JP2011157567A - 電気鍍金処理方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】酸洗処理部4、基準電流密度A0で通電を行う複数段の電気鍍金処理槽6を備えた電気鍍金部5、及びロールコーター7を備えるコーティング処理部の順に配置された連続処理ラインに通板することで、鋼板12に対し電気鍍金及びコーティングを連続して施す電気鍍金処理設備を使用する。そして、上記連続処理ラインで再鍍金処理を行う際に、一部の電気鍍金処理槽6a、6bだけを使用し、その電気鍍金処理槽6a、6bでの電流密度を、上記基準電流密度A0の上限値よりも高い高電流密度AMに設定する。
【選択図】図1
Description
また、再鍍金処理を通常の電気鍍金処理ラインと同一ラインで実施する場合は、鍍金を落とす際に、例えば電気鍍金部を非通電の状態として鋼板を鍍金処理ラインに通板させることで、酸洗槽で鍍金を徐々に落とすこととなる。この場合であっても、上記従来技術にも記載のように、酸洗槽を1回通しただけでは完全に鍍金を落とすことは出来ない。すなわち、鍍金落としの為に、鍍金処理ラインに複数回通板する必要があり、工数が掛かる。また、鋼板の表面が酸洗によって不均一に溶解して外観が悪化する。更に、電気鍍金部を非通電状態で通板させると、鍍金液中の硫酸等によって鋼板の表面が荒れることでも外観悪化の原因となる。このため、目標鍍金の外観基準が高いほど、再鍍金で対応出来ない状況となる。
本発明は、上記のような点を考慮してなされたもので、工数を抑え且つ耐黒変性が優れた再鍍金処理を可能とすることを課題としている。
上記複数の電気鍍金処理槽のうち、少なくとも通電を行う最初の電気鍍金処理槽での電流密度を、上記基準電流密度の上限値よりも高い高電流密度に設定し、その高電流密度に設定した電気鍍金処理槽が最下段の電気鍍金処理槽で無い場合には、高電流密度に設定した電気鍍金処理槽よりも下段の電気鍍金処理槽を全て上記高電流密度よりも低い電流密度での通電状態に設定することを特徴とするものである。
「基準電流密度の上限値」とは、各電気鍍金処理槽に設定する基準電流密度のうち一番大きな値の基準電流密度を指す。
次に、請求項3に記載した発明は、請求項1または請求項2に記載した構成に対し、上記高電流密度に設定した電気鍍金処理槽を最下段の電気鍍金処理槽とせず、最下段の電気鍍金処理槽での電流密度を5[A/dm2]以上20[A/dm2]以下の範囲として、色調調整のための電気鍍金を行うことを特徴とするものである。
酸洗処理部での酸洗で、既に施されている鍍金の表層だけを活性化させ、次いで電気鍍金部で、酸洗での除去相当分若しくはそれ以上の鍍金を、上記基準電流密度よりも高い電流密度で電気鍍金することで行うことを特徴とするものである。
次に、請求項5に記載した発明は、請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載した構成に対し、上記連続処理ラインは、電気鍍金部の下流に、ロールコーターを備えるコーティング処理部を備えることを特徴とするものである。
また、再鍍金のための電気鍍金を高い電流密度で行うことで、鍍金液からのPbの析出が抑制されて、品質の良い鍍金鋼板を製造可能となる。
図1は、本実施形態で使用する連続処理ライン設備を示す概念図である。
ここで、以下に説明する実施形態の連続処理ライン設備では、電気鍍金部5の下流にコーティング処理部7を設けた例で説明する。但し、電気鍍金部5とコーティング処理部7と一つのラインに設け無くても良い。すなわち、後述の連続処理ライン設備にコーティング処理部7を設けなくても良い。
