背面の写真である。 本発明の例示的な実施形態で使用されたチューブ状の外面を備える鋳型を示す。 図10に示すような鋳型を使用して本発明の例示的な実施形態によって形成された非支持型シリコン物品の写真である。 本発明の例示的な方法に従って使用された例示的なテクスチャード加工鋳型を示す。 本発明の例示的な方法に従って使用された例示的なテクスチャード加工鋳型を示す。 図12に示すような鋳型を使用する本発明の例示的な方法によって形成された非支持型シリコン物品の写真である。 図13に示すような鋳型を使用する本発明の例示的な方法によって形成された非支持型シリコン物品の写真である。 本発明の実施形態による粒子で被覆された鋳型の顕微鏡写真である。 図16に示す粒子で被覆された鋳型の側面図を示す顕微鏡写真である。 鋳型が溶融半導体材料から取り出される速度の関数として、溶融半導体材料の引きずり層の厚さを示すグラフである。 鋳型が溶融半導体材料に浸漬されているときの鋳型の例示的な浸漬角度の概略図である。
上述の概要および以下の詳細な説明の双方とも例示であり、説明のためのものにすぎず、本発明を限定するものではないことを理解されたい。当業者には、本発明の他の実施形態は、ここに開示した本発明の詳述および実施を考慮することから明白となるであろう。
図1に、半導体材料の非支持型物品を製造する例示的な方法を示す。例示的な方法は、単に鋳型キャビティに充填するのではなく、鋳型の表面、例えば外面上の物品を鋳造するエクソキャスティング(exocasting)プロセスである。図1に示す例示的な方法では、所望のサイズ(表面積)、形状、および表面テクスチャ/パターンを備える外面102を有する鋳型100が提供される。鋳型100の外面102の表面積、形状、および表面テクスチャ/パターンは、鋳造品のサイズ、形状、および表面テクスチャ/パターンを決定し得る。例えば鋳造品に対する所望の特性および特徴に基づいて鋳型100の外面102のサイズ、形状、および表面テクスチャ/パターンを選択できることを当業者は理解するであろう。
少なくとも1つの実施形態では、例えば溶融シリコンなどの溶融半導体材料104は、シリコンを、必要に応じてシリコンと反応しなくてもよいるつぼ106などの槽で溶融することによってもたらされ得る。少なくとも1つの実施形態では、溶融半導体材料104の汚染物質レベルを低くし得る。例えば、溶融半導体材料104は、1ppm未満の鉄、マンガン、およびクロム、および/または1ppb未満のバナジウム、チタン、およびジルコニウムを含む可能性がある。溶融半導体材料104は1015原子/cm未満の窒素および/または1017原子/cm未満の炭素を含み得る。少なくとも1つの実施形態では、半導体材料の原料は光起電力グレードまたはそれよりも純度の高いシリコンとし得る。
本発明の例示的な一実施形態では、鋳型100を、いずれかの好適な加熱装置または加熱方法を用いて低酸素または還元性雰囲気中で温度TMoldにし得る。好適な加熱装置および加熱方法の例としては、抵抗または誘導加熱素子などの加熱素子、および炎熱源が挙げられる。当業者は、加熱装置または加熱方法の選択を、例えば、鋳型が加熱される環境、鋳型の材料、鋳型の厚さ、および/または製造される最終品における所望の汚染物質レベルなどの要素の基づいて行い得ることを理解するであろう。
少なくとも1つの実施形態では、溶融半導体材料104を、いずれかの好適な加熱装置または加熱方法を使用して低酸素または還元性雰囲気中でバルク温度Tにし得る。上述のように、好適な加熱装置および加熱方法は加熱素子および炎熱源を含む。上述のように、当業者は、熱源の選択が、例えば、半導体材料の選択、溶融半導体材料を入れる槽の容量、槽のサイズ/厚さ、および/または槽の周囲の雰囲気などのいくつかの要素に依存することを理解するであろう。
浸漬前に、鋳型の温度TMoldを溶融半導体材料のバルク温度T未満として鋳型100と溶融材料104との間に温度差をもたらすことができ、それによりプロセスを推進してもよい。種々の実施形態では、溶融材料のバルク温度Tを半導体材料の溶融温度としても、またはそれよりも高い温度としてもよい。半導体材料がシリコンを含む例示的な一実施形態では、溶融シリコンのバルク温度Tは1414℃〜1550℃などの範囲、例えば1450℃〜1490℃など、1460℃などとし得る。
少なくとも1つの実施形態では、鋳型の温度TMoldを、例えば鋳型100が、鋳型100の表面に隣接する溶融材料を半導体材料104の凝固点/氷点まで冷却できるように、および半導体材料104から熱を十分に取り除いてそれを凍結させることができるように選択し得る。本発明の少なくとも1つの実施形態では、鋳型の温度TMoldを少なくとも部分的に鋳型100の厚さに基づいて選択し得る。例えば、図2に示すデータから決定できるように、肉厚な鋳型は薄い鋳型よりも半導体材料の厚い物品を製造する能力を有し得る(両鋳型が溶融半導体材料104への浸漬時に同じ温度を有する場合)。
少なくとも1つの実施形態では、溶融半導体材料104への浸漬前の鋳型の温度TMoldを−50℃〜1400℃の範囲とし得る。例えば、少なくとも1つの実施形態では、溶融半導体材料104への浸漬前の鋳型の温度TMoldを−35℃〜0℃の範囲とし得る。別の実施形態では、溶融半導体材料104への浸漬前の鋳型の温度TMoldを20℃〜30℃の範囲とし得る。さらに別の実施形態では、溶融半導体材料104への浸漬前の鋳型の温度TMoldを300℃〜500℃の範囲とし得る。
少なくとも1つの実施形態によれば、図1に示すように、鋳型100を、任意選択的に低酸素または還元性雰囲気中で予め定められた速度で溶融半導体材料104に浸漬し得る。鋳型100を任意の浸漬角度θで溶融半導体材料104に浸漬してもよい。ここで浸漬角度θは、図19に示すように、溶融半導体材料104の表面108に最初に接触する点Pにおける、溶融半導体材料104の表面108と鋳型100の外面102との間の角度である。鋳型100の外面102が溶融半導体材料104に接触する角度は、鋳型100が溶融半導体材料104に浸漬されるにつれ変わり得る。単に一例として、一実施形態では、溶融半導体材料は、初期接触点が溶融半導体材料104の表面108に対して平行であるため浸漬角度θは0°であるが、浸漬されるにつれて無数の角度で球形外面を有する鋳型と接触できる。別の例示的な実施形態では、鋳型100が溶融半導体材料104の表面108に対して垂直な方向に浸漬されるにつれ、鋳型100は溶融半導体材料104の表面108に対して平行な方向に動き得る。当業者はまた、最初の接触点Pにおけるいずれかの有限の位置での浸漬角度である局所的な浸漬角度はまた、表面特性(例えば、多孔性または高さ変動など)、および鋳型を含む材料のぬれ角度によって変わり得ることを理解するであろう。
別の例示的な実施形態では、鋳型100の外面102を溶融半導体材料104の表面108に対して実質的に垂直とし得る。すなわち、浸漬角度は約90°である。別の実施形態では、鋳型100の外面102は溶融半導体材料104の表面108に対して垂直である必要はない。一例として、鋳型100の外面102を浸漬角度0°〜180°の範囲で、例えば0°〜90°で、0°〜30°で、60°〜90°で、または45°の浸漬角度で溶融半導体材料104に浸漬し得る。
本発明の少なくとも1つの実施形態では、鋳型の浸漬をいずれかの好適な技術を使用して達成し、かつ鋳型を、溶融半導体材料の上からまたは溶融半導体材料の横または底から浸漬することによって達成し得る。
少なくとも1つの実施形態では、半導体材料の層が鋳型100の表面102上で十分に凝固させることができるのに十分な期間、鋳型100を溶融半導体材料104に浸漬し得る。少なくとも1つの実施形態では、十分な半導体材料が凝固したときに、溶融半導体材料から鋳型を取り出すことができかつ凝固した半導体材料の層を鋳型と共に取り出すことができる程度に、半導体材料は十分に凝固している。単に一例として、鋳型100を、鋳型100の厚さに依存して30秒以上まで溶融半導体材料104に浸漬し得る。少なくとも1つの実施形態では、鋳型100を0.5秒〜30秒、例えば10秒以下、浸漬し得る。一例として、鋳型100を溶融半導体材料104に1秒〜4秒浸漬し得る。浸漬時間は、当業者に公知のパラメータ、例えば、鋳型の厚さ、鋳型および溶融半導体材料の温度および伝熱特性、ならびに半導体材料の形成物品の所望の厚さに基づいて適切に変わり得る。
少なくとも1つの実施形態では、鋳型100を浸漬している間、抵抗加熱素子や誘導加熱素子などの少なくとも1つの加熱素子109を使用して槽106を加熱し、かつ溶融半導体材料104を所望の温度に維持し得る。少なくとも1つの実施形態では、溶融半導体材料104の温度をバルク温度Tに維持し得る。半導体材料104を溶融して、いずれかの所望の方法によって溶けた状態に維持することができ、かつ加熱方法の選択は、方法が実施される条件および環境に基づいた当業者の技術力の範囲内である。本発明の少なくとも1つの実施形態では、低い環境無線周波数(RF)誘導加熱を使用し得る。RF誘導加熱は、溶融物に異物が存在する可能性を最小限にすることによって、清浄な環境をもたらし得る。誘導はまた、鋳型100の表面付近の材料が急激に熱を除去するときに、所望のバルク溶融材料温度を維持するために必要な熱流束ももたらすことができる。
少なくとも1つの実施形態によれば、鋳型100を、溶融半導体材料104の表面108に対して垂直な方向に浸漬するときに、溶融半導体材料104の表面108に対して平行な平面に実質的に静止して保持し得る。他の実施形態では、鋳型100を、溶融半導体材料104の表面108に対して垂直な方向に浸漬するときに、溶融半導体材料104の表面108に対して平行な平面において動かす、例えば回転させるかまたは適切な周波数で振動させ得る。半導体材料110の層は、鋳型100の表面102上にできる。浸漬後、半導体材料110の層のある鋳型100を槽106から取り出してもよい。少なくとも1つの実施形態では、半導体材料110の層のある鋳型100を、対流冷却などにより能動的に、または半導体材料110の層の温度を室温にさせることによって、槽106から取り除いた後に冷却し得る。槽106から鋳型100を取り除いて十分に冷却した後、固体半導体材料110の層を、当業者に公知のいずれかの方法によって鋳型100から取り外すかまたは分離し得る。少なくとも1つの実施形態では、破損または変形させることなく鋳型から分離または取り外し得るときには、半導体材料の層を十分に冷却し得る。少なくとも1つの実施形態では、半導体材料110の層を、膨張差および/または機械的補助によって鋳型100から分離または取り外し得る。