本実施形態の連続処理ライン設備は、酸洗処理部及び電気鍍金処理部を有する通常の電気鍍金設備、さらにコーティング部を有する設備等が使用出来る。その一例を図1に示す。図1に示すように、次の設備が上流側から順に配置される。すなわち、本実施形態の連続処理ライン設備は、アンコイラー1、ウエルダー2、入側ルーパー3、酸洗処理部4、電気鍍金部5、コーティング処理部7、出側ルーパー8、トリマー9、検査部10、及びコイラー11を順に備える。
酸洗処理部4は、硫酸などの酸を収容した酸洗槽を備える。鋼板12を酸洗槽に通過させることで、鋼板12の表面を洗浄、つまり鍍金付着のための前処理を行う。
電気鍍金部5は、複数段、例えば7段の電気鍍金処理槽6を直列に配置することで構成される。各電気鍍金処理槽6は、図2に示すように、鍍金液61を収容した鍍金槽62と、鍍金槽62内の鋼板部分に所定の電流密度で通電を行う通電装置とを備える。電極65及び通電ロール64が通電装置となる。また、符号63はゴムロールである。
上記連続処理ライン設備を使用して、未鍍金の鋼板12に対して電気鍍金及びコーティングを連続して実施する。鋼板12は、例えば冷延鋼板である。また、電気鍍金は例えば電気亜鉛鍍金とする。
すなわち、通常の未鍍金の鋼板12を上記連続処理ライン設備で通板すると、まず酸洗槽で鋼板表面の洗浄が実施され、続いて、電気鍍金部5の各電気鍍金処理槽6で順次鍍金が付着して目的の鍍金量の付着が実施される。その後に、コーティング処理部7で、塗料の塗布処理が実施される。上記処理が完了すると、再度コイルにするためにトリマー9で切断されてコイラー11に巻き取られる。このとき、鋼板12の品質が検査され、外観不良と判定されると再鍍金処理が必要なコイルとして扱う。
続いて、酸洗処理後の鋼板12が電気鍍金処理部に送られて、再度の電気鍍金が施される。
黒変が起こる理由については、不純物のPbが原因と考えられる。酸洗後に鍍金が残存した状態で再鍍金を行う場合、通電を開始する鍍金槽での電流密度が低いほどPbが析出しやすくなる。
続いて、コーティング処理部7で塗料の塗布処理が実行される。
ここで、上記実施形態では、再鍍金前と再鍍金後とで鍍金付着量が同じ場合を例示したが、再鍍金によって鍍金付着量を変更する場合には、例えば酸洗処理での鍍金の活性化で除去された分相当よりも多く付着するように設定しても良い。この場合は、少なくとも通電を行う最初の電気鍍金処理槽での電流密度を、上記基準電流密度よりも高い高電流密度に設定すればよい。
本実施形態では、再鍍金の際には、電気鍍金の前処理としての酸洗処理にて、既に施した鍍金の表層だけを除去し、その後必要な鍍金量を再鍍金する。この際に、電流密度を、未鍍金の鋼板12に対する電流密度の上限値よりも高い設定にすることで、鍍金液61からのPbの析出を抑えることができ、再鍍金量が少なくても鍍金外観の低下を抑えることが出来る。
このとき、再鍍金時の高電流密度AMを、50[A/dm2]以上に設定することで優れた耐黒変性を得ることが可能となる。
(1)上記実施形態では、再鍍金で使用する、つまり通電する電気鍍金処理槽6を2段設定する場合を例示したが、再鍍金で使用する、つまり通電する電気鍍金処理槽6を1段だけ若しくは3段以上設定しても良い。
(2)上記実施形態では、再鍍金で使用する電気鍍金処理槽6を、最下段及びその一つ前の電気鍍金処理槽6a、6bとし、再鍍金で使用しない、つまり通電しない電気鍍金処理槽は、6a,6bよりも上段側とした。このため、再鍍金のために使用する電気鍍金処理槽6よりも下段側に再鍍金に使用しない電気鍍金処理槽6は、存在しない。