少なくとも1つの実施形態では、半導体材料をシリコン、ゲルマニウム、スズ、ヒ化ガリウム、それらの合金、およびそれらの混合物から選択し得る。種々の実施形態によれば、半導体材料は純粋であってもドープされていてもよい。本発明の少なくとも1つの実施形態では、半導体材料は、ホウ素、リン、またはアルミニウム(B、P、またはAl)から選択される少なくとも1種のドーパントを含む。少なくとも1つの実施形態では、少なくとも1種のドーパントは百万分の一(ppm)の範囲で存在する。溶融半導体材料に存在するドーパントの量は、半導体材料の製造物品における所望のドーパント濃度に基づいて選択し、かつ例えば太陽電池などの物品の最終用途に依存し得る。少なくとも1つの実施形態によれば、ここに開示される方法によって製造された半導体材料の物品は、半導体材料全体に実質的に均一に分散されたドーパントを含み得る(例えば、半導体材料内でドーパントの実質的な分離がない)。
別の実施形態では、半導体材料は、少なくとも1つの非半導体元素を含み、それは、別の元素と共に半導体合金または化合物を形成し得る。例えば、半導体材料をヒ化ガリウム(GaAs)、窒化アルミニウム(AlN)、およびリン化インジウム(InP)から選択し得る。
本発明の種々の実施形態では、いくつかのプロセスパラメータが変化し得る。これらには以下のものが含まれるが、それらに限定はされない:(1)組成、密度、熱容量、熱伝導率、熱拡散率、および鋳型100の厚み、(2)浸漬前にもたらされる鋳型の温度TMold、および溶融半導体材料のバルク温度T、(3)鋳型100が溶融材料104中に浸漬される速度、(4)鋳型100が溶融材料104中に浸漬される時間の長さ、(5)半導体材料110の層を有する鋳型100が溶融材料104から取り除かれる速度、および(6)凝固した半導体材料110の冷却速度。
少なくとも1つの実施形態では、浸漬前にもたらされる鋳型の温度TMoldおよび溶融半導体材料のバルク温度Tは、制御可能な温度パラメータである(例えば、溶融半導体材料へ浸漬させると鋳型の温度は変化する一方、バルク溶融半導体材料の温度は一定温度に維持される)。
本発明の少なくとも1つの実施形態では、溶融半導体材料104への浸漬後には鋳型100の温度は制御されないので、その温度は溶融半導体材料の温度Tによってのみ変化する。溶融半導体材料の温度Tは、放射、対流、または熱伝導によって鋳型100の温度を変え得る。鋳型100の放射加熱は、例えば鋳型100が溶融半導体材料104よりも上側にあるときに発生し得る。溶融半導体材料104より上側にあるフュームが鋳型100の表面を通り過ぎるときに、または溶融半導体材料104への鋳型100の浸漬中、鋳型100を溶融半導体材料104によって対流的に加熱し得る。熱伝導による鋳型100の加熱は、例えば鋳型100が溶融半導体材料104に浸漬されている間に発生し得る。
少なくとも1つの実施形態では、鋳型100は、溶融半導体材料104と適合する材料で作製される。例えば、鋳型100が溶融材料104に暴露されるとき、例えば低融点化合物または固溶体を形成することによるなどのここに記載の方法と矛盾しないように、鋳型100が溶融材料104と反応しないような材料を鋳型100は含み得る。別の例として、溶融材料104と接触することによって鋳型100が加熱されるときに、鋳型100が溶融または軟化しない材料を含み得る。別の例として、溶融材料104と接触することによって鋳型100が加熱されるときに、固体層110を支持するのに流動性を有しすぎることがないおよび/または固体層110から分離されない材料を含み得る。別の例として、鋳型100は、溶融材料104と接触することによって鋳型100が加熱されるときに、例えば、不均一で急速な熱膨張からまたは閉じ込められたガスから生じた大きな熱応力のために、鋳型100が浅割れ(check)、破断、または破裂しないような材料を、鋳型100は含み得る。さらに別の例として、鋳型100は、鋳型に形成されている凝固層110もしくは溶融材料104残渣を、破損、破砕、ダスティング、および固体成分もしくは発生気体の蒸気もしくは液相の拡散のいずれかによって有害に汚染しない材料を含み得る。少なくとも1つの実施形態では、鋳型100は、石英ガラス、グラファイト、窒化ケイ素、およびこれらの組み合わせから選択された材料を含み得る。本発明の少なくとも1つの実施形態では、鋳型100は石英ガラス製である。
鋳型100を、開示の方法での使用に好適ないずれかの形態とし得る。例えば、少なくとも1つの実施形態では、鋳型100をモノリスの形態または積層モノリスなどの積層構造の形態とし得る。鋳型100は、任意選択的に少なくとも1種の多孔質または非多孔質コーティングを有する多孔質または非多孔質体を含み得る。少なくとも1つの実施形態では、鋳型100はまた、型本体全体に均一または不均一な組成物、均一または不均一な多孔性、または他の均一または不均一な構造的特性を含み得る。少なくとも1つの実施形態によれば、鋳型100はまた、記載の方法で使用するのに好適ないずれの形状であってもよい。例えば、鋳型100は1つ以上の平面または1つ以上の曲面、例えば1つ以上の凸面または凹面を含み得る。例えば、1つ以上の平面を使用して、矩形形状の物品を作製し、および1つ以上の凸面または凹面を使用して、レンズやチューブ形状の物品を作製し得る。
少なくとも1つの実施形態では、鋳型100の材料の熱物理特性および鋳型100の厚さを組み合わせて、鋳型100の外面102と接触するかまたはその近傍にある溶融材料104から熱を除去して半導体材料を凝固させる鋳型100の能力、ならびに熱が伝達され得る速度を決定し得る。理論によって限定されることは望まないが、鋳型100の外面102の固体層110から熱が除去される速度が、固体半導体材料層110の粒度に影響を与え得ると考えられている。鋳型100と溶融材料104との間の温度差が液体から固体への相変態に対する推進力をもたらし得る一方、鋳型100の伝熱特性(伝導率および拡散率)は、熱を除去する速度を設定し得る。温度差が大きいほど、概して大きな推進力をもたらし、それにより、多数の部位において核形成障壁を乗り越えるためにより大量のエネルギーが利用可能となり得るため、より微粒の材料が生じ得る。温度差が小さいと大きな粒子に有利となり得る。
図2に、それぞれ四角、円、および三角によって示す鋳型の厚さ1mm、3mmおよび5mmに対応する、浸漬時に鋳型の温度TMoldの関数として達成され得るシリコン凝固層の最大厚さを示す例示的な理論計算のグラフを示す。計算では、鋳型は100%稠密(すなわち、非多孔質の)石英ガラス製であり、かつ溶融シリコンへの鋳型の浸漬中、溶融シリコンを1470℃に維持すると仮定した。図2に示すグラフは、所与の鋳型材料の物理的性質に関して以下のエネルギー平衡方程式を解くことによって生成される。鋳型が溶融半導体材料へ浸漬されている間に形成されたシリコン凝固層の最大厚さΔを、鋳型の密度ρMold、鋳型の熱容量CpMold、浸漬時の鋳型の温度TMold、シリコン溶融温度T、溶融シリコンのバルク温度T、鋳型の厚さW、溶融シリコンの密度ρSi、溶融シリコンの比熱容量CpSi、およびシリコンの融解潜熱λSiの関数(方程式1)として表すことができる:
Figure 2011513974
鋳型の表面にわたる半導体材料の凍結/再溶融が寄与した半導体材料の厚さに加えて、半導体材料の形成物品の厚さは、溶融半導体材料104から鋳型100を取り出す速度による影響も受ける可能性がある。溶融半導体材料は、溶融半導体材料104から取り出されるときに鋳型100上に形成された半導体材料の固体層110をぬらして、溶融半導体材料の引きずり(drag)層を形成し得る。溶融半導体材料の引きずり層は、半導体材料の既に凝固した層の上に凍り得るので、最終品に厚みを加え得る。いずれの理論にも縛られるものではないが、引きずり層によって追加され得る追加的な厚さの原因は、上述のように鋳型が溶融半導体材料に浸漬している間に発生する凍結/再溶融プロセス、ならびに、従来の浸漬コーティングプロセス中に発生し得るコーティングにあり得ると考えられている。従来の浸漬コーティングプロセスを使用して形成された層の厚さは、Landau−Levichの方程式(方程式2):
Figure 2011513974
(式中、Hは浸漬コーティングされた層の厚さであり、μは液粘度であり(例えば溶融半導体材料)、Uは、取り除かれるときの鋳型の速度であり、σは液体の表面張力であり、ρは液体の密度であり、およびgは重力による加速度である)を使用して概算し得る。凍結による追加的な厚さへの寄与は、溶融半導体材料からの鋳型の取り出し速度によって割った鋳型の長さに応じ得る。それゆえ、図18に示すように、引きずり層の厚さは、取り出し速度が高くなると薄くなり得る。一例として、鋳型が2cm/秒〜5cm/秒の速度で取り出される一実施形態では、引きずり層は、形成された半導体材料物品の厚さに100μm寄与し得る。
図3および図4は、本開示の実施形態に従って作製された半導体材料の物品の写真である。図3および図4は、それぞれ2つの非支持型シリコン物品114および116を示す(双方とも約300μmの厚さであり、ここで説明した方法によって鋳造されており、鋳型と溶融シリコンとの間の初期温度差が同じである)。図3のシリコン物品114は、十分に稠密で透明の石英ガラス鋳型を使用して鋳造され、シリコン物品により小さな粒子(約100μm)を生じた。図4のシリコン物品116は、不透明な80%稠密(すなわち、多孔質)の焼結石英ガラス耐火物の鋳型を使用して鋳造された。シリコン物品116はより大きな粒子を有した(1mmよりも大きい)。