再鍍金で使用する電気鍍金処理槽6の下段側に、再鍍金で使用しない電気鍍金処理槽6を設定する場合には、その電気鍍金処理槽6は、非通電とせず、高電流密度AMよりも低い電流密度で通電状態とする。これは、非通電状態とすると、鍍金液61によって再鍍金した鍍金の表面が荒らされる可能性があるからである。
高電流密度AMで再鍍金処理を行うため、当初の鍍金付着量より相当量厚くする場合以外、全ての電気鍍金処理槽6に通電する場合は少なく、上記再鍍金で使用する(通電する)電気鍍金処理槽6は、出来るだけ下段側に配置することが好ましい。
(3)また、上記再鍍金で使用する(通電する)電気鍍金処理槽6を、最下段以外に設定する。例えば、上記再鍍金で使用する電気鍍金処理槽6を、最下段の一つ前ともう一つ前の電気鍍金処理槽6b、6cに設定する。
上記の連続処理ライン設備を使用して再鍍金処理の実験を行った。
ここで、再鍍金する鋼板12として、冷延鋼板(中低炭素鋼)、板厚0.4mm×板幅1250mmのものに、電気亜鉛鍍金を20[g/m2]形成した電気亜鉛鍍金鋼板を用いた。本実施例では、ライン速度を60mpmとした。
・酸洗濃度:酸(H2SO4)の濃度が60〜80[g/l]
・酸洗温度:15〜40[℃]
電気鍍金処理槽6は、7段の電気鍍金処理槽6のものを使用した。また、未鍍金の鋼板に対する各電気鍍金処理槽6の電流密度として、35[A/dm2]に設定した。
実験結果を図4に示す。この図4は、再鍍金時における、電流密度と、耐黒変性評価に関するΔL値との関係を示すものである。
この図4から分かるように、電流密度を上げるほどΔL値が向上する。そして、50[A/dm2]以上、好ましくは80[A/dm2]以上とすることで、ΔL値をそれぞれ、−2.0以上、−1.0以上にすることが分かる。
鋼板12として、第1実施例と同様の鋼板を使用し、表1に示す条件で再鍍金処理を行い、性能評価を行った。結果も表1に示す。例えば、表1の実施例1では、再鍍金量を4[g/m2]とし、後段から2つ目の電気鍍金処理槽6を高電流密度AM(50[A/dm2])とし、最下段の電気鍍金処理槽6を色調調整のため低電流密度に設定した。また、使用しない前段の電気鍍金処理槽6は、無通電とした。
また、比較例1では、ラインを4回通板して、酸洗により既に施した旧鍍金層を完全に剥離した後、再鍍金した場合を示す。この場合には、再鍍金量を20[g/m2]とし、未鍍金時の電流密度条件で鍍金処理を実施した。なお、この場合には、鍍金落としに3回通板し、再鍍金に1回通板した場合である。
なお、品質性能の評価は、以下のようにして行った。
(1)外観:再鍍金後の鋼板表面の目視判定
評価基準
○:均一
×:鍍金ムラあり
(2)色調
スガ試験機株式会社製光沢計ハンディカラーテスターHC1で、L値(明度)を測定した 。
評価基準
◎:L値62.5以上
○:L値61以上62.5未満
×:L値61未満
下記(イ)から(ア)を差し引いた値をΔL値とした。
(ア)再鍍金直後の鋼板の初期L値
(イ)再鍍金後の鋼板を、50℃で5日間経過後、80℃,95%RHの恒温恒湿槽中に 5.5時間放置後のL値
評価基準
◎:ΔL値 −1.0以上
○:ΔL値 −2.0以上 −1.0未満
△:ΔL値 −3.0以上 −2.0未満
×:ΔL値 −3.0未満
・裸耐食性
再鍍金後の鋼板を、JIS−Z−2371に基づく塩水噴霧試験72時間後の外観(白錆 発生面積率)で評価した。
・アルカリ脱脂後耐食性
再鍍金後の鋼板を(日本パーカライジング(株)製CL−N364S)を用いて、60℃,2分間スプレー処理の条件で脱脂した後、JIS−Z−2371に基づく塩水噴霧試験48時間後の外観(白錆発生面積率)で評価した。