本発明の少なくとも1つの実施形態では、得られた固体層の厚さを、鋳型100の溶融半導体材料104への浸漬時間を変更することによって制御し得る。図5に、浸漬時間の関数として鋳型100の外面102から測定された凝固距離(実線)の計算されたグラフを示す。図5にはまた、計算の処理条件に対応する一連の実験データ(円のある点線)を示す。ここで説明するプロセスの少なくともいくつかの実施形態では、凝固層(例えば、シリコン)は、期間t中に示すように、初めに急速に成長して、可能な最大厚さとなる。次に、凝固層は、固体半導体材料が再溶融して、予め定められた温度に維持され得るバルク溶融材料に戻るため、期間t中に薄くなる。理論によって限定されることは望まないが、初期フェーズの間、凝固は鋳型−液体界面において始まり、続いて凝固先端が液体中(すなわち、溶融半導体材料)まで進行し、それにより、有限厚の凍結層の成長をもたらすと考えられている。プロセスの後のフェーズでは、凍結層の再溶融が起こり、固体−液体界面が基板の壁まで後退すると考えられている。溶融材料に鋳型が残されたら、鋳型が溶融物と熱平衡化するにつれ初期の凍結層の全てが再溶融するであろう。固体−液体界面の瞬間速度はStephan条件(方程式3):
Figure 2011513974
(式中、KおよびKは固相および液相の熱伝導率であり、vは瞬間的な界面速度であり、ρは固相の密度であり、およびλは融解潜熱である)によって与えられる。方程式の左辺の第1および第2の項は、それぞれ固体および液体による熱流束である。固体による熱流束が、液体による熱流束よりも大きい場合、界面速度は正となり、凍結が続く。液体による熱流束が、固体による熱流束も高い場合、界面速度は負となり、再溶融が起こる。本発明の少なくとも1つの実施形態では、溶融半導体材料による熱流束が、凝固した半導体材料による熱流束よりも高く、再溶融が起こるような期間、溶融半導体材料に鋳型を浸漬することによって、半導体材料の物品の厚さを制御する。図5に示すデータから求めることができるように、再溶融が起こる速度は、固体半導体材料層の初期形成速度よりもゆっくりである。厚さの変化の速度がゆっくりであるため、再溶融フェーズ中、形成物品の厚さをより正確に制御できると考えられている。
鋳型が溶融半導体材料に浸漬されるとき、凝固フェーズ中、固相による熱流束(方程式の左辺の第1の項)は、初期等温液体におけるよりも遙かに大きく、それゆえ液体へと急速な凝固が起こる。ある長さの時間後、液体による熱流束は固体による熱流束よりも高く、再溶融が起こる。十分な期間が経過した後、鋳型が溶融物と熱平衡化するにつれて半導体材料の凝固層全体が再溶融する。
少なくとも特定の実施形態では、鋳型−液体界面で凝固フェーズが開始し、続いて鋳型からの液体へ凝固が進行すると考えられている。このプロセスのダイナミックスを、凝固界面での潜熱の発生速度および界面から離れたその熱伝導によって制御し得る。過熱された溶融物(すなわち、溶融物の温度が材料の融点よりも高い)への凝固のために、界面より前方(すなわち、溶融物の方向)の温度勾配は正であると予期される。それゆえ、凝固/凍結先端で放出された潜熱を、溶融物中へ伝達または対流させることはできない。それゆえ、凝固のダイナミックスは、潜熱の、凝固した半導体材料による鋳型(例えば、融解石英)への熱伝導によって設定されると考えられている。凝固した半導体材料および鋳型による熱伝導が速いほど、凝固の速度は速くなる。従って、鋳型の熱的特性は、凝固のダイナミックスに重要な影響を有することがあると考えられている。反対に、溶融半導体材料の温度は、凝固フェーズにあまり影響を及ぼさないと考えられている。凝固は、液体(すなわち、溶融半導体材料)による熱流束および固体半導体材料層が等しくなるまで続く。この点を超えると、液体による流束が固体半導体材料による流束よりも高くなり、再溶融が始まる。再溶融フェーズ中、潜熱が、過熱された溶融半導体材料からの界面に供給される。それゆえ、再溶融フェーズ中、溶融半導体材料の特性は再溶融のダイナミックスにより大きな影響を及ぼし、鋳型の熱的特性はあまり影響を及ぼさない。
本発明の少なくとも1つの実施形態では、鋳型100は、厚さが0.5mm〜5mmの範囲である石英ガラス鋳型製である。厚さが0.5mm〜5mmの範囲である石英ガラス鋳型の場合、浸漬後の始めのほぼほんの一瞬で、一次固体半導体材料層、例えば、浸漬中に凝固したシリコン層は、溶融シリコンから鋳型に熱が伝えられるにつれ、鋳型の表面に対して実質的に平行に成長すると考えられている。初期の実質的に平行な成長後、シリコン層の成長は、鋳型の表面に対して実質的に垂直に進むと考えられている。固体半導体材料層は、固体−液体界面にわたる熱流束が等しくなるまで成長し、その後、溶融して溶融半導体材料に戻り得る。
少なくとも1つの実施形態によれば、鋳型が溶融半導体材料に浸漬される速度を、1cm/秒〜50cm/秒の範囲、例えば、3cm/秒〜10cm/秒とし得る。当業者は、種々のパラメータ、例えば、半導体材料の組成(任意選択でドーパントを含む)、鋳型のサイズ/形状、および鋳型の表面テクスチャなどに依存して浸漬速度が変わり得ることを理解するであろう。
浸漬後に鋳型が溶融材料から取り出される速度もまた、形成された固体物品の構造への影響を有し得る。鋳型が溶融半導体材料から取り出されるとき、溶融半導体材料の層は鋳型上の半導体材料の固体層をぬらす可能性があり、それにより、上述のように半導体材料の固体層に厚みが加わる、および/または半導体材料の固体層の表面構造を変化させ得る。図6および図7に、形成された固体物品の滑らかさに影響を与える取り出し速度を実証する2つのシリコン物品を示す。図6では、鋳型は急速に取り出され、比較的表面が粗いシリコン物品118をもたらした。図7では、鋳型はゆっくりと取り出され、比較的表面が滑らかなシリコン物品120をもたらした。少なくとも1つの実施形態では、より滑らかな表面を有する固体物品を、溶融材料からの鋳型の比較的遅い取り出し速度、例えば、2〜5cm/秒を使用して作製する。鋳型の取り出しが迅速すぎると、余分な液体を内部に捉える孤立凝固事象のために、熱除去における小さな局所的な変動が現れ、パドル(puddle)およびバンプ(bump)を形成し得る。これらのパドルおよびバンプが急速に凝固すると、それらは、場合によっては数ミリメートルの高さおよび1センチメートル以下の幅の小塊、および面のある突端を形成し得る。ゆっくりと取り出すことによって、ぬれ面積を液体−固体−気体界面に制限し、かつ固体層の表面上に連続的な二次平滑層を形成すると考えられている。さらに、鋳型を急速に動かすと、溶融物にフローパターンおよび乱流も誘発し得る。フロー運動と熱伝達との間の結合は、物品の凝固面上でのパターン形成の原因となり得る。少なくとも1つの実施形態では、半導体材料の物品は、二次平滑層が固体半導体材料層の表面上に形成される速度で鋳型を取り出すことによって作製される。
当業者は、浸漬速度、浸漬時間、および取り出し速度が全て製造物品に影響を及ぼすこと、およびこれらのパラメータを所望の物品、鋳型の材料/形状/テクスチャ/サイズ、鋳型の開始温度、溶融半導体材料の温度、および半導体材料の特性に基づいて選択し得ることを理解するであろう。
図1を参照すると、少なくとも1つの実施形態では、溶融半導体材料104を保持する槽106は、鋳型100に関して上述したように溶融材料104と反応しないおよび/または溶融材料104を汚染しない可能性がある。少なくとも1つの実施形態では、槽106は、石英ガラス、グラファイト、および窒化ケイ素から選択した材料から作製される。少なくとも1つの実施形態では、槽106は石英ガラス製である。
限定されることを望むわけではないが、少なくとも特定の実施形態では、鋳型104および/または槽106に石英ガラスを使用することによって、半導体材料の酸素汚染をもたらし得ると考えられている。それゆえ、種々の実施形態では、酸素汚染を、半導体材料を溶融して物品を低酸素環境、例えば、水素(<1ppmの水)とアルゴン、クリプトンまたはキセノンなどの不活性ガスとの乾燥混合物などにおいて鋳造することなどによって、任意選択的に軽減させるかまたは実質的に軽減させ得る。少なくとも例示的な一実施形態では、雰囲気を、Ar/1.0wt%H混合物またはAr/2.5wt%H混合物から選択し得る。
少なくとも1つの実施形態では、鋳型100は、実質的に平坦な外面102を有し得る。図8および図9はそれぞれ、図1に示すもののような鋳型100の平面上に、本発明の方法によって形成された例示的なシリコン物品126の前面122および背面124の写真である。シリコン物品126の厚さは240μmであった。ここで説明した種々の実施形態によれば、鋳型100の特性および他のプロセスパラメータを調整することによって、例えば、鋳型100の厚さを厚くするまたは浸漬時間を変化させることによって、厚みのある物品を作製できる。
少なくとも1つの実施形態では、鋳型100は、様々な形状、曲率、および/またはテクスチャを有する物品を形成するための特性を備える外面102を有し得る。例えば、図10に、チューブ状の外面102を備える鋳型100を示す。図11に、図10に示すもののようなチューブ状の鋳型100によって形成されたチューブ状のシリコン物品128の図を示す。図12および図13に、穴または窪み130を有する平坦な外面102を備える鋳型100を示す。図12では、鋳型100の外面102の穴または窪み130は円形形状である。図13では、鋳型100の外面102の穴または窪み130はダイアモンド形状である。図14および図15に、それぞれ図12および図13に示すもののような、鋳型100よって形成された、穴のあるまたは窪みが形成されたシリコン物品を示す。当業者が理解するように、鋳造品に望ましい他のいずれかの表面テクスチャ/パターンを鋳型100の外面102に組み込み得る。