評価基準
○:白錆発生面積率 10%以下
△:白錆発生面積率 10%超25%以下
×:白錆発生面積率 25%超
再鍍金後の鋼板を下記条件で塗装後、碁盤目試験及びエリクセン押し込み試験を行った。
塗料:デリコンNo.700(大日本塗料(株))、膜厚:30μm
加熱:130℃×30分
評価基準
○:碁盤目試験 剥離率20%以下 かつエリクセン押込み量5mm以上で剥離なし
△:碁盤目試験 剥離率20%超50%以下 または エリクセン3〜5mmで剥離
×:碁盤目試験 剥離率50%超え または エリクセン3mm未満で剥離
再鍍金後の鋼板を下記条件でエリクセン加工後に鍍金の剥離状況で評価した。
試験方法:エリクセン・テープテスト
(ア)試験対象面にエリクセン試験機により素地に亀裂が入るまで押し出す(碁盤目は入れない)。
(イ)押し出した凸部に粘着テープを貼り、ただちにテープを剥がしてめっき剥離を目視観察する
評価基準
○:めっき層の剥離なし
×:めっき層の一部剥離あり
5 電気鍍金部
6 電気鍍金処理槽
7 コーティング処理部
12 鋼板
61 鍍金液
62 鍍金槽
A0 基準電流密度
AM 高電流密度
Claims (5)
- 酸洗処理部と、鍍金液を収容し当該鍍金液に浸漬した鋼板部分に予め設定した電流密度である基準電流密度で通電を行う複数段の電気鍍金処理槽を備えた電気鍍金部とを備える連続処理ラインに通板することで、鋼板に対し電気鍍金を施す電気鍍金処理設備を使用し、
電気鍍金を既に施した鋼板を上記連続処理ラインに通板して、再鍍金処理を行う電気鍍金処理方法であって、
上記複数の電気鍍金処理槽のうち、少なくとも通電を行う最初の電気鍍金処理槽での電流密度を、上記基準電流密度の上限値よりも高い高電流密度に設定し、
その高電流密度に設定した電気鍍金処理槽が最下段の電気鍍金処理槽で無い場合には、高電流密度に設定した電気鍍金処理槽よりも下段の電気鍍金処理槽を全て上記高電流密度よりも低い電流密度での通電状態に設定することを特徴とする電気鍍金処理方法。 - 上記高電流密度は、50[A/dm2]以上であることを特徴とする請求項1に記載した電気鍍金処理方法。
- 上記高電流密度に設定した電気鍍金処理槽を最下段の電気鍍金処理槽とせず、最下段の電気鍍金処理槽での電流密度を5[A/dm2]以上20[A/dm2]以下の範囲として、色調調整のための電気鍍金を行うことを特徴とする請求項1または請求項2に記載した電気鍍金処理方法。
- 酸洗処理部と、鍍金液を収容し当該鍍金液に浸漬した鋼板部分に予め設定した電流密度である基準電流密度で通電を行う複数段の電気鍍金処理槽を備えた電気鍍金部とを備える連続処理ラインに通板することで、鋼板に対し電気鍍金を施す電気鍍金処理設備を使用し、
電気鍍金を既に施した鋼板を上記連続処理ラインに通板して、再鍍金処理を行う電気鍍金処理方法であって、
酸洗処理部での酸洗で、既に施されている鍍金の表層だけを活性化させ、次いで電気鍍金部で、酸洗での除去相当分若しくはそれ以上の鍍金を、上記基準電流密度よりも高い電流密度で電気鍍金することで行うことを特徴とする電気鍍金処理方法。 - 上記連続処理ラインは、電気鍍金部の下流に、ロールコーターを備えるコーティング処理部を備えることを特徴とする請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載した電気鍍金処理方法。
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