本発明の少なくとも1つの実施形態によれば、鋳型100を、例えば浸漬される前にまたは鋳型100が溶融半導体材料104に浸漬されるときに、粒子で被覆してもよい。特定の実施形態では、粒子のコーティングは、鋳造品が鋳型100にくっつかないようにし、かつ半導体材料の結晶が連続して成長できるようにし、それにより、より大きな粒度をもたらし得ると考えられている。少なくとも1つの実施形態では、鋳型100を粒子、例えば無機粒子で被覆してもよい。少なくとも1つの実施形態では、粒子を高純度のものとし得る。少なくとも1つの実施形態によれば、粒子の平均サイズは10nm〜2μmの範囲である。少なくとも1つの実施形態では、粒子は、平均サイズが100nm以下、例えば、30nm以下のナノ粒子である。粒子は、記載の方法に使用するのに好適ないずれかの材料を含み得る。例えば、少なくとも1つの実施形態では、粒子は、シリコン、二酸化ケイ素、窒化ケイ素、酸化アルミニウム、酸化アルミニウムの化合物、ならびに/またはアルミニウムおよび/もしくはシリコンを含むガラス状のもしくは結晶質の化合物、例えば、アルミノシリケートを含み得る。
少なくとも例示的な一実施形態では、粒子(例えば、シリコンナノ粒子)のコーティングを、鋳型100が溶融半導体材料(例えば、シリコン)の上側にあるときに鋳型100上に形成し得る。例示的な一実施形態では、溶融半導体材料からのフュームが比較的低温の鋳型100の外面102上に凝縮する凝縮プロセスは、ナノ粒子のコーティングを鋳型100の表面上に形成する(「フュームコーティング」)。例えば、溶融シリコンは、シリコンの溶融温度超に、例えば1450℃〜1550℃の範囲で加熱されるとき、ナノ粒子を含んだフュームを発生させ得る。少なくとも1つの実施形態では、好適な初期開始温度、例えば100℃などの鋳型100を、溶融半導体材料104の上側でフュームに好適な時間の長さ、例えば10秒〜30秒など暴露させる。少なくとも1つの実施形態では、溶融半導体材料104からのフュームは、溶融半導体材料104の上側で雰囲気と組み合わせるかまたはそれと反応し得る。例えば、溶融シリコン上で鋳型100の表面に堆積した粒子は、シリコン(Si)および酸化ケイ素(SiOおよびSiO)を含み得る。
別の例示的な実施形態では、鋳型100を溶融半導体材料104に浸漬するとき、粒子を鋳型100に堆積し得る。さらに別の例示的な実施形態では、鋳型100を浸漬する前におよびまた鋳型100を溶融半導体材料104に浸漬しているときに、粒子を鋳型100に堆積し得る。
少なくとも1つの実施形態では、鋳型100上のコーティングは、鋳型100からの物品110の取り外しを望ましく促進させる十分な厚みおよび被覆率のものとし得る。単に一例として、60%超の被覆率および100nm〜5μmの範囲のコーティング厚さを有するフュームコーティングを鋳型に形成し得る。別の実施形態では、80%超の被覆率を有するフュームコーティングを鋳型に形成し得る。いくつかの実施形態では、コーティングは、図16に示すもののようなグループ化されたまたはクラスタ化された粒子の実質的に連続的なコーティングを形成し得る。コーティングは、種々の実施形態では、鋳型100の表面が露出している場所では不連続性を有し得る。いくつかの実施形態では、グループ化されたまたはクラスタ化された粒子は、多孔質様の表面を形成し得る。粒子が被覆された鋳型の側面図を図17に示す。図17では、粒子Aのグループまたはクラスタは鋳型Bの上側に見える。
種々の例示的な実施形態では、鋳型100に堆積されたかまたは適用された粒子は、溶融半導体材料104と同じ組成を有しなくてもよい。種々の他の例示的な実施形態では、鋳型100に堆積されたかまたは適用された粒子は溶融半導体材料104と同じまたは実質的に同じ組成を有してもよい。一例として、少なくとも1つの実施形態では、上述の凝縮プロセスによって鋳型に適用された粒子が確実に純粋であるかまたは実質的に純粋であるようにするための手段が取られ得る。少なくとも1つの実施形態によれば、凝縮プロセスは、かなりの還元性または低酸素雰囲気、例えば、水素2.5%の純アルゴンの乾燥混合物を有する閉鎖容器において実施され得る。一実施形態では、閉鎖容器中の雰囲気は、任意選択的に例えば1ppm未満のレベルまで水をおよび例えば5ppm未満のレベルまで酸素を除かれ得る(例えば、連続的に)。閉鎖容器を任意選択的に、例えば大気窒素の侵入を回避するために、わずかに加圧し得る。少なくとも1つの実施形態では、低揮発性の炭素化合物も閉鎖容器から排除され得る。
少なくとも1つの別の実施形態では、溶融半導体材料104によって発生したフュームに鋳型100を配置するのではなく、比較的低温のいずれかの非汚染表面(シリコンまたは石英ガラスなど)を、フューム中に保持して粒子を収集し得る。次いで、別個のプロセスで粒子を鋳型100の表面に適用する。少なくとも1つの実施形態では、粒子の懸濁液を準備して、浸漬コーティング、ラビング、ブラシング、吹き付け、および流し込みなどの方法を使用して鋳型100の表面に適用する。他の実施形態では、粒子を、化学蒸着(CVD)、物理蒸着(PVD)、プラズマ支援化学蒸着(PECVD)、または誘導プラズマ蒸着などの方法によって適用し得る。少なくとも1つの実施形態では、鋳型100を、いずれかの好適な原料源からの粒子で被覆し得る。
いずれの理論にも縛られるものではないが、粒子で被覆された鋳型100を溶融材料104に浸漬するとき、初期凍結事象中、鋳型100上の粒子が鋳型100と溶融半導体材料104との間に物的障壁を形成すると仮定する。次いで粒子が一緒に成長して、鋳型を溶融半導体材料104に浸漬している残りの時間中、鋳型100と凝固層110との間に薄く、弱い、多孔質層を形成すると考えられている。鋳型100および固体層110の冷却中、固体層110と鋳型100との間の熱膨張に差があるために、熱機械応力が固体層110と鋳型100との間で高まる。次いで、固体層110と鋳型100との間の粒子の多孔質層は破断し、鋳型100から固体層110をより簡単に取り外すことができるようになる。
本発明の少なくとも1つの実施形態では、記載の方法を使用して、光起電力応用に有用な範囲内の表面積、幾何学的形状、厚さ、および粒状構造を有する、例えば約156mm×156mm以下のサイズ、100μm〜400μmの範囲の厚さ、および相当数の粒子が1mm超である半導体材料のシート、例えばシリコンシートを作製し得る。一実施形態によれば、粒子の少なくとも60%を1mm超とし得る。別の実施形態では、粒子の少なくとも80%または少なくとも90%を1mm超とし得る。少なくとも1つの実施形態では、粒子のサイズは最も狭い横方向において、それらの厚みよりも2〜3倍大きい。
本発明の少なくとも1つの実施形態では、記載の方法は、向上した生産率でおよび/または廃棄材料が少ない半導体材料の物品を生じる。例えば、ここで説明したエクソキャスティングプロセスを、溶融された材料の全てを有用な物品に鋳造することができるため、半導体素子を実質的に無駄にすることなく実施できる。いずれの破損片もまたは他の使用されなかった材料も再溶融して再び鋳造できる。少なくとも1つの実施形態では、5秒未満の浸漬サイクル時間(すなわち、鋳型を浸漬までの時間、浸漬時間、および鋳型を取り出す時間の合計)を使用して、(幅に関わらず)長さが7cmのシートを形成する。これは、処理速度が数センチメートル/秒であるということである。
指定のない限り、明細書および特許請求の範囲で使用した全ての数字は、言及していてもしていなくても、全ての例で用語「約」によって修正されるものと理解されたい。明細書および特許請求の範囲で使用した正確な数値は本発明の追加的な実施形態を形成することも理解されたい。ここに開示した数値の精度を保証するために努力がなされた。しかしながら、測定されたいずれの数値も、その個々の測定技術にみられる標準偏差から生じる本質的にある種のエラーを含み得る。
本明細書および添付の特許請求の範囲で使用されるような、単数形「a」、「an」、および「the」は、明白におよびはっきりと1つの指示対象であると限定しない限り複数形の支持対象も含み、かつその逆も同じであることに留意されたい。それゆえ、単に一例として、「熱源」は1つ以上の熱源を指すことができ、および「半導体材料」という言及は1つ以上の半導体材料を指すことができる。ここで使用されるように、用語「含む」およびその文法上の変形例は、リストにあるアイテムの列挙が、リストしたアイテムの代替または追加となり得る他の同様のアイテムを排除しないように、非限定的なものである。
本開示の教義の範囲から逸脱することなく、本開示のプログラムおよび方法に種々の修正および変形をなすことができることが、当業者には明白であろう。ここで説明した教義の明細および実施を考慮すれば本開示の他の実施形態が当業者には明白であろう。明細書で説明した実施形態は例示にすぎないとみなされるべきである。

Claims (5)

  1. 半導体材料の非支持型物品の製造方法であって、
    温度TMoldで鋳型を提供する工程;
    温度T(T>TMold)で溶融半導体材料を提供する工程;
    前記鋳型の外面を粒子で被覆する工程;
    前記鋳型の前記外面上に前記半導体材料の固体層を形成するのに十分な期間、前記鋳型を前記溶融半導体材料に浸漬する工程;
    前記半導体材料の固体層を有する前記鋳型を前記溶融半導体材料から取り出す工程;および
    前記半導体材料の固体層を前記鋳型から分離して前記半導体材料の前記非支持型物品を形成する工程;
    を含むことを特徴とする方法。
  2. 前記鋳型の前記外面を粒子で被覆する工程が、前記溶融半導体材料の上側で前記鋳型を、前記溶融半導体材料によって発生した粒子を前記鋳型の前記外面上に形成するのに十分な期間、フュームに暴露する工程を含むことを特徴とする、請求項1に記載の方法。
  3. 前記鋳型が前記溶融半導体材料の上側にあり、かつ前記鋳型を前記溶融半導体材料の上側でフュームに10秒〜30秒暴露させることを特徴とする、請求項2に記載の方法。
  4. 前記鋳型の前記外面を粒子で被覆する工程が、前記鋳型の前記外面上への前記粒子の吹き付け、ラビング、ブラシング、流し込み、浸漬コーティング、化学蒸着、物理蒸着、プラズマ支援化学蒸着、またはプラズマ誘発蒸着を含む工程を特徴とする、請求項1に記載の方法。
  5. 前記溶融半導体材料の上側の雰囲気がアルゴンおよび水素を含むことを特徴とする、請求項1に記載の方法。
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